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特許7493007NAD+を増大させる前駆体としてのニコチン酸リボシド又はニコチンアミドリボシド誘導体、及びその還元誘導体の使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】NAD+を増大させる前駆体としてのニコチン酸リボシド又はニコチンアミドリボシド誘導体、及びその還元誘導体の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/706 20060101AFI20240523BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A61K31/706
A61P43/00 111
A61P3/02
【請求項の数】 2
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022167877
(22)【出願日】2022-10-19
(62)【分割の表示】P 2021117648の分割
【原出願日】2017-04-20
(65)【公開番号】P2023002685
(43)【公開日】2023-01-10
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】62/325,264
(32)【優先日】2016-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514064763
【氏名又は名称】クロマデックス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ChromaDex,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】デリンジャー,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】ローンマス,トロイ
(72)【発明者】
【氏名】モリス,マーク
(72)【発明者】
【氏名】エリクソン,アロン
(72)【発明者】
【氏名】カシアー,ハディ
(72)【発明者】
【氏名】ミゴード,マリー,イー.
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/186114(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/066382(WO,A1)
【文献】Chem. Commun.,1999年,pp.729-730
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象哺乳動物における細胞内NAD+を増大させるための経口用の医薬組成物であって、前記医薬組成物が:
(i)1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチンアミド(NRTA)である化合物、又はその塩若しくは溶媒和物;及び
(ii)薬学的に許容され得る担体、希釈剤、又は賦形剤
を含むことを特徴とする医薬組成物。
【請求項2】
対象哺乳動物における細胞内NAD+を増大させるための医薬組成物であって、前記医薬組成物が:
(i)1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチン酸(NARTA)である化合物、又はその塩若しくは溶媒和物;及び
(ii)薬学的に許容され得る担体、希釈剤、又は賦形剤
を含むことを特徴とする医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2016年4月20日に出願された先願の米国特許仮出願第62/325,264号明細書による利益を主張するものであり、該出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ニコチン酸リボシド(「NAR」)、及び1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチン酸(「NARトリアセテート」又は「NARTA」を含むその誘導体;又は1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチン酸(「NARHトリアセテート」又は「NARH-TA」)を含む、ニコチン酸リボシドの還元形態(「NARH」)の誘導体;又は1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチンアミド(「NRトリアセテート」又は「NRTA」)を含む、ニコチンアミドリボシド(「NR」)の誘導体;1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチンアミド(「NRHトリアセテート」又は「NRH-TA」)を含む、ニコチンアミドリボシドの還元形態(「NRH」)の誘導体;又はその塩若しくはプロドラッグを含む組成物の、食物若しくは飲料用途、医薬製剤における使用、又は栄養補助食品としての使用に関する。本発明は更に、細胞及び組織におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(「NAD+」)の細胞内レベルの増大を促進して、細胞及び組織の生存又は細胞及び組織全体の健康を改善するための上記の化合物の使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ニコチン酸及びニコチンアミド、集合的にナイアシンは、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)のビタミン形態である。真核生物は、キヌレニン経路を介してトリプトファンからNAD+をde novo合成することができ(Krehl,et al.Science(1945)101:489-490;Schutz and Feigelson,J.Biol.Chem.(1972)247:5327-5332)、ナイアシン補充は、トリプトファンに乏しい食事を有する集団に生じ得るペラグラを予防する。ニコチン酸はホスホリボシル化されてニコチン酸モノヌクレオチド(NaMN)となり、これは次いでアデニリル化されてニコチン酸アデニンジヌクレオチド(NaAD)を形成し、これは続いてアミド化されて、NAD+を形成することが知られている(Preiss and Handler,J.Biol.Chem.(1958)233:488-492;同書、493-50)。
【0004】
ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(「NAD」)は、酸化還元反応及びエネルギー代謝に関連した数種の酵素の機能に必須の酵素補因子である。(Katrina L.Bogan & Charles Brenner,Nicotinic Acid,Nicotinamide,and Nicotinamide Riboside:A Molecular Evaluation of NAD Precursor Vitamins in Human Nutritions,28 Annual Review of Nutrition 115(2008))。NADは、アミノ酸、脂肪酸、及び炭水化物の細胞代謝において電子担体として機能する(Bogan & Brenner 2008)。NADは、下位生物における代謝機能及び寿命の延長に関与する、タンパク質デアセチラーゼのファミリーであるサーチュインの活性化因子及び基質としての役割を果たす。(Laurent Mouchiroud et al.,The NAD/Sirtuin Pathway Modulates Longevity through Activation of Mitochondrial UPR and FOXO Signaling,154 Cell 430(2013))。NADの補酵素活性は、その生合成及びバイオアベイラビリティの厳しい調節と共に、NADを老化過程に明らかに関与する重要な代謝監視システムとする。
【0005】
細胞内でNAD(P)に変換された後、ビタミンB3は、2タイプの細胞内修飾における共基質として使用され、該細胞内修飾は、多数の重要なシグナル伝達事象(アデノシン二リン酸リボシル化及び脱アセチル化)を制御し、400を超える酸化還元酵素の補因子であるため、代謝を制御する。このことは、主要な調節タンパク質の脱アセチル化、増大したミトコンドリア活性、及び酸素消費を含む一連の代謝エンドポイントによって示される。重要なことには、NAD(P)(H)-補因子ファミリーは、準最適な細胞内濃度で存在する場合、ミトコンドリア不全及び細胞障害を促進し得る。ビタミンB3欠乏は、NAD枯渇を介して、証明された細胞活性不全を生じ、ニコチン酸(「NA」)、ニコチンアミド(「Nam」)、及びニコチンアミドリボシド(「NR」)補充による追加のNADバイオアベイラビリティの有益な効果は、主として代謝作用及びミトコンドリア機能が損なわれていた細胞及び組織に認められる。
【0006】
興味深いことに、ニコチン酸(「NA」)及びニコチンアミド(「Nam」)の補充は、急性ビタミンB3欠乏に重要であるが、ニコチンアミドリボシド(「NR」)補充を用いたものと比較して、細胞レベルにおいてこれら3種の代謝産物の全てはNAD生合成に関与しているにも関わらず、同じ生理学的結果を示さない。このことは、B3-ビタミン成分の薬物動態及び体内分布の複雑さを強調している。
【0007】
大部分の細胞内NADは、ニコチンアミド(「Nam」)の効果的なサルベージにより再生される一方、de novo NADは、トリプトファンから得られると考えられる。(Anthony Rongvaux et al.,Reconstructing eukaryotic NAD metabolism,25 BioEssays 683(2003))。重大なことには、これらのサルベージ及びde novo経路は、ホスホリボシドピロホスフェート中間体を介してNADを生成するために、ビタミンB1、B2、及びB6の機能的形態に明らかに依存する。ニコチンアミドリボシド(「NR」)は、ビタミンB1、B2、及びB6とは無関係にNADが生成され得るビタミンB3の唯一の形態であり、NADの生成にニコチンアミドリボシド(「NR」)を使用するサルベージ経路は、殆どの真核生物において発現している。
【0008】
サルベージ経路に供給される主なNAD前駆体は、ニコチンアミド(「Nam」)及びニコチンアミドリボシド(「NR」)である。(Bogan & Brenner 2008)。研究により、ニコチンアミドリボシド(「NR」)は、ニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」)の形成によりNAD合成をもたらす保存サルベージ経路で使用されることが示されている。細胞に進入した後、ニコチンアミドリボシド(「NR」)はNRキナーゼ(「NRKs」)によりリン酸化され、NMNを生成し、これは次いでニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(「NMNAT」)によってNADに変換される(Bogan & Brenner 2008)。NMNは、ミトコンドリア内でNADに変換され得る有一の代謝産物であるため、ニコチンアミド(「Nam」)及びニコチンアミドリボシド(「NR」)は、NADを補充し、それによりミトコンドリア燃料酸化を改善することができる2種の候補NAD前駆体である。主な相違点は、ニコチンアミドリボシド(「NR」)が、サルベージ経路の律速段階、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(「NAMPT」)を迂回する、NAD合成への直接2段階経路を有することである。ニコチンアミド(「Nam」)は、NADを生成するのにNAMPT活性を必要とする。このことは、ニコチンアミドリボシド(「NR」)が、非常に有効なNAD前駆体であるという事実を強化する。逆に、食事由来のNAD前駆体及び/又はトリプトファンの欠乏は、皮膚炎、下痢、及び認知症により特徴付けられる疾病であるペラグラの原因となる(Bogan & Brenner 2008)。要約すれば、NADは、正常なミトコンドリア機能に必要であり、ミトコンドリアは細胞の発電所であるため、NADは、細胞内のエネルギー産生に必要である。
【0009】
NAD+は、当初、酸化還元酵素の補酵素として特徴付けられた。NAD+、NADH、NADP及びNADPHの間の変換は総補酵素の損失を伴わないが、NAD+はまた、細胞内で未知の目的のために代謝回転されることが発見された(Maayan,Nature(1964)204:1169-1170)。出芽酵母(S.cerevisiae)のSir2等のサーチュイン酵素及びそのホモログは、等価のNAD+の消費によりリシン残基を脱アセチル化し、この活性は、転写サイレンサーとしてのSir2機能に必要である(Imai,et al.,Cold Spring Harb.Symp.Quant.Biol.(2000)65:297-302)。NAD+依存性脱アセチル化反応は、遺伝子発現の交代にだけでなく、リボソームDNA組換え及びカロリー制限に応答した寿命の延長にも必要である(Lin,et al.,Science(2000)289:2126-2128;Lin,et al.,Nature(2002)418:344-348)。NAD+は、Sir2により消費されて、2’-及び3’O-アセチル化ADP-リボース+ニコチンアミド、並びに脱アセチル化ポリペプチドの混合物を生成する(Sauve、et al.,Biochemistry(2001)40:15456-15463)。ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ及びcADPリボースシンターゼを含む更なる酵素も、NAD+依存性であり、ニコチンアミド及びADPリボシル産物を生成する(Ziegler,Eur.J.Biochem.(2000)267:1550-1564;Burkle,Bioessays(2001)23:795-806)。
【0010】
NAD+の非補酵素特性は、NAD+生合成への関心を新たにした。図1は、NAR、NR及び他の代謝中間体がどのようにNAD+に転換されるかを記載する。要約すれば、NARに関する生合成経路は、NaMNに直接進行した後、NaAD、及び最終的にNAD+を形成する。
【0011】
最近、NARはNAD+前駆体として示された(V.Kulikova,et al.,J.Biol.Chem.,Papers in Press,publ.on Sept.18,2015)。Kulikova,et al.は、NARが低いマイクロモル濃度(約1マイクロモル)で細胞生存を支持する一方、生存能を維持するのに10倍のNRが必要であることを示した。Kulikova,et al.はまた、NARがNAPRTとは無関係にNAD+を生成できることを示した(NRが、より高い濃度においてではあるが、Namptとしても知られるNAMPRTとは無関係にNADを生成し得るように)。
【0012】
本明細書に記載するNAR、又はその誘導体、塩、又はそれらのプロドラッグが、医薬品(pharmacueticals)、食物若しくは飲料、又は栄養補助食品中に使用されて、細胞内のNAD+レベルを向上させ得るならば、これは当技術分野に対する有益な寄与を意味するであろう。
【発明の概要】
【0013】
一実施形態において、本開示は、投与後にNAD+レベルを増大させる、担体と組み合わせたNAR含む医薬組成物を提供する。
【0014】
別の実施形態では、有効量の少なくとも1つの式(Ia)の化合物、又はその塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ:
又は、式(IIa)の化合物、又はその塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグ:
を、そのような処置を必要とする個体に送達するステップを含む、対象哺乳動物における細胞内NAD+の増大のための方法が提供され、
式中、R、R、R、及びRは、下記に記載する通りであり;
NAD+生合成が増大する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、NAD生合成経路を示す。ニコチン酸リボシド(NAR)及びニコチンアミドリボシド(NR)が示されている。
図2図2は、一実施形態における4℃の水溶液中での温度安定性を示す、経時的なNAR及びNRの濃度(%wt/wt)を日で示す。pHは、NARの場合、2.5、3.5及び6.2で変動し、NRの場合、2.5、3.5及び4.7で変動した。
図3図3は、別の実施形態における25℃の水溶液中での温度安定性を示す、経時的なNAR及びNRの濃度(%wt/wt)を日で示す。pHは、NARの場合、2.5、3.5及び6.2で変動し、NRの場合、2.5、3.5及び4.7で変動した。
図4図4は、別の実施形態における40℃の水溶液中での温度安定性を示す、経時的なNAR及びNRの濃度(%wt/wt)を日で示す。pHは、NARの場合、2.5、3.5及び6.2で変動し、NRの場合、2.5、3.5及び4.7で変動した。
図5図5は、別の実施形態におけるpH2.5の水溶液中でのpH安定性を示す、経時的なNAR及びNRの濃度(%wt/wt)を日で示す。温度は、4℃、25℃及び40℃で変動した。
図6図6は、別の実施形態におけるpH3.5の水溶液中でのpH安定性を示す、経時的なNAR及びNRの濃度(%wt/wt)を日で示す。温度は、4℃、25℃及び40℃で変動した。
図7図7は別の実施形態におけるpH4.7(NR)及びpH6.2(NAR)の水溶液中でのpH安定性を示す、経時的なNAR及びNRの濃度(%wt/wt)を日で示す。温度は、4℃、25℃及び40℃で変動した。
図8図8は、別の実施形態におけるNAD前駆体(ニコチニルリボシド試験化合物)で補充した、対照に対する24時間培養したHela細胞を示す。
図9図9は、対照に対するNADの倍増としての、図8のHela細胞培養を示す。
図10図10は、別の実施形態におけるNAD前駆体(ニコチニルリボシド試験化合物)で補充した、対照に対する24時間培養したHepG2細胞を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
一態様において、ニコチン酸リボシド(「NAR」)、及び1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチン酸(「NARトリアセテート」又は「NARTA」)を含むその誘導体;又は1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチン酸(「NARHトリアセテート」又は「NARH-TA」)を含むニコチン酸リボシドの還元形態(「NARH」)の誘導体;又は1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチンアミド(「NRトリアセテート」又は「NRTA」)を含むニコチンアミドリボシド(「NR」)の誘導体;1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチンアミド(「NRHトリアセテート」又は「NRH-TA」)を含むニコチンアミドリボシドの還元形態(「NRH」)の誘導体;又はその塩若しくはプロドラッグを含む、食物若しくは飲料用途、医薬製剤における使用、又は栄養補助食品としての使用のための組成物が提供される。単一活性成分として使用されるニコチンアミドリボシドは、本明細書では除外される。
【0017】
細胞及び組織におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(「NAD+」)の細胞内レベルの増大を促進して、細胞及び組織の生存又は細胞及び組織全体の健康を改善するための上記の化合物の使用方法が本明細書に提供される。
【0018】
更なる実施形態において、NAR、NRH、及び/又はNARH誘導体、NR誘導体、プロドラッグ、溶媒和物、又はそれらの塩を含む医薬組成物が提供される。更なる実施形態において、本発明は、細胞及び組織におけるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD+)の細胞内レベルの増大を促進して、細胞及び組織の生存並びに細胞及び組織全体の健康を改善するための、NAR、NRH、及び/又はNARH誘導体、NR誘導体、プロドラッグ、又はそれらの塩の使用方法に関する。更なる実施形態において、本発明は、NAD+の細胞内レベルを増大又は向上させるであろう他の確立されたNAD+前駆体分子(「NMN」、「NaMN」、及びそれらの還元形態)の誘導体に関する。
【0019】
寿命を延長し又はアポトーシスに対して保護するように処理され得る細胞としては、例えば、正常で健康な哺乳動物(又はヒト)細胞、又は遺伝子改変細胞、又は単細胞細菌若しくは酵母等の生物が挙げられる。寿命を延長し又はアポトーシスに対して保護するように処理され得る他の細胞としては、生産、消費、又は食物のための細胞、例えば非ヒト哺乳動物からの細胞(例えば、肉等)、又は植物細胞(例えば、野菜等)が挙げられる。細胞ベースの組織又は器官系の処理が想定される。疾病の、又は成長停止した、又は免疫低下細胞の処理が想定される。
【0020】
別の実施形態では、本明細書に記載される化合物は、細胞培養物中で使用されて、NAD+を上方調節することができる。
【0021】
更なる実施形態において、本明細書に記載される化合物は、「インビトロ受精」(IVF)手順、例えばエクスビボ細胞培養に使用することができる。
【0022】
ニコチンアミドリボシド(「NR」)は、式(I):
を有するピリジニウム化合物である。
【0023】
ニコチンアミドリボシド(「NR」)は、式(I-H):
を有する1,4-ジヒドロピリジン化合物として、還元形態(「NRH」)で利用可能である。
【0024】
特定の態様において、化合物(I)は、式(Ia):
を有するNR誘導体、プロドラッグ、又はそれらの塩に更に誘導体化され得る。
【0025】
式中、Rは、水素、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NHR’、置換又は非置換(C-C)アルキル、置換又は非置換(C-C)シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、及び置換又は非置換複素環からなる群から選択され;
R’は、水素、-(C-C)アルキル、-(C-C)シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、複素環、アリール(C-C)アルキル、及び複素環(C-C)アルキルからなる群から選択され;
及びRは、独立して、水素、-C(O)R’、-C(O)OR’、-C(O)NHR’、置換又は非置換(C-C)アルキル、置換又は非置換(C-C)シクロアルキル、置換又は非置換アリール、置換又は非置換ヘテロアリール、置換又は非置換複素環、置換又は非置換アリール(C-C)アルキル、及び置換又は非置換複素環(C-C)アルキルからなる群から選択される。
【0026】
特定の態様において、化合物(I-H)は、式(I-Ha):
を有するNRH誘導体、プロドラッグ、又はそれらの塩に更に誘導体化され得る。
【0027】
式中、R、R’、R、及びRは、式(Ia)を有する化合物に関して上記に定義した通りである。
【0028】
好ましい一実施形態において、式(I)を有するニコチンアミドリボシド化合物におけるリボース部分のヒドロキシル基の遊離水素は、アセチル基(CH-C(=O)-)で置換されて、式(Ia)を有する化合物、詳細には、式(1)を有する2’,3’,5’-トリアセチル-ニコチンアミドリボシド(「NRトリアセテート」又は「NRTA」)を形成することができる。代替的な名称としては:1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチンアミド、又は1-(3-カルボキサミド-ピリジン-1-イル)-β-D-リボシド-2’,3’,5’-トリアセテート(「NRトリアセテート」又は「NRTA」、1)が挙げられ、全て式(1):
を有する。
【0029】
別の好ましい実施形態において、式(I-H)を有する1,4-ジヒドロニコチンアミド化合物おけるリボース部分のヒドロキシル基の遊離水素は、アセチル基(CH-C(=O)-)で置換されて、式(I-Ha)を有する化合物、詳細には、式(2)を有する2’,3’,5’-トリアセチル-1,4-ジヒドロニコチンアミドリボシド(「NRHトリアセテート」又は「NRH-TA」)を形成することができる。代替的な名称としては:1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチンアミド、又は1-(3-カルボキサミド-1,4-ジヒドロピリジン-1-イル)-β-D-リボシド-2’,3’,5’-トリアセテート(「NRHトリアセテート」又は「NRH-TA」、2)が挙げられ、全て式(2):
を有する。
【0030】
式(2)の化合物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/014722号パンフレットに従って調製することができる。
【0031】
ニコチン酸リボシド(「NaR」、又は「NAR」)は、式(II):
を有するピリジニウム化合物である。
【0032】
ニコチン酸リボシド(「NAR」)は、式(II-H):
を有する1,4-ジヒドロピリジン化合物
(式中、Rは、水素(II-Ha)及び(C-C)アルキル(II-Hb)から選択される)、及びそのプロドラッグ又は塩として還元形態(「NARH」)で利用可能である。
【0033】
式(II-H)を有する化合物は、参照により組み込まれる国際公開第2015/014722号パンフレットに従って調製することができる。Rの選択に応じて、式(II-H)を有する化合物は:アルキル1-(β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチネート又は代替的にアルキル1,4-ジヒドロニコチネートリボシド(「アルキルNARH」)を含み(式中、Rは、(C-C)アルキルから選択される(II-Hb));及び1-(β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチン酸(式中、Rは、水素から選択される(II-Ha))を含む。
【0034】
特定の態様において、式(II)を有する化合物は、式(IIa):
を有するNAR誘導体、プロドラッグ、溶媒和物、又はそれらの塩に更に誘導体化され得る。
【0035】
式中、R、R、R’、R、及びRは、式(Ia)、(I-Ha)、及び(II-H)を有する化合物に関して上記に定義した通りである。
【0036】
好ましい実施形態において、式(II)を有するニコチン酸リボシド化合物における化合物のリボース部分のヒドロキシル基の遊離水素は、アセチル基(CH-C(=O)-)で置換されて、式(IIa)を有するNAR誘導体、プロドラッグ、又はそれらの塩、詳細には式(3)を有する1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチン酸(「NARトリアセテート」又は「NARTA」)(式中、Rは、水素である)を形成することができる。代替的な名称としては:1-(2’,3’,5’)-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチン酸、又は1-(3-カルボキシル-ピリジン-1-イル)-β-D-リボシド-2’,3’,5’-トリアセテート(「NARトリアセテート」又は「NARTA」、3)が挙げられ、全て式(3):
を有する。
【0037】
特定の態様において、式(II-H)を有する化合物は、式(II-Hc):
を有するNARH誘導体、プロドラッグ、溶媒和物、又はそれらの塩に更に誘導体化され得る。
【0038】
式中、R、R、R’、R、及びRは、式(Ia)、(I-Ha)、(II-H)、及び/又は(IIa)を有する化合物に関して上記に定義した通りである。
【0039】
好ましい一実施形態において、式(II-H)を有する1,4-ジヒドロピリジン化合物における化合物のリボース部分のヒドロキシル基の遊離水素は、アセチル基(CH-C(=O)-)で置換されて、式(II-Hc)を有するNARH誘導体、プロドラッグ、溶媒和物、又はそれらの塩、詳細には式(4)を有する化合物を形成することができ、該化合物は、Rの選択に応じて:アルキル2’,3’,5’-トリアセチル-1,4-ジヒドロニコチネートリボシド(「アルキルNARHトリアセテート」)(代替的にアルキル1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノ)(式中、Rは、(C-C)アルキルから選択される)を含み、;及び2’,3’,5’-トリアセチル-1,4-ジヒドロニコチン酸リボシド(「NARHトリアセテート」又は「NARH-TA」)(代替的に1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチン酸(「NARHトリアセテート」又は「NARH-TA」)と称される)(式中、Rは、水素から選択される)を含む。
【0040】
式中、Rは、水素及び(C-C)アルキルから選択され、及びその塩、溶媒和物、又はプロドラッグ。
【0041】
特に好ましい実施形態において、Rは、水素(化合物4a)であり、2’,3’,5’-トリアセチル-1,4-ジヒドロニコチン酸リボシド(「NARHトリアセテート」又は「NARH-TA」、4a)、又は1-(2’,3’,5’-トリアセチル-β-D-リボフラノシル)-1,4-ジヒドロニコチン酸、又は代替的に1-(3-カルボキシ-1,4-ジヒドロピリジン-1-イル)-β-D-リボシド-2’,3’,5’-トリアセテート(「NARHトリアセテート」又は「NARH-TA」、4a)としても既知である。式(4a)の化合物は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2015/014722号パンフレットに従って調製することができる。
【0042】
が水素である式(4)を有する化合物(「NARHトリアセテート」、「NARH-TA」、4a)は、コンジュゲート塩基塩としても存在することができ、ここで水素は、ナトリウム、カリウム、リチウム、マグネシウム等の塩対イオンで置き換えられている。Remington’s Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.,Easton,PA);S.Berge et al.,Pharmaceutical Salts,66 J.Pharm.Sci.1(1977)の最新版(及びそこに引用されている参考文献);及びL.D.Bighley,et al.,Salt Forms of Drugs and Absorption,in Encyclopedia Pharm.Tech.Vol.13 453(J.Swarbrick ed.,Marcel Dekker,Inc.1996)(及びそこに引用されている参考文献):を参照することができ;これらは全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0043】
一実施形態において、(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する化合物は、インビボ又はインビトロでNAD+の生合成を向上させると考えられる特定の性質を有する。例えば、これらの化合物は、それらの還元形態で、増大した親油性を有する。
【0044】
別の態様では、(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する化合物は、特定の健康上の利益を提供するNAD+前駆体として有用である。NAD+レベルは年齢又は老化過程で低下するため、1つ以上の化合物による補充は、対象の健康なNAD+レベルを維持することが期待される。
【0045】
理論に束縛されるものではないが、図1に示すNAD生合成経路から理解し得るように、ニコチンアミドリボシド(「NR」、I)は、NRキナーゼ(「NRKs」)によるリン酸化を介して、ニコチンアミンモノヌクレオチド(「NMN」、III)に変換すると考えられる。次いで、ニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」、III)は、ニコチンアミドモノヌクレオチドアデニリルトランスフェラーゼ(「NMNAT」)によってNADに変換する。ニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」、III)は、ミトコンドリア内でNADに変換され得る唯一の代謝産物であるため、ニコチンアミド及びニコチンアミドリボシド(「NR」、I)は、NADを補充し、ミトコンドリア燃料酸化を改善し得る2つの候補NAD前駆体である。しかしながら、ニコチンアミドリボシド(「NR」、I)は、ニコチンアミドホスホリボシルトランスフェラーゼ(「NAMPT」)の活性を介してニコチンアミドをニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」、III)に変換する、サルベージ経路の律速段階を迂回するNAD合成への直接2段階経路を有する。Kulikova,et al.(近刊、2015)は、NARがNAPRTとは無関係にNAD+を生成できることも示した(NRが、より高い濃度においてではあるが、Namptとしても知られるNAMPRTとは無関係にNAD+を生成し得るように)。図1は、NAR、NR及び他の代謝中間体がどのようにNAD+に転換されるかを更に記載する。要約すれば、NARに関する生合成経路は、NaMNに直接進行した後、NaAD、及び最終的にNAD+を形成する。
【0046】
代替的な実施形態において、理論に束縛されるものではないが、NR又はNARの還元(1,4-ジヒドロ)形態、例えばNRH及びNARH等(他の還元ニコチニルリボシドを含む)の使用は、代替的な生合成経路により仲介されてNAD+を生成し、又は迂回機構においてNADHを直接生成し得る。還元されたニコチニルリボシドは、NRK1及び2にとって貧弱な基質であることが示されている(未発表データ)。既知のNAD生成経路を迂回し得る、NMNの還元形態(即ち、「NMNH」)を介したNADHへの非NRK仲介経路が提案されている。例えば、NRHは、ヌクレオシド輸送体を使用して細胞に進入した後、非NRKヌクレオシドキナーゼの基質となって、NMNHに変換し得る。同様の方法で、NARHはNAMNHに変換され得る。この仮説の延長において、NMNHはNADHに変換、指向され、かくしてNAD代謝を迂回するであろう。最終的に、増大したNADH産生は、この代替的機構を用いてNAD+レベルを最後には上昇させ得る。
【0047】
NAD+前駆体を送達する一方法は、食物若しくは飲料、又は栄養補助食品としてである。NARは、そのような使用において有用なNAD+前駆体である。いくつかの製剤研究を行って、以下のように、様々な温度及びpH条件の水溶液中での、NRと比較したNARの安定性を試験した。
【実施例
【0048】
実施例1
ニコチンアミドリボシド(NR)を、pH2.5、3.5及び4.7レベルの1000ppm水溶液(w/v)中で調製した。ニコチン酸リボシド(NAR)を、pH2.5、3.5及び6.2レベルの1000ppm水溶液(w/v)中で調製した。6つのサンプル溶液を様々な小型密封バイアルにアリコートし、これらは分析のために個々のサンプルプルポイント(pull point)として使用された。サンプル溶液アリコートを、研究期間中、図2~7に示すように、4℃、25℃及び40℃で維持した。NR及びNARの濃度を、各々、図2~7に示すように、研究の間中、監視した。
【0049】
結果
NARは、NRと比較して、低温(4℃)及び周囲温度(25℃)で、測定した全pHレベルで、遥かに高い安定性を示した。4℃では、NARアッセイは140日後に95%を超えた。一般に、より高い温度及びより低いpHでは、NARの安定性は、数週間で経時的に著しく低下した;しかしながら、NAR安定性は、同じ試験パラメーターの下で比較した場合、一貫してNR安定性を上回る。
【0050】
更なる実施形態において、NAR、又はその誘導体を含む組成物は、特定の賦形剤又は添加剤の添加により安定化させることができる。有用な添加剤としては、非限定的に乳清タンパク質、カゼイン等を挙げることができる。
【0051】
特定の実施形態において、1つ以上のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の場合、乳清及び/又はカゼインタンパク質の結合を用いて、任意の液体製剤中で1つ以上の化合物を安定化させることができる。ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を液体中で安定化させるために、特にこれらのタンパク質(単独で又は他のタンパク質との組み合わせのいずれかで)を添加することは、本発明の送達方法の別の実施形態を構成する。有用な製剤としては、栄養補助食品、飲料、栄養ドリンク等を挙げることができる。
【0052】
一態様において、本発明は、驚くべきことに、それを必要とする対象哺乳動物にNAD前駆体を送達するための新規な方法を示す。特定の実施形態において、ニコチンアミドリボシド(「NR」)、ニコチン酸リボシド(「NAR」)、及びニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」)、又はそれらの誘導体、又はそれらの還元ピリジン誘導体、又はそれらの塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグから選択される少なくとも1つの化合物を、前記化合物を必要とするに対象に送達するための方法が記載される。別の実施形態において、本発明は、NR、NAR、及びNMN、又はそれらの誘導体、又はそれらの還元ピリジン誘導体、又はそれらの塩、溶媒和物、若しくはプロドラッグから選択される少なくとも1つの化合物を、チアミン(ビタミンB1)、リボフラビン(ビタミンB2)、ナイアシン(ビタミンB3)、及びピリドキシン(ビタミンB6)の少なくとも1つと組み合わせて、前記化合物又は化合物を必要とする対象に送達するための方法に関する。更なる別の実施形態において、本発明は、ビタミンB3欠乏に関連した、又はビタミンB3欠乏が関与する病因を有する、及び/又は増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態を処置及び/又は予防するための方法に関する。
【0053】
理論に束縛されるものではないが、別の実施形態では、ニコチンアミドリボシド誘導体(「NR(I)誘導体」)、ニコチン酸リボシド(「NAR」、II)、及びニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」、III)、若しくはそれらの誘導体(「還元」1,4-ジヒドロピリジルを含む)、若しくはそれらの塩から選択される少なくとも1つの化合物、又は代替的に(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する化合物を伴う前記化合物の投与又は送達は、ビタミンB3欠乏に関連した、又はビタミンB3欠乏が関与する病因を有する、及び/又は増大したミトコンドリア活性から利益を得る、症状、疾病、疾患又は状態を処置及び/又は予防するであろうと考えられる。本明細書で使用するとき、用語「誘導体」は、プロドラッグ、又は上述した還元誘導体を含むことができる。
【0054】
ニコチン酸、又はナイアシンとしても既知のビタミンB3は、式(IV):
を有するピリジン化合物である。
【0055】
理論に束縛されるものではないが、図1に示すNAD生合成経路から理解し得るように、ビタミンB3(「ニコチン酸」、又は「ナイアシン」、IV)は、いくつかの中間体を介してNADに変換されると考えられる。ナイアシンはニコチンアミド(「Nam」)との混合物を含むことも既知である。本開示の目的のために、ビタミンB3はまた、ニコチンアミド(Nam)若しくはニコチンアミドリボシド(NR、I)を含み又はニコチンアミド(Nam)若しくはニコチンアミドリボシド(NR、I)からなり得ることが当業者により認識され得る。これら異形の用語は、本発明の実施形態で使用される有効な組成物又は混合物を記載するために必要とされる場合、同義的に又は交換可能に使用することができる。
【0056】
チアミンとしても既知のビタミンB1は、式(V):
を有する化合物である。
【0057】
リボフラビンとしても既知のビタミンB2は、式(VI):
を有する化合物である。
【0058】
最も一般的にはサプリメントとして提供される、ピリドキシンとしても既知のビタミンB6は、式(VII):
を有する化合物である。
【0059】
理論に束縛されるものではないが、更に別の実施形態では、互いの組み合わせで、又は代替的に(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する化合物との、又は代替的にビタミンB1(「チアミン」、V)、ビタミンB2(「リボフラビン」、VI)、ビタミンB3(「ニコチン酸」又は「ナイアシン」、IV)、及びビタミンB6(サプリメント形態の「ピリドキシン」、VII)から選択される1つ以上のビタミンとの組み合わせで、使用される、ニコチンアミドリボシド誘導体(「NR(I)誘導体」)、ニコチン酸リボシド(「NAR」、II)、及びニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」、III)、又はそれらの塩から選択される少なくとも1つの化合物を含有する食物又は飲料製品は、別個で提供される場合と比較して、相乗的に、より高いレベルのNADを、それを必要とする対象に効果的に提供するであろうと考えられる。
【0060】
ニコチンアミドリボシド誘導体(「NR(I)誘導体」)、ニコチン酸リボシド(「NAR」、II)、及びニコチンアミドモノヌクレオチド(「NMN」、III)、若しくはそれらの塩から選択される少なくとも1つの化合物を、又は代替的に(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する化合物を伴う前記化合物を、場合によりビタミンB1(「チアミン」、V)、ビタミンB2(「リボフラビン」、VI)、ビタミンB3(「ニコチン酸」又は「ナイアシン」、IV)、及びビタミンB6(サプリメント形態の「ピリドキシン」、VII)から選択される1つ以上のビタミンと組み合わせて送達することは、別個で提供される場合と比較して、より高いレベルのNADを、及びニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)、又はその誘導体(「還元」誘導体を含む)、又はその塩若しくはプロドラッグ、又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)のいずれか単独と比較して、より高いレベルのNADを、それを必要とする対象に効果的に提供するであろうことが期待される。
【0061】
定義
明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が明らかに他を指定しない限り、複数の参照を含む。
【0062】
本明細書で使用されるとき、用語「ニコチニル」及び「ニコチノイル」は、交換可能である。有用な一例は、カルボニル基(C=O)がピリジンの3位でリンカーとして機能し得る3-ニコチノイル、又は3-ニコチニルである。更に、用語「ニコチニルリボシド」は、例えばニコチンアミドリボシド又はニコチン酸リボシドを包含し得る。
【0063】
本明細書で使用されるとき、用語「栄養薬学的に許容され得る担体」及び「薬学的に許容され得る担体」は、製剤の他の成分と適合可能であり、また使用者に有害ではない任意の担体、希釈剤、又は賦形剤を意味する。有用な賦形剤としては、微結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、任意の許容され得る糖(例えばマンニトール、キシリトール)が挙げられ、化粧品用途では油系が好ましい。
【0064】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキル」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、指定される数の炭素原子を有する(即ち、C-Cは、1~6個の炭素を意味する)直鎖、分枝鎖又は環式鎖炭化水素(シクロアルキル)を意味する。例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert-ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、及びシクロプロピルが挙げられる。(C-C)アルキル、特にエチル、エチル、及びイソプロピルが最も好ましい。
【0065】
本明細書で使用されるとき、用語「アルケニル」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、規定数の炭素原子を有する、安定な一不飽和又は二不飽和直鎖(不飽和は、炭素-炭素二重結合(-CH=CH-)を意味する)、分枝鎖又は環式炭化水素基を意味する。例としては、ビニル、プロペニル(アリル)、クロチル、イソペンテニル、ブタジエニル、1,3-ペンタジエニル、1,4-ペンタジエニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、及びより高次のホモログ及び異性体が挙げられる。アルケンを表す官能基は、-CH=CH-CH-及びCH=CH-CH-により例示される。
【0066】
本明細書で使用されるとき、用語「置換アルキル」又は「置換アルケニル」は、各々、1つ、2つ又は3つの置換基で置換された「アルキル」又は「アルケニル」を意味する。置換基は、例えば、ハロゲン、-OH、-NH、-N(CH、-COH、-CO(C-C)アルキル、メトキシ、エトキシ、トリフルオロメチル、-C(=O)NH、-SONH、-C(=NH)NH、-C≡N、及び-NOからなる群から選択され、好ましくはハロゲン及び-OHから選択され得る。置換アルキルの例としては、非限定的に2,2-ジフルオロメチル、2-カルボキシシクロペンチル、及び3-クロロプロピルが挙げられる。
【0067】
本明細書で使用されるとき、用語「アルキニル」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、規定数の炭素原子を有する、安定な炭素-炭素三重結合含有基(-C≡C-)、分枝鎖又は環式炭化水素を意味する。例としては、エチニル及びプロパルギルが挙げられる。
【0068】
本明細書で使用されるとき、用語「アルコキシ」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、酸素原子を介して分子のその他の部分に連結している、上記に定義した指定された数の炭素原子を有するアルキル基、例えばメトキシ、エトキシ、1-プロポキシ、2-プロポキシ(イソプロポキシ)及びより高次のホモログ及び異性体等を意味する。(C-C)アルコキシ、特にエトキシ及びメトキシが好ましい。
【0069】
本明細書で使用されるとき、用語「カルバミル」又は「カルバモイル」は、-C(=O)NRR’基を意味し、R及びR’は、独立して、水素若しくはヒドロカルビル官能基から選択され、又はR及びR’は、一緒になって複素環を形成する。カルバミル基の例としては、-C(=O)NH及び-C(=O)N(CHが挙げられる。
【0070】
本明細書で使用されるとき、用語「シアノ」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、-C≡N基を意味する。
【0071】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロアルキル」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、規定数の炭素原子並びに酸素、窒素、及び硫黄からなる群から選択される1つ又は2つのヘテロ原子からなる安定な直鎖又は分枝鎖アルキル基を意味し、窒素及び硫黄原子は、場合により酸化されてもよく、窒素ヘテロ原子は、場合により四級化されてもよい。ヘテロ原子は、ヘテロアルキル基の任意の位置(ヘテロ原子が結合している断片と、ヘテロアルキル基のその他の部分との間を含む)に配置されてもよく、またヘテロアルキル基の最も先端の炭素原子に結合してもよい。例としては:-O-CH-CH-CH、-CH-CH-CH-OH、-CH-CH-NH-CH、-CH-S-CH-CH、及び-CH-CH-S(=O)-CHが挙げられる。例えば、-CH-NH-OCH、又は-CH-CH-S-S-CH等のように、2つまでのヘテロ原子が連続してもよい。
【0072】
本明細書で使用されるとき、用語「ハロ」又は「ハロゲン」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、一価フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素原子を意味する。
【0073】
本明細書で使用されるとき、用語「ニトロ」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、-NO基を意味する。
【0074】
本明細書で使用されるとき、用語「(C-C)ペルフルオロアルキル」(式中、x<y)は、最小のx個の炭素原子及び最大のy個の炭素原子を有するアルキル基を意味し、ここで全水素原子は、フッ素原子で置き換えられている。-(C-C)ペルフルオロアルキルが好ましく、-(C-C)ペルフルオロアルキルがより好ましく、-CFが最も好ましい。
【0075】
本明細書で使用されるとき、用語「芳香族」は、一般に、芳香族特性を有する(即ち、(4n+2)非局在化π(pi)電子を有する(nは、整数である))1つ以上の多不飽和環を有する炭素環又は複素環を指す。
【0076】
本明細書で使用されるとき、用語「アリール」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、1つ以上の環(典型的には、1つ、2つ又は3つの環)を含む炭素環式芳香族系を意味し、そのような環は、ビフェニルのようにペンダント状に互いに結合し得、又はナフタレンのように縮合し得る。例としては、フェニル;アントラニル;及びナフチルが挙げられる。フェニル及びナフチルが好ましく、フェニルが最も好ましい。
【0077】
本明細書で使用されるとき、用語「複素環」、「ヘテロシクリル」、又は「複素環式」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、炭素原子並びに独立してN、O、及びSからなる群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子からなる非置換の又は置換された、安定な単環式又は多環式複素環式環系を意味し、窒素及び硫黄ヘテロ原子は、場合により酸化されてもよく、窒素原子は、場合により四級化されてもよい。複素環式系は、特に述べない限り、安定な構造を与える任意のヘテロ原子又は炭素原子において結合することができる。
【0078】
本明細書で使用されるとき、用語「ヘテロアリール」又は「ヘテロ芳香族」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、芳香族特性を有する複素環を意味する。同様に、用語「ヘテロアリール(C-C)アルキル」は、1~3個の炭素アルキレン鎖がヘテロアリール基に結合した官能基、例えば-CH-CH-ピリジルを意味する。用語「置換ヘテロアリール(C-C)アルキル」は、ヘテロアリール基が置換されているヘテロアリール(C-C)アルキル官能基を意味する。多環式ヘテロアリールは、縮合環を含むことができる。例としては、インドール、1H-インダゾール、1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン等が挙げられる。多環式ヘテロアリールは、部分的に飽和された1つ以上の環を含むことができる。例としては、インドリン、テトラヒドロキノリン、及び2,3-ジヒドロベンゾフリルが挙げられる。
【0079】
非芳香族複素環の例としては:アジリジン、オキシラン、チイラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ピロリン、イミダゾリン、ピラゾリジン、ジオキソラン、スルホラン、2,3-ジヒドロフラン、2,5-ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、チオファン、ピペリジン、1,2,3,6-テトラヒドロピリジン、ピペラジン、N-メチルピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、ピラン、2,3-ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ホモピペラジン、ホモピペリジン、1,3-ジオキセパン、4,7-ジヒドロ-1,3-ジオキセピン、及びヘキサメチレンオキシド等の単環式基が挙げられる。
【0080】
ヘテロアリール基の例としては:ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、特に2-及び4-ピリミジニル、ピリダジニル、チエニル、フリル、ピロリル、特に2-ピロリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、ピラゾリル、特に3-及び5-ピラゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾニル、1,2,4-トリアゾニル、1,3,4-トリアゾニル、テトラゾリル、1,2,3-チアジアゾリル、1,2,3-オキサジアゾリル、1,3,4-チアジアゾリル、並びに1,3,4-オキサジアゾリルが挙げられる。
【0081】
多環式複素環は、芳香族及び非芳香族多環式複素環の両方を含む。多環式複素環の例としては:インドリル、特に3-、4-、5-、6-、及び7-インドリル;インドリニル;インダゾリル、特に1H-インダゾール-5-イル;キノリル;テトラヒドロキノリル;イソキノリル、特に1-及び5-イソキノリル;1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリル;シンノリル;キノキサリニル、特に2-及び5-キノキサリニル;キナゾリニル;フタラジニル;1,8-ナフチリジニル;1,4-ベンゾジオキサニル;クマリル;ジヒドロクマリル;ナフチリジニル、特に3,4-及び1,5-ナフチリジニル;ベンゾフリル、特に5-、6-、及び7-ベンゾフリル;2,3-ジヒドロベンゾフリル;1,2-ベンゾイソオキサゾリル;ベンゾチエニル、特に3-、4-、5-、6-、及び7-ベンゾチエニル;ベンゾオキサゾリル;ベンゾチアゾリル、特に2-ベンゾチアゾリル及び5-ベンゾチアゾリル;プリニル;ベンゾイミダゾリル、特に2-ベンゾイミダゾリル;ベンゾトリアゾリル;チオキサンチニル;カルバゾリル;カルボリニル;アクリジニル;ピロリジジニル;ピロロ[2,3-b]ピリジニル、特に1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イル;並びにキノリジジニルが挙げられる。4-インドリル、5-インドリル、6-インドリル、1H-インダゾール-5-イル、及び1H-ピロロ[2,3-b]ピリジン-5-イルが特に好ましい。
【0082】
前述したヘテロシクリル及びヘテロアリール部分のリストは、代表を意図し、限定するものではない。
【0083】
本明細書で使用されるとき、用語「置換された」は、特に述べない限り、他の基に結合した、置換基として水素を置き換えた原子又は原子団を意味する。アリール及びヘテロアリール基の場合、用語「置換された」は、特に述べない限り、任意のレベルの置換、即ち一、二、三、四、又は五置換(そのような置換が可能である場合)を指す。置換基は独立して選択され、置換は、化学的に利用可能な任意の位置に存在し得る。
【0084】
本明細書で使用されるとき、用語「アリール(C-C)アルキル」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、(C-C)アルキレン鎖がアリール基に結合している官能基、例えば-CH-CH-フェニルを意味する。例としては、アリール(CH)-及びアリール(CH(CH))-が挙げられる。本明細書で使用されるとき、用語「置換アリール(C-C)アルキル」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、アリール基が置換されているアリール(C-C)アルキル官能基を意味する。置換アリール(CH)-が好ましい。同様に、本明細書で使用されるとき、用語「複素環(C-C)アルキル」は、それだけで又は他の置換基の一部として、特に述べない限り、(C-C)アルキレン鎖が複素環式基に結合している官能基、例えばモルホリノ-CH-CH-を意味する。本明細書で使用されるとき、用語「置換ヘテロアリール(C-C)アルキル」は、ヘテロアリール基が置換されているヘテロアリール(C-C)アルキル官能基を意味する。
【0085】
本発明の化合物又は誘導体の塩
本発明の化合物は、塩の形態をとることができる。用語「塩」は、本発明の化合物である遊離酸又は遊離塩基の付加塩を包含する。本明細書で使用されるとき、用語「薬学的に許容され得る塩」は、特に述べない限り、医薬用途における有用性を与える範囲の毒性プロファイルを有する塩を指す。
【0086】
薬学的に許容され得る好適な酸付加塩は、無機酸から又は有機酸から調製することができる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、及びリン酸が挙げられる。適切な有機酸は:脂肪族;環式脂肪族;芳香族;芳香脂肪族;複素環式;カルボン酸;及びスルホン酸クラスの有機酸から選択することができ、その例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン、コハク酸、グリコール、グルコン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル、ガラクタル酸、及びガラクツロン酸が挙げられる。(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する本発明の例において、ピリジン基、又は縮合環ピリジンを含む化合物、例えばアザインドールは、無機酸又は強有機酸、例えば塩酸又はトリフルオロ酢酸の塩として単離することができる。(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する化合物、即ち、アミノ基を含有する化合物の本発明の例において、前記化合物は、無機酸又は強酸、例えば塩酸又はトリフルオロ酢酸の塩として単離することができる。
【0087】
本発明の化合物の薬学的に許容され得る好適な塩基付加塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属塩を含む金属塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛塩等が挙げられる。薬学的に許容され得る塩基付加塩は、塩基性アミン、例えばN,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、トロメタミン(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、及びプロカイン等から作製される有機塩も含む。
【0088】
これらの塩の全ては、例えば、適切な酸又は塩基を(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する化合物と反応させることにより、(Ia)、(I-Ha)、(IIa)、(II-H)、(II-Ha)、(II-Hb)、及び(II-Hc)から選択される式を有する対応する化合物から、従来の手段により調製することができる。好ましくは、塩は結晶形態であり、好ましくは好適な溶媒からの塩(sale)の結晶化により調製される。当業者は、例えば参照により本明細書に組み込まれるP.H.Stahl & C.G.Wermuth,Handbook of Pharmaceuticals Salts:Properties,Selection,and Use(Wiley-VCH 2002)に記載されているように、好適な塩形態を調製及び選択する方法を知るであろう。
【0089】
投与経路
化合物は、任意の経路により投与することができ、該経路としては、非限定的に経口、舌下、頬側、眼球、経肺、直腸、及び非経口投与、又は経口若しくは経鼻噴霧(例えば、噴霧蒸気、液滴、又は固体粒子の吸入)として、が挙げられる。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋内、動脈内、腹腔内、鼻腔内、腟内、膀胱内(例えば、膀胱へ)、皮内、経皮、局所、又は皮下投与が挙げられる。後に薬物の全身又は局所放出を起こす制御製剤において、1つ以上のNR、NAR、NRH、又はNARH誘導体(それらのプロドラッグ、溶媒和物、又は塩を含む)を患者の体内に滴下注入することも本発明の範囲内に想定される。例えば、薬物の肝臓への注射又は注入が想定される。例えば、薬物はデポー内に局在させて、循環に制御放出されてもよい。化合物は、親誘導体「NR」自体(I)のみを除外する。
【0090】
ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を、単独で、又は本明細書に記載したビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで投与又は提供するステップを含む、哺乳動物対象、例えばヒトにおけるビタミンB3欠乏に関連した、又はビタミンB3欠乏が関与する病因を有する、及び/又は増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態を処置及び/又は予防するための本方法の実施形態は、以前に示されていない。
【0091】
加えて、哺乳動物対象、例えばヒトにおけるビタミンB3欠乏に関連した、又はビタミンB3欠乏が関与する病因を有する、及び/又は増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態を処置及び/又は予防するための本方法の実施形態は、ビタミンB3欠乏に関連した、又はビタミンB3欠乏が関与する病因を有する、及び/又は増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態を処置及び/又は予防する既存の技術の限界に対処する。
【0092】
特定の実施形態において、本発明は、ビタミンB3欠乏に関連した、又はビタミンB3欠乏が関与する病因を有する症状、疾病、疾患又は状態を処置及び/又は予防するための方法を提供する。記載した方法に従って処置及び/又は予防し得る、ビタミンB3欠乏に関連した、又はビタミンB3欠乏が関与する病因を有する例示的な症状、疾病、疾患又は状態としては、消化障害、疲労、口内炎、嘔吐、循環不良、口腔内の熱傷、腫大した赤色舌(swollen red tongue)、及び鬱病が挙げられる。重度のビタミンB3欠乏は、亀裂した鱗状皮膚、認知症、及び下痢により特徴付けられる早老状態であるペラグラとして既知の状態の原因となり得る。早老又は加速された老化により特徴付けられる他の状態としては、コケイン症候群、ニール・ディングウォール症候群、早老症等が挙げられる。
【0093】
特定の実施形態において、本発明は、増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態を処置及び/又は予防するための方法を提供する。増大したミトコンドリア活性とは、ミトコンドリアの総数(例えばミトコンドリアの質量)を維持しながらミトコンドリアの活性を増大させること、ミトコンドリアの数を増大させることによりミトコンドリア活性を増大させること(例えば、ミトコンドリアの新生を刺激することにより)、又はそれらの組み合わせを指す。特定の実施形態において、増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態としては、ミトコンドリア不全に関連した症状、疾病、疾患又は状態が挙げられる。
【0094】
特定の実施形態において、増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態を処置及び/又は予防するための方法は、ミトコンドリア不全に苦しむ対象を特定するステップを含み得る。分子遺伝学的、病理的、及び/又は生化学的分析を含み得る、ミトコンドリア不全を診断する方法は、Bruce H.Cohen & Deborah R.Gold,Mitochondrial cytopathy in adults:what we know so far,68 Cleveland Clinic J.Med.625(2001)に概略されている。ミトコンドリア不全を診断する一方法は、Thor-Byrneierスケールである(例えば、Cohen & Gold 2001;S.Collins et al.,Respiratory Chain Encephalomyopathies:A Diagnostic Classification,36 European Neurology 260(1996)参照)。
【0095】
ミトコンドリアは、殆ど全てのタイプの真核生物細胞の生存及び適切な機能に非常に重要である。実際には、任意の細胞タイプにおけるミトコンドリアは、それらの機能に影響する先天性又は後天性欠陥を有し得る。それ故、呼吸鎖機能に影響するミトコンドリア欠陥の臨床的に有意な徴候及び症状は、細胞間の欠陥ミトコンドリアの分布、及びそれらの欠損の重症度、及び冒された細胞による生理学的要求に応じて様々である。高いエネルギー要求を有する非分裂組織、例えば神経組織、骨格筋、及び心筋は、特にミトコンドリア呼吸鎖不全に感受性であるが、任意の器官系が影響を受け得る。
【0096】
ミトコンドリア不全に関連した症状、疾病、疾患及び状態は、ミトコンドリア呼吸鎖活性の欠損が、哺乳動物におけるそのような症状、疾病、疾患又は状態の病態生理の発達に寄与する症状、疾病、疾患及び状態を含む。これは、1)ミトコンドリア呼吸鎖の1つ以上の成分の活性における先天性遺伝的欠損を含み、そのような欠損は、a)加齢中の酸化的損傷;b)高い細胞内カルシウム;c)冒された細胞の一酸化窒素への暴露;d)低酸素症若しくは虚血;e)ミトコンドリアの軸索輸送における微小管関連の欠損;又はf)ミトコンドリア脱共役タンパク質の発現を原因とする。
【0097】
増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態としては、一般に、例えば、フリーラジカル仲介による酸化的傷害が組織変性をもたらす疾病、細胞が不適切にアポトーシスを経る疾病、及び細胞がアポトーシスを経ない疾病が挙げられる。増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう例示的な症状、疾病、疾患又は状態としては、例えば、AD(アルツハイマー病)、ADPD(アルツハイマー病及びパーキンソン病)、AMDF(運動失調、ミオクローヌス及び聴覚損失)、自己免疫性疾病、ループス、ループスエリテマトーデス、SLE(全身性エリテマトーデス)、白内障、癌、CIPO(ミオパチー及び眼筋麻痺を伴う慢性偽性腸閉塞)、先天性筋ジストロフィー、CPEO(慢性進行性外眼筋麻痺)、DEAF(母性遺伝聴覚損失又はアミノグリコシド-誘導聴覚損失)、DEMCHO(認知症及び舞踏病)、糖尿病(I型又はII型)、DID-MOAD(糖尿病尿崩症、糖尿病、視神経萎縮症、聴覚損失)、DMDF(糖尿病及び聴覚損失)、ジストニア、運動不耐性、ESOC(てんかん、卒中、視神経萎縮症、及び認知減退)、FBSN(家族性両側線状体壊死)、FICP(致死性乳児心筋症プラス、MELAS関連心筋症)、GER(胃腸逆流)、HD(ハンチントン病)、KSS(カーンズ・セイヤー症候群)、「遅発性」ミオパチー、LDYT(レーベル遺伝性視神経症及びジストニア)、リー症候群、LHON(レーベル遺伝性視神経症)、LIMM(致死型乳児ミトコンドリアミオパチー)、MDM(ミオパチー及び糖尿病)、MELAS(ミトコンドリア脳ミオパチー、乳酸アシドーシス、及び卒中様症状の発現)、MEPR(ミオクローヌスてんかん及び精神運動発達退行)、MERME(MERRF/MELASオーバーラップ疾病)、MERRF(ミオクローヌスてんかん及び赤色ぼろ筋線維)、MHCM(母性遺伝肥大型心筋症)、MICM(母性遺伝心筋症)、MILS(母性遺伝リー症候群)、ミトコンドリア脳心臓ミオパチー、ミトコンドリア脳ミオパチー、MM(ミトコンドリアミオパチー)、MMC(母系ミオパチー及び心筋症)、MNGIE(ミオパチー及び外眼筋麻痺、神経障害、胃腸、脳症)、多系統ミトコンドリア疾患(ミオパチー、脳症、盲目、難聴、末梢神経障害)、NARP(神経原性筋肉脆弱、運動失調、及び網膜色素変性症;この位置における代替の表現型は、リー病として報告された)、PD(パーキンソン病)、ピアソン症候群、PEM(進行性脳症)、PEO(進行性外眼筋麻痺)、PME(進行性ミオクローヌスてんかん)、PMPS(ピアソン髄-膵臓症候群)、乾癬、RTT(レット症候群)、統合失調症、SIDS(乳幼児突然死症候群)、SNHL(感音難聴)、可変家族性症状(Varied Familial Presentation)(痙性対麻痺から多系統進行性疾患及び致死性心筋症の範囲の臨床症状、体幹運動失調、構音障害、高度難聴、精神退行、下垂、眼麻痺、抹消サイクロン(distal cyclones)、並びに糖尿病)、又はウォルフラム症候群が挙げられる。
【0098】
増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう他の症状、疾病、疾患及び状態としては、例えば、フリートライヒ運動失調及び他の運動失調、筋萎縮性側索硬化症(ALS)及び他の運動ニューロン疾患、黄斑変性症、てんかん、アルパース症候群、多発性ミトコンドリアDNA欠失症候群、MtDNA欠乏症候群、複合体I欠乏、複合体II(SDH)欠乏、複合体III欠乏、シトクロムcオキシダーゼ(COX、複合体IV)欠乏、複合体V欠乏、アデニンヌクレオチドトランスロケーター(ANT)欠乏、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)欠乏、乳酸酸性尿を伴うエチルマロン酸酸性尿、感染中の衰退を伴う難治性てんかん、感染中の衰退を伴うアスペルガー症候群、感染中の衰退を伴う自閉症、注意欠陥多動障害(ADHD)、感染中の衰退を伴う脳性麻痺、感染中の衰退を伴う失読症、実質的に遺伝性の血小板減少症及び白血病症候群、MARIAHS症候群(ミトコンドリア運動失調、回帰感染、失語症、低尿酸血症/ミエリン形成不全、発作、及びジカルボン酸酸性尿)、ND6ジストニア、感染中の衰退を伴う周期性嘔吐症候群、乳酸酸性尿を伴う3-ヒドロキシイソ酪酸酸性尿、乳酸酸性尿を伴う糖尿病、ウリジン応答性神経性症状群(URNS)、拡張型心筋症、脾リンパ腫、又は尿細管性アシドーシス/糖尿病/アタクシス(Ataxis)症候群が挙げられる。
【0099】
別の実施形態において、本発明は、非限定的に、外傷後頭部傷害及び脳浮腫、卒中(本発明の方法は、再灌流傷害の処置又は予防に有用である)、レビー小体認知症、肝腎症候群、急性肝不全、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)、癌の抗転移/前分化療法、突発性鬱血性心疾患、心房細動(非心臓弁)、ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群、突発性心臓ブロック、急性心筋梗塞における再灌流傷害の予防、家族性偏頭痛、過敏性腸症候群、非Q波心筋梗塞の二次予防、月経前症候群、肝腎症候群における腎不全の予防、抗リン脂質抗体症候群、子癇/子癇前症、一時的(Oopause)不妊症、虚血性心疾患/狭心症、並びにシャイ・ドレーガー及び未分類自律神経障害症候群から生じるミトコンドリア疾患に苦しむ哺乳動物(例えばヒト)の処置のための方法を提供する。
【0100】
尚別の実施形態では、薬理学的薬物関連副作用に関連したミトコンドリア疾患の処置のための方法が提供される。ミトコンドリア疾患に関連した薬剤のタイプとしては、逆転写酵素阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、DHODの阻害剤等が挙げられる。逆転写酵素阻害剤の例としては、例えば、アジドチミジン(AZT)、スタブジン(D4T)、ザルシタビン(ddC)、ジダノシン(DDI)、フルオロヨードアラウラシル(FIAU)、ラミブジン(3TC)、アバカビル等が挙げられる。プロテアーゼ阻害剤の例としては、例えば、リトナビル、インジナビル、サキナビル、ネルフィナビル等が挙げられる。ジヒドロオロテートデヒドロゲナーゼ(DHOD)の阻害剤の例としては、例えば、レフルノミド、ブレキナル等が挙げられる。
【0101】
逆転写酵素阻害剤は、逆転写酵素だけでなく、ポリメラーゼγも阻害し、ポリメラーゼγは、ミトコンドリア機能に必要である。従って、ポリメラーゼγ活性の阻害(例えば、逆転写酵素阻害剤による)は、ミトコンドリア不全及び/又はミトコンドリア質量の低下をもたらし、これは患者において高乳酸塩血症として表れる。このタイプの状態は、ミトコンドリア数の増加、及び/又はミトコンドリア機能の改善から利益を得る可能性がある。
【0102】
ミトコンドリア疾病の一般的症状としては、心筋症、筋肉脆弱及び萎縮症、発達遅延(運動、言語、認知、又は実行機能を含む)、運動失調、てんかん、腎細尿管アシドーシス、末梢神経障害、視神経症、自律神経障害、神経原性腸不全、感音性聴覚損失、神経因性膀胱不全、拡張型心筋症、偏頭痛、肝不全、乳酸酸性尿、及び糖尿病が挙げられる。
【0103】
例示的な実施形態において、本発明は、治療的有効量の少なくとも1つのニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を、単独で又は少なくとも1つのビタミン(IV、V、VI、VII)との組み合わせで、哺乳動物(例えばヒト)に投与することによる、増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう疾病又は疾患を処置するための方法を提供する。例示的な疾病又は疾患としては、例えば、神経筋疾患(例えば、フリートライヒ運動失調、筋ジストロフィー、多発性硬化症等)、ニューロン不安定性の疾患(例えば、発作性疾患、偏頭痛等)、発達遅延、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症等)、虚血、腎細尿管アシドーシス、年齢関連の神経変性及び認知減退、化学療法疲労、年齢関連の又は化学療法誘導による閉経又は月経周期若しくは排卵の不規則さ、ミトコンドリアミオパチー、ミトコンドリア損傷(例えばカルシウム蓄積、興奮毒性、一酸化窒素暴露、低酸素症等)、及びミトコンドリア脱制御が挙げられる。
【0104】
最も一般的な遺伝性運動失調であるフリートライヒ運動失調(FA)の根底にある遺伝子欠陥は、最近特定され、「フラタキシン」と称されている。FAでは、正常な発達期間の後、協調における欠損が発生し、これが典型的には30~40歳で麻痺及び死に進行する。最も重度に冒される組織は、脊髄、末梢神経、心筋、及び膵臓である。患者は、典型的には運動制御を失い、車椅子に拘束され、通常、心不全及び糖尿病を患う。FAの遺伝的基礎は、フラタキシンをコードする遺伝子のイントロン領域内のGAAトリヌクレオチド反復を含む。これらの反復の存在により、遺伝子の転写及び発現の低下がもたらされる。フラタキシンは、ミトコンドリア鉄含有量の調節に関与する。細胞フラタキシン含有量が正常以下の場合、ミトコンドリア内に過剰な鉄が蓄積し、酸化的損傷及びその結果としてのミトコンドリア変性及び不全を促進する。フラタキシン遺伝子イントロン内に中程度の数のGAA反復が存在する場合、運動失調の重度の臨床的表現型は発生しない場合がある。しかしながら、これらの中程度の長さの伸長トリヌクレオチドは、非糖尿病集団の約5%と比較して、非インスリン依存性糖尿病を有する患者の25~30%に見出される。特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、フリートライヒ運動失調、心筋不全、糖尿病、及び糖尿病様末梢神経障害の合併症を含む、フラタキシンの欠損又は欠陥に関連した疾患を有する哺乳動物(例えばヒト)の処置に使用することができる。
【0105】
筋ジストロフィーは、多くの場合、骨格筋の萎縮及び心筋不全をもたらす神経筋構造及び機能の悪化に関与する疾病のファミリーを指す。デュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合、特定のタンパク質、ジストロフィンの突然変異又は欠損がその病因に関係している。ジストロフィン遺伝子が不活性化されたマウスは、筋ジストロフィーのいくつかの特徴を示し、ミトコンドリア呼吸鎖活性のおよそ50%欠損を有する。神経筋変性に関する最終的な通常経路は、殆どの場合、カルシウム仲介によるミトコンドリア機能の障害である。特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、筋ジストロフィーを有する哺乳動物(例えばヒト)における筋肉機能能力の減退速度の低下、及び筋肉機能状態の改善に使用することができる。
【0106】
てんかんは、多くの場合、ミトコンドリア細胞症を有する患者に存在し、分離した症状の発現又は一日多数回生じる一連の発作の重篤さ及び頻度、例えば欠神、緊張性、弛緩性、ミオクローヌス性、及びんかん重積状態を含む。特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、発作活動の頻度及び重篤さを低減することを含む、ミトコンドリア不全に続発する発作を有する哺乳動物(例えばヒト)の処置に使用することができる。
【0107】
神経学的又は神経心理学的発達の遅延は、多くの場合、ミトコンドリア疾病を有する子供に見出される。神経連絡の発達及びリモデリングは、特にニューロン膜及びミエリンの合成に関与する集中的な生合成活性を必要とし、ニューロン膜及びミエリンの合成の両方は、ピリミジンヌクレオチドを補因子として必要とする。ウリジンヌクレオチドは、糖の活性化並びに糖脂質及び糖タンパク質への糖の移動に関与する。シチジンヌクレオチドは、ウリジンヌクレオチドから誘導され、ホスファチジルコリンのような主要な膜リン脂質成分の合成に非常に重要であり、ホスファチジルコリンは、そのコリン部分をシチジンジホスホコリンから受容する。ミトコンドリア不全(ミトコンドリアDNA欠陥又は興奮毒性(exicitotoxic)若しくは一酸化窒素仲介によるミトコンドリア不全のような後天性若しくは条件的欠陥のいずれかに起因する)又は障害されたピリミジン合成をもたらす他の状態の場合、細胞増殖及び軸索伸長は、ニューロン相互接続及び回路の発達における重大な段階で障害され、言語、運動、社会性、実行機能、及び認知スキルのような神経心理学的機能の発達の遅延又は停止をもたらす。自閉症においては、例えば大脳リン酸化合物の磁気共鳴分光法測定は、膜合成に関与するウリジンジホスホ糖及びシチジンヌクレオチド誘導体のレベルの低下により示される膜及び膜前駆体の全体的な合成不足(undersynthesis)が存在することを示す。発達遅延により特徴付けられる疾患としては、レット症候群、広汎性発達遅延(又はPDD-NOS、自閉症のような特定の下位区分から区別するための、「他に指定されない広汎性発達遅延」)、自閉症、アスペルガー症候群、及び注意欠陥/多動障害(ADHD)が挙げられ、これらは、実行機能の根底にある神経回路の発達における遅延又はずれとして認識され始めている。特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、神経発達遅延(例えば、運動、言語、実行機能、及び認知スキルに関与する)、又は、神経系における神経学的及び神経心理学的発達、並びに筋肉及び内分泌腺のような非神経組織における体細胞発達の他の遅延又は停止を有する哺乳動物(例えばヒト)の処置に有用であり得る。
【0108】
酸素欠乏は、複合体IVにおけるシトクロムc再酸化のための末端電子受容体の細胞を奪うことによるミトコンドリア呼吸鎖活性の直接阻害、及び、特に神経系における二次後無酸素興奮毒性及び一酸化窒素形成による間接阻害の両方をもたらす。無酸素脳症、狭心症又は鎌状赤血球貧血クリーゼのような状態において、組織は、比較的低酸素である。そのような場合、ミトコンドリア活性を増大させる化合物は、患部組織を低酸素の有害効果から保護し、二次遅延細胞死を減弱し、低酸素組織ストレス及び損傷からの回復を促進する。特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、脳に対する虚血性又は低酸素傷害後の遅延した細胞死(大脳虚血の発症から約2~5日後に生じる海馬又は皮質のような領域内のアポトーシス)の処置及び/又は予防に有用であり得る。
【0109】
腎不全に起因するアシドーシスは、多くの場合、根底にある呼吸鎖不全が、先天性であるか又は虚血若しくはシスプラチンのような細胞傷害性薬物により誘導されたもののいずれであっても、ミトコンドリア疾病を有する患者に観察される。腎細尿管アシドーシスは、多くの場合、外来重炭酸ナトリウムを投与して血液及び組織pHを維持する必要がある。特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、ミトコンドリア呼吸鎖欠損を原因とする腎細尿管アシドーシス及び他の形態の腎不全の処置及び/又は予防に有用であり得る。
【0110】
ミトコンドリアDNA損傷は、ミトコンドリアDNAの脆弱性が高いこと及び修復効率が低いことの両方に起因して、酸化ストレス又はシスプラチンのような癌化学療法剤に付された細胞内で、核DNA損傷よりも広範かつ長期間持続する。ミトコンドリアDNAは核DNAよりも損傷に感受性であり得るが、いくつかの状況下では、化学的発癌物質による変異誘発に比較的耐性である。これは、ミトコンドリアが、それらの欠陥ゲノムを修復することを試みるよりはむしろ、それらを破壊することにより、いくつかのタイプのミトコンドリアDNA損傷に応答するためである。このことは細胞傷害性化学療法後の期間に全体的なミトコンドリア不全をもたらす。シスプラチン、マイトマイシン、及びシトキサンのような化学療法剤の臨床的使用は、多くの場合、衰弱させる「化学療法疲労」、即ちそのような薬剤の血液及び胃腸毒性からの回復後であっても持続し得る長期間の脆弱及び運動不耐性が不随する。特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、ミトコンドリア不全関連した癌化学療法の副作用の処置及び/又は予防に有用であり得る。
【0111】
特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、ミトコンドリアミオパチーの処置及び/又は予防に有用であり得る。ミトコンドリアミオパチーは、軽度の緩徐進行性の外眼筋脆弱から、重篤な致死性乳児ミオパチー及び多系統脳ミオパチーまでの範囲に及ぶ。いくつかの症候群は定義されており、いくつかはそれらの間で重複する。筋肉を冒す確立された症候群としては、進行性外眼筋麻痺、カーンズ・セイヤー症候群(眼筋麻痺、色素性網膜症、心臓伝導欠陥、小脳性運動失調、及び感音性聴覚損失を伴う)、MELAS症候群(ミトコンドリア脳筋症、乳酸アシドーシス、及び卒中様症状の発現)、MERFF症候群(ミオクローヌスてんかん及び赤色ぼろ線維)、肢帯筋分布弱体化、及び乳児ミオパチー(良性又は重度及び致死的)が挙げられる。修正Gomoriトリクローム染料により染色した筋肉生検標本は、ミトコンドリアの過剰蓄積による赤色ぼろ線維を示す。基質輸送及び利用、クレブス回路、酸化的リン酸化、又は呼吸鎖における生化学的欠陥は、検出可能である。母系、非メンデル遺伝パターンで伝達された多数のミトコンドリアDNA点変異及び欠失が記載されている。核コード化ミトコンドリア酵素の突然変異が起こる。
【0112】
特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、カルシウム蓄積、興奮毒性、一酸化窒素暴露に起因する毒性障害、薬物誘導毒性障害、又は低酸素症等の、ミトコンドリアに対する毒性障害に苦しむ患者の処置に有用であり得る。
【0113】
特に興奮性組織における細胞傷害の基礎的機構は、形質膜を介した漏れ、又は細胞内カルシウム処理機構の欠陥のいずれかの結果としての、細胞内への過剰なカルシウム流入を含む。ミトコンドリアは、カルシウム隔離の主要な部位であり、呼吸鎖からのエネルギーを、ATP合成よりもカルシウム取込みのために優先的に利用し、ミトコンドリアへのカルシウム取込みはエネルギー伝達能力の減弱をもたらすため、該優先的利用はミトコンドリアの機能不全の下方スパイラルをもたらす。
【0114】
興奮性アミノ酸によるニューロンの過剰な刺激は、中枢神経系における細胞死又は傷害の通常の機構である。グルタミン酸受容体、特にNMDA受容体と称されるサブタイプの活性化は、部分的には、興奮毒性刺激中の細胞内カルシウムの上昇によってミトコンドリア不全をもたらす。逆に、ミトコンドリア呼吸及び酸化的リン酸化における欠損により、細胞が興奮毒性刺激に対して感作され、正常細胞に対しては無毒であろうレベルの興奮毒性神経伝達物質又は毒素への曝露中に細胞死又は傷害がもたらされる。
【0115】
一酸化窒素(約1マイクロモル)は、シトクロムオキシダーゼ(複合体IV)を阻害し、それによりミトコンドリア呼吸を阻害し;更に、一酸化窒素(NO)への長期の暴露により、複合体I活性が不可逆的に低下する。従って、生理学的又は病態生理学的濃度のNOにより、ピリミジン生合成が阻害される。一酸化窒素は、中枢神経系の炎症性及び自己免疫性疾病を含む様々な神経変性疾患に関与しており、ニューロンに対する興奮毒性及び低酸素後の損傷の媒介に関与している。
【0116】
酸素は、呼吸鎖における末端の電子受容体である。酸素欠乏により、電子伝達系活性が障害され、ピリミジン合成の減弱、及び酸化的リン酸化によるATP合成の減弱がもたらされる。ヒト細胞は、ウリジン及びピルベート(又は、NADHを酸化して解糖ATP産生を最適化するのに同様に有効な薬剤)が提供された場合、事実上嫌気性の条件下で増殖し、生存能を保持する。
【0117】
特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、ミトコンドリア脱制御に関連した疾病又は疾患の処置及び/又は予防に有用であり得る。
【0118】
呼吸鎖成分をコードするミトコンドリアDNAの転写は、核因子を必要とする。ニューロンの軸索では、ミトコンドリアは核に向かって前後に往復して呼吸鎖活性を維持する必要がある。軸索輸送が、低酸素症、又は、微小管の安定性に影響を及ぼすタキソールのような薬物によって障害された場合、核から遠いミトコンドリアは、シトクロムオキシダーゼ活性の喪失を受ける。従って、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで用いる処置は、核-ミトコンドリア相互作用の促進に有用であり得る。
【0119】
ミトコンドリアは、特に1つ以上の呼吸鎖成分における欠陥によって、代謝性中間体から酸素分子への電子の秩序ある伝達が障害されると、ミトコンドリア呼吸鎖から漏出するため、フリーラジカル及び反応性酸素種の主な供給源である。酸化的損傷を低減するために、細胞は、ミトコンドリア脱共役タンパク質(UCP)(そのいくつかは同定されている)を発現することにより代償を行ない得る。UCP-2は、酸化的損傷、炎症性サイトカイン、又は過剰脂質負荷、例えば脂肪肝及び脂肪性肝炎に応答して転写される。UCPは、ミトコンドリア内膜を通したプロトン勾配を放電させることにより、実際には、代謝によって生成されるエネルギーを消耗し、細胞を、酸化的傷害の低減の代償としてエネルギーストレスに対して脆弱にすることにより、ミトコンドリアからの反応性酸素種の漏出を低減する。
【0120】
本発明によるニコチニル化合物(I誘導体、II、及びIII)、又はその還元誘導体の塩
本発明のニコチニル化合物(I誘導体、II、及びIII)の使用方法は、塩の形態をとることができる。用語「塩」は、本発明の方法におけるニコチニル化合物(I誘導体、II、及びIII)又はその誘導体である遊離酸又は遊離塩基の付加塩を包含する。用語「薬学的に許容され得る塩」は、医薬用途における有用性を提供する範囲の毒性プロファイルを有する塩を指す。
【0121】
薬学的に許容され得る好適な酸付加塩は、無機酸から又は有機酸から調製することができる。無機酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸、及びリン酸が挙げられる。適切な有機酸は、脂肪族、環式脂肪族、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸、及びスルホン酸クラスの有機酸から選択することができ、その例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン、コハク酸、グリコール、グルコン酸、乳酸,リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン、グルクロン酸、マレイン酸、フマル酸、ピルビン酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、アントラニル酸、4-ヒドロキシ安息香酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パントテン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルメタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、スルファニル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルギン酸、β-ヒドロキシ酪酸、サリチル、ガラクタル酸、及びガラクツロン酸が挙げられる。ニコチニル化合物(I誘導体、II、及びIII)又はその誘導体、即ち、アミノ基及びピリジニウム基を含む化合物の使用の本発明の例において、前記化合物は、無機酸又は強有機酸、例えば塩酸又はトリフルオロ酢酸の塩として単離することができる。
【0122】
本発明の方法のニコチニル化合物の薬学的に許容され得る好適な塩基付加塩としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、及び遷移金属塩を含む金属塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、及び亜鉛塩等が挙げられる。薬学的に許容され得る塩基付加塩は、塩基性アミン、例えば、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、トロメタミン(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、及びプロカイン等から作製される有機塩も含む。
【0123】
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンが存在する場合、前記塩基性対イオン又はアニオンは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、ギ酸塩、酢酸塩、アスコルビン酸塩、安息香酸塩、炭酸塩、クエン酸塩、カルバミン酸塩、ギ酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、メチル臭化物、メチル硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、二リン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、及びトリフルオロ酢酸アニオンからなる群から選択され;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、内部塩であり;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、モノカルボン酸、ジカルボン酸、又はポリカルボン酸から選択される置換又は非置換カルボン酸のアニオンであり;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、置換モノカルボン酸のアニオンであり、更に場合により置換プロパン酸(プロパン酸塩又はプロピオン酸塩)のアニオン、又は置換酢酸(酢酸塩)のアニオン、又はヒドロキシル-プロパン酸のアニオン、又は2-ヒドロキシプロパン酸のアニオン(乳酸であり;乳酸のアニオンは乳酸塩アニオンである)、又はトリクロロ酢酸塩、トリブロモ酢酸塩、及びトリフルオロ酢酸塩から選択されるトリハロ酢酸塩アニオンから選択され;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸から選択される非置換モノカルボン酸のアニオン(各々、ギ酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、及び酪酸塩アニオン)であり;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、置換又は非置換アミノ酸、即ち、アミノモノカルボン酸のアニオン、又は、場合によりグルタミン酸及びアスパラギン酸から選択されるアミノジカルボン酸のアニオン(各々、グルタミン酸塩及びアルパラギン酸塩アニオン)であり;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、アスコルビン酸のアニオン(アスコルビン酸塩アニオン)であり;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、フッ化物、塩化物、臭化物、又はヨウ化物アニオンから選択されるハロゲン化物アニオンであり;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、置換又は非置換スルホン酸塩、更に場合によりトリフルオロメタンスルホン酸塩、トリブロモメタンスルホン酸塩、又はトリクロロメタンスルホン酸塩から選択されるトリハロメタンスルホン酸塩のアニオンであり;
場合により、塩基性対イオン、又はアニオンは、置換又は非置換炭酸塩のアニオン、更に場合により炭酸水素塩のアニオンである。
【0124】
これらの塩の全ては、従来の手段により、対応するニコチニル化合物(I誘導体、II、及びIII)又はその誘導体から、例えば適切な酸又は塩基をニコチニル化合物(I誘導体、II、及びIII)又はその誘導体と反応させることにより調製することができる。塩は、結晶形態、又は代替的に乾燥若しくは凍結乾燥形態が好ましい。当業者は、例えばP.H.Stahl & C.G.Wermuth,Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection,and Use(Wiley-VCH 2002)に記載されているように、好適な形態を調製及び選択する方法を知るであろう。
【0125】
本発明の送達及び投与システム
本明細書に記載される方法は、毎日、又は一日置き、又は週に1回、高用量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、例えば丸剤の形態で、対象に投与するステップを含み得る。高用量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩が、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、毎日、対象に投与される実施形態では、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、一日1回投与され得る。別の実施形態では、それは、一日2回又は3回投与される。
【0126】
いくつかの実施形態において、高用量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、少なくとも12時間の間、対象に送達するために、例えばニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、ネオ粒子(neoparticles)中に包埋又はカプセル化することにより、徐放製剤中で投与される。ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩が、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、徐放製剤中で対象に投与される実施形態では、高用量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、例えば、少なくとも約12、15、18、24、又は36時間、又はより長時間の間の持続送達のために投与され得る。別の実施形態では、それは、1日以上の間の持続送達のために投与される。更なる別の実施形態では、それは、1週間以上の間の持続送達のために投与される。別の実施形態では、移植可能な装置が使用されて、特定の組織、例えば耳又は眼等における徐放又は時間放出を行うことができる。
【0127】
特定の実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、栄養補助食品製剤中で投与される。「栄養補助食品」は、その栄養学的利益以外の更なる利益を提供する任意の機能的食物(飲料を含む)である。好ましい実施形態において、約0.1重量%~約99重量%、又は約0.1重量%~約10重量%のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)を含有する栄養補助食品が提供される。好ましい実施形態では、本明細書に記載した高用量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、食物又は飲料の1回の分量で投与される。好ましい製剤では、合計25mgのニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)と同等以上の生理学的効果を有する量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)を含む単一剤形が提供される(例えば、8液量オンスの分量の飲料、例えば水、風味付けされた水、又はフルーツジュース等)。別の実施形態では、8液量オンス当たり、約10、15、20、25、50、60、75、80、100、150、200mg、又はそれを超えるニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)の生理学的効果と同等以上の生理学的効果を有する量の総ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)を含む単一剤形が提供される。好ましい別の実施形態では、100mgニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)の生理学的効果と同等以上の生理学的効果を有する総量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)を含む単一剤形が提供される(例えば、栄養バー等の食物の1回分)。いくつかの実施形態において、食物は、1回分当たり100~500kcalを供給する。別の実施形態では、100~500kcal当たり、20、50、60、75、80、100、150、200、250mg、又はそれを超えるニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)の生理学的効果と同等以上の生理学的効果を有する総量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)を含む単一剤形が提供される。「総量のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)」という表現は、単一剤形中に存在するニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)の総量を指す。
【0128】
様々な実施形態において、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで含む栄養補助食品は、任意の様々な食物又は飲物であり得る。例えば、栄養補助食品は、栄養飲物、ダイエット飲物(例えば、Slimfast(商標)、Boost(商標)等)、並びにスポーツ飲料、ハーブ飲料、及び他の栄養強化飲料等の飲物を含むことができる。加えて、栄養補助食品は、焼いた食品、例えばパン、ウエハース、クッキー、クラッカー、プリッツェル、ピザ、及びロール、インスタント(ready-to-eat)朝食シリアル、ホットシリアル、パスタ製品、フルーツスナック、塩味スナック、穀物スナック等のスナック、栄養バー、並びにマイクロ波ポップコーン、ヨーグルト、チーズ、及びアイスクリーム等の乳製品、ハードキャンディ、ソフトキャンディ、及びチョコレート等の甘味物品、飲料、動物飼料、ドッグフード及びキャットフード等のペット用食物、水産養殖食物、例えば魚用食物及びエビ飼料、並びに特殊用途の食物、例えばベビーフード、乳児用調製粉乳、病院食、医療食品、スポーツ食品、性能食品若しくは栄養バー、又は栄養強化食物、家庭又は食物サービス用途用の食物プレブレンド又はミックス、例えばスープ又はグレービーのプレブレンド、デザートミックス、夕食用ミックス、ベーキングミックス、例えばパンミックス、及びケーキミックス、及びベーキングフラワー等のヒト又は動物消費が意図される食物を含むことができる。特定の実施形態において、食物又は飲料は、ブドウ、クワ、ブルーベリー、ラズベリー、ピーナッツ、牛乳、酵母、又はそれらの抽出物の1つ以上を含まない。
【0129】
特定の実施形態において、本発明のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで、それを必要とする哺乳動物(例えばヒト)に送達する方法、及び、哺乳動物(例えばヒト)における、ビタミンB3欠乏に関連した又はビタミンB3欠乏が関与する病因を有する、及び/又は増大したミトコンドリア活性から利益を得るであろう症状、疾病、疾患又は状態の処置及び/又は予防方法は、乳児用調製粉乳を送達又は投与するステップを含む。
【0130】
有用な組成物は、単独の又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)と組み合わせた、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩から選択される1つ以上の化合物を含むことができる。
【0131】
NR(I)誘導体、又はNAR(II)及び/若しくはNMN(III)、若しくはそれらの誘導体の経口製剤が想定される。1つ以上のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩の有用な治療的投与量は、非限定的に、ヒト個体において約0.1mg~約10,000mgの範囲であり得る。別の好適な用量範囲は、約100mg~約1000mgである。別の好適な用量範囲は、約5mg~約500mgである。別の好適な用量範囲は、約50mg~約500mgである。ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩は、各々、薬学的に又は栄養薬学的に許容され得る担体を含む医薬又は栄養補助食品の組成物として、経口的に又は局所的に処方され得る。1つ以上のニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含む医薬組成物の一実施形態において、1つ以上の化合物(comopunds)の好適なレベルは、組成物の総重量を基準として約0.01重量%~約50重量%の範囲であり得る。ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を含む医薬組成物の別の実施形態では、1つ以上の化合物の好適なレベルは、組成物の総重量を基準として約0.1重量%~約10重量%の範囲であり得る。
【0132】
好適な脂肪源の例としては、典型的には、高オレインベニバナ油、大豆油、分割ヤシ油(中鎖トリグリセリド、MCT油)、高オレインヒマワリ油、トウモロコシ油、キャノーラ油、ココナツ、パーム及びパーム核油、水産物油、綿実油、クルミ油、コムギ胚芽油、ゴマ油、タラ肝油、並びにピーナッツ油が挙げられる。上記に列挙した任意の1つの脂肪、又は適宜、それらの任意の組み合わせが使用され得る。他の好適な脂肪は、当業者に容易に明らかとなる。
【0133】
本発明の方法に使用される栄養配合物は、単回又は多回使用容器内に包装及び密封された後、周囲条件下で、約36カ月以上まで、より典型的には12~約24カ月間保管することができる。多回使用容器の場合、これらの包装物は、最終ユーザーにより開放された後、繰り返し使用のために覆われ得るが、但し、覆われた包装物は、次いで周囲条件下で保管され(例えば、極端な温度を避ける)、内容物は約1か月等以内で使用される。
【0134】
ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)を含む、哺乳動物(例えばヒト)が好む栄養補助食品組成物を送達するのに有用な経口製剤用の組成物は、当技術分野にて既知である。ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩(単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで)を含む、送達に有用な乳幼児栄養補助食品組成物は、例えば、不活性希釈剤若しくは吸収可能な食用担体と共に経口投与することができ、又は硬若しくは軟シェルゼラチンカプセル剤に封入することができ、又は圧縮して錠剤とすることができ、又は食事の食物に直接組み込むことができる。経口投与の場合、ニコチニル化合物(I誘導体、II、及び/又はIII)又はその誘導体、プロドラッグ若しくは塩を、単独で又はビタミン(IV、V、VI、及び/又はVII)との組み合わせで含む食物組成物は、賦形剤と共に組み込まれて、接種可能な錠剤、バッカル錠、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、縣濁剤、シロップ剤、オブラート剤等の形態で使用することができる。錠剤、トローチ剤、丸剤、カプセル剤等は、以下も含むことができる:トラガカントガム、アカシア、トウモロコシ澱粉、又はゼラチン等の結合剤;リン酸二カルシウム等の賦形剤;トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、アルギン酸等の錠剤崩壊剤;ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤;及びショ糖、乳糖、又はサッカリン等の甘味剤を加えることができ、又はペパーミント、ウィンターグリーンの油、又はサクランボ香味料等の香味剤。単位剤形がカプセル剤の場合、カプセル剤は、上記のタイプの材料に加えて、液体担体を含むことができる。様々な他の材料は、コーティングとして存在し、又は投与単位の物理的形態を別様に変更するために存在することができる。例えば、錠剤、丸剤、又はカプセル剤は、セラック、糖、又はその両方で被覆することができる。シロップ剤又はエリキシル剤は、活性化合物、甘味剤としてのショ糖、保存剤としてのメチル及びプロピルパラベン、染料、並びにサクランボ又はオレンジ風味等の香味料を含むことができる。水中油エマルションは、これが水混和性であり、従ってその油性が遮蔽されるため、乳幼児又は子供における経口用途により適したものであり得る。そのようなエマルションは、薬学にて周知である。
【0135】
実施例A
材料及び方法:Hela細胞培養
Hela細胞(継代5~9回)を、10%血清を有する細胞培地DMEM中で成長させ、1mLの培地を含むウェル当たり3x10細胞の密度で6ウェルプレート内に一晩播種した。ウェルを吸引し、PBSで洗浄し、2mLの新鮮な細胞培地を加えた。各ウェルに2μLの新たに調製した100mMの対応するNAD前駆体(ニコチニルリボシド試験化合物)の水溶液を加えて、100μM/ウェルの最終濃度を与えた後、37℃で24時間インキュベートした。培地を吸引し、ウェルをPBSで洗浄し、各条件に関して1x10細胞を単離し、ENZYCHROM(商標)NAD+/NADHアッセイキット(E2ND-100)を使用して、製造業者のプロトコル(BioAssay Systems、Hayward、California)に従って分析した。この標準的なアッセイは、565nmでのNAD+/NADHの定量的比色測定を提供する。
【0136】
表1において、試験化合物は上記に定義した通りであるが、用語「環式」は2’,3’-ジアセチル-5’-ニコチノイルリボラクトンを指し、これは、ラクトン開環後の1-(2’,3’-ジアセチル-β-D-リボフラノシル)-ニコチン酸の前駆体であり;更なるエステラーゼ加水分解は、NARを提供する。別の有用な環式誘導体は、還元類似体2’,3’-ジアセチル-5’-(1,4-ジヒドロニコチノイル)リボラクトンであり、これは、ラクトン開環後の1-(2’,3’-ジアセチル-β-D-リボフラノシル)-1,4,-ジヒドロニコチン酸の前駆体であり;更なるエステラーゼ加水分解は、NARHを提供する。
【0137】
結果及び考察
表1に示すように、ニコチニル誘導体の各々は、対照と比較して、著しい及び再現可能な増大を示した(細胞内のNAD含有量は、処理化合物の非存在下で測定した)。
【0138】
更に、図9は、対照に対するNADの倍増としての同じデータを示す。図8は、100μMの対応するNAD前駆体(ニコチニルリボシド試験化合物)で補充した成長培地中で24時間培養したHela細胞(n=4)内の、対照に対する絶対NAD値(μM)の測定値を示す(細胞内のNAD含有量は、処理化合物の非存在下で測定した)。対照値は、各反復データセットに関して決定した。
【0139】
実施例B
材料及び方法:HepG2細胞培養
HepG2細胞(継代5~10回)を、10% FBS血清及び1% pen-stripを有する細胞培地EMEM中で成長させた。細胞を、平底低蒸発蓋を有するCorning(REF 353046)6ウェル組織培養プレート内に播種した。1mLの培地を含むウェル当たり密度3x10の細胞を、37℃で24時間、一晩インキュベートした。ウェルを吸引し、PBSで洗浄し、2mLの新鮮細胞培地を加えた。各ウェルは、2μLの新たに調製した100mMの対応するNAD+前駆体(ニコチニルリボシド試験化合物)の水溶液を有して100μM/ウェルの最終濃度を与え、37℃で24時間インキュベートした。培地を吸引し、ウェルをPBSで洗浄し、各条件に関して1x10細胞を単離し、ENZYCHROM(商標)NAD+/NADHアッセイキット(E2ND-100)(ロット番号BH01A04)を使用して製造業者のプロトコル(BioAssay Systems、Hayward、California)に従って分析した。
【0140】
結果及び考察
図10に示すように、ニコチニル誘導体のいくつかは、対照と比較して、著しい及び再現可能な増大を示した(細胞内のNAD含有量は、処理化合物の非存在下で測定した)。図10は、100μMの対応するNAD前駆体(ニコチニルリボシド試験化合物)で補充した成長培地中で24時間培養したHepG2細胞内の絶対NAD値(μM)の、対照に対する測定値を示す(細胞内のNAD含有量は、処理化合物の非存在下で測定した)。対照値は、各反復データセットに関して決定した。
【0141】
目下特許請求されている本発明を記載する文脈における(特に特許請求の範囲の文脈における)用語「a」、「an」、「the」、及び同様の指示の使用は、本明細書に特に示されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、単数及び複数の両方を包含すると解釈される。本明細書の値の範囲の引用は、特に本明細書に示されない限り、単に、その範囲内に含まれる別個の各値を個々に参照する簡潔な方法の役割を果たすことが意図され、別個の各値は、該値が個々に本明細書に引用されるが如く、明細書に組み込まれる。用語「約」の使用は、およそ±10%の範囲の、規定値の上方又は下方のいずれかの値を記載することが意図され;別の実施形態では、値は、およそ±5%の範囲の、規定値の上方又は下方のいずれかの値の範囲であり得;別の実施形態では、およそ±2%の範囲の、規定値の上方又は下方のいずれかの値の範囲であり得;別の実施形態では、値は、およそ±1%の範囲の、規定値の上方又は下方のいずれかの値の範囲であり得る。前述の範囲は、文脈によって明らかにされることが意図され、更なる限定は示唆されない。本明細書に記載した全方法は、本明細書に特に示されない限り、又は文脈により明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で行うことができる。本明細書に提供する任意の及び全部の例、又は例示的な言語(例えば、「例えば、~等」)の使用は、特に主張されない限り、単に本発明の理解をより容易にすることを意図し、本発明の範囲に限定を課すわけではない。明細書の言語のいずれも、本発明の実施に不可欠であるとして、特許請求されない任意の要素を示すものとして解釈されるべきではない。
【0142】
前述の明細書において、本発明はその特定の実施形態に関連して記載され、説明を目的として多数の詳細が示されてきたが、本発明は、追加の実施形態を受け入れる余地があり、本明細書に記載した特定の詳細は、本発明の基本的な原理から逸脱することなく大幅に変更され得ることが当業者には明らかであろう。
【0143】
本明細書に引用した全ての参考文献は、それらの全体が参照により組み込まれる。本発明は、本発明の趣旨又は本質的な特性から逸脱することなく他の特定の形態で具体化することができ、従って、特許請求の範囲は本発明の範囲を示すため、前述の明細書ではなく添付の特許請求の範囲を参照するべきである。

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図10