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特許7493292火口、それを使用した加熱トーチ及びガス圧接工法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】火口、それを使用した加熱トーチ及びガス圧接工法
(51)【国際特許分類】
   B23K 20/00 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
B23K20/00 330C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024022375
(22)【出願日】2024-02-16
【審査請求日】2024-02-16
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】398039439
【氏名又は名称】有限会社村吉ガス圧接工業
(74)【代理人】
【識別番号】100114627
【弁理士】
【氏名又は名称】有吉 修一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100182501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 靖之
(74)【代理人】
【識別番号】100190975
【弁理士】
【氏名又は名称】遠藤 聡子
(72)【発明者】
【氏名】村吉 政勇
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-220662(JP,A)
【文献】特開2001-330216(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第116182161(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
B23K 5/00-5/24
B23K 7/00-7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部に火孔が設けられた火口基体と、
該火口基体の内部にあり、前記火口基体に対し、その周方向に回転可能、かつ所定の位置で固定可能に構成されると共に、前記火孔を通過するガス流を分け、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにし、かつ前記圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成するガス誘導体と、を備える
火口。
【請求項2】
前記ガス誘導体を、前記火口基体の周方向に回転することで、前記領域の幅を変更可能である
請求項1記載の火口。
【請求項3】
前記ガス誘導体は、前記火孔を通過するガス流を分ける複数の噴出口が形成されている分流噴出路が設けてある
請求項1又は2記載の火口。
【請求項4】
前記ガス誘導体は、その長手方向に孔が形成され、該孔を略直径方向に横切るように設けられ、かつ、前記火孔を通過するガス流を分ける分流部材を有する
請求項1又は2記載の火口。
【請求項5】
バーナー管と、
該バーナー管に取り付けられ、先端部に火孔が設けられた火口基体と、該火口基体の内部にあり、前記火口基体に対し、その周方向に回転可能、かつ所定の位置で固定可能に構成されると共に、前記火孔を通過するガス流を分け、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにし、かつ前記圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成するガス誘導体を有する火口と、を備える
加熱トーチ。
【請求項6】
先端部に火孔が設けられた火口基体と、該火口基体の内部にあり、前記火孔を通過するガス流を分けるガス誘導体とを有する火口がバーナー管に取り付けられた加熱トーチを使用し、前記ガス誘導体を、前記火口基体の周方向に回転することで、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにし、かつ前記圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域の幅を調整し、該領域を前記圧接材の前記圧接面に重なるようにして、加熱を行う工程を備える
ガス圧接工法。
【請求項7】
前記加熱を標準炎により行う
請求項6記載のガス圧接工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火口、それを使用した加熱トーチ及びガス圧接工法に関するものである。詳しくは、鉄筋等の圧接材の圧接を行う際に、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにして、かつ圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成すると共に、その領域における圧接面を挟む方向の幅を適宜調整することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、アセチレンガスを使用した鉄筋のガス圧接においては、鉄筋の圧接面を研磨し、初期加熱では先端面同士が密着するまでは還元炎で加熱することが必要である。仮に、初期加熱を標準炎(中性炎又は酸化炎)で行うと、圧接面に酸化被膜が形成されて接合不良となり、圧接面破断が起こる。
【0003】
一方で、アセチレンガスと比較して火力は劣るが、取り扱いが容易であり環境負荷も小さい天然ガスやプロパンガスの使用は、従来からの懸案となっている。つまり、これらのガスを使用して圧接しようとすると、アセチレンガスと同等の火力を得るには、初期加熱から標準炎で加熱する必要があり、この場合、圧接面での酸化被膜の形成を抑止する対策が必要になる。
【0004】
この対策の一つとして、鉄筋等を圧接する際に、ポリスチレンシートと鋼製リングが仕込まれているキャップ状のPSリングを還元材(又は酸化防止材)として使用するガス圧接工法が行われている。しかしながら、圧接工法における還元材の使用は、コスト高になる問題がある。また、還元材を鉄筋等の圧接面に挟むために、加熱効率が悪くなりやすく、これに起因して圧接面に酸化皮膜が生じやすくなる問題もある。
【0005】
また、標準炎を使用した場合でも、例えば炎を圧接面に直接当てないようにして、かつ圧接面近傍の加熱が、圧接が可能なように充分にできれば、これらの問題を改善することは可能である。なお、ガス圧接ではなく、ガス溶接の分野においては、同様の目的、すなわちガス溶接時に大気中の酸素を被溶接部に取り込まないようにする技術は、特許文献1記載の「ガス溶接方法及びその装置」で開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9―220662公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の溶接方法及び装置は、混合ガスを対象物の被溶接部の両側に、混合ガス噴出口から同時に吹き付けるというものである。この各混合ガス噴出口は、ノズルの先端部に所定の傾斜角度で穿孔して設けてあるために、傾斜角度は固定されている。このため、被溶接部に火炎が直接当たらない範囲を調整することができない。
【0008】
一方、ガス圧接においては、近年、鉄筋等の圧接材が高強度のものとなってきており、ガス圧接時の圧接面近傍への入熱量が重要視されている。この入熱量が充分でないと、圧接面にフラット破面(酸化物が多量に存在する破面)が生じてしまい、圧接部の強度が確保できなくなる懸念がある。
【0009】
この対策としては、圧接面に火炎を直接当てないようにしながら、圧接ができる程度に充分に加熱された領域を、より狭くして、熱量を圧接面近傍に集中させるようにすれば、圧接面近傍への入熱量を増やすことができる。しかし、上記のように従来の方法及び装置では、このような領域の調整をすることができなかった。
【0010】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、鉄筋等の圧接材の圧接を行う際に、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにして、かつ圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成すると共に、その領域における圧接面を挟む方向の幅を適宜調整することができる火口、それを使用した加熱トーチ及びガス圧接工法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔1〕上記の目的を達成するために本発明は、先端部に火孔が設けられた火口基体と、該火口基体の内部にあり、前記火口基体に対し、その周方向に回転可能、かつ所定の位置で固定可能に構成されると共に、前記火孔を通過するガス流を分け、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにし、かつ前記圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成するガス誘導体と、を備える火口である。
【0012】
〔2〕本発明の火口は、〔1〕において、前記ガス誘導体を、前記火口基体の周方向に回転することで、前記領域の幅を変更可能である構成とすることもできる。
【0013】
本発明の火口は、火口基体とは別体のガス誘導体を備えることによって、ガス誘導体の火孔を通過するガス流を分ける機能に、例えば経年劣化による不具合が生じたとしても、ガス誘導体の取り替えができ、不具合を容易に解消することができる。
【0014】
ガス誘導体は、ガス流を分けることにより、圧接材を加熱するときの火炎も分かれる。分かれた各火炎は、圧接材の圧接面に直接当てないようにしてあるので、圧接面における酸化膜の形成を抑止できる。また、圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成することができる。
【0015】
なお、初期加熱から標準炎を使用しても、圧接面の酸化膜の形成を抑止しながら、ガス圧接を行うことができるので、安定的な入手が可能で、環境負荷も小さい天然ガスやプロパンガス等を可燃ガスとするガス圧接を行うことが可能になる。なお、還元材を併用すると、一層の酸化抑止を図ることができる。
【0016】
また、ガス誘導体は、火口基体の内部にあり、火口基体に対し、その周方向に回転可能、かつ所定の位置で固定可能に構成されているので、周方向に回転した分だけガス流の位置を旋回させ、火炎の位置を変えて、上記領域の圧接面を挟む方向の幅を適宜調整することが可能である。
【0017】
これにより、必要に応じて上記領域の幅を狭くして、ガス圧接時の圧接面近傍における入熱量の増大を図ることができ、圧接面にフラット破面が生じるのを抑制することができる。よって、圧接材の太さや材質に対応したガス圧接が可能になる。
【0018】
〔3〕本発明の火口は、〔1〕、〔2〕において、前記ガス誘導体は、前記火孔を通過するガス流を分ける複数の噴出口が形成されている分流噴出路が設けてある構成とすることもできる。
【0019】
この場合は、分流噴出路は、火孔を通過するガス流を分ける複数の噴出口が形成されているので、ガス流は各噴出口から火孔へ向けて分けて送られる。また、ガス流は、各噴出口から噴出するまでに分流噴出路で誘導されるため、各火炎は安定しており、圧接材の所定の加熱を安定的に効率よく行うことができる。
【0020】
〔4〕本発明の火口は、〔1〕、〔2〕において、前記ガス誘導体は、その長手方向に孔が形成され、該孔を略直径方向に横切るように設けられ、かつ、前記火孔を通過するガス流を分ける分流部材を有する構成とすることもできる。
【0021】
この場合は、ガス誘導体の長手方向に孔が形成され、孔を略直径方向に横切るように分流部材が設けられているので、分流部材によって火孔を通過するガス流を分けることができる。また、ガス流を分けるために、孔を略直径方向に横切る分流部材を有する構成を採用しており、簡単な構成で火炎を分けることができる利点がある。
【0022】
〔5〕上記の目的を達成するために本発明は、バーナー管と、該バーナー管に取り付けられ、先端部に火孔が設けられた火口基体と、該火口基体の内部にあり、前記火口基体に対し、その周方向に回転可能、かつ所定の位置で固定可能に構成されると共に、前記火孔を通過するガス流を分け、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにし、かつ前記圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成するガス誘導体を有する火口と、を備える加熱トーチである。
【0023】
本発明の加熱トーチは、バーナー管に取り付けられた火口でガス流を分けることにより、圧接材を加熱するときの火炎も分かれる。火口は、ガス誘導体を火口基体の周方向に回転させて所定位置で固定し、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにし、かつ圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成することができる。
【0024】
そして、この領域を圧接面と重ねる(合わせる)ことにより、圧接材の圧接を行うための所定の加熱が可能である。これにより、初期加熱から標準炎を使用しても、圧接面の酸化膜の形成を抑止することができる。
【0025】
また、加熱トーチが有する火口は、ガス誘導体を火口基体に対し、その周方向に回転可能、かつ所定の位置で固定可能に構成されているので、周方向に回転した分だけガス流の位置を旋回させ、火炎の位置を変えて、上記領域の圧接面を挟む方向の幅を適宜調整することができる。
【0026】
これにより、必要に応じて上記領域の幅を狭くして、ガス圧接時の圧接面近傍における入熱量の増大を図ることができ、圧接面にフラット破面が生じるのを抑制することができる。よって、圧接材の太さや材質に対応したガス圧接が可能になる。
【0027】
〔6〕上記の目的を達成するために本発明は、先端部に火孔が設けられた火口基体と、該火口基体の内部にあり、前記火孔を通過するガス流を分けるガス誘導体とを有する火口がバーナー管に取り付けられた加熱トーチを使用し、前記ガス誘導体を、前記火口基体の周方向に回転することで、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにし、かつ前記圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域の幅を調整し、該領域を前記圧接材の前記圧接面に重なるようにして、加熱を行う工程を備えるガス圧接工法である。
【0028】
本発明のガス圧接工法は、加熱トーチに取り付けられた火口でガス流を分けて、圧接材を加熱するときの火炎も分かれる。火口は、ガス誘導体を火口基体の周方向に回転させて所定位置で固定し、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにして、かつ圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成することができる。
【0029】
そして、この領域を圧接面と重ねる(合わせる)ことにより、圧接材の圧接を行うための所定の加熱が可能である。これにより、初期加熱から標準炎を使用しても、圧接面の酸化膜の形成を抑止することができる。
【0030】
また、本発明のガス圧接工法では、加熱トーチが有する火口は、ガス誘導体を火口基体の周方向に回転することで、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにし、かつ前記圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域の幅を調整することができる。
【0031】
これにより、必要に応じて上記領域の幅を狭くして、ガス圧接時の圧接面近傍における入熱量の増大を図ることができ、圧接面にフラット破面が生じるのを抑制することができる。よって、圧接材の太さや材質に対応したガス圧接が可能になる。
【0032】
〔7〕本発明のガス圧接工法は、〔6〕において、前記加熱を標準炎により行うこともできる。
【0033】
この場合は、標準炎による加熱を行うので、アセチレンガス以外のプロパンガス等の天然ガスを利用して、圧接面における酸化膜の形成を抑止しながら、圧接工法に充分な火力を得て、圧接材の圧接作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、鉄筋等の圧接材の圧接を行う際に、火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにして、かつ圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成すると共に、その領域における圧接面を挟む方向の幅を適宜調整することができる火口、それを使用した加熱トーチ及びガス圧接工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明の第1の火口の構造を示す分解斜視図である。
図2図1に示す第1の火口の組み上げ状態の縦断面図である。
図3】第1の火口のガス誘導体の他の例を示す説明図である。
図4】本発明の第2の火口の構造を示す説明図である。
図5】本発明の第3の火口の構造を示す分解斜視図である。
図6図5に示す第3の火口の組み上げ状態の縦断面図である。
図7】本発明の加熱トーチの概略説明図である。
図8】第1の火口のガス誘導体の回転による噴出口の位置の変化を示す説明図である。
図9】第1の火口のガス誘導体を回転調整して、圧接ができる程度に充分に加熱された領域を最大にした加熱トーチによる加熱の状態を示す説明図である。
図10】第1の火口のガス誘導体を回転調整して、圧接ができる程度に充分に加熱された領域を狭めた加熱トーチによる加熱の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1乃至図10を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。
まず、図1図2を参照して、本発明に係る第1の火口A1(以下、単に火口A1という)の構造を説明する。
【0037】
火口A1は、金属製(例えば真鍮製)であるが、これに限定されず、より耐火性に優れるチタン等の他の金属材料を採用してもよい。これについては、後述する火口A2、A3も同様である。
【0038】
火口A1は、火口基体10を有している。火口基体10は、中心部に長さ方向(図2で上下方向)に貫通する空間100を有する中空体である。火口基体10は、基端側(図2で下端側)から順に、基ネジ管部11とフランジ部12及び外形が略六角柱形状の先管部18を有する。
【0039】
基ネジ管部11は、外周部に、後述する加熱トーチ9の取付管94にネジ込むための雄ネジ(符号省略)を有する。また、空間100のうち、基ネジ管部11に対応する部分の内周部は円孔16となっており、円孔16につながりフランジ部12に対応する部分の内周部は、截頭円錐状の空間を形成するように、上方が窄まった受孔16aとなっている(図2参照)。
【0040】
空間100のうち、受孔16aより先に位置する空間は円孔16bとなっている。円孔16bは、先管部18の先端面に貫通しており、その貫通口が円形の火孔180となっている。火孔180の口縁部には、面取り部181が設けられており、通過する火炎の広がりを妨げることがないようにしている。また、先管部18の周壁部の一箇所には、周壁部を貫通してネジ孔19が設けてある。ネジ孔19には、止めネジ190が螺着されている。
【0041】
更に、空間100の内部には、ガス誘導体4が収容されている。ガス誘導体4は、基端側から順に、外形が截頭円錐状の回転軸部42、火孔180を形成する、円孔16bより径小な首部40、略平歯車状の誘導部41を有している。
【0042】
誘導部41は、周方向に複数の歯410を有しており、各歯410の間には、複数の溝411が形成されている。誘導部41の外径は、空間100において、円孔16bの内径よりやや径小であり、ガス誘導体4は受孔16aと円孔16bを形成する内周部に沿って、周方向へ回転可能、及び進退移動可能である。
【0043】
なお、回転軸部42の基端部の直径線上の二箇所には、ドライバー等の回転操作具を係合させるための係合凹部44が設けてある。また、回転軸部42は、上記受孔16aに収容された状態で、互いの表面全体が接面した状態で火口基体10の長さ方向における位置が決まり、摺動回転による周方向の角度調整が可能であり、その調整位置で止めネジ190を締め付けて固定される。
【0044】
また、このようにガス誘導体4を火口基体10に取り付けて一体化したときには、空間100において円孔16aの部分の内周部と誘導部41の間の各溝411部分に、誘導部41の周方向に複数のガス通路400(図2に図示)が、誘導部41の全長にわたり形成される。
【0045】
ガス誘導体4の内部には、その全長にわたり分流噴出路45が設けてある。分流噴出路45は、先方へ向け窄まった導入口451と、基端は導入口451に連通すると共に、先端はガス誘導体4の先端面に貫通した噴出路452、452aを有している。
【0046】
噴出路452、452aは、ガス誘導体4の中心軸線方向と所定の角度を以て二方へ分かれるように(平面視的には互いに180°を成すように)、直線的、かつ円孔状に穿って(穴を開けて)設けられている。この角度は、本実施の形態では15°に設定されているが、この角度に限定されるものではない。
【0047】
また、噴出路452、452aの先端部は、噴出口450、450aとなっている。噴出口450、450aが設けられている先端面は、頂辺部453を堺に二面が所定の角度で傾斜して設けてある(図1図2参照)。噴出路452、452aは、この傾斜面(符号省略)に対し、略直角に形成してあり、製造時には噴出路452、452aの削孔がしやすい利点がある。
【0048】
上記首部40には、直径方向の二箇所に周壁部を貫通して、噴出路452、452aから空間100へ通じる連通孔43が設けてある。これにより、ガス誘導体4と火口基体10を一体化したときに、ガス流は、噴出路452、452aから各連通孔43、空間100を通り、各ガス通路400を流れることができる。
【0049】
そして、ガス誘導体4は、まず、全体を火口基体10の円孔16に入れ、誘導部41を円孔16bに挿入し、回転軸部42が受孔16aに当接したところで回転させて調整し、上記したように止めネジ190で火口基体10内部に固定される。この状態では、ガス誘導体4の噴出口450、450aは、空間100の内方へ火孔180の先端部からやや距離をおいて位置している(図2参照)。
【0050】
なお、ガス誘導体4は、火口基体10と一体化したときに、止めネジ190で止められることにより、周方向において噴出口450、450aの配置の角度が、所定の角度となるように調整される。
【0051】
この角度は、後述するように、圧接材51、52の圧接面500を加熱する場合は、加熱トーチ9に取り付けて組み込んだときに、圧接材51、52の圧接面500に対して自由に調整可能である。なお、噴出口450、450aの配置の角度で調整が有効なのは、実質、圧接面500に対して直角(90°)の状態から、平行(0°)の状態の間の角度である。
【0052】
(火口A1の作用)
図1図2及び図7乃至図10を参照し、火口A1の作用を、それを組み込んだ加熱トーチ9の作用と合わせて説明する。なお、本実施の形態では、火口A1で説明するが、上記火口A2、A3を使用して噴出口の配置の角度を調整し、略同様に圧接を行うことができるのは、言うまでもない。
【0053】
ここで、まず、図7を参照して、本発明に係る加熱トーチ9の概略を説明する。
上記火口A1が組み込まれた加熱トーチ9は、ガス圧接用の加熱トーチである。加熱トーチ9は、可燃ガスを導入するガス導入管を有している。ガス導入管の基部には、バルブを有する可燃ガス供給管、及び酸素供給管(何れも図示省略)が合流可能に接続されている。
【0054】
ガス導入管の先端には、U字形の分岐管91が接続されており、分岐管91の両先端には、分岐水平管であるバーナー管92が相対向して接続されている。ガス導入管と分岐管91、各バーナー管92は、中心線が同一平面上(設置時は通常は水平面上)にある。
【0055】
各バーナー管92には、それぞれその内側に四本、合計で八本の火口A1が、ネジ管である取付管94に基ネジ管部11をネジ込んで取り付けてある。なお、本実施の形態では、火口の数は4本ずつであるが、これに限定されるものではない。
【0056】
各火口A1は、火孔180が内方向(同一平面上の中心方向)、すなわち各バーナー管92の間に配置される圧接材51、52へ向けてある。各火口A1の火孔180の近傍に位置しているガス誘導体4の先端部の頂辺部453の辺線は、各バーナー管92の中心線(符号省略)及び圧接面500と略同じ高さ、かつ略平行になるように設定してある(図7参照)。
【0057】
また、各バーナー管92の先部と基部の端部にある火口A1の上下には、圧接材51、52の圧接面500からやや上下方向に離れた部分を加熱する火口A1aが水平方向より上下にやや角度を付けて、取付管94に対し上記火口A1と同様に内方向へ向け取り付けてある。
【0058】
各火口A1aは、構造は火口A1と略同様であるが、噴出路452、452aの配置方向が、火口A1の配置方向に対して略直角方向となるように、すなわち圧接材に対しては、その周方向と平行になるように設定してある(図7参照)。なお、火口A1aは、各バーナー管92に上下それぞれに二箇所ずつ、合計八箇所に取り付けてある。
【0059】
これにより、各取付管94に固定された各火口A1と各火口A1aには、プロパンガス等の可燃ガスが上記可燃ガス供給管と酸素供給管から供給可能となる。酸素と混合された可燃ガス(以下、これを可燃ガスという)は、火口基体10の円孔16から導入され、ガス誘導体4の分流噴出路45に入る。
【0060】
分流噴出路45を通る可燃ガスの圧力は、略一定の高圧に維持され、可燃ガスの一部は分流噴出路45を通り、噴出口450、450aから所定の角度で拡がるように火孔180へ向け噴出する。また、可燃ガスの他の一部は、分流噴出路45から各連通孔43を通って空間100内に入り、各ガス通路400を通って、上記の噴出口450、450aから噴出する可燃ガスと合流する。
【0061】
合流した可燃ガスに点火されると、各火口A1と各火口A1aの火孔180からは、火炎が所定の角度を以て二方向に噴出する。この場合、各火口A1の噴出口450、450aの配置の角度(頂辺部453の角度)は、圧接面500に対して直角(90°)である。
【0062】
この状態では、各火口A1から二方向に分かれた各火炎F1、F2は、図9に示すように、圧接材51、52の圧接面500に対して、直接当てないようにしてあり、かつ圧接面500近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域R1を所定の幅で形成している(図9においては、図示の便宜上、火口A1は一つのみ示している)。
【0063】
そして、例えば圧接をする圧接材51、52が、より太く或いはより高強度であり、圧接の際に圧接面500近傍に対してより大きな入熱量が必要な場合は、以下のようにして領域R1の圧接面500を挟む方向の幅がより狭くなるよう調整を行う。
【0064】
すなわち、ガス誘導体4を回転させて、火口基体10に対する周方向の角度を適宜角度(例えば図8(a)に示す、圧接面500に対する角度90°から、図8(c)に示す角度30°)にして、止めネジ190で固定する作業を加熱トーチ9に可燃ガスを供給する前に行っておく。なお、ガス誘導体4の回転は、止めネジ190を緩めた状態で火孔180の正面側から噴出口450、450aに引っ掛けて回す専用の回転操作具を使用するなどして行うことができる。
【0065】
そして、図10(a)に示すように、火口A1のガス誘導体4を右へ60°回転させると、噴出口450、450aの配置の角度が圧接面500に対して30°になる。この状態では、領域の圧接面500を挟む方向の幅が短くなり、火炎F1、F2を圧接面500に対して直接当てないようにしながら、かつ圧接面500近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域が、領域R1から幅がより狭くなった領域R2となる。
【0066】
これによると、各バーナー管92の中心線と同じ高さにある各火口A1から出る火炎F1、F2による熱量は一定であるのに、領域R2の面積は小さくなっているため、単位面積あたりの熱量が大きくなり、圧接面500の近傍の、より近いところへの入熱量を増やすことができる。
【0067】
また、上記各火口A1aから二方向に分かれた各火炎は、圧接材51、52の圧接面500と上下に所定の距離だけ離れた部分を軸周方向の領域を広く加熱することができるので、圧接材51、52を、圧接面500を含め、効率よく加熱することができる。
【0068】
そして、火口A1、A1aを組み込んだ加熱トーチ9によれば、圧接材51、52を圧接する際に、プロパンガス等を可燃ガスとする標準炎を初期加熱から使用しても、標準炎である火炎は圧接面500を直接には加熱しないので、圧接面500に酸化被膜が形成されることを抑止できる。また、還元材を使用しなくても、圧接材51、52のガス圧接作業が可能になる。
【0069】
なお、本実施の形態では、圧接材51、52を垂直方向に立てて支持してあり、加熱トーチ9の各バーナー管92を水平にしてガス圧接を行っているが、これに限定するものではなく、圧接材51、52を水平に支持し、加熱トーチ9の各バーナー管92を垂直にして上記ガス圧接を行うこともできる。
【0070】
図3には、上記ガス誘導体4の変形例であるガス誘導体4bを示す。なお、以下の説明では、ガス誘導体4bの構造において、上記ガス誘導体4と共通する部分については、ガス誘導体4の各部と同様の符号を付して示し、ここでの説明は省略する。
【0071】
ガス誘導体4bは、略歯車状の誘導部41bが設けてある。誘導部41bの各歯410bは、上記誘導部41の歯410とは相違して、軸線方向に対して所定の角度で傾斜して螺旋状となっており、それらの間には溝411bが設けられている。
【0072】
ガス誘導体4bを火口基体10に取り付けて一体化したときには、空間100において上記円孔16aの部分の内周部と誘導部41bの間の各溝411b部分に、誘導部41bの周方向に複数の溝からなる螺旋状のガス通路(図示省略)が、誘導部41bの全長にわたり形成される。
【0073】
そして、使用時には、各ガス通路の噴出口(図示省略)からは、ガス流がガス誘導体4bの軸線方向に対して所定の角度で噴出し、旋回するように排出される。これにより、火炎の外炎の形成領域が拡張され、その外炎形成領域により、内炎に対し大気中の酸素が巻き込まれるのを抑える機能を果たすことができ、圧接材51、52の圧接面500に大気中の酸素が巻き込まれるのを抑止できる。よって、圧接面500での酸化被膜の形成が抑止され、圧接面500の接合を良好に行うことができる。
【0074】
次に、図4を参照して、本発明に係る第2の火口A2(以下、単に火口A2という)の構造を説明する。なお、火口A2の火口基体10の構造は、上記火口A1の火口基体10と同様なので、以下の説明では、共通する部分については、上記火口基体10の各部と同様の符号を付して示し、ここでの説明は省略する。
【0075】
火口A2の火口基体10の空間100には、ガス誘導体6が収容されており、所定の高さに位置させてある。ガス誘導体6は、基端側から順に、外形が截頭円錐状の回転軸部62、火孔180を形成する、円孔16bより径小な首部60、略平歯車状の誘導部61を有している。基ネジ管部62の基端部の直径線上の二箇所には、ドライバー等の回転操作具を係合させるための係合凹部64が設けてある。
【0076】
誘導部61は、周方向に複数の歯610を有しており、各歯610の間には、複数の溝611が形成されている。誘導部61の外径は、空間100において、円孔16bの内径よりやや径小であり、ガス誘導体6は空間100の内周部に沿って、周方向へ回転可能、及び進退移動可能である。
【0077】
また、ガス誘導体6を火口基体10に取り付けて一体化したときには、空間100において円孔16bの内周部と誘導部61の間に、誘導部61の周方向に複数のガス通路600(図4に図示)が、誘導部61の全長にわたり形成される。
【0078】
ガス誘導体6の内部には、その全長にわたり分流噴出路65が設けてある。分流噴出路65は、先方へ向け窄まった導入口651と、基端は導入口651に連通すると共に、先端はガス誘導体6の先端面に貫通した中心噴出孔653を有している。
【0079】
中心噴出孔653は、口部(符号省略)が直径方向にやや膨らんだ楕円孔である(図4(b)参照)。また、ガス誘導体6の先端面は、誘導部61の軸線方向と直角である(図4(a)参照)。
【0080】
そして、誘導部61には、略全長にわたり、その直径方向の二箇所に縦溝66が互いに平行に形成されている。各縦溝66は、中心噴出孔653の最も小径となる位置にあり、誘導部61の軸線方向と平行に設けてある。各縦溝66には、略全長にわたり、金属製の四角形の板体を中央で折り曲げたプレート状の分割部材67が装着されて固定してある。
【0081】
縦溝66の底部は、略円形状にやや広く形成され、分割部材67の、折り曲げて径大となった部分を横入れしており、抜けにくいようにしている。なお、分割部材67の固定構造はこれに限定するものではなく、他の構造でもよい。
【0082】
これにより、中心噴出孔653は分割部材67によって略半分に分割されており、空間が二つに分けられて、噴出路652、652aが形成されている。ガス流は噴出路652、652aを通り、先端の噴出口650、650aから噴出する。この噴出するガス流は、口部が楕円状の中心噴出孔653の内面の拡がりに沿って、二方に所定の角度で拡がるようになっている。
【0083】
なお、分割部材67を、中心噴出孔653を分割して装着した後、分割部材67の中間部上面からドリルで削孔して拡げることもできる。これによると、より確実に火炎が拡がり、火炎を安定させることができる。
【0084】
噴出口650、650aの形状は、半楕円形状の他、半円状や、その他の異形などにすることもでき、特に限定はされない。この形状は、噴出口650、650aの形状も含めて、火炎が所定の角度で二方に拡がるのであれば、特に限定するものではない。
【0085】
また、首部60には、直径方向の二箇所に周壁部を貫通して、中心噴出孔653から空間100へ通じる連通孔63が設けてある。これにより、ガス誘導体6と火口基体10を一体化したときに、ガス流は、中心噴出孔653から各連通孔63、空間100を通り、各ガス通路600を流れることができる。
【0086】
なお、中心噴出孔653の先端部の口部は、ラッパ状に拡げて形成することもできる。ラッパ状に形成すると、拡がった口部の表面に沿ってガス流が分かれるので、火炎を、より確実に拡げることができる。
【0087】
ガス誘導体6は、上記ガス誘導体4と同様にして火口基体10内部に固定される。この状態では、ガス誘導体6の上端部は、空間100の内方へ火孔180の先端部からやや距離をおいて位置している(図4(a)参照)。
【0088】
ガス誘導体6は、ガス誘導体6と火口基体10を一体化したときに、止めネジ190で止められて、火口基体10の周方向において噴出路652、652aの配置が所定の角度となるように調整され、火口A2が作られる。
【0089】
そして、火口A2を上記火口A1と同様に組み込んで加熱トーチ(図示省略)を作製し、上記火口A1を組み込んだ加熱トーチ9と同様に、火孔180から噴出する火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにして、かつ圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成することができる。
【0090】
更に、上記火口A1の場合と同様に、必要に応じて、ガス誘導部材6を回転させて、噴出口650、650aの配置の角度を調整し、この領域において、圧接面を挟む方向の幅を狭くする等、圧接材の特性に合わせて調整することにより、圧接面近傍への入熱量を調整することができる。
【0091】
次に、図5図6を参照して、第3の火口A3(以下、単に火口A3という)の構造を説明する。第3の火口A3は、火口基体10aを有している。火口基体10aは、中心部に長さ方向に貫通する空間100aを有する中空体である。火口基体10aは、基端側から順に、下ネジ管部11aとフランジ部12a及び外形が略六角柱形状の上管部18aを有する。
【0092】
下ネジ管部11aは、外周部に雄ネジ(符号省略)を有する。また、上記空間100aのうち、略下ネジ管部11aとフランジ部12aに対応する部分の内周部には、ネジ孔17aが設けてある(図6参照)。
【0093】
空間100aのうち、ネジ孔17aの上に位置する空間は、上管部18aの上端面に貫通しており、その先端部が円形の火孔180となっている。また、上管部18aの周壁部の一箇所には、周壁部を貫通してネジ孔19が設けてある。ネジ孔19には、止めネジ190が螺着されている。
【0094】
空間100aの内部には、ガス誘導体4aが収容されており、所定の位置に取り付けてある。ガス誘導体4aは、基端側から順に、外周部に雄ネジ(符号省略)を有する下ネジ管部42a、火孔180を形成する空間より径小な首部40a、平歯車状の誘導部41aが設けてある。なお、下ネジ管部42aの基端部の直径線上の二箇所には、ドライバー等の回転操作具を係合させるための係合凹部44aが設けてある。
【0095】
誘導部41aの外径は、空間100aにおいて、上記ネジ孔17aより上の部分の内径よりやや径小であり、ガス誘導体4aの部分は空間100aの内周部に沿って、周方向へ回転可能、及び進退移動可能である。また、空間100aにおいてネジ孔17aより上の部分の内周部と誘導部41aの間には、誘導部41aの周方向に複数の通気路400(図6参照)が、誘導部41aの全長にわたり形成される。
【0096】
ガス誘導体4aの中心部には、全長にわたりガス送給孔45aが設けてある。ガス送給孔45aの上端部は、ガス噴出口46となっている。ガス送給孔45aは、先部側の誘導部41aと首部40aに対応する部分は同径の円孔であり、基部側の下ネジ管部42aに対応する部分が下方へ向け径大となったテーパ孔となっている(図6参照)。また、首部40aには、直径方向の二箇所に周壁部を貫通してガス送給孔45aに通じる連通孔43aが設けてある。
【0097】
ガス誘導体4aの先端部には、ガス噴出口46の外側でガス噴出口46を直径方向に横切るように、ステンレススチール製の分流部材3aが取り付けてあり、これにより噴出口460、460aが形成されている。
【0098】
分流部材3aは、横断面形状が円形で所定の長さのピン形状である。分流部材3aは、例えば誘導部41aに平歯車の溝部に対応して設けた貫通孔47に一端部を差し込み、上方へ回してガス噴出口46を横切るようにして、他端部を折り曲げて溝部に収める等して固定してある(図5下図参照)。
【0099】
また、貫通孔47をガス誘導体4aの反対側にも設けて、分流部材を分流部材3aのように端部を折り曲げないで直線状のピン形状として、両貫通孔47に通してガス噴出口46を横着るように固定することで、ガスの分流を行うこともできる。
【0100】
そして、ガス誘導体4aは、図6に示すように、誘導部41aを火口基体10aのネジ孔17aに挿入し、下ネジ管部42aの雄ネジがネジ孔17aの雌ネジに噛んだところで回転させて螺合し、空間100aの奥方向にネジ込むことができる。更に、誘導部41aが空間100aにおいて火孔180のある部分に入っても、ガス誘導体4aは、更に奥へネジ込んで移動させれば、適当な位置で止めネジ190を締め込んで固定して、一体化されて火口A3となる。
【0101】
なお、ガス誘導体4aに設けてある分流部材3aは、ガス誘導体4aと火口基体10aを一体化したときに、ガス誘導体4aが止めネジ190で止められて、火孔180からやや内部に入ったところに位置し、周方向において所定の角度となるように調整される。
【0102】
そして、火口A3を上記火口A1と同様に組み込んで加熱トーチ(図示省略)を作製し、上記火口A1を組み込んだ加熱トーチ9と同様に、火孔180から噴出する火炎を圧接材の圧接面に直接当てないようにして、かつ圧接面近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を形成することができる。
【0103】
更に、上記火口A1の場合と同様に、必要に応じて、ガス誘導部材4aを回転させて、噴出口460、460aの配置の角度を調整し、この領域において、圧接面を挟む方向の幅を狭くする等、圧接材の特性に合わせて調整することにより、圧接面近傍への入熱量を調整することができる。
【0104】
なお、上記したように、火口A1、A2、A3は、同様に加熱トーチ9に組み込んで使用可能であり、圧接材51、52を圧接する際に、プロパンガス等を可燃ガスとする標準炎を初期加熱から使用してもよい。すなわち、標準炎である火炎は、領域R1又は領域R2にある圧接面500を直接には加熱せず、かつ圧接面500近傍は、その加熱が、圧接ができる程度に充分に成されているので、圧接作業において圧接面500での酸化被膜の形成が抑止される。
【0105】
本明細書及び特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書及び特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。
【符号の説明】
【0106】
A1 火口
10 火口基体
100 空間
11 基ネジ管部
12 フランジ部
16 円孔
16a 受孔
16b 円孔
18 先管部
180 火孔
181 面取り部
19 ネジ孔
190 止めネジ
4 ガス誘導体
41 誘導部
410 歯
411 溝
400 ガス通路
42 基ネジ管部
40 首部
44 係合凹部
45 分流噴出路
451 導入口
450、450a 噴出口
452、452a 噴出路
453 頂辺部
43 連通孔
4b ガス誘導体
41b 誘導部
410b 歯
411b 溝
9 加熱トーチ
91 分岐管
92 バーナー管
94 取付管
51、52 圧接材
500 圧接面
F1、F2 火炎
A2 火口
10 火口基体
6 ガス誘導体
61 誘導部
610 歯
611 溝
600 ガス通路
62 基ネジ管部
60 首部
63 連通孔
64 係合凹部
65 分流噴出路
651 導入口
652、652a 噴出路
653 中心噴出孔
650、650a 噴出口
66 縦溝
67 分割部材
A3 火口
10a 火口基体
100a 空間
11a 下ネジ管部
12a フランジ部
18a 上管部
17a ネジ孔
180 火孔
4a ガス誘導体
42a 下ネジ管部
40a 首部
41a 誘導部
44a 係合凹部
400 通気路
45a ガス送給孔
46 ガス噴出口
43a 連通孔
3a 分流部材
460、460a 噴出口
47 貫通孔
【要約】
【課題】圧接材の圧接を行う場合に、初期加熱から標準炎を使用して、還元材を用いなくても圧接面における酸化抑止ができる火口を提供する。
【解決手段】
火口A1は、先端部に火孔180が設けられた火口基体10と、火口基体10の内部に収容され、その周方向に回転可能、かつ所定の位置で固定可能で、火孔180を通過するガス流を二方へ分けて、火炎を圧接材の圧接面500に直接当てないようにし、かつ圧接面500近傍の加熱が、圧接ができる程度に充分に成された領域を所定の幅で形成するガス誘導体4とを備える。
【選択図】図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10