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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】車載アクセサリ支持部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 1/04 20060101AFI20240523BHJP
【FI】
B60R1/04 K
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2023203778
(22)【出願日】2023-12-01
【審査請求日】2024-01-31
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105925
【氏名又は名称】サカエ理研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】松本 光広
(72)【発明者】
【氏名】兼松 幸司
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2023/0122749(US,A1)
【文献】中国実用新案第205256176(CN,U)
【文献】特許第7122561(JP,B2)
【文献】米国特許第4524941(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室内のアクセサリを支持するための部材であって、
車室内に固定される上面と、前記上面とは反対向きの下面と、前記下面と前記上面との間に配置される第1側面と、前記第1側面の反対側に配置される第2側面とを含むベースに対して、前記第1側面と前記下面と前記第2側面とを囲みながらスライド組み付けられる嵌合部と、
第1側壁と、
前記第1側壁の反対側に第2側壁とを備え、
前記嵌合部は、前記下面に対向する底部と、前記底部から前記第1側面に対向して立設される第1対向側壁と、前記底部から前記第2側面に対向して立設される第2対向側壁とを備え、
前記第1側壁は、上端からの一部が前記第1対向側壁を構成するとともに、前記第1対向側壁の下側に第1凹部を有し、
前記第2側壁は、上端からの一部が前記第2対向側壁を構成するとともに、前記第2対向側壁の下側に第2凹部を有し、
前記底部は、前記第1対向側壁及び前記第2対向側壁に隣接した位置の、前記スライド組み付けの方向に平行な前後方向における一部分に、他の部分に比べて薄い薄肉部を有し、
前記第1凹部及び前記第2凹部は前記薄肉部を形成するように設けられ
前記底部は、前記第1対向側壁及び前記第2対向側壁に隣接した位置の、前記前後方向における一部分に前記薄肉部よりも厚い中肉部と、前記中肉部よりも厚い厚肉部とを有し、
前記第1凹部及び前記第2凹部の、前記底部の裏面を構成する面は、前記前後方向に沿って凹凸形状を有し、
前記薄肉部は、前記凹凸形状における凹部の位置に設けられ、
前記中肉部は、前記凹凸形状における凸部の位置に設けられ、
前記厚肉部は、前記前後方向における前記第1凹部及び前記第2凹部が形成されない位置に設けられる、
車載アクセサリ支持部材。
【請求項2】
前記嵌合部は前記前後方向における一端に壁部を有し、
前記壁部は、前記第1対向側壁及び前記第2対向側壁の内面に略連続したスリットを有する請求項1に記載の車載アクセサリ支持部材。
【請求項3】
前記薄肉部は、前記第1対向側壁及び前記第2対向側壁の最小肉厚部よりも薄い請求項1に記載の車載アクセサリ支持部材。
【請求項4】
前記第1凹部及び前記第2凹部の位置において前記前後方向に直角な面で切った断面は、前記底部と、前記第1凹部及び前記第2凹部を間に挟んで前記底部に対向する対向部と、前記第1凹部と前記第2凹部の間に位置して前記底部と前記対向部とを繋ぐ接続部とを含む請求項1に記載の車載アクセサリ支持部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はルームミラー等の車室内アクセサリを支持する車載アクセサリ支持部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内アクセサリとしての車室内ミラーは、例えば、車両の衝突事故などで乗員の頭部が車室内ミラーに接触した場合などに、乗員の頭部へのダメージが少なくすむようにすることが求められる。これに関し、下記特許文献1には、車室内に固定される上面と、前記上面とは反対向きの下面と、前記下面と前記上面との間に配置される第1側面と、前記第1側面の反対側に配置される第2側面とを含むベースに対して、前記第1側面と前記下面と前記第2側面とを囲みながらスライド組み付けられる嵌合部(マウント)を備えた車載用アクセサリ装置が開示されている。嵌合部の側壁(第1側壁又は第2側壁)は薄肉部を有する。衝撃時にこの薄肉部近傍を破壊させることで、アクセサリを離脱させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第7122561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1の構造では、車載アクセサリ支持部材の意匠(外形)の制約を受けやすい嵌合部の側壁に薄肉部を設定するので、その制約により、嵌合部の破壊荷重の調整代が少ない。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑み、嵌合部の破壊荷重を調整するための設計自由度を大きくできる車載アクセサリ支持部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、車室内のアクセサリを支持するための部材であって、
車室内に固定される上面と、前記上面とは反対向きの下面と、前記下面と前記上面との間に配置される第1側面と、前記第1側面の反対側に配置される第2側面とを含むベースに対して、前記第1側面と前記下面と前記第2側面とを囲みながらスライド組み付けられる嵌合部と、
第1側壁と、
前記第1側壁の反対側に第2側壁とを備え、
前記嵌合部は、前記下面に対向する底部と、前記底部から前記第1側面に対向して立設される第1対向側壁と、前記底部から前記第2側面に対向して立設される第2対向側壁とを備え、
前記第1側壁は、上端からの一部が前記第1対向側壁を構成するとともに、前記第1対向側壁の下側に第1凹部を有し、
前記第2側壁は、上端からの一部が前記第2対向側壁を構成するとともに、前記第2対向側壁の下側に第2凹部を有し、
前記底部は、前記第1対向側壁及び前記第2対向側壁に隣接した位置の、前記スライド組み付けの方向に平行な前後方向における一部分に、他の部分に比べて薄い薄肉部を有し、
前記第1凹部及び前記第2凹部は前記薄肉部を形成するように設けられ
前記底部は、前記第1対向側壁及び前記第2対向側壁に隣接した位置の、前記前後方向における一部分に前記薄肉部よりも厚い中肉部と、前記中肉部よりも厚い厚肉部とを有し、
前記第1凹部及び前記第2凹部の、前記底部の裏面を構成する面は、前記前後方向に沿って凹凸形状を有し、
前記薄肉部は、前記凹凸形状における凹部の位置に設けられ、
前記中肉部は、前記凹凸形状における凸部の位置に設けられ、
前記厚肉部は、前記前後方向における前記第1凹部及び前記第2凹部が形成されない位置に設けられる。
【0007】
本発明によれば、意匠(外形)の制約を受けにくい嵌合部の底部に薄肉部を設定するので、嵌合部の破壊荷重を調整するための設計自由度を大きくできる。なお、本発明における「薄肉部」には、肉厚が「0」の場合、つまり貫通状に形成される場合も含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】車載用アクセサリ装置の側面図である。
図2】第1支持部材及びベースの拡大上面図である。
図3】第1支持部材及びベースの、図1のIII-III線での拡大断面図である。
図4】第1支持部材及びベースの、図1のIV-IV線での拡大断面図である。
図5】第1支持部材及びベースの、図1のV-V線での拡大断面図である。
図6】変形例に係る第1支持部材の一部を前方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。図1の車載用アクセサリ装置1は、車室内における運転席付近に搭載されて、車両後方を映す車室内ミラー装置として構成される。アクセサリ装置1は、車室内アクセサリとしての車両後方を映す車室内ミラー2(鏡)と、そのミラー2を支持する支持部材3とを備える。なお、車室内アクセサリは、車両周囲を撮像する撮像部の撮像画像を表示する表示装置(例えば液晶ディスプレイ等)でもよい。
【0010】
支持部材3は長手状に形成されて、長手方向における一端が車室の天井101に支持され、他端がミラー2に接続される。なお、支持部材3はフロントガラス102に支持されてもよい。ミラー2は、支持部材3によって、片持ち梁状に支持される。
【0011】
支持部材3は、第1支持部材4と第2支持部材5と第3支持部材6とを備える。第1支持部材4は、長手状に形成されて、長手方向における一端が天井101に固定されたベース50(図2図5参照)に支持され、他端15が第2支持部材5に接続される。第1支持部材4の詳細は後述する。
【0012】
第2支持部材5は筒状に形成されて、一端側の開口に第1支持部材4の端部15が挿入され、他端側の開口に第3支持部材6の一部が挿入される。なお、第1支持部材4と第2支持部材5とは一体の部材として構成されてもよい。第3支持部材6は、ミラー2の背面に接続される板部と、板部の表面から突出して第2支持部材5に挿入される球状部とを含む。
【0013】
次に、支持部材3が組み付けられるベース50について説明する。なお、図2図5では、ベース50及び第1支持部材4を図1に示すそれらよりも拡大して示している。以下では、ベース50と第1支持部材4とのスライド組付方向に平行な方向A(図1図2参照)を第1支持部材4及びベース50の前後方向とする。また、ベース50に対する第1支持部材4のスライド組付方向A1(図1図2参照)を、ベース50及び第1支持部材4の前方向とする。スライド組付方向A1の反対方向A2(図1図2参照)を、ベース50及び第1支持部材4の後方向とする。また、後述の第1支持部材4の第1対向側壁9から第2対向側壁10に向かう方向及びその反対方向を、ベース50及び第1支持部材4の左右方向B(図2図3参照)とする。また、左右方向Bのうち、第1対向側壁9から第2対向側壁10に向かう方向B1(図2図3参照)を、ベース50及び第1支持部材4の右方向とし、その反対方向B2(図2図3参照)を左方向とする。また、前後方向A及び左右方向Bの両方に直角な方向C(図1図3参照)を、ベース50及び第1支持部材4の上下方向とする。また、上下方向Cのうち、後述の凹部16、17(図3参照)から嵌合部7(図3参照)の側へ向かう方向C1(図1図3参照)を、ベース50及び第1支持部材4の上方向とし、その反対方向C2(図1図3参照)を下方向とする。
【0014】
図2図3に示すように、ベース50は、上面51、下面52、第1側面53、第2側面54、前面55及び後面56を含む。ベース50は、板形形状を有し、例えば金属等の硬質材料により形成される。上面51は、接着剤等により天井101に固定される面である。その際の固定強度は、車両の急停車時あるいは衝突時において、アクセサリ装置1が衝撃による外力を受けた場合であっても、ベース50が天井101から脱落しないようにされる。
【0015】
下面52は上面51の反対側の面である。第1側面53は、ベース50のうち、下面52と上面51との間、かつ図3で見て左側に配置される面である。第1側面53は、下面52に近づくほど左方に位置するように傾斜する。第2側面54は、ベース50のうち、下面52と上面51との間、かつ図3で見て右側に配置される面である。第2側面54は、ベース50において第1側面53の反対側に配置される。第2側面54は、下面52に近づくほど右方に位置するように傾斜する。
【0016】
このように、第1側面53と第2側面54は、下面52に近づくほど互いに離れるように傾斜しているので、下面52の左右方向における長さは上面51の左右方向における長さよりも長くなる。そのため、第1側面53と第2側面54は、上面51から下面52に向かって広がるように傾斜する。第1側面53と上面51とのなす角度と、第2側面54と上面51とのなす角度とは同じである。
【0017】
前面55は、ベース50のうち、下面52と上面51との間、かつ前側に配置される面である。後面56は、ベース50のうち、下面52と上面51との間、かつ後側に配置される面である。
【0018】
次に、ベース50に組み付けられる第1支持部材4について説明する。第1支持部材4は本発明の車載アクセサリ支持部材に相当する。第1支持部材4は例えばアルミニウムにより製造される。この場合、第1支持部材4はダイカストにより製造されてよい。なお、第1支持部材4は、アルミニウム以外の金属(マグネシウム、亜鉛等)により製造されてもよいし、アルミニウム合金等の合金により製造されてもよいし、樹脂(例えば、ガラス又は炭素繊維入りの樹脂)により製造されてもよい。このように、第1支持部材4は剛体である。剛体とは、ベース50に第1支持部材4をスライド組み付けさせる際に、変形が生じない物体を意味する。
【0019】
第1支持部材4は長手状に形成される。また、第1支持部材4は、法線が左右方向Bを向いた仮想面S(図3参照)に対して対称な形状を有する。仮想面Sは、第1支持部材4の左右方向Bにおける中間に位置する。第1支持部材4は、長手方向における一端にベース50に嵌合する嵌合部7と、長手方向における他端に第2支持部材5に接続される接続部15とを有する。
【0020】
嵌合部7は、ベース50に対して図1図2に示す方向A1にスライド組み付けられる。嵌合部7は第1支持部材4の上端に配置される。図2図3に示すように、嵌合部7は、ベース50に組み付けられた状態でベース50の下面52に対向する底部8と、底部8からベース50の第1側面53に対向して立設される第1対向側壁9と、底部8からベース50の第2側面54に対向して立設される第2対向側壁10と、底部8からベース50の後面56に対向して立設される対向後壁11とを含む。嵌合部7は、底部8、第1対向側壁9、第2対向側壁10及び対向後壁11により、下方、左方、右方、及び後方を囲むとともに、上方及び前方が開いた嵌合空間(言い換えれば、ベース50を収容する空間)を内側に形成する。
【0021】
図3に示すように、底部8は、左右方向Bに間隔をあけて配置された2つの凸部8a、8bを有する。凸部8a、8bは、嵌合部7の内側空間(嵌合空間)の側に設けられる。凸部8a、8bは前後方向Aに延びるように形成され、詳しくは、嵌合部7の、前後方向Aにおける前端(開口部)から後端(対向後壁11)までの全範囲に亘って連続して形成される。凸部8a、8bの先端(上端)は上記仮想面Sに直角な平面に形成される。凸部8a、8bの先端は、ベース50の下面52に接触する。
【0022】
底部8は、凸部8a、8bの間に中間面8cを有する。中間面8cは、下面52とは接触していない。したがって、中間面8cと下面52との間には隙間が形成される。中間面8cは、凸部8a、8bの先端面(上面)に対して若干傾斜した平面に形成される。具体的には、中間面8cは、後方に向かうにしたがって徐々に上方に位置するように設けられる。このように、中間面8cに勾配がつけられることで、第1支持部材4を成型する金型を、第1支持部材4の成型後に、第1支持部材4から離型しやすくできる。中間面8cの面積及び左右幅は、凸部8aの先端面の面積及び左右幅より大きく、かつ、凸部8bの先端面の面積及び左右幅より大きく、かつ、後述の第1溝8d(図3参照)の底面の面積及び左右幅より大きく、かつ、後述の第2溝8e(図3参照)の底面の面積及び左右幅より大きい。
【0023】
図5に示すように、中間面8cには、上下方向に貫通した貫通穴8fが形成されている。貫通穴8fはボルト(図示外)が挿入される穴である。ボルトは、第1支持部材4がベース50に組み付けられた後に、底部8の下側から貫通穴8fに挿入される。そして、第1支持部材4が上下、左右、前後に移動しないように、ボルトの先端でベース50の下面52を押さえる。これによって、ベース50と第1支持部材4との固定を強固にでき、第1支持部材4がベース50から後方A2に抜けてしまうのを抑制できる。なお、ボルトに代えて、組み付けられた第1支持部材4に係止して、第1支持部材4の後方A2への抜けを阻止する係止部が嵌合部7に設けられてもよい。
【0024】
底部8は、左右方向における両端に、嵌合部7の前端から後端(後壁11)までの全範囲に亘って連続して形成された溝8d、8eを有する。溝8d、8eは、嵌合部7の内側空間(嵌合空間)の側に設けられる。また、第1溝8dは、第1対向側壁9に隣接した位置に設けられ、言い換えれば、第1対向側壁9と第1凸部8aの間に設けられる。第2溝8eは、第2対向側壁10に隣接した位置に設けられ、言い換えれば、第2対向側壁10と第2凸部8bの間に設けられる。溝8d、8eの底面は、凸部8a、8bの先端面よりも下方に位置する。溝8d、8eの底面は、凸部8a、8bの先端面に略平行な平面(厳密には、成形時に金型を離型しやすくするために、凸部8a、8bの先端面に対して若干の勾配が付けられた平面)に形成される。
【0025】
溝8d、8eの底面の上下方向Cにおける厚みは、前後方向Aに沿って複数の厚みを有する。具体的には、図3の断面での、溝8d、8eの底面の厚みは、図4図5の断面でのその厚みよりも小さい。図4の断面での、溝8d、8eの底面の厚みは、図3の断面でのその厚みよりも大きく、図5の断面でのその厚みよりも小さい。このように、図3の断面での、溝8d、8eの底面の厚みを形成する部分8g、8hは、図4図5の断面でのその厚みを形成する部分8i、8j、8k、8lに比べて薄肉に形成される。また、図4の断面での、溝8d、8eの底面の厚みを形成する部分8i、8jは、図5の断面でのその厚みを形成する部分8k、8lに比べて薄肉に形成される。また、図5の断面での、溝8d、8eの底面の厚みを形成する部分8k、8lは、図3図4の断面でのその厚みを形成する部分8g、8h、8i、8jに比べて厚肉に形成される。以下、図3の部分8g、8hを薄肉部という。図4の部分8i、8jを中肉部という。図5の部分8k、8lを厚肉部という。溝8d、8eの左右幅、深さ又は角Rの曲率は、嵌合部7の破壊荷重の狙い値に応じて適宜に定められてよい。
【0026】
薄肉部8g、8hは、前後方向Aにおける他の部分に比べて最も薄い部分である。薄肉部8g、8hは、後述の凹部16、17内の上面凹部16a1、17a1(図1図3参照)が形成される位置に設定される。薄肉部8g、8hは、対向側壁9、10に隣接した位置に設定される。また、薄肉部8g、8hは、例えば、前後方向Aにおける嵌合部7の前端(開口)よりも後端(対向後壁11)に近い位置に設定される。薄肉部8g、8hは、左右方向Bにおける一部分に設定される。すなわち、薄肉部8g、8hは、左右方向Bにおける他の部分(凸部8a、8b及び中間面8cの位置での底部8の厚み)に比べて薄い。さらに、薄肉部8g、8hは、嵌合部7の側壁9、10の、左右方向Bにおける最小肉厚部の厚み(側壁9、10の下端での厚み)よりも薄い。
【0027】
薄肉部8g、8hは、例えば所定の仮想面S(図3参照)に対して対称な形状に形成されてよい。すなわち、薄肉部8g、8hは、互いに同一の厚みに設定され、互いに同一の左右幅に設定され、前後方向Aにおいて互いに同一の位置に設定されてよい。薄肉部8g、8hは、ミラー2に対して所定の衝撃荷重が加えられたときに、薄肉部8g、8h又はその近傍が破壊し得る位置及び形状に形成される。
【0028】
図4の中肉部8i、8jは、後述の凹部16、17内の上面凸部16a2、17a2(図1図3図4参照)が形成される位置に設定される。図5の厚肉部8k、8lは、前後方向Aにおける凹部16、17が形成されない位置に設定される。厚肉部8k、8lは、薄肉部8g、8h及び中肉部8i、8jよりも前方A1に位置する。
【0029】
第1対向側壁9は、底部8の左端から上方に向かって立設される。第1対向側壁9は前後方向Aに延びる。第1対向側壁9の後端は対向後壁11の左端に接続される。第2対向側壁10は、嵌合部7の内側空間を間に挟んで、第1対向側壁9の反対側に設けられる。第2対向側壁10は、底部8の右端から上方に向かって立設される。第2対向側壁10は前後方向Aに延びる。第2対向側壁10の後端は対向後壁11の右端に接続される。
【0030】
これら対向側壁9、10は所定の仮想面S(図3参照)に対して対称な形状に形成されてよい。対向側壁9、10は、第1支持部材4が、ベース50に組み付けられた状態から下方に抜けるのを阻止する抜け止め形状を有する。詳しくは、第1対向側壁9における右側の面9a(嵌合部7の内側空間側の面)(図3参照)は、ベース50の第1側面53における傾斜に対応して、底部8に近づくほど左方に位置するように傾斜する。一方、第1対向側壁9における左側の面(嵌合部7の内側空間の反対側の面)は、傾斜せずに底部8の嵌合空間側の面に略垂直に延びる。そのため、左右方向Bにおける第1対向側壁9の厚さは、底部8から離れた部分よりも底部8に近い部分において薄い。
【0031】
第2対向側壁10における左側の面10a(嵌合部7の内側空間側の面)(図3参照)は、ベース50の第2側面54における傾斜に対応して、底部8に近づくほど右方に位置するように傾斜する。一方、第2対向側壁10における右側の面(嵌合部7の内側空間の反対側の面)は、傾斜せずに底部8の嵌合空間側の面に略垂直に延びる。そのため、左右方向Bにおける第2対向側壁10の厚さは、底部8から離れた部分よりも底部8に近い部分において薄い。このように、対向側壁9、10の、嵌合空間側の傾斜面が、ベース50に対する第1支持部材4の下方への抜けを阻止する抜け止め部として機能する。
【0032】
なお、対向側壁9、10は、底部8からの距離が同一であっても、一部分において他の部分よりも薄い薄肉部を有しないとしてよい。すなわち、対向側壁9、10の外面又は内面には、薄肉部を形成するための切り欠き部を有しないとしてよい。また、図2に示すように、対向側壁9、10の内面9a、10a間の間隔は後方A2に向かうにしたがって狭くなる。これにより、第1支持部材4が、ベース50に組み付けられた状態から前方A1に抜けるのを阻止している。
【0033】
嵌合部7の後壁11は、左右方向Bに延びて、左右の側壁9、10の間を繋ぐように設けられる。後壁11は、ベース50に組み付けられた状態でベース50の後面56に対向する。後壁11により、側壁9、10が左右方向Bに開くのを抑制している。
【0034】
第1支持部材4は、図1図4に示すように、第1側壁12と第2側壁13と後壁14とを有する。第1側壁12は、第1支持部材4の左側面を構成するとともに、上端からの一部が嵌合部7の第1対向側壁9を構成する。第2側壁13は、第1側壁12の反対側の側面、すなわち第1支持部材4の右側面を構成するとともに、上端からの一部が嵌合部7の第2対向側壁10を構成する。これら側壁12、13は、例えば所定の仮想面S(図3参照)に対して対称な形状に形成される。また、側壁12、13は、上側の嵌合部7から下側の接続部15に向かう方向に長い形状を有する。側壁12、13の長手方向は、下方に近づくほど後方A2に位置する方向、つまり上下方向C及び前後方向Aの双方に対して斜め方向に設定される。
【0035】
側壁12、13は、嵌合部7の側壁9、10の下側に凹部16、17を有する。一方の凹部16(第1凹部)は、第1側壁12の外面(左側の面)の、第1対向側壁9の下側(言い換えれば、底部8の上面より下側)の位置において右方向B1(図3参照)に凹むように形成される。他方の凹部17(第2凹部)は、第2側壁13の外面(右側の面)の、第2対向側壁10の下側(言い換えれば、底部8の上面より下側)の位置において左方向B2(図3参照)に凹むように形成される。このように、凹部16、17は、側壁12、13の上端から下方に間隔をあけた位置に形成される。これら凹部16、17は、例えば、所定の仮想面S(図3参照)に対して対称な形状に形成される。凹部16、17は、例えば、上下方向Cよりも前後方向Aに長い形状を有する。
【0036】
凹部16、17は、例えば側壁12、13の前後方向Aにおける一部区間に設けられてよい。この場合、凹部16、17は、側壁12、13の前端から後方A2に間隔をあけた位置に設けられ、又は側壁12、13の後端から前方A1に間隔をあけた位置に設けられてよい。
【0037】
凹部16、17の、側壁12、13の外面からの深さは、例えば該外面から底部8の溝8d、8eまでの距離よりも大きい。さらに、凹部16、17の、側壁12、13の外面からの深さは、例えば該外面から底部8の凸部8a、8bまでの距離よりも大きい。また、第1凹部16の深さ方向における端面16b(図3参照)と、第2凹部17の深さ方向における端面17b(図3参照)とは、左右方向Bにおいて間隔をあけて設けられる。
【0038】
第1凹部16は、左方向B2側に開口を形成し、左方向B2以外の方向(すなわち、前後方向A、上下方向C及び右方向B1)側を閉塞した形状に形成される。第2凹部17は、右方向B1側に開口を形成し、右方向B1以外の方向(すなわち、前後方向A、上下方向C及び左方向B2)側を閉塞した形状に形成される。凹部16、17は、図3図4の断面で見て、略四角形の内部空間を形成する。
【0039】
凹部16、17の内面は、該内面の他の部分に比べて相対的に上側に位置する上面16a、17aを有する。上面16a、17aは、底部8の、嵌合空間の反対側の面(すなわち底部8の裏面)を構成する。上面16a、17aは上記薄肉部8g、8h及び中肉部8i、8jを形成するように設けられる。具体的には、上面16a、17aは前後方向Aに沿って凹凸形状に形成される。すなわち、上面16a、17aは、上面16a、17aの他の部分16a2、17a2に比べて上方に凹んだ上面凹部16a1、17a1と、上面凹部16a1、17a1に比べて下方に突出する上面凸部16a2、17a2とを含む。
【0040】
上面凹部16a1、17a1は、上記薄肉部8g、8hの裏面を構成する。上面凹部16a1、17a1は、上面16a、17aの、前後方向Aにおける一部区間に設けられる。すなわち、本実施形態では、薄肉部8g、8hは、凹部16、17の、前後方向Aにおける一部区間に設けられる。上面凹部16a1、17a1は、例えば、左右方向Bにおいて、凹部16、17の開口から底面16b、17bまでの全区間に亘って設けられる。この場合、上面凹部16a1、17a1は、薄肉部8g、8hの裏面の他に、凸部8a、8b及び中間面8cの位置での底部8の裏面の一部も構成する。
【0041】
上面凸部16a2、17a2は、上記中肉部8i、8jの裏面を構成する。上面凸部16a2、17a2は、上面16a、17aの、前後方向Aにおける一部区間に設けられる。本実施形態では、上面凸部16a2、17a2は、上面凹部16a1、17a1の前側及び後側の両側に設けられる(図1参照)。上面凸部16a2、17a2は、例えば、左右方向Bにおいて、凹部16、17の開口から若干凹部16、17内に入った位置から底面16b、17bまでの全区間に亘って設けられる。この場合、上面凸部16a2、17a2は、中肉部8i、8jの裏面の他に、凸部8a、8b及び中間面8cの位置での底部8の裏面の一部も構成する。
【0042】
図3に示すように、第1支持部材4は、凹部16、17を間に挟んで底部8と上下方向Cに対向する対向部18と、底部8と対向部18とを繋ぐ接続部19とを有する。対向部18は、第1側壁12と第2側壁13とを左右方向Bに繋ぐように設けられる。接続部19は、第1凹部16の底面16bと、第2凹部17の底面17bとの間の部分である。図3の断面は、底部8、対向部18及び接続部19とで略H状に形成される。
【0043】
後壁14(図2図3参照)は、第1支持部材4の後方向A2側の壁面を構成する。後壁14は第1側壁12の後端と第2側壁13の後端との間を繋ぐように設けられる。後壁14の上端からの一部が嵌合部7の後壁11を構成する。後壁14は、下方に向かうほど後方A2に位置するように斜め方向に延設される。第1支持部材4の、凹部16、17よりも下側には、第1側面12、第2側面13、後壁14及び対向部18で囲まれた空間が形成される。この空間は、前方A1及び下方C2が開いている。この空間により、第1支持部材4の軽量化を図ることができる。
【0044】
以下、本実施形態の効果を説明する。例えば車両の衝突事故などで乗員の頭部がミラー2に接触した場合には、アクセサリ装置1には、ベース50を支点としたモーメントが加わる。このモーメントにより、嵌合部7には、対向側壁9、10間を拡げようとする荷重が加わる。このとき、嵌合部7は、底部8の、対向側壁9、10に隣接した位置に、対向側壁9、10の最小肉厚部よりも薄い薄肉部8g、8hを有するので、薄肉部8g、8h又はその近傍を起点に嵌合部7(例えば側壁9、10又は底部8)を破壊できる。これにより、ミラー2及びそれを支持する支持部材3をベース50から脱落させることができる。これにより、乗員の頭部への怪我の程度を軽減できる。
【0045】
また、ベース50は複数の車種間で同一形状の規格品が用いられる場合がある一方で、第1支持部材4の意匠(外形)は車種ごとに定められる場合がある。この場合であっても、第1支持部材4の意匠の制約を受けにくい底部8に薄肉部8g、8hを設定するので、薄肉部8g、8hの位置や形状が、第1支持部材4の意匠ごとに大きく変わってしまうのを抑制できるとともに、嵌合部7の破壊荷重を調整するための設計自由度を大きくできる。これに対して、特許文献1のように、仮に対向側壁9、10に薄肉部を設定する場合には、第1支持部材4の意匠の制約により、対向側壁9、10の外面に形成する、薄肉部を設定するための切り欠き形状の設計自由度が小さい。
【0046】
薄肉部8g、8hは、例えば前後方向Aにおける嵌合部7の前端よりも後端に近い位置に設けられるので、衝撃時に薄肉部8g、8h又はその近傍をより一層破壊させやすくできる。すなわち、衝撃時に第1支持部材4に加わる回転モーメントの中心は、例えば嵌合部7の前端付近に定められるが、そのモーメント中心から離れた位置に薄肉部8g、8hが設けられることで、薄肉部8g、8h又はその近傍を破壊させやすくできる。
【0047】
また、底部8は、前後方向Aに沿って、厚みが異なる複数の部位(薄肉部8g、8h、中肉部8i、8j及び厚肉部8k、8l)を有するので、非衝撃時におけるアクセサリ装置1の揺れにくさと、衝撃時におけるアクセサリ装置1の脱落のしやすさの両立を図りやすくできる。また、嵌合部7の破壊荷重をより一層調整しやすくできる。すなわち、例えば薄肉部8g、8hの範囲を大きくし、中肉部8i、8jの範囲を小さくすることで、嵌合部7の破壊荷重を小さくできる。反対に、例えば薄肉部8g、8hの範囲を小さくし、中肉部8i、8jの範囲を大きくすることで、嵌合部7の破壊荷重を大きくできる。
【0048】
側壁12、13のうち、嵌合部7の対向側壁9、10よりも下側の部分は、対向側壁9、10よりも大きい面積を有している。そして、薄肉部8g、8h及び中肉部8i、8jを形成するための凹部16、17は、その大きな面積を有した部分に形成されるので、より一層、嵌合部7の破壊荷重を調整するための設計自由度を大きくできる。
【0049】
また、対向側壁9、10の肉厚(左右方向Bにおける厚み)よりも深い凹部16、17が設けられることで、第1支持部材4の軽量化を図ることができる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず種々の変更が可能である。図6は変形例に係る第1支持部材の一部を、前方から見た図である。図6において上記実施形態と同様の部分には同一の符号を付している。図6の第1支持部材4Aは、上述のベース50と同様の形状のベース(図示外)にスライド組み付けられる嵌合部7Aを有する。嵌合部7Aの後壁11Aは、対向側壁9、10の内面9a、10aに連続したスリット11a、11bを有する。スリット11a、11bは、後壁11Aの上端から下方に凹んだ形状、かつ、後壁11Aを前後方向(図6の紙面に直角な方向)に貫通する形状に形成される。スリット11a、11bの下端は、対向側壁9、10の下端よりも上方に位置する。スリット11a、11bの縁部の一部11a1、11b1は、対向側壁9、10の内面9a、10aに一致する。なお、スリット11a、11bは、対向側壁9、10の内面9a、10aに対して若干左右方向における内側に位置してもよい。この場合であっても、スリット11a、11bは、後壁11Aの、左右方向における中間点よりも、内面9a、10aに近い位置に形成されてよい。嵌合部7Aは、スリット11a、11bが形成される以外は上述の嵌合部7と同様である。これによれば、スリット11a、11bによって、衝撃時に対向側壁9、10間を開きやすくでき、嵌合部7Aを破壊させやすくできる。
【0051】
また、上記実施形態では、凹部16、17の上面16a、17aに上面凸部16a2、17a2を形成することで、薄肉部8g、8hと中肉部8i、8jとを設ける例を示した。しかし、これに限定されず、例えば、上面凸部16a2、17a2を無くして、凹部16、17の前後方向の全区間に亘って薄肉部8g、8hが形成されてもよい。また、薄肉部8g、8hの肉厚が0でもよく、すなわち、薄肉部8g、8hが貫通状に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1 車載用アクセサリ装置
2 ミラー(車室内アクセサリ)
4、4A 第1支持部材(車載アクセサリ支持部材)
7、7A 嵌合部
8 底部
9 第1対向側壁
10 第2対向側壁
12 第1側壁
13 第2側壁
16 第1凹部
17 第2凹部
8g、8h 薄肉部
50 ベース
51 ベースの上面
52 ベースの下面
53 ベースの第1側面
54 ベースの第2側面
【要約】
【課題】ルームミラー等の車室内アクセサリを支持する車載アクセサリ支持部材において、車両に固定されるベースに対してスライド組み付けられる嵌合部の破壊荷重を調整するための設計自由度を大きくできる車載アクセサリ支持部材を提供する。
【解決手段】車載アクセサリ支持部材としての第1支持部材4は、ベース50にスライド組み付けられる嵌合部7を有する。嵌合部7の底部8は、嵌合部7の側壁9、10に隣接した位置に薄肉部8g、8hを有する。薄肉部8g、8hは、スライド組み付け方向に平行な前後方向における一部分に設定される。第1支持部材4の側壁12、13は、底部8の下側に凹部16、17を有する。凹部16、17は薄肉部8g、8hを形成するように設けられる。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6