(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】高酸価油脂からのバイオオイル製造方法
(51)【国際特許分類】
C10L 1/02 20060101AFI20240523BHJP
C11C 3/02 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
C10L1/02
C11C3/02
(21)【出願番号】P 2022546687
(86)(22)【出願日】2021-01-29
(86)【国際出願番号】 KR2021001198
(87)【国際公開番号】W WO2021154022
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0012109
(32)【優先日】2020-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0012281
(32)【優先日】2021-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522304350
【氏名又は名称】エスケー エコ プライム カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SK ECO PRIME CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ,ミラン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヒョンジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ハンソク
【審査官】森 健一
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-2043442(KR,B1)
【文献】国際公開第2010/097920(WO,A1)
【文献】特開2003-049192(JP,A)
【文献】特開昭58-095549(JP,A)
【文献】特表2012-508282(JP,A)
【文献】特表2009-535442(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02028260(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10L 1/00
C11C 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオオイルの製造方法であって、
反応器内部に垂直方向に多数の隔室(compartment)が形成されるように、多数の段(tray)が反応器内部に設けられており、前記多数の段には開口部が形成され、上下隣接する隔室を連結するものの、前記隣接する段の開口部は互いに食い違うように交差形成されているカラム型反応器の中間に位置した原料投入口にグリセリンと脂肪酸とを含む原料をそれぞれ投入して、反応区域のそれぞれの段(tray)でグリセリンと脂肪酸とを含む原料をエステル化反応させ、バイオオイル及び水を生成する段階;
前記生成されたバイオオイルを反応器下部を通じて得る段階;及び
前記エステル化反応で生成される水は気化しながら有効成分である反応原料とバイオオイルとが共に蒸発して蒸気状態で反応器上部の蒸留区域に移動し、前記蒸留区域のそれぞれの段(tray)で蒸気に含まれた水と有効成分である反応原料とバイオオイルとを分離させ、前記分離された有効成分は反応器下部の反応区域に流し、分離された水は蒸気状態で反応器上部を通じて除去される段階;を含み、
前記カラム型反応器の下部はグリセリンと脂肪酸とがエステル化反応で生成される生成物であるグリセリドが得られる反応区域であり、
前記カラム型反応器の上部はエステル化によって生成される副産物である水が気化して蒸気状態で除去される蒸留区域であり、
前記水は、それぞれの段に形成された蒸気移動通路を通過し、カラム型反応器上部の蒸留区域で分離されて除去され、
前記バイオオイルの酸価は30mgKOH/g以下であり、
前記エステル化反応は
200~250℃の反応温度及び常圧で、触媒を用いずに行われ
、
前記脂肪酸とグリセリンとの混合比(モル比)は3:0.75~3:2であり、
前記バイオオイルの製造方法の反応時間は2時間以上である、バイオオイルの製造方法。
【請求項2】
前記それぞれの段に形成された多数の蒸気移動通路はバブルキャップ、バルブ及びホールからなる群から選択されるものである、請求項
1に記載のバイオオイルの製造方法。
【請求項3】
前記反応区域でグリセリンと脂肪酸との滞留時間は2時間以上である、請求項
1に記載のバイオオイルの製造方法。
【請求項4】
前記脂肪酸を含む原料の酸価は30mgKOH/g超である、請求項1に記載のバイオオイルの製造方法。
【請求項5】
前記反応生成物であるバイオオイルの酸価は25mgKOH/g以下である、請求項1に記載のバイオオイルの製造方法。
【請求項6】
前記グリセリンはグリセリンの濃度が3~100質量%であるものを用いるものである、請求項1に記載のバイオオイルの製造方法。
【請求項7】
前記水と有効成分である反応原料およびバイオオイルとは沸点によって分離されるものである、請求項1に記載のバイオオイルの製造方法。
【請求項8】
前記脂肪酸を含む原料は植物性油を精製する過程で遊離脂肪酸を除去する時に生じる石鹸物質であるソープストック(soap stock)から製造した脂肪酸酸油(acid oil);動・植物性油脂またはそれより誘導された化学製品である油脂化学製品(oleochemical)の工程で発生する製品または副産物;動植物油の搾油または精製過程で出る脂肪酸が含まれたオイル;廃食用油、茶色油(Brown grease)のような回収油及びこれらの混合物からなる群から選択される動物性及び植物性油脂及びこれらの混合物からなる群から選択されるものである、請求項
4に記載のバイオオイルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高酸価油脂からのバイオオイル製造方法に関するものであり、より詳細には、高酸価油脂からのバイオ重油及びバイオ船舶油として使用することができるバイオオイル製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、韓国では、発電用バイオ重油の本事業が始まり、バイオ重油の需要が継続して増加する傾向である。また、IMO(International maritime organization)2020の影響で船舶油として低硫黄油に対する需要も爆発的に増加すると予測され、低硫黄油の1つとしてバイオ船舶油に対する関心が高まっている。
【0003】
前記発電用バイオ重油は、動・植物性油脂、バイオディーゼル工程の副産物など、バイオ基盤の油脂資源を原料として用いて製造した重油(バンカー-C油)の代替燃料であり、現在、発電社の重油発電機の燃料として用いられている。2014年にバイオ重油のモデル事業を始めており、妥当性評価の後、2019年に本事業が始まった。
【0004】
前記IMO2020は、国際海事機構(IMO)で採択したMARPOL(船舶による汚染防止の国際条約)付属書であって、2020年1月1日から硫黄酸化物環境(排出)規制が施行されるが、具体的には、船舶燃料油の硫黄限度分(Sulphur cap)が3.5%から0.5%に制限される。これにより、硫黄酸化物の排出量を低減するための方策の1つとして低硫黄船舶油の使用に対する需要が増加している。これと関連し、バイオオイルは、基本的に硫黄の含量が低く、内燃機関で燃焼する場合、既存の石炭由来のオイルより硫黄酸化物が少なく発生する。
【0005】
バイオ重油またはバイオ船舶燃料油は、酸価が高ければ、内部装置及び設備の腐食をもたらし得るので、製品の酸価を一定水準以下に製造しなければならない。そのような理由により、バイオ重油またはバイオ船舶燃料油の原料は酸価の低い原料を用いなければならず、酸価の高い原料を用いるためには、酸価を低くすることができる方策が用意されなければならない。
【0006】
酸価の高い油脂の酸価を低くするための方法は多様に知られている。一般的な油脂精製工程で油脂の酸価を低くするために、遊離脂肪酸を除去する方法としてアルカリ水溶液で遊離脂肪酸を中和して除去する方法と蒸留して遊離脂肪酸を除去する方法とがある。しかし、遊離脂肪酸を除去する方法は、酸価が高いほど除去すべき遊離脂肪酸の量が多く、経済性が落ちる。アルカリ水溶液で中和する方法は、廃水の発生量が多いという問題がある。高酸価油脂に含まれた遊離脂肪酸を除去せずに用いるために、遊離脂肪酸をバイオオイルに転換する方法が提案される。
【0007】
前記高酸価油脂の遊離脂肪酸を除去せずに使用できるバイオオイル製造方法として、一例としては、脂肪酸とグリセリンを反応させてバイオオイル(グリセリド)を製造することである。この際、グリセリドは、モノ-、ジ-、トリグリセリドを全て称する。
【0008】
脂肪酸とグリセリンとを反応させてバイオオイルを製造することは、バイオディーゼル(FAME)原料として脂肪酸の多いオイル(高酸価油脂)を用いるための前処理方法の1つとして知られている。一般に、バイオディーゼル(FAME)はバイオオイル(グリセリド)とメタノール(MeOH)とを移転エステル化(trans-esterification)反応して製造する。この際、原料の脂肪酸の含量が高ければ、脂肪酸が反応触媒から由来したアルカリ成分と反応して生成される鹸化成分(soap)の量が増加して反応に関与できず、歩留まりが低下する。
【0009】
それに対する解決策として、下記の反応式1に示された通り、前処理工程の反応として、脂肪酸とグリセリンとを1次的に反応させて、グリセリドを製造した後、生成されたグリセリドとメタノールとを塩基触媒がある条件で2次的に反応をさせて、バイオディーゼルである、脂肪酸アルキルエステルを製造するバイオディーゼル製造方法(Trans-esterification)を開示している。
【0010】
[反応式1]
【0011】
【0012】
脂肪酸をバイオオイル(グリセリド)に転換する反応工程は、反応性を高めるために、触媒を用いたり反応生成物の1つである水を反応過程で継続的に除去する方法を用いたりする。
【0013】
米国特許US 13/92435号によれば、固相触媒の存在下で反応を進めることを開示している。前記触媒を用いて反応を進める場合、用いられる触媒の価格が高いだけでなく、不純物または炭素の沈積で被毒されるので、触媒の寿命が短くなり製造コストが高くなる。また、円滑な反応を誘導するために、蒸気(vapor)で水を除去する。
【0014】
図1は、従来、バイオオイルの製造に用いられる回分式(Batch)反応器の構成図であって、下記の
図1に示された通り、1つの反応器(1)に1つの攪拌機(3)が設けられたものである。当該回分式(Batch)反応器は、反応中間に反応物と生成物との出入りがないが、エステル化反応により生成される副産物である水は、還流器(condenser、5)を通じて持続的に除去されることが分かる。
【0015】
中国特許CN第2012-10580909号、CN第2018-10088660号では、無触媒反応として、略真空/減圧条件で反応または常圧反応条件では、窒素流れ下で反応して水分除去を円滑にする方法を提示している。大韓民国特許KR 10-1073721号は、触媒存在下で反応副産物である水を除去するために略真空/減圧条件で反応または常圧条件では窒素流れ下で反応する方法を開示している。このように、回分式(Batch)反応器を用いる場合、反応性を高めるために副産物である水を十分に除去できる装置が必要である。回分式(Batch)反応工程の場合、原料の投入時間、生成物の排出時間、温度の昇温時間などが必要で、連続反応工程に比べて生産量が低く、高い製造コスト、運転に多くの人員が必要であるという問題点がある。
【0016】
回分式(Batch)反応工程の問題点を解決し、生産量と工程効率とを上げるために、連続反応工程が提案される。
図2は、連続流れ攪拌タンク反応器(Continuous Stirred Tank Reactor、CSTR)に関する図であり、
図2に示されたように、反応原料をポンプ(2)により投入し、この際、加熱装置(4)により熱を加え、反応器(6)に投入する。前記反応器(6)内で、生成される反応物は反応器下部に排出され、この際、冷却器(cooler、7)により冷却されて排出される。また、前記エステル化反応によって生成される副産物である水は、反応器上部に蒸留され、これは、還流器(condenser、8)を経て除去することができる。
【0017】
CSTR反応器は反応物の先入先出が難しく、反応器1機で反応目標水準に至り難い。これを補完するために、一部の特許では、反応器を複数連結して連続反応を送ることを開示している。目標反応水準に到達するために、中国特許CN第2017-10598802号は、Kettle型反応器4つをシリーズで連結して反応させる方法を開示しており、米国特許US 13/924235号は、CSTR反応器を2つ連結して連続反応させることを開示している。このように、反応器を複数連結すれば、単一CSTR反応器に比べて反応性を高め、連続反応が可能である。
【0018】
しかし、提案された回分反応器(Batch)、CSTR反応器は、反応副産物である水が蒸気形態で除去されて蒸気として排出される水と共に反応物と生成物が損失するという問題がある。
【0019】
米国特許US 13/92435号によれば、円滑な反応を送るために、蒸気(vapor)で水を除去する。しかし、蒸気ストリーム(vapor stream)には、水、反応原料(feed stock)及びグリセリン(glycerin)が含まれており、収率の側面でも損失が発生するので、除去された蒸気ストリーム(vapor stream)で反応原料(feed stock)及びグリセリン(glycerin)を分離すべきである。
【0020】
大韓民国特許KR 10-1073721号によれば、583.9gのソープストックを反応させる際、654.68gのグリセリドを回収し、総蒸留量は58.58gであり、この中に、約3.5mlの低分子量脂肪酸を含んでいる。これは、生成物比約0.5重量%の脂肪酸が蒸気(vapor)で損失し、総蒸留量のうち、約5.5重量%が脂肪酸であることが分かる。
【0021】
攪拌型反応器(回分式反応器、CSTR反応器)は、カラム型反応器とは異なって、反応副産物である水を除去する過程で水と共に蒸気として排出される反応物と生成物は回収できない構造で、反応過程で主な物質の損失が発生する。反応物と生成物の損失なしに水だけ効率よく除去することができず、原料内の水分含量から自由でない。また、攪拌型反応器は完璧な先入先出が難しく、反応器の反応原料が反応に十分に関与できず、排出される場合がある。それに対して、カラム型反応器は先入先出が可能で、単一反応器で十分な反応性を確保することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【文献】米国特許US 13/92435号
【文献】大韓民国登録特許公報第10-1073721号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、触媒を用いずに、脂肪酸とグリセリンを反応させて、バイオオイル(グリセリド)を連続的に製造する方法を提供することである。
【0024】
本発明の他の目的は、カラム型反応器を用いて、副産物である水を効果的に除去し、原料であるグリセリンの精製過程が必要でなく、グリセリン内の水分含量に制限なく、反応原料として使用可能であることから、反応効率を上げ経済的にバイオオイルを製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
前記目的を達成するために、本発明は、反応器内部に垂直方向に多数の隔室(compartment)が形成されるように、多数の段(tray)が反応器内部に設けられており、前記多数の段には開口部が形成され、上下隣接する隔室を連結するものの、前記隣接する段の開口部は互いに食い違うように交差形成されているカラム型反応器の中間に位置した原料投入口にグリセリンと脂肪酸とを含む原料をそれぞれ投入して、反応区域のそれぞれの段(tray)でグリセリンと脂肪酸とを含む原料をエステル化反応させ、バイオオイル及び水を生成する段階、前記生成されたバイオオイルを反応器下部を通じて得る段階及び前記エステル化反応で生成される水は気化しながら有効成分である反応原料とバイオオイルとが共に蒸発して蒸気状態で反応器上部の蒸留区域に移動し、前記蒸留区域で蒸気に含まれた水と有効成分である反応原料とバイオオイルとを分離させ、前記分離された有効成分は反応器下部の反応区域に流し、分離された水は蒸気状態で反応器上部を通じて除去される段階を含み、前記バイオオイルの酸価は30mgKOH/g以下であり、前記エステル化反応は170~350℃の反応温度及び常圧で、触媒を用いずに行われるものである、バイオオイルの製造方法を含む。
【発明の効果】
【0026】
本発明による高酸価油脂からのバイオオイル製造方法は、触媒を用いずに、脂肪酸とグリセリンとを反応させて、バイオオイル(グリセリド)を連続的に製造し、カラム型反応器を用いて、副産物である水を効果的に除去し、原料であるグリセリンの精製過程が必要でなく、グリセリン内の水分含量に制限なく、反応原料として使用可能であることから、反応効率を上げ経済的にバイオオイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】
図1は、既存のバイオオイルの製造に用いられる回分式(Batch)反応器の構成図である。
【
図2】
図2は、既存のバイオオイルの製造に用いられるCSTR反応器を示す図面である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施例によるバイオオイルの製造に用いられるカラム型反応器の全体構成図である。
【
図4】
図4は、本発明の一実施例によるカラム型反応器を具体化した図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施例による反応器の内部温度と滞留時間による酸価を示した図表である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施例または一側面は、本発明の技術的思想を説明する目的で例示されたものである。本発明による権利範囲が以下に提示される実施例または一側面やこれらに関する具体的な説明に限定されるわけではない。
【0029】
本発明で用いられる全ての技術的用語及び科学的用語は、特に定義されない限り、本発明の属する技術分野において通常の知識を有する者に一般に理解される意味を有する。本発明で用いられる全ての用語は、本発明をさらに明確に説明する目的で選択されたものであり、本発明による権利範囲を制限するために選択されたわけではない。
【0030】
本発明で用いられる「含む」、「備える」、「有する」等の表現は、当該表現が含まれる語句または文章において特に言及されない限り、他の実施例を含む可能性を内包する開放型用語(open-ended terms)として理解されるべきである。
【0031】
本発明で用いられる当該構成「だけで構成される」等の表現は、当該構成以外に他の構成を含む可能性を排除する閉鎖型用語(closed-ended terms)として理解されるべきである。
【0032】
本発明で記述された単数形の表現は、特に言及しない限り複数形の意味を含み得、これは請求の範囲に記載された単数形の表現にも同様に適用される。
【0033】
本発明の一側面において、用語「約」は、具体的な数値に含まれる製造工程上の誤差や本発明の技術的思想の範疇に入る若干の数値の調整を含む意図で用いられた。例えば、用語「約」は、それが指す値の±10%、一側面で±5%、また他の側面で±2%の範囲を意味する。この開示内容の分野において、値が具体的により狭い範囲を要求しているものとして言及されないならば、この水準の近似値が適切である。
【0034】
以下、添付の図面を参照して、本発明を次の通り、詳細に説明する。
【0035】
図3は、本発明の一実施例によるバイオオイルの製造方法に用いられる製造装置の全体構成図である。
図3に示された通り、本発明で用いられる反応器はカラム型反応器であって、反応器内部に垂直方向に多数の隔室(compartment)が形成されるように、多数の段(tray)が反応器内部に設けられている。前記多数の段には開口部が形成され、上下隣接する隔室を連結するものの、前記隣接する段の開口部は互いに食い違うように交差形成されている。本発明のバイオオイル製造方法は、前記カラム型反応器の中間に位置した原料投入口にグリセリン(10)と脂肪酸とを含む原料(10'、以下、必要に応じて単に脂肪酸という)をそれぞれ投入して、反応器の原料投入口の下に位置した反応区域(13b)のそれぞれの段(tray)でグリセリンと脂肪酸とをエステル化反応させて、バイオオイル(グリセリド)及び水が生成される段階;前記生成されたバイオオイル(グリセリド)は反応器下部を通じて得られる段階;及び前記バイオオイル(グリセリド)及び水が生成される段階で、副産物として生成される水は気化しながら有効成分である反応原料と生成物の一部が共に蒸発して蒸気状態で反応器上部の蒸留区域に移動し、蒸留区域で蒸気に含まれた水と有効成分(反応原料と生成物)を分離して、分離された有効成分は反応器下部の反応区域に流し、分離された水は蒸気状態で反応器上部を通じて除去される段階;を含む。前記バイオオイル(グリセリド)は170~350℃の反応温度で、常圧条件で、触媒を用いずに、2時間以上エステル化反応させて生成されるものであり、酸価が30mgKOH/g以下であるバイオオイル(グリセリド)を製造することができる。
【0036】
本発明において、グリセリン(10)は精製グリセリン、粗(crude)グリセリン等を含み、具体的には、グリセリンの濃度が3~100質量%、好ましくは5~99質量%であるものであり、さらに具体的には、グリセリンの濃度が5~85質量%である粗(crude)グリセリンから99~100質量%の精製されたグリセリンまで多様なグリセリンを含み得る。また、伝統的な既存の脂肪酸製造工程またはバイオディーゼル製造工程で発生した粗(crude)グリセリンは、追加で濃縮工程を経ずに、すぐに用いられ、液体(liquid)状態で用いるのが望ましい。
【0037】
前記脂肪酸を含む原料(10')は脂肪酸の含量が15~100重量%、好ましくは20~97重量%であるものである。
【0038】
具体的には、前記脂肪酸を含む原料は、ソープストック(soap stock)を加工して製造した酸油(acid oil)を含み、前記ソープストック(soap stock)は植物性油を精製する過程で添加するアルカリと遊離脂肪酸とが反応して生じる石鹸物質であって、ソープストック(soap stock)を硫酸処理して、酸油(acid oil)を製造する。
【0039】
前記脂肪酸を含む原料は、油脂化学製品(oleochemical)の工程で発生する製品または副産物(例えば、脂肪酸残留物(pitch))のうち、脂肪酸成分が存在する原料を含む。前記油脂化学製品(oleochemical)は、動・植物性油脂またはそれより誘導された化学製品を意味し、脂肪酸を含む原料は、前記油脂化学製品(oleochemical)を製造する際に発生する副産物または製品であって、脂肪酸の含量が15~100重量%であるのが望ましい。
【0040】
また、前記脂肪酸を含む原料は、動/植物油の搾油、精製過程で出る脂肪酸が含まれたオイル(例えば、palm sludge oil、palm oil mill effluent、palm fatty acid distillate等)、回収油(例えば、廃食用油、brown grease等)等をさらに含み得、具体的には、脂肪酸の含量が15~100重量%である動物性及び植物性油脂であるのが望ましい。
【0041】
前記脂肪酸を含む原料は反応器に投入される前に、加熱器(12)により加熱した状態で投入されるのが望ましい。この際、加熱器(12)の温度は100~250℃、好ましくは150~250℃である。前記脂肪酸は酸価が30mgKOH/g超(高酸価)であり、液体(liquid)状態で用いるのが望ましい。反応原料を加熱して反応器に入れ、反応器の内部温度が一定に維持され得る。この際、脂肪酸はグリセリンに比べ、相対的に投入量が多いので、前記脂肪酸を投入する際、加熱させて投入することができる。
【0042】
前記脂肪酸を含む原料とグリセリンの混合比(モル比)は、具体的には、脂肪酸を含む原料に含まれている脂肪酸とグリセリンに含まれているグリセリンとのモル比であって、3:0.5~3:2、好ましくは、3:0.75~3:1であり、前記脂肪酸とグリセリンとの混合比(モル比)より少ないグリセリンを用いれば、目標酸価を満たすことができず、前記脂肪酸とグリセリンとyの混合比(モル比)より多くのグリセリンを用いれば、最終生成物内の未反応グリセリンが多量に存在する。特に、過量のグリセリンを投入する場合、製造されたバイオオイル(グリセリド)とグリセンとが層分離されるので、グリセリンを分離する過程が追加で必要なこともある。
【0043】
一方、本発明によるバイオオイル製造方法を通じて、高酸価油脂を原料として活用して酸価の低いバイオオイルが得られるが、本発明において「高酸価油脂」とは、30mgKOH/g超、40mgKOH/g超、50mgKOH/g超、60mgKOH/g超、70mgKOH/g超、80mgKOH/g超、90mgKOH/g超、100mgKOH/g超、110mgKOH/g超、120mgKOH/g超、または130mgKOH/g超の酸価を有する油脂であってもよく、特に130mgKOH/g超を越え150mgKOH/g超、または180mgKOH/g超の超高酸価油脂であってもよい。
【0044】
本発明の具体的な一実施例によれば、本発明のバイオオイル製造方法を通じて、維持原料として酸価139mgKOH/gを有するパームオイル(PAO)または酸価189mgKOH/gを有するPalm Fatty Acid Distillate(PFAD)を用いて、反応器の滞留時間に応じて酸価が22mgKOH/gまたは26.2mgKOH/gに至る低い酸価のバイオオイルを得た。
【0045】
以下、本発明によるバイオオイル(グリセリド)の反応(製造)条件を具体的に説明する。本発明は、カラム型反応器で連続反応を行うのに先立ち、反応条件の最適化に効率のよい回分式(Batch)反応で反応条件を選定した。具体的には、本発明によるエステル化反応は、高温領域で行われるので、高い反応速度及び脂肪酸の転換率が得られる。前記エステル化反応温度は170~350℃、好ましくは200~250℃であり、反応圧力は常圧でなされ、減圧条件でなくても高い反応速度及び転換率を示す。前記反応温度範囲を外れれば、反応速度及び脂肪酸の転換効率が低下するか、または脂肪酸とグリセリンとがエステル化反応して生成された水が円滑に除去されることができず、逆反応の恐れがある。
【0046】
本発明は、無触媒反応に進むのが望ましく、触媒を用いる場合、反応性がより良いかもしれないが、触媒を用いなくても副産物である水を効果的に除去し反応性を十分に高くすることができる。触媒反応の場合、触媒の再使用が難しく、価格が高く、製造費が高くなるだけでなく、触媒を除去するための工程(例えば、フィルタ工程)が追加で必要であるという問題がある。即ち、触媒を用いないことで、触媒を除去するための工程が必要ではなく、製造原価も低くなり、経済的にバイオオイルを製造することができる。また、本発明の反応時間は2時間以上、または2時間15分以上であり、約6時間であれば反応が完結すると判断される。従って、本発明の反応時間は2~6時間であってもよい。
【0047】
従来は、脂肪酸のエステル化反応の副産物である水を円滑に除去することが必要なために、真空/減圧条件または窒素を流しながら反応して反応転換率を高めようとした。当該条件で反応するためには、真空/減圧運転または窒素を注入するための施設を取りそろえなければならない。しかし、本発明では、常圧で、170~350℃、好ましくは200~250℃の高温で反応を行うので、別途の設備なしで、反応で生成された水は反応系で持続的に除去される。従って、本発明によるエステル化反応は、別途の追加設備なしに反応平衡を越え、完全反応に近いほど反応転換率に優れた長所を有する。
【0048】
本発明で得られるバイオオイル(18)は、モノ-、ジ-、トリグリセリド及びこれらの混合物を意味する。前記バイオオイル(グリセリド)の酸価は、製品の用途によって目標酸価が異なるが、30mgKOH/g以下、好ましくは25mgKOH/g以下である。
【0049】
図4は、本発明によるバイオオイルを製造するためのカラム型反応器を具体化した図であって、
図4に示された通り、本発明で用いられるエステル化反応器は、常圧条件で運転されるカラム(column)型反応器である。前記カラム型反応器は、反応器内部に垂直方向に多数の隔室(compartment)が形成されるように、多数の段(tray、14a)が反応器内部に設けられており、前記多数の段には開口部が形成され、上下隣接する隔室を連結(communicate)するものの、前記隣接する段の開口部は互いに食い違うように交差形成され、反応物が多数の隔室を順次全て通過するようになっている。
【0050】
前記カラム型反応器内部は、反応原料を注入する所を基準に、上段を反応器上部(13a)、下段を反応器下部(13b)と称し、反応器上部は蒸留区域、反応器下部は反応区域である。反応区域は、液相である反応原料と生成物であるバイオオイルとで満たされたfull liquid typeである。このようなカラム型反応器において、反応器中間に位置する原料注入口にグリセリンと脂肪酸とをそれぞれ投入すれば、反応器下部に移送される過程で、反応区域(13b)の互いに異なる段(tray、14a)に順次移動することで、連続的にエステル化反応するようになり、反応物の短距離移動(short pass)を防止し、先入先出(first-in first-out)が可能で、十分な反応時間を確保することができる。
【0051】
前記反応区域のそれぞれの段(tray)でグリセリンと脂肪酸とがエステル化反応してバイオオイル(グリセリド)と水とが生成され、そのうち、副産物として生成される水(17)は、高い反応温度によって気化し、蒸気(vapor)状態で反応区域のそれぞれの段(tray)に形成されたホール(Hole)、バルブ(Valve)またはバブルキャップ(Bubble cap)等のような段のタイプによる多様な形態の蒸気(vapor)移動通路(14b)を通過して、カラム型反応器上部の蒸留区域(13b)に移動する。水が気化して蒸気状態で反応器上部である蒸留区域に移動しながら、有効成分である反応原料とバイオオイルとを共に引っ張り上がるので、反応器上部に移動される蒸気成分としては、除去されるべき水と除去されてはならない有効成分(反応原料及びバイオオイル)とが共に存在する。
【0052】
前記反応器上部の蒸留区域は、一般的な化学工程の段(tray)で構成された蒸留塔と同一の構造で、前記反応区域を抜け出した蒸気が蒸留区域のそれぞれの段(tray)で気-液接触によって沸点の高い反応原料とバイオオイルとは凝縮されて液相に、沸点の低い水は気相に分離される。分離された反応原料とバイオオイルとは、段(tray)に沿って反応器下部の反応区域に流れ、水は蒸気形態で反応器上部に排出される。この際、反応器上部に排出される蒸気形態の水はコンデンサ(condenser)によって冷却され、一部は還流(reflux)されて反応器に戻し、一部は除去される。コンデンサで冷却された水と微量の有効成分とを反応器で還流(reflux)すれば、蒸留区域における水と有効成分(反応原料及びバイオオイル)の分離効率を高めることができる。
【0053】
エステル化反応条件において、反応で生成された水は蒸気形態で除去され、製造されたバイオオイルだけカラム段(tray)に沿って反応器下部に流れるので、カラム型反応器下部(13b)の段(tray)には、水が殆ど存在せず、逆反応なしに反応を完結させることができ、反応して発生した蒸気として損失し得る有効成分を反応器の蒸留区域から再び反応区域に戻し、有効成分の損失を最小化することができる。
【0054】
前記カラム型反応器内部には多数の段(tray)を含み、それぞれの段(tray、14a)には多数の蒸気(vapor)移動通路(14b)を含んでいる。この際、蒸気(vapor)移動通路は段(tray)のタイプによってバブルキャップ(bubble cap)型、sieve型、バルブ(valve)型など多様なタイプが適用され得る。
【0055】
本発明は、グリセリン(10)と脂肪酸(10')のエステル化反応で生成されたバイオオイル及び未反応原料であるグリセリン(10)と脂肪酸(10')とは反応器の下部に排出(15a)され、具体的には、クーラー(cooler、16)により冷却され、生成物であるバイオオイル(グリセリド、18)と未反応原料であるグリセリンと脂肪酸とを得ることができる。また、それぞれの段(tray)は未反応グリセリン(10)と脂肪酸(10')との短距離移動(short pass)を防止し、先入先出(first-in first-out)が可能で十分な滞留時間を保障して反応転換効率を向上させる。このような前記各長所は、酸価の低いバイオオイルを製造できる最適な反応条件を形成し得る。
【0056】
この際、反応区域では、反応に必要な2~6時間の滞留時間が確保できるように流速を定める。
【0057】
カラム型反応器を用いることで、脂肪酸とグリセリンとをエステル化反応して、一段階の反応だけで目標酸価に到達した低酸価バイオオイル(グリセリド)を製造することができる。
【0058】
また、蒸気として水と共に反応器を抜け出して損失する反応原料である脂肪酸及びグリセリン、生成物であるバイオオイル(グリセリド)の量を最小化することができ、水だけ効率よく除去可能である。水だけ効率よく除去可能な反応器構造なので、水分含量による制限なしで反応原料を使用可能である。このように製造されたバイオオイル(グリセリド)はバイオ重油だけでなく、船舶油、産業用オイル等、バンカー-c油の代わりとして用いることができる。
【0059】
本発明の具体的な一実施例では、本発明の連続反応カラム型反応器を用いたとき、既存の連続反応CSTR反応器を用いたときより、グリセリド及び脂肪酸の流失率が低くなり、低い温度で反応を進めてもさらに低い酸価のバイオオイルが得られることを確認した(実験例15)。
【実施例】
【0060】
以下、実施例及び比較例を通じて本発明をより詳細に説明する。下記の実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例によって限定されるわけではない。
【0061】
分析方法
【0062】
(1)酸価(mgKOH/g)は、KSM ISO 6618~指示薬滴定法によって分析した。
【0063】
(2)水分は、カールフィッシャー(Karl-fisher)を用いて分析した。
【0064】
(3)反応生成された水のグリセリン濃度は、KSM 2708-6.7を用いて分析した。
【0065】
(4)グリセリン及びOilの含量は、KSM 2412参考(modified)の内部標準物質で検量線を作成、作成された検量線を用いて定量分析した。前記グリセリン内部標準物質はブタントリオールであり、Mono-、Di-、Triglyceride内部標準物質はトリカプリンを用いて、Glycerin、Monoglyceride(Olein、Palmitin)、Diglyceride、Triglyceride含量を測定した(Oil含量=Mono-、Di-、Tri glyceride含量の合計を意味する。)。
【0066】
(5)脂肪酸の含量は、GC分析(Internal standard:C17 acid)により分析した。
【0067】
反応原料
【0068】
脂肪酸を含む原料:
【0069】
(1)Palm Sludge OilまたはPalm Oil Mill Effluent(POME)で、パームの実からオイルの搾油過程で発生した水を層分離して回収したパームオイル、Palm Acid Oil(PAO)とも呼ばれる。
【0070】
(2)Palm Fatty Acid Distillate(PFAD)で、パームオイルの製造工程中に発生する副産物。
【0071】
精製グリセリン:純度99%以上の試薬級グリセリン。
【0072】
粗(Crude)グリセリン:Oleochemical工程(バイオディーゼル、脂肪酸製造工程等)で発生したグリセリンであって、グリセリン純度が低い。
【0073】
[実験例1~4]反応温度によるバイオオイル製造実験(回分式)
【0074】
回分式(Batch)反応における運転条件を設定するための実験として、反応原料として脂肪酸原料(PAO)とグリセリン(精製グリセリンまたは粗(crude)グリセリン)とを用いた。用いた脂肪酸原料(PAO)の酸価、オイル(グリセリド)、水分、脂肪酸の含量は、下記表1に表記した。前記グリセリンは純度9~99重量%以上で、グリセリン含量の異なる多様なグリセリンを用いた。実験例1は精製グリセリンを用い、実験例2~4は粗(crude)グリセリンを用いた。反応に用いたグリセリンの含量は、下記表1に表記した。
【0075】
脂肪酸を含む原料(PAO) 200gと脂肪酸およびグリセリンのモル比が3:2になるグリセリン量とを反応器に投入し、反応器温度を170~250℃まで上げ反応温度に至るときから反応時間を計算した。この際、反応器上部で反応生成物である水(蒸気状態)を冷却して連続的に除去した。反応温度により、最終的に得られるバイオオイル(グリセリド)の最終酸価を下記表1に記載した。
【0076】
【0077】
前記表1に示した通り、実験例1~4で反応温度が170~250℃で脂肪酸がグリセリドに転換され、酸価が低くなることを確認した。特に、実験例1~3は反応温度が200~250℃であって、反応性が良く、反応後の酸価は30mgKOH/gより低い酸価を有することを確認した。一方、実験例4の場合には、最終酸価が本発明による酸価を満たせなかった。
【0078】
[実験例5~9]反応時間に応じたバイオオイル製造実験(回分式)
【0079】
反応原料として脂肪酸原料(PAO)とグリセリン純度が8.8重量%である粗(crude)グリセリンとを用いた。用いた脂肪酸原料(PAO)の酸価、oil(グリセリド)、水分、脂肪酸の含量は、下記表2に表記した。
【0080】
脂肪酸原料(PAO) 200gと脂肪酸:グリセリンのモル比が3:2になる粗(crude)グリセリン(9重量%)量とを反応器に投入し、攪拌しながら反応温度を200℃まで昇温させて、前記温度に到達して時間別にサンプリングして分析した。反応器上部で反応生成物である水(蒸気状態)を冷却して連続的に除去した。反応時間により、最終的に得られるバイオオイル(グリセリド)の最終酸価、含量、水分などを下記表2に記載した。
【0081】
【0082】
前記表2に示した通り、実験例5~7は、反応温度200℃で反応時間1時間45分まで酸価が急激に低くなることを確認したが、酸価30mgKOH/gに到達できなかった。一方、実験例8は反応時間が2時間15分であって、酸価30mgKOH/gに到達し、実験例9は反応時間2時間30分であって、酸価30mgKOH/g以下である、21.8mgKOH/gに到達した。従って、反応時間は2時間以上必要であると確認された。
【0083】
[実験例10~14]脂肪酸とグリセリンとの混合比(モル比)によるバイオオイル製造実験(回分式)
【0084】
反応原料としてPAOとグリセリン純度35重量%の粗(crude)グリセリンとを用いた。用いたPAOの酸価、oil(グリセリド)、水分、脂肪酸の含量は、下記表3に表記した。PAO 200gと粗(crude)グリセリンとを反応器に投入した。この際、反応原料である粗(crude)グリセリンの投入量は、下記表3に記載されたモル比率に合わせて投入した。
【0085】
反応温度は250℃に設定して昇温し、実験例11の場合、反応温度を200℃に昇温した。反応温度に到達した後から反応時間を計算した。
【0086】
【0087】
前記表3に示した通り、脂肪酸とグリセリンとのモル比(混合比)に対する実験結果、実験例10~14の全ての条件で酸価が50mgKOH/gに低くなり、特に、実験例10~13は脂肪酸とグリセリンとのモル比(混合比)が3:0.75~2である場合であって、酸価30mgKOH/g以下に到達したことが分かる。実験例10~12の場合、最終生成物内の微量のグリセリンを確認した。グリセリンの投入量があまりにも多ければ、最終生成物にグリセリンが存在する一方、グリセリンを多く投入するほど酸価を容易に低くすることができるので、最終生成物に存在するグリセリンを分離する工程が追加で必要である。
【0088】
[実験例15]連続反応カラム型反応器と連続反応CSTR反応器とを用いたバイオオイル製造の比較(原料PAO)
【0089】
連続反応カラム型反応器と連続反応CSTR反応器とを用いてバイオオイル製造して、酸価と流失率とを比較した(下記表4)。下記表4のグリセリドと脂肪酸との流失(loss)比率(流失率)は、下記の反応式2で計算されたものであって、蒸気として除去されたグリセリドまたは脂肪酸の量を反応器下部に排出されるバイオオイルの量で除した値を意味する。
【0090】
[反応式2]
【0091】
【0092】
(1)連続反応カラム型反応器の使用実施例
【0093】
実験例1~14で実験した回分式(Batch)反応における運転条件を適用した。反応温度は250℃、常圧条件でバイオオイルを製造した。触媒は用いず、投入原料は脂肪酸原料PAO(酸価139mgKOH/g)、粗(crude)グリセリン(グリセリン含量48重量%)を用いた。PAOは加熱(heating)して反応器に投入し、粗(crude)グリセリンは加熱せずに反応器に投入した。
【0094】
FEED流量:PAO 13.6g/min、CGL 1.8g/min [FFA:Glycerinモル比=3:約0.8]、Prod流量:14.0g/min、反応器の滞留時間は4.5時間に設定した。反応器上部で蒸気(vapor)を除去した。最終的に得られるバイオオイル(グリセリド)の物性を下記表4に記載した。
【0095】
(2)連続反応CSTR反応器の使用比較例
【0096】
反応温度は250℃、常圧条件でバイオオイルを製造した。触媒は用いず、投入原料は脂肪酸原料PAO(酸価139mgKOH/g)と粗(crude)グリセリン(CGL、グリセリン含量48重量%)とをモル比(mol比、混合比)が3:約0.8の比率で混合して用いた。前記混合された反応原料(PAO、CGL)は加熱(heating)して反応器に投入した。
【0097】
Feed流量(PAO、CGLを混合して投入):9.5g/min、Prod流量8.6g/min、反応器の滞留時間は2時間に設定した。反応器上部で蒸気(vapor)を除去した。最終的に得られるバイオオイル(グリセリド)の物性を下記表4に記載した。
【0098】
(3)結果
【0099】
【0100】
図4は、実施例による反応器の内部温度と滞留時間による酸価とを示した図表である。実施例に用いられるカラム型反応器内部の反応区域で温度は上部から中部まで140~243℃であり、中部から下部までは245℃の温度を維持した。下記
図5に示された通り、カラム型反応器(実施例)の滞留時間が2.25時間であるとき、反応区域の中間でサンプリングした試料の分析結果として、前記バイオオイル(グリセリド)の酸価は34.6mgKOH/gで、反応温度である250℃より低い温度区間にもかかわらず、30mgKOH/gと近接した数値の酸価を有し、CSTR反応器(比較例)の滞留時間が2時間であるとき(反応器に滞留する間に反応温度250℃維持)の酸価46.5mgKOH/gより低い数値を示した。また、カラム型反応器(実施例)の滞留時間が反応時間が4.5時間である場合、酸価30mgKOH/g以下に到達したことが分かる。カラム型反応器(実施例)でさらに低い温度条件の反応結果がCSTR反応器(比較例)で高い温度条件の反応結果と類似するか、さらに良いことから見て、カラム型反応器(実施例)における反応効率がより良いことを確認した。
【0101】
[実験例16]連続反応カラム型反応器を用いたバイオオイル製造(原料PFAD)
【0102】
250℃、常圧条件で無触媒でカラム型反応器で反応原料PFAD、粗(Crude)グリセリンを連続して投入、反応してバイオ重油を製造した。用いた反応原料は、PFAD(酸価189mgKOH/g;超高酸価油脂)、粗(Crude)グリセリン(グリセリン含量36%)で、脂肪酸(FFA):glycerinモル比が3:0.9になるようにPFAD 12.8g/min、粗(Crude)グリセリン3.3g/minで投入した。PFADは加熱して反応器に投入し、粗(Crude)グリセリンは加熱せずに反応器に投入した。
【0103】
反応器上部で反応生成物である水と粗(Crude)グリセリンとに含まれた水を蒸気として除去し、反応器下部でバイオオイル(グリセリド)と未反応グリセリン、脂肪酸を13.3g/minで排出した。この際の反応器の滞留時間は、約5時間になる。
【0104】
滞留時間が5時間になったときの製造されたバイオオイルの酸価は26.2mgKOH/gで、本発明の連続反応カラム型反応器を用いる場合、酸価が高度で高い原料(脂肪酸の含量が高い原料)を用いても酸価30mgKOH/g以下のバイオオイルを製造できることを確認した。
【0105】
以上の説明から、本発明の属する技術分野の通常の技術者は、本発明がその技術的思想や必須特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施され得るということを理解できるはずである。これと関連し、以上に記述した各実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的なものでないものと理解すべきである。本発明の範囲は、前記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、また、その等価概念から導き出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。