(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】実際の状態値を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
B62D 9/00 20060101AFI20240523BHJP
B62D 7/06 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B62D9/00
B62D7/06
(21)【出願番号】P 2021522470
(86)(22)【出願日】2019-06-04
(86)【国際出願番号】 EP2019064412
(87)【国際公開番号】W WO2020083536
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】102018126705.3
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】598144281
【氏名又は名称】エーベーエム-パプスト ザンクト ゲオルゲン ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】ハート マルクス
(72)【発明者】
【氏名】イェスケ フランク
(72)【発明者】
【氏名】ホルンベルガー イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ビッツァー マンフレッド
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-081247(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102016007445(DE,A1)
【文献】国際公開第2018/008628(WO,A1)
【文献】特開2005-274484(JP,A)
【文献】特開2015-160504(JP,A)
【文献】特開2014-155342(JP,A)
【文献】特開2008-213574(JP,A)
【文献】特開2008-168651(JP,A)
【文献】特開2006-182078(JP,A)
【文献】独国実用新案第202008004190(DE,U1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0333966(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 9/00
B62D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪(R)、速度変調ギヤボックス(G)、第1の電気モータ(M1)、及び第2の電気モータ(M2)
を備えるとともに、前記第1の電気モータ(M1)
及び前記第2の電気モータ(M2)
は、車輪軸(A)を中心に前記速度変調ギヤボックス(G)によって一緒に前記車輪(R)を駆動し、前記車輪軸(A)に直角なステアリング軸(L)を中心に前記車輪(R)を操縦するように設計されている、車輪駆動モジュールにおける前記車輪(R)の状態値を決定するための方法
において、
前記車輪駆動モジュールは、さらに、
前記第1の電気モータ(M1)の状態値を検知するための少なくとも1つの第1のセンサ(S1)及び前記第2の電気モータ(M2)の状態値を検知するための少なくとも1つの第2のセンサ(S2)に加えて、
前記車輪(R)の状態値を検知するための少なくとも1つの第3のセンサ(S3)、及び/または、 第4のセンサ(S4)及び第5のセンサ(S5)を備え、前記第4のセンサ(S4)は前記第1の電気モータ(M1)の状態値を検知し、前記第5のセンサ(S5)は前記第2の電気モータ(M2)の状態値を検知
するものであり、
前記センサ(S1、S2、S3、S4、S5)により、前記車輪駆動モジュールは、第1の形態として、少なくとも1つの第1のセンサ(S1)、少なくとも1つの第2のセンサ(S2)及び少なくとも1つの第3のセンサ(S3)を備え、第2の形態として、少なくとも1つの第1のセンサ(S1)、少なくとも1つの第2のセンサ(S2)ならびに第4のセンサ(S4)及び第5のセンサ(S5)を備え、第3の形態として、少なくとも1つの第1のセンサ(S1)、少なくとも1つの第2のセンサ(S2)、少なくとも1つの第3のセンサ(S3)ならびに第4のセンサ(S4)及び第5のセンサ(S5)を備えたものとなされており、
前記第1の形態における車輪駆動モジュールの状態値を決定する方法においては、前記第1のセンサ(S1)によって決定される前記状態値及び前記第2のセンサ(S2)によって決定される前記状態値
、前記第3のセンサ(S3)によって決定される前記状態値
、ならびに、前記第1の電気モータ(M1)及び第2の電気モータ(M2)を作動するための制御信号は、それぞれ、単一の単位に変換され、
前記第2の形態における車輪駆動モジュールの状態値を決定する方法においては、前記第1のセンサ(S1)によって決定される前記状態値及び前記第2のセンサ(S2)によって決定される前記状態値、前記第4のセンサ(S4)及び第5のセンサ(S5)によって決定される前記状態値、ならびに、前記第1の電気モータ(M1)及び第2の電気モータ(M2)を作動するための制御信号は、それぞれ、単一の単位に変換され、
前記第3の形態における車輪駆動モジュールの状態値を決定する方法においては、前記第1のセンサ(S1)によって決定される前記状態値及び前記第2のセンサ(S2)によって決定される前記状態値、前記第3のセンサ(S3)によって決定される前記状態値、前記第4のセンサ(S4)及び第5のセンサ(S5)によって決定される前記状態値、ならびに、前記第1の電気モータ(M1)及び第2の電気モータ(M2)を作動するための制御信号は、それぞれ、単一の単位に変換され、
前記単一の単位に変換された前記状態値は相互に比較され、前記比較から、前記車輪(R)の実際の状態値を決定する
ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記実際の状態値は、前記車輪軸(A)を中心とする前記車輪(R)の実際の車輪回転速度と、前記ステアリング軸(L)を中心とする前記車輪(R)の実際のステアリング角度とである
、請求
項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第1のセンサ(S1)及び/または前記少なくとも1つの第2のセンサ(S2)及び/または前記少なくとも1つの第3のセンサ(S3)はそれぞれ複数で存在する
、請求
項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第1のセンサ(S1)は、前記第1の電気モータ(M1)の回転子の回転子位置及び/または前記第1の電気モータ(M1)の回転速度を検知し、
前記少なくとも1つの第2のセンサ(S2)は、前記第2の電気モータ(M2)の回転子の回転子位置及び/または前記第2の電気モータ(M2)の回転速度を検知し、
前記方法では、前記第1の電気モータ(M1)及び前記第2の電気モータ(M2)の前記回転子位置から及び/または前記第1の電気モータ(M1)及び前記第2の電気モータ(M2)の前記回転速度から、前記車輪軸(A)を中心とする前記車輪(R)の計算された車輪回転速度及び/または前記ステアリング軸(L)を中心とする前記車輪(R)の計算されたステアリング角度を決定する
、請求
項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のセンサ(S1)及び前記第2のセンサ(S2)は、前記各々の電気モータ(M1,M2)及び前記各々の関連のモータ電子機器(10,20)と一緒に、それぞれ、各々のサブアセンブリとして設計され、
前記第4のセンサ(S4)及び第5のセンサ(S5)は、前記各々のサブアセンブリの外側で、前記各々の電気モータ(M1,M2)上に配置される
、請求
項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第3のセンサ(S3)は前記ステアリング軸(L)を中心とする前記車輪(R)のステアリング角度を検知し、及び/または
第6のセンサ
が追加されて、前記第6のセンサは前記車輪軸(A)を中心とする前記車輪(R)の車輪回転速度を検知する
、請求
項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第3のセンサ(S3)は前記ステアリング軸(L)を中心とする前記車輪(R)のステアリング角度を検知し、及び/または
第6のセンサが追加されて、前記第6のセンサは前記車輪軸(A)を中心とする前記車輪(R)の車輪回転速度を検知し、
前記計算された車輪回転速度を前記第6のセンサによって検知される前記車輪回転速度と比較し、及び/または
前記計算されたステアリング角度を前記第3のセンサ(S3)によって検知される前記ステアリング角度と比較する、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記計算された車輪回転速度及び前記第6のセンサによって検知される前記車輪回転速度が相互に一致する場合、または前記計算された車輪回転速度及び前記検知された車輪回転速度が既定の車輪回転速度の許容差範囲内で相互に偏差がある場合、前記計算及び検知された車輪回転速度の平均値が、前記車輪(R)の実際の状態値として生成される
、請求
項7に記載の方法。
【請求項9】
前記計算されたステアリング角度及び前記第3のセンサ(S3)によって検知された前記ステアリング角度が一致する場合、または前記計算されたステアリング角度及び前記検知されたステアリング角度が既定のステアリング角度の許容差範囲内で偏差がある場合、前記計算及び検知されたステアリング角度の平均値が、前記車輪(R)の実際の状態値として決定される、請求項
7に記載の方法。
【請求項10】
前記第3のセンサ(S3)及び/または前記第6のセンサは少なくとも二重で存在し、
前記第3のセンサ(S3)によって検知される前記ステアリング角度及び/または前記第6のセンサによって検知される前記車輪回転速度は、それぞれ、相互に比較され、
前記第3のセンサ(S3)によって検知される前記ステアリング角度及び/または前記第6のセンサによって検知される前記車輪回転速度が各々一致する場合、あるいは、既定のステアリング角度の許容差範囲及び/または車輪回転速度の許容差範囲の範囲内に相互に偏差がある場合、前記検知されたステアリング角度及び/または車輪回転速度の平均値が、前記車輪(R)の実際の状態値として生成される
、請求項
6から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記車輪(R)の前記実際の状態値は、前記車輪駆動モジュールを制御するためのアプリケーションに転送される、請求項
1から10までのいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪駆動モジュールの実際の状態値または検証された状態値を決定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
先行技術では、センサデータまたは状態値を決定するための複数の方法は既に既知である。係る状態値の転送またはさらなる処理のために、決定された状態値が実際の状態値に一致することを確実にする場合、事前のテスト及び適切な設計により、実際の状態値を確実に決定及び移送する認証されたセンサまたは状態値のソースを使用することは、先行技術の既知の用途では、一般的に行われていることである。しかしながら、係るセンサまたは状態値のソースの設計、生産、及び後続の認証は複雑であり、コストがかかる。また、係る認証された構成要素及び具体的にはいくつかの係る構成要素が使用されるシステムは、結果として、その生産に関してコストがかかる。
【0003】
これは、特に車輪駆動モジュールに当てはまり、車輪駆動モジュールの車輪の駆動運動及びステアリング運動を計算するためには、その現在のステアリング角度及びその現在の回転速度を決定することとなる。
【発明の概要】
【0004】
したがって、本発明の根本的な目的は、前述の不利点を克服し、車輪駆動モジュールの車輪の実際の状態値を決定するための方法を提供することであり、当該方法では、個々の情報源はいかなる特別な検証も行う必要がなく、決定された状態値は、それでも実際の状態値に対応する。
【0005】
この目的は請求項1に従った特徴の組み合わせによって達成される。
【0006】
本発明に従って、車輪駆動モジュールの車輪の状態値を決定するための方法を提案する。車輪に加えて、車輪駆動モジュールは、速度変調ギヤボックス、第1の電気モータ、及び第2の電気モータ、ならびに、第1の電気モータの状態値を検知するための少なくとも1つの第1のセンサ、及び第2の電気モータの状態値を検知するための少なくとも1つの第2のセンサを備える。加えて、車輪駆動モジュールは、車輪の状態値を検知するための少なくとも1つの第3のセンサ及び/または第4のセンサ及び第5のセンサを備え、第4のセンサは第1の電気モータの状態値を検知し、第5のセンサは第2の電気モータの状態値を検知する。車輪駆動モジュールでは、第1の電気モータ及び第2の電気モータは、車輪軸を中心に速度変調ギヤボックスによって一緒に車輪を駆動し、車輪軸に直角なステアリング軸を中心に車輪を操縦するように設計される。本方法では、第1のセンサによって決定される状態値及び第2のセンサによって決定される状態値、ならびに/または第4のセンサ及び第5のセンサによって決定される状態値ならびに/または第3のセンサによって決定される状態値信号ならびに/または第1の電気モータ及び/もしくは第2の電気モータを作動するための制御信号は、それぞれ、単一の、したがって比較可能な単位に変換される。続いて、一様な単位に変換された状態値を相互に比較し、その比較から、車輪の実際の状態値を決定する。決定された状態値の妥当性は相互に対する一致または比較によって検証され、したがって、転送された状態値が車輪の実際の状態値であることを確実にする。したがって、比較に使用される情報または状態値は重複的に存在し、複数の情報源から生じ得る。また、例えば、第1の電気モータ(複数可)及び/または第2の電気モータ(複数可)を制御するためのセンサまたはモータ電子機器等の情報源は、この目的のために、重複的に存在し得る。
【0007】
ここでの基本的な考えは、「車輪駆動モジュール」システムの全ての個々の構成要素を認証し及び検証する必要がなく、システムの一部(例えば、追加構成要素によって決定される状態値の妥当性を検証する評価ユニット)だけを認証し及び検証する必要があることである。
【0008】
この目的のために、例えば、第1のセンサ及び第4のセンサは、第1の電気モータの回転速度または第1の電気モータの回転速度を導出できる別の状態値を決定でき、これらの2つの値から、第1の電気モータの実際の回転速度を、本方法によって決定できる。類似して、第2のセンサ及び第5のセンサによって決定された状態値から、第2の電気モータの実際の状態値または実際の回転速度を決定する。第1の電気モータ及び第2の電気モータの実際の回転速度から、速度変調ギヤボックスのギヤ比による変換によって、車輪の実際のステアリング角度及び実際の車輪回転速度を次に決定できる。
【0009】
代替として、第4のセンサ及び第5のセンサを使用しない解決策では、車輪回転速度及び/または車輪のステアリング角度は第1のセンサ及び第2のセンサの状態値によって決定でき、本方法では、第3のセンサ及び/または第6のセンサによって決定される状態値との比較から、再度、車輪の有効な状態値、ひいては、実際の状態値を決定する。
【0010】
本方法の実施形態の変形では、実際の状態値または検証された状態値は、車輪軸を中心とする車輪の実際の車輪回転速度と、ステアリング軸を中心とする車輪の実際のステアリング角度とであることが提供される。
【0011】
本方法の利点をもたらす変形例は、処理された情報アイテムまたは相互に比較されている情報アイテムを重複的に存在するセンサによって決定していることを提供し、具体的には、少なくとも1つの第1のセンサ及び/または少なくとも1つの第2のセンサ及び/または少なくとも1つの第3のセンサはそれぞれ複合的に存在し、重複的である。
【0012】
同様の利点をもたらすさらなる展開では、少なくとも1つの第1のセンサは、第1の電気モータの回転子の回転子位置及び/または第1の電気モータの回転速度を検知することを提供することで利点をもたらす。加えて、少なくとも1つの第2のセンサは、第2の電気モータの回転子の回転子位置及び/または第2の電気モータの回転速度を検知する。本方法では、車輪軸を中心とする車輪の計算された車輪回転速度及び/またはステアリング軸を中心とする車輪の計算されたステアリング角度は、その後、第1の電気モータ及び第2の電気モータの回転子位置から及び/または第1の電気モータ及び第2の電気モータの回転速度から決定される。
【0013】
本方法では、実施形態の変形において、第1のセンサ及び第2のセンサは、各々の電気モータ及び各々の関連のモータ電子機器と一緒に、それぞれ、各々のサブアセンブリとして設計されることでさらに利点をもたらす。加えて、第4のセンサ及び第5のセンサは、各々のサブアセンブリの外側で、各々の電気モータ上に提供または配置されることがここに提供される。
【0014】
少なくとも1つの第3のセンサは、ステアリング軸を中心とする車輪のステアリング角度を検知するのが好ましい。代替としてまたは加えて、追加の第6のセンサは車輪軸を中心とする車輪の車輪回転速度を検知できる。
【0015】
本方法の変形では、計算された車輪回転速度を第6のセンサによって検知される車輪回転速度と比較する。代替としてまたは加えて、計算されたステアリング角度を第3のセンサによって検知されるステアリング角度と比較する。
【0016】
計算された車輪回転速度及び第6のセンサによって検知される車輪回転速度が一致する場合、または計算された車輪回転速度及び検知された車輪回転速度が既定の車輪回転速度の許容差範囲内で偏差がある場合、本方法では、計算及び検知された車輪回転速度の平均値が車輪の実際の状態値として生成されることが好ましい。
【0017】
類似して、変形では、計算されたステアリング角度及び第3のセンサによって検知されたステアリング角度が一致する場合、または計算されたステアリング角度及び検知されたステアリング角度が既定のステアリング角度の許容差範囲内で偏差がある場合、計算及び検知されたステアリング角度の平均値が、車輪の実際の状態値として生成される。
【0018】
計算及び検知された車輪回転速度及び/または計算及び検知されたステアリング角度が、相互にかなり偏差があり、ひいては、各々の許容差範囲外である場合、逸脱メッセージが本方法によって転送されることがもたらさせ得る。
【0019】
本方法の追加の実施形態の変形では、第3のセンサ及び/または第6のセンサは少なくとも2つで存在することと、第3のセンサによって検知されるステアリング角度及び/または第6のセンサによって検知される車輪回転速度は、いずれの場合も、相互に比較されることとを提供することで利点をもたらす。続いて、第3のセンサによって検知されるステアリング角度及び/もしくは第6のセンサによって検知される車輪回転速度が各々一致する場合、あるいは、既定のステアリング角度の許容差範囲及び/もしくは車輪回転速度の許容差範囲の範囲内に相互に偏差がある場合、検知されたステアリング角度及び/または車輪回転速度の平均値が車輪の実際の状態値として生成される。この平均値は、その後、各々のより高レベルの制御部に転送されるのが好ましい。
【0020】
本方法では、2つより多い状態値が、また、相互に比較できる。例えば、計算された状態値を2つの測定された状態値と比較できる。
【0021】
計算された状態値は、センサから導出される必要はなく、代わりに、例えば、電気モータに伝達される標的回転速度から決定できる。
【0022】
本方法による実際の状態値もしくは検証された状態値の決定、または複数の実際の状態値もしくは複数の検証された状態値の決定の後に、当該状態値(複数可)は、利点をもたらすさらなる展開では、車輪駆動モジュールを制御するためにアプリケーションまたは制御電子機器に転送される。
【0023】
車輪駆動モジュールを迅速に及び高いコスト効率で点検修理し及び個別化することを可能にするために、車輪駆動モジュールが、モジュールユニットとして交換できる追加サブアセンブリに細分化される場合、さらに利点をもたらす。例えば、関連の第1または第2のモータ制御部の各々と一緒に、第1及び第2の電気モータは、第1または第2のモータサブアセンブリの各々を形成できる。
【0024】
加えて、電気モータの制御部のための制御論理によって、本方法を実施でき、それによって、制御論理によって、例えば、車輪軸を中心とする車輪の標的速度または標的回転速度、及びステアリング軸を中心とする車輪の標的ステアリング角度または車輪に関連する他の状態値だけが、より高レベルのアプリケーションによって受信され、本方法によって、2つの電気モータを作動させるための各々のモータの標的値を決定する。
【0025】
本発明の他の利点をもたらすさらなる展開は、従属請求項に特徴付けられ、本発明の好ましい実施形態の説明と一緒に図によって下記にさらに詳細に示される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】速度変調ギヤボックスを用いて第1の電気モータ及び第2の電気モータによって駆動する車輪を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図は図表例である。図の同一の符号は、同一の機能及び/または構造的特徴を指す。
【0028】
図1では、車輪R、第1の電気モータM1及び第2の電気モータM2、ならびに2つの電気モータM1,M2によって車輪Rを駆動及び操縦するための速度変調ギヤボックスGを表す。ここでは、
図1に、第1の電気モータM1及び第2の電気モータM2による、車輪軸A及びステアリング軸Lを中心とする車輪Rの駆動部の、1つの可能な設計選択肢のみを示す。例えば、車輪Rは駆動ギヤリングG3,G3’の下に配置できる、または電気モータM1,M2は駆動ギヤリングG3,G3’上で異なるギヤ比及び異なる配向を有し得る。示される例では、速度変調ギヤボックスGは、ピニオンG1,G1’、中間ギヤG2,G2’、駆動ギヤリングG3,G3’、ならびに出力ギヤホイールG4及び出力軸G5を備える。他の実施形態の変形では、速度変調ギヤボックスGは、また、追加構成要素を備え得る。
【0029】
第1の電気モータM1及び第2の電気モータM2は、第1の駆動ギヤリングG3及び第2の駆動ギヤリングG3’を駆動する。示される実施形態では、第1の電気モータM1は第2の電気モータM2の反対側に配置され、電気モータM1,M2は、それぞれ、別個のモータ伝達部を備え得る。電気モータM1,M2は、それぞれ、各々のピニオンG1,G1’にモータシャフトを介して接続される。
【0030】
第1のピニオンG1は、第1の駆動ギヤリングG3の駆動歯のその歯によって係合する第1の中間ギヤG2の歯においてG1の歯によって係合し、これにより、第1のピニオンG1の回転により、第1の電気モータM1によって駆動する第1の駆動ギヤリングG3は回転軸またはステアリング軸Lを中心に回転できる。
【0031】
類似して、上記の同一のことが第2の駆動ギヤリングG3’に適用される。第2のピニオンG1’は、第2の駆動ギヤリングG3’の駆動歯のその歯によって係合する第2の中間ギヤG2’の歯においてG1’の歯によって係合し、これにより、第2のピニオンG1’の回転により、第2の電気モータM2によって駆動する第2の駆動ギヤリングG3’は回転軸またはステアリング軸Lを中心に回転できる。
【0032】
第1の駆動ギヤリングG3と第2の駆動ギヤリングG3’との間に、出力ギヤホイールG4が配置され、出力ギヤホイールG4は、出力ギヤホイールG4に対面する第1の駆動ギヤリングG3の歯と、また出力ギヤホイールG4に対面する第2の駆動ギヤリングG3’の歯との両方で、G4の歯によって係合する。出力ギヤホイールG4の回転(第3の回転)は、その結果、第1の駆動ギヤリングG3の回転(第1の回転)によって、また第2の駆動ギヤリングG3’の回転(第2の回転)によって生じる。
【0033】
出力ギヤホイールG4から、出力ギヤホイールG4に回転可能に固定するように接続する出力軸G5は、駆動ギヤリングG3,G3’の回転軸またはステアリング軸Lの方向に車輪軸Aに沿って延在する。車輪軸Aに沿って出力ギヤホイールG4から離れた側で、車輪Rは回転可能に固定するように出力軸G5に接続され、それによって、出力ギヤホイールG4の回転(第3の回転)が車輪Rに出力軸G5を介して伝達される。区分に分けて表されるように、車輪Rは第1の駆動ギヤリングG3と第2の駆動ギヤリングG3’との間に収容され、駆動ギヤリングG3,G3’は、それらの回転軸Lに沿って分離され、それらの間に車輪収容スペースを画定する。駆動ギヤリングG3,G3’の両方は、駆動ギヤリングG3,G3’の各々を通って回転軸Lに沿って延在するリング開口部を備える。車輪Rは各々のリング開口部を通って底部に対面する側に少なくとも延在し、それによって、車輪Rは、実質的に、5つの区分を含む。第1の区分によって、車輪Rが駆動ギヤリングの間に配置され、2つの第2の区分によって、車輪Rが駆動ギヤリングG3,G3’のリング開口部内に配置され、2つの第3の区分によって、車輪Rが駆動ギヤリングG3,G3’の外側の回転軸Lに沿って位置する。車輪収容スペースの車輪Rの配置は3つの有利な効果をもたらす。車輪Rがステアリング運動において駆動ギヤリングG3,G3’の周りを回転する必要はないため、車輪駆動モジュールの設置スペースが明らかに減少し、ステアリング運動または回転軸Lを中心とする回転が中間ギヤG2,G2’によって制限されることなく、車輪Rが駆動ギヤリングG3,G3’で360°回転できるため、可能なステアリング角度が増加する。加えて、駆動ギヤリングG3,G3’が車輪Rの周りにケージを形成するため、車輪Rは車輪駆動モジュール1によってまたは第1の駆動ギヤリングG3及び第2の駆動ギヤリングG3’によって保護される。
【0034】
図2では、車輪駆動モジュールを図式的に表す。ステアリング軸L及び車輪軸Aを中心として車輪Rを駆動させることによって、駆動機能X2及びステアリング機能X1が車輪R上にまたは車輪Rによって提供される。速度変調ギヤボックスGによってステアリング機能X1及び駆動機能X2を提供するために、当該速度変調ギヤボックスは、第1の動作可能接続部X31及び第2の動作可能接続部X32を用いて、第1の電気モータM1及び第2の電気モータM2によって駆動される。
【0035】
示される実施形態では、第1のモータサブアセンブリ101または第2のモータサブアセンブリ102は各々、各々の電気モータM1,M2を直接作動させるための第1のモータ電子機器10または第2のモータ電子機器20、ならびにモータ値(例えば、電気モータM1,M2の各々の回転子位置等)を決定する第1のセンサS1または第2のセンサS2を備える。示される実施形態では、第1のセンサS1または第2のセンサS2はモータ電子機器10,20の各々に直接結合され、センサS1,S2によって決定されるモータ値は各々の電気モータM1,M2を制御するために使用され、また、必要に応じて、モータ値は他のサブアセンブリに伝達できる。
【0036】
第1のモータサブアセンブリ101及び第2のモータサブアセンブリ102は、実線によって表されるバスラインを介して、中央電子機器30を備える中央サブアセンブリ103に接続される。
【0037】
図2に示される実施形態では、電気モータM1,M2を制御するために、電気モータの回転速度を検知するための第4のセンサS4または第5のセンサS5が、加えて、電気モータM1,M2上に提供される。第4のセンサS4は第1の電気モータM1に関連付けられるが第1のモータサブアセンブリ101の一部ではなく、第5のセンサS5は第2の電気モータM2に関連付けられるが第2のモータサブアセンブリ102の一部ではない。示される実施形態では、第4のセンサS4及び第5のセンサS5は、それぞれ、中央電子機器30に接続される。
【0038】
第1の電気モータM1または第2の電気モータM2に欠陥がある場合に安全な状態に達することが可能であるように、加えて、安全ブレーキBが提供され、これは第3のセンサS3と組み合わせてブレーキサブアセンブリ104を形成できる。安全ブレーキBによって、少なくとも、駆動機能X2をブロックでき、または車輪軸Aを中心とする車輪Rの回転を制動でき、これにより、車輪駆動モジュールまたは車輪Rは停止状態になり、安全状態を確立できる。ここでは、第3のセンサS3は、車輪Rの状態値(例えば、ステアリング軸Lを中心とする車輪Rのステアリング角度等)を直接検知し、回転速度または車輪軸Aを中心とする車輪Rの回転速度は、図示しない第6のセンサによって検知できる。中央電子機器30へのブレーキサブアセンブリ104の接続によって、検知値は利用可能になり、またはこのサブアセンブリまたは追加サブアセンブリに転送される。
【0039】
本方法を実施するために、評価ユニット31または安全チップが、表される中央電子機器30に統合され、そこでは、車輪Rの実際の状態値または検証された状態値を決定し、その状態値を適用電子機器40に転送するために、ある特定の状態値を比較する。
【0040】
示される実施形態の例では、電気モータM1,M2の各々の回転速度は、第1のセンサS1及び第2のセンサS2によって決定される第1の電気モータM1及び第2の電気モータM2の状態値から決定される。続いて、第1のセンサS1及び第2のセンサS2によって決定された電気モータM1,M2の回転速度は、第4のセンサS4及び第5のセンサS5によって直接測定される回転速度と比較できる。比較後または別の方法の後すぐに、発生する車輪R及びステアリング運動の回転速度は、第1の電気モータM1及び第2の電気モータM2の回転速度から及び速度変調ギヤボックスによって提供されるギヤ比によって決定でき、連続決定の場合、車輪Rのステアリング角度もまた、ステアリング運動から決定できる。加えて、続いて、車輪Rの決定された回転速度を、評価ユニット31によって、第3のセンサS3により測定された車輪Rの回転速度と比較できる。偏差が発生しない場合または偏差が一定の許容差範囲内で発生する場合、平均値が、測定された回転速度及び決定された回転速度から生成され、回転速度の平均値は、検証された状態値もしくは実際の状態値として、または実際の回転速度として、適用電子機器40に移送される。
【0041】
車輪Rの回転速度の妥当性が評価ユニット31による転送前に検証されるので、状態値自体を検知するために、とりわけ信頼性の高い構成要素を使用する必要はない。