IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エスビック株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社ユニソンの特許一覧

<>
  • 特許-組積材の施工方法 図1
  • 特許-組積材の施工方法 図2
  • 特許-組積材の施工方法 図3
  • 特許-組積材の施工方法 図4
  • 特許-組積材の施工方法 図5
  • 特許-組積材の施工方法 図6
  • 特許-組積材の施工方法 図7
  • 特許-組積材の施工方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】組積材の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/54 20060101AFI20240524BHJP
   E04B 2/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
E04B2/54
E04B2/02 100
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2023192385
(22)【出願日】2023-11-10
【審査請求日】2023-11-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594033260
【氏名又は名称】エスビック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593113569
【氏名又は名称】株式会社ユニソン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 佳雄
(72)【発明者】
【氏名】浅岡 直人
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-291622(JP,A)
【文献】特開2004-147553(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/54
E04B 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の組積材を組積するとともに前記組積材同士をモルタルによって互いに結合することにより組積造を施工する方法であって、
前記組積材の幅方向、厚み方向、上下方向をそれぞれ単に幅方向、厚み方向、及び上下方向とするとき、
前記組積材の上面には、前記厚み方向の中央において前記幅方向に沿って延在する溝状の横空洞部と、前記厚み方向における両端に位置する上面上段部と、前記上面上段部と前記横空洞部との間に位置し、前記上面上段部及び前記横空洞部の双方と段差を形成する上面下段部と、が設けられており、
前記組積材の下面には、前記厚み方向における両端であって前記上面上段部に対応する位置に設けられた下面上段部と、前記厚み方向において前記下面上段部同士の間に位置するとともに下方に突出する下面下段部と、が設けられており、
下側の前記組積材の上面のうち、前記横空洞部と、前記横空洞部に対して上方に連なるとともに前記上面上段部同士の間に形成され上部空間とに前記モルタルを充填するモルタル充填工程と、
前記モルタルが充填された下側の前記組積材に対して上方から上側の前記組積材を組積することで上側の前記組積材の前記下面下段部を前記モルタルに密着させる組積工程と、を備え、
前記モルタル充填工程では、前記モルタルの上面が前記上面上段部と面一となるように前記モルタルを充填する、
組積材の施工方法。
【請求項2】
前記組積材は、前記上下方向に延在するとともに前記組積材の下面のみに開口する縦空洞部を有するものである、
請求項1に記載の組積材の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組積材の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、組積材として、建築用コンクリートブロック(JIS A 5406)などが知られている。
図8に示すように、コンクリートブロック(以下、ブロック110)の上面には、ブロック110の厚み方向(図8の左右方向)の中央においてブロック110の幅方向(図8の紙面直交方向)に沿って延在する溝状の横空洞部112が設けられている。ブロック110を組積する際には、作業者は、下側のブロック110の上面のうち厚み方向の両側に目地モルタル140を積む。作業者は、コテを用いてモルタルを棒状に成形することで目地モルタル140を形成する。続いて、作業者は、目地モルタル140が積まれた下側のブロック110に対して上方から上側のブロック110を組積する。これにより、上下のブロック110により目地モルタル140が潰される。そして、潰された目地モルタル140を介して上下のブロック110が結合される。
【0003】
また、例えば特許文献1に記載のコンクリートブロック(以下、ブロック)がある。特許文献1に記載のブロックの上面には、厚み方向の両端に位置する上面上段部と、上面上段部と上記横空洞部に相当するV字溝との間に位置し、上面上段部及びV字溝の双方と段差を形成する上面下段部とが設けられている。また、ブロックの下面には、厚み方向における両端であって上面上段部に対応する位置に設けられた下面上段部と、厚み方向において下面上段部同士の間に位置するとともに下方に突出する下面下段部とが設けられている。作業者は、目地モルタルをブロックの上面下段部に積むとともに、目地モルタルが積まれた下側のブロックに対して上方から上側のブロックを組積する。これにより、下側のブロックの上面下段部と、上側のブロックの下面に設けられた下面下段部とによって目地モルタルが潰される。そして、潰された目地モルタルを介して上下のブロックが結合される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-291622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述した棒状の目地モルタルを成形するとともに目地モルタルをブロックの上面に積む作業は、技能経験の浅い作業者にとって難易度が高い。このため、上記作業には多くの時間を要する。また、目地モルタルの径が大き過ぎると、上下のブロックによって潰されたモルタルが外部にはみ出すとともに、はみ出したモルタルによってブロックの外面が汚れるという問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための組積材の施工方法の各態様を記載する。
[態様1]
複数の組積材を組積するとともに前記組積材同士をモルタルによって互いに結合することにより組積造を施工する方法であって、
前記組積材の幅方向、厚み方向、上下方向をそれぞれ単に幅方向、厚み方向、及び上下方向とするとき、
前記組積材の上面には、前記厚み方向の中央において前記幅方向に沿って延在する溝状の横空洞部と、前記厚み方向における両端に位置する上面上段部と、前記上面上段部と前記横空洞部との間に位置し、前記上面上段部及び前記横空洞部の双方と段差を形成する上面下段部と、が設けられており、
前記組積材の下面には、前記厚み方向における両端であって前記上面上段部に対応する位置に設けられた下面上段部と、前記厚み方向において前記下面上段部同士の間に位置するとともに下方に突出する下面下段部と、が設けられており、
下側の前記組積材の上面のうち、前記横空洞部と、前記横空洞部に対して上方に連なるとともに前記上面上段部同士の間に形成される上部空間とに前記モルタルを充填するモルタル充填工程と、
前記モルタルが充填された下側の前記組積材に対して上方から上側の前記組積材を組積することで上側の前記組積材の前記下面下段部を前記モルタルに密着させる組積工程と、を備える、
組積材の施工方法。
【0007】
同方法によれば、下側の組積材の上面のうち横空洞部と上部空間とに充填されたモルタルに対して上側の組積材の下面下段部が密着する。特に、下側の組積材の上面下段部と上側の組積材の下面下段部との間においては、他の部分に比べて上下の間隔が小さいため、モルタルが好適に潰れる。こうして潰れたモルタルを介して上下の組積材が結合される。このため、組積材同士の結合強度が向上する。
【0008】
また、組積材の上面のうち上面上段部には棒状の目地モルタルが積まれないため、上面上段部と下面上段部との間からモルタルが外部にはみ出すことが抑制される。これにより、モルタルのはみ出しに起因した組積材の外面の汚損を抑制できる。
【0009】
さらに、横空洞部及び上部空間にモルタルを充填すればよいため、棒状の目地モルタルを成形するとともに下側の組積材の上面上段部に目地モルタルを積むといった難易度の高い作業が不要となる。このため、施工性が向上する。
【0010】
[態様2]
前記モルタル充填工程では、前記モルタルの上面が前記上面上段部と面一となるように前記モルタルを充填する、
態様1に記載の組積材の施工方法。
【0011】
同方法によれば、作業者がモルタルの充填量の目安を容易に把握することができる。これにより、施工性が一層向上する。
[態様3]
前記組積材は、前記上下方向に延在するとともに前記組積材の下面のみに開口する縦空洞部を有するものである、
態様1または態様2に記載の組積材の施工方法。
【0012】
同方法によれば、組積材が縦空洞部を有するため、組積材の軽量化を図ることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、組積材同士の結合強度が向上するとともに、モルタルのはみ出しに起因した組積材の外面の汚損を抑制できる。さらに、本発明によれば、施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、組積材の施工方法の一実施形態について、組積材であるブロックの斜視図である。
図2図2は、図1のブロックの平面図である。
図3図3は、図1のブロックの下面図である。
図4図4は、図1のブロックの断面図である。
図5図5は、図1のブロックの側面図である。
図6図6は、図1のブロックの施工方法を示す側面図である。
図7図7は、変形例のブロックを示す側面図である。
図8図8は、従来のブロックの施工方法を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図1図6を参照して、一実施形態について説明する。なお、本実施形態では、組積材の施工方法を建築用コンクリートブロック(以下、ブロック10)の施工方法として具体化している。
【0016】
<ブロック10>
まず、図1図5を参照して、ブロック10の構成について詳細に説明する。
図1に示すように、ブロック10は、略直方体形状である。以降において、ブロック10を組積する際の姿勢(図1参照)における上下方向を上下方向Zとして説明する。
【0017】
図1及び図2に示すように、ブロック10の上面11は、平面視長方形状であり、長辺及び短辺を有している。以降において、上面11の長辺方向及び短辺方向をそれぞれ幅方向X及び厚み方向Yとして説明する。
【0018】
図1図2図4及び図5に示すように、ブロック10の上面11には、横空洞部12、上面上段部13、上面下段部14、及び段差面15が設けられている。
横空洞部12は、上面11の厚み方向Yの中央において幅方向Xに沿って延在する溝状である。
【0019】
上面上段部13は、厚み方向Yにおける両端に位置している。上面上段部13は、幅方向X及び厚み方向Yの双方に沿った面である。
上面下段部14は、上面上段部13と横空洞部12との間に位置し、上面上段部13及び横空洞部12の双方と段差を形成している。上面下段部14は、上面上段部13よりも下方であり、且つ横空洞部12よりも上方に位置している。上面下段部14は、幅方向Xに沿った面である。また、上面下段部14は、厚み方向Yの内側ほど下側に位置するように厚み方向Yに沿って延在する仮想軸線(図視略)に対して僅かに傾斜している(図5参照)。
【0020】
段差面15は、上面上段部13と上面下段部14との間に設けられている。段差面15は、幅方向Xに沿った面である。段差面15は、下側ほど厚み方向Yの内側に位置するように上下方向Zに沿って延在する仮想軸線(図視略)に対して僅かに傾斜している。
【0021】
図3図5に示すように、ブロック10の下面21には、下面上段部23と下面下段部24とが設けられている。
下面上段部23は、厚み方向Yにおける両端であって上面上段部13に対応する位置に設けられている。下面上段部23は、幅方向X及び厚み方向Yの双方に沿った面である。
【0022】
下面下段部24は、厚み方向Yにおいて下面上段部23同士の間に位置するとともに下方に突出している。下面下段部24は、幅方向X及び厚み方向Yの双方に沿った面である。
【0023】
図1図5に示すように、ブロック10の幅方向Xの両端に位置する側面31には、端部縦空洞部32が設けられている。端部縦空洞部32は、側面31の厚み方向Yの中央において上下方向Zに沿って延在する溝状である。
【0024】
図1図4に示すように、ブロック10には、厚み方向Yの中央において上下方向Zに沿って延在する縦空洞部33,34が設けられている。本実施形態では、3つの縦空洞部33,34が幅方向Xにおいて互いに間隔をあけて設けられている。縦空洞部33,34のうち両側に位置する縦空洞部33は、ブロック10の下面21のみに開口している。縦空洞部33,34のうち中央に位置する縦空洞部(以下、中央縦空洞部34)は、ブロック10の上面11及び下面21の双方に開口する貫通孔である。
【0025】
次に、図6を参照して、複数のブロック10を組積するとともにブロック10同士をモルタル40によって互いに結合することにより組積造を施工する方法について説明する。
図6に示す中央のブロック10の上面11のうち、横空洞部12と、横空洞部12に対して上方に連なるとともに上面上段部13同士の間に形成される上部空間Sとにモルタル40を充填する(以上、モルタル充填工程)。
【0026】
モルタル充填工程では、モルタル40の上面41が上面上段部13と面一となるようにモルタル40を充填することが好ましい。なお、モルタル充填工程に先立ち、横空洞部12には、必要に応じて幅方向Xに沿って延在する鉄筋である横筋50が収容される。横筋50は、幅方向Xに隣り合うブロック10の横空洞部12にわたって延在するものである。なお、上記「中央のブロック10」が、[課題を解決するための手段]欄における「下側の前記組積材」に相当する。
【0027】
次に、モルタル40が充填された中央のブロック10に対して上方から上側のブロック10を組積することで上側のブロック10の下面下段部24をモルタル40に密着させる(以上、組積工程)。
【0028】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図6に示すように、下側(中央)のブロック10の上面11のうち横空洞部12と上部空間Sとに充填されたモルタル40に中央(上側)のブロック10の下面下段部24の全体が密着する。特に、下側(中央)のブロック10の上面下段部14と中央(上側)のブロック10の下面下段部24との間においては、他の部分に比べて上下の間隔が小さいため、モルタル40が好適に潰れる。こうして潰れたモルタル40を介して上下のブロック10が結合される。このため、ブロック10同士の結合強度が向上する。
【0029】
またこのとき、下側(中央)のブロック10の横空洞部12と、横空洞部12に対して上方に連なるとともに上面上段部13同士の間に形成される上部空間Sとに充填されたモルタル40の一部が中央(上側)のブロック10の縦空洞部33,34の内部に入り込むことによってモルタル40と中央(上側)のブロック10との接触面積が増える。これにより、ブロック10同士の結合強度が一層向上する。
【0030】
また、ブロック10の上面11のうち上面上段部13には棒状の目地モルタル40が積まれないため、上面上段部13と下面上段部23との間からモルタル40が外部にはみ出すことが抑制される。これにより、モルタル40のはみ出しに起因したブロック10の外面の汚損を抑制できる。
【0031】
さらに、横空洞部12及び上部空間Sにモルタル40を充填すればよいため、棒状の目地モルタルを成形するとともに下側(中央)のブロック10の上面上段部13に目地モルタルを積むといった難易度の高い作業が不要となる。このため、施工性が向上する。
【0032】
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)組積材の施工方法は、モルタル充填工程と組積工程とを備えている。
こうした方法によれば、上述した作用を奏するため、ブロック10同士の結合強度が向上するとともに、モルタル40のはみ出しに起因したブロック10の外面の汚損を抑制できる。さらに、施工性が向上する。
【0033】
(2)モルタル充填工程では、モルタル40の上面41が上面上段部13と面一となるようにモルタル40を充填する。
こうした方法によれば、作業者がモルタル40の充填量の目安を容易に把握することができる。これにより、施工性が一層向上する。
【0034】
(3)ブロック10は、上下方向Zに延在するとともにブロック10の下面21のみに開口する縦空洞部33を有するものである。
こうした方法によれば、ブロック10が縦空洞部33を有するため、ブロック10の軽量化を図ることができる。また、縦空洞部33が、ブロック10の下面21のみに開口するものである、すなわち横空洞部12に連通しないものである。このため、横空洞部12に充填されたモルタル40が下側(中央)のブロック10の縦空洞部33に流入することがない。したがって、モルタル40の使用量が増大することを抑制することができる。
【0035】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0036】
図7に示すように、ブロック10の上面上段部13に幅方向Xに沿って延在する凹溝13aを設けるとともに、下面上段部23に幅方向Xに沿って延在する突条23aを設けるようにしてもよい。突条23aの先端部は、凹溝13aに収容される。凹溝13aと突条23aとによって形成されるラビリンス構造によって、モルタル40が外部にはみ出すことが一層抑制される。
【符号の説明】
【0037】
10,110…ブロック
11…上面
12,112…横空洞部
13…上面上段部
13a…凹溝
14…上面下段部
15…段差面
21…下面
23…下面上段部
23a…突条
24…下面下段部
31…側面
32…端部縦空洞部
33…縦空洞部
34…中央縦空洞部
40,140…モルタル
41…上面
50…横筋
【要約】
【課題】組積材同士の結合強度の向上、モルタルのはみ出しに起因した組積材の外面の汚損の抑制、及び施工性の向上。
【解決手段】ブロック10の施工方法は、下側のブロック10の上面11のうち、横空洞部12と、横空洞部12に対して上方に連なるとともに上面上段部13同士の間に形成される上部空間Sとにモルタル40を充填するモルタル充填工程と、モルタル40が充填された下側のブロック10に対して上方から上側のブロック10を組積することで上側のブロック10の下面下段部24をモルタル40に密着させる組積工程とを備える。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8