(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41F 15/42 20060101AFI20240523BHJP
B41F 15/08 20060101ALI20240523BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
B41F15/42
B41F15/08 303E
H05K3/34 505D
(21)【出願番号】P 2022550291
(86)(22)【出願日】2020-09-18
(86)【国際出願番号】 JP2020035471
(87)【国際公開番号】W WO2022059168
(87)【国際公開日】2022-03-24
【審査請求日】2023-02-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】高間 和志
【審査官】小宮山 文男
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-307864(JP,A)
【文献】特開2014-172243(JP,A)
【文献】特開平09-193343(JP,A)
【文献】特開2010-260293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0042795(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 15/42
B41F 15/08
H05K 3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられたマスクの上面に当接し、所定の方向に移動して前記マスクに供給された半田を基板に印刷するスキージと、
前記スキージを前記所定の方向に移動させる駆動部と、
前記駆動部による前記スキージの移動を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、印刷以外のタイミングにおいて、前記マスク上の半田の中心部分が露出するように
、前記スキージにより前記マスク上の半田を切断または前記マスク上に広げるように延ばして、前記スキージにより半田を撹拌する制御を行うように構成されている、印刷装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記マスク上の半田の中心部分が露出するように前記スキージにより前記マスク上の半田を切断または前記マスク上に広げるように延ばしてから、露出した中心部分の半田を他の部分の半田と混合させて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている、請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記マスク上の半田の中心部分が露出するように前記スキージを第1移動動作により移動させてから、前記スキージを前記第1移動動作とは異なる第2移動動作により移動させて、露出した中心部分の半田を他の部分の半田と混合させて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている、請求項1
または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記スキージにより前記マスク上の半田を、上下方向に切断、水平方向に切断、斜め方向に切断、または、前記マスク上に広げるように延ばすようにして、半田を撹拌する制御を行うように構成されている、請求項1~
3のいずれか1項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、運転時間、印刷枚数、半田の補充回数、および、ユーザの撹拌指示のうち、少なくとも1つに基づいて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている、請求項1~
4のいずれか1項に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に、半田を基板に印刷する印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半田を基板に印刷する印刷装置が知られている。このような印刷装置は、たとえば、特開2010-260293号公報に開示されている。
【0003】
上記特開2010-260293号公報には、所定の方向に移動してマスクに供給された半田を基板に印刷するスキージが設けられた印刷装置が開示されている。また、上記特開2010-260293号公報の印刷装置は、古い半田がマスク上に残存するのを抑制するために、マスク上の半田の内部に配置されて半田を撹拌するためのローラと、ローラを回転駆動するための回転駆動源とが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特開2010-260293号公報の印刷装置では、古い半田がマスク上に残存するのを抑制するために、マスク上の半田の内部に配置されて半田を撹拌するためのローラと、ローラを回転駆動するための回転駆動源とを設ける必要がある。このため、部品点数が増加するとともに、装置構成が複雑化するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、部品点数が増加すること、および、装置構成が複雑化することを抑制しつつ、古い半田がマスク上に残存する虞を低減することが可能な印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面における印刷装置は、開口が設けられたマスクの上面に当接し、所定の方向に移動してマスクに供給された半田を基板に印刷するスキージと、スキージを所定の方向に移動させる駆動部と、駆動部によるスキージの移動を制御する制御部とを備え、制御部は、印刷以外のタイミングにおいて、マスク上の半田の中心部分が露出するように、スキージによりマスク上の半田を切断またはマスク上に広げるように延ばして、スキージにより半田を撹拌する制御を行うように構成されている。
【0008】
この発明の一の局面による印刷装置では、上記のように、印刷以外のタイミングにおいて、マスク上の半田の内部が露出するようにスキージにより半田を撹拌する制御を行う制御部を設ける。これにより、半田の内部と外部とを効果的に撹拌することができるので、半田の内部の部分が基板への印刷に使われずに残り続けるのを抑制することができる。また、印刷に用いるスキージ自体により半田の内部の撹拌を行うことができるので、半田を撹拌するためのローラやローラを回転駆動するための回転駆動源を設ける必要がない。これらの結果、部品点数が増加すること、および、装置構成が複雑化することを抑制しつつ、古い半田がマスク上に残存する虞を低減することができる。
【0009】
上記一の局面による印刷装置では、制御部は、マスク上の半田の中心部分が露出するように、スキージによりマスク上の半田を切断またはマスク上に広げるように延ばして、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。これにより、スキージにより半田を切断またはマスク上に広げるように延ばすことにより、半田の内部を確実に露出させることができるので、半田の内部と外部とをより効果的に撹拌することができる。
【0010】
上記一の局面による印刷装置において、好ましくは、制御部は、マスク上の半田の中心部分が露出するようにスキージによりマスク上の半田を切断またはマスク上に広げるように延ばしてから、露出した中心部分の半田を他の部分の半田と混合させて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、スキージにより内部の半田と他の部分の半田とをより効果的に撹拌することができるので、古い半田が内部に残存する虞をより効果的に低減することができる。
【0011】
上記一の局面による印刷装置において、好ましくは、制御部は、マスク上の半田の中心部分が露出するようにスキージを第1移動動作により移動させてから、スキージを第1移動動作とは異なる第2移動動作により移動させて、露出した中心部分の半田を他の部分の半田と混合させて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、半田の内部を露出させるスキージの移動と、内部の半田と他の部分の半田とを混合させるスキージの移動とを異ならせることができるので、露出した内部の半田が撹拌されずに再び内部に戻されるのを効果的に抑制することができる。
【0012】
上記一の局面による印刷装置において、好ましくは、制御部は、スキージによりマスク上の半田を、上下方向に切断、水平方向に切断、斜め方向に切断、または、マスク上に広げるように延ばすようにして、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、半田を上下方向に切断することにより、半田の量に関わらず半田の中心位置を容易に切断することができるので、半田の内部をより効果的に露出させることができる。また、半田を水平方向に切断、斜め方向に切断、または、マスク上に広げるように延ばすことにより、スキージの裏側に半田が付着するのを抑制することができるので、印刷時にスキージの裏側に付着した半田が意図しない位置に剥離して配置されるのを抑制することができる。
【0013】
上記一の局面による印刷装置において、好ましくは、制御部は、運転時間、印刷枚数、半田の補充回数、および、ユーザの撹拌指示のうち、少なくとも1つに基づいて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。このように構成すれば、半田の内部を定期的に露出させて撹拌することができるので、古い半田が内部に残存する虞をより効果的に低減することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、部品点数が増加すること、および、装置構成が複雑化することを抑制しつつ、古い半田がマスク上に残存する虞を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態による印刷装置の全体構成を示した正面図である。
【
図2】本発明の一実施形態による印刷装置のスキージユニット付近の側面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による印刷装置の制御的な構成を示したブロック図である。
【
図4】本発明の一実施形態による印刷装置の半田の第1の撹拌例を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態による印刷装置の半田の第2の撹拌例を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態による印刷装置の半田の第3の撹拌例を説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態による印刷装置の半田の第4の撹拌例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
図1~
図7を参照して、本発明の一実施形態による印刷装置100の構造について説明する。
【0018】
本実施形態による印刷装置100は、マスク300に形成された開口の所定のパターンで基板200の表面に半田を印刷する機能を有している。印刷装置100は、
図1に示すように、基台1と、基台1上に設けられ、基板200を保持するとともに、マスク300に対して位置合わせする基板テーブル2と、基板テーブル2の上方に配置されたマスク300の上方に設けられたスキージユニット3とを備えている。この印刷装置100は、搬入コンベア4aにより搬入される基板200に対して印刷処理を行った後、印刷済みの基板200を搬出コンベア4bにより搬出する機能を有している。
【0019】
基板テーブル2は、主に、一対のコンベア22と、X軸移動機構23と、Y軸移動機構24と、R軸移動機構25と、Z軸移動機構26と、基板昇降支持機構27とにより構成されている。
【0020】
X軸移動機構23は、X軸駆動部231(
図3参照)と、X軸テーブル232と、X軸レール233とを有する。Y軸移動機構24は、Y軸駆動部241(
図3参照)と、Y軸テーブル242と、Y軸レール243とを有する。R軸移動機構25は、R軸駆動部251(
図3参照)と、R軸テーブル252とを有する。Z軸移動機構26は、Z軸駆動部261(
図3参照)と、Z軸テーブル262とを有する。基板昇降支持機構27は、バックアップ軸駆動部271(
図3参照)と、基板昇降支持部材(複数本のバックアップピン)272とを含む。
【0021】
基板テーブル2は、搬送される基板200をコンベア22上所定の位置に保持する。その後、基板カメラ(図示せず)により基板200の基板テーブル2に対する位置が認識される。また、予めマスクカメラ(図示せず)によりマスク300の位置が認識されている。また、基板テーブル2は、X軸移動機構23、Y軸移動機構24、およびR軸移動機構25により基板200を移動して、マスク300に対して位置決めした状態で、Z軸移動機構26により基板200をマスク300下面に密着する所定の位置まで上昇するように構成されている。なお、基板カメラおよびマスクカメラは、それぞれ、基板のマーク(図示せず)およびマスクマーク(図示せず)の撮像時、カメラ軸駆動部11(
図3参照)により、基板テーブル2とマスク300との間の空間に侵入移動するように構成されている。
【0022】
一対のコンベア22は、
図1に示すように、基板200の搬送方向に沿って延びるように設けられている。また、一対のコンベア22は、前後方向(Y方向)に所定距離を隔てて互いに平行に配置されている。また、一対のコンベア22は、搬送する基板200の幅に対応させてY方向の間隔を調整可能に構成されている。具体的には、基板幅軸駆動部28(
図3参照)の駆動により、一対のコンベア22の間隔(幅)が調整されるように構成されている。
【0023】
また、一対のコンベア22は、基板搬送軸駆動部29(
図3参照)の駆動によりX方向に基板200を搬送するように構成されている。また、一対のコンベア22は、Z軸テーブル262により下方から支持され、Z軸移動機構26により上下方向(Z方向)に移動可能に構成されている。また、一対のコンベア22は、搬入コンベア4aから印刷前の基板200を受け取るとともに、印刷済みの基板200を搬出コンベア4bに搬出する機能を有している。
【0024】
また、基板テーブル2には、Z軸テーブル262の上側(Z1方向側)に複数のバックアップピンを含む基板昇降支持部材272が設けられている。複数のバックアップピンは、基板200を下方から支持するように構成されている。具体的には、一対のコンベア22により搬送された基板200は、複数のバックアップピンにより一対のコンベア22から所定の高さ分上昇移動される。そして、一対のコンベア22に対しての所定の高さ位置まで上昇された基板200は、基板クランプ221(
図3参照)によりクランプされる。この状態で上記したように基板200のマスク300に対する位置合わせと、マスク300下面へ密着するための基板200の上昇とが行われ、基板200は、マスク300の下面の所定の印刷位置に保持される。
【0025】
マスク300には、所定のパターンの開口が形成されている。また、マスク300は、平面視で矩形形状を有し、外周部にフレーム301が取り付けられている。また、
図1に示すように、マスク300は、マスククランプ部5によりフレーム301がクランプされることによって基板テーブル2の上方で固定的に保持される。
【0026】
図1に示すように、スキージユニット3は、マスク300の上方に配置されている。スキージユニット3は、前後方向(Y方向)に往復移動することにより、マスク300の上面上に供給された半田をマスク300の上面に掻き広げる機能を有している。これにより、マスク300の開口を介して基板200の表面に半田が印刷される。具体的には、スキージユニット3は、
図2および
図3に示すように、印刷ヘッド部31と、印刷ヘッド部31を昇降駆動させるスキージZ軸モータ32とを備えている。なお、スキージZ軸モータ32の代わりに、印刷ヘッド部31を空気圧により昇降駆動させるシリンダを設けてもよい。
【0027】
図1に示すように、印刷ヘッド部31は、一対のレール6により前後方向(Y方向)に移動可能に支持されている。具体的には、スキージY軸モータ3a(
図3参照)の駆動により、印刷ヘッド部31がY方向に移動されるように構成されている。つまり、スキージY軸モータ3aは、スキージ311を所定の方向(Y方向)に移動させる。また、印刷ヘッド部31は、上下方向(Z方向)に昇降可能に構成されている。具体的には、スキージZ軸モータ32(
図3参照)の駆動により、印刷ヘッド部31がZ方向に移動されるように構成されている。なお、スキージY軸モータ3aは、請求の範囲の「駆動部」の一例である。
【0028】
また、
図2に示すように、印刷ヘッド部31は、印刷ヘッド本体部31aと、スキージ支持プレート313とを有する。印刷ヘッド本体部31aは、主に、スキージ311と、スキージ回動モータ312と、一対のガイド部314と、一対の圧縮コイルバネ315と、スキージ支持ブラケット316とから構成されている。
【0029】
スキージ311は、
図1に示すように、X方向に延びるように形成されている。また、スキージ311は、開口が設けられたマスク300の上面に当接し、所定の方向(Y方向)に移動してマスク300に供給された半田をマスク300の開口を介して基板200に印刷するように構成されている。また、スキージ311は、
図2に示すように、X方向に延びる支持軸317を回動中心として、スキージ支持ブラケット316に対し回動可能に取り付けられている。具体的には、スキージ311は、スキージ回動モータ312の駆動により、支持軸317を中心に回動されるように構成されている。
【0030】
また、スキージ311は、半田を掻き取る掻き取り面(作業面)311aを有し、マスク300の上面に対して前後方向(Y方向)に摺動することによりマスク300の上面上の半田を掻き取るように構成されている。また、スキージ311は、往路の印刷(後方から前方に向かう方向(Y1方向)の印刷)および復路の印刷(前方から後方に向かう方向(Y2方向)の印刷)の両方で共通の掻き取り面311aが用いられる。
【0031】
スキージ支持プレート313は、印刷ヘッド本体部31aを支持するように構成されている。具体的には、スキージ支持プレート313は、一対のガイド部314のストッパ314aが当接することにより、ガイド部314と、ガイド部314の下方(Z2方向)に接続されているスキージ支持ブラケット316と、スキージ支持ブラケット316にそれぞれ設けられたスキージ311およびスキージ回動モータ312と、スキージ支持ブラケット316に支持された一対の圧縮コイルバネ315とを含む印刷ヘッド本体部31aを吊るように支持するように構成されている。また、スキージ支持プレート313は、ボールネジ軸322に係合(螺合)しており、ボールネジ軸322が回動することにより、上下方向(Z方向)に移動するように構成されている。
【0032】
また、
図3に示すように、スキージユニット3には、半田供給部33が設けられている。半田供給部33は、マスク300上に半田を自動で供給するように構成されている。
【0033】
また、印刷装置100には、
図3に示すように、印刷装置100を制御する制御部7が設けられている。制御部7は、主制御部7aと、駆動制御部7bと、バルブ制御部7cとを有している。主制御部7aは、CPUからなり、記憶部10に記憶された印刷プログラムに基づいて各部を制御する機能を有している。また、主制御部7aは、駆動制御部7bおよびバルブ制御部7cを介して、スキージユニット、コンベアユニットおよびカメラユニットを制御するように構成されている。具体的には、駆動制御部7bにより、スキージY軸モータ3a、スキージZ軸モータ32およびスキージ回動モータ312の駆動が制御されて、スキージ311がY方向およびZ方向に移動されるとともに、スキージ311が支持軸317周りに回動される。つまり、制御部7は、スキージY軸モータ3a、スキージZ軸モータ32およびスキージ回動モータ312によるスキージ311の移動を制御する。
【0034】
また、駆動制御部7bにより、半田供給部33の駆動が制御されて、マスク300上に半田が供給される。具体的には、制御部7は、所定の印刷枚数毎に半田をマスク300上に供給する制御を行う。また、制御部7は、センサ(図示せず)やカメラ(図示せず)によりマスク300上の半田の量を取得して、半田の量が所定の量よりも少なくなったと判断した場合に、半田供給部33により、マスク300上に半田を供給する制御を行う。
【0035】
また、駆動制御部7bにより、X軸駆動部231、Y軸駆動部241、R軸駆動部251およびZ軸駆動部261の駆動が制御されて、コンベアユニットの基板クランプ221にクランプされた基板200がX方向、Y方向およびZ方向に移動される。また、駆動制御部7bにより、R軸駆動部251の駆動が制御されて、コンベアユニットの基板クランプ221にクランプされた基板200がZ軸方向を回動中心としてR軸方向に回動される。また、駆動制御部7bにより、バックアップ軸駆動部271の駆動が制御されて、基板昇降支持部材272(バックアップピン)が上下方向(Z方向)に移動される。また、駆動制御部7bにより、カメラユニットのカメラ軸駆動部11の駆動が制御されて、マスク300の位置および姿勢を認識するためのマスクカメラ(図示せず)が移動される。
【0036】
また、駆動制御部7bにより、基板幅軸駆動部28の駆動が制御されて、コンベア22のY方向の間隔(幅)が調整される。また、駆動制御部7bにより、基板搬送軸駆動部29の駆動が制御されて、コンベア22により基板200がX方向に搬送される。また、バルブ制御部7cにより、基板クランプ221のエア駆動が制御されて、基板200のクランプのオンオフが制御される。また、駆動制御部7bにより、カメラユニットのカメラ軸駆動部11の駆動が制御されて、基板200の位置および姿勢を認識するための基板カメラ(図示せず)が移動される。
【0037】
なお、カメラユニットには上向きのマスクカメラと下向きの基板カメラが搭載されている。また、基板クランプ221は基板200のY方向両側から基板200を挟むものであり、基板200をクランプした状態で基板クランプ221の上面は基板200の上面と高さ位置(Z方向位置)が一致するようにされ、かつ、スキージ311からの荷重を基板200と同様マスク300を介して支持することが可能に構成されている。
【0038】
また、主制御部7aは、印刷装置100の運転状態を表示ユニット8に表示させるように構成されている。また、主制御部7aは、作業者が入力ユニット9を介して入力する各種情報を受け付けるように構成されている。
【0039】
ここで、本実施形態では、制御部7は、印刷以外のタイミングにおいて、マスク300上の半田において、マスク300上で半田がローリングされても半田の内部にとどまり、印刷に使用されることが無い半田(以下、「半田の内部」という)が露出するようにスキージ311により半田を撹拌する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、マスク300上の半田の内部が露出するように、スキージ311によりマスク300上の半田を切断する、またはマスク300上に広げるように延ばして、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。
【0040】
ここで、スキージ311によりマスク300上の半田を基板200に印刷する場合、Y方向に沿ってスキージ311を移動させることにより、マスク300上の半田をローリングさせながら移動させる。これにより、半田をマスク300の開口に過不足なく精度よく充填することが可能である。この半田をローリングさせる場合、半田の回転軸線に近い内部の半田は、回転により外側に移動することなく内部に留まり続ける虞がある。そして、新しい半田が追加で供給された場合には、新しい半田の供給以後も内部の半田は内側に配置されるため、印刷に使用されずに残される場合がある。そこで、半田をよく撹拌して、内部に古い半田を残さないようにする必要がある。
【0041】
半田が完全に撹拌されているという条件の場合、1時間にtの割合(但し、0<t<1)で、半田が入れ替わる場合、4時間前の半田が4時間後まで残る確率(割合)は、(1-t)^4である。たとえば、t=0.7である場合、半田が残る確率(割合)は、0.3^4=0.0081となり、99%以上の半田が入れ替わることになり、4時間前の半田が残ることがほとんどない。
【0042】
また、本実施形態では、制御部7は、マスク300上の半田の内部が露出するようにスキージ311によりマスク300上の半田を切断する、またはマスク上に広げるように延ばしてから、露出した内部の半田を他の部分の半田と混合させて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。具体的には、制御部7は、マスク300上の半田の内部が露出するようにスキージ311を第1移動動作により移動させてから、スキージ311を第1移動動作とは異なる第2移動動作により移動させて、露出した内部の半田を他の部分の半田と混合させて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。
【0043】
また、制御部7は、スキージ311によりマスク300上の半田を、上下方向(Z方向)に切断、水平方向(Y方向)に切断、斜め方向に切断、または、マスク300上に広げるように延ばすようにして、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。
【0044】
具体的には、
図4に示す第1の撹拌例では、マスク300上の半田Sは、スキージ311により水平方向(Y方向)に切断されて撹拌される。
図4に示す第1の撹拌例では、
図4(a)に示すように、スキージ311は、第1移動動作として、マスク300から上方に浮いた状態で、半田Sの方向に水平移動される。そして、
図4(b)に示すように、マスク300上の半田Sは、スキージ311により水平方向(Y方向)に切断される。なお、第1移動動作の際のスキージ311の高さ位置は、センサやカメラにより半田Sの量を測定して、半田Sの中心部分S1(撹拌前において中心に配置された半田の部分)をスキージ311の下端が通るように設定されてもよい。また、第1移動動作において、異なる高さ位置において、スキージ311を数回繰り返し移動させてもよい。そして、半田Sが水平方向に切断されてから、スキージ311がマスク300に当接するように移動されて、
図4(c)に示すように、スキージ311に付着した半田Sがマスク300上に配置される。その後、スキージ311は、第2移動動作として、
図4(d)に示すように、上下方向および水平方向(Y方向)に移動されて、切断した半田Sを合流させるとともに、半田Sを撹拌させる。
【0045】
また、
図5に示す第2の撹拌例では、マスク300上の半田Sは、スキージ311により上下方向(Z方向)に切断されて撹拌される。
図5に示す第2の撹拌例では、
図5(a)に示すように、スキージ311は、第1移動動作として、半田Sの上方から半田Sに向けて下方に移動される。なお、第1移動動作の際のスキージ311の水平方向(Y方向)の位置は、センサやカメラにより半田Sの位置を測定して、半田Sの中心部分S1(撹拌前において中心に配置された半田の部分)をスキージ311の下端が通るように設定されてもよい。また、第1移動動作において、異なる水平方向の位置において、スキージ311を数回繰り返し移動させてもよい。また、第1移動動作の際のスキージ311の水平方向(Y方向)の位置は、例えば、入力ユニット9により直接指定してもよい。そして、
図5(b)に示すように、半田Sが上下方向に切断されてから、スキージ311がマスク300に当接するように移動されて、スキージ311に付着した半田Sがマスク300上に配置される。この場合、スキージ311の上下方向の移動に、さらに水平方向の移動を加えて、スキージ311を移動させてもよい。その後、スキージ311は、
図5(c)に示すように、上昇する。そして、スキージ311は、第2移動動作として、
図5(d)に示すように、上下方向および水平方向(Y方向)に移動されて、切断した半田Sを合流させるとともに、半田Sを撹拌させる。
【0046】
また、
図6に示す第3の撹拌例では、マスク300上の半田Sは、スキージ311により斜め方向に切断されて撹拌される。
図6に示す第3の撹拌例では、
図6(a)に示すように、スキージ311は、第1移動動作として、半田Sの上方から半田Sに向けて斜め下方に移動される。そして、
図6(b)に示すように、マスク300上の半田Sは、スキージ311により斜め方向に切断される。なお、第1移動動作の際のスキージ311の移動開始の水平方向(Y方向)の位置は、センサやカメラにより半田Sの位置を測定して、この測定から得られた半田Sの中心部分S1(撹拌前において中心に配置された半田の部分)をスキージ311の下端が通るように設定されてもよい。また、第1移動動作において、異なる水平方向の移動開始位置から、スキージ311を数回繰り返し斜め方向に移動させてもよい。そして、半田Sが斜め方向に切断されてから、スキージ311がマスク300に当接するように移動されて、スキージ311に付着した半田Sがマスク300上に配置される。その後、スキージ311は、
図6(c)に示すように、上昇する。そして、スキージ311は、第2移動動作として、
図6(d)に示すように、上下方向および水平方向(Y方向)に移動されて、切断した半田Sを合流させるとともに、半田Sを撹拌させる。
【0047】
また、
図7に示す第4の撹拌例では、マスク300上の半田Sは、スキージ311によりマスク300上に広がるように延ばされて撹拌される。言い換えると、マスク300上の半田Sは、スキージ311により押しつぶされつつ撹拌される。
図7に示す第4の撹拌例では、
図7(a)に示すように、スキージ311は、第1移動動作として、マスク300から上方に浮いた状態で、半田Sの方向に水平移動される。なお、第1移動動作の際のスキージ311の高さ位置は、スキージ311をマスク300に当接させた位置から上方にわずかに戻した位置が設定されてもよい。そして、
図7(b)に示すように、半田Sがマスク300上に広がるように延ばされる。これにより、半田Sの中心部分S1(撹拌前において中心に配置された半田の部分)が露出する。そして、スキージ311は、
図7(c)に示すように、上昇する。その後、スキージ311は、第2移動動作として、
図7(d)に示すように、上下方向および水平方向(Y方向)に移動されて、延ばした半田Sを集約させるとともに、半田Sを撹拌させる。
【0048】
マスク300上において撹拌された後の半田は、スキージ311によりY方向に移動されることにより、ローリングされる。この半田のローリングは、Y方向において、往復移動されながら、所定の距離だけ半田が移動されて行われる。これにより、撹拌後の半田が基板200の印刷に適した形状に戻される。
【0049】
マスク300上の半田の撹拌およびその後のローリングは、マスク300の開口が設けられていない端部の領域を用いて行ってもよいし、マスク300の下方に基板200を配置した状態で、マスク300の全体を用いて行ってもよい。
【0050】
また、本実施形態では、制御部7は、運転時間、印刷枚数、半田の補充回数、および、ユーザの撹拌指示のうち、少なくとも1つに基づいて、半田を撹拌する制御を行うように構成されている。たとえば、運転時間に基づく場合、所定の運転時間毎に半田の撹拌が行われる。また、印刷枚数に基づく場合、所定の印刷枚数毎に半田の撹拌が行われる。また、半田の補充回数に基づく場合、所定の補充回数毎に半田の撹拌が行われる。また、ユーザの撹拌指示に基づく場合、ユーザから撹拌指示を受け付けた場合に半田の撹拌が行われる。
【0051】
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0052】
本実施形態では、上記のように、印刷以外のタイミングにおいて、マスク300上の半田の内部が露出するようにスキージ311により半田を撹拌する制御を行う制御部7を設ける。これにより、半田の内部と外部とを効果的に撹拌することができるので、半田の内部の部分が基板200への印刷に使われずに残り続けるのを抑制することができる。また、印刷に用いるスキージ311自体により半田の内部の撹拌を行うことができるので、半田を撹拌するためのローラやローラを回転駆動するための回転駆動源を設ける必要がない。これらの結果、部品点数が増加すること、および、装置構成が複雑化することを抑制しつつ、古い半田がマスク300上に残存する虞を低減することができる。
【0053】
また、本実施形態では、上記のように、制御部7を、マスク300上の半田の内部が露出するように、スキージ311によりマスク300上の半田を切断またはマスク300上に広げるように延ばして、半田を撹拌する制御を行うように構成する。これにより、スキージ311により半田を切断またはマスク300上に広げるように延ばすことにより、半田の内部を確実に露出させることができるので、半田の内部と外部とをより効果的に撹拌することができる。
【0054】
また、本実施形態では、上記のように、制御部7を、マスク300上の半田の内部が露出するようにスキージ311によりマスク300上の半田を切断またはマスク上に広げるように延ばしてから、露出した内部の半田を他の部分の半田と混合させて、半田を撹拌する制御を行うように構成する。これにより、スキージ311により内部の半田と他の部分の半田とをより効果的に撹拌することができるので、古い半田が内部に残存する虞をより効果的に低減することができる。
【0055】
また、本実施形態では、上記のように、制御部7を、マスク300上の半田の内部が露出するようにスキージ311を第1移動動作により移動させてから、スキージ311を第1移動動作とは異なる第2移動動作により移動させて、露出した内部の半田を他の部分の半田と混合させて、半田を撹拌する制御を行うように構成する。これにより、半田の内部を露出させるスキージ311の移動と、内部の半田と他の部分の半田とを混合させるスキージ311の移動とを異ならせることができるので、露出した内部の半田が撹拌されずに再び内部に戻されるのを効果的に抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、上記のように、制御部7を、スキージ311によりマスク300上の半田を、上下方向(Z方向)に切断、水平方向(Y方向)に切断、斜め方向に切断、または、マスク300上に広げるように延ばすようにして、半田を撹拌する制御を行うように構成する。これにより、半田を上下方向に切断することにより、半田の量に関わらず半田の中心位置を容易に切断することができるので、半田の内部をより効果的に露出させることができる。また、半田を水平方向に切断、斜め方向に切断、または、マスク上に広げるように延ばすことにより、スキージ311の裏側に半田が付着するのを抑制することができるので、印刷時にスキージ311の裏側に付着した半田が意図しない位置に剥離して配置されるのを抑制することができる。
【0057】
また、本実施形態では、上記のように、制御部7を、運転時間、印刷枚数、半田の補充回数、および、ユーザの撹拌指示のうち、少なくとも1つに基づいて、半田を撹拌する制御を行うように構成する。これにより、半田の内部を定期的に露出させて撹拌することができるので、古い半田が内部に残存する虞をより効果的に低減することができる。
【0058】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく請求の範囲によって示され、さらに請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0059】
たとえば、上記実施形態では、マスク上の半田を2つに切断して撹拌する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、マスク上の半田を3つ以上に切断して撹拌してもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、スキージの掻き取り面を下方に向けた状態で、マスク上の半田を切断または広げる構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、スキージの掻き取り面を鉛直に立てた状態または上方に向けた状態で、マスク上の半田を切断または広げてもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、基板とマスクとを密着させて印刷を行うコンタクト印刷方式により基板への半田の印刷を行う例について示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基板とマスクとの間にギャップ(空隙)を設けて、印刷(スキージング)と版離れとの工程を同時に行うキャップ印刷(オフコンタクト印刷)方式を適用して、基板への半田の印刷を行ってもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、前後方向(Y方向)に基板を搬送するレーンが1つ設けられているシングルレーンの構成の印刷装置の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、基板を搬送するレーンが前後方向(Y方向)に複数設けられているマルチレーンの構成の印刷装置であってもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、前後方向(Y方向)の両方に1つのスキージを移動させて印刷を行う構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、前方向に移動させて印刷を行うスキージと、後方向に移動させて印刷を行うスキージとの2つのスキージが設けられている構成であってもよい。
【符号の説明】
【0064】
3a スキージY軸モータ(駆動部)
7 制御部
100 印刷装置
200 基板
300 マスク
311 スキージ