(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】可搬式足洗い器と足洗いユニット
(51)【国際特許分類】
A61H 35/00 20060101AFI20240524BHJP
A47K 7/00 20060101ALI20240524BHJP
A47K 3/28 20060101ALI20240524BHJP
E03C 1/01 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61H35/00 Z
A61H35/00 P
A47K7/00 Z
A47K3/28
E03C1/01
(21)【出願番号】P 2023194044
(22)【出願日】2023-11-15
【審査請求日】2023-11-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 2022年11月21、22日に出願人の株式会社エービーシー商会は、東京国際フォーラムで開催された保育博2022に本願発明の足洗い器を展示し、本願発明が掲載されたチラシを配布した。
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523432357
【氏名又は名称】政田 葉子
(73)【特許権者】
【識別番号】000127639
【氏名又は名称】株式会社エービーシー商会
(74)【代理人】
【識別番号】110000707
【氏名又は名称】弁理士法人市澤・川田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】政田 葉子
(72)【発明者】
【氏名】西山 恒久
【審査官】望月 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0017021(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0020884(US,A1)
【文献】実開昭54-020880(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 35/00
A47K 7/00
A47K 3/28
E03C 1/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右に平行に配置された前側脚部と前記左右の前側脚部に回転自在に接続された左右の後側脚部とを有し、前記左右の前側脚部と後側脚部がその間が細幅に折り畳まれ、折り畳まれた状態から前記左右の前側脚部と後側脚部が前後に展開し得るように構成された支持フレームと、前記展開した支持フレーム内に支持される足載せ用のデッキ板と、外周面に複数の噴水孔が列状に配して開けられていて前記展開した支持フレームに前記デッキ板よりも上方の位置で支持される噴水管とを備え、
給水元に接続したホースを前記噴水管に接続し、噴水管に供給された水が噴水孔から前記デッキ板上に放水されるように構成された可搬式足洗い器。
【請求項2】
支持フレームは、左右に平行に配置された前側脚部と、当該左右の前側脚部の上部にそれぞれ上端が回転自在に接続された左右の後側脚部と、前記左右の前側脚部の下部間に架設された前側横桟部と、前記左右の後側脚部の下部間に架設された後側横桟部と、前端が前記前側横桟部の外周面、後端が前記後側横桟部の外周面にそれぞれ回転自在に接続されていて前記前後横桟部間に左右に間隔を開けて配置された一対の立桟部とを有するとともに、
前記一対の立桟部はともに、前端が前記前側横桟部の外周面に回転自在に接続された前側立桟材の後端と、後端が前記後側横桟部の外周面に回転自在に接続された後側立桟材の前端とが上向きに屈曲するようにヒンジ接続されてなり、
前記デッキ板が前記一対の立桟部の前側立桟部上に一体に取り付けられ、
前記噴水管が前記左右の後側脚部間に一体に取り付けられて、前記支持フレームが前後に折り畳み及び展開自在に構成された請求項1に記載の可搬式足洗い器。
【請求項3】
前記左右の前側脚部と左右の後側脚部の、支持フレームを前後に折り畳んだときに互いに対面する位置に耐水性マグネットと磁気性を有する受け金具がそれぞれ取り付けられた構成を有する請求項2に記載の可搬式足洗い器。
【請求項4】
前記支持フレームの上部に、前記デッキ板上に足を載せて起立した利用者が手で握って姿勢を支えるための握り部を備えた構成を有する請求項1又は2に記載の可搬式足洗い器。
【請求項5】
デッキ板は、その表裏を貫通する複数の排水用の孔部を有するとともに、その表面に防滑用の複数の溝が形成された構成を有する請求項1又は2に記載の可搬式足洗い器。
【請求項6】
噴水管は、その外周面に形成された複数の噴水孔が当該噴水管の軸方向に沿って千鳥状に配置された構成を有する請求項1又は2に記載の可搬式足洗い器。
【請求項7】
噴水管は、その噴水孔からの放水の止水と放水流量の調節をするためのバルブを備えた構成を有する請求項1又は2に記載の可搬式足洗い器。
【請求項8】
展開した支持フレーム内に支持されたデッキ板の左右の開口空間を閉鎖する、繊維素材からなる面状のカバー材が支持フレームに取り付けられた構成を有する請求項1又は2に記載の可搬式足洗い器。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の足洗い器と、給水元と前記足洗い器の噴水管とを接続する給水用のホースからなる可搬式足洗いユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に持ち運んで足洗い場を構成する可搬式の足洗い器に関する。
【背景技術】
【0002】
保育園や認定こども園(以下、これらを「施設」ともいう。)では、園庭を素足で駆け回った園児の足を洗うための足洗い場を常設しているところも多い。
前記常設の足洗い場としては、コンクリート製のものや、給水管の周囲を合成樹脂板で囲い、給水蛇口の下にFRP製の排水パンを一体に配置した構成のものが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
また、足洗い場が常設されていない施設では、施設の出入り口付近にたらいを設置し、手洗い場の給水線につないだホースでたらいに水を溜め、その中で園児が足を洗うようにしているところも少なくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実公昭62-43006号公報
【文献】特開2023-62284号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記常設の足洗い場は、外構工事や給排水工事をともなうため工期と施工コストがかかる。何よりも都市部の小規模の施設では、園庭面積も小さく、足洗い場を常設できないところも多い。また、前記常設の足洗い場では、給水蛇口が足元からやや高い位置に配置されていることが多く、足洗いの際に給水蛇口から放水された水が撥ねて園児の衣服を濡らしやすく、さらに、園児が足洗い場から施設内に移動する際に洗った足を再び汚すことがないように対策を講じる必要となるケースも少なくない。常設の足洗い場は移動させることができない。
【0005】
前記のように、施設内にある水栓を利用してたらいの中で園児が足を洗えるようにすれば、給排水工事を要する足洗い場の設置は不要であり、コストをかけずに園児の足洗いの対応が可能であるが、たらいに溜めた水を使用するので衛生管理が困難となることがある。また、たらいの中では園児がつかまり立ちができないため、園児がバランスを崩して転倒することがないように保育士(大人)が園児の姿勢を補助する必要があり、保育士の負担が大きくなることは避けられない。
【0006】
本発明は従来の技術が有するこのような問題点を鑑み、所望の場所に持ち運んで簡易的な足洗い場を構成し、水撥ねを生じさせずに利用者の足元に水を放出して効率的且つ衛生的に足を洗うことができ、使用後は小さく折り畳んで保管することが可能な足洗い器を提供することを課題とする。
また、本発明は、利用者が補助を必要とすることなく安定した姿勢を保って足を洗うことができ、足洗い場の設置と撤去、足を洗う使用の過程で安全に取り扱うことができる足洗い器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明の足洗い器は、折り畳み及び展開自在な支持フレームと、前記展開した支持フレーム内に支持される足載せ用のデッキ板と、外周面に複数の噴水孔が列状に開けられていて前記展開した支持フレームに前記デッキ板よりも上方の位置で支持される噴水管とを備え、
給水元に接続したホースを前記噴水管に接続し、噴水管に供給された水が噴水孔から前記デッキ板上に放水されるように構成されていることを特徴とする。
前記デッキ板と噴水管は支持フレームに一体に設けられていても着脱自在でも何れでもよい。
【0008】
前記構成の足洗い器によれば、足を洗う必要があるときに屋外の所望の場所に持ち運び、施設の既設の給水設備の給水元からホースを介して噴水管に給水することで足洗い場を構成することができる。
利用者はデッキ板上に足を載せ、デッキ板の上方に配置された噴水管からの放水を浴びせて足を洗うことができる。噴水管から途切れずに放水される水で洗うことで足を清潔に保つことができる。給水元から供給される水が噴水管の外周面に沿って開けられた複数の噴水孔に分散されて噴水孔毎で少量の水が放水されるため、水撥ねが生じにくく足を洗う利用者の衣服を濡らすようなことはなく、また、噴水管の外周面に沿って水が線状に放水されるため、デッキ板上に載せた足にその上から幅広く水を浴びせて効率的に足洗いをすることができる。
また、使用後は、給水元と噴水管に接続していたホースを外し、支持フレームを折り畳んで、省スペースの保管場所に保管しておくことが可能である。
【0009】
前記構成の足洗い器において、支持フレームは、左右に平行に配置された前側脚部と、当該左右の前側脚部の上部にそれぞれ上端が回転自在に接続された左右の後側脚部と、前記左右の前側脚部の下部間に架設された前側横桟部と、前記左右の後側脚部の下部間に架設された後側横桟部と、前端が前記前側横桟部の外周面、後端が前記後側横桟部の外周面にそれぞれ回転自在に接続されていて前記前後横桟部間に左右に間隔を開けて配置された一対の立桟部とを有するとともに、
前記一対の立桟部はともに、前端が前記前側横桟部の外周面に回転自在に接続された前側立桟材の後端と、後端が前記後側横桟部の外周面に回転自在に接続された後側立桟材の前端とが上向きに屈曲するようにヒンジ接続されてなり、
前記デッキ板が前記一対の立桟部の前側立桟部上に一体に取り付けられ、
前記噴水管が前記左右の後側脚部間に一体に取り付けられて、前後に折り畳み及び展開自在に構成することができる。
前記支持フレームを構成する各部材は、鋼材や合成樹脂材など適宜な素材からなる中空管(パイプ)を用いることができる。軽量で耐候性、耐食性が良好な点でステンレス鋼管を用いることが好ましい。
【0010】
前記構成の足洗い器によれば、支持フレームが展開している状態で、前記デッキ板の後端部を上方へ持ち上げれば、前記一対の立桟部の前側立桟材と後側立桟材とのヒンジ接続部が上方へ屈曲して前記一対の立桟部が前後に折れ曲がって畳まれ、これにともなって前記両立桟部の前後両端に回転自在に接続された前側横桟部と後側横桟部間が狭まって前記左右の前側脚部と後側脚部が前後に折り畳まれる。デッキ板は前後に折り畳まれた支持フレーム内に縦向きに収納される。
また、支持フレームが折り畳まれた状態で、前記後側横桟部を手前に引けば、前記一対の立桟部の前側立桟材と後側立桟材とのヒンジ接続部が下方へ屈曲して、前側立桟材と後側立桟材が直線状に連なって前記一対の立桟部が前後に伸長し、これにともなって前記両立桟部の前後両端に回転自在に接続された前側横桟部と後側横桟部間が広がって前記左右の前側脚部と後側脚部が前後に広がって展開し、足洗い器を組み立てることができる。デッキ板は前記一対の立桟部上に地面に対して水平に支持され、噴水管は前記水平に支持されたデッキ板の後側上方の左右の後側脚部間に水平に配置される(
図1参照)。
このように、支持フレームの折り畳み及び展開操作は、ワンタッチで簡単に行うことが可能であり、また、デッキ板が支持フレームの一対の立桟部上に一体に取り付けられて立桟部の上下の屈曲動作と一体に変位するように設けられているので、足洗い器を折り畳み及び展開する操作の過程、さらには折り畳んだ足洗い器を持ち運ぶ過程でデッキ板がバタつくようなことはなく、バタつくデッキ板に指を挟む虞もない。デッキ板と噴水管が支持フレームに一体に設けられているので、足洗い場の設置と撤去を迅速に行え、保管や持ち運びの便宜もよい。
【0011】
前記構成の足洗い器において、前記左右の前側脚部と左右の後側脚部の、支持フレームを折り畳んだときに互いに対面する位置に耐水性マグネットと磁気性を有する受け金具がそれぞれ取り付けられた構成を有することが好ましい。
これによれば、支持フレームを折り畳んだ際に、前記左右の前側脚部と後側脚部とにそれぞれ取り付けられたマグネットと受け金具が互いに近づくことで磁気吸引が作用して前記左右の前後の脚部同士が接続し合い、足洗い器を折り畳んだ状態に保持して持ち運びと保管が行える。折り畳んだ状態に保持するために足洗い器の周囲を結束バンドで包囲するなどの処理は不要である。また、前記のように折り畳んだ状態で前記後側横桟部を手前に引けば、接続していた前記左右の前後の脚部同士が分離して前後に広がり、支持フレームを展開することができる。
【0012】
前記構成の足洗い器において、前記支持フレームの上部に、前記デッキ板上に足を載せて起立した利用者が手で握って姿勢を支えるための握り部を備えた構成を有することが好ましい。前記のように支持フレームを左右の前側脚部に左右の後側脚部を回転自在に接続して構成する場合、左右の前側脚部の上部同士を上桟部を介して水平に或いはアーチ状に一体に繋げて握り部を構成することができる。棒状やアーチ状に繋がった握り部は両手で把持する部分が長く、位置を問わず把持することが可能である。
これによれば、利用者は足をデッキ板に載せて立ち、両手で握り部を把持して安定した姿勢で噴水管から噴出される水を足に浴びせて足を洗うことができる。足に当たる水の位置を変えるために片足立ちになっても両手で握り部を把持してデッキ板上に立った姿勢を保つことができるので、姿勢が崩れて転んだり滑ったりする危険が少なく、補助者の補助がなくても或いは補助者の負担を軽減して、利用者が安定した姿勢を保って安全に足を洗うことができる。
【0013】
前記構成の足洗い器において、デッキ板は、その表裏を貫通する複数の排水用の孔部を有するとともに、その表面に防滑用の複数の溝が形成された構成を有することが好ましい。
デッキ板は両足を載せて利用者が立つことができる大きさの板材であり、鋼材や合成樹脂材、木材などの適宜な材料を用いて形成することがきる。耐候性、耐水性に優れ、且つ足を載せて立ったときの足裏の感触が良好な点で高密度ポリエチレン製の板材であることが好ましい。
これによれば、デッキ板に足を載せて洗う際に、足に付着していた砂利や砂、土を足に放水された水とともに排水用の孔部から流し落とすことができる。デッキ板の表面に防滑用の溝が形成されているので、足に水を浴びせてもデッキ板上で滑りにくく安全であり、また、足裏を溝が形成されたデッキ板表面にこすりつけて洗うことができる。
デッキ板に設ける複数の配水用の孔部は、デッキ板上に水を滞留させずに孔部から確実に流し落とすことができるように、その周縁をR面取りしてあることが好ましい。また、複数の防滑用の溝は、デッキ板の表面全体に形成されていることが好ましく、デッキ板の表面に同心円状や放射状、格子状など適宜な配置の態様とすることができる。この場合、前記排水用の孔部に繋がるように溝を配置し、且つ溝の断面はその深さ方向に向けて溝幅が窄まる先細りテーパー状であることが好ましい。このようにすれば、水とともに溝に入り込んだ砂利や砂、土を前記孔部から流し落とすことができる。前記孔部と溝を有するデッキ板はその上面に砂利や砂、土が残りにくく、デッキ板上を清潔に保つことができる。
また、足洗い器を折り畳む操作のときに補助的にデッキ板の一部を持ったり、折り畳んだ足洗い器を持ち運んだりするときにデッキ板を持ち上げたりしやすいように、デッキ板の後端部側にはハンドル開口が設けられていることが好ましい。
【0014】
前記構成の足洗い器において、噴水管は、その外周面に形成された複数の噴水孔が当該噴水管の軸方向に沿って千鳥状に、つまり軸方向に沿ってジグザグに配置された構成を有することが好ましい。
これによれば、噴水孔が千鳥状に配置されているので複数の噴水孔から噴出する水は幅広い面状の放水となる。換言すれば、噴水管はシャワーヘッドを構成し、デッキ板に載せた足の表面に広く水を浴びせて、少ない水量で効率的に足を洗うことができる。また、各噴水管から噴出される細い水流が束となって足に当たるので気持ちよく足を洗え、快適な使用感を得ることができる。
前記噴水管は、鋼材や合成樹脂材など適宜な素材からなる中空管を用いることができるが、ステンレス鋼管を用いることが好ましい。
【0015】
前記構成の足洗い器において、噴水管は、その噴水孔からの放水の止水と放水流量の調節をするためのバルブを備えた構成を有することが好ましい。
これによれば、バルブを操作することで噴水管の放水流量を調節できるので、足を洗う利用者の好みの放水流量に適宜に調節して足を洗うことができる。足がそれほど汚れていないときは少量の水、汚れがひどいときには多量の水が噴出するようにバルブを操作して調整可能であり、利用者が足を洗った後、次の利用者が足を洗うまではバルブを操作して止水することが可能なので、水を無駄に使用することなく効率的に足を洗うことができる。節水効果も大きい。
また、本発明の足洗い器を二台並べ、給水口が二股に分岐したホースを給水元に接続し、前記両足洗い器の噴水管に前記ホースの給水口を接続して、それぞれの足洗い器で足を洗えるようにした場合に、前記バルブで止水と放水を操作することで、両足洗い器を並行して利用者の足洗いに供することが可能である。
【0016】
また、前記構成の足洗い器において、展開した支持フレーム内に支持されたデッキ板の左右の開口空間を閉鎖する、繊維素材からなる面状のカバー材が支持フレームに取り付けられた構成を有することが好ましい。
本発明の足洗い器を前述した施設に設置して園児が足を洗う使用の態様では、園児が予想外の立ち振る舞いをすることが多く、例えば足洗い器で足を洗っている園児にこれを見守る園児がたわむれて、足洗い器の支持フレームで支持されたデッキ板の側方の隙間から園児が足洗い器の中に頭を入れたりくぐろうとしたりすることが起こらないとはいえない。これを防ぐため、上記園児が足洗い器の外側から中に入り込む虞があるデッキ板の左右の開口空間を塞ぐことが好ましいが、この場合に鋼製や合成樹脂製の板材で塞いだのでは支持フレームの折り畳みに対応ができない。展開した支持フレームに前記板材を着脱自在としたのでは、取り付けと取り外しの操作が面倒である。前記開口空間に紐状の部材を張れば支持フレームの折り畳みに対応可能であるが、万が一その紐状の部材の隙間に園児が頭を入れるような事態が生じたときは園児の頭や首を紐状の部材で圧迫してしまう危険がある。
そこで、本発明の足洗い器では、上記のように、支持フレーム内に支持されたデッキ板の左右の開口空間を繊維素材からなる面状のカバー材であるサイドメッシュで閉鎖して、足洗い器の使用の安全が確保されるようにした。
前記カバー材としては、丈夫で乾きやすいナイロン製のメッシュ素材のものであることが好ましく、また、カバー材は支持フレームから取り外せないように取り付けられていることが好ましい。
【0017】
また、本発明の足洗いユニットは、前記構成の足洗い器と、給水元と前記足洗い器の噴水管とを接続する給水用のホースからなるものである。前述のように、複数に分岐したホースを用い、一つの給水元から複数の足洗い器に給水することで、複数人の利用者がそれぞれの足洗い器で並列して足を洗うことができるように利用してもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の足洗い器によれば、所望の場所に持ち運んで簡易的な足洗い場を構成し、水撥ねを生じさせずに利用者の足元に水を放出して効率的且つ衛生的に足を洗うことができ、また、使用後は小さく折り畳んで保管することができる。保管場所は省スペースで済む。また、本発明の足洗い器によれば、利用者が補助を必要とすることなく安定した姿勢を保って足を洗うことができ、足洗い場の設置と撤去、足を洗う使用の過程で安全に取り扱うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態の足洗い器の展開状態と折り畳み状態の外観図である。
【
図2】
図1の足洗い器のサイドメッシュを取り付けていない状態の正面図である。
【
図7】
図1の足洗い器の噴水管の噴水孔が形成された側の外観図である。
【
図8】(A)、(B)は
図1の足洗い器を折り畳む過程を底面側から示した図である。
【
図9】
図1の足洗い器を持ち運ぶ様子を示した図である。
【
図10】
図1の足洗い器で利用者が足を洗う様子を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明の技術的思想は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0021】
図1は本発明の一実施形態の足洗い器を示しており、これは前記施設の園児の足洗い場として利用できるように構成されたものである。
同図に示されるように、足洗い器1は、折り畳み及び展開自在な支持フレーム2と、前記展開した支持フレーム2内に水平に支持される足載せ用のデッキ板3と、外周面に複数の噴水孔41が列状に開けられていて前記展開した支持フレーム2に前記デッキ板3よりも上方の位置で支持される噴水管4と、支持フレーム2の左右両側に一体に取り付けられたカバー材であるサイドメッシュ5,5とを備えてなり、支持フレーム2を展開した状態で、給水元に接続したホース9を噴水管4のバルブ8に接続し(
図10参照)、噴水管4に供給された水を噴水孔41からデッキ板3上に放水して、デッキ板3上に園児が立ったまま一人で足を洗うことができ、不使用時には足洗い器1全体を前後に折り畳んで持ち運び、保管場所で保管することができるようになっている。
【0022】
詳しくは、
図2から
図5に示されるように、支持フレーム2は、左右に平行に配置された前側脚部21,21と、左右の前側脚部21,21の上部にそれぞれ上端が回転自在に接続された左右の後側脚部22,22と、左右の前側脚部21,21の下部間に架設された前側横桟部23と、左右の後側脚部22,22の下部間に架設された後側横桟部24と、前端が前記前側横桟部23の外周面、後端が前記後側横桟部24の外周面にそれぞれ回転自在に接続されていて前記前後横桟部23,24間に左右に間隔を開けて配置された一対の立桟部25,25とを有して構成されている。
前記一対の立桟部25,25はともに、前端が前記前側横桟部23の外周面に回転自在に接続された前側立桟材25aと、後端が前記後側横桟部24の外周面に回転自在に接続された後側立桟材25bからなり、前側立桟材25aの後端と後側縦桟材25bの前端とをヒンジ部26で上向きに屈曲するようにヒンジ接続して形成されている。
支持フレーム2は、前記一対の立桟部25,25の前後の立桟材25a,25bのヒンジ部26の屈曲動作に連動して前記左右の前側脚部21,21と左右の後側脚部22,22の間が細幅に折り畳まれ、また、折り畳まれた状態からヒンジ部26の両側で前記前後の立桟材25a,25bを伸長させる動作に連動して前記左右の前側脚部21,21と左右の後側脚部22,22が前後に展開するように構成されている(
図3参照)。支持フレーム2の折り畳み及び展開する操作については後述する。
これら支持フレーム2を構成する各部材はステンレス鋼管を用いて形成されている。
【0023】
前記左右の前側脚部21,21を構成する部材は、その上部が水平な上桟部を介して一体に繋がった全体として略下向きU字状に屈曲した部材であり、前記上桟部が、足洗い器1のデッキ板4上に載った利用者が両手で把持することができる握り部21aを構成する。
前記左右の前側脚部21,21と左右の後側脚部22,22の、支持フレーム2を折り畳んだときに互いに対面する位置には、耐水性を備えたマグネット6aと磁気性を有する受け金具6bとがそれぞれ設置され、支持フレーム2を折り畳んだ際に、前記左右の前側脚部21,21と後側脚部22,22に取り付けられたマグネット6aと受け金具6b間に作用する磁気吸引力によって、前記左右の前後の脚部同士が接続し合って折り畳んだ状態を保持することができるようになっている。
また、前記前記左右の前側脚部21,21と後側脚部22,22の下端部にはゴム足7がそれぞれ固着してある。
【0024】
デッキ板3は、平面視方形に形成された高密度ポリエチレン製板材であり、
図5に示されるように、その下面を前記支持フレーム2の一対の前側立桟材25а,25а上に重ねて一体に固定してある。
図6に示されるように、デッキ板3には、その周縁をR面取りして形成された表裏を貫通する複数の孔部31が形成されており、また、その表面には防滑用の複数の溝32が形成してある。複数の溝32は、デッキ板3の表面に同心円状に配置されており、前記各孔部31が開けられた位置に溝32が交差するようにレイアウトしてある。各溝32は、その断面が深さ方向に向けて溝幅が窄まる先細りテーパー状に形成してある。
足洗い器1を折り畳むときにデッキ板3を手で持ち上げやすいように、また、折り畳んだ状態でデッキ板3を持って運搬しやすいようにするため、デッキ板3の後端部側にはハンドル開口33が設けられている。また、デッキ板3の裏面には左右二箇所にデッキ板脚部34,34が突設され、両デッキ板脚部34,34の先端にゴム足7を固着してある(
図5参照)。
【0025】
噴水管4は、前記支持フレーム2と同様にステンレス鋼管からなるパイプであって、
図7に示されるように、外周面に複数の噴水孔41が軸方向に沿って列状に、且つ隣接する噴水孔41同士で交互に位置を千鳥状にずらして形成されており、その一端に取り付けられたバルブ8を介して内部に水を流入させ、これを各噴水孔41から外部に噴出させるように構成されている。
詳しくは、噴水管4は直径21,7mmのステンレス鋼管であり、その外周面に直径1.5mmの計31個の噴水孔41を、軸方向に沿って10mmのピッチで、且つ隣り合う噴水孔41同士で周方向に沿って2mmの幅だけ千鳥状にずらして形成されている。噴水管4は、前記支持フレーム2を展開した状態でデッキ板3上から180mm上方の位置で支持されるように左右の後側脚部22,22間に架設され、各噴水孔41から噴射さる水によってデッキ板3上に幅のある放水がなされるように設けてある。
噴水管4は、
図3に示されるように、その外周面に設けられたリブ4aを前記後側脚部22の外周面に設けられたリブ22aに留めネジで留め付けて左右の後側脚部22,22間に取り付けてあり、両リブ4a,22aの留め付け度合いを専用工具(図示せず)を用いて調整することで、前記噴水孔41からデッキ板3上への放水角度を調整することができるようになっている。
また、噴水管4の一端に取り付けられたバルブ8は、その上部を回転することで、前記噴水孔41からの放水の止水と放水流量の調節を行えるようになっている。符番81は、給水用のホース9の端部が接続する接続部である。
なお、図示した足洗い器1では、その正面を向いて右側に噴水管4のバルブ8が位置しているが、噴水管4を左右の後側脚部22,22から取り外してバルブ8が左側に位置する向きに噴水管4を取り付けてもよい(
図2参照)。
【0026】
サイドメッシュ5,5は、ナイロン製のメッシュ素材からなる布材であり、
図1に示されるように、展開した支持フレーム2内に支持されたデッキ板3の左右の開口空間を閉鎖するように支持フレーム2に一体に取り付けてある。
詳しくは、サイドメッシュ5,5は、左右の前側脚部21,21と後側脚部22,22との接続部位を覆って前後の脚部が折り畳むときに指が挟まらないようにし、また、前記左右の前側脚部21,21と後側脚部22,22の交差部分からその下方の支持フレーム2の左右の空間を広く閉鎖することで、支持フレーム2の隙間から足洗い器1の内部に園児が潜り込めないようにしてある。
【0027】
このように構成された本形態の足洗い器1によれば、支持フレーム2が展開している状態で、前記デッキ板3のハンドル開口33を持って後端部側を上方へ持ち上げれば、
図8に示されるように、前記一対の立桟部25,25の前側立桟材25aと後側立桟材25bとのヒンジ接続部26が上方へ屈曲して前記一対の立桟部25,25が前後に折れ曲がって畳まれ、これにともなって前記両立桟部25,25の前後両端に回転自在に接続された前側横桟部23と後側横桟部24間が狭まって前記左右の前側脚部21,21と後側脚部22,22が前後に折り畳まれる。デッキ板3は前後に折り畳まれた支持フレーム2内に縦向きに収納される(
図1参照)。
園児が足を洗う際、
図9に示されるように、折り畳まれた足洗い器1を保管場所から持ち出し、足洗い場を設置する所望の位置まで折り畳んだまま持ち運ぶことができる。
【0028】
足洗い場の設置位置に足洗い器1を持ち運んだならば、支持フレーム2が折り畳まれた状態で、前記後側横桟部24を手前に引けば、前記一対の立桟部25,25の前側立桟材25aと後側立桟材25bとのヒンジ接続部26が下方へ屈曲して、前側立桟材25aと後側立桟材25bが直線状に連なって前記一対の立桟部25,25が前後に伸長し、これにともなって前記両立桟部25,25の前後両端に回転自在に接続された前側横桟部23と後側横桟部24間が広がって前記左右の前側脚部21,21と後側脚部22,22が前後に広がって展開し、足洗い器1を組み立てることができる。デッキ板3は前記一対の立桟部25,25上に地面に対して水平に支持され、噴水管4は前記水平に支持されたデッキ板3の後側上方の左右の後側脚部22,22間に水平に配置される(
図8参照)。
【0029】
そして、給水元に接続したホース9を噴水管4のバルブ8の接続部81に接続し、バルブ8を操作して噴水管4に給水することで簡易的な足洗い場を構成することができる。
図10に示されるように、園児はデッキ板3に乗り、噴水管4からの放水を浴びせて足を洗うことが可能である。この際、園児は握り部21aを両手で把持することで、デッキ板3上で姿勢を崩すことなく安全に足を洗うことが可能である。
足洗い終了後は、ホース9を外し、支持フレーム2を折り畳めば、左右の前後脚部21,22にそれぞれ設けられたマグネット6aと受け金具6bとが吸着して折り畳んだ状態に保持され、
図9に示されるように、握り部21a或いはデッキ板3のハンドル開口33を手で持って、そのまま保管場所に運んで保管することが可能である。
【0030】
園児の足洗いに利用できるように構成された本形態の足洗い器1によれば、その本体がステンレス鋼管からなる支持フレーム2と後側脚部22,22に架設した噴水管4を組合せた構造で、支持フレーム2の上部は手摺である握り部21aとして利用できるため、園児が立ったまま安定した体勢を保つことができ、左右の後側脚部22,22に架設した噴水管4の千鳥に配置した複数の噴水孔41から、足元に横長の巾をもったシャワー状の放水を行える仕組みとなっている。この噴水管4には手元で水量調整が可能なバルブ8を設けており、一般的な蛇口から市販のソケットでホース9を接続することで給水を容易にしている。
デッキ板3には加工性の良い高密度ポリエチレン板を採用することで、足裏の感触も良く、見た目にも明るい素材であり、さらに排水用の孔部31に施したR面取りや、防滑用の溝32をテーパー形状で付けたことで、足の土や砂利等の汚れがデッキ板面に残りにくい工夫をしているため、手入れも容易にしている。また、デッキ板3のハンドル開口33を上部に持ち上げると板下の支持フレーム2の支持機構がヒンジで折れ曲がる仕組みとなっており、ワンタッチで支持フレーム2を折り畳める上、前記前後の脚部21,22に設置したマグネット6aと受け金具6bとが磁気吸引して接続することで折り畳み時の固定を容易にしたため、移動時や収納時には簡単に折り畳むことが可能で、使い勝手の良さと省スペースでの保管を実現している。
このように、簡易的で機能的な構造に、シャワーパイプである噴水管4を組み合わせた足洗い場として、施工の手間を省き、園庭面積をとる事なく安全性などの基本的な性能も向上させたことにより、前述の課題点を総合的に解決している。
【0031】
なお、本形態の足洗い器1は、園児の足洗いに利用できるように構成したものであり、足洗いの利用者である園児(最大6歳11ヶ月)の平均体重22.9kg(標準偏差4.0)、平均身長119.1(標準偏差5.0)を考慮し、本形態の足洗い器1を水平に設置した場合に、園児が使用時に転倒することないように検討を行った設計である。以下に詳細を記しておく。
足洗い器1の総重量を7.2kg として、支持フレーム2自体が倒れにくい重量になっており、園児が足を載せて立つ乗り面として適度なサイズのデッキ板(幅390mm×奥行350mm)に対して、支持フレーム2の各脚部の下端部に固着した各ゴム足7の支点間の距離を約430mm角とし、デッキ板3の下部のゴム足7,7間の距離を約350mmとすることで、デッキ板3への荷重に安定感を持たせつつ、さらに手摺である握り部21aを兼ねた支持フレーム2の高さをデッキ面から490mmにすることで、園児が自力で安定した体勢を維持しつつ、握り部21aを掴んだ時の重心とデッキ板3に加わる体重のバランスにより、足を洗浄する際に容易に転倒しない設計となっている。
収納する際の足洗い器1の移動には、大人が一人で移動できる重量にも抑えられている。
【0032】
前記説明し図示した足洗い器1の形態は一例であり、本発明は説明し図示した構成や形態のものに限定されず、他の適宜な構成や形態のものとすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 足洗い器、2 支持フレーム、3 デッキ板、4 噴水管、5 サイドメッシュ、6a マグネット、6b 受け金具、7 ゴム足、8 バルブ、9 ホース
【要約】
【課題】所望の場所に持ち運んで簡易的な足洗い場を構成し、水撥ねを生じさせずに利用者の足元に水を放出して効率的且つ衛生的に足を洗うことができ、使用後は小さく折り畳んで保管することが可能な足洗い器を提供する。
【解決手段】折り畳み及び展開自在な支持フレーム2と、前記展開した支持フレーム2内に支持される足載せ用のデッキ板3と、外周面に複数の噴水孔41が列状に開けられていて前記展開した支持フレーム2に前記デッキ板3よりも上方の位置で支持される噴水管4とを備え、給水元に接続したホースを前記噴水管4に接続し、噴水管に供給された水が噴水孔から前記デッキ板3上に放水されるように足洗い器1を構成する。
【選択図】
図1