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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】身体動作アシスト装置用装着衣
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20240524BHJP
   A61H 3/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
A61H3/00 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020091317
(22)【出願日】2020-05-26
(65)【公開番号】P2021186896
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】西▲濱▼ 里英
(72)【発明者】
【氏名】山中 雄太
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 将
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-088863(JP,A)
【文献】特開2010-268978(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0065440(US,A1)
【文献】特開2015-077354(JP,A)
【文献】特開2018-199209(JP,A)
【文献】特開2019-206044(JP,A)
【文献】特開2020-036893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 11/00
A61F 2/60
A61H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体に装着可能な装着衣であって、身体動作をアシストするアシスト装置と連結体で連結され、該連結体を介して前記アシスト装置から身体への身体押圧力が作用する身体動作アシスト装置用装着衣において、
前記連結体が外表面に取付けられる外表層が略非伸縮性の部材で構成され、
該外表層の身体側に、前記身体押圧力に応じて変形可能で且つ該身体押圧力による荷重を吸収可能な柔軟性を有する柔軟層が設けられ
前記連結体を前記外表面に取付けるための取付具が、該外表面の表面領域内に配置されており、
最も身体側の内表層が、略非伸縮性の部材であって且つ摩擦係数の大きい部材で構成されたことを特徴とする身体動作アシスト装置用装着衣。
【請求項2】
前記身体動作が骨盤に対して脊柱を後方に起こす動作であり、前記装着衣が身体の少なくとも胸部に装着される場合に、解剖学的正位で上下方向の寸法が左右方向の寸法より大きく設定されたことを特徴とする請求項に記載の身体アシスト装置用装着衣。
【請求項3】
身体に装着可能な装着衣であって、身体動作をアシストするアシスト装置と連結体で連結され、該連結体を介して前記アシスト装置から身体への身体押圧力が作用する身体動作アシスト装置用装着衣において、
前記連結体が外表面に取付けられる外表層が略非伸縮性の部材で構成され、
該外表層の身体側に、前記身体押圧力に応じて変形可能で且つ該身体押圧力による荷重を吸収可能な柔軟性を有する柔軟層が設けられ
前記連結体を前記外表面に取付けるための取付具が、該外表面の表面領域内に配置されており、
前記身体動作が骨盤に対して脊柱を後方に起こす動作であり、
前記装着衣は、身体前方側に装着され、胸部の全体を覆う大きさを有し、前記身体前方側の領域にて、前記装着衣の解剖学的正位で左右方向の中央部における上下方向の寸法が、前記装着衣の前記左右方向の寸法よりも大きく設定されたことを特徴とする身体動作アシスト装置用装着衣。
【請求項4】
最も身体側の内表層が摩擦係数の大きい部材で構成されたことを特徴とする請求項に記載の身体動作アシスト装置用装着衣。
【請求項5】
前記内表層が略非伸縮性の部材で構成されたことを特徴とする請求項4に記載の身体動作アシスト装置用装着衣。
【請求項6】
解剖学的正位で左右方向に分割可能であり且つ分割部がファスナによって接合可能に構成されたことを特徴とする請求項2乃至5の何れか1項に記載の身体アシスト装置用装着衣。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体動作アシスト装置用装着衣、特に身体動作をアシストするアシスト装置とベルトなどの連結体で連結される身体動作アシスト装置用装着衣に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、農業、物流、介護などのように、比較的重量の大きい対象を抱え上げる作業を伴う職種では、腰痛の症状が発生し、また、それを心配しながら作業が行われている現状がある。この腰痛の症状の発生を低減すべく、腰部の負荷を軽減する身体動作アシスト装置の開発が行われており、こうした腰部の負荷を軽減する身体動作アシスト装置では、下半身と上半身の相対的な動き、特に前かがみになっている上半身を下半身に対して引き起こす身体動作のアシストが主要となる。
【0003】
こうした下半身と上半身の相対的な身体動作をアシストする身体動作アシスト装置として、例えば下記特許文献1に記載されるものがある。この身体動作アシスト装置は、例えば上体に対して大腿部を股関節周りに回転させる駆動源と機構を備えて構成され、これにより重量物の持ち上げ動作や歩行動作をアシストすることができるとしている。なお、この身体動作アシスト装置では、上記大腿部駆動機構を上体に対して支持するための上体フレームは、胸部にあてがわれる胸当て片を介して装置装着者の背部に取付けられている。したがって、上記大腿部駆動機構によるアシスト力は、上体フレームから胸当て片を経て胸部に伝達されるが、この胸当て片が皮革製で可撓性を有することから、装着者への親和性を向上することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6326655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本出願人は、前かがみになっている上体の脊柱を骨盤に対して後方に引き起こす身体動作アシスト装置を開発した。この身体動作アシスト装置の駆動機構は装置装着者の背部に取付けられ、装置の身体動作アシスト力は胸部を覆う装着衣を介して装置装着者の上体、すなわち脊柱を後方に引き起こす力として作用する。この装着衣と身体動作アシスト装置の駆動機構はベルトなどの連結体で連結されるので、装置の身体動作アシスト力により装置装着者の胸部は連結体及び胸部装着衣を介して身体押圧力を受ける。
【0006】
しかしながら、この身体動作アシスト装置のために作成した先の装着衣は、装置作動時に身体押圧力が作用すると、例えば、装着衣そのものが硬質であるためにその硬質な装着衣が身体(胸部)に押し付けられるとか、或いはベルトなどの連結体を装着衣に取付けるための取付具が身体(胸部)に強く押し付けられるといったことから、装置装着者が痛みを感じてしまうという問題があった。
【0007】
なお、上記特許文献1に記載される胸当て片にも装置作動時のアシスト力が作用するが、そのアシスト力が身体に及ぼす力は上体に対して上記大腿部駆動機構を支持するだけのものであって、身体を押圧するような力は作用しない。したがって、仮に、上記脊柱を後方に引き起こす身体動作アシスト装置の装着衣として上記特許文献1に記載される胸当て片、すなわち皮革製で可撓性を有する装着衣を用いても、装置装着者に痛みを感じさせないという効果は得られない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、身体動作アシスト装置の作動に伴って身体押圧力が作用しても装置装着者が痛みを感じにくい身体動作アシスト装置用装着衣を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の身体動作アシスト装置用装着衣は、
身体に装着可能な装着衣であって、身体動作をアシストするアシスト装置と連結体で連結され、該連結体を介して前記アシスト装置から身体への身体押圧力が作用する身体動作アシスト装置用装着衣において、
前記連結体が外表面に取付けられる外表層が略非伸縮性の部材で構成され、該外表層の身体側に、前記身体押圧力に応じて変形可能で且つ該身体押圧力による荷重を吸収可能な柔軟性を有する柔軟層が設けられたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、連結体が外表面に取付けられる外表層の身体側には柔軟層が設けられているので、アシスト装置の作動に伴って身体押圧力が作用しても、連結体から外表面に作用する身体押圧力の荷重を柔軟層の柔軟性によって吸収することができ、装置装着者は痛みを感じにくい。また、装着衣全体を柔軟なものとすることが可能であり、これにより装着衣の装着感を改善することができる。一方、アシスト装置を連結するための連結体が外表面に取付けられる外表層は、略非伸縮性の部材(例えば綿布のような布地)で構成されていることで、アシスト装置作動時のアシスト力が外表層の伸縮、特に伸びによって低減或いは遅延されるのを防止することができ、これによりアシスト装置による身体動作アシスト効果が確保される。
【0011】
本発明の他の構成は、前記連結体を前記外表面に取付けるための取付具が該外表面の表面領域内に配置されたことを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、アシスト装置の作動時に上記取付具が身体を押圧する荷重を上記柔軟層の柔軟性によって吸収することができることから、その荷重による痛みを装置装着者が感じにくくすることができる。
【0013】
本発明の更なる構成は、最も身体側の内表層が摩擦係数の大きい部材で構成されたことを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、最も身体側の内表層が摩擦係数の大きい部材(例えば綿布のような滑りにくい布地)で構成されているので、アシスト装置作動時の身体動作アシスト力が装着衣の滑りによって低減或いは遅延されるのを防止することができ、これによりアシスト装置による身体動作アシスト効果がより一層向上される。
【0015】
本発明の更なる構成は、前記身体動作が骨盤に対して脊柱を後方に起こす動作であり、前記装着衣が身体の少なくとも胸部に装着される場合に、解剖学的正位で上下方向の寸法が左右方向の寸法より大きく設定されたことを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、アシスト装置が骨盤に対して脊柱を後方に起こす身体動作をアシストし、且つ装着衣が少なくとも胸部に装着される場合には、脊柱が腹部側から上下方向に長い範囲で支持されるので、アシスト装置による身体動作アシスト効果がより一層向上する。また、装着衣によって胸部を覆う領域を広げることにより、アシスト装置作動時の身体押圧力を分散して、より一層痛みを感じにくくすることができる。
【0017】
本発明の更なる構成は、解剖学的正位で左右方向に分割可能であり且つ該分割部がファスナによって接合可能に構成されたことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、背部側に配置されるアシスト装置を背負うようにして身体に装着することが可能となり、アシスト装置の装着のみならず、取り外しも容易で且つ迅速に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
以上説明したように、本発明によれば、身体動作アシスト装置の作動に伴って身体押圧力が作用しても装置装着者が痛みを感じにくく、且つ、アシスト装置による身体動作アシスト力が低減されたり遅延されたりするのを防止して身体動作アシスト効果を確保することができることから、実用性の高い身体動作アシスト装置用装着衣を提供することができる。また、装着衣全体を柔らかなものとして装着感を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の身体動作アシスト装置用装着衣の一実施形態を示す斜視図である。
図2図1の装着衣が取付けられる身体動作のアシスト装置の説明図である。
図3図1の装着衣の生地構成の説明図である。
図4図1の装着衣の装着(取り外し)の説明図である。
図5】本発明の身体動作アシスト装置用装着衣の他の実施形態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明の身体動作アシスト装置用装着衣の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は、この実施の形態の身体動作アシスト装置用装着衣を示す斜視図、図2は、図1の身体動作アシスト装置用装着衣が適用される身体動作のアシスト装置である。この実施の形態の身体動作アシスト装置用装着衣は、図1に示すように、主として身体の胸部に装着されるものを例としている。後述するように、この装着衣1は凡そ正中矢状面の部分で2つに分割され、その分割部はファスナ2で接合可能とされているが、図1は、そのファスナ2を閉じていない状態を示している。
【0022】
なお、本明細書で使用される上下、左右、前後は、原則として解剖学的正位に従うが、図面を引用する場合もある。解剖学的正位は、周知のように、両足が正面を向き、両腕が外旋して手のひらが正面を向き、拇指が外側を向く姿勢で、頭がある方が「上」、足がある方が「下」、顔が向いている方が「前」、背部が向いている方が「後」である。「左右」については、観察される人から見た左右で定義され、したがって本人の右側が「右」、左側が「左」である。
【0023】
はじめに、この実施の形態の身体動作アシスト装置の概要について、図2を用いて説明する。このアシスト装置10は、脊柱に沿うように背部にあてがわれる板ばね部材11と、その後方に配置されて上下方向に伸長する空圧伸縮装置12と、上記板ばね部材11の下端部と空圧伸縮装置12の下端部に介装された空圧開閉装置13を備えて構成される。上記板ばね部材11は、背部に当接する側が板面で上下方向に伸長し、上部が後方に反るように湾曲され、これにより脊柱をS字形状に付勢すると共に、後述する空圧伸縮装置12や空圧開閉装置13の駆動力に対して装着者の骨格を補剛する。また、背部側が板面であることから、空圧伸縮装置12や空圧開閉装置13の作動時、背部を押圧する力が分散され、背骨の圧縮が軽減される。
【0024】
空圧伸縮装置12は、上下方向に延在するワイヤロープなどの連結部材12a中に、空気圧で膨縮する三連のバルーン体12bを介装して構成され、連結部材12aの上端部は上記板ばね部材11の上端部に連結され、連結部材12aの下端部は空圧開閉装置13に連結されている。この空圧伸縮装置12は、「人工筋肉」とも呼ばれ、上記3つのバルーン体12bが空気圧で膨張すると連結部材12aの延在方向で短縮し、バルーン体12bが萎むと延伸する。空圧開閉装置13は、2つの板状部材13aの下端部を回転可能に連結した蝶番構造を有し、2つの板状部材13aの間に空気圧で膨縮するベローズ状のバルーン体13bを介装して構成される。蝶番構造の一方の板状部材13aは臀部、すなわち骨盤の背面に当接され、その上端部が上記板ばね部材11の下端部に固定されており、蝶番構造の他方の板状部材13aの上端部が上記空圧伸縮装置12の連結部材12aの下端部に連結されている。この空圧開閉装置13は、蝶番構造に介装されたバルーン体13bが空気圧で膨張すると2つの板状部材13aが開き、バルーン体13bが萎むと閉じる。上記空圧伸縮装置12や空圧開閉装置13のバルーン体12b、13bに空気圧を供給したり、バルーン体12b、13bから空気圧を解放したりするためのスイッチは、例えば装置装着者の手元にある。
【0025】
このアシスト装置10は、主として胸部に装着される上記装着衣1とベルト(連結体)6a~6cで連結され、装着者の背部に背負われるように装着される。ベルト6a~6cは、例えば装着者の両肩の上面、両脇下の側面、腹部の両側面に配置され、アシスト装置10の板ばね部材11と装着衣1を連結する。また、アシスト装置10の空圧開閉装置13は、図示しないウエストベルトで装着者の腰部に装着される。
【0026】
このアシスト装置10は、装着者が前屈状態で、例えば重量物を持ったり、人を抱えたりしたら、空圧伸縮装置12のバルーン体12b及び空圧開閉装置13のバルーン体13bに空気圧を供給する。これにより、空圧開閉装置13の蝶番構造の後方板状部材13aが後方に開き、空圧伸縮装置12の連結部材12aが後下方に引っ張られると共に空圧伸縮装置12そのものが短縮するので、ベルト6a~6c及び装着衣1を介して、臀部、すなわち骨盤に対して脊柱が後方に引き上げられる。この脊柱、すなわち上体を引き上げるアシスト力は、ベルト6a~6cを介して装着衣1を胸部に引き付ける力として作用し、その結果、装着者の胸部に身体を押圧する身体押圧力が作用する。なお、アシスト装置10の作用の詳細は、例えば国際公開公報WO2018/105430を参照されたい。
【0027】
前述のように、装着者の胸部に装着される装着衣1は左右に分割されており、それらの分割体1aの分割部は、図1に示すように、ファスナ2で接合可能とされている。それぞれの分割体1aには、上記肩上のベルト6a、脇側のベルト6b、腹側のベルト6cが取付具7を介して取付けられている。この実施の形態の取付具7は、単にベルト6a~6cを装着衣1の分割体1aに連結するだけでなく、ベルト6a~6cの長さを調節する機能を有する。そして、これらの取付具7は、全て装着衣1の外表面の表面領域内に配置され、その外表面の表面領域から装着衣1の外部にはみ出さないように構成されている。
【0028】
図3には、上記装着衣1の一方(左方)の分割体1aの生地構成を示す。ここでは、例えば図の右方が身体側に相当する。この実施形態の装着衣1は全体に十分に柔軟であり、これにより装着者の体形に関わらず胸部全体によく密着する。装着衣1の胸部、すなわち身体への密着性は、アシスト装置10によるアシスト力の伝達性、例えば応答性や低減量に影響し、密着性が良好であるほど、アシスト力が効率よく伝達される。
【0029】
装着衣1の分割体1aのうち、身体から最も遠い外表層3の部材には、綿100%の織り糸がシャークスキンと呼ばれる織り方で織られた布地を用いた。このシャークスキンと呼ばれる織物は、用いられる織り糸や配色は異なるものの、例えばスーツの外側生地に用いられる布地であり、縦、横、斜め方向の何れにも極めて伸縮しにくい、いわゆる非伸縮性の布地である。前述のように、外表層3の外表面にはアシスト装置10に連結されたベルト6a~6cが取付けられており、アシスト装置10が作動して装着衣1が胸部に引き付けられる際、外表層3は、その面内の様々な向きに引っ張られる。このとき、面方向への引張力によって装着衣1の外表層3が伸縮、特に伸びてしまってはアシスト装置10によるアシスト力が低減したり遅延したりしてアシスト効果が低減する。これに対し、装着衣1の外表層3を非伸縮性の布地で構成すれば、特にアシスト力の作用時に外表層3が伸びにくいので、アシスト力の低減や遅延を抑制してアシスト効果を確保することが可能となる。なお、このシャークスキンは、同時に滑りにくい布地でもある。
【0030】
上記外表層3の身体側、すなわち内側には、上記アシスト装置作動時の身体押圧力を低減するための柔軟層4が設けられている。この実施の形態の柔軟層4は、ダブルラッセル生地を2枚重ねて構成される。ダブルラッセル生地とは、例えばハニカム形状の網目を有する複数の編地を縦に編み込んで構成された編物で、ある程度の厚みを有し、例えば、工業界ではクッション材として用いられる柔軟性を有する。この2枚のダブルラッセル生地からなる柔軟層4は、上記アシスト装置作動時の身体押圧力に応じて変形することで、その身体押圧力による荷重を吸収しようとするものである。また、前述のように、ベルトを介して装着衣1が胸部に引き付けられる際、ベルトを外表面に取付けるための取付具7も胸部側に引き付けられて胸部、すなわち身体を押圧する。このアシスト装置作動時の取付具7が身体を押圧する荷重も上記2枚のダブルラッセル生地からなる柔軟層4によって吸収することができる。これらにより、アシスト装置作動時の身体押圧力の荷重を吸収して痛みを感じにくくすることができる。
【0031】
上記柔軟層4の身体側、すなわち最も身体側の内表層5の部材にも、上記シャークスキンで織られた綿100%の布地を用いた。この内表層5は、最も身体側であることから、この内表層5が滑ると、アシスト装置10によるアシスト力が低減したり遅延したりしてアシスト効果が低減するおそれがある。そこで、この実施の形態では、最も身体側である内表層5に滑りにくい、換言すれば摩擦係数の大きいシャークスキン織の布地を用いた。これにより、アシスト力の作用時の装着衣1の滑りを抑制してアシスト力の伝達性を向上し、もってアシスト効果を向上することが可能となる。
【0032】
前述したように、装着衣1の2つの分割体1aはファスナ2で接合可能としてある。したがって、アシスト装置10を身体に装着する場合には、例えば図4に示すように、そのアシスト装置10を背負うようにして肩ベルト6aと脇ベルト6bの間に両腕を通し、胸部前方でファスナ2の端部を係合させてから閉じる。2つの分割体1aがファスナ2で接合されれば装着衣1が一体化し、これによりアシスト装置10が背部に装着される。この装着状態で、例えば上記取付具7によってベルト6a~6cの長さを調節し、装着衣1並びにアシスト装置10を身体にフィットさせる。一旦、フィットさせた装着衣1とアシスト装置10は、同じ装着者が装着する限り、再びベルト6a~6cを調節する必要はなく、装着衣1の分割体1aをファスナ2で接合するだけで、何度でも身体にフィットした状態で装着衣1及びアシスト装置10を装着することができる。
【0033】
また、この実施の形態では、図1に示すように、胸部に装着される装着衣1の上下方向寸法を左右方向寸法より大きくした。この実施の形態のアシスト装置10のように、骨盤に対して脊柱を後方に引き起こすアシスト力を発現するものでは、脊柱を腹部側からできるだけ長い範囲で支持することが、いわゆる脊柱に作用するアシスト力の反力を広い領域で受けるという意味で望ましい。したがって、胸部に装着される装着衣1の上下方向寸法を左右方向寸法より大きくすることで、身体動作アシスト効果がより一層向上する。また、装着衣1によって胸部を覆う領域を広げることにより、アシスト装置作動時の身体押圧力を分散して、より一層痛みを感じにくくすることができる。
【0034】
このように、この実施の形態の身体動作アシスト装置用装着衣では、ベルト(連結体)6a~6cが外表面に取付けられる外表層3の身体側には柔軟層4が設けられ、またベルト6a~6cを外表面に取付けるための取付具7は外表面の表面領域内に配置されているので、アシスト装置10の作動に伴って身体押圧力が作用しても、ベルト6a~6cから外表面に作用する身体押圧力の荷重や取付具7が身体を押圧する荷重を柔軟層4の柔軟性によって吸収することができ、装置装着者は痛みを感じにくい。一方、アシスト装置10を連結するためのベルト6a~6cが外表面に取付けられる外表層3は、略非伸縮性の布地で構成されていることで、アシスト装置作動時のアシスト力が外表層3の伸縮、特に伸びによって低減或いは遅延されるのを防止することができ、これによりアシスト装置10による身体動作アシスト効果が確保される。また、装着衣1全体を柔軟なものとすることができることから、装着衣1の装着感そのものを改善することができる。
【0035】
また、最も身体側の内表層5が摩擦係数の大きい布地で構成されているので、アシスト装置作動時の身体動作アシスト力が装着衣1の滑りによって低減或いは遅延されるのを防止することができ、これによりアシスト装置10による身体動作アシスト効果がより一層向上される。
【0036】
また、アシスト装置10が骨盤に対して脊柱を後方に起こす身体動作をアシストし、且つ装着衣1が少なくとも胸部に装着される場合には、上下方向の寸法を左右方向の寸法より大きくすることにより、脊柱が腹部側から上下方向に長い範囲で支持されるので、アシスト装置10による身体動作アシスト効果がより一層向上する。また、装着衣1によって胸部を覆う領域を広げることにより、アシスト装置作動時の身体押圧力を分散して、より一層痛みを感じにくくすることができる。
【0037】
また、装着衣1を左右方向に分割可能とし且つその分割部がファスナ2によって接合可能とすることにより、背部側に配置されるアシスト装置10を背負うようにして身体に装着することが可能となり、アシスト装置10の装着のみならず、取り外しも容易で且つ迅速に行うことができる。
【0038】
以上、実施の形態に係る異材接合方法について説明したが、本件発明は、上記実施の形態で述べた構成に限定されるものではなく、本件発明の要旨の範囲内で種々変更が可能である。例えば、装着衣1の形状や大きさは、上記実施の形態に限定されるものではない。上記実施の形態の装着衣1は、装着者の凡そ胸部のみを覆うように構成されているが、腹部まで覆うようにしたり、袖に腕を通せるようにしたりすることも可能である。また、その他の身体部位に装着されるものであってもよい。
【0039】
また、装着衣1とアシスト装置10を連結する連結体としてのベルト6a~6cの数や配置も上記実施の形態に限定されない。また、ベルト以外の連結体を用いることも可能であるが、この連結体は装着者の身体を押圧することもあるので、適切な幅を有して押圧力が分散される形態のものが好ましい。この連結体には、例えばファスナなども適用可能である。
【0040】
また、装着衣1が適用されるアシスト装置10の形態も、上記実施の形態のものに限定されない。図5は、本発明の身体動作アシスト装置用装着衣の他の実施の形態を示す正面図である。この実施の形態のアシスト装置10は、大腿部Tと下腿部Cの相対的な身体動作、すなわち膝部Kの屈伸動作をアシストするものである。このアシスト装置10は、回転アクチュエータ87を内装する回転駆動部86を膝部Kの側方に配置し、この膝部Kから略上下方向に延在する2つの板状部材84、85が回転駆動部86に接続されて構成される。この実施の形態の装着衣1は、例えば上下方向に幅広の帯状に形成され、大腿部T及び下腿部Cのそれぞれに巻付けるようにして装着される。そして、この装着衣1と上記板状部材84、85のそれぞれをベルト(連結体)6a~6cで連結する。このベルト6a~6cを装着衣1の外表面に取付けるための取付具7は、装着衣1の外表面領域内に配置される。これ以外のアシスト装置にも、本発明の身体動作アシスト装置用装着衣は適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 装着衣
1a 分割体
2 ファスナ
3 外表層
4 柔軟層
5 内表層
6a~6c ベルト(連結体)
7 取付具
10 アシスト装置
図1
図2
図3
図4
図5