(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】部品装着機
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240523BHJP
H05K 13/08 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H05K13/04 A
H05K13/08 Q
(21)【出願番号】P 2022568013
(86)(22)【出願日】2020-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2020046306
(87)【国際公開番号】W WO2022123773
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井村 仁哉
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽介
(72)【発明者】
【氏名】村山 翔
【審査官】松江川 宗
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-036197(JP,A)
【文献】国際公開第2016/084126(WO,A1)
【文献】特開2009-170830(JP,A)
【文献】国際公開第2017/002640(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/179146(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/30,13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の柱状部品を装着するために基板に設定された複数の装着位置の配置に対応して配列され前記柱状部品をそれぞれ吸着可能な複数の吸着穴をもつノズル先端部と、複数の前記吸着穴の各々に連通して一斉に負圧エアを供給可能なエア通路と、
位置の基準を表すノズル位置マークと、を備える吸着ノズル
と、
前記吸着ノズルを着脱可能に保持する装着ヘッド、および前記装着ヘッドを移動させるヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、
前記基板を搬送する基板搬送装置と、
前記柱状部品を供給する部品供給装置と、
前記ノズル位置マークを撮像して画像データを取得するノズル撮像カメラと、
前記画像データに画像処理を施して、前記装着ヘッドに対する前記吸着ノズルの相対位置を較正する較正部と、
を備える部品装着機。
【請求項2】
前記ノズル先端部は、下方に開口する前記吸着穴が配列された吸着領域、および前記吸着穴が配列されていない非吸着領域を有し、前記吸着領域が前記非吸着領域よりも下方に突出している、請求項1に記載の
部品装着機。
【請求項3】
前記エア通路は、前記吸着穴が延在する軸方向と交差する複数の方向から前記吸着穴に連通する、請求項1または2に記載の
部品装着機。
【請求項4】
前記エア通路は、前記軸方向と直交する全周囲方向から前記吸着穴の最深部に連通する、請求項3に記載の
部品装着機。
【請求項5】
前記吸着ノズルは、前記ノズル先端部を着脱可能に保持するノズル基部を備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の
部品装着機。
【請求項6】
前記吸着ノズルの前記吸着穴を撮像して画像データを取得するノズル撮像カメラと、
前記画像データに画像処理を施して、前記吸着穴に前記柱状部品が有るか否かを検出する部品検出部と、
を備える、請求項
1~5のいずれか一項に記載の部品装着機。
【請求項7】
前記ノズル撮像カメラは、前記吸着ノズルが前記柱状部品を前記吸着穴に吸着する吸着動作の動作前および動作後、ならびに、前記吸着ノズルが前記柱状部品を前記基板に装着する装着動作の動作前および動作後のうちひとつ以上のタイミングで前記吸着穴を撮像する、請求項
6に記載の部品装着機。
【請求項8】
前記部品検出部が不要な前記柱状部品を検出した場合に、前記エア通路から前記吸着穴に正圧エアを供給して不要な前記柱状部品を廃棄する廃棄部を備える、請求項
6または
7に記載の部品装着機。
【請求項9】
前記廃棄部は、不要な前記柱状部品を収容する廃棄箱、および不要な前記柱状部品を粘着力によって回収する粘着回収部の少なくとも一方を有する、請求項
8に記載の部品装着機。
【請求項10】
前記部品検出部が前記基板に装着された前記柱状部品の不足を検出した場合に、前記装着ヘッドに着脱可能に保持されて不足した前記柱状部品の吸着動作および前記基板への装着動作を行うリカバリノズルを備える、請求項
6~
9のいずれか一項に記載の部品装着機。
【請求項11】
前記リカバリノズルは、前記柱状部品を吸着可能な吸着穴、および前記吸着穴に連通して負圧エアを供給可能なエア通路を備える、請求項
10に記載の部品装着機。
【請求項12】
前記部品供給装置は、一回の吸着動作で吸着される複数の前記柱状部品からなる部品群を一群以上保持したトレイを有する、請求項
1~
11のいずれか一項に記載の部品装着機。
【請求項13】
前記トレイは、前記部品群の位置の基準となる群位置マークを有し、
前記部品装着機は、
前記群位置マークを撮像して画像データを取得するトレイ撮像カメラと、
前記画像データに画像処理を施して、前記部品群の位置を検出する位置検出部と、を備える、
請求項
12に記載の部品装着機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、複数の柱状部品を基板に装着するときに用いる吸着ノズル、および、この吸着ノズルを含んで構成される部品装着機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたカラム整列装置は、CGA基板(セラミック・グリッド・アレイ基板)の電極数と同一数および電極幅と同一幅で刻設された長溝を有する整列板と、長溝からはみ出たカラム(柱状部品)を排除する蓋部材と、整列板を振動させてカラムを進める直進フィーダーと、整列板上にカラムを供給するカラム供給装置と、を備える。これによれば、カラムを正確に整列させて吸着治具に送ることができ、脱落のないはんだ付けが行える、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1のカラム整列装置および吸着治具は、複数の電極が一列に配置されたCGA基板に対応する技術であり、複数の電極が二次元的に配置された基板に対応することができない。
【0005】
それゆえ、本明細書では、基板に設定された複数の装着位置の配置に制約されずに、複数の柱状部品の吸着および基板への装着を効率的に行うことができる吸着ノズル、および、この吸着ノズルを含んで構成される部品装着機を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、複数の柱状部品を装着するために基板に設定された複数の装着位置の配置に対応して配列され前記柱状部品をそれぞれ吸着可能な複数の吸着穴をもつノズル先端部と、複数の前記吸着穴の各々に連通して一斉に負圧エアを供給可能なエア通路と、を備える吸着ノズルを開示する。
【0007】
また、本明細書は、前記した吸着ノズルを保持する装着ヘッド、および前記装着ヘッドを移動させるヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、前記基板を搬送する基板搬送装置と、前記柱状部品を供給する部品供給装置と、を備える部品装着機を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本明細書で開示する吸着ノズルや部品装着機において、ノズル先端部がもつ複数の吸着穴は、基板に設定された複数の装着位置の二次元的な配置に対応して設けることができ、その配置状況に制約されない。かつ、複数の吸着穴の各々は、エア通路から一斉に負圧エアが供給されるので、それぞれ柱状部品を吸着することができ、続いて基板に装着することができる。したがって、吸着ノズルは、必要とされる全数の柱状部品の吸着および基板への装着を一度で行うことが可能であり、吸着および装着を効率的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の部品装着機の全体構成を示す平面図である。
【
図2】実施形態の吸着ノズルをノズル先端部の側から見た斜視図である。
【
図3】吸着ノズルをノズル基部の側から見た斜視図である。
【
図4】
図2のA部の部分拡大斜視図であって、吸着ノズルの吸着穴の配置を示す図である。
【
図6】
図5のB部の部分拡大図であって、柱状部品が吸着穴に吸着された状態を示す図である。
【
図8】リカバリノズルの先端付近を拡大して示した側面断面図である。
【
図11】部品装着機の制御の構成を示すブロック図である。
【
図12】部品装着機の動作を説明する動作フローの図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
1.実施形態の部品装着機1の全体構成
まず、実施形態の吸着ノズル5を含んで構成される実施形態の部品装着機1の全体構成について、
図1を参考にして説明する。部品装着機1は、柱状部品P(
図5、
図6参照)およびその他の部品を基板Kに装着する装着作業を実施する。
【0011】
図1において、紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬送するX軸方向、紙面上側(後側)から紙面下側(前側)に向かう方向がY軸方向となる。部品装着機1は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、部品認識用カメラ7、および制御装置8などが基台10に組み付けられて構成される。
【0012】
基板搬送装置2は、基台10上でX軸方向に延在するように配置される。基板搬送装置2は、符号略のガイドレール、搬送ベルト、およびクランプ機構などで構成される。搬送ベルトは、ガイドレールに沿って輪転することにより、載置された基板Kを機内の装着実施位置まで搬入する。クランプ機構は、基板Kを装着実施位置に位置決めする。部品移載装置4による部品の装着作業が終了した後、クランプ機構は基板Kを解放し、搬送ベルトは基板Kを機外に搬出する。
【0013】
部品供給装置3は、基台10の前側の左寄りに配置される。部品供給装置3は、X軸方向の左寄りに配列された複数のテープフィーダ31、およびX軸方向の中央寄りに配置されたトレイ装置33で構成される。各テープフィーダ31は、多数の部品が一列に収納されたキャリアテープを、後端側の供給位置32に向けて送り出す。キャリアテープは、供給位置32で部品を採取可能に供給する。テープフィーダ31は、公知の各種形態の適用が可能である。
【0014】
トレイ装置33は、複数段に区画された収納棚34、収納棚34の各段に収納された複数のトレイ35、およびトレイ35を選択して収納棚34から後方に引き出す機構(図略)によって構成される。トレイ装置33は、概ね長方形のトレイ35を用いて複数の柱状部品Pを供給する(詳細後述)。
【0015】
部品移載装置4は、基板搬送装置2および部品供給装置3よりも上方に配置される。部品移載装置4は、Y軸移動体41、X軸移動体42、装着ヘッド43、3種類のノズル、および基板認識用カメラ45などで構成される。Y軸移動体41は、Y軸直動機構に駆動されてY軸方向に移動する。X軸移動体42は、Y軸移動体41に装架され、X軸直動機構に駆動されてX軸方向に移動する。装着ヘッド43は、X軸移動体42の前面に設けられた図略のクランプ機構に取り付けられ、X軸移動体42と共に水平二方向に移動する。Y軸移動体41、X軸移動体42、Y軸直動機構、およびX軸直動機構により、ヘッド駆動機構が構成される。
【0016】
装着ヘッド43の下側に、ノズル保持座44が昇降可能かつ回転可能に設けられる(
図5参照)。ノズル保持座44の下側に、3種類のノズルが自動交換可能に保持される。3種類のノズルを載置する目的で、基台10上の基板搬送装置2と部品供給装置3の間にノズルステーション47が配置される。
図1において、複数の柱状部品Pを吸着する吸着ノズル5は、ノズル保持座44の下側に保持されている。また、1本の柱状部品Pを吸着するリカバリノズル48、および、柱状部品P以外の部品を吸着する一般用ノズル49は、ノズルステーション47に載置されている。
【0017】
吸着ノズル5およびリカバリノズル48は、トレイ装置33のトレイ35から柱状部品Pを吸着する。一般用ノズル49は、テープフィーダ31の供給位置32から柱状部品P以外の部品を吸着する。一般用ノズル49は、公知の各種形態の適用が可能である。ノズルの自動交換は、装着ヘッド43がノズルステーション47の上方に移動することによって行われる。
【0018】
基板認識用カメラ45は、装着ヘッド43と並んでX軸移動体42に設けられる。基板認識用カメラ45は、光軸が下向きとなる姿勢で配置される。基板認識用カメラ45は、基板Kに付設された位置基準マークを上方から撮像する。取得された画像データは画像処理され、基板Kの装着実施位置が正確に求められる。基板認識用カメラ45として、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0019】
部品認識用カメラ7は、基台10上のノズルステーション47の右側に設けられる。部品認識用カメラ7は、光軸が上向きとなる姿勢で配置される。部品認識用カメラ7は、装着ヘッド43が部品供給装置3から基板Kに移動する途中で、一般用ノズル49に吸着された部品を下方から撮像する。また、部品認識用カメラ7は、吸着ノズル5およびリカバリノズル48に対しても同様の撮像を行う。部品認識用カメラ7として、CCDやCMOS等の撮像素子を有するデジタル式の撮像装置を例示できる。
【0020】
また、トレイ装置33の右側に、廃棄箱37および粘着回収部38が配置される。廃棄箱37および粘着回収部38は、不要な柱状部品Pを廃棄する廃棄部39を構成する。廃棄箱37は、上方に開口する箱形状に形成されており、不要な柱状部品Pを内部に収容する。粘着回収部38は、不要な柱状部品Pを粘着力によって回収する(詳細後述)。
【0021】
制御装置8は、基台10に組み付けられており、その配置位置は特に限定されない。制御装置8は、CPUを有してソフトウェアで動作するコンピュータ装置により構成される。なお、制御装置8は、複数のCPUが機内に分散配置され、かつ通信接続されて構成されてもよい。制御装置8は、基板Kの種類ごとのジョブデータに基づいて、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品認識用カメラ7制御し、部品の装着作業を進める。ジョブデータは、装着作業の詳細な手順や実施方法などを記述したデータである。
【0022】
2.実施形態の吸着ノズル5の構成
次に、実施形態の吸着ノズル5の構成について、
図2~
図6を参考にして説明する。吸着ノズル5は、
図2および
図3に示されるように、ノズル基部51およびノズル先端部55を主要な構成部材としており、内部にエア通路6が形成される。ノズル基部51は、上側から順にフランジ部52、軸部53、および取り付け部54が連なって形成される。
【0023】
フランジ部52は、水平方向に広がる円板状に形成される。フランジ部52は、周囲の一箇所に切り欠き部521が形成されている(
図3参照)。これにより、吸着ノズル5は、ノズル保持座44に保持された姿勢および単品において、周方向の回転状態が目視で容易に確認される。
図5に示されるように、フランジ部52が装着ヘッド43のノズル保持座44に保持されると、吸着ノズル5の全体が保持される。
【0024】
詳述すると、ノズル保持座44は、下部が円柱状に形成されている。ノズル保持座44は、中心軸上に中心エア通路441をもち、中心軸から外れた複数箇所に周辺エア通路442をもつ。中心エア通路441および周辺エア通路442は、下方に開口しており、エアの流れが別々に制御される。ノズル保持座44は、装着ヘッド43の移動によってフランジ部52の上方に到達し、下降してフランジ部52の上面522に接する。そして、周辺エア通路442に負圧のエアが供給されると、ノズル保持座44は、フランジ部52を吸着して保持する。これに限定されず、ノズル保持座44は、吸着ノズル5を挟持するチャック機構を有してもよい。
【0025】
軸部53は、フランジ部52の下側の中央に位置する。軸部53は、フランジ部52よりも小径の円筒状に形成されている。取り付け部54は、軸部53の下側に位置する。取り付け部54の上部541の平面形状は、正方形から四隅を取り除いた形状となっている。上部541の外周寄りの四箇所に、取り付け孔542が上下に貫通して形成される。取り付け孔542は、上側が小径で、下側が大径に形成されている。取り付け部54の下部543の平面形状は、上部541よりも一回り小さな形状となっている。下部543の外周を周回するように、シール溝544が刻まれて形成される。シール溝544は、気密を確保するためのOリング545が嵌め込まれている。
【0026】
ノズル先端部55は、上側の被固定部56、および下側の吸着構造部59が連なって形成される。被固定部56は、取り付け部54の下部543の外周を取り囲む枠形状に形成される。被固定部56は、内側の面にOリング545が圧接される。被固定部56の上面のうち取り付け孔542に対向する四箇所に、被締結部材561が立てて固定される。被締結部材561は、雌ねじが形成されており、取り付け孔542の下側の大径の部分に係入する。したがって、締結ねじ58を上側から取り付け孔542に差し込んで回転させることにより、締結ねじ58を被締結部材561の雌ねじに螺合させることができる。これにより、ノズル基部51は、ノズル先端部55を着脱可能に保持する。
【0027】
吸着構造部59は、水平方向に広がる板形状に形成される。吸着構造部59は、取り付け部54の下部543の下面からわずかに離隔して配置される。これにより、吸着構造部59と取り付け部54の下部543との間に、高さ方向の離隔距離Dで水平二方向に広がる平面状エア通路65が区画される(
図6参照)。平面状エア通路65は、Oリング545によって気密が確保される。吸着構造部59の下面は、吸着領域5Aおよび非吸着領域5Cに分かれる。
【0028】
吸着領域5Aは、下方に開口する複数の吸着穴5Bが形成されている。吸着穴5Bは、柱状部品Pを吸着する部位である。複数の吸着穴5Bの配列位置は、複数の柱状部品Pを装着するために基板Kに設定された複数の装着位置の配置に対応している。全部の吸着穴5Bを包含する吸着領域5Aの形状および大きさは、基板K側の複数の装着位置が二次元状にどのように配置されていても、その配置状況に合わせて適正に設定することができる。また、吸着領域5Aは、二箇所以上に分散配置されていてもよい。
図4に示される例で、吸着領域5Aは、正方形の枠形状に設定されている。吸着領域5A内の吸着穴5Bの個数は304個であり、これに限定されない。
【0029】
吸着穴5Bは、軸方向が上下に延在する垂直穴とされ、かつ、吸着する柱状部品Pの円柱形状に合わせて丸穴に形成される。吸着穴5Bの内径は、柱状部品Pの直径の寸法公差に基づく最大直径よりもわずかに大きめに設定される。吸着穴5Bの深さは、柱状部品Pの長さよりも少し短めに設定される。これらの設定により、吸着穴5Bに吸着された柱状部品Pの垂直姿勢の安定化が図られている。なお、柱状部品Pが角柱形状である場合、吸着穴5Bを同じ角柱形状の穴とすることが好ましい。
図6に示されるように、吸着穴5Bの最深部(最も高い位置)は、平面状エア通路65に連通する。
【0030】
非吸着領域5Cは、
図4に示される例で、吸着領域5Aの内側の領域および、吸着領域5Aの外側の領域となる。吸着領域5Aの下面は、非吸着領域5Cの下面よりも下方に突出している。ここで、柱状部品Pの長さが他の部品の高さよりも大きい場合、基板Kに対して他の部品を先に装着し、柱状部品Pを後で装着する。吸着ノズル5が下降して柱状部品Pを基板Kに装着する際、非吸着領域5Cは、吸着領域5Aよりも上方に引っ込んでいるため、装着済みの部品に干渉しない。仮に、柱状部品Pを先に装着すると、他の部品を後で装着するときに、装着済みの柱状部品Pが一般用ノズル49に干渉しやすくなる。
【0031】
非吸着領域5Cの外縁に近い位置にノズル位置マーク5Dが設けられる。ノズル位置マーク5Dは、吸着ノズル5の位置の基準を表すものである。ノズル位置マーク5Dは、部品認識用カメラ7による撮像が可能である。つまり、部品認識用カメラ7は、ノズル位置マーク5Dを撮像して画像データを取得するノズル撮像カメラとして機能する。ノズル位置マーク5Dを複数(
図2の例では4個)とすることにより、吸着ノズル5の位置の検出精度が向上する。加えて、吸着ノズル5の周方向の回転状態の検出が可能となる。
【0032】
次に、複数の吸着穴5Bに一斉に負圧のエアを供給可能なエア通路6について説明する。エア通路6は、中心エア通路61、分岐エア通路62、下降エア通路64、および前述した平面状エア通路65で構成される。中心エア通路61は、ノズル基部51の中心を上下に貫通して形成される。吸着ノズル5がノズル保持座44に保持された状態において、中心エア通路61は、ノズル保持座44の中心エア通路441に連通して、装着ヘッド43から負圧および正圧のエアが選択的に供給される。中心エア通路61の下端は、平面状エア通路65の中央位置に連通する。
【0033】
分岐エア通路62は、平面視で90°ピッチに4個形成されている。分岐エア通路62の各々は、中心エア通路61の途中高さから分岐して、径方向外向きに水平に延在する。2個の分岐エア通路62を通しで形成する際に、ノズル基部51の取り付け部54に横孔が穿孔される。この横孔の開口部は、止め栓63によって封止される。下降エア通路64は、分岐エア通路62の径方向外寄りの位置から下方に延在する。下降エア通路64の下端は、平面状エア通路65の吸着領域5Aよりも外側の位置に連通する。
【0034】
このエア通路6の構成によれば、中心エア通路61の上端に負圧のエアが供給されたとき、エア通路6は複数の吸着穴5Bの各々に連通して一斉に負圧エアを供給することができる。かつ、平面状エア通路65は、吸着穴5Bの軸方向と直交する全周囲方向から吸着穴5Bの最深部に連通している。したがって、吸着穴5Bに吸着された柱状部品Pは、その上端が特定の方向に吸引されることがなく、垂直姿勢が保たれる。
【0035】
仮に、分岐エア通路62および下降エア通路64を設けない構成を想定すると、柱状部品Pは、その上端が中心方向に向かって吸引される。このため、柱状部品Pは、直径の寸法公差の分だけ傾斜した姿勢で吸着されやすくなる。結果として、柱状部品Pが基板Kに装着されたときの垂直精度が低下する。
【0036】
実施形態の吸着ノズル5において、ノズル先端部55がもつ複数の吸着穴5Bは、基板Kに設定された複数の装着位置の二次元的な配置に対応して設けることができ、その配置状況に制約されない。かつ、複数の吸着穴5Bの各々は、エア通路6から一斉に負圧エアが供給されるので、それぞれ柱状部品Pを吸着することができ、続いて基板Kに装着することができる。したがって、吸着ノズル5は、必要とされる全数の柱状部品Pの吸着および基板Kへの装着を一度で行うことが可能であり、吸着および装着を効率的に行うことができる。
【0037】
さらに、ノズル先端部55は、ノズル基部51に着脱可能に保持されている。したがって、複数の柱状部品Pの装着位置の配置が相違する別種の基板Kに対して、吸着穴5Bの配置が相違する別のノズル先端部55を製作し、ノズル基部51に取り付けて対応することができる。つまり、別種の基板Kへの対応が容易であり、かつ、対応するためのコストが低廉になる。加えて、ノズル先端部55を取り外すことができるので、吸着穴5Bやエア通路6の清掃を始めとするメンテナンスが容易になる。
【0038】
3.リカバリノズル48
次に、リカバリノズル48について、
図7および
図8を参考にして説明する。リカバリノズル48は、基板Kに装着された柱状部品Pが不足する場合に、不足分の柱状部品Pを装着するリカバリ動作を担当する。リカバリノズル48は、フランジ部481および軸部482が連なって構成され、内部にエア通路484が形成される。フランジ部481は、吸着ノズル5のフランジ部52と同じ直径に形成される。吸着ノズル5と同様に、フランジ部481がノズル保持座44に吸着されて保持されると、リカバリノズル48の全体が保持される。
【0039】
軸部482は、フランジ部481の下側の中央に位置して、下方に延在する。軸部482は、中空の円筒状に形成され、下部が縮径されて吸着穴483が形成される。吸着穴483の内径および深さは、吸着ノズル5の吸着穴5Bと同程度に設定される。吸着穴483の周りの軸部482の外径は、装着済みの他の柱状部品Pに干渉しないように、細く設定される。
【0040】
エア通路484は、フランジ部481および軸部482を上下に貫通して形成される。リカバリノズル48がノズル保持座44に保持された状態において、エア通路484は、ノズル保持座44の中心エア通路441に連通して、装着ヘッド43から負圧および正圧のエアが選択的に供給される。エア通路484の下端は、吸着穴483に連通する。したがって、エア通路484に負圧のエアが供給されたとき、吸着穴483に柱状部品Pが吸着される。
【0041】
4.トレイ35による柱状部品Pの供給
次に、トレイ35を用いた複数の柱状部品Pの供給について、
図9を参考にして説明する。トレイ35は、吸着ノズル5の一回の吸着動作で吸着される304本の柱状部品Pからなる部品群を三群保持する。部品群を保持する三つの群保持部351は、長方形のトレイ35の長手方向に並んで配置される。群保持部351の各々は、吸着ノズル5の吸着領域5Aと同一形状の正方形の枠状に形成される。群保持部351の四辺は、トレイ35の四辺に対して平行する。
【0042】
群保持部351の各々は、吸着ノズル5の吸着穴5Bと同一配置の304個の保持穴をもつ。ただし、群保持部351の保持穴は、吸着ノズル5の吸着穴5Bよりも浅く形成され、柱状部品Pの取り出しが容易化されている。なお、トレイ35は、一群や二群の部品群を保持してもよく、あるいは、三群を越える多数の部品群を保持してもよい。
【0043】
正方形枠状の群保持部351の対角線上の二つのコーナーの近傍位置に、それぞれ群位置マーク352が設けられる。群位置マーク352は、群保持部351の各々に対して一対とされている。群位置マーク352は、群保持部351に保持された部品群の位置の基準となるものである。群位置マーク352は、基板認識用カメラ45による撮像が可能である。つまり、基板認識用カメラ45は、群位置マーク352を撮像して画像データを取得するトレイ撮像カメラとして機能する。なお、撮像視野の制約がある場合、基板認識用カメラ45は、一対の群位置マーク352を別々に二回に分けて撮像してもよい。群位置マーク352を一対とすることにより、部品群の位置の検出精度が向上する。加えて、部品群の水平面内における回転角度の誤差の検出が可能となる。
【0044】
さらに、トレイ35は、柱状部品Pを1本ずつ供給することができる単品保持部353を有する。単品保持部353は、トレイ35の一方の長辺の近くの位置に、長辺に平行して配置される。単品保持部353は、離隔して一列に並ぶ複数の保持穴に柱状部品Pをそれぞれ保持している。これによれば、柱状部品Pの部品群および単品が一つのトレイ35から供給されるので、便利である。単品保持部353の両端付近の位置に、それぞれ単品位置マーク354が設けられる。一対の単品位置マーク354は、単品保持部353に保持された柱状部品Pの位置の基準となるものである。単品位置マーク354は、群位置マーク352と同様、基板認識用カメラ45によって撮像される。
【0045】
5.粘着回収部38
次に、粘着回収部38の構成について、
図10を参考にして説明する。図示されるように、粘着回収部38は、コンベア装置を用いて構成される。すなわち、コンベア装置のベルトコンベア381に両面粘着テープ382が貼り付けられて、粘着回収部38が構成される。両面粘着テープ382は、不要になった柱状部品Pが移送されて押し当てられる。したがって、両面粘着テープ382は、当該の柱状部品Pを粘着力によって保持し、回収することができる。
【0046】
図1に示されるように、粘着回収部38の前部は、部品装着機1の前側の機外に引き出されている。このため、ベルトコンベア381が輪転すると、両面粘着テープ382が機外に移送される。したがって、部品装着機1を停止することなく、機外で両面粘着テープ382を剥がして、不要になった柱状部品Pとともに廃棄することができる。この廃棄操作は、両面粘着テープ382の面積に見合う本数の柱状部品Pが回収された後に実施される。この後、新品の両面粘着テープ382がベルトコンベア381に貼付されて、ベルトコンベア381が再度輪転する。これにより、粘着回収部38は、柱状部品Pの回収を行える状態に戻る。
【0047】
なお、粘着回収部38は、基台10上に両面粘着テープ382を貼付する簡易な構成としてもよい。ただし、この構成では、両面粘着テープ382を貼付したり剥がしたりする際に、部品装着機1を停止させて、図略の安全カバーを開く必要がある。同様に、廃棄箱37に収容された柱状部品Pを廃棄する際にも、部品装着機1を停止させて、安全カバーを開く必要がある。
【0048】
6.部品装着機1の制御の構成
次に、部品装着機1の制御の構成について、
図11を参考にして説明する。前述したように、制御装置8は、基板搬送装置2、部品供給装置3、部品移載装置4、および部品認識用カメラ7制御して、部品の装着作業を進める。また、制御装置8は、吸着ノズル5に関する制御を行う制御機能部として、較正部81、部品検出部82、廃棄制御部83、位置検出部84、および清掃制御部85を有する。
【0049】
較正部81は、吸着ノズル5がノズル保持座44に保持されたときに機能する。ここで、吸着ノズル5は、ノズル保持座44に繰り返して着脱され、保持されるたびに装着ヘッド43に対する相対位置が変化し得る。較正部81は、この相対位置の変化を較正するものである。
【0050】
較正部81は、まず、ノズル保持座44に保持された吸着ノズル5を部品認識用カメラ7の上方に移動させる。較正部81は、次に、部品認識用カメラ7(ノズル撮像カメラ)に複数のノズル位置マーク5Dを撮像させて、画像データを取得させる。なお、撮像視野の制約がある場合、部品認識用カメラ7は、複数のノズル位置マーク5Dを複数回に分けて撮像してもよい。較正部81は、三番目に、画像データを受け取って画像処理を施し、装着ヘッド43に対する吸着ノズル5の相対位置を較正する。加えて、較正部81は、吸着ノズル5の周方向の回転角度を較正する。
【0051】
補足すると、画像処理によって、装着ヘッド43に設定された基準取り付け位置に対する吸着ノズル5の実際の取り付け位置の位置誤差が求められる。この位置誤差を考慮して、以降の装着ヘッド43の位置制御が実行される。あるいは、位置誤差に基づいて、基準取り付け位置が補正される。さらに、画像処理によって、ノズル保持座44に設定された基準取り付け角度に対する吸着ノズル5の実際の取り付け角度の角度誤差が求められる。この角度誤差を考慮して、以降のノズル保持座44の回転制御が実行される。あるいは、角度誤差に基づいて、基準取り付け角度が補正される。較正の実施により、以降の吸着ノズル5の位置の制御および回転の制御が正確に行われる。
【0052】
部品検出部82は、吸着ノズル5の複数の吸着穴5Bの各々に柱状部品Pが有るか否かを検出する。部品検出部82は、まず、吸着ノズル5を部品認識用カメラ7の上方に移動させる。部品検出部82は、次に、部品認識用カメラ7(ノズル撮像カメラ)に吸着穴5Bを撮像させて、画像データを取得させる。なお、このときの画像データは、較正部81が取得した画像データと共通化されてもよい。また、撮像視野の制約がある場合、部品認識用カメラ7は、複数の吸着穴5Bを複数回に分けて撮像してもよい。部品検出部82は、三番目に、画像データを受け取って画像処理を施し、吸着穴5Bに柱状部品Pが有るか否かを検出する。柱状部品Pの有無は、例えば、画像データにおける輝度の相違によって検出される。
【0053】
部品検出部82は、吸着ノズル5が柱状部品Pを吸着穴5Bに吸着する吸着動作の動作前および動作後に機能する。部品検出部82は、吸着動作の動作前の時点で、少なくとも一つの吸着穴5Bに既に柱状部品Pが有る第1の異常を検出することができる。また、部品検出部82は、吸着動作の動作後の時点で、少なくとも一つの吸着穴5Bに柱状部品Pが無い第2の異常を検出することができる。
【0054】
さらに、部品検出部82は、吸着ノズル5が柱状部品Pを基板Kに装着する装着動作の動作後に機能する。部品検出部82は、装着動作の動作後の時点で、少なくとも一つの吸着穴5Bに柱状部品Pが残留している第3の異常を検出することができる。第3の異常は、基板Kに装着された柱状部品Pが不足していることを意味する。第1~第3の異常は、例えば、吸着穴5B内に微小な塵埃が侵入して目詰まりすることにより引き起こされる。
【0055】
廃棄制御部83は、廃棄部39の一部となっている。廃棄制御部83は、部品検出部82が不要な柱状部品Pを検出した場合、換言すると第1の異常および第3の異常を検出した場合に機能する。廃棄制御部83は、吸着ノズル5を廃棄箱37の上方に移動させ、エア通路6から吸着穴5Bに正圧エアを供給して柱状部品Pを吹き飛ばし、廃棄箱37に落下させて廃棄する。廃棄時の正圧エアの圧力は、部品装着時の正圧エアの圧力よりも高く設定される。廃棄制御部83は、実際に廃棄できたか否かについて、再度の部品認識用カメラ7による撮像および画像処理により判定する。
【0056】
廃棄できなかった場合、廃棄制御部83は、吸着ノズル5を粘着回収部38の両面粘着テープ382の上方から下降させ、柱状部品Pを両面粘着テープ382に押し当てる。これにより、柱状部品Pは、両面粘着テープ382の粘着力によって回収され、廃棄される。廃棄制御部83は、実際に廃棄できたか否かについて、三度目の部品認識用カメラ7による撮像および画像処理により判定する。
【0057】
位置検出部84は、吸着ノズル5がトレイ35から柱状部品Pを吸着する前に機能する。位置検出部84は、まず、基板認識用カメラ45をトレイ35の上方に移動させる。位置検出部84は、次に、基板認識用カメラ45(トレイ撮像カメラ)に群位置マーク352を撮像させて、画像データを取得させる。位置検出部84は、三番目に、画像データを受け取って画像処理を施し、群保持部351に保持された部品群の位置を検出する。また、位置検出部84は、同様の撮像および画像処理によって、単品保持部353に保持された柱状部品Pの位置を検出することができる。
【0058】
清掃制御部85は、吸着ノズル5の清掃を行う。清掃制御部85は、具体的にはエア通路6から吸着穴5Bに正圧エアを供給して、吸着穴5B内のエアブローを行う。清掃時の正圧エアの圧力は、部品装着時の正圧エアの圧力よりも高く設定される。清掃制御部85が機能する時期は、装着ヘッド43が吸着ノズル5を取り外してノズルステーション47に載置する前に設定されている。また、清掃制御部85は、稼働の合間の時間などを利用して、吸着ノズル5の清掃を行ってもよい。これによれば、吸着穴5B内の塵埃のブローなどにより、吸着ノズル5は、良好な状態に維持される。さらに、清掃制御部85は、リカバリノズル48が使用された都度、吸着ノズル5の清掃と同様の方法でリカバリノズル48の清掃を行うことができる。
【0059】
7.部品装着機1の動作
次に、部品装着機1の動作について、
図12の動作フローを参考にして説明する。部品装着機1の装着作業において、先ず、基板搬送装置2が動作して、基板Kを装着実施位置に搬入し、位置決めする。次に、装着ヘッド43は、一般用ノズル49を保持して、吸着ノズル5の装着動作と干渉しない部品を基板Kに装着する。この後の動作フローが
図12に示されている。
【0060】
図12のステップS1で、制御装置8は、装着ヘッド43をノズルステーション47に移動し、装着ヘッド43から一般用ノズル49を取り外し、吸着ノズル5に交換する。次に、較正部81が機能して、装着ヘッド43に対する吸着ノズル5の相対位置および取り付け角度を較正する。次のステップS2で、部品検出部82は、吸着穴5Bに柱状部品Pが有るか否かを検出する。1本以上の不要な柱状部品Pが有る場合(第1の異常)、動作フローはステップS11に分岐される。
【0061】
ステップS11で、廃棄制御部83は、柱状部品Pを廃棄箱37に廃棄する。次のステップS12で、廃棄制御部83は、画像処理によって廃棄に成功したか否かを判定する。廃棄に成功した場合、吸着穴5Bの状態が正常に復帰しているので、動作フローはステップS2に戻される。廃棄に失敗した場合のステップS13で、廃棄制御部83は、柱状部品Pを粘着回収部38に廃棄する。次のステップS14で、廃棄制御部83は、画像処理によって廃棄に成功したか否かを判定する。廃棄に成功した場合、動作フローはステップS2に戻される。廃棄に失敗した場合、吸着穴5Bから柱状部品Pを取り去ることができない状態になっており、部品装着機1はエラー停止する。制御装置8は、エラー停止したことを通報する。
【0062】
ステップS2で、吸着穴5Bに柱状部品Pが無い場合(正常状態)、動作フローはステップS3に進められる。ステップS3で、位置検出部84は、画像処理によってトレイ35の群保持部351に保持された部品群の位置を検出する。次に、制御装置8は、吸着ノズル5が部品群の柱状部品Pを吸着する動作を制御する。
【0063】
次のステップS4で、部品検出部82は、画像処理によって全ての吸着穴5Bに柱状部品Pが有るか否かを判定する。柱状部品Pが1本でも不足する場合(第2の異常)、動作フローはステップS5に分岐される。ステップS5で、制御装置8は、吸着ノズル5が吸着できなかった柱状部品Pの位置を記憶する。記憶された位置は、基板K上に柱状部品Pが装着されない不足位置に相当する。
【0064】
ステップS4で全ての吸着穴5Bに柱状部品Pが有る場合(正常状態)、およびステップS5の実行後、動作フローは、ステップS6に合流される。ステップS6で、制御装置8は、柱状部品Pの基板Kへの装着動作を制御する。次のステップS7で、部品検出部82は、吸着穴5Bに柱状部品Pが有るか否かを判定する。柱状部品Pが1本でも残留している場合(第3の異常)、動作フローはステップS8に分岐される。
【0065】
ステップS8で、制御装置8は、吸着穴5Bに残留することによって基板Kに装着されなかった不足分の柱状部品Pの位置(不足位置)を記憶する。ステップS8の実行後、動作フローは、ステップS11に進められる。この後の動作フローは、前述と同様であるが、ステップS12やステップS14において柱状部品Pの廃棄に成功した場合、動作フローはステップS9に進められる(破線の矢印参照)。
【0066】
ステップS7で吸着穴5Bに1本の柱状部品Pも残留していない場合(正常状態)、動作フローはステップS9に合流される。ステップS9で、制御装置8は、全ての柱状部品Pを基板Kに装着できたか否かを判定する。制御装置8は、ステップS5もステップS8も経由していない場合に、全ての柱状部品Pを漏れなく吸着して、漏れなく装着できたと判定する。この場合、動作フローは終了する。これ以外の場合、動作フローはステップS10に進められる。
【0067】
ステップS10で、制御装置8は、リカバリノズル48のリカバリ動作を制御する。このとき、制御装置8は、ステップS5およびステップS8の少なくとも一方で記憶した不足位置に基づいて制御を行う。リカバリノズル48に対する制御方法は、吸着および装着する柱状部品Pが1本である点を除き、吸着ノズル5に対する制御方法と同様である。つまり、制御装置8は、リカバリノズル48がトレイ35の単品保持部353から柱状部品Pを吸着し、基板K上の不足位置に装着するように制御する。このとき、吸着ノズル5と同様、画像処理による柱状部品Pの位置の検出、および柱状部品Pの有無の判定等が行われる。ステップS10の実行により、動作フローは終了する。
【0068】
なお、ステップS10の実行は、第2の異常および第3の異常の少なくとも一方が発生したことを意味しており、好ましいことではない。したがって、制御装置8は、ステップS10の実行回数や実行頻度が規定値を超えた場合に、部品装着機1がエラー停止するように制御してもよい。これによれば、制御装置8は、吸着ノズル5の稼働状態を監視して、吸着穴5Bの目詰まりを始めとする性能低下を検出することができる。
【0069】
装着動作が済んだ基板Kは、基板搬送装置2によって機外に搬出される。一方、清掃制御部85は、吸着ノズル5やリカバリノズル48の清掃を行う。この後、装着ヘッド43は、吸着ノズル5やリカバリノズル48をノズルステーション47に載置し、一般用ノズル49を再度保持する。また、三組の部品群がすべて消費されたトレイ35は、収納棚34に戻され、新しいトレイ35が引き出される。これで、次の基板Kに対する装着作業の準備が整う。
【0070】
実施形態の部品装着機1によれば、吸着ノズル5に関して述べた効果と同様、必要とされる全数の柱状部品Pの吸着および基板Kへの装着を一度で行うことが可能であり、吸着および装着を効率的に行うことができる。さらに、吸着ノズル5を製作すれば、部品装着機1のその他の構成要素は現行品を用いることができるので、導入コストは低廉である。
【0071】
8.実施形態の応用および変形
なお、吸着ノズル5を装着ヘッド43に固定的に設けて、柱状部品Pのみを装着する専用の部品装着機1とすることができる。この場合、清掃制御部85は、吸着ノズル5の所定動作回数ごとに、あるいは異常発生時などに清掃を行うことが好ましい。さらに、廃棄部39を構成する廃棄箱37および粘着回収部38の一方は省略されてもよい。本実施形態は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1:部品装着機 2:基板搬送装置 3:部品供給装置 33:トレイ装置 34:収納棚 35:トレイ 351:群保持部 352:群位置マーク 353:単品保持部 354:単品位置マーク 37:廃棄箱 38:粘着回収部 39:廃棄部 4:部品移載装置 43:装着ヘッド 44:ノズル保持座 45:基板認識用カメラ 47:ノズルステーション 48:リカバリノズル 483:吸着穴 484:エア通路 49:一般用ノズル 5:吸着ノズル 51:ノズル基部 55:ノズル先端部 59:吸着構造部 5A:吸着領域 5B:吸着穴 5C:非吸着領域 5D:ノズル位置マーク 6:エア通路 61:中心エア通路 62:分岐エア通路 64:下降エア通路 65:平面状エア通路 8:制御装置 81:較正部 82:部品検出部 83:廃棄制御部 84:位置検出部 85:清掃制御部 K:基板 P:柱状部品