(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】超伝導排他的論理和(XOR)ゲートシステム
(51)【国際特許分類】
H03K 19/195 20060101AFI20240523BHJP
H03K 19/21 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H03K19/195
H03K19/21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022082942
(22)【出願日】2022-05-20
【審査請求日】2022-06-10
(32)【優先日】2021-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520128820
【氏名又は名称】ノースロップ グラマン システムズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ルイス ブラウン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュ ランス パケット
【審査官】竹内 亨
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-264458(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0226974(US,A1)
【文献】米国特許第10892761(US,B1)
【文献】米国特許第10243582(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 19/00-19/23
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導XORゲートシステムであって、
決定パルスを生成するように構成されたパルス発生器であって、前記パルス発生器は、前記決定パルスに対して遅延された遅延決定パルスを生成するための遅延線を含んでいる、前記パルス発生器と、
第1の超伝導論理入力信号および第2の超伝導論理入力信号を受信し、クロック信号の所与の位相で前記決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号を提供するように構成された入力超伝導XORゲートと、
前記中間超伝導論理出力信号および第3の超伝導論理入力信号を受信し、前記クロック信号の所与の位相で前記遅延決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号を提供するように構成された出力超伝導XORゲートと、を備えるシステム。
【請求項2】
前記遅延線は遅延バッファを含み、前記遅延バッファは少なくとも1つのジョセフソン伝送線を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記
入力超伝導XORゲートは、前記第1の超伝導論理入力信号を受信する第1の入力段と、前記第2の超伝導論理入力信号を受信する第2の入力段とを含み、前記
出力超伝導XORゲートは、前記第3の超伝導論理入力信号を受信する第3の入力段と、前記中間超伝導論理出力信号を受信する第4の入力段とを含み、前記第1、第2、第3、および第4の入力段の各々は、前記クロック信号によってバイアスされないストレージジョセフソン接合を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記入力超伝導XORゲートは、第1のエスケープジョセフソン接合を含み、前記出力超伝導XORゲートは、第2のエスケープジョセフソン接合を含み、前記第1のエスケープジョセフソン接合は、パルス信号として供給されている前記第1および第2の超伝導論理入力信号の両方に応答してトリガして、前記中間超伝導論理出力信号が無パルス信号として提供されるように構成され、第2のジョセフソン接合は、パルス信号として供給されている前記第3の超伝導論理入力信号および前記中間超伝導論理出力信号の両方に応答してトリガして、前記超伝導論理出力信号が無パルス信号として提供されるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記第1、第2、および第3の超伝導論理入力信号がレシプロカル量子論理(RQL)パルスとして供給され、XORゲートシステムが前記超伝導論理出力信号をRQLパルスとして提供するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記入力超伝導XORゲートは、前記決定パルスによってバイアスされる第1の決定ジョセフソン接合に結合された第1の接地インダクタを含み、前記出力超伝導XORゲートは、前記遅延決定パルスによってバイアスされる第2の決定ジョセフソン接合に結合された第2の接地インダクタを含み、前記第1および第2の接地インダクタは、個々の第1および第2の決定ジョセフソン接合のリセットを可能にするために、第1および出力超伝導XORゲートに関連付けられたジョセフソン伝送線(JTL)よりも大きいインダクタンス値を有する、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記入力超伝導XORゲートは、論理XOR関数を実行して、第1の中間超伝導論理出力信号を提供する第1の入力超伝導XORゲートとして構成され、前記出力超伝導XORゲートは、前記第1の中間超伝導論理出力信号と、第2の中間超伝導論理出力信号に対応する前記第3の超伝導論理入力信号とを受信し、論理XOR関数を実行して、前記超伝導論理出力信号を提供し、前記システムは、第4の超伝導論理入力信号および第5の超伝導論理入力信号を受信する第2の入力超伝導XORゲートであって、前記クロック信号の所与の位相で別の決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、前記第2の中間超伝導論理出力信号を提供するように構成された前記第2の入力超伝導XORゲートをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記パルス発生器は、前記クロック信号が供給される第1のジョセフソン接合と、前記クロック信号が供給される少なくとも1つの第2のジョセフソン接合を含む少なくとも1つのジョセフソン伝送線とを含み、前記第1のジョセフソン接合は、前記少なくとも1つの第2のジョセフソン接合よりも小さい臨界電流を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記入力超伝導XORゲートおよび前記出力超伝導XORゲートの各々は、XOR-2ゲートとして構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
超伝導回路システムにおいて論理XOR関数を提供するための方法であって、
パルス発生器によりクロック信号の所与の位相に応答して決定パルスを生成するステップと、
前記決定パルスを第1の決定パルスと第2の決定パルスに分割するステップと、
前記第2の決定パルスを遅延させて、遅延決定パルスを生成するステップと、
入力超伝導XOR-2ゲートに第1の超伝導論理入力信号、第2の超伝導論理入力信号、および前記第1の決定パルスを供給するステップと、前記入力超伝導XOR-2ゲートは、前記クロック信号の所与の位相で前記第1の決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号を提供し、
出力超伝導XOR-2ゲートに前記中間超伝導論理出力信号、第3の超伝導論理入力信号、および前記遅延決定パルスを供給するステップと、を含み、前記出力超伝導XOR-2ゲートは、前記クロック信号の所与の位相で前記遅延決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号を提供する、方法。
【請求項11】
前記第1、第2、および第3の超伝導論理入力信号を供給することは、前記第1、第2、および第3の超伝導論理入力信号をレシプロカル量子論理(RQL)パルスとして供給することを含み、前記超伝導論理出力信号は、RQLパルスとして提供される、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、超伝導回路に関し、詳しくは、超伝導XORゲートシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
論理ゲートは、コンピュータ処理には不可欠なものである。相補型金属酸化膜半導体(CMOS)を実装する従来のコンピュータ処理では、二値信号を使用して論理ゲートを実施する簡単な方法が提供される。しかしながら、超伝導技術は、論理ゲートの製造と論理演算の実行に新たな課題をもたらす。一例として、レシプロカル量子論理(RQL:reciprocal quantum logic )などのウェーブパイプライン(WPL)超伝導技術では、排他的論理和(XOR)ゲートは、最大入力サイズが2であり、各XORゲートは、相互に関連する関連クロック信号の異なる位相境界上で実施される。その結果、3つ以上の論理入力を必要とする複数のXORゲートは、相互に位相がずれて動作する。しかしながら、XORゲートは、乗算器などの演算装置で有用であるが、一般的な超伝導回路における大量の論理入力を必要とするXOR演算では、レイテンシが増加する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許第10892761号明細書
【文献】米国特許第10374610号明細書
【文献】米国特許第10320394号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0322374号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0206871号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0033369号明細書
【発明の概要】
【0004】
一例として、超伝導排他的論理和(XOR)ゲートシステムが記載されている。システムは、決定パルスを生成するように構成されたパルス発生器を含む。また、システムは、第1の超伝導論理入力信号および第2の超伝導論理入力信号を受信し、クロック信号の所与の位相で決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号を提供するように構成された入力超伝導XORゲートを含む。また、システムは、中間超伝導論理出力信号および第3の超伝導論理入力信号を受信し、クロック信号の所与の位相で決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号を提供するように構成された出力超伝導XORゲートを含む。
【0005】
別の例は、超伝導回路システムにおいて論理排他的論理和(XOR)関数を提供する方法を含む。方法は、入力超伝導XOR-2ゲートに第1の超伝導論理入力信号および第2の超伝導論理入力信号を供給することを含む。また、方法は、パルス発生器によりクロック信号の所与の位相に応答して決定パルスを生成することを含む。入力超伝導XOR-2ゲートは、クロック信号の所与の位相で決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号を提供することができる。方法は、出力超伝導XOR-2ゲートに中間超伝導論理出力信号および第3の超伝導論理入力信号を供給することをさらに含む。出力超伝導XOR-2ゲートは、クロック信号の所与の位相で決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号を提供することができる。
【0006】
別の例は、超伝導排他的論理和(XOR)ゲートシステムを含む。システムは、決定パルスを生成するとともに、決定パルスを遅延させて遅延決定パルスを生成するように構成されたパルス発生器を含む。また、システムは、第1の超伝導論理入力信号および第2の超伝導論理入力信号を受信し、クロック信号の所与の位相で決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号を提供するように構成された入力超伝導XOR-2ゲートを含む。システムは、中間超伝導論理出力信号および第3の超伝導論理入力信号を受信し、クロック信号の所与の位相で遅延決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号を提供するように構成された出力超伝導XOR-2ゲートをも含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】超伝導排他的論理和(XOR)-Nゲートシステムの例示的なブロック図である。
【
図2】XORゲートシステムの例示的な回路図である。
【
図3】超伝導XOR-3ゲート回路の例示的な回路図である。
【
図4】超伝導XOR-4ゲート回路の例示的な回路図である。
【
図5】論理XOR演算を実行する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、概して、超伝導回路に関し、詳しくは、超伝導排他的論理和(XOR)ゲートシステムに関する。本明細書で説明するように、XORゲートシステムは、2より大きい複数のN個の入力に対するXOR関数(すなわち、不等な論理入力に応答した論理1の出力)を提供する。超伝導XORゲートシステムは、クロック信号の所与の1つの位相で論理XOR関数を実行することができる多入力(例えば、3入力または4入力)超伝導XORゲートを形成するための複数の2入力超伝導XORゲートを含む。超伝導XORゲートシステムは、決定パルスを生成するように構成されたパルス発生器を含むことができる。パルス発生器は、決定パルスを遅延させて、遅延決定パルスを生成することができる遅延線を含むことができる。また、超伝導XORゲートシステムは、第1の超伝導論理入力信号および第2の超伝導論理入力信号を受信する入力超伝導XORゲートを含む。本明細書で説明するように、「超伝導論理信号」(例えば、超伝導論理信号、超伝導論理入力信号、超伝導論理出力信号など)という用語は、超伝導パルス(例えば、レシプロカル量子論理(RQL)パルスまたは単一磁束量子(SFQ:single-flux quantum)パルス)に対応する第1の二値論理状態を有し、かつ超伝導パルスの不存在に対応する第2の二値論理状態を有する論理信号のこという。従って、以下に説明するように、「第1の論理状態」はパルスの存在に対応し、「第2の論理状態」はパルスの不存在に対応する。
【0009】
入力超伝導XORゲートは、クロック信号の所与の位相で決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号を提供するように構成される。また、超伝導XORゲートシステムは、中間超伝導論理出力信号および第3の超伝導論理入力信号を受信し、所与のクロック位相で遅延決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号を生成する出力超伝導XORゲートを含む。3入力超伝導XORゲートシステムの例では、第3の超伝導論理入力信号は、3入力超伝導XORゲートシステムの第3の入力に対応し、3入力超伝導XORゲートシステムは、第1、第2、および第3の超伝導論理入力信号に対して論理XOR関数を実行する。4入力超伝導XORゲートシステムの例では、第3の超伝導論理入力信号は、第2の中間超伝導論理出力信号に対応することができる。従って、4入力XORゲートの例では、第2の中間超伝導論理出力信号は、第4の超伝導論理入力信号と第5の超伝導論理入力信号を入力として受信し、第2の中間超伝導論理出力信号を生成するために決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行する第2の入力超伝導XORゲートによって生成することができる。
【0010】
図1は、超伝導排他的論理和(XOR)-Nゲートシステム100の例示的なブロック図を示す。「XOR-N」という用語は、
図1の例において信号IN
1~IN
Nとして示される超伝導論理入力信号の量Nを指し、ここで、Nは、2より大きい正の整数であり得る。一例として、Nは3または4であり、超伝導XORゲートシステム100は、3つまたは4つの超伝導論理入力信号IN
1~IN
Nに対して論理XOR関数を実行して、単一の超伝導論理出力信号OUT
Xを生成する3入力超伝導XORゲートシステムまたは4入力超伝導XORゲートシステムとすることができる。
【0011】
図1の例では、超伝導XORゲートシステム100は、超伝導論理入力信号IN
1~IN
Nを受信する少なくとも1つの入力超伝導XORゲート(「入力XORゲート(複数可)」)102を含む。第1の例として、超伝導XORゲート(複数可)102は、XOR-3ゲートの例において単一の超伝導XORゲート102のみを含むことができ、超伝導XORゲートシステム100は、3つの超伝導論理入力信号IN
1~IN
3に対して論理XOR関数を実行することができる。第2の例として、超伝導XORゲート(複数可)102は、XOR-4ゲートの例において2つの超伝導XORゲート102を含むことができ、超伝導XORゲートシステム100は、4つの超伝導論理入力信号IN
1~IN
4に対して論理XOR関数を実行することができる。本明細書でより詳細に説明するように、超伝導XORゲート(複数可)102の各々は、個々の入力におけるストレージジョセフソン接合と、個々の入力間のパルス伝播を軽減するためのエスケープジョセフソン接合とを含むことができる。
図1の例では、入力超伝導XORゲート(複数可)102の各々は、クロック信号CLKを受信する。
【0012】
また、超伝導XORゲートシステム100は、入力超伝導XORゲート(複数可)102の各々に供給される決定パルスPLSを生成するように構成されたパルス発生器104を含む。従って、入力超伝導XORゲート(複数可)102の各々は、本明細書でより詳細に説明されるように、決定パルスPLSに基づいて、1組の入力IN
1~IN
Nに対して論理XOR関数を実行する。一例として、パルス発生器104は、低い臨界電流を有するジョセフソン接合を含んでおり、そのジョセフソン接合はクロック信号CLKによってトリガすることができるようになっている。従って、決定パルスPLSは、入力超伝導XORゲート(複数可)102に供給される超伝導パルス(例えば、RQLパルス)に対応して、決定ジョセフソン接合をバイアスすることができる。結果として、入力超伝導XORゲート102は、決定パルスPLSに基づいて、1組の入力IN
1~IN
Nに対して論理XOR関数を実行して、
図1の例において信号IO
Xとして示されるような少なくとも1つの中間超伝導論理出力信号を生成することができる。例えば、パルス発生器104は、XOR-4ゲートとして構成されている超伝導XORゲートシステム100に対して、第1の入力超伝導XORゲート102に対する第1の決定パルスPLS_1を生成し、第2の入力超伝導XORゲート102に対する第2の決定パルスPLS_2を生成することができる。
【0013】
また、超伝導XORゲートシステム100は、中間超伝導論理出力信号IO
Xを受信する出力超伝導XORゲート106を含む。XOR-3ゲートとして構成された超伝導XORゲートシステム100の例では、出力超伝導XORゲート106は、超伝導入力論理信号IN
1~IN
Nのうちの1つ(例えば、超伝導入力論理信号IN
3)を受信することもできる。従って、出力超伝導XORゲート106は、超伝導論理入力信号IN
3および中間超伝導論理出力信号IO
Xに対して論理XOR関数を実行することができる。XOR-4ゲートとして構成された超伝導XORゲートシステム100の例では、出力超伝導XORゲート106は、第1の入力超伝導XORゲート102から第1の中間超伝導論理出力信号IO
X1を受信し、第2の入力超伝導XORゲート102から第2の中間超伝導論理出力信号IO
X2を受信することができる。従って、出力超伝導XORゲート106は、第1および第2の中間超伝導論理出力信号IO
X1およびIO
X2に対して論理XOR関数を実行することができる。出力超伝導XORゲート106は、入力超伝導XORゲート(複数可)102と実質的に同様に構成することができる。
図1の例では、出力超伝導XORゲート106は、クロック信号CLKを受信する。
【0014】
図1の例では、パルス発生器104は、信号DPLSとして示される、決定パルスPLSの遅延バージョンを生成するように構成された遅延線108を含む。遅延決定パルスDPLSは、出力超伝導XORゲート106に供給される。従って、上記と同様に、遅延決定パルスDPLSは、出力超伝導XORゲート106に供給される超伝導パルス(例えば、RQLパルス)に対応して、決定ジョセフソン接合をバイアスすることができる。その結果、出力超伝導XORゲート106は、遅延決定パルスDPLSに基づいて、中間超伝導論理出力信号IO
Xおよび別の信号(例えば、入力信号IN
3または第2の中間超伝導論理出力信号IO
X2)に対して論理XOR関数を実行して、超伝導出力論理信号OUT
Xを生成することができる。
【0015】
一例として、遅延線108は、遅延決定パルスDPLSを生成するために、決定パルスPLSが伝播する少なくとも1つのジョセフソン伝送線(JTL)によって形成される遅延バッファを含むことができる。従って、遅延線108を介した決定パルスPLSの伝播によって、決定パルスPLSが入力超伝導XORゲート(複数可)102に到達するよりもわずかに遅れて出力超伝導XORゲート106に到達する遅延決定パルスDPLSが生成される。従って、入力超伝導XORゲート(複数可)102は、遅延決定パルスDPLSが出力超伝導XORゲート106に到達する前の時点で、個々の論理XOR関数を実行することができる。
【0016】
結果として、出力超伝導XORゲート106への超伝導論理入力は、遅延決定パルスDPLSの前に到達することができ、それによって、出力超伝導XORゲート106の論理XOR関数に関連するタイミングエラー(例えば、競合状態)を軽減するように、出力超伝導XORゲート106による論理XOR関数が可能となる。さらに、遅延決定パルスDPLSは、決定パルスPLSに対して(例えば、少なくとも1つのJTLを介した遅延パルスPLSの伝播によって)ごくわずかに遅延されるだけであるため、入力超伝導XORゲート(複数可)102および出力超伝導XORゲート106は、クロック信号CLKの同じ位相で個々の論理XOR関数を実行することができる。従って、2つを超える入力を有する典型的な超伝導XORゲートとは異なり、超伝導XORゲートシステム100は、クロック信号の複数の位相にわたる(例えば、出力が入力の位相から90°以上ずれている)のとは対照的に、単一のクロック位相において論理XOR-N関数を実行することができる。従って、超伝導XORゲートシステム100は、典型的な超伝導XOR-Nゲートよりも低いレイテンシで論理XOR関数を実行することができる。
【0017】
図2は、XORゲートシステムの例示的な回路
図200を示す。回路
図200は、第1の超伝導XORゲートシステム202および第2の超伝導XORゲートシステム204を含む。第1の超伝導XORゲートシステム202は、IN
1~IN
3として示される1組の3つの入力に対して論理XOR関数を実行するXOR-3論理ゲートシステムとして示されている。第2の超伝導XORゲートシステム204は、IN
1~IN
4として示される1組の4つの入力に対して論理XOR関数を実行するXOR-4論理ゲートシステムとして示されている。超伝導XORゲートシステム202および204の各々は、
図1の例における超伝導XORゲートシステム100に対応することができる。従って、
図2の例の以下の説明では、
図1の例が参照される。
図2の例では、論理XORゲートは、論理XORゲートに関する従来の表記法で示されている。しかしながら、
図2の例の論理XORゲートは、本明細書でより詳細に説明するように、クロック信号CLK(例えば、RQLクロック信号)で動作する超伝導XORゲートに対応している。
【0018】
第1の超伝導XORゲートシステム202は、パルス発生器206、入力XORゲート208、および出力XORゲート210を含む。パルス発生器206は、入力XORゲート208に供給される決定パルスPLSと、出力XORゲート210に供給される遅延決定パルスDPLSとを生成するものとして示されている。入力XORゲート208は、第1の超伝導論理入力信号IN1および第2の超伝導論理入力信号IN2を受信することで、入力XORゲート208は、決定パルスPLSに基づいて、第1および第2の超伝導論理入力信号IN1およびIN2に対して論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号IOXを生成する。出力XORゲート208は、中間超伝導論理出力信号IOXおよび第3の超伝導論理入力信号IN3を受信することで、出力XORゲート210は、遅延決定パルスDPLSに基づいて、第3の超伝導論理入力信号IN3および中間超伝導論理出力信号IOXに対して論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号OUTXを生成する。
【0019】
上記で説明したように、遅延決定パルスDPLSは、決定パルスPLSが入力XORゲート208に供給されるのに続いて、出力XORゲート210に供給され得る。結果として、入力XORゲート208は、出力XORゲート210の前に論理XOR関数を実行することができるため、中間超伝導論理出力信号IOXの論理状態は、出力XORゲート210によって実行される論理XOR関数の前に設定することができる。従って、超伝導XORゲートシステム202は、クロック信号CLKの単一位相で論理XOR-3関数を実行することができる。
【0020】
第2の超伝導XORゲートシステム204は、パルス発生器212、第1の入力XORゲート214、第2の入力XORゲート216、および出力XORゲート218を含む。パルス発生器212は、第1の入力XORゲート214に供給される第1の決定パルスPLS_1、第2の入力XORゲート216に供給される第2の決定パルスPLS_2、および出力XORゲート218に供給される遅延決定パルスDPLSを生成するものとして示される。第1の入力XORゲート214は、第1の超伝導論理入力信号IN1および第2の超伝導論理入力信号IN2を受信することで、第1の入力XORゲート214は、第1の決定パルスPLS_1に基づいて、第1および第2の超伝導論理入力信号IN1およびIN2に対して論理XOR関数を実行して、第1の中間超伝導論理出力信号IOX1を生成する。第2の入力XORゲート216は、第3の超伝導論理入力信号IN3および第4の超伝導論理入力信号IN4を受信することで、第2の入力XORゲート216は、第2の決定パルスPLS_2に基づいて、第3および第4の超伝導論理入力信号IN3およびIN4に対して論理XOR関数を実行して、第2の中間超伝導論理出力信号IOX1を生成する。出力XORゲート218は、第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2を受信することで、出力XORゲート210は、遅延決定パルスDPLSに基づいて、第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2に対して論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号OUTXを生成する。
【0021】
上記で説明したように、遅延決定パルスDPLSは、第1および第2の決定パルスPLS_1およびPLS_2が個々の第1および第2の入力XORゲート214および216に供給されるのに続いて、出力XORゲート218に供給され得る。結果として、第1および第2の入力XORゲート214および216は、出力XORゲート218の前に個々の論理XOR関数を実行することができるため、個々の第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2の論理状態は、出力XORゲート218によって実行される論理XOR関数の前に設定することができる。従って、超伝導XORゲートシステム204は、クロック信号CLKの単一位相で論理XOR-4関数を実行することができる。
【0022】
図3は、超伝導XOR-3ゲート回路300の一例を示す。超伝導XOR-3ゲート回路300は、
図1および
図2の個々の例における超伝導XORゲートシステム100または超伝導XORゲートシステム202に対応することができる。従って、以下の
図3の例の説明では、
図1および
図2の例が参照される。
【0023】
超伝導XOR-3ゲート回路300は、パルス発生器302、入力超伝導XORゲート304、および出力超伝導XORゲート306を含む。パルス発生器306は、クロック信号CLKに結合され、かつクロック信号CLKによってバイアスされる他のジョセフソン接合よりも比較的低い臨界電流を有するように製造されたジョセフソン接合JPLSを含む。従って、ジョセフソン接合JPLSは、クロック信号CLKの所与の位相(例えば、クロック信号CLKによって供給されるバイアス)に応答してトリガして、決定パルスPLSを生成する。決定パルスPLSは、インダクタL1、ジョセフソン接合J1、およびインダクタL2によって形成されるJTL段と、インダクタL3、ジョセフソン接合J2、およびインダクタL4によって形成される別のJTL段とを介して伝播する。JTL段は、クロック信号CLKによってバイアスされる。ジョセフソン接合J2のトリガに応答して、決定パルスPLSが分割されて、第1の決定パルスPLSがインダクタL4を介してエスケープジョセフソン接合JESC1に提供され、第2の決定パルスPLS_Dが遅延線308に提供される。
【0024】
入力超伝導XORゲート304は、第1の入力310において第1の超伝導論理入力信号IN1を受信し、第2の入力312において第2の超伝導論理入力信号IN2を受信する。第1の入力310は、インダクタL5、ストレージジョセフソン接合JS1、およびインダクタL6によって形成されるJTL段を含む。同様に、第2の入力312は、インダクタL7、ストレージジョセフソン接合JS2、およびインダクタL8によって形成されるJTL段を含む。ストレージジョセフソン接合JS1およびJS2はバイアスされない。従って、ストレージジョセフソン接合JS1およびJS2はそれぞれ、超伝導論理入力信号IN1およびIN2の個々の一方の第1の論理状態(例えば、パルス)に応答してトリガするが、超伝導論理入力信号IN1およびIN2の他方の第1の論理状態に応答してトリガしないように構成される。
【0025】
超伝導論理入力信号IN1およびIN2は、接地インダクタLRST1および決定ジョセフソン接合JD1に結合されたエスケープジョセフソン接合JESC2に供給される。第1の論理状態を有する超伝導論理入力信号IN1およびIN2の単一の1つに応答して、個々のパルスは、決定ジョセフソン接合JD1およびストレージジョセフソン接合JS1およびJS2の個々の1つによって形成される決定ループに磁束量子を導入する。磁束量子は、エスケープジョセフソン接合JESC2をトリガするには不十分であっても、決定パルスPLSと組み合わせて決定ジョセフソン接合JD1をトリガするには十分である。その結果、中間超伝導論理出力信号IOXは、決定ジョセフソン接合JD1からインダクタL9およびインダクタL10を介してパルス(例えば、第1の論理状態)として伝播して、クロック信号CLKの個々の位相からのバイアスによりジョセフソン接合J3をトリガすることができる。従って、入力超伝導XORゲート304のJTL段の残りのインダクタよりも著しく高いインダクタンスを有する接地インダクタLRST1は、決定ループ内の磁束量子をリセットするように動作することができる。
【0026】
第1の論理状態を有する超伝導論理入力信号IN1およびIN2の両方に応答して、エスケープジョセフソン接合JESC2の臨界電流を超えることで、エスケープジョセフソン接合JESC2がトリガされる。その結果、エスケープジョセフソン接合JESC2は、決定ループ内の磁束量子を消滅させる。代わりに、第2の論理状態(例えば、無パルス)を有する超伝導論理入力信号IN1およびIN2の両方に応答して、磁束量子は決定ループに導入されない。同じ論理状態の例のいずれにおいても、決定パルスPLSは、パルス発生器302内のエスケープジョセフソン接合JESC1をトリガし、従って、決定パルスPLSを消滅させる。結果として、第2の論理状態を有する中間超伝導論理出力信号IOXに基づいて、決定ジョセフソン接合JD1からインダクタL9およびインダクタL10を介してパルスは伝播しない(そして、ジョセフソン接合J3はトリガしない)。従って、上記したように、入力超伝導XORゲート304は、決定パルスPLSに基づいて、第1および第2の超伝導論理入力信号IN1およびIN2に対して論理XOR関数を実行して、第1の論理状態または第2の論理状態のいずれかを有する中間超伝導論理出力信号IOXを生成する。
【0027】
パルス発生器302に関して上記で説明したように、第2の決定パルスPLS_Dが遅延線308に供給される。遅延線308は、第2の決定パルスPLS_Dの伝播遅延を提供するように構成される遅延バッファ314を含む。例えば、遅延バッファ314は、一連のJTL段によって形成することができる。また、遅延線308は、インダクタL11、ジョセフソン接合J4、およびインダクタL12によって形成されるJTL段と、インダクタL13、ジョセフソン接合J5、およびインダクタL14によって形成される別のJTL段とを含む。JTL段は、遅延バッファ314の一部であり得るか、または遅延バッファ314に関連するJTL段から分離され得る。従って、遅延線308は、第2の決定パルスPLS_Dに基づいて遅延決定パルスDPLSを生成することができる。従って、遅延決定パルスDPLSは、入力超伝導XORゲート304に供給される決定パルスPLSに対して遅延されるようにして、エスケープジョセフソン接合JESC3を介して出力超伝導XORゲート306に供給される。一例として、遅延バッファ314のJTL段の量は、入力超伝導XORゲート304が論理XOR関数を実行し、結果として生じる中間超伝導論理出力信号IOXを供給する時間の十分後に発生するように遅延決定パルスDPLSの到達を遅延させるのに十分となるようにすることができる。
【0028】
出力超伝導XORゲート308は、第1の入力316において中間超伝導論理出力信号IOXを受信し、第2の入力318において第3の超伝導論理入力信号IN3を受信する。第1の入力316は、インダクタL15、ストレージジョセフソン接合JS3、およびインダクタL16によって形成されるJTL段を含む。同様に、第2の入力318は、インダクタL17、ストレージジョセフソン接合JS4、およびインダクタL18によって形成されるJTL段を含む。ストレージジョセフソン接合JS3およびJS4はバイアスされず、従って、(例えば、パルス発生器306および/または超伝導XORゲート304および306に関連するJTL段と比較して)比較的低い臨界電流を有するように製造される。従って、ストレージジョセフソン接合JS3およびJS4はそれぞれ、中間超伝導論理出力信号IOXおよび超伝導論理入力信号IN3の個々の一方の第1の論理状態(例えば、パルス)に応答してトリガするが、中間超伝導論理出力信号IOXおよび超伝導論理入力信号IN3の他方の第1の論理状態に応答してトリガしないように構成される。
【0029】
中間超伝導論理出力信号IOXおよび超伝導論理入力信号IN3は、接地インダクタLRST2および決定ジョセフソン接合JD2に結合されたエスケープジョセフソン接合JESC4に供給される。第1の論理状態を有する中間超伝導論理出力信号IOXおよび超伝導論理入力信号IN3の単一の1つに応答して、個々のパルスは、決定ジョセフソン接合JD2およびストレージジョセフソン接合JS3およびJS4の個々の1つによって形成される決定ループに磁束量子を導入する。磁束量子は、エスケープジョセフソン接合JESC4をトリガするには不十分であっても、遅延決定パルスDPLSと組み合わせて決定ジョセフソン接合JD2をトリガするには十分である。その結果、超伝導論理出力信号OUTXは、決定ジョセフソン接合JD2からインダクタL19およびインダクタL20を介してパルス(例えば、第1の論理状態)として伝播して、クロック信号CLKの個々の位相からのバイアスによりジョセフソン接合J6をトリガすることができる。従って、出力超伝導XORゲート308のJTL段の残りのインダクタよりも著しく高いインダクタンスを有する接地インダクタLRST2は、決定ループ内の磁束量子をリセットするように動作することができる。
【0030】
第1の論理状態を有する中間超伝導論理出力信号IOXおよび超伝導論理入力信号IN3の両方に応答して、エスケープジョセフソン接合JESC4の臨界電流を超えることで、エスケープジョセフソン接合JESC4がトリガされる。その結果、エスケープジョセフソン接合JESC4は、決定ループ内の磁束量子を消滅させる。代わりに、第2の論理状態(例えば、無パルス)を有する中間超伝導論理出力信号IOXおよび超伝導論理入力信号IN3の両方に応答して、磁束量子は決定ループに導入されない。同じ論理状態の例のいずれにおいても、遅延決定パルスDPLSは、遅延線308におけるエスケープジョセフソン接合JESC3をトリガし、従って、遅延決定パルスDPLSを消滅させる。結果として、第2の論理状態を有する超伝導論理出力信号OUTXに基づいて、決定ジョセフソン接合JD2からインダクタL19およびインダクタL20を介してパルスは伝播しない(そして、ジョセフソン接合J6はトリガしない)。従って、上記したように、出力超伝導XORゲート306は、遅延決定パルスDPLSに基づいて、中間超伝導論理出力信号IOXおよび超伝導論理入力信号IN3に対して論理XOR関数を実行して、第1の論理状態または第2の論理状態のいずれかを有する超伝導論理出力信号OUTXを生成する。
【0031】
結果として、上記したように、出力超伝導XORゲート306への超伝導論理入力は、遅延決定パルスDPLSの前に到達することができ、それによって、出力超伝導XORゲート306の論理XOR関数に関連するタイミングエラー(例えば、競合状態)を軽減するように、出力超伝導XORゲート306による論理XOR関数が可能となる。さらに、遅延決定パルスDPLSは、決定パルスPLSに対して(例えば、遅延バッファ314を介した第2の遅延パルスPLS_Dの伝播によって)ごくわずかに遅延されるだけであるため、入力超伝導XORゲート304および出力超伝導XORゲート306は、クロック信号CLKの同じ位相で個々の論理XOR関数を実行することができる。
【0032】
図4は、超伝導XOR-4ゲート回路400の一例を示す。超伝導XOR-4ゲート回路400は、
図1および
図2の個々の例における超伝導XORゲートシステム100または超伝導XORゲートシステム202に対応することができる。従って、以下の
図4の例の説明では、
図1および
図2の例が参照される。
【0033】
超伝導XOR-4ゲート回路400は、パルス発生器402、第1の入力超伝導XORゲート404、第2の入力超伝導XORゲート406、および出力超伝導XORゲート408を含む。パルス発生器408は、(例えば、パルス発生器408および/または超伝導XORゲート404および408に関連するJTL段と比較して)比較的低い臨界電流を有するように製造されたジョセフソン接合JPLSを含む。ジョセフソン接合JPLSは、クロック信号CLKに結合されており、クロック信号の所与の位相(例えば、クロック信号CLKによって供給されるバイアス)に応答して、ジョセフソン接合JPLSはトリガして、決定パルスPLSを生成する。決定パルスPLSは、インダクタL1、ジョセフソン接合J1、およびインダクタL2によって形成されるJTL段と、インダクタL3、ジョセフソン接合J2、およびインダクタL4によって形成される別のJTL段とを介して伝播する。JTL段は、クロック信号CLKによってバイアスされる。ジョセフソン接合J2のトリガに応答して、決定パルスPLSが分割されて、第1の決定パルスPLS_1がエスケープジョセフソン接合JESC1を介して第1の超伝導XORゲート304に供給され、第2の決定パルスPLS_2がエスケープジョセフソン接合JESC2を介して第2の超伝導XORゲート306に供給され、第3の決定パルスPLS_Dが遅延線410に供給される。
【0034】
第1の入力超伝導XORゲート404は、第1の入力412において第1の超伝導論理入力信号IN1を受信し、第2の入力414において第2の超伝導論理入力信号IN2を受信する。第1の入力412は、インダクタL5、ストレージジョセフソン接合JS1、およびインダクタL6によって形成されるJTL段を含む。同様に、第2の入力414は、インダクタL7、ストレージジョセフソン接合JS2、およびインダクタL8によって形成されるJTL段を含む。ストレージジョセフソン接合JS1およびJS2はバイアスされず、従って、(例えば、パルス発生器408および/または超伝導XORゲート404および408に関連するJTL段と比較して)比較的低い臨界電流を有するように製造される。従って、ストレージジョセフソン接合JS1およびJS2はそれぞれ、超伝導論理入力信号IN1およびIN2の個々の一方の第1の論理状態(例えば、パルス)に応答してトリガするが、超伝導論理入力信号IN1およびIN2の他方の第1の論理状態に応答してトリガしないように構成される。
【0035】
超伝導論理入力信号IN1およびIN2は、接地インダクタLRST1および決定ジョセフソン接合JD1に結合されたエスケープジョセフソン接合JESC3に供給される。第1の論理状態を有する超伝導論理入力信号IN1およびIN2の単一の1つに応答して、個々のパルスは、決定ジョセフソン接合JD1およびストレージジョセフソン接合JS1およびJS2の個々の1つによって形成される決定ループに磁束量子を導入する。磁束量子は、エスケープジョセフソン接合JESC2をトリガするには不十分であっても、第1の決定パルスPLS_1と組み合わせて決定ジョセフソン接合JD1をトリガするには十分である。その結果、第1の中間超伝導論理出力信号IOX1は、決定ジョセフソン接合JD1からインダクタL9およびインダクタL10を介してパルス(例えば、第1の論理状態)として伝播して、クロック信号CLKの個々の位相からのバイアスによりジョセフソン接合J3をトリガすることができる。従って、第1の入力超伝導XORゲート404のJTL段の残りのインダクタよりも著しく高いインダクタンスを有する接地インダクタLRST1は、決定ループ内の磁束量子をリセットするように動作することができる。
【0036】
第1の論理状態を有する超伝導論理入力信号IN1およびIN2の両方に応答して、エスケープジョセフソン接合JESC3の臨界電流を超えることで、エスケープジョセフソン接合JESC3がトリガされる。その結果、エスケープジョセフソン接合JESC3は、決定ループ内の磁束量子を消滅させる。代わりに、第2の論理状態(例えば、無パルス)を有する超伝導論理入力信号IN1およびIN2の両方に応答して、磁束量子は決定ループに導入されない。同じ論理状態の例のいずれにおいても、第1の決定パルスPLS_1は、パルス発生器402内のエスケープジョセフソン接合JESC1をトリガし、従って、第1の決定パルスPLS_1を消滅させる。結果として、第2の論理状態を有する第1の中間超伝導論理出力信号IOX1に基づいて、決定ジョセフソン接合JD1からインダクタL9およびインダクタL10を介してパルスは伝播しない(そして、ジョセフソン接合J3はトリガしない)。従って、上記したように、第1の入力超伝導XORゲート404は、第1の決定パルスPLS_1に基づいて、第1および第2の超伝導論理入力信号IN1およびIN2に対して論理XOR関数を実行して、第1の論理状態または第2の論理状態を有する第1の中間超伝導論理出力信号IOX1を生成する。
【0037】
第2の入力超伝導XORゲート406は、第1の入力416において第3の超伝導論理入力信号IN3を受信し、第2の入力418において第2の超伝導論理入力信号IN2を受信する。第1の入力416は、インダクタL11、ストレージジョセフソン接合JS3、およびインダクタL12によって形成されるJTL段を含む。同様に、第2の入力418は、インダクタL13、ストレージジョセフソン接合JS4、およびインダクタL14によって形成されるJTL段を含む。ストレージジョセフソン接合JS3およびJS4はバイアスされず、従って、(例えば、パルス発生器402および/または超伝導XORゲート404、406、および408に関連するJTL段と比較して)比較的低い臨界電流を有するように製造される。従って、ストレージジョセフソン接合JS3およびJS4はそれぞれ、超伝導論理入力信号IN3およびIN4の個々の一方の第1の論理状態(例えば、パルス)に応答してトリガするが、超伝導論理入力信号IN3およびIN4の他方の第1の論理状態に応答してトリガしないように構成される。
【0038】
超伝導論理入力信号IN3およびIN4は、接地インダクタLRST2および決定ジョセフソン接合JD2に結合されたエスケープジョセフソン接合JESC4に供給される。第1の論理状態を有する超伝導論理入力信号IN3およびIN4の単一の1つに応答して、個々のパルスは、決定ジョセフソン接合JD2およびストレージジョセフソン接合JS3およびJS4の個々の1つによって形成される決定ループに磁束量子を導入する。磁束量子は、エスケープジョセフソン接合JESC3をトリガするには不十分であっても、第2の決定パルスPLS_2と組み合わせて決定ジョセフソン接合JD2をトリガするには十分である。結果として、第2の中間超伝導論理出力信号IOX2は、決定ジョセフソン接合JD2からインダクタL15およびインダクタL16を介してパルス(例えば、第1の論理状態)として伝播して、クロック信号CLKの個々の位相からのバイアスによりジョセフソン接合J4をトリガすることができる。従って、第2の入力超伝導XORゲート406のJTL段の残りのインダクタよりも著しく高いインダクタンスを有する接地インダクタLRST2は、決定ループ内の磁束量子をリセットするように動作することができる。
【0039】
第1の論理状態を有する超伝導論理入力信号IN3およびIN4の両方に応答して、エスケープジョセフソン接合JESC4の臨界電流を超えることで、エスケープジョセフソン接合JESC4がトリガされる。その結果、エスケープジョセフソン接合JESC4は、決定ループ内の磁束量子を消滅させる。代わりに、第2の論理状態(例えば、無パルス)を有する超伝導論理入力信号IN3およびIN4の両方に応答して、磁束量子は決定ループに導入されない。同じ論理状態の例のいずれにおいても、第2の決定パルスPLS_2は、パルス発生器402内のエスケープジョセフソン接合JESC2をトリガし、従って、第2の決定パルスPLS_2を消滅させる。結果として、第2の論理状態を有する第2の中間超伝導論理出力信号IOX2に基づいて、決定ジョセフソン接合JD2からインダクタL15およびインダクタL16を介してパルスは伝播しない(そして、ジョセフソン接合J4はトリガしない)。従って、上記したように、第2の入力超伝導XORゲート406は、第2の決定パルスPLS_2に基づいて、第3および第4の超伝導論理入力信号IN3およびIN4に対して論理XOR関数を実行して、第1の論理状態または第2の論理状態を有する第2の中間超伝導論理出力信号IOX2を生成する。
【0040】
パルス発生器402に関して上記で説明したように、第3の決定パルスPLS_Dが遅延線410に供給される。遅延線410は、第3の決定パルスPLS_Dの伝播遅延を提供するように構成される遅延バッファ420を含む。例えば、遅延バッファ420は、一連のJTL段によって形成することができる。また、遅延線410は、インダクタL17、ジョセフソン接合J5、およびインダクタL18によって形成されるJTL段と、インダクタL19、ジョセフソン接合J6、およびインダクタL20によって形成される別のJTL段とを含む。JTL段は、遅延バッファ420の一部であり得るか、または遅延バッファ420に関連するJTL段から分離され得る。従って、遅延線410は、第3の決定パルスPLS_Dに基づいて遅延決定パルスDPLSを生成することができる。従って、遅延決定パルスDPLSは、個々の第1および第2の入力超伝導XORゲート404および406トに供給される第1および第2の決定パルスPLS_1およびPLS_2に対して遅延されるようにして、エスケープジョセフソン接合JESC5を介して出力超伝導XORゲート408に供給される。一例として、遅延バッファ420のJTL段の量は、第1および第2の入力超伝導XORゲート404および406が論理XOR関数を実行し、結果として生じる第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2を供給する時間の十分に後に発生するように遅延決定パルスDPLSの到達を遅延させるのに十分となるようにすることができる。
【0041】
出力超伝導XORゲート410は、第1の入力422において第1の中間超伝導論理出力信号IOX1を受信し、第2の入力424において第2の中間超伝導論理出力信号IOX2を受信する。第1の入力422は、インダクタL21、ストレージジョセフソン接合JS5、およびインダクタL22によって形成されるJTL段を含む。同様に、第2の入力424は、インダクタL23、ストレージジョセフソン接合JS6、およびインダクタL24によって形成されるJTL段を含む。ストレージジョセフソン接合JS5およびJS6はバイアスされず、従って、(例えば、パルス発生器408および/または超伝導XORゲート404、406、および408に関連するJTL段と比較して)比較的低い臨界電流を有するように製造される。従って、ストレージジョセフソン接合JS5およびJS6はそれぞれ、第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2の個々の一方の第1の論理状態(例えば、パルス)に応答してトリガするが、第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2の他方の第1の論理状態に応答してトリガしないように構成される。
【0042】
第1の中間超伝導論理出力信号IOX1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX2は、接地インダクタLRST3および決定ジョセフソン接合JD3に結合されたエスケープジョセフソン接合JESC6に供給される。第1の論理状態を有する第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2の単一の1つに応答して、個々のパルスは、決定ジョセフソン接合JD3およびストレージジョセフソン接合JS5およびJS6の個々の1つによって形成される決定ループに磁束量子を導入する。磁束量子は、エスケープジョセフソン接合JESC6をトリガするには不十分であっても、遅延決定パルスDPLSと組み合わせて決定ジョセフソン接合JD3をトリガするには十分である。その結果、超伝導論理出力信号OUTXは、決定ジョセフソン接合JD3からインダクタL25およびインダクタL26を介してパルス(例えば、第1の論理状態)として伝播して、クロック信号CLKの個々の位相からのバイアスによりジョセフソン接合J7をトリガすることができる。従って、出力超伝導XORゲート410のJTL段の残りのインダクタよりも著しく高いインダクタンスを有する接地インダクタLRST3は、決定ループ内の磁束量子をリセットするように動作することができる。
【0043】
第1の論理状態を有する第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2の両方に応答して、エスケープジョセフソン接合JESC6の臨界電流を超えることで、エスケープジョセフソン接合JESC6がトリガされる。その結果、エスケープジョセフソン接合JESC6は、決定ループ内の磁束量子を消滅させる。代わりに、第2の論理状態(例えば、無パルス)を有する第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2の両方に応答して、磁束量子は決定ループに導入されない。同じ論理状態の例のいずれにおいても、遅延決定パルスDPLSは、遅延線410におけるエスケープジョセフソン接合JESC5をトリガし、従って、遅延決定パルスDPLSを消滅させる。結果として、第2の論理状態を有する超伝導論理出力信号OUTXに基づいて、決定ジョセフソン接合JD3からインダクタL25およびインダクタL26を介してパルスは伝播しない(そして、ジョセフソン接合J7はトリガしない)。従って、上記したように、出力超伝導XORゲート408は、遅延決定パルスDPLSに基づいて、第1および第2の中間超伝導論理出力信号IOX1およびIOX2に対して論理XOR関数を実行して、第1の論理状態または第2の論理状態のいずれかを有する超伝導論理出力信号OUTXを生成する。
【0044】
結果として、上記したように、出力超伝導XORゲート408への超伝導論理入力は、遅延決定パルスDPLSの前に到達することができ、それによって、出力超伝導XORゲート408の論理XOR関数に関連するタイミングエラー(例えば、競合状態)を軽減するように、出力超伝導XORゲート408による論理XOR関数が可能となる。さらに、遅延決定パルスDPLSは、第1および第2の決定パルスPLS_1およびPLS_2に対して(例えば、遅延バッファ420を介した第2の遅延パルスPLS_Dの伝播によって)ごくわずかに遅延されるだけであるため、第1の入力超伝導XORゲート404、第2の入力超伝導XORゲート406、および出力超伝導XORゲート408は、クロック信号CLKの同じ位相で個々の論理XOR関数を実行することができる。
【0045】
上記した構造的および機能的特徴を考慮して、本発明の様々な態様による方法は、
図5を参照してよりよく理解されるであろう。説明を簡単にするために、
図5の方法は、連続的に実行するものとして図示され、説明されているが、いくつかの態様は、本発明に従って、本明細書に示され記載されているものとは異なる順序で、および/または他の態様と同時に生じることができるため、本発明は、図示された順序によって制限されないことが理解され、かつ認識されるべきである。さらに、本発明の一態様による方法を実施するために、図示されたすべての特徴が必要とされるわけではない。
【0046】
図5は、超伝導回路システム(例えば、超伝導XORゲートシステム100)において論理XOR関数を提供するための方法500の一例を示す。502において、第1の超伝導論理入力信号(例えば、第1の超伝導論理入力信号IN
1)および第2の超伝導論理入力信号(例えば、第2の超伝導論理入力信号IN
2)が、入力超伝導XOR-2ゲート(例えば、1つの入力超伝導XORゲート(複数可)104)に供給される。504において、パルス発生器(例えば、パルス発生器104)によりクロック信号(例えば、クロック信号CLK)の所与の位相に応答して決定パルス(例えば、決定パルスPLS)が生成される。入力超伝導XOR-2ゲートは、クロック信号の所与の位相で決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号(例えば、中間超伝導論理出力信号IO
X)を提供する。506において、中間超伝導論理出力信号および第3の超伝導論理入力信号(例えば、第3の超伝導論理入力信号IN
3または第2の中間超伝導論理出力信号IO
X2)が、出力超伝導XOR-2ゲート(例えば、超伝導出力XORゲート106)に供給される。出力超伝導XOR-2ゲートは、クロック信号の所与の位相で決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号(例えば、超伝導論理出力信号OUT
X)を提供する。
【0047】
上記に記載されているのは、本発明の例である。もちろん、本発明を説明する目的で構成要素または方法の考えられるすべての組み合わせを説明することは不可能であるが、当業者は、本発明の多くのさらなる組み合わせおよび置換が可能であることを認識するであろう。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲を含む、本出願の範囲内に含まれるそのようなすべての変更、修正、および変形を包含することが意図されている。さらに、開示またはクレームが「1つの(a, an)」、「第1の(a first)」、「もう一つの(another)」要素、またはそれらの均等物を記載する場合、1つまたは複数のそのような要素を含むと解釈されるべきであり、2つ以上のそのような要素を必要とも除外もしない。本明細書で使用される場合、「含む」という用語は、含むがこれに限定されないことを意味し、「含んでいる」という用語は、含んでいるがこれに限定されないことを意味する。「に基づく」という用語は、少なくとも部分的に基づくことを意味する。
【0048】
以下に、上記実施形態から把握できる技術思想を付記として記載する。
[付記1]
超伝導XORゲートシステムであって、
決定パルスを生成するとともに、前記決定パルスを遅延させて遅延決定パルスを生成するように構成されたパルス発生器と、
第1の超伝導論理入力信号および第2の超伝導論理入力信号を受信し、クロック信号の所与の位相で前記決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、中間超伝導論理出力信号を提供するように構成された入力超伝導XOR-2ゲートと、
前記中間超伝導論理出力信号および第3の超伝導論理入力信号を受信し、前記クロック信号の所定の位相で前記遅延決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、超伝導論理出力信号を提供するように構成された出力超伝導XOR-2ゲートと、を備えるシステム。
【0049】
[付記2]
前記パルス発生器は、遅延バッファを含む遅延線を含み、前記遅延バッファは、前記遅延決定パルスを生成するための少なくとも1つのジョセフソン伝送線を含む、付記1に記載のシステム。
【0050】
[付記3]
前記第1のXOR-2ゲートは、前記第1の超伝導論理入力信号を受信する第1の入力段と、前記第2の超伝導論理入力信号を受信する第2の入力段とを含み、前記第2のXOR-2ゲートは、前記第3の超伝導論理入力信号を受信する第3の入力段と、前記中間超伝導論理出力信号を受信する第4の入力段とを含み、前記第1、第2、第3、および第4の入力段の各々は、前記クロック信号によってバイアスされないストレージジョセフソン接合を含む、付記1に記載のシステム。
【0051】
[付記4]
前記第1、第2、および第3の超伝導論理入力信号がレシプロカル量子論理(RQL)パルスとして供給され、前記XOR-2ゲートシステムが前記超伝導論理出力信号をRQLパルスとして提供するように構成される、付記1に記載のシステム。
【0052】
[付記5]
前記入力超伝導XOR-2ゲートは、論理XOR関数を実行して、第1の中間超伝導論理出力信号を提供する第1の入力超伝導XOR-2ゲートとして構成され、前記出力超伝導XOR-2ゲートは、前記第1の中間超伝導論理出力信号と、第2の中間超伝導論理出力信号に対応する前記第3の超伝導論理入力信号とを受信し、論理XOR関数を実行して、前記超伝導論理出力信号を提供し、前記システムは、第4の超伝導論理入力信号および第5の超伝導論理入力信号を受信する第2の入力超伝導XOR-2ゲートであって、前記クロック信号の所与の位相で前記決定パルスに基づいて論理XOR関数を実行して、前記第2の中間超伝導論理出力信号を提供するように構成された前記第2の入力超伝導XOR-2ゲートをさらに備える、付記1に記載のシステム。