(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】照明装置
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20240523BHJP
F21V 9/40 20180101ALI20240523BHJP
H05B 45/44 20200101ALI20240523BHJP
H05B 47/155 20200101ALI20240523BHJP
G02F 1/1347 20060101ALI20240523BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20240523BHJP
G02F 1/1343 20060101ALI20240523BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240523BHJP
G02B 3/14 20060101ALN20240523BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240523BHJP
【FI】
F21S2/00 481
F21V9/40 400
H05B45/44
H05B47/155
G02F1/1347
G02F1/13 505
G02F1/1343
G02F1/13357
G02B3/14
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2023522615
(86)(22)【出願日】2022-05-11
(86)【国際出願番号】 JP2022019928
(87)【国際公開番号】W WO2022244661
(87)【国際公開日】2022-11-24
【審査請求日】2023-09-11
(31)【優先権主張番号】P 2021086465
(32)【優先日】2021-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】小糸 健夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸次朗
(72)【発明者】
【氏名】黒川 多惠
【審査官】下原 浩嗣
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-026916(JP,A)
【文献】特開2021-032913(JP,A)
【文献】特開2006-147573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 9/40
H05B 45/44
H05B 47/155
G02F 1/1347
G02F 1/13
G02F 1/1343
G02F 1/13357
G02B 3/14
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
m行n列のマトリクス状に配置された複数の発光素子を有する光源、
前記光源上の第1の液晶セル、および
前記第1の液晶セル上の第2の液晶セルを備え、
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々は、
第1の基板、
前記第1の基板上に位置し、m行n列のマトリクス状に配置される複数の第1の電極群、
前記複数の第1の電極群上の液晶層、および
前記液晶層上の第2の基板を有し、
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、
前記複数の第1の電極群の各々は、行方向に延伸する複数の第1の電極を有し、
第j行中第k列に位置する前記発光素子は、第j行中第k列に位置する前記第1の電極群と重なり、
前記第1の液晶セルの前記複数の第1の電極の長手方向は、前記第2の液晶セルの前記複数の第1の電極の長手方向と平行であり、
nとmは1よりも大きい自然数であり、jは1以上n以下の自然数から選択される変数であり、kは1以上m以下の自然数から選択される変数である、照明装置。
【請求項2】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々は、前記液晶層と前記第2の基板の間に単一の第2の電極をさらに備え、
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、前記第2の電極は前記複数の第1の電極群と重なる、請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々は、前記液晶層と前記第2の基板の間にm行n列のマトリクス状に配置した複数の第2の電極群をさらに備え、
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、
前記複数の第2の電極群の各々は、列方向に延伸する複数の第2の電極を有し、
前記第j行中前記第k列に位置する前記発光素子は、前記第j行中前記第k列に位置する前記第2の電極群と重なる、請求項1に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光源は、m行n列のマトリクス状に配置された複数の凹部を有する反射板を有し、
前記複数の発光素子は、対応する前記複数の凹部に配置され、
前記複数の凹部は、前記第j行中前記第k列に位置する前記凹部に設けられる前記発光素子からの光が、前記第1の液晶セル中の前記第j行中前記第k列に位置する前記第1の電極群に選択的に照射されるように構成される、請求項1に記載の照明装置。
【請求項5】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、
前記複数の第1の電極は、一定電圧または第1の交流電圧が印加されるように構成され、
前記第1の交流電圧が印加される場合、前記第1の交流電圧の位相は、同一の前記列内で隣接する前記第1の電極間で反転し、
前記一定電圧が印加される場合、前記一定電圧は、同一の前記列内で隣接する前記第1の電極間で異なる、請求項1に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、前記複数の第2の電極は、一定電圧または第2の交流電圧が印加されるように構成され、
前記第2の交流電圧が印加される場合、前記第2の交流電圧の位相は、同一の前記行で隣接する前記第2の電極間で反転し、
前記一定電圧が印加される場合、前記一定電圧は、同一の前記行内で隣接する前記第2の電極間で異なる、請求項3に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、前記液晶層の厚さは20μm以上60μm以下である、請求項1に記載の照明装置。
【請求項8】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々は、
前記複数の第1の電極群と前記液晶層の間の第1の配向膜、および
前記液晶層と前記第2の基板の間に位置し、前記液晶層に接する第2の配向膜をさらに備え、
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、
前記第1の配向膜の配向方向は、前記複数の第1の電極の前記長手方向に垂直であり、
前記第2の配向膜の配向方向は、前記第1の配向膜の前記配向方向に対して垂直である、請求項1に記載の照明装置。
【請求項9】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、前記第k列において一つ置きに選択される前記複数の第1の電極は、前記第k列に隣接する前記列において一つ置きに選択される前記複数の第1の電極と電気的に導通する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項10】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、前記第j行において一つ置きに選択される前記複数の第2の電極は、前記第j行に隣接する前記行において一つ置きに選択される前記複数の第2の電極と電気的に導通する、請求項3に記載の照明装置。
【請求項11】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、前記各列において一つ置きに選択される前記複数の第1の電極は、互いに電気的に導通する、請求項1に記載の照明装置。
【請求項12】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、前記各行において一つ置きに選択される前記複数の第2の電極は、互いに電気的に導通する、請求項3に記載の照明装置。
【請求項13】
前記光源は、前記複数の発光素子が互いに独立して制御されるように構成される、請求項1に記載の照明装置。
【請求項14】
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの各々において、
前記第1の基板は第1の領域と第2の領域を有し、
前記第2の基板は、前記第1の領域と前記第2の領域とそれぞれ重なる第3の領域と第4の領域を有し、
前記第1の領域の領域において、前記複数の第1の電極は前記第1の基板の辺に平行であり、
前記第2の領域の領域において、前記複数の第1の電極は前記第1の基板の前記辺から傾き、
前記第3の領域の領域において、前記複数の第2の電極は前記第2の基板の辺に平行であり、
前記第4の領域の領域において、前記複数の第1の電極は前記第2の基板の前記辺から傾く、請求項
3に記載の照明装置。
【請求項15】
前記第1の液晶セルと同一の構造を有する第3の液晶セルを前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの間に有し、
前記第2の液晶セルと同一の構造を有する第4の液晶セルを前記第2の液晶セル上に有し、
前記第1の液晶セルと前記第3の液晶セルの間では、前記複数の第1の電極の前記長手方向は平行であり、
前記第2の液晶セルと前記第4の液晶セルの間では、前記複数の第1の電極の前記長手方向は平行であり、
前記第1の液晶セルと前記第2の液晶セルの間では、前記複数の第1の電極の前記長手方向は交差する、請求項1に記載の照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、照明装置とその駆動方法に関する。例えば、本発明の実施形態の一つは、照射領域を任意に制御できる照明装置とその駆動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光源から出射される光を液晶レンズを用いて制御することにより、光源の照射範囲や照射距離が制御可能な照明装置が開発されている。例えば特許文献1から3に開示された照明装置は、液晶層と液晶層を挟持する電極を有する液晶セル、および液晶セルと重なる光源を備えている。これらの照明装置では、液晶層内の液晶分子の配向を電極間の電界で制御することで液晶セルをレンズとして機能させ、これにより配光が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-230887号公報
【文献】特開2016-057541号公報
【文献】特開2019-169435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、光源の照射範囲を多様に変化させることが可能な照明装置とその駆動方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、照明装置である。この照明装置は、光源、光源上の第1の液晶セル、および第1の液晶セル上の第2の液晶セルを備える。光源は、m行n列のマトリクス状に配置された複数の発光素子を有する。第1の液晶セルと第2の液晶セルの各々は、第1の基板、第1の基板上に位置し、m行n列のマトリクス状に配置される複数の第1の電極群、複数の第1の電極群上の液晶層、および液晶層上の第2の基板を有する。第1の液晶セルと第2の液晶セルの各々においては、複数の第1の電極群の各々は、行方向に延伸する複数の第1の電極を有し、第j行中第k列に位置する発光素子は、第j行中第k列に位置する第1の電極群と重なる。第1の液晶セルの複数の第1の電極の長手方向は、第2の液晶セルの複数の第1の電極の長手方向と平行である。nとmは1よりも大きい自然数であり、jは1以上n以下の自然数から選択される変数であり、kは1以上m以下の自然数から選択される変数である。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、光学素子である。光学素子は、第1の基板、複数の第1の電極群、複数の第1の電極群上の液晶層、および液晶層上の第2の基板を有する。複数の第1の電極群は、第1の基板上に位置し、m行n列のマトリクス状に配置される。複数の第1の電極群の各々は、行方向に延伸する複数の第1の電極を有する。第k列に配置された複数の第1電極群では、列方向に数えて奇数番目の第1の電極が第1の配線に接続されると共に、隅数番目の第1の電極が第2の配線に接続される。第(k+1)列に配置された複数の第1電極群では、列方向に数えて奇数番目の第1の電極が第3の配線に接続されると共に、隅数番目の第1の電極が第4の配線に接続される。nとmは1よりも大きい自然数であり、kは1以上nよりも小さい自然数から選択される変数である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施形態に係る照明装置の模式的斜視図。
【
図2A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図2B】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的端面図。
【
図3A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図3B】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の一部の模式的斜視図。
【
図4A】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的展開斜視図。
【
図4B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的端面図。
【
図5A】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図5B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図6】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図7】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図8A】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的端面図。
【
図8B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的端面図。
【
図9A】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的端面図。
【
図9B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的端面図。
【
図10】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの動作原理を説明する模式的斜視図。
【
図11】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの動作原理を説明する模式的斜視図。
【
図12】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図13A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図
【
図13B】本発明の実施形態に係る照明装置の模式的斜視図。
【
図14A】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図14B】本発明の実施形態に係る照明装置からの光が照射される領域(以下、照射領域と記す)の模式的平面図。
【
図15A】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図15B】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図16A】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図16B】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図17A】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図17B】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図18A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図18B】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図18C】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図19A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図19B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図20】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図21】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図と照射領域の模式的平面図。
【
図22A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図と照射領域の模式的平面図。
【
図22B】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図23A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図23B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図23C】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図24A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図24B】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図24C】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図24D】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図25】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図26】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図27】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図28】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図29A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図29B】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図29C】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図29D】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図30】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図31】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの一部の模式的上面図。
【
図32A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図32B】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図32C】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図32D】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図33A】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図33B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的端面図。
【
図34A】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図34B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的端面図。
【
図35A】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図35B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図36A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図36B】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図36C】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図36D】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図36E】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図36F】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図37A】本発明の実施形態に係る照明装置の光源の模式的上面図。
【
図37B】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図37C】本発明の実施形態に係る照明装置の照射領域の模式的平面図。
【
図38A】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図38B】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図39】本発明の実施形態に係る照明装置の模式的斜視図。
【
図40】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図41】本発明の実施形態に係る照明装置の液晶セルの模式的上面図。
【
図42A】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【
図42B】本発明の実施形態に係る照明装置のタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0009】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。同一、あるいは類似する複数の構造を総じて表す際にはこの符号が用いられ、これらを個々に表す際には符号の後にハイフンと自然数が加えられる。また、一つの構造の一部を示す際には、符号の後に小文字のアルファベットを付すことがある。
【0010】
本明細書および請求項において、ある構造体の上に他の構造体を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある構造体に接するように、直上に他の構造体を配置する場合と、ある構造体の上方に、さらに別の構造体を介して他の構造体を配置する場合との両方を含むものとする。
【0011】
本明細書および請求項において、二つの構造体が「直交する」という表現は、二つの構造体が垂直(90°)に交差する状態のみならず、90°±10°の角度で交差する状態も含む。
【0012】
本明細書および請求項において、「ある構造体が他の構造体から露出する」という表現は、ある構造体の一部が他の構造体によって覆われていない態様を意味し、この他の構造体によって覆われていない部分は、さらに別の構造体によって覆われる態様も含む。また、この表現で表される態様は、ある構造体が他の構造体と接していない態様も含む。
【0013】
<第1実施形態>
本実施形態では、本発明の実施形態の一つである光学素子、および光学素子を備える照明装置100とその駆動方法について説明する。
【0014】
1.照明装置の全体構造
図1に照明装置100の模式的斜視図を示す。
図1に示すように、照明装置100は、基本的な構成として、光源110、光源110と重なり、光源110上に設けられる二つの光学素子を有する。一方の光学素子は光源110上の第1の液晶セル120-1であり、他方は第1の液晶セル120-1と重なり、第1の液晶セル120-1上に設けられる第2の液晶セル120-2である。第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2は、直接接してもよく、あるいは接着層102を介して互いに固定されてもよい。図示しないが、照明装置100は、さらに一つまたは複数の液晶セル120を第2の液晶セル120-2の上、下、または第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2の間に有していてもよい。液晶セル120の合計数に制約はなく、2以上10以下、2以上6以下、または2以上4以下でもよく、奇数でもよい。
【0015】
1-1.光源
図2Aに光源110の模式的上面図を、
図2Aの鎖線A-A´に沿った端面の模式図を
図2Bに示す。光源110は、反射板112と複数の発光素子114を備える。各凹部112aには、一つまたは複数の発光素子114が設けられる。反射板112は、発光素子114から出射される光に指向性を付与して液晶セル120に照射させる機能を備える。具体的には、反射板112は、m行n列のマトリクス状に配置された複数の凹部112aを備える。ここで、mとnは1よりも大きい自然数であり、たとえばmとnは、独立に、6、8、12、14、16でもよい。mとnは同じでもよく、互いに異なってもよい。以下、図中x方向が行方向であり、y方向が列方向とする。x方向とy方向のいずれに対しても垂直な方向をz方向とする。例えばx方向とy方向は、後述する第1の基板122または第2の基板124の辺と平行な方向である。
【0016】
(1)反射板
反射板112を構成する材料は任意に選択することができ、例えばアルミニウムやステンレスなどの金属、ポリイミドやポリカーボネート、アクリル樹脂などの高分子、あるいはガラスなどの無機酸化物でもよい。ただし、
図2Bの矢印で示すように、反射板112は、発光素子114からの光を凹部112a内で反射させて集光し、液晶セル120へ指向させる。このため、ガラスや高分子などの可視光を透過する材料を用いて反射板112を構成する場合には、凹部112aの表面を可視光に対する反射率が高い膜で構成することが好ましい。このような膜としては、アルミニウムや銀、金、クロム、ステンレスなどの金属を含む膜、酸化チタンや酸化タンタルなどの高屈折材料を含む薄膜と酸化ケイ素やフッ化マグネシウムなどの低屈折率材料を含む薄膜の積層体などが例示される。凹部112aの形状は、凹部112a内の発光素子114から指向性の高い光が得られるよう、適宜調整される。
【0017】
反射板112のxy平面における形状に制約はなく、照明装置100が設けられる環境に応じて適宜設定すればよい。例えば、
図1Aに示すように、反射板112のxy平面における形状は正方形でもよく、図示しないが円、楕円、多角形でもよい。反射板112の上面(液晶セル120に近い方の上面)における凹部112aの平面形状(以下、単に凹部112aの平面形状と記す)に制約はなく、
図2Aに示すように円でもよく、
図3Aに示すように、四角形に例示される多角形でもよい。
【0018】
集光機能を有する凹部112aを備える反射板112を用いることで、発光素子114からの光は高い指向性を有し、各凹部112aからビーム内の光線が平行となった光(コリメート光とも称する)、または拡散性の低い光(直進性の強い光)を得ることができる。このため、凹部112aの平面形状と同じまたはこれに近い形状の照射面116を液晶セル120に形成することができる(
図3B)。換言すると、各発光素子114は、凹部112aと重なる第1の液晶セル120-1の一部を選択的に照射し、凹部112aの平面形状を反映させた照射面116に対して光を供給することができる。
【0019】
(2)発光素子
各発光素子114は、電流を供給することで発光する機能を有する素子であり、その構造に制約はない。典型的な例として、発光ダイオード(LED)が挙げられる。発光ダイオードは、例えば窒化ガリウム、インジウムを含む窒化ガリウムなどの無機発光体を一対の電極で挟持した電界発光素子、および電解発光素子を保護する保護膜を基本的な構造として有し、電界発光(Electroluminescence)によって可視光を発光するように構成される。
【0020】
各凹部112aには、単一の発光素子114が設けられていてもよく、複数の発光素子114が設けられていてもよい。各発光素子114の発光色も任意に選択することができる。例えば、各凹部112aに白色発光を与える発光素子114を一つまたは複数設けてもよい。あるいは各凹部112aに赤色発光の発光素子114、緑色発光の発光素子114、青色発光の発光素子114を設け、各凹部112aから種々の色の発光が得られるように光源110を構成してもよい。
【0021】
各発光素子114の大きさに制約はなく、例えばそれぞれの占有面積が1.0×104μm2以上1.0×106μm2以下、4.0×104μm2以上5.0×105μm2以下、あるいは9.0×104μm2以上2.5×105μm2以下の発光ダイオードを用いることができる。一例として大きさが320μm×300μm程度の所謂マイクロLEDを発光素子114として用いることができる。
【0022】
1-2.液晶セル
上述したように、照明装置100では、少なくとも二つの液晶セル120が光源110上に配置される。液晶セル120の構造は同一でもよく、異なってもよい。以下、液晶セル120の構造について説明する。
【0023】
一つの液晶セル120の模式的展開斜視図を
図4Aに、
図4Aの鎖線B-B´に沿った端面の模式図を
図4Bに示す。これらの図に示すように、液晶セル120は、第1の基板122と第1の基板122に対向する第2の基板124を備え、これらの間に液晶素子を構成する種々の要素(複数の第1の電極126、複数の第2の電極128、液晶層136、第1の配向膜132、第2の配向膜134など)が配置される。
【0024】
(1)第1の基板と第2の基板
第1の基板122と第2の基板124は、それぞれ複数の第1の電極126と複数の第2の電極128を支持するための基材として機能するとともに、液晶層136が封止される空間を提供する。第1の基板122と第2の基板124は、光源110からの光を透過させて照明機能を発現するため、発光素子114からの光に対して高い透過率を示す材料を含むことが好ましい。したがって、例えばガラスや石英、またはポリイミドやポリカルボナート、ポリエステル、アクリル樹脂などの高分子材料を含むように第1の基板122と第2の基板124を構成することが好ましい。
【0025】
(2)第1の電極
複数の第1の電極126は、第1の基板122と接するように、あるいは任意の構成であるアンダーコート(図示しない)を介して第1の基板122上に設けられる(
図4B)。複数の第1の電極126は、第1の基板122の一つの辺と平行になるように配置される。アンダーコートは、窒化ケイ素や酸化ケイ素などのケイ素含有無機化合物を含む一つまたは複数の膜によって形成することができる。第1の電極126に含まれる材料としては、液晶セル120に高い透光性を付与するため、インジウム-スズ酸化物(ITO)やインジウム-亜鉛酸化物(IZO)などの可視光に対して高い透過率を示す導電性酸化物で形成することが好ましい。
【0026】
液晶セル120においては、複数の第1の電極126によって一つの第1の電極群125が形成され、さらに複数の第1の電極群125がm行n列のマトリクス状に配置される(
図5A)。このため、各第1の電極群125は少なくとも一つの発光素子114と重なり、複数の第1の電極群125の数と複数の凹部112aの数は同一となる。
【0027】
複数の第1の電極126の一部を
図6の模式的上面図に示す。この図では、二つの行と二つの列に配置された四つの第1の電極群125が示されている。複数の第1の電極126は、全て列方向または行方向に延伸する。すなわち、複数の第1の電極126の全ての長手方向は互いに平行である。以下の説明では、便宜上、複数の第1の電極126が行方向(x方向)に延伸する構成について説明する。各第1の電極群125においては、複数の第1の電極126はストライプ状に配置される。各第1の電極群125は複数の凹部112aの一つと重なり、このため、対応する凹部112aから出力される光の照射面116と重なる。換言すると、複数の凹部112aから任意に選択される第j行中第k列に位置する凹部112aは、第j行中第k列に位置する第1の電極群125と重なり、この凹部112aに配置される発光素子114からの光は第j行中第k列に位置する第1の電極群125を選択的に照射する。その結果、第j行中第k列に位置する照射面116は、第j行中第k列に位置する第1の電極群125と重なる。したがって、一つの照射面116と重なる複数の第1の電極126によって一つの第1の電極群125が構成されると言える。ここで、jは1以上n以下の自然数から選択される変数であり、kは1以上m以下の自然数から選択される変数である。
【0028】
なお、本実施形態においては、複数の第1の電極126が行方向(x方向)にストライプ状に延伸するが、各第1の電極126は、全体としては行方向に延伸しているものの、1箇所または複数の個所でわずかに屈曲する構成を有することも可能である。また、第1の電極126の延伸方向も、x方向に対して1~10°程度の角度を有しても構わない。
【0029】
各列では、一つ置きに選択される複数の第1の電極126(例えば、列方向に奇数番目の第1の電極)が配線138-1に接続され、互いに電気的に導通する。各列における残りの第1の電極126(例えば、列方向に偶数番目の第1の電極)も別の配線138-2に接続され、互いに電気的に導通する。したがって、各列において、複数の第1の電極126には、一つ置きに異なる電圧を供給することができる。配線138は凹部112aと重ならないように配置される。すなわち、各配線138は隣り合う凹部112aの間および隣り合う照射面116の間を延伸する。さらに、隣り合う凹部112aの間および隣り合う照射面116の間には、隣り合う列の第1の電極126にそれぞれ接続される二つの配線138-1、138-2が延伸する。換言すると、隣り合う列の間に、当該隣り合う列の第1の電極126にそれぞれ接続される二つの配線138-1、138-2が延伸する。配線138はアルミニウムや銅、モリブデン、タンタル、タングステンなどの金属で構成してもよく、第1の電極126と同じ材料を含んでもよい。
【0030】
第1の電極126の長さ(長手方向であるx方向の長さ)は、凹部112aのxy平面におけるx方向の長さよりも大きく、このため、各第1の電極126は凹部112aを跨ぐ。第1の電極126の幅(x方向と交差するy方向の長さ)は、例えば2μm以上10μm以下の範囲から選択され、列方向で隣接する第1の電極126間の距離も例えば2μm以上10μm以下の範囲から選択すればよい。典型的な例として、第1の電極126の幅と列方向におけるピッチは、それぞれ5μm、10μmとすることができる。
【0031】
かかる構成により、本実施形態においては、各列に配置される複数の第1の電極群125では、列方向で一つ置きに選択される第1の電極126(例えば、列方向において奇数番目の第1の電極126)は、配線138-1と配線138-2の一方に接続され、残りの第1の電極126(例えば、列方向において偶数番目の第1の電極126)は、配線138-1と配線138-2の他方に接続される。また、これら配線138はそれぞれ後述する駆動回路130に接続されている。これにより、駆動回路130から供給される電位に応じ、第1の電極群125を列単位で独立して駆動することができる。もちろん、各列において配線138同士を接続したり、同電位を印加したりすることによって、複数列あるいは全ての列の第1の電極群125を同時に駆動することも可能である。これら各配線の接続や電位の印加方法については後述する。
【0032】
(3)第2の電極
複数の第2の電極128も、第1の電極126と同様の構成を有するが、その延伸方向が異なる。具体的には、複数の第2の電極128は、第2の基板124と接するように、あるいは任意の構成であるアンダーコート(図示しない)を介して第2の基板124上に設けられる(
図4B)。複数の第2の電極128も第2の基板124の一つの辺と平行になるように配置される。第1の電極126と第2の電極128は、第1の基板122と第2の基板124に挟まれるように配置される。
【0033】
各液晶セル120においては、複数の第2の電極128によって一つの第2の電極群127が形成され、さらに複数の第2の電極群127がm行n列のマトリクス状に配置される(
図5B)。このため、各第2の電極群127は少なくとも一つの発光素子114と重なり、複数の第2の電極群の数と複数の凹部112aの数は同一となる。
【0034】
複数の第2の電極128の一部を
図7の模式的上面図に示す。この図では、二つの行と二つの列に配置された四つの第2の電極群127が示されている。複数の第2の電極128は、全て列方向(y方向)に延伸する。すなわち、複数の第2の電極128の全ての長手方向は互いに平行であり、複数の第1の電極126の長手方向と直交する。各第2の電極群127においては、複数の第2の電極128はストライプ状に配置される。各第2の電極群127は複数の凹部112aの一つと重なり、このため、対応する照射面116と重なる。換言すると、複数の凹部112aから任意に選択される第j行中第k列に位置する凹部112aは、第j行中第k列に位置する第2の電極群127と重なり、この凹部112aに配置される発光素子114からの光は、第1の電極126と液晶層136を介し、第j行中第k列に位置する第2の電極群127に選択的に照射される。その結果、第j行中第k列に位置する照射面116は、第j行中第k列に位置する第2の電極群127と重なる。したがって、一つの照射面116と重なる複数の第2の電極128によって一つの第2の電極群127が構成されると言える。
【0035】
なお、本実施形態においては、複数の第2の電極128は列方向(y方向)にストライプ状に延伸するが、各第2の電極128は、全体としては列方向に延伸しているものの、1箇所または複数の個所でわずかに屈曲する構成を有することも可能である。また、第2の電極128の延伸方向も、y方向に対して1~10°程度の角度を有しても構わない。
【0036】
各行では、一つ置きに選択される複数の第2の電極128(例えば、行方向に奇数番目の第2の電極)が配線140-1に接続され、互いに電気的に導通する。各行における残りの第2の電極128(例えば、行方向に偶数番目の第2の電極)も別の配線140-2に接続され、互いに電気的に導通する。したがって、各行において、複数の第2の電極128には、一つ置きに異なる電圧を供給することができる。配線138と同様、配線140も凹部112aと重ならないように配置される。すなわち、各配線140は隣り合う凹部112aの間および隣り合う照射面116の間を延伸する。さらに、隣り合う凹部112aの間および隣り合う照射面116の間には、隣り合う列の第2の電極128にそれぞれ接続される二つの配線140-1、140-2が延伸する。換言すると、隣り合う行の間に、当該隣り合う行の第2の電極128にそれぞれ接続される二つの配線140-1、140-2が延伸する。
【0037】
第2の電極128の長さ(長手方向であるy方向の長さ)も凹部112aのxy平面におけるy方向の長さよりも大きく、このため、各第2の電極128も凹部112aを跨ぐ。第2の電極128の幅(y方向と交差するx方向の長さ)も例えば2μm以上10μm以下の範囲から選択され、行方向で隣接する第2の電極128間の距離も例えば2μm以上10μm以下の範囲から選択すればよい。典型的な例として、第2の電極128の幅とx方向におけるピッチは、それぞれ5μm、10μmとすることができる。
【0038】
かかる構成により、本実施形態においては、各行に配置される複数の第2の電極群127では、行方向で一つ置きに選択される第2の電極128(例えば、行方向において奇数番目の第2の電極128)は、配線140-1と配線140-2の一方に接続され、残りの第2の電極128(例えば、行方向において偶数番目の第2の電極128)は、配線140-1と配線140-2の他方に接続される。また、これら配線140はそれぞれ後述する駆動回路130に接続されている。これにより、駆動回路130から供給される電位に応じ、第2の電極群127を行単位で独立して駆動することができる。もちろん、各行において配線140同士を接続したり、同電位を印加したりすることによって、複数行あるいは全ての行の第2の電極群127を同時に駆動することも可能である。これら各配線の接続や電位の印加方法については後述する。
【0039】
上記の通り、第1の液晶セル120-1は、第1の基板122側に第1の電極群125をm行n列のマトリクス状に備え、また、第2の基板124側に第2の電極群127をm行n列のマトリクス状に備えており、第1の基板122側においては、第1の電極群125を列単位で独立して駆動可能であって、且つ、第2の基板124側においては、第2の電極群127を行単位で独立して駆動することが可能となっている。これら個別の駆動については後述する。
【0040】
第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2は、互いの第1の電極126の長手方向が互いに平行となるように配置する。この場合、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2では、第2の電極128の長手方向も互いに平行であり、第1の配向膜132が液晶分子を配向させる方向(以下、配向方向)もそれぞれ互いに平行となる。この場合、互いの第1の電極126が重畳する構成も採用可能である。逆に、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2は、互いの第1の電極126の長手方向が互いに垂直となるように配置してもよい。この場合、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2では、第2の電極128の長手方向も互いに垂直であり、第1の配向膜132の配向方向もそれぞれ互いに垂直となる。
【0041】
(4)第1の配向膜、第2の配向膜、および液晶層
複数の第1の電極126上には第1の配向膜132が設けられ、複数の第2の電極128上(
図4Bでは第2の電極128の下)には第2の配向膜134が設けられる。第1の基板122と第2の基板124は封止材118によって貼り合わされ、固定される。第1の基板122、第2の基板124、および封止材118によって形成される空間には液晶層136が充填される。
【0042】
第1の配向膜132と第2の配向膜134は、ポリイミドやポリエステルなどの高分子を含み、これらの表面はラビング処理される。ラビング処理は、第1の配向膜132の配向方向が第1の電極126が延伸する方向に対して垂直となり(
図6の矢印参照)、第2の配向膜134の配向方向が第2の電極128が延伸する方向に垂直になるように行われる(
図7の矢印参照)。したがって、第1の配向膜132の配向方向と第2の配向膜134の配向方向は直交する。ここで、配向方向とは、配向膜の影響によって液晶分子が配向するときの液晶分子の長軸方向である。なお、ラビング処理に替えて、光配向によって第1の配向膜132と第2の配向膜134の配向方向を形成してもよい。光配向は、光を用いたラビングレスの配向処理であり、例えば、紫外領域の偏光を所定方向からラビング処理していない配向膜に照射する。これによって配向膜中で光反応を生じさせ、その配向膜表面に異方性を導入して液晶配向制御能を付与する。
【0043】
液晶層136には液晶分子が含まれる。液晶分子の構造は限定されない。したがって、液晶分子はネマチック液晶でもよく、あるいはスメクチック液晶、コレステリック液晶、キラルスメチック液晶でもよい。
【0044】
液晶層136の厚さd(
図4B参照)、すなわち、第1の配向膜132と第2の配向膜134との間の距離も任意であるが、第1の電極126や第2の電極128のピッチよりも大きいことが好ましい。例えば、液晶層136の厚さは、第1の電極126または第2の電極128のピッチに対して2倍以上10倍以下、2倍以上5倍以下、または2倍以上3倍以下に設定することが好ましい。具体的な液晶層136の厚さは、例えば20μm以上60μm以下または20μm以上50μm以下の範囲から選択すればよい。図示しないが、この厚さを照明装置100の全体に亘って維持するためのスペーサを液晶層136内に設けてもよい。なお、上述した液晶層136の厚さを液晶表示装置において採用した場合、動画を表示するために必要な高い応答性を得ることができず、液晶表示装置としての機能を発現することが困難となる。
【0045】
(5)その他の構成
第1の基板122上には、照明用の信号を生成して第1の電極126や第2の電極128に供給するための駆動回路130が接続される(
図4A、
図5A)。駆動回路130は、第1の基板122上でパターニングされた種々の導電膜、半導体膜、導電膜を適宜組み合わせることで形成してもよく、あるいは半導体基板上に形成される集積回路を備えるICチップを第1の基板122に搭載することで形成してもよい。あるいは、駆動回路130を第1の基板122上に設けず、第1の電極126と第2の電極128から延伸する配線138、140に接続されるフレキシブル印刷基板(FPC)などのコネクタ上にICチップを駆動回路130として設けてもよい。
【0046】
2.動作原理
上述したように、反射板112の各凹部112aに設けられる発光素子114から出射される光は、一つの第1の電極群125を選択的に照射し、この光は液晶層136を通過し、さらに一つの第2の電極群127を照射する。また、各第1の電極群125と各第2の電極群127には、ストライプ状に配置された複数の第1の電極126と第2の電極128がそれぞれ設けられる。このため、各第1の電極群125と各第2の電極群127にそれぞれ含まれる複数の第1の電極126と第2の電極128に印加される電圧を制御することにより、液晶層136がある種の液晶レンズとして機能する。その結果、各凹部112aから出力される光の拡がりを個別に制御させることができるため、光源110から二つの液晶セル120を介して取り出される光の照射領域を多様に、かつ、任意に制御することができる。以下、照明装置100の動作原理と駆動方法について説明する。ここで、「照射領域」とは、照明装置100を駆動した際に対象物上に光が照射される領域を指す。ただし、光の進行方向と対象物上の面の角度や照明装置100と対象物との距離により、照射領域は変化する。したがって、「照射領域」とは、液晶セル120の第2の基板124の主面の法線に対して垂直な平面に照明装置100からの光が照射される領域と定義される。
【0047】
2-1.非駆動時
図8Aと
図8Bに、非駆動時における液晶セル120の端面の模式図を示す。
図8Aは行方向(x方向)から見た模式図であり、
図8Bは列方向(y方向)から見た模式図である。
図8Aと
図8Bにおいて、液晶分子は楕円として模式的に描かれている。
【0048】
上述したように、第1の配向膜132と第2の配向膜134の配向方向は、それぞれ複数の第1の電極126と複数の第2の電極128が延伸する方向に対して直交する。このため、液晶セル120を駆動しない場合、すなわち、複数の第1の電極126と複数の第2の電極128に電圧を印加しない場合には、液晶分子の配向は電界の影響を受けず、配向方向によって決定される。その結果、第1の電極126付近では、液晶分子は長軸が第1の電極126が延伸する方向(x方向)に垂直な方向(y方向)に沿って配向する。一方、第2の電極128付近では、液晶分子は長軸が第2の電極128が延伸する方向(y方向)に垂直な方向(x方向)に沿って配向する。このため、液晶分子の配向方向は、第1の基板122から第2の基板124に近づくにつれてz方向を中心軸として旋回し、90°捻じれる。
【0049】
2-2.駆動時
駆動時には、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2のいずれか一方のセルまたは両セルの複数の第1の電極126に対し、隣り合う第1の電極126間で位相が反転するようにパルス状の交流電圧(交流矩形波)が印加される。同様に、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2のいずれか一方のセルまたは両セルの複数の第2の電極128に対し、隣り合う第2の電極128間で位相が反転するようにパルス状の交流電圧(交流矩形波)が印加される。それぞれの液晶セル120内で、これらの交流電圧の周波数は同一である。交流電圧は、例えば5V以上50V以下、または5V以上30V以下の範囲から選択すればよい。交流電圧の印加により、隣接する第1の電極126間および隣接する第2の電極128間には、それぞれ
図9Aと
図9Bの矢印に示すように電界(横電界)が発生する。一方、第1の電極126と第2の電極128間でも電界(縦電界)が発生するが、上述したように、液晶層136の厚さdは、隣接する第1の電極126間や第2の電極128間の距離の距離と比較して大きい。このため、縦電界は横電界に対して著しく小さく、各液晶分子は横電界に従って配向する。
【0050】
液晶層136内に横電界が発生すると、第1の基板122側では、隣り合う第1の電極126の間のほぼ中間に位置する液晶分子は、横電界の方向は第1の基板122とほぼ平行であるため、初期の配向状態を保つ。しかしながら、第1の電極126に近づくにつれて電界方向がz方向に傾くため、液晶分子もz方向に傾き、その角度(チルト角)が増大する。その結果、第1の基板122側の液晶層中の液晶分子は、上に凸の円弧状に配向する(
図9A)。第2の基板124側でも同様であり、隣接する第2の電極128の間のほぼ中間に位置する液晶分子は、横電界の方向は第2の基板124とほぼ平行であるため、初期の配向状態を保つ。しかしながら、第2の電極128に近づくにつれて電界方向がz方向に傾くため、液晶分子もz方向に傾き、その角度(チルト角)が増大する。その結果、第2の基板124側の液晶層中の液晶分子は、下に凸の円弧状に配向する(
図9B)。
【0051】
液晶分子の配向変化により、液晶層136に入射した光は、第1の基板側の円弧状に配向した液晶分子の屈折率分布に従って拡散し、さらに第2の基板側の円弧状に配向した液晶分子の屈折率分布に従って拡散する。その結果、液晶セル120は光を拡散するレンズとして機能する。この光の拡散メカニズムについて、
図10と
図11を用いて詳細に説明する。
図10は
図9Aと
図9Bに示す液晶分子の配向を示した模式的斜視図であり、
図11は二つの液晶セル120を透過する光の挙動を示す模式図である。ここでは、二つの液晶セル120の間で、第1の電極126が延伸する方向は互いに平行であり、第2の電極128が延伸する方向も互いに平行である例をモデルとして用いて説明する。
【0052】
上述したように、複数の第1の電極126に対し、隣接する第1の電極126間で互いに位相が反転するようにパルス状の交流電圧を印加し、複数の第2の電極128に対し、隣接する第2の電極128間で互いに位相が反転するようにパルス状の交流電圧を印加すると、
図10に示すように、第1の電極126側と第2の電極128側に互いに直交する横電界が発生する。その結果、液晶層中の液晶分子は、第1の基板122側で隣接する第1の電極126間で上に凸に配向し、第2の基板124側で隣接する第2の電極128間で下に凸に配向する。また、液晶分子の配向は、第1の電極126から第2の電極128に向かうに従って90°捻じれる。
【0053】
図11に示すように、光源110から出射した光は、最初に第1の液晶セル120-1に入射する。この光はy方向の偏光成分150(図中、直線矢印)とx方向の偏光成分152(図中、丸印にバツを付した記号)を有している。以下、便宜上、液晶セル120に入射する前の光のy方向の偏光成分をS成分、x方向の偏光成分をP成分と呼び、偏光軸の変化に依存せず、この名称を使用する。
【0054】
第1の電極126側では液晶分子はy方向に沿って配向しているため、液晶層136はy方向に屈折率分布を有する。このため、液晶層136に入射したS成分150は、第1の電極126側のy方向の屈折率分布によってy方向に拡散する。この光は、液晶層136を通過する際、液晶分子の配向の捻じれによって旋光し、偏光軸がx方向になる。すると、第2の電極128側では、液晶層136はx方向に屈折率分布を有するため、この光はさらにx方向に拡散する。その結果、S成分150は第1の液晶セル120-1の液晶層136を通過すると、x方向とy方向に拡散したS成分152となる。
【0055】
一方、第1の液晶セル120-1に入射したP成分156は、第1の電極126側においては屈折率分布はy方向に存在するため、屈折率分布の影響を受けず、拡散することなく液晶分子の配向の捻じれによって旋光し、偏光軸がy方向になる。また、第2の電極128側の屈折率分布はx方向に存在するため、偏光軸がy方向に変化したP成分156は屈折率分布の影響を受けない。その結果、P成分156は、第1の液晶セル120-1の液晶層136を通過すると、拡散せずに旋光したP成分158となる。
【0056】
次に、第1の液晶セル120-1を通過した光を考える。上述したように、このモデルでは、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2の間で第1の電極126の長手方向は互いに平行であり、第2の電極128の長手方向も互いに平行である。このため、第2の液晶セル120-2の液晶層136においても、第1の電極126側にはy方向に屈折率分が存在し、第2の電極128側にはx方向に屈折率分布が存在する。
【0057】
上述したように、S成分150は、第1の液晶セル120-1を通過するとxとy方向に拡散したS成分152となる。このS成分152は、第2の液晶セル120-2の第1の電極126側ではその偏光軸が屈折率分布の方向と直交するため、拡散しない。S成分152は、液晶層136を通過する間、液晶分子の配向の捻じれに応じて旋光し、偏光軸がy方向に変化する。しかしながら、第2の電極128側の屈折率分布はx方向であるため、屈折率分布の影響を受けない。その結果、S成分152は、第2の液晶セル120-2によって旋光するものの、拡散せずにS成分154となる。纏めると、光源110から出射するS成分150は、第1の液晶セル120-1によってxとy方向に拡散すると同時に旋光してS成分152となり、第2の液晶セル120-2によって拡散せずに旋光し、最終的にxとy方向に拡散したS成分154となる。
【0058】
一方、第2の液晶セル120-2の液晶層136に入射したP成分158は、第1の電極126側のy方向の屈折率分布によってy方向に拡散する。この光は、液晶層136を通過する際、液晶分子の配向の捻じれによって旋光し、偏光軸がx方向になる。すると、第2の電極128側では、液晶層136はx方向に屈折率分布を有するため、この光はx方向に拡散する。その結果、P成分158は第2の液晶セル120-2を通過すると、旋光すると同時にx方向とy方向に拡散したP成分160となる。纏めると、光源110から出射するP成分156は、第1の液晶セル120-1によって拡散せずに旋光し、第2の液晶セル120-2によって旋光すると同時にxとy方向に拡散し、最終的にxとy方向に拡散したP成分160となる。
【0059】
液晶分子の配向の程度は第1の電極126と第2の電極128に印加される電圧によってそれぞれ制御することができるため、光の拡散の程度も第1の電極126と第2の電極128に印加される電圧によって制御することが可能である。このため、上述したメカニズムに従い、第1の電極126と第2の電極128に印加される電圧によって各第1の電極群125と第2の電極群127に照射される光の拡散の程度を独立に制御することができる。
【0060】
なお、光の拡散は隣接する第1の電極126間と隣接する第2の電極間128に発生する横電界によって制御される。したがって、光の拡散のためには、各液晶セルにおいて隣接する第1の電極126間および/または隣接する第2の電極128間に電位差が与えられれば良い。このため、複数の第1の電極126に対しては、隣接する第1の電極126に対して異なる電圧の一定電圧を印加してもよく、あるいは、一つ置きに選択される複数の第1の電極126に交流電圧を与え、残りの第1の電極126に一定電圧を与えてもよい。第2の電極128についても同様である。
【0061】
3.配光制御
上述したメカニズムを利用することにより、光源110からの照射領域を任意に制御することができる。このことを以下説明する。
【0062】
以下の説明では、
図12に示すように、第1の液晶セル120-1では、一つ置きに選択される複数の第1の電極126に対して交流電圧V
1が、残りの複数の第1の電極126に対して交流電圧V
2が印加されるものとする。また、第1の液晶セル120-1では、一つ置きに選択される複数の第2の電極128に対して交流電圧V
3が、残りの複数の第1の電極126に対して交流電圧V
4が印加されるものとする。第2の液晶セル120-2では、一つ置きに選択される複数の第1の電極126に対して交流電圧V
5が、残りの複数の第1の電極126に対して交流電圧V
6が印加されるものとする。また、第2の液晶セル120-2では、一つ置きに選択される複数の第2の電極128に対して交流電圧V
7が、残りの複数の第1の電極126に対して交流電圧V
8が印加されるものとする。このモデルにおいても、二つの液晶セル120の間で、第1の電極126は互いに平行であり、第2の電極128も互いに平行である。
【0063】
3-1.液晶セルの非駆動時
液晶セル120が非駆動時の場合には、第1の電極126間や第2の電極間128の間には電界が発生しない。このため、液晶層136には屈折率分布が存在しないので、S成分150とP152は各液晶セル120によって旋光するもの拡散効果を受けない。したがって、例えば
図13Aに示すように、複数の凹部112aに設けられる発光素子114の全てを点灯した場合、光が二つの液晶セル120を通過しても大きく広がらず、各凹部112aから出力される光の拡散を反映するに留まる。その結果、xy平面においては、光源110の照射領域A
0は、ほぼ光源110のxy平面における形状と相似の関係となる(
図13B)。
【0064】
3-2.液晶セルの駆動時
(1)y方向への選択的拡散
一例として、
図14Aのタイミングチャートに示すように液晶セル120を駆動するケースを考える。ここでは、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セルの各々において、複数の第1の電極126に対し、隣接する第1の電極126間で位相が反転するように交流電圧を与え、複数の第2の電極128に対して一定電圧を印加するまたは電圧を与えない。一定電圧は、0Vでもよく、上記交流電圧に対する中間電位でもよい。
【0065】
このように液晶セル120を動作させると、
図11から理解されるように、光源110からの光のS成分150は、第1の液晶セル120-1においてy方向に拡散しつつ、液晶層136によって偏光軸をx方向に変化させる。この光は、第2の電極128間には電界が存在しないため、第2の電極128側では拡散することなく第1の液晶セル120-1から出射し、y方向に拡散したS成分152となる。このS成分152は、第2の液晶セル120-2の第1の電極126間に発生する横電界に起因する屈折率分布はy方向であるため、第2の液晶セル120-2に入射しても屈折率分の影響を受けない。また、第2の電極128間には電界が存在しないので、このS成分152は拡散することなく旋光する。纏めると、S成分150は、二つの液晶セル120を通過することで、y方向に拡散したS成分154となる。
【0066】
一方、光源110からの光のP成分156は、第1の液晶セル120-1の第1の電極126側の横電界はy方向であるので、屈折率分布の影響を受けない。また、第2の電極128間には電界が存在しないので、第2の電極128側には屈折率分布が存在しない。このため、P成分156は、拡散せずに液晶層136中の液晶分子の配向の捻じれに従って旋光し、P成分158となる。このP成分158が第2の液晶セル120-2に入射すると、第1の電極126側のy方向の屈折率分布によってy方向に拡散しつつ、液晶層136によって偏光軸をx方向に変化させる。この光は、第2の電極128間には電界が存在しないため、第2の電極128側では拡散することなく第2の液晶セル120-2から出射する。纏めると、P成分156は、二つの液晶セル120を通過することで、y方向に拡散したP成分160となる。
【0067】
上記メカニズムにより、光源110からの光は、y方向のみに拡散する。このため、照明装置100は、二つの液晶セル120を駆動しない場合に形成される照射領域A
0と比較し、y方向に拡散した照射領域A
1を与える(
図14B)。詳細な説明は割愛するが、x方向に選択的に拡散した照射領域を得る場合には、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セルの各々において、複数の第2の電極128に対し、隣接する第2の電極128間で位相が反転するように交流電圧を与え、複数の第1の電極126に対して一定電圧を印加するまたは電圧を与えないように液晶セル120を駆動すればよい。(
図15A、
図15B)。
【0068】
(2)x方向とy方向への拡散
他の例として、
図16Aのタイミングチャートに示すように液晶セル120を駆動するケースを考える。ここでは、第1の液晶セル120-1において、複数の第1の電極126に対し、隣接する第1の電極126間で位相が反転するように交流電圧を与え、複数の第2の電極128に対して一定電圧を印加するまたは電圧を与えない。一方、第2の液晶セル120-2においては、複数の第1の電極126に対して一定電圧を印加するまたは電圧を与えず、隣接する第2の電極128間で位相が反転するように交流電圧を与える。一定電圧は、0Vでもよく、上記交流電圧に対する中間電位でもよい。
【0069】
このように液晶セル120を動作させると、
図11から理解されるように、光源110からの光のS成分150は、第1の液晶セル120-1において、第1の電極126側のy方向の屈折率分布に起因してy方向に拡散し、液晶層136によって旋光してS成分152となる。S成分152が第2の液晶セル120-2に入射すると、第1の電極126側には屈折率分布が存在しないので、S成分152は液晶層136によって旋光し、偏光軸がy方向となる。しかしながら、第2の基板124側の屈折率分布はx方向であるため、拡散しない。纏めると、S成分150は、二つの液晶セル120を通過することで、y方向にのみ拡散したS成分154となる。
【0070】
一方、光源110からの光のP成分156は、第1の液晶セル120-1の第1の電極126側の横電界はy方向であるので、屈折率分布の影響を受けない。また、第2の電極128間には電界が存在しないので、第2の電極128側には屈折率分布が存在しない。このため、P成分156は、拡散せずに液晶層136中の液晶分子の配向の捻じれに従って旋光し、偏光軸がy方向であるP成分158となる。このP成分158が第2の液晶セル120-2に入射すると、第1の電極126側には屈折率分布が存在しないものの、第2の電極128側にはx方向の屈折率分布が存在するので、P成分158は旋光するとともにx方向に拡散したP成分160となる。纏めると、P成分156は、二つの液晶セル120を通過することで、x方向にのみ拡散したP成分160となる。
【0071】
上記メカニズムにより、光源110からのS成分150とP成分156は、それぞれy方向とx方向に選択的に拡散する。このため、照明装置100は、二つの液晶セル120を駆動しない場合に形成される照射領域A
0とは異なり、十字状の照射領域A
1を与える(
図16B)。
【0072】
(3)x方向とy方向への非対称な拡散
他の例として、
図17Aのタイミングチャートに示すように液晶セル120を駆動するケースを考える。ここでは、二つの第1の液晶セル120-1において、複数の第1の電極126に対し、隣接する第1の電極126間で位相が反転するように交流電圧を与え、複数の第2の電極128に対し、隣接する第2の電極128間で位相が反転するように交流電圧を与える。ただし、複数の第1の電極126に与えられる電圧と複数の第2の電極128に与えられる電圧はその大きさが相違する。ここでは、前者が後者よりも大きい例を用いて説明する。
【0073】
このように液晶セル120を動作させると、
図11から理解されるように、光源110からの光のS成分150は、第1の液晶セル120-1において、旋光すると同時に、第1の電極126側のy方向の屈折率分布に起因してy方向に拡散し、第2の電極128側のx方向の屈折率分布に起因してx方向にも拡散する。しかしながら、第1の電極126に印加される電圧は、第2の電極128に印加される電圧よりも大きいため、y方向により大きく拡散したS成分152となる。このS成分152は第2の液晶セル120-2では拡散されずに旋光する。纏めると、S成分150は、x方向よりもy方向により大きく拡散したS成分154となる。
【0074】
一方、光源110からの光のP成分156は、第1の液晶セル120-1では拡散されずに旋光し、P成分158となる。このP成分158が第2の液晶セル120-2に入射すると、旋光すると同時に、第1の電極126側の屈折率分布に起因してy方向に拡散し、第2の電極128側の屈折率分布に起因してx方向にも拡散する。しかしながら、第1の電極126に印加される電圧は、第2の電極128に印加される電圧よりも大きいため、y方向により大きく拡散したP成分160となる。纏めると、P成分156もx方向よりもy方向により大きく拡散したP成分160となる。
【0075】
上記メカニズムにより、光源110からのS成分150とP成分156は、それぞれx方向よりもより大きくy方向に拡散する。このため、照明装置100は、二つの液晶セル120を駆動しない場合に形成される照射領域A
0と比較し、y方向により大きく拡大した照射領域A
1を与える(
図17B)。
【0076】
上述したように、本発明の実施形態を適用することにより、光源110からの光を任意に配光し、様々な形状の照射領域を作り出すことが可能となる。
【0077】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた照明装置100の駆動方法とは異なる駆動方法について説明する。第1実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0078】
本実施形態に係る照明装置100の駆動方法では、複数の発光素子114の一部を駆動させる(ローカルデミング)。これにより、さらに多様な形状に照射領域を変化させることができるとともに、消費電力の低減が可能となる。
【0079】
一例として、
図18Aに示すように、一部の発光素子114のみを駆動し、他の発光素子114を点灯させないモデルを考える。ここでは、8行8列のマトリクス状に配置される凹部112aのうち、第4行(L
4)に位置する凹部112aに設けられる発光素子114が点灯される。二つの液晶セル120を駆動しない場合には、xy平面においては、光源110の照射領域A
0は、ほぼ光源110のxy平面における形状と相似の関係となる。したがって、
図18Bに示すように、照射領域A
0は直線状となる。
【0080】
この状態で、x方向に選択的に拡散するように液晶セル120を動作させる。具体的には、
図15Aに示すタイミングチャートに従って液晶セル120を動作させることにより、光源110から出射される光はx方向、すなわち、行方向に選択的に拡散する。その結果、照射領域A
0と比較してx方向に拡大した照射領域A
1を与えることができる(
図18C)。図示しないが、液晶セル120を適宜動作させることで、光をy方向に拡散させることも可能であり、光源110からの光を用いて任意の形状を有する照射領域を提供することができる。
【0081】
このように、ローカルデミングを行うことで、光源110の照射領域も制御できるため、より多様な形状を有する照射領域を作り出すことができる。また、発光素子114の一部だけを選択的に駆動させることができるため、消費電力を低減することが可能である。
【0082】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1、第2実施形態で述べた照明装置100の駆動方法とは異なる駆動方法について説明する。第1、第2実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0083】
本実施形態で述べる照明装置100の駆動方法では、第2実施形態と同様、ローカルデミングが行われる。それと同時に、液晶セル120は部分的に駆動される。すなわち、液晶セル120に設けられる複数の第1の電極群125と第2の電極群127のうちの一部が選択的に駆動され、これにより、消費電力の更なる低減が可能になるとともに、より多様な配光制御が可能となる。
【0084】
一例として、
図19Aに示すように、8行8列のマトリクス状に配置される凹部112aのうち、第5列R
5に位置する凹部112aに設けられる発光素子114が点灯されるモデルを考える。
図19Aの点線で囲まれた領域における複数の第1の電極群125と第2の電極群127の模式的拡大図を
図19Bと
図20にそれぞれ示す。
図19Bでは、一つの凹部112aに設けられる発光素子114が与える照射面116と重なる複数の第1の電極126が一つの第1の電極群125を構成する(
図6参照)。同様に、
図20では、一つの凹部112aに設けられる発光素子114が与える照射面116と重なる複数の第2の電極128が一つの第2の電極群127を構成する(
図6参照)。
図19Bと
図20に描かれた九つの照射面116-1から116-9のうち、発光素子114が点灯しているのは、ハッチングが施された第2列の三つの照射面116-2、116-5、116-8である。
【0085】
この状態で、点灯している発光素子114が設けられる凹部112aの一つが与える照射面116と重なる第1の電極126と第2の電極128を用いて二つの液晶セル120を駆動する。例えば、照射面116-5を選択し、この照射面116-5と重なる第1の電極126と第2の電極128を
図15Aに示すタイミングチャートに従って駆動する。
図15Aのタイミングチャートに従うと、二つの液晶セル120の第2の電極128に対し、配線140-1から140-6のうち配線140-3と140-4の間に設けられて互いに隣り合う第2の電極128の位相が互いに反転するように交流電圧が印加され、他の第2の電極128に対しては0Vの定電圧を与える。二つの液晶セル120の第1の電極126に対しても0Vの定電圧を与える。
【0086】
このように液晶セル120を駆動することにより、
図21に示すように、液晶セル120の非駆動時にy方向に直線的に形成される照射領域A
0は、一部がx方向に延伸し、十字状の照射領域A
1が得られる。このような照射領域の変形は一部の第2の電極128のみを駆動すれば達成できるため、液晶セル120の消費電力も抑制することができる。
【0087】
あるいは、
図15Aのタイミングチャートに従って第2の電極128に印加される電圧を変化させることで、様々な形状へ照射領域を変化させることができる。例えば
図22Aに示すように第5列R
5の凹部112aに配置される発光素子114を全て点灯させ、第1行L
1からから第3行L
3の凹部112aと重なる第2の電極128を
図15Aのタイミングチャートに従って駆動させる。この時、第2の電極128に印加される電圧を第1行L
1からから第3行L
3の順で増大させることで、
図22Bに示すように、直線的に形成される照射領域A
0を矢印形状の照射領域A
1へ変形させることができる。
【0088】
このように第1の電極群125と第2の電極群127に印加される電圧を行単位又は列単位で制御することで、消費電力を低減することができるとともに、照射領域を多様な形状に任意に変形することができる。
【0089】
<第4実施形態>
本実施形態では、第1から第3実施形態で述べた照明装置100の駆動方法とは異なる駆動方法について説明する。第1から第3実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0090】
本実施形態で述べる照明装置100の駆動方法では、液晶セル120を部分駆動させる際、拡散対象となる光が出力される凹部112aと重なる行(以下、駆動行)の第1の電極126と、当該駆動行に隣り合い、駆動させない発光素子114を備える凹部112aまたは拡散対象ではない光を出力する凹部112aと重なる行(以下、非駆動隣接行)の間に配置される二つの配線138間、あるいはこれら駆動行の第1の電極126と非駆動隣接行の第1の電極126間に電位差が存在しないように、非駆動隣接行を駆動行と同期させる。あるいは、拡散対象となる光が出力される凹部112aと重なる列(以下、本実施形態で駆動列)の第2の電極128と、当該駆動列に隣り合い、駆動させない発光素子114を備える凹部112aまたは拡散対象ではない光を出力する凹部112aと重なる列(以下、本実施形態で非駆動隣接列)の間に配置される二つの配線140間、あるいはこれら駆動列の第2の電極128と非駆動隣接列の第2の電極128間に電位差が存在しなくなるように、非駆動隣接列を駆動列と同期させる。
【0091】
一例として、
図23Aに示すように、反射板112が8行8列に配置される凹部112aを備え、第4行L
4の第4列R
4と第5列R
5、および第5行L
5の第4列R
4と第5列R
5の凹部112aの発光素子114から光を出射する場合を想定する。この時、第4行L
4の二つの凹部112aの発光素子114からの光のみを選択的にx方向に拡散することを考える。
図23Aの点線で囲まれた領域の第2の電極128の模式的上面図を
図23Bに示す。x方向へ光を拡散させるために
図15Aに示すタイミングチャートに従うと、二つの液晶セル120の第2の電極128うち、駆動行である第4行L
4の第2の電極群127(
図23Bにおける照射面116-1と116-2に重なる第2の電極群127)に互いに位相が異なる交流電圧V
5、V
6が印加され、第1の電極126には一定電圧を与えるまたは電圧を印加しない。これにより、照射面116-1と116-2の光がx方向に拡散される。
【0092】
しかしながら、非駆動隣接行である第5行L5の第2の電極128に接続される配線140の電圧V7とV8を一定にすると、駆動行L4と非駆動隣接行L5の間に位置する二つの配線140(ここでは、配線140-2と配線140-3)の間にも電位差が発生する。同様に、第4行L4の第2の電極128と第5行L5の第2の電極128の間にも電位差が発生する。この電位差により、第4行L4と第5行L5の間の液晶層136の液晶分子はy方向に下に凸の屈折率分布を産み出す。その結果、第4行L4と第5行L5の間の液晶層136にもレンズ効果が生まれ、その屈折率分布の方向は、第4行L4上の液晶層136のレンズ効果のそれに直交する。このため、駆動行に照射される光の一部が意図しないy方向へも拡散し、精密な配光制御が阻害される。
【0093】
そこで本実施形態では、各液晶セル120において、駆動行と非駆動隣接行の間の配線140を互いに同期させる。
図23Cに示す例では、非駆動隣接行である第5行L
5の第2の電極128に接続され、駆動行L
4と非駆動隣接行L
5の間に位置する配線140-3と、駆動行である第4列L
4の第2の電極128に接続され、駆動行L
4と非駆動隣接行L
5の間に位置する配線140-2を互いに同期させる。これにより、駆動行と非駆動隣接行の間に配置される配線140-2と配線140-3間や駆動行の第2の電極128と非駆動隣接行の第2の電極128間に電位差が存在しなくなり、駆動行と非駆動隣接行の間の液晶層136に屈折率分布が発生することを抑制することができる。ただし、非駆動隣接行L
5では光を拡散させないため、非駆動隣接行L
5の第2の電極128は全て互いに同期させる。したがって、非駆動隣接行L
5の第2の電極128に接続される他方の配線140-4も配線140-3に同期させる。その結果、非駆動隣接行において屈折率分布の発生が抑制されるとともに、配線140-2または駆動行L
4の第2の電極128と非駆動隣接行L
5の第2の電極128との間でも屈折率分布の発生が抑制されるので、意図しない光の拡散が抑制され、精密な配光が可能となる。
【0094】
他の例として、
図24Aに示すように、第4行L
4の第4列R
4と第5列L
5の第4列R
4の凹部112aの発光素子114から光を出射し、この光をy方向に拡散するケースを説明する。
図24Aの点線四角形で囲まれた領域の第1の電極126と第2の電極128の配置をそれぞれ
図25、
図26に示す。
図25と
図26では、凹部112aからの光は照射面116-2と116-5を与える。
【0095】
この場合には、
図24Bに示すように、各液晶セル120において、非駆動隣接列である第3列R
3の全ての第1の電極126を駆動列である第4列R
4において一つ置きに選択される第1の電極126と同期させる。同様に、非駆動隣接列である第5列(R
5)の全ての第1の電極126を駆動列である第4列において一つ置きに選択される第1の電極126と同期させる。具体的には、第4列R
4においては、一つ置きに選択される第1の電極126に交流電圧V
3が印加され、他の第1の電極126には、交流電圧V
3に対して位相が反転した交流電圧V
4が印加される。第3列R
3においては、交流電圧V
3と同電圧同位相の交流電圧V
1とV
2が印加される。一方、第5列においては、交流電圧V
4と同電圧同位相の交流電圧V
5とV
6が印加される。なお、x方向に光を拡散しないので、各液晶セル120では、全ての第2の電極128に対して一定電圧を印加する、あるいは電圧を与えない。これにより、第4列と第3列の間に配置される配線138間、および第4列と第5列の間に配置される配線138間に電位差が存在しないので、x方向に光を拡散する屈折率分布が発生することを抑制することができる。その結果、意図しない光の拡散が防止され、精密な配光が可能となる。
【0096】
他の例として、
図24Cに示すように、第5行L
5の第4列R
4から第6列R
6の凹部112aの発光素子114から光を出射し、この光をx方向に拡散するケースを説明する。
図24Cの点線四角形で囲まれた領域の第1の電極126と第2の電極128の配置もそれぞれ
図25、
図26に示されており、このケースでは、
図25と
図26において凹部112aからの光は照射面116-4から116-6を形成する。
【0097】
この場合には、
図24Dに示すように、各液晶セル120において、非駆動隣接列である第4行L
4の全ての第2の電極128を駆動行である第5行L
5の第2の電極128と同期させる。具体的には、第5行L
5においては、一つ置きに選択される第2の電極128に交流電圧V
9が印加され、他の第2の電極128には、交流電圧V
9に対して位相が反転した交流電圧V
10が印加される。また、第4行L
4においては、交流電圧V
9と同電圧同位相の交流電圧V
7とV
8が印加される。なお、y方向に光を拡散しないので、各液晶セル120では、全ての第1の電極126に対して一定電圧を印加する、あるいは電圧を与えない。これにより、第4行L
4と第5行L
5の間に配置される配線140の間に電位差が存在しないので、y方向に光を拡散する屈折率分布が発生することを抑制することができる。その結果、意図しない光の拡散が抑制され、精密な配光が可能となる。
【0098】
<第5実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた照明装置100の二つの変形例1、2について説明する。第1から第4実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0099】
1.変形例1
1-1.構成
第1実施形態で述べた照明装置100では、一つの列の複数の第1の電極126は、他の列(例えば隣接する列)の第1の電極126とは導通せず、他の列の第1の電極126から独立して制御される(
図6参照)。同様に、一つの行の複数の第2の電極128は、他の行(例えば隣接する行)の第2の電極128とは導通せず、他の行の第2の電極128から独立して制御される(
図7参照)。
【0100】
これに対して本変形例では、
図27に示すように、少なくとも一方の液晶セル120において、一つの列(例えば第4列R
4)において一つ置きに選択される複数の第1の電極126は、隣接する列(例えば第3列R
3)において一つ置きに選択される複数の第1の電極126と電気的に接続され、互いに導通する。この一つの列(すなわち、第4列R
4)の他の第1の電極126は、反対側に隣接する列(すなわち、第5列R
5)において一つ置きに選択される複数の第1の電極126と導通してもよい。
【0101】
さらに、あるいは、
図28に示すように、少なくとも一方の液晶セル120において、一つの行(例えば第4行L
4)において一つ置きに選択される複数の第2の電極128は、隣接する行(例えば第5行L
5)において一つ置きに選択される複数の第2の電極128と電気的に接続され、互いに導通する。この一つの列(すなわち、第4行L
4)の他の第2の電極128は、反対側に隣接する行(すなわち、図示しない第3行L
3)において一つ置きに選択される複数の第2の電極128と導通してもよい。
【0102】
このような接続を採用することで、配線138や140の数を低減することができ、液晶セル120の設計の自由度が向上する。また、隣接する行や列の間隔を低減することができるため、照明装置100の小型化が可能である。
【0103】
1-2.駆動方法
本変形例1での液晶セル120の駆動方法の一例を説明する。ここでは、
図29Aに示すように、反射板112が8行8列に配置される凹部112aを備え、第4行L
4の第4列R
4と第5列L
5の第4列R
4の凹部112aの発光素子114から光を出射し、y方向に拡散する場合を想定する。
図27は、
図29Aの点線で囲まれた領域における第1の電極126とそれに接続される配線138の配置を模式的に示しており、発光素子114は照射面116-2と116-5を形成する。y方向へ光を拡散させるため、
図14Aに示すタイミングチャートに従うと、二つの液晶セル120の第1の電極126うち、駆動列である第4列R
4の第1の電極126に互いに位相が異なる交流電圧V
2、V
3が印加され、第2の電極128には一定電圧を与えるまたは電圧を印加しない(
図29B)。これにより、照射面116-2と116-5の光をy方向に拡散させることができる。
【0104】
この時、意図しない光拡散を抑制するため、非駆動隣接列の一つである第3列R
3の全ての第1の電極126を第4列R
4において一つ置きに選択される複数の第1の電極126と同期させてもよい。同様に、他方の駆動隣接列である第5列R
5の全ての第1の電極126を第4列R
4において一つ置きに選択される他の複数の第1の電極126と同期させてもよい。この変形例1では、駆動列である第4列R
4において一つ置きに選択される複数の第1の電極126と非駆動隣接列の第3列R
4において一つ置きに選択される複数の第1の電極126は互いに導通しているので、第3列R
3の残りの第1の電極126に対して、交流電圧V
2と同電圧同位相の交流電圧V
1を印加すればよい。同様に、第4列R
4の残りの第1の電極126と非駆動隣接列の第5列R
5において一つ置きに選択される複数の第1の電極126は導通しているので、第5列R
5の残りの第1の電極126に対して、交流電圧V
3と同電圧同位相の交流電圧V
4を印加すればよい(
図29B)。このように液晶セル120を駆動すると、隣接する二つの列の第1の電極126間の屈折率分布による寄与が大きく低下する。その結果、意図しない光拡散を抑制することができる。
【0105】
他の一例として、
図29Cに示すように、反射板112が8行8列に配置される凹部112aを備え、第5行L
5の第3列R
3から第5列R
5の凹部112aの発光素子114から光を出射し、x方向に拡散する場合を想定する。
図28は、
図29Cの点線で囲まれた領域における第2の電極128とそれに接続される配線140の配置を模式的に示しており、発光素子114は照射面116-4から116-6を形成する。x方向へ光を拡散させるため、
図15Aに示すタイミングチャートに従うと、二つの液晶セル120の第2の電極128のうち、駆動行である第5行L
5の第2の電極128に互いに位相が異なる交流電圧V
6、V
7が印加され、第1の電極126には一定電圧を与えるまたは電圧を印加しない(
図29D)。これにより、照射面116-4から116-6の光がx方向に拡散される。
【0106】
この時、意図しない拡散を抑制するため、非駆動隣接行の第4行L
4の第2の電極128を第5行L
5において一つ置きに選択される複数の第2の電極128と同期させてもよい。この変形例1では、駆動列である第5行L
5において一つ置きに選択される複数の第2の電極128と非駆動隣接列の第4行L
4において一つ置きに選択される複数の第2の電極128は導通しているので、第4行L
4の残りの第2の電極128に対して、交流電圧V
6と同電圧同位相の交流電圧V
5を印加すればよい(
図29D)。このように液晶セル120を駆動すると、隣接する二つの行の第2の電極128間の屈折率分布による寄与が大きく低下する。その結果、意図しない光拡散を抑制することができる。
【0107】
2.変形例2
2-1.構成
本変形例2の照明装置100では、
図30に示すように、二つの液晶セル120の少なくとも一方において、各列において一つ置きに選択される複数の第1の電極126が配線138を介して全て互いに電気的に接続され、互いに導通する。残りの第1の電極126は、各行で独立に制御される。さらに、あるいは、
図31に示すように、二つの液晶セル120の少なくとも一方において、各行において一つ置きに選択される複数の第2の電極128が配線140を介して全て互いに電気的に接続され、互いに導通する。残りの第2の電極128は、各行で独立に制御される。このような接続を採用することで、変形例1と同様、配線138や140の数を低減することができ、液晶セル120の設計の自由度が向上する。また、隣接する行や列の間隔を低減することができるため、照明装置100の小型化が可能である。
【0108】
2-2.駆動方法
本変形例2での液晶セル120の駆動方法の一例を説明する。ここでは、
図32Aに示すように、反射板112が8行8列に配置される凹部112aを備え、第4行L
4と第5行L
5の第4列R
4の凹部112aの発光素子114から光を出射し、y方向に拡散する場合を想定する。
図30は、
図32Aの点線で囲まれた領域における第1の電極126とそれに接続される配線138の配置を模式的に示しており、発光素子114は照射面116-2と116-5を形成する。y方向へ光を拡散させるため、二つの液晶セル120の第1の電極126のうち、駆動列である第4列R
4において一つ置きに選択される複数の第1の電極126に対して一定電圧V
1を印加し、残りの第1の電極126に対して交流電圧V
3を印加する。第2の電極128には一定電圧を与えるまたは電圧を印加しない(
図32B)。これにより、照射面116-2と116-5の光がy方向に拡散される。
【0109】
この時、意図しない拡散を抑制するため、非駆動隣接列の第3列R
3と第5列R
5の第1の電極126を第4列R
4において一つ置きに選択される複数の第1の電極126と同期させてもよい。この変形例では、非駆動隣接列において一つ置きに選択される複数の第1の電極126は、駆動列である第4列R
4において一つ置きに選択され、一定電圧が印加される複数の第1の電極126と導通しているため、各非駆動隣接列における残りの第1の電極126に対し、一定電圧V
1と同電圧の一定電圧V
2またはV
4を印加すればよい(
図32B)。このように液晶セル120を駆動すると、隣接する二つの列の第1の電極126間の屈折率分布による寄与が大きく低下する。その結果、意図しない光拡散を抑制することができる。
【0110】
他の一例として、
図32Cに示すように、反射板112が8行8列に配置される凹部112aを備え、第5行L
5の第3列R
3から第5列R
5の凹部112aの発光素子114から光を出射し、x方向に拡散する場合を想定する。
図31は、
図32Cの点線で囲まれた領域における第2の電極128とそれに接続される配線140の配置を模式的に示しており、発光素子114は照射面116-4から116-6を形成する。x方向へ光を拡散させるため、二つの液晶セル120の第2の電極128うち、駆動行である第5行L
5において一つ置きに選択される複数の第2の電極128に対して一定電圧V
5を印加し、残りの第2の電極128に対して交流電圧V
7を印加する。第1の電極126には一定電圧を与えるまたは電圧を印加しない(
図32D)。これにより、照射面116-4から116-6の光がx方向に拡散される。
【0111】
この時、意図しない拡散を抑制するため、非駆動隣接行の第4行L
4の第2の電極128を第5行L
5において一つ置きに選択される複数の第2の電極128と同期させてもよい。この変形例では、非駆動隣接行において一つ置きに選択される複数の第2の電極128は、駆動列である第5行L
5において一つ置きに選択され、一定電圧が印加される複数の第2の電極128と導通しているため、非駆動隣接行における残りの第2の電極128に対し、一定電圧V
5と同電圧の一定電圧V
6を印加すればよい(
図32D)。このように液晶セル120を駆動すると、隣接する二つの行の第2の電極128間の屈折率分布による寄与が大きく低下する。その結果、意図しない光拡散を抑制することができる。
【0112】
<第6実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた照明装置100の変形例3と4について説明する。第1から第5実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0113】
1.変形例3
変形例3に係る照明装置100は、
図33Aとその鎖線C-C´に沿った端面の模式図(
図33B)に示されるように、少なくとも一方の液晶セル120において、全ての凹部112aと重なる単一の第2の電極128が設けられる点で第1実施形態で述べた照明装置100と異なる。単一の第2の電極128は、複数または全ての第1の電極群125と重なる。この場合、各液晶層136の第2の電極128側では屈折率分布を形成できないため、光の拡散は第1の電極126側だけで生じる。したがって、この変形例3では、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2の間で、第1の電極126の延伸方向が互いに直交するように照明装置100を構成することが好ましい。この変形例3を採用することで、第2の電極128のパターニングが不要となるため、製造工程が短くなり、より低コストで照明装置100を提供することができる。
【0114】
2.変形例4
変形例4に係る照明装置100は、
図34Aとその鎖線D-D´に沿った端面の模式図(
図34B)に示されるように、少なくとも一方の液晶セル120において、第2の電極128が設けられない点で第1実施形態で述べた照明装置100と異なる。この場合も各液晶層136の第2の電極128側では屈折率分布を形成できないため、光の拡散は第1の電極126側だけで生じる。したがって、この変形例3では、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2の間で、第1の電極126の延伸方向が互いに直交するように照明装置100を構成することが好ましい。この変形例4を採用することで、第2の電極128の作製工程が不要となるため、製造工程が短くなり、より低コストで照明装置100を提供することができる。また、第2の電極128による光の吸収が完全に排除されるため、照明装置100の消費電力を低減することができる。
【0115】
<第7実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた照明装置100の変形例5、6について説明する。第1から第6実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0116】
1.変形例5
変形例5の照明装置100の第1の液晶セル120-1の第1の基板122と第2の基板124の模式的平面図を
図35Aに、第2の液晶セル120-2の第1の基板122と第2の基板124の模式的平面図を
図35Bに示す。これらの図に示すように、変形例5の照明装置100では、少なくとも一つの液晶セル120において、複数の第1の電極126は、その長手方向が第1の基板122の少なくとも一つの辺から傾くように配置される。第1の電極126の長手方向と第1の基板122の一つの辺との間の角度(第1の角度)は任意に設定することができ、例えば5°以上85°以下、30°以上60°以下であり、典型的には45°である。第1の実施形態で述べた照明装置100と同様、第1の配向膜132の配向方向は、第1の電極126の長手方向に対して垂直となる(白抜き矢印参照)。
【0117】
同様に、各液晶セル120において、複数の第2の電極128は、その長手方向が第2の基板124の少なくとも一つの辺から傾くように配置される。第2の電極128の長手方向と第2の基板124の一つの辺との間の角度(第2の角度)も任意に設定することができ、例えば5°以上85°以下、30°以上60°以下であり、典型的には45°である。第1の配向膜132と同様、第2の配向膜134の配向方向は、第2の電極128の長手方向に対して垂直となる(白抜き矢印参照)。
【0118】
各液晶セル120において、第1の電極126と第2の電極128は、互いに長手方向が直交するように配置される。なお、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2の間で、第1の電極126の長手方向は互いに平行または垂直である。同様に、第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2の間で、第2の電極128の長手方向は互いに平行または垂直である。したがって、第1の基板122と第2の基板124がともに四角形である場合、xy平面において投影面積が最小となるよう、第1の角度と第2の角度をともに45°に設定することが好ましい。
【0119】
上述した配置を採用することで、各凹部112aと重なる第1の電極群125と第2の電極群127においても、複数の第1の電極126と複数の第2の電極128は、いずれも凹部112aの行方向(x方向)と列方向(y方向)から傾く。このため、凹部112aに配置される発光素子114からの光を、行方向と列方向から傾く方向に拡散することができる。例えば
図36Aに示すように、8行8列のマトリクス状に配置される凹部112aの各々に配置される発光素子114の全てを発光させた場合、液晶セル120の非駆動時にはマトリクス形状を反映した四角形の照射領域A
0が得られる。これに対し、液晶セル120を適宜駆動することによって光をx方向とy方向から傾いた方向(すなわち、第1の方向および/または第2の方向)に拡散させることができ、その結果、
図36Cから
図36Fに示すように、様々な形状の照射領域A
1を形成することが可能となる。
【0120】
また、第2実施形態で述べたローカルデミングを適用することも可能である。例えば、
図37Aに示すように、8行8列のマトリクス状に配置される凹部112aのうち対角線に沿った凹部112aから光を出力させた場合、液晶セル120の非駆動時に得られる照射領域A
0(
図36B)と比較し、x方向とy方向から傾いた方向に拡大した照射領域A
1を得ることができる(
図37C)。
【0121】
2.変形例6
変形例6の照明装置100の第1の液晶セル120-1の第1の基板122と第2の基板124の模式的平面図を
図38Aに、第2の液晶セル120-2の第1の基板122と第2の基板124の模式的平面図を
図38Bに示す。これらの図に示すように、変形例6の照明装置100では、少なくとも一つの液晶セル120において、第1の基板122が二つの領域に区分され、一方の領域(第1の領域)では、第1の電極126は、その長手方向が第1の基板122の少なくとも一つの辺と平行になるように配置され、他方の領域(第2の領域)では、変形例5のように、第1の電極126は、その長手方向が当該辺から傾くように配置される。
【0122】
同様に、第2の基板124も二つの領域に区分され、一方の領域(第3の領域)では、第2の電極128は、その長手方向が第2の基板124の少なくとも一つの辺と平行になるように配置され、他方の領域(第4の領域)では、変形例5のように、第2の電極128は、その長手方向が当該辺から傾くように配置される。
【0123】
各液晶セル120において、第1の領域と第3の領域が互いに重なり、第2の領域と第4の領域が互いに重なる。また、第1の電極126の長手方向は第2の電極128の長手方向と直交する。第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2の間において、第1の電極126の長手方向は互いに平行または垂直であり、第2の電極128の長手方向も互いに平行または垂直である。なお、配向方向は、第1の領域から第4の領域において、いずれも第1の電極126または第2の電極128の長手方向に対して垂直である(白抜き矢印参照)。
【0124】
このような配置を採用することで、照明装置の一部(すなわち、第1の領域と第3の領域が互いに重なる部分)では、凹部112aから出力される光をx方向とy方向に拡散することができ、他の部分(すなわち、第2の領域と第4の領域が互いに重なる部分)では、x方向とy方向から傾いた方向に拡散することができる。このため、より多様な形状の照射領域を形成することが可能となる。
【0125】
さらに、照明装置100では、第1実施形態で述べた構造を有する液晶セル120と変形例5または変形例6に係る一対の液晶セル120を組み合わせてもよい。隣接する液晶セル120は、互いに直接接してもよく、接着層102を介して固定されてもよい。例えば
図39には、複数の第1の電極126と複数の第2の電極128がそれぞれ第1の基板122と第2の基板124の辺と平行に延伸する第1の液晶セル120-1と第2の液晶セル120-2の上に、複数の第1の電極126と複数の第2の電極128がそれぞれ第1の基板122と第2の基板124の辺から傾く第3の液晶セル120-3と第4の液晶セル120-4が設けられた例が示されている。このような構成では、第1から第4の液晶セル120を適宜駆動することで、x方向とy方向に加え、x方向とy方向から傾いた方向(例えば、45°傾いた方向)にも光を拡散することができるため、照射領域を多様に変形することができる。
【0126】
<第8実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた照明装置100の駆動方法の変形例について述べる。第1から第7実施形態で述べた構成と同一または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0127】
一例として、3行3列のマトリクス状に配置される第1の電極群125、第2の電極群127を有する照明装置100の第1の電極126と第2の電極128の配置を
図40と
図41にそれぞれ示す。第1実施形態で述べたように、各列において、一つ置きに選択される第1の電極126と他の第1の電極126には、互いに位相の異なる交流電圧が印加される。同様に、各行において、一つ置きに選択される第2の電極128と他の第2の電極128には、互いに位相の異なる交流電圧が印加される。第1実施形態で述べた駆動方法では、
図42Aに示すタイミングチャートに従って配線138、140に交流電圧が与えられるため、隣り合う列の間に存在する二つの配線138の位相は逆であり、隣り合う行の間に存在する二つの配線140の位相も逆である。このため、隣り合う行の間に配置される配線140間、および隣り合う列の間に配置される配線138間に電位差が生じるため、隣り合う液晶セル120の間、すなわち、隣り合う凹部112aの間でも屈折率分布が発生してしまう。隣り合う凹部112aの間には照射面116は形成されないので、このような意図しない屈折率分布は配光制御に大きな影響は与えないものの、上記電位差が増大すると、照射面116に重なる液晶層136の配向にも影響を与えることがある。
【0128】
したがって、例えばより大きな横電界を発生させる場合には、隣り合う列の間に配置される二つの配線138の間に電位差を生じさせないよう、これらの配線に同電圧同位相の交流電圧を印加することが好ましい。同様に、隣り合う行の間に配置される二つの配線140の間にも電位差を生じさせないよう、これらの配線に同電圧同位相の交流電圧を印加することが好ましい。したがって、例えば
図42Bに示すタイミングチャートに従って配線138、140に交流電圧が与えることが好ましい。
【0129】
本実施形態においても、x方向とy方向への光の拡散を独立的に行うことができ、その場合には、第1実施形態で述べたように、各液晶セル120において第1の電極126と第2の電極128の電圧を適宜調節すればよい。また、第4実施形態のように、一部の凹部112aの発光素子114だけを駆動させ、一部の列の第1の電極126または一部の行の第2の電極128を駆動させる場合、非駆動隣接列において、一つ置きに選択される第1の電極126と他の第1の電極126が互いに位相が異なるよう、配線138に位相の異なる交流電圧を印加してもよい。同様に、非駆動隣接行において、一つ置きに選択される第2の電極128と他の第2の電極128が互いに位相が異なるよう、配線140に位相の異なる交流電圧を印加してもよい。
【0130】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、又は、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0131】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0132】
100:照明装置、102:接着層、110:光源、112:反射板、112a:凹部、114:発光素子、116:照射面、118:封止材、120:液晶セル、120-1:第1の液晶セル、120-2:第2の液晶セル、120-3:第3の液晶セル、120-4:第4の液晶セル、122:第1の基板、124:第2の基板、125:第1の電極群、126:第1の電極、127:第2の電極群、128:第2の電極、130:駆動回路、132:第1の配向膜、134:第2の配向膜、136:液晶層、138:配線、138-1:配線、138-2:配線、140:配線、140-1:配線、140-2:配線、150:S成分、152:S成分、154:S成分、156:P成分、158:P成分、160:P成分