(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】配電盤
(51)【国際特許分類】
H02B 3/00 20060101AFI20240523BHJP
H02B 1/04 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H02B3/00 Z
H02B1/04 E
(21)【出願番号】P 2021073191
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 正典
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 深大
【審査官】関 信之
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-071141(JP,A)
【文献】特開2008-131781(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 3/00
H02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料からなる金属板で形成された筐体と、前記筐体の開口を塞ぐ開閉扉と、前記筐体の内部に収納された受配電機器と、前記受配電機器を監視する監視機器を有する監視機器固定装置とを備える配電盤であって、
前記監視機器固定装置は、少なくとも、前記監視機器が取り付けられた固定台座と、前記固定台座に設けられた永久磁石とからなり、
前記永久磁石を前記筐体に密着させて、前記監視機器が取り付けられた前記固定台座が前記筐体に磁気的に固定され
、
前記監視機器固定装置は、固定基台と、前記固定基台の一方側に設けられ、前記監視機器を取り付ける取付部と、前記固定基台の他方側に設けられ、内部に前記永久磁石を収納した前記固定台座とから構成されていると共に、
前記永久磁石には、前記筐体との間で磁束を集中させるヨークが設けられている
ことを特徴とする配電盤。
【請求項2】
請求項1に記載の配電盤において、
前記ヨークは、前記永久磁石を周囲から覆う筒状の前記ヨークである
ことを特徴とする配電盤。
【請求項3】
請求項1に記載の配電盤において、
前記ヨークは、前記永久磁石を挟み込む板状の前記ヨークである
ことを特徴とする配電盤。
【請求項4】
請求項1に記載の配電盤において、
前記固定基台と前記固定台座とは、ネジ結合部材によって一体化されている
ことを特徴とする配電盤。
【請求項5】
磁性材料からなる金属板で形成された筐体と、前記筐体の開口を塞ぐ開閉扉と、前記筐体の内部に収納された受配電機器と、前記受配電機器を監視する監視機器を有する監視機器固定装置とを備える配電盤であって、
前記監視機器固定装置は、少なくとも、前記監視機器が取り付けられた固定台座と、前記固定台座に設けられた永久磁石とからなり、
前記永久磁石を前記筐体に密着させて、前記監視機器が取り付けられた前記固定台座が前記筐体に磁気的に固定され、
前記監視機器固定装置は、固定基台と、前記固定基台の一方側に設けられ、前記監視機器を取り付ける取付部と、前記固定基台の他方側に設けられ、内部に前記永久磁石を収納した前記固定台座とから構成され、
前記監視機器固定装置は、連結部材を介して前記筐体に連結されていると共に、
前記連結部材はワイヤであって、前記ワイヤの一端は前記監視機器固定装置に繋がれ、
前記ワイヤの他端はフックに繋がれ、前記フックは前記筐体に形成されたフック係合孔に引っ掛けられている
ことを特徴とする配電盤。
【請求項6】
請求項5に記載の配電盤において、
前記ワイヤは、伸縮可能なコイル状の前記ワイヤである
ことを特徴とする配電盤。
【請求項7】
請求項5に記載の配電盤において、
前記監視機器固定装置と前記フックの間の前記ワイヤは、巻き取り機構に巻回されている
ことを特徴とする配電盤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば工場、ビル等の受配電設備として用いられる配電盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工場、ビル等の受配電設備として用いられる配電盤は、一般的には
図1に示す構成とされている。
図1において配電盤10は、金属板で形成された筐体11、及び筐体11の開口を塞ぐ開閉扉12を備えている。筐体11の内部には、監視制御機器(計器、開閉器、継電器等)、及び主回路機器(遮断器、断路器、負荷開閉器、変成器等)が収納されている。また、
図1では、監視センサ13、監視用照明14、監視カメラ15が筐体11の内壁に固定されている。筐体11の内部空間には、変圧器15や配電部16が収納されており、引き込み線17や配線18でこれらが接続されている。
【0003】
このような配電盤10は、例えば、特開2000-139006号公報(特許文献1)に示されている。この特許文献1においては、配電盤本体の下部に防塵フィルタとルーバーとを備えた下部吸気穴と、配電盤の屋根から前方へ突出している庇の前面に開口した穴をルーバーで覆った上部排気穴と、配電盤本体の天井と屋根との仕切りに防塵フィルタを設けた中間通気穴で換気用空気の通流径路を形成させ、断面がコの字形状で上下面に通風穴が開口している遮蔽板を上部排気穴の前側に突出して取付ける構成とされている。
【0004】
この構成によれば、屋外用閉鎖形配電盤内部の発熱を自然通風により除去するにあたって、雨水の侵入を確実に防止すると共に、降雪時でも冷却用空気の流れが阻害されず、且つ雨天時でも内部の点検が容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このような配電盤においては、保守・管理の省力化を目的として、配電盤の内部を監視したいという要請がある。この盤内監視のためには、監視カメラや監視センサ、監視カメラ用の照明等の取り付け器具、及びこれらを電気的に接続する配線が必要となる。
【0007】
また、これらの監視機器の設置は、配電盤の新規の製作時点での導入だけでなく、納入済みの既存の配電盤への追加導入の要請もある。監視機器の取り付けには、新規の配電盤であれば、専用の取り付け穴を新たに設ける、また、既存の配電盤であれば、既存の取り付け穴の他に、必要に応じて新たに取り付け穴を設けるといった作業が必要となる。
【0008】
更に、配電盤の内部には変圧器等の充電部があり、監視機器や配線が落下することがあると、地絡や短絡によって停電等を引き起こす可能性があるため、監視機器が落下しないように固定する必要がある。
【0009】
このように、監視機器を新たに筐体の内部に取り付ける場合は、上述した理由から監視機器の取り付けには多くの時間がかかる。特に、既存の配電盤では、監視機器を新たに筐体の内部に取り付けるために、配電盤を一時的に停電させることが必要であり、そのため短時間の作業が求められる。
【0010】
本発明の主たる目的は、上述の少なくとも1つ以上の課題を解決して、配電盤の内部を監視する監視機器を短い時間で簡単に取り付けることができる監視機器固定装置を備えた配電盤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、監視機器が取り付けられた固定台座に永久磁石を収納し、この永久磁石を配電盤の磁性金属からなる筐体に密着させて、監視機器が取り付けられた固定台座を筐体に磁気的に固定する、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、監視機器が取り付けられた固定台座に永久磁石が固定されているので、配電盤の筐体に短い時間で任意の位置に簡単に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明が適用される配電盤の構成を示す断面図である。
【
図2A】本発明の第1の実施形態になる監視機器固定装置を側面から見た側面図である。
【
図2B】
図2Aに示す監視機器固定装置を上面から見た上面図である。
【
図2C】監視機器固定装置を配電盤の筐体の壁面に取り付けた状態を示す説明図である。
【
図3A】本発明の第2の実施形態になる監視機器固定装置を側面から見た側面図である。
【
図3B】
図3Aに示す監視機器固定装置を上面から見た上面図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態になる監視機器固定装置を形成する固定台座の断面を示す断面図である。
【
図5】監視機器固定装置を形成する固定台座の変形例の断面を示す断面図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態になる監視機器固定装置を形成する固定台座と監視機器固定部の固定部分の断面を示す断面図である。
【
図7】監視機器固定装置を形成する固定台座と監視機器固定部の固定部分の変形例の断面を示す断面図である。
【
図8】本発明の第5の実施形態になる監視機器固定装置と筐体の取り付け状態を示す説明図である。
【
図9】
図8に示す監視機器固定装置の断面を示す断面図である。
【
図10】
図8に示す監視機器固定装置の変形例の断面を示す断面図である。
【
図11】本発明の第6の実施形態になる監視機器固定装置と筐体の取り付け状態を示す説明図である。
【
図12】本発明の第7の実施形態になる監視機器固定装置と筐体の取り付け状態を示す説明図である。
【
図13】本発明の第8の実施形態になる監視機器固定装置と筐体の取り付け状態を示す説明図である。
【
図14】
図13に示すワイヤの巻き取り機構を分解した分解図である。
【
図15】
図14に示す監視機器固定装置の巻き取り機構の動作状態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されることなく、本発明の技術的な概念の中で種々の変形例や応用例をもその範囲に含むものである。
【実施例1】
【0015】
図1において、配電盤10は屋外に配置される場合もあり、磁性金属で作られた筐体11、及び筐体11の開口を塞ぐ開閉扉12を備えている。筐体11の内部には、上述したように、計器、開閉器、継電器等からなる監視制御機器、及び遮断器、断路器、負荷開閉器、変成器等からなる主回路機器が収納されている。これらの全部、或いは一部は受配電機器として機能する。
【0016】
また、監視センサ13、監視用照明14、監視カメラ15が筐体11の内壁に固定されており、これらは監視機器として機能する。ただ監視機器は、これに限らず他の監視センサ等も含むものである。更に、筐体11の内部空間には変圧器15、配電部16が収納されており、引き込み線17や配線18でこれらが接続されている。
【0017】
このような配電盤10において、次に本実施形態の監視機器固定装置について説明する。
図2A、
図2Bは、本実施形態になる監視機器固定装置20の側面部、及び上面部を示し、
図2Cは、配電盤10の筐体11に監視機器固定装置20を固定した状態を示している。
【0018】
図2A、
図2Bにおいて、金属、或いは合成樹脂で作られた矩形の平板状の固定基台21の一方側には、監視機器22(ここでは、温度センサ)を取り付ける取付部23が設けられている。固定基台21と取付部23は一体的に形成されるか、或いは固定ネジ、固定リベット等によって一体化されている。取付部23は、本実施形態では凹形状に形成されており、内部に監視機器22が収納されているが、取付部23の形状はこれに限定されるものではなく、要は監視機器22が取り付けられる構成であれば良い。
【0019】
また、固定基台21の他方側には、内部に永久磁石24を収納した2個の固定台座25が、矩形の固定基台21の長手方向に設けられている。固定基台21と固定台座25は一体的に形成されるか、或いは固定ネジ、固定リベット等によって一体化されている。尚、固定台座25は円環状であり、内部に円形の永久磁石24が収納されており、永久磁石24は、固定台座25の収納部に合成接着剤によって強固に固定されている。
【0020】
したがって、固定基台20、監視機器21、取付部22、永久磁石23、及び固定台座24は一体化され、これらによって監視機器固定装置20が形成されている。そして、
図2Cに示すように、監視機器固定装置20は作業者によって、配電盤10の筐体11の壁面の任意の所定位置に、永久磁石23の磁力によって固定される。もちろん、永久磁石23は、監視機器固定装置20を固定位置に保持できる磁力を備えることはいうまでもない。
【0021】
このように、監視機器固定装置20は、配電盤10の筐体11の壁面の任意の所定位置に、永久磁石23の磁力によって固定されるので、配電盤10の筐体11に短い時間で簡単に取り付けることができる。
【実施例2】
【0022】
次に本発明の第2の実施形態について説明する。この実施形態は、永久磁石23の形状を矩形にし、その数を4個とした点で第1の実施形態と異なっている。尚、同じ参照番号は同じ構成要素を示しているので、必要がなければその説明を省略する。
【0023】
図3A、
図3Bにおいて、矩形の固定基台21の他方側には、内部に永久磁石26を収納した4個の矩形の固定台座27が、固定基台21の長手方向に並列に2列設けられている。このように、第1の実施形態に比べて永久磁石26の個数を2個から4個に増やしているので、重量が重い監視機器を十分保持することができる。
【0024】
固定台座27は、固定基台21と固定台座27は一体的に形成されるか、或いは固定ネジ、固定リベット等によって一体化されている。尚、固定台座27は矩形状であり、内部に矩形状の永久磁石26が収納されている。永久磁石26は、固定台座27の収納部に合成接着剤によって強固に固定されている。
【0025】
したがって、固定基台20、監視機器21、取付部22、永久磁石26、及び固定台座27は一体化され、これらによって監視機器固定装置20が形成されている。そして、上述した
図2Cと同様に、監視機器固定装置20は作業者によって、配電盤10の筐体11の壁面の任意の所定位置に、永久磁石26の磁力によって固定される。もちろん、永久磁石26は、監視機器固定装置20を固定位置に保持できる磁力を備えることはいうまでもない。
【0026】
このように、監視機器固定装置20は、配電盤10の筐体11の壁面の任意の所定位置に、永久磁石23の磁力によって固定されるので、配電盤10の筐体11に短い時間で簡単に取り付けることができる。また、永久磁石26の個数を4個と多くしているので、重い監視機器22を十分保持することが可能となる。
【実施例3】
【0027】
ここで、第1の実施形態、及び第2の実施形態においては、永久磁石24、26の磁力による吸着が外れて、監視機器固定装置20が落下すると、変圧器15等に接触して地絡や短絡を生じて停電等を引き起こす恐れがある。このため、吸着力を強化することが得策である。このため、本実施形態では以下の構成を提案している。
【0028】
図4において、永久磁石24、26を囲むように形成された有底筒状(キャップ状)の磁性材料からなるヨーク(継鉄)28が、永久磁石24、26に設けられている。ヨーク28は、永久磁石24、26の外周囲を囲む周面部28Sと、周面部28Sと接続された平面部28Fとから構成されている。周面部28Sと平面部28Fとで、有底筒状に形成することができる。尚、ヨーク28は、永久磁石24の場合は有底円筒状であり、永久磁石26の場合は有底矩形筒状である。
【0029】
したがって、永久磁石24、26とヨーク28と組み合わせて使用することで、磁束は大気中には漏れず、ヨーク28が接触する筐体11側に集中して、吸着力が大きく向上する。このヨーク28の材料は、不純物の少ない純鉄や炭素の低い鋼(低炭素鋼)の磁性材料を使用することができる。
【0030】
尚、
図2A、
図3Aに示す固定台座25、27を磁性材料から制作することで、固定台座25、27をヨークとして機能させることもできる。
【0031】
また、
図5は
図4の変形例を示している。この変形例においては、永久磁石24、26を板状の複数のヨーク(継鉄)29で挟み込んだものである。尚、この場合は、特に矩形状の永久磁石26の場合に適している。この形態においても、永久磁石26とヨーク29と組み合わせて使用することで、ヨーク29が接触する筐体11側に磁束が集中して、吸着力が大きく向上する。このヨーク29の材料も、不純物の少ない純鉄や炭素の低い鋼(低炭素鋼)の磁性材料を使用することができる。
【実施例4】
【0032】
次に、第1の実施形態、及び第2の実施形態における、固定台座25、27と固定基台21の結合構造について説明する。
【0033】
図6においては、固定台座25、27の固定基台21に向き合う側に、固定ネジ部(雄)30が溶接等の固定方法で取り付けられている。一方、固定基台21の固定台座25、27に向き合う側に、固定ネジ部(雌)31がタップ等によって形成されている。そして、固定台座25、27を回転させることで、固定ネジ部(雄)30を固定ネジ部(雌)31にねじ込み、固定台座25、27と固定基台21とを結合することができる。
【0034】
同様に、
図7においても、固定基台21の固定台座25、27に向き合う側に、固定ネジ部(雄)32が溶接等の固定方法で取り付けられている。一方、固定台座25、27の固定基台21に向き合う側に、固定ネジ部(雌)33がタップ等によって形成されている。そして、固定台座25、27を回転させることで、固定ネジ部(雌)33を固定ネジ部(雄)32にねじ込み、固定台座25、27と固定基台21とを結合することができる。
【0035】
このように、固定基台21と固定台座25、27とをネジ結合させて一体化するので、簡単に固定基台21と固定台座25、27を結合することができる。
【実施例5】
【0036】
第1の実施形態、及び第2の実施形態においては、監視機器固定装置20を永久磁石24、26によって、配電盤10の筐体11に磁力によって吸着させている。ただ、何らかの原因で、監視機器固定装置20が筐体11から脱落して、監視機器固定装置20が落下すると、変圧器15等に接触して地絡や短絡を生じて停電等を引き起こす恐れがある。このため、本実施形態では以下の構成を提案している。
【0037】
図8においては、監視機器固定装置20には連結部材であるワイヤ34が取り付けられており、このワイヤ34の監視機器固定装置20とは反対側の先端には、フック35が取り付けられている。そして、フック35は、筐体11に形成されたフック係合孔36に引っ掛けられている。ここで、ワイヤ34の長さは、監視機器固定装置20が筐体11から脱落したときに、監視機器固定装置20が変圧器15等に接触しない長さに決められている。尚、ワイヤ34の代わりにチェーン等を使用することができる。
【0038】
したがって、破線で示すように、監視機器固定装置20が何らかの原因で脱落して、実線で示すような位置に落下したとしても、監視機器固定装置20は、変圧器15等に接触しないので、地絡や短絡を生じて停電等を引き起こすといった現象を避けることができる。
【0039】
尚、
図9、及び
図10には、ワイヤ34を監視機器固定装置20に取り付けるための構成を示している。
図9においては、固定台座25、27の側周面にはワイヤ係合部37が形成されており、このワイヤ係合部37に形成されたワイヤ係合孔38に、ワイヤ34の先端が挿通されてワイヤ34が取り付けられる構成となっている。
【0040】
また、
図10においては、固定台座25、27の固定ねじ(雌)33の隣には、ワイヤ係合孔39が形成されており、このワイヤ係合孔39に、ワイヤ34の先端が挿通されてワイヤ34が取り付けられる構成となっている。
【0041】
このように、本実施形態では、何らかの原因で、監視機器固定装置20が筐体11から脱落して、監視機器固定装置20が落下してもワイヤ34の働きによって、監視機器固定装置20は変圧器15等に接触することがないので、地絡や短絡を生じて停電等を引き起こす恐れを避けることができる。
【実施例6】
【0042】
図8に示す実施形態では、監視機器固定装置20が落下して変圧器15等に接触しないように、ワイヤ34の長さを揃える必要があり、作業工数が増えることが予想される。このため、本実施形態では以下の構成を提案している。
【0043】
図11において、ワイヤ34の代わりに、コイル状の伸縮可能な連結部材40によって、フック係合孔36と監視機器固定装置20とが連結されている。伸縮可能なコイル状の連結部材40としては、金属製のコイルバネや、合成樹脂(例えば、ウレタン)で被覆されたコイル状のワイヤ(例えば、ステンレスワイヤ)からなるストラップワイヤコイル等を使用することができる。
【0044】
したがって、破線で示すように、フック係合孔36と監視機器固定装置20とが離れていても、伸縮可能な連結部材40が延びることで、フック係合孔36と監視機器固定装置20とを連結できる。
【0045】
また、監視機器固定装置20が何らかの原因で脱落して、実線で示すような位置に落下したとしても伸縮可能な連結部材40が縮むことで、監視機器固定装置20は、変圧器15等に接触しない位置まで戻され、地絡や短絡を生じて停電等を引き起こすといった現象を避けることができる。更に、
図5に示すようなワイヤ34の長さを揃える必要がなく、作業工数が増えることを抑制できるようになる。
【実施例7】
【0046】
図11に示す実施形態では、コイル状の伸縮可能な連結部材40によって、フック係合孔36と監視機器固定装置20とが連結されている。ただ、この方法はフック係合孔36と監視機器固定装置20との距離が大きいと、伸縮可能な連結部材40も長くなるので、監視機器固定装置20が落下した場合に変圧器15等に接触することが予想される。このため、本実施形態では以下の構成を提案している。
【0047】
図12において、フック係合孔36と監視機器固定装置20の間のワイヤ34は、巻き取り機構(いわゆる、コードリール)41に巻かれている。巻き取り機構41は、ワイヤ34を巻き取り、或いは繰り出す機能を備えている。そして、破線で示すように、フック係合孔36と監視機器固定装置20とが離れていても、巻き取り機構41に巻かれたワイヤ34が繰り出されて、フック係合孔36と監視機器固定装置20とを連結できる。
【0048】
また、監視機器固定装置20が何らかの原因で脱落して、実線で示すような位置に落下したとしても、巻き取り機構41がワイヤ34を巻き取るため、監視機器固定装置20は変圧器15等に接触しないので、地絡や短絡を生じて停電等を引き起こすといった現象を避けることができる。このように、フック係合孔36と監視機器固定装置20との距離が大きくても、監視機器固定装置20が落下した場合に巻き取り機構41の働きによって変圧器15等に接触することを避けることができる。
【実施例8】
【0049】
図12に示す実施形態では、フック係合孔36と監視機器固定装置20の間のワイヤ34の途中に、巻き取り機構41が設けれている。ただ、巻き取り機構41が露出されているので、外部機器と機械的な干渉を引き起こして機能しなくなる恐れが予想される。このため、本実施形態では以下の構成を提案している。
【0050】
図13において、例えば、監視機器固定装置20の固定台座25、27の内部に、巻き取り機構42が内蔵されている。巻き取り機構42は、固定台座25、27の内の1つに設けられるが、巻き取り機構42は、監視機器固定装置20の内部に収納されれば良いので、固定台座25、27の内部に限定されるものではない。このため、
図13では理解を助けるうえで、巻き取り機構42を敢えて長手方向に描いている。
【0051】
このように、本実施形態では、巻き取り機構42が外部に露出されないので、外部機器と機械的な干渉を引き起こして機能しなくなる恐れを避けることができる。もちろん。
図12に示す巻き取り機構41と同じ働きをすることはいうまでもない。
【0052】
次に、巻き取り機構42の具体的な構成を、
図14、
図15に基づき説明する。
図14は、巻き取り機構42を分解した状態を示している。また、
図15は、右半分に巻き取り機構42が筐体11から離脱した状態を示し、左半分に巻き取り機構42が筐体11に吸着した状態を示している。
【0053】
図14において、固定基台21の取付部23(
図2A参照)とは反対側の面には、有底円筒状の収納ケース43が固定されている。収納ケース43は固定台座25、27に対応する。収納ケース43の中心部には支持軸43Aが固定され、また、収納ケース43の側壁にはワイヤ引出孔43Bが形成されている。
【0054】
支持軸43Aには巻き取り部44が挿入されており、ここにワイヤ34が巻き取り、操し出し可能に巻回されている。巻き取り部44は、ボビン44A、ぜんまいばねからなる蓄勢ばね44B、及びボビン側ストッパ44Cから構成されている。そして、ワイヤ34を繰り出すと、ボビン44が回転されて蓄勢ばね44Bが巻かれて蓄勢される。ボビン側ストッパ44Cがボビン44Aの回転を許容すると、蓄勢ばね44Bによってボビン44Aが逆回転して、ワイヤ34を巻き取ることができる。この動作は後述する。
【0055】
内部台座45の巻き取り部44の側には、ストッパ45Aが形成され、その反対側には永久磁石24、26が固定されている。ストッパ45Aは、巻き取り部44のボビン側ストッパ44Cと摩擦係合してボビン44Aの回転を阻止し、摩擦係合を解かれてボビン44Aの回転を許容する。
【0056】
また、内部台座45の永久磁石24、26の側には、ストッパ戻しばね46が配置され、永久磁石24、26の筐体11に対する位置に対応して、ストッパ45Aを軸方向に移動させる。
【0057】
最後に、ストッパ戻しばね46、内部台座45、巻き取り部44を、収納ケース43に収納保持する蓋カバー47が収納ケース11の開口部を封止するように、収納ケース11に固定される。尚、蓋カバー47の中央には永久磁石24、26が出没する開口47Aが形成されている。
【0058】
図15に、組み上がった状態を示しており、右半分に巻き取り機構42が筐体11から離脱した状態を示し、左半分に巻き取り機構42が筐体11に吸着した状態を示している。
【0059】
先ず、監視機器固定装置20が筐体11に固定されていない状態(右半分)においては、永久磁石24、26は筐体11から離脱しており、ストッパ戻しばね46によって、内部台座45は、ボビン44Aの側に移動している。このため、ストッパ45Aは、ボビン側ストッパ44Cと摩擦係合せずに開放された状態とされている。従って、ボビン44Aも回転することができるので、ワイヤ34を繰り出すことができる。ワイヤ34が繰り出されると、蓄勢ばね44Bに戻り方向の力が蓄勢される。
【0060】
次に、監視機器固定装置20が筐体11に固定された状態(左半分)においては、永久磁石24、26は筐体11に吸着しており、ストッパ戻しばね46が圧縮されて、内部台座45は、筐体11の側に移動している。このため、ストッパ45Aは、ボビン側ストッパ44Cと摩擦係合してボビン側ストッパ44Cの回転を阻止した状態とされている。従って、ボビン44Aは回転することができない。
【0061】
そして、監視機器固定装置20が何らかの原因で脱落すると、永久磁石24、26が筐体11から離脱するので、ストッパ戻しばね46によって、内部台座45は、ボビン44Aの側に移動する。このため、ストッパ45Aは、ボビン側ストッパ44Cと摩擦係合を解かれて開放された状態となり、蓄勢ばね44Bの戻り方向の力によってボビン44Aが回転してワイヤ34を巻き取ることができる。
【0062】
ワイヤ34が巻き取られると、監視機器固定装置20は変圧器15等に接触しないので、地絡や短絡を生じて停電等を引き起こすといった現象を避けることができる。また、巻き取り機構42が外部に露出されないので、外部機器と機械的な干渉を引き起こして機能しなくなる恐れを避けることができる。
【0063】
以上通り、本発明は、監視機器が取り付けられた固定台座に永久磁石を収納し、この永久磁石を配電盤の磁性金属からなる筐体に密着させて、監視機器が取り付けられた固定台座を筐体に磁気的に固定する、ことを特徴とするものである。
【0064】
これによれば、監視機器が取り付けられた固定台座に永久磁石が固定されているので、配電盤の筐体に短い時間で任意の位置に簡単に取り付けることができる。
【0065】
尚、本発明は上記したいくつかの実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。各実施例の構成について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0066】
10…配電盤、11…筐体、12…開閉扉、13…監視センサ、14…監視用照明、15…監視カメラ、16…配電部、17…引き込み線、18…配線、20…監視機器固定装置、21…固定基台、22…監視22センサ、23…取付部、24、26…永久磁石、25、27…固定台座、28、29…ヨーク、30、32…固定ネジ(雄)、、31、33…固定ネジ(雌)、34…ワイヤ、35…フック、36…フック係合孔、40…伸縮性の連結部材、41、42…巻き取り機構。