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特許7493118モータコアの製造方法及びモータコアの製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-22
(45)【発行日】2024-05-30
(54)【発明の名称】モータコアの製造方法及びモータコアの製造装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/03 20060101AFI20240523BHJP
   H02K 15/12 20060101ALI20240523BHJP
【FI】
H02K15/03 Z
H02K15/12 E
H02K15/12 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024504519
(86)(22)【出願日】2023-10-25
(86)【国際出願番号】 JP2023038521
【審査請求日】2024-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2022171626
(32)【優先日】2022-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 誠
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵
(72)【発明者】
【氏名】古谷 拓実
(72)【発明者】
【氏名】木下 淳
【審査官】安池 一貴
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-026958(JP,A)
【文献】特開2005-253245(JP,A)
【文献】特開2021-087296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 15/03
H02K 15/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂充填路が形成された金型内に、樹脂充填部を含むモータコアを、前記樹脂充填路と前記樹脂充填部とが連通するように保持する工程と、
粉状の樹脂組成物を少なくとも一部に粒状の樹脂組成物を含む樹脂混練体となるように混練しつつ搬送する押出機を用いて、前記樹脂混練体を前記樹脂充填路に連通するチャンバへ向けて搬送する工程と、
前記チャンバ内に搬送された前記樹脂混練体を加熱して軟化させる工程と、
前記チャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記チャンバ内において前記樹脂混練体が軟化された軟化樹脂を前記樹脂充填部内へ充填する工程と、
前記樹脂充填部内に充填された前記軟化樹脂を硬化させる工程と、を備える、
モータコアの製造方法。
【請求項2】
前記モータコアは、ロータコアで構成され、前記樹脂充填部は、内部に永久磁石が挿入可能な、前記ロータコアの軸心方向に沿って形成された1乃至複数のスロット部で構成され、
前記ロータコアの前記スロット部内に前記永久磁石を挿入する工程をさらに備える、
請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項3】
前記押出機内を搬送される前記粉状の樹脂組成物を加熱する工程をさらに備える、
請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項4】
前記金型及び前記モータコアの少なくとも一方を予熱する工程をさらに備える、
請求項1に記載のモータコアの製造方法。
【請求項5】
樹脂充填部を含むモータコアを保持可能な金型と、
前記金型に形成されその一端部が前記樹脂充填部に連通する樹脂充填路に連通するチャンバと、
粉状の樹脂組成物を混練しつつ前記チャンバへ向けて搬送可能な押出機と、
前記チャンバ内を移動可能なプランジャと、
前記金型内及び前記チャンバの周囲に配設された加熱器と、
少なくとも前記押出機、前記プランジャ及び前記加熱器を制御して、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のモータコアの製造方法の各工程を実施可能な制御装置と、を備える、
モータコアの製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、モータコアの製造方法及びモータコアの製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転電機には、モータコア、例えばロータコアに永久磁石を取り付けたものがある。このように、モータコアに永久磁石を取り付ける場合には、モータコアに設けられたスロット内に永久磁石を挿入した後、周囲に樹脂組成物を充填し硬化させる方法が知られている(例えば特開2021-087296号公報参照)。
【0003】
特開2021-087296号公報には、モータコアの磁石収容部に樹脂材を注入する樹脂注入装置として、固形状の樹脂材が投入される可塑化シリンダと、可塑化シリンダ内に設けられたスクリューと、を含むものが記載されている。そして、可塑化シリンダ及びスクリューを加熱しつつスクリューを回転させることで、固形状の樹脂材を溶融させてモータコアの磁石収容部へ搬送するためのプランジャを含むシリンダ内へ搬送することも記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2021-087296号公報に記載された装置においては、固形状の樹脂材は可塑化シリンダ内で溶融させた後、プランジャを含むシリンダ内へ搬送されている。このように、シリンダに搬送される前に樹脂組成物(樹脂材)を流動性が高い状態まで完全に溶融させてしまうと、樹脂組成物の硬化反応が進行してしまい、シリンダからモータコアの磁石収容部まで搬送する際の樹脂組成物の流動性が低下する。
【0005】
本開示は、上述した課題に鑑み、樹脂組成物の硬化反応の進行による流動性の低下を抑制した、モータコアの製造方法及びモータコアの製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係るモータコアの製造方法は、樹脂充填路が形成された金型内に、樹脂充填部を含むモータコアを、前記樹脂充填路と前記樹脂充填部とが連通するように保持する工程と、粉状の樹脂組成物を少なくとも一部に粒状の樹脂組成物を含む樹脂混練体となるように混練しつつ搬送する押出機を用いて、前記樹脂混練体を前記樹脂充填路に連通するチャンバへ向けて搬送する工程と、前記チャンバ内に搬送された前記樹脂混練体を加熱して軟化させる工程と、前記チャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記チャンバ内において前記樹脂混練体が軟化された軟化樹脂を前記樹脂充填部内へ充填する工程と、前記樹脂充填部内に充填された前記軟化樹脂を硬化させる工程と、を含む。
【0007】
上記のようなモータコアの製造方法においては、押出機を用いてチャンバへ向けて搬送される樹脂が少なくとも一部に粒状の樹脂組成物を含む樹脂混練体であることにより、樹脂の軟化をチャンバ内で実施でき、樹脂が樹脂充填部へ充填される前に意に反して硬化してしまうことを抑制できる。
【0008】
本開示の第2の態様に係るモータコアの製造方法は、上記本開示の第1の態様に係るモータコアの製造方法において、前記モータコアは、ロータコアで構成され、前記樹脂充填部は、内部に永久磁石が挿入可能な、前記ロータコアの軸心方向に沿って形成された1乃至複数のスロット部で構成され、前記ロータコアの前記スロット部内に前記永久磁石を挿入する工程をさらに含む。
【0009】
上記のようなモータコアの製造方法においては、スロット部内に永久磁石を固定することができる。
【0010】
本開示の第3の態様に係るモータコアの製造方法は、上記本開示の第1又は第2の態様に係るモータコアの製造方法において、前記押出機内を搬送される前記粉状の樹脂組成物を加熱する工程をさらに含む。
【0011】
上記のようなモータコアの製造方法においては、押出機内の樹脂を強制的に昇温させることができ、押出機内を搬送される粉状の樹脂組成物の少なくとも一部を、安定して粒状の樹脂組成物とすることができる。
【0012】
本開示の第4の態様に係るモータコアの製造方法は、上記本開示の第1乃至第3のいずれかの態様に係るモータコアの製造方法において、前記金型及び前記モータコアの少なくとも一方を予熱する工程をさらに含む。
【0013】
上記のようなモータコアの製造方法においては、金型及びロータコアを予熱することで、樹脂充填部に充填された樹脂の硬化を短時間で行うことができるようになる。
【0014】
本開示の第5の態様に係るモータコアの製造装置は、樹脂充填部を含むモータコアを保持可能な金型と、前記金型に形成されその一端部が前記樹脂充填部に連通する樹脂充填路に連通するチャンバと、粉状の樹脂組成物を混練しつつ前記チャンバへ向けて搬送可能な押出機と、前記チャンバ内を移動可能なプランジャと、前記金型内及び前記チャンバの周囲に配設された加熱器と、少なくとも前記押出機、前記プランジャ及び前記加熱器を制御して、第1乃至第4のいずれかの態様に係るモータコアの製造方法の各工程を実施可能な制御装置と、を含む。
【0015】
上記のようなモータコアの製造装置においては、押出機を用いてチャンバへ向けて搬送される樹脂が少なくとも一部に粒状の樹脂組成物を含む樹脂混練体であることにより、樹脂の軟化をチャンバ内で実施でき、樹脂が樹脂充填部へ充填される前に意に反して硬化してしまうことを抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示のモータコアの製造方法及びモータコアの製造装置によれば、樹脂組成物の硬化反応の進行による流動性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本開示の第1の実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略説明図である。
図2図1に示すモータコアの製造装置で用いられる樹脂の温度と粘度の関係の一例を示したグラフである。
図3図1に示すモータコアの製造装置で実施される製造プロセスの一例を示したフローチャートである。
図4A図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
図4B図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
図5A図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
図5B図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
図6A図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
図6B図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。
図7】ロータコア及び永久磁石を計測している状態の一例を示した概略説明図である。
図8A図1に示す押出機の一変形例を示した概略拡大図である。
図8B図1に示す押出機の一変形例を示した概略拡大図である。
図9】本開示の第2の実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略平面図である。
図10図9のA-A線で切断した概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この出願は、日本国で2022年10月26日に出願された特願2022-171626号に基づいており、その内容は本出願の内容としてその一部を形成する。
また、本開示は以下の詳細な説明によりさらに完全に理解できるであろう。本願のさらなる応用範囲は、以下の詳細な説明により明らかとなろう。しかしながら、詳細な説明及び特定の実例は、本開示の望ましい実施の形態であり、説明の目的のためにのみ記載されているものである。この詳細な説明から、種々の変更、改変が、本開示の精神と範囲内で、当業者にとって明らかであるからである。
出願人は、記載された実施の形態のいずれをも公衆に献上する意図はなく、開示された改変、代替案のうち、特許請求の範囲内に文言上含まれないかもしれないものも、均等論下での発明の一部とする。
【0019】
以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。また、図中の互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。さらに、一の図面中に互いに同一又は相当する部材が複数個含まれている場合には、図を見易くするために、そのうちのいくつかにのみ符号を付している場合がある。
【0020】
(第1の実施の形態)
<モータコアの製造装置>
図1は、本開示の第1の実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略説明図である。本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、モータコア、例えばインナーロータ型のロータコア2に形成されたスロット部4に永久磁石3を取り付けるための装置であってよい。そして、この永久磁石3の取り付けを樹脂モールドによって実現するものであってよい。なお、本実施の形態においては、モータコアとしてロータコア2を例示し、モータコアが有する樹脂充填部の一例としてロータコア2のスロット部4(より厳密には充填空間6)を例示しているが、本開示はこれに限定されない。具体的には、当該モータコアの製造装置1を、例えばモータコアとしてのステータコアのコイルが巻き回された部分等を樹脂モールドするため、またはかしめのない積層コアの軸方向に設けられた貫通孔等に樹脂を充填して積層コアを一体に固定するために利用することもできる。また、以下の説明においては、その理解を容易にするために、図1中に示したX方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を高さ方向(あるいは上下方向)として説明を行うことがある。
【0021】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置1で用いられる樹脂Pは、熱硬化性の樹脂組成物で構成することができる。より詳しくは、この樹脂Pは、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂あるいはシアネート樹脂といった熱硬化性樹脂を主に含むものであってよい。また、この樹脂Pには、熱硬化性の樹脂組成物に加えて、硬化剤や充填剤等が添加されていてよい。なお、以下の説明においては、その形態に合わせて種々の樹脂(具体的には、粉状の樹脂組成物P1、樹脂混練体P2、軟化樹脂P3及び硬化樹脂P4)が説示されているが、上記「樹脂P」はこれらの樹脂の総称として用いるものとする。
【0022】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置1は、図1に示すように、少なくとも、ロータコア2を保持可能な金型20と、金型20に形成された樹脂充填路25に連通するチャンバ30と、チャンバ30内を移動可能なプランジャ35と、金型20及びチャンバ30の周囲に配設された加熱器40と、樹脂Pをチャンバ30へ向けて搬送可能な押出機50と、上述した構成要素、具体的には少なくともプランジャ35、加熱器40及び押出機50を制御可能な制御装置60と、を含むものである。また、上述した各構成要素は、製造装置本体10内に収容され、あるいは製造装置本体10の適所に取り付けられ得る。
【0023】
製造装置本体10は、基台11と、基台11の表面に複数本(例えば4本)立設された支柱12と、この支柱12の先端部分に支持された天板13とを含むものであってよい。天板13は、その下側の面に後述する金型20の上型21が固定されていてよく、図示しないアクチュエータを用いて、支柱12及びこの上型21と共に上下方向に昇降可能であってよい。
【0024】
金型20は、ロータコア2を保持するための部材である。具体的には、この金型20は、ロータコア2の上部、詳しくはその上面に当接して支持する上型21と、ロータコア2の下部、詳しくは下面に当接して支持する下型22とを含むものとすることができる。このうち、下型22は、下型本体23と、下型本体23上に設けられてロータコア2が載置されるステージ24とを含んでいてよい。ロータコア2は、ロボットアーム(図示省略)等により、このステージ24上に載置され、あるいはステージ24上から任意の位置へ搬送され得る。
【0025】
ステージ24の内部には、ステージ24上に載置されたロータコア2の適所に樹脂Pを供給するための樹脂充填路25が設けられていてよい。樹脂充填路25の経路構造は、ステージ24上に載置されるロータコア2の構造に合わせて変更するとよい。これに関連して、ステージ24は、異なる樹脂充填路25の構造を有するものを予め複数個準備しておき、金型20内に保持されるロータコア2の寸法やスロット部4の位置等に合わせて適宜変更して使用するとよい。また、下型22は、樹脂充填路25のクリーニング等を行うために、ステージ24を昇降させるリフタ26をさらに含んでいてよい。なお、本実施の形態では下型22に樹脂充填路25を設け、下側から樹脂Pを充填する態様を例示しているが、これに限定されるものではない。例えば、上型21に樹脂充填路を設け、上方から樹脂Pを充填する態様としてもよい。
【0026】
また、上型21は、上述した通り天板13と共に上下方向に移動可能であってよい。そして、この上型21がステージ24上にロータコア2が載置された際に下降し、所定の押圧力でロータコア2の上面を押圧することで、ロータコア2を上型21と下型22の間に挟むように保持することができる。上型21及びステージ24のロータコア2に当接する面は、後述する樹脂Pの充填時に樹脂Pがロータコア2外に漏れ出すことがないよう、換言すれば、ロータコア2を挟んだ際にその接触面が密閉状態となるよう、その形状や素材等が調整されているとよい。また、本実施の形態においては、上述の通り上型21を天板13と共に上下に移動させる構造を採用しているが、上型21と下型22の上下方向位置を相対的に変更可能な構造であれば、他の構造を採用することができる。具体的には、例えば上型21を上下方向に移動させることに代えて、下型22を上下方向に移動させる、あるいは上型21と下型22の両方を上下方向に移動させる構造を採用してもよい。
【0027】
本実施の形態においては、ロータコア2のスロット部4として、上下方向に開口し且つ前後及び左右方向に実質的に隙間を有しない直方体形状のものを例示している。そのため、上型21及び下型22は、略平坦な当接面を有するものを採用しているが、上型21及び下型22の当接面の形状は保持するロータコア2の形状に合わせて適宜変更することができる。例えば、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1をインナーロータ型のステータコアの樹脂モールドに用いる場合には、上型21及び下型22として、ステータコアの中央に形成される空間に挿入される突起を含むものを採用するとよい。
【0028】
上述した金型20に保持されるロータコア2は、例えば薄い電磁鋼板が複数枚積層されて構成された略円筒状の磁性体で構成することができる。ロータコア2の軸心部分には、モータとして組み立てられた際に回転軸を構成するシャフトが挿入される貫通穴5が設けられていてよい。また、この貫通穴5を包囲するように、ロータコア2の軸心方向に沿って延びる1乃至複数のスロット部4が設けられていてよい。このスロット部4は、例えば直方体状に形成することができるが、後述する永久磁石3が挿入可能な形状であればその具体的形状は特に限定されない。また、スロット部4の数も同様に特に限定されないが、例えば10~40個程度とすることができる。
【0029】
ロータコア2のスロット部4は、その内部に永久磁石3が挿入され固定されるものであ
ってよい。永久磁石3は、例えばスロット部4よりも僅かに小さな直方体で構成することができる。また、この永久磁石3は、スロット部4に挿入される時点で着磁されているか否かを問わない。スロット部4に永久磁石3を挿入すると、永久磁石3の外周面とスロット部4の内周面との間に、少なくとも部分的にギャップが形成される。このギャップが、樹脂充填部の一例としての充填空間6として機能し得る。この複数の充填空間6は、ロータコア2がステージ24上に載置されたとき、それぞれの一部が樹脂充填路25の端部に連通し得るものである。
【0030】
チャンバ30は、充填空間6に充填される所定量の樹脂Pが投入される空間を形成しているものとすることができる。このチャンバ30は、基台11上に設けられた支持台31の内部に、上下方向に延在するように形成されていてよい。そして、チャンバ30の上端部は、支持台31上に配設されたステージ24を含む下型22に形成されている樹脂充填路25に連通していてよい。
【0031】
プランジャ35は、チャンバ30内に搬送された樹脂Pを樹脂充填路25に向けて搬送するための部材であってよい。本実施の形態に係るプランジャ35は、チャンバ30の下面を形成しているものであってよく、図示しないアクチュエータに接続されてチャンバ30内を上下方向に移動自在となっているものであってよい。
【0032】
加熱器40は、周知のヒータ等で構成され、製造装置1の適所を加熱するものであってよい。本実施の形態に係る加熱器40は、金型20内、具体的には上型21及び下型本体23内に配設された金型ヒータ41と、チャンバ30の外周囲に近接するように支持台31内に配設されたチャンバヒータ42とを含むことができる。金型ヒータ41及びチャンバヒータ42としては、周知のヒータ、例えば赤外線ヒータやシーズヒータを採用することができる。
【0033】
押出機(「エクストルーダ」と呼ばれることもある)50は、所定量の樹脂Pをチャンバ30に向けて混練しつつ搬送することが可能なものであってよい。この押出機50は、その内部を樹脂Pが搬送される押出搬送路としてのバレル51と、バレル51の内部に配設されてバレル51内に供給された樹脂P、具体的には原材料としての粉状の樹脂組成物P1を混練しつつ搬送するスクリュー52と、を少なくとも含んでいてよい。本実施の形態においては、図1に示すように、押出機50が左右方向に延在しているものを例示しているが、この延在方向は上記のものに限定されず、例えばチャンバ30から斜め上方に延在していても、(例えば後述する図9及び図10に示すもののように)チャンバ30と並ぶように上下方向に延在していてもよい。押出機50とチャンバ30が並んで配設されている場合には、押出機50とチャンバ30との間に樹脂Pを搬送するためのスペースを確保しておくと良い。
【0034】
バレル51は、一方向、例えば左右方向に延在した樹脂Pの搬送路を構成するものであってよい。バレル51の一端部には樹脂Pの原材料としての粉状の樹脂組成物P1が供給される供給口53が形成され、他端部にはチャンバ30に連結した搬出口54が形成されていてよい。供給口53には、樹脂供給路57が連結され、この樹脂供給路57を介して樹脂供給源58と接続していてよい。また、搬出口54には、例えばスライド式あるいは回転式のシャッター56が設けられていてよい。なお、本実施の形態では、供給口53に樹脂供給源58から延びる樹脂供給路57が直接連結したものを例示しているが、供給口53部分の構造はこれに限定されない。例えば、供給口53に上方に開口する漏斗を設け、この漏斗に向けて任意の量の粉状の樹脂組成物P1が投入されることでバレル51内に粉状の樹脂組成物P1が供給されるようにしてもよい。
【0035】
供給口53からバレル51内に供給される粉状の樹脂組成物P1とは、比較的小さな粒子(当該粒子には、比較的大きな樹脂ブロックを粉砕・破砕して得られる小片のような粒子をも含む)で形成された樹脂組成物を指すものとする。
【0036】
スクリュー52は、その一端に接続されたモータ59によって回転される、外周面に螺旋状のフィンが形成された長尺の部材で構成することができる。このスクリュー52は、供給口53から供給された粉状の樹脂組成物P1を、混練しつつ搬出口54に向かって搬送するよう、バレル51内にその延在方向に沿って配設されていてよい。また、スクリュー52に対して粉状の樹脂組成物P1を連続的に供給すれば、搬送中の樹脂Pを加圧することもできる。したがって、バレル51内を搬送される粉状の樹脂組成物P1は、その搬送の過程でスクリュー52によって混練され且つ加圧されて、樹脂混練体P2となり得る。ここで、樹脂混練体P2とは、粉状の樹脂組成物P1を構成する粒子の一部の表面が、押出機50による搬送の過程で僅かに溶解することで隣接する粒子同士が溶着し、元の粒子よりも大きな塊状となった樹脂組成物(以下、このような樹脂組成物を「粒状の樹脂組成物」という)に少なくとも部分的に変化した樹脂Pを指すものとする。
【0037】
スクリュー52に接続されたモータ59は、その回転数によって樹脂Pの搬送量を調整することができる。これに関連して、本実施の形態における押出機50からチャンバ30へ向けて搬送される樹脂混練体P2の量は、モータ59の回転数やシャッター56の開閉動作を制御することにより、精度よく調整することが可能である。
【0038】
押出機50は、バレル51内を搬送される粉状の樹脂組成物P1あるいは樹脂混練体P2の温度、あるいはバレル51内の室温を検出可能な図示しない温度センサをさらに含んでいてもよい。この温度センサの検出結果を考慮することで、バレル51内を搬送される樹脂Pの温度が制御可能となる。なお、本実施の形態に係る押出機50は、スクリュー52が2本のエクストルーダを例示しているが、スクリュー52の本数は1本でも3本以上であってもよい。
【0039】
バレル51の搬出口54と、スクリュー52の先端(自由端)との間には、スクリュー52のない所定の大きさの待機スペース51Aが形成されていてよい。この待機スペース51Aは、スクリュー52の回転により混練・搬送された樹脂混練体P2を一時的に貯留するためのスペースであってよい。また、待機スペース51Aに貯留される樹脂混練体P2の形状を安定させるために、スクリュー52の回転によって搬送された樹脂混練体P2を待機スペース51Aの下流に配設されたシャッター56に押し付けることができる。シャッター56に順次押し付けられた樹脂混練体P2は、バレル51の内径形状に沿った形状に圧縮され成形され得る。待機スペース51Aまで搬送された、圧縮され成形された樹脂混練体P2は、任意の押出手段、例えばスクリュー52自体を搬送方向へ移動させることで、任意の量をチャンバ30へ搬入され得る。樹脂混練体P2の供給量は、図示しない切断手段(例えばカッター)、あるいはシャッター56を開閉動作させることにより、任意の量の樹脂混練体P2を切断して分離させることで調整することができる。なお、本実施の形態においては、樹脂混練体P2をシャッター56に押し付けることで成形するものを例示しているが、これに限定されない。具体的には、上記成形を省略することもできるし、上記成形に代えて、搬出口54とチャンバ30との間に図示しない成形装置を設け、当該成形装置を用いて樹脂混練体P2を所望の形状に圧縮成形するようにしてもよい。シャッター56に押し付けることによる成形を行わない場合には、シャッター56は省略、あるいは樹脂混練体P2を切断する切断手段として機能させるとよい。
【0040】
また、バレル51の適所には、バレル51内を搬送される樹脂Pを予熱することが可能なバレルヒータ55が配設されていると好ましい。このバレルヒータ55は、金型ヒータ41等と同様に赤外線ヒータといった周知のヒータで構成することができ、例えばバレル51の実質的に全周を包囲するように配設することができる。このバレルヒータ55を採用することにより、バレル51内を搬送される樹脂Pを所望の温度まで加熱することができる。
【0041】
制御装置60は、上述した各構成要素に電気的に接続されてその動作を制御することで、任意の製造工程を実現することが可能な装置であってよい。この制御装置60は、例えば図1中に点線で示すように、各構成要素に有線又は無線通信を介して通信可能に接続されていてよい。この制御装置60は、シーケンサ(Programmable Logic Controller、PLC)や周知のコンピュータを用いて実現することができる。また、制御装置60は、上述したコンピュータ等のうちの1つのみから又は複数を組み合わせて構成され得る。
【0042】
この制御装置60は、上述した各構成要素を動作させることにより、後述する本実施の形態に係るモータコアの製造方法を実現することができる。これに関連して、本実施の形態に係るモータコアの製造方法は、制御装置60を構成するコンピュータに、所定の動作を実行させるための指令を含むソフトウェア等のプログラムの形態で、このプログラムが格納された非一時的な記録媒体の形態で、あるいはネットワーク等を介して提供されるアプリケーションプログラムの形態で、提供され得るものである。本実施の形態に係るモータコアの製造方法の詳細については後述する。
【0043】
上述した製造装置1では、バレル51の搬出口54をチャンバ30に直接連結すると共に、この搬出口54に隣接して待機スペース51Aを設けた構造のものを例示したが、本開示のものはこれに限定されない。例えば、バレル51の搬出口54とチャンバ30との間に図示しない搬送機構を設け、当該搬送機構を動作させることで樹脂混練体P2をチャンバ30内に搬入するようにしてもよい。同様に、バレル51の搬出口54とシャッター56あるいはチャンバ30との間に、樹脂混練体P2から空気を抜くための機構を付加的に設けてもよい。当該機構は、例えば樹脂混練体P2を圧縮したり、減圧室を設けたりすることで樹脂混練体P2から空気を抜くものであってよい。
【0044】
押出機50から直接あるいは間接的にチャンバ30内に搬入される樹脂Pが、事前に成型された(例えばタブレット状の)ものではなく、粉状の樹脂組成物P1を混錬して生成された樹脂混練体P2であることは、特に留意すべき事項である。本実施の形態のものは、チャンバ30に投入(あるいは搬入)される樹脂Pが予め成型された既製品のタブレット状のものではないため、チャンバ30に投入される樹脂Pの量をモータ59の回転数制御やシャッター56の開閉動作等によって自在に調整することが可能となる。
【0045】
ここで、押出機50を用いて特定の量の樹脂Pをチャンバ30に搬入しようとする場合、チャンバ30に搬入する前に樹脂Pを高温で加熱して流動性の高い状態としてしまうと、充填空間6に充填される前に樹脂Pの硬化反応が進んでしまう可能性がある。このような望まない硬化反応の進行は、樹脂Pのチャンバ30への供給量のバラツキの要因となったり、押出機50内の清掃の頻度を高めたり、あるいは、硬化反応が進行した樹脂Pがスクリュー52同士の間に引っ掛かる等してスクリュー52の回転動作を停止させたりと、種々の問題発生の要因となり得る。加えて、望まない硬化反応の進行によって硬化してしまった樹脂は、充填経路、例えば樹脂充填路25を部分的に塞ぐ可能性があり、結果として、充填空間6への樹脂Pの充填性を低下させ得る。したがって、充填空間6への樹脂Pの充填を安定して行うためには、上述した望まない硬化反応の進行を抑制することが重要であるといえる。本実施の形態のものは、上述した点を考慮して、押出機50内を搬送する際の樹脂Pの温度を制御することで、樹脂Pの硬化反応が意に反して進むことを抑制しようとするものである。
【0046】
図2は、図1に示すモータコアの製造装置で用いられる樹脂の温度(℃)と粘度(Pa・s)の関係の一例を示したグラフである。上述した本実施の形態に係るモータコアの製造装置1及び後述するモータコアの製造方法で用いられる樹脂Pには、上述した通り熱硬化性樹脂を用いることができる。ここで、熱硬化性樹脂からなる樹脂の温度-粘度特性の一例を、図2を参照して説明すると、先ず、常温下では粉状の樹脂を加熱して所定の温度(図2中の溶解開始温度T1)まで昇温すると、粉状の樹脂の一部、例えば粒子表面の溶解(「融解」あるいは「溶融」ともいう)が始まり、表面の一部が溶解した粉状の樹脂の粒子は、隣接する他の粉状の樹脂の粒子と溶着した粒状の樹脂組成物と粉状の樹脂組成物とが混在した状態に変化する。さらに加熱が進行して所定の温度(図2中の溶解完了温度T2)に到達すると、元の粉状の樹脂全体が溶融し、粒子状であった樹脂は互いに溶着して大きな1つの塊の形態となる。樹脂Pが溶融した後、さらに加熱を進めると、樹脂Pの粘度が低下してその流動性が高くなり、軟化した状態となる。そして、軟化状態からさらに加熱すると、硬化反応が起きて硬化状態となる。
【0047】
上述した熱硬化樹脂の状態変化を考慮して、本実施の形態に係るモータコアの製造装置1及びモータコアの製造方法では、押出機50内を搬送される樹脂Pを軟化させることなく部分的に溶融する程度の状態を維持することで、上述した硬化反応の望まない進行を抑制しようとするものである。具体的には、押出機50内を混錬され搬送される樹脂Pの温度を、溶解完了温度T2よりも低く維持することで、チャンバ30に搬入される前の樹脂Pを軟化させないようにするものである。
【0048】
上記の点を踏まえて、以下には本実施の形態に係るモータコアの製造方法について説明する。以下の、モータコアの製造方法の説明に際しては、上述したモータコアの製造装置1を用いて、ロータコア2を製造する場合を例示的に説明する。
【0049】
<モータコアの製造方法>
図3は、図1に示すモータコアの製造装置で実施される製造プロセスの一例を示したフローチャートである。また、図4乃至図6は、図1に示すモータコアの製造装置の動作状態の一例を示した動作説明図である。さらに、図7は、ロータコア及び永久磁石を計測している状態の一例を示した概略説明図である。以下には、主に図3乃至図6を参照して本実施の形態に係るモータコアの製造方法の説明を行う。なお、図4乃至図6は、図を見やすくするために、各動作に関連のあるものを中心に符号を付し、動作に関連の低い部材の符号は省略されている場合がある。
【0050】
本実施の形態に係るモータコアの製造方法においては、事前の準備として、ロータコア2の充填空間6への樹脂Pの充填量を計測しておいてもよい。この充填量の計測に際しては、例えば図7に示すように、ロータコア2のスロット部4の体積とスロット部4に挿入される永久磁石3の体積とを計測手段、例えばカメラC1、C2を用いて測定し、その差分を算出することで計測することができる。計測された樹脂充填量は、制御装置60に送られ、チャンバ30への樹脂Pの投入量の制御に利用され得る。なお、スロット部4及び永久磁石3の体積を測定する手段は、上述したカメラC1、C2に限定されず、カメラC1、C2以外の非接触式の計測手段や接触式の計測手段(例えばノギス等)を適宜利用することができる。また、本実施の形態においては、スロット部4に挿入される永久磁石3が予め特定されている場合を例示したが、これに代えて、カメラC2で計測したスロット部4の大きさにあわせて適切な大きさの永久磁石3を選択してもよい。この場合は、スロット部4と永久磁石3間のクリアランス(すなわち充填空間6)を各スロット部4で略同等にすることができ、各スロット部4に充填される樹脂量を均一にすることができる。
【0051】
また、スロット部4の体積と永久磁石3の体積とをカメラC1、C2を用いて計測することで、チャンバ30に投入される樹脂Pの充填量を決定するものを例示したが、当該充填量は他の方法によって決定されてもよい。具体的には、例えば量産開始前に試作工程を実行し、当該試作工程での樹脂の充填量や余剰樹脂の量等から充填量を決定してもよい。あるいは、量産中に実際の樹脂充填量や余剰樹脂等を量産に支障のない頻度で確認し、充填量をフィードバック制御することで好適な充填量を維持するようにしてもよい。また、上述した種々の充填量の決定手法は、単独であるいは組み合わせて実行することができる。
【0052】
上述した事前の準備が完了した後、本実施の形態に係るモータコアの製造方法は、先ず、永久磁石3とこの永久磁石3を取り付けるロータコア2を準備し、ロータコア2のスロット部4内に永久磁石3を挿入する(工程S1)。そして、金型20及びロータコア2の予熱を行う(工程S2)。金型20の予熱は、例えば図示しない公知の加熱手段を用いて行うことができる。ロータコア2の予熱は、ステージ24上に載置される前に金型20とは別個に行われてもよいが、ステージ24上に載置された状態で金型ヒータ41を動作させることにより、金型20の予熱と同時に行われてもよい。金型20とロータコア2を同時に予熱する際は、工程S2の前に後述する工程S3を実施するとよい。金型20及びロータコア2の予熱温度は100~180℃程度とすることができる。なお、当該予熱は金型20及びロータコア2のいずれか一方のみに対して行ってもよい。また、金型20と共にチャンバ30の予熱も行っておくとよい。チャンバ30の予熱はチャンバヒータ42を動作させることで実現できる。さらには、工程S1と工程S2の順序を変更することもできる。この場合は、ロータコア2と金型20の予熱の後にロータコアのスロット部4内に(別途予熱された、あるいは予熱されていない)永久磁石3を挿入することとなる。
【0053】
金型20及びロータコア2の予熱が完了すると、図4Bに示すように、ステージ24上にロータコア2を載置し、上型21を下方向に移動させて金型20内にロータコア2を保持する(工程S3)。このとき、上型21は所定の圧力でロータコア2の上面を押圧するように調整されており、それによって上型21とロータコア2の上面、及び下型22とロータコア2の下面をそれぞれ密着させることができる。
【0054】
次に、押出機50を用いて粉状の樹脂組成物P1の混練及び搬送を行う(工程S4)。当該工程は、図4Bに示すように、先ず、樹脂供給源58からバレル51の供給口53へ粉状の樹脂組成物P1を(例えば継続的に)供給する。次いで、モータ59を駆動してスクリュー52を回転させ、供給口53へ供給された粉状の樹脂組成物P1を混練しつつ搬出口54へ搬送する。このとき、モータ59の駆動に合わせてバレルヒータ55を動作させれば、バレル51内の樹脂Pを加熱することができる。
【0055】
供給口53へ供給された粉状の樹脂組成物P1は、上述したスクリュー52の回転によって生じるせん断熱やバレルヒータ55からの熱により、バレル51内を搬送されるにつれてその温度が上昇する。ここで、バレル51内を搬送される樹脂Pの温度は、供給口53へ供給された粉状の樹脂組成物P1の全ての溶解が完了する溶解完了温度T2よりも低く調整されることは、特に留意すべき事項である。具体的には、バレル51内を搬送される樹脂Pの温度が、溶解完了温度T2よりも低い範囲で且つ溶解開始温度T1を含む温度範囲(例えば、図2中で第1の温度範囲A1として示された温度範囲)内に調整されるとよい。その温度が第1の温度範囲A1内に調整された状態でバレル51内を搬送された粉状の樹脂組成物P1は、粉状の樹脂組成物P1を構成する粒子の一部の表面が僅かに溶解することで隣接する粒子同士が溶着し、元の粒子よりも大きな塊状となった粒状の樹脂組成物に少なくとも部分的に変化しつつ、待機スペース51Aまで搬送される。
【0056】
待機スペース51Aに到達した少なくとも一部に粒状の樹脂組成物を含む樹脂混練体P2は、その少なくとも一部が粉状から粒状へその形状が変化しているものの、樹脂全体の溶解は完了していないため、粉状の形態の樹脂を含み得る。また、樹脂混練体P2の粘度は、原材料として供給された粉状の樹脂組成物P1に比して高くなっているものを含む。そして、この樹脂混練体P2は、後述する軟化樹脂P3に比べてその流動性は低く、温度も低い状態に維持されている。
【0057】
所定量の樹脂混練体P2が待機スペース51Aに搬送されると、図5Aに示すように、シャッター56が開放され、待機スペース51Aに一時的に貯留された樹脂混練体P2を、例えばスクリュー52自体を搬送方向へ動作させることでチャンバ30へ搬入する(工程S5)。チャンバ30内へ搬入される樹脂混練体P2の量は、充填空間6の体積等を考慮して予め設定しておき、搬出口54に配設された図示しない切断手段又はシャッター56の開閉動作によって樹脂混練体P2を切断し分離することでその搬入量が調整され得る。当該樹脂混練体P2の搬入については、他の具体例を後述する。
【0058】
チャンバ30内に樹脂混練体P2が搬入されると、次にシャッター56を閉塞し、チャンバヒータ42を動作させて樹脂混練体P2を加熱し軟化させる(工程S6)。チャンバヒータ42は、例えばチャンバ30内の樹脂混練体P2をその粘度が低下する温度範囲(例えば、図2中で第2の温度範囲A2として示された温度範囲)まで加熱するよう制御され得る。当該加熱により、樹脂混練体P2は溶解が完了すると共にその粘度が低下し、流動性の高い樹脂(以下、「軟化樹脂」という)P3に変化する。このように、本実施の形態に係るモータコアの製造方法においては、樹脂Pの溶解の完了と軟化の実施をチャンバ30に搬入された後のタイミングまで遅らせることで、樹脂Pの望まない硬化反応の進行を抑制している。
【0059】
樹脂混練体P2が軟化樹脂P3に変化すると、次に、図5Bに示すように、プランジャ35を上昇させて軟化樹脂P3を押し上げることで、充填空間6への樹脂Pの充填を行う(工程S7)。プランジャ35に押し上げられた軟化樹脂P3は、チャンバ30から樹脂充填路25を通過し、充填空間6に流入する。なお、工程S7における充填空間6への軟化樹脂P3の充填を円滑に実行するために、例えば上型21の適所に充填空間6内の空気を抜くための空気穴(図示省略)を設けてもよい。
【0060】
充填空間6への軟化樹脂P3の充填が完了すると、金型ヒータ41を動作させて充填空間6内の軟化樹脂P3を加熱・硬化させる(工程S8)。軟化樹脂P3を硬化する際は、金型ヒータ41により軟化樹脂P3の温度をその粘度が大きく上昇する温度範囲(例えば図2中で第3の温度範囲A3として示された温度範囲)で数分程度加熱するとよい。軟化樹脂P3が当該加熱によって硬化樹脂P4に変化することで、永久磁石3はロータコア2のスロット部4内に樹脂モールドで固定される。なお、この工程S8における加熱時間は、樹脂Pの具体的な組成等に合わせて適宜調整され得る。
【0061】
上述した一連の樹脂モールドのプロセスが完了すると、図6Aに示すように、上型21を上昇させ、樹脂モールドされたロータコア2をロボットアーム等の図示しない搬送手段を用いて搬出する(工程S9)。搬出されたロータコア2は、例えばシャフトの取り付け等のために別の装置へ移送され得る。そして、このロータコア2の搬出が完了すると、製造装置1のクリーニングを行う(工程S10)。製造装置1のクリーニングは、ブラシ等のクリーニング用の部材を含む図示しないクリーニングユニットによって実施されるものであってよい。
【0062】
上述したクリーニングに際し、ステージ24の樹脂充填路25をクリーニングする場合は、以下の通り動作させればよい。すなわち、先ずリフタ26を動作させてステージ24を下型本体23から分離することで、樹脂充填路25を閉塞している硬化樹脂P4を樹脂充填路25から取り除く。そして、この硬化樹脂P4を、プランジャ35をさらに上昇させることで下型本体23からも分離させる(図6B参照)。そして、分離された硬化樹脂P4を図示しないロボットアーム等で把持して除去し、ステージ24及び下型本体23の表面や、樹脂充填路25内をブラシ等で清掃する。一連のクリーニングが完了すると、図4Aに示す状態に戻って次のロータコア2の搬入まで待機状態とする。
【0063】
なお、上述した一連の工程の順序は、その機能を維持し得る範囲において変更する、あるいは並行して実行することができる。例えば、押出機50による粉状の樹脂組成物P1あるいは樹脂混練体P2の搬送は、任意のタイミング、例えばロータコア2への永久磁石3の挿入工程や金型20及びロータコア2の予熱工程と並行して開始することができる。また、金型20の予熱、ロータコア2の予熱、あるいはバレルヒータ55を用いた樹脂Pの予熱は、適宜省略することができる。
【0064】
また、上述した第1乃至第3の温度範囲A1~A3は、樹脂Pの材料やそれに関連して特定される溶解開始温度T1及び溶解完了温度T2を考慮して適宜設定され得る。
【0065】
以上説明した通り、本実施の形態に係るモータコアの製造方法及び当該方法を実施可能なモータコアの製造装置1によれば、チャンバ30に投入する前に樹脂Pの温度が高くなりすぎることを抑制したことで、充填空間6へ充填される前の樹脂の、望まない硬化反応の進行を抑制することができる。
【0066】
上述した本実施の形態に係るモータコアの製造装置1及びモータコアの製造方法における、チャンバ30に投入される樹脂Pの量の調整方法の具体例について以下に説明する。
【0067】
図8は、図1に示す押出機の一変形例を示したものであって、図8Aは樹脂充填量が多い場合における押出機の先端部分を拡大して示した概略拡大図であり、図8Bは樹脂充填量が少ない場合における押出機の先端部分を拡大して示した概略拡大図である。本開示のモータコアの製造装置において、チャンバ30に投入される樹脂Pは、図8に示した構成を含む押出機50Aを用いて調整されてよい。本変形例に係る押出機50Aは、図8に示すように、スクリュー52Aが、図示しないスライド機構によって樹脂Pの搬送方向に沿って移動可能となっていてよい。なお、図8A及び図8Bに示す押出機50Aは、その構成を簡略化するために、スクリュー52Aを1本のみ含むものが例示されている。
【0068】
上述したスライド機構を含む押出機50Aを用いた樹脂Pの充填量の調整は、スクリュー52Aの位置を調整することで実施することができる。具体的には、例えば樹脂充填量が比較的多い場合には、図8Aに示すように、先ず、スクリュー52Aをスライド移動させて、スクリュー52Aの先端と搬出口54との間に形成される待機スペース51Aのサイズを、所望の樹脂充填量に合わせて調整する。次に、スクリュー52Aを回転させて樹脂Pを混練しつつ搬送することで、待機スペース51A内に樹脂Pを搬入する。このとき、樹脂Pを連続的に待機スペース51Aに搬入することで、樹脂Pはシャッター56とスクリュー52Aとの間で圧縮され、待機スペース51A内は樹脂Pで満たされ得る。
【0069】
スクリュー52Aの回転によって待機スペース51Aへの樹脂Pの搬入及び圧縮が完了すると、シャッター56を開き、スライド機構を動作させてスクリュー52Aを樹脂Pと共に搬送方向に移動させる。そして、スクリュー52Aの先端が搬送方向における搬出口54と同一の位置に到達すると、スライド機構を停止させ、図8Aに示す切断線CLに沿って樹脂Pを切断する。分離された樹脂Pは、チャンバ30内に投入することができる。
【0070】
また、樹脂充填量が比較的少ない場合には、図8Bに示すように、スライド機構を動作させ、スクリュー52Aの先端を図8Aの場合に比してより搬送方向下流側まで移動させることで、待機スペース51Aを比較的小さく調整する。この調整動作の後は上述した樹脂充填量が多い場合の動作と同様の動作を実行すれば比較的少ない量の樹脂Pをチャンバ30へ投入することができる。
【0071】
以上の調整方法によれば、スクリュー52Aをスライド移動させて待機スペース51Aのサイズを調整することで、チャンバ30内に投入する樹脂Pの量を調整することができる。なお、樹脂充填量の調整方法は、上述した変形例以外にも想定できる。例えば、上述した変形例では、チャンバ30内に投入したい樹脂の量に合わせて待機スペース51Aのサイズを調整しているが、これに代えて、搬出口54から樹脂物Pを搬出する際の、スライド機構によるスクリュー52Aの移動量を調整することによって、チャンバ30内に投入したい樹脂の量の調整を実施することもできる。
【0072】
具体的には、チャンバ30内に投入する樹脂の量が多い場合には、シャッター56を空けてスクリュー52Aと共に樹脂Pを搬出する際、スクリュー52Aの先端を搬送方向における搬出口54と同一の位置まで移動させる。一方、チャンバ30内に投入する樹脂の量が少ない場合には、スクリュー52Aの先端が搬送方向における搬出口54の位置よりも上流の所定位置まで移動させる。このように、樹脂Pを搬出する際のスクリュー52のスライド移動量に基づいて、チャンバ30内に投入する樹脂Pの量を調整してもよい。
【0073】
あるいは、図示は省略するが、待機スペース内に搬入される樹脂をスクリューの回転力を利用して圧縮することで、チャンバ内に投入する樹脂Pの量を実質的に調整することもできる。すなわち、チャンバ内に投入する樹脂の量が多い場合には、スクリューを回転させて待機スペース内に樹脂を搬出する量を相対的に増やすことで、待機スペース内に搬入された樹脂をスクリューの回転力を利用して圧縮させて高密度の樹脂とし、チャンバ内に投入する樹脂の量が少ない場合には、スクリューを回転させて待機スペース内に樹脂を搬出する量を相対的に減らすことで、待機スペース内に搬入された樹脂へのスクリューの回転力を利用した圧縮作用を小さくして、低密度の樹脂とするものであってよい。なお、この場合は、スクリューに作用する反力を計測することで、待機スペース内の樹脂の密度を推定することができる。
【0074】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態に係るモータコアの製造装置1では、押出機50が左右方向に延在しているものを例示したが、押出機50の延在方向はこれに限定されない。そこで以下には、本開示の第2の実施の形態として、上下方向に延在する押出機150を含むモータコアの製造装置100について簡単に説明する。
【0075】
図9は、本開示の第2の実施の形態に係るモータコアの製造装置の一例を示した概略平面図である。また、図10は、図9のA-A線で切断した概略断面図である。本実施の形態に係るモータコアの製造装置100は、図9及び図10に示すように、主に、ロータコアを保持可能な金型120と、金型120に形成されその一端部がロータコア2のスロット部4に連通する樹脂充填路125に連通するチャンバ130と、チャンバ130内の樹脂Pを樹脂充填路125に向けて搬送するプランジャ135と、金型120内又は金型120内とチャンバ130の周囲に配設された加熱器(図示省略)と、樹脂Pをチャンバ130に投入するために、樹脂Pを混練しつつ搬送する押出機150と、を含むものであってよい。なお、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100の各種構成のうち、第1の実施の形態に係るモータコアの製造装置1と同様のものについては、第1の実施の形態において説明した内容を流用するものとし、以下にはその説明を省略する。
【0076】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置100のチャンバ130は、図9に示すように、ターンテーブル131に複数個、例えば周方向に等間隔に4個形成されていてよい。ターンテーブル131は、所定の肉厚を有する円盤状の部材で構成することができ、その中心部が回転支柱132に回転自在に支持されることにより、任意のタイミングで回転させることが可能なものとすることができる。
【0077】
このターンテーブル131上には複数の作業エリアE1~E4が設けられていてよい。具体的には、チャンバ130に樹脂Pを投入すると共に下型122上にロータコア2を設置するための第1の作業エリアE1と、ロータコア2のスロット部4内に樹脂Pを注入して硬化させる第2の作業エリアE2と、樹脂Pの注入及び硬化が完了した後のロータコア2を搬出し、下型122等のクリーニングを行う第3の作業エリアE3と、下型122及びチャンバ130の温度調整等を行う第4の作業エリアE4と、が設けられていてよい。なお、各作業エリアにおける作業内容や作業エリアの数については上述のものに限定されず、適宜変更することができる。
【0078】
金型120は、ロータコア2を保持するための部材であって、複数個のチャンバ130の上部にそれぞれ配設された下型122と、後述する装置本体110の天板113に取り付けられた上型121とを含んでいてよい。下型122には、チャンバ130とスロット部4とをつなぐ樹脂充填路125が形成されていてよい。
【0079】
プランジャ135は、チャンバ130内を上下方向に移動可能なものであって、複数個のチャンバ130のそれぞれに設置されていてよい。プランジャ135を上下方向に動作させることが可能なアクチュエータ(図示省略)は、第2の作業エリアE2の下部に配設されていればよい。この場合、チャンバ130毎に設置されたプランジャ135の動作は、前述した一のアクチュエータによって実現できる。
【0080】
加熱器は、第1の実施の形態において説明した第1の加熱器40と同様のものであってよい。例えば、加熱器は天板113やターンテーブル131に設置されていてよい。
【0081】
押出機150は、上下方向に延在する部材で構成することができる。この押出機150は、その内部を樹脂Pが搬送されるバレル151と、バレル151の内部に配設されバレル151内に供給された樹脂P(具体的には粉状の樹脂組成物P1)を混練しつつ下方向へ搬送するスクリュー152と、を含むものであってよい。
【0082】
バレル151は、上下方向に延在する筒状の部材で構成することができ、樹脂Pの搬送路を構成することができるものであってよい。バレル151の上方の端部には粉状の樹脂組成物P1が供給される供給口153が形成され、他端部には搬出口154が形成されていてよい。供給口153には樹脂供給路157が連結していてよい。また、搬出口154には、例えば搬出口154を開閉すると共に樹脂Pを切断するカッターとしても機能するシャッター156が設けられていてよい。また、図示は省略するが、バレル151の内部には樹脂Pを予熱するためのバレルヒータが配設されていてもよい。
【0083】
スクリュー152は、モータ159によって回転される、外周面に螺旋状のフィンが形成された長尺の部材であってよい。このスクリュー152は、バレル151内にその延在方向に沿って配設される。また、本実施の形態に係るスクリュー152は、バレル151内に1本のみ配置され、且つ、図8A及び図8Bで説明したもののように、図示しないスライド機構によってスクリュー152自体が上下方向にスライド移動可能なものであってよい。
【0084】
押出機150の搬出口154の下方には、押出機150から搬送された樹脂Pを第1の作業エリアE1のチャンバ130内に移送するための移送機構190が設けられていてよい。移送機構190は、長尺なブロック体で構成された移送機構本体191と、移送機構本体191の中間部を回転自在に支持する回転支柱192と、移送機構本体191の長手方向の両端部付近に形成され移送機構本体191を上下方向に貫通する収容部193と、収容部193の下端部を開閉自在に閉塞する底蓋194と、を含んでいてよい。
【0085】
上述した構成を含む移送機構190は、一方の収容部193を押出機150の搬出口154の下方に位置決めした状態で待機させることで、押出機150から搬出された樹脂Pを収容部193内に受け取ることができる。なお、収容部193内に一時的に収容される樹脂Pは、押出機150内でシャッター156に押し付けられて加圧された後、シャッター156の開閉動作によって所定のサイズに切断されることでブロック状に仮成形された、少なくとも一部に粒状の樹脂組成物を含む樹脂混練体P2であってよい。
【0086】
一方の収容部193に樹脂混練体P2が収容されると、移送機構本体191を回転させ、当該樹脂混練体P2が収容された収容部193を第1の作業エリアE1のチャンバ130上に移動させる。そして、底蓋194を開くことで、樹脂混練体P2をチャンバ130内に投入することができる。ここで、前述した樹脂混練体P2をチャンバ130内に投入する際、図9に示すように、他方の収容部193は押出機150の搬出口154の下方に位置決めされるとよい。このような構成とすると、押出機150からの樹脂混練体P2の搬出動作を連続的に実行することができる。
【0087】
また、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100は、第2の作業エリアE2に対応する位置に、上型121を上下方向に移動させることが可能な装置本体110が設けられていてもよい。装置本体110は、上下方向に延びる支柱112と、支柱112の上端部から水平方向に延びる支持板114と、支持板114に上下動可能に取り付けられた天板113と、天板113を上下方向に移動させるためのモータ115とを含んでいてよい。
【0088】
さらに、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100は、第1の作業エリアE1及び第3の作業エリアE3の近傍に、ロータコア2を搬入及び搬出するためのロボットアーム181、182がそれぞれ設けられていてよい。さらにまた、第3の作業エリアE3には、ロボットアーム182によりロータコア2が搬出された後の下型122等を清掃するクリーニングユニット170が設けられていてもよい。
【0089】
また、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100は、上述した一連の構成要素を制御するための制御装置160を含んでいてよい。この制御装置160は上述した制御装置60と同様に、周知のコンピュータで構成することができる。
【0090】
本実施の形態に係るモータコアの製造装置100を用いてモータコアを製造する場合には、樹脂Pの移送及びロータコア2の作業エリア間の移動を追加で実行する点を除き、第1の実施の形態において述べたモータコアの製造方法と同様のプロセスで実行することができる。したがって、ここでは詳細な説明は省略する。
【0091】
以上説明した通り、本実施の形態に係るモータコアの製造装置100によっても、押出機150から搬出される樹脂Pが、少なくとも一部に粒状の樹脂組成物を含む樹脂混練体P2となるように調整されている。そのため、チャンバ30に投入する前に樹脂Pの温度が高くなりすぎることが抑制され、充填空間6へ充填される前の樹脂の、望まない硬化反応の進行を抑制することができる。
【0092】
なお、上述した本実施の形態では、チャンバ130を回転する円盤状のターンテーブル131に複数個設けたものを例示したが、ターンテーブル131に代えて直線状の搬送路を採用してもよい。また、本実施の形態では、1つの押出機150に対してターンテーブル131と移送機構190とを1つずつ設けたものを例示したが、ターンテーブル131と移送機構190とを並べて2つ配置し、1つの押出機150から搬出される樹脂混練体P2を複数の移送機構190で順次移送するような構成とすれば、さらに効率よくモータコアの製造が可能となる。
【0093】
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。また、本開示において、各構成要素は、矛盾が生じない限りは1つのみ存在しても2つ以上存在してもよい。
【0094】
本明細書中で引用する刊行物、特許出願及び特許を含むすべての文献を、各文献を個々に具体的に示し、参照して組み込むのと、また、その内容のすべてをここで述べるのと同じ限度で、ここで参照して組み込む。
【0095】
本開示の説明に関連して(特に以下の請求項に関連して)用いられる名詞及び同様な指示語の使用は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、単数及び複数の両方に及ぶものと解釈される。語句「備える」、「有する」、「含む」及び「包含する」は、特に断りのない限り、オープンエンドターム(すなわち「~を含むが限らない」という意味)として解釈される。本明細書中の数値範囲の具陳は、本明細書中で特に指摘しない限り、単にその範囲内に該当する各値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことだけを意図しており、各値は、本明細書中で個々に列挙されたかのように、明細書に組み込まれる。本明細書中で説明されるすべての方法は、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、あらゆる適切な順番で行うことができる。本明細書中で使用するあらゆる例又は例示的な言い回し(例えば「など」)は、特に主張しない限り、単に本開示をよりよく説明することだけを意図し、本開示の範囲に対する制限を設けるものではない。明細書中のいかなる言い回しも、請求項に記載されていない要素を、本開示の実施に不可欠であるものとして示すものとは解釈されないものとする。
【0096】
本明細書中では、本開示を実施するため本発明者が知っている最良の形態を含め、本開示の好ましい実施の形態について説明している。当業者にとっては、上記説明を読めば、これらの好ましい実施の形態の変形が明らかとなろう。本発明者は、熟練者が適宜このような変形を適用することを期待しており、本明細書中で具体的に説明される以外の方法で本開示が実施されることを予定している。したがって本開示は、準拠法で許されているように、本明細書に添付された請求項に記載の内容の修正及び均等物をすべて含む。さらに、本明細書中で特に指摘したり、明らかに文脈と矛盾したりしない限り、すべての変形における上記要素のいずれの組合せも本開示に包含される。
【要約】
本開示のモータコアの製造方法は、樹脂充填路が形成された金型内に、樹脂充填部を含むモータコアを、前記樹脂充填路と前記樹脂充填部とが連通するように保持する工程と、粉状の樹脂組成物を少なくとも一部に粒状の樹脂組成物を含む樹脂混練体となるように混練しつつ搬送する押出機を用いて、前記樹脂混練体を前記樹脂充填路に連通するチャンバへ向けて搬送する工程と、前記チャンバ内に搬送された前記樹脂混練体を加熱して軟化させる工程と、前記チャンバ内を移動可能なプランジャを動作させて、前記チャンバ内において前記樹脂混練体が軟化された軟化樹脂を前記樹脂充填部内へ充填する工程と、前記樹脂充填部内に充填された前記軟化樹脂を硬化させる工程と、を含む。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10