(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
B60Q 1/04 20060101AFI20240523BHJP
B60Q 1/12 20060101ALI20240523BHJP
F21V 14/04 20060101ALI20240523BHJP
B60Q 1/14 20060101ALN20240523BHJP
【FI】
B60Q1/04 Z
B60Q1/12 100
F21V14/04
B60Q1/14 A
(21)【出願番号】P 2021542893
(86)(22)【出願日】2020-08-24
(86)【国際出願番号】 JP2020031857
(87)【国際公開番号】W WO2021039724
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2023-05-16
(31)【優先権主張番号】P 2019155854
(32)【優先日】2019-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】久保 雄紀
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】川端 直樹
(72)【発明者】
【氏名】上杉 篤志
【審査官】野木 新治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/104319(WO,A1)
【文献】特開2016-015332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60Q 1/04
B60Q 1/12
F21V 14/04
B60Q 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別にオン、オフが切りかえ可能な複数の発光ユニットと、前記複数の発光ユニットそれぞれのビームを走査し、前記複数の発光ユニットに対応する複数の照射エリアを照射するスキャン光学系と、を含む配光可変ランプと、
前記配光可変ランプを制御し、前記複数の照射エリアのオン、オフを切りかえるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、ある照射エリアをオンからオフに切りかえる際に、(i)切りかえ対象の前記照射エリアが基準位置を跨ぐ場合、当該照射エリアの右端および左端を前記基準位置に向かって移動させ、
前記コントローラは、ある照射エリアをオンからオフに切りかえる際に、
(ii)切りかえ対象の前記照射エリアが前記基準位置より左側に位置する場合、当該照射エリアの前記左端を前記右端に向かって移動させ、
(iii)切りかえ対象の前記照射エリアが前記基準位置より右側に位置する場合、当該照射エリアの前記右端を前記左端に向かって移動させることを特徴とす
る車両用灯具。
【請求項2】
前記コントローラは、ある照射エリアをオフからオンに切りかえる際に、(iv)切りかえ対象の前記照射エリアが基準位置を跨ぐ場合、当該照射エリアを前記基準位置を始点として時間とともに広げていくことを特徴とする請求項
1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記コントローラは、ある照射エリアをオフからオンに切りかえる際に、
(v)切りかえ対象の前記照射エリアが前記基準位置より左側に位置する場合、右端を始点として当該照射エリアを時間とともに広げていき、
(vi)切りかえ対象の前記照射エリアが前記基準位置より右側に位置する場合、左端を始点として当該照射エリアを時間とともに広げていくことを特徴とする請求項
2に記載の車両用灯具。
【請求項4】
二以上の照射エリアをオンからオフに切りかえる際に、切りかえ対象の前記二以上の照射エリアそれぞれの遷移時間は等しいことを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記コントローラには、前記複数の照射エリアのオン、オフの組み合わせが異なる複数の基本配光パターンが規定され、
(i)の制御は、前記基本配光パターンを切りかえる際に適用されることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項6】
(i)の制御は、電子スイブルにともなってオンからオフに切りかえられる照射エリアに適用されることを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項7】
個別にオン、オフが切りかえ可能な複数の発光ユニットと、前記複数の発光ユニットそれぞれのビームを走査し、前記複数の発光ユニットに対応する複数の照射エリアを照射するスキャン光学系と、を含む配光可変ランプと、
前記配光可変ランプを制御し、前記複数の照射エリアのオン、オフを切りかえるコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、ある照射エリアをオフからオンに切りかえる際に、(iv)切りかえ対象の前記照射エリアが基準位置を跨ぐ場合、当該照射エリアを前記基準位置から時間とともに広げていき、
前記コントローラは、ある照射エリアをオフからオンに切りかえる際に、
(v)切りかえ対象の前記照射エリアが前記基準位置より左側に位置する場合、右端を始点として当該照射エリアを時間とともに広げていき、
(vi)切りかえ対象の前記照射エリアが前記基準位置より右側に位置する場合、左端を始点として当該照射エリアを時間とともに広げていくことを特徴とす
る車両用灯具。
【請求項8】
二以上の照射エリアをオフからオンに切りかえる際に、切りかえ対象の前記二以上の照射エリアそれぞれの遷移時間は等しいことを特徴とする請求項
7に記載の車両用灯具。
【請求項9】
前記コントローラには、前記複数の照射エリアのオン、オフの組み合わせが異なる複数の基本配光パターンが規定され、
(iv)の制御は、前記基本配光パターンを切りかえる際に適用されることを特徴とする請求項
6または7に記載の車両用灯具。
【請求項10】
(iv)の制御は、電子スイブルにともなってオフからオンに切りかえられる照射エリアに適用されることを特徴とする請求項
6または7に記載の車両用灯具。
【請求項11】
前記基準位置は、全照射エリアの水平方向の中心であることを特徴とする請求項1から
10のいずれかに記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などに用いられる車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用灯具は、一般にロービームとハイビームとを切りかえることが可能である。ロービームは、自車近傍を所定の照度で照明するものであって、対向車や先行車にグレアを与えないよう配光規定が定められており、主に市街地を走行する場合に用いられる。一方、ハイビームは、前方の広範囲および遠方を比較的高い照度で照明するものであり、主に対向車や先行車が少ない道路を高速走行する場合に用いられる。したがって、ハイビームはロービームと比較してより運転者による視認性に優れているが、車両前方に存在する車両の運転者や歩行者にグレアを与えてしまうという問題がある。
【0003】
近年、車両の周囲の状態にもとづいて、ハイビームの配光パターンを動的、適応的に制御するADB(Adaptive Driving Beam)技術が提案されている。ADB技術は、車両の前方の先行車両、対向車両や歩行者の有無を検出し、車両あるいは歩行者に対応する領域を減光するなどして、車両あるいは歩行者に与えるグレアを低減するものである。
【0004】
ADB機能を実現する方式として、アクチュエータを制御するシャッタ方式、ロータリー方式、LEDアレイ方式などが提案されている。シャッタ方式やロータリー方式は、遮光領域の幅を連続的に変化させることが可能であるが、遮光領域の数が1個に制限される。LEDアレイ方式は、遮光領域を複数個、設定することが可能であるが、遮光領域の幅が、LEDチップの照射幅に制約されるため、離散的となる。
【0005】
本出願人は、これらの問題点を解決可能なADB方式として、ブレードスキャン方式を提案している(特許文献1、2参照)。ブレードスキャン方式とは、回転するリフレクタ(ブレード)に光を入射し、リフレクタの回転位置に応じた角度で入射光を反射して反射光を車両前方で走査しつつ、光源の点消灯あるいは光量を、リフレクタの回転位置に応じて変化させることで、車両前方に、所望の配光パターンを形成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-006192号公報
【文献】国際公開第2016/104319号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示される車両用灯具は、点消灯が個別に制御可能な複数の発光ユニットを備える。複数の発光ユニットの出射光(ビーム)は、高速に移動するリフレクタによって反射され、車両前方で水平方向に走査される。配光パターンは、複数の発光ユニットからのビームの重ね合わせとなる。
【0008】
図1(a)、(b)は、複数の発光ユニットによる配光パターンの形成を説明する図である。ここでは説明の簡潔化のために、5チャンネルの発光ユニットを考える。たとえば、ハイビームは、車両の直進方向を中心として、左方向、右方向それぞれに25°、したがって合計で50°程度の範囲を照射する必要がある。
図1(a)に示すように、5チャンネルの発光ユニットは、水平方向にシフトした異なる照射エリアA
1~A
5をカバーしている。各チャンネルの発光ユニットのビームは、瞬時的にはあるスポット(瞬時照射スポットともいう)SPを照射する。この照射スポットSPが水平方向に走査されることにより、各チャンネルの照射エリアが照射される。この車両用灯具により形成される配光パターンは、
図1(b)に示すように、5チャンネルの照射エリアA
1~A
5の重ね合わせとなる。
【0009】
特許文献1には、ノーマルモード、モータウェイモード、タウンモードなどの複数の配光モードが切りかえ可能な灯具が開示される。配光モードごとに、異なる基本配光パターンが定められており、基本配光パターンは、複数のチャンネルの発光ユニットのオン、オフの組み合わせで規定される。車両用灯具は、走行シーンに応じた配光モードを選択し、走行シーンに最適な基本配光パターンを形成する。そして、対向車や先行車が検出されると、基本配光パターンをベースとして、対向車や先行車が存在する範囲を部分的に遮光する。
【0010】
基本配光パターンの切りかえにともない、各チャンネルの照射エリアのオン、オフが変化する。この際に、チャンネルごとの照射エリアがばらばらに点灯し、あるいはばらばらに消灯すると、運転者(ユーザ)に違和感を与える。
【0011】
本発明はかかる状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、照射エリアのオン、オフを切りかえる際の違和感を低減した車両用灯具の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様の車両用灯具は、配光可変ランプとコントローラを備える。配光可変ランプは、個別にオン、オフが切りかえ可能な複数の発光ユニットと、複数の発光ユニットそれぞれのビームを走査し、複数の発光ユニットに対応する複数の照射エリアを照射するスキャン光学系と、を含む配光可変ランプと、を含む。コントローラは、配光可変ランプを制御し、複数の照射エリアのオン、オフを切りかえる。コントローラは、ある照射エリアをオンからオフに切りかえる際に、(i)切りかえ対象の照射エリアが基準位置を跨ぐ場合、当該照射エリアの右端および左端を基準位置に向かって移動させる。
【0013】
本発明の別の態様もまた、車両用灯具である。この車両用灯具は、配光可変ランプとコントローラを備える。配光可変ランプは、個別にオン、オフが切りかえ可能な複数の発光ユニットと、複数の発光ユニットそれぞれのビームを走査し、複数の発光ユニットに対応する複数の照射エリアを照射するスキャン光学系と、を含む。コントローラは、配光可変ランプを制御し、複数の照射エリアのオン、オフを切りかえる。コントローラは、ある照射エリアをオフからオンに切りかえる際に、(iv)切りかえ対象の照射エリアが基準位置を跨ぐ場合、当該照射エリアを基準位置から時間とともに広げていく。
【発明の効果】
【0014】
本発明のある態様によれば、照射エリアのオン、オフを切りかえる際の違和感を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1(a)、(b)は、複数の発光ユニットによる配光パターンの形成を説明する図である。
【
図2】実施の形態に係る車両用灯具を備える灯具システムのブロック図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、基準位置を跨ぐ照射エリアの消灯制御を説明する図である。
【
図4】
図4(a)、(b)は、基準位置の左側に位置する照射エリアの消灯制御を説明する図である。
【
図5】
図5(a)、(b)は、基準位置の左側に位置する照射エリアの消灯制御を説明する図である。
【
図6】基準位置を跨ぐ照射エリアの点灯制御を説明する図である。
【
図7】基準位置の左側に位置する照射エリアの点灯制御を説明する図である。
【
図8】基準位置の右に位置する照射エリアの点灯制御を説明する図である。
【
図9】
図9(a)は、実施の形態における2つの照射エリアの変化を示す図であり、
図9(b)は、比較技術における2つの照射エリアの変化を示す図である。
【
図10】実施の形態に係る車両用灯具の斜視図である。
【
図11】
図11(a)は、複数の発光ユニットのレイアウトの一例を示す図であり、
図11(b)は、複数の発光ユニットが受け持つ照射エリアの水平方向の範囲を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(実施の形態の概要)
本明細書に開示される一実施の形態は、車両用灯具に関する。この車両用灯具は、配光可変ランプとコントローラを備える。配光可変ランプは、個別にオン、オフが切りかえ可能な複数の発光ユニットと、複数の発光ユニットそれぞれのビームを走査し、複数の発光ユニットに対応する複数の照射エリアを照射するスキャン光学系と、を含む。コントローラは、配光可変ランプを制御し、複数の照射エリアのオン、オフを切りかえる。コントローラは、ある照射エリアをオンからオフに切りかえる際に、(i)切りかえ対象の照射エリアが基準位置を跨ぐ場合、当該照射エリアの右端および左端を基準位置に向かって移動させる。
【0017】
この実施の形態によると、照射エリアが基準位置に向かって徐々に消灯していくため、全体的な統一感を生じさせ、違和感を軽減できる。
【0018】
さらにコントローラは、(ii)切りかえ対象の照射エリアが基準位置より左側に位置する場合、当該照射エリアの左端を右端に向かって移動させ、(iii)切りかえ対象の照射エリアが基準位置より右側に位置する場合、当該照射エリアの右端を左端に向かって移動させる。これにより、さらに全体的な統一感を生じさせ、違和感を軽減できる。
【0019】
二以上の照射エリアをオンからオフに切りかえる際に、切りかえ対象の二以上の照射エリアそれぞれの遷移時間は等しくてもよい。これにより、同時に消灯の遷移が完了するため、さらに統一感を高めることができる。
【0020】
コントローラには、複数の照射エリアのオン、オフの組み合わせが異なる複数の基本配光パターンが規定され、(i)~(iii)の制御は、基本配光パターンを切りかえる際に適用されてもよい。
【0021】
(i)~(iii)の制御は、電子スイブルにともなってオンからオフに切りかえられる照射エリアに適用されてもよい。
【0022】
一実施の形態において、コントローラは、ある照射エリアをオフからオンに切りかえる際に、(iv)切りかえ対象の照射エリアが基準位置を跨ぐ場合、当該照射エリアを基準位置を始点として時間とともに広げていく。
【0023】
この実施の形態によると、照射エリアが基準位置を中心として徐々に点灯していくため、全体的な統一感を生じさせ、違和感を軽減できる。
【0024】
コントローラは、(v)切りかえ対象の照射エリアが基準位置より左側に位置する場合、右端を始点として当該照射エリアを時間とともに広げていき、(vi)切りかえ対象の照射エリアが基準位置より右側に位置する場合、左端を始点として当該照射エリアを時間とともに広げていく。これによりさらに統一感を高め、違和感を軽減できる。
【0025】
二以上の照射エリアをオフからオンに切りかえる際に、切りかえ対象の二以上の照射エリアそれぞれの遷移時間は等しくてもよい。これにより、同時に点灯の遷移が完了するため、さらに統一感を高めることができる。
【0026】
コントローラには、複数の照射エリアのオン、オフの組み合わせが異なる複数の基本配光パターンが規定され、(iv)~(vi)の制御は、基本配光パターンを切りかえる際に適用されてもよい。
【0027】
(iv)~(vi)の制御は、電子スイブルにともなってオフからオンに切りかえられる照射エリアに適用されてもよい。
【0028】
基準位置は、全照射エリアの水平方向の中心であってもよい。全照射エリアの水平方向の中心は、車両の進行方向に相当し、運転者が最も注視する方向といえる。この方向を基準として、複数の照射エリアのオン、オフを切りかえることにより、違和感をより低減できる。
【0029】
(実施の形態)
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0030】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0031】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0032】
図2は、実施の形態に係る車両用灯具100を備える灯具システム2のブロック図である。車両用灯具100は、ADB用ECU(Electronic Control Unit)4から、配光パターンを指示する制御データを受け、車両前方に制御データに応じた配光パターンを形成する。なおADB用ECU4は、車両用灯具1に内蔵されてもよい。
【0033】
車両用灯具100は、ロービームユニット102およびハイビームユニット104を含む。ロービームユニット102は、固定された配光パターンを有し、仮想鉛直スクリーン700上の所定の領域702を照射する。
【0034】
ハイビームユニット104はADB(Adaptive Driving Beam)であり、車両前方の状況や自車の状態に応じて、配光パターン704を適応的に制御可能に構成される。ハイビームユニット104は、配光可変ランプ110およびコントローラ120を備える。
【0035】
配光可変ランプ110は、配光が可変に構成される。配光可変ランプ110は、複数(Nチャンネル)の発光ユニット112_1~112_N、ドライバ回路114、スキャン光学系130を備える。
【0036】
複数の発光ユニット112_1~112_Nは、個別にオン、オフが切りかえ可能である。スキャン光学系130は、複数の発光ユニット112_1~112_NそれぞれのビームBM1~BMNを水平方向に走査し、複数の照射エリアA1~ANを照射する。複数の照射エリアA1~ANの組み合わせによって、ハイビームの可変の配光パターン704が形成される。たとえば走査周波数は100~200Hzであり、走査周期は10~5msとなる。
【0037】
ドライバ回路114は、複数の発光ユニット112_1~112_Nに流れる駆動電流を制御し、各発光ユニットのオン、オフおよび光量を制御する。
【0038】
車両用灯具100は、複数の配光モードが切りかえ可能に構成される。配光モードの種類は限定されないが、たとえばノーマルモード、タウンモード、モータウェイモード、降雨モードなどが例示される。複数の配光モードに対応して、複数の基本配光パターンが規定されている。基本配光パターンは、複数の照射エリアA1~ANのオン、オフと、複数の照射エリアA1~ANの明るさの組み合わせによって規定される。
【0039】
たとえばノーマルモードは、すべての照射エリアA1~ANがオンである。タウンモードでは、照度を低下させるために、複数の照射エリアA1~ANのうちいくつかがオフとされる。モータウェイモードでは、すべての照射エリアA1~ANがオンであり、より遠方を照射するために、照射エリアA1~ANの照度が、ノーマルモードより高く定められる。
【0040】
コントローラ120は、ADB用ECU4から配光パターンを指示する制御データS1を受ける。コントローラ120は、制御データS1にもとづいて、指示された配光パターンが車両前方に形成されるように配光可変ランプ110を制御する。制御データS1のフォーマットや信号形式は特に限定されない。
【0041】
ADB用ECU4からコントローラ120に送信される制御データS1は、配光モード、すなわち基本配光パターンを指定するモード指定データS11を含む。コントローラ120は、モード指定データS11が指定する基本配光パターンが得られるように、配光可変ランプ110を制御する。具体的には、コントローラ120には、基本配光パターンごとに、複数の発光ユニット112_1~112_Nのオン、オフおよび駆動電流の設定値のセットが規定されている。コントローラ120は、モード指定データS11に応じた設定値のセットにもとづいてドライバ回路114を制御する。
【0042】
また、ADB用ECU4は、車両前方に対向車や先行車が検出されると、対向車や先行車が存在する範囲、言い換えれば遮光すべき範囲を示す遮光データS12を生成し、コントローラ120に供給する。コントローラ120は、基本配光パターンのうち、遮光データS12が指定する遮光範囲を照射しないように、配光可変ランプ110を制御する。
【0043】
基本配光パターンの切りかえが発生すると、複数の照射エリアA1~ANのオン、オフが切りかわる。ここで、基本配光パターンを瞬時に不連続に変化させると、それまで光が照射されていたエリアが急に暗くなったり、照射領域が急に移動することとなり、運転者に不快感を与え、あるいは運転に支障が生ずるおそれがある。
【0044】
そこでコントローラ120は、基本配光パターンの変更が指示されると、変更後の基本配光パターンに向かって配光パターンを時間的に徐変させる。たとえば基本配光パターンの切りかえは、500ms~2秒程度の遷移時間τで行われる。
【0045】
照射エリアのオン、オフの切りかえは、照射エリアに位置に応じて異なった形態で行われる。オン、オフの切りかえに関連して、仮想鉛直スクリーン700には、水平方向に関して基準位置REFが定められる。たとえばこの基準位置REFは、仮想鉛直スクリーン700の垂直線(V線)、すなわち0°方向に設定されるものとする。
【0046】
はじめに照射エリアの消灯制御を説明する。
図3(a)、(b)は、基準位置REFを跨ぐ照射エリアA
iの消灯制御を説明する図である。照射エリアAiの左端E
L、右端E
Rの位置を、角度座標系でθ
L,θ
Rと表記する。
図3(a)の例では、θ
L<0°,0°<θ
Rが成り立つから、照射エリアA
iは基準位置REF(0°)を跨いでいるといえる。この場合、コントローラ120は、照射エリアA
iの左端E
Lおよび右端E
Rを、遷移時間τかけて基準位置(θ=0°)に向かって移動させる。これにより時間とともに照射エリアA
iの幅が狭まり、やがて照射エリアA
iが消失してオフとなる。
【0047】
図3(b)は、
図3(a)の照射エリアA
iの変化を示す図である。横軸は、エッジの位置(角度座標系)を、縦軸は時間を示す。時刻t
0に照射エリアA
iの消灯指示が発生する。左端E
Lは、速度θ
L/τで基準位置θに向かって右向きに移動する。右端E
Rは、速度θ
R/τで基準位置θに向かって左向きに移動する。時刻t
0から遷移時間τの経過後の時刻t
1に、左端E
Lと右端E
Rは同時に基準位置REFに到達し、照射エリアA
iのオフが完了する。
【0048】
図4(a)、(b)は、基準位置REFの左側に位置する照射エリアA
iの消灯制御を説明する図である。
図4(a)の例では、θ
L<0°,θ
R<0°が成り立つから、照射エリアA
iは基準位置REF(0°)の左側に位置するといえる。この場合、コントローラ120は、照射エリアA
iの右端E
Rを固定し、左端E
Lを遷移時間τかけて右端E
Rに向かって移動させる。これにより時間とともに照射エリアA
iの幅が狭まり、やがて照射エリアA
iが消失してオフとなる。
【0049】
図4(b)は、
図4(a)の照射エリアA
iの変化を示す図である。時刻t
0に照射エリアA
iの消灯指示が発生する。左端E
Lは、速度(θ
R-θ
L)/τで、右端E
Rに向かって右向きに移動する。時刻t
0から遷移時間τの経過後の時刻t
1に、左端E
Lが右端E
Rに到達し、照射エリアA
iのオフが完了する。
【0050】
図5(a)、(b)は、基準位置REFの左側に位置する照射エリアA
iの消灯制御を説明する図である。
図5(a)の例では、θ
L>0°,θ
R>0°が成り立つから、照射エリアA
iは基準位置REF(0°)の左側に位置するといえる。この場合、コントローラ120は、照射エリアA
iの左端E
Lを固定し、右端端E
Rを遷移時間τかけて左端E
Lに向かって移動させる。これにより時間とともに照射エリアA
iの幅が狭まり、やがて照射エリアA
iが消失してオフとなる。
【0051】
図5(b)は、
図5(a)の照射エリアA
iの変化を示す図である。時刻t
0に照射エリアA
iの消灯指示が発生する。右端E
Rは、速度(θ
R-θ
L)/τで、左端E
Lに向かって左向きに移動する。時刻t
0から遷移時間τの経過後の時刻t
1に、右端E
Rが左端E
Lに到達し、照射エリアA
iのオフが完了する。
【0052】
続いて、照射エリアの点灯制御を説明する。
図6は、基準位置REFを跨ぐ照射エリアA
iの点灯制御を説明する図である。コントローラ120は、照射エリアA
iを基準位置REFを始点として時間とともに広げていく。横軸は、エッジの位置(角度座標系)を、縦軸は時間を示す。時刻t
0に照射エリアA
iの点灯指示が発生すると、コントローラ120は、照射エリアA
iの左端E
Lおよび右端E
Rを、基準位置REF(0°)にセットする。左端E
Lは、速度θ
L/τで目標位置θ
Lに向かって左向きに移動し、右端E
Rは、速度θ
R/τで目標位置θ
Rに向かって右向きに移動する。時刻t
0から遷移時間τの経過後の時刻t
1に、左端E
Lと右端E
Rは同時に目標位置θ
L,θ
Rに到達し、照射エリアA
iのオンが完了する。
図6の点灯制御は、
図3(b)の消灯制御と正反対の処理といえる。
【0053】
図7は、基準位置REFの左側に位置する照射エリアA
iの点灯制御を説明する図である。コントローラ120は、照射エリアA
iが基準位置REFより左側に位置する場合、右端E
Rを始点として照射エリアA
iを時間とともに広げていく。時刻t
0に照射エリアA
iの点灯指示が発生すると、コントローラ120は、照射エリアA
iの左端E
Lおよび右端E
Rを、右端E
Rの目標位置θ
Rにセットする。そして右端E
Rを固定し、左端E
Lを、速度(θ
R-θ
L)/τで目標位置θ
Lに向かって左向きに移動させる。時刻t
0から遷移時間τの経過後の時刻t
1に、左端E
Lが目標位置θ
Lに到達し、照射エリアA
iのオンが完了する。
図7の点灯制御は、
図4(b)の消灯制御と正反対の処理といえる。
【0054】
図8は、基準位置REFの右に位置する照射エリアA
iの点灯制御を説明する図である。コントローラ120は、照射エリアA
iが基準位置REFより右側に位置する場合、左端E
Lを始点として照射エリアA
iを時間とともに広げていく。時刻t
0に照射エリアA
iの点灯指示が発生すると、コントローラ120は、照射エリアA
iの左端E
Lおよび右端E
Rを、左端E
Rの目標位置θ
Lにセットする。そして左端E
Lを固定し、右端E
Rを、速度(θ
R-θ
L)/τで目標位置θ
Rに向かって右向きに移動させる。時刻t
0から遷移時間τの経過後の時刻t
1に、右端E
Rが目標位置θ
Rに到達し、照射エリアA
iのオンが完了する。
図8の点灯制御は、
図5(b)の消灯制御と正反対の処理といえる。
【0055】
以上が車両用灯具100の動作である。この車両用灯具100によれば、いくつかの照射エリアを消灯する際に、各照射エリアの位置にかかわらず、基準位置に向かって徐々に消灯していくため、全体的な統一感を生じさせ、違和感を軽減できる。
【0056】
この利点は、2以上の照射エリアを同時に消灯する際に顕著となる。例として基準位置を跨ぐ2つの照射エリアを同時にオフする場合を考える。
図9(a)は、実施の形態における2つの照射エリアA
i,A
jの変化を示す図であり、
図9(b)は、比較技術における2つの照射エリアA
i,A
jの変化を示す図である。
図9(b)の比較技術では、各照射エリアA
i,A
jはそれぞれの中心に向かって消失していく。この場合、局所的に明るい2つの点が残留し、複数の照射エリアA
i,A
jが独立してバラバラに消灯するため、運転者に違和感を与えることとなる。これに対して、本実施の形態では、
図9(a)に示すように複数の照射エリアA
i,A
jが一体となって統一的に消灯していくこととなり、違和感を軽減できる。
【0057】
また車両用灯具100によれば、いくつかの照射エリアを点灯する際に、各照射エリアは、その位置にかかわらず、基準位置に近い側から徐々に点灯していくため、全体的な統一感を生じさせ、違和感を軽減できる。
図9(a)、(b)を、その時間軸を反転して参照する。
図9(b)の比較技術では、複数の照射エリアA
i,A
jがそれぞれの中央を始点として、独立して点灯していくため、統一感に乏しく、運転者に違和感を与える。これに対して
図9(a)の実施の形態では、複数の照射エリアA
i,A
jが、共通の基準位置REFを始点として、徐々に点灯していくため、統一感を高めることができ、違和感を軽減できる。
【0058】
なお、ハイビームからロービームに切り替える際に、複数の照射エリアがオフする。この場合に、
図3~
図5の制御を行ってもよいが、別の制御を行ってもよい。たとえば、照射エリアの幅を狭めずに、各照射エリアの明るさを時間とともに低下させてもよい。
【0059】
同様に、ロービームからハイビームに切り替える際に、複数の照射エリアがオンする。この場合には、
図6~
図8の制御を行ってもよいが、別の制御を行ってもよい。たとえば照射エリアの幅を変化させずに、各照射エリアの明るさを時間とともに増加させてもよい。
【0060】
図10は、実施の形態に係る車両用灯具100の斜視図である。
図10の車両用灯具1は、ブレードスキャン方式の配光可変ランプ110を有し、車両前方に多様な配光パターンを形成する。配光可変ランプ110は、複数の発光ユニット112、スキャン光学系130、投影光学系140を備える。
【0061】
複数の発光ユニット112は、コネクタ113を介して図示しない点灯回路と接続される。発光ユニット112は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)などの半導体光源を含む。ひとつの発光ユニット112は、輝度および点消灯の制御の最小単位を構成している。ひとつの発光ユニット112は、ひとつのLEDチップ(LDチップ)であってもよいし、直列および/または並列に接続された複数のLEDチップ(LDチップ)を含んでもよい。
【0062】
スキャン光学系130は、複数の発光ユニット112の出射ビームを受け、周期運動を繰り返すことによりその反射光を車両前方で横方向(図中、H方向)に走査する。
【0063】
具体的にはスキャン光学系130は、リフレクタ132およびモータ134を備える。リフレクタ132は、モータ134のロータに取り付けられており、回転運動を行なう。本実施の形態においてリフレクタ132は2枚設けられており、モータ134の1回転で、照射スポットは2回、走査される。したがって走査周波数は、モータの回転数の2倍となる。なおリフレクタ132の枚数は特に限定されない。
【0064】
投影光学系140は、スキャン光学系130の出射光を車両前方の仮想鉛直スクリーン上に投影する。投影光学系140は反射光学系、透過光学系、それらの組み合わせで構成することができる。
【0065】
ある時刻において各発光ユニット112のビームは、リフレクタ132の位置(ロータの回転角)に応じた角度で反射され、そのときの反射光は、車両前方の仮想鉛直スクリーン上に、ひとつの照射スポットを形成する。リフレクタ132の位置が変化すると、反射角が変化し、照射スポットの位置が移動する。
【0066】
スキャン光学系130のモータ134を高速に回転させることにより、照射スポットが仮想鉛直スクリーン上で走査され、これにより車両前方に配光パターンが形成される。
【0067】
図11(a)は、複数の発光ユニット112のレイアウトの一例を示す図である。本実施の形態において複数の発光ユニット112の個数は10である。
【0068】
複数の発光ユニット112は高さ方向に2段に配置され、下段には8個の発光ユニット112_1~112_8が配置され、上段には2個の発光ユニット112_9,112_10が配置される。これにより、仮想鉛直スクリーン上のH線の近傍に、照度の高い領域を形成できる。
【0069】
図11(b)は、複数の発光ユニット112_1~112_10が受け持つ照射エリアA
1~A
10の水平方向の範囲を示す図である。
【0070】
この例では、第3~第7、第9、第10チャンネルの照射エリアA3~A7,A9,A10が、基準位置(0°)を跨いでおり、第1、第2チャンネルの照射エリアA1,A2が、基準位置(0°)の左側に位置し、第8チャンネルの照射エリアA8が、基準位置(0°)の右側に位置している。
【0071】
図12は、車両用灯具100の構成例を示す回路図である。
図12には1チャンネルの発光ユニット112の駆動に関連する部分のみが示される。ADB用ECU4は、カメラ情報S3や車両情報S2を受ける。ADB用ECU4は、カメラ情報S3にもとづいて、車両前方の状況、具体的には対向車、先行車、歩行者などの物標の位置を検出する。またADB用ECU4は、車両情報S2にもとづいて、現在の車速、ステアリング角などを検出する。ADB用ECU4はこれらの情報にもとづいて、車両前方に照射すべき配光パターンを決定し、配光パターンを指示する制御データS1を車両用灯具1に送信する。上述のように制御データS1は、配光モード(基本配光パターン)を指示するモード指定データ)S11と、遮光すべき範囲を示す遮光データS12を含む。
【0072】
点灯回路200は、制御データS1にもとづいてリフレクタ132の回転と同期しながら発光ユニット112の光量(輝度)を制御する。点灯回路200は、位置検出器202、周期演算部204、光量演算部210、ドライバ220(
図2の114)を備える。周期演算部204および光量演算部210を、灯具ECU206と称する。灯具ECU206は、マイクロコントローラあるいはマイクロプロセッサ、あるいはASIC(Application Specified IC)を用いて構成できる。灯具ECU206は、
図2のコントローラ120に対応する。
【0073】
位置検出器202は、リフレクタ132の所定の基準箇所が所定位置を通過するタイミングを示す位置検出信号S4を生成する。たとえば基準箇所は、2枚のリフレクタ132の端部(区切れ目)であってもよいし、各リフレクタの中央であってもよく、任意の箇所とすることができる。
【0074】
リフレクタ132を回転させるモータ134には、ホール素子が取り付けられていてもよい。この場合、ホール素子からのホール信号は、ロータの位置、すなわちブレードの位置(以下、ブレード座標という)に応じた周期波形となる。位置検出器202は、ホール信号の極性が反転するタイミングを検出してもよく、具体的には一対のホール信号を比較するホールコンパレータで構成してもよい。
【0075】
周期演算部204は、位置検出器202からの位置検出信号S4にもとづき、ブレードの周期運動の周期Tpを演算する。たとえば位置検出信号S4がホールコンパレータの出力である場合、周期演算部204は、位置検出信号S4のエッジの間隔(半周期)を測定する。周期演算部204は、エッジの間隔をクロック信号を利用してカウントするカウンタで構成することができる。周期演算部204は、測定した周期を示す周期情報S5を出力する。
【0076】
光量演算部210は、制御データS1を受け、位置検出信号S4および周期情報S5が示す周期Tpにもとづいて、各時刻において発光ユニット112が発生すべき光量を演算する。
【0077】
たとえば光量演算部210は、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、DSP(Digital Signal Processor)やCPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specified IC)などで構成され、位置情報発生器212および光量コントローラ214と称される機能ブロックを含む。
【0078】
位置情報発生器212は、周期情報S5および位置検出信号S4にもとづいて、各時刻におけるリフレクタ132の位置を示す位置情報S6を生成する。たとえば位置情報発生器212は、位置検出信号S4のエッジごとにリセットされ、周期TpをN分割(Nは整数)して得られる単位時間ごとにカウントアップ(あるいはカウントダウン)するカウンタで構成してもよい。
【0079】
光量コントローラ214は、制御データS1および位置情報S6にもとづき、各時刻における発光ユニット112の目標光量(点灯、消灯)を演算し、目標光量を指示する光量指令値S7を生成する。
【0080】
ブレード座標X(すなわち位置情報S6)と照射座標θの対応関係は、発光ユニット112およびリフレクタ132の幾何学的な配置関係から導くことができる。光量コントローラ214は、位置情報S6と照射座標θの対応関係を保持するテーブルを含んでもよいし、それらの対応関係を記述する演算式を保持してもよい。
【0081】
そして光量コントローラ214は、制御データS1に含まれる照射座標θで記述されるデータθL,θRを、ブレード座標のデータXL、XRに変換し、各時刻の光量を決定してもよい。あるいは光量コントローラ214は、位置情報S6が示すブレード座標Xを照射座標θに変換し、各時刻の光量を決定してもよい。
【0082】
光量演算部210は、周期Tpが所定のしきい値より長いとき、つまりモータ134の回転数が遅い場合には、発光ユニット112を消灯することが好ましい。リフレクタ132の運動周期Tpが長い場合に発光ユニット112を点灯すると運転者がちらつき(フリッカともいう)を感じることとなるため、そのような状況では発光ユニット112を消灯することで不快感を防止できる。
【0083】
たとえば照射スポットSPの走査周波数が50Hz以下のときに、発光ユニット112を消灯することとしてもよい。経験的に50Hzを下回ると、ちらつきが人間の目に知覚されることが知られている。2枚のリフレクタ132が使用される場合、モータ134の回転数が1500rpm以上であれば、ちらつきは知覚されないと言える。
【0084】
ドライバ220は、光量指令値S7を受け、各時刻において、光量演算部210が演算した光量が得られるように発光ユニット112を点灯させる。
【0085】
以上が点灯回路200およびそれを備える車両用灯具1の構成である。続いてその動作を説明する。
【0086】
図13は、
図12の点灯回路200の動作を説明する図である。
図13には1チャンネルの照射エリアA
iが示される。横軸は、照射座標θであり、ブレード座標Xであり、時間tでありえ、それらは1対1で対応づけられる。この例では照射エリアA
iのうち二箇所R
OFF1,R
OFF2が遮光される。たとえば遮光データS12は、2つの遮光エリアの両端を示すデータθ
L1,θ
R1,θ
L2,θ
R2を含んでもよい。
【0087】
照射スポットSPiは、リフレクタ132がある位置で停止しているときに、1個の発光ユニット112_iが照射する部分を示している。時間の経過とともにリフレクタ132が回転するにしたがい、照射スポットSPiは照射座標が増大する方向に走査される。照射スポットSPiの走査方向側の一辺(右端)をリーディングエッジLE、反対の一辺(左端)をトレイリングエッジTEと称する。本実施の形態では、リーディングエッジLEの座標を基準として、光量の制御を行なうものとする。
【0088】
リフレクタ132を位置決めするモータ134は、所定の回転数で回転している。たとえばモータ134は、6000rpmで回転する。ただしモータ134の回転数は完全に一定に保つことはできず、またモータ134の回転は灯具ECU206の制御下にはなく、フリーラン状態にあると言え、灯具ECU206がモータ134(リフレクタ132)の状態に適応しつつ、発光ユニット112を制御する。
【0089】
ある時刻t0において、位置検出信号S4がアサートされると、その時刻がブレード座標Xの基準値(たとえば0)に対応づけられ、その後、時間とともにブレードの位置を示す位置情報S6の値が増加する。つまり時間tと位置情報S6が1対1で対応づけられる。傾きは、直前に演算された位置検出信号S4の周期Tpから定められる。
【0090】
遮光領域ROFF1,ROFF2それぞれの左端座標θL,右端座標θRは、ブレード座標XのデータXL,XRに変換される。そして光量コントローラ214は、遮光領域ROFF1,ROFF2における光量がゼロとなるように、光量指令値S7を生成する。
【0091】
図13に示すように、光量指令値S7がオフからオンに切りかわるタイミングは、遮光領域の範囲とΔXだけずれている。ΔXは、照射スポットSPの幅である。この理由を説明する。ブレードスキャン方式では照射スポットSPを走査して配光パターンを形成するため、照射エリアA
iの各点の明るさは、照射スポットSPの積分値で与えられる。したがってもしオンからオンの切りかえをリーディングエッジLEの座標を基準として行なうと、遮光領域R
OFFに光が照射されてしまう。そこで光量コントローラ214は、リーディングエッジLEの座標が遮光領域の始端(照射エリアの終端)X
Lとなると、発光ユニット112をオンからオフに切りかえる。また光量コントローラ214は、トレイリングエッジTEの座標が遮光領域の終端(照射エリアの始端)X
Rとなると、言い換えればリーディングエッジLEの座標がX
R+ΔXとなると、発光ユニット112をオフからオンに切りかえることが望ましい。これにより遮光領域R
OFFを暗くできる。
【0092】
以上が点灯回路200の動作である。この点灯回路200によれば、リフレクタ132の周期運動が、点灯回路200の制御下にない場合においても、リフレクタ132の周期Tpと位置検出信号S4にもとづいて、各時刻におけるリフレクタ132の位置を推定できる。そして推定されたリフレクタ132の位置から、反射光の照射スポットSPの位置が推定可能である。したがって、リフレクタ132の位置の変化にあわせて、発光ユニット112の光量を時々刻々と変化させることができ、所望の配光パターンを形成することができる。
【0093】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0094】
(変形例1)
実施の形態では、基本配光パターンの切り替えに際して、ある照射エリアA
iのオン、オフが発生する場合に、
図3~
図8に示すような制御を行うこととしたが、その限りでない。たとえば
図3~
図8の制御を、電子スイブルにともなう照射エリアのオン、オフに適用してもよい。
【0095】
(変形例2)
照射エリアAのオフに際して
図3~
図5の制御を適用し、照射エリアAの点灯に関しては別の制御を適用してもよい。反対に、照射エリアAのオンに際して
図6~
図8の制御を適用し、照射エリアAの消灯に関しては別の制御を適用してもよい。
【0096】
(変形例3)
実施の形態では、基準位置を跨がない照射エリアが存在する場合を説明したが、すべての照射エリアが基準位置を跨ぐように設計してもよい。この場合、
図3、
図6の制御のみが適用される。
【0097】
実施の形態にもとづき、具体的な語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明は、自動車などに用いられる車両用灯具に関する。
【符号の説明】
【0099】
1 車両用灯具
2 灯具システム
4 ADB用ECU
S1 制御データ
S11 モード指定データ
S12 遮光データ
S2 車両情報
S3 カメラ情報
S4 位置検出信号
S5 周期情報
S6 位置情報
S7 光量指令値
100 車両用灯具
102 ロービームユニット
104 ハイビームユニット
110 配光可変ランプ
112 発光ユニット
114 ドライバ回路
120 コントローラ
130 スキャン光学系
132 リフレクタ
134 モータ
140 投影光学系
200 点灯回路
202 位置検出器
204 周期演算部
206 灯具ECU
210 光量演算部
212 位置情報発生器
214 光量コントローラ
216 徐変コントローラ
220 ドライバ