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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】樹木灌水管、及び樹木灌水システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 25/02 20060101AFI20240524BHJP
   A01G 27/00 20060101ALI20240524BHJP
   A01G 27/04 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A01G25/02 601K
A01G25/02 601Z
A01G27/00 504B
A01G27/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2024006916
(22)【出願日】2024-01-19
【審査請求日】2024-01-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517357826
【氏名又は名称】株式会社シェルタージャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196106
【弁理士】
【氏名又は名称】杉田 一直
(72)【発明者】
【氏名】矢野 昭彦
【審査官】小林 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-503225(JP,A)
【文献】国際公開第2023/248984(WO,A1)
【文献】特表2013-505708(JP,A)
【文献】特開2014-050383(JP,A)
【文献】特開2002-305969(JP,A)
【文献】米国特許第04837973(US,A)
【文献】特開平05-308864(JP,A)
【文献】特開2006-206427(JP,A)
【文献】登録実用新案第3128077(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 25/00-29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面上に設置するための樹木灌水管であって、
両端部に接続管を接続するための接続部が設けられる通水管と、
一端が前記通水管の内部に位置し、他端が前記通水管から外部空間に向かって突出して設けられる灌水部と、を備え、
前記灌水部は、対向して設けられる第1面と、第2面とを有するシートであって、前記第1面は、前記一端と前記他端の双方に接続する複数の凹部が列状に配列されており、前記凹部は、毛細管現象、及びサイフォンの原理の作用によって前記通水管に存する水を、外部空間に排出できることを特徴とする樹木灌水管。
【請求項2】
前記凹部は、前記第2面から前記第1面の方向に向かって開口する開口部と、前記開口部に連通する流水部と、を有し、
前記通水管に存する水は、毛細管現象の作用により前記開口部を経由して前記流水部に取り込まれるとともに、サイフォンの原理の作用により前記流水部を経由して外部空間に流出し、前記開口部が地面に接触する部分で地面に排出できることを特徴とする請求項に記載の樹木灌水管。
【請求項3】
前記第2面は、前記第1面を覆う平坦面であることを特徴とする請求項に記載の樹木灌水管。
【請求項4】
請求項1~に記載の複数個の樹木灌水管と、前記樹木灌水管同士を接続する接続管と、を有する複合管路と、
前記複合管路に接続して、前記複合管路に通水できる通水装置と、を備えることを特徴とする樹木灌水システム。
【請求項5】
前記通水装置は、前記複合管路へ水を供給するための供給タンクと、前記供給タンクから供給される水を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は、地中の含水量を測定するセンサと、コントローラと、を有し、
前記コントローラは、前記センサで測定された測定値が、第1閾値を下回るとき前記複合管路への通水を指令し、前記センサで測定された測定値が、第2閾値を上回るとき前記複合管路への通水の停止を指令することを特徴とする請求項に記載の樹木灌水システム。
【請求項6】
前記通水装置は、前記複合管路から通水された水を貯留する貯留タンクを有することを特徴とする請求項に記載の樹木灌水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹木を灌水するための管である樹木灌水管、及びこの樹木灌水管を用いた樹木灌水システムに関する。
【背景技術】
【0002】
樹木の苗木は、植え付け直後や夏の高温で乾燥する時期には、土が乾かないように灌水することが重要である。一般に、植物の根は、土の中で枝葉の広がりと同じ程度に広がっていると考えられ、根の先からより多くの水を吸収するため、水は株元だけでなく、枝葉の広がりの下までたっぷりと与える必要がある。このとき注意しなくてはいけないのが灌水の方法である。土の表面が濡れる程度の灌水では、表面近くの土が水を吸収してしまい根まで水が行き届かないため、根まで十分水が届くように時間をかけてたっぷりと灌水することが求められる。
【0003】
灌水は、単に土に水を含ませ、植物の根に水を供給するためだけの目的で行うのではない。灌水することで、古い水と空気を押し出し、新しい水、新しい空気を土のなかに供給するという役割も担っている。苗木の灌水を行うに際しては、上述した点についても注意を払う必要がある。このような点に着目して、様々な樹木灌水装置が提案されている。
【0004】
特許文献1では、樹木の周囲に埋設される灌水用容器が提案されている。この灌水用容器は、上端に開閉可能な給水用開口を備えるとともに、周壁に上下複数の小孔(5)を形成している。
【0005】
特許文献2では、道路等における植栽域に隣接した縁石内を水路として形成しておき、縁石のうち植栽域に面する側に水路と連通するよう形成した透水部から植栽域に灌水する植栽域への灌水方法及び所定長さのブロック状縁石の単数又は複数単位に空間を形成し、この空間を水路として形成し、縁石には水路に通ずる給水口と、植栽域に面する側にて水路と連通した透水部とを設けた灌水機能付縁石が提案されている。
【0006】
特許文献3では、ブドウの樹木への灌水を行う灌水部と、制御部と、ブドウの樹木への日射量を検出する日射量検出手段とを備え、制御部が、検出された日射量に基づいてブドウの樹木への灌水量を制御する灌水装置が提案されている。この灌水装置は、ブドウの樹木の樹幹内の含水量を検出する含水量検出手段を設けており、制御部が日射量及び含水量に応じて灌水量を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平7-177828号公報
【文献】特開平9-163882号公報
【文献】特開2011-92152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1、2で提案される灌水用の構造部材は、地中に埋設されることを前提としているため、地中に水を供給する部分、具体的には、孔あるいは透水部が目詰まりを起こして、灌水機能が低下する問題がある。さらに目詰まりを起こした部分の取り替えは多大な労力を要する。
【0009】
特許文献3で提案されている灌水装置は、ブドウの樹木一部を傷つけることでの樹木の含水量を計測することから、樹木の生育に何らかの影響を及ぼすおそれがあるという問題がある。また、用途はブドウの樹木に限定される。
【0010】
本発明は、これらの問題点に着目してなされたものであり、目詰まりを起こしづらく、かつメンテナンスが容易な樹木灌水管を提供するものである。さらに、この灌水管を利用して汎用性のある樹木灌水システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための発明は、地面上に設置される樹木灌水管であって、両端部に接続管を接続するための接続部が設けられる通水管と、一端が通水管の内部に位置し、他端が通水管から外部空間に向かって突出して設けられる灌水部と、を備え、灌水部は、毛細管現象、及びサイフォンの原理の作用によって通水管に存する水を、外部空間に排出できることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、通水部は両端部に接続管を接続するための接続部が設けられていることから、仮に何らかの原因で灌水機能に支障をきたしたとしても、樹木灌水システムにおいては、灌水機能に支障をきたした樹木灌水管のみを簡単かつ迅速に取り替えることができて取替え作業を省力化できる。また、地上に設置されるので、取り替えの際に地面を掘削する作業を要さない。また、灌水部は毛細管現象、及びサイフォンの原理の作用によって前記通水管に存する水を、外部空間に排出するので、継続的に一定量の水を地面に供給できる。これにより、地面での深い部分まで水を供給できるとともに、表土の流出を防止できる。
【0013】
好ましくは、灌水部は、対向して設けられる第1面と、第2面とを有する灌水シートであり、第1面は、このシートの一端と他端の双方に接続する複数の凹部が列状に配列されており、凹部は、通水管に存する水を外部に排出できることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、灌水部は、対向して設けられる第1面と、第2面とを有する面的な広がりをもった灌水シートであるので、広い範囲にわたる灌水が可能となる。また、第1面は、このシートの一端と他端の双方に接続する複数の凹部が列状に配列されており、凹部は、通水管に存する水を外部に排出できるので、シートの前面に渡り均一の灌水することが可能となる。
【0015】
好ましくは、凹部は、第2面から第1面の方向に向かって開口する開口部と、開口部に連通する流水部とを有し、通水管に存する水は、毛細管現象の作用により開口部を経由して流水部に取り込まれるとともに、サイフォンの原理の作用により流水部を経由して外部空間に流出し、開口部が地面に接触する部分で地面に排出できることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、開口部の形状、流水部の形状、開口部が地面に接する部分の面積などを適宜選択することで、灌水流量を調節することができる。
【0017】
好ましくは、第2面は、第1面を覆う平坦面であることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、第2面は、第1面を覆う平坦面であるので、第2面からの水の蒸発を抑制できる。これにより、効率的な灌水が可能となる。
【0019】
上記課題を解決するための他の態様の発明は、樹木灌水システムであって、複数個の上述した樹木灌水管と、樹木灌水管同士を接続する接続管と、を有する複合管路と、複合管路に接続して、複合管路に通水できる通水装置と、を備えることを特徴とする樹木灌水システム。
【0020】
この構成によれば、樹木灌水システムは、複数個の上述した樹木灌水管と、樹木灌水管同士を接続する接続管と、を有する複合管路とを備えるので、例えば接続管を可撓管とすることで、複合管路の形状を自由に設定できる。これにより、灌水対象となる樹木の種類、大きさに応じて適切な配管が可能となる。
【0021】
好ましくは、通水装置は、複合管路へ水を供給するための供給タンクと、供給タンクから供給される水を制御する制御部と、を有し、制御部は、地中の含水量を測定するセンサと、コントローラと、を有し、コントローラは、センサで測定された測定値が、第1閾値を下回るとき複合管路への通水を指令し、センサで測定された測定値が、第2閾値を上回るとき複合管路への通水の停止を指令することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、通水装置は、複合管路へ水を供給するための供給タンクと、供給タンクから供給される水を制御する制御部と、を有し、制御部は、地中の含水率を測定するセンサと、コントローラと、を有し、コントローラは、センサで測定された測定値が、第1閾値を下回るとき複合管路への通水を指令し、センサで測定された測定値が、第2閾値を上回るとき複合管路への通水の停止を指令するので、地中の含水量を一定範囲に保持することができる。
【0023】
好ましくは、通水装置は、複合管路から通水された水を貯留する貯留タンクを有することを特徴とする。
【0024】
この構成によれば、複合管路から通水された水を貯留する貯留タンクを有するので、複合管路への円滑な通水が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】(a)は、本実施形態における樹木灌水システムの平面図である。(b)は、同、側面図である。
図2】(a)は、通水管が通水された状態の断面図である。(b)は、通水管内の水が外部空間に排出された状態の断面図である。
図3】灌水部の断面図である。
図4】制御部の構成を表す図である。
図5】本実施形態における樹木灌水システムの制御を説明するフローチャートである。
図6】樹木灌水システムの変形例である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図1~3を参照して本発明の樹木灌水管2、及び樹木灌水管2を用いた樹木灌水システム1の実施形態を詳述する。
【0027】
図1(a)、(b)に示す通り、樹木灌水システム1は、複合管路110、及び複合管路110に通水するための通水装置150を備えている。複合管路110は、樹木灌水管2と接続管30が交互に直列接合する管路である。樹木灌水管2と接続管30の接合は、樹木灌水管2の両端部に設けられる接続部12を介して着脱可能に接続されている。例えば、複数個のうちの樹木灌水管2の1個が目詰まりを起こし灌水できない状態なったときでも、複合管路110の全てを取り換えることは要さず、目詰まりを起こした樹木灌水管2のみを取り換えることができる構造となっている。また、複合管路110の一端はバルブ155を介して供給タンク151に接続しており、他端は貯留タンク152に接続している。
【0028】
複合管路110は、樹木100を囲むようにコ字型に配置されている。具体的には、樹木灌水管2については、樹木100の両側面に配置されており、接続管30については、樹木100の両側面に配置される樹木灌水管2同士を接続している。
【0029】
本実施形態では、灌水する樹木100として、榊の苗木やブルーベリーの苗木を例示しているが、これに限るものではない。榊の苗木は、日陰でも育成が可能なことから、太陽光発電パネルの直下に植え付けてもよい。これにより、土地の有効利用が図れる。
【0030】
通水装置150は、複合管路110に水を供給する供給タンク151、複合管路110への通水を制御する制御部130などを有している。供給タンク151は、地下水をポンプ155Aで汲み上げて貯留している。また、供給タンク151に貯留される水の水位は、図1(b)に示すフロータ156によって、所定の高さに保たれている。
【0031】
供給タンク151に貯留される水は、バルブ155の開閉によって複合管路110への供給が制御される。バルブ155が開放されると、供給タンク151に貯留される水は複合管路110にいきわたり、貯留タンク152に貯留される。複合管路110内で生じるエネルギー損失によって、貯留タンク152に貯留される水の水位は、供給タンク151に貯留される水の水位よりも若干低くなるが、供給タンク151に貯留される水位を所定範囲に保つことで、複合管路110内の水圧を一定範囲で維持できる。
【0032】
なお、複合管路110に充填される水の水圧差を小さくするために、貯留タンク152の水位を供給タンク151の水位と同じとすることが好ましい。この場合、貯留タンク152に水を供給する装置を導入することで解決できる。すなわち、貯留タンク152に、地下水をくみ上げるポンプとフロータを取り付ければよい。この場合は、複合管路110の中央部での圧力水頭が他の部分に比べて最も低くなる。
【0033】
バルブ155の開閉は制御部130で制御される。制御部130は、センサ131、及びコントローラ132を有している。センサ131は地中の含水量WCを測定する土壌水分計である。センサ131を設置する地中深さは、樹木100の苗木が根を張る深さとすることが好ましい。例えば、榊の苗木の場合、地面101から40cm~50cmの深さの位置に設置することが好ましい。なお、本実施形態では設置するセンサ131の数は1個としているが、これに限るものではなく、複数個設置してもよい。
【0034】
コントローラ132は、センサ131で計測された地中102の含水量WC(図5参照)の値に基づいて、バルブ155の開閉を指令するためのものである。
【0035】
図2(a)、(b)に示す通り、樹木灌水管2は、通水管11、及び灌水シート20(灌水部)で構成されている。通水管11は、複合管路110が通水されているとき、満水状態となっている(図2(a)参照)。また、通水管11は、地面101からの高さを高くするために、支持台15の上に置かれている。支持台15の上に置かれた通水管11は、所定間隔で配置される固定バンド17で外周が取り囲まれており、固定バンド17の両端部は、地中102に打ち込んだ固定杭16によって支持台15と一体化されている。これにより、通水管11の移動は抑制され、通水によって通水管11が不意に外力などを受けた場合でも通水管11の位置が動くことはない。支持台15の高さ、及び固定バンド17を取り付ける間隔については、灌水の速度や供給タンク151内に貯留される水の水位などを勘案して、適宜に設定すればよい。
【0036】
接続管30については、通水管11とほぼ同じ構造で、通水管11と同様な支持台15を介して地面101に支持されていることから、説明は省略する。
【0037】
灌水シート20の一端部は通水管11の内部の底面部に位置し、通水管11に設けられるスリット13を経由して外部空間105に突出して、他端部が地面101に接している。地面101と接触する面は凹部25が設けられる第1面21である。スリット13の位置は、通水管11の中心よりも高い位置とすることが好ましい。これにより、灌水シート20と、通水管11の中に存する水Wとの接触面積を大きくできる。さらに、スリット13の位置での水圧を相対的に小さくできることから、スリット13と灌水シート20の隙間からの水漏れの影響を抑制できる。
【0038】
灌水シート20は左右対称に設けられているがこれに限るものではない。左右のいずれか一方に設ける構成としてもよい。また、灌水シート20は、通水管11の片側に2枚、合計4枚の灌水シート20が設けられている(図1(a)参照)が、これに限るものではない。片側に1枚設の灌水シート20を設けてもよいし、3枚以上設けてもよい。
【0039】
図3に示す通り、灌水シート20は、対向して設けられる第1面21と、第2面22を有している。第1面21には、複数の凹部25が図示左右方向L1、R1の間隔を密にした隣接状態で、列状となって平行配列されている。凹部25は灌水シート20の一端から他端までの全長Lxに渡って延びている。
【0040】
凹部25は、図示下部の開口部24と図示上部の流水部23で構成されている。開口部24は第2面22から第1面21の方向に向かって開口する空間を画定している。流水部23は、開口部24に連通しており、開口部24より幅の広い空間を画定している。流水部23の形状は、断面視で円形であるが、これに限るものではなく、例えば断面視でオープンループの楕円形状や逆三角形状などに種々変更可能である。また、開口部24の形状は、断面視で細い隙間形状であるが、これに限るものではない。
【0041】
通水管11内の水は、毛細管現象の作用によって開口部24に吸い上げられて、流水部23に集積される。流水部23に集積された水は、流水部23を水路として、サイフォンの原理の作用によって外部空間105に流出する。
【0042】
従って、開口部24、及び流水部23の形状は、毛細管現象の作用、及びサイフォンの作用が機能する範囲で適宜に定めればよい。
【0043】
第2面22は、平坦面であり、地面101と同方向の面となる状態で通水管11に取り付けられている。すなわち、凹部25の他端部は、第2面22に覆われた状態で、地面101に接している(図2(a)参照)。これにより、灌水シート20から吸い上げられた水が、外部空間105に流出する過程での水の蒸発を抑制できる。
【0044】
本実施形態では灌水シート20の材質として、可撓性を具備する可撓性のシートを例示しているが、これに限るものではない。硬質性のシートを用いてもよいし、可撓性シートと硬質性シートを張り合わせた複合シートを用いてもよい。可撓性シートと硬質性シートを張り合わせた複合シートを用いる場合、第1面21を軟質性シートとして、第2面22を硬質性シートとすることが好ましい。また、耐候性を具備した素材であることが好ましい。
【0045】
樹木灌水システム1の処理動作について説明する。
【0046】
バルブ155の開閉動作は、制御部130によって制御される。制御部130は、センサ131及びコントローラ132を有している。センサ131は地中102の含水量WCを測定する。コントローラ132は、センサ131で測定された測定値に基づいて、バルブ155を動作するかどうかを決定して、バルブ155に指令する。
【0047】
図4は、制御部130の構成を表している。コントローラ132は、CPU、RAM、ROM、およびI/Oインターフェイス(いずれも図示略)などからなるマイクロコンピュータで構成されている。コントローラ132には、センサ131が接続されており、それらの測定信号が逐次入力される。コントローラ132の出力側にはバルブ155が接続されている。
【0048】
図5は、本実施形態における制御を説明するフローチャートである。本処理はコントローラ132において、継続して繰り返して実行される。
【0049】
本処理では、ステップ1(「S1」と図示する。以下同じ。)において、センサ131で地中102の含水量WCを測定する。測定された含水量WCが第1閾値TR1を下回るかどうか判定する。
【0050】
センサ131で測定された地中102の含水量WCの測定値が第1閾値TR1を下回るとコントローラ132が判定されたときステップ2に進む。判定結果がNOのときは測定を継続する。
【0051】
ステップ2では、バルブ155は開放された状態となり、供給タンク151から複合管路110に水が供給される。さらに、複合管路110に送水された水は、複合管路110内に存する空気を排出しながら、貯留タンク152に送られる。
【0052】
他方で、供給タンク151の水位は低下する。供給タンク151の水位はフロータ156によって確認される構成となっていることから、フロータ156が一定高さを下回るとき、ポンプ155Aが動作して、供給タンク151に給水する。また、フロータ156の高さが所定高さを超えるときポンプ155Aの動作は停止する。これにより、供給タンク151の高さを所定範囲にコントロールできる。
【0053】
灌水シート20を介して地面101への水の供給が継続して行われることで、地中102の含水量WCは増加する。
【0054】
供給タンク151の水位と、貯留タンク152の水位はほぼ同じ高さとなる。厳密にいえば、貯留タンク152の水位は、複合管路110部分の損失水頭に相当する範囲で供給タンク151の水位より低くなる。この高低差を解消するために、第2タンク152に供給タンク151と同様のフロータ、ポンプ等の設備を導入することが好ましい。この場合は、複合管路110の中央部での圧力水頭が他の部分に比べて最も低くなるが、本実施形態の構成に比べて、圧力水頭の差はほぼ半分となる。
【0055】
ステップ3において、センサ131で地中102の含水量WCを測定する。測定された含水量WCが第2閾値TR2を上回るかどうか判定する。
【0056】
センサ131で測定された地中102の含水量WCの測定値が第2閾値TR2を上回るとコントローラ132が判定されたときステップ4に進む。判定結果がNOのときは測定を継続する。なお、第2閾値TR2は、第1閾値TR1よりも大きな値として設定されている。
【0057】
ステップ4では、バルブ155は閉鎖された状態となり、供給タンク151から複合管路110に水が供給されなくなる。この状態が一定時間継続すると、複合管路110の中の水位、及び貯留タンク152の水位が次第に下がり、図4に示す通り、複合管路110、及び貯留タンク152にほとんど水がない状態となる。この状態になると、複合管路110からの外部空間105への水の供給は停止される。この状態が続くことで、地中102の含水量WCは徐々に低下する。
【0058】
本実施形態は例示であり、本発明の技術思想を逸脱しない範囲で改変できるのは勿論である。例えば、図6に示す変形例の通り、複合管路110の構成として、接続管30と接続管30の間に通水管11を架け渡してもよい。また、複数の複合管路、複数の供給タンク151、複数の貯留タンク152を組み合わせて、複合管路をネットワーク化してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明に係る樹木灌水システム1は、太陽光パネル直下で育成する苗木の灌水を容易に行えることに加えて、灌水の省人化を図ることができることから産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0060】
1 :樹木灌水システム
2 :樹木灌水管
11 :通水管
12 :接続部
20 :灌水シート(灌水部)
21 :第1面
22 :第2面
23 :流水部
24 :開口部
25 :凹部
30 :接続管
101 :地面
102 :地中
105 :外部空間
130 :制御部
131 :センサ
132 :コントローラ
150 :通水装置
151 :供給タンク
152 :貯留タンク
TR1 :第1閾値
TR2 :第2閾値
W :水
WC :含水量
【要約】
【課題】目詰まりを起こしづらく、かつメンテナンスが容易な樹木灌水管とともに、この灌水管を利用した汎用性のある樹木灌水システムを提供する。
【解決手段】樹木灌水システム1は、複合管路110、及び複合管路110に通水するための通水装置150を備えている。複合管路110は樹木灌水管2と接続管30が交互に直列接合する管路である。樹木灌水管2と接続管30の接合は、樹木灌水管2の両端部に設けられる接続部12を介して着脱可能に接続されている。複合管路110の一端はバルブ155を介して供給タンク151に接続しており、他端は貯留タンク152に接続している。通水装置150は、複合管路110に水を供給する供給タンク151、複合管路110への通水を制御する制御部130などを有している。供給タンク151は、地下水をポンプ155Aで汲み上げて貯留している。
【選択図】 図1
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図5
図6