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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】混合装置
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/43 20220101AFI20240523BHJP
   B01F 35/11 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 35/221 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 35/92 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 27/80 20220101ALI20240523BHJP
   B01F 35/213 20220101ALI20240523BHJP
【FI】
B01F23/43
B01F35/11
B01F35/221
B01F35/71
B01F35/92
B01F27/80
B01F35/213
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022098886
(22)【出願日】2022-06-20
(65)【公開番号】P2023031239
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2022-06-24
(31)【優先権主張番号】P 2021136437
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000033
【氏名又は名称】旭化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】高柳 伸也
【審査官】山崎 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-279273(JP,A)
【文献】特開2013-177728(JP,A)
【文献】特表2019-509173(JP,A)
【文献】特開2013-188744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01F 21/00-25/90
B01F 35/00-35/95
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を含む第一流体が流れる第一流路と、
良溶媒を含む第二流体が流れる第二流路と、
貧溶媒を含む第三流体が流れる第三流路と、
前記第二の流路及び前記第三の流路と接続され、合流した前記第二流体及び前記第三流体が流れる合流流路と、
前記第一流路及び前記合流流路と接続され、前記第一流体、前記第二流体、前記第三流体が流入する空間を有する流体混合部と、
該流体混合部内に配置され、駆動源により駆動されて回転する回転翼と、
一端が前記流体混合部に接続され、前記第一流体、前記第二流体、前記第三流体が混合した混合流体が流れる混合流路と、
前記混合流路に設けられ、前記混合流体の光学特性を測定するために所定値以上の透過率を有する光学セルと、
前記光学セルの温度調節を行う温調装置と、
を備え、
前記合流流路と前記流体混合部とが接続される箇所の流路断面積は、前記第一流路と前記流体混合部とが接続される箇所の流路断面積よりも小さい、混合装置。
【請求項2】
前記光学セルは、観察窓として構成されている、請求項1に記載の混合装置。
【請求項3】
前記光学セルは、前記混合流体の透過率を測定するための光学センサを有する、請求項1に記載の混合装置。
【請求項4】
前記第一流路の少なくともいずれかの箇所の流路断面積S1は、前記第二流路のいずれかの箇所の流路断面積S2、および、前記第三流路のいずれかの箇所の流路断面積S3よりも大きい、請求項1に記載の混合装置。
【請求項5】
前記流体混合部と直接または間接的に接続され、第四流体を当該流体混合部に向かって流す第四流路をさらに有する、請求項1に記載の混合装置。
【請求項6】
前記第一流体の流量を調整する手段と、前記第二流体の流量を調整する手段と、前記第三流体の流量を調整する手段とを有する、請求項1に記載の混合装置。
【請求項7】
前記第一流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変であり、前記第二流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変であり、前記第三流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変である、請求項1に記載の混合装置。
【請求項8】
前記第一流路、前記第二流路、前記第三流路には、前記流体混合部から流体が逆流するのを防止する逆止弁がそれぞれ設けられている、請求項1に記載の混合装置。
【請求項9】
前記流体混合部の内部を洗浄するための洗浄手段を有する、請求項1に記載の混合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水処理や医療用などとして用いられる平膜や中空糸膜といった膜部材の製法のひとつに熱誘起相分離法や貧溶媒誘起相分離法といった製膜法がある。これは、高分子樹脂成分とこれの共通溶媒を少なくとも含有する製膜原液を成型用ノズルから押し出し、温度を低下させ、または製膜原液に対して水などの貧溶媒を主成分とする溶液で凝固させて製膜するというものである(例えば特許文献1など参照)。
【0003】
熱誘起相分離法による製膜は、製膜原液の組成に対し、どのような温度で相分離をさせて製膜するかが重要であり、また貧溶媒誘起相分離法による製膜は、どのような組成比で製膜原液と凝固液をつくって膜を生成するかが重要である。そこで、製膜の温度条件や組成比条件を見極めるべく、相平衡図に現れるバイノーダル線(1相と2相とを分ける線)を測定し、所望する膜孔径を得られるような温度、製膜原液、凝固液組成等を選定するという手法が利用されている。このような相平衡図を知り利用することは、膜開発の方向性を決めるうえできわめて重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2021-41313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のごとき手法では、高分子樹脂に代表される固体樹脂を溶媒に溶解させて生成した原液と、貧溶媒などの複数種の流体とを所定の比率で混合したり、もしくは、固体樹脂、良溶媒、および貧溶媒を同時に混合したりするごとに、または相変化を生じさせる対象の流体の温度を所定温度に調節するごとに、1つずつサンプルをとり、バイノーダル線に至ったかを示す曇点を一点ごとに個別に測定していくという作業を繰り返していることがあり、バイノーダル線を測定するにあたり手間と膨大な時間を要することがあったというのが実際である。
【0006】
そこで、本発明は、相分離法による製膜において所望の製膜条件を選定するための情報を迅速に取得することを可能とする混合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
樹脂を含む流体が流れる一の流路と、
溶媒を含む流体が流れる他の流路と、
樹脂を含む流体と溶媒を含む流体とが流入する空間を有する流体混合部と、
該液体混合部内に配置され、駆動源により駆動されて回転する回転翼と、
一端が液体混合部に接続され、樹脂を含む流体と溶媒を含む流体が混合した混合流体が流れる混合流路と、
を備える混合装置である。
【0008】
また、本発明の別の一態様は、
樹脂を含む第一流体が流れる第一流路と、
良溶媒を含む第二流体が流れる第二流路と、
貧溶媒を含む第三流体が流れる第三流路と、
第一流体、第二流体、第三流体が流入する空間を有する流体混合部と、
該液体混合部内に配置され、駆動源により駆動されて回転する回転翼と、
一端が液体混合部に接続され、第一流体、第二流体、第三流体が混合した混合流体が流れる混合流路と、
を備える混合装置である。
【0009】
上記のごとき混合装置においては、各流体の流量を変えながら流体混合部に流入させて混合、撹拌してサンプリングすることにより、流体(凝固液)の組成比を連続的にかつ任意に変化させることができる。また、このように流体の組成比を連続的に変化させながら、かつ温度を変えながら当該混合流体の光学特性を測定することで、当該混合流体の曇点(組成ないし温度の変化によって相分離が起き、その結果不透明になる組成ないし温度)を測定することでバイノーダル線を検出することができる。このような混合装置によれば、貧溶媒誘起相分離法を想定したバイノーダル線を円滑に取得することができるし、はたまた、熱誘起相分離法(樹脂と良溶媒の二種混合物に対して熱変化を与えることによって相分離させる方法)を想定したバイノーダル線を円滑に取得することもできる。
【0010】
上記のごとき混合装置は、混合流路に設けられ、混合流体の光学特性を測定するために所定値以上の透過率を有する光学セルをさらに備えていてもよい。
【0011】
上記のごとき混合装置は、光学セルの温度調節を行う温調装置を備えていてもよい。
【0012】
上記のごとき混合装置において、光学セルは、観察窓として構成されていてもよい。
【0013】
上記のごとき混合装置において、光学セルは、混合流体の透過率を測定するための光学センサを有していてもよい。
【0014】
上記のごとき混合装置において、第二流路と第三流路とは、流体混合部の上流側における接合箇所で接合されており、接合箇所と流体混合部とを接続する合流流路がさらに設けられていてもよい。
【0015】
上記のごとき混合装置において、第一流路の少なくともいずれかの箇所の流路断面積S1は、第二流路のいずれかの箇所の流路断面積S2、および、第三流路のいずれかの箇所の流路断面積S3よりも大きくてもよい。
【0016】
上記のごとき混合装置は、流体混合部と直接または間接的に接続され、第四流体を当該流体混合部に向かって流す第四流路をさらに有するものであってもよい。
【0017】
上記のごとき混合装置は、第一流体の流量を調整する手段と、第二流体の流量を調整する手段と、第三流体の流量を調整する手段とを有していてもよい。
【0018】
上記のごとき混合装置において、第一流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変であり、第二流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変であり、第三流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変であってもよい。
【0019】
上記のごとき混合装置において、第一流路、第二流路、第三流路には、流体混合部から流体が逆流するのを防止する逆止弁がそれぞれ設けられていてもよい。
【0020】
上記のごとき混合装置は、流体混合部の内部を洗浄するための洗浄手段を有していてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、相分離法による製膜において所望の製膜条件を選定するための情報を迅速に取得することを可能とする混合装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1の実施形態における混合装置の構成の概略を示す図である。
図2】第1の実施形態における混合装置の構成の概略を示す、装置本体部については縦断面で表した図である。
図3】第2の実施形態における混合装置の構成の概略を示す、装置本体部については縦断面で表した図である。
図4】第3の実施形態における混合装置の構成の概略を示す、装置本体部については縦断面で表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る混合装置の好適な実施形態を詳細に説明する(図1図4参照)。
【0024】
[第1の実施形態]
混合装置1は、3液混合用の装置(インラインミキサー)として構成されているもので、第一流路15、第二流路25、第三流路35の3つの流路を備えている(図1図2参照)。各流路を流れる流体の種類は限定されるものではなく適宜設定しうる。一例として、本実施形態では、第一流路15を流れる第一流体にはポリマーと良溶媒からなる溶液A、第二流路25を流れる第二流体には良溶媒からなる溶液B、第三流路35を流れる第三流体には貧溶媒と添加剤からなる溶液Cをそれぞれ設定している(図1参照)。
【0025】
これら第一流路15、第二流路25、第三流路35の流路の大きさ(断面積)は特に限定されるものではなく、一様であってもよいし、流体の種類に応じて異ならせてもよい。一例として、本実施形態では、第一流路15の少なくともいずれかの箇所の流路断面積S1を、第二流路25のいずれかの箇所の流路断面積S2、および、第三流路35のいずれかの箇所の流路断面積S3よりも大きくしている。別言すれば、第一流路15のうち流路断面積が最小となる部分は、第二流路25と第三流路35のうち流路断面積が最大となる部分よりも大きい。このように、樹脂を含む溶液(ポリマーと良溶媒からなる溶液A)が流れる第一流路15の流路断面積S1を比較的大きくするという構成は、当該溶液の円滑な流れを維持ないし確保しやすくする。
【0026】
また、本実施形態の混合装置1は、第一圧送装置11、第一逆止弁16、第二圧送装置21、第二逆止弁26、第三逆止弁36、流体混合部51、混合流路53、電動機61、回転翼62、測定部73、温調器82などを備える(図2等参照)。
【0027】
第一圧送装置11は、第一流体(ポリマーと良溶媒からなる溶液A)の流量を調整する手段のひとつとして機能する装置である(図1参照)。一例として、本実施形態では、第一流体を圧送するシリンジポンプを第一流路15に取り付け、第一圧送装置11として用いている(図1参照)。シリンジポンプといった第一圧送装置11から作用させる圧力の大きさを適宜に変更させることによって第一流体の流量を調整することができる。
【0028】
第一流路15は、第一流体(ポリマーと良溶媒からなる溶液A)を混合装置1の装置本体部2中の流体混合部51へ供給するように設けられている(図1等参照)。第一流路15の基端(上流)側には第一圧送装置11が取り付けられ、先端(下流)側は流体混合部51に接続されている(図2等参照)。第一流路15の途中たとえば流体混合部51へ接続される部分の前段には第一逆止弁16が設けられている(図2等参照)。
【0029】
第一逆止弁16は、第一流体(ポリマーと良溶媒からなる溶液A)の流量を調整する手段のひとつとして機能するものであり、第一流体あるいはその他の流体が流体混合部51から第一流路15へ逆流するのを防止することで、樹脂が析出することに起因して流路が塞がることを抑止する(図2参照)。
【0030】
第二圧送装置21は、第二流体(良溶媒からなる溶液B)の流量を調整する手段のひとつとして機能する装置である(図1参照)。一例として、本実施形態では、第二流体を圧送するシリンジポンプを第二流路25に取り付け、第二圧送装置21として用いている(図1参照)。シリンジポンプといった第二圧送装置21から作用させる圧力の大きさを適宜に変更させることによって第二流体の流量を調整することができる。
【0031】
第二流路25は、第二流体(良溶媒からなる溶液B)を混合装置1の装置本体部2中の流体混合部51へ供給するように設けられている(図1等参照)。第二流路25の基端(上流)側には第二圧送装置21が取り付けられ、先端(下流)側は流体混合部51に接続されている(図2等参照)。第二流路25の途中たとえば流体混合部51へ接続される部分の前段には第二逆止弁26が設けられている(図2等参照)。
【0032】
第二逆止弁26は、第二流体(良溶媒からなる溶液B)の流量を調整する手段のひとつとして機能するものであり、第二流体あるいはその他の流体が流体混合部51あるいは接合箇所29から第二流路25へ逆流するのを防止する(図2参照)。
【0033】
第三圧送装置31は、第三流体(貧溶媒と添加剤からなる溶液C)の流量を調整する手段のひとつとして機能する装置である(図1参照)。一例として、本実施形態では、第三流体を圧送するシリンジポンプを第三流路35に取り付け、第三圧送装置31として用いている(図1参照)。シリンジポンプといった第三圧送装置31から作用させる圧力の大きさを適宜に変更させることによって第三流体の流量を調整することができる。
【0034】
第三流路35は、第三流体(貧溶媒と添加剤からなる溶液C)を混合装置1の装置本体部2中の流体混合部51へ供給するように設けられている(図1等参照)。第三流路35の基端(上流)側には第三圧送装置31が取り付けられ、先端(下流)側は流体混合部51に接続されている(図2等参照)。第三流路35の途中たとえば流体混合部51へ接続される部分の前段には第三逆止弁36が設けられている(図2等参照)。
【0035】
第三逆止弁36は、第三流体(貧溶媒と添加剤からなる溶液C)の流量を調整する手段のひとつとして機能するものであり、第三流体あるいはその他の流体が流体混合部51あるいは接合箇所29から第三流路35へ逆流するのを防止する(図2参照)。
【0036】
本実施形態の混合装置1において、上記の第二流路25と第三流路35とは、流体混合部51の上流側における接合箇所29で接合されている。また、接合箇所29と流体混合部51との間には、合流流路39が設けられている。第二流路25を流れた第二流体(良溶媒からなる溶液B)と、第三流路35を流れた第三流体(貧溶媒と添加剤からなる溶液C)とは、接合箇所29および合流流路39を通過して流体混合部51に流入する(図2参照)。この接合箇所29を流体混合部51に近づけることで、混合した流体の滞留時間を小さくし円滑な測定を実施することが可能となる。なお、合流流路39は、樹脂(を含む第一流体たる溶液A)が流体混合部51から接合箇所へと流れ込む(逆流する)のを抑止し、また固化した樹脂がその開口部に堆積することを防ぐべく、当該開口部が適度に小さく形成されている(図2参照)。このように開口部を適度に小さくして流路面積を小さくすると、流体の流速が上がり、高分子ゲルや凝固物が付着しづらくなる。
【0037】
流体混合部51は、第一流体、第二流体、第三流体のそれぞれが流入する空間からなり、その内部でこれら流体が混合されるように形成された部位である。一例として本実施形態では、装置本体部2内に円柱状の空間を設けて流体混合部51を形成している。流体混合部51の内部には回転翼62が設けられている。また、流体混合部51の下流側には混合流路53が設けられている(図2等参照)。
【0038】
回転翼62は、流体混合部51に流入した第一流体、第二流体および第三流体を混合する手段として流体混合部51内に配置されている。装置本体部2には、この回転翼62を駆動する電動機(電動モータ)61が設けられている(図1図2参照)。
【0039】
混合流路53は、流体混合部51内で混合された流体が装置本体部2の外部へと送液される際に流れる流路である(図2等参照)。混合流路53には、混合流体の光学特性を測定するための測定部73が設けられている。
【0040】
測定部73は混合流体の光学特性を測定する際に利用される。測定部73はたとえば観察窓で構成されていてもよい。光学特性として特に混合液の曇点を作業者らが目視にて検出する構成とする場合、このような観察窓から見える混合液の濁りを観察して曇点を視認することが可能である。
【0041】
あるいは、光学センサなどを用いて混合流体の光学特性を測定することとしてもよい。この場合の構成の一例としては、光源71、発光側光ファイバ72、受光側光ファイバ74などを併設し、測定部材としての光学センサ75を用いて混合流体の光学特性を測定するというものがある(図2等参照)。光源71は、所定の波長たとえば200~900nmの光を射出して発光側光ファイバ72に送信する。発光側光ファイバ72は、測定部(観察窓)73の近傍に設置されていて、当該測定部(観察窓)73から混合流路53に向けて光を照射する。受光側光ファイバ74は混合流路53を挟んで発光側光ファイバ72とは反対側に設置されていて、混合流路53の混合流体を透過した光を受光する。光学センサ75は、受光側光ファイバ74から光信号を受信し、混合流体の光の透過率を測定する。光学センサ75の測定結果から、混合流体の曇点を検出することができる(図2等参照)。
【0042】
したがって、測定部73は、混合流路53を流れる混合流体の色彩の変化を観察または測定可能なように、所定値以上の透過率を有する光学セルによって構成されていることが好ましい。光学セルは、80%以上の透過率を有することが好ましく、90%以上の透過率を有することがさらに好ましい。これにより、作業者が目視により曇点を観察する場合には、混合流路53を流れる混合流体の色味の変化を、光学セルを介して目視で確認することができる。また、混合流路53を流れる混合流体の色味の変化を、光学センサを用いて測定することができる。
【0043】
温調器(温調装置)82は、測定部73を中心とした部分の温度を調節するための機器である(図1等参照)。温調器82により流体混合部51の温度を制御することで、混合流体の曇点の温度依存性(すなわち、混合流体の曇点が有する、温度に依存して変化するという特性)を併せて取得(入手)することが可能となる。本実施形態の温調器82は、温調液を通液することで温調を行う方式の温調装置であり、温調液を通液するための配管を繋ぐ構成となっている。ただし、これは温調装置の好適な構成の一例にすぎず、この他、電気ヒータやペルチェ素子等を利用した構成の温調装置を採用することもできる。
【0044】
また、上記のごとき混合装置1に、流体混合部51の内部などを洗浄するための洗浄手段が併設されていてもよい。混合流体を流した後の流体混合部51の内部などをかかる洗浄手段により洗浄しておけば、次回の操作を直ちに行うことができるという点で好適である。洗浄手段は、洗浄液を流す装置を備え付けることによって構成されていてもよいし、ある特定の溶媒を事後的に流すという手法によって実現されてもよい。本実施形態では、混合流体を流した後、第二圧送装置21のみを作動させ、第二流路25を通じて第二流体(良溶媒からなる溶液B)のみを所定時間流し、これによって洗浄をするというように、既に採用されている構成や流体を利用する形で洗浄手段を実現化している。このように良溶媒(からなる溶液B)を流すことで、溶液Aに含まれる樹脂ポリマーを溶かして流体混合部51の内部を洗浄しておき、次の実験までの時間を短縮することができるようになる。
【0045】
上記のごとき構成の混合装置1においては、各流体(樹脂を含む第一流体たる溶液A、良溶媒を含む第二流体たる溶液B、貧溶媒を含む第三流体たる溶液C)の流量を変えながら流体混合部51に流入させ、回転翼62で十分に混合させながら当該混合流体の光学特性をサンプリングしながら、流体(凝固液)の組成比と温度を連続的にかつ任意に変化させることができる。このように、流体の組成比と温度を連続的に変化させながら混合流体の光学特性を測定することで、当該混合流体の曇点を検出し、バイノーダル線を把握することが可能となる。
【0046】
また、上述のごとき構成の混合装置1は、貧溶媒誘起相分離法による製膜を想定した場合にバイノーダル線を円滑に取得することができることに加え、熱誘起相分離法(樹脂と良溶媒の二種混合物に対して熱変化を与えることによって相分離させる方法)による製膜を想定した場合においてもバイノーダル線を円滑に取得することができる。なお、相分離法による製膜の際には、製膜原液の組成に対してどのような温度で相分離をさせて製膜するかが重要であり、少なくとも上記したごとき温調器(温調装置)82が必須の構成要素となる。
【0047】
また、本実施形態のごとく3種類の流体(樹脂を含む第一流体たる溶液A、良溶媒を含む第二流体たる溶液B、貧溶媒を含む第三流体たる溶液C)を、それぞれ流量調整しながら送液して混合させるという構成の装置においては、各流体の流量比の振り幅をある程度以上の広い幅としながら混合させることができ、そのぶん調整しやすいし、ひいてはバイノーダル線を把握しやすくもある。なお、各流体の流量調整の振り幅がとくに限定されないことはいうまでもないが、好適な振り幅の例を示しておくならば、第一流体の流量は0.01~1000ml/minの範囲内で可変であり、第二流体の流量は0.01~1000ml/minの範囲内で可変であり、第三流体の流量は0.01~1000ml/minの範囲内で可変であってもよい。
【0048】
[第2の実施形態]
混合装置1は、4液混合用の装置(インラインミキサー)として構成されていてもよい。以下では、上記した第1の実施形態における混合装置と異なる部分を中心にして、第2の実施形態における混合装置1について説明する(図3参照)。
【0049】
混合装置1は、上記のごとき第一流路15、第二流路25、第三流路35の3つの流路のほか、第四流路45を備えている(図3参照)。第四流路45には第四流体として例えば添加剤や貧溶媒を流すことができるが流体の種類がとくに限定されないことはいうまでもなく、適宜設定ないしは選択することができる。この第四流路45には、第四圧送装置41と第四逆止弁46とが設けられている(図3参照)。
【0050】
第四圧送装置41は、第四流体の流量を調整する手段のひとつとして機能する装置である(図3参照)。一例として、本実施形態では、第四流体を圧送するシリンジポンプを第四圧送装置41として第四流路45に取り付けている(図3参照)。シリンジポンプといった第四圧送装置41から作用させる圧力の大きさを適宜に変更させることによって第四流体の流量を調整することができる。
【0051】
第四流路45は、第四流体を混合装置1の装置本体部2中の流体混合部51に向けて流し供給するように設けられている(図3参照)。第四流路45の基端(上流)側には第四圧送装置41が取り付けられ、先端(下流)側は流体混合部51に接続されている(図3参照)。第四流路45の途中たとえば流体混合部51へ接続される部分の前段には第四逆止弁46が設けられている(図3参照)。なお、本実施形態の第四流路45は、接合箇所29や合流流路39を介して流体混合部51といわば間接的に接続された構成となっているが、これとは異なり、第四流路45が流体混合部51に直接的に接続された構成となっていてもよい。
【0052】
第四逆止弁46は、第四流体の流量を調整する手段のひとつとして機能するものであり、第四流体あるいはその他の流体が流体混合部51あるいは接合箇所29から第四流路45へ逆流するのを防止する(図2参照)。
【0053】
上記のごとく構成された第四流路45等によれば、第四流体は圧送されて第四流路45内を流れ、第四逆止弁46を通過して接合箇所29に送液される。また、接合箇所29に送液された第四流体は、第二流体、第三流体とともに合流流路39を通過して流体混合部51に流れ込む(図3参照)。
【0054】
[第3の実施形態]
混合装置1は、2液混合用の装置(インラインミキサー)として構成されていてもよい。以下では、上記した各実施形態における混合装置と異なる部分を中心に、第3の実施形態における混合装置1について説明する(図4参照)。
【0055】
本実施形態の混合装置1は、2系統の流路等、すなわち第一流路15および第二流路25と、それらに付随する第一圧送装置11、第一逆止弁16、第二圧送装置21、第二逆止弁26を備えている(図4参照)。かかる混合装置においては、たとえば、3種の流体のうちの2つ(例示するならば、第1の実施形態で挙げたポリマーと良溶媒からなる溶液A、良溶媒からなる溶液B、貧溶媒と添加剤からなる溶液Cのうちの溶液Bと溶液C)をあらかじめ混合し、その混合液を第二流路25に流すといった使い方が可能である。
【0056】
なお、上述の実施形態は本発明の好適な実施の一例ではあるがこれに限定されるものではなく本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。例えば、上述の実施形態では、各種流体の流量を調整する手段として各逆止弁(16,26,36)を採用した混合装置1について説明したがこれは好適な一例にすぎず、この他の装置ないしは手段、例えば各圧送装置(11,21,31)の圧力を変える、流量調整バルブ(図示省略)の開度を変更する、といったことによっても各種流体の流量を調整することが可能であることはいうまでもない。
【0057】
上述した実施形態の一部または全部は、以下の付記のようにも記載されうる。しかしながら、本発明は以下の付記に限定されるものではない。
[付記1]
樹脂を含む流体が流れる一の流路と、
溶媒を含む流体が流れる他の流路と、
前記樹脂を含む流体と前記溶媒を含む流体とが流入する空間を有する流体混合部と、
該液体混合部内に配置され、駆動源により駆動されて回転する回転翼と、
一端が前記液体混合部に接続され、前記樹脂を含む流体と前記溶媒を含む流体が混合した混合流体が流れる混合流路と、
を備える混合装置。
【0058】
[付記2]
樹脂を含む第一流体が流れる第一流路と、
良溶媒を含む第二流体が流れる第二流路と、
貧溶媒を含む第三流体が流れる第三流路と、
前記第一流体、前記第二流体、前記第三流体が流入する空間を有する流体混合部と、
該液体混合部内に配置され、駆動源により駆動されて回転する回転翼と、
一端が前記液体混合部に接続され、前記第一流体、前記第二流体、前記第三流体が混合した混合流体が流れる混合流路と、
を備える混合装置。
【0059】
[付記3]
前記混合流路に設けられ、前記混合流体の光学特性を測定するために所定値以上の透過率を有する光学セルをさらに備える、付記1または2に記載の混合装置。
【0060】
[付記4]
前記光学セルの温度調節を行う温調装置を備える、付記3に記載の混合装置。
【0061】
[付記5]
前記光学セルは、観察窓として構成されている、付記1または2に記載の混合装置。
【0062】
[付記6]
前記光学セルは、前記混合流体の透過率を測定するための光学センサを有する、付記1または2に記載の混合装置。
【0063】
[付記7]
前記第二流路と前記第三流路とは、前記流体混合部の上流側における接合箇所で接合されており、前記接合箇所と前記流体混合部とを接続する合流流路がさらに設けられている、付記2に記載の混合装置。
【0064】
[付記8]
前記第一流路の少なくともいずれかの箇所の流路断面積S1は、前記第二流路のいずれかの箇所の流路断面積S2、および、前記第三流路のいずれかの箇所の流路断面積S3よりも大きい、付記2または7に記載の混合装置。
【0065】
[付記9]
前記流体混合部と直接または間接的に接続され、第四流体を当該流体混合部に向かって流す第四流路をさらに有する、付記2,7,8のいずれか一つに記載の混合装置。
【0066】
[付記10]
前記第一流体の流量を調整する手段と、前記第二流体の流量を調整する手段と、前記第三流体の流量を調整する手段とを有する、付記2,7~9のいずれか一つに記載の混合装置。
【0067】
[付記11]
前記第一流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変であり、前記第二流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変であり、前記第三流体の流量は、0.01~1000mL/minで可変である、付記2,7~10のいずれか一つに記載の混合装置。
【0068】
[付記12]
前記第一流路、前記第二流路、前記第三流路には、前記流体混合部から流体が逆流するのを防止する逆止弁がそれぞれ設けられている、付記2,7~11のいずれか一つに記載の混合装置。
【0069】
[付記13]
前記流体混合部の内部を洗浄するための洗浄手段を有する、付記1から12のいずれか一つに記載の混合装置。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、バイノーダル線を測定すること、またはバイノーダル線を測定しながら行う熱誘起相分離法や貧溶媒誘起相分離法の製膜などに適用して好適である。
【符号の説明】
【0071】
1…混合装置
2…装置本体部
11…第一圧送装置(第一流体の流量を調整する手段)
15…第一流路
16…第一逆止弁(第一流体の流量を調整する手段)
21…第二圧送装置(第二流体の流量を調整する手段)
25…第二流路
26…第二逆止弁(第二流体の流量を調整する手段)
29…(第二流路と第三流路との)接合箇所
31…第三圧送装置(第三流体の流量を調整する手段)
35…第三流路
36…第三逆止弁(第三流体の流量を調整する手段)
39…合流流路
41…第四圧送装置(第四流体の流量を調整する手段)
45…第四流路
46…第四逆止弁(第四流体の流量を調整する手段)
51…流体混合部
53…混合流路
61…電動機(駆動源)
62…回転翼
71…光源
72…発光側光ファイバ
73…光学セル(測定部)
74…受光側光ファイバ
75…光学センサ(測定部材)
82…温調器(温調装置)
図1
図2
図3
図4