(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】通信装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/822 20060101AFI20240524BHJP
H01L 27/04 20060101ALI20240524BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01L27/04 L
H01F38/14
(21)【出願番号】P 2022556360
(86)(22)【出願日】2020-10-23
(86)【国際出願番号】 JP2020039967
(87)【国際公開番号】W WO2022085194
(87)【国際公開日】2022-04-28
【審査請求日】2022-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】515225518
【氏名又は名称】ウルトラメモリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100190621
【氏名又は名称】崎間 伸洋
(72)【発明者】
【氏名】山口 和央
(72)【発明者】
【氏名】安達 隆郎
【審査官】田付 徳雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-068695(JP,A)
【文献】国際公開第2009/113372(WO,A1)
【文献】特開2015-186070(JP,A)
【文献】特開2011-233956(JP,A)
【文献】特開2015-039281(JP,A)
【文献】特開2017-139314(JP,A)
【文献】特開2012-244763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/822
H01L 21/04
H01F 38/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのコイル間で磁界を用いて通信する通信装置であって、
板状の送信コイルと、
前記送信コイルの面内方向に対して、面内方向を交差して配置される板状の受信コイルと、
前記送信コイルの所定の一辺に沿う方向に、一辺を沿わせて配置されるサポートコイルであって、前記送信コイルの面内方向において前記送信コイルに並べて配置されるサポートコイルと、
を備える通信装置。
【請求項2】
前記送信コイル及び前記受信コイルは、矩形コイルであり、
前記受信コイルは、一辺が前記送信コイルの一辺に沿って配置される請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記サポートコイルは、前記送信コイルに一部を重ねて配置される請求項
1又は2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記サポートコイルは、前記送信コイルの交差する二辺のそれぞれに沿う方向に、一辺を沿わせて複数配置される請求項
1~3のいずれかに記載の通信装置。
【請求項5】
複数の前記送信コイルに送信用の信号を出力する送信回路、
をさらに備え、
前記送信コイルは、一辺に沿う方向に並べて配置され、
前記受信コイルは、前記送信コイルの配置される方向に交差する一辺に、面内方向を沿わせて配置され、
前記送信回路は、複数の前記送信コイルに対して同一の向きに送信用の信号を出力する請求項1
又は2に記載の通信装置。
【請求項6】
複数の前記送信コイルの中から前記受信コイルの受信信号が最大になる一つの送信コイルを特定し、前記特定された送信コイルにおいて、前記受信コイルの面内方向に沿う方向の辺であって、前記受信コイルに最も近接している辺側に配置される2つの前記送信コイルを選択する制御部をさらに備え、
前記送信回路は、選択された3つの前記送信コイルに送信用の信号を送出する、
請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
所定の複数の前記送信コイルを直列に接続するスイッチ部をさらに備え、
前記送信回路は、前記スイッチ部によって接続される複数の前記送信コイルに送信用の信号を送出する請求項6に記載の通信装置。
【請求項8】
前記送信コイルは、互いに重ねて配置されるとともに、配置される方向に交差する一辺同士をずらして配置される請求項
5~7のいずれかに記載の通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、記憶装置としてDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリ(RAM)が知られている。DRAMには、演算装置(以下、論理チップという)の高性能化やデータ量の増大に耐えうる大容量化が求められている。そこで、メモリ(メモリセルアレイ、メモリチップ)の微細化及びセルの平面的な増設による大容量化が図られてきた。一方で、微細化によるノイズへの惰弱性や、ダイ面積の増加等により、この種の大容量化は限界に達してきている。
【0003】
そこで、昨今では、平面的なメモリを複数積層して3次元化(3D化)して大容量化を実現する技術が開発されている。そして、複数積層されたモジュールを電気的に接続する半導体モジュールが提案されている。また、モジュール間の通信について、コイルを用いて通信する装置が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2009/113373号
【文献】国際公開第2008/102814号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、送信コイル及び受信コイルの一辺同士を対向させて、通信することが開示されている。一方、送信コイル及び受信コイルの異なる配置については開示されていない。
【0006】
また、特許文献2では、1つの受信コイルと複数の送信コイルとを組み合わせて互いに通信することが開示されている。特許文献2では、複数の送信コイルごとに、送信器が配置されるため、コイルの配置面積が大きくなる。また、特許文献2では、コイルの配置面積の増大によりチップコストが増大する。
【0007】
そこで、本発明は、チップコストの増大を抑制しつつ、配置の自由度を向上した通信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、少なくとも2つのコイル間で磁界を用いて通信する通信装置であって、板状の送信コイルと、前記送信コイルの面内方向に対して、面内方向を交差して配置される板状の受信コイルと、を備える通信装置に関する。
【0009】
また、前記送信コイル及び前記受信コイルは、矩形コイルであり、前記受信コイルは、一辺が前記送信コイルの一辺に沿って配置されるのが好ましい。
【0010】
また、通信装置は、前記送信コイルの所定の一辺に沿う方向に、一辺を沿わせて配置されるサポートコイルであって、前記送信コイルに並べて配置されるサポートコイルをさらに備えるのが好ましい。
【0011】
また、前記サポートコイルは、前記送信コイルに一部を重ねて配置されるのが好ましい。
【0012】
また、前記サポートコイルは、前記送信コイルの交差する二辺のそれぞれに沿う方向に、一辺を沿わせて複数配置されるのが好ましい。
【0013】
また、通信回路は、複数の前記送信コイルに送信用の信号を出力する送信回路、をさらに備え、前記送信コイルは、一辺に沿う方向に並べて配置され、前記受信コイルは、前記送信コイルの配置される方向に交差する一辺に、面内方向を沿わせて配置され、前記送信回路は、複数の前記送信コイルに対して同一の向きに送信用の信号を出力するのが好ましい。
【0014】
また、通信装置は、所定の複数の前記送信コイルを直列に接続するスイッチ部をさらに備え、前記送信回路は、前記スイッチ部によって接続される複数の前記送信コイルに送信用の信号を送出するのが好ましい。
【0015】
また、前記送信コイルは、互いに重ねて配置されるとともに、配置される方向に交差する一辺同士をずらして配置されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、チップコストの増大を抑制しつつ、配置の自由度を向上した通信装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る通信装置の例2を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態の通信装置の例3を示す平面図である。
【
図3】第1実施形態の通信装置の例3を示す側面図である。
【
図4】第1実施形態の通信装置の例2及び例3における時間と信号量との関係を示すグラフである。
【
図5】第2実施形態の通信装置の例4を示す平面図である。
【
図6】第2実施形態の通信装置の例5を示す平面図である。
【
図7】第2実施形態の通信装置の例6を示す平面図である。
【
図8】第2実施形態の通信装置の例4から例6における時間と信号量との関係を示すグラフである。
【
図9】第2実施形態の通信装置の例4から例6において、サポートコイルを用いない場合との信号量の比を表すグラフである。
【
図10】第3実施形態の通信装置の例7を示す平面図である。
【
図11】第3実施形態の通信装置の例7を示す側面図である。
【
図12】第3実施形態の通信装置の例7において、時間と信号量との関係を示すグラフである。
【
図13】本発明の第4実施形態に係る通信装置の一例及び他の例を示す平面図である。
【
図14】第4実施形態の通信装置の他の例において送信コイルの接続態様を示す概略図である
【
図15】第4実施形態の通信装置の他の例におけるスイッチ部の動作態様を示す回路図である。
【
図16】第4実施形態の通信装置の他の例において送信コイルの他の接続態様を示す概略図である。
【
図17】第4実施形態の通信装置の他の例においてスイッチ部の他の動作態様を示す回路図である。
【
図18】第4実施形態の通信装置の他の例において時間と送信コイルの電流値との関係を示すグラフである。
【
図19】第4実施形態の通信装置の他の例において時間と受信コイルの電圧値との関係を示すグラフである。
【
図20】変形例に係る通信装置の2つの受信コイルと送信コイルとの位置関係を示す概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態に係る通信装置1及びその製造方法について
図1から
図19を参照して説明する。
各実施形態に係る通信装置1は、板状かつ矩形の送信コイル10と、板状かつ矩形の受信コイル20との通信においてチップコストの増大を抑制しつつ、通信感度を向上することを図るものである。送信コイル10は、例えば、1つの基板(図示せず)の一面に配置される。受信コイル20は、例えば、他の基板(図示せず)の一面に配置される。そして、他の基板は、1つの基板の面内方向に、面内方向を傾斜して配置される。各実施形態に係る通信装置1は、例えば、2つの基板間の通信を実施するように構成される。
【0019】
[第1実施形態]
次に、本発明の第1実施形態に係る通信装置1について、
図1から
図4を参照して説明する。
通信装置1は、少なくとも2つのコイル間で磁界を用いて通信する。通信装置1は、例えば、
図1から
図3に示すように、送信コイル10と、受信コイル20と、サポートコイル30と、を備える。
【0020】
送信コイル10は、例えば、板状のコイルである。送信コイル10は、例えば、矩形コイルである。送信コイル10は、例えば、送信用の信号を出力する送信用回路(図示せず)に接続される。
【0021】
受信コイル20は、例えば、板状のコイルである。受信コイル20は、例えば、矩形コイルである。受信コイル20は、送信コイル10の面内方向に対して、面内方向を交差して配置される。具体的には、受信コイル20は、
図3に示すように、送信コイル10の面内方向に対して、面内方向を垂直又は略垂直になるように配置される。また、受信コイル20は、
図1及び
図2に示すように、一辺が送信コイル10の一辺(送信側第一辺11)に沿って配置される。本実施形態において、受信コイル20は、送信コイル10の一辺(送信側第一辺11)の巻き線上に一辺を沿わせて配置される。受信コイル20は、例えば、送信コイル10から送信された信号を受信する受信用回路(図示せず)に接続される。
【0022】
サポートコイル30は、例えば、板状のコイルである。サポートコイル30は、例えば、矩形コイルである。サポートコイル30は、いずれの信号出力回路にも接続されない、閉ループ又は開ループのコイルである。サポートコイル30は、送信コイル10に並べて配置される。また、サポートコイル30は、送信コイル10の面内方向に、面内方向を沿わせて配置される。サポートコイル30は、例えば、送信コイル10の所定の一辺に沿う方向に、一辺を沿わせて配置される。具体的には、サポートコイル30は、
図1に示すように、受信コイル20が配置される一辺(送信側第一辺11)に交差する送信コイル10の一辺(送信側第二辺12)に、一辺(サポート側第一辺31)を沿わせて配置される。また、サポートコイル30は、他の例として、
図2に示すように、受信コイル20が配置される一辺(送信側第一辺11)に交差する送信コイル10の一辺(送信側第二辺12)のそれぞれに、一辺(サポート側第一辺31)を沿わせて2つ配置される。すなわち、サポートコイル30は、他の例として、送信コイル10の対向する2辺(送信側第二辺12)のそれぞれに一辺(サポート側第一辺31)を沿わせて一対に配置される。これにより、サポートコイル30は、他の例として、受信コイル20に重ねられる一辺(送信側第一辺11)に交差する二辺(送信側第二辺12)のそれぞれに沿って一対に配置される。
【0023】
本実施形態において、サポートコイル30は、送信コイル10に一部を重ねて配置される。本実施形態において、サポートコイル30は、受信コイル20の一辺にも重ねて配置される。これにより、サポートコイル30は、
図3に示すように、1つの基板の一面上において、送信コイル10と一部重なる領域に配置される。そして、サポートコイル30は、受信コイル20の一辺の端部に隣接(近接)配置される。
【0024】
次に、本実施形態に係る通信装置1の動作について説明する。
送信コイル10に対して送信用の信号が印加されると、送信コイル10に磁界が発生する。受信コイル20は、発生した磁界による誘導起電力によって信号を受信する。
【0025】
ここで、サポートコイル30には、送信コイル10にて発生した磁界によって、誘導起電力が発生し過渡的な微小電流が流れる。サポートコイル30は、この電流により、送信コイル10から出力される磁界を補強する磁界を発生する。これにより、受信コイル20は、送信コイル10から送信される磁界との結合に加えて、サポートコイル30によって補強された磁界とも結合することによって、より多くの信号を受信する。
【0026】
[実施例]
次に、本実施形態に係る通信装置1の実施例について説明する。
サポートコイル30を用いない場合(以下、例1とする)、1つのサポートコイル30を用いる場合(
図1参照、以下例2とする)、2つのサポートコイル30を用いる場合(
図2参照、以下例3とする)のそれぞれについて、時間と信号量の変化とを計測した。その結果、
図4に示すように、例1に対して、例2及び例3ともに、信号量の増加が認められた。例2では、例1に対して6%の信号量の増加が認められた。例3では、例1に対して10%の信号量の増加が認められた。このように、いずれの場合でも信号量の増加が認められた。
【0027】
以上のような第1実施形態に係る通信装置1によれば、以下の効果を奏する。
(1)少なくとも2つのコイル間で磁界を用いて通信する通信装置1であって、板状の送信コイル10と、送信コイル10の面内方向に対して、面内方向を交差して配置される板状の受信コイル20と、を備える。これにより、送信コイル10及び受信コイル20について、配置の自由度を向上することができる。また、送信コイル10及び受信コイル20の対で自由に構成されるので、チップコストの増大を抑制することができる。
【0028】
(2)送信コイル10及び受信コイル20は、矩形コイルであり、受信コイル20は、一辺が送信コイル10の一辺に沿って配置される。これにより、矩形コイル同士において、配置の自由度を向上することができる。
【0029】
(3)通信装置1は、送信コイル10の所定の一辺に沿う方向に、一辺を沿わせて配置されるサポートコイル30であって、送信コイル10に並べて配置されるサポートコイル30をさらに備える。これにより、通信装置1は、サポートコイル30によって補強される磁界を用いて、受信される信号量を増加させることができる。
【0030】
(4)サポートコイル30は、送信コイル10に一部を重ねて配置される。これにより、コイルの配置面積を抑制しつつ、信号量を増加させることができる。
【0031】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係る通信装置1について、
図5から
図9を参照して説明する。第2実施形態において、同一構成について同一の符号を付し、説明を簡略化又は省略する。
第2実施形態に係る通信装置1は、
図5から
図7に示すように、サポートコイル30が、送信コイル10の辺のうち、受信コイル20の配置される辺に隣接又は重ねて配置される点で、第1実施形態と異なる。すなわち、第2実施形態に係る通信装置1は、サポートコイル30が、送信コイル10の面内方向において、第1実施形態とは異なる一辺(送信側第一辺11)に隣接又は一部重ねて配置される点で第1実施形態と異なる。
【0032】
[実施例]
次に、本実施形態に係る通信装置1の実施例について説明する。
サポートコイル30を送信コイル10に隣接する場合(
図5参照、以下例4とする)、送信コイル10とサポートコイル30とを重ねる場合(
図6参照、以下例5とする)、送信コイル10とサポートコイル30との重ね量を増加した場合(
図7参照、以下例6とする)のそれぞれについて、時間と信号量の変化とを計測した。また、それぞれについて、例1に対するそれぞれの例の信号量の比を算出した。その結果、
図8及び
図9に示すように、例1に対して、例4から例6はすべて、信号量の増加が認められた。例4では、例1に対して3%の信号量の増加が認められた。例5では、例1に対して9%の信号量の増加が認められた。例6では、例1に対して3%の信号量の増加が認められた。このように、いずれの場合でも信号量の増加が認められた。
【0033】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る通信装置1ついて、
図10から
図12を参照して説明する。第3実施形態において、同一構成について同一の符号を付し、説明を簡略化又は省略する。
第3実施形態に係る通信装置1は、
図10及び
図11に示すように、サポートコイル30が、送信コイル10の交差する二辺(送信側第一辺11及び送信側第二辺12)のそれぞれに沿う方向に、一辺(サポート側第一辺31)を沿わせて複数配置される点で、第1及び第2実施形態と異なる。すなわち、第3実施形態に係るサポートコイル30は、送信コイル10の面内方向の2方向に沿って複数配置される点で、第1及び第2実施形態と異なる。特に、第3実施形態に係る通信装置1は、サポートコイル30が、送信コイル10を囲繞するように配置される。また、サポートコイル30のうち、送信コイル10の一辺(例えば、送信側第一辺11)に沿って配置されるサポートコイル30は、他方の辺(送信側第二辺12)に沿って配置されるサポートコイル30よりも面外方向において異なる位置に配置される。
【0034】
[実施例]
次に、本実施形態に係る通信装置1の実施例について説明する。
サポートコイル30を送信コイル10に隣接する場合(
図10,
図11参照、以下例7とする)、のそれぞれについて、時間と信号量の変化とを計測した。その結果、
図12に示すように、例7では、例1に対して12%の信号量の増加が認められた。
【0035】
以上のような第3実施形態に係る通信装置1によれば、以下の効果を奏する。
(5)サポートコイル30は、送信コイル10の交差する二辺のそれぞれに沿う方向に、一辺を沿わせて複数配置される。これにより、送信コイル10から送信される信号強度をより強くすることができる。
【0036】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4実施形態に係る通信装置1について、
図13から
図19を参照して説明する。第4実施形態において、同一構成について同一の符号を付し、説明を簡略化又は省略する。
第4実施形態に係る通信装置1は、
図13に示すように、複数の送信コイル10を用いて受信コイル20に信号を送信することにより、受信コイル20の配置位置の柔軟性を向上するものである。例えば、受信コイル20の位置に応じて信号を送信するコイルを複数の送信コイル10から選択することにより、受信コイル20の配置位置の柔軟性を向上するものである。
【0037】
第4実施形態に係る通信装置1は、
図13に示すように、送信コイル10が、一辺(送信側第二辺12)に沿う方向に並べて配置される点で、第1から第3実施形態と異なる。また、第4実施形態に係る通信装置1は、受信コイル20が、送信コイル10の配置される方向に交差する一辺に、面内方向を沿わせて配置される点で、第1から第3実施形態と異なる。また、第4実施形態に係る通信装置1は、
図14から
図17に示すように、送信回路40と、スイッチ部50と、制御部60と、を備える点で、第1から第3実施形態と異なる。また、本実施形態において、送信コイル10は、互いに重ねて配置されるとともに、配置される方向に交差する一辺(送信側第一辺11)同士をずらして配置される。
【0038】
送信回路40は、複数の送信コイル10に送信用の信号を出力する。送信回路40は、例えば、送信コイル10の一端(以下、ポジ101ともいう)と、送信コイル10の他端(以下、ネガ102ともいう)とに信号を印加することにより、送信用の信号を送出する。本実施形態において、送信回路40は、
図14及び
図16に示すように、所定の送信コイル10のネガ102と、配置方向で2つずれた位置に配置される送信コイル10のネガ102とに送信用の信号を印加する。送信回路40は、複数の送信コイル10に対して同一の向きに送信用の信号を出力する。
【0039】
スイッチ部50は、例えば、
図15及び
図17に示すように、所定の複数の送信コイル10を直列に接続する。スイッチ部50は、例えば、受信コイル20の配置位置に応じて、接続する送信コイル10を選択する。スイッチ部50は、
図15及び
図17に示すように、隣接する2つの送信コイル10を直列に接続する。スイッチ部50は、例えば、トランスファーゲート51(以下、単にゲート51ともいう)をアクティブ又はオフすることにより、隣接する2つの送信コイル10を直列に接続する。本実施形態において、スイッチ部50は、隣接する3つの送信コイル10を直列に接続する。なお、
図15及び
図17において丸で囲まれたトランスファーゲート51がアクティブ、丸で囲まれていないトランスファーゲート51はオフとなっている。また、同様に丸で囲まれたインバータがアクティブで送信回路40に接続され、丸で囲まれていないインバータはオフで出力がハイインピーダンスとなっている。
【0040】
以上の送信回路40及びスイッチ部50によれば、送信回路40は、スイッチ部50によって直列に接続された送信コイル10の両端に送信用の信号を印加する。これにより、直列に接続される送信コイル10には、同一の方向に信号に応じた電流が流れる。
【0041】
制御部60は、例えば、CPUあるいはステートマシンが動作することにより実現される。制御部60は、送信コイル10に対する受信コイル20の位置を特定する。また、制御部60は、特定された位置に応じて、スイッチ部50及び送信回路40による動作を制御する。
【0042】
次に、本実施形態に係る通信装置1の動作について説明する。
まず、送信コイル10に対して、受信コイル20が配置される。次いで、送信回路40は、それぞれの送信コイル10に順次、送信用の信号を出力する。制御部60は、受信コイル20によって受信された信号の強度が最も高くなる際において、送信用の信号を出力している送信コイル10の位置を受信コイル20の位置に特定する。制御部60は、特定された送信コイル10の位置に対する受信コイル20の位置に応じて、スイッチ部50のゲート51をアクティブにする。
【0043】
制御部60は、特定された送信コイル10において、受信コイル20の面内方向に沿う方向の辺であって、受信コイル20に最も近接している辺(以下、通信エッジともいう)側に配置される送信コイル10を有効にする。本実施形態において、制御部60は、3つの送信コイル10を有効にする。例えば、
図14に示すように、受信コイル20がn番目(nは任意の自然数)の送信コイル10上で、n-1番目側の通信エッジに受信コイル20が最も近接していると特定された場合、制御部60は、n-1番目及びn-2番目の送信コイル10を有効にするようにスイッチ部50を制御する。制御部60は、例えば、
図15に示すように、n番目の送信コイル10のポジ101とn-1番目の送信コイル10のポジ101とを接続するゲート51と、n-1番目のネガ102とn-2番目のポジ101とを接続するゲート51とをアクティブにすることで、3つの送信コイル10を直列に接続する。
【0044】
また、制御部60は、n番目の送信コイル10のネガ102と、n-2番目の送信コイル10のネガ102とに送信回路40を接続する。これにより、
図14に示すように、直列に接続される送信コイル10は、受信コイル20に近接する位置において、同一方向に電流が流れる。
【0045】
一方、例えば、
図16に示すように、受信コイル20がn番目の送信コイル10上で、n+1番目側の通信エッジに受信コイル20が最も近接していると特定された場合、制御部60は、n+1番目及びn+2番目の送信コイル10を有効にするようにスイッチ部50を制御する。制御部60は、例えば、
図17に示すように、n番目の送信コイル10のポジ101とn+1番目の送信コイル10のポジ101とを接続するゲート51と、n+1番目のネガ102とn+2番目のポジ101とを接続するゲート51とをアクティブにすることで、3つの送信コイル10を直列に接続する。
【0046】
また、制御部60は、n番目の送信コイル10のネガ102と、n+2番目の送信コイル10のネガ102とに送信回路40を接続する。これにより、
図16に示すように、直列に接続される送信コイル10は、受信コイル20に近接する位置において、同一方向に電流が流れる。
【0047】
[実施例]
次に、本実施形態に係る通信装置1の実施例について説明する。
図17のように送信コイル10を直列に接続して、送信コイル10における電流波形と、受信コイル20における電圧波形とを比較した。送信コイル10と受信コイル20とを1つずつ配置した場合(例1)、送信コイル10を直列に3つ接続した場合(例8とるする)、送信コイル10を3つ直列に接続するとともに、3つの送信コイル10の抵抗値の増加に応じて電流値を例1と同様になるように増加させた場合(
図18参照、例9とする)について比較した。その結果、
図19に示すように、例8は、例1に対して、13%の受信電圧の増加が確認された。また、例9は、例1に対して、38%の受信電圧の増加が確認された。
【0048】
以上のような第4実施形態に係る通信装置1によれば、以下の効果を奏する。
(6)通信装置1は、複数の送信コイル10に送信用の信号を出力する送信回路40、をさらに備え、送信コイル10は、一辺に沿う方向に並べて配置され、受信コイル20は、送信コイル10の配置される方向に交差する一辺に、面内方向を沿わせて配置され、送信回路40は、複数の送信コイル10に対して同一の向きに送信用の信号を出力する。これにより、受信コイル20に対して複数の送信コイル10が信号を出力することができるので、送信される信号の強度をより強くすることができる。
【0049】
(7)通信装置1は、所定の複数の送信コイル10を直列に接続するスイッチ部50をさらに備え、送信回路40は、スイッチ部50によって接続される複数の送信コイル10に送信用の信号を送出する。これにより、受信コイル20の位置に応じて選択された送信コイル10に送信用の信号を出力させることができる。したがって、受信コイル20の位置に応じて、有効にされる送信コイル10を選択することができるので、通信装置1の設計の汎用性を向上できる。また、複数の送信コイル10に対して受信コイル20の配置位置を柔軟にすることができるので、1つの送信コイル10上に受信コイル20を位置決めする場合に比べ、歩留まりを向上することができる。
【0050】
(8)送信コイル10は、互いに重ねて配置されるとともに、配置される方向に交差する一辺同士をずらして配置される。これにより、受信コイル20に重ねる位置に複数の送信コイル10の配置方向に交差する一辺同士が重ねて配置されることになる。したがって、送信される信号の強度をより強くすることができる。
【0051】
以上、本発明の通信装置の好ましい各実施形態につき説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0052】
例えば、上記第1から第3実施形態において、送信コイル10とサポートコイル30とは面内方向において隣接又は一部重ねて配置される例を説明したが、これに制限されない。送信コイル10及びサポートコイル30は、面外方向にずれて配置されてもよい。また、送信コイル10及び受信コイル20の巻き方向及び巻き数は、第1から第3実施形態において、特に限定されない。また、サポートコイル30の巻き方向及び巻き数は、第1から第3実施形態において、特に限定されない。
【0053】
また、上記第1から第3実施形態において、送信コイル10の四辺のいずれかにサポートコイル30を1つ配置する例を示したが、これに制限されない。サポートコイル30は、送信コイル10の一辺に隣接又は一部重なって複数配置されてもよい。すなわち、サポートコイル30は、送信コイル10の一辺に交差する方向に複数並べられるとともに、そのうちの1つが送信コイル10の一辺に隣接又は一部重なって配置されてもよい。また、サポートコイル30の断面の大きさは、送信コイル10の断面の大きさと同じ大きさであることには制限されない。
【0054】
また、上記第4実施形態において、
図20に示すように、直列に接続される送信コイル10の配列方向に沿って、2つの受信コイル20を並べて配置してもよい。ここで、受信コイル20は、面外方向に並べて配置されてよい。これにより、複数の送信コイル10から、複数の受信コイル20に同一の信号を送信することが可能になる。また、複数の受信コイル20を用いる場合であっても、送信コイル10に対する受信コイル20の配置の柔軟性を確保することができる。
【0055】
また、上記第4実施形態において、通信装置1は、制御部60を備えるとしたが、これに制限されない。制御部60は、通信装置1に含まれず、通信装置1の製造時にのみに用いられてもよい。
【0056】
また、上記実施形態において、送信コイルとサポートコイルとの大きさは、同じであることに限定されない。サポートコイルの一辺の長さは、送信コイルの一辺よりも短くてもよい。サポートコイルは、送信コイルの一辺に対して短辺の短い長方形であってもよい。サポートコイルは、短辺又は長辺のいずれかを送信コイルに重ねて配置されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1 通信装置
10 送信コイル
20 受信コイル
30 サポートコイル
40 送信回路
50 スイッチ部
60 制御部