(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】がんの予防又は治療剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/405 20060101AFI20240524BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K31/405
A61P35/00
(21)【出願番号】P 2021509526
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 JP2020013411
(87)【国際公開番号】W WO2020196651
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2019063638
(32)【優先日】2019-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】599035627
【氏名又は名称】学校法人加計学園
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】阿部 高明
(72)【発明者】
【氏名】大沼 忍
(72)【発明者】
【氏名】海野 倫明
(72)【発明者】
【氏名】林 謙一郎
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/080640(WO,A1)
【文献】Dejana Caric,Absorption and fluorescence spectra of ring-substituted indole-3-acetic acids,Biophysical Chemistry,2004年,Vol. 111,Pages 247-257
【文献】Sharon Rossiter,Halogenated Indole-3-acetic Acids as Oxidatively Activated Prodrugs with Potential for Targeted Cancer Therapy,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2002年,Vol.12,Pages2523-2526
【文献】Olga Greco,Horseradish Peroxidase-mediated Gene Therapy: Choice of Prodrugs in Oxic and Anoxic Tumor Conditions,Molecular Cancer Therapeutics,2001年,Vol. 1,Pages 151-160
【文献】Lisa K. Folkes,Oxidative activation of indole-3-acetic acids to cytotoxic species a potential new role for plant auxins in cancer therapy,Biochemical Pharmacology,2001年,Vol. 61,Pages 129-136
【文献】Lisa K. Folkes,Enhancing the Efficacy of Photodynamic Cancer Therapy by Radicals from Plant Auxin (Indole-3-Acetic Acid),CANCER RESEARCH,2003年,Vol. 63,Pages 776-779
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1);
【化1】
(式中、R
1、R
2は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、
C1~C6のアルキルオキシ基、C2~C6のアルケニルオキシ基、又はC2~C6のアルキニルオキシ基を表す。m1は0~5の整数を表し、m2は0~5の整数を表す。)
で表される化合物、並びにその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物を含有することを特徴とするがんの予防又は治療剤。
【請求項2】
式(1)で表される化合物が、以下の式(1’)で表される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の予防又は治療剤。
【化2】
(式中、R
1は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子を表す。m1は1~3の整数を表す。)
【請求項3】
式(1’)で表される化合物が、以下の式(1-1)で表される化合物であることを特徴とする請求項2に記載の予防又は治療剤。
【化3】
【請求項4】
がんが大腸癌であることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の予防又は治療剤。
【請求項5】
経口投与されることを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の予防又は治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がんを予防又は治療するための製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
厚生労働省の「人口動態統計」における日本人の主要死因別年齢調整死亡率において、昭和56年から現在に至るまで悪性新生物(がん)が第一位となっており、がんによる死亡率は近年まで低下傾向を示さず、横ばいか、微増を示している。
【0003】
がん細胞の最も一般的な特徴は、正常細胞に比べ、急速かつ制御不能な増殖を示すことである。この特徴を利用して、増殖性細胞に対して毒性を有する薬剤(すなわち、抗がん剤)を用いたがんの化学療法が行われている。かかる薬剤として、核酸合成阻害剤(例えば、シクロフォスファミド)、抗生物質(例えば、アクチノマイシンD、ブレオマイシン)、代謝拮抗剤(例えば、5-フルオロウラシル、メソトレキセート)、微小管脱重合阻害薬(例えば、パクリタキセル)、分子標的薬(例えば、イマチニブ、ゲフィチニブ)等が知られている。しかし、これら薬剤は、必ずしもがんに対する十分な治療効果が得られていないという問題があった。
【0004】
一方、本発明者らは、後述する本件化合物群は、エリスロポエチン発現増強効果及びミトコンドリア病の治療に有用であることや(特許文献1)、コラーゲン産生を抑制する効果を有し、皮膚線維化疾患の治療に有用であること(特許文献2)を報告している。しかしながら、本件化合物群が、がんの予防又は治療効果を有することについては、これまで知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2014/080640号パンフレット
【文献】国際公開第2017/073060号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、がんを予防又は治療する作用を有する低分子化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を続けている。その過程において、特許文献1における化合物(4-(2,4-ジフルオロフェニル)-2-(1H-インドール-3-イル)-4-オキソ-ブタン酸;特許文献1において化合物#5と表記)や、化合物(5-(3,5-ジメトキシベンジルオキシ)-3-インドール酢酸;特許文献1において化合物#35と表記)に着目し、検討した。その結果、特定のインドール誘導体、すなわち、以下の式(1)及び式(2)で表される化合物、並びにその薬理学的に許容される塩(以下、「本件化合物群」ということがある)は、がんの予防又は治療に有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
【化1】
(式中、R
1、R
2は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、OR
Xで表される有機オキシ基を表す。m1は0~5の整数を表し、m2は0~5の整数を表す。)
【0009】
【化2】
(式中、R
3、R
4は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、OR
Xで表される有機オキシ基を表す。m3は0~5の整数を表し、m4は0~4の整数を表す。)
【0010】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕以下の式(1);
【0011】
【化3】
(式中、R
1、R
2は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、OR
Xで表される有機オキシ基を表す。m1は0~5の整数を表し、m2は0~5の整数を表す。)、及び
以下の式(2);
【0012】
【化4】
(式中、R
3、R
4は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、OR
Xで表される有機オキシ基を表す。m3は0~5の整数を表し、m4は0~4の整数を表す。)
で表される化合物、並びにその薬理学的に許容される塩から選択される1種又は2種以上の化合物を含有することを特徴とするがんの予防又は治療剤。
〔2〕式(1)で表される化合物が、以下の式(1’)で表される化合物あり、式(2)で表される化合物が、以下の式(2’)で表される化合物であることを特徴とする上記〔1〕に記載の予防又は治療剤。
【0013】
【化5】
(式中、R
1は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子を表す。m1は1~3の整数を表す。)
【0014】
【化6】
(式中、R
3は、同一でも異なっていてもよく、OR
Xで表される有機オキシ基を表す。m3は1~3の整数を表す。)
〔3〕式(1’)で表される化合物が、以下の式(1-1)で表される化合物あり、式(2’)で表される化合物が、以下の式(2-1)で表される化合物であることを特徴とする上記〔2〕に記載の予防又は治療剤。
【0015】
【0016】
【化8】
〔4〕がんが大腸癌であることを特徴とする上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の予防又は治療剤。
〔5〕経口投与されることを特徴とする上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の予防又は治療剤。
【0017】
また本発明の実施の他の形態として、本件化合物群から選択される1種又は2種以上の化合物を、がんの予防又は治療を必要とする対象に投与するステップを含む、がんを予防又は治療する方法;や、がんの予防又は治療剤として使用するための、本件化合物群から選択される1種又は2種以上の化合物;や、がんの予防又は治療における使用のための、本件化合物群から選択される1種又は2種以上の化合物;や、がんの予防又は治療剤を製造するための、本件化合物群から選択される1種又は2種以上の化合物の使用;を挙げることができる。
【発明の効果】
【0018】
本件化合物群は、がんを予防又は治療する効果、例えば、がん発症に伴うがん細胞の増殖を抑制する効果、がんによる生存率低下を改善する効果、がんの転移抑制効果を有する。また、本件化合物群は、比較的簡便に製造できる低分子化合物であるため、比較的簡便かつ安価に製造できる点でも優れている。さらに、低分子化合物である本件化合物群は、脳血管関門(BBB)を通過することが期待され、神経系のがんに対しても予防又は治療効果が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1Aは、4種類の大腸癌群(プラセボ群[図中の「-」;n=7]、本件化合物#2[1]群[図中の「#2(1)」;n=7]、本件化合物#2[10]群[図中の「#2(10)」;n=7]、及び本件化合物#1[10]群[図中の「#1(10)」;n=7])の結腸における腫瘍面積を解析した結果(平均値±標準偏差)を示す図である。
図1Bは、対照群(n=8)及び上記4種類の大腸癌群の結腸の長さを解析した結果(平均値±標準偏差)を示す図である。図中の「*」及び「**」は、それぞれ統計学的に有意差(p<0.05及びp<0.01)があることを示す。
【
図2】
図2Aは、4種類の大腸癌群(プラセボ群;n=4、本件化合物#2[10]群[図中の「#2(10)」;n=8]、本件化合物#1[1]群[図中の「#1(1)」;n=6]、及び本件化合物#1[10]群[図中の「#1(10)」;n=5])について、結腸における腫瘍面積の割合を解析した結果(平均値±標準偏差)を示す図である。
図2Bは、上記4種類の大腸癌群について、直径2mm超の腫瘍数を解析した結果(平均値±標準偏差)を示す図である。図中の「*」は、統計学的に有意差(p<0.05)があることを示す。
【
図3】2種類の大腸癌群(プラセボ群[図中の「-」;n=4]、及び本件化合物#2[10]群;n=8)について、生存率を解析した結果を示す図である。
【
図4】
図4Aは、大腸癌細胞株HCT116細胞を、本件化合物#2存在下(図中の「#2」;n=3)又は非存在下(図中の「-」;n=3)で培養したときの細胞遊走レベルを測定した結果(平均値±標準偏差)を示す図である。縦軸の「細胞数」は、細胞遊走試験により遊走能が認められた細胞の数を示す。図中の「*」は、統計学的に有意差(p<0.05)があることを示す。
図4Bは、
図4Aの測定に用いた顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のがんの予防又は治療剤は、「がんを予防又は治療するための」という用途に特定された、本件化合物群から選択される1種又は2種以上の化合物を含有する製剤(以下、「本件予防/治療剤」ということがある)であり、ここで、「がんを予防する」とは、がん発症を予防する;がんの増殖又は転移を予防する;がんの病期(ステージ)の進行を予防する;等を意味する。また、「がんを治療する」とは、がん細胞の増殖又は転移を抑制若しくは低減させる、がん細胞を死滅させる等の作用により、生体におけるがん細胞の増殖が抑制する;生体におけるがん細胞の割合が低下する;がんの症状悪化が抑制する;がんの症状が改善する;などを意味する。本件予防/治療剤は、単独で医薬品(製剤)として使用してもよいし、さらに添加剤を混合し、組成物の形態(医薬組成物)として使用してもよい。
【0021】
本発明において、本件化合物群から選択される化合物とは、以下の式(1)及び式(2)で表される化合物、並びにその薬理学的に許容される塩を意味する。
【0022】
【0023】
式中、R1、R2は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、ORXで表される有機オキシ基を表す。m1は0~5の整数を表し、m2は0~5の整数を表す。
【0024】
【0025】
式中、R3、R4は、同一でも異なっていてもよく、ハロゲン原子、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、ORXで表される有機オキシ基を表す。m3は0~5の整数を表し、m4は0~4の整数を表す。
【0026】
式(1)及び式(2)におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができる。
【0027】
式(1)及び式(2)におけるC1~C6のアルキル基とは、置換基を有していてもよい炭素数1~6の直鎖状または分岐状のアルキル基を意味し、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、ネオペンチル基、1,1-ジメチルプロピル、1-エチルプロピル、n-へキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基等を挙げることができる。
【0028】
式(1)及び式(2)におけるC2~C6のアルケニル基とは、置換基を有していてもよい炭素数2~6の直鎖状または分岐状のアルケニル基を意味し、具体的には、エテニル基(ビニル基)、1-プロペニル基、2-プロペニル基(アリル基)、1-ブテニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、1-ペンテニル基、2-ペンテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、2-ヘキセニル基、3-ヘキセニル基等を挙げることができる。
【0029】
式(1)及び式(2)におけるC2~C6のアルキニル基とは、置換基を有していてもよい炭素数2~6の直鎖状または分岐状のアルキニル基を意味し、具体的には、エチニル基、1-プロピニル基、1-ブチニル基、1-ペンチニル基、1-ヘキシニル基等を挙げることができる。
【0030】
式(1)及び式(2)のORXで表される有機オキシ基における、RXは、C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基を表す。また、RXにおけるC1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基は、前記C1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基と同じ定義である。
【0031】
上記「置換基を有していてもよい」の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基、C6~C10のアリール基を挙げることができる。上記ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基は、式(1)及び式(2)におけるハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、炭素数2~6のアルキニル基と同じである。また、上記C6~C10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基を挙げることができる。
【0032】
本件化合物群における式(1)で表される化合物には、不斉炭素が含まれるので光学異性体及びラセミ体が存在する。光学活性体及びラセミ体もすべて本発明の範囲に包含される。また、式(1)で表される本発明の化合物に光学異性体以外の異性体(例えば、位置異性体、互変異性体等)、水和物等の溶媒和物、結晶多形、及びエステル体(例えば、式(1)で表される本発明の化合物とメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、又はtert-ブタノールとのエステル、)が存在する場合、それらの化合物は、いずれも本発明の範囲に包含される。
【0033】
また、式(1)で表される本発明の化合物を構成する1個若しくは2個以上の原子が同位体である化合物、該化合物の薬学的に許容される塩、該化合物の薬学的に許容されるエステル、及び該化合物の水和物、並びにこれらの光学異性体も本発明に含まれる。本発明の化合物に含まれる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、臭素、及び塩素の同位体、例えば、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、75Br、76Br、77Br、82Br、37Cl等を挙げることができる。
【0034】
本件化合物群における式(1)で表される化合物の中でも、好ましくは、以下の式(1’)で表される化合物又はその塩である。
【0035】
【0036】
上記式(1’)中、R1、m1は、式(1)におけるR1、m1と同じ定義である。また、R1の中でも、ハロゲン原子が好ましく、m1は1~3が好ましく、2がより好ましい。そしてまた、R1の置換位置としては、隣接するカルボニル基に対し、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよいが、オルト位、パラ位が好ましい。
【0037】
本件化合物群における式(2)で表される化合物に種々の異性体(例えば、位置異性体、互変異性体等)、水和物等の溶媒和物、結晶多形、及びエステル体(例えば、式(1)で表される本発明の化合物とメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、又はtert-ブタノールとのエステル、)が存在する場合、それらの化合物は、いずれも本発明の範囲に包含される。
【0038】
また、式(2)で表される本発明の化合物を構成する1個若しくは2個以上の原子が同位体である化合物、該化合物の薬学的に許容される塩、該化合物の薬学的に許容されるエステル、及び該化合物の水和物、並びにこれらの光学異性体も本発明に含まれる。本発明の化合物に含まれる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、フッ素、臭素、及び塩素の同位体、例えば、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、18F、75Br、76Br、77Br、82Br、及び37Cl等を挙げることができる。
【0039】
本件化合物群における式(2)で表される化合物の中でも、好ましくは、以下の式(2’)で表される化合物又はその塩である。
【化12】
【0040】
上記式(2’)中、R3、m3は、式(2)におけるR3、m3と同じ定義である。また、R3の中でも、ORXで表される有機オキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基がより好ましい。上記m3は1~3が好ましく、2がより好ましい。そしてまた、R3の置換位置としては、隣接するカルボニル基に対し、オルト位、メタ位、パラ位のいずれでもよいが、メタ位が好ましい。
【0041】
式(1)で表される化合物は、具体的には、以下に示す化合物を例示することができる。
【0042】
【0043】
【0044】
上記化合物の中でも、好ましくは、式(1-1)の化合物(4-(2,4-ジフルオロフェニル)-2-(1H-インドール-3-イル)-4-オキソ-ブタン酸)である。
【0045】
式(2)で表される化合物は、具体的には、以下に示す化合物を例示することができる。
【0046】
【0047】
上記化合物の中でも、好ましくは、式(2-1)の化合物(5-(3,5-ジメトキシベンジルオキシ)-3-インドール酢酸)である。
【0048】
本件化合物群から選択される化合物が不斉炭素原子及び軸不斉に係わる不斉点をもつとき、かかる化合物は、考えられ得るすべての光学異性体を含み、それら光学異性体は任意の比で使用することができる。例えば、ある光学活性化合物は、エナンチオマーでもラセミでも任意の割合のエナンチオマー混合物でも使用することができ、不斉点が複数存在するときは、任意の割合のジアステレオマー混合物で使用してもよい。
【0049】
本件化合物群における生理学的に許容される塩には、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、亜鉛等の金属を含む塩基(例えば、これらの金属の水酸化物)から生成された金属塩や、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、リジン、プロカイン等の有機塩基から生成された有機塩などが含まれる。
【0050】
本件予防/治療剤の投与対象のがんとしては、例えば、大腸癌(結腸癌又は直腸癌);胃癌;肝臓癌;脳腫瘍;肺癌(腺癌、扁平上皮癌、腺扁平上皮癌、未分化癌、大細胞癌、小細胞癌);食道癌;十二指腸癌;小腸癌;皮膚癌;乳癌;前立腺癌;膀胱癌;膣癌;子宮頸部癌;子宮体癌;腎臓癌;膵臓癌;脾臓癌;気管癌;気管支癌;頭頚部癌;胆嚢癌;胆管癌;精巣癌;卵巣癌;骨組織、軟骨組織、脂肪組織、筋組織、神経組織、血管組織、又は造血組織における癌(具体的には、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性血管内皮腫、悪性シュワン腫、骨肉腫、軟部組織肉腫などの肉腫;肝芽腫、髄芽腫、腎芽腫、神経芽腫、膵芽腫、胸膜肺芽腫、網膜芽腫などの芽腫;胚細胞腫瘍;リンパ腫;白血病);等を挙げることができ、中でも大腸癌を好適に例示することができる。
【0051】
本件予防/治療剤は、必要に応じて、薬学的に許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、等張剤、添加剤、被覆剤、可溶化剤、潤滑剤、溶解補助剤、滑沢剤、風味剤、甘味剤、溶剤、ゲル化剤、栄養剤等の添加剤をさらに含むものであってもよい。かかる添加剤としては、具体的に、水、生理食塩水、動物性脂肪及び油、植物油、乳糖、デンプン、ゼラチン、結晶性セルロース、ガム、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアルキレングリコール、ポリビニルアルコール、グリセリンを例示することができる。
【0052】
本件予防/治療剤の投与形態としては、粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液などの剤型で投与する経口投与や、溶液、乳剤、懸濁液などの剤型を注射(例えば、皮下注射、静脈内注射、筋肉内注射)、又はスプレー剤の型で鼻孔内投与する非経口投与を挙げることができ、経口投与が好ましい。
【0053】
本件予防/治療剤における本件化合物群の投与量は、年齢、体重、性別、症状、薬剤への感受性等に応じて適宜決定され、例えば、0.1(μg/kg体重/日)~200(mg/kg体重/日)の投与量の範囲である。後述する本実施例において、モデルマウスを用いた実験により、1~10(mg/kg体重/日)の式(1-1)の化合物(4-(2,4-ジフルオロフェニル)-2-(1H-インドール-3-イル)-4-オキソ-ブタン酸)(以下、便宜上「本件化合物#1」ということがある)の投与量や、1~10(mg/kg体重/日)の式(2-1)の化合物(5-(3,5-ジメトキシベンジルオキシ)-3-インドール酢酸)(以下、便宜上「本件化合物#2」ということがある)の投与量が具体的に示されている。かかる投与量は、マウスにおけるヒト等価用量(HED)12.3(資料「Guidance for Industry Estimating the Maximum Safe Starting Dose inInitial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers」参照)を基に、ヒトへの投与量に換算した場合、81~810(μg/kg体重/日)である。このため、本件予防/治療剤における本件化合物群の投与量としては、1.0(μg/kg体重/日)~100(mg/kg体重/日)が好ましく、10(μg/kg体重/日)~50(mg/kg体重/日)がより好ましく、20(μg/kg体重/日)~10(mg/kg体重/日)がさらに好ましく、40(μg/kg体重/日)~5.0(mg/kg体重/日)がさらにより好ましく、60(μg/kg体重/日)~1.0(mg/kg体重/日)が最も好ましい。なお、本件予防/治療剤は、一日あたり単回又は複数回(例えば、2~4回)に分けて投与してもよい。
【0054】
本件予防/治療剤としては、本件化合物群以外にも、がんを予防又は治療する作用を有する成分を含むものであってもよいが、本件化合物群単独でもがんを予防及び/又は治療する作用を発揮するため、本件化合物群以外の、がんを予防又は治療する作用を有する成分(例えば、タンパク質、DNA、RNA、植物由来の抽出物、ポリマー)を含まないものであってもよい。
【0055】
本件化合物群から選択される化合物の合成方法は、以下に例示することができるが、これらの方法に限られず、一般的に知られている合成法を用いることができる。
【0056】
[式(1)で表される化合物の合成]
式(1)で表される化合物は、以下に示すように式(3)で表されるカルボン酸化合物と式(4)で表されるインドール誘導体とをマイケル反応させることにより得ることができる。
【0057】
【0058】
上記式(3)及び式(4)におけるR1、R2、m1、m2は、式(1)におけるR1、R2、m1、m2と同じ定義である。
【0059】
上記式(3)で表されるカルボン酸化合物は、以下に示すようにベンゼン誘導体(5)と無水マレイン酸とのフリーデル-クラフツ反応により合成することができる。かかるフリーデル-クラフツ反応は、ルイス酸、リン酸、ポリリン酸等を触媒として作用させることで行い、触媒として好適には塩化アルミニウムが好適に用いられる。
【0060】
【0061】
上記式(5)及び式(3)におけるR1、m1は、式(1)におけるR1、m1と同じ定義である。
【0062】
上記式(4)で表されるインドール誘導体は、市販品を用いることができる。市販のインドール誘導体としては、4-フルオロインドール、4-クロロインドール、4-ブロモインドール、6-フルオロインドール、6-クロロインドール、6-ブロモインドール、5-メチルインドール等を挙げることができる。
【0063】
また、上記式(4)で表されるインドール誘導体は、公知の有機化学反応を用いる有機合成手法によって得ることもできる。例えば、R2がハロゲン原子である場合、市販のインドールに、N-ブロモスクシンイミド、N-クロロスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド等のハロゲン化剤を作用させることにより上記式(4)で表されるインドール誘導体を得ることができる。また、R2がC1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、ORXで表される有機オキシ基である場合、上述のように市販のインドールをハロゲン化した後、アルキルリチウム等の有機リチウム試薬との反応、鈴木-宮浦カップリング反応等によって、上記式(4)で表されるインドール誘導体を得ることができる。
【0064】
[式(2)で表される化合物の合成]
式(2)で表される化合物は、式(6)で表される5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸誘導体を出発原料として、合成することができる。具体的には、式(6)で表される5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸を、メタノールやエタノール、プロパノール、イソプロパノール等のアルコール中、酸性条件下で反応させることにより、式(7)で表されるエステル体へと誘導する。
次に、上記エステル体と式(8)で表されるハロゲン化合物とを塩基の存在下反応させることで、式(9)で表される化合物を合成できる。上記の塩基としては、水素化ナトリウムや、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸セシウムといったアルカリ金属の炭酸塩が挙げられる。
続いて、式(9)で表される化合物のエステル部分を加水分解することにより、式(2)で表される化合物が合成される。
【0065】
【0066】
上記式(7)、(9)中、RYは、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基等のC1~C3アルキル基を表す。
上記式(8)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子を表す。
上記式(6)、式(7)、式(8)、式(9)におけるR3、R4、m3、m4は、式(2)におけるR3、R4、m3、m4と同じ定義である。
【0067】
上記式(6)で表される5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸誘導体は、市販の5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸等を用いてもよいが、公知の有機化学反応を用いる有機合成手法によって得ることもできる。例えば、R4がハロゲン原子である場合、市販の5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸に、N-ブロモスクシンイミド、N-クロロスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド等のハロゲン化剤を作用させることにより上記式(6)で表される5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸誘導体を得ることができる。また、R4がC1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、ORXで表される有機オキシ基である場合、上述のように市販の5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸をハロゲン化した後、アルキルリチウム等の有機リチウム試薬との反応、鈴木-宮浦カップリング反応等によって、上記式(6)で表される5-ヒドロキシ-3-インドール酢酸誘導体を得ることができる。
【0068】
上記式(8)で表されるハロゲン化合物は、市販のベンジルブロミド、4-メチルベンジルブロミド、2-メチルベンジルブロミド、3-メチルベンジルブロミド、3-クロロベンジルブロミド、2-クロロベンジルブロミド、2,6-ジクロロベンジルブロミド、3-フルオロベンジルブロミド、4-フルオロベンジルブロミド、3,5-ジメトキシ臭化ベンジル等を用いてもよいが、公知の有機化学反応を用いる有機合成手法によって得ることもできる。例えば、R3がハロゲン原子である場合、市販のベンジルブロミドに、N-ブロモスクシンイミド、N-クロロスクシンイミド、N-ヨードスクシンイミド等のハロゲン化剤を作用させることにより上記式(8)で表されるハロゲン化合物を得ることができる。また、R3がC1~C6のアルキル基、C2~C6のアルケニル基、C2~C6のアルキニル基、ORXで表される有機オキシ基である場合、上記の市販のハロゲン化物を用いるか、上述のように市販のベンジルブロミドをハロゲン化した後、アルキルリチウム等の有機リチウム試薬との反応、鈴木-宮浦カップリング反応等によって、上記式(8)で表されるハロゲン化合物を得ることができる。
【0069】
上記のすべての有機反応は、それぞれ溶媒中で行うことができるが、溶媒は反応温度や反応物等によって適宜選択される。また、上記有機反応の反応温度は、用いる溶媒の沸点等の条件によって適宜選択される。上記有機反応で溶媒を用いる場合、得られた反応溶液を必要に応じて濃縮した後、残渣をそのまま次の反応に使用してもよく、適宜な後処理を行った後に、式(1)で表される化合物として用いてもよい。後処理の具体的な方法としては、抽出処理及び/又は晶出、再結晶、クロマトグラフィー等の公知の精製を挙げることができる。
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
【実施例】
【0071】
1.材料と方法
[本件化合物群]
本件化合物群に包含される具体的な2種類の化合物(本件化合物#1及び本件化合物#2)は、それぞれ特許文献4(国際公開第2014/080640号パンフレット)に記載の化合物#5(本件化合物#1に相当)及び化合物#35(本件化合物#2に相当)の合成方法にしたがって合成した。細胞遊走試験においては、本件化合物#1及び本件化合物#2を100%DMSOに溶解し、使用した。
【0072】
[細胞培養]
ヒト大腸癌細胞株HCT116細胞(ATCCより入手)は、10%ウシ胎児血清(FBS)(Biowest社製)、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Thermo FisherScience 社製)を含むDMEM(Dulbecco’s Modified Eagle Medium)培養液(Sigma-Aldrich社製)中で5%CO2/20%O2、37℃条件下で培養・維持した。
【0073】
[各群の調製]
大腸癌モデルマウスは、アゾキシメタン(AOM;和光純薬社製)及びデキストラン硫酸ナトリウム(DSS、MP Biomedicals社製)を用いて作製した。具体的には、まず5週齢雄性ICRマウス(CLEA Japan社製)を1週間、順化飼育した。6週齢時に、マウスを無作為に対照群及び5種類の大腸癌群(プラセボ群、本件化合物#1[1]群、本件化合物#1[10]群、本件化合物#2[1]群、及び本件化合物#2[10]群)に群分けを行い、大腸癌群には、10(mg/kg体重)のAOMを腹腔内に投与し、その7日後より1週間2.5%(w/v)のDSSを自由飲水させ、その後14日間水道水を自由飲水させた。このDSS投与を3サイクル(計70日間)行い、大腸癌モデルマウスを作製した。上記AOMを腹腔内に投与するとき(すなわち、6週齢時)に、本件化合物#1(1)群及び本件化合物#1(10)群には、それぞれ1(mg/kg体重/日)及び10(mg/kg体重/日)の本件化合物#1を含む生理食塩水を、その後70日間連日経口投与し、本件化合物#2(1)群及び本件化合物#2(10)群には、それぞれ1(mg/kg体重/日)及び10(mg/kg体重/日)の本件化合物#2を含む生理食塩水を、その後70日間連日経口投与し、プラセボ群には、生理食塩水を、その後70日間連日経口投与した。また、対照群には、6週齢時に、生理食塩水を、その後70日間連日経口投与した。全てのマウスは、3サイクル目が終了した直後に犠死させ結腸を採取した。結腸は全長外観を写真に撮影し、結腸の長さ(
図1B参照)、並びに、結腸における腫瘍面積(
図1A参照)、結腸における腫瘍面積の割合(
図2A参照)、及び直径2mm超の腫瘍数(
図2B参照)を測定した。なお、腫瘍は、結腸(大腸)には、がんを含むと思われる隆起性病変を肉眼的に認め、この隆起性病変(すなわち、腫瘍)の面積、及び全結腸面積を、NIH Image J version 1.51(U. S. NationalInstitutes of Health、MD、http://imagej.nih.gov/ij/index.html)にて計算した。結腸における腫瘍面積の割合は、式「(隆起性病変面積/全結腸面積)×100」を基に算出した。
【0074】
[細胞遊走試験]
Corningフルオロブロック24マルチウェルインサートシステム(ポアサイズ8.0μm)(Corning社製)の各ウェルに、7.5×104個の大腸癌細胞株HCT116を播種し、FBS不含DMEM培養液、又は50μMの本件化合物#2を含むFBS不含DMEM培養液中で48時間培養した。なお、プレート下部のチャンバーには、誘引物質である20%FBSを含むDMEM培養液を加えた。セルカルチャーインサートの下側表面のメンブレンを通過した遊走細胞を、Diff-Quikキット(シスメックス社製)を用いて染色し、メンブレンを風乾後、位相差顕微鏡を用いて3カ所の視野で細胞数を測定した。
【0075】
[統計解析]
2群間の比較には、Student’s t-testを使用し、3群間の比較には、Dunnet’s test又はTukey’s testを使用した。生存率(
図3参照)は、Kaplan-Meier生存曲線を用いてlog-rank testにて評価した。統計学的解析にはJMP version 14(SAS Institute社製)を用いた。いずれの検定結果についても、p値が0.05未満を統計学的に有意であるとした。
【0076】
2.結果
結腸における腫瘍面積は、本件化合物群未投与の大腸癌群(すなわち、プラセボ群)と比べ、本件化合物群投与の大腸癌群(すなわち、本件化合物#1(10)群、本件化合物#2(1)群、及び本件化合物#2(10)群)の方が減少した(
図1A参照)。また、結腸の長さは、対照群と比べ、本件化合物群未投与の大腸癌群(すなわち、プラセボ群)の方が短縮したのに対して、本件化合物群投与の大腸癌群(すなわち、本件化合物#1(10)群、本件化合物#2(1)群、及び本件化合物#2(10)群)では、かかる短縮が抑制していた(
図1B参照)。
【0077】
また、結腸における腫瘍面積の割合は、本件化合物群未投与の大腸癌群(すなわち、プラセボ群)と比べ、本件化合物群投与の大腸癌群(すなわち、本件化合物#1(1)群、本件化合物#1(10)群、及び本件化合物#2(10)群)の方が減少した(
図2A参照)。また、直径2mm超の腫瘍数は、本件化合物群未投与の大腸癌群(すなわち、プラセボ群)と比べ、本件化合物群投与の大腸癌群(すなわち、本件化合物#1(1)群、本件化合物#1(10)群、及び本件化合物#2(10)群)の方が減少した(
図2B参照)。
【0078】
さらに、プラセボ群は8匹中4匹のマウスが死亡したのに対して、本件化合物#2(10)群は、8匹すべてのマウスが生存していた(
図3参照)。
【0079】
これらの結果は、本件化合物群は、がん発症に伴うがん細胞の増殖を抑制し、がんによる生存率低下を改善する効果を有することを示している。
【0080】
また、大腸癌細胞の細胞遊走レベルは、本件化合物#2非存在下で大腸癌細胞を培養した場合と比べ、本件化合物#2存在下で大腸癌細胞を培養した場合の方が、低下した(
図4参照)。この結果は、本件化合物群は、がん細胞の遊走レベルを低下し、がんの転移抑制効果を有することを示している。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、がんの予防又は治療に資するものである。