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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】コンタクトレンズのための包装溶液
(51)【国際特許分類】
   G02C 13/00 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
G02C13/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021543383
(86)(22)【出願日】2020-01-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-09
(86)【国際出願番号】 US2020015307
(87)【国際公開番号】W WO2020159915
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】62/798,096
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】391008847
【氏名又は名称】ボシュ・アンド・ロム・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BAUSCH & LOMB INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マーク、アナルス
(72)【発明者】
【氏名】ヌニェス、イヴァン、エム.
(72)【発明者】
【氏名】バーニアック、ビッキー
(72)【発明者】
【氏名】ハント、ジェニファー、エム.
(72)【発明者】
【氏名】コーラード、リン
(72)【発明者】
【氏名】キュビ、キーラ、エム.
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-532196(JP,A)
【文献】特表2012-514240(JP,A)
【文献】特表2015-525254(JP,A)
【文献】特表2011-508908(JP,A)
【文献】特許第4987170(JP,B1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0162661(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106496568(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密封容器を含む、眼用デバイスの保管のための包装システムであって、前記密封容器は、親水性単位を含む1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含む熱滅菌水性包装溶液に浸漬された未使用の眼用デバイスを含み、1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーは疎水性末端基および親水性末端基を有し、1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーの親水性末端基は-OHまたは-CNであり、前記水性包装溶液が、少なくとも200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、6~9のpHを有する、包装システム。
【請求項2】
前記親水性単位が、アクリルアミド、アセトアミド、ホルムアミド、環状ラクタム、(メタ)アクリレート化アルコール、(メタ)アクリレート化ポリ(アルキレンオキシ)、エチレン系不飽和カルボン酸、親水性ビニルカーボネート、親水性ビニルカルバメート、親水性オキサゾロンモノマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つのエチレン系不飽和重合性親水性モノマーに由来する、請求項1に記載の包装システム。
【請求項3】
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーは、1,500Da~75,000Daの範囲の数平均分子量を有する、請求項1または2に記載の包装システム。
【請求項4】
前記未使用の眼用デバイスは未使用のコンタクトレンズである、請求項1に記載の包装システム。
【請求項5】
前記親水性単位が、10~3000単位含まれる、請求項1~4に記載の包装システム。
【請求項6】
前記水性包装溶液中の前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーの濃度が、0.1~5% w/wの範囲である、請求項1~5に記載の包装システム。
【請求項7】
前記疎水性末端基が、直鎖または分枝鎖のC~C18アルキル基、C~C30シクロアルキル基、C~C30アリール基、C~C30アリールアルキル基、フッ素置換された直鎖または分枝鎖のC~C18アルキル基、フッ素置換されたC~C30シクロアルキル基、フッ素置換されたC~C30アリール基アリール基、フッ素置換されたC~C30アリールアルキル基、ポリジメチルシロキサンおよび有機ケイ素含有モノマーからなる群から選択される、請求項1~6に記載の包装システム。
【請求項8】
前記水性包装溶液が、緩衝剤、張度調整剤、洗浄剤、湿潤剤、栄養剤、封鎖剤、粘度上昇剤、コンタクトレンズコンディショニング剤、抗酸化剤、およびこれらの混合物をさらに含む、請求項1~7に記載の包装システム。
【請求項9】
前記熱滅菌水性包装溶液が、有効消毒量の消毒剤または殺菌化合物を含有しない、請求項1~8に記載の包装システム。
【請求項10】
保管可能な滅菌眼用デバイスを含む包装システムを調製する方法であって、前記方法が、(a)眼用デバイスを提供することと、(b)前記眼用デバイスを、親水性単位を含む1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含む水性包装溶液に浸漬することであって、1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーは疎水性末端基および親水性末端基を有し、1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーの親水性末端基は-OHまたは-CNであり、前記水性包装溶液が、少なくとも200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、6~9の範囲のpHを有し、(c)前記溶液と前記眼用デバイスとを、微生物による前記デバイスの汚染を防止する様式で包装することと、(d)包装された前記溶液および前記眼用デバイスを滅菌することと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、コンタクトレンズなどの眼用デバイスのための包装溶液に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、シリコーン含有材料から作られた眼用レンズなどのバイオメディカルデバイスは、数年間にわたって調べられてきた。そのような材料は、一般的に、2つの主な種類、すなわち、ヒドロゲルおよび非ヒドロゲルに細分することができる。ヒドロゲルは、平衡状態で水を吸収し、保持することができ、一方、非ヒドロゲルは、大量の水を吸収しない。それらの含水量にかかわらず、ヒドロゲルおよび非ヒドロゲルのシリコーン医療デバイスは、両方とも脂質に対する高い親和性を有する、比較的疎水性であり、非濡れ性の表面を有する傾向がある。この問題は、コンタクトレンズで特に懸念されている。
【0003】
当業者は、そのようなシリコーンコンタクトレンズの表面を、それらが眼と適合するように修正する必要性を長い間認識してきた。レンズ表面の親水性の増加は、コンタクトレンズの濡れ性を改善することが知られている。これは、コンタクトレンズの着用快適性の向上と関連している。加えて、レンズの表面は、レンズの堆積しやすさ、特に、レンズ着用中の涙液から生じるタンパク質および脂質の堆積のしやすさに影響を与える可能性がある。蓄積した堆積物は、眼の不快感、またはさらには炎症を引き起こす可能性がある。長時間着用レンズ(すなわち、睡眠前にレンズを毎日取り外さずに使用されるレンズ)の場合、その表面が特に重要である。長時間着用レンズは、長時間にわたる高い基準の快適性および生体適合性のために設計されなければならないからである。
【0004】
レンズの濡れ性を高めるための1つのアプローチは、レンズの処理ステップ後に表面に行われることである。しかしながら、追加のステップは、製造プロセスに追加の費用および時間を必要とした。
【0005】
ブリスターパックおよびガラスバイアルは、典型的には、顧客に販売するために各ソフトコンタクトレンズを個別に包装するために使用される。生理食塩水または脱イオン水は、コンタクトレンズの包装または製造に関連する様々な特許で言及されるように、ブリスターパック内にレンズを保管するために一般的に使用される。レンズ材料は、それ自体およびレンズ包装に貼り付く蛍光があるため、ブリスターパックのための包装溶液は、レンズの折り畳みおよび貼り付きを減らすか、またはなくすために配合されることがある。
【0006】
眼に入れる前にレンズを十分に洗浄すると、涙液がレンズを十分に濡らすことができることが述べられている。さらに、熱滅菌中に貯蔵寿命を低下させる可能性および/または有害反応を含め、包装溶液に界面活性剤を添加することの困難さは、レンズの快適性に何らかのあり得る影響またはわずかな影響を与える目的での包装溶液における界面活性剤の使用をさらに制限している。レンズが着用された後にレンズの表面にタンパク質または他の堆積物が形成された場合にのみ、その界面活性剤は、標準的なレンズケア溶液に使用される。
【0007】
コンタクトレンズは、着用者にとって可能な限り快適であることが非常に望ましい。コンタクトレンズの製造業者は、レンズの快適性を向上させることに継続的に取り組んでいる。それにもかかわらず、コンタクトレンズを着用している多くの人々は、一日中、特に一日の終わりに、乾燥や目への刺激を依然として感じる。濡れが不十分なレンズは、いずれかの時点で、レンズ着用者に著しい不快感を引き起こす。このような不快感を和らげるために、必要に応じて、湿潤点眼液を使用することができるが、そもそもこのような不快感が生じないことがもちろん望ましい。
【0008】
したがって、実際の使用においてレンズを着用するのが快適であり、角膜への刺激または他の有害な影響なく、レンズの長時間の着用を可能にする、コンタクトレンズなどの眼用デバイスのための改善された包装システムを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0009】
例示的な一実施形態によれば、眼用デバイスの保管のための包装システムであって、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含む水性包装溶液に浸漬された1つ以上の未使用の眼用デバイスを収容する密封容器を含み、溶液が、少なくとも約200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9のpHを有し、熱滅菌される、包装システムが提供される。
【0010】
第2の例示的な実施形態によれば、保管可能な滅菌眼用デバイスを含む包装システムを調製する方法であって、方法が、(a)眼用デバイスを提供することと、(b)親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含む水性包装溶液であって、少なくとも約200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9の範囲のpHを有する、水性包装溶液に眼用デバイスを浸漬することと、(c)溶液と眼用デバイスとを、微生物によるデバイスの汚染を防止する様式で包装することと、(d)包装された溶液および眼用デバイスを滅菌することと、を含む、方法が提供される。
【0011】
本発明の包装システムのための水性包装溶液は、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含有し、眼用デバイスの表面上に、より均一なコーティングを提供し、それによってレンズの潤滑性および/または濡れ性が改善されると考えられる。したがって、レンズは、実際の使用において着用するのがさらに快適であり、角膜への刺激または他の有害な影響なく、レンズの長時間の着用を可能にする。コンタクトレンズなどの本明細書の眼用デバイスの親水性および/または潤滑性の表面は、レンズ上への涙の脂質およびタンパク質の吸着、ならびにレンズ内への最終的な吸収を実質的に防止するか、または抑制し、したがって、コンタクトレンズの透明度を保持する。これにより、コンタクトレンズの性能品質を維持して、着用者に、より高いレベルの快適性を提供する。
他の記載と重複するが、本発明及びその好ましい態様を以下に示す。但し、本発明は以下に限定されない。
[1]
眼用デバイスの保管のための包装システムであって、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含む水性包装溶液に浸漬された1つ以上の未使用の眼用デバイスを収容する密封容器を含み、前記溶液が、少なくとも約200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9のpHを有し、熱滅菌される、包装システム。
[2]
前記眼用デバイスが、コンタクトレンズである、請求項1に記載の包装システム。
[3]
前記親水性単位が、少なくとも1つのエチレン系不飽和重合性親水性モノマーに由来する、[1]または[2]に記載の包装システム。
[4]
前記少なくとも1つのエチレン系不飽和重合性親水性モノマーが、アクリルアミド、アセトアミド、ホルムアミド、環状ラクタム、(メタ)アクリレート化アルコール、(メタ)アクリレート化ポリ(アルキレンオキシ)、エチレン系不飽和カルボン酸、親水性ビニルカーボネート、親水性ビニルカルバメート、親水性オキサゾロンモノマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される、[3]に記載の包装システム。
[5]
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーが、-OHおよび-CNからなる群から選択される親水性基でエンドキャップされる、[1]~[4]に記載の包装システム。
[6]
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーが、前記親水性単位の親水性基でエンドキャップされる、[1]~[4]に記載の包装システム。
[7]
前記親水性単位が、約10~約3000単位含まれる、[1]~[6]に記載の包装システム。
[8]
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーが、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合に由来する、[1]に記載の包装システム。
[9]
前記疎水性末端基が、直鎖または分枝鎖のC ~C 18 アルキル基、C ~C 30 シクロアルキル基、C ~C 30 アリール基、C ~C 30 アリールアルキル基、フッ素置換された直鎖または分枝鎖のC ~C 18 アルキル基、フッ素置換されたC ~C 30 シクロアルキル基、フッ素置換されたC ~C 30 アリール基アリール基、フッ素置換されたC ~C 30 アリールアルキル基、ポリジメチルシロキサンおよび有機ケイ素含有モノマーからなる群から選択される、[1]~[8]に記載の包装システム。
[10]
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーが、約1,500Da~約75,000Daの範囲の数平均分子量を有する、[1]~[9]に記載の包装システム。
[11]
前記水性包装溶液中の前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーの濃度が、約0.01%~約10% w/wの範囲である、[1]~[10]に記載の包装システム。
[12]
前記水性包装溶液中の前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーの濃度が、約0.1~約5% w/wの範囲である、[1]~[11]に記載の包装システム。
[13]
前記水性包装溶液が、緩衝剤、張度調整剤、洗浄剤、湿潤剤、栄養剤、封鎖剤、粘度上昇剤、コンタクトレンズコンディショニング剤、抗酸化剤、およびこれらの混合物をさらに含む、[1]~[12]に記載の包装システム。
[14]
前記包装が、前記包装の密封後に熱滅菌され、前記水性包装溶液が、有効消毒量の消毒剤または殺菌化合物を含有しない、[1]~[13]に記載の包装システム。
[15]
保管可能な滅菌眼用デバイスを含む包装システムを調製する方法であって、前記方法が、(a)眼用デバイスを提供することと、(b)親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含む水性包装溶液であって、少なくとも約200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9の範囲のpHを有する、水性包装溶液に前記眼用デバイスを浸漬することと、(c)前記溶液と前記眼用デバイスとを、微生物による前記デバイスの汚染を防止する様式で包装することと、(d)包装された前記溶液および前記眼用デバイスを滅菌することと、を含む、方法。
[16]
前記眼用デバイスが、コンタクトレンズである、[15]に記載の方法。
[17]
前記親水性単位が、アクリルアミド、アセトアミド、ホルムアミド、環状ラクタム、(メタ)アクリレート化アルコール、(メタ)アクリレート化ポリ(アルキレンオキシ)、エチレン系不飽和カルボン酸、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、オキサゾロンモノマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1つのエチレン系不飽和重合性親水性モノマーに由来する、[15]または[16]に記載の方法。
[18]
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーが、-OHおよび-CNからなる群から選択される親水性基でエンドキャップされる、[15]~[17]に記載の方法。
[19]
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーが、前記親水性単位の親水性基でエンドキャップされる、[15]~[18]に記載の方法。
[20]
前記親水性単位が、約10~約3000単位含まれる、[15]~[19]に記載の方法。
[21]
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーが、可逆的付加開裂連鎖移動(RAFT)重合に由来する、[15]~[20]に記載の方法。
[22]
前記疎水性末端基が、直鎖または分枝鎖のC ~C 18 アルキル基、C ~C 30 シクロアルキル基、C ~C 30 アリール基、C ~C 30 アリールアルキル基、フッ素置換された直鎖または分枝鎖のC ~C 18 アルキル基、フッ素置換されたC ~C 30 シクロアルキル基、フッ素置換されたC ~C 30 アリール基アリール基、フッ素置換されたC ~C 30 アリールアルキル基、ポリジメチルシロキサンおよび有機ケイ素含有モノマーからなる群から選択される、[15]~[21]に記載の方法。
[23]
前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーが、約1,500Da~約75,000Daの範囲の数平均分子量を有する、[15]~[22]に記載の方法。
[24]
前記水性包装溶液中の前記1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーの濃度が、約0.01%~約10% w/wの範囲である、[15]~[23]に記載の方法。
[25]
前記水性包装溶液が、緩衝剤、張度調整剤、洗浄剤、湿潤剤、栄養剤、封鎖剤、粘度上昇剤、コンタクトレンズコンディショニング剤、抗酸化剤、およびこれらの混合物をさらに含む、[15]~[24]に記載の方法。
[26]
前記水性包装溶液が、有効消毒量の消毒剤または殺菌化合物を含有しない、[15]~[25]に記載の方法。
[27]
保管可能な滅菌眼用デバイスを包装するための水性包装溶液の使用であって、前記水性包装溶液が、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含み、前記溶液が、少なくとも約200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9の範囲のpHを有する、使用。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示は、体組織または体液と直接接触することを意図した眼用デバイスの保管のための包装システムを提供する。本明細書で使用される場合、「眼用デバイス」という用語は、眼の中および眼の上に存在するデバイスを指す。これらのレンズは、光学補正、創傷の治療、薬物送達、診断機能、または美顔の向上もしくは効果、あるいはこれらの特性の組み合わせを提供することができる。このようなデバイスの代表的な例としては、限定されないが、ソフトコンタクトレンズ(例えば、ソフトなヒドロゲルレンズ、ソフトな非ヒドロゲルレンズなど)、ハードコンタクトレンズ(例えば、ハードな気体透過性レンズ材料など)、眼内レンズ、オーバーレイレンズ、眼内挿入物、光学挿入物などが挙げられる。当業者により理解されるように、レンズが壊れることなくそれ自体に折り返すことができる場合、レンズは「ソフト」であるとみなされる。コンタクトレンズを含む眼用デバイスを生成することが知られている任意の材料を本明細書で使用することができる。
【0013】
眼用デバイスは、上述の眼用デバイスを形成することができる当該技術分野で既知の任意の材料であり得る。一実施形態では、眼用デバイスは、それ自体が親水性ではない材料から形成されたデバイスを含む。このようなデバイスは、当該技術分野で既知の材料から形成され、例として、ポリシロキサン、ペルフルオロポリエーテル、フッ素化ポリ(メタ)アクリレート、または例えば他の重合性カルボン酸に由来する等価のフッ素化ポリマー、ポリアルキル(メタ)アクリレート、または他の重合性カルボン酸に由来する等価のアルキルエステルポリマー、またはフッ素化ポリオレフィン、例えば、フッ素化エチレンプロピレンポリマー、またはテトラフルオロエチレン、好ましくは、ジオキソール、例えば、ペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールと組み合わせたものを含む。好適な嵩高い材料の代表的な例としては、限定されないが、Lotrafilcon A、Neofocon、Pasifocon、Telefocon、Silafocon、Fluorsilfocon、Paflufocon、Silafocon、Elastofilcon、FluorofoconまたはTeflon AF材料、例えば、Teflon AF 1600またはTeflon AF 2400が挙げられ、これらは、約63~約73mol%のペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールと約37~約27mol%のテトラフルオロエチレンのコポリマー、または約80~約90mol%のペルフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソールと約20~約10mol%のテトラフルオロエチレンのコポリマーである。
【0014】
別の実施形態では、眼用デバイスは、それ自体が親水性の材料から形成されたデバイスを含む。例えば、カルボキシ、カルバモイル、サルフェート、スルホネート、ホスフェート、アミン、アンモニウムまたはヒドロキシ基などの反応性基が材料中に固有に存在するため、それらから製造される眼用デバイスの表面にも存在するからである。このようなデバイスは、当該技術分野で既知の材料から形成され、例として、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド(DMA)、ポリビニルアルコールなど、およびこれらのコポリマー、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、ビニルアルコールなどから選択される2つ以上のモノマーからのコポリマーが挙げられる。好適な嵩高い材料の代表的な例としては、限定されないが、Polymacon、Tefilcon、Methafilcon、Deltafilcon、Bufilcon、Phemfilcon、Ocufilcon、Focofilcon、Etafilcon、Hefilcon、Vifilcon、Tetrafilcon、Perfilcon、Droxifilcon、Dimefilcon、Isofilcon、Mafilcon、Nelfilcon、Atlafilconなどが挙げられる。他の好適な嵩高い材料の例としては、バラフィルコンA、ヒラフィルコンA、アルファフィルコンA、ビラフィルコンBなどが挙げられる。
【0015】
別の実施形態では、眼用デバイスは、少なくとも1つの疎水性セグメントと少なくとも1つの親水性セグメントとを含有し、これらが結合または架橋部材を介して接続した両親媒性セグメント化コポリマーである材料から形成されるデバイスを含む。
【0016】
コンタクトレンズを含む眼用レンズに一般的に使用される軟質材料および硬質材料の両方を含む本明細書の生体適合性材料を使用することは、特に有用である。一般に、非ヒドロゲル材料は、その平衡状態で水を含有しない疎水性ポリマー材料である。典型的な非ヒドロゲル材料は、シリコーンアクリル、例えば、嵩高いシリコーンモノマーから形成されるもの(例えば、トリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート、一般的に「TRIS」モノマーとして知られている)、メタクリレートでエンドキャップされたポリ(ジメチルシロキサン)プレポリマー、またはフルオロアルキル側基を有するシリコーン(ポリシロキサンは一般にシリコーンポリマーとしても知られる)を含む。
【0017】
一般に、ヒドロゲルは、平衡状態で水を含有する水和した架橋ポリマー系を含む周知の種類の材料である。したがって、ヒドロゲルは、親水性モノマーから調製されるコポリマーである。シリコーンヒドロゲルの場合、ヒドロゲルコポリマーは、少なくとも1つのデバイス形成シリコーン含有モノマーと少なくとも1つのデバイス形成親水性モノマーとを含有する混合物を重合することによって一般的に調製される。シリコーン含有モノマーまたは親水性モノマーのいずれかは、架橋剤(複数の重合性官能基を有するモノマーとして定義される架橋剤)として機能することができるか、または別個の架橋剤が使用されてもよい。シリコーンヒドロゲルは、典型的には、約10~約80重量%の含水量を有する。
【0018】
有用な親水性モノマーの代表的な例としては、限定されないが、アミド、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミドおよびN,N-ジメチルメタクリルアミド、環状ラクタム、例えば、N-ビニル-2-ピロリドン、ならびに(メタ)アクリレート化ポリ(アルケングリコール)、例えば、モノメタクリレートまたはジメタクリレートエンドキャップを含有する様々な鎖長のポリ(ジエチレングリコール)が挙げられる。なおさらなる例は、米国特許第5,070,215号に開示されている親水性ビニルカーボネートモノマーまたは親水性ビニルカルバメートモノマー、および米国特許第4,910,277号に開示されている親水性オキサゾロンモノマーであり、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる。他の好適な親水性モノマーは、当業者には明らかであろう。例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)は、前述の親水性モノマーと混合して使用され得る、周知の親水性モノマーである。
【0019】
モノマー混合物はまた、共重合性基と反応性官能基とを含む第2のデバイス形成モノマーを含んでいてもよい。共重合性基は、好ましくは、エチレン系不飽和基であり、その結果、このデバイス形成モノマーが、初期のデバイス形成モノマー混合物中の親水性デバイス形成モノマーおよび任意の他のデバイス形成モノマーと共重合する。加えて、第2のモノマーは、1つ以上の重合性多価アルコールと1つ以上の重合性フッ素含有モノマーの反応生成物であるコポリマーの相補的反応性基と反応する反応性官能基を含み得る。言い換えれば、デバイス形成モノマー混合物を共重合することによってデバイスが形成された後、第2のデバイス形成モノマーによって提供される反応性官能基は、コポリマーの相補的反応性部分と反応するために残存する。
【0020】
一実施形態では、第2のデバイス形成モノマーの反応性基は、エポキシド基を含む。したがって、第2のデバイス形成モノマーは、エチレン系不飽和基(モノマーが親水性デバイス形成モノマーと共重合することを可能にする)と、エポキシド基(親水性デバイス形成モノマーと反応しないが、コポリマーとの反応を維持し、コポリマーは、1つ以上の重合性多価アルコールと1つ以上の重合性フッ素含有モノマーの反応生成物である)の両方を含むものである。例としては、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルビニルカーボネート、グリシジルビニルカルバメート、4-ビニル-1-シクロヘキセン-1,2-エポキシドなどが挙げられる。
【0021】
上述のように、眼用デバイス基質材料の一種は、シリコーンヒドロゲルである。この場合、初期デバイス形成モノマー混合物は、シリコーン含有モノマーをさらに含む。シリコーンヒドロゲルの形成に使用するための適用可能なシリコーン含有モノマー材料は、当該技術分野において周知であり、数多くの例が、米国特許第4,136,250号、同第4,153,641号、同第4,740,533号、同第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,260,000号、同第5,310,779号、および同第5,358,995号に提供されている。本明細書で使用するための好適な材料の具体例としては、米国特許第5,310,779号、同第5,387,662号、同第5,449,729号、同第5,512,205号、同第5,610,252号、同第5,616,757号、同第5,708,094号、同第5,710,302号、同第5,714,557号、および同第5,908,906号に開示されるものが挙げられ、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0022】
適用可能なケイ素含有モノマーの代表的な例としては、嵩高いポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーが挙げられる。嵩高いポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーの一例は、式Iの構造で表され、
【化1】

式中、Xは-O-または-NR-を表し、Rは水素またはC~Cアルキルを表し、各Rは独立して水素またはメチルを表し、各Rは独立して低級アルキル基、フェニル基、または以下の式で表される基を表し、
【化2】

式中、各R2’は独立して低級アルキルまたはフェニル基を表し、hは1~10である。
【0023】
嵩高いモノマーの例は、メタクリロキシプロピルトリス(トリメチル-シロキシ)シランまたはトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルメタクリレート(時にTRISと呼ばれる)、およびトリス(トリメチルシロキシ)シリルプロピルビニルカルバメート(時にTRIS-VCと呼ばれる)などである。
【0024】
このような嵩高いモノマーは、分子の2つ以上の末端に不飽和基でキャップされたポリ(オルガノシロキサン)であるシリコーンマクロモノマーと共重合してよい。米国特許第4,153,641号は、例えば、アクリロキシまたはメタクリロキシ基などの種々の不飽和基を開示している。
【0025】
別の種類の代表的なシリコーン含有モノマーとしては、例えば、シリコーン含有ビニルカーボネートまたはビニルカルバメートモノマー、例えば、1,3-ビス[4-ビニロキシカルボニロキシ)ブタ-1-イル]テトラメチル-ジシロキサン;3-(トリメチルシリル)プロピルビニルカーボネート;3-(ビニロキシカルボニルチオ)プロピル-[トリス(トリメチルシロキシ)シラン];3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルアリルカルバメート;3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネート;t-ブチルジメチルシロキシエチルビニルカーボネート;トリメチルシリルエチルビニルカーボネート;トリメチルシリルメチルビニルカーボネートなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
別の種類のケイ素含有モノマーとしては、ポリウレタン-ポリシロキサンマクロモノマー(時にプレポリマーとも呼ばれる)が挙げられ、これは、従来のウレタンエラストマーのような硬質-軟質-硬質ブロックを有し得る。これらは、HEMAなどの親水性モノマーでエンドキャップされてもよい。このようなシリコーンウレタンの例は、Lai,Yu-Chin,“The Role of Bulky Polysiloxanylalkyl Methacryates in Polyurethane-Polysiloxane Hydrogels,”Journal of Applied Polymer Science,Vol.60,1193-1199(1996)を含む、様々なまたは出版物に開示されている。PCT公開出願第WO96/31792号は、このようなモノマーの例を開示し、その開示は全体的に参照により本明細書に組み込まれる。シリコーンウレタンモノマーのさらなる例は、式IIおよびIIIで表され、
E(*D*A*D*G) *D*A*D*E’、または(II)
E(*D*G*D*A) *D*A*D*E’、または(III)
式中、
Dは独立して、6~約30個の炭素原子を有するアルキルジ基、アルキルシクロアルキルジ基、シクロアルキルジ基、アリールジ基、またはアルキルアリールジ基を表し、
Gは独立して、1~約40個の炭素原子を有するアルキルジ基、シクロアルキルジ基、アルキルシクロアルキルジ基、アリールジ基またはアルキルアリールジ基を表し、主鎖にエーテル、チオまたはアミン結合を含有してもよく、
はウレタンまたはウレイド結合を表し、
aは少なくとも1であり、
Aは独立して、式IVの二価のポリマー基を表し、
【化3】

式中、各Rは独立して、炭素原子間のエーテル結合を含有し得る1~約10個の炭素原子を有するアルキルまたはフッ素置換されたアルキル基を表し、m’は少なくとも1であり、pは、約400~約10,000の部位重量を提供する数であり、
EおよびE’の各々は独立して、式Vで表される重合性不飽和有機基を表し、
【化4】

式中、Rは水素またはメチルであり、
は、水素、1~6個の炭素原子を有するアルキル基、または-CO-Y-R基であり、Yは-O-、-S-、もしくは-NH-であり、
は、1~約10個の炭素原子を有する二価アルキレン基であり、
は、1~約12個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Xは、-CO-または-OCO-を表し、
Zは、-O-または-NH-を表し、
Arは、約6~約30個の炭素原子を有する芳香族基を表し、
wは0~6であり、xは0または1であり、yは0または1であり、zは0または1である。
【0027】
一実施形態では、シリコーン含有ウレタンモノマーは、式VIで表され、
【化5】

式中、mは少なくとも1であり、好ましくは3または4であり、aは少なくとも1であり、好ましくは1であり、pは約400~約10,000の部分重量を提供する数であり、好ましくは少なくとも約30であり、Rは、イソホロンジイソシアネートのジ基などのイソシアネート基の除去後のジイソシアネートのジ基であり、各E”は、以下によって表される基である。
【化6】
【0028】
別の実施形態では、シリコーンヒドロゲル材料は、(バルクで、すなわち、共重合されるモノマー混合物中)約5~約50重量%、または約10~約25重量%の1つ以上のシリコーンマクロモノマーと、約5~約75重量%、または約30~約60重量%の1つ以上のポリシロキサニルアルキル(メタ)アクリルモノマーと、約10~約50重量%、または約20~約40重量%の親水性モノマーを含む。一般に、シリコーンマクロモノマーは、分子の2つ以上の末端に不飽和基でキャップされたポリ(オルガノシロキサン)である。上記の構造式中の末端基に加えて、米国特許第4,153,641号は、アクリロキシまたはメタクリロキシを含む追加の不飽和基を開示している。フマル酸塩含有材料、例えば、米国特許第5,310,779号、同第5,449,729号、および同第5,512,205号に開示されているものなども、本発明による有用な基質である。シランマクロモノマーは、ケイ素含有ビニルカーボネートもしくはビニルカルバメート、または1つ以上の硬質-軟質-硬質ブロックを有し、親水性モノマーでエンドキャップされたポリウレタン-ポリシロキサンであってもよい。
【0029】
代表的なシリコーン含有モノマーの別の種類は、フッ素化モノマーを含む。このようなモノマーは、例えば、米国特許第4,954,587号、同第5,010,141号、および同第5,079,319号に開示されるように、フルオロシリコーンヒドロゲルの形成において、それから作製されたコンタクトレンズ上の堆積物の蓄積を減少させるために使用されてきた。また、ある特定のフッ素化側基、すなわち-(CF)-Hを有するシリコーン含有モノマーの使用は、親水性モノマー単位とシリコーン含有モノマー単位との間の適合性を改善することが見出されている。例えば、米国特許第5,321,108号および同第5,387,662号を参照。
【0030】
上述のシリコーン材料は単なる例示であり、本発明の親水性コーティング組成物でコーティングされることによって利益を得ることができ、様々な刊行物に開示されており、コンタクトレンズおよび他の医療デバイスで使用するために継続的に開発されている基質として使用するための他の材料も使用することもできる。例えば、バイオメディカルデバイスは、カチオン性シリコーン含有モノマーまたはカチオン性フッ素化シリコーン含有モノマーなどのカチオン性モノマーから少なくとも形成され得る。
【0031】
本発明の適用のためのコンタクトレンズは、様々な従来の技術を使用して製造され、所望な後側および前側のレンズ表面を有する成形物品を得ることができる。スピンキャスト法は、米国特許第3,408,429号および同第3,660,545号に開示されており、スタティックキャスト法は、米国特許第4,113,224号、同第4,197,266号、および同第5,271,876号に開示されている。所望の最終構成を有するコンタクトレンズを提供するために、モノマー混合物の硬化に続いて機械加工操作が行われ得る。一例として、米国特許第4,555,732号は、過剰のモノマー混合物に成形型中でスピンキャストすることによって硬化し、前側のレンズ表面と比較的大きな厚みを有する成形物品を形成するプロセスを開示している。硬化したスピンキャスト物品の後側表面は、その後、旋盤切断し、所望の厚みと後側のレンズ表面を有するコンタクトレンズを提供する。さらなる機械加工操作は、レンズ表面の旋盤切断の後に行われてもよい(例えば、エッジ仕上げ操作)。
【0032】
典型的には、有機希釈剤は、モノマー混合物の重合によって生成される重合生成物の相分離を最小限に抑え、反応するポリマー混合物のガラス転移温度を下げるために、初期のモノマー混合物に含まれ、より効率的な硬化プロセスを可能にし、最終的に、より均一な重合生成物が得られる。初期のモノマー混合物および重合生成物の十分な均一性は、主に親水性コモノマーから分離する傾向があるシリコーン含有モノマーを含むことに起因して、シリコーンヒドロゲルにとって特に重要である。
【0033】
好適な有機希釈剤としては、例えば、C~C10直鎖脂肪族一価アルコールなどの一価アルコール、例えば、n-ヘキサノールおよびn-ノナノール、エチレングリコールなどのジオール、グリセリンなどのポリオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル、メチルエチルケトンなどのケトン、エナント酸メチルなどのエステル、ならびにトルエンなどの炭化水素が挙げられる。好ましくは、有機希釈剤は、周囲圧力もしくはそれに近い圧力での蒸発によって、硬化した物品からの有機希釈剤の除去を容易にするように十分に揮発性である。
【0034】
一般的に、希釈剤は、モノマー混合物の約5~約60重量%含まれてもよい。一実施形態では、希釈剤は、モノマー混合物の約10~約50重量%含まれてもよい。必要に応じて、硬化したレンズに溶媒除去が行われてもよく、このことは、周囲圧力もしくはそれに近い圧力で、または高減圧下での蒸発によって達成することができる。高温を用いて、希釈剤を蒸発させるのに必要な時間を短縮することができる。
【0035】
有機希釈剤を除去した後、次いで、レンズを成形型から離型させ、任意選択的な機械加工操作を施してもよい。機械加工するステップは、例えば、レンズ縁部および/または表面のバフ加工または研磨を含む。一般的に、このような機械加工するプロセスは、物品が成形型部分から離型される前または後に実施されてもよい。例として、レンズは、真空ピンセットを用いてレンズを成形型から持ち上げることによって、成形型から乾燥状態で離型してもよい。
【0036】
当業者であれば容易に理解するように、眼用デバイスの眼用デバイス表面官能基は、デバイスの表面に固有に存在していてもよい。しかしながら、眼用デバイスが、あまりにも少なすぎる官能基を含有するか、またはまったく含有しない場合、デバイスの表面は、既知の技術、例えば、プラズマ化学法(例えば、WO94/06485号を参照)、または-OH、-NHまたは-COHなどの基による従来の官能化によって修飾することができる。バイオメディカルデバイスの好適な眼用デバイス表面官能基は、当業者に周知の多種多様な基を含む。かかる官能基の代表的な例としては、限定されないが、ヒドロキシ基、アミノ基、カルボキシ基、カルボニル基、アルデヒド基、スルホン酸基、スルホニル塩化物基、イソシアナート基、カルボキシ無水物基、ラクトン基、アズラクトン基、エポキシ基、およびアミノ基もしくはヒドロキシ基によって置き換え可能な基、例えば、ハロ基、またはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態では、眼用デバイスの眼用デバイス表面官能基は、アミノ基および/またはヒドロキシ基である。
【0037】
一実施形態では、上述の眼用デバイスに、コロナ放電またはプラズマ酸化などの酸化表面処理、その後の本発明の水性包装溶液による処理を行う。例えば、親水性ポリマー(例えば、ポリ(N,N-ジメチルアクリルアミド)またはポリ(N-ビニルピロリドン))を含有するシリコーンヒドロゲル製剤などの眼用デバイスに酸化表面処理を行い、少なくともレンズ表面上にシリケートを形成し、次いで、レンズを本発明の水性包装溶液で処理し、潤滑であり、安定であり、高度に濡れ性の表面コーティングを与える。複合体化処理は、有利には、オートクレーブ条件(滅菌条件)下で実施される。
【0038】
プラズマプロセス(「グロー放電プロセス」とも呼ばれる)などの標準的なプロセスは、ブラシコポリマーをその表面の少なくとも一部に結合する前に、眼用デバイス上に薄い耐久性のある表面を提供する。このようなプラズマプロセスの例は、米国特許第4,143,949号、同第4,312,575号、および同第5,464,667号に提供されている。
【0039】
プラズマプロセスは、一般的に当該技術分野で周知であるが、以下に簡単な概要を提供する。プラズマ表面処理は、低圧で気体に放電を通過させることを伴う。放電は、高周波(典型的には13.56MHz)であってもよいが、マイクロ波および他の周波数を使用してもよい。放電は、気体状態の原子および分子によって吸収されることに加え、紫外線(UV)放射線を生成し、活動的な電子およびイオン、原子(接地状態および励起状態)、分子、およびラジカルが生じる。したがって、プラズマは、接地状態および励起状態両方の原子および分子の複雑な混合物であり、放電が開始された後に、定常状態に達する。循環する電場は、これらの励起した原子および分子を、互いに、また、チャンバの壁および処理される材料の表面と衝突させる。
【0040】
プラズマから材料表面へのコーティングの堆積は、スパッタリングの支援(スパッタによって支援される堆積)を行わずに、高エネルギープラズマから可能であることが示されている。モノマーは、気相から堆積し、低圧雰囲気(約0.005~約5torr、好ましくは約0.001~約1torr)中、連続プラズマまたはパルスプラズマ(好適には1000ワットの高さ)を利用して基材上で重合させることができる。例えば、変調プラズマは、約100ミリ秒でオンに適用され、次いでオフに適用され得る。加えて、液体窒素冷却を利用して、気体相からの蒸気を基板上に凝縮させ、その後、プラズマを使用して、これらの材料を基板と化学的に反応させる。しかしながら、プラズマは、堆積を引き起こすための外部からの冷却または加熱の使用を必要としない。低ワット数または高ワット数(例えば、約5~約1000ワット、好ましくは約20~約500ワット)のプラズマは、シリコーンを含む最も耐薬品性のある基材でさえもコーティングすることができる。
【0041】
低エネルギー放電による開始後、プラズマ中に存在する活動的な自由電子間の衝突は、イオン、励起分子、および遊離ラジカルの形成を引き起こす。そのような種は、形成されると、気相中でそれら自体と、また、さらなる接地状態の分子と反応することができる。プラズマ処理は、活動的な気体分子を含む、エネルギーに依存するプロセスであると理解され得る。レンズ表面での化学反応のために、電荷状態および粒子エネルギーの観点から必要な種(元素または分子)が必要である。高周波プラズマは、一般的に、活動的な種の分布を引き起こす。典型的には、「粒子エネルギー」は、活動的な種についてのいわゆるボルツマン型のエネルギー分布の平均を指す。低密度プラズマでは、電子エネルギー分布は、放電圧力に対する、プラズマを維持する電場強度の比率(E/p)によって関連付けられ得る。プラズマ出力密度Pは、当業者によって理解されるように、ワット数、圧力、気体の流量などの関数である。プラズマ技術に関する背景情報は、参照により本明細書に組み込まれ、以下のA.T.Bell,Proc.Intl.Conf.Phenom.Ioniz.Gases,“Chemical Reaction in Nonequilibrium Plasmas”,19-33(1977)、J.M.Tibbitt,R.Jensen,A.T.Bell,M.Shen,Macromolecules,“A Model for the Kinetics of Plasma Polymerization”,3,648-653(1977)、J.M.Tibbitt,M.Shen,A.T.Bell,J.Macromol.Sci.-Chem.,“Structural Characterization of Plasma-Polymerized Hydrocarbons”,A10,1623-1648(1976)、C.P.Ho,H.Yasuda,J.Biomed,Mater.Res.,“Ultrathin coating of plasma polymer of methane applied on the surface of silicone contact lenses”,22,919-937(1988)、H.Kobayashi,A.T.Bell,M.Shen,Macromolecules,“Plasma Polymerization of Saturated and Unsaturated Hydrocarbons”,3,277-283(1974)、R.Y.Chen,米国特許第4,143,949号,1979年3月13日,“Process for Putting a Hydrophilic Coating on a Hydrophobic Contact Lens”、およびH.Yasuda,H.C.Marsh,M.O.Bumgarner,N.Morosoff,J.of Appl.Poly.Sci.,“Polymerization of Organic Compounds in an Electroless Glow Discharge.VI.Acetylene with Unusual Co-monomers”,19,2845-2858(1975)を含む。
【0042】
プラズマ技術の分野におけるこの以前の研究に基づいて、圧力および放電出力の変化がプラズマ改質の速度に及ぼす影響を理解することができる。圧力が高くなるにつれて、速度は一般的に低下する。したがって、圧力がE/pの値を増加させるにつれて、ガス圧力に対する、プラズマを維持する電場強度の比率が減少し、平均電子エネルギーの減少を引き起こす。電子エネルギーの減少は、次いで、全ての電子-分子衝突プロセスの速度係数の減少を引き起こす。圧力の増加のさらなる結果は、電子密度の減少である。圧力が一定に保持されると、電子密度と出力との間に線形関係があるはずである。
【0043】
実際には、コンタクトレンズは、コンタクトレンズを水和していない状態でグロー放電反応容器(例えば、真空チャンバ)内に配置することによって表面処理される。このような反応容器は、市販されている。レンズは、アルミニウムトレイ(電極として機能する)上の容器内に支持されてもよく、またはレンズの位置を調整するように設計された他の支持デバイスを用いて支持されてもよい。レンズの両側の表面処理を可能にする特殊な支持デバイスの使用は、当該技術分野において既知であり、本明細書において使用され得る。
【0044】
上述のように、レンズ、例えば、シリコーンヒドロゲルの連続着用レンズの表面は、最初に、プラズマの使用によって処理され(例えば、酸化され)、その後のブラシコポリマー表面堆積物をレンズにさらに接着させる。レンズのこのようなプラズマ処理は、適切な媒体で構成される雰囲気、例えば、酸素、空気、水、過酸化水素、O(酸素気体)などの酸化媒体、またはこれらの適切な組み合わせで、典型的には、約13.56Mhzの放電周波数で、または約20~約500ワット、約0.1~約1.0torrの圧力で、または約10秒~約10分間またはもっと長く、または約1~約10分で達成されてもよい。比較的「強い」プラズマがこのステップでは利用され、例えば、5%の過酸化水素溶液を通して引き出される周囲空気で利用されることが好ましい。当業者は、その後のブラシコポリマー層の結合のための接着を改善または促進する他の方法を知っているであろう。
【0045】
次に、レンズなどの眼用デバイスを、水性包装溶液に浸漬し、本発明の包装システム中に保管する。一般的に、本発明の眼用デバイスの保管のための包装システムは、水性包装溶液に浸漬された1つ以上の未使用の眼用デバイスを収容する密封容器を少なくとも含む。一実施形態では、密封容器は、気密状態で密封されたブリスターパックであり、コンタクトレンズなどの眼用デバイスを収容する凹状ウェルが、ブリスターパックを開くために剥離するように適合された金属またはプラスチックシートによって覆われている。密封容器は、レンズを妥当な程度まで保護する任意の好適な一般的に不活性な包装材料、好ましくは、ポリアルキレン、PVC、ポリアミドなどのプラスチック材料であってもよい。
【0046】
水性包装溶液は、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを含有し、溶液は、少なくとも約200mOsm/kgの重量モル浸透圧濃度、約6~約9のpHを有し、熱滅菌される。本明細書で使用される「親水性」という用語は、水溶性にする極性または帯電した官能基を含有するポリマーまたはコポリマーを意味すると理解されるべきである。一般に、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーは、RAFT重合によって調製され、すなわち、モノマーをRAFT機構によって重合して、ポリマーまたはコポリマー、例えば、単位およびポリマー全体のそれぞれの分子量を正確に制御し得るブロックまたはランダムコポリマーを形成する。したがって、RAFT重合は、十分に定義された分子アーキテクチャおよび低い多分散性を有するポリマーを調製することを可能にするラジカル重合技術である。
【0047】
RAFT重合で使用して1つ以上の親水性ポリマーまたはコポリマーを得るのに好適なRAFT剤は、当業者に周知のチオカルボニルチオ化学に基づく。RAFT剤は、例えば、キサンテート含有化合物、トリチオカーボネート含有化合物、ジチオカルバメート含有化合物、またはジチオエステル含有化合物であってもよく、各化合物は、チオカルボニルチオ基を含有する。本明細書で使用することができるRAFT剤の一種は、一般式を有し、
【化7】

式中、Zは、置換酸素(例えば、キサンテート(-O-R))、置換窒素(例えば、ジチオカルバメート(-NRR))、置換硫黄(例えば、トリチオカーボネート(-S-R))、置換もしくは非置換のアリール基(例えば、フェニル、およびナフチル)、置換もしくは非置換のC~C20アルキルまたはC~C25の不飽和、または部分的もしくは完全に飽和な環(例えば、ジチオエステル(-R))、またはカルボン酸含有基であり、Rは、独立して、直鎖もしくは分枝鎖の置換もしくは非置換のC~C30アルキル基、置換もしくは非置換のC~C30シクロアルキル基、置換もしくは非置換のC~C30シクロアルキルアルキル基、置換もしくは非置換のC~C30シクロアルケニル基、置換もしくは非置換のC~C30アリール基、置換もしくは非置換のC~C30アリールアルキル基、C~C20エステル基、エーテルもしくはポリエーテル含有基、アルキルアミド基またはアリールアミド基、アルキルアミン基またはアリールアミン基、置換もしくは非置換のC~C30ヘテロアリール基、置換もしくは非置換のC~C30ヘテロ環状基、置換もしくは非置換のC~C30ヘテロシクロアルキル基、置換もしくは非置換のC~C30ヘテロアリールアルキル基、およびこれらの組み合わせである。
【0048】
本明細書で使用するためのアルキル基の代表的な例としては、例として、不飽和部の有無にかかわらず、分子の残りの部分に対して、1~約30個の炭素原子、好ましくは1~約12個の炭素原子を有する炭素原子と水素原子を含有する直鎖または分枝鎖のアルキル鎖基、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、メチレン、エチレンなどが挙げられる。
【0049】
本明細書で使用するためのシクロアルキル基の代表的な例としては、例として、約3~約30個の炭素原子、好ましくは3~約6個の炭素原子の置換もしくは非置換の非芳香族の単環式環系または多環式環系、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ペルヒドロナフチル、アダマンチルおよびノルボルニル基、架橋した環状基またはスピロ二環基、例えば、スピロ-(4,4)-ノナ-2-イルなどが挙げられ、任意選択で、例えば、OおよびNなどの1つ以上のヘテロ原子を含有するものなどが挙げられる。
【0050】
本明細書で使用するためのシクロアルキルアルキル基の代表的な例としては、例として、アルキル基に直接接続し、次いで、アルキル基由来の任意の炭素でモノマーの主構造に接続して安定な構造を生成する、約3~約30個の炭素原子、好ましくは3~約6個の炭素原子を含有する置換または非置換の環式環含有基、例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルエチル、シクロペンチルエチルなどが挙げられ、環式環は、任意選択で、例えば、OおよびNなどの1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。
【0051】
本明細書で使用するためのシクロアルケニル基の代表的な例としては、例として、約3~約30個の炭素原子、好ましくは3~約6個の炭素原子を含有し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する、置換または非置換の環式環含有基、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニルなどが挙げられ、環式環は、任意選択で、例えば、OおよびNなどの1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。
【0052】
本明細書で使用するためのアリール基の代表的な例としては、例として、約5~約30個の炭素原子を含有する置換もしくは非置換の単環芳香族または多環芳香族基、例えば、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インデニル、ビフェニルなどが挙げられ、任意選択で、例えば、OおよびNなどの1つ以上のヘテロ原子を含有する。
【0053】
本明細書で使用するためのアリールアルキル基の代表的な例としては、例として、本明細書で定義されるアルキル基に直接結合する、本明細書で定義される置換または非置換のアリール基、例えば、-CH、-Cなどが挙げられ、アリール基は、任意選択で、例えば、OおよびNなどの1つ以上のヘテロ原子を含有し得る。
【0054】
本明細書で使用するためのエステル基の代表的な例としては、例として、1~30個の炭素原子、または6~28個の炭素原子を有するカルボン酸エステルなどが挙げられる。
【0055】
本明細書で使用するためのエーテルまたはポリエーテル含有基の代表的な例としては、例として、アルキルエーテル、シクロアルキルエーテル、シクロアルキルアルキルエーテル、シクロアルケニルエーテル、アリールエーテル、アリールアルキルエーテルが挙げられ、ここで、アルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルケニル、アリール、およびアリールアルキル基は、本明細書で定義される通りである。例示的なエーテルまたはポリエーテル含有基としては、例として、アルキレンオキシド、ポリ(アルキレンオキシド)、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(ブチレンオキシド)、およびこれらの混合物またはコポリマー、一般式-(RORのエーテルまたはポリエーテル基が挙げられ、式中、Rは、結合、本明細書で定義される置換もしくは非置換のアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、Rは、本明細書で定義される置換もしくは非置換のアルキル、シクロアルキルまたはアリール基であり、tは少なくとも1であり、例えば、-CHCHOCおよびCH-CH-CH-O-CH-(CF-H(zは1~6である)、-CHCHOCなどである。
【0056】
本明細書で使用するためのアルキルアミド基またはアリールアミド基の代表的な例としては、例として、一般式-RC(O)NRのアミドが挙げられ、式中、R、RおよびRは、独立して、C~C30炭化水素であり、例えば、Rは、アルキレン基、アリーレン基、シクロアルキレン基であってもよく、RおよびRは、本明細書で定義されるアルキル基、アリール基、およびシクロアルキル基などであってもよい。
【0057】
本明細書で使用するためのアルキルアミン基またはアリールアミン基の代表的な例としては、例として、一般式-RNRのアミンが挙げられ、式中、Rは、C~C30アルキレン、アリーレン、またはシクロアルキレンであり、RおよびRは、独立して、C~C30炭化水素、例えば、本明細書で定義されるアルキル基、アリール基、またはシクロアルキル基である。
【0058】
本明細書で使用するためのヘテロ環式環基の代表的な例としては、例として、炭素原子と、1~5個のヘテロ原子(例えば、窒素、リン、酸素、硫黄およびこれらの混合物)とを含有する、置換または非置換の安定な3~約30員環基が挙げられる。本明細書で使用するのに好適なヘテロ環式環基は、単環式、二環式、または三環式環系であってもよく、縮合環系、架橋環系、またはスピロ環系を含んでもよく、ヘテロ環式環基中の窒素、リン、炭素、酸素または硫黄原子は、任意選択で様々な酸化状態に酸化され得る。加えて、窒素原子は、任意選択で四級化されてもよく、環基は、部分的にまたは完全に飽和していてもよい(すなわち、ヘテロ芳香族またはヘテロアリール芳香族)。そのようなヘテロ環式環基の例としては、限定されないが、アゼチジニル、アクリジニル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキサニル、ベンゾフルニル(benzofurnyl)、カルバゾリル、シンノリニル、ジオキソラニル、インドリジニル、ナフチリジニル、ペルヒドロアゼピニル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、ピリジル、プテリジニル、プリニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラゾイル、イミダゾリル、テトラヒドロキノリニル、テトラヒドロイソキノリニル、ピペリジニル、ピペラジニル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、2-オキソアゼピニル、アゼピニル、ピローリル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリニル、オキサゾリジニル、トリアゾリル、インダニル、イソオキサゾリル、イソ-オキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリル、チアゾリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、キヌクリジニル、イソチアゾリジニル、インドリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、キノリル、イソキノリル、デカヒドロイソキノリル、ベンズイミダゾリル、チアジアゾリル、ベンゾピラニル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、テトラヒドロフルチル、テトラヒドロピラニル、チエニル、ベンゾチエニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、チアモルホリニルスルホン、ジオキサホスホラニル、オキサジアゾリル、クロマニル、イソクロマニルなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0059】
本明細書で使用するためのヘテロアリール基の代表的な例としては、例として、本明細書で定義される置換または非置換のヘテロ環式環基が挙げられる。ヘテロアリール環基は、安定した構造を生成する任意のヘテロ原子または炭素原子で主構造に結合していてもよい。
【0060】
本明細書で使用するためのヘテロアリールアルキル基の代表的な例としては、例として、本明細書で定義されるアルキル基に直接結合する、本明細書で定義される置換または非置換のヘテロアリール環基が挙げられる。ヘテロアリールアルキル基は、アルキル基由来の任意の炭素原子で主構造に接続して安定な構造を生成してもよい。
【0061】
本明細書で使用するためのヘテロ環状基の代表的な例としては、例として、本明細書で定義される置換または非置換のヘテロ環式環基が挙げられる。ヘテロ環式環基は、任意のヘテロ原子または炭素原子で主構造に接続して安定な構造を生成してもよい。
【0062】
本明細書で使用するためのヘテロシクロアルキル基の代表的な例としては、例として、本明細書で定義されるアルキル基に直接結合する、本明細書で定義される置換または非置換のヘテロ環式環基が挙げられる。ヘテロシクロアルキル基は、アルキル基中の任意の炭素原子で主構造に接続して安定な構造を生成してもよい。
【0063】
「置換酸素」、「置換窒素」、「置換硫黄」、「置換アルキル」、「置換アルキレン」、「置換シクロアルキル」、「置換シクロアルキルアルキル」、「置換シクロアルケニル」、「置換アリールアルキル」、「置換アリール」、「置換ヘテロ環式環」、「置換ヘテロアリール環」、「置換ヘテロアリールアルキル」、「置換ヘテロシクロアルキル環」、「置換環状環」中の置換基は、同じであってもよく、または異なっていてもよく、水素、ヒドロキシ、ハロゲン、カルボキシル、シアノ、ニトロ、オキソ(=O)、チオ(=S)、置換もしくは非置換のアルキル、置換もしくは非置換のアルコキシ、置換もしくは非置換のアルケニル、置換もしくは非置換のアルキニル、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のアリールアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルキル、置換もしくは非置換のシクロアルケニル、置換もしくは非置換のアミノ、置換もしくは非置換のアリール、置換もしくは非置換のヘテロアリール、置換ヘテロシクロアルキル環、置換もしくは非置換のヘテロアリールアルキル、置換もしくは非置換ヘテロ環状環などの1つ以上の置換基を含む。
【0064】
本明細書で使用するためのカルボン酸含有基の代表的な例としては、例として、連結基を介して分子の残りに接続するカルボン酸基、例えば、一般式-R11C(O)OHを有するものが挙げられ、式中、R11は、結合、本明細書で定義される置換もしくは非置換のアルキレン基、置換もしくは非置換のシクロアルキレン基、置換もしくは非置換のシクロアルキルアルキレン基、置換もしくは非置換のアリーレン、または置換もしくは非置換のアリールアルキレン基であり、例えば、
-CH(Ar)(C(O)OH)、-C(CH)(C(O)OH)などであり、カルボン酸基が置換基に接続していてもよく、またはアルキレン基、シクロアルキレン基、シクロアルキルアルキレン基、アリーレンまたはアリールアルキレン基に直接接続していてもよい。
【0065】
本明細書で使用するRAFT剤の代表的な例としては、限定されないが、例として、ドデシル-2-((エチオキシカルボノチオイル)チオ)プロパノエート、オクタデシル-2-((エチオキシカルボノチオイル)チオ)プロパノエート、ドデシル-2-(ドデシルトリチオカルボニル)プロパノエート、オクタデシル-2-(ドデシルトリチオカルボニル)プロパノエート、PDMS含有系、例えば、エトキシプロピルポリ(ジメチルシロキサン)-α-(o-エチルキサンチル)プロパノエート、およびエトキシプロピルポリ(ジメチルシロキサン)-α-(ドデシルトリチオカルボニル)プロパノエート)など、およびこれらの混合物が挙げられる。当業者であれば容易に理解するように、上述の例示されるRAFT剤は、容易に入手可能なドデシルアルコールおよびオクタデシルアルコールを使用して調製されたが、任意の他の脂肪族アルコール(例えば、10個~20個の炭素原子を含有する脂肪族アルコール)が想定される。
【0066】
RAFT剤を形成するために使用される有機化学には特に制限はなく、当業者の範囲内である。また、以下の作業例は、指針を提供する。例えば、RAFT剤は、以下のスキームI~IVに例示されるように調製することができる。
【化8】
【0067】
好適な疎水性末端基としては、例えば、直鎖または分枝鎖のC~C18アルキル基、C~C30シクロアルキル基、C~C30アリール基、C~C30アリールアルキル基、フッ素置換された直鎖または分枝鎖のC~C18アルキル基、フッ素置換されたC~C30シクロアルキル基、フッ素置換されたC~C30アリール基、フッ素置換されたC~C30アリールアルキル基、ポリジメチルシロキサンおよび有機ケイ素含有モノマーなどが挙げられる。一実施形態では、ポリジメチルシロキサンは、例えば、約2~約50個のジメチルシロキサニル繰り返し単位を含むことができる。例えば、疎水性ポリジメチルシロキサン末端基を含有するRAFT剤は、以下の構造で表すことができる。
【化9】
【0068】
本明細書で使用される「有機ケイ素含有モノマー」は、モノマー、マクロマー、またはプレポリマー中に少なくとも1つの[シロキサニル]または少なくとも1つの[シリル-アルキル-シロキサニル]繰り返し単位を含有する。一実施形態では、合計Siおよび結合Oは、有機ケイ素含有モノマー中に、有機ケイ素含有モノマーの合計分子量の約5重量%よりも多い、または約30重量%より多い量で存在する。有機ケイ素含有疎水性モノマーは、当該技術分野において既知であり、例えば、米国特許第4,195,030号、同第4,208,506号、同第4,327,203号、同第4,355,147号、同第7,915,323号、同第7,994,356号、同第8,420,711号、同第8,827,447号および同第9,039,174号(これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)を参照。
【0069】
一実施形態では、有機ケイ素含有モノマーは、式Iの構造で表される化合物を含んでいてもよく、
【化10】

式中、Vは、エチレン系不飽和重合性基であり、Lは、リンカー基または結合であり、R、R、R、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、H、C~C12アルキル、ハロアルキル、C~C12シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、C~C12アルケニル、ハロアルケニル、またはC~C12芳香族であり、R10およびR11は、独立して、HまたはC~C12アルキルであり、ここで、R10およびR11のうちの少なくとも1つは、水素であり、yは、2~7であり、nは、1~100または1~20である。
【0070】
エチレン系不飽和重合性基は、当業者に周知である。好適なエチレン系不飽和重合性基としては、例えば、(メタ)アクリレート、ビニルカーボネート、O-ビニルカルバメート、N-ビニルカルバメート、および(メタ)アクリルアミドが挙げられる。本明細書で使用される場合、「(メタ)」という用語は、任意選択的なメチル置換基を表す。したがって、「(メタ)アクリレート」などの用語は、メタクリレートまたはアクリレートのいずれかを表し、「(メタ)アクリルアミド」は、メタクリルアミドまたはアクリルアミドのいずれかを表す。
【0071】
リンカー基は、任意の二価の基または部分であってもよく、例えば、置換または非置換のC~C12アルキル、アルキルエーテル、アルケニル、アルケニルエーテル、ハロアルキル、置換または非置換のシロキサン、および開環を伝播させることができるモノマーを含む。
【0072】
一実施形態では、Vは、(メタ)アクリレートであり、Lは、C~C12アルキレンであり、R、R、R、R、R、R、R、R、およびRは、独立して、C~C12アルキルであり、R10およびR11は独立して、Hであり、yは2~7であり、nは3~8である。
【0073】
一実施形態では、Vは、(メタ)アクリレートであり、Lは、C~Cアルキルであり、R、R、R、R、R、R、R、R、およびRは独立して、C~Cアルキルであり、R10およびR11は、独立して、Hであり、yは、2~7であり、nは、1~20である。
【0074】
一実施形態では、有機ケイ素含有モノマーは、式IIの構造で表される化合物を含んでいてもよく、
【化11】

式中、R12は、Hまたはメチルであり、Xは、OまたはNR16であり、R16は、H、またはC~Cアルキルから選択され、1つ以上のヒドロキシル基でさらに置換されていてもよく、いくつかの実施形態では、Hまたはメチルであり、R13は、二価アルキル基であり、エーテル基、ヒドロキシル基、カルバメート基、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される基でさらに官能基化されていてもよく、別の実施形態では、エーテル、ヒドロキシル、およびこれらの組み合わせで置換され得るC~Cアルキレン基であり、さらに別の実施形態では、エーテル、ヒドロキシル、およびこれらの組み合わせで置換され得るCまたはC~Cアルキレン基であり、各R14は、独立して、フェニル、またはフッ素、ヒドロキシルもしくはエーテルで置換され得るC~Cアルキルであり、別の実施形態では、各R14は、独立して、エチルおよびメチル基から選択され、さらに別の実施形態では、各R14はメチルであり、R15は、C~Cアルキルであり、aは2~50であり、いくつかの実施形態では5~15である。
【0075】
以下で考察されるように、親水性末端基は、親水性ポリマーまたはコポリマー中の親水性単位の末端親水性単位であってもよく、親水性ポリマーまたはコポリマーに導入される親水性単位の末端親水性単位とは異なる親水性基に由来していてもよい。
【0076】
次いで、RAFT重合は、RAFT剤中に親水性単位を形成することによって実行される。親水性ポリマーまたはコポリマー中の親水性単位の数は、様々に変化し得るが、例えば、親水性単位の数は、約10~約3000の範囲であってもよい。一実施形態では、親水性ポリマーまたはコポリマー中の親水性単位の数は、約50~約100の範囲であってもよい。一般に、親水性単位は、少なくとも1つのエチレン系不飽和重合性親水性モノマーに由来する。本明細書で使用される「エチレン系不飽和重合性」という用語は、例として、(メタ)アクリレート含有基、(メタ)アクリルアミド含有基、ビニル含有基、例えば、ビニル基、ビニルカーボネート含有基、ビニルカルバメート含有基など、スチレン含有基、イタコネート含有基、ビニルオキシ含有基、フマレート含有基、マレイミド含有基、ビニルスルホニル基などを含むと理解されなければならない。一実施形態では、少なくとも1つのエチレン系不飽和重合性親水性モノマーは、アクリルアミド、アセトアミド、ホルムアミド、環状ラクタム、(メタ)アクリレート化アルコール、(メタ)アクリレート化ポリ(アルキレンオキシ)、エチレン系不飽和カルボン酸、ビニルカーボネート、ビニルカルバメート、オキサゾロンモノマー、およびこれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
好適なエチレン系不飽和重合性親水性モノマーとしては、例として、アクリルアミド、例えば、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルメタクリルアミドなど、アセトアミド、例えば、N-ビニル-N-メチルアセトアミド、N-ビニルアセトアミドなど、ホルムアミド、例えば、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、N-ビニルホルムアミドなど、環状ラクタム、例えば、N-ビニル-2-ピロリドンなど、(メタ)アクリレート化アルコール、例えば、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレートなど、(メタ)アクリレート化ポリ(エチレングリコール)など、エチレン系不飽和カルボン酸、例えば、メタクリル酸、アクリル酸など、低分子量アルコール(すなわち、1~6個の炭素原子を有するアルコール)のN-ビニルカルバメート、例えば、N-ビニルメチルカルバメート、N-ビニルエチルカルバメート、N-ビニル n-プロピルカルバメート、N-ビニルイソプロピルカルバメートなど、アクリルアミド、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0078】
一実施形態では、RAFT重合は、RAFT剤中に開環反応性官能基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーに由来する親水性単位を形成することによって実施することができる。かかるモノマーは、例えば、アズラクトン、エポキシ、酸無水物などの1つ以上の開環反応性基を含んでいてもよい。開環反応性官能基を有する好適な重合性モノマーとしては、限定されないが、グリシジルメタクリレート(GMA)、無水マレイン酸、無水イタコン酸など、およびこれらの混合物が挙げられる。開環反応性官能基を有するエチレン系不飽和重合性モノマーに由来する単位を、親水性コモノマーと共重合して、得られたランダムコポリマー中に親水性単位を形成することができる。バイオメディカルデバイスを調製するために使用されるランダムコポリマーを形成するために、モノマーの開環反応性官能基と共重合するのに有用なコモノマーの非限定的な例としては、上述のものが挙げられ、ジメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、および/またはN-ビニルピロリドンが好ましい。
【0079】
別の実施形態では、RAFT重合は、RAFT剤中のエチレン系不飽和重合性アルコキシル化ポリマーに由来する親水性単位を形成することによって実行され得る。好適なエチレン系不飽和重合性アルコキシル化ポリマーとしては、例として、例えば約1000までの分子量を有する重合性ポリエチレングリコール、例えば、PEG-200、PEG-400、PEG-600、PEG-1000、およびこれらの混合物などのCTFA名を有するものが挙げられる。代表的な例としては、PEG-200メタクリレート、PEG-400メタクリレート、PEG-600メタクリレート、PEG-1000メタクリレートなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0080】
親水性単位を有するRAFT剤を形成するために使用される有機化学には特に制限はなく、当業者の範囲内である。また、以下の作業例は、指針を提供する。例えば、親水性単位を有するRAFT剤は、(1)親水性モノマーとRAFT剤を混合すること、(2)重合開始剤を添加すること、(3)モノマー/開始剤混合物を熱源に供することによって得ることができる。典型的な開始剤としては、アセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、デカノイルペルオキシド、コプリリルペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、第三級ブチルペルオキシピバレート、過炭酸ナトリウム、第三級ブチルペルオクトエート、およびアゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)によって示される種類の遊離ラジカル生成重合開始剤が挙げられる。使用する開始剤のレベルは、モノマーの混合物の0.01~2重量%の範囲内で変化する。所望される場合、上述のモノマーの混合物は、遊離ラジカル生成剤を添加しつつ加温される。
【0081】
反応は、約40℃~約120℃の温度で、約30分~約48時間の時間、実施することができる。所望される場合、反応は、好適な溶媒の存在下で実施することができる。好適な溶媒は、原則として、使用されるモノマーを溶解する全ての溶媒、例えば、1,4-ジオキサン、ヘキサノール、ジメチルホルムアミド、アセトン、シクロヘキサノン、トルエン、t-ブチルメチルエーテル、テトラヒドロフランなど、およびこれらの混合物である。
【0082】
一般に、親水性単位を有するRAFT剤は、以下のスキームI~IVに例示されるように調製することができる。
【化12-1】

【化12-2】
【0083】
次に、RAFT剤のRAFT基、すなわち、チオカルボニルチオ基を除去して、当該技術分野で既知の方法によって、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた、得られた親水性ポリマーまたはコポリマーを得る。例えば、RAFT末端官能基の置き換えは、まず、RAFT剤を遊離ラジカル開始剤(例えば、AIBN)と反応させ、次いで、例えば、開始剤断片の組換え(例えば、-CN基または溶媒由来基、すなわち、-OH基を得るために)または末端水素原子(例えば、溶媒から水素原子を抽出し、末端-H基を生成する)によって、親水性ポリマーまたはコポリマーをいずれかの親水性基でエンドキャップすることによって行われる。
【0084】
親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた、得られた親水性ポリマーまたはコポリマーは、約1500~約75,000Daの範囲の数平均分子量を有していてもよい。一実施形態では、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた、得られた親水性ポリマーまたはコポリマーは、約4000~約20,000Daの範囲の数平均分子量を有していてもよい。
【0085】
本発明の包装システム中で眼用デバイスを保管するための包装溶液中で使用される、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた親水性ポリマーまたはコポリマーの量は、眼用デバイスの表面特性を改善するのに有効な量である。コンタクトレンズが溶液中に包装されており、次いで、包装システムから取り出され、着用のために眼に入れられる場合、これらのポリマーが、初期および長期間の快適性を向上させると考えられている。一実施形態では、包装溶液中に存在する、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた親水性ポリマーまたはコポリマーの濃度は、約0.01%~約10% w/wの範囲である。一実施形態では、包装溶液中に存在する、親水性単位を含み、疎水性末端基および親水性末端基でエンドキャップされた親水性ポリマーまたはコポリマーの濃度は、約0.1%~約5% w/wの範囲である。
【0086】
本発明の包装溶液は、生理学的に適合性である。具体的には、溶液は、コンタクトレンズなどのレンズと共に使用するために「眼科的に安全」でなければならず、このことは、溶液で処理されたコンタクトレンズが、一般的に、すすぐことなく眼に直接配置するのに適しており、安全であることを意味し、すなわち、溶液が、溶液で濡らされたコンタクトレンズによって眼と毎日接触するのに安全であり、快適であることを意味する。眼科的に安全な溶液は、眼と適合性である張度およびpHを有し、ISO規格およびアメリカ食品医薬品局(FDA)規制に従って非細胞障害性である材料およびその量を含む。
【0087】
また、包装溶液は、離型前の製品に微生物汚染が存在しないことが、このような製品にとって必要な程度まで統計的に示されなければならないという点で、滅菌である必要がある。本発明において有用な液体媒体は、処理または治療されるレンズに実質的な有害作用を有さず、本レンズの1つ以上の処理を可能にするか、または促進するように選択される。一実施形態では、液体媒体は、水性である。特に有用な水性液体媒体は、生理食塩水、例えば、従来の生理食塩水溶液または従来の緩衝生理食塩水溶液に由来するものである。
【0088】
包装溶液のpHは、約6~約9、または約6.5~約7.8の範囲内に維持されるべきである。好適な緩衝液、例えば、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸、重炭酸ナトリウム、TRIS、および種々の混合リン酸緩衝液(NaHPO、NaHPOおよびKHPOの組み合わせを含む)、ならびにこれらの混合物を加えてもよい。一般的に、緩衝液は、溶液の約0.05~約2.5重量%の範囲の量で使用されることになる。一実施形態では、緩衝液は、溶液の約0.1~約1.5重量%の範囲の量で使用される。本発明の包装溶液は、好ましくは、ホウ酸、ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、メタホウ酸カリウム、またはそれらの混合物のうちの1つ以上を含有するホウ酸緩衝液を含有する。
【0089】
典型的には、包装溶液はまた、等張化剤を用い、0.9%の塩化ナトリウム溶液または2.5%のグリセロール溶液に相当する通常の涙液の浸透圧に近似するように調整される。包装溶液は、生理食塩水単独で、または組み合わせて実質的に等張性にされ、そうではない場合、単純に滅菌水と混合され、低張性にされるか、または高張性にされる場合、レンズは、その望ましい光学パラメータを失う。それに応じて、過剰な生理食塩水は、刺すような痛みおよび眼の刺激を引き起こす高張性溶液が生成する可能性がある。
【0090】
好適な張度調整剤としては、例えば、塩化ナトリウムおよび塩化カリウム、デキストロース、グリセリン、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムなど、ならびにこれらの混合物が挙げられる。これらの張度調整剤は、典型的には、約0.01~約2.5% w/vの範囲の量で個別に使用される。一実施形態では、張度調整剤は、約0.2~約1.5% w/vの範囲の量で使用される。等張化剤は、少なくとも約200mOsm/kgの最終的な浸透圧値を提供する量で使用される。一実施形態では、張度調整剤は、約200~約400mOsm/kgの最終的な浸透圧値を提供する量で使用される。一実施形態では、張度調整剤は、約250~約350mOsm/kgの最終的な浸透圧値を提供する量で使用される。一実施形態では、張度調整剤は、約280~約320mOsm/kgの最終的な浸透圧値を提供する量で使用される。
【0091】
所望される場合、1つ以上の追加の構成要素を包装溶液中に含んでいてもよい。このような追加の1つ以上の構成要素は、包装溶液に少なくとも1つの有益または所望の特性を付与または提供するように選択される。一般に、追加の構成要素は、1つ以上の眼用デバイスケア組成物において従来使用される構成要素から選択され得る。好適な追加の構成要素としては、例えば、洗浄剤、湿潤剤、栄養剤、封鎖剤、粘度上昇剤、コンタクトレンズコンディショニング剤、抗酸化剤など、およびこれらの混合物が挙げられる。これらの追加の構成要素はそれぞれ、包装溶液中に、包装溶液に有益または所望の特性を付与または提供するのに有効な量で含まれてもよい。例えば、そのような追加の構成要素は、包装溶液中に、他の(例えば、従来の)コンタクトレンズケア製品に使用されるこのような構成要素の量と同様の量で含まれてもよい。
【0092】
好適な封鎖剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、ヘキサメタリン酸アルカリ金属塩、クエン酸、クエン酸ナトリウムなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0093】
好適な粘度上昇剤としては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0094】
好適な抗酸化剤としては、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、N-アセチルシステイン、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエンなど、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0095】
本発明のコンタクトレンズなどの眼用デバイスを包装し、保管する方法は、上述の水性包装溶液に浸漬された眼用デバイスを少なくとも包装することを含む。本方法は、コンタクトレンズの製造の直後に、顧客/着用者に送達する前に、水性包装溶液に眼用デバイスを浸漬することを含んでいてもよい。あるいは、包装溶液中の包装および保管は、最終顧客(着用者)へと届く前であるが、乾燥状態でのレンズの製造および輸送の後の中間点で行ってもよく、乾燥レンズは、レンズを包装溶液に浸漬することによって水和される。したがって、顧客に届けるための包装は、本発明の水性包装溶液に浸漬された1つ以上の未使用のコンタクトレンズを収容する密封容器を含んでいてもよい。
【0096】
一実施形態では、本発明の眼用デバイス包装システムに導くステップは、(1)少なくとも第1および第2の成形型部分を含む成形型内で、眼用デバイスを成形することと、(2)成形型部分のうちの少なくとも1つを含む容器内で、デバイスを水和し、洗浄することと、(3)コポリマーを含む包装溶液を、内部にデバイスが支持された容器に導入することと、(4)容器を密封することと、を含む。一実施形態では、方法は、本容器の内容物を滅菌するステップも含む。滅菌は、容器を密封する前、または最も好都合には密封した後に行われてもよく、当該技術分野で既知の任意の好適な方法によって、例えば、約120℃以上の温度で密封容器をオートクレーブ処理することによって行われてもよい。
【0097】
以下の実施例は、当業者が本発明を実施することを可能にするために提供され、単なる本発明の例示である。実施例は、特許請求の範囲で定義される本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。実施例では、以下の略語が使用される。
NVP:N-ビニル-2-ピロリドン
DMA:N,N-ジメチルアセトアミド
AIBN:アゾビス-イソブチルニトリル
DI:脱イオン水
【0098】
実施例1
以下の構造を有するPDMA-C12の調製
【化13】
【0099】
ステップ1-ドデシル-2-ブロモプロパノエートの合成
マグネチックスターラー、凝縮器、添加漏斗および温度プローブを取り付けた1000mLの丸底3ッ口フラスコに、1-ドデカノール(18.63g)をエチルエーテル300mLに溶解した。次に、添加漏斗に、エチルエーテル10mLに溶解したトリエチルアミン(15.33mL)を投入し、混合物を反応フラスコに滴下して加えた。加え終わったら、添加漏斗をエチルエーテル90mLで洗浄した。この反応フラスコを氷/水浴に入れ、添加漏斗に、エチルエーテル50mLに溶解した2-ブロモプロピオニルブロミド(11.11mL)を投入した。内温が0℃に達したら、2-ブロモプロピオニルブロミド/エチルエーテル溶液を2時間にわたって滴下して加えた。添加漏斗を残りのエチルエーテルで洗浄し、反応物を撹拌し、一晩で室温に到達させた。次の日、反応混合物を、10%(v:v)HCL溶液150mLで3回、脱イオン水150mLで3回、および5%(w:v)NaCl溶液150mLで1回、ワークアップした。有機層を集め、硫酸マグネシウムで1時間乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗物質を、固定相としてシリカゲルカラム、移動相として95:5(v:v)ヘプタン:酢酸エチルを使用してカラム洗浄した。
【0100】
ステップ2-ドデシル-2-(ドデシルトリチオカルボニル)プロパノエートの合成
磁気撹拌棒、凝縮器、および添加漏斗を取り付けた2ッ口の250mL丸底フラスコ中、N雰囲気下、二硫化炭素(7.279g)およびドデカンチオール(9.675g)をクロロホルム33mL中で撹拌した。添加漏斗に、クロロホルム5mLに溶解したトリエチルアミン(9.674g)を加え、反応フラスコに滴下した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。3時間後、添加漏斗を介し、ステップ1のドデシル-2-ブロモプロパノエート(15.37g)をクロロホルム32mLと共に滴下して加えた。反応混合物を24時間撹拌し、次いで、2×160mLのDI水、2×160mLの5%HCl、および2×160mLの5%NaClで洗浄した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を、加圧下で除去し、得られた生成物を、95:5のヘプタン/酢酸エチルを使用して、シリカゲル上のカラムクロマトグラフィーによってさらに精製した。
【0101】
ステップ3-ドデシル-2-(ドデシルトリチオカルボニル)プロピオネートを使用したN,N-ジメチルアセトアミドの重合
マグネチックスターラー、凝縮器、窒素注入口を取り付けた250mLの丸底3ッ口フラスコに、DMA(40g)、1,4-ジオキサン(100mL)、および実施例2のドデシル-2-(ドデシルトリチオカルボニル)プロピオネート(0.244g)を投入した。反応混合物を窒素下で1時間パージした。反応混合物をパージした後、AIBN(0.736mg)を反応フラスコに加え、反応フラスコを、予熱した60℃の油浴に投下した。重合を26時間行わせた。26時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、反応混合物をエチルエーテル2600mL中で沈殿させた。ポリマーを濾過し、集め、集めたポリマーを減圧下で一晩乾燥させた。得られたポリマーを粉砕し、ドライボックスに保管された褐色ガラス瓶内で保管した。ポリマーのGPC結果(RI-GPC):Mn=62,500Da、Mw=93,200DaおよびPD=1.49 収率=87.5%。
【0102】
ステップ4-RAFT基の除去
マグネチックスターラー、凝縮器、および窒素注入口を取り付けた500mLの丸底2ッ口フラスコに、ステップ3のポリマー(70g)およびイソプロピルアルコール(280mL)を加えた。反応混合物を窒素下で1時間パージした。反応混合物をパージした後、AIBN(4.52g)を反応フラスコに加え、反応フラスコを、予熱した60℃の油浴に投下した。反応を、20時間行わせた。20時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、反応混合物をエチルエーテル2600mL中で沈殿させた。ポリマーを濾過し、集め、集めたポリマーを減圧下で一晩乾燥させた。得られたポリマーを粉砕し、ドライボックスに保管された褐色ガラス瓶内で保管した。
【0103】
実施例2
以下の構造を有するPDMA-18の調製
【化14】
【0104】
ステップ1-オクタデシル-2-ブロモプロパノエートの合成
マグネチックスターラー、凝縮器、添加漏斗および温度プローブを取り付けた1000mLの丸底3ッ口フラスコに、1-オクタデカノール(27.05g)をエチルエーテル300mLに溶解した。次に、添加漏斗に、エチルエーテル10mLに溶解したトリエチルアミン(15.33mL)を投入し、混合物を反応フラスコに滴下して加えた。加え終わったら、添加漏斗をエチルエーテル90mLで洗浄した。この反応フラスコを氷/水浴に入れ、添加漏斗に、エチルエーテル50mLに溶解した2-ブロモプロピオニルブロミド(11.11mL)を投入した。内温が0℃に達したら、2-ブロモプロピオニルブロミド/エチルエーテル溶液を2時間にわたって滴下して加えた。添加漏斗を残りのエチルエーテルで洗浄し、反応物を撹拌し、一晩で室温に到達させた。次の日、反応混合物を、10%(v:v)HCL溶液150mLで3回、脱イオン水150mLで3回、および5%(w:v)NaCl溶液150mLで1回、ワークアップした。有機層を集め、硫酸マグネシウムで1時間乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗物質を、固定相としてシリカゲルカラム、移動相として95:5(v:v)ヘプタン:酢酸エチルを使用してカラム洗浄した。
【0105】
ステップ2-オクタデシル-2-(ドデシルトリチオカルボニル)プロピオネートの合成
磁気撹拌棒、凝縮器、および添加漏斗を取り付けた2ッ口の250mL丸底フラスコ中、N雰囲気下、二硫化炭素(4.09g)およびドデカンチオール(5.437g)をクロロホルム33mL中で撹拌した。添加漏斗に、クロロホルム5mLに溶解したトリエチルアミン(5.436g)を加え、反応フラスコに滴下した。反応混合物を室温で3時間撹拌した。3時間後、添加漏斗を介し、ステップ1のオクタデシル-2-ブロモプロパノエート(12.og)をクロロホルム32mLと共に滴下して加えた。反応混合物を24時間撹拌し、次いで、2×160mLのDI水、2×160mLの5%HCl、および2×160mLの5%NaClで洗浄した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで乾燥させ、濾過した。溶媒を加圧下で除去した。
【0106】
ステップ3-オクタデシル-2-(ドデシルトリチオカルボニル)プロピオネートを使用したN,N-ジメチルアセトアミドの重合
マグネチックスターラー、凝縮器、窒素注入口を取り付けた250mLの丸底3ッ口フラスコに、DMA(40g)、1,4-ジオキサン(100mL)、およびステップ2のオクタデシル-2-(ドデシルトリチオカルボニル)プロピオネート(0.546g)を投入した。反応混合物を窒素下で1時間パージした。反応混合物をパージした後、AIBN(1.48mg)を反応フラスコに加え、反応フラスコを、予熱した60℃の油浴に投下した。重合を26時間行わせた。26時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、反応混合物をエチルエーテル2600mL中で沈殿させた。得られたポリマーを濾過し、集め、次いで、減圧下で一晩乾燥させた。ポリマーを粉砕し、ドライボックスに保管された褐色ガラス瓶内で保管した。ポリマーのGPC結果(RI-GPC):Mn=40,900Da、Mw=50,600Da、PD=1.24 収率=100%。
【0107】
ステップ4-RAFT基の除去
マグネチックスターラー、凝縮器、および窒素注入口を取り付けた500mLの丸底2ッ口フラスコに、ステップ3のポリマー(70g)およびイソプロピルアルコール(280mL)を加えた。反応混合物を窒素下で1時間パージした。反応混合物をパージした後、AIBN(4.52g)を反応フラスコに加え、反応フラスコを、予熱した60℃の油浴に投下した。反応を、20時間行わせた。20時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、反応混合物をエチルエーテル2600mL中で沈殿させた。ポリマーを濾過し、集め、集めたポリマーを減圧下で一晩乾燥させた。得られたポリマーを粉砕し、ドライボックスに保管された褐色ガラス瓶内で保管した。
【0108】
実施例3
以下の構造を有するPVP-C12の調製
【化15】
【0109】
ステップ1-ドデシル-2-ブロモプロパノエートの合成
マグネチックスターラー、凝縮器、添加漏斗および温度プローブを取り付けた1000mLの丸底3ッ口フラスコに、1-ドデカノール(18.63g)をエチルエーテル300mLに溶解した。次に、添加漏斗に、エチルエーテル10mLに溶解したトリエチルアミン(15.33mL)を投入し、混合物を反応フラスコに滴下して加えた。加え終わったら、添加漏斗をエチルエーテル90mLで洗浄した。この反応フラスコを氷/水浴に入れ、添加漏斗に、エチルエーテル50mLに溶解した2-ブロモプロピオニルブロミド(11.11mL)を投入した。内温が0℃に達したら、2-ブロモプロピオニルブロミド/エチルエーテル溶液を2時間にわたって滴下して加えた。添加漏斗を残りのエチルエーテルで洗浄し、反応物を撹拌し、一晩で室温に到達させた。次の日、反応混合物を、10%(v:v)HCL溶液150mLで3回、脱イオン水150mLで3回、および5%(w:v)NaCl溶液150mLで1回、ワークアップした。有機層を集め、硫酸マグネシウムで1時間乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗物質を、固定相としてシリカゲルカラム、移動相として95:5(v:v)ヘプタン:酢酸エチルを使用してカラム洗浄した。
【0110】
ステップ2-ドデシル-2-((エチオキシカルボノチオイル)チオ)プロパノエートの合成
マグネチックスターラー、凝縮器、窒素雰囲気および温度プローブを取り付けた250mLの丸底3ッ口フラスコに、ステップ1のドデシル-2-ブロモプロパノエート(6.350g)をエチルエーテル70mLに溶解し、窒素下で30分間パージした。反応フラスコを氷/水浴に入れ、内温が0℃に達したら、粉末漏斗を使用して、エチルキサントゲン酸カリウム(3.484g)を加えた。粉末漏斗をエタノール7mLで洗浄し、反応混合物を撹拌し、一晩で室温に到達させた。次の日、反応混合物を2:1のヘプタン:酢酸エチル50mLで4回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで1時間乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗物質を、固定相としてシリカゲルカラム、移動相として99:1(v:v)ヘプタン:酢酸エチルを使用してカラム洗浄した。
【0111】
ステップ3-ドデシル-2-((エチオキシカルボノチオイル)チオ)プロパノエートを使用したN-ビニルピロリドンの重合
マグネチックスターラー、凝縮器、窒素注入口を取り付けた250mLの丸底3ッ口フラスコに、NVP(40g)、1,4-ジオキサン(40mL)、およびステップ2のドデシル-2-((エトキシカルボノチオイル)チオ)プロパノエート(1.954g)を投入した。反応混合物を窒素下で1時間パージした。混合物をパージした後、AIBN(8.85mg)を反応フラスコに加えた。反応フラスコを、予熱した60℃の油浴に投下し、重合を26時間行わせた。26時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、反応混合物をエチルエーテル2600mL中で沈殿させた。得られたポリマーを濾過し、集め、減圧下で一晩乾燥させた。ポリマーを粉砕し、ドライボックスに保管された褐色ガラス瓶内で保管した。ポリマーのGPC結果(RI-GPC):Mn=6,700Da、Mw=7,100DaおよびPD=1.06 収率=84%。
【0112】
ステップ4-RAFT基の除去
マグネチックスターラー、凝縮器、および窒素注入口を取り付けた500mLの丸底2ッ口フラスコに、ステップ3のポリマー(70g)およびイソプロピルアルコール(280mL)を加えた。反応混合物を窒素下で1時間パージした。反応混合物をパージした後、AIBN(4.52g)を反応フラスコに加え、反応フラスコを、予熱した60℃の油浴に投下した。反応を、20時間行わせた。20時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、反応混合物をエチルエーテル2600mL中で沈殿させた。ポリマーを濾過し、集め、集めたポリマーを減圧下で一晩乾燥させた。得られたポリマーを粉砕し、ドライボックスに保管された褐色ガラス瓶内で保管した。
【0113】
実施例4
以下の構造を有するPVP-C18の調製
【化16】
【0114】
ステップ1-オクタデシル-2-ブロモプロパノエートの合成
マグネチックスターラー、凝縮器、添加漏斗および温度プローブを取り付けた1000mLの丸底3ッ口フラスコに、1-オクタデカノール(27.05g)をエチルエーテル300mLに溶解した。次に、添加漏斗に、エチルエーテル10mLに溶解したトリエチルアミン(15.33mL)を投入し、混合物を反応フラスコに滴下して加えた。加え終わったら、添加漏斗をエチルエーテル90mLで洗浄した。この反応フラスコを氷/水浴に入れ、添加漏斗に、エチルエーテル50mLに溶解した2-ブロモプロピオニルブロミド(11.11mL)を投入した。内温が0℃に達したら、2-ブロモプロピオニルブロミド/エチルエーテル溶液を2時間にわたって滴下して加えた。添加漏斗を残りのエチルエーテルで洗浄し、反応物を撹拌し、一晩で室温に到達させた。次の日、反応混合物を、10%(v:v)HCL溶液150mLで3回、脱イオン水150mLで3回、および5%(w:v)NaCl溶液150mLで1回、ワークアップした。有機層を集め、硫酸マグネシウムで1時間乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗物質を、固定相としてシリカゲルカラム、移動相として95:5(v:v)ヘプタン:酢酸エチルを使用してカラム洗浄した。
【0115】
ステップ2-オクタデシル-2-((エチオキシカルボノチオイル)チオ)プロパノエートの合成
マグネチックスターラー、凝縮器、窒素雰囲気および温度プローブを取り付けた250mLの丸底3ッ口フラスコに、ステップ1のオクタデシル-2-ブロモプロパノエート(6.350)をエチルエーテル70mLに溶解し、窒素下で30分間パージした。反応フラスコを氷/水浴に入れ、内温が0℃に達したら、粉末漏斗を使用して、エチルキサントゲン酸カリウム(3.484g)を加えた。粉末漏斗をエタノール7mLで洗浄し、反応混合物を撹拌し、一晩で室温に到達させた。次の日、反応混合物を2:1のヘプタン:エチルエーテル50mLで4回抽出した。有機層を集め、硫酸マグネシウムで1時間乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧下で除去した。次いで、粗物質を、固定相としてシリカゲルカラム、移動相として99:1(v:v)ヘプタン:酢酸エチルを使用してカラム洗浄した。
【0116】
ステップ3-オクタデシル-2-((エチオキシカルボノチオイル)チオ)プロパノエートを使用したN-ビニルピロリドンの重合
マグネチックスターラー、凝縮器、窒素注入口を取り付けた250mLの丸底3ッ口フラスコに、NVP(40g)、1,4-ジオキサン(40mL)、およびステップ2のオクタデシル-2-((エトキシカルボノチオイル)チオ)プロパノエート(0.301g)を投入した。反応混合物を窒素下で1時間パージした。反応混合物をパージした後、AIBN(11.1mg)を反応フラスコに加え、予熱した60℃の油浴に投下した。重合を26時間行わせた。26時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、反応混合物をエチルエーテル2600mL中で沈殿させた。得られたポリマーを濾過し、集め、減圧下で一晩乾燥させた。ポリマーを粉砕し、ドライボックスに保管された褐色ガラス瓶内で保管した。ポリマーのGPC結果(RI-GPC):Mn=31,300Da、Mw=41,300DaおよびPD=1.32 収率=74%。
【0117】
ステップ4-RAFT基の除去
マグネチックスターラー、凝縮器、および窒素注入口を取り付けた500mLの丸底2ッ口フラスコに、ステップ3のポリマー(70g)およびイソプロピルアルコール(280mL)を加えた。反応混合物を窒素下で1時間パージした。反応混合物をパージした後、AIBN(4.52g)を反応フラスコに加え、反応フラスコを、予熱した60℃の油浴に投下した。反応を、20時間行わせた。20時間後、反応フラスコを室温まで冷却し、反応混合物をエチルエーテル2600mL中で沈殿させた。ポリマーを濾過し、集め、集めたポリマーを減圧下で一晩乾燥させた。得られたポリマーを粉砕し、ドライボックスに保管された褐色ガラス瓶内で保管した。
【0118】
本明細書に開示される実施形態に様々な修正を行うことができることが理解されるであろう。したがって、上記の説明は、限定的と解釈されるべきではなく、好ましい実施形態の例示としてのみ解釈されるべきである。例えば、上に記載される、本発明を動作させるための最良の態様として実装される機能は、例示目的のみのためである。当業者であれば、本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、他の構成および方法を実施することができる。さらに、当業者は、本明細書に追加される特徴および利点の範囲および趣旨内で他の修正を想定するであろう。