(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】動的制御棒制御能測定方法
(51)【国際特許分類】
G21C 17/10 20060101AFI20240523BHJP
G21C 17/108 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
G21C17/10 760
G21C17/108 300
(21)【出願番号】P 2023507690
(86)(22)【出願日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 KR2021010171
(87)【国際公開番号】W WO2022030966
(87)【国際公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】10-2020-0098102
(32)【優先日】2020-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518442000
【氏名又は名称】コリア ハイドロ アンド ニュークリアー パワー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ウン-キ
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2006-0041043(KR,A)
【文献】特開2011-002301(JP,A)
【文献】特表2019-502117(JP,A)
【文献】特開2015-148524(JP,A)
【文献】特開平02-008796(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/00-17/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉外計測器として核分裂箱(fission chamber)を利用する、原子炉に対する動的制御棒制御能測定方法において、
前記原子炉の炉心に基準制御群を第1深さで挿入して、前記原子炉を、設定出力を有する臨界状態に維持する段階;
前記基準制御群を、前記第1深さから最大許容速度で前記原子炉の炉心に完全に挿入し、直ちに最大許容速度で前記原子炉の炉心から完全に引き抜き、前記基準制御群の挿入前から前記基準制御群の引抜後まで、前記炉外計測器の第1信号を測定する段階;および
前記炉外計測器の前記第1信号
、並びに、中性子数密度の対計測器反応変換係数(Density to Response Conversion Factor、DRCF)および動的対静的変換係数(Dynamic to Static Conversion Factor、DSCF)、及び、前記基準制御群の各挿入高さである各制御棒位置を利用して計算された、前記原子炉の第1静的反応度に、前記原子炉の残余制御能測定値を合算して、前記基準制御群の静的制御能として決定する段階
を含む動的制御棒制御能測定方法。
【請求項2】
前記原子炉が前記設定出力を有すると、前記原子炉の炉心に、試験制御群を第2深さで挿入して、前記原子炉を、前記設定出力を有する臨界状態に維持する段階;
前記試験制御群を、前記第2深さから最大許容速度で前記原子炉の炉心に完全に挿入し、直ちに最大許容速度で前記原子炉の炉心から完全に引き抜き、前記試験制御群の挿入前から前記試験制御群の引抜後まで、前記炉外計測器の第2信号を測定する段階;および
前記炉外計測器の前記第2信号を利用して計算された、前記原子炉の第2静的反応度に、前記原子炉の残余制御能測定値を合算して、前記試験制御群の静的制御能として決定する段階
をさらに含む、請求項1に記載の動的制御棒制御能測定方法。
【請求項3】
前記第2深さは、前記第1深さに比べて、より深い、請求項2に記載の動的制御棒制御能測定方法。
【請求項4】
前記原子炉の前記設定出力は、前記炉外計測器が測定した前記第1信号のパルス同士が非重畳となる出力である、請求項1に記載の動的制御棒制御能測定方法。
【請求項5】
前記原子炉の前記設定出力は、10
5cpsである、請求項4に記載の動的制御棒制御能測定方法。
【請求項6】
前記原子炉の前記残余制御能測定値は、50pcm乃至80pcmである、請求項1に記載の動的制御棒制御能測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、動的制御棒制御能測定方法(METHOD OF DYNAMIC CONTROL ROD REACTIVITY MEASUREMENT)に関する。
【背景技術】
【0002】
軽水炉における動的制御棒制御能測定方法は、韓国登録特許第10-0598037号および韓国登録特許第10-1604100号に開示されたように、試験前提条件が炉外計測器に入射した中性子数と炉外計測器信号が線形的に対応することである。
【0003】
非補償型イオン電離箱(uncompensated ion chamber)が炉外計測器として利用される場合、炉外計測器で生成される電流(あるいは、電圧)信号がこのような条件を満たすため、測定する制御棒を原子炉の炉心に最大速度で挿入および引き抜き、この時に得られた炉外計測器信号から基底信号を除去した後、炉外計測時に信号を利用して原子炉の動的反応度を得て、ここに動的対静的変換係数(Dynamic to Static Conversion Factor、DSCF)を適用することによって、原子炉の最終の静的反応度を得ることができた。
【0004】
しかし、最近、敏感度が低い核分裂箱(核分裂電離箱;fission chamber)が炉外計測器として利用される場合、試験範囲以内の低い出力で炉外計測器に入射した中性子数と炉外計測器信号が線形性を維持できないことを確認した。
【0005】
核分裂箱は、原子炉の反応度に対応して、単位時間当たりのパルス個数を示す、パルス信号および連続的な電圧信号の2つを全て提供することができるのであるが、パルス信号は、試験範囲以内の原子炉の高い出力にて、パルスが互いに重畳(2個乃至3個のパルスが1個のパルスに認識)されて線形性を失うのであり、電圧信号は、原子炉の低い出力にて、摂動およびノイズにより線形性を失うということを確認した。特に、核分裂箱の電圧信号は、パルス電流分布と平均電流値との分散を利用して得るため、低い出力にて数学的に線形性が保障されない。また、核分裂箱のパルス信号と電圧信号とを連動させる方法も考慮することができるが、線形性を維持する領域をどのように選択するかにより、評価結果が変わり、電圧信号の後処理の方法にて数学的背景を伴わない状態であるため、追加の研究が必要である。
【0006】
したがって、核分裂箱を炉外計測器として利用する原子炉の場合、核分裂箱に入射する中性子数と、単位時間当たりのパルス個数とが線形性を保障する範囲内にて、動的な制御棒制御能の測定方法を行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一実施形態の目的は、核分裂箱を炉外計測器として利用する原子炉にて、安全に制御棒の静的制御能を測定することができる動的な制御棒制御能の測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一側面は、炉外計測器として核分裂箱(fission chamber)を利用する原子炉に対する動的制御棒制御能測定方法において、前記原子炉の炉心に、基準制御群を第1深さで挿入して、前記原子炉を、設定出力を有する臨界状態に維持する段階、前記基準制御群を、前記第1深さから、最大許容速度で前記原子炉の炉心に完全に挿入し、直ちに、最大許容速度で前記原子炉の炉心から完全に引き抜き、前記基準制御群の挿入前から前記基準制御群の引抜後まで、前記炉外計測器の第1信号を測定する段階、および、前記炉外計測器の前記第1信号を利用して計算された、前記原子炉の第1静的反応度に、前記原子炉の残余制御能測定値を合算して、前記基準制御群の静的制御能として決定する段階を含む動的制御棒制御能測定方法を提供する。
【0009】
前記原子炉が前記設定出力を有すると、前記原子炉の炉心に、試験制御群を第2深さで挿入して、前記原子炉を、前記設定出力を有する臨界状態に維持する段階、前記試験制御群を、前記第2深さから、最大許容速度で前記原子炉の炉心に完全に挿入し、直ちに、最大許容速度で前記原子炉の炉心から完全に引き抜き、前記試験制御群の挿入前から前記試験制御群の引抜後まで、前記炉外計測器の第2信号を測定する段階、および、前記炉外計測器の前記第2信号を利用して計算された、前記原子炉の第2静的反応度に、前記原子炉の残余制御能測定値を合算して、前記試験制御群の静的制御能として決定する段階をさらに含むことができる。
【0010】
前記第2深さは、前記第1深さに比べて、より深くてもよい。
【0011】
前記原子炉の前記設定出力は、前記炉外計測器が測定した前記第1信号のパルス同士が非重畳となる(重畳しない)出力であり得る。
【0012】
前記原子炉の前記設定出力は、105cpsであり得る。
【0013】
前記原子炉の前記残余制御能測定値は、50pcm乃至80pcmであり得る。
【発明の効果】
【0014】
一実施形態によれば、核分裂箱を炉外計測器として利用する原子炉にて、安全に制御棒の静的制御能を測定することができる、動的制御棒制御能測定方法を提供しようとする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態による動的制御棒制御能測定方法を示すフローチャートである。
【
図2】一実施形態による動的制御棒制御能測定方法を説明するためのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態について、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が、容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、多様な異なる形態で実現することができ、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0017】
また、明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」というとき、これは特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外せず、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0018】
原子炉は、炉心に核燃料を装填した後、原子炉の安全解析に使用された核設計報告書が適切であるか否かを確認するために、必ず制御棒の制御能を測定するようになる。原子炉の炉心(reactor core)には、熱出力や軸方向出力分布の調整、または多様な原因により、炉心内の核反応を完全終結させなければならない時に、これを行う複数の制御棒(control rod)が設置される。複数の制御棒は、個別に動作せず、原子炉の大きさに応じて、6個または10個などの複数の制御群(control bank)で管理される。一つの制御群は、4個または8個の制御棒集合体(control rod assembly)を含み、一つの制御棒集合体は4個または12個の個別制御棒を含むことができる。
【0019】
以下にて、動的な制御棒制御能の測定方法は、個別の制御棒の制御能を測定するのではなく、制御群の制御能を測定することを意味し得る。
【0020】
以下、
図1および
図2を参照して、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法を説明する。一実施形態による動的な制御棒制御能の測定方法は、炉外計測器として核分裂箱(fission chamber)を利用する、原子炉に対する動的制御棒制御能測定方法であるが、これに限定されない。
【0021】
図1は、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法を示すフローチャートである。
図2は、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法を説明するためのグラフである。
図2の(a)、(b)、(c)のそれぞれのx軸は時間を示し、
図2の(a)のy軸は炉心に挿入された制御群の深さである制御棒位置を示し、
図2の(b)のy軸は原子炉の出力であるcpsを示し、
図2の(c)のy軸は原子炉の動的反応度であるpcmを示す。
【0022】
図1および
図2を参照すれば、原子炉の炉心に、基準制御群(Bank A5)を第1深さで挿入して、原子炉を、設定出力を有する臨界状態に維持する(S100)。
【0023】
具体的に、動的反応度が60pcmである未臨界状態の原子炉の炉心に、基準制御群(Bank A5)を、350cmの制御棒位置に到達するように、約20cm乃至40cmの第1深さで挿入して、原子炉を、105cpsの設定出力を有する臨界状態に維持する。ここで、原子炉の設定出力である105cpsは、核分裂箱である炉外計測器のパルス信号にてパルスの重畳が発生しない最大出力である。つまり、原子炉の設定出力は炉外計測器のパルス信号にて、パルス同士が非重畳となる最大出力であるところの、105cpsである。
【0024】
次に、基準制御群(Bank A5)を、第1深さから、最大許容速度で原子炉の炉心に完全に挿入し、直ちに、最大許容速度で原子炉の炉心から完全に引き抜き、基準制御群(Bank A5)の挿入前から、基準制御群(Bank A5)の引抜後までの、炉外計測器の第1信号を測定する(S200)。
【0025】
具体的に、基準制御群(Bank A5)を、第1深さから引き抜かずに、最初に挿入された第1深さである350cmの制御棒位置から、最大許容速度で原子炉の炉心に完全に挿入し、直ちに最大許容速度で原子炉の炉心から375cm制御棒位置まで完全に引き抜く。この際、基準制御群(Bank A5)の挿入の1分前から、基準制御群(Bank A5)の引抜の1分後まで、炉外計測器のパルス信号である第1信号を測定する。
【0026】
一方、先行文献である韓国登録特許第10-0598037号は、制御群を第1深さから完全に引き抜いた後、再び制御群を、最大許容速度で原子炉の炉心に完全に挿入し、また引き抜くことによって、原子炉の炉心の出力が変動する中での、制御群の挿入および引抜が行われる。
【0027】
次に、炉外計測器の第1信号を利用して計算された原子炉の第1静的反応度に、原子炉の残余制御能測定値を合算して、基準制御群(Bank A5)の静的制御能として決定する(S300)。
【0028】
具体的に、基準制御群(Bank A5)の挿入高さである制御棒位置から、完全挿入時までの制御棒の位置を、RAST-Kコードに入力して、中性子数密度の対計測器反応変換係数(Density to Response Conversion Factor、DRCF)および動的対静的変換係数(Dynamic to Static Conversion Factor、DSCF)を生産(生成)する。生成されたDSCF、DRCF、測定された炉外計測器の第1信号、基準制御群(Bank A5)の挿入高さである制御棒位置を、設定された電算コードに入力して原子炉の第1静的反応度を計算する。
【0029】
一方、先行文献である韓国登録特許第10-0598037号は、DSCFおよびDRCFを予め計算することができるが、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、原子炉の臨界状態を維持する反応度である、60pcmに該当する制御棒高さが、現場で毎制御群ごとに変わり得るため、DSCFおよびDRCFを毎度生成する。また、核分裂箱である炉外計測器は、中性子数とウラニウム反応によるパルス信号だけ選別して使用するため、基底信号補償アルゴリズムは不要であり、設定された電算コードでは、これを適用しないように改善され得る。
【0030】
設定された電算コードで計算された原子炉の第1静的反応度に、原子炉の残余制御能測定値(
図2の(c)の(A)区間制御能測定値)である、60pcmを合算して、基準制御群(Bank A5)の最終静的制御能として決定する。そして基準制御群(Bank A5)の最終静的制御能を、核設計報告書の基準制御群の静的制御能と比較する。
【0031】
一方、残余制御能測定値は、50pcm乃至80pcmであり得る。
【0032】
一方、先行文献である韓国登録特許第10-0598037号は、設定された電算コードにて制御群の最終静的制御能が計算されるが、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、設定された電算コードにて計算された第1静的反応度である静的制御能に、残余制御能測定値である60pcmを合算して、最終静的制御能が決定される。
【0033】
次に、原子炉が設定出力を有すると、原子炉の炉心に、第1試験制御群(Bank R1)を第2深さで挿入して、原子炉を、設定出力を有する臨界状態に維持する。
【0034】
具体的に、基準制御群(Bank A5)を原子炉の炉心から完全に引き抜いたため、原子炉の炉心には60pcmの正反応度が付加されて、原子炉出力であるcpsが指数関数的に増加する。原子炉が、設定出力である105cpsに到達すれば、原子炉の炉心に、第1試験制御群(Bank R1)を、340cmの制御棒位置に到達するように、基準制御群(Bank A5)の第1深さに比べて、より深い第2深さで挿入して、原子炉を、105cpsの設定出力を有する臨界状態に、約100秒間維持する。原子炉の臨界維持の際に、第1試験制御群(Bank R1)の挿入位置である制御棒の位置は、60pcmを補償した位置であり、100秒間維持すれば、原子炉の遅発中性子群が十分に変動を止める。また、原子炉が、炉外計測器のパルス信号にてパルス同士が非重畳となる設定出力である、105cpsを維持する状態であるため、炉外計測器で測定されたパルス信号に線形性の問題が発生しない。
【0035】
次に、第1試験制御群(Bank R1)を、第2深さから、最大許容速度で原子炉の炉心に完全に挿入し、直ちに、最大許容速度で原子炉の炉心から完全に引き抜き、第1試験制御群(Bank R1)の挿入前から、第1試験制御群の引抜後までの、炉外計測器の第2信号を測定する。
【0036】
具体的に、第1試験制御群(Bank R1)を、第2深さから引き抜かずに、最初に挿入された第2深さである340cmの制御棒位置から、最大許容速度で原子炉の炉心に完全に挿入し、直ちに、最大許容速度で原子炉の炉心から375cmの制御棒位置まで完全に引き抜く。この際、第1試験制御群(Bank R1)の挿入1分前から第1試験制御群(Bank R1)の引抜1分後まで、炉外計測器のパルス信号である第2信号を測定する。
【0037】
次に、炉外計測器の第2信号を利用して計算された原子炉の第2静的反応度に、原子炉の残余制御能測定値を合算して、第1試験制御群(Bank R1)の静的制御能として決定する。
【0038】
具体的に、第1試験制御群(Bank R1)の挿入高さである制御棒位置から、完全挿入時までの制御棒位置を、RAST-Kコードに入力して、中性子数密度対計測器反応変換係数(DRCF)および動的対静的変換係数(DSCF)を生成(生産)する。生成されたDSCF、DRCF、測定された炉外計測器の第2信号、第1試験制御群(Bank R1)の挿入高さである制御棒位置を、設定された電算コードに入力して、原子炉の第2静的反応度を計算する。
【0039】
設定された電算コードにて計算された原子炉の第2静的反応度に、原子炉の残余制御能測定値(
図2の(c)の(A)区間制御能測定値)である60pcmを合算して、第1試験制御群(Bank R1)の最終静的制御能として決定する。そして、第1試験制御群(Bank R1)の最終静的制御能を、核設計報告書における第1試験制御群の静的制御能と比較する。
【0040】
次に、第2試験制御群(Bank R2)に対して、前述した第1試験制御群(Bank R1)と同様の方法で行って、第2試験制御群(Bank R2)の最終静的制御能を決定し、核設計報告書における第2試験制御群の静的制御能と比較する。
【0041】
具体的に、原子炉が設定出力である105cpsに到達すれば、原子炉の炉心に第2試験制御群(Bank R2)を、320cmの制御棒位置に到達するように、第1試験制御群(Bank R1)の第2深さに比べて、より深い第3深さで挿入して、原子炉を、105cpsの設定出力を有する臨界状態に維持した後、前述した第1試験制御群(Bank R1)と同様の方法で、第2試験制御群(Bank R2)の完全な挿入および引抜を行って、第2試験制御群(Bank R2)の最終静的制御能を決定し、核設計報告書における第2試験制御群の静的制御能と比較する。
【0042】
以上のように、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、制御棒の完全引抜時点が開始点でなく、測定しようとする制御棒が一部の炉心に挿入された時点が、測定開始点になる。先行文献である韓国登録特許第10-0598037号に開示された既存の方法論と手順は、原子炉の出力が変動している状態で制御棒が挿入されるが、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法である新規の手順は、常時、原子炉臨界時点で始まる。
【0043】
制御棒の完全引抜時点から臨界時点までの制御能は、残余制御能と見なすことができるが、炉外計測器のパルス信号にて計算した反応度は、厳密に動的反応度であり、約120pcm以内の炉心反応度は、動的対静的の反応度値において1%以内の偏差を示すため、反応度計算機が20pcm乃至70pcmの反応度を算出すれば、これは、動的反応度であるにもかかわらず静的反応度と見なすことができる。したがって、制御群が炉心に一部挿入された位置までの反応度は、残余制御能と同一である(
図2の(c)の(A)区間で毎度確認される)。
【0044】
動的制御棒制御能測定方法が行われる原子炉の現場で、試験制御群の実際の挿入位置は、設計上計算された挿入位置と一致しないことがある。原子炉の臨界ホウ素濃度も異なり、基準制御群が有する制御能が60pcm乃至70pcmの間で決定されるため、状況により基準制御群の制御能が、60pcm、65pcm、70pcmなどで変われば、試験制御群が有する挿入位置も、計算値と一致しなくなる。特に、試験制御群の制御能が、設計値との差を有していれば、その分、挿入位置も変動を有するようになる。
【0045】
したがって、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、原子炉現場で制御群の挿入位置から完全挿入までの各種過度解析を行い、DSCFおよびDRCFを生産した後、これを測定資料に代入して制御群の静的制御能を評価する。
【0046】
DSCF、DRCFを生成する基本的な手順は、先行文献である韓国登録特許第10-0598037号に開示されたものと同一であるが、先行文献は、原子炉出力が変動している状態で制御群が完全に引き抜かれた状態が分析起点であり、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、制御群が炉心に一部挿入された状態で、原子炉臨界をなしている状態が分析起点になる。
【0047】
したがって、先行文献である韓国登録特許第10-0598037号は、最大速度で制御群を挿入する前1分間の炉外計測器の信号増加資料が必ず必要であるため、DSCFおよびDRCFを生成する際、基準制御群、第1試験制御群、第2試験制御群などを全て連続的および順次的に動かすシミュレーションを必ず行わなければならないのであるが、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、原子炉臨界時点で試験するため、基準制御群(Bank A5)、第1試験制御群(Bank R1)、第2試験制御群(Bank R2)のDSCFおよびDRCFを独立的に1度ずつだけシミュレーションして処理することができる。これにより、原子炉の現場で、第1試験制御群(Bank R1)の静的制御能を測定するか、または第2試験制御群(Bank R2)の静的制御能を測定するかに関係なく、各制御群に対してDSCFおよびDRCFを与えられた挿入位置に対応して直ちに生成することができ、他の制御群に影響を与えない。
【0048】
一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、原子炉の現場で試験状況に対応して、DSCFおよびDRCFを直ちに生成して活用しなければならないため、RAST-K、および設定された電算コードであるINVERSE 2.0コードを、順次的に用いることができる。ただし、この全体の作業は自動化することができ、使用者の立場では、既存の設定された電算コードであるINVERSE 1.0コード一つだけを施行したのと、表面的に違いはないが、内部的なプロセシングは、現場で設計と分析が進行されて計算の流れに差を有する。
【0049】
このように、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、炉外計測器として核分裂箱を利用する原子炉に対する動的制御棒制御能を測定することができる。
【0050】
また、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、原子炉の臨界状態で、原子炉の出力変動なしに、制御群の完全な挿入および引抜を行うことによって、原子炉の出力が変動する先行文献に比べて、安全に制御棒の静的制御能を測定することができる。
【0051】
また、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、原子炉の臨界状態で、原子炉の設定出力が、核分裂箱である炉外計測器のパルス信号のパルスが非重畳となって常時線形性を維持する最大出力条件である105cpsで、制御群の完全な挿入および引抜を行うことによって、摂動進入区間の機会を最小化して、評価結果の優秀性を期待することができる。
【0052】
また、一実施形態による動的制御棒制御能測定方法は、炉外計測器のパルス信号の線形性を保障する範囲内で、動的制御棒制御能技法を活用することができるため、従来のホウ素希釈法および制御棒交換法に比べて、7時間程度、試験時間を短縮することができ、核分裂箱を使用する6個の号機に適用されると、技術寿命5個周期の間に発電量の増加効果を期待することができる。
【0053】
以上で本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の多様な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
【符号の説明】
【0054】
Bank A5 基準制御群
Bank R1 第1試験制御群
Bank R2 第2試験制御群