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特許7492970繊維処理剤、人工毛髪用繊維及び頭髪装飾製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】繊維処理剤、人工毛髪用繊維及び頭髪装飾製品
(51)【国際特許分類】
   D06M 15/643 20060101AFI20240523BHJP
   A41G 3/00 20060101ALI20240523BHJP
   D06M 13/463 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
D06M15/643
A41G3/00 A
D06M13/463
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021548370
(86)(22)【出願日】2020-07-16
(86)【国際出願番号】 JP2020027700
(87)【国際公開番号】W WO2021059691
(87)【国際公開日】2021-04-01
【審査請求日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2019175343
(32)【優先日】2019-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】堀端 篤
(72)【発明者】
【氏名】金岡 正道
(72)【発明者】
【氏名】武井 淳
【審査官】印出 亮太
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0216705(US,A1)
【文献】特表2011-526263(JP,A)
【文献】特開平11-246364(JP,A)
【文献】特開2003-335640(JP,A)
【文献】特表2009-539920(JP,A)
【文献】特開2016-065053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06M 13/00 - 15/715
A61K 8/00
A61L 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工毛髪用繊維であって、
前記人工毛髪用繊維は、繊維処理剤によって表面が処理されており、
前記繊維処理剤
水と、シリコーンオイルと、イオン液体を含み、
前記水100重量部に対する前記シリコーンオイルの含有量が0.5重量部超9.5重量部以下であって、
前記水100重量部に対する前記イオン液体の含有量が0.2重量部以上5.0重量部以下である、人工毛髪用繊維
【請求項2】
前記シリコーンオイルはアミノ変性シリコーンオイルであって、
前記イオン液体は、アミノイオンを含有する、請求項1に記載の人工毛髪用繊維
【請求項3】
前記人工毛髪用繊維に対する前記シリコーンオイル及び前記イオン液体の付着量の合計が、前記人工毛髪用繊維の重量に対して、0.03~1.0重量%である、請求項に記載の人工毛髪用繊維。
【請求項4】
人工毛髪用繊維であって、
シリコーンオイル及びイオン液体が付着していて、
前記シリコーンオイルの付着量が、前記人工毛髪用繊維の重量に対して、0.02重量%以上0.5重量%以下であって、
前記イオン液体の付着量が、前記人工毛髪用繊維の重量に対して、0.01重量%以上0.5重量%以下である、人工毛髪用繊維。
【請求項5】
請求項乃至のうち何れか1項に記載の人工毛髪用繊維からなる頭髪装飾製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウィッグ、ヘアピース、ブレード、エクステンションヘアー等の頭髪装飾製品に用いられる繊維(以下、単に「人工毛髪用繊維」という。)の繊維処理剤、これを用いた人工毛髪用繊維及び頭髪装飾製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人工毛髪用繊維に滑り性と帯電防止性を付与するための繊維処理剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-184831号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の人工毛髪用繊維において、滑り性と帯電防止性を有しつつ、べたつきを抑制することが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者が鋭意検討を行ったところ、水と、シリコーンオイルと、イオン液体と、を有する繊維処理剤を用いることによって、滑り性と帯電防止性を有しつつ、べたつきが抑制される人工毛髪用繊維が得られることを見出し、本発明の完成に到った。
【0006】
本発明によれば、繊維処理剤であって、水と、シリコーンオイルと、イオン液体をさらに含み、前記水100重量部に対する前記シリコーンオイルの含有量が0.5重量部超9.5量部以下であって、前記水100重量部に対する前記イオン液体の含有量が0.2重量部以上5.0重量部以下である、繊維処理剤が提供される。
【0007】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記シリコーンオイルはアミノ変性シリコーンオイルであって、前記イオン液体は、アミノイオンを含有する、繊維処理剤である。
【0008】
本発明の別の観点によれば、前記繊維処理剤によって表面が処理された人工毛髪用繊維が提供される。
好ましくは、前記人工毛髪用繊維に対する前記シリコーンオイル及び前記イオン液体の付着量の合計が、前記人工毛髪用繊維の重量に対して、0.03~1.0重量%である、人工毛髪用繊維である。
【0009】
本発明の別の観点によれば、人工毛髪用繊維であって、シリコーンオイル及びイオン液体が付着していて、前記シリコーンオイルの付着量が、前記人工毛髪用繊維の重量に対して、0.02重量%以上0.5重量%以下であって、前記イオン液体の付着量が、前記人工毛髪用繊維の重量に対して、0.01重量%以上0.5重量%以下である、人工毛髪用繊維が提供される。
【0010】
本発明の別の観点によれば、前記人工毛髪用繊維からなる頭髪装飾製品が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の繊維処理剤は、水と、シリコーンオイルと、イオン液体と、を有する。繊維処理剤は、人工毛髪用繊維の表面に塗布されることで、その人工毛髪用繊維に滑り性と帯電防止性を付与し、べたつきの発生を抑制する。
【0012】
シリコーンオイルは、人工毛髪用繊維に滑り性を付与するためのものである。シリコーンオイルとしては、ストレートシリコーンオイルであっても変性シリコーンオイルであってもよい。ストレートシリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジエンシリコーンオイル等が挙げられる。変性シリコーンオイルとしては、エポキシ変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、シラノール変性シリコーンオイル、アクリル変性シリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル等が挙げられる。シリコーンオイルは、好ましくは変性シリコーンオイルであり、より好ましくはアミノ変性シリコーンオイルである。
【0013】
イオン液体は、人工毛髪用繊維に帯電防止性を付与するためのものである。イオン液体の陽イオンとしては、アンモニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピリジニウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピロリニウムイオン、ピペリジニウムイオン、ピラジニウムイオン、ピリミジニウムイオン、トリアゾリウムイオン、トリアジニウムイオン、キノリニウムイオン、イソキノリニウムイオン、インドリニウムイオン、キノキサリニウムイオン、ピペラジニウムイオン、オキサゾリニウムイオン、チアゾリニウムイオン、およびモルホリニウムイオン等が挙げられる。イオン液体の陰イオンとしては、ハロゲン系イオン、ホウ素系イオン、リン系イオン、スルホン酸アニオン等が挙げられる。なお、シリコーンオイルがアミノ変性シリコーンである場合には、相溶性や分散性の観点から、イオン液体は、陽イオンとしてアミノイオンを有することが好ましい。
【0014】
水100重量部に対するシリコーンオイルの含有量は、0.5重量部超9.5重量部以下であることが好ましく、1.5~7.0重量部であることがより好ましい。シリコーンオイルの含有量が0.5重量部超であると、人工毛髪用繊維に十分な滑り性を付与することが可能となる。シリコーンオイルの含有量が9.5重量部以下であると、人工毛髪用繊維のべたつきを十分に抑制することが可能となる。水100重量部に対するシリコーンオイルの含有量は、具体的には例えば、0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.2,3.5,4.0,4.5,5.0,5.5,6.0,6.5,7.0,7.5,7.9,8.0,8.5,9.0,9.5重量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0015】
水100重量部に対するイオン液体の含有量は、0.2重量部以上5.0重量部以下であることが好ましく、0.4~3.5重量部であることがより好ましい。イオン液体の含有量が0.2重量部以上であると、人工毛髪用繊維に十分な帯電防止性を付与することが可能となる。イオン液体の含有量が5.0重量部以下であると、人工毛髪用繊維のべたつきを十分に抑制することが可能となる。水100重量部に対するイオン液体の含有量は、具体的には例えば、0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0,1.1,1.5,2.0,2.2,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0重量部であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0016】
シリコーンオイルとイオン液体の含有量の合計は、水100重量部に対して10重量部未満であることが好ましい。上記含有量の合計が10重量部未満であると、人工毛髪用繊維のべたつきが抑制される。
【0017】
繊維処理剤は、抗菌加工剤、消臭加工剤、防カビ加工剤、UVカット剤、柔軟剤、SR加工剤、芳香加工剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、香料等を含有してもよい。一方で、繊維処理剤は、カチオン活性剤を実質的に含まないことが好ましい。例えば、繊維処理剤は、カチオン活性剤を全く含まないか、含む場合でも、水100重量部に対してカチオン活性剤の含有量が1重量部以下であることが好ましく0.1重量部以下であることがより好ましい。イオン液体の代わりにカチオン活性剤を用いて、人工毛髪用繊維に十分な帯電防止性を付与しようとすると、べたつきが発生することがある。
【0018】
繊維処理剤は、人工毛髪用繊維の表面に塗布される。繊維処理剤が塗布された後の人工毛髪用繊維は、ウィッグ、ヘアピース、ブレード、エクステンンョンヘアー等の頭髪装飾製品に用いられる。本発明の一実施形態における頭髪装飾製品は、上記繊維処理剤が塗布され、有効成分が付着した人工毛髪用繊維を含む。
【0019】
繊維処理剤を人工毛髪用繊維に付着させる方法としては、人工毛髪用繊維に液体を塗布する従来公知の手段を採用できる。例えば、表面に繊維処理剤を付着させたロールに人工毛髪用繊維を巻き付ける手段、繊維処理剤を貯めた液体槽に人工毛髪用繊維を浸す手段、ブラシ、刷毛等の塗り具を介して人工毛髪用繊維に繊維処理剤を付着させる手段等がある。
【0020】
繊維処理剤は、有効成分すなわち処理剤中に含有する化合物(シリコーンオイル及びイオン液体)が人工毛髪用繊維の表面に所定の割合で付着することが好ましい。人工毛髪用繊維に対するシリコーンオイル及びイオン液体の付着量の合計は、人工毛髪用繊維の重量に対して、0.03~1.0重量%の範囲で付着するのが好ましい。有効成分の付着量が0.03重量%を下回ると、繊維処理剤の効果を期待できず、帯電防止性や滑り性に対する効果が得られない可能性がある。また、有効成分の付着量が1.0重量%を越えると、人工毛髪用繊維にべたつきが生じ、触感が悪くなる可能性がある。シリコーンオイル及びイオン液体の付着量の合計は、具体的には例えば、0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5,0.6,0.7,0.8,0.9,1.0重量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
人工毛髪用繊維に対するシリコーンオイルの付着量は、人工毛髪用繊維の重量に対して、0.02~0.5重量%であることが好ましい。シリコーンオイルの付着量が0.02重量%以上であると、人工毛髪用繊維に十分な滑り性を付与することができる。シリコーンオイルの付着量が0.5重量%以下であると、人工毛髪用繊維のべたつきが抑えられる。シリコーンオイルの付着量は、具体的には例えば、0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5重量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0022】
人工毛髪用繊維に対するイオン液体の付着量は、人工毛髪用繊維の重量に対して、0.01~0.5重量%であることが好ましい。イオン液体の付着量が0.01重量%以上であると、人工毛髪用繊維に十分な帯電防止性を付与することができる。イオン液体の付着量が0.5重量%以下であると、人工毛髪用繊維のべたつきが抑えられる。イオン液体の付着量は、具体的には例えば、0.01,0.02,0.03,0.04,0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.2,0.3,0.4,0.5重量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
人工毛髪用繊維として、塩化ビニル系繊維、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維が挙げられる。人工毛髪用繊維は、溶融紡糸工程、延伸工程、アニール工程を経て、製造される。溶融紡糸工程では、樹脂組成物を溶融紡糸することによって未延伸糸を製造する。具体的には、一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダー等を用い、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂又はポリアミド系樹脂と、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、難燃剤、紫外線吸収剤等の各種配合剤を溶融混錬し、通常の溶融紡糸法で溶融紡糸する。このとき、繊度をコントロールしながら、引き取り速度を調整することで、未延伸糸が得られる。
【0024】
延伸工程では、得られた未延伸糸を延伸倍率1.5~5.0倍で延伸して延伸糸を製造する。延伸倍率は、2.0~4.0倍が好ましい。延伸倍率は、適度に大きい方が繊維の強度発現が適度に起こる傾向にあり、適度に小さい方が延伸処理時に糸切れを発生し難くなる傾向にあるためである。
【0025】
延伸処理の際の温度は、80~120℃が好ましい。延伸処理温度があまりに低いと繊維の強度が低くなると共に糸切れを発生し易くなる傾向にあり、あまりに高いと得られる繊維の触感がプラスチック的な滑り触感になる傾向にあるためである。
【0026】
アニール工程では、延伸糸に対して好ましくは100~200℃の熱処理温度で熱処理を行う。この熱処理によって、延伸糸の熱収縮率を低下させることができる。熱処理は、延伸処理の後に連続して行っても、一旦巻き取った後に時間を開けて行うこともできる。
【0027】
人工毛髪用繊維の単繊度は、20~100デシテックスが好ましく、より好ましくは35~80デシテックスである。この単繊度にするためには、溶融紡糸工程直後の繊維(未延伸糸)の繊度を300デシテックス以下にしておくことが好ましい。未延伸糸の繊度が小さければ、細繊度の人工毛髪用繊維を得るために延伸倍率を小さくすることができ、延伸処理後の人工毛髪用繊維に光沢が発生し難くなる。
【0028】
人工毛髪用繊維は、(1)塩化ビニル系樹脂から形成される人工毛髪用繊維、又は、(2)ポリアミド系樹脂から形成される人工毛髪用繊維が好ましい。塩化ビニル系樹脂は、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等によって得られたものであり、繊維の初期着色性等を勘案して、懸濁重合によって製造したものが好ましい。塩化ビニル系樹脂とは、塩化ビニルの単独重合物であるホモポリマー樹脂又は各種のコポリマー樹脂、及びそれらの混合物である。コポリマー樹脂としては、塩化ビニル-酢酸ビニルコポリマー樹脂、塩化ビニル-プロピオン酸ビニルコポリマー樹脂等の塩化ビニルとビニルエステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル-アクリル酸ブチルコポリマー樹脂、塩化ビニル-アクリル酸2エチルヘキシルコポリマー樹脂等の塩化ビニルとアクリル酸エステル類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル-エチレンコポリマー樹脂、塩化ビニル-プロピレンコポリマー樹脂等の塩化ビニルとオレフィン類とのコポリマー樹脂、塩化ビニル-アクリロニトリルコポリマー樹脂等がある。コポリマー樹脂において、コモノマーの含有量は、成型加工性、糸特性等の要求品質に応じて決めることができる。塩化ビニル系樹脂は、好ましくは、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂と塩素化塩化ビニル樹脂の混合物、塩化ビニル―アクリロニトリルコポリマーのうちの1種、ないし2種以上の混合物である。
【0029】
ポリアミド系樹脂は、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6・10、ナイロン6・12、またはこれらの共重合体がある。好ましくは、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6とナイロン66の共重合体である。
【実施例
【0030】
以下、実施例、比較例を挙げて本発明を詳細に説明する。
【0031】
1.繊維処理剤の処方
各実施例、比較例の繊維処理剤の処方(成分とその配合量(重量部))を表1に示す。繊維処理剤に用いた材料は以下の通りである。なお、表1に示すシリコーンオイルの配合量は、シリコーンエマルジョン中のシリコーンオイルの含有量である。また、比較例5のカチオン活性剤は、市販品では水溶液になっていて、表1に示すカチオン活性剤の配合量は、水溶液中のカチオン活性剤の含有量である。
シリコーンエマルジョン:AS-50(吉村油化学株式会社)
イオン液体:アミノイオンAS300(日本乳化剤株式会社)
カチオン活性剤:コータミン60W(花王株式会社)
【0032】
【表1】
【0033】
2.人工毛髪用繊維
人工毛髪用繊維として、実施例1~5、比較例1~5では塩化ビニル系繊維を用い、実施例6では、ポリエステル系繊維を用い、実施例7では、ポリアミド系繊維を用いた。各繊維は以下のものを用いた。なお、各繊維の平均繊度は、55~70dtexであった。
塩化ビニル系繊維:自社調製品(ポリ塩化ビニル(大洋塩ビ株式会社:TH-700)を使用)
ポリエステル系繊維:自社調製品(ポリエチレンテレフタレート(三井化学株式会社:J125S)を使用)
ポリアミド系繊維:自社調製品(ポリアミド66(東レ株式会社製:アミランCM3001-N)を使用)
【0034】
3.繊維処理剤の塗布
各実施例、比較例について、繊維の製造工程において延伸が終了した後、ロール転写法によって、人工毛髪用繊維に繊維処理剤を塗布した。人工毛髪用繊維に付着した繊維処理剤の有効成分(シリコーンオイル及びイオン液体)の人工毛髪用繊維の重量に対する付着量(重量%)を表1に示す。
【0035】
4.人工毛髪用繊維の評価
(1)帯電防止性
各実施例・比較例について、人工毛髪用繊維を長さ250mm、重量20gに束ね、23℃×50%RHの環境下で24時間放置した後、デジタル超高抵抗/微少電流計(株式会社ADVANTEST:R8340)を用いて印加電圧10Vの条件で表面抵抗値を測定した。そして、N=5の測定値の平均を求め、以下の基準で帯電防止性を評価した。
○:表面抵抗値の平均が1.0×1010Ω未満
△:表面抵抗値の平均が1.0×1010Ω以上1.0×1012Ω未満
×:表面抵抗値の平均が1.0×1012Ω以上
【0036】
(2)滑り性
滑り性は、実施例・比較例の人工毛髪用繊維を長さ250mm、重量20gに束ね、人工毛髪用繊維処理技術者(実務経験5年以上)10人の手触りによる判定で、次の評価基準で評価した。
◎:技術者全員が、滑り性が良いと評価したもの
○:滑り性が良いと評価した技術者が9割以上10割未満
△:滑り性が良いと評価した技術者が7割以上9割未満
×:滑り性が良いと評価した技術者が7割未満
【0037】
(3)べたつき
べたつきは、実施例・比較例の人工毛髪用繊維を長さ250mm、重量20gに束ね、人工毛髪用繊維処理技術者(実務経験5年以上)10人の手触りにより判定で、次の評価基準で評価した。
◎:技術者全員が、べたつきがなく触感が良いと評価したもの
○:べたつきがなく触感が良いと評価した技術者が9割以上10割未満
△:べたつきがなく触感が良いと評価した技術者が7割以上9割未満
×:べたつきがなく触感が良いと評価した技術者が7割未満
【0038】
実施例1~10と比較例1の結果から、繊維処理剤において水100重量部に対するシリコーンオイルの含有量とイオン液体の含有量の合計が2重量部以上であると、人工毛髪用繊維に十分な滑り性が付与されることが分かる。実施例1~10と比較例2の結果から、繊維処理剤において水100質量部に対するシリコーンオイルの含有量とイオン液体の含有量の合計が10重量部未満であると、人工毛髪用繊維のべたつきを十分に抑制できることが分かる。
【0039】
また、実施例1~10と比較例1の結果から、人工毛髪用繊維におけるシリコーンオイルの付着量が0.02重量%以上であると、人工毛髪用繊維の滑り性が良好になることが分かる。実施例1~10と比較例2の結果から、人工毛髪用繊維におけるシリコーンオイルの付着量が0.5重量%以下であると、人工毛髪用繊維のべたつきが抑制されることが分かる。
【0040】
実施例1~10と比較例3の結果から、繊維処理剤において水100重量部に対するイオン液体の含有量が0.2重量部以上であると、人工毛髪用繊維に十分な帯電防止性を付与できることが分かる。実施例1~10と比較例4の結果から、水100重量部に対するイオン液体の含有量が5重量部以下であると、人工毛髪用繊維のべたつきを十分に抑制できることが分かる。
【0041】
また、実施例1~10と比較例3の結果から、人工毛髪用繊維におけるイオン液体の付着量が0.01重量%以上であると、人工毛髪用繊維の帯電防止性が良好になることが分かる。実施例1~10と比較例4の結果から、人工毛髪用繊維におけるイオン液体の付着量が0.5重量%以下であると、人工毛髪用繊維のべたつきが十分に抑制されることが分かる。
【0042】
実施例1~10と比較例5の結果から、イオン液体の代わりにカチオン活性剤を用いて、人工毛髪用繊維に十分な帯電防止性を付与しようとすると、べたつきが発生することが分かる。