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特許7493239液量調整機構及び液量調整機構を備えた定量ポンプ並びに液体充填システム
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  • 特許-液量調整機構及び液量調整機構を備えた定量ポンプ並びに液体充填システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】液量調整機構及び液量調整機構を備えた定量ポンプ並びに液体充填システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 13/00 20060101AFI20240524BHJP
   F04B 9/123 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F04B13/00 A
F04B9/123
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021003050
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108165
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】398075688
【氏名又は名称】株式会社KGC
(74)【代理人】
【識別番号】100110722
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 誠一
(74)【代理人】
【識別番号】100213540
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 恵庭
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩
(72)【発明者】
【氏名】勝田 悟
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-299840(JP,A)
【文献】特開2005-188470(JP,A)
【文献】特開2017-24785(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0231407(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 13/00
F04B 9/123
B05B 9/04
B05C 11/10
B65B 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エア通過管内を加圧エアが通過している状態では、前記エア通過管途中の小径部に連通した減圧室を減圧して当該減圧室に連通したシリンダ部を吸上状態とし、前記小径部の排気側が閉鎖された場合には、前記小径部から前記減圧室へ加圧エアを送って前記シリンダ部を吐出状態とする定量ポンプの液量調整機構であって、
前記エア通過管とは別に設けられ、かつ前記エア通過管と共に加圧エアが供給される外部排気管と、
前記エア通過管内のエア通過状態に応じて前記外部排気管を拡縮するダイヤフラムと、
前記小径部の排気側の開閉状態と前記外部排気管の開閉状態とを反転の関係に維持しつつ、前記ダイヤフラムに連動して前記小径部の排気側及び前記外部排気管を開閉する切替バルブと、
前記ダイヤフラム及び前記切替バルブを手動で操作するためのコントロールスイッチと、
を備えることにより、
前記シリンダ部が吸上状態にあるときに前記コントロールスイッチの操作により前記小径部の排気側が閉鎖された場合には、前記シリンダ部を吸上状態から吐出状態へ強制的に移行できるようにしたことを特徴とする定量ポンプの液量調整機構。
【請求項2】
請求項1に記載の定量ポンプの液量調整機構において、
前記減圧室内の液面高さが上限に到達した場合に前記小径部から前記減圧室へ向かうエア吸引路を一時的に閉鎖するフロートバルブを備えることにより、
前記コントロールスイッチを操作せずとも前記シリンダ部内の液量が上限に到達した場合に前記シリンダ部が吸上状態から吐出状態へ自動的に移行するようにしたことを特徴とする定量ポンプの液量調整機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の定量ポンプの液量調整機構において、
前記切替バルブが前記ダイヤフラムと共通のバルブ軸に取り付けられており、前記バルブ軸を前記コントロールスイッチで操作できるようにしたことを特徴とする定量ポンプの液量調整機構。
【請求項4】
請求項3に記載の定量ポンプの液量調整機構において、
前記バルブ軸は、前記コントロールスイッチの操作後、当該コントロールスイッチの復帰を補助するためのコイルバネを更に備えることを特徴とする定量ポンプの液量調整機構。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の定量ポンプの液量調整機構において、
前記減圧室と前記シリンダ部を連通する連通管を更に備え、
前記連通管は、液面の高さが視認可能とされていることを特徴とする定量ポンプの液量調整機構。
【請求項6】
請求項5に記載の定量ポンプの液量調整機構において、
前記連通管は、前記シリンダ部へ吸上げられた液体をリアルタイムで計量するための目盛りを有していることを特徴とする定量ポンプの液量調整機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の定量ポンプの液量調整機構を備えたことを特徴とする定量ポンプ。
【請求項8】
請求項7に記載の定量ポンプを備えた液体充填システムであって、
前記定量ポンプが吐出した液体を収容する可搬容器を固定するためのクランプと、
前記可搬容器が固定された場合に、エア源から前記液量調整機構に対する加圧エアの供給を開始し、当該固定が解除された場合に、前記エア源から前記液量調整機構に対する加圧エアの供給を停止するメカスイッチと、
を備えることを特徴とする液体充填システム。
【請求項9】
請求項8に記載の液体充填システムにおいて、
液体を貯留した貯留容器と前記シリンダ部とを連結する液体吸上用配管の途中に設けられたエアオペレートバルブを更に備え、
前記エアオペレートバルブは、前記液量調整機構に対する加圧エアの供給が開始されたタイミングで前記液体吸上用配管を開成する
ことを特徴とする液体充填システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液量調整機構及び液量調整機構を備えた定量ポンプ並びに液体充填システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一定量の液体を正確に送り出すことができる定量ポンプが公知である。但し、定量ポンプの内部に機械的な摺動部が存在すると、通常はその部分にはグリース等の潤滑材を塗布して摩擦の低減を図り、スムーズな動きを確保する必要があるが、取り扱う液体がアルコールやアセトン等の有機溶媒の場合にあっては、そのような潤滑材は有機溶媒によって溶解してしまい役に立たなくなる。また、モータや電気等によって可動させる形式のポンプでは、対象となる液体がアルコールやアセトン等の引火性の高い有機溶媒の場合にあっては、火花や加熱による引火の危険がある。
【0003】
そこで近年になると、機械式の摺動部を備えない定量ポンプが開発された(特許文献1,2等を参照)。特許文献1,2に記載の定量ポンプは、ベルヌーイの定理を利用して液体の吸上げを行うものであって、エア通過管内を加圧エアが通過している状態では、エア通過管途中の小径部に連通した減圧室が減圧されるので、当該減圧室に連通したシリンダ部が液体を吸上げる吸上状態となる。その後、シリンダ部内の液面高さが上限に到達した場合には、小径部の排気側を閉鎖するので、小径部から減圧室へと加圧エアが送られ、シリンダ部から液体を吐出する吐出状態となる。このように、加圧エアを制御することにより液体の吸上げ・吐出を行う特許文献1,2に記載の定量ポンプは、不燃性の液体のみならず、アルコールやアセトン等の引火性の高い有機溶媒をも取り扱うことが可能であるため有用性が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4589623号公報
【文献】特許第4860171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車検整備工場等で用いられるブレーキパーツクリーナー(洗浄剤)としては、地球環境及び使用者安全への配慮により、従来の第一石油類タイプから不燃タイプへの切り替えが進みつつある。また、石油系洗浄剤と同等の乾燥時間・洗浄力を発揮する不燃タイプの洗浄剤も既に開発されている。このように安全性・洗浄力の高い洗浄剤であれば、例えば、大容量のペール缶(例えば20kg)からリユーザブルかつ可搬可能なスプレー缶(例えば3,000回以上使用可能で低コストなもの)へ必要量だけ移し替え、その都度使い切るという利用方法が、廃棄物削減の観点から最も望ましいと考えられる。
【0006】
しかしながら、上述した従来の定量ポンプは、必ず一定量の液体を吸上げるように設計されているので、必要量だけスプレー缶へ移し替えるためには、例えば使用者がポンプ吸上げ中の適当なタイミングで加圧エアの供給を停止するなどの操作が必要である。また、仮に、加圧エアを停止するための操作スイッチを定量ポンプへ設ける場合には、定量ポンプの上述した利点(燃性の洗浄液をも安全に取扱うことが可能という利点)が損なわれないことが望まれる。
【0007】
そこで、本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、必要量だけ液体を移し替えるのに好適な安全性及び操作性を兼ね備えた液量調整機構及び液量調整機構を備えた定量ポンプ並びに液体充填システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため請求項1に記載の本発明は、エア通過管内を加圧エアが通過している状態では、前記エア通過管途中の小径部に連通した減圧室を減圧して当該減圧室に連通したシリンダ部を吸上状態とし、前記小径部の排気側が閉鎖された場合には、前記小径部から前記減圧室へ加圧エアを送って前記シリンダ部を吐出状態とする定量ポンプの液量調整機構であって、
前記エア通過管とは別に設けられ、かつ前記エア通過管と共に加圧エアが供給される外部排気管と、前記エア通過管内のエア通過状態に応じて前記外部排気管を拡縮するダイヤフラムと、前記小径部の排気側の開閉状態と前記外部排気管の開閉状態とを反転の関係に維持しつつ、前記ダイヤフラムに連動して前記小径部の排気側及び前記外部排気管を開閉する切替バルブと、前記ダイヤフラム及び前記切替バルブを手動で操作するためのコントロールスイッチと、を備えることにより、前記シリンダ部が吸上状態にあるときに前記コントロールスイッチの操作により前記小径部の排気側が閉鎖された場合には、前記シリンダ部を吸上状態から吐出状態へ強制的に移行できるようにしたことを特徴とする。
【0009】
上記課題を解決するため請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の定量ポンプの液量調整機構において、前記減圧室内の液面高さが上限に到達した場合に前記小径部から前記減圧室へ向かうエア吸引路を一時的に閉鎖するフロートバルブを備えることにより、前記コントロールスイッチを操作せずとも前記シリンダ部内の液量が上限に到達した場合に前記シリンダ部が吸上状態から吐出状態へ自動的に移行するようにしたことを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するため請求項3に記載の本発明は、請求項1または2に記載の定量ポンプの液量調整機構において、前記切替バルブが前記ダイヤフラムと共通のバルブ軸に取り付けられており、前記バルブ軸を前記コントロールスイッチで操作できるようにしたことを特徴とする。
【0011】
上記課題を解決するため請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の定量ポンプの液量調整機構において、前記バルブ軸は、前記コントロールスイッチの操作後、当該コントロールスイッチの復帰を補助するためのコイルバネを更に備えることを特徴とする。
【0012】
上記課題を解決するため請求項5に記載の本発明は、請求項1から4のいずれか1項に記載の定量ポンプの液量調整機構において、前記減圧室と前記シリンダ部を連通する連通管を更に備え、前記連通管は、液面の高さが視認可能とされていることを特徴とする。
【0013】
上記課題を解決するため請求項6に記載の本発明は、請求項5に記載の定量ポンプの液量調整機構において、前記連通管は、前記シリンダ部へ吸上げられた液体をリアルタイムで計量するための目盛りを有していることを特徴とする。
【0014】
上記課題を解決するため請求項7に記載の本発明は、請求項1から6のいずれか1項に記載の定量ポンプの液量調整機構を備えた定量ポンプを提供する。
【0015】
上記課題を解決するため請求項8に記載の本発明は、請求項7に記載の定量ポンプを備えた液体充填システムであって、前記定量ポンプが吐出した液体を収容する可搬容器を固定するためのクランプと、前記可搬容器が固定された場合に、エア源から前記液量調整機構に対する加圧エアの供給を開始し、当該固定が解除された場合に、前記エア源から前記液量調整機構に対する加圧エアの供給を停止するメカスイッチと、を備えることを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するため請求項9に記載の本発明は、請求項8に記載の液体充填システムにおいて、液体を貯留した貯留容器と前記シリンダ部とを連結する液体吸上用配管の途中に設けられたエアオペレートバルブを更に備え、前記エアオペレートバルブは、前記液量調整機構に対する加圧エアの供給が開始されたタイミングで前記液体吸上用配管を開成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る液量調整機構及び液量調整機構を備えた定量ポンプ並びに液体充填システムによれば、定量ポンプのシリンダ部に対する液体の吸上げの途中で使用者がコントロールスイッチを操作するだけで、小径部の排気側及び外部排気管の開閉状態を速やかに反転させ、当該シリンダ部を吸上げ状態から吐出状態へと移行させることができる。しかも、その反転に必要な主たる部品は、シリンダ部の外部に配置された手動操作用のコントロールスイッチ、ダイヤフラム、及び切替バルブに過ぎない。したがって、必要量だけ液体を移し替えるのに好適な安全性及び操作性を兼ね備えた液量調整機構及び定量ポンプ並びに液体充填システムが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明に係る液体充填システムの一実施形態の概略構成図である。
図2図2(1)は、図1における液量調整機構及びその周辺の拡大図(吸上げ中)、図2(2)は、図2(1)の部分拡大図である。
図3図3は、図1における液量調整機構及びその周辺の拡大図(吐出中)である。
図4図4は、図4は、液体充填システムの動作を説明するフローチャートである。
図5図5は、吸上げの開始時(第2工程)における液体充填システムの状態を説明する説明図である。
図6図6は、コントロールスイッチの操作時(第2B工程)における液体充填システムの状態を説明する説明図である。
図7図7は、吸上げの完了時(第3工程)における液体充填システムの状態を説明する説明図である。
図8図8は、充填開始時(第4工程)における液体充填システムの状態を説明する説明図である。
図9図9は、充填完了時(第5工程)における液体充填システムの状態を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明に係る液量調整機構及び液量調整機構を備えた定量ポンプ並びに液体充填システムの一実施形態について説明する。
【0020】
[液体充填システムの概略構成]
図1は、本発明に係る液体充填システムの一実施形態の概略構成図である。図1に示すとおり、本実施形態の液体充填システム1は、概略として、貯留容器50、定量ポンプ10、液量調整機構8、エア源80、メカニカルエアバルブ81、エアレギュレータ9、ホールド機構6a、クランプ6などを備えている。
【0021】
貯留容器50は、例えばブレーキパーツを洗浄するための不燃性の洗浄液51を貯留した重量20kgの気密性液缶である。この貯留容器50に貯留された洗浄液51の残量が少なくなった場合には、液体充填システム1の管理者が貯留容器50を取り外して洗浄液51で満たされた新規の貯留容器50と交換する。
【0022】
定量ポンプ10は、貯留容器50から洗浄液51を所定量又は必要量だけ吸上げると共に、吸上げた洗浄液51を可搬容器70の側へ向けて吐出するポンプである。この定量ポンプ10の構成の詳細は後述する。
【0023】
可搬容器70は、貯留容器50に貯留された洗浄液51の充填先であって、例えばリユーザブルかつ可搬可能なスプレー缶である。液体充填システム1の利用者は、この可搬容器70へ必要量の洗浄液51を移し替えることにより、所望の場所へ洗浄液51を持ち運び、ブレーキパーツの洗浄を行うことができる。
【0024】
液量調整機構8は、加圧エアを用いて定量ポンプ10が洗浄液51を吸上げるタイミングや洗浄液51を吐出するタイミングを制御する機構である。なお、図1では液量調整機構8が定量ポンプ10の上部に近接して配置されているが、定量ポンプ10から離れた位置に配置されていてもよい。この液量調整機構8の構成の詳細は後述する。
【0025】
エア源80は、液量調整機構8へ供給すべき加圧エアを発生するコンプレッサである。
【0026】
メカニカルエアバルブ81は、エア源80が発生させた加圧エアの流路を開閉するバルブであって、メカスイッチ81aのオン/オフに応じて流路を開閉する。
【0027】
エアレギュレータ9は、液量調整機構8の作動圧力を所定の圧力(例えば0.8Mpa)以下に抑制する制御装置である。
【0028】
ホールド機構6aは、可搬容器70を不図示の載置台へ固定するための機構である。
【0029】
クランプ6は、ホールド機構6aを駆動して可搬容器70を載置台へ固定/解除する操作レバーである。液体充填システム1の利用者は、空の可搬容器70を載置台へ配置してクランプ6を操作することにより、当該可搬容器70をホールド機構6aで載置台へ固定することが可能である。また、液体充填システム1の利用者は、可搬容器70を固定するという操作によって、液体充填システム1の作動を自動的に開始させることも可能である。
【0030】
[洗浄液の流路について]
本実施形態の液体充填システム1において、貯留容器50から定量ポンプ10に至る洗浄液51の流路には、吸上ユニット52、液体吸上用配管53、エアオペレートバルブ32、逆止弁31a、シリンダ部30の吸上口30inが順に配置されている。また、定量ポンプ10から可搬容器70に至る洗浄液51の流路には、シリンダ部30の吐出口30out、バルブ35b、充填路72、充填バルブ71が順に配置されている。
【0031】
したがって、貯留容器50に貯留された洗浄液51は、吸上ユニット52、液体吸上用配管53、エアオペレートバルブ32、逆止弁31a、定量ポンプ10の吸上口30inを介して定量ポンプ10のシリンダ部30へ吸上げられる。そしてシリンダ部30に吸上げられた洗浄液51は、シリンダ部30の吐出口30out、バルブ35b、充填路72、充填バルブ71を介して可搬容器70へ充填される。
【0032】
[加圧エアの流路について]
本実施形態の液体充填システム1において、エア源80から液量調整機構8に至る加圧エアの流路には、継手100、エア流入路101、メカニカルエアバルブ81、エア流入路95、継手100、エアレギュレータ9、エア流入路92が順に配置されている。また、エアレギュレータ9から液量調整機構8に至る加圧エアの流路には、エア流入路92と並列の関係でエア流入路91も配置されている。また、メカニカルエアバルブ81からエアオペレートバルブ32に至る加圧エアの流路には、エア流入路95と並列の関係でエア流入路82が配置されている。
【0033】
したがって、エア源80にて発生した加圧エアは、継手100、エア流入路101、メカニカルエアバルブ81、エア流入路95、継手100、エアレギュレータ9、エア流入路91を介して液量調整機構8のエア通過管16(後述)へ供給される。また、エアレギュレータ9の出口側の加圧エアは、エア流入路91を介して液量調整機構8の外部排気管14(後述)へ供給される。また、メカニカルエアバルブ81の出口側の加圧エアは、エア流入路82を介してエアオペレートバルブ32へ流入する。
【0034】
[定量ポンプの構成]
図1に示すとおり、定量ポンプ10は、貯留容器50の側から順に、逆止弁31a、シリンダ部30の底部に設けられた吸上口30in、円筒状のシリンダ部30、シリンダ部30の上方に配置された減圧室20、シリンダ部30の下端側の側壁に設けられた吐出口30outなどを備えている。このうち減圧室20の下方の開口部はシリンダ部30の上方の開口部に接続されており、減圧室20の内部には、液面と共に上昇するフロート25が収容されている。
【0035】
また、定量ポンプ10の外側壁には、シリンダ部30と減圧室20を連通する連通管40が取り付けられており、この連通管40は、内部の液面の高さが視認可能となるように、例えばガラスなどの材質の透明管によって構成されている。さらに、この連通管40の表面には、目盛り(不図示)が表示されており、シリンダ部30の内部へ吸上げられた洗浄液51をリアルタイムで計量できるようになっている。
【0036】
[液量調整機構の構成]
図2(1)は、図1における液量調整機構及びその周辺の拡大図(吸上げ中)、図2(2)は、図2(1)の部分拡大図、図3は、図1における液量調整機構及びその周辺の拡大図(吐出中)である。これらの図2及び図3に示すとおり、液量調整機構8は、エア通過管16、外部排気管14、ダイヤフラム85、切替バルブB、コントロールスイッチ8A、バイパス管18などを備えている。
【0037】
エア通過管16は、前述したエア流入路92に連結されている。エア流入路92からエア通過管16へと供給された加圧エアは、エア通過管16の注入側16-1から流入すると、小径部16-2を経由した後に排気側16-3から外部へと排出される。小径部16-2は、注入側16-1及び排気側16-3と比較して相対的に径が細く設定されており、この小径部16-2が吸引路17を介して定量ポンプ10の減圧室20(図1参照)に連通している。
【0038】
外部排気管14は、エア通過管16とは別に設けられた排気管であって、前述したエア流入路91に連結されている。エア流入路91から外部排気管14へと供給された加圧エアは、外部排気管14の注入側14-1から排気側14-2へ向かって流れた後に、外部へ排出される。なお、外部排気管14の注入側14-1と排気側14-2との間の空間は、ダイヤフラム85によって開閉可能なエリア(ダイヤフラム85の上室14A(図3参照))となっている。なお、外部排気管14の排気側14-2には絞り弁82が設けられている。
【0039】
ダイヤフラム85は、エア通過管16内のエア通過状態に応じてダイヤフラム85の上室14A(図3参照)を拡縮する。このダイヤフラム85の直下(ダイヤフラム85の下室14Bの上部エリア14B-1)には、ダイヤフラムガイド86及びシートパッキン(例えばフッ素樹脂製)87が配置されている。このシートパッキン87は、ダイヤフラム85の下室14Bを必要に応じて上部エリア14B-1と下部エリア14B-2とに分断する。なお、ダイヤフラム85及びシートパッキン87の動作の詳細は後述する。
【0040】
切替バルブBは、エア通過管16の排気側16-3の開閉状態と外部排気管14の開閉状態とを反転の関係に維持しつつ、ダイヤフラム85に連動してエア通過管16の排気側16-3及び外部排気管14を開閉するバルブである。切替バルブBは、図2(2)に拡大して示すとおり、ダイヤフラム85と共通のバルブ軸88に取り付けられており、このバルブ軸88の上端側には、外部排気管14(ダイヤフラム85の上室14A)を開閉するためのバルブ軸83及びバルブパッキン84が取り付けられており、バルブ軸88の下端側には、エア通過管16の排気側16-3を開閉するためのバルブパッキン89が取り付けられている。なお、ダイヤフラム85の下室14Bの下部エリア14B-2に存在するバルブ軸88の周囲には、コイルバネ8aが配置されている。このコイルバネ8aには、コントロールスイッチ8A及びダイヤフラム85の復帰を補助する働きがある。
【0041】
コントロールスイッチ8Aは、ダイヤフラム85及びこれと連動する切替バルブBを操作するための押しボタン式のスイッチである。なお、コントロールスイッチ8Aの方式は押しボタン式に限定されることはないが、以下では、下方に向けて押し下げることが可能な場合を想定する。
【0042】
バイパス管18は、ダイヤフラム85の下室14Bの下部エリア14B-2と吸引路17とを連通する連通路である。このバイパス管18には、エア通過管16内のエア通過状態に応じてダイヤフラム85の下室14Bを減圧/加圧する働きがある(詳細は後述)。
【0043】
[液量調整機構の基本動作]
以上の構成の液量調整機構8は、エア通過管16内を加圧エアが通過している状態では、ベルヌーイの定理により、エア通過管16途中の小径部16-2に連通した減圧室20を減圧して当該減圧室20(図1参照)に連通したシリンダ部30を吸上状態(吸上口30inから洗浄液51を吸上げる状態)とする。このとき、吸引路17に連通したダイヤフラム85の下室14Bも減圧される。一方、小径部16-2の排気側16-3が閉鎖された場合には、小径部16-2から減圧室20へ加圧エアを送りシリンダ部30を吐出状態(吐出口30outから洗浄液51を吐出する状態)とする。
【0044】
[ダイヤフラムの動作]
(1)ダイヤフラム85の下室14Bが負圧状態(但し、所定値以上の負圧)のとき:
ダイヤフラム85の下室14Bは、その上部エリア14B-1と下部エリア14B-2とに分断されていない一室の状態となり、下室14Bの全体の断面積がダイヤフラム85の上室14Aの断面積と等しい状態を維持する。このとき、ダイヤフラム85は平板状である(図2)。
【0045】
(2)(1)の状態から下室14Bの圧力が低下して所定値を下回ったとき:
ダイヤフラム85が変形し、シートパッキン87によってダイヤフラム85の下室14Bが上部エリア14B-1と下部14B-2とに遮断され、上部エリア14B-1は負圧状態を保持する。同時に、ダイヤフラム85の上室14Aへ加圧エアが導入される(図3)。
【0046】
(3)(2)の状態からダイヤフラム85の下室14Bが加圧状態に転じたとき:
吸引路17からバイパス管18を介して導入される加圧エアは、下室14Bの下部エリア14B-2のみに流入する。この状態は、ダイヤフラム85の下室14Bの断面積とダイヤフラム85の上室14Aの断面積との差が無くなって(1)の状態に戻るまで、維持される。
【0047】
(4)加圧エアの供給が停止したとき:
常時、外部排気管14の排気側14-2から少量のエアを外部に排気しているので、加圧エアの供給が停止すると、ダイヤフラム85の上室14Aのエアがなくなり、ダイヤフラム85が平板状に復帰する。
【0048】
[切替バルブの動作]
切替バルブBは、ダイヤフラム85が平板状となっている場合(図2(1))には、外部排気管14を閉鎖すると共に小径部16-2の排気側16-3を開放する。一方、切替バルブBは、ダイヤフラム85が変形している場合(図3)には外部排気管14を開放すると共に小径部16-2の排気側16-3を閉鎖する。
【0049】
具体的に、切替バルブBは、図2(1)に示す状態では、バルブ軸88の上端側(バルブ軸83の上端側)に配置されたコントロールスイッチ8Aが下方へ押下げられていないので、下端側のバルブパッキン89が小径部16-2の排気側16-3を開放し、上端側のバルブパッキン84が外部排気管14を閉鎖する。
【0050】
一方、切替バルブBは、図3に示す状態では、バルブ軸88の上端側(バルブ軸83の上端側)に配置されたコントロールスイッチ8Aが下方へ押下げられているので、下端側のバルブパッキン89が小径部16-2の排気側16-3を閉鎖し、上端側のバルブパッキン84が外部排気管14を開放する。
【0051】
[コントロールスイッチの動作]
さらに、シリンダ部30が図2(1)の状態にあるときにコントロールスイッチ8Aが押下げられて図3の状態に移行すると、エア通過管16へ供給された加圧エアが小径部16-2から減圧室20へと送られるので、それまでにシリンダ部30の内部へ吸上げられた洗浄液51が吐出され始める。したがって、本実施形態の液量調整機構8は、コントロールスイッチ8Aの操作によってシリンダ部30を吸上状態から吐出状態へ強制的に移行できるようになっている。
【0052】
[フロートの動作]
また、減圧室20内のフロート25の上端にはフロートバルブB3が設けられている。このフロートバルブB3は、減圧室20の液面高さが上限に到達した場合にエア吸引路17を一時的に閉鎖する。これによって、減圧室20から吸引路17へのエア吸引が停止し、小径部16-2を通過するエアの圧力の急低下(排気側16-3の圧力の急低下)が生じる。その結果、ダイヤフラム85が変形(図3)することによりコントロールスイッチ8Aを操作せずともシリンダ部30が吸上状態から吐出状態へ自動的に移行するようになっている。
【0053】
[加圧エアを利用した他の制御]
本実施形態の液体充填システム1は、図1に示すとおり、定量ポンプ10が吐出した洗浄液51を収容する可搬容器70を不図示の載置台へ固定するためのクランプ6と、可搬容器70が固定された場合に、エア源80から定量ポンプ10に対する加圧エアの供給を開始し、当該固定が解除された場合に、エア源80から定量ポンプ10に対する加圧エアの供給を停止するメカスイッチ81aを備えている。このメカスイッチ81aは、例えば、図1のメカニカルエアバルブ81を開閉するためのメカスイッチであって、クランプ6の操作によりホールド機構6aが可搬容器70を固定した場合にオン(バルブ開放)され、クランプ6の操作によりホールド機構6aが可搬容器70の固定を解除した場合にオフ(バルブ閉鎖)される。
【0054】
よって、可搬容器70が固定されたタイミングで液量調整機構8に対する加圧エアの供給が自動的に開始され、可搬容器70の固定が解除されたタイミングで液量調整機構8に対する加圧エアの供給が自動的に停止される。言い換えると、液体充填システム1の利用者は、クランプ6の操作により可搬容器70の固定/解除と加圧エアの供給/停止とを同時に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態の液体充填システム1では、前述したとおり、エアオペレートバルブ32が洗浄液51を貯留した貯留容器50とシリンダ部30とを連結する液体吸上用配管53の途中にエアオペレートバルブ32が設けられており、このエアオペレートバルブ32も上記のメカニカルエアバルブ81に接続されている。よって、液量調整機構8に対する加圧エアの供給が開始されたタイミングでエアオペレートバルブ32が液体吸上用配管53を自動的に開成し、液量調整機構8に対する加圧エアの供給が停止したタイミングでエアオペレートバルブ32が液体吸上用配管53を自動的に閉鎖する。したがって、本実施形態では、貯留容器50から定量ポンプ10への無用な吸上げを防止することができる。
【0056】
[吸上ユニットの構成]
更に、本実施形態の液体充填システム1では、前述したとおり、液体吸上用配管53は吸上ユニット52を介して貯留容器50に連結され、吸上ユニット52は、貯留容器50内が負圧となってシリンダ部30への吸上げの抵抗となるのを防止するための負圧解除用の逆止弁52aを備えている。また、吸上ユニット52は、貯留容器50の開口部に密接するようにして装着され、液体吸上用配管53は、吸上ユニット52に固定可能な連結ジョイント52cを介して取り付けられる。したがって、本実施形態の液体充填システム1の管理者は、定量ポンプ10から貯留容器50への洗浄液51の逆流を防止しつつ、重量の大きな貯留容器50の交換を安全に行うことができる。
【0057】
[液体充填システムの動作の流れ]
以下、本実施形態の液体充填システムの動作の流れを説明する。図4は、液体充填システムの動作を説明するフローチャートである。図4に示すとおり、液体充填システム1は、クランプ6で可搬容器70を固定していない吸上げ前の待機工程(第1工程S1)と、クランプ6で可搬容器70を固定した直後の吸上げの開始工程(第2工程S2)と、シリンダ部30内の洗浄液51の量が上限に達した場合の吸上げ完了工程(第3工程S3)と、シリンダ部30が吸上げた洗浄液51を可搬容器70へ向けて吐出し始める充填開始工程(第4工程S4)と、可搬容器70の充填を完了する充填完了工程(第5工程S5)とを順に実行するものである。
【0058】
但し、本実施形態の液体充填システム1は、吸上げ開始後(第2工程S2の実行後)に、コントロールスイッチ8Aを押下げるスイッチ操作工程(第2B工程S2B)が実行された場合には、その時点でシリンダ部30内の洗浄液51の量が上限に達していなかったとしても、充填開始工程(第4工程S4)に移行する。以下、これらの第1工程S1、第2工程S2、第2B工程S2B、第3工程S3、第4工程S4、予備第5工程S5を順に説明する。
【0059】
[待機工程(第1工程)]
吸上げ前の待機工程(第1工程)における液体充填システムの状態は、前述した図1に示すとおりである。図1において、加圧エアの存在している流路には濃いハッチング又は太線が施されており、負圧エアの存在している流路には薄いハッチング又は細線が施されており、洗浄液の存在しているエリアにはドットパターンが施されている(他の図も同様)。
【0060】
先ず、図1の状態では、クランプ6が開放状態にあり、可搬容器70が載置台に固定されていない。この状態では、メカニカルエアバルブ81のメカスイッチ81aがオフされているので、液量調整機構8に対する加圧エアの供給は行われていない。しかも、メカスイッチ81aがオフされている場合には、エアオペレートバルブ32に対する加圧エアの供給も行われないので、液体吸上用配管53は閉鎖状態となる。したがって、図1の状態では、定量ポンプ10のシリンダ部30が貯留容器50から洗浄液51を吸上げることはなく、可搬容器70に対する洗浄液51の吐出(充填)を行うこともない。
【0061】
ここで、貯留容器50に貯留された洗浄液51の揮発性が高く、高温環境下で気化膨張する特性を有していた場合には、気温によっては貯留容器50の圧力が高まり、洗浄液51が貯留容器50から定量ポンプ10へ流入するおそれがあった。しかしながら、図1の状態では、エアオペレートバルブ32が液体吸上用配管53を閉鎖しているので、たとえ気温が高かったとしても、貯留容器50から定量ポンプ10への洗浄液51が流入するのを防止することができる。因みに、洗浄液51の揮発性が高い場合には、貯留容器50として耐圧容器が採用されることが望ましい。
【0062】
また、本実施形態では、貯留容器50の吸上ユニット52が連結ジョイント52cを介して液体吸上用配管53に取り付けられているので、図1の状態において、液体充填システム1の管理者は、貯留容器50の気密性を維持したまま、重量のある貯留容器50(例えば20kg)を液体吸上用配管53に対して容易に接続/離脱することが可能である。
【0063】
[吸上げの開始工程(第2工程)]
吸上げの開始工程(第2工程)における液体充填システムの状態は図5に示すとおりである。図5の状態では、クランプ6によって可搬容器70が載置台に固定された状態となる。これにより、メカニカルエアバルブ81のメカスイッチ81aがオンされ、液量調整機構8に対する加圧エアの供給が開始される。また、メカスイッチ81aがオンされるので、エアオペレートバルブ32への加圧エアの供給も行われ、液体吸上用配管53が開放状態となる。
【0064】
そして、図5の状態では、図2(1)に拡大して示すとおり、ダイヤフラム85が平板状となり、切替バルブBがエア通過管16の排気側16-3を開放し、外部排気管14(ダイヤフラム85の上室14A)を閉鎖する。したがって、エア通過管16の小径部16-2(負圧発生部)に連通した減圧室20が負圧になり、貯留容器50の洗浄液51が定量ポンプ10のシリンダ部30へと吸上げられる。なお、減圧室20が負圧である限り、シリンダ部30から可搬容器70に向けて洗浄液51が吐出することはない。また、本実施形態の液体充填システム1では、貯留容器50に逆止弁52a付きの吸上ユニット52を設けているので、吸上げ抵抗の発生を防止することもできる。
【0065】
そして、液体充填システム1の利用者は、シリンダ部30に沿って設けられた透明な連通管40から液面の推移を目視することにより、シリンダ部30に吸上げられた洗浄液51の液量をリアルタイムで確認し、その液量が所望の値になったタイミングで、コントロールスイッチ8Aを押下げる。但し、液体充填システム1の利用者は、可搬容器70を満タンにすること(洗浄液51を上限一杯まで吸上げること)を希望している場合には、コントロールスイッチ8Aに触れずに待機する。
【0066】
[コントロールスイッチの操作工程(第2B工程)]
コントロールスイッチの操作工程(第2B工程)における液体充填システムの状態は図6に示すとおりである。図6の状態では、コントロールスイッチ8Aが押下げられるので、図3に拡大して示したとおりダイヤフラム85が変形し、切替バルブBが小径部16-2の排気側16-3を閉鎖し、外部排気管14を開放するので、エア通過管16の排気側16-3からの排気が停止し、外部排気管14(ダイヤフラム85の上室14A)の注入側14-1から排気側14-2へ向かって加圧エアが通過する。
【0067】
このとき、エア通過管16の注入側16-1から流入した加圧エアが小径部16-2及び吸引路17経由で減圧室20へ送られるので、シリンダ部30の液面が下方へと押下げられ、それまでにシリンダ部30が吸上げた洗浄液51が可搬容器70に向かって吐出され始める。その結果、シリンダ部30内の洗浄液51及び加圧エアがこの順で可搬容器70へ充填される(後述する図9を参照)。したがって、液体充填システム1の利用者は、可搬容器70に充填される洗浄液51及び加圧エアの比率を、コントロールスイッチ8Aを操作するタイミングによって自在に制御することができる。
【0068】
[吸上げの完了工程(第3工程)]
吸上げの完了工程(第3工程)における液体充填システムの状態は図7に示すとおりである。図7の状態では、減圧室20の液面が上限まで上昇し、フロート25の上端に設けられたフロートバルブB3が吸引路17を閉鎖する。
【0069】
[充填開始工程(第4工程)]
充填開始工程(第4工程)における液体充填システムの状態は図8に示すとおりである。吸引路17が閉鎖されると、エア通過管16の小径部16-2(負圧発生部)の圧力が設定圧にまで低下し、エア通過管16の排気側16-3の圧力及びダイヤフラム85の下室14Bの圧力が低下するので、ダイヤフラム85が変形する(図3)。これによって、コントロールスイッチ8Aが押下げられたときと同様の状態となる。つまり、小径部16-2及び吸引路17を介して減圧室20へ加圧エアが送られ、シリンダ部30の液面が下方へと押下げられ、シリンダ部30の洗浄液51が可搬容器70に向かって吐出され始める。
【0070】
[充填完了工程(第5工程)]
充填完了工程(第5工程)における液体充填システムの状態は図9に示すとおりである。シリンダ部30の洗浄液51が全て可搬容器70へ充填されると、シリンダ部30内の加圧エアが可搬装置70へ流入する。可搬装置70の内部の圧力が所定圧にまで上昇すると、充填が完了である。その後、液体充填システム1の利用者がクランプ6を操作して可搬容器70の固定を解除すると、液量調整機構8に対する加圧エアの供給が停止するので、液量調整機構8内のエアが排気される。これによって、液体充填システム1が図1の状態(第1工程)に戻る。
【0071】
[実施形態の効果]
以上説明したとおり、本実施形態に係る液量調整機構8及び液量調整機構を備えた定量ポンプ10並びに液体充填システム1によれば、定量ポンプ10のシリンダ部30に対する洗浄液51の吸上げの途中で液体充填システム1の利用者がコントロールスイッチ8Aを操作するだけで、小径部16-2の排気側16-3及び外部排気管14の開閉状態を速やかに反転させ、当該シリンダ部30を吸上げ状態から吐出状態へと移行させることができる。しかも、その反転に必要な主たる部品は、シリンダ部30の外部に配置された、手動操作用のコントロールスイッチ8A、ダイヤフラム85、及び切替バルブBに過ぎない。したがって、本実施形態に係る液量調整機構8及び液量調整機構を備えた定量ポンプ10並びに液体充填システム1は、必要量だけ洗浄液51を移し替えるのに好適であり、安全性及び操作性を兼ね備えている。
【0072】
[その他]
以上のように、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能であることはいうまでもない。例えば、本実施形態に係る液量調整機構8及び定量ポンプ10並びに液体充填システム1が取り扱う液体は、ブレーキパーツ洗浄用の不燃性の洗浄液に限定されることはなく、燃性の洗浄液であってもよいし、洗浄液以外の液体であってもよい。
【符号の説明】
【0073】
10 定量ポンプ
100 継手
101 エア流入路
14 外部排気管
14A ダイヤフラムの上室
14B ダイヤフラムの下室
14B-1 上部エリア
14B-2 下部エリア
15 エア配管
16 エア通過管
17 吸引路
17a パッキン
18 バイパス管
20 減圧室
25 フロート
30 シリンダ部
30in 吸上口
30out 吐出口
31a 逆止弁
32 エアオペレートバルブ
35b バルブ
40 連通管
50 貯留容器
51 洗浄液
52 吸上ユニット
53 液体吸上用配管
6 クランプ
6a ホールド機構
70 可搬容器
71 充填バルブ
72 充填路
8 液量調整機構
80 エア源
81 エア流入路
81 コントロールスイッチ
81 メカニカルエアバルブ
81a メカスイッチ
82 エア流入路
82 絞り弁
83 バルブ軸
84 バルブパッキン
85 ダイヤフラム
86 ダイヤフラムガイド
87 シートパッキン
88 バルブ軸
89 バルブパッキン
8a コイルバネ
9 エアレギュレータ
91 エア流入路
92 エア流入路
95 エア流入路
B 切替バルブ
B1 第1通過管バルブ
B2 第2通過管バルブ
B3 フロートバルブ


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9