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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】経口投与用の医薬組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4365 20060101AFI20240523BHJP
   A61K 31/4184 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 9/22 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240523BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240523BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
A61K31/4365
A61K31/4184
A61K9/16
A61K9/22
A61K9/48
A61P1/00
A61P1/04
A61P7/02
A61P9/10
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K47/26
A61K47/38
A61K47/02
A61K47/12
【請求項の数】 37
(21)【出願番号】P 2022551249
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-10
(86)【国際出願番号】 IB2021051606
(87)【国際公開番号】W WO2021171237
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0024657
(32)【優先日】2020-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0043047
(32)【優先日】2020-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514311689
【氏名又は名称】エイチケー イノ.エヌ コーポレーション
【住所又は居所原語表記】239 Osongsaengmyeong 2-ro, Osong-eup, Heungdeok-gu, Cheongju-si, Chungcheongbuk-do, 28158, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チョ,テグン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ヨンテ
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ウンキョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンテ
(72)【発明者】
【氏名】キム,スンジョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュファン
(72)【発明者】
【氏名】キム,テヒョン
【審査官】池田 百合香
(56)【参考文献】
【文献】特許第7150976(JP,B2)
【文献】特表2009-520017(JP,A)
【文献】特表2015-500276(JP,A)
【文献】Effect of Tegoprazan on Pharmacodynamics of Clopidogrel in Healthy Male Participants,ClinicalTrials.gov., NCT03814642,2019年10月21日
【文献】高久史麿、矢崎義雄 監修,硫酸クロピドグレル プラビックス,治療薬マニュアル2007,2007年,p.1932-1933
【文献】LEE, Kwang Jae et al.,Alimentary Pharmacology & Therapeutics,2019年,Vol.49,p.864-872
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00 ~ 33/44
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1有効成分を含む第1コンパートメント;および
第2有効成分を含む第2コンパートメントを含む医薬組成物であって、
ここで、第1有効成分は遅延放出され、第2有効成分は即時放出され;
ここで、第1有効成分が、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物であり;また
ここで、第2有効成分が、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物である医薬組成物。
【請求項2】
第1有効成分を含む第1コンパートメントと第2有効成分を含む第2コンパートメントとが共投与されている、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
第1コンパートメントが第1有効成分を含む単位剤形であり、第2コンパートメントが第2有効成分を含む単位剤形である、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
第1有効成分を含む単位剤形が、第1有効成分を含むコア;およびコア上に配置され、コアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む粒子を含む、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
粒子が、錠剤、顆粒、ペレット、またはそれらの混合物である、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
第1有効成分を含む単位剤形中の粒子が、少なくとも1つの追加のコーティング層をさらに含む、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
第1有効成分と第2有効成分をそれぞれ含む単位剤形が、互いに独立して投与される錠剤またはカプセルである、請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物が、第1有効成分と第2有効成分の両方を含む単位剤形の複合体である、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項9】
単位剤形が、第1有効成分を含む第1コンパートメントである第1層;および第2有効成分を含む第2コンパートメントである第2層を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
単位剤形が、
第1有効成分を含む第1コンパートメントである第1層であって、第1有効成分を含むコア;およびコア上に配置され、コアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む第1層;ならびに
腸溶性コーティング層上に配置され、腸溶性コーティング層を取り囲み、第2有効成分を含む第2層
を含む粒子を含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
粒子が、錠剤、顆粒、ペレット、またはそれらの混合物である、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
単位剤形中の粒子が、第1層と第2層の間に配置され、第1有効成分と第2有効成分との接触を防止する隔離層をさらに含む、請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
単位剤形が
第1有効成分を含む粒子である第1コンパートメント;および第2有効成分を含む粒子である第2コンパートメントを含んでおり;
ここで、第1有効成分を含む粒子である第1コンパートメントが、
第1有効成分を含むコア;および
コア上に配置され、コアを取り囲む腸溶性コーティング層
を含む粒子である、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項14】
第1有効成分を含む粒子が、腸溶性コーティング層上に配置された隔離層をさらに含む、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項15】
第1有効成分を含む粒子と第2有効成分を含む粒子が、それぞれ独立して錠剤、ペレット、または顆粒である、請求項13に記載の医薬組成物。
【請求項16】
第1有効成分を含む第1コンパートメント;
第2有効成分を含む第2コンパートメント;および
第1有効成分と第2有効成分との接触を防止する隔離層を含む複合体であって、
ここで、第1有効成分が、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物であり、また
第2有効成分が、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物である複合体。
【請求項17】
隔離層が、第1有効成分を含む第1コンパートメントと第2有効成分を含む第2コンパートメントとの間に配置されている、請求項16に記載の複合体。
【請求項18】
複合体が、
第1有効成分を含む第1コンパートメントである第1層;
第1層上に形成され、第1有効成分と第2有効成分との間の接触を防止する隔離層;および
第2有効成分を含む第2コンパートメントである第2層
を含む、請求項16に記載の複合体。
【請求項19】
複合体が錠剤である、請求項18に記載の複合体。
【請求項20】
錠剤が、多層錠であり、
ここで、多層錠における第1層が、第1有効成分を含む顆粒を含み、
ここで、多層錠における第2層が、第2有効成分を含む顆粒を含み、および
ここで、多層錠の隔離層が、薬学的に許容される添加物を含む顆粒
を含む、請求項19に記載の複合体。
【請求項21】
第1有効成分を含む顆粒が、腸溶性コーティング層をさらに含む、請求項20に記載の複合体。
【請求項22】
複合体が多層錠であり、
ここで、多層錠が第1有効成分を含む第1コンパートメントであるコア;
コア上に配置され、薬学的に許容される添加物を含む隔離層;および
隔離層上に配置され、第2有効成分を含む第2コンパートメント
を含む、請求項16に記載の複合体。
【請求項23】
多層錠が、コアと隔離層との間に腸溶性コーティング層をさらに含む、請求項22に記載の複合体。
【請求項24】
複合体がカプセルである、請求項16に記載の複合体。
【請求項25】
カプセルが、
第1有効成分を含む第1コンパートメントであるコア;
コア上に配置され、薬学的に許容される添加物を含むコーティング層である隔離層;および
隔離層上に配置され、第2有効成分を含む第2コンパートメント
を含む粒子を含む、請求項24に記載の複合体。
【請求項26】
粒子が、錠剤、顆粒またはペレットであり、カプセルに錠剤、顆粒、ペレットまたはそれらの混合物が充填されている、請求項25に記載の複合体。
【請求項27】
粒子が、第1有効成分の遅延放出のための腸溶性コーティング層をさらに含む、請求項25に記載の複合体。
【請求項28】
複合体がカプセルであり、
ここで、カプセルが、第1有効成分を含む粒子である第1コンパートメント;および第2有効成分を含む粒子である第2コンパートメントを含んでおり、
ここで、第1有効成分を含む粒子である第1コンパートメントが、
第1有効成分を含むコア; および
コア上に配置され、コアを囲む隔離層
を含む粒子である、請求項16に記載の複合体。
【請求項29】
第1有効成分を含む粒子である第1コンパートメントが、腸溶性コーティング層をさらに含む、請求項28に記載の複合体。
【請求項30】
腸溶性コーティング層がコアと隔離層との間に配置されている、請求項29に記載の複合体。
【請求項31】
第1有効成分を含む粒子と第2有効成分を含む粒子がそれぞれ独立して錠剤、ペレット、または顆粒である、請求項28に記載の複合体。
【請求項32】
テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物、及びクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、胃酸分泌抑制のための医薬組成物であって
こで、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物が遅延放出される、医薬組成物であり、
ここで、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物が即時放出される、医薬組成物
【請求項33】
テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物;および
クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、医薬の組み合わせ物であって、
ここで、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物が遅延放出され、および
ここで、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物が即時放出される、医薬の組み合わせ物。
【請求項34】
クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与よって引き起こされる胃腸障害を予防または治療するための医薬組成物、複合体または医薬の組み合わせ物である、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項16~31のいずれか1項に記載の複合体、または請求項33に記載の医薬の組み合わせ物。
【請求項35】
血栓症関連疾患を予防または治療するため医薬組成物、複合体または医薬の組み合わせ物である、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物、請求項16~31のいずれか1項に記載の複合体、または請求項33に記載の医薬の組み合わせ物。
【請求項36】
クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害を予防または治療するための医薬の製造における、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項16~31のいずれか1項に記載の複合体の使用。
【請求項37】
血栓症関連疾患を予防または治療するための医薬の製造における、請求項1~15のいずれか1項に記載の医薬組成物または請求項16~31のいずれか1項に記載の複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、クロピドグレルおよび以下の式1の化合物を含む医薬組成物に関する。より具体的には、以下の式1の化合物との併用投与においてクロピドグレルを使用することにより、クロピドグレル関連の胃腸障害(gastrointestinal disorders)を予防または軽減しながら、クロピドグレルの有効性を維持する安定な医薬組成物に関する。
【化1】
【背景技術】
【0002】
クロピドグレルは、脳卒中、血栓症、塞栓症、および、心筋梗塞などの末梢または冠状動脈疾患の治療に有効な血小板凝集阻害剤であり、化学名は(+)-(s)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチルである。クロピドグレルは、血栓形成に重要な役割を果たすことが知られているADP受容体へのADP結合を直接阻害し、その後のADPを介した糖タンパク質GPIIb/IIa複合体の活性化を直接阻害することにより、アデノシン二リン酸(以下「ADP」と呼ぶ)誘発血小板凝集を特異的に阻害する。
【0003】
また、クロピドグレルは、放出されたADPによる血小板活性化の増幅を阻害することにより、ADP以外のアゴニストによって誘導される血小板凝集を抑制することができる。一旦、クロピドグレルが血小板に作用すると、血小板の寿命である約7日間、血小板凝集抑制効果を発揮する。
【0004】
クロピドグレルのこの効果は、クロピドグレルの活性代謝物によって発揮される効果である。
【0005】
つまり、肝臓でクロピドグレルの代謝に関与する酵素が、クロピドグレルの有効性にとって重要な因子である。クロピドグレルは当初、CYP1Aのみで代謝されると考えられていたが、最新の研究により、CYP2C19がクロピドグレルの活性代謝物への変換に関与する追加の酵素であることが明らかとなった。
【0006】
一方、クロピドグレルには、潰瘍や胃腸出血などの胃腸障害を引き起こす副作用がある。長期間の抗血小板薬治療を必要とする患者は、胃腸障害のために抗血小板薬治療を中断したり受けられなかったりすることが多く、その結果、患者は有益な治療効果を奪われることとなる。
【0007】
したがって、クロピドグレルの上記問題点を克服することにより、胃腸障害を起こすことなく、クロピドグレルの有益な治療効果を十分に享受することを可能とする方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】韓国特許公開第10-2008-0112361号
【文献】韓国特許公開第10-2015-0105419号
【文献】韓国特許番号10-1088247
【文献】米国特許番号US2015/0079169
【非特許文献】
【0009】
【文献】シトクロムP450 2C19機能喪失多型は、健康な被験者におけるクロピドグレル反応性の主要な決定因子である(Cytochrome P450 2C19 loss-of-function polymorphism is a major determinant of clopidogrel responsiveness in healthy subjects. Jean-Sebastein ら、The American Society of Hematology, Blood, 1 October 2006. Vol 108, Number 7.)。
【文献】プロトンポンプ阻害剤とクロピドグレルの薬物相互作用:安全性の観点(Drug Interaction between Proton Pump Inhibitors and Clopidogrel: Safe Perspective、Korean Journal of Internal Medicine: Vol.81, No.1, 2011.)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本開示の目的は、第1有効成分を含む第1コンパートメント;および第2有効成分を含む第2コンパートメントを含む医薬組成物であって、ここで第1有効成分は遅延放出され、第2有効成分は即時放出され、ここで、第1有効成分が、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物であり;また、ここで、第2有効成分が、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物を提供することである。
【0011】
本開示の目的は、第1有効成分を含む第1コンパートメント;第2有効成分を含む第2コンパートメント;および第1有効成分と第2有効成分との接触を防止する隔離層であって、第1有効成分がテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物であり、第2有効成分がクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物、を含む複合体を提供することである。
【0012】
本開示の目的は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物の投与によって引き起こされる胃腸障害の予防または治療用医薬組成物を提供することである。
【0013】
本開示の目的は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含んでおり、ここで本医薬組成物は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物と共投与される、胃酸分泌抑制のための医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以下、本開示を詳細に説明する。
本開示で開示された各説明および実施形態は、互いに他の各説明および実施形態に適用することができる。すなわち、本開示で開示される様々な要素の全ての組み合わせが、本開示の範囲に含まれる。また、本開示の範囲は、後述する具体的な説明によって限定されると解釈されるものではない。さらに、本開示の範囲が、後述の具体的な説明によって限定されるものではない。
【0015】
また、本明細書において、「第1」および「第2」、「上(upper)」および「下(lower)」などの用語は、区別のためにのみ使用され、順序または配置を特定するものとして解釈はされない。
【0016】
本開示は、本開示に記載の経口剤形を用いることにより、抗血小板療法に伴う副作用から消化管を保護することができる、医薬組成物および保護方法を提供するものである。
【0017】
本開示は、抗血小板剤と酸阻害剤とを共投与(concomitant administration)することにより、抗血小板療法に伴う副作用から胃腸を保護することができる、組成物および保護方法を提供するものである。
【0018】
本開示は、第1有効成分を含む第1コンパートメント;および第2有効成分を含む第2コンパートメントであって、ここで、第1有効成分が遅延放出され、第2有効成分が即時放出される、コンパートメント;ここで、第1有効成分は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物であり;ここで、第2有効成分は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物を提供する。
【0019】
本開示の医薬組成物は、第2有効成分であるクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって生じる胃腸障害を予防または治療し、従来の酸分泌抑制剤で問題となるクロピドグレルの有効性の低下を引き起こさない。
【0020】
また、本開示の医薬組成物では、第1有効成分が遅延放出され、第2有効成分が即時放出される。具体的には、第1有効成分は、胃液に溶出することなく、腸液に溶出することができる。そのため、本医薬組成物を投与すると、第2有効成分は、第1有効成分と第2有効成分の両方が即時放出される場合と比較して、有意により高い血中濃度を示す。その結果、第2有効成分の治療効果が著しく優れ得る。したがって、本開示の医薬組成物は、第1有効成分と第2有効成分の両方が直ちに放出される従来の組成物よりも優れた抗血栓作用を示しながらも、第2有効成分の副作用である胃腸障害、例えば、潰瘍および胃腸出血を有効に予防または治療することができる。
【0021】
したがって、本開示の医薬組成物は、テゴプラザン(第1有効成分)とクロピドグレル(第2有効成分)との間に相互作用がないため、両方の成分が十分な薬理効果を発揮し得る。そのため、医薬組成物中のクロピドグレルは、単剤で使用した場合と同様の高い生物学的利用能を示し、十分な抗血栓作用を発揮し得る。したがって、本開示の医薬組成物は、血栓症関連疾患(脳卒中、血栓症、塞栓症、および、心筋梗塞などの末梢または冠状動脈疾患)を効果的に予防または治療することができる。また、本発明の医薬組成物は、胃酸分泌を十分に抑制することができるため、アシッドポンプ拮抗活性を介する疾患、例えば、消化管疾患、胃食道疾患、胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、NSAID誘発性潰瘍、胃炎、ヘリコバクター・ピロリ感染症、消化不良、機能性消化不良、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性逆流症(NERD)、内臓関連痛、胸やけ、吐き気、食道炎、嚥下困難、流涎、気道障害、または気管支喘息の予防または治療に著しく優れた効果を発揮することができる。さらに、本発明の医薬組成物は、クロピドグレルの投与によって引き起こされる副作用である潰瘍や胃腸出血などの胃腸障害を効果的に予防、抑制、および治療することができる。
【0022】
本明細書において、第1有効成分の遅延放出とは、胃のpHなどの酸性pHでは第1有効成分が溶出せず、酸性pHよりも高いpHで医薬組成物から放出されることを意味し得る。具体的には、本開示の医薬組成物に含まれる第1有効成分は、pH 5以上で放出され始めてもよい。したがって、本開示の医薬組成物を服用する場合、第2有効成分(クロピドグレル)が先に放出され、第1有効成分(テゴプラザン)が後に放出されてもよい。具体的には、本開示の医薬組成物が服用される場合、2時間以内に第2有効成分(クロピドグレル)の80%以上が溶出されてもよいが、2時間程度から第1有効成分(テゴプラザン)が放出されてもよく、2時間以内にその10%以下が放出されるようにしてもよい。
【0023】
本明細書において、テゴプラザンは、下記の化学式1で表される化合物であり、(S)-4-((5,7-ジフルオロクロマン-4-イル)オキシ)-N,N,2-トリメチル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-6-カルボキサミド)の化学名を有する。
【化2】
【0024】
本明細書において、用語「テゴプラザン」は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を指す場合がある。
【0025】
テゴプラザンは酸分泌抑制剤であり、アシッドポンプ拮抗活性を介する疾患、例えば、消化管疾患、胃食道疾患、胃食道逆流症(GERD)、消化性潰瘍、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、NSAID誘発性潰瘍、胃炎、ヘリコバクター・ピロリ感染症、消化不良、機能性消化不良、Zollinger-Ellison症候群、非びらん性逆流症(NERD)、内臓関連痛、胸やけ、吐き気、食道炎、嚥下困難、流涎、気道障害、または気管支喘息の治療に有効に使用することができるが、テゴプラザンを使用できる疾患は上記の疾患に限定されるものではない。
【0026】
本開示の例によれば、テゴプラザンの薬学的に許容される塩は、酸付加塩および塩基付加塩(二塩を含む)を含み得る。酸付加塩としては、例えば、酢酸塩、アジピン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベシル酸塩、重炭酸塩/炭酸塩、重硫酸塩/硫酸塩、ホウ酸塩、カムシル酸塩、クエン酸塩、シクラミン酸、エジシル酸塩、エシル酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヒベン酸塩、塩酸塩/塩化物、臭化水素酸塩/臭化物、ヨウ化水素酸塩/ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ナフチル酸塩、2-ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、リン酸塩/リン酸水素塩/リン酸二水素塩、ピログルタミン酸塩、サッカリン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、トシル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、またはキシナホ酸塩が挙げられるが、これらに限定されるものではない。塩基付加塩としては、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩などのアルカリ金属塩;カルシウム塩やマグネシウム塩などのアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;トリエチルアミン塩、ジイソプロピルアミン塩、またはシクロヘキシルアミン塩などの有機塩基塩などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
本開示において、クロピドグレルは、(+)-(S)-α-(2-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-酢酸メチルであり、具体的には下記式2で表わされるものである。クロピドグレルは、脳卒中、血栓症、塞栓症、および、心筋梗塞などの末梢または冠状動脈疾患の治療に有効に使用される。
【化3】
【0028】
本開示において、用語「クロピドグレル」は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を指す場合がある。
【0029】
本開示の実施例によれば、クロピドグレルの薬学的に許容される塩は、クロピドグレルの酸塩であってもよい。具体的には、クロピドグレルの薬学的に許容される塩としては、硫酸水素塩、樹脂酸塩、カンシル酸塩、ベシル酸塩、ナパジシル酸一水和物塩、塩酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、タウロコール酸塩、またはそれらの混合物であってもよい。例えば、クロピドグレルの硫酸水素塩であってもよい。
【0030】
クロピドグレルは、血小板の凝集を抑制し、心血管疾患患者において優れた抗血栓作用を示す薬剤である。本剤は不活性なプロドラッグの形で投与され、生体内でCYP酵素により活性化され、血小板のP2Y12受容体を不可逆的に遮断することにより血小板凝集を抑制する。CYP酵素の中でも、特にCYP2C19はクロピドグレルの活性化に最も重要な役割を果たす酵素であり、その遺伝子異常によりCYP2C19遺伝子の機能が低下すると、クロピドグレルの血小板凝集抑制能が低下し、その結果、この状態の患者ではクロピドグレルを服用しても循環器疾患のリスクが高まることが判明している。したがって、CYP2C19遺伝子多型に関連した代謝活性欠損者では、クロピドグレルの効果が相対的に低くなる可能性がある。
【0031】
一方、プロトンポンプ阻害剤はCYP2C19に対する阻害能を有するため、クロピドグレルと一緒に服用するとCYP2C19酵素の代謝を競合的に阻害することになる。このため、CYP2C19遺伝子の多型に関連する代謝活性欠損者ではクロピドグレルの効果が劣り、さらにプロトンポンプ阻害薬のCYP2C19酵素に対する競合阻害作用が加わると、クロピドグレルの効果がさらに低下することがある。特に、CYP2C19酵素の代謝活性欠損者の割合は、欧米人よりもアジア人の方が高い(欧米人が1~4%に対してアジア人は12~23%)。
【0032】
しかしながら、本開示の医薬組成物の第2有効成分であるクロピドグレルは、十分な生物学的利用能を示すことにより、血栓症関連疾患に対して優れた治療効果を示し、クロピドグレルの投与により生じる他の胃腸障害を有効に予防または治療することができる。
【0033】
本開示の例において、本開示の医薬組成物は、第1および第2有効成分に加えて、追加の抗血小板剤をさらに含んでもよい。さらに、本開示の医薬組成物は、追加の治療薬と連続してまたは同時に投与することができ、単回または複数回の用量で投与することができる。
【0034】
本明細書において、用語「予防」とは、疾患の発症を予防、遅延、または抑制することを含み、用語「治療」とは、疾患症状の緩和、または疾患の悪化の防止、または疾患の遅延、または抑制することを含む。例えば、本明細書において、「胃腸障害を予防または治療する」とは、クロピドグレルの投与による副作用に対応する胃腸障害の発症を予防、遅延または抑制することを含み、さらに、胃腸障害の症状を緩和すること、胃腸障害の悪化を防止すること、または胃腸障害を遅延または抑制することも含む。
【0035】
本明細書において、用語「投与」は、任意の適切な方法によって対象に有効成分を提供することを意味し、本開示の医薬組成物は、標的組織に到達することができる限り、任意の従来の経路を介して投与することができる。
【0036】
本開示において、用語「対象」は、ヒト、モルモット、サル、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ニワトリ、七面鳥、ウズラ、ネコ、イヌ、マウス、またはウサギを含む哺乳動物を意味するが、これらに限定されるものではない。具体的には、対象はヒトであってもよい。
【0037】
本開示において、用語「コンパートメント」は、本開示の医薬組成物における、有効成分を含む粒子、粒子を含む層、または有効成分を含む層などの有効成分を含む領域を指す場合があり、医薬組成物の単位剤形に応じて、粒子自体、粒子を含む層、または有効成分を含む層のいずれかを指す場合がある。
【0038】
本開示の実施例によれば、医薬組成物において、第1有効成分を含む第1コンパートメントと第2有効成分を含む第2コンパートメントとは、共投与され、医薬組成物は、共投与用の組成物であってもよい。具体的には、共投与用の医薬組成物は、第1有効成分を含む第1コンパートメントと第2有効成分を含む第2コンパートメントとを含む組成物であってもよく、第1有効成分を含む第1コンパートメントと第2有効成分を含む第2コンパートメントとを含む組み合わせ物であってもよく、組み合わせ物を含む組成物であってもよい。組み合わせ物を含む組成物は、例えば、キットであってもよい。本開示において、用語「組成物」は、用語「組み合わせ物」と互換的に使用することができる。
【0039】
本開示の例では、医薬組成物は、別々の単位剤形に製剤化された2つの成分の組み合わせ物であってもよい。この場合、第1有効成分と第2有効成分は、別々の剤形で共投与されてもよい。
【0040】
本開示の例によれば、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)における第1コンパートメントは、第1有効成分を含む単位剤形であってもよく、第2コンパートメントは、第2有効成分を含む単位剤形であってもよい。
【0041】
本開示の実施例によれば、本開示の医薬組成物は、第1有効成分を含む単位剤形と第2有効成分を含む単位剤形とを含むキットの形態で提供されてもよい。キットは、第1有効成分と第2有効成分をそれぞれ含む単位剤形に加え、追加の試薬または使用説明書などの他の要素を任意に含んでもよい。
【0042】
本開示の例では、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)において、第1有効成分を含む単位剤形は、pH依存的に溶解する腸溶性物質を含む腸溶性コーティング層を含んでもよい。具体的には、pH依存的に溶解する腸溶性材料を含む腸溶性コーティング層は、胃のpHとしての酸性pHでは溶解せず、pH 5以上で溶解するものであってもよい。例えば、腸溶性コーティング層は、胃などの環境のpHでは不溶性であり、腸などの環境では可溶性であってもよい。
【0043】
腸溶性コーティング層は、pH 5未満(10%以下、5%以下、1%以下)では全く溶解しないか、ほとんど溶解しないが、pH 5以上(pH 5.5、6、6.5、または7)では急速に溶解し得る。このように、第1有効成分は、pH 5未満(例えば、胃液環境)では単位剤形から全く放出されないか、またはほとんど放出されないが、pH 5以上(例えば、腸液環境)では放出され得る医薬組成物を被験者に投与する場合、胃液環境では医薬組成物から第1有効成分が放出されないが、腸液環境では速やかに放出され得る。
【0044】
本開示の実施例において、腸溶性コーティング層に含まれる腸溶性材料は、pH 5以上、具体的にはpH 5~7で可溶であってもよく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、セルロースアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、アクリル酸エチル-メタクリル酸メチルトリメチルアンモニウムクロリド共重合体、メタクリル酸メチル-アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸-アクリル酸メチル-メタクリル酸メチル共重合体、ヒドロキシプロピルセルロースアセテートサクシネート、ポリ酢酸フタル酸ビニル、またはそれらの混合物であってもよい。具体的には、腸溶性材料は、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、またはそれらの混合物であってもよい。より具体的には、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(1:1)、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(1:2)、メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体、またはそれらの混合物であってもよい。
【0045】
本開示の実施例では、腸溶性コーティング層は、腸溶性材料を適切な溶媒に溶解することにより得られる溶液で調製することができる。この場合、溶媒は、水、有機溶媒、またはそれらの混合物であってもよい。具体的には、溶媒は、水、C1~C5の直鎖状もしくは分岐状のアルコール、アセトン、またはそれらの混合物であってもよい。より具体的には、溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、またはそれらの混合物であってもよい。さらに具体的には、溶媒は、水、エタノール、またはエタノール水溶液であってもよい。
【0046】
本開示の例では、腸溶性材料を適切な溶媒に溶解することにより得られる溶液は、クエン酸トリエチル、ポリソルベート80、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0047】
本開示の例では、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)中の第1有効成分を含む単位剤形は:第1有効成分を含むコア(core);およびコア上に配置されコアを囲む腸溶性コーティング層を含む粒子を含んでもよい。
【0048】
本開示の例では、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)中の粒子は、錠剤、ペレット、または顆粒であってもよい。
【0049】
一実施形態では、粒子が錠剤である場合、コアは、第1有効成分を含む顆粒を含む非コーティング錠であってもよい。非コーティング錠は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよく、薬学的に許容される添加剤は、顆粒の内部、または顆粒の外部、または顆粒の内部および外部に含まれていてもよい。この場合、腸溶性コーティング層を形成することができ、このコーティング層は、非コーティング錠上に配置され、非コーティング錠を取り囲む。
【0050】
別の実施形態では、粒子が顆粒である場合、コアは、第1有効成分を含む初期顆粒であってもよい。顆粒は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。この場合、腸溶性コーティング層が形成することができ、これは初期顆粒上に配置され、初期顆粒を取り囲むように形成することができる。
【0051】
さらに別の実施形態では、粒子がペレットである場合、コアは、シードと、シード上に配置され、第1有効成分を含むコーティング層とを含んでもよい。シードは、薬学的有効成分を含まない糖シードであってもよく、第1有効成分を含むコーティング層は、薬学的に許容される添加物をさらに含んでもよい。この場合、腸溶性コーティング層が形成することができ、これはペレット上に配置され、ペレットを取り囲むように形成することができる。
【0052】
本開示の例では、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)中の第1有効成分を含む単位剤形は、錠剤またはカプセルであってもよい。
【0053】
本開示の例において、第1有効成分を含む単位剤形がカプセルである場合、カプセルは、第1有効成分を含むコア;およびコア上に配置されコアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む粒子で充填してもよく、ここで、粒子は、タブレット、顆粒またはペレットであってもよい。この場合、カプセルは、錠剤、顆粒、ペレット、またはそれらの混合物を含んでもよく、具体的には、ペレット、またはペレットと顆粒の混合物を含んでもよい。
【0054】
本開示の実施例において、第1有効成分を含む単位剤形が錠剤である場合、錠剤は、第1有効成分を含む非コーティングコア;および、非コーティング錠上に配置され、非コーティング錠を囲む腸溶性コーティング層を含むことができる。この場合、単位剤形は、タブレット-イン-タブレット(tab-in-tab)の形態の多層錠であってもよく、非コーティング錠であるコアは、第1有効成分を含む顆粒;および顆粒の内部および/または外部の薬学的に許容される添加物を含んでもよく、また非コーティング錠は、第1有効成分および薬学的に許容される添加物を含む顆粒;ならびに顆粒以外に薬学的に許容される添加物を含む混合物の打錠により調製することができる。
【0055】
本開示の実施例において、第1有効成分を含む単位剤形が錠剤である場合、錠剤は、第1有効成分を含む初期顆粒であるコア;および初期顆粒上に配置され、初期顆粒を取り囲む腸溶性コーティング層を含む顆粒を含んでもよい。この場合、初期顆粒であるコアは、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよく、錠剤は、第1有効成分および腸溶性コーティング層を含む顆粒;ならびに顆粒の外部の薬学的に許容される添加剤を含む混合物の打錠により調製することができる。
【0056】
本開示の実施例では、第1有効成分を含む単位剤形の粒子は、少なくとも1つの追加のコーティング層をさらに含んでもよい。追加のコーティング層は、コアと腸溶性コーティング層との間に配置してもよいし、腸溶性コーティング層上に配置してもよいし、コアと腸溶性コーティング層との間および腸溶性コーティング層上の両方に配置してもよい。追加のコーティング層は、第1有効成分の安定性に影響を与える可能性のある物質との接触を確実に防止する隔離層として機能することができ、それは単位剤形の安定性を改善することができる。本開示において、用語「追加コーティング層」は、用語「分離層(separation layer)」または「隔離層(isolation layer)」と互換的に使用することができる。
【0057】
本開示の例では、追加のコーティング層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、またはそれらの混合物などを含んでいてもよい。具体的には、追加のコーティング層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0058】
本開示の実施例では、追加のコーティング層は、薬学的に許容される添加剤を溶媒に溶解し、その溶液を第1層であるコア上にコーティングすることにより形成することができる。例えば、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物を水などの溶媒に溶解して調製した溶液で調製することができる。
【0059】
本開示の例では、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)中の第2有効成分を含む単位剤形は、第2有効成分を含む粒子であってもよい。
【0060】
本開示の例では、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)中の第2有効成分を含む粒子は、錠剤、ペレット、または顆粒であってもよい。
【0061】
本開示の例では、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)中の第2有効成分を含む粒子は、錠剤またはカプセルであってもよい。一例では、第2有効成分を含む単位剤形がカプセルである場合、第2有効成分を含む顆粒、錠剤、ペレット、またはそれらの混合物を充填することにより調製することができ、ここで、顆粒、錠剤またはペレットはさらに薬学的に許容できる添加物を含んでいてもよい。別の実施形態によれば、第2有効成分を含む単位剤形が錠剤である場合、第2有効成分を含む単位剤形は、第2有効成分を含む顆粒;および薬学的に許容される添加物を含む混合物の打錠により調製することができる。この場合、顆粒は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。
【0062】
本開示の例では、医薬組成物は、5 mg~100 mg、具体的には10 mg~60 mg、より具体的には15 mg~60 mgの量の第1有効成分(テゴプラザン)を含んでもよい。
【0063】
本開示の例では、医薬組成物は、10~300 mg、具体的には75~300 mgの量の第2有効成分(クロピドグレル)を含んでもよい。
【0064】
本開示の例では、共投与のための医薬組成物(組み合わせ物)は、第1有効成分を含む1つ以上の単位剤形と、第2有効成分を含む1つ以上の単位剤形とを含んでもよく、医薬組成物中の単位剤形の数は、第1有効成分と第2有効成分のそれぞれの用量および単位剤形中の第1および第2有効成分のそれぞれの含有量に応じて適切に調整することができる。
【0065】
本開示の実施例では、医薬組成物は、第1有効成分と第2有効成分の両方を含む単位剤形複合体であってもよい。この場合、第1有効成分(テゴプラザン)および第2有効成分(クロピドグレル)は、単一の単位剤形に一緒に含まれてもよい。例えば、単位剤形が錠剤である場合、錠剤は、第1有効成分と第2有効成分の両方を含んでいてもよい。
【0066】
本開示の例では、複合体である医薬組成物において、単位剤形は、第1有効成分を含む第1コンパートメントである第1層;および第2有効成分を含む第2コンパートメントである第2層を含んでもよく、第1有効成分は複合体から遅延放出されてもよく、第2有効成分は直ちに放出されてもよい。本開示において、用語「第1コンパートメント」は、用語「第1層」と互換的に使用されてもよく、用語「第2コンパートメント」は、用語「第2層」と互換的に使用することができる。
【0067】
本開示の例では、複合体である医薬組成物において、単位剤形は錠剤またはカプセルであってもよく、錠剤は、1つ以上の層が連続的に積層された形態の多層錠(二層錠または三層錠)またはタブレット-イン-タブレットの形態の多層錠(二層錠または三層錠)であってもよい。
【0068】
本明細書において、多層錠は、コアを囲む1つ以上の層がコア上に配置された錠剤であってもよく、1つ以上の層は、コーティング層および/またはマトリックス層であってもよい。例えば、多層錠は、図1Aに例示されるようなタブレット-イン-タブレットであってもよい。
【0069】
また、本明細書において、多層錠は、図1Bに例示されるように、1つ以上の層が連続的に積層された形態であってもよい。例えば、多層錠は、二層錠、三層錠などであってもよい。
【0070】
本開示の例では、第1層は、第1有効成分を含むコア;およびコア上に配置され、コアを取り囲む腸溶性コーティング層を含む粒子を含んでもよい。腸溶性コーティング層および腸溶性コーティング層に含まれる腸溶性材料の物理的特性は、矛盾がない限り、共投与用医薬組成物に関して上述したとおりである。
【0071】
本開示の実施例では、複合体である医薬組成物において、粒子は、錠剤、ペレット、または顆粒であってもよい。
【0072】
本開示の例では、複合体である医薬組成物において、粒子は、第1有効成分と第2有効成分との物理的接触を防止するための少なくとも1つの隔離層を含んでもよく、隔離層は、第1有効成分を含む第1層(第1コンパートメント)と第2有効成分を含む第2層(第2コンパートメント)との間に配置してもよい。一実施形態によれば、隔離層は、第1有効成分を含むコアと腸溶性コーティング層との間に配置してもよく、腸溶性コーティング層上に配置してもよく、第1有効成分を含むコアと腸溶性コーティング層との間および腸溶性コーティング層上の両方に配置してもよい。
【0073】
本開示の例では、複合体である医薬組成物において、第2有効成分を含む第2層(第2コンパートメント)は、第1層(第1コンパートメント)上に形成することができる。一実施形態において、隔離層が第1有効成分を含むコアと腸溶性コーティング層との間にのみ配置される場合、第2有効成分を含む第2層は、第1層の腸溶性コーティング層上に配置してもよい。別の実施形態では、隔離層が腸溶性コーティング層上に配置される場合、第2有効成分を含む第2層は、隔離層上に形成することができる。
【0074】
本明細書において、用語「隔離層」は、第1有効成分テゴプラザンと第2有効成分クロピドグレルとの接触を防止するための手段を意味し、その態様には、フィルム、壁、コーティングなど、当業者が経口投与剤に適用できる全ての手段が含まれる。
【0075】
本開示の例では、隔離層は、第1有効成分を含む第1コンパートメント(第1層)と第2有効成分を含む第2コンパートメント(第2層)との間に配置してもよい。
【0076】
本開示の例では、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでもよい。具体的には、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0077】
本開示の実施例では、隔離層は、複合体の総重量を基準にして、0.1重量(wt)%~10重量%、具体的には0.1重量%~7重量%、より具体的には0.1重量%~5重量%の量で含まれてもよい。隔離層が複合体中に上述の量(重量%)で含まれる場合、複合体の安定性が向上し、複合体が適切な大きさを有しながら優れた安定性を有し、2つの成分が十分な溶出性を示すことができるため、患者の服薬コンプライアンスを大幅に改善することができる。
【0078】
本開示の実施例において、隔離層は、薬学的に許容される添加剤を用いて形成した顆粒と、顆粒の外部の薬学的に許容される添加剤とを混合し、混合物を打錠することにより形成することができる。
【0079】
本開示の例では、隔離層は、薬学的に許容される添加物を適切な溶媒と混合して組成物を得、その組成物をコーティングすることにより調製することができる。
【0080】
本開示の実施例において、複合体である医薬組成物において、第1層の粒子は、錠剤であってもよい。この場合、複合体である医薬組成物は、多層錠の形態のミニ錠剤を充填したカプセルであってもよく、タブレット-イン-タブレット(tab-in-tab)の形態の多層錠であってもよい。
【0081】
一実施形態において、複合体が多層錠である場合、多層錠は、第1有効成分を含むコア錠の形態のコアと、コア上に形成されコアを囲む腸溶性コーティング層とを含む粒子である第1層(第1コンパートメント)と第1層上に配置され第1層を囲み第2有効成分を含む第2層(第2コンパートメント)とを含んでいてもよい。この場合、第1有効成分を含むコアは、第1有効成分を含む顆粒と薬学的に許容される添加物とを含む混合物を打錠することにより調製でき、第2有効成分を含む第2層は、第1有効成分を含む第1層を第2有効成分を含む組成物でコーティングするか、第2有効成分を含む顆粒と顆粒以外の薬学的に許容される添加物を含む混合物をコア錠剤とともに打錠して形成することができる。ここで、顆粒は、第1有効成分または第2有効成分;および薬学的に許容される添加物を含む湿式顆粒(wet granule)または直接圧縮顆粒であってもよい。
【0082】
別の実施形態では、複合体がカプセルである場合、カプセルは、多層錠と実質的に同じ構造を有するミニ錠剤を充填したカプセルであってもよい。
【0083】
本開示の例では、複合体である医薬組成物において、多層錠は、第1有効成分と第2有効成分との接触を防止するための少なくとも1つの隔離層をさらに含んでもよい。一実施形態によれば、多層錠における隔離層は、コア錠の形態のコアと腸溶性コーティング層との間に配置してもよい。別の実施形態によれば、多層錠における隔離層は、腸溶性コーティング層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。さらに別の実施形態によれば、多層錠は、2つの隔離層を含んでもよく、第1の隔離層は、コア錠の形態のコアと腸溶性コーティング層との間に配置してもよく、第2の隔離層は、腸溶性コーティング層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。
【0084】
本開示の実施例において、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、またはそれらの2種以上の混合物を含んでもよい。具体的には、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0085】
本開示の実施例において、複合体における隔離層の含有量は、矛盾がない限り、上述したとおりである。
【0086】
本開示の例では、隔離層は、薬学的に許容される添加物を適切な溶媒と混合して組成物を得、その組成物をコーティングすることにより形成することができる。
【0087】
本開示の実施例において、複合体である医薬組成物において、第1層(第1コンパートメント)の粒子は、顆粒であってもよい。この場合、複合体である医薬組成物は、顆粒を含む錠剤またはカプセルであってもよい。具体的には、第1層の粒子が顆粒である場合、複合体は、第1有効成分を含有する初期顆粒であるコアと、コア上に形成されコアを囲む腸溶性コーティング層とを含む第1層と、第1層上に配置され第1層を囲み第2有効成分を含有する第2層(第2コンパートメント)とを含む顆粒を含んでもよい。この場合、第2有効成分を含む第2層は、第2有効成分を含む組成物で第1層をコーティングすることにより形成することができる。ここで、第1有効成分を含む初期顆粒であるコアは、第1有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む湿式顆粒または直接圧縮顆粒であってもよく、第2有効成分を含む組成物は、薬学的に許容される添加剤を更に含んでもよい。
【0088】
ここで、第1有効成分と第2有効成分を含む顆粒は、第1有効成分と第2有効成分との間の接触を防止するための少なくとも1つの隔離層をさらに含んでもよい。一実施形態によれば、隔離層は、第1有効成分と第2有効成分を含む顆粒において、第1層のコアと腸溶性コーティング層との間に配置してもよい。別の実施形態によれば、隔離層は、第1有効成分と第2有効成分を含む顆粒において、腸溶性コーティング層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。さらに別の実施形態によれば、第1有効成分と第2有効成分を含む顆粒は、2つの隔離層を含んでもよく、第1の隔離層は、第1層である顆粒と腸溶性コーティング層との間に配置してもよく、第2の隔離層は、腸溶性コーティング層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。
【0089】
本開示の実施例において、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、またはそれらの2つ以上の混合物を含んでもよい。具体的には、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0090】
本開示の実施例において、複合体中の隔離層の含有量は、矛盾がない限り、上述したとおりである。
【0091】
本開示の実施例において、隔離層は、薬学的に許容される添加物を適切な溶媒と混合して組成物を得、その組成物をコーティングすることにより形成することができる。
【0092】
本開示の実施例において、複合体である医薬組成物における第1層に含まれる粒子が顆粒である場合、複合体である医薬組成物は、第1有効成分と第2有効成分を含む顆粒;および薬学的に許容される添加物を含む錠剤またはカプセルであってもよい。このとき、複合体である医薬組成物が錠剤である場合、錠剤は、第1有効成分と第2有効成分を含有する顆粒;および薬学的に許容される添加剤を含む混合物を打錠することにより調製することができる。また、複合体である医薬組成物がカプセルである場合、カプセルは、第1有効成分と第2有効成分を含む顆粒で充填してもよい。
【0093】
本開示の実施例において、複合体である医薬組成物において、第1層に含まれる粒子は、ペレットであってもよい。この場合、複合体である医薬組成物は、ペレットを充填したカプセルであってもよい。具体的には、第1層の粒子がペレットである場合、複合体は、第1有効成分を含有するシードであるコアと、シードコア上に形成されコアを囲む第1有効成分含有層と、第1有効成分含有層上に配置され第1有効成分含有層を囲む腸溶性コーティング層とを含む第1層;および、第1層上に配置され第1層を囲み第2有効成分を含む第2層とを含むペレットであってもよい。この場合、コアシードは有効成分を含まず、例えば糖球(sugar sphere)であってもよく、第1有効成分含有層、腸溶性コーティング層、および第2有効成分含有層は、それぞれ第1有効成分、腸溶性物質および第2有効成分を含むコーティング組成物によって形成することができる。このとき、組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでもよい。
【0094】
本開示の実施例において、複合体である医薬組成物において第1層に含まれる粒子がペレットである場合、複合体である医薬組成物は、第1有効成分と第2有効成分を含むペレットを充填したカプセルであってもよい。
【0095】
ここで、第1有効成分と第2有効成分を含むペレットは、第1有効成分と第2有効成分との接触を防止するための少なくとも1つの隔離層をさらに含んでもよい。一実施形態によれば、隔離層は、第1有効成分と第2有効成分を含むペレットにおいて、第1有効成分を含む層と腸溶性コーティング層との間に配置してもよい。別の実施形態によれば、隔離層は、第1有効成分と第2有効成分とを含むペレットにおける腸溶性コーティング層と第2有効成分を含む層との間に配置してもよい。さらに別の実施形態によれば、第1有効成分と第2有効成分を含むペレットは、2つの隔離層を含んでもよく、第1の隔離層は、第1有効成分を含む層と腸溶性コーティング層との間に配置してもよく、第2の隔離層は、腸溶性コーティング層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。
【0096】
本開示の実施例において、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸またはそれらの2種以上の混合物を含んでもよい。具体的には、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物を含むことができる。
【0097】
本開示の実施例において、複合体中の隔離層の含有量は、矛盾がない限り、上述したとおりである。
【0098】
本開示の実施例において、隔離層は、薬学的に許容される添加物を適切な溶媒と混合して組成物を得、その組成物をコーティングすることにより形成することができる。
【0099】
本開示の実施例において、複合体である医薬組成物がカプセルである場合、カプセルには、錠剤、顆粒およびペレットからなる群より選択される2種類以上の粒子を充填してもよい。具体的には、カプセルには、顆粒とペレットとの混合物を充填してもよく、ここで、顆粒およびペレットは、第1層に含まれる粒子が顆粒である場合および第1層に含まれる粒子がペレットである場合に関して上述したとおりである。
【0100】
本開示の実施例において、複合体である医薬組成物がカプセルである場合、カプセルには、第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子を充填してもよく、粒子は、第1有効成分と第2有効成分の一方のみを含んでいてもよい。この場合、第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子は、それぞれ独立して、顆粒、ペレットまたは錠剤であってもよく;第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子の両方が顆粒であってもよく;第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子の両方がペレットであってもよく;第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子の両方が錠剤であってもよい。あるいは、第1有効成分を含む粒子が顆粒であり、第2有効成分を含む粒子がペレットであってもよく;第1有効成分を含む粒子がペレットであり、第2有効成分を含む粒子が顆粒であってもよい。あるいは、第1有効成分を含む粒子は錠剤であってもよく、第2有効成分を含む粒子はペレットであってもよく;第1有効成分を含む粒子はペレットであり、第2有効成分を含む粒子は錠剤であってもよい。あるいは、第1有効成分を含む粒子は顆粒であってもよく、第2有効成分を含む粒子は錠剤であってもよく;第1有効成分を含む粒子は錠剤であってもよく、第2有効成分を含む粒子は顆粒であってもよい。
【0101】
一実施形態において、第1有効成分を含む粒子が顆粒、ペレットまたは錠剤である場合、顆粒、ペレットまたは錠剤は、上述の顆粒、ペレットまたは錠剤において第2有効成分を含む層が上述のように形成されていないことを除いて、上述の顆粒、ペレットおよび錠剤(多層錠)と実質的に同じものである。別の実施形態において、第2有効成分を含む粒子が顆粒である場合、第2有効成分を含む顆粒は、第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含んでもよい。さらに別の実施形態では、第2有効成分を含む粒子がペレットである場合、ペレットは、有効成分を含まないシードを作成し、第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む組成物でシードをコーティングすることにより調製することができる。さらに別の実施形態では、第2有効成分を含む粒子が錠剤である場合、錠剤は、第2有効成分を含む顆粒と薬学的に許容される添加剤とを含む混合物を打錠することにより調製することができる。例えば、カプセルには、第1有効成分を含む顆粒と第2有効成分を含むペレットとを充填することができ、第1有効成分を含む錠剤と第2有効成分を含む錠剤とを充填することができる。
【0102】
本開示の実施例において、第1有効成分を含む粒子は、第1有効成分と第2有効成分との接触を防止するための隔離層をさらに含んでもよい。粒子の隔離層は、顆粒、ペレット、および錠剤(多層錠)に関して上述したものと実質的に同じであってもよい。
【0103】
本開示は、第1有効成分を含む第1コンパートメント;第2有効成分を含む第2コンパートメント;および第1有効成分と第2有効成分との接触を防止する隔離層(ここで第1有効成分が、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物であり、第2有効成分が、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物である)を含む複合体を提供する。
【0104】
また、第1有効成分(テゴプラザン)と第2有効成分(クロピドグレル)とを複合体である一剤に配合する場合、第1有効成分テゴプラザンと第2有効成分クロピドグレルとが接触し、両成分の安定性が低下するおそれがある。このため、2つの有効成分をそれぞれ物理的に分離したコンパートメントに含有させ、2つのコンパートメントの間に第1有効成分と第2有効成分との接触を防止することが可能な隔離層を配置してもよい。このように、本開示による隔離層を含む複合体は、テゴプラザンとクロピドグレルとが物理的に接触せず、剤形中の2成分の含有量を長期間一定に保つことができ、また、剤形中の不純物の含有量を剤形調製当初と同じレベルで長期間維持できるため、極めて優れた保存安定性を有する。
【0105】
本明細書において、用語「隔離層」は、第1有効成分テゴプラザンと第2有効成分クロピドグレルとの接触を防止するための手段を意味し、その態様は、フィルム、壁、コーティングなど、当業者が経口投与剤形に適用可能な全ての手段を含むものである。
【0106】
本開示の実施例では、隔離層は、第1有効成分を含む第1コンパートメントと第2有効成分を含む第2コンパートメントの間に配置してもよい。
【0107】
本開示の実施例において、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトースハイドレート、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、またはそれらの2以上の混合物を含んでもよい。具体的には、隔離層は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0108】
本開示の例では、隔離層は、薬学的に許容される添加剤を用いて形成した顆粒を、顆粒の外部の薬学的に許容される添加剤と混合し、混合物を打錠することにより形成することができる。
【0109】
本開示の実施例では、隔離層は、薬学的に許容される添加剤を適切な溶媒と混合して組成物を得、その組成物をコーティングすることにより形成することができる。
【0110】
本開示の実施例において、複合体中の隔離層の含有量は、矛盾がない限り、上述したとおりである。
【0111】
本開示の実施例によれば、クロピドグレルの薬学的に許容される塩は、クロピドグレルの酸塩であってもよい。具体的には、クロピドグレルの薬学的に許容される塩は、硫酸水素塩、樹脂酸塩、カンシル酸塩、ベシル酸塩、ナパジシル酸一水和物塩、塩酸塩、酒石酸塩、酢酸塩、タウロコール酸塩、またはそれらの混合物であってもよい。例えば、クロピドグレルの硫酸水素塩であってもよい。
【0112】
本開示の例では、複合体は、第1有効成分を含む第1層(第1コンポーネント);第1層上に形成され、第1有効成分と第2有効成分との接触を防止する隔離層;および隔離層上に形成され、第2有効成分を含む第2層(第2コンポーネント)を含んでもよい。
【0113】
本開示の例では、複合体は、錠剤またはカプセルであってもよい。
【0114】
本開示の例において、複合体が錠剤である場合、錠剤は、1つ以上の層が連続的に積層された形態の多層錠であってもよく、タブレット-イン-タブレットの形態の多層錠であってもよい。
【0115】
本開示の実施例において、複合体が多層錠である場合、錠剤は、第1有効成分を含む顆粒を含む第1層(第1コンポーネント);第2有効成分を含む顆粒を含む第2層;および薬学的に許容される添加物を含む隔離層を含んでもよい。
【0116】
この場合、隔離層は、第1有効成分と第2有効成分との物理的接触を防止するために第1層と第2層との間に配置され、薬理作用を示す有効成分を含まず、薬学的に許容される添加物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、またはこれらの2種以上の混合物であってもよい。具体的には、薬学的に許容される添加剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、またはそれらの混合物であってもよい。例えば、隔離層は、薬学的に許容される添加物を含む顆粒を含んでもよい。
【0117】
本開示の例では、第1層は、薬学的に許容される添加剤を含んでもよく、薬学的に許容される添加剤は、第1有効成分を含む顆粒の内部および/または顆粒の外部に含まれてもよい。
【0118】
本開示の実施例において、第1有効成分を含む顆粒は、顆粒上に配置された腸溶性コーティング層をさらに含んでもよい。この場合、多層錠中の第2有効成分は直ちに放出されてもよく、第1有効成分であるテゴプラザンは遅延放出されてもよい。この場合、腸溶性コーティング層および腸溶性コーティング層に含まれる腸溶性物質の物性は、矛盾がない限り、共投与用の医薬組成物に関して上述したとおりである。
【0119】
本開示の実施例において、複合体が多層錠である場合、錠剤は、第1有効成分を含む第1層(第1コンパートメント)であるコア;第1層コア上に配置されたコーティング層であり、薬学的に許容される添加物を含む隔離層;および隔離層上に配置された層であり、第2有効成分を含む第2層(第2コンパートメント)を含む。
【0120】
この場合、隔離層は、第1層(第1コンパートメント)と第2層(第2コンパートメント)との間に配置され、第1有効成分と第2有効成分との物理的接触を防止し、薬学的に許容される添加物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)であってもよい。カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ラクトース水和物、微結晶セルロース、ポリエチレングリコール、二酸化ケイ素、フマル酸ステアリルナトリウム、ステアリン酸、またはこれらの2種以上の混合物であってもよい。より具体的には、薬学的に許容される添加剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物であってもよい。
【0121】
本開示の実施例では、隔離層は、薬学的に許容される添加剤を溶媒に溶解し、その溶液で第1層であるコアをコーティングすることにより形成することができる。例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物を水などの溶媒に溶解して調製した溶液を用いて、隔離層を形成することができる。
【0122】
本開示の例では、コアは、コア錠剤の形態であってもよい。一実施形態では、コア錠は、顆粒内部および/または顆粒外部に薬学的に許容される添加剤を含んでもよい。この場合、コア錠の形態のコアである第1層は、第1有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む顆粒を含む混合物を打錠することにより調製することができる。
【0123】
本開示の例では、多層錠は、腸溶性コーティング層をさらに含んでもよい。一実施形態では、腸溶性コーティング層は、第1有効成分を含む第1層と隔離層との間、または隔離層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。具体的には、腸溶性コーティング層は、隔離層と第2有効成分を含有する第2層との間に配置してもよい。多層錠が腸溶性コーティング層を含む場合、多層錠中の第2有効成分クロピドグレルが直ちに放出され、第1有効成分テゴプラザンが遅延放出されてもよい。この場合、腸溶性コーティング層および腸溶性コーティング層に含まれる腸溶性物質の物性は、矛盾がない限り、共投与用医薬組成物に関して上述したものと同じである。
【0124】
本開示の例では、第2有効成分を含む第2層は、第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む顆粒と、顆粒の外部の薬学的に許容される添加剤を含む混合物をコア錠剤と共に打錠することにより第1層上に形成することができ、または第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む組成物で第1層をコーティングすることにより形成することができる。
【0125】
本開示の実施例では、第1有効成分を含む顆粒および第2有効成分を含む顆粒は、湿式顆粒または直接圧縮顆粒であってもよい。
【0126】
本開示の実施形態において、多層錠が腸溶性コーティング層をさらに含む場合、多層錠は、少なくとも1つの隔離層をさらに含んでもよい。この場合、第1隔離層は、第1層および腸溶性コーティング層上に形成することができ、第2隔離層は、腸溶性コーティング層と第2層との間に配置してもよい。
【0127】
本開示の実施例において、複合体は、顆粒を充填したカプセル、ペレット、錠剤、またはそれらの混合物であってもよい。
【0128】
本開示の実施例において、複合体が顆粒を含むカプセルである場合、顆粒は、第1有効成分を含む初期顆粒であるコアとしての第1層と、初期顆粒上に形成され、初期顆粒を囲む隔離層と、第2有効成分を含む第2層とを含んでもよい。この場合、隔離層は、第1層を薬学的に許容される添加物を含む組成物でコーティングすることにより形成することがき、第2有効成分を含む第2層は、隔離層を第2有効成分を含む組成物でコーティングすることにより形成されたコーティング層であってもよく、薬学的に許容される添加物と第2有効成分を含む顆粒とを含む混合物を打錠することにより形成された層であってもよい。ここで、第1有効成分を含有する初期顆粒であるコアは、第1有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む湿式顆粒または直接圧縮顆粒であってもよく、第2有効成分を含む組成物は、薬学的に許容される添加剤をさらに含んでいてもよい。その場合、第2有効成分を含むコーティング層および薬学的に許容される添加剤を含む隔離層は、それぞれ、コーティング層および隔離層のそれぞれに含有させる成分を溶媒に溶解して調製した組成物をコーティングすることにより形成することができる。この場合、隔離層の機能および隔離層に含まれる薬学的に許容される添加剤の種類は、矛盾がない限り、多層錠に関して上述したものと同じである。
【0129】
本開示の例では、第1有効成分と第2有効成分を含む顆粒は、腸溶性コーティング層をさらに含んでもよい。一実施形態では、腸溶性コーティング層は、第1有効成分を含むコアである第1層と隔離層との間に形成することができ、または隔離層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。具体的には、腸溶性コーティング層は、隔離層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。
【0130】
本開示の実施例において、複合体がペレットを含むカプセルである場合、ペレットは、第1有効成分を含むコアである第1層;コア上に配置され、薬学的に許容される添加物を含む隔離層;および隔離層上に配置され、第2有効成分を含む第2層を含む。
【0131】
本開示の例では、コアは、シードと、シード上に配置され、第1有効成分を含むコーティング層とを含んでもよい。シードは、薬学的有効成分を含まない糖シード(sugar seed)であってもよく、第1有効成分を含むコーティング層は、薬学的に許容される添加物をさらに含んでもよい。ここで、第1有効成分を含むコーティング層、第2有効成分を含むコーティング層、および薬学的に許容される添加剤を含む隔離層は、コーティング層および隔離層の各々に含有させる成分を溶媒に溶解して調製した各組成物をコーティングして形成することができる。このとき、隔離層の機能および隔離層に含まれる薬学的に許容される添加剤の種類は、矛盾がない限り、多層錠に関して上述したものと同じである。
【0132】
本開示の例では、ペレットは、腸溶性コーティング層をさらに含んでもよい。一実施形態では、腸溶性コーティング層は、第1有効成分を含むコアである第1層と隔離層との間に配置してもよく、または隔離層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。具体的には、腸溶性コーティング層は、隔離層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。
【0133】
本開示の実施例において、複合体がカプセルである場合、錠剤は、上述の多層錠の構造と実質的に同じ構造を有するミニ錠剤であってもよい。
【0134】
本開示の例では、第1有効成分と第2有効成分を含むミニ錠剤は、腸溶性コーティング層をさらに含んでもよい。一実施形態では、腸溶性コーティング層は、第1有効成分を含むコアである第1層と隔離層との間に配置してもよく、または隔離層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。具体的には、腸溶性コーティング層は、隔離層と第2有効成分を含む第2層との間に配置してもよい。
【0135】
本開示の実施例において、複合体がカプセルである場合、カプセルには、第1有効成分を含む粒子と第2有効成分を含む粒子とを充填してもよく、粒子は、第1有効成分と第2有効成分の一方のみを含んでもよい。この場合、第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子は、それぞれ独立して、顆粒、ペレットまたは錠剤であってもよく;または第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子の両方が顆粒であってもよく;または第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子の両方がペレットであってもよく;または第1有効成分を含む粒子および第2有効成分を含む粒子の両方が錠剤であってもよい。あるいは、第1有効成分を含む粒子が顆粒であり、第2有効成分を含む粒子がペレットであってもよく;または、第1有効成分を含む粒子がペレットであり、第2有効成分を含む粒子が顆粒であってもよい。あるいは、第1有効成分を含む粒子は錠剤であってもよく、第2有効成分を含む粒子はペレットであってもよく;または第1有効成分を含む粒子はペレットであり、第2有効成分を含む粒子は錠剤であってもよい。あるいは、第1有効成分を含む粒子は顆粒であってもよく、第2有効成分を含む粒子は錠剤であってもよく;または第1有効成分を含む粒子は錠剤であってもよく、第2有効成分を含む粒子は顆粒であってもよい。
【0136】
一実施形態において、第1有効成分を含む粒子が顆粒、ペレットまたは錠剤である場合、顆粒、ペレットまたは錠剤は、第2有効成分を含む層が上述の顆粒またはペレット中に形成されていないことを除いて、上述の顆粒、ペレットまたは錠剤と実質的に同一である。別の実施形態において、第2有効成分を含む粒子が顆粒である場合、第2有効成分を含む顆粒は、第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含んでもよい。さらに別の実施形態では、第2有効成分を含む粒子がペレットである場合、ペレットは、有効成分を含まない種子を準備し、第2有効成分および薬学的に許容される添加剤を含む組成物で種子をコーティングすることにより調製することができる。さらに別の実施形態では、第2有効成分を含む粒子が錠剤である場合、錠剤は、第2有効成分を含む顆粒と薬学的に許容される添加剤とを含む混合物を打錠することにより調製することができる。例えば、カプセルに、第1有効成分を含む顆粒と第2有効成分を含むペレットとを充填してもよいし、第1有効成分を含む錠剤と第2有効成分を含む錠剤とを充填してもよい。
【0137】
このとき、第1有効成分を含有する顆粒、ペレットおよび/または錠剤は、腸溶性コーティング層をさらに含んでもよい。この場合、カプセルに含まれる第2有効成分クロピドグレルが直ちに放出され、第1有効成分テゴプラザンが遅延放出されてもよい。この場合、腸溶性コーティング層および腸溶性コーティング層に含まれる腸溶性物質の物性は、矛盾がない限り、共投与用医薬組成物に関して上述したものと同じである。
【0138】
本明細書において、用語「薬学的に許容される添加物」は、有効成分の効果を損なわない成分を指す場合がある。添加物の例としては、各剤形において一般的に使用され、薬学的に許容される任意の添加物、例えば、充填剤、崩壊剤、結合剤、可塑剤、滑沢剤、コーティング剤(防湿性または腸溶性)、pH調整剤、希釈剤、滑沢剤、保存剤、緩衝剤、甘味剤、湿潤剤、懸濁剤、着色剤、香料、賦形剤、および腸溶剤が挙げられる。
【0139】
本開示の例では、第1有効成分もしくは第2有効成分または第1および第2有効成分を含む顆粒、錠剤またはペレットは、それぞれ独立して、薬学的に許容される充填剤、崩壊剤、結合剤、可塑剤、滑沢剤、コーティング剤、pH調整剤、またはそれらの混合物を含んでもよい。
【0140】
本開示の例では、充填剤は、以下に限定されるものではないが、微結晶セルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、プロピレングリコール、ラクトース、白糖、グルコース、フルクトース、デキストリン、マンニトール、アルギン酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、アルファ化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、沈降炭酸カルシウム、合成ケイ酸アルミニウム、リン酸水素カルシウム、硫酸カルシウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、精製ラノリン、カオリン、尿素、コロイドシリカゲル、カゼイン、プリモジェル(Primojel(登録商標))、またはそれらの混合物である。具体的には、第2有効成分を含むコンパートメントの充填剤は、微結晶セルロース、メチルセルロース、ラクトース、デキストリン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、マンニトール、白糖、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン、沈殿炭酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、またはそれらの混合物であってもよい。
【0141】
本開示の実施例において、崩壊剤は、以下に限定されるものではないが、グアーガム、キサンタンガム、デンプングリコール酸ナトリウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、微結晶セルロース、架橋ポリビニルピロリドン、トウモロコシデンプン、ゲル化デンプン、デキストラン、マンニトール、カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくはカルシウム、アルギン酸ナトリウムもしくはアルギン酸、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、無水ケイ酸、ベントナイト、モンモリロナイト、ビーガム、重炭酸ナトリウム、クエン酸、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、アルファ化デンプン、またはそれらの混合物であってもよい。具体的には、第1有効成分を含むコンパートメントの崩壊剤は、デンプングリコール酸ナトリウム、トウモロコシデンプン、ベントナイト、グアーガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウムもしくはアルギン酸、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶セルロース、マンニトール、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、クロスカルメロースナトリウム(例えば、Ac-Di-Sol(登録商標))であってもよい。架橋ポリビニルピロリドン、またはそれらの2つ以上の混合物であり、第2有効成分を含むコンパートメントの崩壊剤は、デンプングリコール酸ナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋ポリビニルピロリドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、トウモロコシデンプン、アルファ化デンプン、または混合物であってもよい。
【0142】
本開示の例では、結合剤は、以下に限定されるものではないが、ポビドン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボマー、コポビドン、デンプン、プレゼラチン化デンプン、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン共重合体、ポリビニル誘導体、微結晶性セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースもしくはその塩、ゼラチン、アラビアゴム、カゼインナトリウム、デキストリン、マンニット、ラクトース、キサンタンガム、コロイド性二酸化ケイ素、またはそれらの混合物であってもよい。具体的には、第1有効成分を含む第1コンパートメントにおける結合剤は、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、アラビアゴム、デキストリン、デンプン、マンニトール、ラクトース、微結晶セルロース、コロイド状二酸化ケイ素、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、または、それらの混合物であってもよい。第2有効成分を含む第2コンパートメントの結合剤は、アルギン酸、カルボマー、コポビドン、デンプン、アルファ化デンプン、ポリビニル誘導体、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースもしくはその塩、ゼラチン、アラビアゴム、カゼインナトリウム、またはそれらの混合物であってもよい。
【0143】
本開示の実施例において、滑沢剤は、タルク、ステアリン酸およびその塩(例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、またはステアリン酸亜鉛)、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素、モノステアリン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、グリセリルモノレート(glyceryl monorate)、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、パラフィン、またはそれらの混合物であってもよい。具体的には、第1有効成分を含む第1コンパートメントの滑沢剤は、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、フマル酸ステアリルナトリウム、グリセリルモノレート、モノステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリルステアリン酸亜鉛、パラフィン、またはそれらの混合物であってもよく、第2有効成分を含むコンパートメントの滑沢剤は、タルク、ステアリン酸もしくはその塩、フマル酸ステアリルナトリウム、二酸化ケイ素、モノステアリン酸グリセリル、ポリエチレングリコール、またはそれらの混合物であってもよい。
【0144】
本開示の実施例において、可塑剤は、グリコール、エステル、アセチルシリコーンオイル、クエン酸トリエチル、グリセリン、グリセリン誘導体、またはそれらの混合物の中から選択される1つであってもよい。
【0145】
本開示の実施例において、コーティング剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースガム、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、それらの塩、またはそれらの混合物から選ばれる1つであってもよい。
【0146】
本開示の実施例において、pH調整剤は、有機酸を含み、ここで有機酸は、クエン酸、塩酸、乳酸、リン酸、プロピオン酸、硫酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、またはそれらの混合物であってもよい。具体的には、pH調整剤は、クエン酸、酒石酸、フマル酸、乳酸、リン酸、リンゴ酸、またはそれらの混合物であってもよい。
【0147】
本開示の実施例において、希釈剤は、デンプン、ラクトース、白糖、デキストリン、グルコース、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、イソマルト、ショ糖、リン酸水素カルシウム、コロイド二酸化ケイ素、またはそれらの混合物であってもよい。具体的には、希釈剤は、微結晶性セルロース、デンプン、デキストリン、ラクトース、ショ糖、マンニトール、キシリトール、イソマルト、ソルビトール、またはそれらの混合物であってもよい。
【0148】
本開示の例では、結合剤およびコーティング剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、およびゼラチンからなる群より選択される1つまたは2つ以上の混合物であってもよい。
【0149】
本開示の範囲は、添加物の使用に限定されるものではなく、添加物は、当業者の選択により、従来の範囲内の量で含有されてもよい。
【0150】
本開示の実施例において、本開示の医薬組成物は、血栓症関連疾患を予防または治療するための組成物であってもよい。具体的には、医薬組成物は、動脈硬化症状を予防または治療するための組成物であってもよい。
【0151】
本開示の実施例において、本開示の医薬組成物は、胃腸障害を予防または治療するための組成物であってもよい。具体的には、胃腸障害は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害であってもよい。
【0152】
本開示の実施例において、本開示の医薬組成物は、血栓症関連疾患を予防または治療するための組成物、およびクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害を予防または治療するための組成物であってもよい。具体的には、胃腸障害は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害であってもよい。
【0153】
本開示はまた、本開示の医薬組成物の薬学的有効量を、それを必要とする対象に投与することを含む、血栓症関連疾患を予防または治療する方法を提供する。具体的には、本方法は、動脈硬化症状を予防または治療するための方法であってもよい。
【0154】
上述の方法において、本開示の医薬組成物は、矛盾がない限り、上述したものと同じである。例えば、医薬組成物は、上述の本開示に係る複合体である上述の医薬組成物であっても、上述の本開示に係る共投与用医薬組成物であっても、いずれであってもよい。例えば、医薬組成物が複合体である医薬組成物である場合、本方法は、第1有効成分と第2有効成分を含む単位剤形の薬学的有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでもよい。例えば、医薬組成物が共投与用の医薬組成物である場合、本方法は、第1有効成分を含む単位剤形の薬学的有効量と、第2有効成分を含む単位剤形の薬学的有効量とを、それを必要とする対象に共投与することを含んでもよい。
【0155】
本方法は、胃腸障害を予防または治療するための方法であってもよい。具体的には、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害を予防または治療するための方法であってもよい。
【0156】
上述の方法において、本開示の医薬組成物は、矛盾がない限り、上記で説明したものと同じである。例えば、医薬組成物は、上述の共投与用医薬組成物であってもよいし、複合体である上述の医薬組成物であってもよい。例えば、医薬組成物が複合体である医薬組成物である場合、本方法は、第1有効成分と第2有効成分を含む単位剤形の薬学的有効量を、それを必要とする対象に投与することを含んでもよい。例えば、医薬組成物が共投与用の医薬組成物である場合、本方法は、第1有効成分を含む単位剤形の薬学的有効量と、第2有効成分を含む単位剤形の薬学的有効量とを、それを必要とする対象に共投与することを含んでもよい。また、本方法は、血栓症関連疾患を予防または治療するための方法であってもよい。具体的には、本方法は、動脈硬化症状を予防または治療するための方法であってもよい。
【0157】
上述の方法において、医薬組成物中の有効成分の含有量、組成物の剤形、薬学的に許容される添加剤なども、矛盾がない限り、上述したものと同じである。
【0158】
本開示はまた、血栓症関連疾患を予防または治療するための、本開示の医薬組成物の使用を提供する。
【0159】
本開示はまた、血栓症関連疾患を予防または治療するための医薬品の製造における、本開示の医薬組成物の使用も提供する。
【0160】
上述の使用において、本開示の医薬組成物は、矛盾がない限り、上述したものと同じである。例えば、医薬組成物は、上述の共投与用医薬組成物であってもよいし、複合体である上述の医薬組成物であってもよい。
【0161】
上述の使用において、血栓症関連疾患は、動脈硬化症状であってもよい。
【0162】
また、上述の使用は、胃腸障害を予防または治療するための使用であってもよい。具体的には、上述の使用は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害を予防または治療するための使用であってもよい。
【0163】
本開示はまた、胃腸障害を予防または治療するための本開示の医薬組成物の使用を提供する。
【0164】
本開示はまた、胃腸障害を予防または治療するための医薬の製造における本開示の医薬組成物の使用を提供する。
【0165】
上述の使用において、胃腸障害は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害であってもよい。
【0166】
上述の使用において、本開示の医薬組成物は、矛盾がない限り、上述したものと同じである。例えば、医薬組成物は、上述の共投与用の医薬組成物であってもよいし、複合体である上述の医薬組成物であってもよい。
【0167】
また、上述の使用は、血栓症関連疾患の予防または治療のための使用であってもよい。具体的には、血栓症関連疾患は、動脈硬化症状であってもよい。
【0168】
本開示は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物の投与によって引き起こされる胃腸障害を予防または治療するための医薬組成物を提供する。
【0169】
本開示はまた、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む、胃酸分泌抑制用の医薬組成物を提供し、ここで本医薬組成物は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物と共投与されることを特徴としている。
【0170】
本開示はまた、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物;およびクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬配合物も提供する。
【0171】
本開示はまた、医薬の組み合わせ物:テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物;およびクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物、を含む医薬組成物も提供する。例えば、組み合わせ物を含む医薬組成物は、キットであってもよい。
【0172】
本開示の実施例において、医薬組成物(組み合わせ物)は、血栓症関連疾患を予防または治療するための組成物(組み合わせ物)である。具体的には、医薬組成物(組み合わせ物)は、動脈硬化症状を予防または治療するための組成物(組み合わせ物)であってもよい。さらに、医薬組成物(組み合わせ物)は、胃腸障害を予防または治療するための医薬組成物(組み合わせ物)であってもよい。さらに、医薬組成物(組み合わせ物)は、血栓症関連疾患を予防または治療するための医薬組成物(組み合わせ物)であってもよく、胃腸障害を予防または治療するための医薬組成物(組み合わせ物)であってもよい。この場合、胃腸障害は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害であってもよい。
【0173】
本発明の医薬組成物(組み合わせ物)において、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物は、医薬組成物(組み合わせ物)から遅延放出されてもよい。また、医薬組成物(組み合わせ物)がクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む場合、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物は医薬組成物から直ちに放出されてもよい。
【0174】
なお、医薬組成物(組み合わせ物)において、有効成分、剤形、薬学的に許容される添加物などの含有量は、矛盾がない限り、上述したものと同じである。
【0175】
本開示はまた、対象における血栓症関連疾患の予防または治療方法および/または対象における胃腸障害の予防または治療方法であって、有効成分として、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物、およびクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物の薬学的有効量をそれを必要としている対象者に投与することを含む方法、および、その方法における血栓症の予防または治療方法を提供するものである。
【0176】
本方法において、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物は、遅延放出されてもよい。
【0177】
本方法において、血栓症関連疾患は、動脈硬化症状であってもよい。
【0178】
本方法において、胃腸障害は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害であってもよい。
【0179】
本開示はまた、対象における血栓症関連疾患を予防または治療する方法、および/または対象における胃腸障害を予防または治療する方法であって、それを必要とする対象に、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物;およびクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物を含む薬学的有効量の医薬の組み合わせ物を投与することを含む方法を提供する。
【0180】
本方法において、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物は、遅延放出されてもよい。
【0181】
本方法において、血栓症関連疾患は、動脈硬化症状であってもよい。
【0182】
本方法において、胃腸障害は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害であってもよい。
【0183】
本開示はまた、対象における血栓症関連疾患の予防または治療方法および/または対象における胃腸障害の予防または治療方法であって、それを必要とする対象に、薬学的有効量のテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を、薬学的有効量のクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物と共に、共投与することを含む方法を提供する。
【0184】
本方法において、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物は、遅延放出されてもよい。
【0185】
本方法において、血栓症関連疾患は、動脈硬化症状であってもよい。
【0186】
本方法において、胃腸障害は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害であってもよい。
【0187】
本開示はまた、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害を予防または治療する方法であって、それを必要とする対象に、薬学的有効量のテゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を投与することを含む方法を提供する。
【0188】
本方法において、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物は、遅延放出されてもよい。
【0189】
また、本開示は、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む胃酸分泌抑制用医薬組成物を、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物と共投与する方法を提供する。
【0190】
本方法において、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物は、遅延放出されてもよい。
【0191】
本方法において、用語「薬学的有効量」は、任意の医療に適用される妥当な利益/リスク比で疾患を治療するのに十分な量を意味する。医薬組成物の有効量レベルは、患者のタイプ、疾患の重症度、薬剤の活性、薬剤に対する感受性、投与期間、投与経路、排泄率、治療期間、および組成物と組み合わせて使用する薬剤、ならびに医療分野で周知の他の要因に応じて決定することができる。本組成物は、上述した全ての要因を考慮して、副作用を生じることなく最大の効果を発揮し得る最小限の量で投与することが重要であり、この量は当業者であれば容易に決定することができる。
【0192】
具体的には、本開示の医薬組成物において、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の1日の投与量は、成人に対して10~300 mg(クロピドグレルとして)、具体的には75~300 mg(クロピドグレルとして)であってもよい。また、本開示の医薬組成物において、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の1日の投与量は、成人に対して10~200 mg(クロピドグレルとして)であってもよいが、本開示の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0193】
上記方法において、医薬組成物、具体的には、医薬組成物中の有効成分の含有量、剤形、薬学的に許容される添加物などは、矛盾がない限り、上述したものと同じである。
【0194】
本開示はまた、血栓症関連疾患の予防または治療、および/または胃腸障害の予防または治療のための、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物、およびクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を有効成分として含む医薬組成物もしくは組み合わせ物の使用を提供する。
【0195】
本開示はまた、血栓症関連疾患の予防または治療および/または胃腸障害の予防または治療のための医薬品の製造における、有効成分として、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物、およびクロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物または医薬配合物の使用方法を提供する。
【0196】
本開示はまた、有効成分として、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物の、胃腸障害を治療するための使用を提供する。
【0197】
本開示はまた、胃腸障害を治療するための医薬品の製造における、有効成分として、テゴプラザン、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物を含む医薬組成物の使用も提供する。
【0198】
本発明の医薬組成物は、矛盾がない限り、上述したものと同じである。
【0199】
上述の使用において、血栓症関連疾患は、動脈硬化症状であってもよい。
【0200】
上述の方法において、胃腸障害は、クロピドグレル、その光学異性体、その薬学的に許容される塩、その水和物もしくは溶媒和物、またはそれらの混合物の投与によって引き起こされる胃腸障害であってもよい。
【発明の効果】
【0201】
本開示は、テゴプラザンを遅延放出させ、クロピドグレルを即時放出させる医薬組成物に関するものである。この医薬組成物は、クロピドグレル投与によって引き起こされる胃腸障害および血栓症関連疾患の予防および治療に対して、極めて優れた効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0202】
図1図1は、本開示による錠剤の概略図である。
図2図2は、本開示による製剤からのクロピドグレルの溶出を示す図である。
図3図3は、本開示による製剤からのテゴプラザンの溶出を示す図である。
図4図4は、本開示による製剤からのクロピドグレルの溶出を示す図である。
図5図5は、本開示による製剤からのテゴプラザンの溶出を示す図である。
図6図6は、本開示による製剤からのテゴプラザンの溶出を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0203】
以下、実施例を参照して、本開示をより詳細に説明する。ただし、これらの実施例は、本開示を説明するためのものであり、本開示の範囲は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0204】
実施例1.テゴプラザンとクロピドグレル硫酸塩との適合性評価
【表1】
【0205】
上記の表1より、テゴプラザンとクロピドグレル硫酸塩のそれぞれの効果を検討するために、ICHガイドラインの勧告および医薬品安全性試験規則に従って、保存条件下で両者の適合性を評価した。
【0206】
その結果、各保存条件下で両成分を直接接触させると、両成分の含量が減少することが示された。このことは、2つの成分が物理的に接触しても、2つの成分の安定性が低下することを示している。
【0207】
実施例2:テゴプラザン顆粒および錠剤の調製
【表2】
【0208】
上記の表2に従い、テゴプラザン、マンニトール、微結晶セルロースおよびクロスカルメロースナトリウムを混合し、750±200μmメッシュで篩過した後、高速ミキサーに投入して混合した。ヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶解して結合液を調製し、この結合液を高速ミキサーに導入し、湿式顆粒を調製した。
【0209】
得られた顆粒は、流動層乾燥機で給気温度60±10℃で流動させながら乾燥させた。
【0210】
乾燥した顆粒をクワドロコーミル(Quadro Comil)を用いて750±200μmのメッシュで粉砕し、そこに微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウムを加えて混合し、滑沢性を持たせてテゴプラザンの顆粒を含む混合物を得た。
【0211】
この混合物をエルエカ(Erweka)社製錠剤機(100±20 rpm)を用いて打錠し、直方体形状の錠剤を得た。
【0212】
実施例3および4:クロピドグレル直接圧縮顆粒の調製
【表3】
【0213】
上記の表3に従い、硫酸クロピドグレルおよび添加剤(コポビドン、ラクトース水和物、無水ラクトース、微結晶セルロース、アルファ化デンプン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、コロイド状二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、ポビドン、またはデンプングリコール酸ナトリウム)を混合器(エルヴェカユニバーサル(erweka universal))に入れ、15 rpmで20分混合した。この混合物をクワドロコーミル(Quadro Comil)を使用して750±200μmメッシュで粉砕し、直接圧縮顆粒を得た。滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウム(実施例3)またはタルクおよびフマル酸ステアリルナトリウム(実施例4)を顆粒に添加し、これにより直接圧縮顆粒を含む混合物を調製した。
【0214】
実施例5~14:クロピドグレル顆粒の調製
【表4】
【0215】
実施例5~8および実施例10~14
上記の表4に従って、硫酸クロピドグレルを含有する湿式顆粒を調製した。
【0216】
上記の表4によれば、医薬添加物(微結晶セルロースまたはケイ化微結晶セルロース、ラクトース水和物またはマンニトール)を混合し、硫酸クロピドグレルと共に750±200μmメッシュで篩い分けした後、高速ミキサーに入れ、混合した。上記の表4に従って、ヒドロキシプロピルセルロース(実施例5~8、および11~14)またはコポビドン(実施例10)を精製水(実施例5および6)または無水エタノール(実施例7、8、および10~14)に溶解して結合液を調製し、この結合液を高速ミキサーに導入して湿式顆粒を調製した。
【0217】
得られた顆粒は、流動層乾燥機で給気温度60±10℃で流動させながら乾燥させた。
【0218】
乾燥した顆粒をクアドロコミル(Quadro Comil)を用いて750±200μmのメッシュで粉砕し、これに低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、軽質無水ケイ酸および/またはステアリルフマル酸ナトリウムを加え、混合し、滑沢化して顆粒を含む混合物を得た。
【0219】
実施例9
実施例9では、結合剤としてコポビドンを使用して、直接圧縮顆粒を調製した。
【0220】
上記の表4に従って、クロピドグレル硫酸塩および添加剤(滑沢剤であるフマル酸ステアリルナトリウムを除く)を混合機(erweka universal)に入れ、15 rpmで20分間混合した。これをクアドロコーミルを用いて750±200μmメッシュで粉砕し、直接圧縮顆粒を得た。滑沢剤として、フマル酸ステアリルナトリウムを顆粒に添加し、直接圧縮顆粒を含む混合物を調製した。
【0221】
実施例15および16:クロピドグレルとテゴプラザンの間を隔離するための顆粒の調製
【表5】
【0222】
上記の表5に従って、テゴプラザン顆粒と硫酸クロピドグレルとの間に隔離層を形成するための顆粒を調製した。具体的には、微結晶性セルロース、ラクトース水和物、二酸化ケイ素を入れ、高速ミキサーで混合した。ヒドロキシプロピルセルロースを精製水に溶解して結合液を調製し、この結合液を高速ミキサーに導入し、湿式顆粒を調製した。得られた顆粒は、流動層乾燥機で給気温度60±10℃で流動させながら乾燥させた。
【0223】
乾燥した顆粒をクアドロコーミルを用いて750±200μmのメッシュで粉砕し、顆粒に滑沢剤としてフマル酸ステアリルナトリウムを添加して、隔離層形成用顆粒を含む混合物を得た。
【0224】
実施例17~19:テゴプラザン湿式顆粒および錠剤の調製
【表6】
【0225】
上記の表6に従って、テゴプラザン、マンニトール、微結晶セルロース、およびクロスカルメロースナトリウムを混合した。この混合物を750±200μmのメッシュで篩い分けした後、高速ミキサーに投入し、混合した。
【0226】
メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体(実施例17)、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(1:1)(実施例18)、メタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(1:2)(実施例19)とクエン酸トリエチル90%エタノール水溶液(w/w)それぞれで結合溶液を調製した。各結合液を高速ミキサーに導入し、これにより湿式顆粒を調製した。
【0227】
得られた湿式顆粒は、流動層乾燥機で給気温度60±20℃で流動させながら乾燥させた。
【0228】
乾燥した顆粒に、微結晶セルロース、クロスカルメロースナトリウム、コロイド状二酸化ケイ素を混合し、クアドロコーミルを用いて750±200μmメッシュで粉砕した。次いで、この顆粒を混合し、ステアリン酸マグネシウムで滑沢性を持たせて、顆粒を含む混合物を得た。
【0229】
この顆粒を含む混合物を、エルヴェカ(Erweka)社製の錠剤プレス(100±20 rpm)を用いて打錠し、丸みを帯びた形状を有する錠剤を得た。
【0230】
実施例20~25:テゴプラザンを含有するコア錠および腸溶錠の調製
【表7】

【0231】
実施例20~22
上記の表7に従って、テゴプラザンを含有するコア錠を調製した。
【0232】
実施例2に従って調製した顆粒を含む混合物を用いて、テゴプラザンを含有するコア錠を調製した。
【0233】
実施例2に従って調製した顆粒を含む混合物を、直径6.5±0.5 mmの円形杵を備えた打錠機(エルヴェカ(erweka)ユニバーサル)を用いて打錠することにより、硬度12±5 KPを有する錠剤を調製した。
【0234】
調製したテゴプラザンのコアまたはインナー(内部、inner)錠をコーティング機(フロイント産業)に入れ、ヒプロメロースとポリエチレングリコールを精製水に溶解した溶液でコーティングし、第1コーティング層(第1層)を形成した。
【0235】
第1コーティング層の形成後、腸溶性コーティング層(または第2コーティング層)を形成した。具体的には、コーティング溶液は、メタクリル酸-アクリル酸エチル共重合体(実施例20、溶媒:精製水または90%(重量/重量)エタノール水溶液)またはメタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(1:1)(実施例21、溶媒:90%(重量/重量)エタノール水溶液)またはメタクリル酸-メタクリル酸メチル共重合体(1:2)(実施例22、90%(重量/重量)エタノール水溶液)、クエン酸トリエチルおよびポリソルベート80を適当な溶剤(精製水、有機溶剤またはそれらの混合物)中で溶解することにより調製し、テゴプラザン含有錠のそれぞれの第1コーティング層をコーティング溶液でコーティングして第2コーティング層とし、上記の表7に従ってテゴプラザンを含む腸溶錠を調製した。
【0236】
次いで、ヒプロメロースおよびポリエチレングリコールを精製水に溶解することによりコーティング溶液を調製し、その上に第2コーティング層が形成されたテゴプラザン含有錠のそれぞれをコーティング溶液でコーティングして、第2コーティング層上に第3コーティング層(隔離層)を形成した。
【0237】
実施例23~25
上記の表7に示す成分および内容物を用い、第3コーティング層を形成せずに第1コーティング層および第2コーティング層のみを形成した以外は、実施例20~22と同様にして、テゴプラザンコア錠上に第1コーティング層および第2コーティング層をそれぞれ形成したテゴプラザンを含む腸溶錠を調製した。
【0238】
なお、実施例20~25の調製において、第1~第3コーティング層を形成する工程は、従来技術および当業者に公知の給排気温度、コーティングパン回転速度、コーティング溶液供給速度、製品温度などを考慮して実施した。そのプロセス条件を下記の表8にまとめる。
【表8】
【0239】
実施例26~28:テゴプラザンコア錠および腸溶錠の調製
【表9】
【0240】
上記の表9に示す成分および内容物を用いた以外は、実施例20~22の方法と実質的に同様にして、実施例26~28のテゴプラザン含有錠を調製した。このとき、テゴプラザン含有コア錠は、実施例2に従って調製した顆粒を含む混合物を用いて調製した。
【0241】
実施例29~32:テゴプラザンとクロピドグレルを含有する多層錠の調製
【表10】
【0242】
上記の表10に従って、テゴプラザンとクロピドグレルを含有する多層錠(層が連続的に積層されている形態である)を調製した。
【0243】
実施例29および30
実施例2の顆粒含有混合物(打錠前の顆粒含有混合物)、実施例15の顆粒含有混合物および実施例3の顆粒含有混合物から、市橋精機錠剤プレス機を用いて三層錠を調製した。
【0244】
このとき、実施例15の顆粒含有混合物から成る層が、テゴプラザン含有層と硫酸クロピドグレル含有層との間に配置されるように、各三層錠を調製した。テゴプラザンと硫酸クロピドグレルは、実施例15の顆粒含有混合物から成る層によって、互いに隔離されていた。
【0245】
実施例31および32
実施例16の顆粒含有混合物および実施例4の顆粒含有混合物を用いた以外は、実施例29および30と同様にして三層錠を調製した。このとき、実施例15の顆粒含有混合物から成る層が、テゴプラザン含有層と硫酸クロピドグレル含有層との間に配置されるように、各三層錠を調製した。テゴプラザンと硫酸クロピドグレルは、実施例16の顆粒含有混合物から成る層によって互いに隔離されていた。
【0246】
実験例1.実施例29~32の溶出試験の評価
実施例29~32に係る錠剤と対照製剤(プラビックス(登録商標)錠、K-CAB(登録商標)錠)の製剤学的同等性は、米国薬局方(USP)装置2(パドル)に従って溶出率を測定することにより評価した。
【0247】
溶出条件は、次のように:pH 2.0およびpH 4.0(酢酸緩衝液);37±0.5℃、培地900 mL、および回転数50 rpmに設定した。溶出開始後に得られた試料溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC;アジレント・テクノロジー社)の紫外分光計を用いて分析し、錠剤の溶出同等性を評価した。その結果を下記の表11および表12に示す。
【表11】
【表12】
【0248】
表11および表12に示す溶出率測定結果から、本開示の実施例に係る三層錠は、2つの有効成分を含む単一の剤形であるにもかかわらず、各三層錠に含まれる各成分は、各成分を単独で配合した場合と同様の溶出率を示していることがわかる。
【0249】
したがって、本開示の錠剤製剤は、2つの有効成分を含む単一の剤形であったにもかかわらず、2つの成分をそれぞれ含む製剤を単独で投与した場合と同様の治療効果を発揮し得ることがわかり、患者の服薬コンプライアンスを大幅に改善できることが確認された。
【0250】
実験例2.テゴプラザン顆粒上に形成された腸溶性被膜(Enteric Film)とテゴプラザンコア錠を有する顆粒含有錠、および腸溶性コーティング層と隔離層を有する顆粒含有錠の溶出試験の評価(実施例2および17~28の溶出試験の評価)
実施例2および17~28に係る錠剤の製剤学的同等性は、米国薬局方(USP)の装置2(パドル)に従って溶出率を測定することにより評価し、その結果を下記表13に示す。
【0251】
溶出条件は、次のように:pH 1.2;37±0.5℃;培地900 mL;および回転数50 rpmに設定した。溶出開始後に得られた試料溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC;アジレント・テクノロジー社)の紫外分光計を用いて分析し、錠剤の溶出率を測定することにより、酸性条件下における錠剤の耐酸性を評価した。
【表13】
【0252】
上記の表13を参照すると、腸溶性を有する医薬添加物を含まない錠剤(実施例2)の場合、酸性媒体中で高い溶出率を示すが、腸溶剤を含むテゴプラザン含有顆粒または錠剤(実施例7~28)の場合、酸性媒体中で耐酸性を有することが確認された。また、第3コーティング層(隔離層)を有さず、第1コーティング層、および腸溶性を有する医薬添加物を用いて形成された第2コーティング層(腸溶性コーティング層)を含む錠剤(実施例26~28)についても、耐酸性を有することが確認された。
【0253】
実施例33~35:テゴプラザン製剤(その上に形成された腸溶性コーティング層を有するテゴプラザンのコア錠を含む)およびクロピドグレル顆粒を含むタブレット-イン-タブレット製剤の調製
【表14】
【0254】
上記の表14に従って、タブレット-イン-タブレット製剤は、実施例5、9および10の各混合物を用いて、その上に腸溶性コーティング層を含むコーティング層が形成されたテゴプラザン錠(実施例20~22)がコアに位置し、クロピドグレル含有顆粒がシェル(shell)に位置するように万能打錠機(universal tablet press、市橋精機製、打錠機)により調製した。
【0255】
具体的には、実施例5、9、または10の硫酸クロピドグレル顆粒を含む混合物を打錠機のパンチ型に入れ、次に実施例20、21、または22のコーティングされたテゴプラザン含有コア錠をパンチ型に入れた。次に、コア錠が破損しないように圧力をかけ、打錠を行い、タブレット-イン-タブレット製剤を調製した。
【0256】
なお、タブレット-イン-タブレット製剤を調製するための打錠工程において、クロピドグレルシェル層(shell layer)に加える打錠圧(850~1500kgf)により、テゴプラザンのコア錠および腸溶性コーティング層に亀裂が入り、内容物が漏出することはなかった。
【0257】
実験例3.硫酸クロピドグレルおよびテゴプラザンを含有するタブレット-イン-タブレット製剤の溶出試験の評価(実施例33~35の溶出試験の評価)
対照錠(プラビックス(登録商標)錠およびK-CAB(登録商標)錠)および実施例33~35に係る錠剤の製剤学的同等性は、米国薬局方(USP)装置2に従って溶出率を測定することにより評価した。
【0258】
溶出条件は、次のように:0.01N HCl;37 ± 0.5℃;培地900 mL;および回転数50 rpmに設定した。溶出開始後に得られた試料溶液を高速液体クロマトグラフィー(HPLC;アジレント・テクノロジー社)の紫外分光計を用いて分析し、テゴプラザンおよびクロピドグレルの溶出率を評価し、その結果を図2および図3に示した。
【0259】
韓国薬局方に記載されている製剤学的同等性の審査基準によれば、対照製剤(プラビックス(登録商標))の平均溶出率が15分から30分の間に85%に達する場合、被験製剤は、類似係数(f2)の値が50以上であるか、対照製剤の平均溶出率が60%または85%付近になる時点の平均溶出率に対して被験製剤の溶出率が±15%以内であれば、対照錠と同等と判定できる。
【0260】
図2を参照すると、対照錠であるプラビックス(登録商標)の15分後および30分後の溶出率はそれぞれ65.4%および94.7%であったのに対し、このとき、実施例33の錠剤からの硫酸クロピドグレルの15分後および30分後の溶出率は58.9%および91.6%、実施例34の錠剤からの15分後および30分後の硫酸クロピドグレルの溶出率はそれぞれ70.4%および96.8%、実施例35の錠剤からの15分後および30分後の硫酸クロピドグレルの溶出率はそれぞれ73.7%および97.0%を示した。
【0261】
一方、図3に示すように、腸溶性コーティング層を含むテゴプラザンコア錠を有する実施例33~35のタブレット-イン-タブレット製剤について、0.01N塩酸媒体条件(装置2、50 rpm)で2時間の溶出試験を行った結果、製剤中のテゴプラザンはK-CAB(登録商標)錠のそれと異なりほとんど溶出しないことが確認でき、製剤が耐酸性を有することが示唆された。
【0262】
したがって、図3の結果から、実施例33~35のタブレット-イン-タブレット製剤中のテゴプラザンは、市販の対照錠剤であるK-CAB(登録商標)錠剤とは異なり、胃内で溶出しないことがわかり、テゴプラザンがタブレット-イン-タブレット製剤から遅延放出されることが示唆された。
【0263】
本開示の実施例33~35による錠剤の場合、腸溶性コーティング層によりテゴプラザンが胃液条件では溶出せず、クロピドグレルだけが選択的に胃液条件で溶出するため、テゴプラザンとクロピドグレルを含む複合体からのクロピドグレルの溶出率が高く維持され、その結果クロピドグレルは極めて優れた効果を発揮し得る。
【0264】
実施例36~42:テゴプラザンを含むコア錠および腸溶錠の調製
【表15】

【0265】
上記の表15に示す成分および内容物を用いたこと以外は、実施例20~22と実質的に同様にして、実施例36~42のテゴプラザン含有錠を調製した。
【0266】
テゴプラザン含有コア錠の調製は、実施例36~41のコア錠を実施例2に従って調製した顆粒含有混合物を用いて調製し、実施例42のテゴプラザンコア錠を上記の表15に示す成分および内容を用いて実施例2と同じ方法で調製した混合物を用いて調製した。
【0267】
実施例43~48:テゴプラザン腸溶錠およびクロピドグレル顆粒を含有するタブレット-イン-タブレットの製剤の調製
【表16】
【0268】
上記の表16に示す組み合わせによれば、テゴプラザン腸溶錠およびクロピドグレル顆粒をそれぞれ含むタブレット-イン-タブレット製剤は、実施例33~35の方法に係るタブレット-イン-タブレット製剤の調製と実質的に同じ方法で調製した。
【0269】
実施例43~48のタブレット-イン-タブレット製剤の調製中、種々の打錠圧(850~1500 kgf)により、テゴプラザンコア錠および腸溶性コーティング層の割れ(cracking)は生じなかった。
【0270】
実験例4.硫酸クロピドグレルおよびテゴプラザンを含有するタブレット-イン-タブレット製剤の評価
実験例4-1. テゴプラザン腸溶錠およびタブレット-イン-タブレット製剤の安定性の評価
【表17】
【表18】
【0271】
実施例41および42のテゴプラザン腸溶錠および実施例43、44、46、および48のタブレット-イン-タブレット製剤の安定性試験については、ICHガイドラインの勧告および医薬品安定性試験規則に従って、保存条件(ストレス条件:40℃/RH75±5%)で評価を行った。
【0272】
実施例41および42を比較した上記の表17の結果から、調製したテゴプラザン腸溶錠中のテゴプラザンの含有量による安定性の差はないことが確認できる。
【0273】
また、上記の表18に示すように、テゴプラザンと硫酸水素クロピドグレルのそれぞれの安定性を比較した結果、タブレット-イン-タブレット製剤のコアとシェルの間に配置された腸溶性コーティング層などを介して両成分が物理的に接触しないことにより、錠剤内錠の安定性が維持されていることが確認できる。
【0274】
実験例4-2.タブレット-イン-タブレット製剤の溶出試験の評価
上記の表16に従って調製した実施例43、44、46、および47について、次の条件:0.01N HClおよびpH 6.8リン酸緩衝液;USP)装置2;50 rpm;900 mL培地;HPLC分析で溶出試験を行った。
【0275】
具体的には、実施例43、44、46、および47のタブレット-イン-タブレット製剤の0.01N HCl中での耐酸性を評価した後、耐酸性評価を受けた実施例43、44、46、および47のタブレット-イン-タブレット製剤をpH 6.8(アルカリ条件)のリン酸緩衝液に加え、さらに溶出試験を実施した。その結果を図4(クロピドグレルの0.01N HCl中での溶出グラフ)、図5(テゴプラザンの0.01N HCl中での溶出グラフ)、および図6(テゴプラザンのpH 6.8での溶出グラフ)に示す。
【0276】
図4図6の結果から、本開示の実施例43、44、46、および47のタブレット-イン-タブレット製剤は、胃液の条件下でクロピドグレルのみを選択的に溶出できることが確認できた。また、実施例43、44、46、および47のタブレット-イン-タブレット製剤の場合、コア錠であるテゴプラザン腸溶錠は、0.01N塩酸中での耐酸性評価後もそのコーティング層が破れることなく形状を維持し、テゴプラザンはpH 6.8(アルカリ条件)リン酸緩衝液中での溶出を評価した結果、溶出したことを確認することができる(図6)。
【0277】
したがって、本開示のタブレット-イン-タブレット製剤は、胃液条件ではクロピドグレルのみが選択的に溶出し、テゴプラザンを遅延放出させることができ、本開示のクロピドグレルの優れた有効性が維持されていることが示唆されることがわかる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6