(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ボールねじ装置
(51)【国際特許分類】
F16H 25/22 20060101AFI20240524BHJP
F16H 25/24 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F16H25/22 C
F16H25/24 B
(21)【出願番号】P 2023012151
(22)【出願日】2023-01-30
【審査請求日】2023-01-30
(73)【特許権者】
【識別番号】518208691
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・アイ・イー
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100074147
【氏名又は名称】本田 崇
(72)【発明者】
【氏名】松濱 俊一
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-189186(JP,A)
【文献】特開平06-257657(JP,A)
【文献】特開2022-012203(JP,A)
【文献】特開2020-063825(JP,A)
【文献】特開2018-096539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 25/22
F16H 25/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ねじ軸が貫通される穴を有するボールねじ筐体であって、前記ねじ軸のリード角に対応した面によって第1ブロックと第2ブロックにより二等分されたボールねじ筐体を備えるボールねじ装置において、
前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさる面には、ボールが転動するループ状の転動路を形成する同じ深さの溝が設けられ、
前記転動路は、前記ねじ軸から離間した位置に置いて前記ボールを転動させる第1の転動路と、この第1の転動路に接続してループ状をなす第2の転動路とにより構成され、
前記第2の転動路のみには、前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさった状態において、当該第2の転動路を転動するボールが前記ねじ軸のねじ谷に接しながら転動するための開口部を有して
おり、
前記第1の転動路は、前記ボールねじ筐体に完全に囲われたされた穴が連続する転動路となっており、
前記第2の転動路における開口部に近接する溝には、転動する前記ボールの重心を前記第2の転動路側に残すための踊り場部が前記第1ブロック側と前記第2ブロック側に延在して形成されていることを特徴とするボールねじ装置。
【請求項2】
前記第1の転動路と前記第2の転動路とは、それぞれ個別の中心を有する円弧を描いてループ状をなしており、前記第1の転動路による円弧の半径が、前記第2の転動路による円弧の半径よりも大径であることを特徴とする請求項
1に記載のボールねじ装置。
【請求項3】
前記第2の転動路による円弧の円における中心と前記ねじ軸の軸心とが一致しており、前記第1の転動路による円弧の円における中心と前記ねじ軸の軸心とが不一致となっていることを特徴とする請求項
2に記載のボールねじ装置。
【請求項4】
前記第1ブロックと前記第2ブロックとを接合させた前記ボールねじ筐体は、円筒形状であることを特徴とする請求項
3に記載のボールねじ装置。
【請求項5】
前記ボールねじ筐体を複数個連接させて前記ねじ軸に螺合させて設けたことを特徴とする請求項
4に記載のボールねじ装置。
【請求項6】
複数個連接させた前記ボールねじ筐体を収容固定するケーシングを備えることを特徴とする請求項
5に記載のボールねじ装置。
【請求項7】
ねじ軸が貫通される穴を有するボールねじ筐体であって、前記ねじ軸のリード角に対応した面によって第1ブロックと第2ブロックにより二等分されるボールねじ筐体を、3組またはそれ以上を重ねて組合せ、前記ねじ軸に螺合してたものを、第1のケーシングと第2のケーシングにより中空円筒形状となるボールガイドケーシング内に収納し、上記複数のボールねじ筐体の一端側面または両端側面に、ばね等の弾性部材を設けて弾力的に保持するように構成し、複数のボールねじ筐体を収納固定する備えるボールねじ装置において、
前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさる面には、ボールが転動するループ状の転動路を形成する同じ深さの溝が設けられ、
前記転動路は、前記ねじ軸から離間した位置に置いて前記ボールを転動させる第1の転動路と、この第1の転動路に接続してループ状をなす第2の転動路とにより構成され、
前記第2の転動路のみには、前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさった状態において、当該第2の転動路を転動するボールが前記ねじ軸のねじ谷に接しながら転動するための開口部を有して
おり、
前記第1の転動路は、前記ボールねじ筐体に完全に囲われたされた穴が連続する転動路となっており、
前記第2の転動路における開口部に近接する溝には、転動する前記ボールの重心を前記第2の転動路側に残すための踊り場部が前記第1ブロック側と前記第2ブロック側に延在して形成されていることを特徴とするボールねじ装置。
【請求項8】
前記第1の転動路と前記第2の転動路とは、それぞれ個別の中心を有する円弧を描いてループ状をなしており、前記第1の転動路による円弧の半径が、前記第2の転動路による円弧の半径よりも大径であることを特徴とする請求項7に記載のボールねじ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ボールねじ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、リターンチューブや、ナット内部に挿入するデフレクタ(ボールリターン用駒部材)などのボールの循環通路を用いることが問題であることから、この循環路を用いないようにしたボールねじ装置が登場するようになっている。
【0003】
特許文献1には、ボールの循環回路に於けるナット部材を、その内筒面に直接ねじ溝加工することを廃止し、ねじ軸が貫通するハウジング内に、ねじのリード角と相関する前後方向の傾斜角を与えて、複数個の軌条ブロックを装着し、この軌条ブロック内に形成された循環通路内のボールを、前記のねじ軸に係合させ、その負荷転動範囲をねじ軸に対して、対向的にバランス良く配設したものが開示されている。
【0004】
この装置にあっては、ねじ軸に対して前後に傾斜したボールの軌条ブロックを、ねじ軸の左右から、その負荷ボールが対向的にねじ軸に接動する構成としたものである。この構成によれば、従来のボールナットボディに相当する本発明装置のハウジングが、ねじ軸に対して偏心することなく、正確な直線運動が得られることを可能である。
【0005】
これに対し、本願発明者らは、特許文献2に開示のボールねじ装置を提供した。このボールねじ装置は、外周面に螺旋状のねじ溝を形成したねじ軸と、このねじ軸を挿通させて部分的に螺合するように前記ねじ軸と対応するボールガイド溝を形成したボールガイドと、前記ボールガイド溝内に転動自在に収納配置され前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容される複数のボールとを備えると共に、前記ボールガイドは、ねじ軸の軸方向の垂直面に対しねじ軸のリード角と対応する角度で傾斜する接合面を形成した相互に接合する一対のボールガイド片からなるボールガイド部材を有し、前記一対のボールガイド片の接合面において、前記ねじ軸のねじ溝に対し部分的に収容される複数のボールを循環可能とするボールガイド溝を、それぞれ対称的に刻設してなるボールねじ装置である。
【0006】
上記ボールねじ装置においては、前記ボールガイド部材の前記一対のボールガイド片の接合面にそれぞれ対称的に刻設するボールガイド溝が、一対のボールガイド片の傾斜する接合面における最大厚みとなる位置と最小厚みとなる位置とを相互に結ぶ中心線に対し、左右対称的に設けられるものである。
【0007】
更に、上記ボールねじ装置にあっては、前記一方のボールガイド片と他方のボールガイド片との接合面に刻設するボールガイド溝を、前記中心線上において相互にボールガイド片が最大厚みとなる位置と最小厚みとなる位置とが重なるよう接合するように設定して、前記中心線の一端側においてボールがねじ軸に形成したねじ溝内に部分的に収容されるように形成したボールガイド溝部分として形成すると共に、前記中心線の他端側においてボールを循環させる循環路からなるボールガイド溝部分として形成する。
【0008】
そして、上記ボールねじ装置は、上記のように構成した複数組の前記ボールガイド部材を、それぞれ前記ねじ軸の軸方向に同軸的にかつ隣接させて組合せて所要のボールガイドケーシング内に収納固定した構成を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平6-257657号公報
【文献】特許第5419911号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記のようにボールねじ装置は、ボールの循環通路を用いない構成を採用しているものの、装置の組立時や組み立てた後において、ボールが、転動する溝から外れてしまう可能性が高く、取り扱いに注意を要するものであった。
【0011】
具体的に特許文献2のもので説明すると次のようである。特許文献2の0036欄に、「・・・中心線CLの一端側においては、ボール30がねじ軸40に形成したねじ溝42内に部分的に収容されるように形成したボールガイド溝部分20aとし、前記中心線CLの他端側においては、ボール30を循環させる循環路からなるボールガイド溝部分20aとして、それぞれ設けられる。」と記載があり、ボールはボールガイド溝部分20aとボールガイド溝部分20aとを本来は転動するものである。
【0012】
しかしながら、引用文献2の
図8におけるボールガイド片13Lの接合面12Aに形成されている、符号の無い溝部分にボールが入り込むことがあり、ボールねじ装置として機能しなくなる。
【0013】
上記ボールガイド片13Lの溝部分側の斜視図を
図1、
図2に示す。本来のボール転動路が
図1の曲線Tであるのに対し、ボール径が僅かな誤差(数ミクロン)を有するために、
図2の曲線Fの経路をボールが転動する。この場合、曲線Fの内の破線で示されている部分が、引用文献2の
図8における符号の無い溝部分に相当する。
【0014】
本発明は上記のような従来のボールねじ装置の問題点を解決せんとしてなされたもので、その目的は、装置の組立時や組み立てた後における不具合の可能性を小さくすることができるボールねじ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るボールねじ装置は、ねじ軸が貫通される穴を有するボールねじ筐体であって、前記ねじ軸のリード角に対応した面によって第1ブロックと第2ブロックにより二等分されたボールねじ筐体を備えるボールねじ装置において、前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさる面には、ボールが転動するループ状の転動路を形成する同じ深さの溝が設けられ、前記転動路は、前記ねじ軸から離間した位置に置いて前記ボールを転動させる第1の転動路と、この第1の転動路に接続してループ状をなす第2の転動路とにより構成され、前記第2の転動路のみには、前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさった状態において、当該第2の転動路を転動するボールが前記ねじ軸のねじ谷に接しながら転動するための開口部を有しており、前記第1の転動路は、前記ボールねじ筐体に完全に囲われたされた穴が連続する転動路となっており、前記第2の転動路における開口部に近接する溝には、転動する前記ボールの重心を前記第2の転動路側に残すための踊り場部が前記第1ブロック側と前記第2ブロック側に延在して形成されていることを特徴とする。
【0018】
本発明に係るボールねじ装置では、前記第1の転動路と前記第2の転動路とは、それぞれ個別の中心を有する円弧を描いてループ状をなしており、前記第1の転動路による円弧の半径が、前記第2の転動路による円弧の半径よりも大径であることを特徴とする。
【0019】
本発明に係るボールねじ装置では、前記第2の転動路による円弧の円における中心と前記ねじ軸の軸心とが一致しており、前記第1の転動路による円弧の円における中心と前記ねじ軸の軸心とが不一致となっていることを特徴とする。
【0020】
本発明に係るボールねじ装置では、前記第1ブロックと前記第2ブロックとを接合させた前記ボールねじ筐体は、円筒形状であることを特徴とする。
【0021】
本発明に係るボールねじ装置では、前記ボールねじ筐体を複数個連接させて前記ねじ軸に螺合させて設けたことを特徴とする。
【0022】
本発明に係るボールねじ装置では、複数個連接させた前記ボールねじ筐体を収容固定するケーシングを備えることを特徴とする。
【0023】
本発明に係るボールねじ装置は、ねじ軸が貫通される穴を有するボールねじ筐体であって、前記ねじ軸のリード角に対応した面によって第1ブロックと第2ブロックにより二等分されるボールねじ筐体を、3組またはそれ以上を重ねて組合せ、前記ねじ軸に螺合してたものを、第1のケーシングと第2のケーシングにより中空円筒形状となるボールガイドケーシング内に収納し、上記複数のボールねじ筐体の一端側面または両端側面に、ばね等の弾性部材を設けて弾力的に保持するように構成し、複数のボールねじ筐体を収納固定する備えるボールねじ装置において、前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさる面には、ボールが転動するループ状の転動路を形成する同じ深さの溝が設けられ、前記転動路は、前記ねじ軸から離間した位置に置いて前記ボールを転動させる第1の転動路と、この第1の転動路に接続してループ状をなす第2の転動路とにより構成され、前記第2の転動路のみには、前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさった状態において、当該第2の転動路を転動するボールが前記ねじ軸のねじ谷に接しながら転動するための開口部を有しており、前記第1の転動路は、前記ボールねじ筐体に完全に囲われたされた穴が連続する転動路となっており、前記第2の転動路における開口部に近接する溝には、転動する前記ボールの重心を前記第2の転動路側に残すための踊り場部が前記第1ブロック側と前記第2ブロック側に延在して形成されていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】従来のボールガイド片13Lの溝部分側の斜視図。
【
図2】従来のボールガイド片13Lの溝部分側の斜視図。
【
図3】本発明に係るボールねじ装置の一実施形態を示すものであり、
図3はボールねじ装置の要部断面図。
【
図4】
図3に示すボールねじ筐体の回転状態を変更した場合の説明図。
【
図5】
図3に示すボールねじ筐体の分離状態の側面図。
【
図6】本発明に係るボールねじ装置の構成部分であるボールねじ筐体を構成する第1ブロック10A(第2ブロック10B)の正面側からの斜視図。
【
図13】本発明に係るボールねじ装置の構成部分であるボールねじ筐体を構成する第1ブロック10A(第2ブロック10B)の作成過程を示す正面側からの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下添付図面を参照して、本発明の実施形態に係るボールねじ装置を説明する。各図において同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0026】
図3、
図4、
図5は、本発明に係るボールねじ装置の一実施形態を示すものであり、
図3はボールねじ装置の要部断面を示す説明図、
図4は
図3に示すボールねじ筐体の回転状態を変更した場合の説明図、
図5は
図3に示すボールねじ筐体の分離状態の側面図である。
図6は本発明に係るボールねじ装置の構成部分であるボールねじ筐体を構成する第1ブロック10A(第2ブロック10B)の正面側からの斜視図、
図7は
図6の裏面側からの斜視図、
図8は
図6の平面図、
図9は
図8のA-A断面図、
図10は
図8の裏面図、
図11は
図8のB-B断面図、
図12は
図11のC部分の拡大図、
図13は本発明に係るボールねじ装置の構成部分であるボールねじ筐体を構成する第1ブロック10A(第2ブロック10B)の作成過程を示す正面側からの斜視図、
図14は
図13の平面図、
図15は
図14のA-A断面図である。
【0027】
本実施形態におけるボールねじ装置は、第3図に示すように、外周面に螺旋状のねじ溝42が形成されたねじ軸40と、このねじ軸40が貫通される穴11を有するボールねじ筐体10を備えている。
【0028】
ボールねじ筐体10は、上記ねじ軸40のリード角θに対応した面によって第1ブロック10Aと第2ブロック10Bにより二等分されている。第1ブロック10Aと第2ブロック10Bとは、ネジ穴22に螺合される図示しないねじにより結合されて一体化される。第1ブロック10Aと第2ブロック10Bは、同一の形状及び構成を有するものであり、第1ブロック10Aが
図3における上側に位置するブロックを指すものであり、第2ブロック10Bが
図3における下側に位置するブロックを指すものである。上記第1ブロック10Aと上記第2ブロック10Bが合わさる面には、ボール30が転動するループ状の転動路を形成する同じ深さの溝20が設けられている。即ち、上記第1ブロック10Aの面と合わさる上記第2ブロック10Bの面には、同様の溝20が面対称に形成されている。
【0029】
上記ボールねじ筐体10は、基本的に、
図3に示すように、ねじ軸40の軸方向の垂直面に対しねじ軸40のリード角θ(
図3参照)と対応する角度θで傾斜する接合面12A、12B(
図5参照)が形成されて、相互に接合するように構成されている。本実施形態においては、例えば5組のボールねじ筐体10、10、10、10、10を、それぞれ上記ねじ軸40の軸方向に同軸的に組合せて本体50と蓋体52とからなるケーシング内に収納固定して、ボールねじ装置を構成することができる。
【0030】
本実施形態のボールねじ装置においては、例えば
図8に示すように、上記転動路である溝20は、上記ねじ軸40から離間した位置に置いて上記ボール30を転動させる第1の転動路20aと、この第1の転動路20aに接続してループ状をなす第2の転動路20bとにより構成されている。
【0031】
また、本実施形態のボールねじ装置においては、
図11に示すように、上記第2の転動路20bのみには、上記第1ブロックと上記第2ブロックが合わさった状態において、当該第2の転動路20bを転動するボール30が上記ねじ軸40のねじ谷に接するための開口部45を有している。
【0032】
ボールねじ筐体10の上記第1ブロック10Aと上記第2ブロック10Bにおける最大厚みとなる位置Xと最小厚みとなる位置Yとを相互に結ぶ中心線CLと直交する中心線CLに対し、左右対称的に溝20が設けられる。当然に、前記5組のボールねじ筐体10、10、10、10、10についても同様である。
【0033】
そして、本実施形態の場合、ボールねじ筐体10の上記第1ブロック10A(上記第2ブロック10B)における最大厚みとなる位置Xと上記第2ブロック10B(上記第1ブロック10A)における最小厚みとなる位置Yとが重なるようにして接合するように設定する。
【0034】
更に、上記第1の転動路20aと第2の転動路20bとは、それぞれ個別の中心を有する円弧を描いてループ状をなしている。
図8や
図14に示すように、上記第1の転動路20aの円弧の中心はO
1であり、第2の転動路20bの円弧の中心はO
2である。このように、上記第1の転動路20aと第2の転動路20bとは、それぞれ個別の中心を有する。上記第1の転動路20aと第2の転動路20bとにおいて、上記第1の転動路20aによる円弧の半径が、上記第2の転動路20bによる円弧の半径よりも大径である。上記第1の転動路20aと第2の転動路20bとは、フライス盤と旋盤とにより連続する1つのループ状の溝20として形成される。この上記第1ブロック10Aと上記第2ブロック10Bの作成過程は
図13~
図15に示すようである。即ち、円柱形状のブロックを上記ねじ軸40のリード角θに対応した面によって切断し、第1ブロック10Aと第2ブロック10Bの原型のブロック10A’(10B’)を作成する。この、原型のブロック10A’(10B’)に対し、フライス盤と旋盤とにより、前述の通りに連続する1つのループ状の溝20の転動路を形成する。このループ状の溝20の詳細については、ここ以降に詳述する。ループ状の溝20に囲まれた略円錐台計形状の中央台25は、溝20の切削により残された部分である。この原型のブロック10A’(10B’)について、第2の転動路20bによる円弧の円における中心O
2とした円柱の部分を切削して穴11を形成する。中央台25は、平面形状が三日月状となる。この結果、
図8、
図9に示す第1ブロック10A(第2ブロック10B)が完成する。
【0035】
上記第2の転動路20bによる円弧の円における中心O2と上記ねじ軸40の軸心とが一致しており、上記第1の転動路20aによる円弧の円における中心O1と上記ねじ軸40の軸心とが不一致(ズレている)となっている。中心O2と中心O1との間の寸法は、例えば3d(d任意な値)とすることができる。
【0036】
上記第1ブロック10Aと上記第2ブロック10Bとに形成されている上記第1の転動路20aと第2の転動路20bとの深さは共にdであり、同じ寸法である。上記第1の転動路20aの断面は半径dの半円により切削されたものである。そして、上記第1の転動路20aには、ねじ軸40が貫通される穴11が全く貫通していない。他方、原型のブロック10A’(10B’)における上記第2の転動路20bとなる部分の断面は、底面の中央部に幅が1.5dの平な断面を有しており、この断面の両端に半径dの半円により切削され断面を加えた形状となっている(
図15)。こ原型のブロック10A’(10B’)について、第1の転動路20aによる円弧の円における中心O
2とした円柱の部分を切削して穴11を形成するため、上記第2の転動路20bは以下の構成を生じる。即ち、ねじ軸40に近い中央側で半径dの曲面部と上記曲面部に続く0.75dの平坦部分の半分が、ねじ軸40が貫通される穴11の一部になるように切削される。上記第1ブロック10Aと上記第2ブロック10Bとを合わせた曲面部は直径2dである。上記の平面部1.5dの内、残った0.75dがボール30に対する
図11、
図12に示す踊り場部80である。
【0037】
即ち、上記第2の転動路20bにおける開口部45に近接する溝には、転動する上記ボールの重心を上記第2の転動路20b側に残すための踊り場部80が上記第1ブロック10A側と上記第2ブロック10B側に延在して形成されている。この踊り場部80の寸法の一例は上記に説明した通りであり、踊り場部80上記の通り曲面部とこの曲面部に続く平坦部により構成されている。
【0038】
図3に示す本実施形態のボールねじ装置は、5組のボールねじ筐体10、10、10、10、10を組合せて構成したものである。即ち、それぞれのボールねじ筐体10においては、一対の上記第1ブロック10Aと上記第2ブロック10Bの接合面に形成した溝20について、上記接合面における上記中心線CLを基準として、0°~270°までを、ねじ軸40の回転方向にそれぞれ90°の等角度で位置変位させた状態を
図4に示し、これらの状態のボールねじ筐体10、10、10、10をそれぞれ組合せて組立てたものが
図4のボールねじ装置である。なお、このようにボールねじ筐体10、10、10、10、10を組合せて組立てる場合、図示例に限定されることなく、例えばそれらの組合せの順番は任意に設定して組合せ、組立てることができる。また、前記ボールねじ筐体10、10、10、10、10を組合せる場合においては、4状態のボールねじ筐体10、10、10、10、10の組合せを基本として、それ以上またはそれ以下のボールねじ筐体10を組合せて組立てることができる。
【0039】
なお、本実施形態のボールねじ装置においては、前述したように、一対の第1ブロック10Aと第2ブロック10Bからなるボールねじ筐体10を複数組を組合せて構成したものである。ボールねじ装置は、それぞれのねじ筐体10における一対の第1ブロック10Aと第2ブロック10Bの接合面に形成した溝20について、第1ブロック10Aと第2ブロック10Bの接合面における上記中心線CLを基準として、ねじ軸40の回転方向にそれぞれ120°の等角度で位置変位させた構成とし、これら状態のボールねじ筐体10を3組またはそれ以上を組合せて、組立てることもできる。
【0040】
また、本実施形態のボールねじ装置においては、上記複数状態のボールねじ筐体10、10、10、10を組合せて構成してなるボールねじ筐体10は、ボールガイドケーシング50、52内に収納固定するに際し、上記ボールねじ筐体10の一端側面または両端側面に、ばね等の弾性部材60を設けて弾力的に保持するように構成することができる(
図3参照)。従って、このようにボールねじ筐体10のボールガイドケーシング50、52内への収納固定に際して、弾性部材60を設けることによって、それぞれのボールねじ筐体10、10、10、10、10の接合を適正に保持することができると共に、ボールねじ筐体10に対するねじ軸40のバックラッシュを適正に抑制することができる。
【0041】
上記のように本実施形態のボールねじ装置は、
図3に示すように、ねじ軸40に複数のボールねじ筐体10を3組またはそれ以上を重ねて組合せ、ねじ軸40に螺合してたものを、第1のケーシング50と第2のケーシング52により中空円筒形状となるボールガイドケーシング内に収納し、上記ボールねじ筐体10の一端側面または両端側面に、ばね等の弾性部材60を設けて弾力的に保持するように構成し、複数のボールねじ筐体10を収納固定することもできる。
【符号の説明】
【0042】
10 ボールねじ筐体
10A 第1のブロック
10B 第2のブロック
11 穴
12A、12B 接合面
20 溝
20a 第1の転動路
20b 第2の転動路
22 ネジ穴
25 中央台
30 ボール
40 ねじ軸
42 溝
45 開口部
50 本体
52 蓋体
60 弾性部材
80 踊り場部
【要約】
【課題】装置の組立時や組み立てた後における不具合の可能性を小さくすることの可能なボールねじ装置を提供する。
【解決手段】ねじ軸40が貫通される穴を有するボールねじ筐体10であって、前記ねじ軸のリード角に対応した面によって第1ブロックと第2ブロックにより二等分されたボールねじ筐体を備えるボールねじ装置において、前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさる面には、ボールが転動するループ状の転動路を形成する同じ深さの溝が設けられ、前記転動路は、前記ねじ軸から離間した位置に置いて前記ボールを転動させる第1の転動路と、この第1の転動路に接続してループ状をなす第2の転動路とにより構成され、前記第2の転動路のみには、前記第1ブロックと前記第2ブロックが合わさった状態において、当該第2の転動路を転動するボールが前記ねじ軸のねじ谷に接するための開口部を有している。
【選択図】
図3