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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ポンプディスペンサー
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20230101AFI20240524BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20240524BHJP
   B65D 83/00 20060101ALI20240524BHJP
   F04B 9/14 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B05B11/00 101K
B65D47/34 110
B65D83/00 K
F04B9/14 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020142958
(22)【出願日】2020-08-26
(65)【公開番号】P2022038446
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000220206
【氏名又は名称】東京ライト工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】植平 庄治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 元
(72)【発明者】
【氏名】市川 悟
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-127220(JP,A)
【文献】特開平09-124063(JP,A)
【文献】国際公開第2007/013549(WO,A1)
【文献】特開2010-184181(JP,A)
【文献】特開2021-031155(JP,A)
【文献】特開2009-179350(JP,A)
【文献】実開平05-013564(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
11/00-11/10
B65D 35/44-35/54
39/00-55/16
83/00
83/08-83/76
F04B 9/00-15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着される、ノズルの吐出口から内容物を吐出させるポンプディスペンサーであって、
前記容器に連通する筒状のシリンダ体と、
前記シリンダ体内を摺動可能に設けられた筒状のピストン体と、
前記ピストン体に連結した、内部に吐出流路を有する前記ノズルと、
下端内部に係合部が形成され、前記筒状のピストン体の上端側から挿入係合された、前記ピストン体内から下流側への流路を開閉するための、上下方向に開口した筒状弁体と、
上端が前記筒状弁体内を密封維持したまま摺動可能に下方から挿入され、前記筒状弁体の前記係合部と係合し、下端が前記シリンダ体の下部に設けられた内容物の流入口を開閉する、弁座部に対して離着座可能な棒状弁体と、
前記ピストン体を直接又は間接的に、前記棒状弁体に対して上方に付勢する弾性部材と、を備え、
前記ノズル、前記ピストン体及び前記筒状弁体が、前記棒状弁体に対して前記弾性部材によって押上げられた上限位置から押下げられた下限位置に変位するとき、前記筒状弁体内に対する前記棒状弁体の挿入量が増加し、前記筒状弁体の空間体積が減少するように構成し、前記ピストン体が前記棒状弁体に対して弾性部材によって下限位置から上限位置に変位するとき、前記ピストン体と共に前記筒状弁体が押上げられ、前記筒状弁体内に対する前記棒状弁体の挿入量を減少させ、前記筒状弁体内の空間体積を増加させ、前記筒状弁体内に負圧を発生させ、下流側に残存する内容物を前記筒状弁体内に吸引することを特徴とするポンプディスペンサー。
【請求項2】
前記シリンダ体は、前記容器に連通する筒状の液用シリンダと、該液用シリンダに一体的に形成された筒状の空気用シリンダとを含み、
前記ピストン体は、前記液用シリンダ内を摺動可能に設けられた筒状の液用ピストンと、該筒状の液用ピストンの上部外周部に係合され、前記空気用シリンダ内を摺動可能に設けられた筒状の空気用ピストンとを含むことを特徴とする請求項1に記載のポンプディスペンサー。
【請求項3】
前記筒状弁体は、該筒状弁体の上端部から上方に拡径した係合突部を有し、
前記ピストン体の前記液用ピストンは、前記筒状弁体の係合突部を受けるための弁座を有し、前記液用ピストンの摺動により内容物流路を開閉することを特徴とする請求項2に記載のポンプディスペンサー。
【請求項4】
前記筒状弁体は、該筒状弁体の上端部から上方に拡径した係合突部を有し、
前記ピストン体は、小径円筒部と、該小径円筒部の下部に一体に形成された大径円筒部とを有し、
前記ピストン体の前記小径円筒部は、該小径円筒部の上部の内周面から径方向内側に延びる、前記筒状弁体の係合突部の弁座として機能する環状の突出部を有し、前記ピストン体の摺動により内容物流路を開閉することを特徴とする請求項1に記載のポンプディスペンサー。
【請求項5】
前記ピストン体の前記空気用ピストンには、前記筒状弁体の上昇を規制する規制部を有することを特徴とする請求項2又は3に記載のポンプディスペンサー。
【請求項6】
前記筒状弁体と前記棒状弁体とは、直線上に配置され、
前記棒状弁体は、該棒状弁体の上端に、前記筒状弁体の前記係合部と係合する、すり鉢状の弾性変形可能な係合部が形成され、
前記棒状弁体の前記係合部は、該係合部の外径寸法が、前記筒状弁体の内周壁に対して密封を維持し摩擦係合可能な寸法に設定されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のポンプディスペンサー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容液が充填された容器の口部に装着されるポンプディスペンサーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、内容液を充填した容器として、その内容液を液状のまま吐出するためのポンプディスペンサーを備えた容器や、ハンドソープ、洗顔剤、シャンプー等用の発泡性内容液を充填した容器として、内容液と空気とを混合させて、泡状に吐出するためのポンプディスペンサーを備えた容器が知られている。このようなポンプディスペンサーは、シリンダ体、ピストン体等を備えており、ピストン体の上下運動により、シリンダ体から送られてきた内容液を吐出するか、又は、内容液と空気とを混合して泡を生成して吐出するようになっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、発泡性の液体を収容した容器と、この容器に設けられた空気ポンプのための空気用シリンダと液体ポンプのための液用シリンダとからなる二重シリンダと、空気用シリンダ内と液用シリンダ内とをそれぞれ摺動しながら上下移動する空気用ピストンと液用ピストンとからなるピストン体とを含むポンプと、ピストン体の上端に設けられる泡吐出用の穴部を有するノズル体とを備えた泡吐出ポンプ容器が開示されている。この泡吐出ポンプ容器は、空気用ピストン及び液用ピストンの上下運動により、空気用シリンダ内の空気と液用シリンダ内の液体とが混合室内に送られ、その混合室内で混合されて泡が生成され、その泡がノズルから外部に吐出するようにしている。
【0004】
また、特許文献2には、容器の口部に固定保持されるベースキャップと、べースキャップに垂下保持され、容器内の内容物(液体)を吸引、加圧、圧送する第1ポンプ及び外気を吸引、加圧、圧送する第2ポンプと、各ポンプの出側経路をそれぞれ合流させる混合室を形成する筒体を有し、押し込み動作を繰り返して内容物及び外気を混合室内で混合、発泡させてノズルを通して外部へ噴出させる押圧ヘッドとを備えたフォーマーディスペンサーが開示されている。押圧ヘッドは、その上部にカバー体が設けられ、その筒体内に、押圧ヘッドの押し込み方向に沿ってスライド可能に弾性保持され、筒体の出側開口端に当接して出側開口を密閉するシール部材と、押圧ヘッドの天面部を貫通し、一端がカバー体に連結し、他端がシール部材に連結されるロッドと、シール部材及びロッド等に対して上方に付勢するスプリングとを備えている。フォーマーディスペンサーは、押圧ヘッドの上下運動によって、第1ポンプ及び第2ポンプを作動させて、空気及び内容物を混合室内に送り、送られた空気及び内容物を混合室内で混合、発泡させて、生成された泡をノズルから外部に吐出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4749188号公報
【文献】特許第5214418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、泡をノズルから外部に吐出した後、泡がノズルの吐出口に残留することがある。これにより、残留した泡が時間の経過と共に液体に変化し、ノズルの吐出口から垂れる(すなわち、液垂れ現象)という問題がある。内容液を液状のまま吐出するためのポンプディスペンサーを備えた容器でも、内容液の吐出後、その内容液がノズルの吐出口に残留して、ノズルの吐出口から垂れるという問題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された発明では、泡をノズルから外部に吐出した後、シール部材が筒体の出側開口を密閉する位置に戻るとき、ロッドの環状シール部材が押圧ヘッドの環状周壁の内壁に沿って摺動しながら上方に移動することで、ノズルの内部通路の空間容積が増加し、ノズルの内部通路内が負圧状態となる。ノズルの内部通路内の負圧によって、ノズルの先端に残存する内容物又は泡が筒体側に引き戻される現象(所謂、バックサクション現象)が生じる。しかしながら、ノズルの先端に残存する内容物又は泡を筒体側に引込むための構成部材(ロッド、カバー体及びスプリング)を押圧ヘッドの下流側に設けることで、構造が複雑化し、コストがかかるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、構造を簡素化し、コストを抑えつつ、内容液又は泡を外部に吐出した後、ノズルに残留する内容液又は泡を内部に引き戻すことで、ノズルから液垂れを防ぐことができるポンプディスペンサーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明は、
容器の口部に装着される、ノズルの吐出口から内容物を吐出させるポンプディスペンサーであって、前記容器に連通する筒状のシリンダ体と、前記シリンダ体内を摺動可能に設けられた筒状のピストン体と、前記ピストン体に連結した、内部に吐出流路を有する前記ノズルと、下端内部に係合部が形成され、前記筒状のピストン体の上端側から挿入係合された、前記ピストン体内から下流側への流路を開閉するための、上下方向に開口した筒状弁体と、上端が前記筒状弁体内を密封維持したまま摺動可能に下方から挿入され、前記筒状弁体の前記係合部と係合し、下端が前記シリンダ体の下部に設けられた内容物の流入口を開閉する、弁座部に対して離着座可能な棒状弁体と、前記ピストン体を直接又は間接的に、前記棒状弁体に対して上方に付勢する弾性部材と、を備え、前記ノズル、前記ピストン体及び前記筒状弁体が、前記棒状弁体に対して前記弾性部材によって押上げられた上限位置から押下げられた下限位置に変位するとき、前記筒状弁体内に対する前記棒状弁体の挿入量が増加し、前記筒状弁体の空間体積が減少するように構成し、前記ピストン体が前記棒状弁体に対して弾性部材によって下限位置から上限位置に変位するとき、前記ピストン体と共に前記筒状弁体が押上げられ、前記筒状弁体内に対する前記棒状弁体の挿入量を減少させ、前記筒状弁体内の空間体積を増加させ、前記筒状弁体内に負圧を発生させ、下流側に残存する内容物を前記筒状弁体内に吸引するものである。
【0010】
本項に係るポンプディスペンサーは、ピストン体を押下げることで、筒状弁体に対する棒状弁体の挿入量が増加され、筒状弁体の空間容積が減少することとなる。そして、ピストン体の押下げを解除することで、弾性部材の弾性力によって、ピストン体が押上がり、それに伴い、筒状弁体も押上がる。これにより、筒状弁体に対する棒状弁体の挿入量が減少して、筒状弁体の空間容積が増加し、負圧を発生させることとなる。その結果、残存した内容物が筒状弁体の開口から内部空間に引込まれる、所謂、バックサクション現象が生じることとなり、ノズルに残存した内容物を少なくし、液垂れ現象を防ぐことができる。
【0011】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記シリンダ体は、前記容器に連通する筒状の液用シリンダと、該液用シリンダに一体的に形成された筒状の空気用シリンダとを含み、前記ピストン体は、前記液用シリンダ内を摺動可能に設けられた筒状の液用ピストンと、該筒状の液用ピストンの上部外周部に係合され、前記空気用シリンダ内を摺動可能に設けられた筒状の空気用ピストンとを含むことを特徴とするものである。
【0012】
本項に係るポンプディスペンサーは、筒状の液用ピストンが液用シリンダ内を摺動することで、液用シリンダ内(液室)の容積が減少して、圧力が増大し、液用シリンダ内に充填された内容液が混合室に流れる。一方、筒状の空気用ピストンが空気用シリンダ内を摺動することで、空気用シリンダ内(空気室)の容積が減少して、圧力が増大し、空気用シリンダ内の空気が混合室に流れる。これにより、混合室内で空気及び内容液を適切に混合させることができる。
本項に係るポンプディスペンサーは、容器内の内容液と空気とを混合して生成される泡を吐出する場合に、ピストン体を押下げることで、筒状弁体に対する棒状弁体の挿入量が増加され、筒状弁体の空間容積が減少することとなる。そして、ピストン体の押下げを解除することで、弾性部材の弾性力によって、ピストン体が押上がり、それに伴い、筒状弁体も押上がる。これにより、筒状弁体に対する棒状弁体の挿入量が減少して、筒状弁体の空間容積が増加し、負圧を発生させることとなる。その結果、残存した泡が筒状弁体の開口から内部空間に引込まれる、所謂バックサクション現象が生じることとなり、ノズルに残存した泡を少なくし、残存した泡が液体に変化した際に起きる液垂れ現象を防ぐことができる。
【0013】
請求項3に記載した発明は、請求項2に記載した発明において、前記筒状弁体は、該筒状弁体の上端部から上方に拡径した係合突部を有し、前記ピストン体の前記液用ピストンは、前記筒状弁体の係合突部を受けるための弁座を有し、前記液用ピストンの摺動により内容物流路を開閉することを特徴とするものである。
【0014】
請求項4に記載した発明は、請求項1に記載した発明において、前記筒状弁体は、該筒状弁体の上端部から上方に拡径した係合突部を有し、前記ピストン体は、小径円筒部と、該小径円筒部の下部に一体に形成された大径円筒部とを有し、前記ピストン体の前記小径円筒部は、該小径円筒部の上部の内周面から径方向内側に延びる、前記筒状弁体の係合突部の弁座として機能する環状の突出部を有し、前記ピストン体の摺動により内容物流路を開閉することを特徴とするものである。
【0015】
請求項3及び4に係るポンプディスペンサーは、筒状弁体の係合突部がピストン体に形成された弁座又はピストン体の環状の突出部に離着座することで、内容物が流れる経路(内容物流路)を開放及び遮断することができる。
【0016】
請求項5に記載した発明は、請求項2又は3に記載した発明において、前記ピストン体の前記空気用ピストンには、前記筒状弁体の上昇を規制する規制部を有することを特徴とするものである。
【0017】
本項に係るポンプディスペンサーは、規制部に筒状弁体が当接することにより、ノズルの押下げ時、ピストン体に対して筒状弁体の上昇範囲を必要以下に規制することができる。
【0018】
請求項6に記載した発明は、請求項1~5のいずれか1項に記載した発明において、前記筒状弁体と前記棒状弁体とは、直線上に配置され、前記棒状弁体は、該棒状弁体の上端に、前記筒状弁体の前記係合部と係合する、すり鉢状の弾性変形可能な係合部が形成され、前記棒状弁体の前記係合部は、該係合部の外径寸法が、前記筒状弁体の内周壁に対して密封を維持し摩擦係合可能な寸法に設定されていることを特徴とするものである。

【0019】
本項に係るポンプディスペンサーは、液用ピストンの内側空間に筒状弁体と棒状弁体とを直線上に配置したので、筒状弁体より下流側に配置された構成部材(混合室及びネットホルダ)の設置領域を侵食することがなく、構成部品も筒状弁体を追加すればいいので、ポンプディスペンサーの構造の複雑化を防ぎ、コストを抑えることができる。
棒状弁体の係合部は、その外形寸法が、筒状弁体の内周壁に対して摩擦係合可能な寸法に設定されているので、筒状弁体内を密封維持しつつ、棒状弁体が筒状弁体内を適切に摺動させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のポンプディスペンサーによれば、構造を簡素化し、コストを抑えつつ、内容液又は泡を外部に吐出した後、ノズルに残留する内容液又は泡を内部に引き戻すことで、ノズルからの液垂れを防ぐことができるポンプディスペンサーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る、上限位置におけるポンプディスペンサーの概略断面図である。
図2図1に示す筒状弁体及び棒状弁体近傍の部分拡大図であり、(a)は図1に示すA部分の部分拡大図であり、(b)は図2(a)の筒状弁体の係合部及び棒状弁体の係合部近傍の拡大図である。
図3図1に示す、下限位置におけるポンプディスペンサーの概略断面図である。
図4図3に示すB部分の部分拡大図である。
図5図1に示すポンプディスペンサーの下降動作状態を示す断面図である。
図6図5に示すC部分の部分拡大図である。
図7図1に示すポンプディスペンサーの上昇動作状態を示す断面図である。
図8図7に示すD部分の部分拡大図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る、上限位置におけるポンプディスペンサーの概略断面図である。
図10図9に示す、下限位置におけるポンプディスペンサーの概略断面図である。
図11図9に示すポンプディスペンサーの下降動作状態を示す断面図である。
図12図9に示すポンプディスペンサーの上昇動作状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態に係るポンプディスペンサーの構成を図1図4に基づいて詳細に説明する。
本発明の第1実施形態に係るポンプディスペンサー1Aは、図1及び図3に示すように、容器3の口部5に取付けられている。この容器3内には、例えば、ハンドソープ、洗顔剤、シャンプー用等の発泡性の液体(内容液、図示省略)が充填されている。ポンプディスペンサー1Aは、シリンダ体11と、ピストン体13と、筒状弁体15と、棒状弁体17と、ノズル19と、ピストン体13に設けられたネットホルダ21と、ベースキャップ部25とを備えている。これらの構成部品は、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の合成樹脂で形成されている。
【0023】
シリンダ体11は、円筒状の二重シリンダであり、空気用シリンダ31と、液用シリンダ33とから構成されている。空気用シリンダ31は、容器3の口部5の内径より小径の外径を有する大径部35と、この大径部35の上端に連なった径方向外側に延びる環状のフランジ部37と、大径部35の他端に連なった径方向内側に延びる底壁部39と、この底壁部39から径方向内側に向かって上方斜めに延びる傾壁部41とを含む。大径部35には、その壁部を貫通するように、容器3内に外気を導入するための少なくとも1つの外気流路孔43が形成されている。フランジ部37の下面には密封用のパッキン38が装着され、口部5の上部端面に接している。空気用シリンダ31と、後述するピストン体13の液用ピストン63、空気用ピストン61及び吸気弁65によって区画された空間が空気室45となっている。
【0024】
液用シリンダ33は、その上端が大径のシリンダ部である空気用シリンダ31の傾壁部41の上端部に連なり、この傾壁部41から下方に向かって延びる筒状の本体部47と、後述するピストン体13が下降する際に、後述する弾性部材133を受けるための、円周方向に所定の間隔を置いて設けられた複数のリブ48(図3参照)と、後述する棒状弁体17の弁座となる弁座部49と、この弁座部49より下方に、容器3内から小径のシリンダ部である液用シリンダ33内に内容液を導くための吸液管7を接続するための筒状の接続部51とを備えている。液用シリンダ33と、後述する液用ピストン63と、後述する棒状弁体17と筒状弁体15により区画された空間が液室53となっている。
【0025】
ピストン体13は、空気用ピストン61と、液用ピストン63と、空気用ピストン61に取付けられた吸気弁65とから構成されている。実施例では、空気用ピストン61の小径円筒部67の中に液用ピストン63の上部が挿入された状態で、互いに連結されている。空気用ピストン61は、その外周縁が空気用シリンダ31の大径部35の内周面に沿って上下方向に摺動するように、空気用シリンダ31内に設けられている。液用ピストン63の下部は、液用シリンダ33の筒状の本体部47の内周面に沿って摺動するように、液用シリンダ33内に設けられている。
【0026】
空気用ピストン61は、下流側に位置する最小径円筒部66と、最小径円筒部66と同心状に設けられた小径円筒部67と、最小径円筒部66及び小径円筒部67と同心状に設けられた大径円筒部69と、小径円筒部67と大径円筒部69とを連結する連結部71と、大径円筒部69の下端外周壁に設けたシール部73とを備えている。最小径円筒部66と小径円筒部67とは、図1及び図2に示すように、段部68により一体に接続されている。最小径円筒部66は、図2及び図4に示すように、その外径寸法がノズル19の内筒部143の内径寸法に対して略同等に設定され、内周面から径方向内側に延びる環状の突出部161と、この環状の突出部161の下面から下方に向かって延びる少なくとも1つの板状のリブ163(規制部、図示では2つ)とを備えている。環状の突出部161は、その中心に、ノズル19の吐出口141と混合室93とを連通させる泡吐出孔165を備えている。リブ163は、ノズル19の押下げ時、ノズル19と共に空気用ピストン61及び液用ピストン63とが一体に下降するが、筒状弁体15は棒状弁体17との接触力により下降しないため、ノズル19が所定の位置まで押し下げられた際に筒状弁体15の上縁に当接する。その結果、ノズル19、空気用ピストン61及び液用ピストン63と共に筒状弁体15も押下げられる。小径円筒部67は、図2及び図4に示すように、段部68の下面から下方に向かって延びる、円周方向に所定の間隔を置いて設けられた複数のリブ77,77が形成されている。連結部71は、図1及び図3に示すように、小径円筒部67の下端に連なり、小径円筒部67の下端から径方向外側に延びて、大径円筒部69の上端と連なる。この連結部71には、図2及び図4に示すように、後述する吸気弁65の環状の軸部97を嵌合させるための環状の凹部81と、この環状の凹部81より径方向外側に位置する、空気室45に外気を導入するための吸気孔83とが形成されている。この吸気孔83は、円周方向に所定の間隔を置いて複数個形成されている。シール部73は、環状の帯状体で、外周面が浅くテーパ状に窪んでおり、その外縁上下端部が空気用シリンダ31の大径部35の内周面との間で充分な気密性を確保しつつ大径部35の内周面に接触し、大径部35の内周面に沿って上下方向に摺動することができるように、大径円筒部69の下端外周壁部に一体に形成されている。
【0027】
空気用ピストン61の最小径円筒部66の内部には、ネットホルダ21が嵌合されている。ネットホルダ21は、混合室93で生成された泡を通過させることで、泡の大きさを微細・均等(均質化)にするためのものであり、互いに分離可能な第1ネットホルダ21a及び第2ネットホルダ21bとから構成される。第1ネットホルダ21aは、その上端部に、ネット155aが設けられている。第2ネットホルダ21bは、その下端部に、ネット155bが設けられている。ネットホルダ21には、泡を通過させる泡通路155cが形成されている。ネット155a,155bとは、目の粗さが同等の粗さ、又は、下流側のネット155aの目の粗さが上流側のネット155bの目の粗さより細かくしても良い。また、必ずしも両面にネットを設ける必要はなく、目的により、ネット155a,155bの何れか1枚でも良い。
【0028】
液用ピストン63は、略円筒状を呈し、図2及び図4に示すように、その上部に後述する筒状弁体15の係合突部113を受けるための第1段部87(弁座)と、略中央の外周面から径方向外側に延びる環状のフランジ部89と、略中央の内周面に後述する弾性部材133を受けるための第2段部91とが形成されている。液用ピストン63の下部には、図1及び図3に示すように、下方に向いて開くテーパ状のシール部92が設けられている。シール部92は、液用シリンダ33の本体部47の内周面に対して、充分な気密性を確保しつつ、内周面に沿って上下方向に摺動することができるように構成されている。
【0029】
空気用ピストン61及び後述する筒状弁体15によって区画された空間が、内容液と空気とを混合させる混合室93となっている。また、図2及び図4に示すように、空気用ピストン61を液用ピストン63に嵌合させた際、液用ピストン63の外周面と、空気用ピストン61の小径円筒部67の内周面との間に、長手方向に向く複数のリブ77,77によって区画された空間が、空気室45内の空気を混合室93に導入するための複数の空気流路95となっている。図1及び図3に示すように、空気用ピストン61と後述するベースキャップ部25とによって区画された空間が、上部空間96となっている。
【0030】
吸気弁65は、図2及び図4に示すように、環状の軸部97と、半径方向外側に延びる環状の外側弁部99と、半径方向内側に延びる環状の内側弁部101とを備えている。環状の軸部97は、その上端が空気用ピストン61の円環状の凹部81内に嵌め込まれている。環状の外側弁部99及び環状の内側弁部101は、環状の軸部97の下端に一体に設けられ、弾性を有する部材から形成されている。環状の外側弁部99は、その半径寸法が、空気室45の内圧が容器3外部の圧力より高い場合に吸気孔83を閉じ、空気室45の内圧が容器3外部の圧力より低い場合に開くように、吸気孔83を覆うことができるように設定されている。環状の内側弁部101は、その半径寸法が、空気室45の内圧が容器3外部の圧力より高い場合に開弁し、空気室45と複数の空気流路95とを連通し、空気室45の内圧が容器3外部の圧力より低い場合に閉弁し、空気室45と複数の空気流路95との連通を遮断するように、液用ピストン63の環状のフランジ部89上に着座・離座されるように設定されている。
【0031】
筒状弁体15は、液用ピストン63の上部側(一端側)に挿入されており、筒状本体部111と、筒状本体部111の上端部から上方に拡径した係合突部113と、筒状本体部111内下端に形成した環状の係合部115とを備えている。係合突部113は、その上端部に開口116が形成されている(図2及び図4参照)。筒状弁体15を液用ピストン63に挿入した状態では、筒状本体部111の外周部と液用ピストン63の内周部とによって区画された空間が、液室を構成すると共に、液室53内の内容液を混合室93に導くための液流路117(内容物流路)となっている。筒状本体部111は、その外径寸法が液用ピストン63の内径寸法より小さく設定されている。係合突部113は、図2及び図4に示すように、筒状本体部111の上部の外周部から径方向外側に延びるように形成され、その外周部が液用ピストン63の環状の第1段部87に離着座して弁部としての機能を有する。環状の係合部115は、筒状本体部111に挿入された後述する棒状弁体17の上端に形成した係合部125の抜けを防止するものであり、筒状本体部111の下部の内周面から径方向内側に延び、下部が内側に向くテーパ状を呈している。これにより、棒状弁体17の係合部125が筒状本体部111内に下方から挿入され易い。
【0032】
筒状弁体15と棒状弁体17とは、ピストン体13内(液用ピストン63の内部空間)に直線上に配置されている。棒状弁体17は、その上端が筒状弁体15の中に摺動可能に挿入され、軸部121と、弁部123とを備えている。軸部121は、その上端に、筒状弁体15の筒状本体部111の環状の係合部115と係合する弾性変形可能な係合部125が形成され、下端に弁部123が形成されている。また、軸部121には、略中央から弁部123に向かって延びる、円周方向に所定の間隔を置いて設けられる複数の補強用のリブ127,127が形成されている(図1及び図3参照)。弁部123は、シリンダ体11の液用シリンダ33の下部に設けられた流入口50を開閉するために、液用シリンダ33の弁座部49に対向するように配置され、軸部121の下端部から軸部121の軸方向に下方に延びる突起部129と、この突起部129を囲む円環部131とを備える。弁部123の外面には、弾性部材133を受けるための、径方向外側に向かって延びる所定の間隔を置いて設けられた複数の受け部135が形成されている。ここで、弾性部材133は、圧縮ばねであり、その一端が液用ピストン63の内壁に形成された第2段部91に当接し、他端が弁部123の複数の受け部135に当接し、弾性部材133の弾発力によって、空気用ピストン61、液用ピストン63及び筒状弁体15を棒状弁体17に対して軸方向上方(図1図4の紙面上方)に常時付勢している。複数の受け部135と液用シリンダ33の複数のリブ48とは互いに干渉しないように形成されている。棒状弁体17の係合部125は、図2(b)に示すように、上方が拡径したすり鉢状を呈し、すり鉢状の最外径部がフレキシブルな密封部126として構成されている。また、棒状弁体17の係合部125の最外径部は、その寸法が筒状弁体15の内周壁に対して摩擦係合可能な寸法に設定されている。フレキシブルな密封部126は、筒状弁体15内を密封維持したまま所定量摺動可能に筒状本体部111に挿入されているので、ピストン体13が上限時に(図1参照)、係合部125の下端部と筒状弁体15の環状の係合部115の上端部とが緊密に係合する。
【0033】
ノズル19は、泡(内容物)を吐出するための泡の吐出通路を含む吐出口141と、吐出口141に連通する内筒部143と、内筒部143より径方向外側で同心状に位置される外筒部145とを備えている。内筒部143は、その下端が空気用ピストン61の段部68に当接し、その下流側の内壁に空気用ピストン61の最小径円筒部66が嵌合されている。外筒部145は、ノズル19の内筒部143と共に、後述するベースキャップ部25の円筒状のガイド部173に沿って上下動可能に形成されている。
【0034】
ベースキャップ部25は、頂壁部171と、この頂壁部171の中央部から一体に直立した円筒状のガイド部173と、頂壁部171の外周縁部から一体に垂下した円筒状の嵌合壁部175とを備える。頂壁部171の下面には、円筒状の嵌合壁部175より内側に同心状に設けられる円筒状の嵌合部177が垂下されている。円筒状の嵌合壁部175と円筒状の嵌合部177とにより区画された空間内には、空気用シリンダ31の環状のフランジ部37が嵌入される。円筒状のガイド部173は、その内径寸法がノズル19の内筒部143の外径寸法より大きく、かつ、外径寸法が外筒部145の内径寸法より小さく設定されており、第2のガイド部として、上部の内周部に径方向内側に向かって延びる環状の突出部179が形成されている。円筒状のガイド部173を内筒部143と外筒部145との間に形成された空間内に挿入した際、円筒状のガイド部173、内筒部143及び外筒部145により区画された空間が、外気を空気室45に導入する外気流通路181(図1参照)となっている。円筒状の嵌合壁部175は、その内周面に、容器3の口部5に形成された雄ねじ部185と螺合する雌ねじ部183が形成されている。
【0035】
次に、第1実施形態に係るポンプディスペンサー1Aの動作について、図1図8を参照して説明する。
まず、図1及び図2に示すように、ノズル19が無加圧状態で上限位置に配置されている場合では、空気用ピストン61、液用ピストン63及び筒状弁体15は、弾性部材133の弾発力によって、棒状弁体17に対して離間する上方(図1の紙面上側)へと所定量押し上げられている。このとき、空気用ピストン61は、液用ピストン63を介して、間接的に弾性部材133の弾発力を受けている。これにより、筒状弁体15の係合突部113は、液用ピストン63の環状の第1段部87に着座されている(図2参照)。この状態では、混合室93と液流路117とは遮断され、一方、混合室93と複数の空気流路95とは連通されている。また、棒状弁体17の弁部123は、液用シリンダ33の弁座部49から離座されており、液室53が吸液管7を介して容器3内に連通されている。さらに、吸気弁65の環状の外側弁部99によって空気室45と吸気孔83との連通が遮断され(閉弁状態)、吸気弁65の環状の内側弁部101によって空気室45と複数の空気流路95との連通が遮断されている(閉弁状態)。
【0036】
そして、図5(a)に示すように、ノズル19を僅かに押下げると、その押下げに伴って空気用ピストン61と、液用ピストン63とが一体的に押下げられる。このとき、筒状弁体15が棒状弁体17によって支持されていることで、筒状弁体15の位置は変化せず、筒状弁体15の係合突部113が液用ピストン63の環状の第1段部87から離座される。その結果、混合室93と液流路117とが連通する。また、筒状弁体15の上縁は、空気用ピストン61の最小径円筒部66のリブ163に当接される。棒状弁体17は開弁状態を維持し、吸気弁65の環状の外側弁部99及び環状の内側弁部101は閉弁状態を維持したままである。
【0037】
そして、図5(b)に示すように、ノズル19をさらに押下げると、空気用ピストン61の最小径円筒部66のリブ163と当接する筒状弁体15も押下げられる。また、筒状弁体15が押下げられることで、筒状弁体15の筒状本体部111の内壁面に対する棒状弁体17の係合部125の摩擦抵抗によって、筒状弁体15と共に棒状弁体17が押下げられ、棒状弁体17の弁部123が液用シリンダ33の弁座部49に着座され、液室53と容器3との連通が遮断される。
ここで、空気用ピストン61及び液用ピストン63がさらに押下げられることで、空気室45及び液室53の室内容積が減少してゆくことにより、空気室45及び液室53の圧力(内圧)が増大してゆく。その結果、吸気弁65の環状の内側弁部101が液用ピストン63の環状のフランジ部89から離座され(図6参照、開弁状態)、空気室45と空気流路95とが連通されて、空気室45の空気が空気流路95に流れる(図6の矢印参照)。一方、吸気弁65の環状の外側弁部99は、閉弁状態を維持したままである(図6参照)。また、液用ピストン63の押下げに伴って、液室53の容積が減少して、圧力が増大することで、液室53内の内容液が液流路117に流れる(図6の矢印参照)。その結果、空気流路95に流れる空気と、液流路117に流れる内容液とが混合室93内に流入されて、それらが混合室93で混合され、泡が生成される。
【0038】
そして、混合室93で生成された泡は、先ず空気用ピストン61の最小径円筒部66の泡吐出孔165を通過することである程度均質化される。その後、泡は、ネットホルダ21のネット155a,155b及び泡通路155cを通過し、ノズル19の吐出口141から吐出される(図5(b)の矢印参照)。ここで、泡は、ネットホルダ21のネット155a,155bを通過することで微細・均質化される。
【0039】
そして、図5(c)に示すように、ノズル19をさらに押下げることで、液用ピストン63のフランジ部89の下面が液用シリンダ33の上端部に当接し、ノズル19の下降が停止する(すなわち、ノズル19が下限位置に至る)。このとき、体積増加により負圧化した上部空間96に外気が外気流通孔181を通って吸引される。空気用ピストン61は、空気用シリンダ31の下部に位置される(空気用ピストン61の下限位置)ので、空気用シリンダ31の大径部35に形成された外気流路孔43と外気流通路181とが連通される。また、棒状弁体17は、その上端が筒状弁体15の筒状本体部111の上部まで挿入され、筒状弁体15の筒状本体部111に対する棒状弁体17の挿入量が最大状態となる。
【0040】
一方、図7を参照して、ノズル19が下限位置にある状態から押下げを解除する場合を説明する。
図7(a)に示すように、ノズル19の押下げを解除すると、弾性部材133の弾発力により、液用ピストン63、空気用ピストン61及びノズル19が押上げられる。このとき、空気用ピストン61及び液用ピストン63の押上げに伴って、筒状弁体15の係合突部113が液用ピストン63の環状の第1段部87に着座される。これにより、混合室93と液流路117との連通が遮断される。また、棒状弁体17の弁部123は、液用シリンダ33の弁座部49に着座されたままである。さらに、吸気弁65の環状の外側弁部99及び環状の内側弁部101は、閉弁状態である。
【0041】
そして、図7(b)に示すように、弾性部材133の弾発力により、シリンダ体11に対して、液用ピストン63、空気用ピストン61及びノズル19がさらに押上げられると、液室53及び空気室45の容積が増大してゆき、液室53及び空気室45が負圧状態となる。また、空気用ピストン61及び液用ピストン63の上昇に伴って、筒状弁体15の筒状本体部111の内壁面に対する棒状弁体17の係合部125の摩擦抵抗によって、筒状弁体15と共に棒状弁体17が上昇し、弁部123が液用シリンダ33の弁座部49から離座される。その結果、液室53と容器3とが連通され、吸液管7を介して容器3内の内容液が液室53に吸い上げられる。また、空気室45の負圧状態によって、吸気弁65の環状の外側弁部99が開弁し、吸気孔83を介して空気室45と外気流通路181とが連通される(図8参照)。これにより、上部空間96内の外気が空気室45内に流入される。ここで、容器3内の内容液が液室53に吸い上げられることで、容器3内が負圧状態となる。しかし、この状態では、空気用シリンダ31の大径部35の外気流路孔43は、空気用ピストン61のシール部73によって、閉じられていないため、上部空間96内の外気が外気流路孔43を介して容器3内に流入されることとなり、容器3の負圧状態が解消される。
【0042】
そして、図7(c)に示すように、弾性部材133によって、液用ピストン63、空気用ピストン61及びノズル19が上限位置まで押上げられている際に、筒状弁体15も上方に押上げられる。そして、筒状弁体15の環状の係合部115と棒状弁体17の係合部125とが係合すると、ノズル19、空気用ピストン61、液用ピストン63及び筒状弁体15が棒状弁体17に対して上限位置に達する。このとき、筒状弁体15の筒状本体部111に対する棒状弁体17の挿入量が最小限状態となり、筒状本体部111の内部空間体積が最大となる。その結果、筒状弁体15より下流側のノズル19の吐出通路を含む吐出口141及びネットホルダ21の泡通路155c内に残留した泡がその増加した空間体積分引込まれる(所謂、バックサクション機能)。
【0043】
本発明の第1実施形態に係るポンプディスペンサー1Aによると、ノズル19の押下げを解除することによって、弾性部材133の弾発力により、ノズル19、液用ピストン63及び空気用ピストン61が押上げられる。この押上げ動作により、棒状弁体17を押下げ位置に残した状態で、筒状弁体15も押上がるので、筒状弁体15に対する棒状弁体17の挿入量が減少し、筒状弁体15の筒状本体部111の空間の体積を増大させ、筒状弁体15の内部空間118(図2及び図6参照)に負圧を発生させることとなる。その結果、ノズル19の吐出通路を含む吐出口141内に残存した泡がネットホルダ21の泡通路155cを通って、筒状弁体15の開口116より内部に引き戻される、所謂、バックサクション現象が生じる。さらに、これにより、時間の経過によって、ノズル19の吐出口141付近に残存する泡が液体に変化したとしても、その量は少ないので吐出口141からの液ダレを防ぐことができる。また、混合室93から下流側の泡通路155cに残存した泡が液体に変化しても、筒状弁体15の開口116を通り内部空間118に溜まるので、空気通路95に侵入する液体の量が減少し、空気通路95が液体により塞がれ難い。
【0044】
また、第1実施形態に係るポンプディスペンサー1Aによると、バックサクション機構を発揮するための構造である筒状弁体15と棒状弁体17とを液用ピストン63の内部空間に直線上に配置したので、筒状弁体15より下流側に配置された混合室93及びネットホルダ21の設置領域を侵食することがないので、構成部品も筒状弁体15を追加すればいいので、ポンプディスペンサー1Aの構造の複雑化を防ぎ、コストを抑えることができる。
【0045】
次に、本発明の第2実施形態に係るポンプディスペンサー1Bについて、図9図12を参照して説明する。なお、以下の説明において、上記第1実施形態のポンプディスペンサー1Aに対して、同様の部分には同じ参照符号を用いて、その説明を省略し、異なる部分について説明する。
【0046】
図9及び図10に示すように、第2実施形態に係るポンプディスペンサー1Bは、シリンダ体11と、ピストン体13と、筒状弁体15と、棒状弁体17と、ノズル19と、ベースキャップ部25とを備えている。
シリンダ体11は、液用シリンダであり、容器3の口部5の内径より小径の外径を有する大径部35と、大径部35の上端に連なった径方向外側に延びる環状のフランジ部37と、大径部35の下端に連なった径方向内側に延びる底壁部39と、底壁部39から径方向内側に向かって上方斜めに延びる傾壁部41と、傾壁部41から内径方向内側に延びる上壁部221と、上壁部221から一体に垂下される小径部223とを含む。大径部35は、その壁部を貫通するように、容器3内に外気を導入するための少なくとも1つの外気流路孔43が形成されている。小径部223は、後述する棒状弁体17の弁部123の弁座となる弁座部49が設けられ、この弁座部49より下方に、容器3内から液室245内に内容液(内容物)を導くための吸液管7を接続するための筒状の接続部51が備えられている。
【0047】
ピストン体13は、シリンダ体11の大径部35の内周面に沿って上下方向に摺動するように、シリンダ体11内に設けられ、ピストン体13の上部に位置する小径円筒部67と、小径円筒部67の下部に一体に形成された大径円筒部69と、大径円筒部69の下端外周壁から径方向外側に延びる下壁部235と、下壁部235に設けられたシール部73とを備えている。小径円筒部67は、その外径寸法が後述するノズル19の外筒部145の内径寸法に対して略同等に設定され、ノズル19の外筒部145に嵌合されており、上部の内周面から径方向内側に延びる環状の突出部239と、この環状の突出部239の下面下方に向かって延びる、円周方向に所定の間隔を置いて設けられた複数のリブ241,241が形成されている(図9及び図10参照)。複数のリブ241,241は、その下端が弾性部材133の押圧力を受けるための受け部としての機能を有する。小径円筒部67の環状の突出部239は、後述する筒状弁体15の環状の係合突部113の弁座として機能する。大径円筒部69は、小径円筒部67との連なる箇所に、ノズル19の外筒部145の下端を受けるための環状の段部243が形成されている。
【0048】
シリンダ体11、ピストン体13、筒状弁体15及び棒状弁体17により区画された空間が液室245となっている。また、ピストン体13の小径円筒部67の内周部と後述する筒状弁体15の外周部とによって区画された空間が、液室245を構成すると共に、液室245内の内容液をノズル19の吐出口141に導くための液流路117(内容物流路)となっている。ピストン体13と後述するベースキャップ部25とシリンダ体11により区画された空間が、上部空間96となっている。ピストン体13、ノズル19の外筒部145及びベースキャップ部25の内壁部261により区画された空間が、外気を上部空間96に導入する外気流通路181となっている。
【0049】
筒状弁体15は、その外径寸法がピストン体13の小径円筒部67の内径寸法より小さく設定されている。筒状弁体15の係合突部113は、小径円筒部67の環状の突出部239の上面に離着座して弁部としての機能を有する。
【0050】
棒状弁体17の弁体123は、シリンダ体11の小径部223の弁座部49に対向するように配置されている。ここで、弾性部材133は、圧縮ばねであり、その一端がピストン体13の複数のリブ241,241の下端に当接し、他端が弁部123の複数の受け部135に当接し、弾性部材133の弾発力によってピストン体203と筒状弁体15とを棒状弁体17に対して離間する軸方向上方(図9及び図10の紙面上方)に常時付勢されている。
【0051】
ノズル19は、内容液を吐出する吐出口141と、外筒部145と、内容液を吐出口141に導く吐出通路255とを備えている。ノズル19の天井壁には、その下面から垂下したリブ257が設けられている。リブ257は、板状であり、吐出通路255内に、かつ、筒状弁体15の上方に配置されている。このリブ257は、ノズル19の押下げ時、ノズル19と共にピストン体13が一体に下降するが、筒状弁体15は棒状弁体17との接触力により下降しないため、ノズル19が所定の位置まで押し下げられた際に筒状弁体15の上縁に当接し、その後は筒状弁体15も押下げるように作用する。ノズル19の外筒部145は、その内周部にピストン体13の小径円筒部67と嵌合し、その下端部がピストン体67の大径円筒部69の環状の段部243に当接する。
【0052】
ベースキャップ部25は、頂壁部171と、頂壁部171の中央部から一体に垂下した円筒状の内壁部261と、頂壁部171の外周縁部から一体に垂下した円筒状の嵌合壁部175とを備える。円筒状の内壁部261は、その内径寸法がノズル19の外筒部145の外径寸法よりやや大きく設定されている。円筒状の嵌合壁部175と円筒状の嵌合部177とにより区画された空間内には、シリンダ体11の環状のフランジ部37が嵌入される。
【0053】
次に、第2実施形態に係るポンプディスペンサー1Bの動作について、図11及び図12を参照して説明する。
まず、ノズル19が無加圧状態で上限位置に配置されている場合(図9参照)では、ピストン体13は、直接弾性部材133の弾発力によって、棒状弁体17に対して上方へと押し上げられている。これにより、筒状弁体15の係合部115と棒状弁体17の係合部125とが係合し、筒状弁体15の環状の係合突部113がピストン体13の環状の突出部239に着座し、棒状弁体17に対するピストン体13及び筒状弁体15の上限位置が規制されている。このため、液室245とノズル19の吐出通路255とが遮断される。また、棒状弁体17の弁部123は、小径部223の弁座部49から離座されており、液室245が吸液管7を介して容器3内に連通されている。
【0054】
そして、図11(a)に示すように、ノズル19を僅かに押下げると、その押下げに伴ってピストン体13も押下げられる。このとき、筒状弁体15の位置は変化せず、筒状弁体15の環状の係合突部113がピストン体13の環状の突出部239から離座される。その結果、液室245とノズル19の吐出通路255とが連通される。棒状弁体17の弁部123は、シリンダ体11の小径部223の弁座部49から離座されたままである(開弁状態)。
【0055】
そして、図11(b)に示すように、ノズル19をさらに押下げると、ノズル19の板状のリブ257が筒状弁体15の上端に当接し、筒状弁体15も押下がる。筒状弁体15が押下げることで、筒状弁体15の筒状本体部111の内壁面に対する棒状弁体17の係合部125の摩擦抵抗によって、棒状弁体17が押下げられ、棒状弁体17の弁部123が小径部223の弁座部49に着座され、液室245と容器3との連通が遮断される。
ここで、ノズル19及びピストン体15がさらに押下げられることで、液室245の室内容積が減少し、液室245の圧力(内圧)が増大する。その結果、液室245内の内容液が液流路117に流れる。そして、液流路117から流れた内容液は、ノズル19の吐出通路255を通り、吐出口141から吐出される(図11(b)の矢印参照)。
【0056】
そして、ノズル19と共にピストン体13をさらに押下げてゆくと、図11(c)に示すように、ピストン体13のシール部73がシリンダ体11の外気流路孔43を通過し、ピストン体13の下壁部235がシリンダ体11の上壁部221に当接し、ノズル19及びピストン体13の下降が停止する(すなわち、ノズル19及びピストン体13が下限位置に至る)。このとき、外気は、体積増加により負圧化した上部空間96に、外気流通路181から吸入される。棒状弁体17は、その上端が筒状弁体15内に進入され、筒状弁体15に対する棒状弁体17の挿入量が最大状態となる。
【0057】
一方、図12を参照して、ノズル19が下限位置にある状態から押下げを解除する場合を説明する。
図12(a)に示すように、ノズル19が下限位置にある状態で押下げを解除すると、弾性部材133の弾発力により、ノズル19及びピストン体13が押上げられる。このとき、ピストン体13の押上げに伴って、筒状弁体15の環状の係合突部113がピストン体13の環状の突出部239に着座される。これにより、液室245とノズル19の吐出通路255とが遮断される。また、棒状弁体17の弁部123は、小径部223の弁座部49に着座されたままである。
【0058】
図12(b)に示すように、弾性部材133の弾発力により、ノズル19及びピストン体13がさらに押上げられると、液室245の容積が増大し、液室245が負圧状態となる。また、ピストン体13及び筒状弁体15の上昇に伴って、筒状弁体15の筒状本体部111の内壁面に対する棒状弁体17の係合部125の摩擦抵抗によって、棒状弁体17が上昇し、棒状弁体17の弁部123が小径部223の弁座部49から離座される。その結果、液室245と容器3とが連通され、吸液管7を介して容器3内の内容液が液室245に吸い上げられ、液室245内に内容液が充填される。ここで、容器3内の内容液が液室245に吸い上げられることで、容器3内が負圧状態となる。しかし、シリンダ体11の大径部35の外気流路孔43は、ピストン体13のシール部73によって、閉じられていないため、上部空間96内の外気が外気流路孔43を介して容器3内に流入されることとなり、容器3の負圧状態が解消される。
【0059】
そして、図12(c)に示すように、弾性部材133の弾発力により、ノズル19及びピストン体13と、筒状弁体15とが押し上げられる。棒状弁体17の係合部125が筒状弁体15の係合部115に係合すると、ノズル19、ピストン体13及び筒状弁体15が棒状弁体17に対して上限位置に達する。このとき、筒状弁体15に対する棒状弁体17の挿入量が最小限状態となり、筒状弁体15の空間体積が最大となる。その結果、筒状弁体15の内部空間118(図9及び図12参照)に負圧が発生し、筒状弁体15より下流側の、ノズル19の吐出口141及び吐出通路255内に残留した内容液がその増加した空間体積分引込まれる(所謂、バックサクション機能)。
【0060】
本発明の第2実施形態に係るポンプディスペンサー1Bによると、ノズル19及びピストン体13の押下げを解除することによって、弾性部材133の弾発力により、ノズル19及びピストン体13が押上げられる。この押上げ動作により、筒状弁体15も押上がることで、筒状弁体15に対する棒状弁体17の挿入量が減少し、筒状弁体15の内部空間118の体積を増大させ、筒状弁体15の内部空間118(図9及び図10参照)に負圧を発生させることとなる。その結果、ノズル19の吐出口141及び吐出通路255内に残存した内容液が筒状弁体15の開口116より内部に引き戻される、所謂、バックサクション現象が生じる。これにより、ノズル19の吐出口141付近に残存する量が少なくなるので、ノズル19の吐出口141からの液ダレを防ぐことができる。
【0061】
また、第2実施形態に係るポンプディスペンサー1Bによると、バックサクション機構を発揮するための構造である筒状弁体15と棒状弁体17とを液用ピストン63の内部空間に直線上に配置したので、筒状弁体15より下流側に無駄なスペースを設ける必要がなく、構成部品も筒状弁体15を追加すればいいので、ポンプディスペンサー1Bの構造の複雑化を防ぎ、コストを抑えることができる。
【0062】
なお、本発明の第1及び第2実施形態に係るポンプディスペンサー1A,1Bによると、ポンプ機能を構成するための逆止弁の構造が、可動ボールと弁座で構成された所謂ボール弁を使用せず、メカニカルな逆止弁構造で、ポンプディスペンサーを上下逆向きに使用しても、ボール弁のように、弁座に上手く着座せずに密封不良を起こすことがないので、液や泡を規定量吐出する事ができる。
【符号の説明】
【0063】
1…ポンプディスペンサー、3…容器、5…口部、11…シリンダ体、13…ピストン体、15…筒状弁体、17…棒状弁体、31…空気用シリンダ、33…液用シリンダ、61…空気用ピストン、63…液用ピストン、93…混合室、133…弾性部材
図1
図2
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図6
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図12