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特許7492960航空機双流タービンエンジン筐体要素とナセル要素との間に挿入されることが想定される改良型空気密封装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】航空機双流タービンエンジン筐体要素とナセル要素との間に挿入されることが想定される改良型空気密封装置
(51)【国際特許分類】
   F02C 7/28 20060101AFI20240523BHJP
   B64D 29/06 20060101ALI20240523BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
F02C7/28
B64D29/06
F16J15/10 P
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021529817
(86)(22)【出願日】2019-11-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(86)【国際出願番号】 FR2019052744
(87)【国際公開番号】W WO2020115383
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】1872399
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジャコン ブリュノ アレクサンドル ディディエ
(72)【発明者】
【氏名】アクバル バグダッド
(72)【発明者】
【氏名】アリオート ファオウジ
(72)【発明者】
【氏名】シモノッティ ハーブ
【審査官】小林 勝広
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0024994(US,A1)
【文献】米国特許第02451450(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0341875(US,A1)
【文献】特開昭57-154559(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 29/06
F01D 25/25
F02C 7/28
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機双流タービンエンジン筐体要素(16)とナセル要素(30)との間に挿入される構造である空気密封装置(40)であって、前記筐体要素および前記ナセル要素と接触する構造である外面(60)と、中空部(64)の境界を形成する内面(62)とを有する密封部分(44)が端部に設けられる固定タブ(42)を包含する前記空気密封装置において、
前記内面(62)が、前記中空部の内側で互いに向かって延出する二つの反対突部(68)を画定し、
前記空気密封装置の断面において、前記固定タブ(42)が延在する方向(72)と40から60°の間に包含される角度(A1)を形成するように配置される突部高さ方向(70)を前記各突部(68)が画定することを特徴とする、
空気密封装置。
【請求項2】
前記密封部分により境界が形成される前記中空部(64)の中心(66)に向かって各突部(68)が延出することを特徴とする、請求項1に記載の空気密封装置。
【請求項3】
前記二つの突部(68)の前記突部高さ方向(70)が一致しており、前記密封部分により境界が形成される前記中空部(64)の中心(66)を通ることを特徴とする、請求項に記載の空気密封装置。
【請求項4】
内方に前記中空部(64)の境界を形成する閉ループを前記密封部分(44)が形成し、前記閉ループが非圧迫状態において実質的に円形の形状であることを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の空気密封装置。
【請求項5】
前記中空部(64)の一以上の加圧オリフィス(80)が前記密封部分(44)の前記閉ループの一部に配置されることを特徴とする、請求項に記載の空気密封装置。
【請求項6】
前記密封部分(44)が、以下の特徴すなわち、
エラストマ材料、または、シリコーンエラストマ材料から製作されることと、
ポリエステル製の少なくとも一つの繊維強化層(78)を包含することと、
少なくとも一つの外側減摩層(78’)を含むことと、
のうち少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項1~のいずれか1項に記載の空気密封装置。
【請求項7】
航空機双流タービンエンジン(1)およびナセル(11)ととともに、前記タービンエンジンの筐体要素と前記ナセルのナセル要素との間に挿入される請求項1~のいずれか1項に記載の少なくとも一つの空気密封装置(40)を包含する、航空機のための推進ユニット(100)。
【請求項8】
前記筐体要素が前記タービンエンジンの中間筐体の外側シュラウド(16)であることと、前記ナセル要素が、推進ユニットの二次流路(26)の径方向外向きの境界を形成するカウリング(30)であることとを特徴とする、請求項に記載の推進ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機双流タービンエンジン筐体要素と、筐体要素に隣接するナセル要素との間に挿入されることが想定される空気密封装置に関する。
【0002】
本発明は、何らかのタイプの双流タービンエンジン、特にターボジェットエンジンに適用される。
【背景技術】
【0003】
航空機双流タービンエンジンでは、特にタービンエンジンのファン区画の方向の二次流からの漏出を特に制限するため、概してタービンエンジンの筐体とナセルとの間に一以上の密封エリアが設けられる。
【0004】
これらの潜在的な空気漏出を制限するには従来の解決法が検討されうるが、これらは概して完全に充分なものではない。実際に、これらのエリアに設置されることが想定される密封装置は多くの制約を満たさなければならず、その設計を特に複雑にする。主な制約の一つは、密封装置の変形レベルに関係なく、動作時に空気圧に耐えるのに充分な高い剛性を有さなければならないことである。この目的により非常に高い剛性を付与することになるが、それでもナセル要素が筐体要素に取り付けられるのに充分なほど剛性は低くなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの相反する制約は設計を困難にする。結果的に、所望の機能を保証する設計を持つ空気密封装置を実現する必要性が残る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この必要性を満たすため、本発明は、航空機双流タービンエンジン筐体要素とナセル要素との間に挿入されることが想定される空気密封装置に関しており、密封装置は請求項1の特徴を包含する。
【0007】
突部は、装置の密封部分の沈下を制限できるので有利である。ゆえに、特にこれらの突部により付与される支承により最大圧縮の際に剛性の上昇を保証することによって、上記の必要性に充分に応える。
【0008】
本発明は好ましくは、個別的に、または組み合わせで採用される以下の任意の技術的特徴のうち少なくとも一つを提供する。
【0009】
各突部は、前記密封部分により境界が形成される前記中空部の中心の方向に延出する。
【0010】
密封装置の断面において、前記各突部は、前記固定タブが延在する方向と40から60°の間に包含される角度を形成するように配置される突部高さ方向を画定する。好ましくは、この角度は50°程度である。角度A1のこれらの値は、装置の密封部分の非圧迫状態で観察されるものに対応する。
【0011】
前記二つの突部の前記突部高さ方向は一致し、好ましくは前記密封部分により境界が形成される前記中空部の中心を通る。
【0012】
前記密封部分は、内方に前記中空部の境界を形成する閉ループを形成し、前記閉ループは好ましくは非圧迫状態で実質的に円形の形状である。しかしながら、本発明の範囲を逸脱することなく楕円または長円の形状など他の形状が採用されてもよい。
【0013】
前記中空部の一以上の加圧オリフィスが前記密封部分と交差する。これは、この中空部の境界を形成する密封部分と筐体およびナセル要素との間の接触を補強できる。
【0014】
前記密封部分は、以下の特徴すなわち、
エラストマ材料、好ましくはシリコーンエラストマ材料で製作されることと、
好ましくはポリエステル製の少なくとも一つの繊維強化層を包含することと、
好ましくは予備硬化ポリエステルファブリック製の少なくとも一つの外側減摩層を含むことと、
のうち少なくとも一つと、好ましくはこれらの前記特徴の各々の組み合わせとを有する。
【0015】
本発明の目的は、航空機双流タービンエンジンおよびナセルとともに、前記タービンエンジンの筐体要素とナセル要素との間に挿入される少なくとも一つのこのような空気密封装置を包含する航空機のための推進ユニットでもある。
【0016】
好ましくは、前記筐体要素がタービンエンジンの中間筐体の外側シュラウドであり、前記ナセル要素が推進ユニットの二次流路の径方向外向きの境界を形成するカウリングである。
【0017】
本発明の他の利点および特徴は、下の非限定的で詳細な説明において明白になるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本説明は、添付の図を参照して行われる。
図1】本発明の好適な実施形態による推進ユニットの部分的かつ概略的な斜視図である。
図2】特に筐体要素とナセル要素との間における本発明の好適な実施形態による密封装置の設置を示す、前出の図で示された推進ユニットの一部分の断面図を示す。
図3】前出の図に示された部分の斜視図を示す。
図4図2および3に示されている密封装置のいずれかの断面における図を示し、この装置は非圧迫状態である。
図5】代替実施形態による図4の図と類似の図を示す。
図6】別の代替実施形態による図4および5の図と類似の図を示す。
図7図2の図と類似の概略図であり、密封装置は筐体とナセルとの間に最小の圧縮を有する。
図8図2の図と類似の概略図であり、密封装置は筐体とナセルとの間に最大の圧縮を有する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
最初に図1を参照すると、本発明の好適な実施形態による推進ユニット100が部分的に示されている。このユニット100は、航空機のための双流タービンエンジン1と、航空機の翼要素(不図示)にこのタービンエンジンを装着するためのパイロン9とともに、ごく部分的にのみ示されているナセル11を含む。
【0020】
推進ユニット100は、タービンエンジン1の長手方向とパイロン9の長手方向にも対応する長手方向Xを有する。ユニット100は、横断方向Yとともに、高さ方向に対応する垂直方向Zも有する。三つの方向X,Y,Zは互いに直交し、直接三面体を形成する。
【0021】
好ましくは、パイロン9はタービンエンジン1を航空機の翼の下に懸架することを可能にする。このパイロンは、タービンエンジンから生じる力を受け取ることが想定される構造部分を含み、この部分は通常、一次構造または剛性構造と呼ばれる。概してボックスの形状を取り、その一つの上流端部7のみが図1に示されている。パイロンは、空力フェアリングの形状の二次構造(不図示)も備える。
【0022】
記載および図示した好適な実施形態において、タービンエンジン1は双流および二重ボデーのターボジェットエンジンである。ターボジェットエンジン1は、方向Xに平行な長手中心軸線2を有し、様々なコンポーネントがその周りに延在する。このタービンエンジンでの主なガス流方向5の上流から下流に、ファン3と、コンプレッサと燃焼室とタービンとにより従来通りに形成されるガス発生器とを包含する。ガス発生器のこれらの要素は、「コア」筐体とも呼ばれて内部流区画8aの径方向内向きの境界を形成する中心筐体6により囲繞される。この区画8aはまた、図1には一つのみ示されている上流リング10を含む一以上のカウリングにより径方向外向きの境界が形成される。上流リング10は、ターボジェットエンジンの中間筐体14のハブ12の下流連続部に配置される。中間筐体14は、ファン筐体18の下流連続部に配設される外側シュラウド16も含む。ファン羽根の下流に配置されてハブ12を外側シュラウド16に接続する出口案内羽根20も含む。
【0023】
ファン筐体18と外側シュラウド16はともに、ファン区画8bの径方向内向きの境界を形成する。この区画8bはまた、ナセル11の一部を形成する一以上のカウリング(不図示)により径方向外向きの境界が形成される。内部流区画8aと全く同様に、この区画8bは、先行技術で広く知られているような機器および設備を収容する。
【0024】
二つの区画8a,8bを接続するため一以上のアーム22が設けられる。これらは例えば、ターボジェットエンジンが装備される2本のアーム22であって、12時と6時と呼ばれる時計位置にそれぞれ配置される。これらのアーム22は中空であって、例えば電気ケーブルおよび/または流体導管を循環させることが可能である。より具体的に記すと、これらのアームは外側シュラウド16の下流部分を上流リング10に接続する。この目的のため、アームはターボジェットエンジンの二次流路26を通過し、この流路は、シュラウド16により、そしてシュラウド16の下流連続部に配設される一以上のナセルカウリング30により外向きの境界が形成される。この流路26は、矢印27により概略的に示されている二次流の循環を可能にする。
【0025】
二次流路26はまた、内部流区画8aの上流リング10により内向きの境界が部分的に形成される。これは、ガス発生器により従来通りに送出される一次流28が通過する一次流路に追加されるものである。
【0026】
本発明は、中間筐体のシュラウド16の下流端部とナセルカウリング30の上流端部との間に空気密封接合部を設ける手法に存する。ナセル区画8bの方向での二次流27の再循環は、燃料消費率への影響を伴う推進ユニットと関連する性能の損失に相当するので、この密封接合部はこのような再循環を実際に制限するかむしろ阻止することができる。
【0027】
この密封を保証するため、中間筐体のシュラウド16とナセルカウリング30との間に挿入される一以上の空気密封装置が設けられる。好ましくは、これらは、シュラウド16の周方向に互いに続く同一または類似設計の幾つかの密封装置である。各装置は1.5または2mまでの周長を有しうる。しかしながら、本発明の範囲を逸脱することなく、非分割設計も可能である。
【0028】
推進ユニットへのこれら密封装置の一つの設置について、図2および3を参照してこれから記載する。
【0029】
中間筐体14のシュラウド16は、径方向カラー32と、下流に進むにつれて細くなる好ましくは円錐台形状の環状支持フランジ34とを下流での終端とする。これら二つの要素32,34は、空気密封装置40の一つが収容される環状空間36を形成する。密封装置は互いに一体的な二つの個別部分を有する。それは第一に、支持フランジ34に面支承される固定タブ42である。固定タブ42は、RTV(「室温加硫」)シリコーン接着剤でこのフランジ34に接着され、好ましくはこのフランジ34とこれを被覆する固定プレート46との間にクランプされる。好ましくは、タブ42はこのように接着され、一方でプレート46は当接部として機能するとともにこのタブ42を保護する。
【0030】
プレート46は、リベット48または類似要素により支持フランジ34に固定され、固定タブ42の径方向外面に押圧される。タブ42は、その上流端部に配設される密封部分44と全く同様に、装置40全体に沿って周方向に延在する。後で詳しく記載されるこの密封部分44は、フランジ34と、そしてナセルカウリング30の密封ビード50とに外面が接触するように環状空間36に配設される。
【0031】
密封ビード50は、ナセルカウル30の上流端部に配設される接合リング52に一体化されている。このリング52は、Jの形状を取る断面の半分の部分を有し、その径方向内端部は装置40の密封部分44を押圧する。ゆえにこのJの径方向内端部は密封ビード50に対応する。そしてJの径方向外端部は、ナセルカウリング30の別の部分への固定のための貝殻状フランジを形成する。
【0032】
リング52は密封リップ56も含み、その自由上流端部は、支持フランジ34の自由下流端部と反対に配設される。これら二つの端部の間の協働は、二次流路26から、ビード50を収容する環状空間36への空気の進入を減少させることが可能である。
【0033】
図2に示されているように、外側リングまたはリングセクタ58は、Jの径方向外端部と中間筐体14のシュラウド16のフランジ32とを軸方向にクランプしうる。
【0034】
図4は、いずれかの断面における空気密封装置40を示す。好ましくは、この断面は装置40の周方向において装置全体に沿って同一または類似している。
【0035】
上述のように、密封部分44は固定タブ42の端部に一体的に配置され、これら二つの要素42,44は同じ部品内に設けられる。図4の断面に示されているような非圧迫状態で、密封部分44は、実質的に円形である閉ループの全体形状を有する。実質的に円形の外面60とともに、中心66を有する中空部64の境界を形成する内面62を有する。非圧迫状態で、外面60は6と10mmの間に包含される、例えば8mm程度の直径を有しうる。
【0036】
内面62は、好ましくは中空部64の内向きに突出する耳部の形状の二つの反対突部68を画定するので、完全には円形でない。突部68を内含するエリアの外側において、内面62は、4と8mmの間に包含される、例えば6mm程度の直径を有しうる。ゆえに、密封部分44は、1と3mm程度の高さH1まで突出する突部68による可変厚さを有する。
【0037】
二つの突部68は好ましくは径方向に反対であり、ここでは一致しており中空部64の中心を通る突部の高さ方向70に互いに向かって延出する。
【0038】
動作時に、高い応力が密封部分44に印可されるケースでは、この部分44の沈下を制限するため二つの突部68は互いとの接触状態にあることが想定される。
【0039】
突部高さ方向70と、固定タブ42が延在する方向72との間には、好適な角度A1が確保される。ナセルと中間筐体のシュラウドとの間での密封部分44の結果的な変形に続いて二つの突部68が互いに接触することを保証するように、この角度が判断される。この角度A1は非圧迫状態で50°程度である。結果的に、角度A1についてこの程度の大きさを選択することにより、ナセルとシュラウドとの間での密封部分44の圧壊は突部の方向70の配向の変化も引き起こすという事実が考慮されるので、有利である。実際に、密封部分44への応力レベルが上昇するにつれて、二つの突部68のこの方向70は、90°の値まで角度A1を増加させる傾向がある。
【0040】
密封部分44は、密封タブ42と同様に、エラストマ材料から、好ましくはシリコーンエラストマ材料から製作されうる。例えば、密封装置40はこのエラストマ材料のみを使用して単体として製作されうる。図5に概略的に示されている別の実施形態において、密封部分44はエラストマ材料製の基部76を有し、少なくとも一つの繊維強化層78により完成される。これは、二つの耳部68を互いに接触させるのに充分なほど変形レベルが高くない時には特に、密封部分44の剛性を高めることを可能にする。
【0041】
各繊維層は、密封部分44の概略形状に応じて好ましくは円形である。層の数は1と3の間に包含され、例えば二つの強化層78が基部76に埋め込まれ、外層78’が外面60を形成する。この外層78’は、ナセルカウリングを組み立てる時に密封部分44に対するシュラウドおよびナセルカウリングの摩擦を制限するように減摩機能を有し、こうしてこの部分44の軸方向伸張作用を制限する。この減摩機能を保証するため、外層78’は好ましくは予備硬化ポリエステルファブリックで製作され、例えばこのタイプのファブリックによる幾つかの層を備える。外層78’は減摩コーティングとしてのみ機能するか、あるいは埋込層78のような強化機能も提供する。この層は例えばポリエステルで製作される。これらの材料の組み合わせも、本発明の範囲を逸脱することなく可能である。
【0042】
密封部分44を製作するのに選択される材料に関係なく、この部分はループ全体に沿って完全に閉止されるか、これを通過する一以上のオリフィス80を備える。この他の代替例は図6に概略的に示されている。オリフィス80は中空部64の加圧を保証し、二次流からの空気がこの同じ中空部に進入するのを可能にする。この結果、密封部分44の外面60と、密封される二つの要素との間に良好な接触が得られる。この代替例において、密封部分44について閉ループ特徴を維持するように加圧オリフィス80が設けられるので、各オリフィスは装置40の周長の一部分にのみ延在する。
【0043】
最後に、図7および8は、中間筐体14のフランジ34とナセルカウリング30の接合リング52との間での圧縮レベルが異なる空気密封装置40を示す。この圧縮レベルは、製造および組立公差により、またこれら二つの要素の間で動作時に観察される変形および相対変位に応じて変化する。図7は、リング52がフランジ34から最も遠い時に発生する最小変形レベルを示す。このケースで、二つの耳部68は互いから離間している。他方で、図8は、リング52がフランジ34に非常に近い時に発生する最大変形レベルを示す。このケースで、二つの耳部68の間の接触は密封部分44の剛性に寄与し、その沈下が制限される。この密封部分44と二つの要素52,34との間の接触が強化され、二次流路26から生じる空気漏出のリスクをゼロにするか制限する。これらの図7および8では、密封部分44の圧縮レベルとともに角度A1の値が増加する。角度A1が90°に近いか等しい図8に示されている最大圧縮状態では、リング52およびフランジ34に設けられる接触面に対して局所的には実質的に直交する方向70に耳部68が配向される。
【0044】
言うまでもなく、非限定的な例としてのみ記載されて添付の請求項により範囲が規定される本発明に対して当業者により様々な変形が加えられてもよい。特に、上に記載された空気密封装置は、本発明の範囲を逸脱することなく他の筐体とナセル要素との間に設置されうる。
【符号の説明】
【0045】
1 双流タービンエンジン
2 長手中心軸
3 ファン
5 主なガス流方向
6 中心筐体
7 上流端部
8a 内部流区画
8b ファン区画
9 パイロン
10 上流リング
11 ナセル
12 ハブ
14 中間筐体
16 外側シュラウド
18 ファン筐体
20 出口案内羽根
22 アーム
26 二次流路
27 二次流
28 一次流
30 ナセルカウリング
32 径方向カラー
34 環状支持フランジ
36 環状空間
40 空気密封装置
42 固定タブ
44 密封部分
46 固定プレート
48 リベット
50 密封ビード
52 接合リング
56 密封リップ
58 外側リング/リングセクタ
60 外面
62 内面
64 中空部
66 中心
68 突部
70 突部高さ方向
72 固定タブ延在方向
76 基部
78 繊維強化層
78’ 外側減摩層
80 オリフィス
100 推進ユニット
A1 好適な角度
H1 突部の高さ
X 長手方向
Y 横断方向
Z 垂直方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8