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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】抗GARPタンパク質及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240523BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20240523BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
C12N5/07
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022019186
(22)【出願日】2022-02-10
(62)【分割の表示】P 2019229640の分割
【原出願日】2014-08-01
(65)【公開番号】P2022070946
(43)【公開日】2022-05-13
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】13178958.8
(32)【優先日】2013-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】61/861,008
(32)【優先日】2013-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】14167425.9
(32)【優先日】2014-05-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【微生物の受託番号】BCCM  LMBP 10246CB
(73)【特許権者】
【識別番号】516029469
【氏名又は名称】ユニベルシテ カソリク デ ロウバイン
(73)【特許権者】
【識別番号】516029470
【氏名又は名称】ルドウイグ インスティテュート フォー キャンサー リサーチ エルティーディー
(73)【特許権者】
【識別番号】517303085
【氏名又は名称】アルジェニクス ビーブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】ソフィエ ルカス
(72)【発明者】
【氏名】ピエレ コウリエ
(72)【発明者】
【氏名】ジュリア クエンデ ビラスル
(72)【発明者】
【氏名】ラウレ ドウモウトイエル
(72)【発明者】
【氏名】ジェアン‐クリストフェ レナウルド
(72)【発明者】
【氏名】セバストイアン バン デル ウオニング
(72)【発明者】
【氏名】マイケル サウンデルス
(72)【発明者】
【氏名】ハンス デ ハアルド
(72)【発明者】
【氏名】ギッテ デ ボエク
【審査官】小林 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-510953(JP,A)
【文献】国際公開第2009/028411(WO,A1)
【文献】Eur. J. Immunol.,2009年,Vol.39,pp.3315-3322
【文献】Proc. Nat. Acad. Sci.,2009年,Vol.106, No.32,pp.13445-13450
【文献】Mol. Biol. Cell,2012年,Vol.23,pp.1129-1139
【文献】J. Immunol.,Vol.190,pp.5057-5064,Prepublished online 2013.04.10
【文献】J. Immunol.,Vol.190,pp.5506-5515,Prepublished online 2013.05.03
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
GARPが潜在型TGF-β1と複合体形成された場合に、ヒト反復優位糖タンパク質A(hGARP)と潜在型TGF-β1の複合体に結合する抗体であって、
前記抗体が、
(i) 配列番号13、14及び15に示される重鎖CDR1、2及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3)アミノ酸配列;並びに
(ii) 配列番号31、32及び33に示される軽鎖CDR1、2及び3(VL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を含む、前記抗体。
【請求項2】
前記重鎖の可変領域アミノ酸配列が、配列番号34であり、かつ前記軽鎖の可変領域アミノ酸配列が、配列番号35~39のうちの1つである、請求項記載の抗体。
【請求項3】
前記重鎖の可変領域アミノ酸配列が、配列番号34であり、かつ前記軽鎖の可変領域アミノ酸配列が、配列番号39である、請求項記載の抗体。
【請求項4】
GARPが潜在型TGF-β1と複合体形成された場合に、ヒト反復優位糖タンパク質A(hGARP)と潜在型TGF-β1の複合体に結合する抗体であって、
前記抗体が、
(i) 配列番号2、3、及び4に示される重鎖CDR1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3)アミノ酸配列;並びに
(ii) 配列番号5、6、及び7に示される軽鎖CDR1、2、及び3(VL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を含む、前記抗体。
【請求項5】
前記重鎖の可変領域アミノ酸配列が、配列番号8又は配列番号50であり、かつ前記軽鎖の可変領域アミノ酸配列が、配列番号9又は配列番号51である、請求項記載の抗体。
【請求項6】
2013年5月30日にBCCM/LMBPプラスミドコレクションにおいて受託番号LMBP 10246CBで登録されたハイブリドーマによって産生された抗体。
【請求項7】
2013年5月30日にBCCM/LMBPプラスミドコレクションにおいて受託番号LMBP 10246CBで登録された、GARPに対する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、TGF-βシグナル伝達を阻害する、ヒト抗GARPタンパク質に関する。本発明は
また、免疫異常及び疾患、例えば癌などの治療に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
1990年代初期の、最初のヒト腫瘍抗原の分子同定以来、腫瘍特異的抗原が共有される癌
患者の治療的ワクチン接種の効果を評価するために、いくつかの臨床試験が遂行された(B
oon,T.らの文献、Annu.Rev.Immunol.2006、24:175-208)。腫瘍退縮の証拠は、患者の約20
%に認められ、客観的臨床応答は、5~10%に認められた。したがって、腫瘍特異的抗原の
ワクチン接種は、癌を治療するための新規の有望な治療法となる。
【0003】
ワクチン接種に応答する患者の割合を向上させるための戦略が必要とされる。現在の治
療用癌ワクチンの臨床有効性に対する主な制限因子は、ワクチン自体ではなく、抗腫瘍T
細胞が働かなければならない腫瘍微小環境を制御する局所因子であるように思われる。
【0004】
制御性T細胞、すなわちTregは、免疫応答の阻害に専門化されたCD4+Tリンパ球のサブセ
ットである。Tregの機能不全は、自己免疫病態をもたらすのに対して、Treg機能過剰は、
癌患者における抗腫瘍免疫応答を阻害する可能性がある。Tregが免疫応答を阻害する厳密
な機構は、十分には理解されていない。
【0005】
Tregは、その免疫抑制機能が原因で、自然発生的又はワクチン誘発型の抗腫瘍免疫応答
の潜在的阻害因子となる。マウスモデルでは、Tregの欠乏によって、実験腫瘍に対する免
疫応答を向上させることができる(Colomboらの文献、Nat.Rev.Cancer 2007、7:880-887)
。したがって、ヒトにおいてTregを標的にすることによって、癌に対する免疫療法の有効
性を向上させることができるであろう。
【0006】
本発明者らが、活性なTGF-βが、ヒトTregによって産生されるが、他の種類のヒトTリ
ンパ球によって産生されないこと(Stockis,J.らの文献、Eur.J.Immunol.2009、39:869-88
2)を以前に示した通り、TGF-βは、関心対象の標的となるであろう。
【0007】
しかし、hTGF-βに対する抗体は、有望であることが判明していなかった。巣状分節性
糸球体硬化症 (FSGS)、特発性肺線維症(IPF)、及び進行した悪性黒色腫又は腎細胞癌(RCC
)において、第1相臨床試験が実施されている(Lonning Sらの文献、Current Pharmaceuti
cal Biotechnology 2011、12:2176-2189)。治験によっては、いくらかの患者において、
有害事象が観察された。報告された主な有害反応は、メラノーマ患者における角化棘細胞
腫(KA)及び扁平上皮癌(SCC)の発生に存していた。メラノーマ患者におけるKA又はSCC病変
が、その増殖が内在性TGF-βによって阻害された前癌細胞から発生した可能性がある(Lon
ning Sらの文献、Current Pharmaceutical Biotechnology 2011、12:2176-2189)。したが
って、癌という状況では、抗TGF-β抗体の使用に関する主な関心事は、これが、内在性TG
F-βによって前癌細胞に対して発揮される腫瘍抑制効果の阻害が原因で、新しい腫瘍性病
変の出現を促進する可能性があるということである。
【0008】
本発明の一目的は、Tregを、そのTGF-βの産生を介して標的にすることによって、癌治
療を向上させるための新規戦略を提供することである。
【0009】
TGF-βの産生が、多段階プロセスによってしっかりと調節されることが、以前に示され
た。pro-TGF-β1という名前の前駆体は、ホモ二量体化し、その後、プロタンパク質転換
酵素FURINによって切断される。得られた生成物は、潜在型TGF-β1と呼ばれ、ここで、C
端末断片、すなわち成熟TGF-β1は、潜在関連ペプチド(Latency Associated Peptide)す
なわちLAPとして公知であるN-末端断片と非共有的に結合されたままである。LAPは、成熟
TGF-β1がその受容体に結合するのを妨げるので、この潜在型複合体は、不活性である。
【0010】
本発明において、本発明者らは、潜在型TGF-βが、膜貫通タンパク質GARP(反復優位糖
タンパク質A(glycoprotein A repetitions predominant))を介してTregの表面に結合する
ことを示す。
【0011】
したがって、本発明は、TGF-βシグナル伝達を阻害する抗GARPタンパク質に基づいて、
Tregを標的にするための新規戦略を提供することを目的とする。
【発明の概要】
【0012】
(概要)
本発明の一目的は、TGF-βの存在下において、反復優位糖タンパク質A(Glycoprotein A
repetitions predominant)(GARP)に結合する、タンパク質である。一実施態様では、前
記タンパク質は、TGF-βの存在下で、GARPのみと結合する。別の実施態様では、前記タン
パク質は、GARPがTGF-βと複合体形成される場合に、GARPと結合する。別の実施態様では
、前記タンパク質は、GARPとTGF-βとの複合体と結合する。
【0013】
本発明の一実施態様では、前記タンパク質は、全長(whole)抗体、ヒト化抗体、単鎖抗
体、二量体単鎖抗体、Fv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、二量体
抗体、三量体抗体、四量体抗体からなる群から選択される抗体分子である。
【0014】
別の実施態様では、前記タンパク質は、ユニボディ(unibody)、ドメイン抗体、及びナ
ノボディからなる群から選択される抗体断片である。
【0015】
別の実施態様では、前記タンパク質は、アフィボディ、アフィリン(affilin)、アフィ
チン(affitin)、アドネクチン、アトリマー、エバシン(evasin)、DARPin、アンチカリン
、アビマー、フィノマー、ヴァーサボディ(versabody)、及びデュオカリンからなる群か
ら選択される抗体模倣体である。
【0016】
本発明の別の目的は、本明細書で先に記載した通りのタンパク質、又はGARPと結合して
TGF-βシグナル伝達を阻害するタンパク質である。
【0017】
一実施態様では、前記タンパク質は、GARPの1以上のアミノ酸を含む立体構造エピトー
プ、又はGARPが潜在型TGF-βと複合体形成されている結果として改変されたGARPのエピト
ープと結合する、抗体又はその抗原結合性断片である。
【0018】
別の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、潜在型TGF-βの1以上のアミ
ノ酸とさらに結合する。別の実施態様では、前記抗体又はその抗原結合性断片は、配列番
号:1に示されるGARPの101残基から141残基までの1以上の残基を含むエピトープと結合す
る。
【0019】
本発明の別の目的はタンパク質であって、次のCDR:
【化1】
又は配列番号:2~4若しくは52と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCD
Rの少なくとも1つを含む重鎖の可変領域を有する、
又は、次のCDR:
【化2】
又は配列番号:5~7と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少なく
とも1つを含む軽鎖の可変領域を有する、
又は、次のCDR:
【化3】
又は配列番号:13~15と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少な
くとも1つを含む重鎖の可変領域を有する、
前記タンパク質である、
或いはここでは、軽鎖の可変領域は、次のCDR:
【化4】
(ここでは、X1はS又はTであり、X2はS又はVであり、X3はY又はFである);
【化5】
(ここでは、X1はG又はRであり;X2はA又はTであり;X3はR又はIであり;X4はL又はPであり;X
5はQ又はKである);
【化6】
(ここでは、X1はD、A、Y、又はVであり;X2はA、L、又はVであり;X3はV又はPである);
又は配列番号:16~18と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少な
くとも1つを含む。
【0020】
一実施態様では、前記重鎖の可変領域は、
次のCDR:
【化7】
又は配列番号:2~4若しくは52と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCD
Rの少なくとも1つを含み、
且つ、前記軽鎖の可変領域は、
次のCDR:
【化8】
又は配列番号:5~7と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少なく
とも1つを含む、
或いは、前記重鎖の可変領域は、次のCDR:
【化9】
又は配列番号:13~15と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少な
くとも1つを含み、
且つ、前記軽鎖の可変領域は、次のCDR:
【化10】
(ここでは、X1はS又はTであり、X2はS又はVであり、X3はY又はFである);
【化11】
(ここでは、X1はG又はRであり;X2はA又はTであり;X3はR又はIであり;X4はL又はPであり;X
5はQ又はKである);
【化12】
(ここでは、X1はD、A、Y、又はVであり;X2はA、L、又はVであり;X3はV又はPである);
又は配列番号:16~18と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少な
くとも1つを含む。
【0021】
別の実施態様では、前記重鎖の可変領域は、次のCDR:
【化13】
を含み、前記軽鎖の可変領域は、次のCDR:
【化14】
又は前記配列番号:2~7と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRを含
む;
或いは、前記重鎖の可変領域は、次のCDR:
【化15】
を含み、前記軽鎖の可変領域は、次のCDR:
【化16】
又は前記配列番号:52及び3~7と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCD
Rを含む;
或いは、前記重鎖の可変領域は、次のCDR:
【化17】
を含み、かつ前記軽鎖の可変領域は、次のCDR:
【化18】
(ここでは、X1はS又はTであり、X2はS又はVであり、X3はY又はFである);
【化19】
(ここでは、X1はG又はRであり;X2はA又はTであり;X3はR又はIであり;X4はL又はPであり;X
5はQ又はKである);
【化20】
(ここでは、X1はD、A、Y、又はVであり;X2はA、L、又はVであり;X3はV又はPである);
又は前記配列番号:16~18と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRを
含む。
【0022】
別の実施態様では、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:8若しくは配列番号
:50であり、前記軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:9若しくは配列番号:51である
、又は、前記重鎖可変領域のアミノ酸配列は、配列番号:34であり、前記軽鎖可変領域の
アミノ酸配列は、配列番号:35~39;又は前記配列番号:8~9、50~51若しくは34~39と少
なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有する配列のうちの1つである。
【0023】
本発明の別の目的は、配列番号:8に若しくは配列番号:50に示される通りの重鎖可変領
域と、配列番号:9に若しくは配列番号:51に示される通りの軽鎖可変領域とを含む抗体に
よって、又は、配列番号:34に示される通りの重鎖可変領域と、配列番号:35~39に示され
る通りの軽鎖可変領域のうちの1つとを含む抗体によって認識される、アミノ酸配列・配
列番号:1を有するポリペプチド上のエピトープと結合する、本明細書で先に定義したタン
パク質である。
【0024】
本発明の別の目的は、2013年5月30日に受託番号LMBP 10246CBで登録されたハイブリド
ーマによって産生された抗体又は抗原結合断片である。
【0025】
本発明の別の目的は、本明細書で先に記載した通りの抗体又は抗原結合断片をコードす
るポリヌクレオチド配列である。
【0026】
本発明の別の目的は、本明細書で先に記載した通りの、請求項に記載のポリヌクレオチ
ドを含む発現ベクターである。
【0027】
本発明の別の目的は、2013年5月30日に受託番号LMBP 10246CBで登録された、GARPに対
する抗体を産生するハイブリドーマ細胞株である。
【0028】
本発明の別の目的は、本明細書で先に記載した通りのタンパク質と、医薬として許容し
得る賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0029】
本発明の別の目的は、その治療を必要とする対象におけるTGF-β関連の障害を治療する
ための、本明細書で先に記載した通りの医薬組成物である。一実施態様では、TGF-β関連
の障害は、炎症性疾患、慢性感染症、癌、線維症、循環器疾患、脳血管疾患(例えば虚血
発作)、及び神経変性疾患からなる群から選択される。
【0030】
別の実施態様では、本明細書で先に記載した通りの医薬組成物は、癌のための別の治療
、又は腫瘍ワクチン若しくは免疫賦活性抗体などの別の免疫療法薬と組み合わせて投与さ
れることとなる。
【0031】
別の実施態様では、本明細書で先に記載した通りの医薬組成物は、癌患者の治療のため
の免疫賦活性抗体として投与されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
(定義)
本発明では、次の用語は、次の意味を有する:「抗体」又は「免疫グロブリン」-本明細
書で使用する場合、用語「免疫グロブリン」は、関連のあるいずれかの特異的な免疫反応
性を有するかどうかに関わらず、2本の重鎖及び2本の軽鎖の組み合わせを有するポリペプ
チドを含む。「抗体」とは、関心対象の抗原(例えばヒトGARP)に対する有意な既知の特異
的免疫反応活性を有するこうした集成体をいう。用語「GARP抗体」は、ヒトGARPタンパク
質に関して免疫学的特異性を示す抗体を指すために本明細書において使用される。本明細
書の別所に説明する通り、ヒトGARPに関する「特異性」は、GARPの種相同体との交差反応
を除外しない。さらに、これは、GARPタンパク質残基及びTGF-βタンパク質残基にわたる
、エピトープを認識する抗体も除外しない。抗体及び免疫グロブリンは、軽鎖と重鎖の間
の鎖内共有結合を伴う又は伴わずに、軽鎖及び重鎖で構成される。脊椎動物系の基本の免
疫グロブリン構造は、比較的十分に分かっている。一般用語「免疫グロブリン」は、生化
学的に区別することができる5つの異なるクラスの抗体を含む。5つの異なるクラスの抗体
はすべて、本発明の範囲内であり、後の考察は概して、IgGクラスの免疫グロブリン分子
を対象にすることとする。IgGに関しては、免疫グロブリンは、分子量およそ23,000ダル
トンの2本の同一のポリペプチド軽鎖と、分子量53,000~70,000ダルトンの2本の同一の重
鎖を含む。これらの4本の鎖は、「Y字」配置でジスルフィド結合によって連結され、ここ
では軽鎖は、「Y字」の口で始まり且つ可変領域を通して続く重鎖を腕木で支えている(br
acket)。抗体の軽鎖は、カッパ又はラムダ(κ、λ)のいずれかとして分類される。各重鎖
クラスは、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかと結合され得る。一般に、軽鎖と重鎖は、互いに
共有結合され、これらの2本の重鎖の「尾」部は、ジスルフィド共有結合により、又は免
疫グロブリンがハイブリドーマ、B細胞、若しくは遺伝子操作された宿主細胞のいずれか
によって作製される場合には非共有結合により、互いに結合されている。重鎖においては
、アミノ酸配列は、Y字配置の分岐端のN-末端から、各鎖の端のC-末端へと続く。当業者
は、重鎖が、ガンマ、ミュー、アルファ、デルタ又はイプシロン(γ、μ、α、δ、又は
ε)として分類され、その一部はサブクラス(例えばγ1~γ4)に分類されることを理解す
るであろう。この鎖の本質は、抗体の「クラス」を、それぞれ、IgG、IgM、IgA、IgG、又
はIgEと決定することである。免疫グロブリンサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、I
gG2、IgG3、IgG4、IgA1などは、十分に特徴付けられ、機能特性を与えることが公知であ
る。これらのクラス及びアイソタイプのそれぞれの改変型は、本開示を考慮して、当業者
には容易に認識可能であるので、これらは本発明の範囲内である。先に示した通り、抗体
の可変領域は、その抗体が、抗原上のエピトープを選択的に認識し、且つ特異的に結合す
ることを可能にする。すなわち、抗体のVLドメインとVHドメインは、組み合わせられて、
三次元的抗原結合部位を規定する可変領域を形成する。この四次抗体構造は、Y字の各ア
ームの端に存在する抗原結合部位を形成する。より詳細には、抗原結合部位は、VH鎖及び
VL鎖の各々の上の3つの相補性決定領域(CDR)によって規定される。
【0033】
「単離された抗体」-本明細書で使用する場合、「単離された抗体」は、その天然の環
境の構成成分から分離及び/又は回収されているものである。その天然の環境の混入成分
は、抗体の診断的又は治療的使用の妨げになるであろう材料であり、酵素、ホルモン、及
び他のタンパク質性又は非タンパク質性成分が含まれ得る。好ましい実施態様では、抗体
は、(1)ローリー法によって決定される場合の抗体の95重量%超まで、最も好ましくは99重
量%超まで;(2)スピニングカップ(spinning cup)配列決定装置の使用によって少なくとも1
5残基のN-末端若しくは内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで;又は、(3)還元又は
非還元条件下での、且つクマシーブルー又は好ましくは銀染色を使用する、SDS-PAGEによ
って示される場合の均一性まで精製される。単離された抗体としては、組み換え細胞内の
インサイチューの抗体が挙げられる。抗体の天然の環境の少なくとも1つの構成要素が、
存在しないこととなるからである。しかし、通常、単離された抗体は、少なくとも1つの
精製ステップによって調製されることとなる。
【0034】
「親和性バリアント」-本明細書で使用する場合、用語「親和性バリアント」とは、参
照GARP抗体と比較した場合にアミノ酸配列の1以上の変化を示す「バリアント抗体」をい
い、ここでは該親和性バリアントは、ヒトGARPタンパク質又はGARP/TGF-β複合体につい
て、参照抗体と比較すると親和性の変更を示す。一般的に、親和性バリアントは、参照GA
RP抗体と比較すると、ヒトGARP又はヒトGARP/TGF-β複合体について、親和性の改善を示
すこととなる。この改善は、ヒトGARPについての、より低いKD、又はヒトGARPについての
、より早いオフレート(off-rate)、又は非ヒトGARPホモログとの交差反応性のパターンの
変更のいずれかであり得る。親和性バリアントは一般的に、参照GARP抗体と比較すると、
CDR内のアミノ酸配列の1以上の変化を示す。こうした置換は、CDRの所与の位置に存在す
る元々のアミノ酸の、天然に存在するアミノ酸残基又は天然に存在しないアミノ酸残基で
あり得る異なるアミノ酸残基との置き換えをもたらすことが可能である。このアミノ酸置
換は、保存的又は非保存的であり得る。
【0035】
「結合部位」-本明細書で使用する場合、用語「結合部位」は、関心対象の標的抗原(例
えばヒトGARP)への選択的結合を担うポリペプチドの領域を含む。結合ドメイン又は結合
領域は、少なくとも1つの結合部位を含む。結合ドメインの例としては、抗体可変ドメイ
ンが挙げられる。本発明の抗体分子は、1つの抗原結合部位又は複数(例えば、2、3、若し
くは4個)の抗原結合部位を含むことができる。
【0036】
「保存的アミノ酸置換」-本明細書で使用する場合、「保存的アミノ酸置換」は、その
中のアミノ酸残基が、類似側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられているものである。
類似側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されており、塩基性
側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、
グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン
、トレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシ
ン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分
岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシ
ン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。したがって、免疫グ
ロブリンポリペプチド内の非必須アミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残
基と置き換えることができる。別の実施態様では、一続きのアミノ酸を、側鎖ファミリー
メンバーの順序及び/又は組成が異なる構造的に類似した連続と置き換えることができる
【0037】
「キメラ」-本明細書で使用する場合、「キメラ」タンパク質は、自然界では自然に連
結しない第二のアミノ酸配列に連結された第一のアミノ酸配列を含む。これらのアミノ酸
配列は、共に融合ポリペプチドとなる別のタンパク質内に普通に存在することもできるし
、同じタンパク質内に普通に存在して、融合ポリペプチド内では新たな並びで配置される
可能性もある。キメラタンパク質は、例えば、化学合成によって、又はペプチド領域が所
望の関係性でコードされているポリヌクレオチドを作製及び翻訳することによって、作製
することができる。キメラGARP抗体の例としては、ヒト抗体、例えばヒトIgG1、IgG2、Ig
G3、又はIgG4の定常ドメインに融合された、ラクダ科動物由来のVHドメイン及びVLドメイ
ン又はこれらのヒト化バリアントを含む、融合タンパク質が挙げられる。
【0038】
「CDR」-本明細書で使用する場合、用語「CDR」又は「相補性決定領域」は、重鎖及び
軽鎖の両ポリペプチドの可変領域内に認められる、隣接していない抗原結合部位を意味す
る。これらの特定の領域は、Kabatらの文献、J.Biol.Chem.252:6609-6616(1977)、及びKa
batらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Protein of Immuno
logical Interest)」(1991)、及びChothiaらの文献、J.Mol.Biol.196:901-917(1987)、及
びMacCallumらの文献、J.Mol.Biol.262:732-745(1996)に記載されており、ここではこれ
らの定義には、互いに比較した場合のアミノ酸残基の重複又はサブセットが含まれている
。先に引用した参考文献のそれぞれによって定義されたCDRを包含しているアミノ酸残基
を、比較のために示す。好ましくは、用語「CDR」は、配列比較に基づいてKabatによって
定義されたCDRである。
表1:CDR定義
【表1】
(1)残基番号付けは、Kabatらの文献(前掲)の命名法に従う
(2)残基番号付けは、Chothiaらの文献(前掲)の命名法に従う
(3)残基番号付けは、MacCallumらの文献(前掲)の命名法に従う
【0039】
「CH2ドメイン」-本明細書で使用する場合、用語「CH2ドメイン」には、例えば、従来
の番号付けスキームを使用する、抗体のおよそ残基244から残基360まで及ぶ重鎖分子の領
域が含まれる(残基244から360、Kabat番号付けシステム;及び、残基231~340、EU番号付
けシステム、Kabat EAらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of
protein of immunological interest)」、Bethesda、US Department of Health and Huma
n Services, NIH.1991)。CH2ドメインは、別のドメインときっちり対形成しない点で独特
である。むしろ、完全なままの天然のIgG分子の2つのCH2ドメイン間に、2つのN-結合型分
岐糖鎖が差し挟まれる。また、CH3ドメインが、CH2ドメインからIgG分子のC-末端まで及
び、約108残基を含むことも十分に実証されている。
【0040】
「ラクダ科動物由来の」-ある種の好ましい実施態様では、本発明のGARP抗体分子は、G
ARP抗原でのラクダ科動物の能動免疫化によって産生されたラクダ科動物の従来の抗体に
由来するフレームワークアミノ酸配列及び/又はCDRアミノ酸配列を含む。しかし、ラクダ
科動物由来のアミノ酸配列を含むGARP抗体は、ヒトアミノ酸配列又は他の非ラクダ科哺乳
動物種に由来するフレームワーク配列及び/又は定常領域配列を含むように操作すること
ができる。例えば、ヒト又は非ヒト霊長類フレームワーク領域、重鎖領域、及び/又はヒ
ンジ領域を、対象GARP抗体に含めることができる。一実施態様では、1以上の非ラクダ科
動物アミノ酸が、「ラクダ科動物由来の」GARP抗体のフレームワーク領域に存在すること
ができ、例えば、ラクダ科動物フレームワークアミノ酸配列は、対応するヒト又は非ヒト
霊長類アミノ酸残基がその中に存在する1以上のアミノ酸変異を含むことができる。更に
、ラクダ科動物由来のVHドメイン及びVLドメイン、又はそれらのヒト化されたバリアント
を、ヒト抗体の定常ドメインに連結させて、本明細書の別所に包括的に記載した通りのキ
メラ分子を生成することができる。
【0041】
「に由来する」-本明細書で使用する場合、指定されたタンパク質(例えばGARP抗体又は
その抗原結合断片)「に由来する」という用語は、そのポリペプチドの起源をいう。一実
施態様では、ある特定の出発ポリペプチドに由来するポリペプチド又はアミノ酸配列は、
CDR配列又はそれに関連する配列である。一実施態様では、ある特定の出発ポリペプチド
に由来するアミノ酸配列は、隣接していない。例えば、一実施態様では、1、2、3、4、5
又は6のCDRが、出発抗体に由来する。一実施態様では、ある特定の出発ポリペプチド又は
アミノ酸配列に由来するポリペプチド又はアミノ酸配列は、出発配列のアミノ酸配列、又
はそれらの領域(ここでは、該領域は、少なくとも、少なくとも3~5個のアミノ酸、5~10
個のアミノ酸、少なくとも10~20個のアミノ酸、少なくとも20~30個のアミノ酸、若しく
は少なくとも30~50個のアミノ酸からなる)と本質的に同一であるアミノ酸配列、又は出
発配列を起源とするものであると当業者に別の方法で識別可能であるアミノ酸配列を有す
る。一実施態様では、出発抗体に由来する1以上のCDR配列は、GARP結合活性を維持するバ
リアントCDR配列、例えば親和性バリアントを生じるように変更される。
【0042】
「二量体抗体」-本明細書で使用する場合、用語「二量体抗体」とは、VHドメインとVL
ドメインとの間に短いリンカー(約5~10残基)を伴うsFv断片(sFvの段落を参照)を構築す
る(その結果、Vドメインの鎖間であるが鎖内ではない対形成が実現し、二価の断片、すな
わち2つの抗原結合部位を有する断片がもたらされる)ことによって調製される、小さな抗
体断片をいう。二重特異性の二量体抗体は、2つの抗体のVH及びVLドメインが、異なるポ
リペプチド鎖上に存在する、2つの「交差」sFv断片のヘテロ二量体である。二量体抗体は
、例えば、EP 404,097;WO 93/11161;及びHolligerらの文献、Proc.Natl.Acad.Sci., 90:6
444-6448(1993)に、より十分に記載されている。
【0043】
「操作された」-本明細書で使用する場合、用語「操作された」には、合成手段による(
例えば、組み換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的若しくは化学的カッ
プリング、又はこれらの技術のいくつかの組み合せによる)、核酸又はポリペプチド分子
の操作が含まれる。本発明の抗体は、例えば、ヒト化及び/又はキメラ抗体、並びに抗原
結合、安定性/半減期又はエフェクター機能などの1以上の特性を改良するように操作され
ている抗体を含めて、操作されていることが好ましい。
【0044】
「エピトープ」-本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」とは、抗体が結合する
ペプチド又はタンパク質(1又は複数)に位置するアミノ酸の特定の配置をいう。エピトー
プは、しばしば、アミノ酸又は糖側鎖などの分子の化学的に活性な表面群からなり、特定
の3次元構造特性並びに特定の電荷特性を有する。エピトープは、直線状又は立体構造的
であり得る、すなわち、必ずしも隣接していなくともよい、抗原の様々な領域におけるア
ミノ酸の2以上の配列を含む。
【0045】
「フレームワーク領域」-「フレームワーク領域」又は「FR領域」には、本明細書で使
用する場合、可変領域の一部であるがCDRの一部ではないアミノ酸残基が含まれる(例えば
、CDRのKabat定義を使用する)。したがって、可変領域フレームワークは、長さが約100~
120個のアミノ酸であるが、CDRの外側のアミノ酸のみを含む。重鎖可変領域の具体例につ
いて、及びKabatらにより定義されたCDRについて、フレームワーク領域1は、アミノ酸1~
30を包含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク領域2は、アミノ酸36~49を包
含する可変領域のドメインに相当し;フレームワーク領域3は、アミノ酸66-94を包含する
可変領域のドメインに相当し、且つフレームワーク領域4は、アミノ酸103から可変領域の
末端までの可変領域のドメインに相当する。軽鎖のフレームワーク領域は同様に、それぞ
れの軽鎖可変領域CDRによって隔てられている。同様に、Chothiaら又はMcCallumらによる
CDRの定義を使用すると、フレームワーク領域の境界は、先に記載した通り、それぞれのC
DR末端によって隔てられている。好ましい実施態様では、CDRは、Kabatにより定義されて
いる通りである。抗体は、水性環境ではその三次元立体配置をとるので、天然に存在する
抗体では、各モノマー抗体上に存在する6つのCDRは、抗原結合部位を形成するように特異
的に配置されているアミノ酸の、短い隣接していない配列である。重鎖及び軽鎖可変ドメ
インの残部は、アミノ酸配列において、より小さい分子間可変性を示し、フレームワーク
領域と称される。これらのフレームワーク領域は、おおむねβシート構造をとり、そのCD
Rは、ループを形成し、このループは、βシート構造とつながる、及び場合によってはβ
シート構造の一部を形成する。したがって、これらのフレームワーク領域は、スキャフォ
ールドを形成するように働き、このスキャフォールドは、鎖間の非共有相互作用による、
6つのCDRの正しい方向への配置をもたらす。配置されたCDRによって形成された抗原結合
部位は、免疫反応性抗原上のエピトープに対する表面相補性を定義する。この相補性表面
は、免疫反応性抗原エピトープへの抗体の非共有結合を促進する。CDRの配置は、当業者
によって容易に特定することができる。
【0046】
「断片」-本明細書で使用する場合、用語「断片」とは、無傷の又は完全な抗体又は抗
体鎖よりも少ないアミノ酸残基を含む、抗体又は抗体鎖の部分又は領域をいう。用語「抗
原結合断片」とは、抗原に結合するか、或いは抗原結合(すなわち、ヒトGARPへの特異的
結合)について無傷抗体(すなわち、それらが由来する無傷抗体)と競合する、免疫グロブ
リン又は抗体のポリペプチド断片をいう。本明細書で使用する場合、抗体分子の「断片」
という用語には、抗体の抗原結合断片、例えば、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体重鎖可
変ドメイン(VH)、単鎖抗体(scFv)、F(ab')2断片、Fab断片、Fd断片、Fv断片、単一ドメイ
ン抗体断片(DAb)、1アームの(一価の)抗体、二量体抗体、又は、こうした抗原結合断片の
組み合わせ、集成体、若しくは複合体によって形成される任意の抗原結合分子が含まれる
。断片は、例えば、無傷の又は完全な抗体又は抗体鎖の化学処理若しくは酵素処理を介し
て、又は組み換え手段によって得ることができる。
【0047】
「Fv」-本明細書で使用する場合、用語「Fv」は、完全な抗原-認識及び結合部位を含有
する最小の抗体断片である。この断片は、密接な非共有結合的会合での1つの重鎖可変領
域ドメインと1つの軽鎖可変領域ドメインとの二量体からなる。これらの2つのドメインの
フォールディングから、6つの高頻度可変性ループ(H鎖とL鎖からそれぞれ3つのループ)が
生じ、これらのループは、アミノ酸残基の抗原結合に寄与し、抗体に抗原結合特異性を付
与する。しかし、単一の可変ドメイン(又は、抗原に特異的な3つのCDRのみを含むFvの半
分)であっても、結合部位全体よりも親和性が低いとはいえ、抗原を認識して結合する能
力を有する。
【0048】
「重鎖領域」-本明細書で使用する場合、用語「重鎖領域」には、免疫グロブリン重鎖
の定常ドメインに由来するアミノ酸配列が含まれる。重鎖領域を含むポリペプチドは、以
下の少なくとも1つを含む:CH1ドメイン、ヒンジ(例えば、上部、中央、及び/又は下部ヒ
ンジ領域)ドメイン、CH2ドメイン、CH3ドメイン、又はそれらのバリアント若しくは断片
。一実施態様では、本発明の結合分子は、免疫グロブリン重鎖のFc領域(例えば、ヒンジ
部分、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン)を含むことができる。別の実施態様では、本発明
の結合分子は、定常ドメインの少なくとも一領域(例えば、CH2ドメインのすべて又は一部
)を欠いている。ある種の実施態様では、少なくとも1つ、好ましくはすべての定常ドメイ
ンが、ヒト免疫グロブリン重鎖に由来する。例えば、ある好ましい実施態様では、重鎖領
域は、完全ヒトヒンジドメインを含む。他の好ましい実施態様では、重鎖領域は、完全ヒ
トFc領域(例えば、ヒト免疫グロブリン由来のヒンジ、CH2及びCH3ドメイン配列)を含む。
ある種の実施態様では、重鎖領域の構成的定常ドメインは、異なる免疫グロブリン分子由
来である。例えば、ポリペプチドの重鎖領域は、IgG1分子に由来するCH2ドメイン、及びI
gG3又はIgG4分子に由来するヒンジ領域を含むことができる。他の実施態様では、定常ド
メインは、異なる免疫グロブリン分子の領域を含むキメラドメインである。例えば、ヒン
ジは、IgG1分子由来の第一の領域と、IgG3又はIgG4分子由来の第二の領域を含むことがで
きる。先に示した通り、当業者には、重鎖領域の定常ドメインのアミノ酸配列が、天然に
存在する(野生型の)免疫グロブリン分子と異なるように改変され得ることが理解されるで
あろう。すなわち、本明細書に開示した本発明のポリペプチドは、1以上の重鎖定常ドメ
イン(CH1、ヒンジ、CH2、又はCH3)の、及び/又は軽鎖定常ドメイン(CL)の、変更又は改変
を含むことができる。改変の例としては、1以上のドメイン内の1以上のアミノ酸の付加、
欠失、又は置換が挙げられる。
【0049】
「ヒンジ領域」-本明細書で使用する場合、用語「ヒンジ領域」には、CH1ドメインをCH
2ドメインに連結する重鎖分子の領域が含まれる。このヒンジ領域は、およそ25残基を含
み、且つ柔軟性があるので、2つのN-末端抗原結合領域が独立して動くことを可能にして
いる。ヒンジ領域は、上部、中央、及び下部ヒンジドメインの3つの別のドメインに細区
画ことができる(Rouxらの文献、J.Immunol.1998 161:4083)。
【0050】
高頻度可変性ループ(HV)は構造に基づいて定義されるのに対し、相補性決定領域(CDR)
は配列可変性に基づいて定義されるので(Kabatらの文献、「免疫学的関心のあるタンパク
質の配列(Sequences of Proteins of Immunological Interest)」、第5版、Public Healt
h Service、米国国立衛生研究所(National Institutes of Health)、Bethesda,MD.、1983
)、用語「高頻度可変性ループ」と「相補性決定領域」は、厳密には同義ではなく、HVとC
DRの境界は、一部のVHドメイン及びVLドメインにおいて異なる可能性がある。VL及びVHド
メインのCDRは、一般的に、下記のアミノ酸を含むと定義することができる:軽鎖可変ドメ
イン中の残基24~34(CDRL1)、50~56(CDRL2)、及び89~97(CDRL3)、並びに重鎖可変ドメ
イン中の残基31~35又は31~35b(CDRH1)、50~65(CDRH2)、及び95~102(CDRH3);(Kabatら
の文献、「免疫学的関心のあるタンパク質の配列(Sequences of Proteins of Immunologi
cal Interest)」、第5版、Public Health Service、米国国立衛生研究所(National Insti
tutes of Health)、Bethesda,MD.(1991))。したがって、HVは、対応するCDR内に含まれ得
、別段の指示がない限り、VH及びVLドメインの「高頻度可変性ループ」に対する本明細書
での言及は、対応するCDRも包含すると解釈されるべきであり、その逆も同様である。可
変ドメインのより高度に保存された領域は、以下で定義した通り、フレームワーク領域(F
R)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインはそれぞれ、3つの高頻度可変性ルー
プによって接続された、β-シート構造を主として採用している、4つのFR(それぞれ、FR1
、FR2、FR3及びFR4)を含む。各鎖内の高頻度可変性ループは、これらのFRによって、ごく
接近した状態でまとめられ、他の鎖由来の高頻度可変性ループと共に、抗体の抗原結合部
位の形成に寄与する。抗体の構造解析により、相補性決定領域によって形成された結合部
位の配列と形状との間の関係が明らかになった(Chothiaらの文献、J.Mol.Biol., 227:799
-817(1992));Tramontanoらの文献、J.Mol.Biol., 215:175-182(1990))。6つのループのう
ちの5つは、その高い配列可変性にもかかわらず、「カノニカル構造」と呼ばれる主鎖構
造のレパートリーが少しだけである。これらの構造は、まず第一に、ループの長さによっ
て決定され、第二に、構造を決定するループ内及びフレームワーク領域内の特定の位置で
の重要な残基の存在によって、そのパッキング、水素結合、又は普通でない主鎖構造を推
定できることを通して決定される。
【0051】
「ヒト化置換」-本明細書で使用する場合、用語「ヒト化置換」とは、VH又はVLドメイ
ン抗体GARP抗体(例えば、ラクダ科動物由来のGARP抗体)中の特定の位置に存在するアミノ
酸残基が、参照ヒトVH又はVLドメイン中の同等の位置に存在するアミノ酸残基で置き換え
られる、アミノ酸置換をいう。参照ヒトVH又はVLドメインは、ヒト生殖細胞系列によって
コードされたVH又はVLドメインであり得、この場合、置換された残基は、「生殖細胞系列
化置換」と呼ぶことができる。ヒト化/生殖細胞系列化置換は、本明細書で定義された、G
ARP抗体のフレームワーク領域及び/又はCDRにおいて行うことができる。
【0052】
「高ヒト相同性」-重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体は、こ
のVHドメイン及びVLドメインが一緒になって、最も厳密にマッチするヒト生殖細胞系列VH
配列及びVL配列に対する少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を示す場合に、高ヒト相同
性を有するとみなされるであろう。高ヒト相同性を有する抗体は、例えば、ラクダ科動物
の従来の抗体のVH及びVLドメインを含む抗体、並びにこうした抗体の操作された、特にヒ
ト化されたバリアント、また、「完全ヒト」抗体を含めた、十分に高い配列同一性(%)ヒ
ト生殖細胞系列配列を示す天然の非ヒト抗体のVH及びVLドメインを含む抗体を含むことが
できる。一実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVHドメインは、フレームワーク領域
FR1、FR2、FR3、及びFR4のすべてにわたって、1以上のヒトVHドメインとの80%以上のア
ミノ酸配列同一性又は配列相同性を示すことができる。他の実施態様では、本発明のポリ
ペプチドのVHドメインと、最も厳密にマッチするヒト生殖細胞系列VHドメイン配列とのア
ミノ酸配列同一性又は配列相同性は、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最
大99%、さらには100%であり得る。一実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVHドメ
インは、フレームワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4のすべてにわたって、最も厳密にマ
ッチしたヒトVH配列と比較して、1以上(例えば1から10)のアミノ酸配列ミスマッチを含有
することができる。別の実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVLドメインは、フレー
ムワーク領域FR1、FR2、FR3、及びFR4のすべてにわたって、1以上のヒトVLドメインとの8
0%以上の配列同一性又は配列相同性を示すことができる。他の実施態様では、本発明の
ポリペプチドのVLドメインと、最も厳密にマッチするヒト生殖細胞系列VLドメイン配列と
のアミノ酸配列同一性又は配列相同性は、85%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又
は最大99%、さらには100%であり得る。
【0053】
一実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR1、F
R2、FR3、及びFR4のすべてにわたって、最も厳密にマッチしたヒトVL配列と比較して、1
以上(例えば1~10)のアミノ酸配列ミスマッチを含むことができる。
【0054】
高ヒト相同性をもつ抗体と、ヒト生殖細胞系列VH及びVLとの配列同一性(%)を解析する
前に、そのカノニカルフォールドを決定することができ、これによって、H1及びH2又はL1
及びL2(及びL3)に関して同一の組み合わせのカノニカルフォールドをもつヒト生殖細胞系
列セグメントのファミリーの同定が可能になる。続いて、関心対象の抗体の可変領域との
最高水準の配列相同性を有するヒト生殖細胞系列ファミリーメンバーが、配列相同性をス
コア化するために選択される。高頻度可変性ループL1、L2、L3、H1、及びH2のChothiaカ
ノニカルクラスの決定は、www.bioinf.org.uk/abs/chothia.htmlのウェブページ上で公に
利用可能なバイオインフォマティクスツールを用いて実施することができる。このプログ
ラムの出力は、データファイル中の重要残基条件を示す。これらのデータファイルでは、
重要残基の位置は、各位置での許容されるアミノ酸と共に示される。関心対象の抗体の可
変領域の配列は、インプットとして入力され、コンセンサス抗体配列と最初に並列されて
、Kabat番号付けスキームが割り当てられる。このカノニカルフォールドの解析は、Marti
n及びThorntonによって開発された自動化された方法によってもたらされた、重要残基鋳
型のセットを使用する(Martinらの文献、J.Mol.Biol.263:800-815(1996))。
【0055】
H1及びH2又はL1及びL2(及びL3)に関して同じ組み合わせのカノニカルフォールドを使用
する、公知の特定のヒト生殖細胞系列Vセグメントを用いて、配列相同性に関する最大に
マッチするファミリーメンバーを決定することができる。関心対象の抗体のVH及びVLドメ
インフレームワークアミノ酸配列と、ヒト生殖細胞系列によってコードされた対応する配
列との配列同一性(%)は、バイオインフォマティクスツールを用いて決定することができ
るが、実際には、これらの配列の手作業によるアラインメントも適用することができる。
ヒト免疫グロブリン配列は、VBase(http://vbase.mrc-cpe.cam.ac.uk/)又はPluckthun/Ho
neggerデータベース(http://www.bioc.unizh.ch/antibody/Sequences/Germlines)などの
、いくつかのタンパク質データベースから同定することができる。ヒト配列を、関心対象
の抗体におけるVH又はVLドメインのV領域と比較するために、配列アラインメントアルゴ
リズム、例えばウェブサイトwww.expasy.ch/tools/#alignを介して利用可能なものなどを
使用することができるが、限定された配列のセットとの手作業によるアラインメントも実
施することができる。同じ組み合わせのカノニカルフォールドをもち、且つ各鎖のフレー
ムワーク領域1、2、及び3との最高水準の相同性を伴う、これらのファミリーのヒト生殖
細胞系列軽鎖及び重鎖配列を選択し、関心対象の可変領域と比較し;また、FR4を、ヒト生
殖細胞系列JH及びJK又はJL領域について調べる。
【0056】
配列相同性(%)全体の計算では、FR1、FR2、及びFR3の残基は、同一の組み合わせのカノ
ニカルフォールドのもつヒト生殖細胞系列ファミリーからの最も厳密なマッチ配列を使用
して評価されることに留意されたい。同じ組み合わせのカノニカルフォールドをもつ同じ
ファミリーの最も厳密なマッチ又は他のメンバーと異なる残基のみが、スコア化される(
注意-プライマーによってコードされるあらゆる差異を除く)。しかし、ヒト化の目的のた
めには、同じ組み合わせのカノニカルフォールドを有しない、他のヒト生殖細胞系列ファ
ミリーのメンバーと同一のフレームワーク領域内の残基は、これが、先に記載したストリ
ンジェントな条件に従って「ネガティブ」とスコア化されるという事実にもかかわらず、
「ヒト」とみなすことができる。この前提は、Quとその同僚(Quらの文献、Clin.Cancer R
es.5:3095-3100(1999))並びにOnoとその同僚(Onoらの文献、Mol.Immunol.36:387-395(199
9))によって行われたように、FR1、FR2、FR3及びFR4のそれぞれが、その最も厳密にマッ
チするヒト生殖細胞系列配列と、個別に比較される結果、ヒト化された分子が異なるFRの
組み合わせを含有するという、ヒト化のための「ミックス及びマッチ」手法に基づいてい
る。個々のフレームワーク領域の境界は、Chothiaの番号付けスキームの改変である、IMG
T番号付けスキームを使用して割り当てることができる(Lefrancらの文献、NAR, 27:209-2
12(1999);http://im.gt.cines.fr)。
【0057】
高ヒト相同性をもつ抗体は、以下に詳細に論じる通り、ヒト又はヒト様カノニカルフォ
ールドを有する高頻度可変性ループ又はCDRを含むことができる。一実施態様では、高ヒ
ト相同性をもつ抗体のVHドメイン又はVLドメインのいずれかの内の少なくとも1つの高頻
度可変性ループ又はCDRは、非ヒト抗体、例えばラクダ科動物の種由来の従来の抗体のVH
又はVLドメインから入手又は誘導することができ、さらには、ヒト抗体中に存在するカノ
ニカルフォールド構造と実質的に同一である予測される又は実際のカノニカルフォールド
構造を示す。
【0058】
ヒト生殖細胞系列によってコードされたVHドメイン及びVLドメインの両方に存在する高
頻度可変性ループの一次アミノ酸配列が、定義上は、高度に可変性であるが、VHドメイン
のCDR H3以外のすべての高頻度可変性ループは、カノニカルフォールドと称されるわずか
数種の異なる構造の高次構造をとり(Chothiaらの文献、J.Mol.Biol.196:901-917(1987);T
ramontanoらの文献、Proteins, 6:382-94(1989))、これらが、高頻度可変性ループの長さ
と、いわゆるカノニカルアミノ酸残基の存在の両方によって決まる(Chothiaらの文献、J.
Mol.Biol.196:901-917(1987))ということは、当該技術分野において十分に確立されてい
る。無傷のVH又はVLドメイン中の高頻度可変性ループの実際のカノニカル構造は、構造解
析(例えばX線結晶解析)によって決定することができるが、特定の構造に特徴的である重
要なアミノ酸残基に基づいて、カノニカル構造を予測することも可能である(以下に更に
論じる)。本質的には、各カノニカル構造を決定する残基の特定のパターンは、そのカノ
ニカル構造を、未知の構造のVH又はVLドメインの高頻度可変性ループ中で認識できるよう
にする「特徴」を形成し;それによって、カノニカル構造は、一次アミノ酸配列のみに基
づいて予測することができる。
【0059】
高ヒト相同性をもつ抗体中のいずれの所与のVH又はVL配列の高頻度可変性ループに関す
る予測されるカノニカルフォールド構造も、www.bioinf.org.uk/abs/chothia.html、www.
biochem.ucl.ac.uk/~martin/antibodies.html、及びwww.bioc.unizh.ch/antibody/Seque
nces/Germlines/Vbase_hVk.htmlから公に利用可能であるアルゴリズムを使用して解析す
ることができる。これらのツールは、クエリーVH又はVL配列を、公知のカノニカル構造の
ヒトVH又はVLドメイン配列に対して整列させることや、クエリー配列の高頻度可変性ルー
プについて行われるカノニカル構造の予測を可能にする。
【0060】
VHドメインの場合、H1及びH2ループは、次の基準のうちの少なくとも最初のもの、好ま
しくは両方が満たされる場合、ヒト抗体中に存在することがわかっているカノニカルフォ
ールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化
することができる:
1.残基の数によって決定される、最も厳密にマッチするヒトカノニカル構造クラスと同一
の長さ。
2.対応するヒトH1及びH2カノニカル構造クラスに関して説明される、重要なアミノ酸残基
との少なくとも33%の同一性、好ましくは少なくとも50%の同一性。(前述の解析を目的
として、H1及びH2ループは、別々に処理され、且つそれぞれがその最も厳密にマッチする
ヒトカノニカル構造クラスに対して比較されることに留意されたい)。
【0061】
前述の解析は、関心対象の抗体のH1及びH2ループのカノニカル構造の予測に頼るもので
ある。例えばX線結晶解析に基づいて、関心対象の抗体のH1及びH2ループの実際の構造が
わかっている場合には、関心対象の抗体のH1及びH2ループはまた、そのループの長さが最
も厳密にマッチするヒトカノニカル構造クラスの長さと異なる(一般的に+1又は+2個の
アミノ酸)が、関心対象の抗体のH1及びH2ループの実際の構造はヒトカノニカルフォール
ドの構造とマッチする場合に、ヒト抗体中に存在することがわかっているカノニカルフォ
ールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化
することができる。
【0062】
ヒトVHドメインの第一及び第二の高頻度可変性ループ(H1及びH2)について、ヒトカノニ
カル構造クラスに見られる重要なアミノ酸残基は、Chothiaらの文献(J.Mol.Biol.227:799
-817(1992))に記載されており、この文献の内容全体を参照によって本明細書に組み込む
。特に、参照によって本明細書に具体的に組み込まれているChothiaらの文献の802頁の表
3は、ヒト生殖細胞系列に見られるH1カノニカル構造について、重要な位置での好ましい
アミノ酸残基を列記しているのに対し、同じく具体的に引用によりに組み込まれている80
3頁の表4は、ヒト生殖細胞系列に見られるCDR H2カノニカル構造について、重要な位置で
の好ましいアミノ酸残基を列記している。
【0063】
一実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVHドメイン中のH1とH2はどちらも、ヒト抗
体中に存在するカノニカルフォールド構造と実質的に同一である、予測される又は実際の
カノニカルフォールド構造を示す。
【0064】
高ヒト相同性をもつ抗体は、その中の高頻度可変性ループH1及びH2が、少なくとも1つ
のヒト生殖細胞系列VHドメイン中に存在することがわかっているカノニカル構造の組み合
わせと同一であるカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成する、VHドメインを含む
ことができる。H1及びH2でのカノニカルフォールド構造のある種の組み合わせのみが、ヒ
ト生殖細胞系列によってコードされたVHドメイン中に実際に存在することが認められてい
る。一実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVHドメイン中のH1及びH2は、非ヒト種、
例えばラクダ科動物種のVHドメインから得ることができ、さらには、ヒト生殖細胞系列又
は体細胞変異されたVHドメイン中に存在することがわかっているカノニカルフォールド構
造の組み合わせと同一である、予測される又は実際のカノニカルフォールド構造の組み合
わせを形成する。非限定的実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVHドメイン中のH1及
びH2は、非ヒト種、例えばラクダ科動物種のVHドメインから得ることができ、且つ次のカ
ノニカルフォールド組み合わせ:1-1、1-2、1-3、1-6、1-4、2-1、3-1、及び3-5のうちの
一つを形成する。
【0065】
高ヒト相同性をもつ抗体は、ヒトVHとの高い配列同一性/配列相同性の両方を示し、且
つヒトVHと構造的相同性を示す高頻度可変性ループを含む、VHドメインを含むことができ
る。
【0066】
高ヒト相同性をもつ抗体のVHドメイン中のH1及びH2に存在するカノニカルフォールド、
並びにそれらの組み合わせが、一次アミノ酸配列同一性全体という観点から、高ヒト相同
性をもつ抗体のVHドメインとの最も厳密なマッチを示すヒトVH生殖細胞系列配列に「補正
」されることが好都合であり得る。例として、最も厳密な配列マッチがヒト生殖細胞系列
VH3ドメインとのものであるならば、H1及びH2は、ヒトVH3ドメインにおいても天然に存在
するカノニカルフォールドの組み合わせを形成することが好都合であり得る。非ヒト種に
由来する高ヒト相同性をもつ抗体、例えばラクダ科動物の従来の抗体に由来するVH及びVL
ドメインを含有する抗体、特にヒト化されたラクダ科動物VH及びVLドメインを含有する抗
体の場合、このことは特に重要であり得る。
【0067】
したがって、一実施態様では、高ヒト相同性をもつGARP抗体のVHドメインは、フレーム
ワーク領域FR1、FR2、FR3及びFR4のすべてにわたって、ヒトVHドメインとの80%以上、85
%以上、90%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%、さらには100%の配列同一性又
は配列相同性を示すことができ、さらに、同じ抗体におけるH1及びH2は、(例えばラクダ
科動物種に由来する)非ヒトVHドメインから得られるが、同じヒトVHドメインにおいて天
然に存在することがわかっているカノニカルフォールド組み合わせと同じである、予測さ
れる又は実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成する。
【0068】
他の実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVLドメインにおけるL1及びL2は、それぞ
れ、非ヒト種のVLドメイン(例えば、ラクダ科動物由来のVLドメイン)から得られ、且つそ
れぞれ、ヒト抗体中に存在するカノニカルフォールド構造と実質的に同一である、予測さ
れる又は実際のカノニカルフォールド構造を示す。
【0069】
VHドメインと同様に、Vλ型とVκ型のVLドメインの高頻度可変性ループはどちらも、長
さによって、また、特定のカノニカル位置での重要なアミノ酸残基の存在によっても、あ
る程度決定される、限られた数の高次構造又はカノニカル構造をとることができる。
【0070】
高ヒト相同性をもつ関心対象の抗体内の、非ヒト種、例えばラクダ科動物種のVLドメイ
ンから得られたL1、L2、及びL3ループは、次の基準のうちの少なくとも最初のもの、好ま
しくは両方が満たされる場合、ヒト抗体中に存在することがわかっているカノニカルフォ
ールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとしてスコア化
することができる:
1.残基の数によって決定される、最も厳密にマッチするヒト構造クラスと同一の長さ。
2.Vλ又はVκレパートリーのいずれかからの、対応するヒトL1又はL2カノニカル構造クラ
スに関して説明される、重要なアミノ酸残基との少なくとも33%の同一性、好ましくは少
なくとも50%の同一性。(前述の解析を目的として、L1及びL2ループは、別々に処理され
、且つそれぞれがその最も厳密にマッチするヒトカノニカル構造クラスに対して比較され
ることに留意されたい)
【0071】
前述の解析は、関心対象の抗体のVLドメインのL1、L2及びL3ループのカノニカル構造の
予測に頼るものである。例えばX線結晶解析に基づいて、L1、L2及びL3ループの実際の構
造がわかっている場合には、関心対象の抗体に由来するL1、L2又はL3ループはまた、その
ループの長さが最も厳密にマッチするヒトカノニカル構造クラスの長さと異なる(一般的
に+1又は+2個のアミノ酸)が、これらのラクダ科動物ループの実際の構造はヒトカノニ
カルフォールドとマッチする場合に、ヒト抗体中に存在することがわかっているカノニカ
ルフォールド構造と「実質的に同一の」カノニカルフォールド構造を有するものとしてス
コア化することができる。
【0072】
ヒトVλ及びVκドメインのCDRについて、ヒトカノニカル構造クラスに見られる重要な
アミノ酸残基は、Moreaらの文献、Methods, 20:267-279(2000)、及びMartinらの文献、J.
Mol.Biol., 263:800-815(1996)に記載されている。また、ヒトVκドメインの構造的レパ
ートリーは、Tomlinsonらの文献、EMBO J.14:4628-4638(1995)に、及びVλドメインの構
造的レパートリーは、Williamsらの文献、J.Mol.Biol., 264:220-232(1996)に記載されて
いる。これらのすべての文献の内容を、参照により本明細書に組み込む。
【0073】
高ヒト相同性をもつ抗体のVLドメイン中のL1及びL2は、ヒト生殖細胞系列VLドメインに
存在することがわかっているカノニカルフォールド構造の組み合わせと同一である、予測
される又は実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成することができる。非限
定的実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体(例えば、ラクダ科動物由来のVLドメインを
含有する抗体又はそのヒト化されたバリアント)のVλドメイン中のL1及びL2は、次のカノ
ニカルフォールド組み合わせ:11-7、13-7(A,B,C)、14-7(A,B)、12-11、14-11、及び12-12
(Williamsらの文献、J.Mol.Biol.264:220-32(1996)に定義されている通り、また、http:/
/www.bioc.uzh.ch/antibody/Sequences/Germlines/ VBase_hVL.htmlに示されている通り)
のうちの一つを形成することができる。非限定的実施態様では、Vκドメイン中のL1及びL
2は、カノニカルフォールド組み合わせ:2-1、3-1、4-1及び6-1のうちの一つ(Tomlinsonら
の文献、EMBO J.14:4628-38(1995)に定義されている通り、また、http://www.bioc.uzh.c
h/antibody/Sequences/Germlines/VBase_hVK.htmlに示されている通り)を形成することが
できる。
【0074】
さらなる実施態様では、高ヒト相同性をもつ抗体のVLドメインにおけるL1、L2、及びL3
の3つはすべて、実質的にヒトの構造を示すことができる。高ヒト相同性をもつ抗体のVL
ドメインが、ヒトVLとの高い配列同一性/配列相同性の両方を示すこと、また、VLドメイ
ン中の高頻度可変性ループが、ヒトVLとの構造的相同性を示すことが好ましい。
【0075】
一実施態様では、高ヒト相同性をもつGARP抗体のVLドメインは、フレームワーク領域FR
1、FR2、FR3、及びFR4のすべてにわたって、ヒトVLドメインとの80%以上、85%以上、90
%以上、95%以上、97%以上、又は最大99%、さらには100%の配列同一性を示すことが
でき、さらに、高頻度可変性ループL1及び高頻度可変性ループL2は、同じヒトVLドメイン
において天然に存在することがわかっているカノニカルフォールド組み合わせと同じであ
る、予測される又は実際のカノニカルフォールド構造の組み合わせを形成することができ
る。
【0076】
ヒト-コードされたVH/VL対形成に対する最大の配列及び構造的相同性をもつVH/VL対形
成(例えば、ラクダ科動物由来のVH/VL対形成)を含有する、高ヒト相同性をもつ抗体を提
供するために、ヒトVHとの高い配列同一性/配列相同性、またヒトVHの高頻度可変性ルー
プとの構造的相同性を示すVHドメインを、ヒトVLとの高い配列同一性/配列相同性、また
ヒトVLの高頻度可変性ループとの構造的相同性を示すVLドメインと組み合わせることが、
当然、構想される。
【0077】
「免疫特異的」、「に対して特異的」、又は「特異的に結合する」-本明細書で使用す
る場合、抗体は、抗原と、検出可能なレベルで、好ましくは約104M-1以上、又は約105M-1
以上、約106M-1以上、約107M-1以上、又は108M-1以上、又は109M-1以上、又は1010M-1
上の結合定数Kaで反応するならば、その抗原に対して「免疫特異的」である、「に対して
特異的」である、又は「特異的に結合する」と言える。その同種抗原に対する抗体の親和
性はまた、通常、解離定数Kdとして表され、ある種の実施態様では、抗体は、10-4M以下
、約10-5M以下、約10-6M以下、10-7M以下、又は10-8M以下、又は5.10-9M以下、又は10-9M
以下、又は5.10-10M以下、又は10-10M以下のKdで結合するならば、抗原と特異的に結合す
る。抗体の親和性は、従来の技術、例えばScatchard Gらの文献(「小分子及びイオンに対
するタンパク質の誘引力(The attractions of proteins for small molecules and ions.
)」Ann NY Acad Sci 1949;51:660-672)によって記載されている技術を使用して、容易に
決定することができる。抗原、細胞、又はその組織に対する抗体の結合特性は、一般に、
例えば、免疫組織化学的検査(IHC)及び/又は蛍光標識細胞分取(FACS)などの免疫蛍光法に
基づく分析を含めた免疫検出方法を使用して決定及び評価することができる。
【0078】
「単離された核酸」-本明細書で使用する場合、他のゲノムDNA配列、並びに自然な状態
で天然の配列を伴うタンパク質又は複合体、例えばリボソーム及びポリメラーゼなどから
実質的に分離された核酸である。この用語は、その天然に存在する環境から取り出されて
いる核酸配列を包含し、この用語には、組み換え体若しくはクローン化されたDNA単離体
及び化学的に合成された類似体、又は異種系によって生物的に合成された類似体が含まれ
る。実質的に純粋な核酸としては、単離された形態の核酸が挙げられる。当然、これは、
最初の段階で単離された核酸を指し、単離された核酸に人の手で後に付加された遺伝子又
は配列を除外しない。
【0079】
用語「ポリペプチド」は、その従来の意味で、すなわち、アミノ酸の配列として使用さ
れる。ポリペプチドは、特定の長さの生成物に限定されるものではない。ポリペプチドの
定義には、ペプチド、オリゴペプチド、及びタンパク質が含まれ、こうした用語は、他に
特別な指示がない限り、本明細書では、互換的に使用することができる。この用語はまた
、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化など、並び
に当技術分野で公知の他の修飾(天然に存在するものと天然に存在しないもののどちらも)
を指すものではない、又は排除する。ポリペプチドは、タンパク質全体、又はその部分配
列であり得る。本発明の状況では、関心対象の特定のポリペプチドは、CDRを含み、且つ
抗原と結合する能力があるアミノ酸部分配列である。
【0080】
「単離されたポリペプチド」は、その天然の環境の成分から特定及び分離及び/又は回
収されているものである。好ましい実施態様では、単離されたポリペプチドは、(1)ロー
リー法によって決定される場合のポリペプチドの95重量%超まで、最も好ましくは99重量%
超まで;(2)スピニングカップ配列決定装置の使用によって少なくとも15残基のN-末端若し
くは内部アミノ酸配列を得るのに十分な程度まで;又は、(3)クーマシーブルー又は好まし
くは銀染色を使用する、還元又は非還元条件下での、SDS-PAGEによる均一性まで、精製さ
れることとなる。単離されたポリペプチドとしては、組み換え細胞内のインサイチューの
ポリペプチドが挙げられる。ポリペプチドの天然の環境の少なくとも1つの構成要素は、
存在しないこととなるからである。しかし、通常、単離されたポリペプチドは、少なくと
も1つの精製ステップによって調製されることとなる。
【0081】
「同一性」又は「同一の」-本明細書で使用する場合、用語「同一性」又は「同一の」
とは、2以上のポリペプチドの配列間の関係において使用される場合、2以上のアミノ酸残
基のストリング間のマッチの数によって決定されるポリペプチド間の配列関連性の程度を
いう。「同一性」は、特定の数理モデル又はコンピュータプログラム(すなわち、「アル
ゴリズム」)によって指定されるギャップアラインメント(もしあれば)をもつ、より小さ
い2以上の配列の間の同一のマッチの割合を測定する。関連するポリペプチドの同一性は
、公知の方法によって容易に計算することができる。こうした方法としては、限定はされ
ないが、「分子計算生物学(Computational Molecular Biology)」、Lesk,A.M.編、Oxford
University Press、New York、1988;「バイオコンピューティング:インフォマティクス
及びゲノムプロジェクト(Biocomputing:Informatics and Genome Projects)」、Smith,D.
W.編、Academic Press、New York、1993;「配列データのコンピュータ分析(Computer Ana
lysis of Sequence Data)」、Part 1、Griffin, A.M.及びGriffin,H.G.編、Humana Press
、New Jersey、1994;「分子生物学における配列分析(Sequence Analysis in Molecular B
iology)」、von Heinje,G.、Academic Press、1987;配列分析プライマー(Sequence Analy
sis Primer)、Gribskov,M.及びDevereux,J.編、M.Stockton Press、New York、1991;及び
Carilloらの文献、SIAM J.Applied Math.48,1073(1988)に記載されているものが挙げられ
る。同一性を決定するための好ましい方法は、試験される配列間の最大のマッチをもたら
すように設計される。同一性を決定するための方法は、公に入手できるコンピュータプロ
グラム内に記載されている。2つの配列間の同一性を決定するための好ましいコンピュー
タプログラム方法としては、GAP(Devereuxらの文献、Nucl.Acid.Res.\2、387(1984);Gen
etics Computer Group、University of Wisconsin、Madison,Wis.)、BLASTP、BLASTN、及
びFASTA(Altschulらの文献、J.MoI.Biol.215、403-410(1990))を含めた、GCGプログラム
パッケージが挙げられる。BLASTXプログラムは、National Center for Biotechnology In
formation(NCBI)及び他の供給源から公に入手できる(Altschulらの文献、BLAST Manual、
NCB/NLM/NIH Bethesda,Md.20894;Altschulらの文献、前掲)。同一性を決定するために、
周知のSmith Watermanアルゴリズムを使用することもできる。
【0082】
「改変された抗体」-本明細書で使用する場合、用語「改変された抗体」には、天然に
は存在しないものとなるように変更された、合成型の抗体、例えば、少なくとも2つの重
鎖領域を含むが2つの完全な重鎖は含まない抗体(ドメイン欠失された抗体又はミニボディ
(minibody)など);2つ以上の異なる抗原に又は単一の抗原上の異なるエピトープに結合す
るように変更された多重特異型(例えば、二重特異性、三重特異性など)の抗体;scFv分子
に連結された重鎖分子などが含まれる。scFv分子は、当該技術分野で公知であり、例えば
米国特許第5,892,019号に記載されている。さらに、用語「改変された抗体」には、多価
の形態の抗体(例えば、同じ抗原の3つ以上のコピーと結合する三価、四価などの抗体)が
含まれる。別の実施態様では、本発明の改変された抗体は、CH2ドメインを欠く少なくと
も1つの重鎖領域を含み、且つ受容体リガンド対の一員の結合領域を含むポリペプチドの
結合ドメインを含む、融合タンパク質である。
【0083】
「哺乳類」-本明細書で使用する場合、用語「哺乳類」とは、ヒト、家畜、及び動物園
の動物、競技用動物、又は愛玩動物、例えばイヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤ
ギ、ウサギなどを含めた、あらゆる哺乳類をいう。好ましくは、哺乳類はヒトである。
【0084】
「モノクローナル抗体」-本明細書で使用する場合、用語「モノクローナル抗体」とは
、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体をいう。すなわち、集団に含まれる個々の
抗体は、わずかな量で存在可能である、天然に存在する可能性がある変異以外は同一であ
る。モノクローナル抗体は、非常に特異的であり、単一の抗原部位に方向付けられる。さ
らに、様々な決定因子(エピトープ)に方向付けられる様々な抗体を含むポリクローナル抗
体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定因子に方向付けら
れる。モノクローナル抗体は、その特異性に加えて、他の抗体による混入なしで合成する
ことができる点で好都合である。修飾語「モノクローナルの」は、特定の方法による抗体
の産生を必要とするとみなされるべきではない。例えば、本発明において有用であるモノ
クローナル抗体は、Kohlerらの文献、Nature、256:495(1975)によって初めて記載された
ハイブリドーマ方法論によって調製することもできるし、細菌性の、真核の、動物、又は
植物細胞において組み換えDNA方法を使用して作製することもできる(例えば、米国特許第
4,816,567号を参照のこと)。「モノクローナル抗体」は、例えば、Clacksonらの文献、Na
ture,352:624-628(1991)及びMarksらの文献、J.Mol.Biol.,222:581-597(1991)に記載され
ている技術を使用して、ファージ抗体ライブラリから単離することもできる。
【0085】
「天然の配列」-本明細書で使用する場合、用語「天然の配列」とは、ポリヌクレオチ
ドが、天然由来のポリヌクレオチドと同じヌクレオチド配列を有するものであることをい
う。「天然の配列」ポリペプチドは、天然由来の(例えば任意の種からの)ポリペプチド(
例えば抗体)と同じアミノ酸配列を有するものである。こうした天然の配列ポリヌクレオ
チド及びポリペプチドは、自然界から単離する、又は組み換え又は合成手段によって生成
することができる。
【0086】
ポリヌクレオチド「バリアント」は、この用語が本明細書で使用される場合、1以上の
置換、欠失、付加、及び/又は挿入において、本明細書に具体的に開示されたポリヌクレ
オチドとは一般的に異なるポリヌクレオチドである。こうしたバリアントは、天然に存在
するものであってもよいし、例えば、本明細書に記載する通りに及び/又は当技術分野で
周知のいくつかの技術のいずれかを使用して、本発明の1以上のポリヌクレオチド配列を
改変し、コードされたポリペプチドの1以上の生体活性を評価することによって、合成に
よって産生することもできる。
【0087】
ポリペプチド「バリアント」は、この用語が本明細書で使用される場合、1以上の置換
、欠失、付加、及び/又は挿入において、本明細書に具体的に開示されたポリペプチドと
は一般的に異なるポリペプチドである。こうしたバリアントは、天然に存在するものであ
ってもよいし、例えば、本明細書に記載する通りに及び/又は当技術分野で周知のいくつ
かの技術のいずれかを使用して、本発明の1以上の先述のポリペプチド配列を改変し、ポ
リペプチドの1以上の生体活性を評価することによって、合成によって産生することもで
きる。
【0088】
改変は、本発明のポリヌクレオチド及びポリペプチドの構造内で施され、望ましい特性
をもつバリアント又は誘導体ポリペプチドをコードする機能性分子をさらに得ることがで
きる。本発明のポリペプチドの同等の、さらには改良されたバリアント又は領域を作製す
るために、ポリペプチドのアミノ酸配列を変更することが所望される場合、当業者は一般
的に、コードするDNA配列の1以上のコドンを変化させることとなる。例えば、ある種のア
ミノ酸は、他のポリペプチド(例えば抗原)又は細胞と結合するその能力の認識可能な損失
を伴わずに、タンパク質構造内で、他のアミノ酸と置換することができる。タンパク質の
生体機能活性を定めるのは、タンパク質の結合能力及び性質であるので、タンパク質配列
、及び当然その基になるDNAコード配列において、ある種のアミノ酸配列の置換を施し、
それでも類似の特性をもつタンパク質を得ることができる。したがって、開示された組成
のペプチド配列、又は、前記ペプチドをコードする対応するDNA配列において、その生体
有用性又は活性の認識可能な損失を伴わずに、様々な変化を施すことができることが想定
される。多くの場合、ポリペプチドバリアントは、1以上の保存的置換を含有することと
なる。
【0089】
「保存的置換」は、アミノ酸が、ペプチド化学の分野の技術者によって、ポリペプチド
の二次構造及び疎水性親水性(hydropathic nature)が実質的に変化しないことが予測され
るように、類似の特性を有する別のアミノ酸と置換されたものである。先に概要を述べた
通り、したがって、アミノ酸置換は一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的類似性、例えば
、その疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいている。前述の特性のいくつかを考慮
に入れる置換の例は、当業者に周知であり、以下が挙げられる:アルギニン及びリシン;グ
ルタミン酸及びアスパラギン酸;セリン及びトレオニン;グルタミン及びアスパラギン;並
びにバリン、ロイシン、及びイソロイシン。アミノ酸置換は、残基の極性類似性、電荷、
溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性に基づいて、さらに行うことができる。例
えば、負の電荷をもつアミノ酸としては、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられ;
正の電荷をもつアミノ酸としては、リジン及びアルギニンが挙げられ;類似の親水値を有
する非荷電の極性頭部基をもつアミノ酸としては、ロイシン、イソロイシン、及びバリン
;グリシン及びアラニン;アスパラギン及びグルタミン;並びにセリン、トレオニン、フェ
ニルアラニン、及びチロシンが挙げられる。保存的変化を表すことができる他の群のアミ
ノ酸としては、以下が挙げられる:(1)ala、pro、gly、glu、asp、gln、asn、ser、thr;(2
)cys、ser、tyr、thr;(3)val、ile、leu、met、ala、phe;(4)lys、arg、his;及び(5)phe
、tyr、trp、his。バリアントは、さらに又は代わりに、非保存的変化を含有することが
できる。好ましい実施態様では、バリアントポリペプチドは、5個又はそれより少ないア
ミノ酸の置換、欠失、又は付加により、天然の配列とは異なる。バリアントはさらに(又
は代わりに)、例えば、ポリペプチドの免疫原性、二次構造、及び疎水性親水性に対する
最小限の影響を有するアミノ酸の欠失又は付加によって改変することができる。
【0090】
「医薬として許容し得る賦形剤」-本明細書で使用する場合、用語「医薬として許容し
得る賦形剤」には、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌及び抗真菌剤、
等張剤、及び吸収遅延剤などが含まれる。前記賦形剤は、動物、好ましくはヒトに投与さ
れた場合に、副作用、アレルギー反応、又は他の有害反応をもたらさない。ヒト投与のた
めには、製剤は、FDA Office of Biologics基準によって必要とされる通り、無菌性、発
熱性、及び一般的な安全及び純度基準を満たすべきである。
【0091】
「特異性」-本明細書で使用する場合、用語「特異性」とは、所与の標的、例えばGARP
と特異的に結合する(例えば免疫反応する)能力をいう。ポリペプチドは、単一特異性であ
り、標的に特異的に結合する1以上の結合部位を含有していてもよいし、多重特異性であ
り、同じ又は異なる標的に特異的に結合する2以上の結合部位を含有していてもよい。一
実施態様では、本発明の抗体は、2以上の標的に特異的である。例えば、一実施態様では
、本発明の多重特異性結合分子は、腫瘍細胞上に発現されたGARP及び第二の分子に結合す
る。腫瘍細胞上に発現された抗原に結合する抗原結合部位を含む抗体の例は、当該技術分
野において公知であり、こうした抗体由来の1以上のCDRを、本発明の抗体に含めることが
できる。
【0092】
「合成の」-本明細書で使用する場合、ポリペプチドに関する用語「合成の」には、天
然には存在しないアミノ酸配列を含むポリペプチドが含まれる。例えば、天然には存在し
ないポリペプチドは、天然に存在するポリペプチドの改変形態である(例えば、付加、置
換、又は欠失などの変異を含む)、又は、自然界では自然に連結されない第二のアミノ酸
配列(これは天然に存在するものでも存在しないものでもよい)に、アミノ酸の直鎖配列で
連結された第一のアミノ酸配列(これは天然に存在するものでも存在しないものでもよい)
を含むポリペプチドである。
【0093】
「単鎖Fv」(「sFv」又は「scFv」としても省略される)-本明細書で使用する場合、用語
「単鎖Fv」、「sFv」、又は「scFv」は、単一のポリペプチド鎖に接続されたVH及びVL抗
体ドメインを含む抗体断片である。好ましくは、sFvポリペプチドは、sFvが抗原結合のた
めに所望される構造を形成するのを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペ
プチドリンカーをさらに含む。sFvの概説については、Pluckthunの文献、「モノクローナ
ル抗体の薬理学(The Pharmacology of Monoclonal Antibodies)」、vol.113、Rosenburg
及びMoore編.、Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994);Borrebaeckの文献、1995(
下記)を参照のこと。
【0094】
「可変領域」又は「可変ドメイン」-本明細書で使用する場合、用語「可変」とは、可
変ドメインVH及びVLの特定の領域の配列が、抗体間で大きく異なるという事実をいい、そ
れぞれ個々の抗体の、その標的抗原に対する結合及び特異性において使用される。しかし
、可変性は、抗体の可変ドメイン全体を通して均一に分布していない。可変性は、抗原結
合部位の一部を形成しているVLドメイン及びVHドメインのそれぞれにおける「高頻度可変
性ループ」と呼ばれる3つのセグメントに集中している。Vλ軽鎖ドメインの第一、第二、
及び第三の高頻度可変性ループは、本明細書では、L1(λ)、L2(λ)及びL3(λ)と称され、
且つVLドメイン中の残基24-33(L1(λ)、9、10、又は11個のアミノ酸残基からなる)、49-5
3(L2(λ)、3個の残基からなる、)、及び90-96(L3(λ)、6個の残基からなる)を含むと定義
することができる(Moreaらの文献、Methods, 20:267-279(2000))。Vκ軽鎖ドメインの第
一、第二及び、第三の高頻度可変性ループは、本明細書では、L1(κ)、L2(κ)及びL3(κ)
と称され、且つVLドメイン中の残基25-33(L1(κ)、6、7、8、11、12、又は13個の残基か
らなる)、49-53(L2(κ)、3個の残基からなる)、及び90-97(L3(κ)、6個の残基からなる)
を含むと定義することができる(Moreaらの文献、Methods, 20:267-279(2000))。VHドメイ
ンの第一、第二、及び第三の高頻度可変性ループは、本明細書では、H1、H2、及びH3と称
され、且つVHドメイン中の残基25-33(H1;7、8又は9個の残基からなる)、52-56(H2;3又は4
個の残基からなる)、及び91-105(H3;長さは非常にばらつきがある)を含むと定義すること
ができる(Moreaらの文献、Methods, 20:267-279(2000))。別段の指示がない限り、用語L1
、L2及びL3とは、それぞれ、VLドメインの第一、第二、及び第三の高頻度可変性ループを
いい、VκとVλの両アイソタイプから得られる高頻度可変性ループを包含している。用語
H1、H2及びH3とは、それぞれ、VHドメインの第一、第二、及び第三の高頻度可変性ループ
をいい、γ、ε、δ、α、又はμを含めた公知の重鎖アイソタイプのいずれかから得られ
る高頻度可変性ループを包含している。高頻度可変性ループL1、L2、L3、H1、H2、及びH3
はそれぞれ、下に定義する通り、「相補性決定領域」又は「CDR」の一部を含むことがで
きる。
【0095】
「結合価」-本明細書で使用する場合、用語「結合価」とは、ポリペプチド中の潜在的
標的結合部位の数をいう。各標的結合部位は、1つの標的分子、又はある標的分子上の特
異的部位に特異的に結合する。あるポリペプチドが、2つ以上の標的結合部位を含む場合
、各標的結合部位は、同じ又は異なる分子に特異的に結合することができる(例えば、異
なるリガンド若しくは異なる抗原、又は同じ抗原上の異なるエピトープに結合することが
できる)。対象の結合分子は、ヒトGARP分子に特異的な少なくとも1つの結合部位を有する
ことが好ましい。特定の実施態様では、本明細書で提供されるGARP抗体は、少なくとも二
価であり得る。
【0096】
「治療すること」又は「治療」又は「軽減」-本明細書で使用する場合、用語「治療す
ること」又は「治療」又は「軽減」とは、治療的処置と予防又は防御手段との両方をいう
;ここでは、目的は、標的とされる状態又は障害を予防する又は失速させる(軽減する)こ
とである。治療を必要とする者としては、障害を既に患う者、並びに障害に罹患しやすい
者、又は障害が予防されるべき者が挙げられる。対象又は哺乳類は、本発明の方法に従っ
て、治療量の抗体を与えられた後に、患者が次のものの1以上の観察可能な及び/又は測定
可能な低下又は非存在を示すならば、感染症に関して成功裏に治療される:病原性細胞の
数の減少;病原性である全細胞の割合の低下;及び/又は特定の疾患又は状態に伴う1以上の
症状の、ある程度の軽減;罹患率及び死亡率の低下、及び生活の質の問題の向上。疾患の
成功裏の治療及び改善を評価するための先述のパラメータは、医師になじみの深い慣例的
手順によって容易に測定可能である。
【0097】
「TGF-β」-本明細書で使用する場合、用語TGF-βとは、TGF-β1、TGF-β2、及びTGF-
β3と名付けられた3種のアイソフォームをいう。これらのTGF-βアイソフォームのペプチ
ド構造は、非常に類似している(70~80%の程度での相同性)。これらは、すべて、大きな
タンパク質前駆体;TGF-β1(GenBank Access No:NM_000660)(390アミノ酸を含有する)、及
びTGF-β2(GenBank Access No:NM_001135599及びNM_003238)及びTGF-β3(GenBank Access
No:XM_005268028)(それぞれ412アミノ酸を含有する)としてコードされる。これらはそれ
ぞれ、20~30アミノ酸のN-末端シグナルペプチド(これは、細胞からの分泌のために必要
とされる)、プロ領域(潜在関連ペプチドすなわちLAPと称される)、及び112~114アミノ酸
C-末端領域(これは、タンパク質切断によるプロ領域からの放出後に、成熟TGF-β分子と
なる)を有する。
【0098】
(詳細な説明)
本発明の一目的は、TGF-βの存在下でのGARPに対するタンパク質結合である。本発明の
別の目的は、抗原結合ドメインであって、TGF-βの存在下でGARPと特異的に結合する前記
抗原結合ドメインを含むタンパク質である。
【0099】
一実施態様では、前記タンパク質は、TGF-βの存在下でのみGARPと結合する
【0100】
GARPは、Leucin Rich Repeat Containing 32(LRRC32)とも呼ばれ、また、ロイシンリッ
チリピート(Leucin Rich Repeat)ファミリーに属する。本発明(配列番号:1)(GenBank受託
番号_001128922)のヒトGARPタンパク質転写産物バリアント2の完全なアミノ酸配列は、
【化21】
である。
【0101】
一実施態様では、本発明のタンパク質は、GARPがTGF-βと複合体形成される場合に、GA
RPと結合する。
【0102】
別の実施態様では、本発明のタンパク質は、GARPが潜在型TGF-βと複合体形成される場
合に、GARPと結合する。
【0103】
別の実施態様では、本発明のタンパク質は、GARPとTGF-βとの複合体と結合する。
【0104】
一実施態様では、本発明のタンパク質は、GARPと、TGF-β1;TGF-β2、アイソフォーム1
;TGF-β2、アイソフォーム2;TGF-β3との複合体と結合する。好ましくは、本発明のタン
パク質は、GARPとTGF-β1との複合体と結合する。
【0105】
別の実施態様では、本発明のタンパク質は、GARPと潜在型TGF-βとの複合体と結合する
【0106】
用語「潜在型TGF-β」は、本明細書で使用する場合、そのC-末端断片、又は成熟TGF-β
1が、LAPとして公知であるN-末端断片と非共有的に結合されたままである複合体を含む。
【0107】
別の実施態様では、本発明のタンパク質は、10-10M未満のKD(抗体とその抗原との間の
平衡解離定数)で、GARPと潜在型TGF-βとの複合体と結合する。
【0108】
一実施態様では、前記タンパク質は、全長抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、二量体単鎖抗
体、Fv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、二量体抗体、三量体抗体
、四量体抗体からなる群から選択される抗体分子である。
【0109】
別の実施態様では、前記タンパク質は、ユニボディ、ドメイン抗体、及びナノボディか
らなる群から選択される抗体断片である。
【0110】
別の実施態様では、前記タンパク質は、アフィボディ、アフィリン、アフィチン、アド
ネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、ヴァ
ーサボディ、及びデュオカリンからなる群から選択される抗体模倣体である。
【0111】
ドメイン抗体は、当技術分野で周知であり、これは、抗体の重鎖又は軽鎖のいずれかの
可変領域に相当する、抗体の最も小さい機能性結合単位をいう。
【0112】
ナノボディは、当技術分野で周知であり、これは、天然に存在する重鎖抗体の固有の構
造及び機能特性を含有する、抗体由来の治療用タンパク質をいう。これらの重鎖抗体は、
1つの可変ドメイン(VHH)と2つの定常ドメイン(CH2及びCH3)を含有する。
【0113】
ユニボディは、当技術分野で周知であり、これは、IgG4抗体のヒンジ領域を欠く抗体断
片をいう。ヒンジ領域の欠失によって、従来のIgG4抗体の大きさの本質的に半分であり、
且つIgG4抗体の二価の結合領域ではなく一価の結合領域を有する分子がもたらされる。
【0114】
アフィボディは、当技術分野で周知であり、これは、ブドウ球菌プロテインAのIgG結合
ドメインの1つに由来する58アミノ酸残基のタンパク質ドメインに基づく親和性タンパク
質をいう。
【0115】
DARPin(設計されたアンキリンリピートタンパク質(Ankyrin Repeat Protein))は、当技
術分野で周知であり、これは、非抗体ポリペプチドの結合能力を活用するために開発され
た、抗体模倣体DRP(設計されたリピートタンパク質)技術をいう。
【0116】
アンチカリンは、当技術分野で周知であり、これは、結合特異性がリポカリンに由来す
る、別の抗体模倣技術をいう。アンチカリンは、デュオカリンと呼ばれる二重標的タンパ
ク質として構成することもできる。
【0117】
アビマーは、当技術分野で周知であり、これは、別の抗体模倣技術をいう。ヴァーサボ
ディは、当技術分野で周知であり、これは、別の抗体模倣技術をいう。これらは、通常の
タンパク質が有する疎水性コアの代わりに高ジスルフィド密度のスキャフォールドを形成
する、>15%システインを有する3~5 kDaの小さなタンパク質である。
【0118】
別の実施態様では、前記タンパク質は、治療薬に結合させた抗体又はその断片を含む免
疫複合体である。
【0119】
別の実施態様では、前記タンパク質は、造影剤に結合させた本発明のタンパク質を含む
複合体である。前記タンパク質は、例えば、造影用途のために使用されるであろう。
【0120】
本発明の別の目的は、GARPと結合し、TGF-βシグナル伝達を阻害するタンパク質である
【0121】
一実施態様では、前記タンパク質は、GARPがTGF-βと複合体形成される場合に、GARPと
結合する。
【0122】
別の実施態様では、前記タンパク質は、GARPが潜在型TGF-βと複合体形成される場合に
GARPと結合する。
【0123】
別の実施態様では、前記タンパク質は、GARPとTGF-βとの複合体と結合する。
【0124】
別の実施態様では、前記タンパク質は、GARPと潜在型TGF-βとの複合体と結合する。
【0125】
一実施態様では、前記タンパク質は、全長抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、二量体単鎖抗
体、Fv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、二量体抗体、三量体抗体
、四量体抗体からなる群から選択される抗体分子である。
【0126】
別の実施態様では、前記タンパク質は、ユニボディ、ドメイン抗体、及びナノボディか
らなる群から選択される抗体断片である。
【0127】
別の実施態様では、前記タンパク質は、アフィボディ、アフィリン、アフィチン、アド
ネクチン、アトリマー、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、ヴァ
ーサボディ、及びデュオカリンからなる群から選択される抗体模倣体である。
【0128】
一実施態様では、前記タンパク質は、TGF-βシグナル伝達を阻害する抗hGARP(抗ヒトGA
RP)抗体又はその抗原結合断片である。
【0129】
一実施態様では、前記タンパク質は、放出されることとなる活性なTGF-βを妨げる又は
阻害する、又は、Tregからの成熟TGF-βの放出を阻害する。
【0130】
別の実施態様では、前記タンパク質は、成熟TGF-βがTGF-β受容体と結合するのを阻害
する又は妨げる。
【0131】
別の実施態様では、前記タンパク質は、TGF-β活性、及び/又はTGF-β受容体シグナル
伝達経路からの分子の活性化を阻害する。
【0132】
本明細書で使用する場合、用語「阻害する」は、タンパク質が、TGF-βシグナル伝達、
又はTregからの成熟TGF-βの放出、又は成熟TGF-βのTGF-β受容体への結合、又はTGF-β
活性、及び/又はTGF-β受容体シグナル伝達経路からの分子の活性化を、阻止する、低下
させる、妨げる、又は中和する能力があることを意味する。
【0133】
一実施態様では、前記タンパク質は、モノクローナル抗体である。
【0134】
別の実施態様では、前記タンパク質は、ポリクローナル抗体である。
【0135】
一実施態様では、前記タンパク質は、立体構造エピトープと結合する。
【0136】
一実施態様では、前記立体構造エピトープは、hGARPの1以上のアミノ酸を含む。
【0137】
別の実施態様では、前記立体構造エピトープは、GARPが潜在型TGF-βと複合体形成され
ている結果として改変されたGARPのエピトープを含む。別の実施態様では、前記立体構造
エピトープは、hGARPのアミノ酸及び潜在型TGF-βのアミノ酸を含む。
【0138】
別の実施態様では、前記立体構造エピトープは、混合型の立体構造エピトープであり、
GARPとTGF-βの両方からのアミノ酸を含む。
【0139】
別の実施態様では、前記立体構造エピトープは、結合誘発型の立体構造エピトープであ
り、GARPのみ由来のアミノ酸を含むが、TGF-βが存在する場合には、異なる高次構造をと
る。
【0140】
一実施態様では、前記エピトープは、hGARPアミノ酸配列(配列番号:1)の101から141残
基までの1以上の残基を含む。これらの101から141残基は、
【化22】
に示した通りである。
【0141】
本発明の別の実施態様では、前記エピトープは、残基137、138、及び139:hGARPアミノ
酸配列(配列番号:1)のYSGを含む。
【0142】
本発明の別の実施態様では、前記エピトープは、残基137、138、及び139:hGARPアミノ
酸配列(配列番号:1)のYSGを含み、且つTGF-βの存在を必要とする。
【0143】
本発明の別の実施態様では、前記エピトープは、残基137、138、及び139:hGARPアミノ
酸配列(配列番号:1)のYSGと、残基137、138、及び139:配列番号:1のYSGのN-末端及び/又
はC-末端における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、1
9、20の隣接する残基を含む。
【0144】
本発明の別の実施態様では、前記エピトープは、残基137、138、及び139:hGARPアミノ
酸配列(配列番号:1)のYSGと、残基137、138、及び139:配列番号:1のYSGのN-末端及び/又
はC-末端における1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、1
9、20の隣接する残基を含み、且つTGF-βの存在を必要とする。
【0145】
本発明の一実施態様では、本発明のタンパク質は、好ましくはhGARPの領域101~141内
のエピトープと結合して、GARPからの潜在型TGF-βの放出を阻害する。
【0146】
当業者は、例えばTGF-β受容体シグナル伝達経路からの分子の活性化を測定することに
よって、タンパク質がTGF-βシグナル伝達を阻害する能力を決定することができる。こう
した試験の一例は、一般的に、(本発明の実施例2に示す通り)SMAD2のリン酸化の測定であ
る。
【0147】
本発明の一目的は、重鎖の可変領域が、次のCDR:
【化23】
の少なくとも1つを含む、ヒトGARPに対する抗体又はその抗原結合断片である。
【0148】
本発明の別の目的は、軽鎖の可変領域が、次のCDR:
【化24】
の少なくとも1つを含む、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片である。
【0149】
本発明の別の目的は、重鎖の可変領域が、次のCDR:
【化25】
の少なくとも1つを含む、ヒトGARPに対する抗体又はその抗原結合断片である。
【0150】
本発明の別の目的は、軽鎖の可変領域が、次のCDR:
【化26】
(ここでは、X1はS又はTであり、X2はS又はVであり、X3はY又はFである);
【化27】
(ここでは、X1はG又はRであり;X2はA又はTであり;X3はR又はIであり;X4はL又はPであり;X
5はQ又はKである);及び
【化28】
(ここでは、X1はD、A、Y、又はVであり;X2はA、L、又はVであり;X3はV又はPである);
の少なくとも1つを含む、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片である。
【0151】
本発明の別の目的は、重鎖の可変領域が、配列番号:13のVH-CDR1、配列番号:14のVH-CD
R2、及び配列番号:15のVH-CDR3を含み、且つ、軽鎖の可変領域が、配列番号:19;配列番号
:22;配列番号:25;配列番号:28;又は配列番号:31に示した通りのVL-CDR1の少なくとも1つ;
配列番号:20;配列番号:23;配列番号:26;配列番号:29;又は配列番号:32に示した通りのVL-
CDR2の少なくとも1つ;及び配列番号:21;配列番号:24;配列番号:27;配列番号:30;又は配列
番号:33に示した通りのVL-CDR3の少なくとも1つを含む、抗hGARP抗体又はその抗原結合断
片である。
【0152】
本発明の別の目的は、軽鎖の可変領域が、次のCDR:
【化29】
の少なくとも1つを含む、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片である。
【0153】
本発明の別の目的は、軽鎖の可変領域が、次のCDR:
【化30】
の少なくとも1つを含む、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片である。
【0154】
本発明の別の目的は、軽鎖の可変領域が、次のCDR:
【化31】
の少なくとも1つを含む、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片である。
【0155】
本発明の別の目的は、軽鎖の可変領域が、次のCDR:
【化32】
の少なくとも1つを含む、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片である。
【0156】
本発明の別の目的は、軽鎖の可変領域が、次のCDR:
【化33】
の少なくとも1つを含む、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片である。
【0157】
本発明の一実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、ヒト抗体の、CH1ドメ
イン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、及びCH3ドメイン、特に、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4
を含むことができる。
【0158】
本発明の一実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その重鎖内に、次のC
DR:
【化34】
を含む。
【0159】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その重鎖内に、次
のCDR:
【化35】
を含む。
【0160】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その軽鎖内に、次
のCDR:
【化36】
を含む。
【0161】
本発明の一実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その重鎖内に、次のC
DR:
【化37】
を含む。
【0162】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その軽鎖内に、次
のCDR:
【化38】
(ここでは、X1はS又はTであり、X2はS又はVであり、X3はY又はFである);
【化39】
(ここでは、X1はG又はRであり;X2はA又はTであり;X3はR又はIであり;X4はL又はPであり;X
5はQ又はKである);及び
【化40】
(ここでは、X1はD、A、Y、又はVであり;X2はA、L、又はVであり;X3はV又はPである)
を含む。
【0163】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その軽鎖内に、次
のCDR:
【化41】
を含む。
【0164】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その軽鎖内に、次
のCDR:
【化42】
を含む。
【0165】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その軽鎖内に、次
のCDR:
【化43】
を含む。
【0166】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その軽鎖内に、次
のCDR:
【化44】
を含む。
【0167】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、その軽鎖内に、次
のCDR:
【化45】
を含む。
【0168】
本発明によれば、重鎖及び軽鎖のCDR1、2、及び3のいずれかは、対応する配列番号で列
挙される特定のCDR又はCDRのセットと少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、9
6%、97%、98%、99%の同一性を有するアミノ酸配列を有すると特徴付けることができる。
【0169】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号:2、3、及び4に示した通りの重鎖CDR 1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CD
R3)アミノ酸配列;及び
(ii)それぞれ配列番号:5、6、及び7に示した通りの軽鎖CDR 1、2、及び3(VL-CDR1、VL-CD
R2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を有する抗体からなる群から選択され、
ここでは任意に、前記配列のいずれかにおける1、2、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、
別のアミノ酸によって置換され得る。
【0170】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号:52、3、及び4に示した通りの重鎖CDR 1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-C
DR3)アミノ酸配列;及び
(ii)それぞれ配列番号:5、6、及び7に示した通りの軽鎖CDR 1、2、及び3(VL-CDR1、VL-CD
R2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を有する抗体からなる群から選択され、
ここでは任意に、前記配列のいずれかにおける1、2、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、
別のアミノ酸によって置換され得る。
【0171】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号:13、14、及び15に示した通りの重鎖CDR 1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH
-CDR3)アミノ酸配列;及び
(ii)それぞれ配列番号:16、17、及び18に示した通りの軽鎖CDR 1、2、及び3(VL-CDR1、VL
-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を有する抗体からなる群から選択され、
ここでは任意に、前記配列のいずれかにおける1、2、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、
別のアミノ酸によって置換され得る。
【0172】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号:13、14、及び15に示した通りの重鎖CDR 1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH
-CDR3)アミノ酸配列;及び
(ii)それぞれ配列番号:19、20、及び21に示した通りの軽鎖CDR 1、2、及び3(VL-CDR1、VL
-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を含み、
ここでは任意に、前記配列のいずれかにおける1、2、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、
別のアミノ酸によって置換され得る。
【0173】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号:13、14、及び15に示した通りの重鎖CDR 1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH
-CDR3)アミノ酸配列;及び
(ii)それぞれ配列番号:22、23、及び24に示した通りの軽鎖CDR 1、2、及び3(VL-CDR1、VL
-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を含み、
ここでは任意に、前記配列のいずれかにおける1、2、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、
別のアミノ酸によって置換され得る。
【0174】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号:13、14、及び15に示した通りの重鎖CDR 1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH
-CDR3)アミノ酸配列;及び
(ii)それぞれ配列番号:25、26、及び27に示した通りの軽鎖CDR 1、2、及び3(VL-CDR1、VL
-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を含み、
ここでは任意に、前記配列のいずれかにおける1、2、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、
別のアミノ酸によって置換され得る。
【0175】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号:13、14、及び15に示した通りの重鎖CDR 1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH
-CDR3)アミノ酸配列;及び
(ii)それぞれ配列番号:28、29、及び30に示した通りの軽鎖CDR 1、2、及び3(VL-CDR1、VL
-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を含み、
ここでは任意に、前記配列のいずれかにおける1、2、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、
別のアミノ酸によって置換され得る。
【0176】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
(i)配列番号:13、14、及び15に示した通りの重鎖CDR 1、2、及び3(VH-CDR1、VH-CDR2、VH
-CDR3)アミノ酸配列;及び
(ii)それぞれ配列番号:31、32、及び33に示した通りの軽鎖CDR 1、2、及び3(VL-CDR1、VL
-CDR2、VL-CDR3)アミノ酸配列
を含み、
ここでは任意に、前記配列のいずれかにおける1、2、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、
別のアミノ酸によって置換され得る。
【0177】
一実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、
【化46】
のアミノ酸配列を含む可変の重鎖CDR3、又はその配列バリアントを含み、ここでは、該配
列バリアントは、列挙された配列における1、2、又は3個のアミノ酸置換を含む。
【0178】
一実施態様では、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片は、配列番号:15のアミノ酸配列を
含む可変の重鎖CDR3、又はその配列バリアントを含み、ここでは、該配列バリアントは、
列挙された配列における1、2、又は3個のアミノ酸置換を含む。
【0179】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:8の重鎖可変領域及び配列・配列番号:9の軽鎖可
変領域を含む、抗hGARP抗体MHGARP8又はその抗原結合断片である。
【化47】
【0180】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:50の重鎖可変領域及び配列・配列番号:51の軽鎖
可変領域を含む、抗hGARP抗体MHGARP8又はその抗原結合断片である。ここでは、配列番号
:50及び配列番号:51は、それぞれ、シグナルペプチド配列が除去された配列番号:8及び配
列番号:9に相当する。
【化48】
【0181】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:34の重鎖可変領域及び配列・配列番号:35の軽鎖
可変領域を含む、抗hGARP抗体 LHG10又はその抗原結合断片である。
【化49】
【0182】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:34の重鎖可変領域及び配列・配列番号:36の軽鎖
可変領域を含む、抗hGARP抗体LHG10.3又はその抗原結合断片である。
【化50】
【0183】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:34の重鎖可変領域及び配列・配列番号:37の軽鎖
可変領域を含む、抗hGARP抗体LHG10.4又はその抗原結合断片である。
【化51】
【0184】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:34の重鎖可変領域及び配列・配列番号:38の軽鎖
可変領域を含む、抗hGARP抗体 LHG10.5又はその抗原結合断片である。
【化52】
【0185】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:34の重鎖可変領域及び配列・配列番号:39の軽鎖
可変領域を含む、その抗hGARP抗体LHG10.6である。
【化53】
【0186】
本発明の一実施態様では、本明細書で先に記載した通りの重鎖又は軽鎖可変領域の1、2
、3個、又はそれ以上のアミノ酸は、別のアミノ酸によって置換され得る。
【0187】
別の実施態様では、本発明の抗体は、本明細書に記載したMHGARP8抗体のアミノ酸配列
と相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖及び軽鎖可変領域を含む。ここでは、これらの抗
体は、本発明のタンパク質の所望の機能特性を保持する。
【0188】
本発明の一実施態様では、本発明の抗hGARPの重鎖可変領域の配列は、配列番号:8との
、又は配列番号:50との60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一
性を有する配列を包含する。
【0189】
本発明の一実施態様では、本発明の抗hGARPの軽鎖可変領域の配列は、配列番号:9との
、又は配列番号:51との60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一
性を有する配列を包含する。
【0190】
別の実施態様では、本発明の抗体は、本明細書に記載したLHG10抗体のアミノ酸配列と
相同であるアミノ酸配列を含む、重鎖及び軽鎖可変領域を含む。ここでは、これらの抗体
は、本発明のタンパク質の所望の機能特性を保持する。
【0191】
本発明の一実施態様では、本発明の抗hGARPの重鎖可変領域の配列は、配列番号:34との
60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を有する配列を包含
する。
【0192】
本発明の一実施態様では、本発明の抗hGARPの軽鎖可変領域の配列は、配列番号:35;36;
37;38、又は39との60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性を
有する配列を包含する。
【0193】
本発明の抗体のいずれか、例えばMHGARP8又はLHG10では、特定の可変領域及びCDR配列
は、保存的配列改変を含むことができる。保存的配列改変とは、そのアミノ酸配列を含有
する抗体の結合特性に有意に影響を与えない又は変化させないアミノ酸改変をいう。こう
した保存的改変としては、アミノ酸置換、付加、及び欠失が挙げられる。改変は、部位特
異的変異導入及びPCRが介在する変異導入などの当技術分野で公知の標準の技術によって
、本発明の抗体に導入することができる。保存的アミノ酸置換は、一般的に、アミノ酸残
基が、類似の物理化学特性をもつ側鎖を有するアミノ酸残基と置き換えられるものである
。特定の可変領域及びCDR配列は、1、2、3、4個、又はそれ以上のアミノ酸挿入、欠失、
又は置換を含むことができる。置換が行われる場合、好ましい置換は、保存的改変であろ
う。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当技術分野で定義されている。こ
れらのファミリーとしては、塩基性側鎖をもつアミノ酸(例えば、リジン、アルギニン、
ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、無電荷極性側鎖(例え
ば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン
、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、
プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、
イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン
、ヒスチジン)が挙げられる。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1以上のアミノ酸
残基は、同じ側鎖ファミリーからの他のアミノ酸残基と置き換えることができ、また、変
更された抗体を、本明細書に記載した分析を使用して、保持された機能(すなわち、本明
細書で示した性質について試験することができる。抗hGARP抗体は、CDRがラクダ科動物抗
体(例えば、hGARPでの能動免疫化によって産生されたラクダ科動物抗hGARP抗体)に由来す
る、CDR移植された抗体でもあり得る。
【0194】
一実施態様では、本発明は、MHGARP8又はLHG10抗体と本質的に同じエピトープと結合す
る抗体を提供する。
【0195】
本発明のいくつかの実施態様では、VH及びVLドメイン又はそれらのCDRを含む抗hGARP抗
体は、CH1ドメイン及び/又はCLドメインを含むことができ、そのアミノ酸配列は、完全に
又は実質的にヒトである。本発明の抗原結合ポリペプチドが、ヒトへの治療的使用を目的
とする抗体である場合、該抗体の定常領域全体、又はその少なくとも一部分が、完全に又
は実質的にヒトのアミノ酸配列を有することが典型的である。したがって、CH1ドメイン
、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン、及びCLドメイン(及び存在するならばCH4ドメ
イン)の1つ以上又は任意の組み合わせは、そのアミノ酸配列に関して、完全に又は実質的
にヒトであり得る。好都合には、CH1ドメイン、ヒンジ領域、CH2ドメイン、CH3ドメイン
、及びCLドメイン(及び存在するならばCH4ドメイン)はすべて、完全に又は実質的にヒト
のアミノ酸配列を有することができる。ヒト化された抗体若しくはキメラ抗体、又は抗体
断片の定常領域という状況では、用語「実質的にヒトの」とは、ヒト定常領域との少なく
とも90%、又は少なくとも95%、又は少なくとも97%、又は少なくとも99%のアミノ酸配列同
一性をいう。
【0196】
本明細書の文脈では、用語「ヒトアミノ酸配列」とは、生殖細胞系列、再構成された及
び体細胞変異した遺伝子を含めたヒト免疫グロブリン遺伝子によってコードされるアミノ
酸配列をいう。本発明はまた、「完全にヒトの」ヒンジ領域の存在が明確に必要とされる
実施態様を除いて、ヒト配列に関する1以上のアミノ酸付加、欠失、又は置換によって変
更されている「ヒト」配列の定常ドメインを含むポリペプチドを想定する。本発明の抗hG
ARP抗体中の「完全にヒトの」ヒンジ領域の存在は、免疫原性を最小限にすることと抗体
の安定性を最適化することの両方にとって有益であり得る。重鎖及び/又は軽鎖の定常領
域内、特にFc領域内に、1以上のアミノ酸置換、挿入、又は欠失を施すことができると考
えられる。アミノ酸置換は、置換されるアミノ酸の、異なる天然に存在するアミノ酸との
、又は非天然又は改変されたアミノ酸との置き換えをもたらすことができる。例えばグリ
コシル化パターンの変化(例えば、N-又はO結合型グリコシル化部位の付加又は欠失による
)などの、他の構造的改変も可能である。抗体の使用目的によっては、本発明の抗体を、F
c受容体に対するその結合特性に関して改変すること、例えば、エフェクター機能を調節
することが望ましい可能性がある。例えば、システイン残基(1つ又は複数)を、Fc領域に
導入し、それによって、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にすることが
できる。このようにして産生したホモ二量体抗体は、改善されたエフェクター機能を有す
ることができる。Caronらの文献、J.Exp.Med.176:1191-1195(1992)、及びShopes,B.J.の
文献、Immunol.148:2918-2922(1992)を参照のこと。或いは、二重Fc領域を有するGARP抗
体を設計することができ、それによって、増強された補体溶解及びADCC能を有することが
できる。Stevensonらの文献、Anti-Cancer Drug Design 3:219-230(1989)を参照のこと。
本発明はまた、化学療法薬、毒素(例えば、細菌、真菌、植物又は動物起源の、酵素活性
のある毒素、若しくはその断片)、又は放射性同位元素(すなわち放射性複合体(radioconj
ugate))などの細胞毒と結合された、本明細書に記載した通りの抗体を含む、免疫複合体
を想定する。Fc領域はまた、参照により本明細書に組み込まれるChan及びCarterの文献、
2010、Nature Reviews:Immunology,10:301-316に記載されている通り、半減期延長のため
に操作することができる。Fc領域が本明細書に記載した通りのタンパク質操作によって改
変されたバリアント抗hGARP抗体はまた、Fc改変を伴わない同等の抗体(すなわち、同等の
抗原結合特性)と比較すると、(例えば治療学/診断学における)有効性の向上を示すことが
できる。
【0197】
さらに別の実施態様では、Fc領域は、1以上のアミノ酸を改変することによって、抗体
が抗体依存性細胞の細胞毒性(ADCC)を仲介する能力を増大させるように、及び/又はFcγ
受容体に対する抗体の親和性を増大させるように改変される。さらに別の実施態様では、
抗体のグリコシル化は、改変される。例えば、非グリコシル化(aglycoslated)抗体(すな
わち、抗体がグリコシル化されない)を作製することができる。グリコシル化は、例えば
、GARP標的抗原に対する抗体の親和性を増大させるために、変更することができる。こう
した炭水化物改変は、例えば、抗体配列内のグリコシル化の1つ以上の部位を変更するこ
とによって、実現することができる。例えば、1以上の可変領域フレームワークグリコシ
ル化部位の排除をもたらす1以上のアミノ酸置換を施し、それによって、その部位のグリ
コシル化を排除することができる。こうした非グリコシル化は、抗原に対する抗体の親和
性を増大させることができる。さらに想定されるのは、変化型のグリコシル化を有するバ
リアント抗hGARP抗体、例えば、低下した量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体、
非フコシル化抗体(Natsumeらの文献、2009、Drug Design Development and Therapy,3:7-
16によって記載されている通り)、又はバイセクティングGlcNac構造が増加された抗体で
ある。こうしたグリコシル化パターンの変更は、抗体のADCC活性を増大させ、一般的に、
「天然の」ヒトFcドメインを含む同等の抗体に対して、10倍のADCC増強をもたらすことが
示されている。こうした炭水化物改変は、例えば、グリコシル化酵素機構が変更された宿
主細胞中で抗体を発現させること(Yamane-Ohnuki及びSatohの文献、2009、mAb 1(3):230-
236によって記載されている通り)によって実現することができる。
【0198】
本発明の一実施態様では、抗hGARP抗体は、配列・配列番号:47を有するFc領域を含む。
【化54】
【0199】
本発明の別の実施態様では、抗hGARP抗体は、配列・配列番号:48を有する重鎖定常ドメ
イン領域を含む。ここでは、XはNである、又は、ADCCを阻害するためにQに変異される。
【化55】
【0200】
本発明の一実施態様では、配列番号:48の残基297は、非グリコシル化される。
【0201】
本発明の別の実施態様では、配列番号:48の297位置のN残基は、Qに変異される。
【0202】
本発明の一実施態様では、抗hGARP抗体は、配列・配列番号:49を有する軽鎖定常ドメイ
ン領域を含む。
【化56】
【0203】
本発明のさらなる実施態様では、抗hGARP抗体は、抗体のFc領域が、エフェクター機能
を天然に欠いているアイソタイプのものである、又はヒトIgG1、例えばヒトIgG2若しくは
ヒトIgG4よりも作用が有意に低いエフェクター機能を呈するアイソタイプのものであると
いう理由で、又は、抗体のFc領域が、Armour KLらの文献、Eur.J.Immunol., 1999, 29:26
13-2624に記載されている通りに、エフェクター機能を低下させる又は実質的に無くすよ
うに操作されているという理由で、エフェクター機能を欠いている可能性がある。
【0204】
さらなる実施態様では、抗hGARP抗体のFc領域を、二重特異性抗体(ここでは、異なる可
変ドメインを含む2つの抗体重鎖が対形成して二重特異性抗体のFc領域を形成する)の優先
的形成を促進するように操作することができる。こうした改変の例としては、Ridgway JB
、Presta LG、Carter P.の文献、1996、Protein Eng.Jul;9(7):617-21、及びMerchant AM
らの文献、1998、Nat Biotechnol.Jul;16(7):677-81によって記載されている「ノブを穴
に入れる(knobs-into-hole)」改変が挙げられる。
【0205】
本発明の一実施態様では、本発明の抗hGARP抗体は、細胞表面上でヒトGARPタンパク質
を発現する細胞に対する、抗体依存性細胞介在性細胞毒性(ADCC)、補体依存性細胞毒性(C
DC)、及び抗体依存性細胞介在性貪食性(ADCP)から選択された1以上のエフェクター機能を
示すことができる。該抗体は、GARP関連の機能不全細胞に対するADCCを示すことができる
。該抗体は、天然のヒトFcドメインを含む同等の抗体である参照抗体と比較して、増強さ
れたADCC作用を示すことができる。非限定的実施態様では、ADCC作用は、天然のヒトFcド
メインを含む参照抗体と比較して、少なくとも10×高められ得る。この文脈では、「同等
の」は、ADCC作用が増強された抗体が、(天然のヒトFcに対して)ADCCを増強する目的で施
されるあらゆる改変以外は、参照抗体と、実質的に同一の抗原結合特異性を示す及び/又
は同一のアミノ酸配列を有することを意味するために採用することができる。該抗体は、
ヒトIgG、最も好ましくはヒトIgG1の、ヒンジ領域、CH1ドメイン、CH2ドメイン、及びCH3
ドメインを含有することができる。該抗体は、例えば、置換、欠失、若しくは挿入、又は
Fc依存性の機能性を増強若しくは低下させるための他の構造的改変などの、Fc領域内の改
変を含むことができる。
【0206】
本発明の一目的は、TGF-βシグナル伝達を阻害する抗hGARP抗体又はその抗原結合断片
に関し、また、これは、抗体エフェクター機能、すなわちADCC、CDC、ADCP、及び特に、
向上したエフェクター機能から恩恵を受ける治療用途に特に適している可能性がある。し
たがって、エフェクター機能(又は向上したエフェクター機能)を示す、且つTGF-βを阻害
する、本明細書に記載するGARP抗体は、抗体エフェクター機能から恩恵を受ける、ある種
の治療用途、例えば癌、慢性感染症、線維症治療に特に好都合であり得る。
【0207】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:8の、又は配列番号:50の重鎖可変領域をコード
する、単離されたポリヌクレオチド配列である。好ましい前記核酸配列は、配列番号:10
である:
【化57】
【0208】
本発明の別の目的は、配列・配列番号:9の、又は配列番号:51の軽鎖可変領域をコード
する、単離されたポリヌクレオチド配列である。好ましい前記核酸配列は、配列番号:11
である:
【化58】
【0209】
本発明の別の目的は、本発明の抗hGARP抗体をコードする核酸配列を含む発現ベクター
である。一実施態様では、本発明の発現ベクターは、配列番号:10及び配列番号:11、又は
前記配列番号:10及び配列番号:11と少なくとも60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%
、97%、98%、99%の同一性を有する核酸配列を有する任意の配列、の少なくとも1つを含む
【0210】
本発明の別の目的は、前記ベクターを含む単離された宿主細胞である。前記宿主細胞は
、本発明の抗体の組み換え体産生のために使用することができる。一実施態様では、宿主
細胞は、原核生物、酵母、又は真核生物細胞、好ましくは哺乳類の細胞、例えば、例を挙
げると:SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7、ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎
臓株(293、すなわち懸濁培地中で成長のためにサブクローニングした293細胞、Grahamら
の文献、J.Gen.Virol.36:59(1977));ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャ
イニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO、Urlaubらの文献、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:
4216(1980));マウスセルトリ細胞(TM4、Matherの文献、Biol.Reprod.23:243-251(1980));
マウス骨髄腫細胞SP2/0-AG14(ATCC CRL 1581;ATCC CRL 8287)若しくはNSO(HPA culture c
ollections no.85110503);サル腎臓細胞(CVl ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞
(VERO-76、ATCC CRL-1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、A
TCC CCL 34);バッファローラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、A
TCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51)
;TRI細胞(Matherらの文献、Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982));MRC 5細胞;FS4細胞;
及びヒト肝細胞腫株(Hep G2)、並びにDSM's PERC-6細胞株であり得る。これらの宿主細胞
のそれぞれにおける使用に適した発現ベクターはまた、一般に、当技術分野で公知である
。用語「宿主細胞」とは、一般に、培養された細胞株をいうことに留意するべきである。
本発明によるポリペプチドと結合する抗原をコードする発現ベクターが導入されているヒ
トはすべて、「宿主細胞」の定義から明らかに除外される。
【0211】
本発明の別の目的は、抗hGARP抗体又はその抗原結合断片を産生する方法であって、抗h
GARP抗体の発現に適した条件下で、抗hGARP抗体をコードする単離されたポリヌクレオチ
ド配列を含有する宿主細胞を培養することと、発現された抗hGARP抗体を回収することと
を含む前記方法である。この組み換えプロセスは、インビトロ、エクスビボ、インビボの
治療的、診断的使用を目的とする抗体モノクローナル抗体を含めた、本発明によるGARP抗
体の大規模産生のために使用することができる。これらのプロセスは、当技術分野で利用
可能であり、当業者には公知であろう。
【0212】
本発明の別の目的は、本発明の前記抗体を産生するハイブリドーマ細胞株である。
【0213】
本発明による好ましいハイブリドーマ細胞株を、BCCM/LMBP Plasmid Collection、Depa
rtment of Biomedical Molecular Biology、Ghent University、'Fiers-Schell-Van Mont
agu' building、Technologiepark 927、B-9052 Gent-Zwijnaarde BELGIUMに寄託した(表2
):
表2
【表2】
【0214】
本発明の抗体の断片及び誘導体(これらは、文脈によって別に記述される又は明らかに
否定されない限り、本願で使用される用語「抗体(1つ)」又は「抗体(複数)」によって包
含される)、好ましくはMHGARP8様抗体は、当技術分野で公知である技術によって産生する
ことができる。「断片」は、無傷抗体の、ある領域、一般に、抗原結合部位又は可変領域
を含む。抗体断片の例としては、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、及びFv断片;二量体
抗体;限定はされないが、例えば、(1)単鎖Fv分子、(2)1つの軽鎖可変ドメインのみを含有
する単鎖ポリペプチド、又はその軽鎖可変ドメインの3つのCDRを含有するその断片(結合
される重鎖部分を含まない)、及び(3)1つの重鎖可変ドメインのみを含有する単鎖ポリペ
プチド、又はその重鎖可変領域の3つのCDRを含有するその断片(結合される軽鎖部分を含
まない)を含めた、隣接するアミノ酸残基の1本の途切れない配列からなる一次構造を有す
るポリペプチドである任意の抗体断片(本明細書では「単鎖抗体断片」又は「単鎖ポリペ
プチド」という);並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。本発明の
抗体の断片は、標準の方法を使用して得ることができる。例えば、Fab又はF(ab’)2断片
は、従来技術に従って、単離された抗体のプロテアーゼ消化によって産生することができ
る。例えばインビボでのクリアランスを遅らせて、より望ましい薬物動態プロフィールを
得るために、免疫反応性の断片を、公知の方法を使用して改変することができるというこ
とを理解されたい。断片は、ポリエチレングリコール(PEG)を用いて改変することができ
る。PEGをFab’断片とカップリングさせる及び部位特異的に結合するための方法は、例え
ば、Leongらの文献、Cytokines 16(3):106-119(2001)、及びDelgadoらの文献、Br.J.Canc
er 73(2):175- 182(1996)(これらの開示を、参照により本明細書に組み込む)に記載され
ている。
【0215】
或いは、本発明の抗体、好ましくはMHGARP8様又はLHG10様抗体を産生するハイブリドー
マのDNAを、本発明の断片をコードするように改変することができる。次いで、改変され
たDNAを、発現ベクターに挿入し、適切な細胞を形質転換又は形質移入する(その後これは
所望の断片を発現する)ために使用する。
【0216】
ある種の実施態様では、例えば、相同非ヒト配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメ
インに対するコード配列で置き換えることによって(例えば、Morrisonらの文献、PNAS pp
.6851(1984))、又は非免疫グロブリンポリペプチドに対するコード配列のすべて又は一部
を、免疫グロブリンコード配列に共有結合的に連結することによって、本発明の抗体(好
ましくはMHGARP8様又はLHG10様抗体)を産生するハイブリドーマのDNAを、発現ベクターへ
の挿入の前に改変することができる。このようにして、元の抗体の結合特異性を有する「
キメラ」又は「ハイブリッド」抗体が調製される。一般的に、こうした非免疫グロブリン
ポリペプチドは、本発明の抗体の定常ドメインと置き換えられる。
【0217】
したがって、別の実施態様によれば、本発明の抗体、好ましくはMHGARP8又はLHG10様抗
体は、ヒト化される。本発明による「ヒト化された」形態の抗体は、マウス免疫グロブリ
ンに由来する最小配列を含有する、特異的なキメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、
又はそれらの断片(Fv、Fab、Fab’、F(ab’)2、若しくは抗体の他の抗原結合部分配列な
ど)である。ヒト化抗体はほとんど、レシピエントの相補性決定領域(CDR)由来の残基が元
の抗体(ドナー抗体)のCDR由来の残基によって置き換えられつつも元の抗体の所望の特異
性、親和性、及び能力を維持している、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。
【0218】
場合によっては、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク(FR)残基は、対応する非ヒト
残基によって置き換えることができる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体にも移
入されたCDR又はフレームワーク配列にも見られない残基を含むことができる。これらの
改変を施して、抗体性能をさらに高める及び最適化することができる。一般に、ヒト化抗
体は、少なくとも1つ、一般的に2つの可変ドメインのうちの実質的にすべてを含むことと
なる。ここでは、元の抗体のCDR領域に対応するすべての又は実質的にすべてのCDR領域、
及びすべての又は実質的にすべてのFR領域は、ヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のCD
R領域である。ヒト化抗体はまた、最適には、免疫グロブリン定常領域(Fc)、一般的にヒ
ト免疫グロブリンの定常領域の、少なくともある領域を含むこととなる。さらなる詳細に
ついては、Jonesらの文献、Nature,321,pp.522(1986);Reichmannらの文献、Nature,332,p
p.323(1988);Prestaの文献、Curr.Op.Struct.Biol.,3,pp.394(1992);Verhoeyenらの文献
、Science,239,pp.1534;及び米国特許第4,816,567号(これらの開示の全体を参照により本
明細書に組み込む)を参照のこと。本発明の抗体をヒト化するための方法は、当技術分野
で周知である。
【0219】
ヒト化抗体の作製に使用することとなるヒト可変ドメイン(軽と重のどちらも)の選択は
、抗原性の低下にとって非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法に従って、本
発明の抗体の可変ドメインの配列を、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対
してスクリーニングする。次いで、マウス配列に近づけられたヒト配列を、ヒト化抗体の
ためのヒトフレームワーク(FR)として受け入れる(Simsらの文献、J.Immunol.151,pp.2296
(1993);Chothia及びLeskの文献、J.Mol.Biol.196,pp.901)。別の方法は、特定のサブグル
ープの軽鎖又は重鎖のすべてのヒト抗体のコンセンサス配列からの特定のフレームワーク
を使用する。いくつかの異なるヒト化抗体のために、同じフレームワークを使用すること
ができる(Carterらの文献、PNAS 89,pp.4285(1992);Prestaらの文献、J.Immunol.,151(19
93))。抗体が、GARPに対する高い親和性及び他の好都合な生物学的特性を保持したままヒ
ト化されることが、さらに重要である。好ましい方法に従ってこの目標を達成するために
、親配列及びヒト化配列の3次元モデルを使用する、親配列及び様々な概念上のヒト化生
成物の分析のプロセスによって、ヒト化抗体を調製する。3次元の免疫グロブリンモデル
は、一般に利用可能であり、当業者になじみが深い。選択された候補となる免疫グロブリ
ン配列の考えられる3次元構造を例示及び表示するコンピュータプログラムが利用可能で
ある。これらの表示の検証によって、候補となる免疫グロブリン配列の機能化における残
基の役割の可能性の分析、すなわち、候補となる免疫グロブリンがその抗原に結合する能
力に影響を与える残基の分析が可能になる。このようにして、コンセンサス及び移入配列
から、FR残基を選択及び組み合わせることができ、その結果、標的抗原(1又は複数)に対
する親和性の増大などの所望の抗体特性が実現する。一般に、CDR残基は、抗原結合に影
響を与えるのに、直接的に、且つ最大限十分に関与する。「ヒト化」モノクローナル抗体
を作製する別の方法は、免疫化のために使用するマウスとしてXenoMouse(Abgenix社、Fre
mont,CA)を使用することである。XenoMouseは、その免疫グロブリン遺伝子が機能性のヒ
ト免疫グロブリン遺伝子によって置き換えられた、本発明によるマウス宿主である。した
がって、このマウスによって、又はこのマウスのB細胞から作製されるハイブリドーマに
おいて産生される抗体は、既にヒト化されている。XenoMouseは、参照によってその全体
が本明細書に組み込まれる米国特許第6,162,963号に記載されている。
【0220】
ヒト抗体はまた、様々な他の技術に従って、例えば、ヒト抗体レパートリーを発現する
ように操作されている他のトランスジェニック動物を免疫化のために使用することによっ
て(Jakobovitzらの文献、Nature 362(1993)255)、又は、ファージディスプレイ法を使用
する抗体レパートリーの選択によって、産生することができる。こうした技術は、当業者
に公知であり、本出願に開示する通りのモノクローナル抗体から出発して実施することが
できる。
【0221】
一実施態様では、ラクダ科動物高頻度可変性ループ(又はCDR)は、所望の標的抗原を有
するある種のラクダ科動物の能動免疫化によって得ることができる。本明細書に詳細に論
じる及び例示する通り、標的抗原を有するラクダ科動物(ラクダ科動物種の免疫グロブリ
ンレパートリーを発現するように操作された天然の動物又はトランスジェニック動物のい
ずれか)の免疫化の後、所望の抗原に対する特異性を有する(従来のラクダ科動物)抗体を
産生するB細胞を特定することができる、また、公知の技術を使用して、こうした抗体のV
H及びVLドメインをコードするポリヌクレオチドを単離することができる。
【0222】
一実施態様では、本発明は、標的抗原と免疫反応性の組み換え抗原結合ポリペプチドで
あって、VHドメインとVLドメイン(ここでは、該VHドメイン又はVLドメイン中の少なくと
も1つの高頻度可変性ループ又は相補性決定領域は、ある種のラクダ科動物のVH又はVLド
メインから得られる)を含む前記ポリペプチドを提供する。この抗原結合ポリペプチドは
、以下のステップを含むプロセスによって得られる:
(a)ある種のラクダ科動物を、標的抗原で、又は前記標的抗原をコードするポリヌクレオ
チドで免疫し、前記標的抗原に対する抗体を産生するステップと;
(b)前記標的抗原と免疫反応性のラクダ科動物の従来の抗体のVH及び/又はVLドメイン中の
少なくとも1つの高頻度可変性ループ又は相補性決定領域(CDR)をコードするヌクレオチド
配列を決定するステップと;
(c)前記標的抗原と免疫反応性の抗原結合ポリペプチド(前記抗原結合ポリペプチドは、VH
及びVLドメインを含む)を発現させるステップ。ここでは、VHドメイン又はVLドメインの
少なくとも1つの高頻度可変性ループ又は相補性決定領域(CDR)は、パート(a)において決
定されるヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列を有する。
【0223】
能動免疫化によって得られた単離されたラクダ科動物VH及びVLドメインを、本発明によ
る抗原結合ポリペプチドを操作するための土台として使用することができる。無傷のラク
ダ科動物VH及びVLドメインから出発して、出発ラクダ科動物配列から外れた1以上のアミ
ノ酸置換、挿入、又は欠失を操作することが可能である。
【0224】
一実施態様では、こうした置換、挿入、又は欠失は、VHドメイン及び/又はVLドメイン
のフレームワーク領域中に存在することができる。一次アミノ酸配列のこうした変化の目
的は、不都合な性質(例えば、ヒト宿主における免疫原性(いわゆるヒト化)、潜在的な産
物不均一性の部位、及び/又は不安定性(グリコシル化、脱アミド、異性化など)をおそら
く減じること、又は、その分子の何らかの他の好都合な性質(例えば、溶解性、安定性、
生体利用効率など)を増強することであり得る。
【0225】
別の実施態様では、一次アミノ酸配列の変化は、能動免疫化によって得られたラクダ科
動物VH及び/又はVLドメインの1以上の高頻度可変性ループ(又はCDR)において操作するこ
とができる。こうした変化は、抗原結合親和性及び/又は特異性を増強するために、又は
不都合な性質(例えば、ヒト宿主における免疫原性(いわゆるヒト化)、潜在的な産物不均
一性の部位、及び/又は不安定性(グリコシル化、脱アミド、異性化など)、をおそらく減
じるために、又はその分子の何らかの他の好都合な性質(例えば、溶解性、安定性、生体
利用効率など)を増強するために導入することができる。
【0226】
本発明の抗体、好ましくはMHGARP8又はLHG10様抗体はまた、所望の生体活性及び結合特
異性を示す限りは、重鎖/軽鎖(1又は複数)のある領域が、元の抗体中の対応する配列と同
一又は相同である一方で、これらの鎖(1又は複数)の残部が、別の種に由来する又は別の
抗体クラス又はサブクラスに属する抗体並びにこうした抗体の断片における対応する配列
と同一又は相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)に誘導体化することができる(C
abillyらの文献、前掲;Morrisonらの文献、Proc.Natl.Acad.Sci.,pp.6851(1984))。
【0227】
本発明の一目的は、本明細書で先に記載した通りの、本発明の少なくとも1種のタンパ
ク質を含む組成物である。
【0228】
本発明の別の目的は、本明細書で先に記載した通りの、本発明の少なくとも1種のタン
パク質と、医薬として許容し得る賦形剤とを含む医薬組成物である。
【0229】
これらの組成物中に使用することができる、医薬として許容し得る賦形剤としては、限
定はされないが、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清
タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビ
ン酸、ソルビン酸カリウム、植物性飽和脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩、又は電
解質、例えば硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナト
リウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セ
ルロースがベースの物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム)、ポリエチレン
グリコール、ポリアクリラート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロッ
クポリマー、ポリエチレングリコール、及び羊毛脂が挙げられる。
【0230】
本発明の別の目的は、その阻害を必要とする対象におけるTGF-β活性を阻害するための
本発明のタンパク質である。
【0231】
本発明の別の目的は、その阻害を必要とする対象におけるTGF-β活性を阻害するための
方法であって、前記対象に、有効量の本発明のタンパク質を投与することを含む前記方法
である。
【0232】
本発明の別の目的は、その治療を必要とする対象におけるTGF-β関連障害を治療するた
めの、本明細書で先に定義した通りの本発明のタンパク質又は医薬組成物である。
【0233】
本発明の別の目的は、その治療を必要とする対象におけるTGF-β関連障害を治療するた
めの方法であって、前記対象に、有効量の本発明のタンパク質を投与することを含む前記
方法である。
【0234】
本発明の方法を使用することができる疾患又は障害としては、TGF-βの阻害が有益であ
り得るすべての疾患が挙げられる。
【0235】
前記TGF-β関連障害としては、限定はされないが、炎症性疾患、慢性感染症、癌、線維
症、循環器疾患、脳血管疾患(例えば虚血発作)、及び神経変性疾患が挙げられる。
【0236】
対象への投与における使用については、組成物は、対象への投与のために製剤化される
こととなる。本発明の組成物は、経口的に、非経口的に、吸入スプレーによって、局所的
に、直腸内に、経鼻的に、口腔内に、経膣によって、又は埋め込み型リザーバーを介して
投与することができる。本明細書で使用される用語「投与」には、皮下、静脈内、筋肉内
、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下腔内、肝臓内、病巣内、及び頭蓋内注射又は注入
技術が含まれる。
【0237】
無菌の注射可能形態の本発明の組成物は、水性又は油性の懸濁液であり得る。これらの
懸濁液は、適切な分散剤又は湿潤剤及び懸濁化剤を使用する当技術分野で公知の技術に従
って調製することができる。無菌の注射可能調製物はまた、非毒性の非経口的に許容し得
る希釈剤又は溶媒中の、無菌の注射可能溶液又は懸濁液であり得る。用いることができる
、許容し得るビヒクル及び溶媒の一つは、水、リンゲル液、及び等張性の塩化ナトリウム
溶液である。さらに、無菌の不揮発性油が、溶媒又は懸濁媒として慣例的に用いられる。
この目的のために、合成のモノ又はジグリセリドを含めた、任意の無刺激性の不揮発性油
を用いることができる。注射液の調製においては、天然の医薬として許容し得る油、例え
ばオリーブ油又はヒマシ油(特にそのポリオキシエチル化された形態で)と同様に、脂肪酸
、例えばオレイン酸及びそのグリセリド誘導体が有用である。これらの油の溶液又は懸濁
液はまた、カルボキシメチルセルロースなどの長鎖アルコール希釈剤若しくは分散剤、又
はエマルジョン及び懸濁剤を含めた医薬として許容し得る剤形の製剤において一般に使用
される類似の分散剤を含有することができる。Tween、Span、及び他の乳化剤などの他の
一般に使用される界面活性剤、又は医薬として許容し得る固体、液体、若しくは他の剤形
の製造において一般に使用される生体利用効率エンハンサーも、製剤の目的で使用するこ
とができる。
【0238】
本発明の医薬組成物における抗体の投与に関する計画及び投薬量は、これらの生成物に
関する公知の方法に従って、例えば、製造者の指示書を使用して決定することができる。
例えば、本発明の医薬組成物中に存在する抗体は、100mg(10mL)又は500mg(50mL)のいずれ
かの使い捨てバイアル中に10mg/mLの濃度で提供することができる。該生成物は、9.0mg/m
Lの塩化ナトリウム、7.35mg/mLのクエン酸ナトリウム二水和物、0.7mg/mLのポリソルベー
ト80、及び注射用滅菌水中で、静脈内(IV)投与のために製剤化することができる。pHは、
6.5に調整される。これらの計画は例示的であること、また、臨床試験において決定しな
ければならない医薬組成物中の特定の抗体の親和性及び許容性を考慮して、最適な計画及
びレジメンを適合させることができるということを理解されたい。
【0239】
本発明の別の目的は、その低下を必要とする対象における腫瘍環境における免疫抑制を
低下させるための方法であって、前記対象に、治療有効量の本発明のタンパク質を投与す
ることを含む前記方法である。
【0240】
本発明の別の目的は、免疫系増強を必要とする対象における免疫系を増強するための方
法であって、前記対象に、治療有効量の本発明のタンパク質を投与することを含む前記方
法である。
【0241】
本発明の別の目的は、その阻害を必要とする対象におけるヒトTregの免疫抑制機能を阻
害するための方法であって、前記対象に、治療有効量の本発明のタンパク質を投与するこ
とを含む前記方法である。
【0242】
本発明の別の目的は、その治療を必要とする対象における癌を治療するための方法であ
って、前記対象に、治療有効量の本発明のタンパク質を投与することを含む前記方法であ
る。
【0243】
本発明の別の目的は、その治療を必要とする対象における癌を治療するための方法であ
って、本発明の医薬組成物が、癌患者の治療のための免疫賦活性抗体として投与されるこ
ととなる前記方法である。
【0244】
本発明の別の目的は、その治療を必要とする対象における癌を治療するための方法であ
って、前記対象に、癌に対する別の治療、又は免疫療法薬と組み合わせて、治療有効量の
本発明のタンパク質を投与することを含む前記方法である。
【0245】
本発明の別の目的は、本発明のタンパク質と、癌を治療するための又は癌を治療する際
に使用するための、癌に対する別の治療、又は別の免疫療法薬との組み合わせである。
【0246】
本発明の一実施態様では、前記免疫療法薬は、腫瘍ワクチンである。
【0247】
本発明の別の実施態様では、前記免疫療法薬は、免疫賦活性抗体である。
【0248】
理論に拘泥されることを望まないが、本発明者らは、本発明のタンパク質が、腫瘍環境
における免疫抑制を妨げ、それによって免疫療法薬の有効性を増大させることになること
を確信している。
【0249】
本発明によって、様々な癌、例えば、副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、脳腫瘍、神経膠腫
、乳癌、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、結腸癌、子宮内膜癌、食道癌、肝外胆管癌、ユー
イング腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、眼癌、胆嚢癌、胃癌、胚細胞性腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、
頭頸部癌、下咽頭癌、膵島細胞癌、腎臓癌、喉頭癌、白血病、口唇癌及び口腔癌、肝臓癌
、肺癌、リンパ腫、メラノーマ、中皮腫、メルケル細胞癌、転移性頭頸部扁平上皮癌、骨
髄腫、新生物、上咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、
副鼻腔癌及び鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、褐色細胞腫、下垂体癌、形質細胞腫瘍、前立
腺癌、横紋筋肉腫、直腸癌、腎細胞癌、唾液腺癌、皮膚癌、カポジ肉腫、T-細胞リンパ腫
、軟部肉腫、胃癌、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、尿道癌、子宮癌、膣癌、外陰癌、又はウ
ィルムス腫瘍などを治療することができる。
【0250】
当技術分野で公知の腫瘍ワクチンとしての使用に適した腫瘍抗原としては、例えば、以
下が挙げられる:(a)癌-精巣抗原、例えば、NY-ESO-1、SSX2、SCP1、並びにRAGE、BAGE、G
AGE、及びMAGEファミリーポリペプチド、例えば、GAGE-1、GAGE-2、MAGE-1、MAGE-2、MAG
E-3、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、及びMAGE-12(これらは、例えば、メラノーマ、肺、頭頸
部、NSCLC、乳房、胃腸、及び膀胱腫瘍に向けるために使用することができる)、(b)変異
した抗原、例えば、p53(様々な固形腫瘍、例えば、結腸直腸、肺、頭頸部癌に関連する)
、p21/Ras(例えば、メラノーマ、膵臓癌、及び結腸直腸癌に関連する)、CD 4(例えばメラ
ノーマに関連する)、MUM 1(例えばメラノーマに関連する)、カスパーゼ-8(例えば頭頸部
癌に関連する)、CIA 0205(例えば膀胱癌に関連する)、HLA-A2-R1701、βカテニン(例えば
メラノーマに関連する)、TCR(例えばT-細胞非ホジキンリンパ腫に関連する)、BCR-abl(例
えば慢性骨髄性白血病に関連する)、トリオースリン酸イソメラーゼ、IA 0205、CDC-27、
及びLDLR-FUT、(c)過剰発現抗原、例えば、ガレクチン4(例えば結腸直腸癌に関連する)、
ガレクチン9(例えば、ホジキン病に関連する)、プロテイナーゼ3(例えば慢性骨髄性白血
病に関連する)、WT 1(例えば様々な白血病に関連する)、炭酸脱水酵素(例えば腎癌に関連
する)、アルドラーゼA(例えば肺癌に関連する)、PRAME(例えばメラノーマに関連する)、H
ER-2/neu(例えば、乳房、結腸、肺、及び卵巣癌に関連する)、α-フェトプロテイン(例え
ば肝細胞腫に関連する)、SA(例えば結腸直腸癌に関連する)、ガストリン(例えば膵臓及び
胃癌に関連する)、テロメラーゼ触媒タンパク質、MUC-1(例えば、乳房及び卵巣癌に関連
する)、G-250(例えば腎細胞癌に関連する)、及び癌胎児抗原(例えば、乳癌、肺癌、及び
、結腸直腸癌などの消化管の癌に関連する)、(d)共通抗原、例えば、メラノーマ-メラノ
サイト分化抗原、例えば、MART-l/Melan A、gp100、MC1R、メラノサイト刺激ホルモン受
容体、チロシナーゼ、チロシナーゼ関連タンパク質-1/TRPl、及びチロシナーゼ関連タン
パク質-2/TRP2(例えばメラノーマに関連する)、(e)例えば前立腺癌に関連する、前立腺関
連抗原、例えば、PAP、PSA、PSMA、PSH-P1、PSM-P1、PSM-P2、(f)免疫グロブリンイディ
オタイプ(例えば骨髄腫及びB細胞リンパ腫に関連する)、並びに(g)ポリペプチド-及び糖-
含有抗原などの、以下を含めた他の腫瘍抗原:(i)糖タンパク質、例えば、シアリルTn及シ
アリルLe<x>(例えば乳癌、結腸直腸癌に関連する)、並びに種々のムチン;糖タンパク質
は、担体タンパク質とカップリングさせることができる(例えば、MUC-1は、LHとカップリ
ングさせることができる);(ii)リポポリペプチド(例えば、脂質部分に連結されたMUC-1);
(iii)多糖(これは担体タンパク質と(例えばKLHと)カップリングさせることができる)(例
えばGlobo H合成六糖)、(iv)ガングリオシド、例えば、GM2、GM12、GD2、GD3(例えば、脳
、肺癌、メラノーマに関連する)(これも担体タンパク質(例えばKLH)とカップリングさせ
ることができる)。他の腫瘍抗原としては、pi 5、Hom/Mel-40、H-Ras、E2A-PRL、H4-RET
、IGH- IGK、MYL-RAR、エプスタイン・バーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイル
ス(HPV)抗原(E6及びE7を含めて)、B型及びC型肝炎ウイルス抗原、ヒトT-細胞リンパ球向
性ウイルス抗原、TSP-180、pl85erbB2、pl80erbB-3、c-met、mn-23H l、TAG-72-4、CA 19
-9、CA 72-4、CAM 17.1、NuMa、K-ras、p 16、TAGE、PSCA、CT7、43-9F、5T4、791 Tgp72
、beta-HCG、BCA225、BTAA、CA 125、CA 15-3(CA 27.29\BCAA)、CA 195、CA 242、CA-50
、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、
MOV 18、NB/70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質\シクロフィ
リンC結合タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、TPSなどが挙げられる。
【0251】
適切な免疫賦活性抗体としては、限定はされないが:抗CTLA-4、抗PD1、抗PDL1、及び抗
KIR抗体が挙げられる。
【0252】
本発明の一実施態様では、癌の治療を必要とする対象における癌を治療するための方法
は、別の抗癌剤、又は化学療法処置などの癌治療の前に、並行して、及び/又は後に、前
記対象に本発明のタンパク質を投与することを含む。
【0253】
本発明の別の目的は、HIV、マラリア、若しくはエボラなどの感染症を予防する、又は
これらの感染症に対するワクチン接種を改良するための方法であって、前記対象に治療有
効量の本発明のタンパク質を投与することを含む前記方法である。
【0254】
一実施態様では、本発明のタンパク質をインビトロ又はインビボで使用して、GARPを発
現している試料、組織、器官、又は細胞を特定することができる。
【0255】
本発明のタンパク質に使用することができる分析の例としては、限定はされないが、EL
ISA、サンドイッチELISA、RIA、FACS、免疫組織化学、ウエスタンブロット、及び免疫沈
降が挙げられる。
【0256】
本発明の一実施態様では、試料は、生体試料である。生体試料の例としては、限定はさ
れないが、体液、好ましくは血液、より好ましくは血清、血漿、滑液、気管支肺胞洗浄液
、痰、リンパ、腹水(ascitic fluid)、尿、羊水、腹水(peritoneal fluid)、脳脊髄液、
胸水、心膜液、及び肺胞マクロファージ、組織ライセート及び抽出物(罹患組織から調製
されたもの)が挙げられる。
【0257】
本発明の一実施態様では、用語「試料」は、あらゆる分析の前に個人から採取された試
料を意味するものとする。
【0258】
別の実施態様では、本発明のタンパク質は、診断又は検出目的のために標識することが
できる。「標識される」は、本明細書では、化合物が、該化合物の検出を可能にするため
に付着させた少なくとも1つの元素、同位元素、又は化合物を有することを意味する。標
識の例としては、限定はされないが、放射性同位元素又は重同位元素などの同位体標識;
磁力、電気、又は熱による標識、及び有色又は発光染料:例えばランタニド錯体、量子ド
ット、フルオレセイン、ローダミン、テトラメチルローダミン、エオシン、エリスロシン
、クマリン、メチル-クマリン、ピレン、マラカイトグリーン、スチルベン、ルシファー
イエロー、カスケードブルー、テキサスレッド、アレクサ(alexa)色素、cy色素が挙げら
れる。
【0259】
本発明の一目的は、本発明のタンパク質の使用に基づいて、試料中の活性化されたTreg
を特定するための方法である。
【0260】
本発明の別の目的は、本発明のタンパク質の使用に基づいて、可溶性の又は複合体形成
された潜在型TGF-βを特定するための方法である。
【0261】
本発明の別の目的は、本発明の少なくとも1種のタンパク質を含むキットである。
【0262】
「キット」は、少なくとも1種の試薬、すなわち例えばGARPの発現を特異的に検出する
ための抗体を含む、あらゆる製品(例えば、包装又は容器)を意図する。キットは、本発明
の方法を実施するための一単位として宣伝、配布、又は販売することができる。さらに、
キット試薬のいずれか又はすべては、これを外部環境から保護する容器に入れて、例えば
密封容器に入れて提供することができる。キットはまた、キット及びその使用方法を説明
している添付文書を含有することができる。
【0263】
本発明のサンドイッチELISA法を実施するためのキットは、一般に、固体支持体(例えば
マイクロタイタープレート)に任意に固定化されている捕捉抗体と、例えばHRP、蛍光標識
、放射性同位元素、β-ガラクトシダーゼ、及びアルカリホスファターゼなどの検出可能
な物質とカップリングさせた顕色抗体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0264】
図1】細胞表面上のヒトGARPを認識する新規のモノクローナル抗体。ヒトGARP(hGARP)を用いて形質移入した又は形質移入していないマウスBW5147 T細胞を、ビオチン化された自社製の>hGARP抗体(MHGARP1から9)とストレプトアビジン-PE(SA-PE、一番上のパネル)で、又は市販の抗hGARP抗体(クローンPlato-1)とAlexaFluor 488とカップリングさせた二次抗マウスIgG2b(AF488、一番下のパネル)で、染色した。
図2】MHGARP8は、ヒトTregクローンによる活性なTGF-β産生を阻害する。クローンTreg A1を、>CD3/CD28抗体で、単独で又は示された>hGARP mAb(20μg/ml)の存在下で24時間刺激した。(A)細胞ライセートを、>pSMAD2及び>β-アクチン抗体を用いるWBによって分析した。(B)Aに示されたWBからのECLシグナルの定量化。
図3A】>hGARP抗体による結合に必要とされるhGARPタンパク質における領域。左に配列したHAタグ付きタンパク質を発現しているマウスBW5147 T細胞を、>hGARP(図の一番上に示した通り、MHGARP1から9)、又は>HA抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。ヒストグラムは、生細胞に対して選択(gate)される。FACSの結果に基づいて、種々のMHGARP mAbによる結合に必要とされる領域を特定し、これは、HAタグ付きキメラの表示の上の水平バーによって示される。
図3B】MHGARP-8によって認識されるエピトープの存在量は、TGF-β1の過剰発現時に増大する。hGARP単独(BW+hGARP)を用いて、又はhTGFB1(BW+hGARP+hTGF-b1)を用いて安定に形質移入した親BW5147 T細胞(BW、非形質移入)又はクローンを、Aと同様に、又は>mLAP-AF647若しくは>hLAP-APC抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
図3C】MHGARP-1、-2、-3、-4、及び-5は、遊離のhGARPを認識するが、TGF-β1に結合されたhGARPは認識しない。hGARP及びhTGFB1を用いて安定に形質移入した親BW5147 T細胞又はクローン由来の細胞ライセートを、>hGARP mAb(図の一番上に示した通り、MHGARP1から9)を用いて免疫沈降させた。細胞ライセート(30%インプット)又はIP産物を、市販の>hGARP mAb(クローンPlato-1、一番上のパネル)を用いる、またTGF-β1のC-末端エピトープに方向付けられる抗体(これは、pro-TGF-β1を50 kDaバンドとして、成熟したTGF-β1を13kDaバンド(一番下のパネル)として検出する)を用いるウエスタンブロットによって分析した。*非形質移入細胞において検出された特定の産物。
図3D】hGARP形質移入293T細胞におけるhTGFB1の過剰発現は、MHGARP-1、-2、-3、-4、及び-5の結合を低下させるが、MHGARP-8の結合は上昇させる。293T細胞を、hGARPをコードするプラスミド(0.25μg)、示された量のhTGFB1をコードするプラスミド、及び空のプラスミドを用いて同時形質移入し、すべての条件において、形質移入されたDNAの総量を2.5μgとした。形質移入された細胞を、>hGARP mAb(図の一番上に示した通り、MHGARP1から9)で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
図3E】hGARP形質導入JURKAT細胞におけるhTGFB1のサイレンシングは、MHGARP-8の結合を低下させる。hGARPで形質導入された又はされていないJURKAT細胞を、TGFB1 mRNA(siTGFB1)に特異的なsiRNA、又はスクランブルsiRNA対照を用いて形質移入した。形質移入された細胞を、>hGARP mAb(図の一番上に示した通り、MHGARP1から9)で、又は>hLAP抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。
図4】細胞表面上のhTGF-β1の提示は、MHGARP8による結合にとって十分ではない。293T細胞を、下に示す通りに形質移入し、>hLAP抗体で、又はMGARP8で染色し、次いで、フローサイトメトリーによって分析した。(A)hTGFB1コンストラクトを用いずに、左に配列したHAタグ付きタンパク質をコードするコンストラクトを用いる形質移入。(B)hTGFB1コンストラクトと共に、左に配列したHAタグ付きタンパク質をコードするコンストラクトを用いる共形質移入。
図5】MHGARP-2、-3、及び-8の結合にはhGARPのアミノ酸137-138-139が要求される。HAでタグ付けされた形態のhGARPをコードするプラスミドを用いて安定に形質移入した親BW5147 T細胞(BW非形質移入)又はクローンを、示された>hGARP又は>HA抗体で染色し、フローサイトメトリーによって分析した。ここで試験される、HAでタグ付けされた形態のhGARPは、hGARP(野生型、WT)のaa 20~662、又はhGARPのaa 20~662を含んでいた。ここでは、領域101~141に位置する3つのアミノ酸の基は、mGARPの対応する領域(Mut I、Mut II、及びMut III)に見られるアミノ酸によって置き換えられている。hGARP -WT、-Mut I、-Mut II、-Mut III、及びmGARPの領域101~141のアミノ酸配列を、左に示す。ヒトGARPとマウスGARPとの間で異なるアミノ酸は、灰色の水平ボックスで強調し、Mut I、Mut II、及びMut IIIにおいて変異されたアミノ酸は、黒色の水平ボックスで示す。
図6】MHGARP8は、Treg機能をインビボで阻害する。第0日に、示された群のNSGマウスは、ヒトTregと組み合わせて又は組み合わせずに、ヒトPBMCの静脈内注射を受けた。第III群及びIV群のマウスを、第1日から、週1回、腹腔内注射されるMHGARP8抗体で治療した。レシピエントマウスにおけるGvHD発症の客観的徴候を、隔週で観察した。GvHDスコアは、体重減少(0:<10%;1:10%~20%;2:>20%;3:>30%)、貧血(0:赤色又はピンク色の尾;1:白色の尾)、姿勢(0:正常;1:丸まり)、一般的活動性(0:正常;1:制限あり)、脱毛(0:脱毛なし;1:脱毛)、及び黄疸(0:白色又は赤色の尾;1:黄色の尾)に基づいて定めた。最大の疾患重症度すなわち死亡は、7というスコアに相当する。(A)実験1.値は平均スコアを表す。(B)実験2.値は平均スコア+SEMを表す。
図7】新規の抗hGARP mAb。(A)抗hGARP mAbを得るために使用される実験戦略の概略図。(B)ビオチン化されたMHG-1から-14mAb、及びPEとカップリングさせたストレプトアビジン(SA-PE)で、LHG-1から-17mAb、及びPEとカップリングさせた二次抗hIgG1抗体で、又は市販品として入手できるマウス抗hGARP mAb(クローンPlato-1)、及びAF647とカップリングさせた二次抗mIgG2b抗体で染色した後の、クローンThA2(hGARPを発現しないヒトCD4+Th細胞)、又はhGARPを用いて形質導入されたThA2細胞のフローサイトメトリー分析。
図8】免疫されたラマからの免疫応答。(A)は、DNA免疫されたラマからの免疫応答を示す。(B)は、をhGARP/hTGFβを発現するBW細胞で免疫したラマからの免疫応答を示す。
図9】FACSによって細胞上で測定される、カニクイザルGARP-TGFβに対する交差反応性。293E細胞を、ヒト/cyno GARP及びヒト/cyno TGFBを用いて形質移入した。LHG-10-D及び親和性最適化バリアントは、カニクイザルGARP-TGFBと交差反応性である。
図10】LHG-10抗体及びそのシャッフルバリアントの配列。
図11】MHGARP8及びLHG-10は、ヒトTregによる活性なTGF-βの産生を阻害する。短いインビトロ増幅の後、ヒトCD4+CD25hiCD127lo細胞(Treg)を、24時間、示されたmAb(10μg/ml)の存在下又は非存在下で、抗CD3/CD28コーティングビーズで再び刺激した。細胞ライセートを、リン酸化されたSMAD2(pSMAD2)に対する抗体を用いるウエスタンブロットによって、活性なTGF-β産生、又はβ-アクチン(ローディング(loading)対照)に対する読み出しとして分析した。
図12】MHGARP8及びLHG-10は、インビトロでのヒトTregの抑制活性を阻害する。(A)新しく単離されたヒトCD4+CD25-CD127hi細胞(Th;2×104/マイクロウェル)を、単独で、又はクローンTreg A1(Stockis,J.らの文献、Eur.J.Immunol.2009,39:869-882)と共に1/1のTreg:Th比で播種した。細胞を、示された抗hGARP mAb(10μg/ml)の存在下又は非存在下で、コーティングされた抗CD3及び可溶性の抗CD28で刺激した。4日の培養の最後の16時間の間に、3H-チミジン(3H-Thy)を添加し、シンチレーションカウンターにおいて、増殖に対する読み出しとして、取り込みを測定した。バー・ヒストグラムは、kcpm(3連試験の平均+SD)を示す。クローンTreg A1はTh細胞の非存在下では増殖しなかった(Treg単独:0,5±0,04 kcpm)。それぞれの黒色バーを超える、Tregの存在下でのTh増殖の抑制が示され、以下の通りに計算する:抑制率(%)=1-(kcpm(Th単独)/kcpm(Th+Treg)。(B)クローンThA2細胞(Th;1×104/マイクロウェル)を、MHGARP8(MHG-8)、抗hTGF-β1 mAb(クローン1D11)、又はアイソタイプ対照(mIgG1)の存在下又は非存在下で、クローンTreg A1と共に、示されたTreg:Thで播種した。刺激、増殖の測定、及び抑制率の計算は、Aと同様に、実施した。
図13】抗GARP mAbによって結合されるGARPの形態及び領域。(A)GARP及びGARP/TGF-β複合体の概略図。タンパク質GARPは、太い灰色の曲線によって表される。数は、アミノ酸位置を示す。TGF-βは、太い黒色の線としての潜在関連ペプチド(LAP)と、太い灰色の直線としての成熟TGF-β1ペプチドを用いて表される。細い黒色の線は、鎖間のジスルフィド結合を表す。(B)その結合条件に基づく抗hGARP mAbの分類。
図14】3つの群の抗hGARP mAbは、それぞれ、遊離のGARPのみ、遊離のGARPとGARP/TGF-β1複合体、又はGARP/TGF-β1複合体のみに結合する。(A)hGARP及びhTGFB1を用いて形質移入したBW細胞の細胞ライセートを、示された抗hGARP mAbを用いて免疫沈降させた。全ライセート(BW+hGARP+hTGFB1又は非形質移入対照)及びIP産物を、hGARP(クローンPlato-1)、LAP、又は成熟TGF-βペプチドに対する抗体を用いるウエスタンブロットによって分析した。(B)hGARP、hTGFB1、又はその両方を用いて非形質移入又は形質移入され、且つ示した通りに、抗LAP-APC、ビオチン化MHG mAbとストレプトアビジン-PE、クローンPlato-1と>mIgG2b-AF647、又はLHG mAbと>hIgG1-PEで染色された、293T細胞のフローサイトメトリー分析。
図15】MHG及びLHG mAbによる結合に必要とされるhGARPのアミノ酸。(A)左に配列したHAタグ付きmGARP/hGARPキメラをコードするプラスミドを用いて形質移入された、293T細胞のフローサイトメトリー分析(数は、hGARPにおけるアミノ酸位置を表す)。細胞を、ビオチン化MHG mAbとストレプトアビジン-PE、LHG mAbと>hIgG1-PE、又は抗HAと>mIgG1-AF647で染色した。hTGFB1を、hGARP/hTGF-β1複合体のみと結合するmAb(LHG-3、MHGARP8(MHG-8)、LHG-10)の分析のために、mGARP/hGARPキメラを用いて共形質移入した。(B)先述の通り、293T細胞が、変異型の完全長HAタグ付きhGARPをコードするプラスミドを用いて形質移入されたことを除いて。各変異体において、hGARPの3アミノ酸を、左側のアラインメント中に示した通り(数は、hGARPにおけるアミノ酸位置を表す)、mGARPに見られる3アミノ酸によって置き換えた。
図16】抗hGARPによるインビボでのヒトTreg機能の阻害。(A)は、第0日に、示された群のNSGマウスが、ヒトTregと組み合わせて又は組み合わせずに、ヒトPBMCの静脈内注射を受けた、プロトコルを示す。(B)は、示された数のマウス/群(n)を用いる、ドナーA、B、又はC由来の細胞を用いて実施される、4つの独立した実験(IからIV)の結果を示す。疾患発症は、平均疾患スコアが≧1になった日であり、これは3つの実験群(ここでは、マウスは、PBMCのみ(a群)、PBMCとTreg(b群)、又はPBMCとMHGARP8(MHG-8)で処理されたTreg(c群)で移植される)について示される。(C)示された群のマウスにおける平均疾患スコア(左)及び生存曲線(右)の変遷を示す、実験IVから得られる詳細な結果。b群(PBMC+Treg)とc群(PBMC+Treg+MHG-8)との間の差の統計的有意性を、疾患スコアの進歩については二元配置Anova分析(p=0.0001)、及び生存についてはログランク(Mantel-Cox)検定(p=0.0027)を使用して算出した。
【実施例
【0265】
(実施例)
本発明を、次の実施例によって、さらに説明する。
【0266】
(実施例1:ヒトGARPに方向付けられる新規のモノクローナル抗体(>hGARPモノクローナル
抗体))
DBA/2又はBalb/cマウスを、ヒトGARPを用いて形質移入したマウスP1HTR細胞で免疫した
。免疫されたマウスからの血清を、FACSによって、hGARP発現BW細胞への結合についてス
クリーニングすることによって、>hGARP 抗体の存在について試験した。高い抗体価の>
hGARP抗体をもつマウスからの脾細胞を、SP2/neo細胞と融合させた。HAT培地中でハイブ
リドーマを選択し、限界希釈でクローン化した。+/-1600ハイブリドーマクローンの上清
を、FACSによって、hGARP発現BW細胞に結合する抗体の存在についてスクリーニングした
。本発明者らは、このスクリーニングにおいて、>hGARPモノクローナル抗体を産生する3
8のクローンを特定した。9のクローンを選択し、9種の新規の>hGARPモノクローナル抗体
(MHGARP1から9)の大規模産生及び精製のために増幅した。
【0267】
図1に示す通り、MHGARP1から9は、hGARPを用いて形質移入したマウスBW5147細胞と結合
するが、非形質移入細胞とは結合しない。MHGARP1から9はまた、hGARPを用いて形質移入
した293T細胞、及びhGARPをコードするレンチウイルスを用いて形質導入された2種のヒト
T細胞株(クローンTh A2及びJurkat)とも結合するが、対応する親細胞とは結合しない(図
示せず)。この認識パターンは、陽性対照としてここで使用される市販品として入手でき
る>hGARP mAb(クローンPlato-1)の認識パターンと同一である。これらの結果は、MHGARP
1から9が、細胞表面上のhGARPを認識することを示す。
【0268】
図7に示す通り、5つの追加のMHGARP抗体を産生及び精製した。MHGARP抗体(図ではMHG-1
から-14)は、クローンThA2(hGARPを発現しない、ヒトCD4+ヘルパーT細胞)とは結合しない
が、hGARPを用いて形質導入されたThA2と結合する。
【0269】
(実施例2:MHGARP8は、ヒトTreg細胞による活性なTGF-β産生を阻害するが、12種の他の>
hGARPモノクローナル抗体はいずれも阻害しない)
ヒトTregクローン(1E+06細胞/ml)を、無血清培地中で、20μg/mlの>hGARPモノクロー
ナル抗体の存在又は非存在下で、コーティングされた抗CD3(1μg/ml)及び可溶性の抗CD28
(1μg/ml)抗体で刺激した。この分析では、13種の>hGARP モノクローナル抗体を試験し
た:本発明者らの9種の新規モノクローナル抗体(MHGARP1から9)、及び市販品として入手で
きる抗体クローンPlato-1(Enzo Life Sciences社、catalog No.ALX-804-867)、272G6(Syn
aptic Systems社、catalog No.221 111)、50G10(Synaptic Systems社、catalog No.221 0
11)、及び7B11(BioLegend社、catalog No.352501)。24時間後に細胞を収集し、溶解し、
還元条件下でSDS-PAGEにかけた。iBlotシステム(Life Technologies社)を用いて、ニトロ
セルロース膜上にゲルをブロットした。ブロッキング後、膜を、リン酸化されたSMAD2(pS
MAD2、Cell Signaling Technologies社)又はβ-アクチン(SIGMA)に方向付けられる一次抗
体と、次いで二次HRPカップリング抗体と、ハイブリダイズさせ、Enhanced ChemiLumines
cent(ECL)基質(ThermoFisher Scientific社)を用いて顕在化させた。pSMAD2の存在は、刺
激されたTregクローンによる活性なTGF-β1の産生を示す。Image Jソフトウェアを使用し
て、オートラジオグラフ上の55 kDa pSMAD2及び40 kDa β-アクチンバンドの密度を測定
することによって、ECLシグナルを定量化した。
【0270】
TCR刺激されたTreg細胞による活性なTGF-β産生にhGARPが必要とされるかどうかを調べ
るために、本発明者らは、単独で又は>hGARP mAbの存在下で、そのT細胞受容体(TCR)を
介してヒトTregクローンを刺激した。刺激されたTregによって産生される活性なTGF-βは
、自己分泌シグナルを誘発し、これが、SMAD2及びSMAD3転写因子のリン酸化及び活性化を
もたらす。本発明者らは、刺激されたTregクローンによる活性なTGF-β産生についての読
み出しとして、ウエスタンブロット(WB)によって、リン酸化されたSMAD2(pSMAD2)の存在
を測定した。図2に示す通り、pSMAD2は、MHGARP8の存在下で、10倍超、減少した。この減
少は、陽性対照としてここで使用される抗TGF-β mAbの存在下で観察される減少と類似し
ている。12種の他の>hGARP mAb(8種は、他に自社で製造されたMHGARPであり、4種は、市
販品として入手できる抗GARP抗体である)はいずれも、Tregクローンによる活性なTGF-β
産生を阻害しなかった。まとめると、本発明者らのデータは、MHGARP8、すなわちhGARPに
方向付けられる抗体が、活性なTGF-β産生を妨げるので、GARPが、ヒトTregによる活性な
TGF-β産生に必要とされることを実証している。
【0271】
(実施例3:MHGARP8は、TGF-βの存在を必要とする立体構造エピトープを認識するが、他の
>hGARP mAbは認識しない)
(>hGARPモノクローナル抗体によって認識される領域のマッピング)
マウスBW5147 T細胞を、hGARP、mGARP、又はmGARP/hGARPキメラに対応する、図3Aに配
列したHAタグ付きタンパク質をコードするプラスミドを用いて電気穿孔した。ネオマイシ
ン中で選択された安定なクローンを、ビオチン化抗hGARP抗体(>hGARP1から9)とストレプ
トアビジン-PEで、市販の抗hGARP抗体(クローンPlato-1)と二次抗mIgG2b-AF488で、又は
抗HA抗体と二次抗マウスIgG1-AF488で、染色した。ヒストグラムは、生細胞に対して選択
(gate)される。黒色ヒストグラムは、非形質移入BW細胞に対するシグナルを示し、白色ヒ
ストグラムは、HAタグ付きhGARPを発現しているBW細胞に対するシグナルを示し、灰色ヒ
ストグラムは、HAタグ付きmGARP又はmGARP/hGARPキメラを発現しているBW細胞に対するシ
グナルを示す。
【0272】
hGARP単独(BW+hGARP)を用いて、又はhTGFB1(BW+hGARP+hTGF-β1)を用いて安定に形質移
入した親BW5147 T細胞(BW、非形質移入)又はクローンを、ビオチン化抗hGARP抗体(>hGAR
P1から9)とストレプトアビジン-PEで、市販の抗hGARP抗体(クローンPlato-1)と二次抗mIg
G2b-AF488で、又は>mLAP-AF647若しくは>hLAP-APC抗体で、染色した。
【0273】
本発明者らは、MHGARP8がTregによる活性なTGF-β産生を阻害するが他の>hGARP mAbは
阻害しない機構を研究した。本発明者らは、MHGARP8が、他の>hGARP mAbによって認識さ
れるエピトープとは異なるhGARPにおけるエピトープを認識することができるという仮説
を立てた。
【0274】
MHGARP-1を除いて、本発明者らのMHGARP mAbは、マウスGARP(mGARP)を認識しない。し
たがって、本発明者らは、HAタグ付きhGARP、mGARP、又はhGARP/mGARPキメラをコードす
るプラスミドを構築して、本発明者らのmAbによって認識されるhGARP領域をマッピングし
た。本発明者らは、マウスBW細胞を形質移入し、HAタグ付きタンパク質(図3に模式的に表
す)を発現する安定なクローンを得た。すべてのクローンは、>HA mAbでの染色後の類似
の蛍光強度によって示される通り、表面上に類似のレベルのHAタグ付きタンパク質を発現
した(図3A)。予想通り、すべてのMHGARP mAbが、HAタグ付きhGARPを発現するクローンと
結合したのに対し、MHGARP-1以外はいずれも、HAタグ付きmGARPを発現するクローンと結
合しなかった。HAタグ付きhGARP/mGARPキメラに対する結合の分析から、4つの群のmAbが
顕在化した(図3A)。第1の群(MHGARP-6、-7、及び-9)におけるモノクローナル抗体は、い
ずれのキメラにも結合せず、これは、これらのモノクローナル抗体が、hGARP(領域20~10
1)のaa 20と101との間に位置するエピトープを認識することを示している。第2の群(MHGA
RP-2、-3、及び-8)におけるmAbは、5つのキメラのうちの1つのみと結合し、したがって、
領域101~141内のエピトープを認識する。第3の群は、MHGARP-5を含み、これは、キメラ
のうちの2つと結合し、したがって、領域141-207を認識する。この群は、おそらくMHGARP
-1も含有し、これは交差反応性であるが、mGARP又は3つの他のキメラと結合するよりも効
率的にこれらの2つのキメラと結合する。最後に、第4の群(MHGARP-4及びPlato-1)におけ
るmAbは、5つのキメラのうちの4つと結合し、したがって、領域265~333を認識する。
【0275】
先述のことに基づいて、本発明者らは、>hGARP mAbを、hGARPタンパク質の4つの異な
る領域を認識する4つのファミリーの抗体に分類した。MHGARP-8は、中和活性を示し、領
域101~141と結合する。この領域はまた、中和抗体ではないMHGARP-2及び-3によって認識
される。したがって、領域101~141と結合する能力は、中和活性を付与するのには十分で
はない。
【0276】
MHGARP-2、-3、及び-8によって認識されるエピトープをさらに定義するために、本発明
者らは、>hGARP抗体の、hGARP単独(BW+hGARP)、又はhGARPとhTGF-β1(BW+hGARP+hTGF-β
1)を発現するBW細胞のクローンに対する結合を比較した。MHGARP8という注目すべき例外
を除いて、すべての>hGARP抗体は、BW+hGARPと同じ強度でBW+hGARP+hTGF-β1を染色し、
これは、これらの2つのクローンが、細胞表面上で、同じレベルのhGARPを発現することを
示している。一方、MHGARP8抗体は、BW+hGARP+hTGF-β1を、BW+hGARPよりも強い強度で染
色した(図3B)。これは、hGARPレベルは、2つのクローンに対して類似であるが、MHGARP8
によって認識されるエピトープは、BW+hGARP細胞上よりもBW+hGARP+hTGF-β1上に豊富で
あることを示す。
【0277】
この知見に対する信頼できそうな説明は、MHGARP8によって認識されるエピトープが、h
GARPがマウス(m)又はヒト(h)TGF-β1と結合した時にのみ現れることである。これは、以
下の2つの機構のうちの1つに起因する可能性がある:該エピトープが、hGARPとTGF-β1と
の両方由来のアミノ酸を含む(混合型の立体構造エピトープ)、又は、該エピトープが、hG
ARPのみからのアミノ酸を含むが、これが、TGF-β1の存在下では、異なる高次構造をとる
(結合誘発型の立体構造エピトープ)。BW細胞は、マウスTGF-β1を発現し、マウスTGF-β1
は、hGARPと結合する(図3B)。したがって、MHGARP8のBW+hGARPへの(形質移入されたhTGF-
β1の非存在下での)結合は、hGARP/mTGF-β1複合体の認識に起因する可能性がある。
【0278】
MHGARP8が、TGF-β1と結合した場合にGARPを認識するという仮説を検証するために、本
発明者らは、共免疫沈降実験を実施した。本発明者らは、異なる抗GARP抗体を使用して、
BW+hGARP+hTGF-β1細胞からGARPを免疫沈降させ、次いで、TGF-βがGARPで共免疫沈降さ
れたかどうかを確認した。図3Cに示す通り、すべての抗GARP抗体は、GARPを効率的に免疫
沈降させた(図3C、一番上のパネル)。TGF-β1の共免疫沈降は、MHGARP-6、-7、-8、及び-
9 mAbで観察され、これは、これらの抗体が、TGF-β1と結合されたGARPと結合することを
示している。一方、MHGARP-1、-2、-3、-4、及び-5は、GARPを、他の抗GARP mAbと同じぐ
らい効率的に免疫沈降させたが、TGF-βを共免疫沈降させなかった(図3C、一番下のパネ
ル)。これは、MHGARP-1、-2、-3、-4、及び-5が、遊離のGARPを認識するが、TGF-βと結
合されたGARPは認識しないことを示す。結合のためにGARP101-141領域を必要とするMHGAR
P-2及び-3が、遊離のGARPのみを認識するのに対して、やはりGARP101-141を必要とする中
和MHGARP8が、TGF-βと結合されたGARPを認識することに留意することが重要である。
【0279】
この知見を裏付けるために、本発明者らは、低レベルの内在性TGF-β1を発現する293T
細胞を使用して、漸増量のhTGFB1を用いてhGARPを共形質移入した(図3D)。MHGARP-1、-2
、-3、-4、及び-5の結合は、hTGFB1がhGARPを用いて共形質移入された場合に用量依存的
に低下した。これは、最高量のhTGFB1では、完全に撤廃された。これは、MHGARP-1から-5
が、遊離のGARPのみに結合することを裏付ける。MHGARP-6、-7、及び-9の結合は、hTGFB1
の共形質移入によって改変されず、これは、これらのmAbが、TGF-β1に結合されるかどう
かにかかわらず、hGARPと結合する(すなわち、これらは、遊離のGARPと、TGF-β1に結合
したGARPとの両方に結合する)ことを示している。著しい対比として、MHGARP8の結合は、
hTGFB1がhGARPを用いて共形質移入された場合に、用量依存的に増大した。これは、やは
り、すべての他の抗体とは対照的に、MHGARP8が、遊離のGARPとは結合しないが、TGF-β1
と結合されたGARPとのみ結合することを示唆している。
【0280】
MHGARP8結合が、TGF-β1の存在を必要とすることを実証するために、本発明者らは、si
RNAを使用して、hGARPを用いて形質導入したJurkat細胞におけるTGFB1の発現を抑制した(
図3E)。TGFB1 mRNAに対するsiRNAは、Jurkat+hGARP細胞上で検出される表面LAPの減少に
よって示される通り、TGF-β1の発現を効率的に低下させた(図3E、右パネル)。Jurkat+hG
ARPにおけるTGF-β1の発現低下は、MHGARP8抗体の結合を低下させたが、他の抗GARP抗体
の結合は改変しなかった(図3E、最前面のヒストグラム)。これは、他の抗GARP抗体とは対
照的に、MHGARP8は、遊離のGARPとは結合しなかったが、TGF-β1の存在下でのみGARPと結
合することを裏付ける。
【0281】
最後に、本発明者らは、細胞表面上でのTGF-βの提示が、hGARP発現にかかわらず、MHG
ARP8による結合にとって十分であるという、見込みのない仮説を排除しようとした。言い
換えれば、本発明者らは、本発明者らは、MHGARP8が、hGARPとTGF-βとの両方の発現を必
要とする混合型の又は結合誘発型の立体構造エピトープを認識することを実証しようとし
た。このために、本発明者らは、hTGF-β1をコードするコンストラクトを用いて又は用い
ずに、先に記載したhGARP、mGARP、又はhGARP/mGARPキメラをコードするコンストラクト
を用いて、293T細胞を形質移入した。形質移入された細胞を、FACSによって分析して、MH
GARP8抗体の結合、及び、>hLAP抗体を用いて細胞表面上のhTGF-B1の提示を測定した(図4
)。非形質移入細胞と比較すると、hGARP、mGARP、又はhGARP/mGARPコンストラクト単独(h
TGFB1なし)の形質移入は、低レベルの内在性hTGFB1発現が原因で、低レベルの表面LAPを
誘発した(図4A、左)。表面LAPレベルは、hGARP、mGARP、又は任意のhGARP/mGARPコンスト
ラクトを用いて形質移入された細胞におけるhTGFB1の形質移入時に、劇的に増大した(図4
B、左のヒストグラム)。これは、hTGF-β1が、hGARPによって、mGARPによって、また、す
べてのhGARP/mGARPキメラによって、細胞表面上に提示されることを示す。重要なことに
、MHGARP8は、hGARPを用いて、又は、hGARPのアミノ酸101から141をコードするhGARP/mGA
RPコンストラクトを用いて形質移入された細胞の表面にのみ結合した(図4A及び4B、右)。
MHGARP8は、hTGFB1及びmGARPを用いて形質移入された細胞とも、hGARP101-141をコードし
ないhTGFB1及びhGARP/mGARPコンストラクトを用いて形質移入された細胞とも結合しなか
った(図4B、右)が、これらの細胞は、その表面上に高レベルのLAPを提示した(図4B、左)
。これは、(mGARP又はhGARP/mGARPキメラによる)細胞表面上のTGF-β1の提示が、MHGARP8
による結合にとって十分ではないことを実証する。MHGARP8の結合は、hGARP(領域101-141
)と、細胞表面上のTGF-β1との両方の存在を必要とする。
【0282】
先に示した通り、MHGARP8は、mGARPとは結合しない。hGARPへのその結合は、アミノ酸1
01から141を含む領域を必要とする。MHGARP8によって認識されるエピトープをさらに定義
するために、本発明者らは、ヒト及びマウスGARPにおける領域101~141の配列を比較した
。この領域では、hGARPとmGARPとの間に、13アミノ酸の違いしかなかった(図5、灰色ボッ
クスによって強調されたアミノ酸)。本発明者らは、3つのHAタグ付き変異体型のhGARPを
構築した。各変異体(Mut I、Mut II、及びMut III)では、3つの連続したアミノ酸が、mGA
RPタンパク質の対応するアミノ酸によって置き換えられた(図5、黒色ボックス)。本発明
者らは、これらのHAタグ付き型の野生型(WT)又は変異体hGARPを用いて形質移入された、B
W細胞の安定なクローンを得た。すべてのクローンは、>HA抗体で染色することによって
実証される通り、表面上に、類似のレベルのHAタグ付きタンパク質を発現した(図5、右側
のヒストグラム)。次いで、本発明者らは、MHGARP-2、-3、及び-8、すなわち、結合のた
めのhGARPの領域101~141を必要とする抗体で染色した後に、クローンを分析した。この3
種の抗体は、WT、Mut I及びMut II型のhGARPを発現する細胞に結合した。一方、Mut III
型のhGARPを発現する細胞に対する結合は大きく低下し、これは、MHGARP-2、-3、及び-8
が、結合のためにhGARPのアミノ酸137-138-139を必要とすることを示している。
【0283】
まとめると、本発明者らのデータは、MHGARP8が、ヒトTregによる活性なTGF-β1産生を
阻害する、唯一の利用可能な抗GARP抗体であることを示す。この中和活性は、他のすべて
の抗GARP抗体によって結合されるのとは異なるエピトープに対するMHGARP8の結合と関連
している:MHGARP8の結合は、hGARPの領域101~141と、hTGF-βの存在との両方を必要とす
るのに対して、非中和抗体の結合は、(MHGARP-1、-4、-5、-6、-7、及び-9については)hG
ARPの他の領域を必要とする、又は、(MHGARP-2及び-3については)TGF-β1の非存在下での
み生じる。領域hGARP101~141では、アミノ酸137から139が、MHGARP-2、-3、及び-8の結
合のために必要とされる。
【0284】
固定化されたshGARP-TGFβに対するMHGARP8抗体の親和性を、BIACOR分析によって測定
した:前記抗体のKdは、0.2nMである。
【0285】
(実施例4:MHGARP8は、インビボでヒトTreg細胞機能を阻害する)
MHGARP8がまた、インビボでヒトTregを阻害するかどうかを調べるために、本発明者ら
は、免疫無防備状態のNOD-Scid-IL2Rg-/-(NSG)マウスへのヒトPBMC(末梢血単核球)の導入
によって誘発される異種GvHDのモデルを使用した。NSGマウスは、機能性のT、B、及びNK
細胞を欠いている。これによって、レシピエントマウスにおける機能性のヒト免疫系を増
殖及び産生するヒト造血幹細胞(HSC)の効率的な生着が可能になる。HSCの代わりにヒトPB
MCが使用される場合、T細胞の効率的な生着が起こるが、それに伴って、間もなく異種間
の移植片対宿主病(GvHD)の発症が起こる。このモデルでは、GvHDは、レシピエントNSGマ
ウスの組織を外来物として認識するヒトドナーの細胞毒性Tリンパ球の活性に起因する(Sh
ultzらの文献、Nature 2012,12:786-798)。GvHDの重症度は、ヒトPBMCを用いた共導入ヒ
トTreg細胞によって低下することができる(Hannonらの文献、Transfusion 2014)。
【0286】
ヒトPBMCを、密度勾配遠心分離(Lymphoprep(商標))によって、ヘモクロマトーシスドナ
ーの全血から単離し、その後の使用のために凍結した。自己Tregは、次の通りに産生した
:CD4+T細胞を、RosetteSep(商標)ヒトCD4+T細胞Enrichment Cocktail(StemCell Technolo
gies社)を使用して、同じドナーの血液から単離し、蛍光色素とカップリングさせた抗CD4
、抗CD25、及び抗CD127抗体で染色した。フローサイトメトリー(純度>99%)によってCD4+
CD25hiCD127lo細胞を選別し、次いで、IL-2(120IU/ml)の存在下で、抗CD3/CD28コーティ
ングビーズ(Dynabeads(登録商標)T-細胞増殖及び活性化のためのHuman T-Activator CD3/
CD28、Life Technologies社)で、14日間刺激した。これらの増殖されたTreg細胞を、その
後の使用のために凍結した。
【0287】
NSGマウスを、第1日に照射し(2.5Gy)、次いで、尾静脈内に、ヒトPBMC(2.7×106/マウ
ス)を、単独で、又は増殖されたヒトTreg(1.4×106/マウス)(第0日)と混合して注射した
。マウスはまた、週1回、MHGARP8抗体(第-1日(第マイナス1日)に400μg、その後の時点で
は200μg)、又は対照PBSの腹腔内注射を受けた。マウスを、本文で示した通り、隔週で、
GvHD発症について観察した。
【0288】
本発明者らは、ヒトPBMCを、NSGマウスにおいて、Tregと共に又は伴わずに導入し、こ
のマウスを、MHGARP8抗体又は対照PBSの腹腔内注射を用いて治療した。導入に必要とされ
る多数のヒトTreg細胞は、ヒトPBMCからフローサイトメトリーによって選別されたCD4+CD
25+CD127lo細胞の短いインビトロ増幅を介して得た。レシピエントマウスにおけるGvHD発
症の客観的徴候を、隔週で観察した。本発明者らは、2つの独立した実験を実施し、類似
の結果がもたらされた。実験1(図6A)では、GvHD(平均スコア≧1)の徴候は、ヒトPBMCの注
射の29日後に現れた(第I群;n=2)。疾患重症度は、直ちに増大し、2匹のマウスのうちの1
匹は、倫理的理由で、第55日に安楽死させた。PBMC及びTregを注射したマウス(第II群;n=
3)では、PBMC単独と比較して、GvHDの出現が遅かった(58日後に平均スコア≧1に到達した
)。これは、Tregが、予想通り、NSGマウスをGvHDから、ある程度保護することを示す。重
要なことに、MHGARP8抗体と共にPBMC及びTregを与えられたマウス(第III群、n=6)の治療
は、疾患を悪化させた:GvHDの徴候は、第II群のマウスよりも(36日)早く現れた。PBMCの
み(第I群)、又はPBMC及びMHGARP8(第IV群;n=4)を与えられたマウス間に、疾患スコアの差
が認められなかったので、MHGARP8の効果は、Tregの存在に依存するように思われる。本
発明者らは、群あたりのマウスの数を増やして、この実験を繰り返した(図6B)。また、Tr
egとPBMCとの共注射は、PBMC単独と比較して、GvHDの出現を遅らせ(第I群における28日に
対して第II群における46日)、MHGARP8抗体での治療は、非治療マウス(第II群における46
日)と比較して、PBMC及びTregを与えられたマウス(第III群における28日)において、GvHD
を悪化させた。まとめると、これは、MHGARP8が、インビボで、ヒトTregの免疫抑制機能
を阻害することを示す。
【0289】
(実施例5:ラマの免疫化手法を使用する新規の抗hGARPモノクローナル抗体(mAb))
(組み換え可溶性のGARP-TGFβ1複合体の産生)
ヒト及びマウスGARP-TGFβ1複合体を、切断されたGARP発現コンストラクトを使用して
、可溶性の複合体として産生した。ヒトGARPタンパク質配列を、ロイシン628、続いて切
断可能なTEV-3x strep tag
【化59】
の後で切断した。マウスGARPタンパク質配列を、ロイシン629、続いて
同じ切断可能なTEV-3x strep tagの後で切断した。HEK293E細胞における切断されたGARP
とTGFβ1の共発現によって、GARP-TGFβ1複合体を産生し、続いて、Strep-Tagを介して精
製を行った。
【0290】
(ラマの免疫化)
ラマの免疫化、及び末梢血リンパ球(PBL)の採取、並びにそれに続くRNAの抽出、及び抗
体断片の増幅を、De Haard及びその同僚によって記載されている通りに実施した(De Haar
d Hらの文献、J. Bact., 187: 4531-4541, 2005)。4頭のラマを、本特許出願に記載され
ているMHGARP8(MHG-8)モノクローナル抗体を使用するフローサイトメトリーによって確認
される通り、ヒトGARP及びTGF β1を過剰発現しているBW細胞で免疫化した(図7A)。これ
らのラマは、6週間にわたる週1回の頸部への筋肉内注射で免疫化した。約107個の細胞を
、頸筋に注射し、フロイントの不完全アジュバントを、細胞の注射部位から数センチメー
トルに位置する第2の領域に注射した。別の4頭のラマを、ヒトGARP cDNAとヒトTGFβ1 cD
NA発現ベクターとの混合物で、2週に1回、4回の反復注射で免疫化した。
【0291】
免疫化の前及び後に、10mlの血液試料を収集して、免疫応答を調べた。最後の免疫化の
3から4日後、400mlの血液を収集して、Ficoll-Paque勾配及びChomczynski Pらの文献(Ana
l. Biochem. 162: 156-159, 1987)に記載されている方法を使用して調製されたPBLから、
全RNAを抽出した。平均すると、450μgのRNA収量が実現し、これを使用して、De Haard H
らの文献(J Biol Chem.1999 Jun 25;274(26):18218-30)によって記載されている通りに、
Fab含有ファージミドライブラリの構築のために、重鎖及び軽鎖(Vλ及びVκ)のV-領域の
ランダムcDNA合成及びPCR増幅を行い、優れた多様性(1~7×108)の多様なライブラリを得
た。
【0292】
GARP-TGF β1複合体に対する免疫応答を、コーティングされた組み換え型の可溶性GARP
-TGF β1複合体(1μg/ml)に対するELISAによって研究した。10%血清から出発する血清の5
倍段階希釈物を調製し、100μlの希釈された血清を、コーティングされたウェルに添加し
、室温で1時間インキュベートした。3×PBS/Tweenでの洗浄後、プレートを、1%カゼイン
を添加したPBSでブロッキングした(図8)。従来のラマIgG1の、その標的GARP-TGFβに対す
る結合を、マウス抗ラマIgG1抗体(クローン27E10、Daley LPらの文献、Clin.Diagn Lab I
mmunol.12,2005)と、検出のためのHRP結合ロバ抗マウス抗体(Jackson社)を使用するELISA
において測定した。
【0293】
(GARP-TGFβ1特異的なFabの選択及びスクリーニング)
標準のプロトコルに従って、Fabを発現するファージを産生し、標準のファージディス
プレイプロトコルに従って、トリプシンを用いて、GARP-TGF β1結合ファージの全溶離液
を用いて、固定化された組み換え型の可溶性GARP-TGF β1に対して選択を実施した。
【0294】
2から3回の選択を実施して、前記ファージによって発現されるヒトGARP-TGF β1特異的
Fabについて濃縮した。hGARP及びhTGF β1(LAP)カウンターセレクションを使用して、hGA
RP-TGF β1複合体と結合するFabについて濃縮した。それぞれのコロニーを単離し、標準
のプロトコルに従って、すべてのライブラリからのIPTG誘導によって、96ウェルプレート
中に(周囲の)周辺質画分をもたらした。
【0295】
ELISAを使用して、hGARP-TGFβ特異的Fabのスクリーニングを実施した。hGARP-TGF β1
を、マキシソーブ(maxisorb)プレート上に固定化した。1%カゼイン(PBS中)での1時間のブ
ロッキングの後、20μlの周辺質抽出物からのFabを、hGARP-TGF β1と結合させた。
【0296】
(モノクローナル抗体の特徴付け)
GARP-TGFβ1/GARP特異的クローンを、VH及びVL領域において配列決定し、VHにおけるCD
R3の配列に基づいてVHファミリーに分けた。17ファミリーが特定された。特定された各VH
ファミリーのうち、本発明者らは、少なくとも1つの代表的なクローンを、完全ヒトIgG1(
LHG1-LHG17)にクローン化した。これらのモノクローナル抗体を、Biacore上で、可溶性ヒ
トGARP-TGFβ1複合体に対するその結合特性について分析した。組み換え型の可溶性のヒ
トGARP-TGFβ1を、CM5チップ(GE Healthcare社)上に約4,000 RUで固定化した。
【0297】
モノクローナル抗体と、HEK-293細胞上に発現されるヒト及びカニクイザルGARP-TGFβ1
複合体との結合を、FACSによって分析した。カニクイザルGARP及びカニクイザルTGFβ1コ
ード配列を、カニクイザル末梢血リンパ球(PBMC)由来のcDNA試料からクローン化した。プ
ライマーは、完全配列の重複部分の増幅による、カニクイザルGARP(XM_005579140.1; 配
列番号:41)及びカニクイザルTGF β1(XM_005589338.1;配列番号:42)の予測される配列を
基にした。カニクイザルGARPとカニクイザルTGFβ1との両方について、3つの別のPCR増幅
産物が、分析されるDNA配列であった。これらを、予測される配列と完全に整列させた。
カニクイザルGARP及びカニクイザルTGFβ1を、HEK293E細胞における一過性の過剰発現の
ためのpCDNA3.1にクローン化した。カニクイザルGARP-TGFβ1に対する結合を、ヒトGARP-
TGFβ1に対する結合と、FACS上で比較した。LHG-10及びシャッフルされたバリアント(LHG
-10.3からLHG-10.6)は、カニクイザルGARP-TGFβ1と交差反応性であるとみなすことがで
きる(図9)。
使用されるプライマー:
【化60】
【0298】
(親和性向上のためのVKシャッフリング)
VK鎖シャッフリングを使用して、mAb LHG-10の親和性を向上させた(図10)。この方法で
は、親クローンの重鎖(LHG-10のVHCH1)を、ファージミド軽鎖ライブラリに再導入した。
重鎖を、ディスプレイに必要な、バクテリオファージ由来遺伝子3(bacteriophage derive
d gene 3)を欠く発現ベクターから抽出し、選択手順において、親の軽鎖の混入をさらに
回避した。重鎖を、ファージミド軽鎖ライブラリにクローン化し、連結されたDNAを、E.c
oli TG1 細胞に電気穿孔で導入し、軽鎖シャッフルされたライブラリを作製した。ライブ
ラリのサイズは、108超であった。
【0299】
オフレート洗浄と組み合わせた親和性選択を実施して、ヒトGARP-TGFβ1に対する親和
性が向上した鎖シャッフルされたFabについて選択した。設定を選択し、そこで、Fabを発
現しているファージを、microsorbプレートに直接コーティングされる異なる濃度の組み
換え型の可溶性のヒトGARP-TGFβ1と共にインキュベートした。
【0300】
コーティングされた組み換え型の可溶性ヒトGARP-TGFβ1よりも過剰に、組み換え型の
可溶性ヒトGARP-TGFβ1を添加することによって、より親和性の高いファージの結合が促
された。各回の洗浄時間を増加させて(表3)、より親和性が低いバリアントを洗い流すこ
とによって、より優れたオフレートを有するファージについて選択した。ファージをトリ
プシンで溶出し、E.coli TG1細胞の感染のために使用した。合計で5回の選択を行った。
さらに、その後の回では、インプットファージの量を低下させて、一方ではバックグラウ
ンドを低減し、他方ではmAb濃度を下げ、それによって選択の厳密性を増大させた。
表3:VKシャッフリングに対する各回の選択で変動させたパラメータ
【表3】
【0301】
選択回のIII、IV、及びVからの、少なくとも24クローンのスクリーニングを実施した。
これらのクローンを、ディープウェルプレート(1ml表記)中で成長させ、周辺質画分を調
製した。これらの周辺質抽出物を、オフレートの向上について、Biacore上で分析した。
オフレートが向上した上位4つのFabクローンを、hIgG1(LHG-10シリーズ)にクローン化し
、また、Fc領域内にN297Q置換を伴うエフェクター機能欠乏バリアントhIgG1(LHG-10-Dシ
リーズ)、及び生じたIgGを、Biacore上で、結合特性の向上について分析した(表4)。さら
に、LHG-10-D IgGを、cyno GARP/cyno TGFβ1又はヒトGARP/ヒトTGFβ1を用いて形質移入
されたHEK-293E細胞を使用するFACSベースの分析において、cyno GARP/cyno TGF-β1に対
する交差反応性についてチェックした。MHGARP8も、この交差反応性分析において試験し
た。すべてのLHG-10-D及びMHG-8は、cyno GARP/cyno TGFβ1に対して交差反応性である(
図9)。
表4:シャッフルされたクローンの結合特性
【表4】
【0302】
(実施例6:2種の抗hGARP mAb(MHGARP8及びLHG-10)は、ヒトTregによる活性なTGF-β1産生
を阻害する)
刺激されたヒトTregは、その細胞表面の近くに活性なTGF-β1を産生する。自己分泌及
び傍分泌TGF-β1活性は、Tregそれ自体における、また、Tregと共に共培養されたTh細胞
における、SMAD2リン酸化を誘発する(Stockis,J.らの文献、Eur.J.Immunol.2009,39:869-
882)。GARPが、TregによるTGF-β1活性化に必要とされるかどうかを試験するために、本
発明者らは、抗hGARP mAbの存在又は非存在下で、ヒトTregを刺激し、ウエスタンブロッ
トによって、SMAD2のリン酸化を測定した。ヒトTregの供給源として、本発明者らは、PBM
Cから選別されたCD4+CD25hiCD127lo細胞を使用し、12~14日間、インビトロで増幅した(G
authy Eらの文献、PLoS One.2013 Sep 30;8(9):e76186)。メチル特異的qPCRによって決定
される通り、増幅された細胞集団は、脱メチル化されたFOXP3i1アレルを有する細胞を44
から82%含有し、これは、Tregが依然として増幅された細胞集団内で非常に濃縮されてい
ることを示している。
【0303】
予想通り、刺激されたTregにおいて、リン酸化されたSMAD2が検出されたが、刺激され
ていないTregにおいても、中和-抗TGF-β1抗体の存在下で刺激されたTregにおいても検出
されなかった(図11)。リン酸化されたSMAD2は、MHGARP8(図11AではMHG-8と称される)又は
LHG-10(図11B)の存在下で刺激されたTregにおいて、大きく減少し、これは、これらの2種
の抗hGARP mAbが、活性なTGF-β産生を阻止することを示している。29種の他の新規の抗h
GARP mAb、並びに4種の市販品として入手できる抗hGARP mAbは、TregによるTGF-β産生を
阻止しなかった(図11)。
【0304】
MHGARP8及びLHG-10の阻害活性は、GARPが、ヒトTregによる活性なTGF-β1産生に必要と
されることを示す。
【0305】
(実施例7:MHGARP8及びLHG-10は、インビトロでヒトTregの抑制活性を阻害する)
本発明者らは、ヒトTregが、他のT細胞を、活性なTGF-β1の産生を通して、少なくとも
ある程度抑制することを、以前に示した(Stockis,Jらの文献、Eur.J.Immunol.2009,39:86
9-882)。したがって、本発明者らは、インビトロ抑制分析において、MHGARP8(MHG-8)及び
LHG-10もヒトTreg機能を阻害するかどうかを試験した。本発明者らは、Tregの供給源とし
てTreg クローンを使用し、抑制のための標的としてのCD4+CD25-CD127hi細胞又はCD4+T細
胞クローン(Th細胞)を新たに単離した。Treg及びTh細胞を、様々な追加のmAbの存在又は
非存在下で、>CD3及び>CD28で刺激した。図12に示す通り、クローンTreg A1は、抗hGAR
P mAbの非存在下で、CD4+CD25-CD127hiTh細胞の増殖を66%阻害した。MHG-8又はLHG-10の
存在下では、抑制は、それぞれ36%及び32%に低下したが、6種の他の抗hGARP mAbの存在下
では低下しなかった。本発明者らはまた、MHGARP8、抗hTGF-β1 mAb、又はアイソタイプ
対照の存在下で、別のTh標的(クローンTh A2)に対する、クローンTreg A1による抑制を測
定した。MHGARP8(MHG-8)は、Treg A1のインビトロ抑制活性を、抗TGF-β1抗体のインビト
ロ抑制活性と類似の様式で阻害したのに対して、アイソタイプ対照は、効果を示さなかっ
た(図12)。
【0306】
(実施例8:阻害性抗hGARP mAbによって認識されるエピトープ)
ほんの少数(2/35)の抗hGARP mAbのみが、Tregによる活性なTGF-β産生及び抑制を阻止
する。これは、非阻害性mAbによって結合されるのとは異なるエピトープ(1又は複数)と結
合するその能力に起因する可能性がある。したがって、本発明者らは、阻害性及び非阻害
性mAbによる結合に必要とされる領域をマッピングした。
【0307】
GARPは、pro-又は潜在型TGF-β1と結合して、ジスルフィド結合されたGARP/TGF-β1複
合体を形成する(図13、及びStockisの文献、2009b Eur.J.Immunol.2009.39:3315-3322、
及びGauthy Eらの文献)。本発明者らは、第1に、hGARP及びhTGFB1を用いて形質移入され
たマウスBW細胞における共免疫沈降(IP)実験を使用して、抗hGARP mAbもGARP/TGF-β1複
合体と結合するかどうかをを決定しようとした。本発明者らは、32種の抗hGARP mAb:本発
明者らの31種の新規mAb及び市販品として入手できるPlato-1 mAbを試験した。すべてのmA
bは、GARPを効率的に免疫沈降させた(図14Aの一番上のパネル、12種の代表的なmAbについ
てのIPを示す)。Pro-TGF-β1、並びにLAP及び成熟TGF-β1(すなわち潜在型TGF-β1)は、2
4種のmAbで共免疫沈降し、これは、これらが、GARP/TGF-β1複合体と結合することを示し
ている(図14Aに示される6種のmAb、真ん中及び下のパネル)。一方、8種のmAb(図14Aにお
いて示される3種)は、pro-又は潜在型TGF-β1を共免疫沈降させず、これは、これらが、
遊離のGARPと結合するがGARP/TGF-β1複合体とは結合しないことを示唆している。
【0308】
本発明者らは、形質移入された293T細胞のFACS分析によってこれを確認した(図14B)。
非形質移入 293T細胞は、GARPをまったく、内在性TGF-β1を非常に低レベルしか発現しな
い。潜在型TGF-βは、抗LAP抗体を伴うその表面上には検出されない。GARP又はTGFB1単独
の形質移入は、それぞれ、表面LAPをまったく又は少ししか誘発しないのに対して、GARP
とTGFB1との共形質移入は、潜在型TGF-β1結合とGARPによる提示の結果としての多くの表
面LAPを誘発する(図14B、左のヒストグラム)。形質移入された293T細胞の分析から、3つ
の群の抗hGARP mAbが顕在化し、これを図13B中の第3列に分類する。第1群(左列)は、pro-
又は潜在型TGF-β1を共免疫沈降させなかった8種のmAbを含む:これらは、hGARP単独を用
いて形質移入された293T細胞と結合したが、hGARP及びhTGFB1とは結合しなかった。これ
は、表面GARPに対する結合が、TGF-β1の存在下で失われるので、これらのmAbが、遊離の
GARPのみと結合することを裏付ける(図14Bは、この群の3種の代表的なmAbを示す)。第2群
は、他のほとんどのmAbを含む(19種のmAb、図13Bの中央列):これらは等しく、hGARP単独
を用いる、又はhGARP及びhTGFB1を用いる形質移入後の293T細胞と十分に結合し、これは
、これらが、遊離のGARPとGARP/TGF-β1複合体の両方と結合することを示している(図14B
は、この群の6種のmAbを示す)。興味深いことに、第3群の5種のmAbは、hGARP及びhTGFB1
を用いて形質移入された293T細胞と結合したが、hGARP単独を用いて形質移入された細胞
とは結合しなかった(図13Bの右列)。これらのmAbは、GARP/TGF-β1複合体と結合するが、
遊離のGARPとは結合せず、これには、阻害性MHGARP8(MHG-8)及びLHG-10が含まれる(図14B
は、この群の3種のmAbを示す)。
【0309】
先述のことから、本発明者らは、ほとんどのmAbが、遊離のGARPのみ(8/32)、又は遊離
のGARP及びGARP/TF-β1複合体(19/32)と結合することを結論付けた。阻害性MHGARP8(MHG-
8)及びLHG-10、また3種の非阻害性mAbを含めた5種のmAbのみ、GARP/TGF-β1複合体と結合
し、且つ遊離のGARPとは結合しない。この認識のパターンからは、MHGARP8及びLHG-10の
みが阻害性である理由は説明できない。
【0310】
本発明者らは、次に、種々のmAbによる結合に必要とされるhGARPの領域を定義しようと
した。圧倒的多数の抗hGARP mAbは、マウスGARP(mGARP)に対して交差反応しない。したが
って、本発明者らは、HAタグ付きmGARP/hGARPキメラをコードするプラスミドを構築し(図
15A、左パネル)、これらを、先に決定された結合要件に応じて、hTFGB1と共に又は伴わず
に、293T細胞において形質移入した。抗HA mAbでの染色によって明らかにされる通り、29
3T細胞の表面上では、すべてのキメラが、類似のレベルで発現された(図15A、右側のヒス
トグラム)。mGARP/hGARPキメラ(図15A、10種の代表的なmAb)に対する結合パターンによっ
て、各抗hGARP mAbによる結合に必要とされるhGARPの領域が特定された。これを、図15B
にまとめる。ここでは、mAbは、hGARPの種々の領域に対応する列に分配され:第1列におけ
るmAbは、アミノ酸20から101(hGARP20-101)を含む領域を必要とし、第2列におけるmAbは
、hGARP101-141を必要とし、第3列におけるmAbは、hGARP141-207を必要とし、第4列は、h
GARP265-332、そして最後に、第5の群は、hGARP332-628を必要とする。しかし、結合に必
要とされる領域と考えられる場合でも、阻害性MHGARP8(図ではMHG-8と称される)及びLHG-
10によって認識されるエピトープは、非阻害性mAbのものとは区別できないであろう:MHGA
RP8及びLHG-10は、LHG-3、-12、及び-13と同様に、hGARP101-141を含有するGARP/TGF-β
複合体と結合する。
【0311】
マウスとヒトGARP101-141の配列は、3つの隣接する位置の3つのクラスターを含む14ア
ミノ酸(aa)位置で異なる(図15B、左パネル)。本発明者らは、3つの変異バージョンのhGAR
Pを構築した。各変異体において、領域101~141からの一連の3つの隣接するaaが、mGARP
において見られるaaによって置き換えられた。本発明者らは、試験されるmAbの結合要件
に応じてHAタグ付き変異体単独を用いて又はHAタグ付き変異体とともにhTGFB1を用いて、
293T細胞を形質移入した。変異体に対する結合パターンによって、結合のためのアミノ酸
hGARP111-113、hGARP126-127、又はhGARP137-139をそれぞれ必要とする、3種類のmAbが明
らかになった(図15B、右パネル)。MHGARP8(図ではMHG-8と称される)及びLHG-10を含めた6
種のmAbは、hGARP137-139を必要とする(図13B)。6種のうちの4種が遊離のhGARPと結合で
きるのに対し、MHG-8及びLHG-10は、GARP/TGF-β1複合体に関してhGARP137-139を必要と
する唯一のmAb群である。
【0312】
先述のことから、本発明者らは、MHGARP8及びLHG-10によるTGF-β産生の阻害が、他の
すべての非阻害性抗hGARP mAbによって認識されるのとは異なるエピトープと結合する能
力と関係していることを結論付けた。
【0313】
(実施例9:インビボでの抗hGARPによるヒトTreg機能の阻害)
本発明者らは、次に、阻害性抗hGARP mAbが、インビボでヒトTreg機能を阻害する可能
性があるかどうかを評価しようとした。本発明者らは、免疫無防備状態のNOD/Scid/IL2Rg
-/-(NSG)マウスへのヒト末梢血単核球(PBMC)の導入によって誘発される、異種間の移植片
対宿主病(GVHD)のモデルを使用した。NSGマウスは、不完全なサイトカインシグナル伝達
を有し、且つ機能性のT、B、及びNK細胞を欠いており、PBMCの静脈注射後の、ヒトT細胞
の非常に効率的な生着が可能である。PBMC導入の30から40日後、レシピエントマウスは、
マウス組織に対するヒト細胞毒性Tリンパ球の活性が原因で、異種GVHDを発症する(Shultz
の文献、Nat Rev Immunol.2012 Nov;12(11):786-98)。このモデルでは、ヒトTregとヒトP
BMCとの共導入は、GVHDを減弱化し(Hannonらの文献、Transfusion.2014 Feb;54(2):353-6
3)、インビボでのヒトTregに対する抗hGARP mAbの阻害活性を試験するためのモデルが提
供される。
【0314】
本発明者らは、NSGマウスにおいて、自己Treg(1.5×106/マウス)と共に又は伴わずに、
ヒトPBMC(3×106/マウス)を導入した(図16A)。本発明者らは、ヒトTregの供給源として、
先に記載する通り、インビトロで短時間増幅されている血液CD4+CD25hiCD127lo細胞を使
用した。さらに、マウスに、MHGARP8(図ではMHG-8と称される)、抗TGF-β1、アイソタイ
プ対照、又はPBSを、移植の1日前に、その後は週1回注射した。GVHDの客観的徴候を、隔
週で観察して、体重減少、運動性の低下、貧血又は黄疸、及び脱毛に基づいて、疾患スコ
アを確立した。本発明者らは、4つの独立した実験を実施し(図16B)、その詳細な結果を、
一例として示す(図16C)。実験に応じて、疾患の発症(平均GVHDスコア≧1)は、mAbなし又
はアイソタイプ対照を与えられたマウスの群において、PBMC導入の28から41日後に認めら
れた。Tregの共導入は、疾患を遅らせ、疾患は導入の46から72日後に発症し、これは、ヒ
トTregが、異種抗原に対するヒトT細胞応答を抑制することができたことを示している。P
BMCとTregを導入したマウスへのMHGARP8の投与は、Tregの予防効果を撤廃した:疾患は、P
BMCのみを与えられたマウスと同じぐらい早く(導入の28から44日後)発症した。MHGARP8に
よるTreg抑制機能の阻害は、中和-抗TGF-β1抗体を用いて観察されたものと類似であった
。アイソタイプ対照は、効果を有しなかった。
【0315】
まとめると、これは、MHGARP8が、インビボで、ヒトTregの免疫抑制機能を阻害するこ
とを示す。
本件出願は、以下の態様の発明を提供する。
(態様1)
TGF-βの存在下で反復優位糖タンパク質A(GARP)と結合するタンパク質。
(態様2)
TGF-βの存在下でGARPのみと結合する、態様1記載のタンパク質。
(態様3)
GARPがTGF-βと複合体形成された場合にGARPと結合する、態様1又は2記載のタンパク質

(態様4)
GARPとTGF-βとの複合体と結合する、態様1から2のいずれか1項記載のタンパク質。
(態様5)
TGF-βシグナル伝達を阻害する、態様1から4のいずれか1項記載のタンパク質。
(態様6)
全長抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体、二量体単鎖抗体、Fv、Fab、F(ab)’2、脱フコシル
化抗体、二重特異性抗体、二量体抗体、三量体抗体、四量体抗体からなる群から選択され
る抗体分子;又は、ユニボディ、ドメイン抗体、及びナノボディからなる群から選択され
る抗体断片;又は、アフィボディ、アフィリン、アフィチン、アドネクチン、アトリマー
、エバシン、DARPin、アンチカリン、アビマー、フィノマー、ヴァーサボディ、及びデュ
オカリンからなる群から選択される抗体模倣体である、態様1から5のいずれか1項記載の
タンパク質。
(態様7)
GARPの1以上のアミノ酸を含む立体構造エピトープ、又はGARPが潜在型TGF-βと複合体
形成されている結果として改変されたGARPのエピトープと結合する、抗体又はその抗原結
合断片である、態様1から6のいずれか1項記載のタンパク質。
(態様8)
前記重鎖の可変領域が、
次のCDR:
(化1)
又は配列番号:2~4若しくは52と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCD
Rの少なくとも1つを含む、
又は、前記軽鎖の可変領域が、
次のCDR:
(化2)
又は配列番号:5~7と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少なく
とも1つを含む、
或いは、前記重鎖の可変領域が、次のCDR:
(化3)
又は配列番号:13~15と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少な
くとも1つを含む、
又は、前記軽鎖の可変領域が、次のCDR:
(化4)
(ここでは、X 1 はS又はTであり、X 2 はS又はVであり、X 3 はY又はFである);
(化5)
(ここでは、X 1 はG又はRであり;X 2 はA又はTであり;X 3 はR又はIであり;X 4 はL又はPであり;
X 5 はQ又はKである);
(化6)
(ここでは、X 1 はD、A、Y、又はVであり;X 2 はA、L、又はVであり;X 3 はV又はPである);
又は配列番号:16~18と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少な
くとも1つを含む、
態様1から7のいずれか1項記載のタンパク質。
(態様9)
前記重鎖の可変領域が、
次のCDR:
(化7)
又は配列番号:2~4若しくは52と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCD
Rの少なくとも1つを含み、
且つ、前記軽鎖の可変領域が、
次のCDR:
(化8)
又は配列番号:5~7と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少なく
とも1つを含む、
或いは、前記重鎖の可変領域が、次のCDR:
(化9)
又は配列番号:13~15と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少な
くとも1つを含み、
且つ、前記軽鎖の可変領域が、次のCDR:
(化10)
(ここでは、X 1 はS又はTであり、X 2 はS又はVであり、X 3 はY又はFである);
(化11)
(ここでは、X 1 はG又はRであり;X 2 はA又はTであり;X 3 はR又はIであり;X 4 はL又はPであり;
X 5 はQ又はKである);
(化12)
(ここでは、X 1 はD、A、Y、又はVであり;X 2 はA、L、又はVであり;X 3 はV又はPである);
又は配列番号:16~18と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRの少な
くとも1つを含む、
態様1から8のいずれか1項記載のタンパク質。
(態様10)
前記重鎖の可変領域が、次のCDR:
(化13)
を含み、前記軽鎖の可変領域が、次のCDR:
(化14)
又は前記配列番号:2~7と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRを含
む;
或いは、前記重鎖の可変領域が、次のCDR:
(化15)
を含み、前記軽鎖の可変領域が、次のCDR:
(化16)
又は前記配列番号:52及び3~7と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCD
Rを含む;
或いは、前記重鎖の可変領域が、次のCDR:
(化17)
を含み、前記軽鎖の可変領域が、次のCDR:
(化18)
(ここでは、X 1 はS又はTであり、X 2 はS又はVであり、X 3 はY又はFである);
(化19)
(ここでは、X 1 はG又はRであり;X 2 はA又はTであり;X 3 はR又はIであり;X 4 はL又はPであり;X
5 はQ又はKである);
(化20)
(ここでは、X 1 はD、A、Y、又はVであり;X 2 はA、L、又はVであり;X 3 はV又はPである);
又は前記配列番号:16~18と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を有するCDRを
含む、
態様1から9のいずれか1項記載のタンパク質。
(態様11)
前記重鎖可変領域をコードする前記アミノ酸配列が、配列番号:8若しくは配列番号:50
であり、前記軽鎖可変領域をコードする前記アミノ酸配列が、配列番号:9若しくは配列番
号:51である、又は、軽前記重鎖可変領域をコードする前記アミノ酸配列が、配列番号:34
であり、前記軽鎖可変領域をコードする前記アミノ酸配列が、配列番号:35~39;又は前記
配列番号:8~9、50~51若しくは34~39と少なくとも60%の同一性を有するアミノ酸配列を
有する任意の配列のうちの1つである、態様1から10のいずれか1項記載のタンパク質。
(態様12)
配列番号:8に若しくは配列番号:50に示される通りの重鎖可変領域と、配列番号:9に若
しくは配列番号:51に示される通りの軽鎖可変領域とを含む抗体によって、又は、配列番
号:34に示される通りの重鎖可変領域と、配列番号:35~39に示される通りの軽鎖可変領域
のうちの1つとを含む抗体によって認識される、アミノ酸配列・配列番号:1を有するポリ
ペプチド上のエピトープと結合する、態様1から11のいずれか1項記載のタンパク質。
(態様13)
2013年5月30日に受託番号LMBP 10246CBで登録されたハイブリドーマによって産生され
た抗体又は抗原結合断片。
(態様14)
2013年5月30日に受託番号LMBP 10246CBで登録された、GARPに対する抗体を産生するハ
イブリドーマ細胞株。
(態様15)
態様1から14のいずれか1項記載のタンパク質と、医薬として許容し得る賦形剤とを含む
医薬組成物。
(態様16)
治療を必要とする対象におけるTGF-β関連の障害を治療するための、態様15記載の医薬
組成物。
(態様17)
前記TGF-β関連の障害が、炎症性疾患、慢性感染症、癌、線維症、循環器疾患、脳血管
疾患(例えば虚血発作)、及び神経変性疾患からなる群から選択される、態様16記載の医薬
組成物。
(態様18)
前記医薬組成物が、癌のための別の治療、又は腫瘍ワクチン若しくは免疫賦活性抗体な
どの別の免疫療法薬と組み合わせて投与されることとなる、態様15から17のいずれか1項
記載の医薬組成物。
(態様19)
前記医薬組成物が、癌患者の治療のための免疫賦活性抗体として投与されることとなる
、態様15又は16記載の医薬組成物。
図1
図2
図3A-B】
図3C
図3D-E】
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A-B】
図16C
【配列表】
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