(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】二区画人工膝関節
(51)【国際特許分類】
A61F 2/38 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
A61F2/38
(21)【出願番号】P 2022502936
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(86)【国際出願番号】 IB2020053799
(87)【国際公開番号】W WO2021019313
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】102019000013614
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】522020210
【氏名又は名称】サディーレ フランチェスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100166338
【氏名又は名称】関口 正夫
(72)【発明者】
【氏名】サディーレ フランチェスコ
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】特開昭50-155093(JP,A)
【文献】特開2003-175062(JP,A)
【文献】特開平09-149908(JP,A)
【文献】特開2010-172569(JP,A)
【文献】特表2015-533608(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大腿骨に固定されるように適合された二区画人工膝関節(100,100’)、又は双顆人口関節であって、人工関節(100,100’)は、
内側大腿顆の少なくとも一部を画定するように適合された内側部分(1,1’)と、
外側大腿顆の少なくとも一部を画定するように適合された外側部分(2,2’)と、
前記内側部分(1,1’)及び前記外側部分(2,2’)を互いに一体的に接続する相互接続部分(3,3’)と、を備え、
前記人工関節(100,100’)は、天然の滑車を少なくとも部分的に覆わずに残すように適合された形状であり、
前記人工関節(100,100’)の前記内側部分(1,1’)及び前記外側部分(2,2’)は、それぞれの後方端部(11,21,11’,21’)を含み、前記後方端部(11,21,11’,21’)は、人工関節が移植されて膝が伸展するときに、人工関節(100,100’)の後部となるように定められ、
前記内側部分(1,1’)及び前記外側部分(2,2’)は、それぞれの前方端部(116,116’,216,216’)を含み、人工関節が移植されて膝が伸展するときに、人工関節(100,100’)の前部となるように定められ、
前記内側部分(1,1’)の前記後方端部(11,11’)は、後端(118)を備え、前記外側部分(2,2’)の前記後方端部(21,21’)は、後端(218)を備え、
前記内側部分(1,1’)の前記前方端部(116)は、前端(119)を備え、前記外側部分(2,2’)の前記前方端部(216)は、前端(219)を備え、
同じ軸(X)に沿って、前記内側部分(1,1’)の長さ(d1)が、前記外側部分(2,2’)の長さ(d2)よりも大きく、
これにより、前記人工関節(100,100’)が移植されたときに、前記外側部分(2,2’)の前記前端(219)は、前記内側部分(1,1’)の前記前端(119)よりも遠位であり、
前記軸(X)は、それぞれ、前記後方端部(11,21,11’,21’)の各外表面への接線(t0)に垂直な軸であり、
前記内側部分(1,1’)及び前記外側部分(2,2’)の前記前方端部(119,219)へ
の接線(t1,t2)に垂直な軸である、ことを特徴とする人工関節(100,100’)。
【請求項2】
前記天然の滑車の少なくとも90%を覆わずに残すように適合された形状である請求項1に記載の人工関節(100,100’)。
【請求項3】
前記天然の滑車を完全に覆わずに残すように適合された形状である請求項1又は2に記載の人工関節(100,100’)。
【請求項4】
前記内側部分(1,1’)及び前記外側部分(2,2’)は、前記人工関節(100,100’)の前方部分又は領域に向かって、相互に収束する、請求項1~3のいずれかに記載の人工関節(100,100’)。
【請求項5】
前記内側部分(1,1’)及び前記外側部分(2,2’)は、前記人工関節(100,100’)の前方部分又は領域に向かって、15°~33°、又は、27°~33°の角度で、相互に収束する、請求項4に記載の人工関節(100,100’)。
【請求項6】
前記内側部分(1,1’)、前記外側部分(2,2’)及び前記相互接続部分(3,3’)が、単一のモノリシックコンポーネントを形成する、請求項1~5のいずれかに記載の人工関節(100,100’)。
【請求項7】
前記内側部分(1,1’)の前記長さ(d1)は、前記外側部分(2,2’)の前記長さ(d2)よりも2~4mm又は2.5~3mm大きい、請求項1~6のいずれかに記載の人工関節(100,100’)。
【請求項8】
前記内側部分(1,1’)と前記外側部分(2,2’)とを互いに一体的に接続する相互接続部分(3,3’)を1つのみ備える、請求項1~7のいずれかに記載の人工関節(100)。
【請求項9】
前記人工関節(100,100’)の内表面部分は、前記後方端部(11,21,11’,21’)の内表面に面していない請求項1~8のいずれかに記載の人工関節(100,100’)。
【請求項10】
各前方端部(116,116’,216,216’)は、それぞれの前記後方端部(11,21’,11’,21’)と87°
~90°の角度(β)を形成する、請求項1~9のいずれかに記載の人工関節(100)。
【請求項11】
前記相互接続部分(3)は、前記後方端部(11,21)から遠位にある、請求項1~
10のいずれかに記載の人工関節(100)。
【請求項12】
前記相互接続部分(3’)が前記後方端部(11’,21’)の近位にあり
、前記相互接続部分(3’)が前記後方端部(11’,21’)の間に延びる、請求項1~
10のいずれかに記載の人工関節(100’)。
【請求項13】
前記内側部分(1,1’)の前記長さ(d1)及び前記外側部分(2,2’)の前記長さ(d2)が測定される前記軸(X)が、
前記人工関節(100,100’)が移植されて膝が伸展するときに、前記人工関節(100,100’)の後方領域から前方領域まで延びている、請求項1~
12のいずれかに記載の人工関節(100,100’)。
【請求項14】
前記内側部分(1,1’)の前記長さ(d1)が、3.5~6cmであり、及び/又は、前記外側部分(2,2’)の前記長さ(d2)が、3.1~5.8cmである、請求項1~
13のいずれかに記載の人工関節(100,100’)。
【請求項15】
前記内側部分(1)と前記外側部分(2)との間に、互いに対向する第1入口(311)及び第2入口(312)が設けられ
る、請求項1~
14のいずれか1項に記載の人工関節(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝関節(knee prosthesis)に関する。特に、本発明は、二区画人工膝関節(bicompartmental knee prosthesis)、又は、正確には双顆人工関節(bicondylar prosthesis)に関する。この人工関節は、大腿骨に固定するように適合され、より具体的には、内側の大腿骨部、つまり、膝の内部区画と、外側の大腿骨部、つまり、膝の外部区画とを置換するように適合される。
【背景技術】
【0002】
膝は、大腿骨の遠位端(遠位骨端)、脛骨の近位端(近位骨端)、及び膝蓋骨(kneecap又はpatella)によって形成される関節である。
【0003】
膝は三区画で構成される。(i)大腿骨-脛骨の内側又は内部(medial or internal)の区画、(ii)大腿骨-脛骨の外側又は外部(lateral or external)の区画、(iii)大腿骨と膝蓋骨の間の領域である膝蓋骨大腿骨区画(patellofemoral compartment)である。特に、大腿骨の遠位端には、前頭面と矢状面に大腿顆と呼ばれる2つの凸面がある。一方の凸面を内側又は内部大腿顆と、他方の凸面を外側又は外部大腿顆という。
【0004】
2つの大腿顆の間には、顆間窩と呼ばれる切欠き(notch)がある。
【0005】
大腿骨の遠位端の前方面は滑車(trochlea)と呼ばれ、膝蓋骨に面しており、膝蓋骨大腿骨区画の一部である。滑車は特に顆間窩の上に延びる。
【0006】
靭帯もあり、特に関節を安定させる。
【0007】
現在利用可能な人工膝関節は、整形外科医が十分に確立した信念を反映する。
【0008】
特に現在は、一区画人工関節と三区画人工関節が使用されている。
【0009】
一区画人工関節は、3つの膝の区画のうち1つだけを置換するように適合される。例えば、内側一区画人工関節は、内側区画のみを置換するように適合され、外側一区画人工関節は、外側区画のみを置換するように適合される。
【0010】
三区画人工関節は、3つの膝の区画すべてを置換するように適合される。特に、三区画人工関節は、それぞれの大腿顆を画定する2つの部分と、滑車を画定する追加の部分から構成される。言い換えれば、三区画人工関節は、特に遠位及び後方の両方の顆の部分を超えて、滑車を覆うように又は置換するように適合された部分をも含む。
【0011】
全ての三区画人工関節において、内側顆の高さは外側顆の高さよりも低いことは注目に値する。
【0012】
両方の大腿顆を置換しなければならない病理学的状態では、外科医の選択は、三区画人工関節を使用するか、2つの一区画人工関節を使用するかに限定され、後者は互いに完全に区別され分離される。2つの一区画人工関節を使用すれば、いわゆる「バイモノ」人工関節インプラント(“bi-mono” prosthetic implant)が得られる。
【0013】
しかし、この両方の解決策はいくつかの欠点を有する。
【0014】
非常に頻繁に、外科医の選択は、たとえ滑車が実質的に健康である場合でも、三区画人工関節のインプラントにいきつく。そのため、三区画人工関節のインプラントは、不利なことに、健康な滑車の切除を意味する。
【0015】
一方、一区画人工関節を2つ埋め込むのは非常に複雑であるため、外科医は三区画のものを選択する。
【0016】
さらに、2つの一区画人工関節のインプラントは、膝関節が受ける力の全体的なバランスに有害な不均衡を生じさせる。三区画人工関節と2つの一区画人工関節の両方のインプラントは、特にいくつかの膝関節症の場合、より具体的には膝蓋骨大腿骨区画が進行中の病理にさらされていないときの原始的(特発性)膝関節症の場合には、不十分である。
【0017】
しかし、前述したように、現在の科学的な信念は、インプラントの選択を三区画人工関節又は2つの一区画人工関節に限定する。
【0018】
したがって、先行技術の欠点や偏見を克服した人工膝関節の必要性が感じられる。
【発明の概要】
【0019】
本発明の目的は、骨組織を保護し、膝関節をよりよく復元することができる、内側及び外側大腿顆を置換するための人工膝関節を提供することである。
【0020】
特に、本発明の目的は、健康な滑車をできる限り保存することである。
【0021】
また、本発明の他の目的は、膝関節の全体的なバランスを良くすることができる人工関節を提供することである。
【0022】
本発明の他の目的は、容易に移植できる人工関節を提供することである。
【0023】
本発明は、次の手段により、そのような目的の少なくとも1つ、及び本明細書の説明に照らして明らかになる他の目的を達成する。大腿骨に固定されるように適合された膝の二区画人工関節、又は双顆人口関節であって、二区画人工関節は、
内側大腿顆の少なくとも一部を画定するように適合された第1部分と、
外側大腿顆の少なくとも一部を画定するように適合された第2部分と、
第1部分及び第2部分を互いに一体的に接続する相互接続部分と、を備え、
二区画人工関節は、天然の滑車を少なくとも部分的に覆わずに残すように適合された形状であり、同じ軸に沿って、第1部分の長さ、特に第1部分の最大長が、第2部分の長さ、特に第2部分の最大長よりも大きい。言い換えれば、第2(つまり外側)部分の長さは、第1(つまり内側)部分の長さよりも小さい。
【0024】
特に、第2部分の前方端部は、第1部分の前方端部よりも低い。言い換えれば、第1部分の前方端部は、第2部分の前方端部に対して突出する。
【0025】
本発明の人工関節は、特に、3つの膝の区画のうち2つのみ、つまり内側区画と外側区画とを置換するように適合されており、より具体的には、内側大腿顆のみと外側大腿顆のみとを置換するように適合されている。本発明の人工関節は、少なくとも三区画人工関節とは大きく異なり、三区画人工関節は、滑車を置換するように適合された部分をさらに含み、本発明の人工関節は、滑車を置換するように適合された部分を含まず、好ましくは、膝蓋骨を置換するように適合された部分を含まないが、膝蓋大腿骨人工関節とも呼ばれる一区画の膝蓋骨人工関節と協働することができる。好ましくは、本発明による人工関節は、滑車を置換するのための他の人工関節に接続されないように設計される。特に、滑車人工関節との接続手段のためのグラフトゾーン(grafting zones)を供さない。
【0026】
また、人工関節は、「バイモノ」人工関節インプラント、つまり2つの一区画人工関節からなるものとは大きく異なり、これらは完全に別個であり、互いに独立して移植されるからである。
【0027】
本発明の人工関節の前述の第1及び第2部分は、それぞれ、内側部又は内側顆部、及び外側部又は外側顆部とも呼ばれる。
【0028】
内側部、外側部、及び相互接続部分は、単一の大腿顆カーター(femoral condylar carter)を形成する。
【0029】
有利には、単一の人工関節(つまり、単一のコンポーネント)を用いて、人工関節の当該内側部によって内側大腿顆の遠位及び後方の骨軟骨切除部(osseocartilaginous resections)を置換でき、人工関節の当該外側部によって外側大腿顆の遠位及び後方の骨軟骨切除部を置換できる。
【0030】
人工関節は、確かにモノリシックであり、つまり、単一のコンポーネントを形成する。特に、内側顆部、外側顆部、及びそれらを結合する相互接続部分は、相互に一体化され、統合されている。
【0031】
人工関節は、有利には、天然の(native)滑車、特に健康な天然の滑車の切除を回避し、せいぜい、任意に、滑車間溝(intertrochlear groove)のそのより遠位又は下の部分のみを切除できる。
【0032】
特に、有利なことに、人工関節は、以下でより具体的に説明されるように、滑車の下外側部(又は下外側滑車部分)の切除を回避する。
【0033】
相互接続部分(又は接続部分)は、顆間セクション又は部分とも呼ばれる。特に、相互接続部分は、例えば、前方又は後方の顆間部分であり得る。
【0034】
有利には、相互連結部は、例えば金属製の補強材として機能し、歩行(gait)、歩行(walking)、走行の全ての段階で発生する全ての応力、特に剪断力、顆の非対称な圧縮力、及び同期しない転がり及び滑り運動によって生じる力を吸収するように適合されている。
【0035】
有利には、相互連結部は、膝蓋大腿関節と衝突しない。特に、好ましくは、相互連結部は、膝蓋骨と大腿骨の間の関節と全く衝突しないか、又は、特にその下の滑車顆の溝からなる限界のみ干渉し、滑車の切除後に滑車軟骨と大腿顆カーターの間の連続体(つまり人工関節)を形成する。
【0036】
有利には、内側部と外側部は好ましくは非対称である。
【0037】
有利には、同一軸線(同一軸線に平行である)に沿って、第1部分の長さ、特に第1部分の最大長さが、第2部分の長さ、特に第2部分の最大長さよりも大きくなっている。言い換えれば、有利には、内側部が外側部よりも長い。特に、本発明の人工関節の内側部と外側部との間の前述の長さの差は、外側の下滑車部分も保存することを可能にするので有利である。
【0038】
解剖学的には、外側の滑車部分は、その遠位又は下位の拡大において、又は下方及び後方の前後進方向において、内側のものよりも幅が広い。したがって、本発明による人工関節では、健常な外側滑車部のすべて又は実質的にすべてに介入することは避けられ、したがって、前位及び下位の両方で外側に保存される。
【0039】
有利なことに、本発明による人工関節を移植した後、膝蓋骨と大腿骨の間の関節を最良の方法で復元することができる。
【0040】
特に、大腿骨と膝蓋骨の間の関節は、外側顆の部分だけが、その外側滑車部分を変更することなく置換されるので、尊重される。
【0041】
したがって、本発明の人工関節の有利な技術的効果は、両方の顆を効果的に、特に完全に置換することを可能にし、同時に、外側下滑車部分、より一般的には天然の滑車の切除を最小限にし、特に回避することである。
【0042】
好ましくは、内側部と外側部の間の長さ、又は高さの差は、2~4mm、好ましくは2.5~3mmである。
【0043】
本発明の人工関節は、特に膝蓋大腿骨区画が進行中の病理にさらされていないとき、原始的(特発性)膝関節症の場合に適するが、それだけではない。
【0044】
有利には、本発明の人工関節は、他のカルダン拘束(cardan constraint)の実施を必要とせずに、骨軟骨性摩耗によって誘発されるあらゆる病理学的変化をあらゆる意味で是正するものであり、再表面化のみの人工関節ではなく、及び/又は、回転プレートを有するLCS人工関節の場合のように、摩耗補正の緩和ではない。
【0045】
本発明の人工関節は、特に、金属製の滑車シールド(三区画人工関節の大腿骨カーターに存在する)と膝蓋軟骨との間の不一致及び/又はハイブリッド結合を排除する、又は、金属製の大腿骨シールド(現在、米国では義務化されている)に対するポリエチレン製の膝蓋骨人工関節ボタンの必要性を排除し、その結果、全人工膝関節(TKP)に存在すると世界の文献で報告されている膝蓋骨の合併症のうち、平均で30%を完全に、又は大幅に解消することになる。
【0046】
好ましくは、すべての実施形態において、第1部分と第2部分とは、特に人工関節の前方部分又は領域に向かって、好ましくは15°~33°、例えば27°~33°の角度で相互に収束する(converge)。より具体的には、第1部分の長手方向軸と第2部分の長手方向軸は、好ましくは15°~33°の角度で、例えば27°~33°の角度で、相互に収束する。
【0047】
第1部分と第2部分とが相互に収束することは、膝の解剖学的構造がよりよく尊重されるので、特に有利である。
【0048】
本発明の人工関節の特徴-特に、内側顆部と外側顆部との間の接続、天然の滑車を少なくとも部分的に覆わずに残すように適合された形状、内側部と外側部との間の長さの差、及びそれらの好ましい収束-は、相乗的に、天然の滑車、特に天然の下外側滑車部分の保存に加えて、さらなる利点にもつながるものである。
【0049】
特に、前述したように、本発明の人工関節は、膝蓋大腿関節の置換を伴わない。言い換えれば、本発明の人工関節は、ほとんど膝蓋大腿関節を尊重しており、外側顆の高い方に対する内側顆の非対称な遠位の天然の構造を全く変更しない。このような構造は、角度とミリメートル単位の差という2つの方法で定量化できる。角度の値は、正しくは、後方から、内側と外側と、それぞれ、呼ばれる大腿骨の遠位端を全体的に意図する滑車領域前方と顆を接線方向に測定することによって得られる。同じ条件で、後方の顆の直線の接線に対して、滑車の頂点に平行な2つの接線の間で、高さのミリ単位の差を計算する。有利なことに、計算の類似性により、本発明の人工関節の前後方向のミリ単位の高さ又は角度の大きさの非対称性は、ジョン・インソールによって記述される-そして、現在使用されているすべての三区画人工関節モデルに存在するか、採用されているか、又は含まれる-長方形の切除形状と比較すると、むしろ台形の切除形状を「実質的に」作り出す。この幾何学的な形状は、必要に迫られて、しかし望まれて、全体として顆の非対称な切除から生じる。この目的のために、内側と外側の滑車の間に、それ自体の非対称の最適な天然のバランスを達成するように計算される。言い換えれば、2つの人工関節の構造的な非対称性は、内側の滑車の頂点に関連して、水平面上で、測定したときに、大腿骨の遠位端のセンチメートル単位の天然の非対称性を回復及び/又は尊重するために必要であり、この非対称性は、外側の非対称性と比較して低く又は減少し、特に2~4mm又は2.5~3mmの前述の差の場合、高く又は大きい。
【0050】
内側顆をより高い又はより広い方法で切除し、外側顆をより低い又はより少ない方法で切除した場合、大腿骨の遠位端の天然の非対称性は、全体として、尊重され、又は、別の言い方をすれば、設計上、前後面において、内側顆をより高く又はより広く、外側顆をより低く又はより少なく延ばす本発明のような人工関節を採用する。これらはすべて、有利なことに、天然の形を復元又は忠実に再現し、大腿骨の遠位端全体を天然の形で新規に再構築する。
【0051】
本発明の人工関節は、大腿四頭筋の解剖学的構造と機能を完全に尊重する。それは、絶対的なガウス正規性について、内側顆と外側顆の間の関係を正常さに尊重し、及び/又は戻す。下肢の正常な位置合わせアライメントを完全に尊重する。それは、3次元空間において、前頭又は矢状の病的な弛緩を生じることなく、いわゆるハイフレックス人工関節のように、人工関節自体に内在する構築的な人工物(artifacts)をさらに伴わず膝の全生理的屈曲を回復させて、下肢の正常なガウスグローバル軸を尊重及び/又は回復する。
【0052】
さらに、特に相対的に侵襲性が低く、近位の膝蓋骨及び大腿骨の組織を切除する必要がないことから、本発明の人工関節は、術後の痛みや出血を軽減でき、その結果、変形性膝関節症のあらゆる病的形態、主にいわゆる「特発性」又は原始的起源(現在存在する形態の大部分)のものだけでなく、多発外傷、感染症、及び遺伝的、先天的、及び/又は多因子的起源の重篤な形態変化の二次的形態に対してより良い生活の質を提供することができる。
【0053】
人工関節のサイズは、例えばコンピュータ化されたモードで、カスタマイズでき、及び/又はロボットを使って人工関節を移植できる。
【0054】
本発明の人工関節は、三区画又は2つの一区画又はモノ区画(monocompartmental)又はいわゆるバイモノ人工関節と比較して、移植が容易である。
【0055】
インプラントは、意図的で危険な内側の除去をせずに有利に行うことができる。
【0056】
本発明の人工関節は、任意の固定システムによって大腿骨に固定することができる。例えば、非平滑な表面であってもセメントタイプ;非セメント;ハイブリッド、特に混合された固定システム、例えば、非セメントテーパーと「セメントワイヤー」セメント表面;任意でビタミンE及び/又はチタン又はスチールの補強材(又は補強要素)を加えた架橋ポリ;架橋又は粉末のチタン(T-pore);追加のネジ及び/又は溝及び/又はスロット及び/又は様々な拡張部を有する又は有さないタンタル粉末;「オールポリ」テーパー及び/又はコーティングされたハイドロキシアパタイト(FIA)及び/又はハイドロキシアパタイト(FIA)でコーティングされた再吸収性及び非再吸収性ネジ。
【0057】
本発明の人工関節は、基本的にCR(cruciate retaining、十字靭帯保持)タイプであり、つまり、後十字靭帯(posterior cruciate ligament、PCL)の保存が可能であるが、その移植は、実質的にどのような方法でもPCLの犠牲及び/又は置換及び/又は代替が可能であり、したがって、PS(posterior stabilized、後方安定化)タイプであってもよい。
【0058】
本発明の人工関節は、有利なことに、特に生物力学的に言えば、膝を正常に戻すことができる。
【0059】
本発明の人工関節は、固定ペグの長さを短くし、移植のための器具の数や大きさを減らすことができ、一般的に、コストや移植時間を全体的に削減できる。
【0060】
さらに、人工関節は、軟骨の摩耗の原因を低減及び/又は除去することができ、これにより、その後の人工関節用ポリエチレンの摩耗の原因に非常に良い効果-低減及び/又は除去-をもたらす;トライボロジー機能を向上させる;人工膝関節の確実な早期普及を達成する(特に、約40歳の発症時);その後の再置換を容易にする;インプラント技術を指導の下で一度に向上させ、アプリケーション手段によるオンラインのコンピュータ化された、又はソフトウェアで指導された遠隔支援により、専門家のいないインプラントを可能にする;インプラント手術を迅速化し、手術中及び手術後の合併症を軽減する。
【0061】
本明細書では、「前方(anterior)」及び「後方(posterior)」という用語は、膝が伸展するときに移植された人工関節を参照して使用される。起立状態では、「前方」の部分は下になり、「後方」の部分は後ろのままである。
【0062】
本発明のさらなる特徴及び利点は、排他的ではないが好ましい実施形態の具体的な説明に照らして、より明らかになるであろう。
【0063】
従属請求項は、本発明の特定の実施形態を説明する。
【0064】
本発明の説明は、非限定的な例として提供されている添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】本発明による左の人工膝関節の一例の斜視図を示す。
【
図8】本発明による左の人工膝関節の別の例の前方側の斜視図である。
【
図9】
図8の人工関節の別の側面、特に後面の斜視図である。
【
図10】
図1の人工関節を移植した状態の想像図(phantom)である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
同じ要素又は部品には、同じ参照符号が付けられている。
【0067】
本発明による二区画人工関節100,100’、又はより具体的には双顆人工関節100,100’の例を、図を参照して説明する。
【0068】
特に、
図1~7は、左の人工膝関節100の第1例を示し、
図8及び9は、左の人工膝関節100’の第2例を示す。
【0069】
左の人工膝関節が示されているが、本発明は右の人工膝関節にも関する。当業者であれば、この説明を踏まえて、本発明による右の人工膝関節を構築することができるだろう。
【0070】
本発明の人工関節100,100’は、特に、人間に移植されるように構成された人工関節である。
【0071】
本発明の人工関節100,100’は、特に、大腿骨コンポーネント又は大腿骨カーターとも呼ばれる大腿骨の人工膝関節である。
【0072】
すべての実施形態において、大腿骨に固定されるように適合された二区画人工膝関節100,100’であって、
-内側又は内部大腿顆、特に内側又は内部大腿顆を完全に又は部分的に(つまり、少なくとも一部を)画定するように適合された第1部分1,1’と、
-外側又は外部大腿顆、特に外側又は外部大腿顆を完全に又は部分的に(つまり、少なくとも一部を)画定するように適合された第2部分2,2’と、
-第1部分1,1’及び第2部分2,2’を互いに一体的に接続する相互接続部分3,3’と、を備え、
二区画人工関節100,100’は、天然の滑車の少なくとも一部を覆わずに残すように適合された形状である。
【0073】
人工関節100,100’は、3つの膝区画のうちの2つ、つまり内側大腿区画及び外側大腿区画、特に下及び後方を置換する、特に置換することだけに適合されているため、二区画と画定される。
【0074】
好ましくは、人工関節100,100’は、天然の滑車の少なくとも90%、例えば90%~100%を覆わずに残すように適合された形状、又は構成である。言い換えれば、人工関節100,100’が移植されると、滑車表面の全て又は大部分は人工関節100,100’によって覆われず、滑車のより小さな部分のみが任意に人工関節100,100’によって覆われる。特に、滑車のより遠位又は下の部分のみ、より具体的には、前下方の滑車間溝の周囲に3又は4mmまで延びる部分が、人工関節100,100’、特に人工関節100によって任意に覆われる。
【0075】
特に、
図1~7に示す人工関節100は、滑車(又は滑車表面)の少なくとも90%、例えば約90%を覆わずに残すように形成される。言い換えれば、人工関節100は、最大でも10%を覆っており、例えば、10%の滑車を覆う。ただし、図示しない変形例では、人工関節100は、天然の滑車を完全に(つまり100%)覆わずに残すような形状になっている。
【0076】
図8及び9に示される人工関節100’は、特に、天然の滑車を完全に(つまり100%)覆わずに残すように適合された形状である。しかし、図示されていない変形例では、人工関節100’は、100%未満の滑車を、好ましくは少なくとも90%の滑車を覆わずに残すように形成される。
【0077】
人工関節100,100’は、互いに対向する外表面と内表面とを備える。内表面は、特に、大腿骨に面するように定められている。
【0078】
好ましくは、第1部分1,1’及び第2部分2,2’は、それぞれ6~8mmの厚さを有する。このような厚さは、特に、第1部分1,1’の内表面と第1部分1,1’の外表面との間の距離であり、第2部分2,2’についても同様である。
【0079】
第1部分1,1’の外表面は、内側大腿顆の少なくとも一部を画定するように適合され、第2部分2,2’の外表面は、外側大腿顆の少なくとも一部を画定するように適合されている。
【0080】
したがって、第1部分1,1’の外表面及び第2部分2,2’の外表面は、少なくとも部分的に凸状であり、特に主として又は完全に凸状であり、より具体的には、2つの前頭面及び矢状面上で凸状である。
【0081】
第1部分1,1’は、特に、内側大腿顆の切除を少なくとも部分的に覆うように適合されており、第2部分2,2’は、特に、外側大腿顆の切除を少なくとも部分的に覆うように適合されている。
【0082】
第1部分1,1’及び第2部分2,2’は、後部(posterior parts)又は後方端部(posterior end parts)とも呼ばれるそれぞれの端部11,21,11’,21’を含んでいる。2つの端部11,21,11’,21’は、人工関節100,100’が移植されたときに後部となるよう定められ、特に膝が伸展するときに後方になる。第1部分1,1’及び第2部分2,2’は、それぞれの前部(antiterior parts)116,216,116’,216’、又は、前方端部(antiterior end parts)をさらに含んでいる。2つの端部116,216,116’,216’は、人工関節100,100’が移植されたときの前部となるよう定められ、特に膝が伸展するときに前方になる。一般的に、人工関節100,100’が移植されるとき、2つの端部116,216,116’,216’は、滑車に対して近位になるように定められており、2つの端部11,21,11’,21’は、滑車に対して遠位になるように定められている。したがって、端部116,216,116’,216’は、滑車に関して「近位部」と名付けられてもよく、端部11,21,11’,21’は、滑車に関して「遠位部」と名付けられてもよい。
【0083】
後方端部11,11’と前方端部116,116’との間に延びる第1部分1,1’の部分は、参照符号114,114’で示される(
図6、7及び9)。
【0084】
第2部分2,2’の部分のうち、後方端部21,21’と前方端部216,216’との間に延びる部分は、参照符号214,214’で示される(
図6,7及び9)。
【0085】
部品114,114’,214,214’は、フランス語でchanfreins(面取り)とも呼ばれる。
【0086】
軸Xに沿って、第1部分1,1’は、参照符号d1(
図3及び4)で示される長さ、特に最大長さを有する。同じX軸に沿って,第2部分2,2’は、参照符号d2で示される長さ,特に最大長さを有する。
【0087】
長さd1は、有利には、長さd2よりも大きい。好ましくは、長さd1と長さd2との間の長さの差は、2~4mm、好ましくは2.5~3mmである。言い換えれば、内側部である第1部分1,1’は、外側部である第2部分2,2’の長さd2よりも大きい長さd1、又は高さを有する。
【0088】
有利なことに、上記で説明したように、このような長さの差は、滑車の下外側部(つまり、天然の外側下滑車部分)の保存を可能にし、本発明による人工関節を移植した後の膝蓋大腿関節の最良の復元を可能にする。
【0089】
特に、第2部分2,2’の前方端部216,216’は、第1部分1,1’の前方端部116,116’よりも低い。言い換えれば、第1部分1,1’の前方端部116,116’は、第2部分2,2’の前方端部216,216’に対して突出する。
【0090】
好ましくは、長さd1は3.5~6cm(つまり35~60mm)、及び/又は、長さd2は3.1~5.8cm(つまり31~58mm)である。
【0091】
2つの長さd1,d2がそれに沿って測定される軸Xは、特に、端部11,21,11’,21’の外表面への接線t0と、第1部分1,1’及び第2部分2,2’それぞれの前方端部119,219への接線t1,t2とに直交する軸である。特に、この軸Xは直線である。この接線t1及びt2は、互いに異なる。この接線t0,t1,t2、又は接線は、互いに平行であることが好ましい。
【0092】
より具体的には、第1部分1,1’について、端部11,11’の後端118における接線t0と、第1部分1,1’の前端119における接線t1とが考えられる。
【0093】
同様に、第2部分2,2’については、端部21,21’の後端218での接線2Tと、第2部分2,2’の前端219での接線t2が考慮される。
【0094】
好ましくは、排他的ではないが、接線t0は、後方端部11,11’と後方端部21,21’の両方の接線である。この場合、後方端部11,11’と後方端部21,21’は実質的に同じレベルにある。
【0095】
好ましくは、前端119及び前端219は、特に外側に向かって、凸状又は少なくとも部分的に凸状である。
【0096】
前端119及び前端219は、それぞれ、第1部分1,1’及び第2部分2,2’の端縁を画定し、この縁は、凸状又は少なくとも部分的に凸状である。
【0097】
より一般的に言えば、好ましくは、2つの長さd1,d2が測定される軸Xは、特に膝が伸展するときに、人工関節の後方領域から前方領域へと延びる。特に、人工関節100,100’の後方領域は、後方端部11,21,11’,21’から構成され、前方領域は、前方端部116,216,116’,216’から構成されている。
【0098】
好ましくは、第1部分1,1’及び第2部分2,2’は、特に人工関節100,100’の前方部分又は領域に向かって、好ましくは15°~33°、例えば27°~33°の角度で相互に収束する。より具体的には、第1部分1,1’の長手方向軸と第2部分2,2’の長手方向軸とは、好ましくは15°~33°の角度、例えば27°~33°の角度で収束する。
【0099】
第1部分1,1’と第2部分2,2’とが収束することは、膝の解剖学的構造が最も尊重されるので、特に有利である。
【0100】
第1部分1,1’、第2部分2,2’及び相互接続部分3,3’は、単一のモノリシックコンポーネント(monolithic component)を形成する。
【0101】
好ましくは、人工関節100,100’は、金属及び/又はポリマー材料でできている。例えば、人工関節100,100’は、鋼又はチタンで作られる。好ましくは、人工関節100,100’は、Cr-Co-Mo合金、任意にニッケルフリーで作られる。また、人工関節100,100’は、例えば、ポリエチレン等のポリマー材料で作られ、例えば、鋼又はチタンで作られた金属製の内側コア(inner core)を有することができる。
【0102】
相互接続部分3,3’は、第1部分1,1’及び第2部分2,2’に対して、特に横方向に延びている。
【0103】
好ましくは、第1部分1,1’と第2部分2,2’とを互いに一体的に接続する1つの相互接続部分3,3’のみが設けられている。
【0104】
第1部分1,1’と第2部分2,2’との間の隙間の残りの部分は、好ましくは空である。
【0105】
相互接続部分3,3’は、好ましくは3~8mm、例えば5~8mm又は3~5mm又は3~6mmの厚さ(例えば
図8に参照符号「s」で示す)を有する。
【0106】
特に、相互接続部分3の厚さは、好ましくは5~8mmであり、相互接続部分3’の厚さ「s」は、好ましくは3~5mm又は3~6mmである。
【0107】
厚さは、相互接続部分3,3’の内表面及び/又は外表面に、特に直交する横軸に沿って測定される。言い換えれば、相互接続部分3,3’の厚さは、実質的に、相互接続部分3,3’の内表面と外表面との間の距離に対応する。
【0108】
任意で、相互接続部分3,3’の内表面は、凸状であり、好ましくは、より大きな構造的強度を提供する厚さを有する。例えば、相互接続部分3の内表面は、球形のキャップ状、例えば、半球状の部分から構成されていてもよい。
【0109】
相互接続部分3’は、例えば、平行六面体のような形状にすることができ、この場合、好ましくは、厚さ「s」は、3~5mmであり、又は、円筒のような形状にすることができ、この場合、好ましくは、厚さ「s」は、3~6mmであり、円筒の直径に対応する。
【0110】
相互接続部分3,3’は、高さd3,d3’(
図3及び8)を有し、特に、厚さに対して垂直方向に、好ましくは、4~16mm、例えば、8~16mm又は4~8mmである。
【0111】
特に、相互接続部分3は、好ましくは、8~16mmの高さd3を有し、相互接続部分3’は、好ましくは、4~8mm(例えば、平行六面体形状の場合)又は3~6mm(例えば、円柱形状の場合)の高さd3’を有する。
【0112】
図1~7に示す例では、相互接続部分3は、端部11,21から遠ざかっている。特に、好ましくは、相互接続部分3は、2つの前方端部116,216の間に延びており、好ましくはそれらを接合する。好ましくは、この例では、高さd3(
図3)は、長さd1及びd2が測定されるのと同じ軸Xに沿って測定される。
【0113】
好ましくは、この例では、相互接続部分3は、滑車間溝の高軟骨接続空間を、占有するように定められている。特に、相互接続部分3は、好ましくは、膝蓋大腿関節と衝突しないように、又は、せいぜい、顆-滑車軟骨溝(osseocartilaginous sulcus)からなる制限、又はその下で、特に、切除後に、滑車軟骨と人工関節100との間の連続性を維持するように適合される。
【0114】
好ましくは、第1部分1と第2部分2との間には、互いに対向する2つの入口311、312、又は溝がある。
【0115】
入口311は、特に、滑車間溝の、特にその前部及び下部の曲線的なコースに沿うように形成される。
【0116】
入口312は、特に、大腿骨の近位(anteromedial、前内側)にある挿入部の後十字靭帯(PCL)と衝突しないように形成される。
【0117】
入口311は、相互接続部分3の表面部分31によって少なくとも部分的に画定され、入口312は、相互接続部分3の別の表面部分32によって少なくとも部分的に画定される。表面部分31と表面部分32とは、互いに対向する。表面部分31は、実質的に凹んでおり、及び/又は、表面部分32は、実質的に凹んでいる。好ましくは、表面部分31、32は、反対側の凹みを有し、好ましくは、非対称である。この例では、前述の高さd3は、相互接続部分3の表面部分31と表面部分32との間の距離に対応し、好ましくは、8~16mmである。
【0118】
図8及び9に示す例では、相互接続部分3’は、端部11’,21’に近接する。特に好ましくは、相互接続部分3’は、端部11’,21’の間に延び、特に、それらを結合する。
【0119】
全ての実施形態において、好ましくは、人工関節100,100’は、人工関節100,100’を大腿骨に固定するための少なくとも2つの固定ペグ41,42,43,44を備える。特に、第1部分1,1’及び第2部分2,2’はそれぞれ、少なくとも1つの固定ペグ41,42,43,44を含んでいる。
【0120】
好ましくは、第1部分1,1’には2つの固定ペグ41,42が設けられ、第2部分2,2’には2つの固定ペグ43,44が設けられる。
【0121】
第1部分1,1’を参照すると、ペグ42は端部11,11’に近位であり、ペグ41は端部11,11’から遠位である。好ましくは、ペグ42は部分114,114’(
図4、6、7及び9)の内表面から延びており、好ましくは、ペグ41は前方端部116,116’の内表面から延びている。
【0122】
第2部分2,2’を参照すると、ペグ44は端部部分21、21’に近位であり、ペグ43は端部部分21、21’から遠位である。
【0123】
好ましくは、ペグ44は、部分214、214’の内表面から延びており、好ましくは、ペグ43は、前方端部216、216’の内表面から延びている。
【0124】
ペグ41及びペグ42は、好ましくは互いに平行であり、ペグ43及びペグ44は、好ましくは互いに平行又は実質的に平行である。好ましくは、ペグ41、42、43、及び44は、互いに平行である。
【0125】
各ペグ41,42,43,44は、人工関節100,100’の内表面から横方向に延びている。特に、好ましくは、ピン42は、それが延びる表面と、例えば、25°~30°の鋭角α(
図4)を形成し、当該鋭角は、端部11,11’に近接する。同様に、ペグ44は、それが延びる表面と、例えば、25°~30°の鋭角を形成し、当該鋭角は、端部21,21’に近位である。好ましくは、各ペグ41,42,43,44は、8~12mm、例えば、10mmに等しい、又は約10mmの長さを有する。ペグ41,42,43,44の長さは、人工関節100,100’の内表面にあるその基部から、人工関節100,100’の内表面からのその遠位端で測定される。
【0126】
各ペグ41,42,43,44の厚さ、又は直径は、好ましくは4~8mmであり、例えば、約5mmである、又は5mmに等しい。
【0127】
ペグ41,42,43,44は、様々な形状を有していてもよく、例えば、円筒形、モーステーパー、又は、複数のフランジを有していてもよく、例えば、3つ、4つ、5つ、又はそれ以上のフランジを有していてもよい。
【0128】
全ての実施形態において、好ましくは、人工関節100,100’の内表面部分は、端部11,21,11’,21’の内表面に面していない。特に、第1部分1,1’の内表面のいかなる部分も、端部11,11’の内表面に面しておらず、第2部分2,2’の内表面のいかなる部分も、端部21,21’の内表面に面していない。ペグ41,42,43,44(例えばペグ42、44)のみは、任意に、端部11,11’及び端部21、21’にそれぞれ面していてもよい。好ましくは、後方端部11,11’の内表面は、前方端部116,116’(
図4)の内表面と87°以上の角度βを形成し、例えば、87°~90°又は87°~89°又は88°~90°又は88°~89°の角度を形成する。
【0129】
当該角度βは、特に、その頂点が外側の表面の近位にあり、したがって、人工関節100,100’の内表面から遠位にある。同様に、端部21、21’の内表面も、前方端部216、216’の内表面と、87°以上の角度、例えば、87°~90°又は87°~89°又は88°~90°又は88°~89°、好ましくは当該角度βと等しい又は実質的に等しい角度を形成する。
【0130】
前述の角度の幅は、特に、有利には、各部分1,1’,2,2’に対して2つの固定ペグ41,42,43,44の存在を可能にする。各部分1,1’,2,2’に対して2つの固定ペグ41,42,43,44が存在することにより、有利には、限られた長さのペグ41,42,43,44を得ることができる。
【0131】
すべての実施形態において、好ましくは、第1部分1,1’の外表面の曲率半径は、前頭面と矢状面の両方に正面的にも実質的に一意であり、好ましくは、2.2~2.6cmの平均値、例えば、約2.5cmの値を有する。第2部分2,2’についても同様である。
【0132】
任意で、各端部11,11’,21,21’の外表面の一部のみが、第1部分1,1’の残りの部分及び第2部分2,2’の曲率半径とは異なる、特に小さい曲率半径を有する。
【0133】
本発明による人工関節100の重要な利点は、移植された左の人工関節の想像図が示されている
図10で理解することができる。同様の結果は、人工関節100’によって達成することができる。
【0134】
特に、第2部分2の前方端部216が、(上記で説明したように)第1部分1の前方端部116よりも遠位の高さ又はレベルにあることは注目に値する。
【0135】
滑車は、参照符号300で示される。
【0136】
滑車300のドーム301は、第1部分1にあり、滑車300のドーム302は、第2部分2にある。
【0137】
有利には、人工関節100は、ドーム302をドーム301よりも高い高さ又はレベルに保つことができる。これは、実際に膝の自然な解剖学的構造が尊重されるので、特に有利である。
【0138】
一方で、すべての既知の人工関節、特に三区画人工関節は-一度人工関節が移植されると-ドーム301がドーム302と同じかそれ以上の高さになるという望ましくない不利なリスクを意味する(世界の科学文献で広く報告されているように、人工関節の再置換の少なくとも30%を引き起こす状態である)。