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特許7493265有機・無機複合固体高分子電解質、それを含む一体型電極構造体及び電気化学素子、並びに該有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法
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  • 特許-有機・無機複合固体高分子電解質、それを含む一体型電極構造体及び電気化学素子、並びに該有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】有機・無機複合固体高分子電解質、それを含む一体型電極構造体及び電気化学素子、並びに該有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/056 20100101AFI20240524BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20240524BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20240524BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20240524BHJP
   H01B 1/08 20060101ALI20240524BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01M10/056
H01M4/134
H01M10/052
H01B1/06 A
H01B1/08
C08F2/44 A
C08F2/44 C
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2022522791
(86)(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-12-16
(86)【国際出願番号】 KR2019013644
(87)【国際公開番号】W WO2021075597
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】522151710
【氏名又は名称】株式会社グリナジー
【氏名又は名称原語表記】GRINERGY CO.LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ハンソル
【審査官】小川 進
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-216845(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0090887(KR,A)
【文献】特開2010-044942(JP,A)
【文献】国際公開第2018/161047(WO,A1)
【文献】特開平03-084807(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/056
H01M 4/134
H01M 10/052
H01B 1/06
H01B 1/08
C08F 2/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機リチウムイオン伝導体(但し、下記リチウム塩に該当するものを除く)と、
ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体の共重合体と、
リチウム塩と、を含み、
前記リチウム塩が、LiSCN、LiN(CN) 、LiClO 、LiBF 、LiAsF 、LiPF 、LiCF SO 、LiC(CF SO 、LiN(SO 、LiN(SO CF 、LiN(SO F) 、LiSbF 、LiPF (CF CF 、LiPF (CF 及びLiB(C のうちから選択された1以上を含み、
前記無機リチウムイオン伝導体の含量は、無機リチウムイオン伝導体及び前記共重合体の総重量を基準に、30ないし90重量%の範囲である、リチウム金属電極表面用の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項2】
前記無機リチウムイオン伝導体が、柘榴石型化合物、アルジロダイト型化合物、LISICON(lithium super-ion-conductor)化合物、NASICON(Na super ionic conductor-like)化合物、窒化リチウム、水酸化リチウム、ペロブスカイト、リチウムハライド及び硫化物系化合物からなる群のうちから選択された1以上である、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項3】
前記無機リチウムイオン伝導体が、柘榴石系セラミックスであるLi3+xLa12(0≦x≦5、M=W、Ta、Te、Nb及びZrのうち少なくとも一つである)、ドーピングされた柘榴石系セラミックスであるLi7-3xM’La12(0<x≦1、Mは、W、Ta、Te、Nb及びZrのうち少なくとも一つであり、M’は、Al、Ga、Nb、Ta、Fe、Zn、Y、Sm及びGdのうち少なくとも一つである)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(O≦x<1、O≦y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO、0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li1+x+y(Al、Ga)(Ti、Ge)2-xSi3-y12(O≦x≦1、O≦y≦1)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LixGeyPzSw、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS(LiSi、0≦<3、0<y<2、0<z<4)系ガラス、P(Li、0≦x<3、0<y<3、0<z<7)系ガラス、Li3xLa2/3-xTiO(0≦x≦1/6)、LiLaZr12、Li1+yAlTi2-y(PO(0≦y≦1)、Li1+zAlGe2-z(PO(0≦z≦1)、LiO、LiF、LiOH、LiCO、LiAlO、LiO-Al-SiO-P-TiO-GeO系セラミックス、Li10GeP12、Li3.25Ge0.250.75、LiPS、LiPSBr、LiPSCl、LiPS、LiPSI、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、LiTi(PO、LiGe(PO、LiHf(PO、LiZr(PO、LiNH、Li(NHI、LiBH、LiAlH、LiNH、Li0.34La0.51TiO2.94、LiSrTiNbO、Li0.06La0.66Ti0.93Al0.03、Li0.34Nd0.55TiO、LiCdCl、LiMgCl、LiZnI、LiCdI、Li4.9Ga0.5+δLaZr1.70.312(0≦δ<1.6)、Li4.9Ga0.5+δLaZr1.70.312(1.7≦δ≦2.5)、Li5.39Ga0.5+δLaZr1.70.312(0≦δ≦1.11)、LPS(lithium phosphorus sulfide;LiPS;LiPS)、LTS(lithium tin sulfide)(LiSnS)、LPSCLL(lithium phosphorus sulfur chloride iodide;LiPSCl0.90.1)、LSPS(lithium tin phosphorus sulfide;Li10SnP12)、LiS、LiS-P、LiS-SiS、LiS-GeS、LiS-B、及びLiS-Alからなる群のうちから選択された1以上を含む、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項4】
前記無機リチウムイオン伝導体は、下記化学式3で表される柘榴石型セラミックス、または下記化学式4で表されるアルミニウムドーピングされたセラミックスを含む、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質:
[化学式3]
LiLaZr12
前記化学式3で、6<x<9、2<y<4、及び1<z<3である;
[化学式4]
LiLaZrAl12
前記式中、5<x<9、2<y<4、1<z<3、及び0<w<1である。
【請求項5】
前記無機リチウムイオン伝導体の平均粒子サイズが10nmないし30μmの範囲である、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項6】
前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーは、ジウレタンジメタクリレート、ジウレタンジアクリレート、またはそれら組み合わせを含む、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項7】
前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーは、下記化学式1で表されるジウレタンジメタクリレートを含む、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質:
【化1】
前記化学式1で、Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC-Cアルキル基である。
【請求項8】
前記多官能性ブロック共重合体は、両末端に、(メタ)アクリレート基を含み、ポリエチレンオキサイド反復単位及びポリプロピレンオキサイド反復単位を含むジブロック共重合体またはトリブロック共重合体を含む、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項9】
前記多官能性ブロック共重合体は、下記化学式2で表される高分子を含む、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質:
【化2】
前記化学式2で、x、y、zは、それぞれ独立して、1ないし50の整数である。
【請求項10】
前記多官能性ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が500ないし20,000の範囲である、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項11】
前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと前記多官能性ブロック共重合体との重量比は、1:100ないし100:1の範囲である、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項12】
前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと前記多官能性ブロック共重合体との重量比は、1:10ないし10:1の範囲である、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項13】
前記共重合体及び前記リチウム塩の総重量中、前記リチウム塩の含量は、1重量%ないし50重量%である、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質。
【請求項14】
リチウムメタル電極と、
前記リチウムメタル電極上に配され、請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載の有機・無機複合固体高分子電解質と、を含む、一体型電極構造体。
【請求項15】
請求項1ないし13のうちいずれか1項に記載の有機・無機複合固体高分子電解質を含む電気化学素子。
【請求項16】
無機リチウムイオン伝導体、ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体及びリチウム塩を含む前駆体混合物を準備する段階と、
前記前駆体混合物を膜形態に塗布して硬化させる段階と、を含む、請求項1に記載の有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法。
【請求項17】
前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーは、ジウレタンジメタクリレート、ジウレタンジアクリレート、またはそれら組み合わせを含む、請求項16に記載の有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法。
【請求項18】
前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーは、下記化学式1で表されるジウレタンジメタクリレートを含む、請求項16に記載の有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法:
【化3】
前記化学式1で、Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC-Cアルキル基である。
【請求項19】
前記多官能性ブロック共重合体は、両末端にアクリレート基を含み、ポリエチレンオキサイド反復単位及びポリプロピレンオキサイド反復単位を含むジブロック共重合体またはトリブロック共重合体を含む、請求項16に記載の有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法。
【請求項20】
前記多官能性ブロック共重合体は、下記化学式2で表される高分子を含む、請求項16に記載の有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法:
【化4】
前記化学式2で、x、y、zは、それぞれ独立して、1ないし50の整数である。
【請求項21】
前記硬化は、UV、熱または高エネルギー輻射を利用して行われる、請求項16に記載の有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機・無機複合固体高分子電解質、それを含む一体型電極構造体及び電気化学素子、並びに前記有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気・電子製品の軽薄短小及び携帯化の趨勢により、核心部品である二次電池も、軽量化及び小型化が要求され、高出力、高エネルギー密度を有する電池の開発が要求されている。そのような要求に応じ、最近、最も多くの注目を集めている高性能の次世代先端新型電池のうち一つがリチウム金属二次電池である。
【0003】
しかしながら、電極として使用するリチウム金属電極は、電解液成分と反応性が高く、有機電解液との反応により、不動態被膜を形成することになり、充放電の間、リチウム金属表面において、リチウムの酸化(溶解(dissolution))反応及び還元(析出(deposition))反応が不均一に反復されることにより、不動態被膜の形成及び成長が甚だしい。それにより、充放電時、電池容量の低減をもたらすだけではなく、充放電過程の反復により、リチウム金属表面に、リチウムイオンが針状に成長するデンドライト(dendrite)が形成され、リチウム二次電池の充放電サイクルが短縮され、電極間短絡(short)を引き起こされるというように、電池の安全性問題を誘発させている。
【0004】
それを解決するために、韓国公開特許第10-2016-0079405号においては、既存の固体電解質に比べ、イオン伝導度、機械的特性、工程の容易性、及び電気化学的安定性を向上させる特性の固体高分子電解質膜を製造する技術を提案したが、ポリエチレンオキサイドメタクリレート(PEOMA:polyethyleneoxide metacrylate)のような鎖型高分子の特性上、無機物添加剤の含量が40~50重量%になる場合、事実上、効果を示し難い。
【0005】
韓国登録特許第10-1793168号の場合、複合固体電解質の製造時、高分子は、ポリエチレンオキサイド(PEO:polyethylene oxide)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol)、ポリプロピレンオキサイド(polypropylene oxide)、ポリシロキサン(polysiloxane)、ポリホスファゼン(polyphosphazene)のように、常温におけるイオン伝導度が非常に低い材料を適用することにより、常温における使用が非常に困難であり、電池を50℃以上で使用ができると予想される。
【0006】
代表的なものとして、PEOは、周知のイオン伝導性高分子であるが、常温イオン伝導度が10-7S/cmレベルであり常温で作動する電池に適用が不可能であり、PEOのガラス転移温度(Tg)である60℃以上の高温において、作動が可能な高分子電解質である。そのような高分子と、10-4S/cmレベルの無機セラミックス材料とを複合するとき、常温イオン伝導度も、さらに低くなると考えられる。
【0007】
そのような問題を解決するために、LLZOまたはLPS、LGPSのような、その他イオン伝導度にすぐれる無機セラミックス材料のイオン伝導度の低下をなくしたり、あるいはそれを最小化させたりしながらも、常温イオン伝導度の向上、及び機械的強度を確保することができる有機・無機機複合電解質に係わる研究開発が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一側面は、リチウム金属電極表面において、無機リチウムイオン伝導体のイオン伝導度の低下をなくしたり、あるいはそれを最小化させたりしながらも、常温イオン伝導度の向上、及び機械的強度を確保することができる有機・無機複合固体高分子電解質を提供するものである。
【0009】
本発明の他の側面は、前記有機・無機複合固体高分子電解質が適用された一体型電極構造体を提供するものである。
【0010】
本発明のさらに他の側面は、前記有機・無機複合固体高分子電解質が適用された電気化学素子を提供するものである。
【0011】
本発明のさらに他の側面は、前記有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面においては、
無機リチウムイオン伝導体と、
ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体の共重合体と、
リチウム塩と、を含む有機・無機複合固体高分子電解質が提供される。
【0013】
本発明の他の側面においては、
リチウムメタル電極と、前記リチウムメタル電極上に配され、前記固体高分子電解質を含む一体型電極構造体が提供される。
【0014】
本発明のさらに他の側面においては、
前記電極構造体を含む電気化学素子が提供される。
【0015】
本発明のさらに他の側面においては、
無機リチウムイオン伝導体、ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体、及びリチウム塩を含む前駆体混合物を準備する段階と、
前記前駆体混合物を膜形態に塗布して硬化させる段階と、を含む前記有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0016】
一具現例による有機・無機複合固体高分子電解質は、高弾性及び高強度特性を有し、使用された無機リチウムイオン伝導体のイオン伝導度の特性低下なしに、常温において、高いイオン伝導度と機械的強度を示すことができ、電解質膜の製造時、圧力なしに、大面積に製造可能である。前記有機・無機複合固体高分子電解質は、リチウム金属二次電池を始めとする多様な電気化学素子に適用され、性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1ないし3、及び比較例1で製造された有機・無機複合固体高分子電解質膜の常温におけるイオン伝導度を測定した結果を示すグラフである。
図2】実施例1ないし3、及び比較例1で製造された有機・無機複合固体高分子電解質膜の温度変化によるイオン伝導度を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下で説明される本創意的思想(present inventive concept)は、多様な変換を加えることができ、さまざまな実施例を有することができるが、特定実施例を図面に例示し、詳細な説明によって詳細に説明する。しかしながら、それらは、本創意的思想を、特定の実施形態について限定するものではなく、本創意的思想の技術範囲に含まれる全ての変換、均等物または代替物を含むと理解されなければならない。
【0019】
以下で使用される用語は、単に、特定実施例についての説明に使用されたものであり、本創意的思想を限定する意図ではない。単数の表現は、文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。以下において、「含む」または「有する」というような用語は、明細書上に記載された特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれら組み合わせが存在するということを示すものであり、1またはそれ以上の他の特徴、数、段階、動作、構成要素、部品、成分、材料、またはそれら組み合わせの存在または付加の可能性を事前に排除するものではないと理解されなければならない。以下において使用される「/」は、状況により、「及び」とも解釈され、「または」とも解釈される。
【0020】
図面において、さまざまな構成要素、層及び領域を明確に表現するために、直径、長さ、厚みは、拡大されたり縮小されたりして示されている。明細書全体を通じ、類似した部分については、同一図面符号を付した。明細書全体において、層、膜、領域、板のような部分が、他の部分の「上」または「上部」にあるとするとき、それは、他の部分の真上にある場合だけではなく、その中間に、さらに他の部分がある場合も含む。明細書全体において、第1、第2のような用語は、多様な構成要素についての説明にも使用されるが、該構成要素は、用語によって限定されるものではない。該用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみに使用される。図面において、構成要素の一部が省略されうるが、それは、発明の特徴への理解の一助とするためのものであり、省略された構成要素を排除する意図ではない。
【0021】
本明細書において、特別な言及がない限り、「置換」とは、少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、C-C20アルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、アミノ基、イミノ基、アジド基、アミジノ基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、カルボニル基、カルバミル基、チオール基、エステル基、カルボン酸基またはその塩、スルホン酸基またはその塩、リン酸基または塩、C-C20アルキル基、C-C20アルケニル基、C-C20アルキニル基、C-C20アリール基、C-C20シクロアルキル基、C-C20シクロアルケニル基、C-C20シクロアルキニル基、C-C20ヘテロシクロアルキル基、C-C20ヘテロシクロアルケニル基、C-C20ヘテロシクロアルキニル基、C-C20ヘテロアリール基、またはそれら組み合わせの置換基で置換されたものを意味する。
【0022】
また、本明細書において、特別な言及がない限り、「ヘテロ」とは、化学式内に、N、O、S及びPのうち少なくとも1つのヘテロ原子が少なくとも一つ含まれたものを意味する。
【0023】
また、本明細書において、特別な言及がない限り、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」と「メタクリレート」とのいずれも可能であることを意味し、「(メタ)アクリル酸」は、「アクリル酸」と「メタクリル酸」とのいずれも可能であることを意味する。
【0024】
以下において、添付図面を参照しながら、例示的な有機・無機複合固体高分子電解質、それを含む電極構造体及び電気化学素子、並びに前記有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法について、さらに詳細に説明する。
【0025】
一具現例による有機・無機複合固体高分子電解質は、
無機リチウムイオン伝導体と、
ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体の共重合体と、
リチウム塩と、を含む。
【0026】
前記有機・無機複合固体高分子電解質は、ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマー及び多官能性ブロック共重合体を主骨格にして製造された架橋構造の共重合体を高分子マトリックスにし、その中に、無機リチウムイオン伝導体が粒子状に埋め込まれた形態を有することができる。前記有機・無機複合固体高分子電解質は、前記共重合体自体が、機械的特性にすぐれるだけではなく、無機リチウムイオン伝導体を多量混合する場合にも、無機リチウムイオン伝導体の脱落なしに、膜形態を維持することができ、優秀なイオン伝導度を確保することができる。
【0027】
前記有機・無機複合固体高分子電解質において、無機リチウムイオン伝導体は、リチウムイオン伝導性を有する酸化物系、リン酸塩系、硫化物系、及びLiPON系無機物から選択される少なくとも一つを含んでもよい。
【0028】
前記無機リチウムイオン伝導体は、例えば、柘榴石(garnet)型化合物、アルジロダイト(argyrodite)型化合物、LISICON(lithium super-ion-conductor)化合物、NASICON(Na super ionic conductor-like)化合物、窒化リチウム、水酸化リチウム、ペロブスカイト(perovskite)、リチウムハライド、硫化物系化合物からなる群のうちから選択された1以上を有することができる。
【0029】
前記無機リチウムイオン伝導体は、例えば、柘榴石系セラミックスであるLi3+xLa12(0≦x≦5、M=W、Ta、Te、Nb及びZrのうち少なくとも一つである)、ドーピングされた柘榴石系セラミックスであるLi7-3xM’La12(0<x≦1、Mは、W、Ta、Te、Nb及びZrのうち少なくとも一つであり、M’は、Al、Ga、Nb、Ta、Fe、Zn、Y、Sm及びGdのうち少なくとも一つである)、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO、Pb(Zr、Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(O≦x<1、O≦y<1)、Pb(Mg1/3Nb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、リチウムホスフェート(LiPO)、リチウムチタンホスフェート(LiTi(PO;0<x<2、0<y<3)、リチウムアルミニウムチタンホスフェート(LiAlTi(PO、0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li1+x+y(Al,Ga)(Ti,Ge)2-xSi3-y12(O≦x≦1、O≦y≦1)、リチウムランタンチタネート(LiLaTiO、0<x<2、0<y<3)、リチウムゲルマニウムチオホスフェート(LiGe、0<x<4、0<y<1、0<z<1、0<w<5)、リチウムナイトライド(Li、0<x<4、0<y<2)、SiS(LiSi、0≦<3、0<y<2、0<z<4)系ガラス、P(Li、0≦x<3、0<y<3、0<z<7)系ガラス、Li3xLa2/3-xTiO(0≦x≦1/6)、LiLaZr12、Li1+yAlTi2-y(PO(0≦y≦1)、Li1+zAlGe2-z(PO(0≦z≦1)、LiO、LiF、LiOH、LiCO、LiAlO、LiO-Al-SiO-P-TiO-GeO系セラミックス、Li10GeP12、Li3.25Ge0.250.75、LiPS、LiPSBr、LiPSCl、LiPS、LiPSI、Li1.3Al0.3Ti1.7(PO、LiTi(PO、LiGe(PO、LiHf(PO、LiZr(PO、LiNH、Li(NHI、LiBH、LiAlH、LiNH、Li0.34La0.51TiO2.94、LiSrTiNbO、Li0.06La0.66Ti0.93Al0.03、Li0.34Nd0.55TiO、LiCdCl、LiMgCl、LiZnI、LiCdI、Li4.9Ga0.5+δLaZr1.70.312(0≦δ<1.6)、Li4.9Ga0.5+δLaZr1.70.312(1.7≦δ≦2.5)、Li5.39Ga0.5+δLaZr1.70.312(0≦δ≦1.11)、LPS(lithium phosphorus sulfide;LiPS)、LTS(lithium tin sulfide;LiSnS)、LPSCLL(lithium phosphorus sulfur chloride iodide;LiPSCl0.90.1)、LSPS(lithium tin phosphorus sulfide;Li10SnP12)、LiS、LiS-P、LiS-SiS、LiS-GeS、LiS-B、及びLiS-Alからなる群のうちから選択された1以上を含んでもよい。
【0030】
例えば、前記無機リチウムイオン伝導体としては、柘榴石型LLZO(lithium lanthanum zirconium oxide)、AlドーピングされたLLZO(Li7-3xAlLaZr12)(0<x≦1)が使用され、類似酸化物型の固体電解質として、LLTO(lithium lanthanum titanate)(Li0.34La0.51TiO)(0<y≦3)、LATP(lithium aluminum titanium phosphate)(Li1.3Al0.3Ti1.7(PO)などが使用され、硫黄化合物として、LPS(lithium phosphorus sulfide;LiPS)、LTS(lithium tin sulfide;LiSnS)、LPSCLL(lithium phosphorus sulfur chloride iodide;LiPSCl0.90.1)、LSPS(lithium tin phosphorus sulfide;Li10SnP12)などが使用されうる。
【0031】
一実施例によれば、前記無機リチウムイオン伝導体は、下記化学式3で表される柘榴石型セラミックス、または下記化学式4で表されるアルミニウムドーピングされたセラミックスを含んでもよい。
【0032】
[化学式3]
LiLaZr12
前記化学式3で、6<x<9、2<y<4及び1<z<3である。
【0033】
[化学式4]
LiLaZrAl12
前記化学式4で、5<x<9、2<y<4、1<z<3及び0<w<1である。
【0034】
前記無機リチウムイオン伝導体は、粒子(particle)または柱状構造(columnar structure)を有することができる。
【0035】
前記有機・無機複合固体高分子電解質において、前記無機リチウムイオン伝導体のグレーン(grain)は、多面体形状を有することができる。そのように、多面体形状を有する場合、グレーン間の接触面積が増大し、イオン伝導抵抗が低減され、また、電荷伝達反応に有利な結晶面と活物質との接触可能性が高く、電気化学反応速度論(kinetics)が増大されうる。
【0036】
前記無機リチウムイオン伝導体は、平均粒子サイズが10nmないし30μmの範囲でもある。例えば、無機リチウムイオン伝導体の平均粒子サイズは、100nmないし20μm、200nmないし10μm、300nmないし1μm、または400nmないし600nmの範囲でもある。平均粒子サイズが前述の範囲であるとき、前駆体溶液内分散が容易でありつつ、固体高分子電解質の膜厚を低減させることができる。
【0037】
前記無機リチウムイオン伝導体の含量は、無機リチウムイオン伝導体及び前記共重合体の総重量を基準に、30ないし90重量%、40ないし85重量%、または50ないし80%でもある。前述の範囲において、高いリチウムイオン伝導性を有する有機・無機複合固体高分子電解質を提供することができ、共重合体との複合化が可能である。無機リチウムイオン伝導体及び前記共重合体の総重量を基準に、前記無機リチウムイオン伝導体の含量が50重量%を超える高い含量でも、有機・無機複合固体高分子電解質は、高いイオン伝導度を示すことができる。
【0038】
前記有機・無機複合固体高分子電解質において、前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体の共重合体は、高分子の結晶性を制御し、非晶質状態を維持し、イオン伝導度及び電気化学的特性を向上させることができる。ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマー及び多官能性ブロック共重合体を主骨格にして製造された架橋マトリックスは、高分子自体の結晶化が非常に低く、内部の非晶質領域において、高分子の部分運動(segmental motion)によるリチウムイオンの移動が自由であり、イオン伝導度を向上させることができる。また、前記共重合体は、高分子架橋構造であり、共重合体自体の機械的特性を向上させ、無機リチウムイオン体が高分子マトリックスに押しなべて分散され、高分子から脱落を生じさせない。
【0039】
架橋性前駆体として、前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーは、ジウレタンジメタクリレート、ジウレタンジアクリレート、またはそれら組み合わせを含んでもよい。
【0040】
一実施例によれば、前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーは、下記化学式1で表されるジウレタンジメタクリレートを含んでもよい。
【0041】
【化1】
前記化学式1で、Rは、それぞれ独立して、水素原子またはC-Cアルキル基である。
【0042】
ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーは、ウレタンモイエティ(moiety)を含み、高い機械的強度及び弾性を有しているために、多官能性ブロック共重合体と共重合構造を形成する場合、高い機械的強度を維持して弾性を有する有機・無機複合固体高分子電解質を製造することができる。
【0043】
ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと共に、それと類似した構造を有する多官能性作用基を含むその他モノマーが追加して混合されても使用される。そのような多官能性作用基を含むその他モノマーとしては、例えば、ウレタンアクリレートメタアクリレート(urethane acrylate methacrylate)、ウレタンエポキシメタアクリレート(urethane epoxy methacrylate)、Arkema社の製品名Satomer N3DE180,N3DF230などからなる群のうちから選択された1以上を使用することができる。
【0044】
架橋性前駆体として、前記多官能性ブロック共重合体は、両末端に、(メタ)アクリレート基を含み、ポリエチレンオキサイド反復単位及びポリプロピレンオキサイド反復単位を含むジブロック共重合体またはトリブロック共重合体を含むものでもある。
【0045】
一実施例によれば、前記多官能性ブロック共重合体は、両末端に、(メタ)アクリレート基を含み、ポリエチレンオキサイド第1ブロック、ポリプロピレンオキサイド第2ブロック及びポリエチレンオキサイド第3ブロックからなるトリブロック共重合体を含むものでもある。
【0046】
一実施例によれば、前記多官能性ブロック共重合体は、下記化学式2によっても表される。
【0047】
【化2】
前記化学式2で、x、y、zは、それぞれ独立して、1ないし50の整数である。
【0048】
以上のような構造の多官能性ブロック共重合体は、既存に広く知られたポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDMA)と構造上類似しているが、PEGDMAの場合、単一線形構造であり、結晶化度が高く、架橋重合後、架橋度により、崩れ現象が起こりうるが、前記多官能性ブロック共重合体は、プロピレンオキサイドとエチレンオキサイドとのブロック共重合体の構造であり、エチレンオキサイド単一構造で示される結晶性を壊し、2つの異なる高分子ブロックにより、有機・無機複合固体高分子電解質に柔軟さを追加させることができる。
【0049】
前記多官能性ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、500ないし20,000の範囲でもある。例えば、前記多官能性ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)は、1,000ないし20,000の範囲、または1,000ないし10,000の範囲でもある。該多官能性ブロック共重合体の重量平均分子量(Mw)が前述の範囲であるとき、ブロック共重合体自体の長さが適切であち、架橋後、高分子が脆く(brittle)変わらず、溶媒を使用しないリチウム金属電極のコーティング時、粘度及び厚みの調節にも容易である。
【0050】
前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと前記多官能性ブロック共重合体との重量比は、1:100ないし100:1の範囲でもある。例えば、前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと前記多官能性ブロック共重合体との重量比は、1:10ないし10:1の範囲でもある。例えば、前記ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと前記多官能性ブロック共重合体との重量比は、1:5ないし5:1の範囲でもある。前述の範囲において、高分子の結晶性を制御し、非晶質状態を維持し、イオン伝導度及び電気化学的特性を向上させることができる。
【0051】
前記多官能性ブロック共重合体と共に、、それと類似した構造を有するその他モノマーまたはポリマーが追加して混合されても使用される。そのようなその他モノマーまたはポリマーとしては、例えば、ジペンタエリスリトールペンタ-/ヘキサ-アクリレート(dipentaerythritol penta-/hexa-acrylate)、グリセロールプロポキシレートトリアクリレート(glycerol propoxylate triacrylate)、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート(di(trimethylolpropane) tetraacrylate)、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテルアクリレート(poly(ethylene glycol)methyl ether acrylate)などがあり、それらのうちから1以上使用することができるが、それらに限定されるものではない。
【0052】
リチウム塩は、前記有機・無機複合固体高分子電解質のイオン伝導経路を確保する役割を行う。前記リチウム塩は、当該技術分野において、一般的に使用されるものであるならば、制限なしに使用することができる。例えば、リチウム塩としては、LiSCN、LiN(CN)、LiClO、LiBF、LiAsF、LiPF、LiCFSO、LiC(CFSO、LiN(SO、LiN(SOCF、LiN(SOF)、LiSbF、LiPF(CFCF、LiPF(CF及びLiB(Cのうちから選択された1以上を含んでもよいが、それらに限定されるものではない。
【0053】
前記有機・無機複合固体高分子電解質に含まれるリチウム塩の含量は、特別に限定されるものではないが、例えば、無機リチウムイオン伝導体を除いた前記共重合体及びリチウム塩の総重量を基準に、1重量%ないし50重量%でもある。例えば、該リチウム塩の含量は、前記共重合体及びリチウム塩の総重量を基準に、5重量%ないし50重量%でもあり、具体的には10重量%ないし30重量%でもある。前述の範囲において、リチウムイオン移動度及びイオン伝導度にすぐれるとも示される。
【0054】
前記有機・無機複合固体高分子電解質は、無機材料として、無機リチウムイオン伝導体、有機材料として、ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体の共重合体、及びリチウム塩を含むことにより、高分子の結晶性を制御し、非晶質状態を維持し、イオン伝導度及び電気化学的特性を向上させることができる。また、有機・無機複合架橋構造でもって、共重合体自体の機械的特性及び弾性(elastomeric)特性を向上させ、少量の有機材料使用だけでも、機械的特性にすぐれる有機・無機複合固体高分子電解質膜を製造することができる。
【0055】
前記有機・無機複合固体高分子電解質は、膜形態であり、液体を使用しない全固体電解質に使用可能であり、既存の高分子電解質に比べ、イオン伝導度、機械的特性及び電気化学的安定性を向上させ、特に、10-4S/cm以上の常温イオン伝導度を有することができる。前記有機・無機複合固体高分子電解質のイオン伝導度(σ)は、常温である25℃ないし70℃の温度範囲において、4x10-4S/cmないし6x10-4S/cmでもある。
【0056】
前記有機・無機複合固体高分子電解質は、フリースタンディング(free standing)形態のフィルムまたはリチウム金属電極に直接コーティングされ、リチウム金属電極と固体高分子電解質との界面を最小化させることができる。
【0057】
前述のように、前記有機・無機複合固体高分子電解質は、イオン伝導度及び機械的強度にすぐれ、リチウムメタル電極を使用する高密度高エネルギー用リチウム二次電池のような電気化学素子に使用が可能である電解質膜を具現することができる。また、前記有機・無機複合固体高分子電解質を使用し、液漏れがなく、負極及び正極で起こる電気化学的副反応がなく、液体電解液を使用する電解質と異なり電解液分解反応がなく、電池特性向上及び安定性を確保することができる。
【0058】
一具現例による一体型電極構造体は、
リチウムメタル電極と、
前記リチウムメタル電極上に配された前述の有機・無機複合固体高分子電解質と、を含む。
【0059】
リチウムメタル電極の厚みは、100μm以下、例えば、80μm以下、50μm以下、30μm以下または20μm以下でもある。他の一具現例によれば、該リチウムメタル電極の厚みは、0.1ないし60μmでもある。具体的には、該リチウムメタル電極の厚みは、1ないし25μm、例えば、5ないし20μmでもある。
【0060】
リチウムメタル電極上には、前述の有機・無機複合固体高分子電解質が配され、リチウムメタル電極と一体化される。前記有機・無機複合固体高分子電解質は、常温及び高温度においても、高いイオン伝導度及び機械的強度を有するので、該リチウムメタル電極の性能を向上させることができる。
【0061】
一具現例による電気化学素子は、前記有機・無機複合固体高分子電解質を含む。
【0062】
前記電気化学素子は、前記有機・無機複合固体高分子電解質を使用し、安全性にすぐれ、高いエネルギー密度を有し、60℃以上の温度においても、電池の特性を維持し、そのような高温においても、全ての電子製品の作動を可能にすることができる。
【0063】
前記電気化学素子は、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、リチウム空気電池、リチウム全個体電池のようなリチウム二次電池でもある。
【0064】
前記有機・無機複合固体高分子電解質が適用された電気化学素子は、既存の携帯電話、携帯用コンピュータなどの用途以外に、電気車両(electric vehicle)のような高容量、高出力及び高温駆動が要求される用途にも適し、既存の内燃機関、燃料電池、スーパーキャパシタなどと結合し、ハイブリッド車両(hybrid vehicle)などにも使用されうる。また、前記電気化学素子は、高出力、高電圧及び高温駆動が要求されるその他全ての用途にも使用される。
【0065】
以下においては、一具現例による有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法について説明する。
【0066】
一具現例による有機・無機複合固体高分子電解質の製造方法は、
無機リチウムイオン伝導体、ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体、及びリチウム塩を含む前駆体混合物を準備する段階と、
前記前駆体混合物を膜形態に塗布して硬化させる段階と、を含む。
【0067】
既存の無機固体電解質は、一般的に、無機材料、例えば、LLZOを1.0MPa以上の圧力をかけ、ペレット形態に製造したが、一具現例による有機・無機複合固体高分子電解質は、圧力をかけず、無機リチウムイオン伝導体を、高分子との複合化を介し、フィルム形態による有機・無機複合固体高分子電解質の製造が可能である。
【0068】
無機リチウムイオン伝導体、ウレタン基含有多官能性アクリル系モノマーと多官能性ブロック共重合体とを含む架橋性前駆体、及びリチウム塩については、前述の通りである。
【0069】
前記前駆体混合物は、架橋性前駆体の架橋の一助とするために、架橋剤、光開始剤などをさらに含んでもよい。該架橋剤、該光開始剤などの使用含量は、一般的な範囲でもあり、例えば、架橋性前駆体100重量部に対し、1ないし5重量部の範囲においても使用される。
【0070】
一実施例によれば、前記前駆体混合物は、開始剤をさらに含み、架橋剤が共に架橋された構造の共重合体を形成することができる。該開始剤としては、例えば、過酸化物(-O-O-)系のベンゾイルペルオキシド、アセチルペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、クミルヒドロペルオキシドドなど、あるいはアゾ系化合物(-N=N-)系のアゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリルのような熱開始剤が使用されうる。
【0071】
無機リチウムイオン伝導体、架橋性前駆体及びリチウム塩のような前駆体物質を混合する方法は多様であり、例えば、ボールミル(ball milling)、乳鉢・乳棒(mortar and pestel)、または超音波ホモゲナイザ(ultrasonic homogenizer)のミキシングのような方法を利用して混合することができるが、特別に制限されるものではない。
【0072】
無機リチウムイオン伝導体、架橋性前駆体及びリチウム塩を含む前駆体混合物が準備されれば、前記前駆体混合物を膜形態に塗布して硬化させ、有機・無機複合固体高分子電解質を形成する。前記前駆体混合物は、溶媒を使用せず、前記架橋性前駆体、選択的な(optional)開始剤、及びリチウム塩を含む状態で膜形態に塗布することができる。
【0073】
前記前駆体混合物を膜形態に塗布する方法は、多様であり、特別に制限されるものではない。例えば、前駆体混合物を2枚のガラス板間に注入し、該ガラス板に対し、クランプを使用して一定圧力をかけ、電解質膜厚調節を可能にすることができる。他の例としては、前駆体混合物を、スピンコーティングのような塗布装置を利用し、直接リチウムメタル電極上にコーティングし、所定厚の薄膜に形成することができる。
【0074】
前記前駆体混合物を塗布する工程は、コーティング工程は、ドクターブレード(doctor blade)、ドロップキャスティング(drop casting)及びガラス板圧着方法のような装備を使用し、コーティングを実施することができる。
【0075】
前記前駆体混合物を硬化する方法としては、UV、熱または高エネルギー輻射(電子ビーム、γ線)を利用した硬化方法を有することができる。一実施例によれば、前記前駆体混合物に、UV(365nm)を直接照射するか、あるいは約60℃ほどで熱重合架橋し、有機・無機複合固体高分子電解質を製造することができる。
【0076】
前記過程を介し、モノリス(monolith)形態の有機・無機複合固体高分子電解質膜を製造することができる。
【0077】
以下の実施例及び比較例を介し、例示的な具現例について、さらに詳細に説明される。ただし、該実施例は、技術的思想を例示するためのものであり、それらだけにより、本発明の範囲が限定されるものではない。
【0078】
実施例1
無機リチウムイオン伝導体として、柘榴石型AlドーピングされたLLZO(Ampcera Inc.、LiAlLaZr12、粒子サイズ:~500nm)5g、前記化学式1のDUDMA(diurethane dimethacrylate)(Sigma-Aldrich、470.56/mol)1g、及び前記化学式2のPPG-b-PEG(poly(ethylene glycol)-block-poly(propylene glycol)-block-poly(ethylene glycol)diacrylate)(Sigma-Aldrich、average Mn~1,200)0.5gを、乳鉢・乳棒を使用して20分間混合した後、リチウム塩LiFSI(lithium bis(fluorosulfonyl)imide)0.65gをバイアルに入れた後、さらに混合した。混合された混合物に、開始剤BEE(benzoin ethyl ether;Sigma-Aldrich、240.30g/mol)を、前記モノマー総重量対比で3%で添加し、さらに混合し、複合固体電解質前駆体混合物を準備した。
【0079】
前記複合固体電解質前駆体混合物0.2gをガラス板に置いた後、準備された他のガラス板で覆った後、365nm UVを50秒間照射し、30~50μm厚の有機・無機複合固体高分子電解質膜を製造した。
【0080】
実施例2
実施例1において、LLZO、DUDMA及びPPG-b-PEGの含量を、それぞれ3g、1g及び0.5gに調節したことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、有機・無機複合固体高分子電解質膜を製造した。
【0081】
実施例3
実施例1において、LLZO、DUDMA及びPPG-b-PEGの含量を、それぞれ2g、1g及び0.5gに調節したことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、有機・無機複合固体高分子電解質膜を製造した。
【0082】
比較例1
実施例1において、LLZOを使用せず、DUDMA及びPPG-b-PEGの含量を、それぞれ4g及び2gに調節したことを除いては、前記実施例1と同一過程を実施し、有機・無機複合固体高分子電解質膜を製造した。
【0083】
評価例1:イオン伝導度評価
前記実施例1~3及び比較例1で製造された有機・無機複合固体高分子電解質膜のイオン伝導度を測定し、その結果を、下記の表1及び図1に示した。イオン伝導度は、2枚の、面積1cmのsusディスクを使用し、試料をsusディスク間に入れた後、両側からスプリングに一定圧力を与えた状態で、Solatron 1260A Impedance/Gain-Phase Analyzerを使用し、1Hz~1MHz周波数(frequency)区間を測定した。
【0084】
【表1】
【0085】
前記表1から分かるように、実施例1ないし3、及び比較例1で製造された有機・無機複合固体高分子電解質膜は、、LLZOの含量比により、イオン伝導度の差が示され、常温において、10-4S/cm以上の高いイオン伝導度が測定された。一方、無機リチウムイオン伝導体LLZOを含んでいない純粋有機・無機複合固体高分子電解質のイオン伝導度は、常温において、10-5S/cmと、比較的高い方であるが、LLZOを含む有機・無機複合固体高分子電解質膜に比べて低いという特性がある。イオン伝導度測定後の有機・無機複合固体高分子電解質膜の状態は、大きく変化がなく、良好だった。
【0086】
評価例2:温度によるイオン伝導度評価
前記実施例1ないし3、及び比較例1で製造された有機・無機複合固体高分子電解質膜につき、温度変化によるイオン伝導度を測定し、その結果を下記の表2及び図2に示した。
【0087】
【表2】
【0088】
前述の表2及び図2から分かるように、実施例1のLLZO複合有機・無機複合固体高分子電解質のイオン伝導度は、70℃において、6.15x10-4S/cmと、比較的、電池に適用可能なレベルのイオン伝導度を示した一方、LLZOがない有機・無機複合固体高分子電解質膜の場合、50℃においても、~10-5S/cmレベルと、LLZOを含む複合電解質に比べ、低いイオン伝導度を示し、その場合には、イオン伝導度を向上させるための、オリゴマー、またはその他添加剤を添加すれば、電池に適用可能なレベルになりうる。実施例1~3の場合、初期常温において、いずれも低い~10-4S/cmイオン伝導度を示したが、温度が高くなるにつれ、有機・無機複合固体高分子電解質膜自体の活性化エネルギー(activation energy)の増大により、イオンのホッピング(hopping)及び拡散(diffusion)が活発化され、イオン伝導度も高くなると考えられる。
【0089】
前述の結果から、固体電解質用高分子において広く使用されるPEO、PVDFまたはPEGDMAなどを主鎖として使用して製造された固体複合高分子電解質に比べ、本発明に適用された、ポリウレタン基を含んだ高分子マトリックスを適用して製造された複合固体電解質の場合、常温及び高温におけるイオン伝導度にすぐれ、特に、少量の高分子と無機リチウムイオン伝導体とを混合し、複合電解質膜製造が可能であり、膜の特性劣化、または体積膨脹による毀損などなしに、複合高分子電解質膜の形態及び特性を維持するすぐれたな機械的安定的な特性を示すということを確認することができる。
【0090】
以上においては、図面及び実施例を参照し、本発明による望ましい具現例について説明されたが、それらは、例示的なものに過ぎず、当該技術分野において当業者であるならば、それらから、多様な変形、及び均等な他の具現例が可能であるという点を理解することができるであろう。従って、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲によって定められるものである。
図1
図2