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特許7492963オレフィンの製造のためのアルコール供給原料の処理方法
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  • 特許-オレフィンの製造のためのアルコール供給原料の処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】オレフィンの製造のためのアルコール供給原料の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 29/88 20060101AFI20240523BHJP
   C01G 25/00 20060101ALI20240523BHJP
   C01B 33/40 20060101ALI20240523BHJP
   C01B 39/00 20060101ALI20240523BHJP
   C07C 31/08 20060101ALI20240523BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20240523BHJP
   C07C 11/04 20060101ALN20240523BHJP
   C07C 1/24 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
C07C29/88
C01G25/00
C01B33/40
C01B39/00
C07C31/08
C07B61/00 300
C07C11/04
C07C1/24
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021535588
(86)(22)【出願日】2019-11-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-10
(86)【国際出願番号】 EP2019082776
(87)【国際公開番号】W WO2020126374
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】1873651
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515140521
【氏名又は名称】トータル リサーチ アンド テクノロジー フェルイ
(73)【特許権者】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(72)【発明者】
【氏名】アリベール ニコラ
(72)【発明者】
【氏名】シャーエン ルドヴィク
(72)【発明者】
【氏名】ラヌー アルノー
(72)【発明者】
【氏名】クパール ヴァンサン
(72)【発明者】
【氏名】ネステレンコ ニコライ
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-535528(JP,A)
【文献】特表2012-510445(JP,A)
【文献】特表2016-516001(JP,A)
【文献】特表昭55-500864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C01G
C01B
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のモノアルコールを含有しているアルコール性供給原料を処理する方法であって、以下の段階:
a) 前記アルコール性供給原料を70℃~200℃の温度に予熱して、予熱済みアルコール性供給原料を生じさせる段階;
b) 前記予熱済みアルコール性供給原料を酸性固体上で、70℃~200℃の温度で操作して、前処理し、前処理済みアルコール性供給原料を生じさせる段階;
c) 気化供給原料を部分気化させて気体流と液体流とを生じさせる段階であって、前記気化供給原料は、段階b)の終わりに得られた前記前処理済みアルコール性供給原料を含み、前記部分気化段階は、部分気化セクションを含み、部分気化セクションに0.1~1.4MPaの入口圧力で前記気化供給原料を給送し、これにより前記気体流と前記液体流とが生じ、気体流は、気化供給原料の重量の最低70重量%を示す、段階;
d) 段階c)に由来する液体流を精製して、水に豊富な流れ、モノアルコールに豊富な流れおよび不純物に豊富な流れを与える、段階
を含む、方法。
【請求項2】
前記アルコール性供給原料は、バイオマスに由来する再生可能資源から生じたアルコール供給原料である、請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記アルコール性供給原料は、バイオマスに由来する再生可能資源から発酵によって生じたアルコール供給原料である、請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記モノアルコールは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノールまたはその混合物である、請求項1~3のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項5】
前処理段階b)を操作する際の温度は、100℃~180℃である、請求項1~4のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項6】
前処理段階b)を操作する際の温度は、110℃~160℃である、請求項1~5のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項7】
前記酸性固体は、以下:酸性粘土、ゼオライト、硫酸化ジルコニア、および酸性樹脂からなる群から選ばれる、請求項1~のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項8】
前記酸性固体は、酸性樹脂であり、重量(グラム)当たり少なくとも0.1mmol H当量の交換容量を所持する、請求項に記載の処理方法。
【請求項9】
前記酸性固体は、カチオン交換樹脂であり、重量(グラム)当たり少なくとも0.1mmol H 当量の交換容量を所持する、請求項7または8に記載の処理方法。
【請求項10】
気化供給原料の水の含有率は、気化供給原料の全重量に相対する水の重量で10重量%~75重量%である、請求項1~のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項11】
前記気化供給原料は、段階d)により精製された水の再循環流および/または外部の水の流れをさらに含む、請求項1~10のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項12】
前記部分気化セクションは、熱交換器およびフラッシュ蒸発器を含んでいる、請求項1~11のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項13】
前記部分気化セクションに、前記気化供給原料を、0.2~0.6MPaの入口圧力で給送する、請求項1~12のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項14】
前記部分気化セクションに由来する気体流は、気化供給原料の重量の最低80重量%を示す、請求項1~13のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項15】
前記部分気化セクションに由来する気体流は、気化供給原料の重量の最低90重量%を示す、請求項1~14のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項16】
気体流は、気化供給原料の重量の98重量%以下の割合を示す、請求項1~15のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項17】
気体流は、気化供給原料の重量の95重量%以下の割合を示す、請求項1~16のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項18】
前記気化供給原料の温度を前記部分気化セクション中で110℃~250℃の温度に調節する、請求項1~17のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項19】
前記精製段階d)を含み、該段階d)の間に、段階c)に由来する前記液体流を、精製のためのセクションにおいてストリッピングにより処理する、請求項1~18のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項20】
前記段階d)の精製セクションの頂部のところで回収された前記モノアルコールに豊富な前記流れを、少なくとも部分的に再循環させ、段階c)の終わりに得られた気体流と混合する、請求項1~19のいずれか1つに記載の処理方法。
【請求項21】
段階d)に由来する精製済み水の前記流れの少なくとも一部を段階c)の入口に再循環させ、前処理段階b)の終わりに得られた前処理済みアルコール性供給原料と混合して、気化供給原料を生じさせ、かつ/または、段階c)の出口に再循環させ、前記部分気化段階c)の終わりに得られた気体流と混合する、請求項1~20のいずれか1つに記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルコール性供給原料、特に発酵を起源とするものであって、変換される予定のものを処理する方法に関する。特に、本発明は、アルコール供給原料を前処理して対応するオレフィンを製造するための方法、例えば、エタノール供給原料を前処理してエチレンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
触媒の存在中でアルコールを脱水してオレフィンを製造することは、実際にすでに記載されている。例えば、特許(特許文献1)には、特に、エタノール供給原料からエチレンを、脱水触媒の存在中で製造する方法が記載されている。
【0003】
用いられるアルコールの起源に応じて、アルコール性供給原料中に不純物が存在するかもしれず、これらの不純物の性質およびその含有率は大きく変わりやすい。これらの不純物のいくつかは、アルコール性供給原料の変換反応のための触媒に有害であるかもしれない。具体的には、それらは、脱水触媒の早期のかつ/または有意な不活性化を引き起こすことができる。いくつかの従来技術の研究には、接触脱水に先行するアルコール性供給原料の前処理が記載されている。
【0004】
特に、特許(特許文献1)において、エタノール供給原料は、供給原料中に含有される考えられる不純物、特に、窒素含有化合物および硫黄含有化合物を除去するための前処理の段階を経てよく、これにより、脱水触媒の不活性化が制限される。この前処理段階に用いられるのは、例えば、樹脂(1種または複数種)の使用、20~60℃の温度での固体上への不純物の吸着、水素化分解の段階とその後の20~80℃の温度での酸性固体上の捕捉の段階および/または蒸留等である。特許(特許文献1)には、供給原料中に存在する酸素ベースの化合物は除去されないことが教示されており、特許(特許文献1)は、重質の不純物に関して黙っている。
【0005】
特許(特許文献2および3)には、エタノール供給原料を脱水してエチレンを与える方法が記載され、それぞれ、酸性固体上の100~130℃の温度でのエタノール供給原料の前処理の段階を含んでいる。この前処理段階により、エタノール供給原料中に含有される有機性または塩基性の窒素の含有率を低減させて下流に置かれた脱水触媒の不活性化を制限することが可能になる。しかしながら、特許(特許文献2および3)は、供給原料中に場合により存在するかまたは酸性固体上の前処理の間に形成される重質不純物の除去に関して依然として黙っている。
【0006】
特許出願(特許文献4)には、(場合による生物を原料とする)エタノール供給原料を吸着剤上で前処理した後に、それを酸触媒、例えば脱水触媒を含有している反応器に通過させてエチレンを製造することが開示されている。この出願において記載される前処理の目的は、エタノール供給原料中に含有される成分による酸触媒の阻害または毒作用を制限することにある。エタノール供給原料は、場合によっては、吸着剤上に通過させる前に水素化触媒上に通過させて、脱水触媒に有害な成分の少なくとも一部を転化させてよい。特許出願(特許文献4)には、酸性固体材料、特に樹脂を用いる可能性、または有害な不純物の分子量を増大させる可能性は記載されていない。
【0007】
特許出願(特許文献5)には、イオン交換樹脂、カオリン粘土またはゼオライトを用いて塩基性窒素化合物の量を10重量ppmより下に低減させるアルコール供給原料の処理が記載されている。しかしながら、それには、供給原料中に場合により存在するかまたは樹脂、粘土またはゼオライト上の処理の間に形成される重質不純物の除去は言及されていない。
【0008】
出願(特許文献6)には、エタノールの脱水によるオレフィンの製造方法であって、蒸発および脱水の前に供給原料の精製の段階を含む方法が記載されている。記載された方法により、脱水触媒に有害な化合物である、無機塩、例えばカリウム、ナトリウム、カルシウム、鉄、銅、スルフィド、リンおよびクロリドの塩、および有機化合物、例えば、有機酸、アルデヒド、アセタール、エステルおよび炭化水素を除去することが可能となる。この方法の精製段階は、多孔性膜、吸着剤および/またはイオン交換樹脂上のエタノール供給原料の通過、好ましくは、カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂上の通過を含む。しかしながら、出願(特許文献6)には、とりわけ、窒素含有不純物の問題が説明されていない。
【0009】
本発明の目的は、従来技術に対して、オレフィンの製造に特に向けようとされるアルコール性供給原料の前処理を改善して脱水触媒の耐用期間を大きくすることにある。本発明の目的は、特に、アルコール性供給原料中の、脱水触媒に有害な不純物および/または触媒の不活性化を加速させるリスクのある不純物の含有率をさらに低減させることにある。より詳細には、本発明の目的は、アルコール性供給原料を処理して、とりわけ、あらゆる種類の窒素含有および/または硫黄含有の化合物、すなわち、有機性または無機性の、塩基性または非塩基性の、軽質のまたは重質の化合物の量を、アルコールまたはその誘導体の喪失なくさらに限定するための最適化された方法を提案することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】仏国特許出願公開第2978145号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2998567号明細書
【文献】仏国特許出願公開第2998568号明細書(特表2015-535528号公報)
【文献】国際公開第2010/060981号
【文献】特開平11-043452号公報
【文献】国際公開第2014/127436号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の対象および利点)
本発明は、少なくとも1種のモノアルコールを含有しているアルコール性供給原料を処理する方法であって、以下の段階:
a) 前記アルコール性供給原料を70℃~200℃の温度に予熱して、予熱済みアルコール性供給原料を生じさせる段階;
b) 前記予熱済みアルコール性供給原料を酸性固体上で70℃~200℃の温度で操作して前処理し、前処理済みアルコール性供給原料を生じさせる段階であって、段階;
c) 気化供給原料を部分気化させて、気体流と液体流とを生じさせる段階であって、前記気化供給原料は、段階b)の終わりに得られた前記前処理済みアルコール性供給原料を含んでおり、前記部分気化段階は、部分気化セクションを含み、該部分気化セクションに、前記気化供給原料を0.1~1.4MPaの入口圧力で供給してこれにより前記気体流と前記液体流とが生じ、気体流は、気化供給原料の重量で最低70重量%を示す、段階;
d) 段階c)に由来する液体流を精製して、水に豊富な流れ、モノアルコールに豊富な流れおよび不純物に豊富な流れを与える段階
を含む方法に関する。
【0012】
有利には、前記処理方法は、前記アルコール性供給原料を脱水する方法に統合され、脱水反応器(1基または複数基)の上流に置かれる。前記処理方法は、例えば、特許FR2978145、FR3013707、FR3013708およびFR3026406に記載された脱水方法の上流に統合され得る。
【0013】
本発明による処理方法は、アルコール性供給原料を酸性固体上、特定の温度で前処理する段階と、その後の、本発明の特定の条件下に部分気化させる段階との配列を含んでおり、部分気化させる段階は、好ましくは、液体流を再循環させるための場合によるシステムと結び付けられるものであるが、それ故に驚くべきことに発見されたことは、本発明による処理方法により、アルコールまたはその誘導体(例えば目標アルコールから誘導されるエーテル)の限定された喪失で精製済みのアルコール性の流れを製造することが可能になることである。本発明による処理方法により、特に、あらゆる種類の窒素含有および/または硫黄含有の化合物の含有率を大きく低減させて精製済みのアルコール性の流れを得ることが可能となり、特に、窒素含有化合物を起源とする窒素元素の含有率は、精製済みのアルコール性の流れの全重量に相対して3重量ppm以下、好ましくは1重量ppm以下、一層より有利には0.5重量ppm以下であり、硫黄含有化合物によって提供される硫黄元素の含有率は、精製済みのアルコール性の流れの全重量に相対して10重量ppm以下である。大いに好ましくは、得られた精製済みのアルコール性の流れは、下流の脱水触媒の「阻害物質」である、これらの窒素含有および硫黄含有の化合物を欠いている。本発明による処理により、精製済みのアルコール性の流れ中の炭化水素ベースの不純物、特にカルボン酸の含有率を制限することも可能となる。これは、脱水触媒の早期のかつ/または多少の有意なコーキングを引き起こす場合がある。それ故に、脱水反応のために用いられる触媒の耐用期間は延長される。
【0014】
本発明の別の利点は、精製済みのアルコール性の流出物を得る一方で同時に例えば蒸留による処理と比べて有用物の消費、特にエネルギー消費を制限することにある。
【0015】
有利には、前記アルコール性供給原料を処理する方法は、反応段階の下流の、前記アルコール性供給原料中に存在するアルコールを脱水して対応するオレフィンを与えるより一般的な方法に統合される。このより一般的な構成において、エチレンを製造することが予定されるアルコール性供給原料がエタノール供給原料である場合に、本発明による処理方法の別の利点は、エタノール供給原料の処理の間にエタノールをジエチルエーテルに部分転化させることにあり、このことは、全体的な方法のエネルギー消費の制限に特に貢献する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(本発明の詳細な説明)
本発明によると、表現「アルコール性供給原料(alcoholic feedstock)」および「アルコール供給原料(alcohol feedstock)」、およびそのバリエーション(例えば「エタノール供給原料(ethanol feedstock)」、「プロパノール供給原料(propanol feedstock)」または「イソブタノール供給原料(isobutanol feedstock)」)は、置き換えることができ、最低35重量%のモノアルコール、好ましくは35重量%~99.9重量%のモノアルコールを含んでいる供給原料を特徴付けるために用いられる。例えば、本発明によるエタノール供給原料は、最低35重量%、好ましくは35重量%~99.9重量%のエタノールを含む。
【0017】
本発明によると、用語「モノアルコール(monoalcohol)」が意味しているのは、単一個の水酸基を含んでおり、これが、好ましくは、第一または第二の炭素に結合しているアルコール、および2~10個の炭素原子、好ましくは2~5個の炭素原子を含んでおり、直鎖またはアルキル基によって置換された、好ましくは2位で置換された炭化水素鎖に結合している、アルコールである。用語アルキルは、一般式C2n+1の炭化水素化合物を意味し、ここで、nは、1~20、好ましくは1~10、好適には1~5の整数である。前記モノアルコールは、好ましくは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-1-ブタノールまたはその混合物である。大いに好ましくは、前記モノアルコールは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノールまたはその混合物である。
【0018】
本発明によると、表現「・・・と・・・との間(または・・・~・・・)(between ... and ...)」は、間隔の制限値が記載された値の範囲中に含まれることを意味する。もしそのようにならなかったならば、かつ、制限値が記載された範囲中に含まれなかったならば、このような説明は、本発明によって与えられないことになる。
【0019】
本発明は、少なくとも1種のモノアルコールを含有しているアルコール性供給原料を処理する(または精製する)方法であって、前記供給原料は、オレフィンを製造することが特に予定され、前記処理方法は、以下の段階:
a) 前記アルコール性供給原料を70℃~200℃の温度に、好ましくは0.1~3MPaの圧力で予熱して予熱済みアルコール性供給原料を生じさせる段階;
b) 前記予熱済みアルコール供給原料を酸性固体、好ましくは酸性樹脂上で、70℃~200℃の温度で操作して前処理し、前処理済アルコール供給原料を生じさせる、段階;
c) 気化供給原料を部分気化させて気体流と液体流とを生じさせる段階であって、前記気化供給原料は、段階b)の終わりに得られた前記前処理済アルコール性供給原料を、場合によっては、外部の水の流れおよび/または段階d)により再循環させられた処理水の流れの少なくとも一部との混合物として含んでおり、前記の水の流れは、場合によっては、前記前処理済みアルコール性供給原料と混合されたものであり、該前処理済アルコール性供給原料は、好ましくは液体の状態にあり、前記気化供給原料は、好ましくは、水を気化供給原料に相対して10重量%~75重量%の含有率で有し、
前記部分気化段階は、部分気化セクションを含み、該部分気化セクションに、前記気化供給原料を0.1~1.4MPa、好ましくは0.2~0.6MPaの入口圧力で、好ましくは110℃~250℃の入口温度で供給し、これにより、前記気体流と前記液体流とが生じて、気体流は、気化供給原料の重量の最低70重量%、好ましくは最低80重量%、優先的には最低90重量%を示す、段階
d) 段階c)に由来する液体流を、好ましくは蒸留により、特にはストリッピングにより精製して、水に豊富な流れ、モノアルコールに豊富な流れおよび不純物に豊富な流れを与える段階であって、場合によっては、次いで、水に豊富な流れの少なくとも一部を混合段階c)に再循環させて、前記気化供給原料を生じさせ、かつ/またはモノアルコールに豊富な流れの少なくとも一部を部分気化段階c)の出口に再循環させ、そこで、段階c)の終わりに得られた前記気体流と混合する、段階
を含み、好ましくは、これらの段階からなる、方法に関する。
【0020】
有利には、前記処理方法は、前記アルコール性供給原料を脱水する方法に統合され、かつ、オレフィンを製造するための脱水反応器(1基または複数基)の上流に置かれる。前記処理方法は、例えば、特許FR 2 978 145、FR 3 013 707、FR 3 013 708およびFR 3 026 406において記載された脱水方法の上流で統合され得る。
【0021】
(供給原料)
本発明によると、本発明による方法において処理される供給原料は、アルコール性供給原料(またはアルコール供給原料)であり、少なくとも1種のモノアルコールを含有している。前記モノアルコールは、好ましくは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、2-メチル-1-ブタノールまたはその混合物である。大いに好ましくは、前記モノアルコールは、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノールまたはその混合物である。
【0022】
有利には、本発明による方法の前記アルコール供給原料は、最低35重量%の前記モノアルコール、好ましくは35重量%~99.9重量%の前記モノアルコールを含む。前記アルコール性供給原料は、0~65%の水を含んでもよい。前記アルコール性供給原料は、無機タイプ(例えばNa、Ca、P、Al、Si、K、SO)、有機タイプ(例えばメタノール、エタノール、n-ブタノール、アルデヒド、ケトンおよび対応する酸、例えば フラン酸、酢酸またはイソ酪酸)の不純物を含んでもよい。前記アルコール性供給原料は、特に、窒素含有および/または硫黄含有の化合物であって、無機タイプのもの(例えばアンモニア)または有機タイプのもの、好ましくは、塩基性の窒素含有および/または硫黄含有の化合物、例えば、アミン、アミド、イミンおよび硫黄含有の化合物(チオール、チオフェン、メルカプタン、チオエーテル、スルフィド、ジスルフィド等)も含む。前記アルコール性供給原料中の有機または無機の窒素の含有率および硫黄の含有率は、好ましくが、それぞれ、0.5重量%以下、好ましくは0.2重量%以下であり、重量百分率は、前記アルコール性供給原料の全重量に相対して表される。本発明によると、窒素の含有率および硫黄の含有率は、考慮下の流れ中、特に本発明の方法の前記供給原料中に存在する窒素含有および硫黄含有の不純物によってそれぞれ提供される窒素元素および硫黄元素の含有率であると理解されるべきである。好ましくは、窒素元素の含有率は、有利には、本発明によれば、燃焼および化学ルミネッセンスによる検出によって決定され、硫黄元素の含有率は、燃焼およびUV蛍光による検出によって決定される。
【0023】
有利には、前記アルコール性供給原料は、非化石資源を起源としてよい。好ましくは、本発明による方法において処理されるアルコール性供給原料は、バイオマスに由来する再生可能資源から、好ましくは糖の発酵によって生じさせられ、この糖は、例えば、糖産生植物作物、例えば、サトウキビから得られるもの(サッカロース、グルコース、フルクトースおよびスクロース)、ビートから得られるもの、または、でんぷん植物から得られるもの(でんぷん)またはリグノセルロース性バイオマスから得られるものまたは加水分解セルロースから得られるもの(主たるグルコース、およびキシロースおよびガラクトース)であり、これらは、可変量の水を含有している。従来の発酵方法のより完全な説明のために、出版物「Les Biocarburants, Etat des lieux, perspectives et enjeux du developpement [Biofuels, current state, perspectives and development challenges:バイオ燃料、現況、展望および開発の挑戦]」、Daniel Ballerini, 出版元 Technipへの参照がなされてよい。
【0024】
前記アルコール性供給原料は、有利には、合成ガスから得られてもよい。
【0025】
本発明による方法において処理されるアルコール性供給原料は、場合によっては、化石資源から加工処理する、例えば、石炭、天然ガスまたは炭素ベースの廃棄物から加工処理するアルコール合成方法を介して得られてもよい。
【0026】
本発明による方法の前記アルコール性供給原料は、さらに有利には、対応する酸またはエステルの水素化から得られてもよい。この場合、酢酸または酢酸エステルは、有利には、水素を用いて水素化されて、エタノールを与える。酢酸は、有利には、メタノールのカルボニル化によってまたは炭水化物の発酵によって得られてよい。
【0027】
好ましくは、本発明による方法において処理されるアルコール性供給原料は、バイオマスに由来する再生可能資源から生じさせられたアルコール供給原料である。
【0028】
(予熱段階a))
本発明によると、アルコール供給原料は、70℃~200℃の温度に予熱して、予熱済みアルコール性供給原料を生じさせる段階a)を経る。
【0029】
本発明によると、表現「70℃~200℃の温度に予熱すること(preheating to a temperature of between 70°C and 200°C)」は、段階a)の終わりに、アルコール供給原料は、70℃~200℃の温度にあることを意味する。好ましくは、予熱段階a)が操作される際の温度は、100℃~180℃、優先的には110℃~160℃である。
【0030】
有利には、アルコール供給原料の圧力は、予熱段階a)の終わりに前記供給原料が液体のままであるように調節される。好ましくは、前記予熱済みアルコール性供給原料の圧力は、0.1~3MPaである。
【0031】
アルコール性供給原料は、有利には、熱交換器において、本発明による方法に対して外部の熱源との熱の交換によって、例えば直接加熱(例えばオーブン中の加熱)または当業者に知られている任意の他の技術によって予熱される。
【0032】
本発明による処理方法が前記アルコール性供給原料を脱水してオレフィンを生じさせるためのより一般的な方法に統合される場合、アルコール性供給原料は、有利には、熱交換器において最後の脱水反応器に由来する脱水流出物との熱の交換によって予熱される。
【0033】
(前処理段階b))
本発明によると、予熱段階a)に由来する予熱済みアルコール性供給原料は、前処理段階b)を経て、前処理済みアルコール性供給原料を生じさせる。
【0034】
有利には、前記前処理段階b)が操作される際の温度は、70℃~200℃、好ましくは100℃~180℃、優先的には110℃~160℃であり、その際の圧力は、好ましくは0.1~3MPaである。これらの操作条件下に、アルコール性供給原料は、有利には、液体の形態のままである。
【0035】
前記前処理段階b)は、酸性固体上で行われる。前記酸性固体は、当業者に知られている全ての固体から選ばれ得る。前記酸性固体は、それ故に、以下からなる群から選択されてよい:酸性粘土、ゼオライト、硫酸化ジルコニア、酸性樹脂等。最も重要なことは、酸性固体は、塩基性およびカチオン性の種の最大量を捕捉するための高い交換容量を所持していることである。アルコール性供給原料がエタノール供給原料である場合、酸性固体は、有利には、エタノールからDEEへの部分変換を引き起こすために十分に高い酸強度も所持すべきである。
【0036】
例えば、前記酸性固体は、市販の酸性固体から選ばれ得、例えば、酸性にするように酸により処理された粘土(例えばモンモリロナイト)およびゼオライト、例えば、結晶格子中のシリカ対アルミナのモル比2.5~100を有するものである。
【0037】
好ましくは、前記酸性固体は、酸性樹脂、特にイオン交換樹脂、好ましくはカチオン交換樹脂、特に交換容量(または酸強度):重量(グラム)当たり少なくとも0.1mmol H当量を所持するものであり、交換容量(または酸強度)は、Naイオンとの交換の後に酸性樹脂によって放出されたHイオンのアッセイによって、好ましくは伝導度測定法によって決定される(特にASTM D4266を参照のこと)。より詳細には、前記酸性樹脂は、芳香族性および/またはハロ脂肪族性の鎖からなる有機担体にグラフトされたスルホン酸基を含む。前記酸性樹脂は、典型的には、ビニル芳香族性の基のポリマー化または共ポリマー化とその後のスルホン化とによって調製され、前記ビニル芳香族性の基は、スチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ビニルエチルベンゼン、メチルスチレン、ビニルクロロベンゼン、およびビニルキシレンから選ばれる。前記酸性樹脂は、有利には、架橋結合度:20%~35%、好ましくは25%~35%を有し、好ましくは30%に等しく、Naイオンとの交換の後に酸性樹脂によって放出されるHイオンのアッセイ、好ましくは、伝導度測定法(ASTM D4266を参照のこと)によって決定される酸強度(または交換容量)は、重量(グラム)当たり0.2~10mmolH当量、好ましくは重量(グラム)当たり0.2~6mmolH当量である。好ましい樹脂は、モノビニル芳香族化合物およびポリビニル芳香族化合物のコポリマー、好ましくはジビニルベンゼンおよびスチレンのコポリマー、特には、架橋結合度:20%~45%、好ましくは30%~40%を有し、好ましくは35%に等しく、Naイオンとの交換の後に酸性樹脂によって放出されるHイオンのアッセイ、好ましくは伝導測定法(ASTM D4266を参照のこと)によって決定される、前記樹脂中の活性サイトの数を示す酸強度:重量(グラム)当たり1~10mmolH当量、好ましくは重量(グラム)当たり3.5~6mmolH当量を有するものである。例えば、酸性固体は、Axensにより参照TA801下に販売されている市販の酸性樹脂である。
【0038】
好ましくは、前記酸性樹脂は、粒子の形態にあり、その粒子は、0.15~1.5mmのサイズを有している。用語「樹脂粒子のサイズ(size of the resin particles)」は、前記粒子の平均等価径を意味するとして理解される。粒子の「等価径」の用語は、選ばれた粒子サイズの分析操作の間に等しくふるまっている球に等価な径を意味するとして理解される。前記酸性樹脂の粒子のサイズは、当業者に知られているあらゆる技術によって、好ましくは当業者に知られている技術により適切なスクリーンのカラム上でスクリーニングすることによって測定される。
【0039】
酸性固体は、時々、特に、一旦それの交換容量が限界になった(それの活性サイトが現場内(in situ)または現場外(ex situ)で塩基性および/またはカチオン性の種の吸着によってほとんど飽和させられている兆候の)ところで再生され得る。無機酸性固体、例えば、酸性粘土およびゼオライトの場合、再生は、不活性なまたは酸素含有の流れの存在中で塩基性種を脱着させるように高温で単純に加熱することからなり得る。カチオンは、イオン交換によって除去され得る。酸性樹脂の場合、このものは、イオン交換によって、典型的には、液相中の酸による処理によって再生され得る。酸性固体はまた、一度に、飽和になるまで用いられ、未使用酸性固体と置き換えられ得る。
【0040】
前記段階b)の前記酸性固体は、単独でまたは他のタイプの酸性固体との混合物として用いられ得る。異なる酸性固体の混合物または酸性固体の配列が塩基性および/またはカチオン性の種の吸着のための容量を特に最適にするために、場合によっては、エタノール供給原料の場合に、エタノールをDEEに部分変換するための容量を最適にするために用いられてよい。
【0041】
上記の前処理は、有利には、アニオン交換樹脂を用いる前処理によって補充され得る。この樹脂は、例えば、ナトリウム、またはmg(OH-)/リットルで測定される交換容量によって特徴付けられるトリメチルアンモニウムを負荷された樹脂であり得る。この樹脂は、例えば、アンバーライトIRN78樹脂であり得る。この追加の樹脂により、有利には、無機アニオン、例えば、スルファートSO 2-イオンを保持することが可能となり、したがって、この追加の樹脂は、脱水触媒のライフを延長することに貢献することができる。
【0042】
有利には、前記前処理段階b)により、カチオン性および場合によってはアニオン性の不純物、塩基性の不純物、複合体形成の不純物、キレート化不純物、無機性または有機性の不純物、特には金属塩(例えばK、Na、Ca、Fe、Cu、P、Clの塩)および窒素含有および/または硫黄含有の不純物、例えば供給原料中に存在する、例えば、アンモニアの形態および/または有機性および塩基性の種の形態にある塩基性窒素化合物、例えば、アミン、アミド、イミンまたはニトリルの形態にあるものを捕捉すること、したがって、これらを取り除くことが可能となる。
【0043】
前記前処理段階b)により、所定の、特に有機の、窒素含有および/または硫黄含有の種をより重質な窒素含有および/または硫黄含有の化合物に変換することも誘導される。これらの重質な化合物は、例えば、セジメント、無機塩、有機塩、硫黄含有化合物および他の重質な不純物等である。これらの重質な化合物は、前記前処理段階b)の間に前記酸性固体および場合によって用いられるアニオン交換樹脂によって捕捉されず、本発明による方法の前記段階b)の終わりに生じた前記前処理済みアルコール性供給原料中に見出され得る。
【0044】
(部分気化段階c))
本発明によると、本発明による処理方法は、段階b)に由来する前記前処理済みアルコール性供給原料を含んでいる気化供給原料の部分気化の段階を含み、これにより、気体流および液体流が生じさせられる。本発明の方法の段階c)の終わりに生じた前記気体流は、有利には、少なくとも前記モノアルコールを含む。
【0045】
本発明によると、表現「気化供給原料(vaporization feedstock)」は、段階b)に由来する前処理済みアルコール性供給原料を少なくとも含んでいる供給原料に対応する。前記気化供給原料は、有利には、段階d)により精製された水の再循環流および/または本発明による方法に対して外部の水の流れを含んでもよい。好ましくは、気化供給原料の水の含有率は、優先的には気化供給原料の全重量に相対する水の重量で10重量%~75重量%である。このような水の含有率により、アルコールの分圧は、脱水反応器(1基または複数基)において低下させられることになり、これにより、本方法を目標オレフィンについてより選択的なものとすることが可能になる。
【0046】
本発明によると、前記部分気化段階c)は、部分気化セクションを含み、このセクションは、有利には、前記気化供給原料を加熱するための熱交換器と、加熱システムにおいて加熱されかつ部分気化した気化供給原料の気/液分離を可能にするためのフラッシュ蒸発器(または気化容器)とを含んでいる。前記部分気化セクションは、前記気化供給原料を給送され、その際の入口圧力は、0.1~1.4MPa、好ましくは0.2~0.6MPaである。好ましくは、前記気化供給原料の温度は、前記部分気化セクションにおいて110℃~250℃の温度に調節される。
【0047】
有利には、段階c)における前記部分気化セクションの熱交換器は、フラッシュ蒸発器(または気化容器)の上流に置かれ、この熱交換器により、前記気化供給原料の温度を調節して、段階c)終わりに所望の気化量、すなわち、所望量の気体流を得ることが可能になる。好ましくは、前記部分気化セクションの熱交換器により、前記気化供給原料の温度を110℃~250℃の温度に調節することが可能となる。熱交換器により、有利には、前記気化供給原料の温度を、本発明による方法に対して外部の熱源との熱の交換によって、例えば、(例えばオーブン中)の直接加熱または当業者に知られている任意の他の技術によって調節することが可能となる。本発明による処理方法が前記アルコール供給原料の脱水によりオレフィンを生じさせるためのより一般的な方法に統合される場合、気化供給原料は、有利には、部分気化段階c)の間に、熱交換器において、最後の脱水反応器に由来する脱水流出物との熱の交換によって加熱される。
【0048】
本発明による方法の前記部分気化段階c)により、前記部分気化セクションのフラッシュ蒸発器の頂部のところの気体流(または気化済みの流れ)と、前記フラッシュ蒸発器の底部のところの液体流とが生じる。有利には、前記部分気化セクションの気化容器の頂部のところで回収された気体流は、気化容器に導入される気化供給原料の重量の最低70重量%、好ましくは最低80重量%、優先的には最低90重量%を示す。好ましくは、前記気体流は、気化容器に導入される気化供給原料の重量の98重量%以下、優先的には95重量%以下の割合を示す。
【0049】
頂部のところで回収された前記気体流は、前記モノアルコールを優勢に、すなわち、気体流の全重量に相対して、最低55重量%のモノアルコール、好ましくは最低60重量%のモノアルコール、優先的には最低70重量%のモノアルコール、好適には最低80重量%のモノアルコールを含む。部分気化セクションの頂部のところで回収された前記気体流中の不純物の含有率は低い。好ましくは、前記気体流中の窒素元素(窒素は、窒素含有不純物、すなわち、有機および/または無機の窒素含有化合物によって提供される)の含有率は、前記気体流の全重量に相対して3重量ppm以下、優先的には1重量ppm以下、好適には0.5重量ppm以下であり、窒素元素の含有率は、有利には、燃焼および化学発光による検出によって決定される。同時に、気体流中の硫黄元素は、硫黄含有不純物、すなわち、有機および/または無機の硫黄含有化合物によって提供され、気体流中の硫黄元素の含有率は、前記気体流の全重量に相対して好ましくは10重量ppm以下、優先的には5重量ppm以下、好適には1重量ppm以下であり、硫黄元素の含有率は、有利には、燃焼および蛍光UVによる検出によって決定される。気化容器の頂部のところで回収された前記気体流(または気化済みの流れ)は水を含んでもよい。それは、前記モノアルコールの脱水反応の中間体、例えば、ジエチルエーテル(diethyl ether:DEE)を含んでもよく、このものは、エタノールの脱水反応の中間体であり、その含有率は、前記気体流の少なくとも全体に相対して一般的には20重量%以下、好ましくは15重量%以下、好適には10重量%以下である。
【0050】
前記部分気化段階c)の終わりに、かつ、好ましくは脱水方法全体の後の段階において用いられる前に、得られた気体流(または気化済みの流れ)は、前記モノアルコールを優勢に含み、このものは、場合によっては、液体流の精製の段階d)に由来する前記モノアルコールに豊富な流れと混合されてよい。それは、場合によっては、外部の水の流れおよび/または本発明による方法の段階d)に由来する水に豊富な流れと混合されて、水の含有率を、重量含有率:混合後の流れの全重量に相対する水の重量で10重量%~75重量%に調節するようにしてもよい。このような水の含有率において、前記モノアルコールの分圧は、本発明による処理方法の下流に置かれた脱水反応器(1種または複数種)において低下させられ、これにより、脱水方法の全体を目標オレフィンについてより選択的にすることが可能となる。
【0051】
フラッシュ蒸発器(または気化容器)の底部のところで回収された前記液体流は、前処理済み供給原料中に存在する不純物の大部分、その結果として、本発明による方法によって処理されたアルコール性供給原料の大部分を一緒に集める。好ましくは、本発明による方法の段階c)の終わりに得られた前記液体流は、本発明による方法に給送するアルコール性供給原料中に存在する有機および/または無機の、軽質および/または重質の、窒素含有および硫黄含有の化合物によって提供された窒素および硫黄の最低70重量%、優先的には最低80重量%、好適には最低90重量%を含有している。部分気化セクションの底部のところで回収された前記液体流は、水および/または前記モノアルコールを含んでもよい。前記液体流は、モノアルコールの脱水反応の前記中間物の痕跡を含んでもよく、例えば、本発明による方法によって処理されるアルコール供給原料がエタノール供給原料である時のエタノールの脱水反応の中間体であるジエチルエーテル(DEE)の痕跡である。
【0052】
(液体流の精製の段階d))
本発明によると、本発明による処理方法は、部分気化段階c)に由来する液体流の精製の段階を含み、水に豊富な流れ、モノアルコールに豊富な流れおよび不純物に豊富な流れが生じさせられる。
【0053】
有利には、本発明による方法の段階c)に由来する前記液体流は、前記段階d)の間に、精製のためのセクションにおいて、好ましくは蒸留によって、大いに好ましくはストリッピング(すなわち、還流のない蒸留)によって処理される。当業者は、精製セクション、特にはストリッピングの操作条件をどのように適合させるかを知っているだろう。例えば、ストリッピング塔中の圧力は、0.1~3MPaであり得、ストリッピング塔の底部における温度は、例えば、80~250℃で変動する。
【0054】
前記モノアルコールに豊富な前記流れは、好ましくは気体の形態にあり、このものは、精製セクションの頂部のところで回収される。有利には、それは、モノアルコールの最低70重量%、好ましくは最低80重量%、好適には最低90重量%を含む。前記モノアルコールに豊富な前記流れは、場合によっては、少なくとも部分的に再循環させられ、段階c)の終わりに得られた気体流と混合される。
【0055】
不純物に豊富な前記流れは、前記精製セクションの底部のところで回収される。不純物に豊富な前記流れは、窒素含有および/または硫黄含有の不純物を含む。それは、金属塩も含むことができる。
【0056】
前記精製セクションに由来する水に豊富な流れ(または精製済みの水の流れ)は、好ましくは、最低70重量%の水、好適には最低80重量%の水、一層より好ましくは最低90重量%の水を含む。有利には、精製セクションに由来する水に豊富な前記流れ(または精製済みの水の流れ)の少なくとも一部は、段階c)の入口に再循環させられ、前処理段階b)の終わりに得られた前処理済みアルコール性供給原料と混合されて、気化供給原料を生じさせる。精製済みの水の前記流れは、有利には、少なくとも部分的に本発明による方法の段階c)の出口に再循環させられ、前記部分気化段階c)の終わりに得られた気体流と混合されてもよい。
【0057】
(場合による圧縮段階e))
1種の特定の実施形態において、特に、本発明による前記処理方法がより一般的な脱水方法に直接的に統合される場合、本発明による方法の段階c)に由来する前記気化済みの流れ(または気体流)は、場合によっては、再循環させられかつ段階d)に由来するアルコールに豊富な流れの少なくとも一部と混合され、かつ/または、場合によっては、外部水の流れおよび/または再循環させられかつ段階d)に由来する水に豊富な前記流れの少なくとも一部と混合されて、脱水反応器(1基または複数基)の上流で、場合による圧縮の段階を経てよく、圧縮済み供給原料が生じさせられる。前記圧縮段階は、有利には、当業者に知られているあらゆるタイプの圧縮機において行われる。特に、圧縮段階は、有利には、一体型ギアドラジアルタイプの圧縮機においてまたは1個または複数個のファンを含んでおり、このファンは、直列に置かれたラジアルホイールを有してかつ中間冷却を有していない圧縮機においてまたは潤滑を有するまたは有しない容積式タイプの圧縮機において行われる。
【0058】
場合による圧縮段階e)が行われる場合、前記気化供給原料が前記気化段階c)に導入される際の圧力は、0.1~1.4MPa、優先的には0.2~0.6MPaである。場合による圧縮段階e)の終わりにおける前記圧縮済み供給原料の圧力は、有利には0.3~1.8MPa、優先的には0.5~1.3MPaである。
【0059】
大いに有利には、本発明によるアルコール性供給原料を処理する方法は、場合によっては、前記場合による圧縮段階e)を含むものであり、本方法は、より一般的な脱水方法、例えば、特許FR 2 978 145、FR 3 013 707、FR 3 013 708およびFR 3 026 406に記載された方法の1つに統合され得る。
【0060】
有利には、本発明による処理方法により、アルコール性供給原料中に存在する不純物、特に、有機および/または無機の窒素含有および/または硫黄含有の不純物を除去することが、これらが軽質であるか重質であるかに拘わらず可能となる。本発明による方法は、特定の段階の配列を含むものであるが、本方法により、特に、酸性固体上の前処理の段階の間に形成されかつ/またはアルコール性供給原料中に既に存在している重質の不純物を除去することが可能となる。特に、本発明による方法によって処理されるアルコール性脱水供給原料(本発明による方法によって処理されるアルコール性脱水供給原料は、本発明による処理方法の後に得られたアルコール性の流れに対応し、すなわち、本発明による方法の段階c)に由来し、場合によっては、段階d)に由来するモノアルコールに豊富な再循環流および/または外部の水の流れまたは本発明による方法の段階d)に由来する水に豊富な再循環流と混合される気体流に対応する)中の、有機および/または無機の窒素含有の不純物によって提供される窒素元素の含有率は、前記処理済みのアルコール性供給原料の全重量に相対して好ましくは3重量ppm以下、優先的には1重量ppm以下、好適には0.5重量ppm以下である。本発明による方法によって処理されるアルコール性脱水供給原料中の、有機および/または無機の硫黄含有不純物によって提供される硫黄元素の含有率は、前記処理済みアルコール供給原料の全重量に相対して、好ましくは10重量ppm以下、優先的には5重量ppm以下、好適には1重量ppm以下である。
【0061】
それ故に、本発明による処理方法によって得られたアルコール性の流れは、脱水触媒の不活性化を加速させる不純物の大きく低減した含有率を有するか、または、これらの不純物を欠いてさえしており、大いに有利には、本発明による処理方法に続いて用いられる脱水触媒の耐用期間の相当な延長を可能にする。
【0062】
大いに有利には、本発明によると、考慮下の流れ中、特に、本発明による処理方法によって得られたアルコール性の流れ中に存在する窒素含有不純物によって提供される窒素元素の含有率は、燃焼および化学発光による検出によって決定され、硫黄含有不純物によって提供される硫黄元素の含有率は、化学発光による検出によって決定され、硫黄元素の含有率は、燃焼およびUV蛍光による検出によって決定される。
【0063】
本発明による処理方法により、脱水によるオレフィンの製造のために広範な範囲のアルコール性供給原料を有利に想定することも可能となる。
【0064】
以下の図面および実施例は、本発明の範囲を制限することなく本発明を例証する。
【0065】
(図面の説明)
図1は、アルコール性供給原料の本発明による処理方法の実施形態と脱水セクションを模式的に示し、生じた水に豊富な流れおよびモノアルコールに豊富な流れの少なくとも一部は再循環させられ、気化済みの流れおよびモノアルコールに豊富な再循環流は圧縮される。
【0066】
アルコール供給原料1)は、交換器(a)において予熱され、次いで、パイプ2)を介して前処理帯域(b)に導入される。前処理済みアルコール供給原料3)は、次いで、パイプ4)において、精製帯域(h)に由来し、パイプ16)を介して再循環させられた水に豊富な流れの一部と混合される。
【0067】
水に豊富な流れの再循環部分と混合された前処理済みアルコール供給原料は、気/液交換器(c)に導入される。前記混合物は、反応帯域(g)から来る流出物との熱の交換を経る。この流出物は、パイプ11)を介して交換器に入る。加熱された混合物は、パイプ5)を介してフラッシュ蒸発器(d)に送られる。前記加熱済み混合物は、部分気化を経て、気体流と液体流とを生じさせ、気体流は、パイプ6)を介して回収され、液体流は、パイプ14)を介して回収される。
【0068】
フラッシュ容器の底部のところで回収された液体流は、パイプ14)を介して精製帯域(h)に送られ、そこで、それは、ストリッピングを経て、アルコールに豊富な精製済みの流れと、水の精製済みの流れと、不純物に豊富な流れとを生じさせ、このアルコールに豊富な精製済みの流れは、パイプ15)を介して回収され、水の精製済みの流れは、パイプ16)および19)を介して回収され、不純物に豊富な流れは、パイプ17)を介して回収される。
【0069】
気体流6)は、アルコールに豊富な流れからなり、この気体流6)は、パイプ7)においてパイプ15)を介した精製帯域(h)に由来する再循環させられた精製済みのアルコール流れと混合される。
【0070】
場合によっては、パイプ7)中の水の含有率は、外部の水の流れまたは水の精製済みの流れから来る流れ、例えば、精製帯域(h)に由来する精製済み水の流れの一部により調節され得る。アルコール流7)は、あるいは希釈されることもあり、このアルコール流7)は、パイプ7)を介して圧縮機(e)に送られる。
【0071】
圧縮機(e)の出口において、圧縮済みの流れは、次いで、パイプ8)を介して交換器(f)に導入され、その中で、それは、反応帯域(g)から来る流出物との熱の交換を経、この流出物は、その時に、凝縮なく冷却され、パイプ11)の方に向かう。予熱・圧縮済みの流れは、反応セクション(g)に送られる。反応セクション(g)を出る反応流出物10)は、交換器(f)中を通過し、そこで、それは、凝縮なく冷却されパイプ11)に向かい、次いで、気/液交換器中を通過し、そこで、それは、部分的に凝縮させられて流れ12)に入り、次いで最後に、前処理帯域(b)に入るアルコール供給原料を予熱するために用いられる交換器(a)中を通過する。冷却済み反応流出物13)は、次いで、精製セクションに送られ得る。
【0072】
(実施例)
以下の実施例において、エタノールおよびジエチルエーテル(DEE)の含有率をガスクロマトグラフィーによって決定する。水の含有率を、カールフィッシャー法によって決定する。窒素および硫黄の含有率は、窒素元素および硫黄元素の含有率であり、それぞれ、分析された流れ中に存在する窒素含有および硫黄含有の不純物によって提供される。窒素元素の含有率を燃焼および化学発光による検出によって決定する。硫黄元素の含有率を燃焼およびUV蛍光による検出によって決定する。
【0073】
(実施例1:本発明に合致する)
実施例1は、本発明による方法の利点を例証する。本発明は、脱水ユニットの上流で、エタノール供給原料の前処理および部分気化の段階の配列を含んでいる。
【0074】
考慮下のエタノール供給原料を、乾式製粉タイプの方法によって、グルテンの抽出なくコムギの発酵によって生じさせる。
【0075】
(段階a)およびb))
エタノール供給原料を130℃に予熱し、次いで、TA801樹脂(供給元Axens)上で前処理する。この前処理の間、樹脂の体積に相対する全エタノール供給原料の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、1h-1であり、温度は130℃であり、圧力を、0.5MPaに維持する。粗製および前処理済みのエタノール供給原料の特徴を表1に与える。
【0076】
【表1】
【0077】
酸性樹脂上で前処理されたエタノール供給原料中の窒素含有および硫黄含有の化合物の含有率は、有意であるままであるようである(窒素2.5重量ppmおよび硫黄14重量ppm)。
【0078】
さらに、この前処理の間に、エタノールの一部をジエチルエーテル(DEE)に転化させる。
【0079】
(段階c))
前処理済み供給原料を、次いで、部分気化させる。部分気化セクションの入口における前処理済みエタノール供給原料の圧力は0.45MPaである。
【0080】
フラッシュ容器に導入される前処理済みエタノール供給原料の重量の90.5重量%に対応する気体流を、フラッシュ容器の頂部のところで回収し、気化供給原料の重量の9.5重量%を、液体の形態でフラッシュ容器の底部のところで回収する。気化済みエタノール供給原料(気体流)および回収された液体流の特徴を表2に提示する。
【0081】
【表2】
【0082】
前処理済みエタノール供給原料中の窒素含有および硫黄含有の不純物の大部分がフラッシュ容器の底部のところで回収された液体流中に見出されることははっきりと明白である:
- 前処理済み供給原料の窒素の約82重量%(すなわち、(9.5%×21.6)/2.5)が液体流中に見出され、前処理済み供給原料からの窒素の約18重量%(すなわち、(90.5%×0.5)/2.5)のみが、頂部のところで回収された気体流中に見出される:
- 前処理済み供給原料の硫黄の約90重量%(すなわち、(9.5%×133.1)/14)が液体流中に見出され、前処理済み供給原料からの硫黄の約10重量%(すなわち、(90.5%×1.5)/14)のみが頂部のところで回収された気体流中に見出される。
【0083】
樹脂上の前処理およびその後の部分気化の配列の後に回収された気化済みエタノール供給原料の窒素および硫黄の含有率は低い:気化済みエタノール供給原料の窒素含有率は、前記気化済みエタノール流の全重量に相対して、0.5重量ppmであり、気化済みエタノール供給原料の硫黄含有率は、1.5重量ppmである。
【0084】
(精製段階d))
液体流をストリッパ(または還流なしの蒸留塔)に送り、塔の頂部のところで回収されるエタノールの流れと、塔の底部のところで回収される水の流れおよび残渣とを生じさせる。
【0085】
(気体流の使用:脱水段階)
気化済み供給原料を脱水セクションに送る。実験サイズの固定床反応器において脱水反応を行う。用いられる触媒は、特許WO 2013/011208において記載されるようなエタノールの脱水のために用いられるものである。これは、リンPの含有率が3重量%になるようにHPOにより処理されたZSM-5ゼオライト80重量%を含む。試験の目的のために、前もって触媒をすり砕いた。
【0086】
操作条件は以下の通りである:HSVtotal=21h-1(HSVは、毎時空間速度(hourly space velocity)に対するものであり、導入された供給原料の1時間ごとの体積流量対触媒の体積の比として定義される)、P=0.2MPa。用いられる供給原料中のエタノールの転化率99.9%超を達成するように反応の温度を調節する。
【0087】
高純度エタノール90重量%および高純度水10重量%の混合物により試験を開始し、基準をつくる。48時間の安定化の後、先に回収された気化済み供給原料を注入し、次いで、粗製エタノール供給原料を順番に注入する。
【0088】
表3は、反応器に導入された供給原料中のエタノールの転化率99.9%を達成するのに必要な温度を示す。
【0089】
【表3】
【0090】
本発明による処理の終わりに回収された気化済み供給原料の存在中で、転化率99.9%を達成するための温度は、基準の高純度エタノール供給原料と比べて変更されないようである。対照的に、導入されたエタノールが粗製エタノール供給原料(不純物、特に、窒素含有および硫黄含有の不純物を含んでいる)である場合、転化率99.9%を維持するために55℃だけ温度を上昇させることが必要である。それ故に、エタノール供給原料が本発明による方法によって処理される場合に、粗製エタノール供給原料と比較して、脱水触媒の耐用期間が延長されることになる。
【0091】
(実施例2:本発明に合致しない)
実施例2は、エタノール供給原料を処理するための方法であって、部分気化の段階のみを含む方法(本発明に合致しない)の脱水反応に関する効果を例証する。
【0092】
この実施例において、考慮下のエタノール供給原料は、実施例1のものと同一である:それは、コムギの発酵によるが、グルテンの抽出はなされず、乾式製粉タイプの方法により生じさせられる。
【0093】
エタノール供給原料を部分気化セクションに、0.45MPaの入口圧力で送る。エタノール供給原料の重量の89.4重量%に対応する気体流と、フラッシュ容器の底部のところで回収されたエタノール供給原料の重量の10.6重量%に対応する液体流とを生じさせるように温度を調節する。回収された気体流および液体流の特徴を表4に提示する。
【0094】
【表4】
【0095】
部分気化の後に回収された気体流中の窒素および硫黄の含有率は、相対的に高いままである:気体流の全重量に相対して窒素元素の含有率は、4.2重量ppmであり、硫黄含有率は、13.6重量ppmである。
【0096】
実施例1において記載されたように、得られた気体流を脱水セクションに送り、同様の条件下にそれを試験する:実験サイズの固定床反応器において脱水反応を行う。用いられる触媒は、リンPの含有率が3重量%になるようにHPOにより処理されたZSM-5ゼオライト80重量%を含む。試験の前に触媒をすり砕いた。
【0097】
操作条件は以下の通りである:HSVtotal=21h-1(HSVは、毎時空間速度(hourly space velocity)に対するものであり、導入された供給原料の1時間ごとの体積流量対触媒の体積の比として定義される)、P=0.2MPa。用いられた供給原料中のエタノールの転化率99.9%超を達成するように反応の温度を調節する。
【0098】
高純度エタノール90重量%および高純度水10重量%の混合物により試験を開始して、基準をつくる。48時間の安定化の後、先に回収された気体流を注入し、次いで、粗製エタノール供給原料を順番に注入する。
【0099】
表5は、反応器に導入された供給原料中のエタノールの転化率99.9%を達成するのに必要な温度を示す。
【0100】
【表5】
【0101】
部分気化セクションの出口のところで回収された気体流の存在中で、実施例2(本発明に合致しない)において記載されたように、すなわち、部分気化のみを含んでいるエタノール供給原料の処理の後に(酸性固体上の前処理を行わない)、転化率99.9%を達成するための脱水温度は、基準試験(高純度エタノールに10%の水が伴っている)と比べておよび実施例1(本発明に合致)において記載されたように、すなわち、酸性樹脂上の前処理および部分気化を含んでいるエタノール供給原料の処理の後に回収された気化済みエタノール供給原料と比べて大きく上昇する(+49℃)。反応温度におけるこの増大は、脱水触媒の早期の不活性化を指し示している。
【0102】
(実施例3:本発明に合致する)
実施例3は、脱水ユニットの上流で、エタノール供給原料の前処理および部分気化の段階の配列を含んでいる本発明による方法の利点を例証する。
【0103】
考慮下のエタノール供給原料を、コムギの発酵によって生じさせる。これは、粘液物(または粘液エタノール)、すなわち、単純な蒸留の後に得られる粗製エタノールである。
【0104】
エタノール供給原料を135℃に予熱し、次いで、(Axensからの)TA801樹脂上で前処理する。この前処理の間、樹脂上の全エタノール供給原料のHSVは、1h-1であり、温度は135℃であり、圧力を0.5MPaに維持する。粗製および前処理済みのエタノール供給原料の特徴を表6に与える。
【0105】
【表6】
【0106】
酸性樹脂上で前処理されたエタノール供給原料中の硫黄含有化合物の含有率は、高いままであるようである(硫黄65.5重量ppm)。対照的に、窒素含有率は、酸性樹脂上の前処理後に大きく低減させられる。
【0107】
さらに、この前処理の間に、エタノールの一部をジエチルエーテル(DEE)に転化させる。
【0108】
前処理済み供給原料を、次いで、部分気化させる。部分気化セクションの入口における前処理済みエタノール供給原料の圧力は0.45MPaである。フラッシュ容器に導入された前処理済みエタノール供給原料の81.2重量%に対応する気体流をフラッシュ容器の頂部のところで回収し、気化供給原料の18.8重量%を液体の形態でフラッシュ容器の底部のところで回収する。気化済みエタノール供給原料(気体流)および回収された液体流の特徴を表7に提示する。
【0109】
【表7】
【0110】
フラッシュ容器の底部のところで回収された液体流中に前処理済みエタノール供給原料の硫黄含有不純物の大部分が見出されることははっきりと明白である:前処理済み供給原料の硫黄の約98.5重量%(すなわち、(18.8%×343)/65.5)が液体流中に見出され、前処理済み供給原料からの硫黄の約1.5重量%(すなわち、(81.2%×1.2)/65.5)のみが頂部のところで回収された気体流中に見出される。
【0111】
樹脂上の前処理および次の部分気化の配列の後に回収された、気化済みエタノール供給原料の窒素および硫黄の含有率は低い:前記気化済みのエタノールの流れの全重量に相対して、気化済みエタノール供給原料の窒素含有率は0.7重量ppmであり、気化済みエタノール供給原料の硫黄含有率は1.2重量ppmである。
【0112】
(精製段階d))
液体流をストリッパ(または還流なしの蒸留塔)に送り、塔の頂部のところで回収されるエタノールの流れと、塔の底部のところで回収される水の流れおよび残渣とを生じさせる。
【0113】
(気体流の使用:脱水段階)
気化済み供給原料を脱水セクションに送る。実験サイズの固定床反応器において脱水反応を行う。用いられた触媒は、特許WO 2013/011208に記載されたようなエタノールの脱水のために用いられるものである。これは、リンPの含有率が3重量%になるようにHPOにより処理されたZSM-5ゼオライト80重量%を含む。試験の目的のために、触媒をすり砕いた。
【0114】
操作条件は以下の通りである:HSVtotal=21h-1(HSVは、毎時空間速度(hourly space velocity)に対するものであり、導入された供給原料の1時間ごとの体積流量対触媒の体積の比として定義される)、P=0.2MPa。用いられる供給原料中のエタノールの転化率99.9%超を達成するように反応の温度を調節する。
【0115】
高純度エタノール90重量%および高純度水10重量%の混合物により試験を開始し、基準をつくる。48時間の安定化の後、先に回収された気化済み供給原料を注入し、次いで、(未処理)粘液エタノールを順番に注入する。
【0116】
表8は、反応器に導入された供給原料中のエタノールの転化率99.9%を達成するのに必要な温度を示す。
【0117】
【表8】
【0118】
本発明による処理の終わりに回収された気化済み供給原料の存在中で、転化率99.9%を達成するための温度は、基準の高純度エタノール供給原料と比較して変わらないようである。対照的に、導入されるエタノールが(未処理)粘液エタノールである場合、転化率99.9%を維持するために45℃温度を上昇させることが必要である。それ故に、脱水触媒の耐用期間は、本発明の方法によってエタノール供給原料を処理する場合に、粗製エタノール供給原料(粘液エタノール)と比べて延長されることになる。
【0119】
実施例1(乾式製粉タイプの方法によるコムギの発酵に由来するエタノール供給原料を処理する)および実施例3(エタノール供給原料=粘液エタノールを処理する)において記載された試験の比較によって、本発明に合致する処理方法により、脱水のためのエタノール供給原料の供給源を多様化させることが可能となることが実証される。
【0120】
(実施例4:本発明に合致しない)
実施例4は、部分気化の段階のみを含んでいるエタノール供給原料を処理する方法(本発明に合致しない)の脱水反応に関する効果を例証する。
【0121】
この実施例において、考慮下のエタノール供給原料は、実施例3のものと同一である:粘液エタノール。
【0122】
エタノール供給原料を部分気化セクションに、0.45MPaの入口圧力で送る。エタノール供給原料の重量の82.7重量%に対応する気体流と、フラッシュ容器の底部のところのエタノール供給原料の重量の17.3重量%に対応する液体流とを生じさせるように温度を調節する。回収される気体および液体の流れの特徴を表9に提示する。
【0123】
【表9】
【0124】
実施例3に記載されているように、得られた気体流を脱水セクションに送り、類似の条件下に試験する:実験サイズの固定床反応器において脱水反応を行う。用いられた触媒は、リンPの含有率が3重量%になるようにHPOにより処理されたZSM-5ゼオライト80重量%を含む。試験の前に触媒をすり砕いた。
【0125】
操作条件は以下の通りである:HSVtotal=21h-1(HSVは、毎時空間速度(hourly space velocity)に対するものであり、導入された供給原料の1時間ごとの体積流量対触媒の体積の比として定義される)、P=0.2MPa。用いられた供給原料中のエタノールの転化率99.9%超を達成するように反応の温度を調節する。
【0126】
高純度エタノール90重量%および高純度水10重量%の混合物により試験を開始して、基準をつくる。48時間の安定化の後、先に回収された気体流を注入し、次いで、粘液エタノール(すなわち、粗製エタノール供給原料)を順番に注入する。
【0127】
表10は、反応器に導入された供給原料中のエタノールの転化率99.9%を達成するのに必要な温度を示す。
【0128】
【表10】
【0129】
部分気化セクションの出口において回収された気体流の存在中で、実施例4(本発明に合致しない)において記載されたように、すなわち、(酸性固体上の前処理を行わず)部分気化のみを含んでいるエタノール供給原料の処理の後に、転化率99.9%を達成するための脱水温度は、基準試験(高純度エタノールに10%の水が伴う)と比べておよび実施例3(本発明に合致する)において記載されたように、すなわち、酸性樹脂上の前処理および部分気化の後に回収された気化済みエタノール供給原料と比べて上昇する(+38℃)。たとえ反応温度におけるこの上昇が粘液エタノールの存在中で行われた試験(+45℃)と比較してより少なかったとしても、それは、脱水触媒の早期の不活性化を依然として指し示すものである。
【0130】
(実施例5:本発明に合致しない)
実施例5は、樹脂上の前処理のみを含んでいるエタノール供給原料を処理する方法(本発明に合致しない)の脱水反応に関する効果を例証する。
【0131】
考慮下のエタノール供給原料を、コムギの発酵によって生じさせる。これは粘液物(または粘液エタノール)、すなわち、単純な蒸留の後に得られた粗製エタノールである。
【0132】
実施例3に記載されたように、エタノール供給原料(または粘液エタノール)を135℃に予熱し、次いで、(Axensからの)TA801樹脂上で前処理する。この前処理の間、温度は135℃であり、0.5MPaに圧力を維持する。(未処理)粘液エタノールおよび前処理済みエタノール供給原料は、表6に与えられるものに類似する特徴を有している。
【0133】
前処理済みエタノール供給原料を試験のために脱水セクションに直接的に送る。
【0134】
試験パラメータは、実施例3および4に記載されたものと同一である(触媒、P、HSV)。
【0135】
同様に、高純度エタノール90重量%および高純度水10重量%の混合物により試験を開始し、基準をつくる。48時間の安定化の後、樹脂上で前処理されたエタノール供給原料を注入する。反応器に導入された供給原料中のエタノールの転化率99.9%超を達成するように反応の温度を調節する。表11は、反応器に導入された供給原料中のエタノールの転化率99.9%を達成するのに必要な温度を示す。
【0136】
【表11】
【0137】
粘液エタノールに由来するエタノール供給原料が、樹脂上の前処理の段階のみを経る場合、転化率99.9%を達成するために30℃温度を上昇させることが必要である。この上昇は、確かに、未処理粘液エタノールによる(表8によれば+45℃)より低いが、依然として大きいままであり、脱水触媒の耐用期間を有意に低減させる。
【図面の簡単な説明】
【0138】
図1】アルコール性供給原料の本発明による処理方法の実施形態と脱水セクションを模式的に示す。
図1