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特許7493194鳥類の雌雄判別方法、鳥類、生産方法、および卵の集団
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】鳥類の雌雄判別方法、鳥類、生産方法、および卵の集団
(51)【国際特許分類】
   A01K 67/00 20060101AFI20240524BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A01K67/00 Z
C12N15/12 ZNA
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2024003097
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2023078539の分割
【原出願日】2023-05-11
【審査請求日】2024-01-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】317012880
【氏名又は名称】株式会社セツロテック
(74)【代理人】
【識別番号】110003557
【氏名又は名称】弁理士法人レクシード・テック
(72)【発明者】
【氏名】陳 奕臣
(72)【発明者】
【氏名】竹本 龍也
(72)【発明者】
【氏名】下北 英輔
【審査官】牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-023307(JP,A)
【文献】特表2020-521494(JP,A)
【文献】国際公開第2022/224244(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/013759(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0288856(US,A1)
【文献】GUNNARSSON Ulrika et al.,Mutations in SLC45A2 Cause Plumage Color Variation in Chicken and Japanese Quail,Genetics,2007年02月,Vol.175,p.867-877
【文献】LIU Xiao-fang et al.,Repression of Slc24a5 can reduce pigmentation in chicken,Frontiers in Bioscience ,2011年01月01日,E3,p.158-165
【文献】大竹剛ら,会津地鶏の五色羽装とSLC45A2遺伝子上の変異との関係,日本家禽学会誌,2011年,Vol.48,J58-J62
【文献】大竹剛ら,会津地鶏の羽色に関与する遺伝子の探索,日本畜産学会大会講演要旨,2009年09月28日,111th,47頁、IV28-10
【文献】村山美穂,鳥類の羽毛色を制御する遺伝子,動物遺伝育種研究,2007年,Vol.35, No.1,p.77-82
【文献】伊藤直弥ら,天然記念物「黒柏鶏」の遺伝的特徴を活用した地鶏「長州黒かしわ」のDNA識別手法の確立,平成28年度 食肉に関する助成研究調査成果報告書,2016年,Vol.35,第135~142頁
【文献】合田之久ら,羽毛鑑別鶏の作出に関する研究,東京都畜産試験場研究報告,1999年,第26号,第21~27頁
【文献】SMITH Craig A. et al.,The avian Z-linked gene DMRT1 is required for male sex determination in the chicken,NATURE,2009年09月10日,Vol.461,p.267-271
【文献】GRIFFITHS Richard et al.,A DNA test to sex most birds,Molecular Ecology,1998年,Vol.7,p.1071-1075
【文献】黒岩麻里,ニワトリの性決定遺伝子の同定,科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書,2012年05月22日,第1~4頁
【文献】OKUNO Miki et al.,Expression profiling of sexually dimorphic genes in the Japanese quail, Coturnix japonica,natureresearch scientific reports,2020年,Vol.10, No.20073,p.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K
C12N 15/00- 15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鳥類の卵の集団について、前記卵の集団内の各卵の鳥類の目の色に基づいて、前記鳥類の雌雄を判別する工程を含み、
前記卵内の鳥類がオスの鳥類である場合、前記オスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子と野生型の目の色素発現遺伝子とをヘテロで含み、
前記卵内の鳥類がメスの鳥類である場合、前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子を含み、
前記目の色素発現遺伝子は、SLC45A2遺伝子であり、
前記鳥類の卵の集団は、オス親の鳥類とメス親の鳥類とを交配することにより得られた卵の集団であり、
前記オス親の鳥類は、前記目の色素発現遺伝子について、機能喪失しており、かつ前記機能喪失された色素発現遺伝子をホモで含み、
前記メス親の鳥類は、前記目の色素発現遺伝子について、野生型の目の色素発現遺伝子を含む、鳥類の雌雄判別方法。
【請求項2】
前記判別に先立って、オス親の鳥類とメス親の鳥類とを交配し、前記卵の集団を調製する工程を含み、
前記オス親の鳥類は、前記目の色素発現遺伝子について、機能喪失しており、かつ前記機能喪失された色素発現遺伝子をホモで含み、
前記メス親の鳥類は、前記目の色素発現遺伝子について、野生型の目の色素発現遺伝子を含む、請求項1に記載の判別方法。
【請求項3】
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、請求項1または2に記載の判別方法。
【請求項4】
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、少なくとも一部の塩基が欠失された変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、請求項3に記載の判別方法。
【請求項5】
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、フレームシフト変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、請求項1または2に記載の判別方法。
【請求項6】
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、スプライス変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、請求項1または2に記載の判別方法。
【請求項7】
能喪失されたSLC45A2遺伝子は、野生型のSLC45A2遺伝子の第2エキソンに変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、請求項1または2に記載の判別方法。
【請求項8】
機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、野生型のSLC45A2遺伝子の第2エキソンにおける配列番号3の塩基配列を欠失している、請求項に記載の判別方法。
【請求項9】
前記SLC45A2遺伝子は、下記(S)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、請求項1または2に記載の判別方法:
(S)下記(S1)~(S7)のいずれかのポリヌクレオチド:
(S1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(S2)前記(S1)の塩基配列において、1~163個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S3)前記(S1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S4)前記(S1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S6)配列番号2のアミノ酸配列において、1~54個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
前記鳥類は、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト、ホロホロチョウ、キジ、カモ、およびエミューからなる群から選択される、請求項1または2に記載の判別方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鳥類の雌雄判別方法、鳥類、生産方法、および卵の集団に関する。
【背景技術】
【0002】
商業的使用のために、ニワトリの孵化後、前記ニワトリの雌雄の判別が行われている。前記判別後、卵を産むメスのニワトリは採卵養鶏所へ納品される一方で、卵を産まないオスのニワトリは殺処分等される。このため、オスのニワトリの殺処分が世界的に問題となっている(非特許文献1)。
【0003】
また、欧州において、前記ニワトリの殺処分は、神経系が発達する産卵後7日目までに行うことが求められている。産卵後7日目までに雌雄を判別する技術の開発が模索されているが、バイオマーカーを使用しない技術や侵襲を伴わない技術はまだ確立されていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】General Secretariat of the Council, “EU-wide end to the systematic killing of male chicks- Information from the French and German delegations on behalf of the Austrian, Belgian, Cyprus, Finnish, French, German, Irish, Luxembourg and Portuguese delegations”, [online], 12 October 2022, the Council ("Agriculture and Fisheries"), [2023年5月11日検索]、インターネット<URL:https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-13317-2022-INIT/x/pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本開示は、鳥類の雌雄を判別可能な方法を提供すること等を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本開示の鳥類の雌雄判別方法は、鳥類の卵の集団について、前記卵の集団内の各卵の鳥類の目の色に基づいて、前記鳥類の雌雄を判別する工程を含み、
前記卵内の鳥類がオスの鳥類である場合、前記オスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子と野生型の目の色素発現遺伝子とをヘテロで含み、
前記卵内の鳥類がメスの鳥類である場合、前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子を含む。
【0007】
本開示の鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失している。
【0008】
本開示の鳥類の生産方法は、オスの鳥類と、メスの鳥類とを交配する工程を含み、
前記オスの鳥類は、前記本開示の鳥類であり、
前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、野生型の目の色素発現遺伝子を含む鳥類である。
【0009】
本開示の鳥類の卵の集団は、鳥類の卵の集団であって、
前記卵内の鳥類がオスの鳥類である場合、前記オスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子と野生型の目の色素発現遺伝子とをヘテロで含み、
前記卵内の鳥類がメスの鳥類である場合、前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子を含む。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、鳥類の雌雄を判別できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例1における、得られたクローンのSLC45A2遺伝子の標的領域における遺伝子型を示す図である。
図2図2は、実施例1における、孵卵7日目のニワトリの目の色を示す写真である。
図3図3は、実施例1における、孵卵10日目のニワトリの目の色を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<定義>
本明細書において、「鳥類」は、脊椎動物門の鳥網に分類される動物を意味する。
【0013】
本明細書において、「機能喪失」は、例えば、対象遺伝子の本来有する機能が低下または失われた状態を意味する。前記「機能喪失」は、例えば、不活性化(inactivated)ということもできる。
【0014】
本明細書において、「機能喪失変異」(loss of function mutation)は、対象遺伝子の本来有する機能が(有意に)減弱する変異、および/または、完全な機能喪失が生じる変異を意味する。前記「完全な機能喪失が生じる変異」は、例えば、ヌル変異(null mutation)またはアモルフ(amorph)ということもできる。
【0015】
本明細書において、「鳥類」は、鳥類の個体を意味する。
【0016】
本明細書において、「鳥類の部分」は、鳥類個体の一部または部分を意味する。
【0017】
本明細書において、「目の色素発現遺伝子」は、目の色素の発現を制御する遺伝子を意味する。前記目の色素発現遺伝子は、目以外の組織の色素発現を制御してもよい。
【0018】
本明細書において、「性染色体」は、雌雄分化がある生物において雌雄によって異なる形または数を示す染色体を意味する。前記鳥類における性染色体は、Z染色体および/またはW染色体を意味する。
【0019】
本明細書において、「集団」は、2以上のものが1塊としてあつまったものを意味する。
【0020】
本明細書に記載のタンパク質またはそれをコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)の配列情報は、Protein Data Bank、UniProt、EnsemblまたはGenBank等から入手可能である。また、RNAの核酸配列は、適宜配列変換ソフト等を用い、対応するDNAの核酸配列からも入手可能である。
【0021】
以下、本開示について例をあげて説明するが、本開示は以下の例等に限定されるものではなく、任意に変更して実施できる。また、本開示における各説明は、特に言及がない限り、互いに援用可能である。なお、本明細書において、「~」という表現を用いた場合、その前後の数値または物理値を含む意味で用いる。また、本明細書において、「Aおよび/またはB」という表現には、「Aのみ」、「Bのみ」、「AおよびBの双方」が含まれる。
【0022】
<鳥類>
ある態様において、本開示は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失している鳥類を提供する。本開示の鳥類は、目の色素発現遺伝子について、機能喪失している。
【0023】
本発明者らは、鋭意研究の結果、性染色体の目の色素発現遺伝子を利用することにより、鳥類の雌雄で目の色を変えることが可能ではないかとの着想を得た。そして、本発明者らは、前記鳥類の性染色体であるZ染色体上の目の色素発現遺伝子を用いることで、鳥類の雌雄で目の色を変化させることができ、これに基づいて雌雄判別が可能であること見出し、本発明を確立するに至った。具体的には、前記目の色素発現遺伝子をホモで有し、前記目の色素発現遺伝子について機能喪失しているオスの鳥類と、前記Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、野生型の目の色素発現遺伝子を有するメスの鳥類とを交配して取得した後代鳥類について、前記後代鳥類の目の色に基づいて、前記後代鳥類の雌雄を判別できることがわかった。一般的に、鳥類の雌雄判別は、鳥類の肛門鑑別や羽毛鑑別等により実施されており、これらの方法は、孵化後でなければ行うことはできない。他方、本開示によれば、鳥類の孵化前に鳥類の雌雄を判別することも可能であり、鳥類の神経系が発達するまで、例えば、産卵日を基準(孵卵0日)として、孵卵7日以内に、雌雄を判別することができると期待される。
【0024】
前記鳥類は、例えば、キジ科、カモ科、ダチョウ科、ハト科、ホロホロチョウ科、およびヒクイドリ科等の鳥類があげられる。前記キジ科の鳥類は、例えば、ニワトリ(Gallus gallus domesticus)、ウズラ(Coturnix japonica)、シチメンチョウ(Meleagris gallopavo)、およびキジ(Phasianus versicolor)等があげられる。前記カモ科の鳥類は、例えば、アヒル(Anas platyrhynchos var.domesticus)、カモ(Anas)、およびガチョウ(Anser anser domesticus)等があげられる。前記ダチョウ科の鳥類は、例えば、ダチョウ(Struthio camelus)等があげられる。前記ハト科の鳥類は、例えば、ハト(Columbidae)等があげられる。前記ホロホロ鳥科の鳥類は、例えば、ホロホロ鳥(Numida meleagris)等があげられる。前記ヒクイドリ科の鳥類は、例えば、エミュー(Dromaius novaehollandiae)等があげられる。前記ニワトリの品種は、例えば、White Leghorn、Brown Leghorn、Barred Rock、Sussex、New Hampshire、Rhode Island、Ausstralorp、Minorca、Amrox、California Gray、Italian Partidge coloredおよびKorean Oge等があげられる。
【0025】
本開示において、前記鳥類は、固定種でもよいし、交雑種でもよい。前記交雑種は、例えば、属間交雑または種間交雑に由来する雑種があげられる。
【0026】
本開示において、前記鳥類は、例えば、畜産用の鳥類または家禽であることが好ましい。
【0027】
本開示において、前記目の色素発現遺伝子は、目の色素の発現を制御可能な遺伝子であれば、特に制限されない。前記発現制御は、例えば、対象の遺伝子もしくは前記遺伝子がコードするタンパク質の発現もしくは機能の誘導、促進、もしくは増強、目的の遺伝子、または、前記対象の遺伝子もしくは前記遺伝子がコードするタンパク質の発現もしくは機能の抑制、低下、もしくは停止等があげられる。
【0028】
本開示において、前記Z染色体上の目の色素発現遺伝子(以下、「目の色素発現遺伝子」ともいう。)は、例えば、SLC45A2(Solute carrier family 45 member 2)遺伝子等があげられる。前記SLC45A2遺伝子は、例えば、前記目の色素の発現を誘導、促進、または増強できる機能を有する。前記目の色素は、例えば、ユーメラニン(eumelanin)および/またはフェオメラニン(Pheomelanin)である。
【0029】
前記SLC45A2は、一般的に、プロトン関連のグルコース・スクロース輸送体タンパク質(Proton-associated glucose and sucrose transporter)として知られている。前記SLC45A2遺伝子は、グルコース・スクロース輸送によってメラノソーム内の浸透圧を保ち、かつ、メラノソーム内のpHを保つことで、不活型チロシナーゼと銅イオンとの結合による活性型チロシナーゼへの変換を促進していると推定される。本開示において、ニワトリのSLC45A2遺伝子は、例えば、mRNAとして、Genbankにおいてアクセッション番号:NM_001083364.3で登録されている塩基配列からなるポリヌクレオチド、タンパク質として、アクセッション番号:NP_001076833.3で登録されているアミノ酸配列からなるポリペプチド等があげられる。
【0030】
具体例として、ニワトリのSLC45A2遺伝子(野生型のSLC45A2遺伝子)は、例えば、下記(S)のポリヌクレオチド、またはこれらをコードするゲノム領域が例示できる。なお、下記配列番号1の塩基配列は、終止コドンを含む塩基配列である。
【0031】
(S)下記(S1)~(S7)のいずれかのポリヌクレオチド:
(S1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(S2)前記(S1)の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S3)前記(S1)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S4)前記(S1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S6)配列番号2のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0032】
ニワトリのSLC45A2遺伝子の塩基配列(配列番号1)
5’-ATGACCCTAACGGAACAGCACTTCCAGGAGTCTCCTCCACCCCCTTCTGAGGTGGCCAAGGCAGACATGGACAGCACAGGAGGGAAGGAGAAGGCTGCGCAGCCCTCCACGGCAAGGACTGGAGCGCTGGTGCGCAAGCAGCAAGCAACGGGAAGGCTGATCATGCACAGCATGGCGATGTTCGGGAGGGAGTTCTGCTATGCTGTGGAGGCTGCCTTTGTCACGCCAGTGCTGCTCAGTGTAGGGCTGCCCAAGAGCCTGTACAGCCTGGTGTGGCTCATCAGCCCCATCCTGGGCTTCGTGCTGCAGCCCGTGGTAGGTTCTGCCAGTGATCACTGCGCCTGTAGCTGGGGCAGGAGGCGACCTTACATTCTGGGTCTGGGCATCATAATGCTGGTAGGAATGGCTTTGTACCTCAATGGGGACGAGATGATCTCAGCTTTCATCGGTGAGAGAGAGAAGCAACGGACATGGGCAATAGTCATTACCATGCTGGGAGTAGTGCTTTTTGATTTTGCAGCTGACTTTATTGATGGCCCCATCAAAGCATATTTATTTGACGTCTGCTCTCATGAAGATAAAGAGAAGGGTCTGCATTATCATGCCCTGTTTACAGGCTTAGGAGGAGCACTGGGCTACCTGACAGGTGCTGTGGACTGGGGTGAAACTGTACTAGGATATTCCTTGACGTCAGAATTCCAGGTGATTTTCCTCTTGTCAGCCTTGGTTTTCCTCATCTGCCTTATTGTACATCTACGCAGTATTCCTGAAGTCCCACTCAGATATGGCAACAAAGAGACAAAGCTCTTGTTGGAAGTGACCGAGCCCTATAAGTACAGATCCATAGAGGAAATCAAGAATGGATACTCGTCATGTACTGACTTAAATGCTACGAGTAAGACAAAGAAAGGTACTGATGCATCGTGTTCAGAGGCTCAAAGGCGGATGACACTTAAGTCACTCTTGAAGACTCTTTTAAGCATGCCATCCCATTATCGCTGTCTGTGTGTGAGCCACCTCTTTGGATGGATGGCTTTCATGTCCAACATGCTCTTCTTCACGGATTTCATGGGGCAGGTTGTGTACCAGGGCAGTCCTTATGCTTCTCATAACTCCACACTATACCATACCTACAGAAGAGGAGTGGAGGTTGGATGCTGGGGGCTGTGCATCAATGCGATTGCATCCTCAGCCTATTCTTACCTGCAGAAAGTCCTTCTGCCATACATAGGATTAAAGGGACTTTATTTCATTGGATACCTACTTTTTGGATTAGGCACTGGGTTGATTGGCTTGTTTCCCAATGTCTATTCCACCTTGGTTCTATGTTCGCTTTTTGGAGTCATGTCCAGCACTCTGTACACAGTGCCTTTCCAACTCATTGCAGAGTATCACAAAGAAGAAGAGGACCTGAATCTGCAGCAGAAGGAACAAGGCACAGAGCATGGGAGAGGAAAGGGCATTGACTGTGCTGCTCTCACCTGCATGGTCCAGCTGGCACAGATCATTCTCGGTGTGGGCCTAGGGCTCTTGGTCAGTGTTGCTGGCAGTGCGGTCACTGTGATTTCAGCATCAATGGTGGCACTGATTGGCTGCTGCTTTGTTGCTTTCTGTGTTCGATATGTGGGGTAA-3’
【0033】
前記(S1)において、配列番号1の塩基配列は、前記(S5)のアミノ酸配列(配列番号2)をコードする塩基配列である。前記配列番号1の塩基配列は、例えば、ニワトリ(Gallus gallus domesticus)から得ることができる。
【0034】
前記(S2)において、「1もしくは数個」は、例えば、前記(S2)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、目の色素の発現機能を有する範囲であればよい。前記目の色素の発現機能は、例えば、前記目の色素の発現を誘導、促進、または増強できる機能を意味する(以下、同様。)前記(S2)の「1もしくは数個」は、前記(S1)の塩基配列において、例えば、1~326個、1~244個、1~163個、1~81個、1~65個、1~48個、1~32個、1~16個、1~8個、1~5個、1~3個、1または2個、1個である。本開示において、塩基数またはアミノ酸数等の個数の数値範囲は、例えば、その範囲に属する正の整数を全て開示するものである。つまり、例えば、「1~5個」との記載は、「1、2、3、4、5個」の全ての開示を意味する(以下、同様)。
【0035】
前記(S3)において、「同一性」は、例えば、前記(S3)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、目の色素の発現機能を有する範囲であればよい。前記(S3)の同一性は、前記(S1)の塩基配列に対して、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。前記「同一性」は、2つの塩基配列またはアミノ酸配列をアライメントすることによって求めることができる(以下、同様)。前記アライメントは、例えば、BLAST、FASTA等を用いてデフォルトのパラメータで算出できる。
【0036】
前記(S4)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、前記(S4)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、目の色素の発現機能を有する範囲であればよい。前記(S4)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(S1)のポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記ハイブリダイゼーションアッセイは、特に制限されず、例えば、ザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載されている方法を採用することもできる。
【0037】
前記(S4)において、「ストリンジェントな条件」は、例えば、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件、高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。ストリンジェンシーの程度は、当業者であれば、例えば、温度、塩濃度、プローブの濃度および長さ、イオン強度、時間等の条件を適宜選択することで、設定可能である。「ストリンジェントな条件」は、例えば、前述したザンブルーク(Sambrook)ら編「モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリーマニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd Ed.)」〔Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989)〕等に記載の条件を採用することもできる。
【0038】
前記(S5)のポリヌクレオチドは、例えば、前記(S5)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、目の色素の発現機能を有する塩基配列であればよい。前記(S5)のポリヌクレオチドの塩基配列は、例えば、配列番号2のアミノ酸配列に基づいて、対応するコドンに置き換えることで設計可能である。
【0039】
ニワトリのSLC45A2タンパク質のアミノ酸配列(配列番号2)
MTLTEQHFQESPPPPSEVAKADMDSTGGKEKAAQPSTARTGALVRKQQATGRLIMHSMAMFGREFCYAVEAAFVTPVLLSVGLPKSLYSLVWLISPILGFVLQPVVGSASDHCACSWGRRRPYILGLGIIMLVGMALYLNGDEMISAFIGEREKQRTWAIVITMLGVVLFDFAADFIDGPIKAYLFDVCSHEDKEKGLHYHALFTGLGGALGYLTGAVDWGETVLGYSLTSEFQVIFLLSALVFLICLIVHLRSIPEVPLRYGNKETKLLLEVTEPYKYRSIEEIKNGYSSCTDLNATSKTKKGTDASCSEAQRRMTLKSLLKTLLSMPSHYRCLCVSHLFGWMAFMSNMLFFTDFMGQVVYQGSPYASHNSTLYHTYRRGVEVGCWGLCINAIASSAYSYLQKVLLPYIGLKGLYFIGYLLFGLGTGLIGLFPNVYSTLVLCSLFGVMSSTLYTVPFQLIAEYHKEEEDLNLQQKEQGTEHGRGKGIDCAALTCMVQLAQIILGVGLGLLVSVAGSAVTVISASMVALIGCCFVAFCVRYVG
【0040】
前記(S6)において、アミノ酸配列に関する「1もしくは数個」は、例えば、前記(S6)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、目の色素の発現機能を有する範囲であればよい。前記(S6)の「1もしくは数個」は、例えば、前記配列番号2のアミノ酸配列において、例えば、1~108個、1~81個、1~54個、1~27個、1~21個、1~16個、1~10個、1~5個、1~3個、1または2個、1個である。
【0041】
前記(S7)において、アミノ酸配列に関する「同一性」は、例えば、前記(S7)のポリヌクレオチドによってコードされるタンパク質が、目の色素の発現機能を有する範囲であればよい。前記(S7)の同一性は、前記配列番号2のアミノ酸配列に対して、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0042】
本開示において、「目の色素の発現機能」は、例えば、対象の鳥類(被検鳥類)の目の色素を直接的または間接的に確認することにより評価できる。前記直接的な確認は、例えば、前記被検鳥類の目の色素の発現を目視または光学的手法で評価することにより実施できる。また、前記間接的な確認は、例えば、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子または目の色素発現タンパク質の発現に基づき、評価できる。前記被検鳥類の生体試料は、特に制限されず、例えば、前記被検鳥類の鳥類個体および前記鳥類個体の部分のいずれでもよく、好ましくは、鳥類の目、羽毛等である。前記被検鳥類の生体試料が羽毛である場合、前記被検鳥類は、野生型において羽毛に色素を発現している系統の鳥類であることが好ましい。使用する生体試料の種類は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0043】
前記被検鳥類の目の色素に基づき目視または光学的手法で評価する場合、前記目の色素の発現機能は、例えば、野生型の目の色素発現遺伝子を有する鳥類、または目の色素発現遺伝子の機能喪失体を有する鳥類の目の色を基準として、前記被検鳥類について、目の発生後に、目の色を評価することにより実施できる。具体的には、後述の実施例1に準じ、被検鳥類の目の発生後、目の色について目視で観察する、または、卵内の鳥類の目の色について検卵装置等を用いた吸光度により測定する。前記被検鳥類の目の色素が、前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子をホモ接合体またはヘテロ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子を有するメスの鳥類と同じ表現型の場合、前記被検鳥類は、例えば、目の色素発現機能を有すると評価できる。他方、前記被検鳥類の目の色素が、前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体をホモ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類と同じ表現型の場合、前記被検鳥類は、例えば、目の色素発現機能を有さないと評価できる。前記鳥類がニワトリの場合、目の発生の時期は、例えば、孵卵約50時間(約3日)後であり、目の色素が発現する時期は、例えば、孵卵約72時間(約3日~約4日)後である(参考文献1)。このため、前記鳥類がニワトリの場合、孵卵3日以後または孵卵4日以後、好ましくは、孵卵4日以後であれば、前記目の色素の発現機能は、前記目の色素に基づき評価できる。
参考文献1:Hamburger V, Hamilton HL. A series of normal stages in the development of the chick embryo. 1951. Dev Dyn. 1992 Dec;195(4):231-72. doi: 10.1002/aja.1001950404. PMID: 1304821.
【0044】
前記目の色素発現遺伝子の発現に基づき評価する場合、前記目の色素発現遺伝子の発現は、例えば、前記目の色素発現遺伝子のmRNAの発現を検出することにより実施できる。前記被検鳥類の生体試料からのmRNAの抽出は、常法により実施できる。前記目の色素発現遺伝子のmRNAの発現の検出は、例えば、半定量的PCR、定量的PCR、ノーザンブロッティング、デジタルPCR、RNAシークエンス解析(RNAseq)等の検出があげられる。前記mRNAの発現の検出に用いるプライマーおよび/またはプローブは、例えば、本技術分野における一般的な手法により設計できる。そして、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子をホモ接合体またはヘテロ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子を有するメスの鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量と同じ(有意差がない)場合、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子をホモ接合体またはヘテロ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子を有するメスの鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量より(有意に)高い場合、および/または、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体をホモで有するオスの鳥類、および/または前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量より(有意に)高い場合、前記被検鳥類は、例えば、目の色素発現機能を有すると評価できる。他方、前記被検鳥類の生体試料中の目の色素発現遺伝子の発現量が、前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子をホモ接合体またはヘテロ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子を有するメスの鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量より(有意に)低い場合、前記被検鳥類の生体試料中の目の色素発現遺伝子の発現量が、前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体をホモ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量と同じ(有意差がない)場合、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体をホモ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量より低い場合、前記被検鳥類は、例えば、目の色素発現機能を有さないと評価できる。
【0045】
前記目の色素発現タンパク質の発現に基づき評価する場合、目の色素発現タンパク質の発現は、例えば、紫外吸収法、ビシンコニン酸法等の分光光度計を用いた方法、ELISA、ウエスタンブロッティング等により検出できる。前記鳥類からのタンパク質を含む抽出液の調製は、超音波破砕、ホモジナイザーを用いた物理的破砕等の本技術分野における一般的な手法により実施できる。そして、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子をホモ接合体またはヘテロ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子を有するメスの鳥類における目の色素発現遺伝子タンパク質の発現量と同じ(有意差がない)場合、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子をホモ接合体またはヘテロ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子を有するメスの鳥類における目の色素発現タンパク質の発現量より(有意に)高い場合、および/または、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体をホモ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類における目の色素発現タンパク質の発現量より(有意に)高い場合、前記被検鳥類は、例えば、目の色素発現機能を有すると評価できる。他方、前記被検鳥類の生体試料中の目の色素発現タンパク質の発現量が、前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子をホモ接合体またはヘテロ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記野生型のZ染色体上の目の色素遺伝子を有するメスの鳥類における目の色素発現タンパク質の発現量より(有意に)低い場合、前記被検鳥類の生体試料中の目の色素発現タンパク質の発現量が、前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体をホモ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類における目の色素発現タンパク質の発現量と同じ(有意差がない)場合、前記被検鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体をホモ接合体で有するオスの鳥類、および/または前記Z染色体上の目の色素遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類における目の色素発現タンパク質の発現量より低い場合、前記被検鳥類は、例えば、目の色素発現機能を有さないと評価できる。
【0046】
本開示において、前記目の色素発現遺伝子は、RNA(例えば、mRNA)の形態、またはDNAの形態(例えば、cDNAまたはゲノムDNA)で存在し得る。DNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。本開示において、前記遺伝子は、非翻訳領域(UTR)の配列等の付加的な配列を含むものであってもよい。
【0047】
前記目の色素発現遺伝子の機能喪失は、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体を有する鳥類が、野生型の目の色素発現遺伝子を有する鳥類(以下、「野生型の鳥類」ともいう)と比較して、目の色素発現機能が喪失する程度に、前記目の色素発現遺伝子の機能が(有意に)低下または失われた状態を意味する。前記目の色素発現遺伝子の機能喪失は、具体的には、例えば、前記目の色素発現遺伝子のmRNAもしくは当該遺伝子がコードするタンパク質の発現量が(有意に)低下している状態、または前記目の色素発現遺伝子のmRNAもしくは当該遺伝子がコードするタンパク質が完全に発現していない状態を意味してもよいし、機能的な目の色素発現遺伝子のmRNAもしくは前記目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現量が低下している状態または機能的な目の色素発現遺伝子のmRNAもしくは前記目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質が完全に発現していない状態を意味してもよい。このため、本開示において、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失は、前記目の色素発現遺伝子に機能喪失変異を導入することにより、実施してもよいし、前記目の色素発現遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドを導入することにより、実施してもよい。前記「遺伝子の発現を抑制」は、遺伝子の転写の抑制でもよいし、タンパク質への翻訳の抑制でもよい。
【0048】
本開示において、前記目の色素発現遺伝子を機能喪失した鳥類は、例えば、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体を有する鳥類ということもできる。一般的に、鳥類は、オスの場合、性染色体としてZ染色体をホモで有し、メスの場合、性染色体としてZ染色体とW染色体とをヘテロで有する。本開示の鳥類は、例えば、Z染色体上に、前記目の色素発現遺伝子を有する。また、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失により得られる、鳥類の目の色素発現の喪失は、例えば、劣性(潜性)形質である。このため、本開示の鳥類は、例えば、オスにおいては、Z染色体上の目の色素発現遺伝子うち、いずれか一方のZ染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失してもよいが、両方のZ染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失していることが好ましい。また、本開示の鳥類は、例えば、メスにおいては、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失してもよい。前記目の色素発現遺伝子を機能喪失した鳥類は、さらに、前記目の色素発現遺伝子以外の遺伝子について修飾、改変、導入、および/または機能喪失されてもよい。
【0049】
前記目の色素発現遺伝子の機能喪失は、例えば、目の色素発現遺伝子に対し、突然変異、より具体的には、機能喪失変異を導入することにより、引き起こすことができる。前記突然変異の種類は、特に制限されず、例えば、点突然変異、スプライス変異、ミスセンス突然変異、ナンセンス突然変異、フレームシフト突然変異、広範囲における塩基の欠失(ラージデリーション)等があげられる。前記突然変異は、例えば、目の色素発現遺伝子の一部または全部の欠失を生じさせてもよい。前記フレームシフト突然変異は、塩基の欠失または挿入が起こり、三つ組みの読み枠(コドン)がずれた時に生じる変異である。前記フレームシフト突然変異は、塩基対置換の変異と比較して、遺伝子機能に与える影響が非常に大きい。これは、前記フレームシフト突然変異が生じると、当該遺伝子において、前記フレームシフト突然変異が導入された箇所以降の遺伝暗号が大幅にずれ、アミノ酸が変わるだけでなく、終止コドン等もずれてしまうためである。
【0050】
前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体は、例えば、野生型の前記目の色素発現遺伝子の塩基配列に対し、1もしくは数個の塩基(以下、「1塩基以上」ともいう)が欠失、置換、挿入および/または付加等の変異が導入された遺伝子である。前記1塩基以上は、例えば、目の色素発現遺伝子の塩基配列において、例えば、前述の(S2)の説明における塩基数の説明を援用できる。前記フレームシフト突然変異は、例えば、3m+1塩基または3m+2塩基(mは、0以上の整数)の挿入または欠失により、生じる。前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体は、例えば、これにより、目の色素の発現機能が抑制される。
【0051】
本開示において、前記目の色素発現遺伝子への突然変異は、例えば、対象の鳥類のゲノムにおける対象遺伝子に対し、常法により、変異を導入することにより引き起こすことができる。前記変異の導入対象は、例えば、鳥類の細胞が使用でき、具体例として、始原生殖細胞、胚性幹細胞(ES細胞)等があげられる。前記変異の導入方法は、例えば、相同組換え;ZFN、TALEN、CRISPR-CAS9、CRISPR-CPF1等を用いたゲノム編集技術:等により、実施できる。前記変異の導入方法は、例えば、部位特異的突然変異誘発法等の変異導入法により、実施してもよい。また、前記変異の導入方法は、例えば、ランダム突然変異誘発法により、実施してもよい。前記ランダム突然変異誘発法は、例えば、α線、β線、γ線、X線等の放射線照射処理;メタンスルホン酸エチル(EMS)、エチニルニトロソウレア(ENU)等の変異誘発剤による化学物質処理;重イオンビーム処理;等があげられる。前記ゲノム編集技術を用いた変異の導入方法は、例えば、後述の実施例1を参照でき、特許第7113415号に記載の方法を用いて行うことができる。具体的には、前記ゲノム編集技術を用いた変異の導入は、例えば、ゲノム編集技術を構成するタンパク質および核酸、またはこれらをコードするベクターを導入することにより、実施できる。前記タンパク質は、例えば、CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats)酵素があげられ、具体例として、Cas1、Cas1B、Cas2、Cas3、Cas4、Cas5、Cas6、Cas7、Cas8、Cas9、Cas10、Csy1、Csy2、Csy3、Cse1、Cse2、Csc1、Csc2、Csa5、Csn2、Csm2、Csm3、Csm4、Csm5、Csm6、Cmr1、Cmr3、Cmr4、Cmr5、Cmr6、Csb1、Csb2、Csb3、Csx17、Csx14、Csx10、Csx16、CsaX、Csx3、Csx1、Csx15、Csf1、Csf2、Csf3、Csf4等があげられる。また、前記タンパク質は、例えば、前記CRISPR酵素に基づき人工的に設計されたヌクレアーゼであってもよい。前記ヌクレアーゼは、例えば、MAD7、変異型MAD7(例えば、特許第7113415号公報)等があげられる。前記核酸は、例えば、crRNA、および、任意に、tracrRNA、またはこれらがリンカーを介して連結された一本鎖核酸があげられる。この場合、前記核酸は、例えば、crRNAにおける標的配列とアニールする塩基配列を、目の色素発現遺伝子をコードする塩基配列と相補的な塩基配列に設計する。前記核酸は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。前記ゲノム編集技術を用いる場合、例えば、核酸を2種類以上とすることにより、標的配列間の塩基配列のラージデリーションを誘発でき、例えば、標的遺伝子全体を欠失させることもできる。前記変異の導入方法は、例えば、部位特異的突然変異誘発法等の変異導入法により、実施してもよい。
【0052】
前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体における変異の位置、すなわち、前記目の色素発現遺伝子に対して変異を導入する位置は、特に制限されず、前記目の色素発現遺伝子に関連する任意の領域に設定できる。具体例として、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体における変異の位置は、例えば、前記目の色素発現遺伝子のプロモーター領域等の発現制御領域、前記目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質をコードするコーディング領域を含むエキソン領域、前記目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質をコードしない非コード領域(例えば、イントロン領域、エンハンサー領域等)等があげられ、好ましくは、エキソン領域である。前記エキソン領域は、例えば、第1エキソン、第2エキソン等があげられる。
【0053】
具体例として、前記鳥類がニワトリであり、前記目の色素発現遺伝子がSLC45A2遺伝子の場合、SLC45A2遺伝子における変異の位置は、例えば、配列番号1の塩基配列において、545~615番目の塩基(配列番号3)があげられる。前記SLC45A2遺伝子における変異の位置は、例えば、ニワトリのSLC45A2遺伝子の第2エキソンと対応する位置である。これらの変異の位置に導入される変異は、好ましくは、フレームシフト突然変異またはスプライス変異である。
【0054】
ニワトリのSLC45A2遺伝子の変異位置の塩基配列(配列番号3)
5’-AAGCATATTTATTTGACGTCTGCTCTCATGAAGATAAAGAGAAGGGTCTGCATTATCATGCCCTGTTTACA-3’
【0055】
前記鳥類のSLC45A2遺伝子の機能喪失体としては、それぞれ、下記(M)および(T)のポリヌクレオチド、またはこれらをコードするゲノム領域が例示できる。
【0056】
(M)下記(M1)~(M7)のいずれかのポリヌクレオチド:
(M1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(M2)前記(M1)の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M3)前記(M1)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M4)前記(M1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M6)配列番号2のアミノ酸配列において、1もしくは数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0057】
前記(M1)~(M7)のポリヌクレオチドにおいて、「目の色素の発現機能が抑制された」は、例えば、前記(S1)または(S5)のポリヌクレオチドがコードするタンパク質と比較して、目の色素の発現機能が有意に抑制されていることを意味し、好ましくは、目の色素の発現機能が完全に喪失していることを意味する。
【0058】
前記(M2)の「1もしくは数個」は、前記配列番号1の塩基配列において、例えば、1~326個、1~244個、1~163個、1~81個、1~65個、1~48個、1~32個、1~16個、1~8個、1~5個、1~3個、1または2個、1個である。
【0059】
前記(M3)の同一性は、前記配列番号1の塩基配列に対して、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0060】
前記(M4)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記(M4)において、前記ハイブリダイズおよびストリンジェントな条件は、前記(S4)における説明を援用できる。
【0061】
前記(M6)の「1もしくは数個」は、例えば、前記配列番号2のアミノ酸配列において、例えば、1~108個、1~81個、1~54個、1~27個、1~21個、1~16個、1~10個、1~5個、1~3個、1または2個、1個である。
【0062】
前記(M7)の同一性は、前記配列番号2のアミノ酸配列に対して、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0063】
(T)下記(T1)~(T4)のいずれかのポリヌクレオチド:
(T1)配列番号1の塩基配列において、545~615番目の塩基が欠失された塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(T2)前記(T1)のポリヌクレオチドの塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(T3)前記(T1)のポリヌクレオチドの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(T4)前記(T1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
【0064】
前記(T1)~(T4)のポリヌクレオチドにおいて、「目の色素の発現機能が抑制された」は、例えば、前記(S1)または(S5)のポリヌクレオチドがコードするタンパク質と比較して、目の色素の発現機能が有意に抑制されていることを意味し、好ましくは、目の色素の発現機能が完全に喪失していることを意味する。
【0065】
前記(T2)の「1もしくは数個」は、前記(T1)の塩基配列において、例えば、1~312個、1~234個、1~156個、1~78個、1~62個、1~46個、1~31個、1~15個、1~7個、1~5個、1~3個、1または2個、1個である。
【0066】
前記(T3)の同一性は、前記(T1)の塩基配列に対して、例えば、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上である。
【0067】
前記(T4)において、「ハイブリダイズするポリヌクレオチド」は、例えば、前記(T1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対して、完全または部分的に相補的なポリヌクレオチドである。前記ハイブリダイズは、例えば、各種ハイブリダイゼーションアッセイにより検出できる。前記(T4)において、前記ハイブリダイズおよびストリンジェントな条件は、前記(S4)における説明を援用できる。
【0068】
本開示において、前記目の色素発現遺伝子の発現を抑制することで、前記目の色素発現遺伝子の機能を喪失させる場合、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失は、例えば、前記目の色素発現遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドを対象の鳥類に導入することにより実施できる。前記ポリヌクレオチドの導入方法は、特に制限されず、例えば、RNA干渉、アンチセンスRNA、ゲノム編集技術等の方法により実施できる。前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター等の発現カセットは、例えば、マイクロインジェクション、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、パーティクルガン法等により、対象の鳥類に導入できる。前記対象の鳥類は、例えば、卵、雛、幼鳥、若鳥、および成鳥のいずれでもよい。
【0069】
本開示の鳥類は、前述のように、野生型の目の色素発現遺伝子に機能喪失変異が生じることにより得られる。このため、本開示の鳥類は、例えば、「鳥類の変異体」ということもできる。また、本開示の鳥類は、「鳥類の変異体」の後代系統であり、前記目の色素発現遺伝子に機能喪失変異を有する鳥類でもよい。本開示の鳥類は、例えば、前記目の色素発現遺伝子の塩基配列に、前述の変異の導入方法によって導入された遺伝的変異を有する鳥類の変異体ということもできる。本開示の鳥類は、例えば、本質的に生物学的なプロセス(an essentially biological process)の手段によってのみ得られた鳥類を除く。
【0070】
本開示の鳥類の製造方法については、後述の生産方法の説明を援用できる。
【0071】
<鳥類の部分>
別の態様において、本開示は、Z染色体の目の色素発現遺伝子について機能喪失している鳥類の部分を提供する。本開示の鳥類の部分は、前記本開示の鳥類の部分である。
【0072】
前記鳥類の部分は、例えば、鳥類の可食部があげられる。具体例として、前記鳥類の部分は、例えば、筋肉、皮、心臓、肝臓、砂嚢、骨、および軟骨等があげられる。
【0073】
<鳥類の卵の集団>
別の態様において、本開示は、鳥類の卵の集団を提供する。本開示の卵の集団は、鳥類の卵の集団であって、前記卵内の鳥類がオスの鳥類である場合、前記オスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子と野生型の目の色素発現遺伝子とをヘテロで含み、前記卵内の鳥類がメスの鳥類である場合、前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子を含む、卵の集団である。本開示の鳥類の卵の集団については、本開示の鳥類の説明を援用できる。
【0074】
本開示の鳥類の卵の集団は、例えば、後述の鳥類の雌雄判別方法に好適に用いることができる。このため、本開示の鳥類の卵の集団は、例えば、前記鳥類の雌雄判別に用いるための鳥類の卵の集団ということもできる。
【0075】
本開示の鳥類の卵の集団において、卵の数は、2個以上であればよく、その上限は、特に制限されない、前記卵の集団における卵の数は、例えば、10個~1000万個、10個~100万個、または10~10万個である。前記卵の集団における卵の数は、例えば、種鶏場等の規模に合わせて調整することができる。
【0076】
本開示の鳥類の卵の集団は、例えば、有精卵である。前記鳥類の卵の集団において、各卵は、例えば、胚を含む卵である。前記鳥類の卵の集団は、例えば、産卵日を基準(孵卵0日)として、孵卵0~10日、孵卵0~7日、孵卵3~7日、孵卵4~7日、孵卵5~7日、または孵卵6~7日の卵を含む集団である。前記有精卵は、例えば、検卵機等を用いて検卵を行い無精卵および発育中止卵を除去し取得してもよい。前記検卵は、例えば、孵卵5~6日目に実施することが好ましい。
【0077】
本開示の鳥類の卵の集団は、例えば、プラスチックパック、セッタートレー、トレー等の卵用資材;コンテナ等の輸送用資材;等の資材または容器に収容された状態であってもよい。
【0078】
<判別方法>
別の態様において、本開示は、本開示の鳥類を用いた、鳥類の雌雄の判別方法を提供する。本開示の鳥類の雌雄の判別方法は、鳥類の卵の集団について、前記卵の集団内の各卵の鳥類の目の色に基づいて、前記鳥類の雌雄を判別する工程を含む。前記卵内の鳥類がオスの鳥類である場合、前記オスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子と野生型の目の色素発現遺伝子とをヘテロで含み、前記卵内の鳥類がメスの鳥類である場合、前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子を含む。本開示の判別方法については、本開示の鳥類の説明を援用できる。
【0079】
本開示の判別方法は、前記判別に先立って、オス親の鳥類とメス親の鳥類とを交配し、前記卵の集団を調製する工程(調製工程)を含んでもよい。前記オス親の鳥類は、前記目の色素発現遺伝子について、機能喪失しており、かつ前記機能喪失された色素発現遺伝子をホモで含む。前記メス親の鳥類は、前記目の色素発現遺伝子について、野生型の目の色素発現遺伝子を含む。前記調製工程は、例えば、前記交配工程ということもできる。前記交配工程は、後述の生産方法における交配工程の説明を援用できる。
【0080】
本開示の判別工程は、前述の通り、前記卵の集団内の各卵の鳥類の目の色に基づいて前記鳥類の雌雄を判別する。前記判別は、例えば、前述の直接的な確認と同様にして実施できる。前記判別は、例えば、目視等により実施できる。前記判別は、目に加えて/または代えて、羽毛に基づいて実施してもよい。前記判別に羽毛を用いる場合、野生型において羽毛に色素を発現している系統の鳥類を用いることが好ましい。前記判別を目視で実施する場合、前記判別工程では、例えば、各卵の一部の卵殻を除去し、前記判別を実施後、前記卵殻を元の位置に戻してもよいし、前述のように検卵装置を用いて実施してもよい。前記判別は、例えば、前記各卵の鳥類の目の色が、前記野生型のZ染色体上の目の色素発現遺伝子をホモ接合体またはヘテロ接合型で有するオスの鳥類の目の色と同じ場合、および/または、前記卵の鳥類の目の色が、前記野生型のZ染色体上の目の色素発現遺伝子を有するメスの鳥類の目の色と同じ場合、前記卵の鳥類は、例えば、オスであると評価できる。他方、前記各卵の鳥類の目の色が、前記Z染色体上の目の色素発現遺伝子の機能喪失体をホモ接合型で有するオスの鳥類の目の色と同じ場合、および/または、前記野生型のZ染色体上の目の色素発現遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類の目の色と同じ場合、前記卵の鳥類の目の色が、前記Z染色体上の目の色素発現遺伝子の機能喪失体を有するメスの鳥類の目の色と同じ場合、前記卵の鳥類は、例えば、メスであると評価できる。具体例として、前記目の色素発現遺伝子がSLC45A2遺伝子の場合、前記各卵の鳥類の目の色が黒系の色の場合、前記卵の鳥類は、オスと判定でき、前記各卵の鳥類の目の色が黒系の色でない場合、例えば、透明または赤系の色の場合、前記卵の鳥類は、メスと判定できる。
【0081】
前記判別工程に供する卵の集団は、例えば、産卵日を基準(孵卵0日)として、孵卵0~10日、孵卵0~7日、孵卵3~7日、孵卵4~7日、孵卵5~7日、または孵卵6~7日の卵を含む集団であり、好ましくは、孵卵3~7日、孵卵4~7日、孵卵5~7日、または孵卵6~7日の卵を含む集団である。
【0082】
本開示の判別方法は、前記判別工程において雌雄の判別がされた卵内の鳥類を、さらに育成してもよいし、育成しなくてもよい。前記卵内の鳥類がメスの場合、例えば、さらに育成することが好ましい。前記卵内の鳥類がオスの場合、例えば、育成をしないことが好ましい。前記鳥類の育成条件および育成方法は、例えば、前記鳥類の成長段階および前記鳥類の品種に応じて適宜決定できる。前記育成では、例えば、前記鳥類の任意の成長段階まで生育してよい。
【0083】
本開示の判別方法では、前記卵の集団について雌雄判別を実施したが、本開示はこれに制限されず、例えば、1以上の卵に対して前記判別を実施してもよい。前記卵は、例えば、その個数が1個以上である点を除き、前記卵の集団の説明を援用できる。
【0084】
<生産方法>
別の態様において、本開示は、本開示の鳥類を用いた、本開示の鳥類の生産方法を提供する。本開示の鳥類の生産方法は、オスの鳥類と、メスの鳥類とを交配する工程を含む。前記オスの鳥類は、前記機能喪失された色素発現遺伝子をZ染色体上にホモで有する鳥類であり、前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、野生型の目の色素発現遺伝子を含む鳥類である。
【0085】
本開示の生産方法は、前記交配工程において、前記本開示の鳥類を用いるため、例えば、前記目の色素発現遺伝子を機能喪失している鳥類を生産できる。
【0086】
前記交配工程において、第一の親として使用するオスの鳥類は、前記機能喪失された色素発現遺伝子をZ染色体上にホモで有する鳥類であればよい。前記機能喪失された色素発現遺伝子は、前記鳥類の全ての細胞において機能喪失されていてもよいし、配偶子(精子)において機能喪失されていてもよい。前記機能喪失された色素発現遺伝子が、前記精子において機能喪失されている場合、前記鳥類は、例えば、キメラ鳥類ということもできる。
【0087】
本開示の生産方法は、前記交配に先立って、対象のオスの鳥類から、前記機能喪失された色素発現遺伝子をZ染色体上にホモ接合型で有するオスの鳥類を選抜する工程(選抜工程)を含んでもよい。前記選抜工程は、例えば、前述の直接的または間接的な確認に準じて実施でき、具体的には、前記対象のオスの鳥類の目の色に基づいて選抜してもよいし、前記目の色素発現遺伝子の塩基配列を指標に実施してもよいし、前記目の色素発現遺伝子または前記目の色素発現タンパク質の発現量を指標に実施してもよい。
【0088】
前記目の色素発現遺伝子の塩基配列を指標とする場合、前記選抜工程において、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失の検出は、例えば、前記対象のオスの鳥類の目の色素発現遺伝子の塩基配列を解読し、対応する野生型の目の色素発現遺伝子または目の色素発現遺伝子の機能喪失体の塩基配列と比較することにより、実施してもよい。前記塩基配列の解読は、例えば、シークエンサーを用いて実施できる。そして、前記選抜工程では、例えば、前記対象のオスの鳥類の色素発現遺伝子の塩基配列が、それぞれ、対応する鳥類の野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、機能喪失変異が導入された塩基配列である場合、または、対応する鳥類の目の色素発現遺伝子の機能喪失体の塩基配列と一致する場合、前記本開示の鳥類として選抜する。前記選抜の条件については、後述する。前記野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列は、前述の各鳥類の野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列を参照できる。また、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体の塩基配列は、前述の各鳥類の目の色素発現遺伝子の機能喪失体の塩基配列を参照できる。前記塩基配列の比較は、例えば、塩基配列の解析ソフト(例えば、前述のBLAST等)により実施できる。前記選抜工程において、塩基配列を比較する領域は、目の色素発現遺伝子のイントロン領域でもよいし、色素発現遺伝子のエキソン領域でもよいが、好ましくは、後者である。また、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失が、それぞれ、対応する野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対し、1塩基以上の挿入、欠失、および/または置換等の変異を導入することにより引き起こされる場合、前記選抜工程では、例えば、少なくとも1つの変異を検出可能なプライマーセット、プローブ、またはこれらの組合せを用いて、実施してもよい。前記プライマーセットおよびプローブは、例えば、前記変異の種類に基づき、本技術分野における一般的な方法により設計できる。
【0089】
前記選抜工程では、例えば、前記野生型の目の色素発現遺伝子に対して、1塩基以上の挿入、欠失、および/または置換されている場合、前記遺伝子を機能喪失遺伝子と判断してもよい。また、前記選抜工程では、例えば、前記野生型の目の色素発現遺伝子に対して、フレームシフト突然変異が導入されている場合、前記遺伝子を機能喪失遺伝子と判断してもよい。さらに、前記選抜工程では、例えば、前記野生型の目の色素発現遺伝子が部分欠失または完全欠失している場合、前記遺伝子を機能喪失遺伝子と判断してもよい。
【0090】
前記目の色素発現遺伝子の発現量を指標とする場合、前記選抜工程において、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失の検出は、例えば、前記対象のオスの鳥類の目の色素発現遺伝子のmRNAまたは目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の機能を検出することにより実施してもよい。さらに、前記選抜工程において、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失の検出は、例えば、前記被検鳥類における目の色素発現遺伝子もしくは目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現の有無、または目の色素発現遺伝子もしくは目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現量を検出することにより実施してもよい。
【0091】
前記選抜工程において、前記目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現に基づき、判断する場合、前記選抜工程では、例えば、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子および目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の少なくとも一方の発現量を測定する。そして、前記選抜工程において、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子および目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の少なくとも一方の発現量と、基準値とに基づき、前記目の色素発現遺伝子について機能喪失している鳥類(機能喪失している鳥類)を選抜する。具体的には、前記選抜工程では、前記対象のオスの鳥類において、前記機能喪失している鳥類の選抜は、例えば、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子および目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の少なくとも一方の発現量と、前記基準値とを比較することにより実施できる。
【0092】
前記対象のオスの鳥類の生体試料は、特に制限されず、例えば、前記対象のオスの鳥類の鳥類個体および前記鳥類個体の部分のいずれでもよく、好ましくは、鳥類の始原生殖細胞(PGC)、精子等である。前記選抜工程で使用する生体試料の種類は、例えば、1種類でもよいし、2種類以上でもよい。
【0093】
前記選抜工程において、目の色素発現遺伝子の発現量は、例えば、半定量的PCR、定量的PCR、ノーザンブロッティング、デジタルPCR、RNAシークエンス解析(RNAseq)等により測定できる。また、前記選抜工程において、目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現量は、例えば、紫外吸収法、ビシンコニン酸法等の分光光度計を用いた方法、ELISA、ウエスタンブロッティング等のタンパク質の定量方法により、測定できる。
【0094】
前記基準値は、例えば、前記野生型の鳥類における目の色素発現遺伝子または目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現量、目の色素発現遺伝子の機能喪失体を有する鳥類における目の色素発現遺伝子または目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現量等があげられる。前記基準値として前記機能喪失している鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量を用いる場合、前記機能喪失している鳥類は、例えば、一対の染色体上のそれぞれに座乗する2つの目の色素発現遺伝子のうち、いずれか一方の遺伝子について、機能喪失している鳥類、すなわち、ヘテロ接合型の鳥類でもよいし、両方の遺伝子について、機能喪失している鳥類、すなわち、ホモ接合型の鳥類でもよいが、好ましくは、ホモ接合型の鳥類である。前記基準値とする目の色素発現遺伝子または目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現量は、例えば、前記対象のオスの鳥類の生体試料と同じ条件で採取した生体試料における目の色素発現遺伝子または目の色素発現遺伝子がコードするタンパク質の発現量を、前記対象のオスの鳥類の生体試料と同様の方法で測定することにより、得ることができる。前記基準値は、例えば、予め測定してもよいし、前記対象のオスの鳥類の生体試料と同時に測定してもよい。
【0095】
この場合、前記選抜工程において、前記対象のオスの鳥類における目の色素発現遺伝子について、機能喪失しているかの評価方法は、特に制限されず、前記基準値の種類によって、適宜決定できる。
【0096】
具体例として、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記野生型の目の色素発現遺伝子をホモ接合型で有する鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量と同じ(有意差がない)場合、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記野生型の目の色素発現遺伝子をホモ接合型で有する鳥類における目の色素発現遺伝子の発現量より(有意に)高い場合、および/または、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体をホモ接合型またはヘテロ接合型で有する鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量より(有意に)高い場合、前記対象のオスの鳥類は、例えば、前記目の色素発現遺伝子について機能喪失していないと評価できる。他方、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記野生型の目の色素発現遺伝子をホモ接合型で有する鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量より(有意に)低い場合、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、目の色素発現遺伝子の機能喪失体をホモ接合型で有する鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量と同じ(有意差がない)場合、および/または、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量が、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体をホモ接合型またはヘテロ接合型で有する鳥類の生体試料における目の色素発現遺伝子の発現量より(有意に)低い場合、前記対象のオスの鳥類は、例えば、前記目の色素発現遺伝子について機能喪失していると評価できる。
【0097】
また、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記野生型の目の色素発現タンパク質をホモ接合型で有する鳥類における目の色素発現タンパク質の発現量と同じ(有意差がない)場合、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記野生型の目の色素発現タンパク質をホモ接合型で有する鳥類における目の色素発現タンパク質の発現量より(有意に)高い場合、および/または、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記目の色素発現タンパク質の機能喪失体をホモ接合型またはヘテロ接合型で有する鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量より(有意に)高い場合、前記対象のオスの鳥類は、例えば、前記目の色素発現遺伝子について機能喪失していないと評価できる。他方、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記野生型の目の色素発現タンパク質をホモ接合型で有する鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量より(有意に)低い場合、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、目の色素発現タンパク質の機能喪失体をホモ接合型で有する鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量と同じ(有意差がない)場合、および/または、前記対象のオスの鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量が、前記目の色素発現タンパク質の機能喪失体をホモ接合型またはヘテロ接合型で有する鳥類の生体試料における目の色素発現タンパク質の発現量より(有意に)低い場合、前記対象のオスの鳥類は、例えば、前記目の色素発現遺伝子について機能喪失していると評価できる。
【0098】
そして、前記選択工程では、例えば、前記目の色素発現遺伝子について、機能喪失していると評価された鳥類を、前記第一の親として使用するオスの鳥類として選抜する。
【0099】
前記選抜工程では、例えば、目の色素発現遺伝子の発現量に基づき、目の色素発現遺伝子の遺伝子型を評価してもよく、具体例として、野生型の遺伝子(正常遺伝子)のホモ接合型か、野生型の遺伝子(正常遺伝子)と機能喪失遺伝子のヘテロ接合型か、機能喪失遺伝子のホモ接合型かを評価してもよい。この場合、前記基準値として、それぞれ、前記野生型の目の色素発現遺伝子をホモ接合型で有する鳥類(野生型の鳥類)、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体をヘテロ接合型またはホモ接合型で有する鳥類(ヘテロ接合型の鳥類またはホモ接合型の鳥類)を用いることにより実施できる。具体的には、前記選抜工程において、対象のオスの鳥類における対象遺伝子の発現量が、前記野生型の鳥類、前記ヘテロ接合型の鳥類、または前記ホモ接合型鳥類における対象遺伝子の発現量と同等である場合、前記対象のオスの鳥類は、例えば、同等の発現量を有する鳥類と同様の遺伝子型であると評価できる。これにより、前記選抜工程では、前記機能喪失体のホモ接合型のオスの鳥類を前記オスの鳥類として選抜できる。
【0100】
本開示の生産方法は、前記選抜工程において選抜されたオスの鳥類を、前記交配工程に用いるために、さらに育成することが好ましい。前記鳥類の育成条件および育成方法は、例えば、前記鳥類の成長段階および前記鳥類の品種に応じて適宜決定できる。前記育成では、例えば、前記鳥類の任意の成長段階まで生育してもよい。
【0101】
本開示の生産方法は、さらに、前記選抜工程により得られた前記オスの鳥類から、精子を採取する採取工程を含んでもよい。
【0102】
本開示の生産方法は、前記交配に先立って、対象のオスの鳥類から、前記機能喪失された色素発現遺伝子をZ染色体上にホモで有するオスの鳥類を作出する工程(作出工程)を含んでもよい。前記作出工程は、例えば、対象のオスの鳥類の目の色素遺伝子を機能喪失させる工程(機能喪失工程)ということもできる。
【0103】
前記作出工程は、前記目の色素発現遺伝子に機能喪失変異を導入することにより、実施してもよいし、前記目の色素発現遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドを導入することにより、実施してもよいし、前記機能喪失された色素発現遺伝子をZ染色体上にホモで有するオスの鳥類と、前記機能喪失された色素発現遺伝子をZ染色体上に有するメスの鳥類とを交配すること、すなわち、前記目の色素発現遺伝子の機能喪失体の交雑移入により、実施してもよい。
【0104】
前記目の色素発現遺伝子に機能喪失変異を導入する場合、前記機能喪失工程では、例えば、対象の鳥類の目の色素発現遺伝子に機能喪失変異を導入する。前記対象の鳥類は、Z染色体上に、前記目の色素発現遺伝子を有する。このため、前記機能喪失工程では、例えば、前記対象のオスの鳥類における一対のZ染色体の前記目の色素発現遺伝子のうち、いずれか一方のZ染色体の前記目の色素発現遺伝子について、機能喪失させてもよいし、両方のZ染色体の前記目の色素発現遺伝子について、機能喪失させてもよいが、後者が好ましい。前者の場合、すなわち、一方のZ染色体の前記目の色素発現遺伝子について、機能喪失させた場合、前記機能喪失工程では、得られたオスの鳥類を交雑し、前記機能喪失体をZ染色体上にホモで有するオスの鳥類を得ることが好ましい。また、前記機能喪失工程では、例えば、前記対象のメスの鳥類における一つのZ染色体の前記目の色素発現遺伝子を機能喪失させてもよい。この場合、前記機能喪失工程では、得られたメスの鳥類を交雑し、前記機能喪失体をZ染色体上にホモで有するオスの鳥類を得ることが好ましい。
【0105】
前記目の色素発現遺伝子の機能喪失は、例えば、前述のように突然変異を導入することにより実施できる。前記突然変異は、例えば、前述の説明が援用でき、好ましくは、ナンセンス突然変異またはフレームシフト突然変異である。前記機能喪失変異は、例えば、各遺伝子(各遺伝子の塩基配列)に対して、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加することにより導入してもよく、好ましくは、野生型の目の色素発現遺伝子を部分欠失または完全欠失させることにより導入する。
【0106】
前記機能喪失工程において、前記目の色素発現遺伝子に機能喪失変異を導入する領域は、前記目の色素発現遺伝子のイントロン領域でもよいし、エキソン領域でもよいが、好ましくは、後者である。
【0107】
前記目の色素発現遺伝子の機能喪失は、例えば、対象の鳥類の目の色素発現遺伝子に対し、常法により、変異を導入することにより引き起こすことができる。前記変異の導入方法は、例えば、相同組換え;ZFN、TALEN、CRISPR-CAS9、CRISPR-CPF1等の前述のCRISPR酵素を用いたゲノム編集技術:等により、実施できる。前記ゲノム編集技術を用いた変異の導入方法は、例えば、後述の実施例1を参照できる。具体的には、前記ゲノム編集技術を用いて前記鳥類の始原生殖細胞(PGC)またはES細胞に遺伝子変異を導入することができる。また、前記変異の導入方法は、例えば、ランダム突然変異誘発法により、実施してもよい。前記ランダム突然変異誘発法は、例えば、α線、β線、γ線、X線等の放射線照射処理;メタンスルホン酸エチル(EMS)、エチニルニトロソウレア(ENU)等の変異誘発剤による化学物質処理;重イオンビーム処理;等があげられる。なお、上述の各変異の導入方法は、例えば、市販のキット等を用いて実施してもよい。
【0108】
前記目の色素発現遺伝子の発現を抑制するポリヌクレオチドを導入する場合、前記ポリヌクレオチドの導入方法は、特に制限されず、例えば、RNA干渉、アンチセンスRNA、ゲノム編集技術等の方法により実施できる。前記ポリヌクレオチドを含む発現ベクター等の発現カセットは、例えば、マイクロインジェクション、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、パーティクルガン法等により、対象の鳥類に導入できる。前記対象の鳥類は、例えば、始原生殖細胞、ES細胞、卵、胚、雛、幼鳥、若鳥、および成鳥のいずれでもよいが、好ましくは、始原生殖細胞またはES細胞である。
【0109】
本開示の生産方法では、前記変異の導入後、前記目の色素発現遺伝子に機能喪失変異が導入されている細胞を選抜することが好ましい。前記選抜は、例えば、前述の選抜工程と同様に実施でき、その説明を援用できる。
【0110】
前記変異の導入後、例えば、前記対象のオスの鳥類に対し、常法により、前記変異の導入された細胞を、移植してもよい。前記移植は、初期胚の胚盤葉、血液中、および生殖巣領域等への移植があげられる。前記移植前、前記変異の導入された細胞を培養してもよい。
【0111】
前記移植後、前記対象のオスの鳥類を、前記交配工程に用いるために、さらに育成することが好ましい。前記鳥類の育成条件および育成方法は、例えば、前記鳥類の成長段階および前記鳥類の品種に応じて適宜決定できる。前記育成では、例えば、前記鳥類の任意の成長段階まで生育してもよい。
【0112】
本開示の生産方法は、さらに、前記作出工程により得られた前記オスの鳥類から、精子を採取する採取工程を含んでもよい。
【実施例
【0113】
以下、実施例を用いて本開示を詳細に説明するが、本開示は実施例に記載された態様に限定されるものではない。
【0114】
[実施例1]
始原生殖細胞のSLC45A2遺伝子についてホモで機能喪失しているオスのニワトリを作製し、野生型のメスのニワトリと交配し、前記交配により得られた卵の中の鳥類の目の色に基づいて、前記卵の中の鳥類の雌雄を判別ができることを確認した。
【0115】
ニワトリSLC45A2遺伝子のgRNA(配列番号4)を、始原生殖細胞(primordial germ cell:PGC)の遺伝子編集に最適化したMAD7(ST7)発現ベクターにクローニングした。前記クローニング後、ニワトリのPGCを、参考文献2に記載の培養条件でBPR(Barred Plymouth Rock)系統ニワトリのE3(embryonic day 3)胚から取得した。前記取得後、Neon Transfection System(Thermo Fisher Scientific社製)を用いて、エレクトロポレーションを行い、前記クローニングしたgRNAを前記PGCに導入した。
参考文献2:Chen, Y.C., Lin, S.P., Chang, Y.Y., Chang, W.P., Wei, L.Y., Liu, H.C., Huang, J.F., Pain, B., and Wu, S.C. (2019). In vitro culture and characterization of duck primordial germ cells. Poult Sci 98, 1820-1832. 10.3382/ps/pey515.
【0116】
ニワトリSLC45A2遺伝子のgRNA(配列番号4)
5’- TTTGACGTCTGCTCTCATGAAGATA 3’
【0117】
前記エレクトロポレーションの2日後、BD FACSMelodyセルソーター(BD Biosciences社製)を用いて、蛍光細胞濃縮ソーティングを行った。さらに、SLC45A2-KOクローンを単離するために、前記ソーティングで得られたPGC集団について、1週間細胞培養を行った。前記培養後、セルソーターを用いて、96ウェルプレートの1ウェルあたりに1細胞になるように分配した。その後、得られたクローンについて、サンガーシーケンスを用いて、SLC45A2遺伝子の標的領域における遺伝子型を決定した。この結果を、図1に示す。
【0118】
図1は、得られたクローンのSLC45A2遺伝子の標的領域における遺伝子型を示す図である。図1に示すように、SLC45A2遺伝子の第2エキソンにおいて、182番目のアミノ酸であるリジン(K)が、アルギニン(R)に置換されており、183番目のアミノ酸であるアラニン(A)から205番目のアミノ酸であるトレオニン(T)までが欠失されていることがわかった。これらの結果から、遺伝子編集によって、フレームシフト変異および/またはスプライス変異によるSLC45A2遺伝子の機能喪失体のクローンを作製できたことが示唆された。
【0119】
前記遺伝子型の決定後、計5×10個のSLC45A2-KOクローンのPGCをE3レシピエントニワトリの循環系に移植し、キメラニワトリ(F0)を作製した。つぎに、SLC45A2-KOニワトリの子孫(F1)を生産した。具体的には、性成熟したオスの前記キメラニワトリから採取した精液を用いて、繁殖用の野生型のメスのニワトリに人工授精行った。前記人工受精後、F1のニワトリの卵の集団を得た。前記卵の中のニワトリについて、目の色素を調べた。これらの結果を、図2および図3に示す。
【0120】
図2は、孵卵7日目のニワトリの目の色を示す写真である。図2(A)において、上段は、全身を観察したオスのニワトリを示し、下段は、目を観察したオスのニワトリを示す。図2(B)において、上段は、全身を観察したメスのニワトリを示し、下段は、目を観察したメスのニワトリを示す。図3は、孵卵10日目のニワトリの目の色を示す写真である。図3(A)において、上段は、頭部から両目を観察したオスのニワトリを示し、下段は、顔の側面から右目を観察したオスのニワトリを示す。図3(B)において、上段は、頭部から両目を観察したメスのニワトリを示し、下段は、顔の側面から右目を観察したメスのニワトリを示す。図2および図3に示すように、孵化7日目および孵化10日目において、ニワトリがオスの場合、目は黒色を示すのに対し、ニワトリがメスの場合、目は黒色を示さなかった。これらの結果から、本開示の方法で得られたニワトリにおいて、オスは目の色素が発現し、メスは目の色素の発現が抑制されていることがわかった。また、本開示の方法で得られたニワトリがメスの場合、SLC45A2遺伝子に機能欠失変異が導入されると、目の色素が抑制され、目の色が変化(透明化)することがわかった。このため、本開示の判別方法によれば、検卵装置等を用いた光学的手法により評価できるといえる。さらに、本開示の判別方法によれば、孵化7日目のニワトリにおいて、雌雄を判別可能であることがわかった。
【0121】
以上、実施形態および実施例を参照して本開示を説明したが、本開示は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本開示の構成や詳細には、本開示のスコープ内で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。
【0122】
本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用される。
【0123】
<付記>
上記の実施形態および実施例の一部または全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
<雌雄判別方法>
(付記1)
鳥類の卵の集団について、前記卵の集団内の各卵の鳥類の目の色に基づいて、前記鳥類の雌雄を判別する工程を含み、
前記卵内の鳥類がオスの鳥類である場合、前記オスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子と野生型の目の色素発現遺伝子とをヘテロで含み、
前記卵内の鳥類がメスの鳥類である場合、前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子を含む、鳥類の雌雄判別方法。
(付記2)
前記判別に先立って、オス親の鳥類とメス親の鳥類とを交配し、前記卵の集団を調製する工程を含み、
前記オス親の鳥類は、前記目の色素発現遺伝子について、機能喪失しており、かつ前記機能喪失された色素発現遺伝子をホモで含み、
前記メス親の鳥類は、前記目の色素発現遺伝子について、野生型の目の色素発現遺伝子を含む、付記1に記載の判別方法。
(付記3)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記1または2に記載の判別方法。
(付記4)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、少なくとも一部の塩基が欠失された変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記3に記載の判別方法。
(付記5)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、フレームシフト変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記1から4のいずれかに記載の判別方法。
(付記6)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、スプライス変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記1から5のいずれかに記載の判別方法。
(付記7)
前記目の色素発現遺伝子は、SLC45A2遺伝子である、付記1から6のいずれかに記載の判別方法。
(付記8)
前記目の色素発現遺伝子は、SLC45A2遺伝子であり、
機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、野生型のSLC45A2遺伝子の第2エキソンに変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記1から7のいずれかに記載の判別方法。
(付記9)
機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、野生型のSLC45A2遺伝子の第2エキソンにおける配列番号3の塩基配列を欠失している、付記8に記載の判別方法。
(付記10)
前記SLC45A2遺伝子は、下記(S)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記7から9のいずれかに記載の判別方法:
(S)下記(S1)~(S7)のいずれかのポリヌクレオチド:
(S1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(S2)前記(S1)の塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S3)前記(S1)の塩基配列に対して、90%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S4)前記(S1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S6)配列番号2のアミノ酸配列において、数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、90%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記11)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、機能喪失されたSLC45A2遺伝子であり、
前記機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、下記(M)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記7から10のいずれかに記載の判別方法:
(M1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(M2)前記(M1)の塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M3)前記(M1)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M4)前記(M1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M6)配列番号2のアミノ酸配列において、数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記12)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、機能喪失されたSLC45A2遺伝子であり、
前記機能喪失されたSLC45A2遺伝子として、下記(T)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記7から11のいずれかに記載の判別方法:
(T)下記(T1)~(T4)のいずれかのポリヌクレオチド:
(T1)配列番号1の塩基配列において、545~615番目の塩基が欠失された塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(T2)前記(T1)のポリヌクレオチドの塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(T3)前記(T1)のポリヌクレオチドの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(T4)前記(T1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記13)
前記鳥類は、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト、ホロホロチョウ、キジ、カモ、およびエミューからなる群から選択される、付記1から12のいずれかに記載の判別方法。
<鳥類>
(付記14)
Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失している、鳥類。
(付記15)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列において、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記14に記載の鳥類。
(付記16)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、少なくとも一部の塩基が欠失された変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記15に記載の鳥類。
(付記17)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、フレームシフト変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記14から16のいずれかに記載の鳥類。
(付記18)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、スプライス変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記14から17のいずれかに記載の鳥類。
(付記19)
前記色素発現遺伝子は、SLC45A2遺伝子である、付記14から18のいずれかに記載の鳥類。
(付記20)
前記目の色素発現遺伝子は、SLC45A2遺伝子であり、
機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、野生型のSLC45A2遺伝子の第2エキソンに変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記14から17のいずれかに記載の鳥類。
(付記21)
機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、野生型のSLC45A2遺伝子の第2エキソンにおける配列番号3の塩基配列を欠失している、付記20に記載の鳥類。
(付記22)
前記SLC45A2遺伝子は、下記(S)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記19から21のいずれかに記載の鳥類。
(S)下記(S1)~(S7)のいずれかのポリヌクレオチド:
(S1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(S2)前記(S1)の塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S3)前記(S1)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S4)前記(S1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S6)配列番号2のアミノ酸配列において、数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記23)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、機能喪失されたSLC45A2遺伝子であり、
前記機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、下記(M)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記19から22のいずれかに記載の鳥類:
(M1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(M2)前記(M1)の塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M3)前記(M1)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M4)前記(M1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M6)配列番号2のアミノ酸配列において、数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記24)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、機能喪失されたSLC45A2遺伝子であり、
前記機能喪失されたSLC45A2遺伝子として、下記(T)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記19から23のいずれかに記載の鳥類:
(T)下記(T1)~(T4)のいずれかのポリヌクレオチド:
(T1)配列番号1の塩基配列において、546~615番目の塩基が欠失された塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(T2)前記(T1)のポリヌクレオチドの塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(T3)前記(T1)のポリヌクレオチドの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(T4)前記(T1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記25)
前記鳥類は、ニワトリ、ウズラ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト、ホロホロチョウ、キジ、カモ、およびエミューからなる群から選択される、付記14から24のいずれかに記載の鳥類。
(付記26)
前記鳥類は、オスであり、
前記機能喪失された色素発現遺伝子をホモで有する、付記14から25のいずれかに記載の鳥類。
<鳥類の部分>
(付記27)
付記14から26のいずれかに記載の鳥類の部分。
(付記28)
前記部分は、可食部である、付記27に記載の部分。
<生産方法>
(付記29)
オスの鳥類と、メスの鳥類とを交配する工程を含み、
前記オスの鳥類は、付記26に記載の鳥類であり、
前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、野生型の目の色素発現遺伝子を含む鳥類である、鳥類の生産方法。
(付記30)
前記交配により得られた鳥類または後代系統から、前記目の色素発現遺伝子を機能喪失している鳥類を選抜する工程を含む、付記29に記載の生産方法。
(付記31)
前記交配に先立って、対象のオスの鳥類から、付記26に記載の鳥類を選抜する工程を含む、付記29または30に記載の生産方法。
(付記32)
前記交配に先立って、対象オスの鳥類から、付記26に記載の鳥類を作出する工程を含む、付記29または30に記載の生産方法。
(付記33)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、1もしくは数個の塩基が欠失、置換、挿入および/または付加された変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記31または32に記載の生産方法。
(付記34)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、少なくとも一部の塩基が欠失された変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記33に記載の生産方法。
(付記35)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、フレームシフト変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記31から34のいずれかに記載の生産方法。
(付記36)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、野生型の目の色素発現遺伝子の塩基配列に対して、スプライス変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記31から35のいずれかに記載の生産方法。
(付記37)
前記目の色素発現遺伝子は、SLC45A2遺伝子である、付記31から36のいずれかに記載の生産方法。
(付記38)
前記目の色素発現遺伝子は、SLC45A2遺伝子であり、
機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、野生型のSLC45A2遺伝子の第2エキソンに変異を含む変異遺伝子であり、目の色素の発現機能が抑制される、付記31から37のいずれかに記載の生産方法。
(付記39)
機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、野生型のSLC45A2遺伝子の第2エキソンにおける配列番号3の塩基配列を欠失している、付記38に記載の生産方法。
(付記40)
前記SLC45A2遺伝子は、下記(S)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記37から39のいずれかに記載の生産方法。
(S)下記(S1)~(S7)のいずれかのポリヌクレオチド:
(S1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(S2)前記(S1)の塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素を発現させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S3)前記(S1)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素を発現させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S4)前記(S1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素を発現させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S6)配列番号2のアミノ酸配列において、数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素を発現させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(S7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素を発現させるタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記41)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、機能喪失されたSLC45A2遺伝子であり、
前記機能喪失されたSLC45A2遺伝子は、下記(M)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記37から40のいずれかに記載の生産方法:
(M1)配列番号1の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(M2)前記(M1)の塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M3)前記(M1)の塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M4)前記(M1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M5)配列番号2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M6)配列番号2のアミノ酸配列において、数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(M7)配列番号2のアミノ酸配列に対して、80%以上の同一性を有するアミノ酸配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記42)
前記機能喪失された色素発現遺伝子は、機能喪失されたSLC45A2遺伝子であり、
前記機能喪失されたSLC45A2遺伝子として、下記(T)のポリヌクレオチドを含む遺伝子である、付記37から41のいずれかに記載の生産方法:
(T)下記(T1)~(T4)のいずれかのポリヌクレオチド:
(T1)配列番号1の塩基配列において、545~615番目の塩基が欠失された塩基配列からなるポリヌクレオチド;
(T2)前記(T1)のポリヌクレオチドの塩基配列において、数個の塩基が欠失、置換、挿入、および/または付加された塩基配列からなる、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(T3)前記(T1)のポリヌクレオチドの塩基配列に対して、80%以上の同一性を有する塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド;
(T4)前記(T1)の塩基配列からなるポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドに、相補的な塩基配列からなり、目の色素の発現機能が抑制されたタンパク質をコードするポリヌクレオチド。
(付記43)
前記鳥類は、ニワトリ、ウズラ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ダチョウ、ハト、ホロホロチョウ、キジ、カモ、およびエミューからなる群から選択される、付記29から42のいずれかに記載の生産方法。
<鳥類の卵の集団>
(付記44)
鳥類の卵の集団であって、
前記卵内の鳥類がオスの鳥類である場合、前記オスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子と野生型の目の色素発現遺伝子とをヘテロで含み、
前記卵内の鳥類がメスの鳥類である場合、前記メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子を含む、鳥類の卵の集団。
(付記45)
付記1から13のいずれかに記載の鳥類の雌雄判別方法に用いるための、付記44に記載の鳥類の卵の集団。
【産業上の利用可能性】
【0124】
以上のように、本開示の鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失しており、鳥類の雌雄判別が可能である。したがって、本発明は、例えば、鳥類の育種分野、畜産分野等において極めて有用である。
【要約】      (修正有)
【課題】鳥類の雌雄判別が可能な方法を提供する。
【解決手段】本開示の鳥類の雌雄判別方法は、鳥類の卵の集団について、卵の集団内の各卵の鳥類の目の色に基づいて、鳥類の雌雄を判別する工程を含み、卵内の鳥類がオスの鳥類である場合、オスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子と野生型の目の色素発現遺伝子とをヘテロで含み、卵内の鳥類がメスの鳥類である場合、メスの鳥類は、Z染色体上の目の色素発現遺伝子について、機能喪失された色素発現遺伝子を含む。
【選択図】図2
図1
図2
図3
【配列表】
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