(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 28/28 20060101AFI20240523BHJP
F04C 25/02 20060101ALI20240523BHJP
F04B 37/20 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
F04C28/28 A
F04C25/02 C
F04C25/02 N
F04B37/20
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022134087
(22)【出願日】2022-08-25
【審査請求日】2022-11-08
(32)【優先日】2021-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520415627
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・テクノロジー・アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・ホフマン
(72)【発明者】
【氏名】ヨーナス・ベッカー
(72)【発明者】
【氏名】ヘルベルト・シュタムラー
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10255792(DE,A1)
【文献】特開2014-238020(JP,A)
【文献】特開2015-014285(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00-29/12
F04B 25/00-37/20、
41/00-41/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ空間(12)と、ポンプ空間(12)に接続された吸気口(16)と、ポンプ空間(12)に接続された排気口(18)とを備える真空ポンプ(10)
であって、
ポンプ空間(12)では、搬送すべきガスが吸気口(16)から排気口(18)へ搬送可能であり、
吸気口(16)には、真空排気すべきチャンバ(20)が接続可能であり、
真空ポンプ(10)は、ポンプ空間(12)へガスバラストを供給するために構成されて
る、
当該真空ポンプ(10)において、
真空ポンプ(10)は、ポンプ空間(12)内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間を計算するように構成されている制御ユニット(24)を備え、
制御ユニット(24)は、さらに、ガスバラストの供給が、供給期間の間に生じるように構成されていて、
ガスバラストの供給期間は、計算されたバラストポンプ期間に依存
し、
制御ユニット(24)は、ポンプ空間(12)内に存在する水量を計算するように構成されていて、
ポンプ空間(12)内に存在する水量は、吸気口(16)に接続されたチャンバ(20)の容積に基づいて決定され、かつチャンバ(20)の容積は、これまでのポンプ排出時間、ポンプの吸入容量、及びポンプ排出時間にわたる圧力差によって決定される、
ことを特徴とする真空ポンプ(10)。
【請求項2】
ポンプ空間(12)内に存在する水量を
、チャンバ(20)の容積に基づいて、決定するために、接続されたチャンバ(20)内の搬送すべきガスが、真空ポンプ(10)
に対して許容される最
大温度及び/又は真空ポンプ(10)
に対して許容される最
大湿度を有すると仮定され、
及び/又は
搬送すべきガス又は搬送されたガスのすべての水分が、ポンプ空間(12)内の水として残留すると仮定される、
ことを特徴とする請求項
1に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項3】
制御ユニット(24)は、真空ポンプ(10)の水蒸気容量と水量からバラストポンプ期間を計算するように構成されている、ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項4】
制御ユニット(24)は、ガスバラストの水分に基づいて、及び/又はガスバラスト内の水蒸気の分圧に基づいて、及び/又は排気口(18)の温度に基づいて、真空ポンプ(10)の水蒸気容量を決定するように構成される、ことを特徴とする請求項
3に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項5】
供給期間は、バラストポンプ期間の70%から110%までの間、
又は80%から100%までの間、
又は90%から100%までの間に相当する、ことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項6】
制御ユニット(24)は、ガスバラストバルブ(28)の開放、すなわちガスバラストの供給を引き起こすように構成されていて、その際、ガスバラストバルブ(28)は
、吸気口(16)で所定の圧力を下回った場合に開放される、ことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項7】
制御ユニット(24)は、ガスバラストを供給する間、吸気口(16)を閉じるように及び/又はチャンバ(20)をポンプ空間(12)から分離するように構成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項8】
ポンプ空間(12)には、ガスバラストを供給するチャネルが開口し、
チャネルは
、吸気口(16)と排気口(18)との間でポンプ空間(12)に開口し、か
つ吸気口(16)より排気口(18)の近くに配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項9】
真空ポンプ(10)は、スクロールポンプである、ことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ(10)。
【請求項10】
ポンプ空間(12)を備える真空ポンプ(10)を作動する方法であって、
この方法では、ポンプ空間(12)内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間が計算され、かつ
ガスバラストの供給が、供給期間の間に生じ、
供給期間が、計算されたバラストポンプ期間に依存
し、
ポンプ空間(12)内に存在する水量が計算され、
ポンプ空間(12)内に存在する水量は、吸気口(16)に接続されたチャンバ(20)の容積に基づいて決定され、かつチャンバ(20)の容積は、これまでのポンプ排出時間、ポンプの吸入容量、及びポンプ排出時間にわたる圧力差によって決定される、
ことを特徴とする方法。
【請求項11】
ポンプ空間(12)を備える真空ポンプ(10)のための制御ユニット(24)であって、
制御ユニット(24)は、ポンプ空間(12)内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間を計算するように構成されていて、
制御ユニット(24)は、さらに、ガスバラストの供給が、供給期間の間に生じるように構成されていて、
ガスバラストの供給期間は、計算されたバラストポンプ期間に依存
し、
制御ユニット(24)は、ポンプ空間(12)内に存在する水量を計算するように構成されていて、
ポンプ空間(12)内に存在する水量は、吸気口(16)に接続されたチャンバ(20)の容積に基づいて決定され、かつチャンバ(20)の容積は、これまでのポンプ排出時間、ポンプの吸入容量、及びポンプ排出時間にわたる圧力差によって決定される、
ことを特徴とする制御ユニット(24)。
【請求項12】
真空ポンプシステムは、真空ポンプ(10)の吸気口(16)に連結されている真空排気すべきチャンバ(20)を備える、ことを特徴とする請求項1に記載の真空ポンプ(10)を備える真空ポンプシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ空間、並びにポンプ空間に接続されている吸気口及びポンプ空間に接続されている排気口を備える真空ポンプに関する。この場合、吸気口から排気口へ搬送すべきガスは、特にポンプ本体を用いて、ポンプ空間内に搬送可能である。吸気口には、真空排気すべきチャンバを接続可能である。さらに、真空ポンプは、ガスバラストをポンプ空間に引き込むために構成されている。
【背景技術】
【0002】
真空ポンプを作動する場合、真空ポンプの吸気口に接続されているチャンバは、通常、真空排気される。この場合、真空ポンプは、チャンバ内に存在するガスを吸気口で吸引し、排気口を通って搬送すべきこれらのガスをポンプで送り出すことによって、チャンバが真空排気される。当初チャンバ内に存在するガスは、排気口に近づくにつれてさらに真空ポンプ内で圧縮される。その結果、場合によっては、搬送すべきガスに含まれる水分が凝縮し、かつ排気口の領域で結露する。(凝縮した)水がポンプ空間に残ることは望ましくない。
【0003】
ポンプ空間から水分又は水を再び除去するため、バラストガスまたはガスバラストがポンプ空間から水を除去するように、ガスバラストを使用すること、すなわちバラストガスを真空ポンプのポンプ空間を通ってポンプで送り出すことが知られている。
【0004】
従来の方法では、真空ポンプのポンプ空間内において実際に水分が存在しないことを保証することができないという問題があり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の課題は、ポンプ空間内に水または水分が残ることを防止する真空ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は請求項1に記載の真空ポンプによって解決される。
【0007】
本発明による真空ポンプは、ポンプ空間内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間を計算するように構成されている制御ユニットを備え、制御ユニットは、さらに、ガスバラストの供給が、供給期間の間に生じるように構成されていて、ガスバラストの供給期間は、計算されたバラストポンプ期間に依存する。
【0008】
本発明は、それぞれの作動パラメータ、又はそれぞれの作動状態に対してバラストポンプ期間を指定することができ、バラストポンプ期間内に、存在する水か、又は水と推定される水を完全にポンプ排出することができることを保障するように、バラストポンプ期間を計算することができる(又は合理的な仮定によって少なくとも推定することができる)、という知見に基づいている。計算では推定から始めることもでき、その結果、推定水量を計算することができる。算出した水量は、好ましくは、算出した水分量が、通常、ポンプ空間内に実際に存在する水量を超えるように選択され得る。次いで、算出した水分量から算出したバラストポンプ時間は、引き込む時間の間にガスバラストをポンプ空間内に導入するために利用することができる。
【0009】
計算は少なくとも部分的には仮定及び/又は(不正確さを伴う)測定量に基づくので、本明細書に記載された量(例えば、水量)の計算及び/又は決定は、それぞれ推定でもあり得る。
【0010】
特に、供給期間は、後述されるように、バラストポンプ期間に対応してもよく、又はバラストポンプ期間と異なってもよい。
【0011】
供給期間中に真空ポンプが作動していることはいうまでもなく、供給されたガスバラストを排気口の方向に搬送し、かつ排気口を通って排出する。
【0012】
ガスバラスト(バラストガス又は追加ガス負荷とも呼ばれる)によって、掃気効果が引き起こされ、ポンプ空間内に存在する水が排気口を通ってポンプから外へ搬出することを可能にする。
【0013】
ガスバラストは、搬送すべきガスとは別のガスでもよく、例えば、ガスバラストは、別の供給源(真空排気すべきチャンバからではない)からでもよく、異なる温度及び/又は異なる湿度等を持つ。ガスバラストとして、例えば、不活性ガス、又は例えば空気が企図され得る。特に、ガスバラストは、低い相対湿度(例えば、40%未満、又は30%未満、又は20%未満)でもよい。特に、ガスバラストは、例えば乾燥窒素でもよい。この場合、低い湿度のガスは、ポンプ空間内に存在する水分を適切に取り入れることができ、かつポンプ空間からの水の排出をもたらす。
【0014】
特に、制御ユニットは、より詳細に後述されるように、ガスバラストの供給を自動的にもたらすように構成され得る。代替的には、制御ユニットが信号を出力することもでき、それによって、使用者はバルブ等を手動で開放するために指示される。
【0015】
本発明の有利な別の構成は、明細書、図面、及び従属請求項から理解できる。
【0016】
第1の実施形態に従って、制御ユニットは、ポンプ空間内に存在する水量を計算するように構成されている。存在する水量を計算する場合には、潜在的に存在する水量(これは、例えば、現時点でポンプ空間内にある)を算出することができる。基本的には、水量が、蒸発した水及び/又は凝縮した水を含み得る。したがって、水量ではなく、水分量とも称することができる。
【0017】
別の実施形態に従って、ポンプ空間内に存在する水量は、吸気口に接続されたチャンバの容積に基づいて決定される。好ましくは、チャンバの容積は、これまでのポンプ排出時間、ポンプの吸入容量、及び/又はポンプ排出時間にわたる圧力差によって決定される。
【0018】
したがって、基本的には、ポンプ空間内に存在する水量は、チャンバの容積に基づいて決定することができ、その際、チャンバの容積から出る全ての水はポンプ空間内に残留すると仮定される。例えば、チャンバの容積は、製造者によって指定された、接続すべきチャンバの最大容積であり得る。この最大容積は、場合によっては、より小さなチャンバが接続される場合にも使用することができる。したがって、チャンバの容積は、例えば、制御ユニット内に永続的に格納され得る。これにより、ポンプ空間の水量が少なすぎるとは想定されない。
【0019】
代替的又は付加的には、制御ユニットがチャンバ容積Vkを、次の式、
【0020】
【0021】
によっても計算し得る。その際、tAはポンプ排出時間、Sは真空ポンプの吸入容量、p1はポンプ排出時間の開示時のチャンバ内(又は排気口で)の圧力、及びp2はポンプ排出時間の終了時の圧力である。チャンバ容積を決定するために、制御ユニットは、これまでのポンプ排出時間を把握し得る。ポンプの吸入容量(単位m3/h)はポンプに固有であり、それに応じて制御ユニットにも格納することができる。代替的または付加的に、ポンプの吸入容量は、真空ポンプによって消費される電力の出力測定によっても決定することができる。このようにして、異なるサイズのチャンバを認識することができ、かつ異なるポンプ排出時間を考慮することができる。制御ユニットに永続的に格納されたチャンバ容積よりも大きなチャンバ容積が計算される場合には、より大きなチャンバ容積を使用することができる。
【0022】
別の実施形態に従って、ポンプ空間内に存在する水量を決定するために、接続されたチャンバ内の搬送すべきガスが、真空ポンプに対して許容される最大温度及び/又は真空ポンプに対して許容される最大湿度を有すると仮定される。好ましくは、同様に、搬送すべきガス又は(既に)搬送されたガスのすべての水分が、ポンプ空間内に水として残留すると仮定される。
【0023】
搬送すべきガス又は既に搬送されたガスのすべての水分が、ポンプ空間内に水として残留することは、本明細書に記載される全ての実施形態の仮定とすることができる。
【0024】
チャンバ内のガスの最大温度および最大(相対)湿度は、それぞれの真空ポンプに対して同様に規定され、したがって既知である。したがって、水がポンプ空間から完全にポンプ排出されることを確実にするために、チャンバ内のガスは、真空ポンプに対して許容される最大の湿度および温度を実際に有すると仮定することができる。
【0025】
例えば、搬送すべきガスに対して、最高温度は40℃、最高相対湿度は80%とすることができる。40℃の場合では、空気は最大50g/m3の水を包含できる。チャンバが200リットルの容量を備えていると仮定した場合、その200リットルには8gの水が含まれる。ポンプ空間内の水量は、このようなチャンバの真空排気後で8gと仮定される。
【0026】
更なる実施形態では、制御ユニットが、真空ポンプの水蒸気容量とポンプ空間内の水量からバラストポンプ期間を計算するように構成されている。水蒸気容量は、20℃、1013hPaの周囲条件下で、真空ポンプが単位時間当たり水蒸気の形態で連続して吸引でき、かつ搬送できる最大の水量である。水蒸気容量は、例えばg/hで示すことができる。したがって、水蒸気容量は、水蒸気質量流量に対する大きさである。水蒸気容量は、特に、以下の式
qm,Wasser=pw×S×M×(RT)-1
に従って計算することができる。その際、qm,Wasserは水蒸気容量、pwは吸気口における真空ポンプの水蒸気許容値、Sは吸気口における真空ポンプの吸入容量、Mは水のモル質量、Rは気体定数、Tは絶対温度である。
【0027】
水蒸気容量は、真空ポンプが通常の周囲条件(20℃、1013hPa)で純水蒸気を連続して吸引でき、かつ搬送できる最大の水蒸気圧を示す。
【0028】
水蒸気許容値pWは、以下の式
【0029】
【0030】
に従って、計算することができる。この場合、qpV,Ballastはガスバラスト流量、Sは真空ポンプの吸入容量、pSは排気ガス温度における(すなわち排気口での)水蒸気の飽和蒸気圧、pAはガスバラストを供給する場合の水蒸気の分圧、p0が周囲の大気圧、αは場合によって存在する排気口バルブを開くために大気圧よりも大きな圧力が必要であることを考慮した無次元補正係数である。例えば、αは1.1の値をとることができる。水蒸気許容値は圧力の次元を持ち、通常はhPaで表される。上記の圧力pが測定されない場合、それぞれ、真空ポンプに対してかろうじて許容され、かつ最大量の水量又はバラストポンプ期間又は低い水蒸気耐性に至る最大値と仮定することができる。
【0031】
従って、水蒸気容量は、ガスバラスト中の水蒸気の分圧が減少するにつれて増加し、かつ水蒸気の飽和蒸気圧は、その後、排気ガス温度で増加するので、排気口での温度が高くなると増加する。
【0032】
従って、制御ユニットは、ガスバラストの湿度に基づいて、及び/又はガスバラスト内の水蒸気の分圧に基づいて、及び/又は排気口の温度に基づいて、真空ポンプの水蒸気容量を決定するように構成され得る。ガスバラスト内の低い湿度、又は低い水蒸気分圧、又は排気口の高い温度の場合、それに応じてより高い水蒸気容量を決定することができる。ガスバラストの湿度、ガスバラスト内の水蒸気の分圧及び/又は排気口での温度は、各々、測定によって又は設定値を指定することによって決定することができる。
【0033】
例示的な真空ポンプでは、例えば、44.7g/hの水蒸気容量を得ることができる。現在、ポンプ空間に8gの水量が存在すると仮定される場合(特に最悪の場合のシナリオで)、これはバラストポンプ期間11分(8g/44.7g/h=11分)となる。これは最悪の場合のシナリオであるので、バラストポンプ期間が経過した後、実際にポンプ空間から全ての水量が除去されたことが保証される。
【0034】
さらなる実施形態によれば、供給期間は、バラストポンプ期間の70%から110%までの間、好ましくは80%から100%までの間、特に好ましくは90%から100%までの間に相当する。供給期間は、特に、ポンプ空間から水量を排出するために、ガスバラストが実際に供給され、かつ排気口を通って真空ポンプによってポンピングされる時間である。供給期間は、計算されたバラストポンプ期間に正確に対応できる。しかしながら、供給期間がバラストポンプ期間よりも長く、又は短く選択されることも可能である。例えば、最悪の場合の仮定の結果として、70%に短縮した場合でも、供給期間中に全ての水をポンプ空間から除去することができると仮定することができる。真空ポンプのガスバラストバルブは、供給期間中に開放され得る。ガスバラストバルブが開放される間、チャンバ内のその後の圧力上昇を回避するために、真空排気すべきチャンバを特に分離することができる。
【0035】
さらなる実施形態によれば、制御ユニットは、ガスバラストバルブの開放、すなわちガスバラストの供給を引き起こすように構成されていて、その際、ガスバラストバルブは、好ましくは、吸気口で所定の圧力を下回った場合に、開放される。それ故、ガスバラストバルブは、制御ユニットよって自動的に開放できる。代替的には、制御ユニットは、信号によって使用者にもガスバラストバルブを開放するように指示できる。チャンバが十分に真空排気されていて、かつ吸気口では、例えば圧力が10mbar若しくは1mbarから下回る場合に、特に、ガスバラストバルブを開放することができ、又は供給期間を開始することができる
【0036】
ガスバラストの供給に関しても最悪の場合の仮定を行うことができる、すなわち、ガスバラストが周囲空気である。その際、周囲空気は、真空ポンプ(の周囲)に対して最大許容温度及び/又は湿度(例えば、40℃、相対湿度30%)である。
【0037】
さらなる実施形態によれば、制御ユニットは、ガスバラストを供給する間、吸気口を閉じるように又は基本的にはチャンバをポンプ空間から分離するように構成されている。すでに上述したように、ガスバラストの供給中に吸気口を閉じることによって、チャンバ内の最小圧力のわずかな変化のみ達成することができる。このような作動は、周期的な作動とも呼ばれる。
【0038】
代替的には、同時にガスバラストが供給される(ガスバラストバルブが開く)間、吸気口が開放され得る。この場合、チャンバからポンプ空間にどのくらいの新しい水分が導入され、どのくらいの水量がポンプ排出されたかを連続的にさらに計算することができる。そして、計算されたバラストポンピング時間は、作動中に延長することができる。その結果、供給期間も延長することができる。
【0039】
さらなる実施形態によれば、ポンプ空間には、ガスバラストを供給するチャネルが開口し、チャネルは、好ましくは吸気口と排気口との間でポンプ空間に開口し、かつ特に吸気口より排気口の近くに配置されている。したがって、チャネルは、吸気口と排気口に対して、ポンプ空間への別の通路である。特に、チャネルを排気口の近くに配置できる、なぜなら高い圧力のために水分がそこに結露するか又は凝縮するからである。
【0040】
さらなる実施形態によれば、真空ポンプは、スクロールポンプである。それに応じて、真空ポンプは、平行な2つのチャンバを備えることができ、このチャンバは、搬送すべきガスを内部の方向又は真空ポンプの排気口の方向に圧縮する。真空ポンプは、絡み合った2つの螺旋部を備えることができ、この螺旋部は、互いに反対に移動することによって、搬送すべきガスを、また、供給すべきガスバラストを排気口の方向に圧縮して搬送する。それに応じて、ポンプ本体は、螺旋部のうちの1つまたは複数を備えることができる。ガスバラストバルブに接続されたガスバラスト孔は、それぞれ平行な2つのチャンバのうちの少なくとも一方又は両方のチャンバが、一度にガスバラストで加圧することができるように配置され得る。
【0041】
代替的には、真空ポンプは回転翼型真空ポンプ、好ましくは油潤滑回転翼型真空ポンプであってもよい。特に、ポンプ本体は、ロータシャフト、及び少なくとも1つの回転翼によって形成され得る。
【0042】
基本的には、真空ポンプが、1段または複数段、例えば2段で構成され得る。
【0043】
本発明の別の主題は、ポンプ空間を備える真空ポンプを作動する方法であって、この方法では、ポンプ空間内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間が計算され、かつガスバラストの供給が供給期間の間に生じ、供給期間が計算されたバラストポンプ期間に依存する。
【0044】
更に、本発明は、ポンプスースを備える真空ポンプのための制御ユニットに関するものであり、この制御ユニットは、ポンプ空間内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間を計算するように構成されていて、制御ユニットは、さらに、ガスバラストの供給が、供給期間の間に生じるように構成されていて、ガスバラストの供給期間は、計算されたバラストポンプ期間に依存する。制御ユニットは、特に、真空ポンプに関連して上述された制御ユニットである。
【0045】
最後に、本発明は、本明細書に記載されるような真空ポンプを備える真空ポンプシステムに関するものでもあり、真空ポンプシステムは、真空ポンプの吸気口に連結されている真空排気すべきチャンバを備える。
【0046】
本発明の真空ポンプに関する説明は、本発明による方法、本発明による制御ユニット、本発明による真空ポンプシステムに、適用される。これは、特に利点及び実施形態に当てはまる。
【0047】
本明細書で言及される全ての展開及び実施形態は、反対のことが明示的に記載されない限り、互いに組み合わせることができることは言うまでもない。
【0048】
本発明は、単なる典型例として図面を参照しつつ、以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】接続された(真空排気すべき)チャンバを備える真空ポンプの概略図
【
図2】ポンプ空間から水をポンプ排出するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、スクロールポンプとして形成されている真空ポンプ10を示す。真空ポンプ10には、螺旋形状の(明確に示されていない)ポンプ本体14によって、搬送すべきガスが、吸気口16から排気口18にポンピングされるか、又は搬送されるポンプ空間12が配置されている。真空排気すべきチャンバ20が吸気口16に接続されていて、このチャンバには、本発明の実施例では40℃、湿度80%で200リットルの空気が含まれている。
【0051】
吸気口16を介してチャンバ20から流入する空気の圧力を決定する圧力センサ22が真空ポンプ10の吸気口16に配置されている。圧力センサ22は、真空ポンプ10の制御ユニット24に連結され、圧力センサの測定結果を制御ユニット24に送信する。その上、制御ユニット24は、排気口18に配置されている温度センサ26の計測結果を受ける。
【0052】
加えて、吸気口16と排気口18との間の周囲空気30をポンプ空間12内に導入し得るガスバラストバルブ28が真空ポンプ10に配置されている。制御ユニット24は、ガスバラストバルブ28を開放し得るために、ガスバラストバルブ28に連結されている。
【0053】
さらに、制御ユニット24は、出力測定部32に接続されていて、その際、出力測定部32は、真空ポンプ10の現在必要とされるそれぞれの電力を把握する。その結果、制御ユニット24は、真空ポンプ10のそれぞれの吸入容量、及びポンプ期間/ポンプ排出時間についての結論を引き出すことができる。
【0054】
ここで、真空ポンプ10の作動は、
図2のフローチャートで説明される。ステップ100で、ポンプ排出時間が始まる。この場合、先ず吸気口16の初期圧力又はチャンバ20内の初期圧力が、圧力センサ22を介して確定され、かつ真空ポンプ10がチャンバ20から搬出すべきガスのポンピングを開始する。ポンプ排出時間110の間、チャンバ20はさらに真空排気される。その際、ガスバラストバルブ28が閉鎖されている。チャンバの真空排気によって、チャンバ20からでる水は、ポンプ空間12内で凝縮する。チャンバ20内または吸気口16で、所定の最低圧力を下回る場合、ポンプ排出時間はステップ120で終了する。その時点で吸気口に存在する圧力は、圧力センサ22を介して
決定される。加えて、排気口18におけるポンプの温度は、温度センサ26を介して測定することができる。出力測定部32によって、制御ユニット24は、真空ポンプ10がどの吸入容量でどれくらい長く作動されたかを確定することもできる。このようにして、制御ユニット24は、吸気口16に接続されたチャンバ20の容積、又はポンプ排出された量を
決定することができる。この
決定のため、ステップ100と120の間の圧力差がさらに使用される。
【0055】
ポンプ排出されたチャンバ20の量、及びチャンバ20内のガスの温度と湿度とに対する最悪の仮定から、制御ユニット24は、ステップ130において、ポンプ空間12内に潜在的に存在する(特に推定される)水量を計算する。
【0056】
次いで、ステップ140では、バラストポンプ期間が、真空ポンプの水蒸気容量を使用して、水量から計算される。真空ポンプ10の水蒸気容量が例えば44.7g/hである場合、及び水量が8gで計算された場合、バラストポンプ期間は11分である。
【0057】
後続のステップ150において、制御ユニット24は次にガスバラストバルブ28を開放し、吸気口16を閉鎖する。ステップ150では、ポンプ空間12から水量を除去するために、ガスバラスト(この例では周囲空気)がポンピングされる。この場合、ガスバラストからのポンピング期間、すなわち供給期間は、11分のバラストポンピング期間に応じて選択することができ、その結果、ガスバラストのポンピングは11分後に終える。この時点で、ポンプ空間12からすべての水又は水分が除去されると仮定することができる。その後、ステップ100で新たに開始できる。
【0058】
故に、本発明によれば、最悪の場合の仮定によって、ガスバラストの供給期間中、全ての水がポンプ空間から事実上除去されるという保証が達成される。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の観点として以下も含む。
1.ポンプ空間(12)と、ポンプ空間(12)に接続された吸気口(16)と、ポンプ空間(12)に接続された排気口(18)とを備える真空ポンプ(10)において、
ポンプ空間(12)では、搬送すべきガスが吸気口(16)から排気口(18)へ搬送可能であり、
吸気口(16)には、真空排気すべきチャンバ(20)が接続可能であり、
真空ポンプ(10)は、ポンプ空間(12)へガスバラストを供給するために構成されていて、
真空ポンプ(10)は、ポンプ空間(12)内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間を計算するように構成されている制御ユニット(24)を備え、
制御ユニット(24)は、さらに、ガスバラストの供給が、供給期間の間に生じるように構成されていて、
ガスバラストの供給期間は、計算されたバラストポンプ期間に依存する、ことを特徴とする真空ポンプ(10)。
2.制御ユニット(24)は、ポンプ空間(12)内に存在する水量を計算するように構成されている、ことを特徴とする上記1に記載の真空ポンプ(10)。
3.ポンプ空間(12)内に存在する水量は、吸気口(16)に接続されたチャンバ(20)の容積に基づいて決定され、かつチャンバ(20)の容積は、好ましくはこれまでのポンプ排出時間によって、ポンプの吸入容量によって、及び/又はポンプ排出時間にわたる圧力差によって決定される、
ことを特徴とする上記2に記載の真空ポンプ(10)。
4.ポンプ空間(12)内に存在する水量を決定するために、接続されたチャンバ(20)内の搬送すべきガスが、真空ポンプ(10)のための最大許容温度及び/又は真空ポンプ(10)のための最大許容湿度を有すると仮定され、
好ましくは、同様に、搬送すべきガス又は搬送されたガスのすべての水分が、ポンプ空間(12)内の水として残留すると仮定される、
ことを特徴とする上記3に記載の真空ポンプ(10)。
5.制御ユニット(24)は、真空ポンプ(10)の水蒸気容量と水量からバラストポンプ期間を計算するように構成されている、ことを特徴とする上記2~4のいずれか一つに記載の真空ポンプ(10)。
6.制御ユニット(24)は、ガスバラストの水分に基づいて、及び/又はガスバラスト内の水蒸気の分圧に基づいて、及び/又は排気口(18)の温度に基づいて、真空ポンプ(10)の水蒸気容量を決定するように構成される、ことを特徴とする上記5に記載の真空ポンプ(10)。
7.供給期間は、バラストポンプ期間の70%から110%までの間、好ましくは80%から100%までの間、特に好ましくは90%から100%までの間に相当する、ことを特徴とする上記1~6のいずれか一つに記載の真空ポンプ(10)。
8.制御ユニット(24)は、ガスバラストバルブ(28)の開放、すなわちガスバラストの供給を引き起こすように構成されていて、その際、ガスバラストバルブ(28)は、好ましくは吸気口(16)で所定の圧力を下回った場合に開放される、ことを特徴とする上記1~7のいずれか一つに記載の真空ポンプ(10)。
9.制御ユニット(24)は、ガスバラストを供給する間、吸気口(16)を閉じるように及び/又はチャンバ(20)をポンプ空間(12)から分離するように構成されている、ことを特徴とする上記1~8のいずれか一つに記載の真空ポンプ(10)。
10.ポンプ空間(12)には、ガスバラストを供給するチャネルが開口し、
チャネルは、好ましくは吸気口(16)と排気口(18)との間でポンプ空間(12)に開口し、かつ特に吸気口(16)より排気口(18)の近くに配置されている、ことを特徴とする上記1~9のいずれか一つに記載の真空ポンプ(10)。
11.真空ポンプ(10)は、スクロールポンプである、ことを特徴とする上記1~10のいずれか一つに記載の真空ポンプ(10)。
12.ポンプ空間(12)を備える真空ポンプ(10)を作動する方法であって、
この方法では、ポンプ空間(12)内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間が計算され、かつ
ガスバラストの供給が、供給期間の間に生じ、
供給期間が、計算されたバラストポンプ期間に依存する、ことを特徴とする方法。
13.ポンプ空間(12)を備える真空ポンプ(10)のための制御ユニット(24)であって、
制御ユニット(24)は、ポンプ空間(12)内に存在する水又は水と推定される水をポンプ排出するためにガスバラストがどれだけ長くポンピングしなければならないかを示すバラストポンプ期間を計算するように構成されていて、
制御ユニット(24)は、さらに、ガスバラストの供給が、供給期間の間に生じるように構成されていて、
ガスバラストの供給期間は、計算されたバラストポンプ期間に依存する、ことを特徴とする制御ユニット(24)。
14.真空ポンプシステムは、真空ポンプ(10)の吸気口(16)に連結されている真空排気すべきチャンバ(20)を備える、ことを特徴とする上記1~11のいずれか一つに記載の真空ポンプ(10)を備える真空ポンプシステム。
【符号の説明】
【0059】
10 真空ポンプ
12 ポンプ空間
14 ポンプ本体
16 吸気口
18 排気口
20 チャンバ
22 圧力センサ
24 制御ユニット
26 温度センサ
28 ガスバラストバルブ
30 周囲空気
32 出力測定部
100 ポンプ排出時間の開始
110 ポンプ排出時間
120 ポンプ排出時間の終了
130 水量の計算
140 バラストポンプ期間の計算
150 供給期間の間のガスバラストによるポンピング