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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】腕輪締め付けシステム
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/20 20060101AFI20240523BHJP
   A44C 5/02 20060101ALI20240523BHJP
   A44C 5/00 20060101ALI20240523BHJP
   G04B 37/16 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A44C5/20 C
A44C5/02 D
A44C5/00 502C
A44C5/20 E
G04B37/16 P
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022032031
(22)【出願日】2022-03-02
(62)【分割の表示】P 2019046748の分割
【原出願日】2019-03-14
(65)【公開番号】P2022088394
(43)【公開日】2022-06-14
【審査請求日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】18175782.4
(32)【優先日】2018-06-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153006
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 勇三
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-クロード・マルタン
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ニコラ
【審査官】村山 睦
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-061110(JP,U)
【文献】特開2001-314211(JP,A)
【文献】実開昭54-077780(JP,U)
【文献】実開昭54-115579(JP,U)
【文献】実開昭51-040688(JP,U)
【文献】特公昭26-002386(JP,B1)
【文献】特開昭61-093062(JP,A)
【文献】特開平10-245067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 5/20
A44C 5/02
A44C 5/00
G04B 37/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のストランド(1)と第2のストランド(2)を有する腕輪であって、
当該腕輪が締め付けられているときに、一方のストランドの1つの面は、他方のストランドの1つの面を少なくとも部分的に覆っており、
当該腕輪は、前記第1のストランドの面の上にて前記第1のストランドの長手方向に広がっている少なくとも1つの溝(4)と前記第2のストランドの長手方向に前記第2のストランドの面の上にて延在している少なくとも1つの突起(5)とを有する締め付けシステムであって、前記突起(5)が前記第1のストランドの長手方向に沿った任意の位置で前記溝(4)に嵌ることで前記第1のストランド(1)と前記第2のストランド(2)とが固定され、これにより、自身の長さを連続的に調整可能に構成される締め付けシステムを備え、
前記突起(5)及び前記溝(4)にはそれぞれ、ハウジング部分(10、12)と、及びこのハウジング部分(10、12)とストランドの面の間に位置しているネック区画(11、13)とがあり、
前記突起(5)及び/又は前記溝(4)の材料はそれぞれ、腕輪のユーザーが前記第1及び第2のストランド(1、2)の2つの対応する重なり合った部分を押し付けたときに、前記突起(5)の前記ハウジング部分(10)が前記溝(4)の前記ハウジング部分(12)と相互ロックすることが可能になるようにフレキシブル性を有しており、
前記第1及び第2のストランド(1、2)の一方は、下側位置となり、前記第1及び第2のストランド(1、2)の他方は、上側位置となり、
前記第1及び第2のストランド(1、2)のうちの前記下側位置にあるストランドは、自身の前記長手方向と直交する断面の上縁が凸状に曲がっており、これにより、中央部が縁部よりも相対的に厚みが大きくなるように突出する上面を有し、
前記下側位置にあるストランドが有する溝(4)は、前記上縁の前記中央を挟んだ相対的に厚みの小さい両側に形成されている
腕輪。
【請求項2】
当該腕輪の締め付け位置において、上側のストランド(2)を下側のストランド(1)から遠ざけるように剥がすことによって前記突起(5)を前記溝(4)から除去して、前記締め付けシステムをアンロックすることが可能になる
請求項1に記載の腕輪。
【請求項3】
前記ストランド(1、2)は、フレキシブルな材料で形成された均質な要素である
請求項1又は2に記載の腕輪。
【請求項4】
前記ストランド(1、2)は、重合体又はゴムによって形成されている
請求項3に記載の腕輪。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溝(4)及び/又は前記少なくとも1つの突起(5)は、フレキシブルな材料で形成された要素であり前記第1及び/又は第2のストランドにあり、
前記フレキシブルな材料は、前記溝及び/又は前記突起があるストランドの材料とは異なる材料である
請求項1又は2に記載の腕輪。
【請求項6】
前記第1のストランドには2つの溝(4)があり、前記第2のストランドには2つの突起(5)があり、
前記2つの溝及び前記2つの突起はそれぞれ、対応するストランドの長手方向の中央平面(6)に対して、両側にあり、対称的に配置されている
請求項1~5のいずれかに記載の腕輪。
【請求項7】
前記第1のストランドには単一の溝(4)があり、
この溝(4)の幅は、前記第1のストランドの幅に近く、
前記第2のストランドには単一の突起(5)がある
請求項1~5のいずれかに記載の腕輪。
【請求項8】
前記溝(4)及び/又は前記突起(5)の少なくとも一方には、表面にその粗さを大きくする構造又は被覆がある一又は複数の領域(15)がある
請求項1~7のいずれかに記載の腕輪。
【請求項9】
前記溝(4)及び/又は前記突起(5)の少なくとも一方の面は、規則的な間隔で、寸法構成が変わっている
請求項1~8のいずれかに記載の腕輪。
【請求項10】
前記突起(5)及び対応する溝(4)の少なくとも一方の前記ハウジング部分(10、12)は、丸い形の断面を有する
請求項1~9のいずれかに記載の腕輪。
【請求項11】
前記第1及び第2のストランドは、その端の一方によって互いに接続されており、これによって、一体化されたバンドが形成される
請求項1~10のいずれかに記載の腕輪。
【請求項12】
前記第1及び第2のストランドは、一体化されるように作られている
請求項11に記載の腕輪。
【請求項13】
腕時計又は装飾品の腕輪である
請求項1~12のいずれかに記載の腕輪。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載の腕輪を有する
腕時計又は装飾品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腕輪締め付けシステムに関し、特に、合成材料で作られたフレキシブルな腕輪、例えば、腕時計ストラップや装飾品の腕輪、のためのものに関する。
【背景技術】
【0002】
長い間、バックルやデプロイアントクラスプを備える腕時計ストラップ又は腕輪が知られている。これらのシステム、特に、合成材料で作られたものは、非常に磨耗しやすく、また、比較的厚く、したがって、快適性を与えず、さらに、腕輪の長さを非連続的にしか調整することができないという課題がある。すなわち、離散的な位置にしか調整することができない。このことは、着用者の腕まわりの径に対して腕輪の長さを適切に調整することができないことを意味している。磁気的締め付け機構やクリップ締め付け機構を備えた腕輪のような他の技術も提案されている。これによって、フレキシブルな調整が可能になるが、重いことが多く、使用が難しかったり、及び/又は複雑で高価な製造法を必要としたりする。また、バックル及びデプロイアントクラスプには相当な厚みがあり、場合によっては、取り付けられる腕時計よりも大きく、このために、美的外観を損なってしまったり、さらには、腕時計の快適性を損なってしまったりすることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、使用と製造の両方とも容易であるような軽くスリムでありコンパクトな連続的に調整可能な締め付けシステムが取り付けられた腕輪を提供することを目的とする。この目的は、添付の請求の範囲に記載の腕輪によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、2つの腕輪ストランドを有する腕輪であって、2つのストランドの一方のストランドに少なくとも1つの長手方向の溝及び他方のストランドに少なくとも1つの長手方向の突起がある締め付けシステムを備えるものに関する。溝と突起の材料と形は、腕輪ストランドの2つの重なり合った部分に腕輪のユーザーが与える圧力の下で溝と突起が相互ロックするように構成している。腕輪ストランドの間の接続は、好ましくは、開く操作をせずに上側のストランドを下側のストランドから遠ざけるように剥がすことによって、容易に分離することができる。本発明の腕輪においては、重い複雑な要素を必要とせずに、連続的な長さ調整が可能である。
【0005】
非限定的な例として与えられる下記の好ましい実施形態の説明を添付の図面を参照しながら読むことで、本発明の他の特徴や利点を理解することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の好ましい実施形態に係る腕輪を示している。
図2図1の腕輪において連係している要素の断面を示している。
図3図1の完全な腕輪の断面を示している。
図4】腕輪ストランドの間の摩擦力を増加させる手段を溝内に備える腕輪ストランドの実施形態を示している。
図5】本発明の別の実施形態に係る腕輪の断面を示している。
図6】本発明に係る締め付けシステムが取り付けられた腕輪を備える腕時計を示している。
図7】2つのストランドが一体化されており1つのバンドを形成している本発明の別の実施形態に係る腕輪を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、本発明の非限定的な実施形態に係る腕時計の腕輪の2つのストランド1及び2を示している。図6は、この腕輪が取り付けられた腕時計20を示している。ストランドは、実質的に平坦でありフレキシブルであり、腕時計ケース21(図6)を固定するための2つのアタッチメント3を備える。腕輪を固定するために、ユーザーは、「下側のストランド」1と呼ばれる一方のストランドを「上側のストランド」2と呼ばれる他方のストランドの一部によって覆う。下側のストランド1には2つの溝4があり、これらの溝4は、互いに平行であり、上側のストランド2との下側のストランド1の相互作用面の実質的に全長にわたって広がっている。前記上側のストランド2には、2つの突起5があり、この突起5は、下側のストランド1との上側のストランド2の相互作用面の実質的に全長にわたって、好ましくは、連続的な形態で、延在しており、これによって、2つの実質的に平行なレール部分を形成している。突起5は、ユーザーがストランドの重なり合った部分に圧力をかけたときに、対応する溝4に嵌まるように位置しており形成されている。これによって、下側のストランドと上側のストランドどうしを固定する。
【0008】
図2に、ストランド1及び2が均質な要素である場合、すなわち、単一材で形成されている場合、における突起5と対応する溝4の断面を詳細に示している。上側のストランド2の突起5の断面には、「オスハウジング部分」と呼ばれる丸い形の部分10があり、このオスハウジング部分10がそのオスハウジング部分10よりも幅が狭いネック区画11を介してストランド2に付けられていることがわかる。また、下側のストランド1の溝4の断面には、さらに、「メスハウジング部分」と呼ばれる丸い形のハウジング部分12があり、このメスハウジング部分12には、ネック区画13を介してアクセス可能である。このように、ネック区画11及び13はそれぞれ、オス及びメスのハウジング区画10及び12と、ストランド2及び1の相互作用面との間に位置している。溝4の要素12及び13の寸法構成はそれぞれ、突起5の対応する要素の寸法構成と同じかわずかに大きい。
【0009】
変種の1つにおいて、オス及びメスのハウジング部分が、ネック区画がある突起及びネック区画がある溝があることを前提として、異なる形の断面を有することができることは明らかである。
【0010】
なお、図示した例において突起と溝は直線状であるが、曲がっていたり波状であったりするように広がっている突起及び対応する溝を考えることもできる。
【0011】
ストランド1及び2の少なくとも一方の材料には、ユーザーが重なり合っているストランド部分を押し付けたときに、突起5が溝4とスナップフィットの形態で相互ロックするように十分にフレキシブル性がある。ユーザーが与える圧力の下で、突起5及び/又は溝4は、突起5のオスハウジング部分10が溝4のネック区画13を通り抜けることを可能にするようなわずかな弾性変形をして、これによって、ストランド1及び2に対して垂直方向に固定する接続が形成される。この接続は、それにもかかわらず、好ましくは、上側のストランド2を下側のストランド1から遠ざけるように剥がすことによって容易に分離することができる。「剥がす」とは、上側のストランド2の端を取ってそれを下側のストランド1から徐々に分離することによって上側のストランド2を引くことを伴うユーザーによる操作を意味する。この操作によって、突起5をその溝4から除去して締め付けシステムをアンロックすることが可能になる。溝の数、位置及び大きさは、所望の設計、材料及び保持性に応じて調整することができる。
【0012】
図3は、締め付け位置における図1の腕輪全体における断面を示している。2つの突起5がそれぞれ、対応する溝4内に収容されていることがわかる。突起5と溝4は、組み立てられたストランドの長手方向の中央平面6に対して、両側にあり、対称的である。ストランド1及び2の間の摩擦力によって、滑りによる分離を防ぐことができる。好ましくは、下側のストランド1の相互作用面の断面は、わずかに凸状に曲がっており、これによって、締め付け位置において、上側のストランド2が前記相互作用面の曲がりに追従するようになる。このように、上側のストランド2は、相互ロックしている溝4と突起5の間の保持力によって、下側のストランド1に押し付けられ、このことによって、ストランド1及び2の間の摩擦力が増加する。
【0013】
図4に示している実施形態において、下側のストランド1の溝4には領域15があり、この領域15の面は、その粗さを大きくするように構造が形成されている。この構造は、溝4とそれに収容される突起5の間の摩擦力を増加させる。この構造形成面は、溝4に、突起5に、又はこれらの両方に形成することができる。例えば、この構造は、溝の長手方向に沿って形成されている波形を形成する一連の膨らみによって形成されていることができる。この構造は、突起及び/又は溝の全長にわたって連続的に配置していることができ、また、規則的な間隔にて配置していることができる。
【0014】
いくつかの変種によると、構造形成面の代わりに、溝4及び/又は突起5に、他の摩擦対処手段を設けることができる。例えば、寸法構成を変えるものであり、例えば、規則的な間隔にて波状にしたり膨らみを形成したりする。
【0015】
腕輪ストランド1及び2に配置される突起5の数や対応する溝4の数は、本発明の文脈において、制限されない。図5は、下側のストランド1に溝4が1つしかなく、この溝4の幅がストランド1の幅に近いような腕輪の断面を示している。上側のストランド2には単一の突起5がある。上と同様に、突起5と溝4にはネック区画11、13及びハウジング部分10、12があり、これらによって、弾性スナップフィットにて腕輪を締め付けることが可能になる。これは、用いられる材料の少なくとも1つのフレキシブル性の度合いのおかげである。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態において、各ストランドは、プラスチック材料で作られた均質な要素であり、これによって、キャスティング、射出成形ないし押出し又は熱圧縮によってストランドを製造することができる。様々な射出可能な重合体又は加硫ゴムを使用することができる。代わりに、異なる材料の組み合わせを考えることができる。例えば、二材料系の射出プロセスを用いて異なる剛性を有する領域を形成することを考えることができる。例えば、剛体、準剛体又は連接構造のストランドを用いることができる。これは、例えば、金属、セラミックス又は皮革製のリンクを用いるものである。そして、一方のストランドには、機械加工された一又は複数の溝があり、これにリンクが挿入される。他方のストランドには、ゴムのようなフレキシブルな材料で作られた一又は複数の突起がある。これは、腕輪のリンクの面に取り付けられる(例えば、接合やオーバーモールドされる)。
【0017】
溝4と突起5の位置を図示している位置とは逆にすることができることは明白である。すなわち、突起5が下側のストランド1にあり、溝4が上側のストランド2にあるようにすることができる。
【0018】
好ましくは、各溝4に突起5が1つのみある。代わりに、各溝に対して、直列に配置されたいくつかの長手方向の突起5を設けて、これらの突起5のすべてが同じ溝4にて相互ロックするようにすることができる。
【0019】
本発明の腕輪は、腕時計ケース及び2つの別個のストランドを有する腕時計ストラップに制限されない。本発明は、第1及び第2のストランドがそれらの端のうちの一方によって互いに接続され、例えば、「NATO」ストラップとして知られているような、一体的な材料でバンドBを形成している腕輪であって、ユーザーが腕輪を着用したときに、図7に示しているようにバンドの両端の部分どうしが重なり合い、図1~6を参照しながら説明した要素と同じ要素が用いられるような腕輪も含んでいる。本発明に係るこの種の腕輪には、上記のように、バンドの一方の側に、少なくとも1つの溝4がある第1の部分があり、バンドの他方の側に、少なくとも1つの突起5がある第2の部分がある。この場合、バンドBのこれらの2つの部分は、本発明に係る腕輪において「第1及び第2のストランド」である。
【0020】
本発明に係る腕輪においては、連続的な長さ調整をすることができる利点の他に、いくつかの付加的な利点が組み合わさっている。当該腕輪は、使用や製造が容易である。また、クラスプや磁石のための付加的な重量がないために軽い。剛体要素がないこと、そして、小型であるために、ユーザーにとって快適である。また、デプロイアントクラスプの場合のように、維持が非常に単純であり、汚れの蓄積を避けることができる。
【0021】
また、突起/溝の対の幾何学的構成、位置及び/又は数を適応させることによって、挿入と剥がしに必要な力を容易に変えることができる。
【符号の説明】
【0022】
1、2 ストランド
3 アタッチメント
4 溝
5 突起
6 長手方向の中央平面
10、12 ハウジング部分
11、13 ネック区画
20 腕時計
21 腕時計ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7