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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】体位保持用マット
(51)【国際特許分類】
   A61G 13/12 20060101AFI20240524BHJP
   A47C 27/00 20060101ALI20240524BHJP
   A47C 27/14 20060101ALI20240524BHJP
   A61G 7/057 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61G13/12 A
A47C27/00 B
A47C27/00 D
A47C27/14 B
A47C27/14 Z
A61G7/057
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022568224
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(86)【国際出願番号】 JP2021044196
(87)【国際公開番号】W WO2022124175
(87)【国際公開日】2022-06-16
【審査請求日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2020204661
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503285852
【氏名又は名称】やまと産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111811
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 浩司
(72)【発明者】
【氏名】平川 博丈
(72)【発明者】
【氏名】橘 正能
(72)【発明者】
【氏名】山田 和久
(72)【発明者】
【氏名】柳山 隆一
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-132293(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0338499(US,A1)
【文献】登録実用新案第3177091(JP,U)
【文献】米国特許第05449339(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 13/12
A47C 27/00
A47C 27/14
A61G 7/057
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
体位を保持するための所定の厚みを有するマットであって、
弾性を有する発泡体から構成され、
前記マットを所定の大きさに切り取り可能とするための切り取り可能線を有し、
前記切り取り可能線には、厚み方向に貫通する切れ目が所定間隔で設けられ
前記切り取り可能線が前記マットの厚み方向に対して垂直な面において格子状に設けられている
ことを特徴とする体位保持用マット。
【請求項2】
前記マットの厚み方向の一方面側及び/又は他方面側に複数の凸部および凹部が平面視において直交する2方向にそれぞれ交互となるよう形成されている請求項1記載の体位保持用マット。
【請求項3】
前記マットの厚みに対する前記凸部の高さの割合が15%以上40%以下の範囲である請求項2記載の体位保持用マット。
【請求項4】
前記切れ目の長さが10mm以上である請求項1~3のいずれかに記載の体位保持用マット。
【請求項5】
隣り合う切れ目の間の接続部の長さが1mm以上8mm以下の範囲である請求項1~4のいずれかに記載の体位保持用マット。
【請求項6】
前記発泡体がポリウレタンフォームである請求項1~5のいずれかに記載の体位保持用マット。
【請求項7】
前記発泡体の密度が20kg/m以上である請求項1~6のいずれかに記載の体位保持用マット。
【請求項8】
前記マットを切り取る際の切り取り長さの指標となる目印が設けられている請求項1~7のいずれかに記載の体位保持用マット。
【請求項9】
前記目印が前記マットの側面に形成された前記マットの厚み方向に延在する溝である請求項8記載の体位保持用マット。
【請求項10】
体位を保持するための所定の厚みを有するマットであって、
弾性を有する発泡体から構成され、
前記マットを所定の大きさに切り取り可能とするための切り取り可能線を有し、
前記切り取り可能線には、厚み方向に貫通する切れ目が所定間隔で設けられ
前記マットの厚み方向の一方面側及び/又は他方面側に複数の凸部および凹部が平面視において直交する2方向にそれぞれ交互となるよう形成されている
ことを特徴とする体位保持用マット。
【請求項11】
前記マットの厚みに対する前記凸部の高さの割合が15%以上40%以下の範囲である請求項10記載の体位保持用マット。
【請求項12】
体位を保持するための所定の厚みを有するマットであって、
弾性を有する発泡体から構成され、
前記マットを所定の大きさに切り取り可能とするための切り取り可能線を有し、
前記切り取り可能線には、厚み方向に貫通する切れ目が所定間隔で設けられ
前記マットを切り取る際の切り取り長さの指標となる目印が設けられている
ことを特徴とする体位保持用マット。
【請求項13】
前記目印が前記マットの側面に形成された前記マットの厚み方向に延在する溝である請求項12記載の体位保持用マット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科や外科などの術中において被術者の体位の保持などに好適に用いられるマットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
整形外料や外科の分野においては、被術者の体位を一定に保ったまま手術を長時間に渡って行う場合には、砂嚢、各種形状及び大きさの独立発泡体ブロックや抑制帯等の手術用固定具、陰圧式固定具等が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、長手方向に連結された気体透過性袋体の各々の内部に発泡ビーズが充填されたクッション体を気体非透過性袋体内に収納した体位固定マットであって、被術者の体位の位置を確認後、気体非透過性袋体内を脱気してクッション体と気体非透過性袋体とを密着させるとともに発泡ビーズをクッション体内で固定させて被術者の体位を固定するマットが開示されている。
【0004】
また特許文献2には、所定の厚みと圧縮応力を有する粘弾性ゲル状物質と、それを包む所定の厚みと引張強度等を有するフィルムよりなる本体と、所定の厚みと硬度と前記ゲル状粘弾性体よりも高い硬度を有するエラストマーよりなる底部とからなる体位保持具が開示されている。
【0005】
また市販品としては「ソフトナース」(登録商標)と呼ばれる低反発ウレタンフォームからなるマットが手術用の体位保持用マットとして使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2019-63416号公報
【文献】特開2005-52183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2に開示の体位保持マットは、原則として使用後洗浄して再使用するものであり、また構造上所望の大きさに切り取って使用することは不可能である。このため使用可能な場所や体位などが限られる。また、「ソフトナース」(登録商標)も原則として使用後洗浄して再使用するものであるが、所望の大きさに切り取ることは可能である。しかし、切り取りにはカッター等の切断具が必要である。このため簡便な作業と迅速な対応が要求される手術室などで使用されるマットには更なる性能の向上が求められている。
【0008】
本発明はこのような従来の問題に鑑みてなされたものであり、その目的は、カッターなどの切断具を用いることなく作業者が手指で切り取ることが可能で、かつ折り曲げて使用することも可能で、整形外科や外科などの術中において被術者の体位の保持にも使用できる体位保持用マットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成する本発明に係る体位保持用マット(以下、単に「マット」と記すことがある。)は、体位を保持するための所定の厚みを有するマットであって、弾性を有する発泡体から構成され、所定の大きさに切り取り可能とするための切り取り可能線を有し、前記切り取り可能線には、厚み方向に貫通する切れ目が所定間隔で設けられていることを特徴とする。
【0010】
前記構成の体位保持用マットでは、前記切り取り可能線が前記マットの厚み方向に対して垂直な面において格子状に設けられているのが好ましい。
【0011】
また前記構成の体位保持用マットでは、前記マットの厚み方向の一方面側及び/又は他方面側に複数の凸部および凹部が平面視において直交する2方向にそれぞれ交互となるよう形成されているのが好ましい。
【0012】
前記構成の体位保持用マットでは、前記マットの厚みに対する前記凸部の高さの割合が15%以上40%以下の範囲であるのが好ましい。
【0013】
前記構成の体位保持用マットでは、前記切れ目の長さが10mm以上であるのが好ましい。
【0014】
前記構成の体位保持用マットでは、隣り合う切れ目の間の接続部の長さが1mm以上8mm以下の範囲であるのが好ましい。
【0015】
前記構成の体位保持用マットでは、前記発泡体がポリウレタンフォームであるのが好ましい。
【0016】
前記構成の体位保持用マットでは、前記発泡体の密度が20kg/m以上であるのが好ましい。
【0017】
前記構成の体位保持用マットでは、前記マットを切り取る際の切り取り長さの指標となる目印が設けられているのが好ましい。前記目印としては前記マットの側面に形成された前記マットの厚み方向に延在する溝であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の体位保持用マットによれば、カッターなどの切断具を用いることなく作業者が手指で切り取ることが可能で、かつ折り曲げて使用することも可能となる。これにより整形外科や外科などの術中において被術者の体位の保持に有効に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態に係るマットの上側から見た斜視図である。
図2図1に示すマットの下側から見た斜視図である。
図3図1に示すマットの垂直断面図である。
図4】切り取り可能線Lの部分拡大図である。
図5】本発明に係るマットの使用例を示す斜視図である。
図6】本発明に係るマットの他の使用例を示す斜視図である。
図7】第2実施形態に係るマットの下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るマットについて図に基づいて説明するが本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではない。また、本明細書における「厚み方向」、「X方向」、「Y方向」は図において示される厚み方向、X方向、Y方向を意味するものとする。
【0021】
(第1実施形態)
(マット)
図1に、第1実施形態に係るマットM1の、厚み方向である上下方向上側から見た斜視図を示し、図2に上下方向下側から見た斜視図を、図3に垂直断面図をそれぞれ示す。これらの図に示すマットM1は、平面視が長方形状で、弾性を有する発泡体から構成されている。厚み方向一方面側(図1では上面側)が複数の凸部11および凹部12が平面視において直交する2方向にそれぞれ交互となるようなプロファイル加工が施されている。このようなプロファイル加工が施されていることによって体圧分散性および通気性が向上し褥瘡等の抑制が図れる。
【0022】
マットM1の厚みD(図3に図示)に特に限定はないが、通常、40mm以上80mm以下の範囲が好ましく、より好ましくは50mm以上70mm以下の範囲である。また、体圧分散性や通気性等を向上させる観点からは凸部11の高さを高くすることが考えられるが、凸部11の高さが高くなると耐久性などが低下する。このため、通常、凸部11の高さh(図3に図示)はマットM1の厚みD(図3に図示)に対して15%以上40%以下の範囲とすることが推奨される。なお、プロファイル加工はマットM1の厚み方向の一方面側のみならず他方面側に施しても構わないし、あるいはまたマットM1の厚み方向の両面側共にプロファイル加工を施さず平面状としても構わないが、整形外科や外科などの術中において被術者の体位の保持などに使用する場合には、少なくとも一方面側にプロファイル加工が施されているのが好ましく、使用に際してはプロファイル加工が施された側が被術者側となるようにマットM1を配置するのが好ましい。
【0023】
マットM1を構成する発泡体としては、例えば、ポリウレタンフォーム、ポリエチレンフォーム、ポリプロピレンフォームなどの弾性を有する樹脂発泡体が好適に使用できる。これらの中でも反発弾性率が低く体圧分散性が高いポリウレタンフォームが好適に使用される。加えて、通気性や透水性の機能をも発揮させる観点からは、セル膜を有しない三次元網目構造のポリウレタンフォームが推奨される。また、発泡体中にカーボンなどの導電性粉や抗菌剤、防カビ剤を含有させることによってマットM1に帯電(静電気)防止、抗菌性能、防カビ性能を付与してもよい。
【0024】
また、マットM1を構成する発泡体の密度としては20kg/m以上であるのが望ましい。発泡体の密度が20kg/m未満であるとマットM1を折り曲げた際に、使用者の意に反して切り取り可能線でマットM1が断裂する虞がある。また、保管や輸送時の省スペース化のためにマットM1を圧縮した場合に、使用時において圧縮状態からの復元が不十分となる虞がある。発泡体の密度のより好ましい下限値は25kg/mである。一方、発泡体の密度の上限値に特に限定はないが、通常、50kg/mである。
【0025】
(切り取り可能線)
図2に示すように、マットM1には、マットM1を所定の大きさに切り取り可能とするための複数本の切り取り可能線LがX方向及びY方向に所定間隔で格子状に設けられている。切り取り可能線Lには厚み方向に貫通する切れ目Br(図4に図示)が線方向に所定間隔で形成されている。このように切り取り可能線LがマットM1に設けられていることによって、使用者はカッターなどの切断具を用いることなく手指でマットM1を所望の大きさに切り取り可能線Lを利用して切り取ることが可能となる。なお、本実施形態で示すマットM1では、X-Y平面におけるマットM1の周縁部に切り取り可能線Lが形成されていない外周枠部10(図2に図示)が設けられているが、これは輸送時や保管時などにマットM1が切り取り可能線Lで断裂することなどを抑制するためのものであって、マットM1に外周枠部10が設けられていなくても構わない。
【0026】
切り取り可能線Lは1本であっても2本以上であっても構わない。切り取り可能線Lが2本以上の場合その形成間隔P1,P2(図2に図示)に特に限定はなく、マットM1の使用目的などから適宜決定すればよい。例えば、整形外科や外科などの術中で被術者の体位の保持などに使用する場合には形成間隔P1,P2は10mm以上2200mm以下の範囲が好ましい。また、切り取り可能線Lは直線状に限定されるものではなく屈曲線や曲線などであっても構わない。
【0027】
図4に切り取り可能線Lの部分拡大図を示す。図4に示すように、切り取り可能線Lには線方向に長さLbの切れ目Brが所定間隔(接続部Co:長さLc)で複数設けられている。切れ目Brは厚み方向にマットM1を貫通している。切り取り可能線Lを構成する切れ目Brの長さLbは、通常、10mm以上が好ましい。上限値に特に限定はないが50mm程度である。切れ目Brの長さLbが10mm未満であると使用者がマットM1を切り取る際に切れ目Brに使用者の手指を差し入れにくく円滑に切り始められない虞がある。また、切り取り可能線Lから外れてマットM1が断裂する虞もある。一方、切れ目Brの長さLbが50mmを超えると使用者の手指は差し入れやすくはなるものの、運搬時等に意図しない分離が発生する虞がある。
【0028】
切れ目Brと共に切り取り可能線Lを構成する、隣り合う切れ目Br間の接続部Coの長さLcは1mm以上8mm以下の範囲が好ましい。接続部Coの長さLcが1mm未満であると、運搬時等に意図しない分離が発生する虞がある。一方、接続部Coの長さLcが8mmを超えると、マットM1の切断面の性状が汚くなる虞があり、また切り屑が発生する虞もある。接続部Coの長さLcは、より好ましくは1mm以上6mm以下の範囲、さらに好ましくは1mm以上4mm以下の範囲である。特に好ましくは1mm以上3mm以下の範囲である。
【0029】
切り取り可能線Lを構成する切れ目Brの長さLbと接続部Coの長さLcとの比率に特に限定はないが、通常、切れ目Brの長さLbは接続部Coの長さLcよりも長いのが好ましい。
【0030】
なお、接続部Coは厚み方向の少なくとも一部において切れ目Br間を接続していればよく、例えばマットM1の厚み方向に所定深さの切込みが接続部Coに設けられていてもよい。このような切込みが形成されていることによって切り取り可能線LでのマットM1の切り取りがより容易となるとともに、切り取り可能線Lから外れてマットM1が切断されることが抑えられる。
【0031】
(使用例1)
図5に、本発明のマットの使用例を示す。図5に示す使用例は、仰臥位の被術者の胴体から垂直方向に伸ばされた右腕が、手が水平よりもやや上方に位置するように子マットm1によって術台上に保持されている。具体的には、厚み方向片面側がプロファイル加工された不図示の親マット(例えば1900mm×800mm)から、短手方向の長さが右腕の断面最長径よりも長く、長手方向の長さが右腕よりも数十cm長い平面視が長方形状の子マットm1が切り出され、子マットm1のプロファイル加工された面上に被術者の右腕の全体が載置され、子マットm1の長手方向の右側の先端部が下方に180度折り曲げられ、折り曲げによって2層となった部分に被術者の右手が載置され、右腕は手側から肩側に向かってやや下方に傾斜した状態で保持される。
【0032】
(使用例2)
図6に、本発明のマットの他の使用例を示す。図6に示す使用例は、仰臥位の被術者の両下肢の膝が若干曲がった状態となるように2枚の子マットm2,m3によって術台上に保持されている。具体的には、厚み方向両面がプロファイル加工された不図示の親マットから、短手方向の長さが大腿部の骨方向長さと略同一で、長手方向の長さが被術者の横幅よりも長い平面視が長方形状の子マットm2が切り出され、両大腿部と術台との間に配置されている。また、厚み方向片面側がプロファイル加工された不図示の親マットから、短手方向の長さが下腿部の骨方向長さよりも短く、長手方向の長さが被術者の横幅よりも長い平面視が長方形状の子マットm3が切り出され、両下腿部の踝側と術台との間に配置されている。子マットm2の厚みは子マットm3の厚みよりも厚いので、被術者の両下肢は膝が若干曲がった状態で術台上に保持される。
【0033】
このように本発明のマットによれば切り取り可能線を使用して親マットから所望の大きさの子マットを切り取ることができ、またマットを180度に折り曲げて使用することもできる。加えて、本発明のマットは、使用後は従来品のような洗浄・再使用することなく廃棄することもできる。
【0034】
(第2実施形態)
図7に、第2実施形態に係るマットM2の下面図を示す。図7に示すマットM2が第1実施形態のマットM1と異なる点は、マットM2の周縁部に、切り取り可能線Lが形成されていない外周枠部10が設けられていない点、およびマットM2の側面にマットを切り取る際の切り取り長さの指標となる目印であるマットの厚み方向に延在する溝が設けられている点である。その他の構成については、マットの形状および大きさを除き、第1実施形態のマットM1と同じであるので、マットM1と同じ部分については同一の符号を付しここではその説明は省略することとする。
【0035】
マットM2は、Y方向に直線状に延在する間隔P1で形成された7本の切り取り可能線Lと、X方向に直線状に延在する間隔P2で形成された3本の切り取り可能線Lとを有する。そして、これらの切り取り可能線Lが達するマットM2の側面には、マットM2の厚み方向(図7の紙面垂直方向)に延在するV形状の溝(以下、「V溝」と記すことがある。)G1がそれぞれ形成されている。より詳細には切り取り可能線Lの端部がV溝G1の底頂に突き当たるようにV溝は形成されている。
【0036】
切り取り可能線Lの各々の端部にV溝G1が形成されていることで、曲げ応力などの外力が加わっていない通常状態のマットM2では視認しづらい切り取り可能線Lの形成位置が分かりやすくなると共に、V溝の対向する側面を押し広げるように指で力を加えることでV溝を切り離し開始点としてマットM2をより容易に切り離すことが可能となる。
【0037】
またマットM2では、Y方向に隣り合うV溝G1間に所定間隔でU形状の溝(以下、「U溝」と記すことがある。)G2が形成されている。V溝G1とV溝G1との間に複数のU溝G2が等間隔で形成されていることで、所望の大きさのマットが容易に把握され切り出すことができるようになる。具体的には、Y方向の長さが、切り取り可能線Lの形成間隔P2の整数倍以外の長さのマットを切り出す必要が生じた場合であっても、U溝G2を指標としてマットの切り取り位置を容易に定めることが可能となる。例えば、V溝G1とU溝G2との間およびU溝G2とU溝G2との間の長さがそれぞれ5cmとされている場合に、Y方向の長さが25cmのマットを切り出すときは、所定のV溝G1から次のV溝G1までの長さが20cmであるから当該V溝G1から1つ離れた隣のU溝G2の位置でマットを切り取ればよい。
【0038】
マットM2に形成する溝の形状はV形状やU形状に限定されるものではなく、従来公知の形状を採用できる。また、溝の形状は1種類であってもよいし2種類以上であってもよい。ただし、切り取り可能線Lの形成位置かどうかを判別可能とする観点からは溝の形状は2種類以上とし、切り取り可能線Lの形成位置とそれ以外の位置とで溝の形状を異なるようにするのが好ましい。
【0039】
本実施形態ではマットM2の側面に形成したV溝G1およびU溝G2をマットを切り取る際の切り取り長さの指標としていたが、マットの切り取り長さの目印としては溝に限定されるものではなく、例えば、マットM2の表面への印刷表示などであっても構わない。
【実施例
【0040】
(例1~例6)
X方向:150mm,Y方向:200mm,厚み:60mm,密度25kg/m,片面側にプロファイル加工(凸部20mm)がなされたポリウレタンフォームに、X方向に50mm間隔で、Y方向に75mm間隔でX方向またはY方向に平行な切り取り可能線を形成し例1~例6のマットを作製した。切り取り可能線の切れ目Brおよび接続部Coの長さは表1に示すとおりである。そして、作製したマットについて下記の項目について評価試験を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
【0041】
(例7~例11)
プロファイル加工の凸部11の高さを10mmとした以外は例2~例6と同様にしてマットを作製し評価試験を行った。評価結果をまとめて表1に示す。
【0042】
(折り曲げ評価)
マットをX方向の中央部分を中心として180度に折り曲げ、2~3秒圧縮した後、切り取り可能線の割れの有無を確認した。同様にして、Y方向の中央部分を中心として180度に折り曲げ、2~3秒圧縮した後、切り取り可能線の割れの有無を確認した。
【0043】
(切り始めの容易さ)
マットの切れ目に手指を入れて切れ目を押し広げて切り始めの容易さを下記基準で評価した。
◎:切れ目に入れた手指で容易に最初の接続部を切断できる。
○:切れ目に入れた手指で最初の接続部を切断できるがやや力が必要である。
△:切れ目に入れた手指で最初の接続部を切断する際に力が必要で切断しにくい。
【0044】
(切り取り易さ)
マットの切れ目を押し広げて進展させる容易さを下記基準で評価した。
◎:容易に切れ目を押し広げて進展できる。
○:切れ目を押し広げるためにやや力が必要だが切れ目を進展できる。
△:切れ目を押し広げるために力が必要で、切れ目を進展しにくい。
【0045】
(接続部以外への切り込みの発生)
切れ目を進展させる際に接続部以外への切り込みの有無を下記基準で評価した。
◎:接続部の切断は容易であり、切れ目に沿って容易に直線的に切断できる。
○:接続部の切断にやや力が必要で、切れ目に沿って直線的に切断するのに注意が必要。
△:接続部の切断に力が必要で、切れ目に沿って直線的に切断するのに慎重さが必要。
【0046】
(切り取り面の性状・切り屑)
マットを切り取り可能線で切り取った後の切り取り面の性状・切り屑の有無を下記基準で評価した。
◎:平滑で、切り屑の発生がない。
○:小さな凹凸があるが、切り屑の発生はない。
△:凹凸が目立ち、やや汚く、切り屑が発生する虞がある。
【0047】
【表1】
【0048】
表1から明らかなように、プロファイル加工の凸部の高さが20mmのマットでは、切り取り可能線の切れ目を12mmとし接続部を1mm及び2mmとした例1及び例2のマットが折り曲げ評価および切り取り評価のいずれにおいても優れていた。またプロファイル加工の凸部の高さが10mmのマットでは、切り取り可能線の切れ目を12mmとし接続部を2mmとした例7のマットが折り曲げ評価および切り取り評価のいずれにおいても優れていた。
【0049】
また、切り取り可能線の切れ目を12mmとして接続部を3mm,4mm,6mmと長くした例3~例5および例8~例10のマットでは、「切り始めの容易さ」、「切り取り易さ」、「切り取り面の性状・切り屑」の各評価項目は接続部が長くなると低下する傾向が見られた。
【0050】
切り取り可能線の切れ目を16mm、接続部を8mmと、例5及び例10のマットと切れ目と接続部との長さの比を同じとし、長さを長くした例6及び例11のマットでは、例5及び例10のマットに比べて「切り始めの容易さ」は低下したものの、他の評価項目は同じであった。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のマットではカッターなどの切断具を用いることなく作業者が手指で切り取ることが可能で、かつ折り曲げて使用することも可能で、整形外科や外科などの術中において被術者の体位の保持に有効に使用できる。
【符号の説明】
【0052】
D マットの厚み
h 凸部の高さ
L 切り取り可能線
M1,M2 マット
m1 子マット
m2 子マット
m3 子マット
10 外周枠部
11 凸部
12 凹部
Br 切れ目
Co 接続部
G1 V溝
G2 U溝
Lb 切れ目の長さ
Lc 接続部の長さ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7