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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】ゴム配合用樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20240523BHJP
   C08L 57/00 20060101ALI20240523BHJP
   B60C 5/14 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L57/00
B60C5/14 A
B60C5/14 Z
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2022524222
(86)(22)【出願日】2020-12-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2020019433
(87)【国際公開番号】W WO2021137631
(87)【国際公開日】2021-07-08
【審査請求日】2022-04-25
(31)【優先権主張番号】10-2019-0179171
(32)【優先日】2019-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ヘ ミン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュン ソク
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003296(JP,A)
【文献】特開2018-012818(JP,A)
【文献】国際公開第2018/143379(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0144643(US,A1)
【文献】特開2009-024101(JP,A)
【文献】特開2019-178190(JP,A)
【文献】特開平08-048723(JP,A)
【文献】特開平11-130820(JP,A)
【文献】特開2013-047037(JP,A)
【文献】特開2014-024922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00 - 2/60
C08K 3/00 - 13/08
C08L 1/00 - 101/14
B60C 1/00 - 19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴムと配合するための樹脂組成物であって、
少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂の両末端のうちの少なくとも一末端に、チオール基(-SH)を含む分子量調節剤が結合されている構造を有する改質重合体と、
粘度調節剤とを含むことを特徴とするゴム配合用樹脂組成物。
【請求項2】
前記石油樹脂は、C単量体由来の反復単位を含むことを特徴とする請求項1に記載のゴム配合用樹脂組成物。
【請求項3】
前記C単量体由来の反復単位は、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、スチレン、ジシクロペンタジエン、インデン及びメチルインデンを含むことを特徴とする請求項2に記載のゴム配合用樹脂組成物。
【請求項4】
前記分子量調節剤は、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、フェニルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオールグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプト)プロピオネート、及び、これらの2種以上の混合物のうちから選択されたことを特徴とする請求項1に記載のゴム配合用樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂組成物は、
数平均分子量が200ないし500であり、
ガラス転移温度が-25℃ないし-15℃であることを特徴とする請求項1に記載のゴム配合用樹脂組成物。
【請求項6】
前記粘度調節剤は、粘度(25℃)が20ないし500cpsである低粘度液状樹脂であることを特徴とする請求項に記載のゴム配合用樹脂組成物。
【請求項7】
前記低粘度液状樹脂は、水添ジシクロペンタジエン(DCPD)-C共重合体樹脂(hydrogenated DCPD-C copolymer resins)、水添DCPD(hydrogenated DCPD resins)、及びこれらの混合物のうちから選択されたことを特徴とする請求項に記載のゴム配合用樹脂組成物。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、60℃で測定された粘度が2,000ないし4,000cpsであり、
芳香族性が30%ないし50%であることを特徴とする請求項に記載のゴム配合用樹脂組成物。
【請求項9】
前記樹脂組成物は、前記改質重合体と前記粘度調節剤とを、それぞれ80ないし98重量%、及び2ないし20重量%で含むことを特徴とする請求項に記載のゴム配合用樹脂組成物。
【請求項10】
原料ゴム、及び請求項1に記載のゴム配合用樹脂組成物を含むゴム組成物であり、
前記原料ゴム100重量部を基準に、前記樹脂組成物5ないし25重量部を含むことを特徴とするゴム組成物。
【請求項11】
前記ゴム組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、均質剤1ないし8重量部、補強剤20ないし80重量部、及び加硫助剤0.1ないし10重量部を含むことを特徴とする請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項12】
前記ゴム組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、硫黄0.1ないし2重量部、及び加硫促進剤0.5ないし5重量部を追加で含むことを特徴とする請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項13】
前記ゴム組成物は、ゴム試片に製造した後、KS M ISO 2556の方法で測定された気体透過度が、90cm/(m・day・atm)以下であることを特徴とする請求項10に記載のゴム組成物。
【請求項14】
請求項10ないし13のうちのいずれか1項に記載のゴム組成物を利用したことを特徴とするタイヤインナーライナー。
【請求項15】
ゴムと配合するための樹脂組成物の製造方法であって、
留分に由来する1つ以上の単量体、C留分に由来する1つ以上の単量体、環状ジオレフィン単量体、及び線形オレフィン単量体のうちから選択された1つ以上の単量体と、チオール基(-SH)を含む分子量調節剤と、粘度調節剤とを含む溶液に、重合触媒または/及び熱を付加して重合反応を行い、重合反応生成物を得る段階を含むことを特徴とするゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【請求項16】
前記溶液は、C留分に由来する1つ以上のC単量体を含むことを特徴とする請求項15に記載のゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【請求項17】
前述の1つ以上のC単量体は、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、スチレン、ジシクロペンタジエン、インデン及びメチルインデンを含むことを特徴とする請求項16に記載のゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【請求項18】
前記分子量調節剤は、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、フェニルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、メルカプトエタノール、チオールグリコール酸、メルカプトプロピオン酸、ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプト)プロピオネート、及びこれらの混合物のうちから選択されたことを特徴とする請求項15に記載のゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【請求項19】
前記粘度調節剤は、粘度(25℃)が20ないし500cpsである低粘度液状樹脂であることを特徴とする請求項18に記載のゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【請求項20】
前記低粘度液状樹脂は、水添ジシクロペンタジエン(DCPD)-C共重合体樹脂(hydrogenated DCPD-C copolymer resins)、水添DCPD(hydrogenated DCPD resins)、及びこれらの混合物のうちから選択されたことを特徴とする請求項19に記載のゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【請求項21】
前記重合触媒は、AlCl、BF、SnCl、TiCl、AgClO、I、及びそれら2種以上の混合物のうちから選択されたルイス酸触媒であることを特徴とする請求項15に記載のゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【請求項22】
前記熱の付加は、230℃ないし280℃に昇温することによって行われることを特徴とする請求項15に記載のゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【請求項23】
前記重合反応生成物は、改質重合体、及び粘度調節剤の混合物であり、
前記改質重合体は、重合反応により、少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂の両末端のうち少なくとも一末端に、前記分子量調節剤が結合されている構造を有することを特徴とする請求項15に記載のゴム配合用樹脂組成物製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤは、車両の荷重を支持し、路面で生じる衝撃を緩和すると共に、自動車エンジンの動力、制動力などを路面に伝達し、自動車の運動を維持する役割を行う。車両用タイヤが満足させなければならない要求特性は、さまざまがあり、耐久性、耐磨耗性、回転抵抗、燃費、操縦安定性、乗り心地、制動性、振動、騷音などを挙げることができる。
【0003】
タイヤのインナーライナ(inner liner)は、タイヤ内部のゴム層であり、タイヤの空気圧維持、及び耐久性能維持を行う重要な役割を果たす。内部の内側は、空気や窒素によって充填されており、そのような気体の使用は、ゴムに類似した弾性を示すのであって、気体の重量は、ほとんどなく、実際のゴムで充填されなければならない部分を代替することにより、タイヤ重量を低減させ、経済性が高くなる。
【0004】
従って、タイヤ内部のインナーライナー用ゴムには、一般的に、空気透過速度が遅いブチルゴムが使用されているが、そのようなブチルゴムは、ゴム同士の間の間隙を密にし、タイヤ内部の高い気体圧力が、外部へと抜け出さないように抑制するのに有用な素材である。
【0005】
しかし、タイヤの高い物性が要求されるほど、多様な材料がインナーライナーに使用せざるを得ないところ、タイヤインナーライナーの耐久性や強度の側面においては有利であるものの、多様な材料により、低レベルであるにしても、微量の気体が外に抜け出ることにより、耐空気透過度(gas impermeability)には、不利に作用することになる。
【0006】
該耐空気透過度は、タイヤの空気圧を一定に維持させ、走行安定性を向上させるだけではなく、タイヤ内部に浸透された空気と、走行中における動的変形とによる発熱によって生じる熱老化現象を防止し、タイヤ耐久力を向上させる。また、タイヤ回転抵抗の低減及びインナーライナー厚の低減を可能にし、重量の低減を通じた燃費改善効果を示すので、インナーライナーの最も重要な物性のうちの一つである。
【0007】
それにより、最近、タイヤインナーライナーの耐空気透過度を向上させるために、多様な材料を開発している。
【0008】
一例として、大韓民国登録特許第10-1176929号は、テルペン(terpene)樹脂とシリケートとを含むインナーライナーを適用し、耐空気透過度を向上させることができると開示しているが、耐空気透過度の向上の程度が大きくなく、加工性が低下するという問題点がある。
【0009】
そのような多様な試みにもかかわらず、タイヤインナーライナーの耐空気透過度を向上させ、加工性を高めることができるインナーライナー用ゴム組成物開発の必要性が要求される状況である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】大韓民国公開特許第10-2018-0080830号
【文献】大韓民国公開特許第10-2014-0075259号
【文献】大韓民国公開特許第10-2011-0072408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従来、耐空気透過度を向上させる技術としては、最も簡便にゴム層の厚みを厚くしたり、ハロゲン化ブチルゴムの含量を上げたりする方法があるが、タイヤ全体のゴムにおいて、トレッド部、サイドウォール部を除き、最も高い比重を占めるインナーライナーの厚みの増大は、燃費性能の低下と直結してしまう。
【0012】
また、耐空気透過性にすぐれるブチルゴムだけ適用し、タイヤのインナーライナーを配合することができればよいが、ブチルゴムを単独で適用したとき、タイヤ製造工程性の低下、及び製造原価が上昇するという問題点がある。
【0013】
また、ブチルゴムの単独配合が困難であるために、配合時、天然ゴムの比率を高め、その他の材料であるプロセスオイル、加工助剤、フィラー(有機フィラー及び無機フィラー)を使用し、インナーライナー用ゴムを配合しなければならないが、ブチルゴム以外の材料が入ることになれば、耐空気透過度に不利な影響を及ぼす。
【0014】
それにより、本発明者らは、気体の透過度を低くするために、タイヤインナーライナーに使用される原料のうち、プロセスオイル、無機物及び均質配合剤などを代替することができる石油樹脂を検討した。
【0015】
検討結果、分子量調節剤で改質され、少なくとも一部が水素化または非水素化された(hydrogenated or non-hydrogenated)石油樹脂、及び粘度調節剤を含むタイヤのインナーライナー用ゴム組成物を使用することにより、プロセスオイルを全量代替するだけではなく、加工性と耐空気透過度とを大きく向上させることが可能であるという点を確認し、本発明を完成させた。
【0016】
従って、本発明の目的は、加工性の向上と共に、耐空気透過度の改善が可能である改質重合体、これを含む樹脂組成物、これを利用したタイヤインナーライナー、及びその製造方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一側面は、重合反応による少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂の両末端のうちの少なくとも一末端に、前記分子量調節剤が結合されている構造を有する改質重合体を含む樹脂組成物に係わるものである。
【0018】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例による、改質重合体、及び粘度調節剤を含む樹脂組成物に係わるものである。
【0019】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例による樹脂組成物を含むゴム組成物に係わるものである。
【0020】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例によるゴム組成物を利用したタイヤインナーライナーに係わるものである。
【0021】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例によるタイヤインナーライナーを含む運送装置用タイヤに係わるものである。
【0022】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例によるタイヤを含む自動車などの運送装置に係わるものである。
【0023】
本発明の一側面は、C留分に由来する1つ以上の単量体、C留分に由来する1つ以上の単量体、環状ジオレフィン単量体、及び線形オレフィン単量体のうちから選択された1つ以上の単量体と、分子量調節剤とを含む溶液に、重合触媒または/及び熱を付加して重合反応を行い、重合反応生成物を得る段階を含む樹脂組成物の製造方法に係わるものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明によるゴム組成物は、低粘度の芳香族ヒドロカーボン系樹脂を含むことにより、原料配合工程中には、プロセスオイルと類似した機能として作用し、原料分散を円滑にさせ、配合時間を短縮させることにより、経済性の側面においても有利であるという長所がある。
【0025】
また、本発明にしたがい、分子量調節剤で改質され、少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂、及び粘度調節剤を含む樹脂組成物を含むゴム組成物は、加工性向上と共に、インナーライナーの耐空気透過度の改善という問題を、いずれも解決することができるという長所がある。
【0026】
また、本発明によるゴム組成物は、タイヤの構成として要求される基本物性、すなわち、引っ張り強度、耐磨耗性、耐久性及び硬度などを満足させ、タイヤインナーライナーに応用及び適用が可能である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有しうるが、特定の実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかしながら、これらは、本件の創意的思想を、特定の実施形態に限定するのではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むと理解されなければならない。
【0028】
以下で使用される用語は、単に、特定実施例について説明するために使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上、明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせが存在するということを示そうとするものであり、1つまたはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれらの組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。以下で使用される「/」は、状況により、「及び」とも解釈されうるし、「または」とも解釈されうる。
【0029】
図面において、さまざまな層及び領域を明確に表現するために、厚みを拡大させたり縮小させたりして示した。明細書全体を通じ、類似した部分については、同一の図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板のような部分が他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、これは他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、さらに他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2などの用語は、多様な構成要素についての説明に使用されうる、該構成要素は、用語によって限定されるべきではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。
【0030】
本明細書で使用される科学用語は、異なるように定義されない限り、本発明の技術分野に属する当業者が、一般的に理解するところと同一に理解されうる。
【0031】
本明細書において「石油樹脂」は、C単量体、C混合留分、C単量体、C混合留分、環形ジオレフィン単量体及び線形オレフィン単量体のうち1つ以上が重合された重合体を含む。例えば、前記石油樹脂は、ホモポリマー、コポリマーなどを含む。前記ホモポリマー石油樹脂の例としては、C単量体が重合された重合体、C混合留分が重合された重合体、C単量体が重合された重合体、C混合留分が重合された重合体、環形ジオレフィン単量体が重合された重合体、線形オレフィン単量体が重合された重合体を挙げることができる。前記コポリマー石油樹脂の例としては、互いに異なる2種のC単量体が重合された共重合体、互いに異なる2種のC単量体が重合された共重合体、互いに異なる2種の環形ジオレフィン単量体が重合された共重合体、互いに異なる2種の線形オレフィン単量体が重合された共重合体、C留分とC単量体との共重合体、C留分とC単量体との共重合体、C留分とC単量体との共重合体、C単量体とC単量体との共重合体、C留分とC単量体との共重合体、C留分と線形オレフィン単量体との共重合体、C留分と線形オレフィン単量体との共重合体、C留分と環形ジオレフィン単量体との共重合体、C留分と環形ジオレフィン単量体との共重合体、C単量体と環形ジオレフィン単量体との共重合体、C単量体と線形オレフィン単量体との共重合体、環形ジオレフィン単量体と線形オレフィン単量体との共重合体を挙げることができる。
【0032】
本明細書において「水添石油樹脂」は、前述の石油樹脂において、エチレンといった不飽和モイエティの少なくとも一部が、水素添加反応により、飽和炭化水素に改質された石油樹脂を意味する。
【0033】
本明細書において「C(混合)留分」は、ナフサの分解から誘導された脂肪族C及び脂肪族Cのパラフィン、オレフィン及びジオレフィンを含む。例えば、C留分は、ペンテン、イソプレン、2-メチル-2-ブテン、2-メチル-2-ペンテン、シクロペンタジエン及びピペリレンを含みうるが、それらに限定されるものではなく、C単量体のうちの2種以上の混合物をいずれも含む。また、前記C留分は、任意選択的にアルキル化されうる。
【0034】
本明細書において「C単量体」は、前述のC(混合)留分に含まれているか、あるいはこの留分に由来する成分のうちのいずれか一つを指示する。
【0035】
本明細書において「C(混合)留分」は、本発明が属する技術分野において一般的に理解されるように、石油加工、例えば、分解から誘導された組成物であり、大気圧、及び約100ないし300℃で沸騰するC,C及び/またはC10オレフィン種を含み、例えば、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、スチレン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、インデン、トランス-β-メチルスチレン及びメチルインデンを含んでもよいが、それらに限定されるものではなく、C単量体のうちの2種以上の混合物をいずれも含む。また、前記C留分は、任意選択的にアルキル化されうる。例えば、本発明においてC留分は、ビニルトルエン、インデン、スチレン、ジシクロペンタジエン、及びそれら成分のアルキル化された誘導体、例えば、α-メチルスチレン、メチルインデンなどを含んでもよい。
【0036】
本明細書において「C単量体」は、前述のC留分に含まれているか、あるいはこの留分に由来する成分のうちのいずれか一つを指示する。
【0037】
本明細書において「オレフィン」は、少なくとも1つのエチレン性不飽和基(C=C)結合を含む不飽和化合物を含む。例えば、該オレフィンは、線形オレフィン、環形オレフィン、α-オレフィンなどを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0038】
本明細書において「環状ジオレフィン」は、2個のC=C結合を含む環型不飽和化合物を含む。例えば、環状ジオレフィンは、ジシクロペンタジエン、トリシクロペンタジエンなどを含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0039】
以下において、本発明のさまざまな側面、及び多様な具現例につき、さらに具体的に説明する。
【0040】
本発明の一側面は、C留分に由来する1つ以上の単量体、C留分に由来する1つ以上の単量体、環状ジオレフィン単量体、及び線形オレフィン単量体のうちから選択された1つ以上の単量体と、分子量調節剤(molecular weight regulator)とを含む溶液に、重合触媒または/及び熱を付加して重合反応を行い、重合反応生成物を得る段階を含むゴム組成物の製造方法に係わるものである。
【0041】
また、前記溶液は、粘度調節剤をさらに含んでもよい。
【0042】
前記粘度調節剤は、生成物である重合体の構造の形成には加わらず、反応物と生成物との粘度を調節する役割を行うので、本発明により、C留分に由来する1つ以上の単量体、C留分に由来する1つ以上の単量体、環状ジオレフィン単量体、及び線形オレフィン単量体のうちから選択された1つ以上の単量体と、分子量調節剤と、粘度調節剤とを含む溶液に、重合触媒または/及び熱を付加して重合反応を行って得られる重合反応生成物は、改質重合体及び粘度調節剤の混合物でありうる。
【0043】
前記溶液は、C留分に由来する1つ以上のC単量体を含んでもよい。
【0044】
一具現例によれば、前述の「1つ以上のC単量体」は、本発明が属する技術分野で一般的に理解されるように、石油加工、例えば、分解(クラッキング)から誘導された組成物であり、大気圧及び約100ないし300℃にて沸騰する、C,C及び/またはC10オレフィン種を含む不飽和芳香族単量体を含む。
【0045】
一具現例によれば、前述の1つ以上のC単量体は、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、スチレン、ジシクロペンタジエン、インデン及びメチルインデンのうち1つ以上を含んでもよい。また、前記C単量体は、任意選択的にアルキル化されうる。例えば、本発明において、前述の1つ以上のC単量体は、ビニルトルエン、インデン、スチレン、ジシクロペンタジエン、及びそれら成分のアルキル化された誘導体、例えば、α-メチルスチレン、メチルインデンなどを含んでもよい。
【0046】
一具現例によれば、本発明で使用可能な分子量調節剤(molecular weight regulator)は、連鎖移動剤(chain transfer agent)であり、チオール類(thiols)、または四塩化炭素といったハロカーボン類(halocarbons)などを挙げることができる。
【0047】
特に、本発明においては、チオール類、すなわち、1つ以上のチオール基(-SH)を含む有機メルカプタン系分子量調節剤が有用であり、それには、脂肪族メルカプタン類、環状脂肪族(cycloaliphatic)メルカプタン類または芳香族メルカプタン類が含まれる。
【0048】
そのようなメルカプタン類物質は、1分子当たり、1個ないし4個のチオール基を含んでもよく、1チオール基当たり、1個ないし20個の炭素、望ましくは、1個ないし15個の炭素を含んでもよい。
【0049】
また、炭化水素基及びチオール基以外に、他の置換基を追加して含んでもよく、そのような置換基の例には、ヒドロキシ基、カルボン酸基、エーテル基、エステル基、スルフィド基、アミン基、アミド基などが含まれる。
【0050】
本発明において、分子量調節剤として有用なメルカプタン類は、チオール基を有する有機化合物であるならば、特別に限定されるものではなく、具体的には、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタンまたはドデシルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類;フェニルメルカプタンまたはベンジルメルカプタンといったチオールフェノール類;2-メルカプトエタノール、チオールグリコール酸(thioglycolic acid)または3-メルカプトプロピオン酸といったヒドロキシ基含有またはカルボン酸基含有のメルカプタン類;またはペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプト)プロピオネートのように、機能基を2以上有するメルカプタン類;またはそれら2種以上の混合物を挙げることができる。
【0051】
そのようなメルカプタン類の具体的な例には、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、オクチルメルカプタン、ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、メルカプトブタノール、メルカプト酢酸、メルカプトプロピオン酸、ベンジルメルカプタン、フェニルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン、1-チオグリセロ-ル、2,2’-ジメルカプトジエチルエーテル、2,2’-ジメルカプトジプロピルエーテル、2,2’-ジメルカプトジイソピロピルエーテル、3,3’-ジメルカプトジプロピルエーテル、2,2’-ジメルカプトジエチルスルフィド、3,3’-ジメルカプトジプロピルスルフィド、ビス(β-メルカプトエトキシ)メタン、ビス(β-メルカプトエチルチオ)メタン、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリトリトールテトラチオグリコレートなどが含まれるが、それらに限定されるものではない。
【0052】
例えば、本発明の分子量調節剤には、エチルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン;フェニルメルカプタン、ベンジルメルカプタン;メルカプトエタノール、チオールグリコール酸、メルカプトプロピオン酸;ペンタエリトリトールテトラキス(3-メルカプト)プロピオネートが含まれる。
【0053】
一具現例によれば、本発明においては、分子量調節剤として、下記化学式1のn-ドデシルメルカプタン、下記化学式2の2-メルカプトエタノール、またはそれらの混合物を使用することにより、分子量調節の効果を極大化させることができる。
【0054】
【化1】
【0055】
【化2】
【0056】
一具現例によれば、前記粘度調節剤として、粘度(25℃)が20ないし500cps、例えば、30ないし500cps、または20ないし450cpsである低粘度の液状樹脂を使用することができる。
【0057】
例えば、前記低粘度液状樹脂は、水添DCPD-C共重合体樹脂(hydrogenated DCPD-C copolymer resins)、水添DCPD(hydrogenated DCPD resins)樹脂、及びそれらの混合物のうちから選択して使用する。
【0058】
ここで、該水添DCPD-C共重合体樹脂は、ジシクロペンタジエン(DCPD)の重合及び水添を通じて得られる白色の熱可塑性樹脂を意味する。
【0059】
一具現例によれば、粘度調節剤として、下記構造を有する水添DCPD-C共重合体樹脂を使用することにより、粘度の調節及び耐空気透過度の向上の効果を極大化させることができることになる。
【0060】
【化3】
【0061】
一具現例によれば、前記重合触媒として、ルイス酸触媒、ハロゲン化水素酸(halohydric acid)、AlCl、BF、及び、これらの2種以上の混合物のうちから選択して使用することができる。
【0062】
例えば、前記重合触媒として、AlCl、BF、SnCl、TiCl、AgClO、I、及び2種以上の混合物のうちから選択されたルイス酸触媒を使用することができる。
【0063】
一具現例によれば、前記熱の付加は、230℃ないし280℃に昇温することによっても遂行される。
【0064】
本発明の一側面は、重合反応による、前述の少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂の両末端のうち少なくとも一末端に、前記分子量調節剤が結合されている構造を有する改質重合体を含む樹脂組成物に係わるものである。
【0065】
例えば、前記改質重合体は、前述の少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂が、前記分子量調節剤で改質された形態の改質重合体であるが、前記石油樹脂を分子量調節剤で末端を改質することにより、ゴムとの相溶性と配合性とにすぐれるだけではなく、ポリマーの無定形領域に相溶され(compatibilized)、膜を形成させることができ、加工性と耐空気透過度とをさらに向上させることができる。それと異なり、石油樹脂の末端が分子量調節剤で改質されていない場合、数平均分子量が増大し、ガラス転移温度も上昇し、ゴムとの相溶性及び配合性が低く、配合が良好になされないという問題点が生じうる。その結果、加工性、及び最終製品の性能が低下してしまう。
【0066】
一具現例によれば、前記改質重合体は、付加重合(addition polymerization)反応または連鎖重合(chain polymerization)反応による、前述の少なくとも一部が水素化または非水素化された石油樹脂における両末端のうちの少なくとも一末端に、前記分子量調節剤が結合されている構造を有する。
【0067】
例えば、前記石油樹脂は、C単量体由来の反復単位を含むか、あるいはC単量体由来の反復単位でもって構成されうる。
【0068】
一具現例によれば、前記石油樹脂は、下記化学式4aのような反復単位が結合されている構造を含む。例えば、前記石油樹脂は、前記C単量体に含まれるスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデン、ジシクロペンタジエン、及び、α-メチルスチレンやメチルインデンのように、これら成分のアルキル化された誘導体単量体が、重合反応に参与して形成された、下記のような構造を含んでもよい。
【0069】
【化4a】
【0070】
前記化学式4aは、例示的に表現したものに過ぎないので、前述の構造に追加して、表示されていない他のC留分に由来する1つ以上のC単量体、C留分に由来する1つ以上のC単量体、環状ジオレフィン単量体、及び線形オレフィン単量体が、反復単位としてさらに含まれてもよい。
【0071】
例えば、前記石油樹脂は、前記構造に表現される重合体であり、前記重合体がランダム重合体を意味するが、ただし、それに限定されるものではなく、ブロック共重合体または交互(alternating)共重合体なども含まれる。
【0072】
別途に図示されていないが、前記石油樹脂は、前記化学式4aで表された反復単位のうちの少なくとも一つが水素化された構造を含んでもよい。
【0073】
他の具現例によれば、前記石油樹脂は、下記のような反復単位が結合されている構造を含んでもよい。例えば、前記石油樹脂の両末端のうちの少なくとも一つが二重結合を有する構造を有するのであり、両末端いずれも二重結合を有する構造を、例示的に下記化学式4bに表示した。
【0074】
【化4b】
【0075】
このように少なくとも1つの末端に位置する二重結合と、分子量調節剤とが結合され、分子量調節剤で改質された改質重合体(例えば、C単量体の重合体)を形成することになる。該分子量調節剤は、両末端いずれにも結合されうるのであり、例示的に表現された下記化学式4cのように、いずれか1つの末端にだけ結合されうる。
【0076】
別途に図示されていないが、前記改質重合体は、化学式4bまたは化学式4cで表された反復単位のうち少なくとも一つが水素化された構造を含んでもよい。
【0077】
【化4c】
【0078】
一具現例によれば、前記改質重合体を含む樹脂組成物は、数平均分子量(Mn)が200ないし500であり、ガラス転移温度が、-25℃ないし-15℃でありうる。
【0079】
数平均分子量が200より低ければ、配合効率が低くなるという問題があり、500より高ければ、配合加工性が低下してしまう。また、そのように低い範囲の分子量により、加工性にすぐれ、既存のプロセスオイルを代替し、インナーライナー用ゴム組成物に適用することができるのであり、このことを通じて、加工性向上と共に、耐空気透過度の改善が可能になる。
【0080】
一具現例によれば、前記改質重合体は、非極性であるので、加工性にさらにすぐれ、結晶化度が低く、ポリマーの無定形領域に相溶され、膜を形成させることができ、加工性と耐空気透過度とをさらに向上させることができる。
【0081】
また、ガラス転移温度が-25℃より低ければ、前記樹脂組成物を利用して製造したタイヤインナーライナーの耐空気透過度に問題があり、-15℃より高ければ、低温割れ(cold crack)に問題がある。
【0082】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例による改質重合体、及び粘度調節剤を含む樹脂組成物に係わるものである。
【0083】
一具現例によれば、前記樹脂組成物は、前記改質重合体と前記粘度調節剤とをそれぞれ80ないし98重量%、及び2ないし20重量%で含んでもよい。
【0084】
前述のように、粘度調節剤は、生成物である改質重合体の構造形成には加わらず、反応物と生成物との粘度を調節する役割を行うので、本発明により、C留分に由来する1つ以上の単量体、C留分に由来する1つ以上の単量体、環状ジオレフィン単量体、及び線形オレフィン単量体のうちから選択された1つ以上の単量体、分子量調節剤、粘度調節剤を含む溶液に、重合触媒または/及び熱を付加して重合反応を行い、重合反応生成物が得られるが、そのような重合反応生成物は、改質重合体及び粘度調節剤の混合物でもある。
【0085】
一具現例によれば、前記樹脂組成物は、60℃で測定された粘度が、2,000ないし4,000cps、例えば、2,000ないし4,000、または2,500ないし3,500cpsであり、芳香族性(aromaticity)が20%ないし60%、例えば、30%ないし50%、または35%ないし45%である。
【0086】
粘度が4,000cpsを超える場合、ゴム組成物の加工性を低下させ、粘度が2,000cps未満である場合、ゴムとの相溶性が不足し、最終生成されたタイヤインナーライナーにおいて、所望される物性が得られないのである。
【0087】
芳香族性が30%未満である場合は、セグメント移動度(segmental mobility)が高くなって、耐空気透過度の向上効果が微々たるものであり、50%を超える場合には、原料ゴムとの相溶性が低くなって、効果が微々たるものになってしまうという問題点がある。
【0088】
本発明の一側面は、原料ゴム、及び本発明のさまざまな具現例による樹脂組成物を含むゴム組成物に係わるものである。
【0089】
一具現例によれば、前記原料ゴム100重量部を基準に、前記樹脂組成物5ないし25重量部を含んでもよい。
【0090】
前記樹脂組成物の含量が5重量部未満であるならば、耐空気透過度の向上が十分でないという問題があり、15重量部を超えるならば、ゴムに配合する際、バンバリーミキサにおける配合性の低下、及びゴム配合の物性が低下するという問題がある。
【0091】
一具現例によれば、前記ゴム組成物は、前記改質重合体及び前記粘度調節剤以外に、原料ゴム、均質剤、補強剤、加硫助剤などを含んでもよく、また硫黄及び加硫促進剤を追加で含んでもよい。
【0092】
具体的には、前記ゴム組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、均質剤1ないし8重量部、補強剤20ないし80重量部、加硫助剤0.1ないし10重量部を含んでもよい。
【0093】
また、前記ゴム組成物は、原料ゴム100重量部を基準に、硫黄0.1ないし2重量部、加硫促進剤0.5ないし5重量部を追加して含んでもよい。
【0094】
以下、前記樹脂組成物と共に、ゴム組成物を構成する成分について詳細に説明すれば、次の通りである。
【0095】
まず、本発明のゴム組成物は、原料ゴムを含むものでもある。前記原料ゴムは、オレフィン性二重結合(炭素・炭素二重結合)を有するものであるならば、特別に制限はなく、天然ゴム、合成ゴム、または、これらを混合して使用することができる。
【0096】
一例として、前記原料ゴムとしては、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム、ニトリルゴム、シリコンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、イソプレン・ブタジエンゴム、スチレン・イソプレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ハロゲン化ブチルゴム、ハロゲン化イソプレンゴム、ハロゲン化イソブチレン共重合体、クロロプレンゴム、ブチルゴム及びハロゲン化イソブチレン-p-メチルスチレンゴムからなる群のうちから選択される少なくとも一種であることが望ましい。さらに望ましくは、ブチルゴムまたは天然ゴムでありうる。
【0097】
本発明のゴム組成物は、均質剤を含んでもよい。前記均質剤としては、40MS(STRUKTOL(登録商標) 40 MS)を使用することができ、前記均質剤を添加するにより、良好に混ざらないブチルゴムと天然ゴムとの混錬性を改善させる効果を得ることができる。
【0098】
本発明のゴム組成物は、補強剤を含んでもよい。前記補強剤としては、カーボンブラックを使用することができる。前記カーボンブラックは、耐磨耗性の向上、回転抵抗特性の向上、紫外線による亀裂または劣化の防止などの効果を出す。
【0099】
本発明で使用可能なカーボンブラックは、特別に限定されるものではなく、タイヤ分野で一般的に使用されるものであるならば、いずれも使用が可能である。一例として、前記カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、グラファイトといったカーボンブラックを使用することができる。
【0100】
また、該カーボンブラックの粒子径、細孔容積、比表面積といった物理的特性についても、特別に限定されるものではなく、従来、ゴム工業で使用されている各種のカーボンブラック、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF(いずれも、アメリカのASTM規格D-1765-82aに分類されたカーボンブラックの略称)などを適切に使用することができる。
【0101】
そのようなカーボンブラックは、原料ゴム100重量部につき、20ないし80重量部で含まれることが望ましい。前記カーボンブラックは、補強性充填剤として、ゴム配合に必須な要素であり、もしその含量が、前記範囲未満である場合には、補強の効果が低下することになり、それと反対に、前記範囲を超える場合には、分散の困難さが伴う。
【0102】
補強剤として、前記カーボンブラック以外に、シリカ、クレイ、滑石といった鉱物の粉末類;炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムといった炭酸塩類;水酸化アルミニウムといったアルミナ水和物などを使用することができる。
【0103】
本発明のゴム組成物は、硫黄を含んでもよい。前記硫黄としては、加硫工程を進めることができるものであるならば、特別な制限なしに使用することができる。そのような硫黄の含量は、原料ゴム100重量部につき、0.1ないし2重量部で使用することが、物性向上面において望ましい。
【0104】
本発明のゴム組成物は、加硫促進剤を含んでもよい。ここにおいて「加硫」とは、硫黄原子を少なくとも1個介在させる架橋を示す。前記加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドといったチウラム系促進剤;N-t-ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド(TBBS)、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィドといったチアゾール系促進剤;N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドといったスルフェンアミド系促進剤;ジフェニルグアニジン(DPG)、ジオルトトリルグアニジンといったグアニジン系促進剤;n-ブチルアルデヒド・アニリン縮合物、ブチルアルデヒド・モノブチルアミン縮合物といったアルデヒド・アミン系促進剤;ヘキサメチレンテトラミンといったアルデヒド・アンモニア系促進剤;チオカルバニリドといったチオ尿素系促進剤などを挙げることができる。それら加硫促進剤を配合する場合には、1種類を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。前記加硫促進剤は、N-t-ブチルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド及びジフェニルグアニジンでありうる。
【0105】
そのような加硫促進剤の含量は、原料ゴム100重量部につき、0.5ないし5重量部で使用することが、物性向上の面で望ましい。
【0106】
本発明のゴム組成物は、加硫助剤を含んでもよい。前述のように、「加硫」とは、硫黄原子を少なくとも1個介在させる架橋を示す。
【0107】
前記加硫助剤としては、酸化亜鉛(亜鉛華)、酸化マグネシウムといった金属酸化物;水酸化カリウムといった金属水酸化物;炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛といった金属炭酸塩;ステアリン酸、オレイン酸といった脂肪酸;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムといった脂肪族金属塩;ジ(n-ブチル)アミン、ジシクロヘキシルアミンといったアミン類;エチレンジメタクリレート、ジアリルフタレート、N,N-m-フェニレンジマレイミド、トリアリルイソシアヌレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどを挙げることができる。
【0108】
それら加硫助剤を配合する場合には、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。そのような加硫助剤の含量は、原料ゴム100重量部につき、0.1ないし10重量部で使用することが、物性向上の面で望ましい。
【0109】
さらには、本発明によるゴム組成物は、またゴム工業の分野で使用される各種添加剤、例えば、老化防止剤、加硫遅延剤、解膠剤、可塑剤などの1種または2種以上を、必要に応じて含んでいてもよい。それら添加剤の配合量は、原料ゴム100重量部につき、0.1ないし10重量部であることが望ましい。
【0110】
前述の組成を含む組成物は、公知の方法を経て、タイヤインナーライナーに製造される。
【0111】
一例として、本発明によるゴム組成物は、前記の各成分を、例えば、プラストミル(plastomill)、バンバリーミキサ、ロール、インターナルミキサといった混錬機を利用して混錬することによって調製することができる。具体的には、前述の各成分のうちで、架橋剤及び加硫促進剤以外の成分をまず混錬し、その後、得られた混錬物に架橋剤及び加硫促進剤を添加し、さらに混錬することが望ましい。
【0112】
前述の方法によって製造されたゴム組成物は、タイヤのインナーライナーを構成する材料として使用することができる。そのように製造されたタイヤのインナーライナーは、機械的物性(硬度、引っ張り強度、モジュラスなど)にすぐれる。特に、耐空気透過度にすぐれ、インナーライナーを介する空気の漏れを防止することができる。
【0113】
本発明の組成物をゴム試片に製造した後、KS M ISO 2556の方法で気体透過度を測定した結果、該気体透過度が、90cm/(m・day・atm)以下でありうるのであり、望ましくは、該気体透過度が、70cm/(m・day・atm)以下でありうる。
【0114】
前記ゴム試片の製造方法は、本発明の組成物を使用し、当業界で一般的に使用する方法で製造することができ、一例として、ホットプレスで圧縮成形方法により、試片は、サイズ12cmx12cm(縦横)、厚み0.5mm±0.2mmに作製した後、25℃ 60RH%の雰囲気下で気体透過度を測定することができる。
【0115】
このような本発明のゴム組成物は、既存のプロセスオイルを代替する樹脂として、前述のような改質重合体及び粘度調節剤を含み、プロセスオイルは、含まない。
【0116】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例によるゴム組成物を利用したタイヤインナーライナーに係わるものである。
【0117】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例によるタイヤインナーライナーを含む運送装置用タイヤに係わるものである。
【0118】
本発明の一側面は、本発明のさまざまな具現例によるタイヤを含む自動車といった運送装置に係わるものである。
【0119】
以下、実施例を通じて、本発明についてさらに詳細に説明するが、ただし、以下において、実施例により、本発明の範囲と内容とが縮小されたり制限されたりして解釈されるものではない。また、以下の実施例を含む本発明の開示内容に基づくならば、具体的には、実験結果が提示されていないところ本発明は、当業者が容易に実施することができるということは、明白なことであり、そのような変形及び修正が、特許請求の範囲に属するということも当然である。
【0120】
また、以下で提示される実験結果は、前述の実施例、及び比較例の代表的な実験結果のみを記載したものであり、以下で明示上に提示されていない本発明のさまざまな具現例のそれぞれの効果は、当該部分において具体的に記載する。
【0121】
実施例
実施例1:樹脂組成物の製造
精製C単量体(YCNCC社)93重量%と、粘度調節剤LP200(コーロンインダストリー社)7重量%で構成された組成物100重量部を基準に、分子量調節剤n-ドデシルメルカプタン2.5重量部を追加した後、260℃及び高圧(5ないし10bar)で重合反応を2時間進めた。重合触媒であるBFを投入する場合には、180℃及び高圧(5ないし10bar)で2時間重合反応を行った。重合が完了した重合物は、脱気過程を経て、未反応反応物を除去し、樹脂組成物を製造した。
【0122】
試験例1:芳香族性測定
前述の実施例1で製造した樹脂組成物に係わる芳香族性を、次のように測定し、その結果、芳香族性が38.7%であることを確認した。該芳香族性は、NMRで測定して分析した。
【0123】
実施例2:ゴム試片製造
クロロ化ブチルゴム(HT-1066、エクソン化学社の製品)80重量部、天然ゴム(NR、Sritrang社の製品)20重量部からなる原料ゴム100重量部、及び前述の実施例1で製造した樹脂組成物10重量部、均質剤(40MS、Strucktol社の製品)4重量部、カーボンブラック(N-660、Pentacarbon社)60重量部、酸化亜鉛(ZnO、Kemai Chem社製品)3重量部、ステアリン酸(stearic acid、Kemai Chem社の製品)2重量部をバンバリーミキサに入れて150℃で混合した後、一次配合ゴムを放出させた。その後、該一次配合ゴムに、硫黄(sulfur、Miwon Chem社の製品)0.5重量部、加硫促進剤(DM(ジベンゾチアゾリルジスルフィド;dibenzothiazole disulfide)、Sunsine社の製品)1.2重量部をバンバリーミキサに入れ、100℃で加硫した後で放出し、ゴム試片を製造した。
【0124】
比較例1
前述の実施例1で製造した樹脂組成物10重量部の代わりに、プロセスオイル(TDAE、H&R社製)10重量部を加えたことを除いては、同一に製造した。
【0125】
比較例2
前述の実施例1で製造した樹脂組成物10重量部の代わりに、パラフィンオイル(paraffinic oil、Michang石油社製)10重量部を加えたことを除いては、同一に製造した。
【0126】
比較例3
前述の実施例1で製造した樹脂組成物10重量部の代わりに、ナフテンオイル(napthenic oil、Michang石油社製)10重量部を加えたことを除いては、同一に製造した。
【0127】
比較例4
前述の実施例1で製造した樹脂組成物10重量部の代わりに、添加剤(40MS、Strucktol社製)10重量部を加えたことを除いては、同一に製造した。
【0128】
試験例2:ゴム試片の物性測定
前述の実施例2、及び比較例1ないし4で製造したそれぞれのゴム試片につき、物性を測定し、その結果を下記表1に整理して示した。
【0129】
【表1】
【0130】
註1)レオメーター:MDR 2000E(Monsanto;St.Louis、Mo.)を使用し、ASTM D 5289にしたがって測定。
【0131】
註2)ムーニー粘度:25±3cmサイズの試片を作製し、チャンバーの内部に装着した後、30℃~200℃に温度を変化させ、ムーニー粘度計MV-2000(LABTECH)を利用して測定。
【0132】
註3)UTM(Universal Testing Machine)物性:ASTM D412に基づき、U.T.M-Shimadzu AG-1S(load cell:PFG-5kN)測定機器を利用し、500mm/minで引っ張って測定。
【0133】
註4)気体透過度:KS M ISO 2556:2006の方法により、酸素透過アナライザ(oxygen permeation analyzer)(Model BT-3、東洋精機製作所社製)を使用し、25℃ 60RH%の雰囲気下で測定した。
【0134】
ゴムレオメーターで測定されるレオメーターの結果は、工程に適用した際における、硬化速度、及びゴム組成物の挙動と係わるパラメータであり、タイヤ製造時における加工性と係わりがある。ここで、その数値(Toq(Min)(minimum torque)、Toq(Max)(maximum torque))が過度に高いか、あるいは低い場合、既存工程に適用するのが容易ではなく、新たな工程設計が必要であるということを意味する。
【0135】
前記表1で提示された前述の実施例1のToq(Min)、Toq(Max)、Tc50(50%硬化に至る時間)、Tc90(90%硬化に至る時間; time to 90% of torque increase)などの結果を、比較例1ないし4の結果と比較してみると、既存工程に容易に適用可能な仕様に該当するということが分かる。
【0136】
また、ムーニー粘度の結果及び機械的物性(モジュラス、引っ張り強度、伸率、硬度など)も、前述の表1に示されているように、実施例2の結果は、比較例1ないし4の結果と対比して、対等であるか、あるいはそれ以上であるということが分かる。
【0137】
特に、実施例2の気体透過量は、141cm/(m・day・atm)であり、比較例1ないし4の気体透過度である184,236,204,170cm/(m・day・atm)と対比すれば、実施例2の耐空気透過度が、比較例に比べ、大きく向上されているということを確認することができる。
【0138】
そのような結果から、本発明によるタイヤインナーライナー用組成物は、タイヤの構成として要求される基本物性、すなわち、引っ張り強度、耐磨耗性、耐久性及び硬度などを満足するだけではなく、加工性を向上させると共に、耐空気透過度を顕著に向上させるということが分かる。