(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】オストミーポーチ
(51)【国際特許分類】
A61F 5/445 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
A61F5/445
(21)【出願番号】P 2021557537
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 GB2020050790
(87)【国際公開番号】W WO2020201718
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-02-13
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】510174727
【氏名又は名称】ソルツ ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】パウナー、 イアン
(72)【発明者】
【氏名】トレザウェイ、 リー
(72)【発明者】
【氏名】バロン、 アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ヒル、 ドナルド
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー、 シリン
【審査官】瀧本 絢奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-192162(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2510563(GB,A)
【文献】SHIRIN ALEXANDER; ET AL,BRANCHED HYDROCARBON LOW SURFACE ENERGY MATERIALS FOR SUPERHYDROPHOBIC NANOPARTICLE DERIVED SURFACES,ACS APPLIED MATERIALS & INTERFACES,2015年12月07日,VOL:8,PAGE(S):660-666,https://doi.org/10.1021/acsami.5b09784
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 5/445-5/449
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の対向する側壁を有するオストミーポーチであって、前記側壁のうちの一方は、使用中にストーマの一部を受け入れるためのストーマ受容開口部を画定し、前記側壁の一方または両方は、その内面が疎水性粒子で少なくとも部分的にコーティングされているポリマーフィルムで形成されており、前記疎水性粒子は、
金属酸化物コアと、
2~40個の炭素原子を有する炭化水素鎖とを含み、
前記炭化水素鎖は、前記金属酸化物コアに化学的に結合している、オストミーポーチ。
【請求項2】
前記ストーマ受容開口部を画定する前記側壁は、前記ポリマーフィルムで形成され、前記ストーマ受容開口部を少なくとも部分的に取り囲むかまたは取り囲む第1の領域を含み、前記第1の領域は、前記疎水性粒子でコーティングされている、請求項1に記載のオストミーポーチ。
【請求項3】
前記ストーマ受容開口部を画定する前記側壁に対向する前記側壁は、前記ポリマーフィルムで形成され、前記ストーマ受容開口部に実質的に面する第2の領域を含み、前記第2の領域は、前記疎水性粒子でコーティングされている、請求項1または請求項2に記載のオストミーポーチ。
【請求項4】
前記第2の領域の直径は、前記ストーマ受容開口部の直径よりも大きい、請求項3に記載のオストミーポーチ。
【請求項5】
前記第2の領域の直径は、前記第1の領域の直径にほぼ等しい、請求項2に従属する場合の請求項3または4に記載のオストミーポーチ。
【請求項6】
その下端に排液可能な開口部をさらに含み、両方の側壁は、前記ポリマーフィルムで形成され、前記排液可能な開口部を取り囲む第3の領域を含み、前記第3の領域は、前記疎水性粒子でコーティングされている、請求項1~5のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項7】
前記排液可能な開口部は弁を含み、任意選択で前記弁の内面は、前記疎水性粒子でコーティングされていてよい、請求項6に記載のオストミーポーチ。
【請求項8】
両方の側壁は前記ポリマーフィルムで形成され、その内面全体が前記疎水性粒子でコーティングされている、請求項1~7のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項9】
前記疎水性粒子の平均直径は、約200nm以下である、請求項1~8のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項10】
前記疎水性粒子の平均直径は、約50nm以下である、請求項9に記載のオストミーポーチ。
【請求項11】
前記疎水性粒子の平均直径は、約8nm~約20nmである、請求項10に記載のオストミーポーチ。
【請求項12】
前記金属酸化物コアは、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、および酸化ケイ素のうちの1つまたはそれらの組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項13】
前記炭化水素鎖は脂肪族である、請求項1~12のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項14】
前記炭化水素鎖は、直鎖または分岐である、請求項1~13のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項15】
前記炭化水素鎖は、6~32個の炭素を有する、請求項1~14のいずれか項に記載のオストミーポーチ。
【請求項16】
前記炭化水素鎖は、6~24個の炭素を有する、請求項15に記載のオストミーポーチ。
【請求項17】
前記炭化水素鎖は、官能基を介して前記金属酸化物コアに共有結合している、請求項1~16のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項18】
前記官能基は、ヒドロキシド、カルボキシラート、ホスホナート、ホスフィナート、チオラート、およびチオカルボキシラートのいずれか1つまたは組み合わせを含む、請求項17に記載のオストミーポーチ。
【請求項19】
前記疎水性粒子はフッ素を含まない、請求項1~18のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項20】
前記ポリマーフィルムは熱可塑性フィルムを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項21】
前記熱可塑性フィルムは、ポリオレフィン、ビニルポリマー、またはポリアセタールフィルムを含む、請求項20に記載のオストミーポーチ。
【請求項22】
前記熱可塑性フィルムは、共押出しされた二層または多層フィルムを含む、請求項20または請求項21に記載のオストミーポーチ。
【請求項23】
前記疎水性粒子は、前記ポリマーフィルムに少なくとも部分的に埋め込まれている、請求項1~22のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項24】
前記疎水性粒子および前記ポリマーフィルムは、接着剤によって互いに固定されている、請求項1~22のいずれか一項に記載のオストミーポーチ。
【請求項25】
前記疎水性粒子および前記接着剤の質量比は、約1.0:1.0~約2.0:1.0である、請求項24に記載のオストミーポーチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、オストミーポーチに関するものであり、特に、その内面の少なくとも一部が疎水性粒子でコーティングされて、その結果、内面が約140°以上の水接触角(water contact angle)(WCA)を有するオストミーポーチに関するものである。本明細書に開示される疎水性粒子は、非毒性であり、ポリマーフィルムによく付着する。したがって、本明細書に開示される疎水性粒子は、オストミーでの使用に特によく適している。
【背景技術】
【0002】
オストミーポーチは、ストーマから排泄物を収集する手段を提供する医療機器である。オストミーポーチは、最も一般的には人工肛門、回腸瘻、および人工膀胱に連結される。オストミーポーチは通常、収集バッグと(フランジまたはウェハとも呼ばれる)ベースプレートを含む。収集バッグとベースプレートが単一のアイテムとして供給されるワンピースオストミーポーチがあり、収集バッグとベースプレートが互いに取り付けられるための別々のアイテムとして供給されるツーピースオストミーポーチがある。
【0003】
オストミーポーチはさらに、開放端型(open-end)ポーチと閉鎖端型(closed-end)ポーチの2つの基本的なタイプに分けることができる。開放端型ポーチは、通常、排泄物を、例えばトイレに、除去するための排液可能(drainable)な開口部を備えている。排液可能な開口部は、弁を含むことができるか、または排液可能な開口部は、クリップまたは面ファスナー(hook and loop fastener)を使用して開閉することができる。閉鎖端型ポーチは通常、満杯になると患者から取り外される。次に、閉鎖端型ポーチを廃棄するか、または空にして、再利用できるようにクリーニングすることができる。
【0004】
オストミーポーチ、特に閉鎖端型ポーチは、パンケーキング(pancaking)現象に悩まされる可能性がある。これは、ポーチ内で真空が発生し、側壁の内面が互いにくっつくことである。その結果、排泄物がバッグの底まで落ちるのが阻止される。トラップされた排泄物は、ベースプレート上の接着性物質を汚染する可能性があり、その結果、オストミーポーチが患者から外れる可能性がある。
【0005】
開放端型ポーチは、排液可能な開口部が排泄物で閉じ込められると問題になる可能性がある。このような状況では、開放端型ポーチは排液が困難な可能性があり、完全にクリーニングするために取り外す必要がある場合がある。しかしながら、特定の状況では、排液可能な開口部を十分にクリーニングできない場合があり、これは、開放端型ポーチを交換する必要があることを意味する。
【0006】
疎水性材料を使用して、濡れにくく、くっつかず(non-stick)、セルフクリーニング可能で、および/または汚染に耐性のある表面を作成することが知られている。そのような疎水性材料は、典型的には、ワックス、フッ素化ポリマー、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、オルガノシランなどを含む。
【0007】
しかしながら、既知の疎水性材料は、ポリマーフィルムに十分に接着しないことが多く、および/または毒性がある、例えばフッ素含有の可能性があるため、オストミーでの使用に常に適しているとは限らない。
【0008】
上記の問題を克服しようとする改良されたオストミーポーチが商業的に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の実施形態は、クリーニングが簡単で迅速であり、パンケーキングの問題および排液の問題に対処し、同時に耐久性があり非毒性であるオストミーポーチを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、一対の対向する側壁を有するオストミーポーチであって、前記側壁のうちの一方は、使用中にストーマの一部を受け入れるためのストーマ受容開口部を画定し、前記側壁の一方または両方は、その内面が疎水性粒子で少なくとも部分的にコーティングされているポリマーフィルムで形成されており、前記疎水性粒子は、
金属酸化物コアと、
2~40個の炭素原子を有する炭化水素鎖とを含み、
前記炭化水素鎖は、前記金属酸化物コアに化学的に結合している、オストミーポーチが提供される。
【0011】
ストーマ受容開口部を画定する側壁は、ポリマーフィルムで形成することができ、ストーマ受容開口部を少なくとも部分的に取り囲むかまたは取り囲む第1の領域を含むことができ、第1の領域は、疎水性粒子でコーティングされている。
【0012】
第1の領域は、ストーマ受容開口部の中心から約20mm~約80mm(例えば、約20mm~約60mm、例えば、40mm)に位置する周縁部を有することができる。
【0013】
ストーマ受容開口部を画定する側壁に対向する側壁は、ポリマーフィルムで形成することができ、ストーマ受容開口部に実質的に面する第2の領域を含むことができ、第2の領域は、疎水性粒子でコーティングされている。
【0014】
第2の領域の直径は、ストーマ受容開口部の直径よりも大きくすることができる。
【0015】
第2の領域の直径は、第1の領域の直径よりも大きく、小さく、またはほぼ等しくすることができる。
【0016】
オストミーポーチは、その下端に排液可能な開口部をさらに含むことができ、両方の側壁は、ポリマーフィルムで形成され、排液可能な開口部を取り囲む第3の領域を含み、第3の領域は、疎水性粒子でコーティングされている。
【0017】
排液可能な開口部は、そこからの排泄物の流れを制御するための弁を含むことができる。
【0018】
弁の内面は、疎水性粒子でコーティングすることができる。
【0019】
両方の側壁は、ポリマーフィルムで形成することができ、その内面全体を疎水性粒子でコーティングすることができる。
【0020】
疎水性粒子の平均直径は、約200nm以下とすることができる。
【0021】
疎水性粒子の平均直径は、約50nm以下、例えば約20nm以下とすることができる。
【0022】
疎水性粒子の平均直径は、約8nm~約20nm、例えば約8nm~約15nmとすることができる。
【0023】
金属酸化物コアは、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、および酸化ケイ素のうちの1つまたは組み合わせを含むことができる。
【0024】
炭化水素鎖は、脂肪族とすることができる。
【0025】
炭化水素鎖は、直鎖または分岐とすることができる。
【0026】
炭化水素鎖は、2~32個の炭素を有することができる。
【0027】
炭化水素鎖は、6~32個の炭素、例えば6~24個の炭素を有することができる。
【0028】
炭化水素鎖は、官能基、例えば陰イオン性官能基を介して、金属酸化物コアに共有結合することができる。
【0029】
官能基は、ヒドロキシド、カルボキシラート、ホスホナート、ホスフィナート、チオラート、およびチオカルボキシラートのうちのいずれか1つまたは組み合わせを含むことができる。
【0030】
疎水性粒子は、フッ素を含まないものであってよい。
【0031】
ポリマーフィルムは、熱可塑性フィルムを含むことができる。例えば、ポリマーフィルムは、ポリオレフィン、ビニルポリマー、ポリエステル、およびポリアセタールフィルムのうちの任意の1つまたは複数を含むことができる。
【0032】
ポリマーフィルムは、共押出しされた二層または多層フィルムを含むことができる。例えば、共押出しされた二層または多層フィルムは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、アセタール、アクリル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVDC)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、およびポリカーボネート(PC)のうちの任意の1つまたは組み合わせの層を含むことができる。
【0033】
疎水性粒子は、ポリマーフィルム上に堆積(例えば、スプレー)することができる。例えば、疎水性粒子を揮発性溶媒などのキャリアと混合することができ、得られた混合物をポリマーフィルム上にスプレーすることができる。疎水性粒子とキャリアの混合物は、溶液または懸濁液を形成することができる。混合物は、約0.5重量%~約20重量%、例えば、約0.5重量%~約10重量%、例えば、約0.5重量%~約5重量%、例えば、0.5重量%または1重量%または2重量%または3重量%または4重量%または5重量%の疎水性粒子濃度を有することができる。
【0034】
疎水性粒子は、ポリマーフィルムに少なくとも部分的に埋め込まれていてもよい。
【0035】
ポリマーフィルムを加熱して、疎水性粒子が少なくとも部分的に内部に埋め込まれ、疎水性の三次元表面を形成することを可能にすることができる。疎水性粒子の埋め込みは、加熱されたポリマーフィルムをローラー間で転がすことなどの物理的手段によって強化することができる。処理中、揮発性溶媒(使用される場合)は自然に蒸発し、ポリマーフィルムが冷却されると、疎水性粒子はポリマーフィルムに結合したままになるため、洗浄によって除去されない。
【0036】
ポリマーフィルムが加熱される温度は、使用されるポリマーフィルムのタイプに応じて変わる。一般的に、ポリマーフィルムは、それが塑性変形し始める温度まで加熱される。当業者は、この温度を知っているか、または基本的な実験を通じてこの温度を決定することができることを理解すべきである。以下の実施例で使用されているEVA/EVA/PVDC/EVA/EVA5層共押出熱可塑性フィルムの場合、塑性変形温度は約80℃~約90℃の間であった。
【0037】
疎水性粒子とポリマーフィルムは、エポキシ樹脂などの接着剤によって互いに固定することができる。例えば、接着剤をポリマーフィルム上に堆積させ、続いて疎水性粒子を堆積させることができる。あるいはまた、疎水性粒子をポリマーフィルム上に堆積させ、続いて接着剤を堆積させることができる。疎水性粒子は、ポリマーフィルム内に少なくとも部分的に埋め込まれることができ、それ自体がポリマーフィルムと疎水性粒子との間の結合を提供してもよい。接着剤が硬化すると、疎水性の三次元表面を有するポリマーフィルムが得られる。
【0038】
疎水性粒子と接着剤を混合することができ、得られた混合物をポリマーフィルム上に堆積させることができる。
【0039】
疎水性粒子と接着剤が混合される場合、疎水性粒子と接着剤の質量比は、約1.0:1.0~約2.0:1.0とすることができる。この範囲内の疎水性粒子と接着剤の質量比は、特に金属酸化物コアが酸化アルミニウムを含む場合に、特に良好な疎水性表面を有するポリマーフィルムを生成することが見出された。
【0040】
疎水性粒子または疎水性粒子/接着剤混合物は、前述のように、キャリア、例えば、揮発性溶媒を使用して、ポリマーフィルム上にスプレーすることができる。
【0041】
疎水性粒子をポリマーフィルムに付着させるすべての方法において、ポリマーフィルムが溶媒に浸漬または曝露された後でも、WCAは悪影響を受けないことが見出された。このような処理により、疎水性粒子の一部がポリマーフィルムから除去される可能性があるが、除去によるWCAへの影響は無視できる。
【0042】
ポリマーフィルムの疎水性は、その表面全体の異なる領域で調整することができる。これは、ポリマーフィルムの第1の領域が、関連する第1のWCA測定値を有することができ、ポリマーフィルムの第2の(またはさらなる)領域が、第1のWCA測定とは異なる関連する第2のWCA測定値を有することができることを意味する。
【0043】
ポリマーフィルムの疎水性の調整は、いくつかの方法で達成することができる。例えば、疎水性粒子のより多くの層を、第2の領域よりも第1の領域に堆積させことができる。したがって、第1の領域は、通常、第2の領域よりも高いWCA測定値を有するであろう。追加的または代替的に、疎水性粒子のより濃縮された混合物を、第2の領域よりも第1の領域に堆積させることができる。したがって、第1の領域は、通常、第2の(またはさらなる)領域よりも高いWCA測定値を有するであろう。混合物中の疎水性粒子の濃度は、溶媒による希釈および/または異なる種、例えば、親水性粒子および/または官能化されていない金属酸化物によって調整することができる。追加的または代替的に、異なるタイプの疎水性粒子をそれぞれの第1および第2の領域に堆積させることができる。したがって、第1および第2の領域は、通常、異なるWCA測定値を有するであろう。
【0044】
本発明は、セルフクリーニングポリマーフィルムから形成されたオストミーポーチを提供する。オストミーポーチの内面の少なくとも一部は、疎水性粒子をポリマーフィルムに固定することによって形成された疎水性表面を有する。
【0045】
疎水性粒子をポリマーフィルムに付着させる方法は、約140°以上のWCAを達成することができる三次元表面構造を有するポリマーフィルムをもたらす。したがって、本発明のオストミーポーチは、改善されたセルフクリーニング特性を提供し、汚染に耐性があり、および/またはより簡単にクリーニングすることができる。本発明のオストミーポーチはまた、疎水性粒子とポリマーフィルムとの間の改善された接着のために、既知のオストミーポーチと比較した場合、これらの特性に関してより耐久性があり、したがってより長寿命であると考えられる。
【0046】
図面の簡単な説明
ここで、添付の図面を参照して実施形態を例としてのみ説明する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【
図2】疎水性粒子が少なくとも部分的に内部に埋め込まれているポリマーフィルムを示す。
【
図3】疎水性粒子を含むポリマーフィルムであって、疎水性粒子が接着剤によってそれに結合しているポリマーフィルムを示す。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係るオストミーポーチの断面図である。
【
図5】本発明の第2の実施形態に係るオストミーポーチの断面図である。
【
図6】本発明の第3の実施形態に係るオストミーポーチの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1を参照すると、概して1で表される疎水性粒子が示されている。疎水性粒子1は、金属酸化物コア10および6個の炭化水素鎖12を含む。他の実施形態では、疎水性粒子1は、6個より多いまたは少ない炭化水素鎖12を有することができる。各々の炭化水素鎖12は、2~40個の炭素原子を有する。炭化水素鎖12は、分岐であるが、直鎖であってもよい。
【0049】
炭化水素鎖12は、金属酸化物コア10に化学的に結合している。いくつかの実施形態では、炭化水素鎖12は、官能基14を介して金属酸化物コア10に共有結合することができる。適切な金属酸化物コア10には、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化亜鉛、および酸化ケイ素が含まれる。
【0050】
本明細書で使用される場合の「酸化物」という用語は、酸化物-水酸化物、水酸化物、および複数の金属酸化状態を有する酸化物も含むことを意図している。例えば、酸化鉄は、Fe3O4またはFe2O3またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、疎水性粒子1は、カルボキシラート官能基14によってそれに共有結合している炭化水素鎖12を有する金属酸化物コア10を含む。他の実施形態では、安定した共有相互作用が金属酸化物コア10と炭化水素鎖12との間で形成される限り、代替官能基を使用することができる。代替官能基14は、ヒドロキシド、ホスホナート、ホスフィナート、チオラート、およびチオカルボキシラートのいずれか1つまたは組み合わせを含むことができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、炭化水素鎖12は脂肪族とすることができる。特に、炭化水素鎖12は、化学式CxHyによって定義されるような任意の適切なアルキル有機基から選択することができ、ここで、xおよびyは整数であり、xは2~40である。いくつかの実施形態では、炭化水素鎖12は6~32の炭素、例えば、6~24の炭素を有することができる。
【0053】
いくつかの実施形態では、炭化水素鎖12は直鎖とすることができる。例えば、疎水性粒子1は、オクタン酸(CH3(CH2)6CO2H)と金属酸化物コア10との反応によって生成することができる。
【0054】
いくつかの実施形態では、炭化水素鎖12は分岐とすることができる。例えば、疎水性粒子1は、イソステアリン酸(CH3(CH2)16COOH)および2-ヘキシルデカン酸(CH3(CH2)7CH[(CH2)5CH3]CO2H)のいずれか1つと金属酸化物コア10との反応によって生成することができる。
【0055】
本明細書に記載される炭化水素鎖12の作成は、得られる疎水性粒子1がフッ素を含まないという利点を提供することができる。これは、本発明の疎水性粒子1が、従来技術の材料と比較した場合に毒性が少ないという点で環境上の利点を有することを意味する。
【0056】
ここで
図2を参照すると、疎水性粒子1が少なくとも部分的に内部に埋め込まれているポリマーフィルム2が示されている。
【0057】
いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム2は、その加熱された表面上に疎水性粒子1を堆積する、例えば、スプレーすることによって調製される。疎水性粒子1は、溶媒に溶解または懸濁させることができる。ポリマーフィルム2の露出面は、軟化するまで加熱され、続いて、軟化された表面上に溶液または懸濁液を堆積することができる。溶媒を蒸発させ、表面を冷却した後、疎水性粒子1は、ポリマーフィルム2に少なくとも部分的に埋め込まれるようになる。その結果、安定した、ざらざらの(textured)疎水性表面を有するポリマーフィルム2が得られる。いくつかの実施形態では、ポリマーフィルム2は、照射によって(例えば、赤外線ランプによって)、または伝導によって(例えば、ポリマーフィルム2をホットプレート上に置くことによって、または加熱された空気にさらすことによって)加熱することができる。その完全性を損なうことなくポリマーフィルム2を軟化させるのに十分な加熱を提供する任意の方法を使用できることを理解すべきである。
【0058】
溶媒の選択は、溶媒がポリマーフィルム2の表面から蒸発する必要性によってのみ限定される。適切な溶媒には、イソプロパノール、トルエン、およびエタノールが含まれるが、これらに限定されない。
【0059】
ここで
図3を参照すると、疎水性粒子1が接着剤30によってそれに固定されているポリマーフィルム20が示されている。
【0060】
いくつかの実施形態では、接着剤30はエポキシ樹脂とすることができる。接着剤30をポリマーフィルム20に塗布し、続いて疎水性粒子1を含む溶液または懸濁液を堆積させるか、またはその逆を行うことができる。接着剤30を硬化させ、その時点で、疎水性粒子1は、接着剤30に少なくとも部分的に埋め込まれることにより、ポリマーフィルム20に結合するようになる。
【0061】
いくつかの実施形態では、疎水性粒子1および接着剤30を混合することができ、得られた混合物をポリマーフィルム20上に堆積させる、例えば、スプレーすることができる。
【0062】
スプレーは、混合物を溶媒に溶解または懸濁し、業界でよく知られているような噴射剤(propellant)または圧縮機(compressor)を利用することによって行うことができる。
【実施例】
【0063】
材料
ポリマーフィルムは、熱可塑性フィルム、例えば、ポリエチレン共重合体を含むことができる。この後のすべての実験に使用されたポリマーフィルムは、75ミクロンの厚さを有するEVA/EVA/PVDC/EVA/EVA5層共押出し体(co-extrusion)であった。
【0064】
平均直径が13nmの酸化アルミニウム(Al2O3)粒子は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0065】
平均直径が15~20nmの酸化鉄(Fe3O4)粒子は、Sigma-Aldrichから購入した。
【0066】
イソステアリン酸は、日産化学工業から購入し、さらに精製することなく使用した。
【0067】
トルエンとイソプロパノールは、VWR Chemicalsから供給された。
【0068】
SP106多目的エポキシ樹脂システム1kg低速硬化剤(SP106 Multi-Purpose Epoxy Resin System 1 kg Slow Hardener)は、MB Fibreglassから購入した。
【0069】
スプレーコーティングには、Spraycraft Universal Airbrush Propellantを使用し、これは、Axminster Tools and Machineryから購入した。
【0070】
水接触角(WCA)測定
WCA測定値は、ポリマーフィルムの濡れ性を検討するために使用された。WCA測定値は、4μLのH2O液滴をポリマーフィルム上に堆積させることによって得られた。ここで報告されているWCAの値は、表面上の異なる位置で記録された3つの測定値の平均である。標準偏差は、これらの値に関連する不確実性を表すために使用される。
【0071】
比較例1
コーティングされていないポリマーフィルム(すなわち、クリーンなEVA/EVA/PVDC/EVA/EVAの5層共押出しフィルム)のWCAは88.3°±1.7°であった。
【0072】
比較例2
ポリマーフィルムは、官能化されていないAl2O3粒子でコーティングされた。官能化されていないAl2O3粒子のポリマーフィルム上への堆積は、周囲温度で2重量%のイソプロパノール懸濁液からスプレーコーティングすることによって達成された。官能化されていないAl2O3粒子によるポリマーフィルムの最大被覆率を達成しようとするため、3つのスプレーを使用した。
【0073】
周囲温度で官能化されていないAl2O3粒子でポリマーフィルムをコーティングすると、その表面が超親水性になった。したがって、得られたポリマーフィルムのWCAを正確に測定することはできなかった。
【0074】
比較例3
ポリマーフィルムは、官能化されていないFe3O4粒子でコーティングされた。官能化されていないFe3O4粒子のポリマーフィルム上への堆積は、周囲温度で2重量%のイソプロパノール懸濁液からスプレーコーティングすることによって達成された。官能化されていないFe3O4粒子によるポリマーフィルムの最大被覆率を達成しようとするため、3つのスプレーを使用した。
【0075】
得られたポリマーフィルムのWCAは、107.2°±3.4°であった。
【0076】
実施例1
官能化酸化アルミニウム(Al2O3)粒子は次のように合成された。酸化アルミニウム(Al2O3)粒子(d=13nm、10.0g、98.0mmol、1.0当量)をトルエン(250mL)中のイソステアリン酸(39.1g、137.3mmol、1.4当量)とともに24時間還流した。反応時間が経過したら、反応混合物を収集し、5000rpmで1時間遠心分離した。次に、固体を回収し、イソプロパノール中において5000rpmで1時間遠心分離した。これに続いて、固体をエタノール中において5000rpmで1時間さらに3回遠心分離し、次に80℃で6時間乾燥させた。
【0077】
ポリマーフィルムは、官能化Al2O3粒子でコーティングされた。官能化Al2O3粒子のポリマーフィルムへの堆積は、周囲温度で2重量%のイソプロパノール懸濁液からスプレーコーティングすることによって達成された。官能化Al2O3粒子によるポリマーフィルムの最大被覆率を達成しようとするため、3つのスプレーを使用して、した。
【0078】
得られたポリマーフィルムのWCAは、151.1°±1.0°であった。
【0079】
実施例2
官能化酸化鉄(Fe3O4)粒子は次のように合成された。酸化鉄(Fe3O4)粒子(d=15~20nm、5.0g、21.6mmol、1.0当量)をトルエン(100mL)中でイソステアリン酸(18.4g、64.7mmol、3.0当量)とともに機械式攪拌下で約24時間還流した。反応時間が経過したら、混合物を5000rpmで1時間遠心分離した。これに続いて、固体を回収し、80℃で6時間乾燥させた。
【0080】
ポリマーフィルムは、官能化Fe3O4粒子でコーティングされた。官能化Fe3O4粒子のポリマーフィルム上への堆積は、周囲温度で2重量%のイソプロパノール懸濁液からのスプレーコーティングによって達成された。官能化Fe3O4粒子によるポリマーフィルムの最大被覆率を達成しようとするため、3つのスプレーを使用した。
【0081】
得られたポリマーフィルムのWCAは、151.9°±2.1°であった。
【0082】
実施例3
ポリマーフィルムを加熱し、実施例1に記載の官能化Al2O3粒子でコーティングした。加熱の結果として軟化した後、官能化Al2O3粒子をポリマーフィルム上にスプレーコーティングした。ポリマーフィルムの加熱は、以下のように達成された。最初に、ポリマーフィルムはその縁部でガラスペトリ皿の表面に物理的に取り付けられた。これの目的は、加熱プロセス中に形状が変化する程度を制限するために、ポリマーフィルムを固定することであった。次に、ポリマーフィルムの物理的変形が観察されるまで、ペトリ皿に熱を加えた。ポリマーフィルムの物理的変形が観察されると、官能化Al2O3粒子のポリマーフィルムへの堆積がスプレーコーティングによって達成された。官能化Al2O3粒子は、2.0重量%の懸濁液からスプレーコーティングされた。官能化Al2O3粒子によるポリマーフィルムの最大被覆率を達成しようとするため、5つのスプレーを使用した。各スプレーに続いて、イソプロパノールの除去を加速するために、ポリマーフィルムを継続的に加熱した。表面に液体が観察されなかった場合は、ポリマーフィルムにさらにスプレーコーティングを行った。ポリマーフィルムの温度は、スプレーコーティングの前に測定されなかった。しかしながら、80~90℃の間に加熱すると、ポリマーフィルムが塑性変形し始めることが観察された。
【0083】
得られたポリマーフィルムのWCAは、142.0°±3.9°であった。
【0084】
この値は、官能化Al2O3粒子が周囲温度でポリマーフィルム上に堆積されたとき(実施例1)よりもわずかに低いが、水滴がコーティングされたポリマーフィルムから容易に転がり落ちることは注目に値する。したがって、これは、疎水性粒子の塗布中のポリマーフィルムの加熱が、得られるポリマーフィルムの所望の疎水性の性質を過度に損なうことはないことを示唆している。
【0085】
官能化Al2O3疎水性粒子がポリマーフィルムにどの程度良好に結合しているかを調べるために、ポリマーフィルムをイソプロパノール中で約10分間超音波処理し、WCAを再テストした。
【0086】
超音波処理後、ポリマーフィルムのWCAは、137.7°±7.9°であった。超音波処理後にWCAが大幅に変化しなかったことは明らかであり、これは、ポリマーフィルム内に官能化Al2O3疎水性粒子が強力に熱的に埋め込まれていることを示している。
【0087】
実施例4
ポリマーフィルムを加熱し、実施例3に記載の方法に従って、実施例2に記載の官能化Fe3O4粒子でコーティングした。
【0088】
得られたポリマーフィルムのWCAは、151.9°±2.7°であった。
【0089】
官能化Fe3O4疎水性粒子がポリマーフィルムにどの程度良好に結合しているかを調べるために、ポリマーフィルムをイソプロパノール中で約10分間超音波処理し、WCAを再テストした。
【0090】
超音波処理後、ポリマーフィルムのWCAは、90.3°±0.5°であった。これは、コーティングされていないポリマーフィルムのWCAに近いWCAを表している。これは、官能化Fe3O4疎水性粒子のほとんどが超音波処理によって除去されたことを示している。特定の理論に拘束されることなく、官能化Fe3O4疎水性粒子は、例えば官能化Al2O3疎水性粒子よりも強く埋め込まれていない比較的大きな凝集体を表面上に形成することが理解される。したがって、官能化Fe3O4疎水性粒子は、官能化Al2O3疎水性粒子よりも容易に除去される。しかしながら、それは、官能化Fe3O4疎水性粒子を組み込んだ実施形態が商業的に実行可能ではないということではない。超音波処理テストは、疎水性粒子とポリマーフィルムの間の結合の程度を調べるために、非常に破壊的な環境を再現しようとしているだけである。疎水性フィルムは、通常の使用でこのような非常に破壊的な環境を経験する可能性は低い。
【0091】
実施例5~実施例9
エポキシ樹脂による官能化Al2O3粒子とポリマーフィルムの結合を実施例5~実施例9で検討した。
【0092】
実施例5では、官能化Al2O3粒子:エポキシ樹脂の質量比が約8.6:1.0となるように、0.08gのエポキシ樹脂を、実施例1に記載の官能化Al2O3粒子0.66gに添加し、40mLのイソプロパノールに懸濁した。ポリマーフィルム上への混合物の堆積は、前述のように、周囲温度でスプレーコーティングすることによって実施された。この懸濁液をポリマーフィルム上にスプレーコーティングすると、144.3°±4.3°のWCAを有するポリマーフィルムが得られた。
【0093】
実施例6~実施例9では、官能化Al2O3粒子とエポキシ樹脂との比率が調整された。
【0094】
実施例5~実施例9のポリマーフィルムに対する官能化Al2O3粒子とエポキシ樹脂の比率ならびに対応するWCAを表1に要約する。表1はまた、イソプロパノール中で約10分間超音波処理した後のポリマーフィルムのWCAを示す。
【0095】
表1 官能化Al
2O
3粒子とエポキシ樹脂の比率の作用(function)としての超音波処理前後の水接触角(°)
【表1】
【0096】
実施例5~実施例9のすべてが高いWCAを達成したが、官能化Al2O3粒子とエポキシ樹脂の比率が約1.0:1.0(つまり、149.0±7.8°)~約2.0:1.0(すなわち、149.9±1.1°)、例えば、1.5:1.0(すなわち、150.7±1.2°)のときに、最高の疎水性を備えたポリマーフィルムが作成されたことは明らかである。
【0097】
さらに、実施例3と同様に、実施例5~実施例9のWCAは、超音波処理後に大きく変化しなかったことは明らかである。これは、エポキシ樹脂内に官能化Al2O3疎水性粒子が強く埋め込まれていることを示しているように思われる。
【0098】
実施例10~実施例14
エポキシ樹脂による官能化Fe3O4粒子とポリマーフィルムの結合を実施例10~実施例14で検討した。ポリマーフィルムを、実施例2に記載のエポキシ樹脂と官能化Fe3O4粒子の混合物でコーティングした。これらの実施例では、エポキシ樹脂は、官能化Fe3O4粒子懸濁液に添加された。ポリマーフィルム上への混合物の堆積は、前述のように、周囲温度でのスプレーコーティングすることによって実施された。
【0099】
実施例10~実施例14のポリマーフィルムに対する官能化Fe3O4粒子とエポキシ樹脂の比率および対応するWCAを表2に要約する。表2はまた、イソプロパノール中で約10分間超音波処理した後のポリマーフィルムのWCAを示す。
【0100】
表2 官能化Fe
3O
4粒子とエポキシ樹脂の比率の作用(function)としての超音波処理前後の水接触角(°)
【表2】
【0101】
実施例5~実施例9と比較すると、実施例10~実施例14のWCAはそれほど高くない。しかしながら、エポキシ樹脂に対する官能化Fe3O4粒子の比率を増やすと、WCAが増加するという明らかな傾向がある。したがって、官能化Fe3O4粒子とエポキシ樹脂の比が15.0:1.0を超える実施形態では、WCAが140°を超える可能性があると考えられる。
【0102】
ここで
図4を参照すると、一対の対向する側壁41、42を有する、概して40で示されるオストミーポーチが示されている。この図に示されるオストミーポーチ40は、閉鎖端タイプ(close-end type)である。側壁41、42は、強靭で、柔軟性があり、液体および気体不透過性である、任意の適切なヒートシール可能なプラスチックまたは(例えば、共押出ラミネートとしての)プラスチックの組み合わせから構成されるポリマーフィルムなどのポリマーフィルムで形成される。いくつかの実施形態では、側壁41、42は、それらのそれぞれの縁部43で結合された(例えば、溶接された)別個のフィルム片とすることができる。他の実施形態では、側壁41、42は、単一のフィルム片から形成することができる。
【0103】
側壁のうちの一方41は、使用中にストーマ(図示せず)の一部をオストミーポーチ40に受け入れるためのストーマ受容開口部100を画定する。いくつかの実施形態では、オストミーポーチ40は、オストミーポーチ40を患者のストーマ周囲の皮膚表面に接着して取り付けるためのウェハ44を含むことができる。ストーマ受容開口部100は、異なるサイズおよび形状を有するストーマに対応するために、約10mm~約50mmの直径を有することができる。
【0104】
オストミーポーチ40は、その内面(例えば、側壁41、42のうちの一方または両方の内面)を疎水性粒子1で少なくとも部分的にコーティングされている。前述のように、疎水性粒子1は、金属酸化物コア10と、2~40個の炭素原子を有する炭化水素鎖12とを含む。炭化水素鎖12は、金属酸化物コア10に化学的に結合している。本明細書に開示される疎水性粒子1のいずれも、オストミーポーチ40に利用することができる。
【0105】
いくつかの実施形態では、ストーマ受容開口部100を画定する側壁41は、ストーマ受容開口部100を取り囲む第1の領域46を含むことができる。第1の領域46は、ストーマ受容開口部100の中心から約40mmに位置する周縁部46aを有することができる。したがって、第1の領域46を横切る距離は、約80mmとすることができる。第1の領域46は、疎水性粒子45でコーティングすることができる。
【0106】
いくつかの実施形態では、第1の領域46は、ストーマ受容開口部100を部分的にのみ取り囲むことができる。
【0107】
いくつかの実施形態では、ストーマ受容開口部100を画定する側壁41に対向する側壁42は、ストーマ受容開口部100に実質的に面し、疎水性粒子1でコーティングされた第2の領域47を含むことができる。第2の領域47は、周縁部47aを有することができ、第2の領域47を横切る距離は、約80mmとすることができる。したがって、第2の領域47の直径は、ストーマ受容開口部100の直径よりも大きくてもよい。第2の領域47の直径はまた、第1の領域46の直径にほぼ等しくてもよい。いくつかの実施形態では、第2の領域47の直径は、第1の領域46の直径よりも大きくても小さくてもよい。
【0108】
いくつかの実施形態では、一方または両方の側壁41、42の内面全体は、それぞれの第1および第2の領域46、47を構成することができる。したがって、いくつかの実施形態では、一方または両方の側壁41、42の内面全体は、疎水性粒子1でコーティングすることができる。
【0109】
使用中、排泄物は、ストーマ(図示せず)からストーマ受容開口部100を介してオストミーポーチ40に入る。第1および/または第2の領域46、47に存在する疎水性粒子1、およびその高いWCAの結果として、かなりの量の排泄物が、ストーマ受容開口部100の、またはストーマ受容開口部100にすぐ隣接する側壁41、42に付着することはない。代わりに、疎水性粒子1のセルフクリーニング性のために、排泄物はオストミーポーチ40の底部に向かって落下する。したがって、特に閉鎖端タイプのオストミーポーチに関して、パンケーキング現象が実質的に低減されることが見出された。したがって、ウェハ44の接着剤は、ウェハ44が患者から外れるように汚染されることはない。
【0110】
ここで
図5を参照すると、概して50で示されるオストミーポーチが示されている。この図に示されているオストミーポーチ50は、開放端タイプ(open-end type)である。
図4のオストミーポーチ40と共通のオストミーポーチ50の構成は、40代ではなく50代で、対応する符号で示されている。例えば、オストミー装置50の側壁は、41、42ではなく、符号51、52で示されている。
【0111】
開放端タイプのポーチの実施形態は、その排液のために、オストミーポーチ50の下端部に、概して101で示される排液可能な開口部を含むことができる。いくつかの実施形態では、側壁51、52は、排液可能な開口部101を取り囲む第3の領域58であって、疎水性粒子1でコーティングされた第3の領域58を含むことができる。
【0112】
いくつかの実施形態では、排液可能な開口部101は、保持クリップまたは面ファスナーなどの保持手段(図示せず)を使用して開閉することができる。そのような実施形態では、排液可能な開口部101は、典型的には、側壁51、52を互いの周りに折り重ねることによって閉じられ、動作を逆転させることによって開かれる。他の実施形態では、排液可能な開口部101には、弁(図示せず)を取り付けることができる。弁の内面は、疎水性粒子1でコーティングすることができる。
【0113】
疎水性粒子1の高いWCAのために、排液可能な開口部101はそれ自体を排泄物からクリーニングすることが見出された。したがって、排液可能な開口部101は、詰まりにくく、オストミーポーチ50の寿命を延ばし、および/またはその衛生状態を改善することができる。
【0114】
開放端タイプのオストミーポーチ50のいくつかの実施形態では、疎水性粒子1でコーティングされた第1および/または第2の領域56、57のうちの一方または両方が存在しなくてもよい。したがって、疎水性粒子1は、第3の領域58にのみ存在してもよい。
【0115】
ここで
図6を参照すると、概して60で示されるオストミーポーチが示されている。この図に示されているオストミーポーチ60は、開放端タイプである。
図4のオストミーポーチ40と共通のオストミーポーチ60の構成は、40代ではなく60代で、対応する符号で示されている。例えば、オストミー装置60の側壁は、41、42ではなく、符号61、62で示されている。
【0116】
図6のオストミーポーチ60では、側壁61、62の内面全体は疎水性粒子1でコーティングされている。しかしながら、閉鎖端タイプのオストミーポーチもまた、本発明の範囲から逸脱することなく、疎水性粒子でコーティングされた内面全体で構成することができる。
【0117】
オストミーポーチの内面全体を疎水性粒子でコーティングすることの利点は、オストミーポーチが概してクリーニングしやすいことである。
【0118】
要約すると、本発明は、疎水性粒子1をポリマーフィルムに付着させることによって改善されたセルフクリーニング特性を有するポリマーフィルムから形成されたオストミーポーチ40、50、60に関するものである。これらのポリマーフィルムの表面エネルギーは非常に低く、ポリマーフィルムは非毒性であることが見出された。したがって、オストミーポーチ40、50、60は、それらのセルフクリーニング特性に関して改善されているだけでなく、それらが非毒性であるためにまた改善されている。疎水性粒子1のポリマーフィルムへの付着が、従来技術の解決策と比較した場合に改善されていることも明らかである。したがって、本発明のオストミーポーチ40、50、60は、特にそれらの疎水性の観点から、より長持ちすることが理解される。
【0119】
オストミーポーチ40、50、60の異なる領域でWCAを調整することが有用となる場合がある。いくつかの実施形態では、第1の領域46、56、第2の領域47、57または第3の領域58のいずれか1つのWCAは、他の領域とは異なる。これを達成できる1つの方法は、異なる領域に堆積する疎水性粒子の濃度を変えることである。例えば、4重量%のAl2O3疎水性粒子の溶液を、第1および第2の領域46、56、47、57に堆積させることができ、2重量%のAl2O3疎水性粒子の溶液を、第3の領域58に堆積させることができる。したがって、第1および第2の領域46、56、47、57は、高濃度のAl2O3疎水性粒子のために、第3の領域58よりも高いWCAを有するであろう。
【0120】
本明細書で使用される場合、「炭化水素鎖」という用語は、その通常の意味、すなわち、完全に水素および炭素からなる分子を有することを意図している。
【0121】
代表的な構成は、以下の条項に記載されており、これらは、独立しているか、または任意の組み合わせで、本明細書の本文および/または図面に開示されている1つまたは複数の構成と組み合わせることができる。
【0122】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「含む(comprises)」および「含む(comprising)」という用語およびそれらの変形は、指定された構成、ステップ、または整数が含まれることを意味する。これらの用語は、他の構成、ステップ、または構成要素の存在を除外するものと解釈されるべきではない。
【0123】
必要に応じて、特定の形態で、または開示された機能を実行するための手段、または開示された結果を達成するための方法またはプロセスの観点から表現された、前述の説明、または以下の特許請求の範囲、または添付の図面に開示された構成は、別々に、またはそのような構成の任意の組み合わせで、その多様な形態で本発明を実現するために利用することができる。
【0124】
本発明の特定の例示的な実施形態が説明されてきたが、添付の特許請求の範囲は、これらの実施形態のみに限定されることを意図するものではない。特許請求の範囲は、文字通り、目的にかなって、および/または均等物を包含するように解釈されるべきである。