(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】心電図解析のための支援装置、支援システム、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20240524BHJP
A61B 5/339 20210101ALI20240524BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/339
(21)【出願番号】P 2024039336
(22)【出願日】2024-03-13
【審査請求日】2024-03-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519409257
【氏名又は名称】株式会社カルディオインテリジェンス
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】高田 智広
(72)【発明者】
【氏名】武智 峰樹
【審査官】磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】特許第7002168(JP,B1)
【文献】特開2021-111108(JP,A)
【文献】特開2022-148631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2023/0200747(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0251550(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110931125(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
医中誌WEB
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検者の心電図を複数の区間に分割し、前記複数の区間のうち特定区間以外の前記区間を候補区間として抽出するように構成される心電図解析装置、および
前記心電図解析装置と通信接続するように構成される支援装置を備え、
前記支援装置は、
コンピューティングデバイス、および
前記コンピューティングデバイスに制御される表示装置を備え、
前記コンピューティングデバイスは、
前記心電図解析装置に前記心電図をアップロードするための第1のユーザコマンドを受け付けること、
前記候補区間を前記表示装置の画面上に表示すること、
前記候補区間から非解析区間を選択する第2のユーザコマンドの入力を受け付けること、および
前記候補区間のうち前記第2のユーザコマンドによって選択されなかった区間である解析区間を用いて前記心電図を解析する命令を前記心電図解析装置に対して送信することを実行するように構成され、
前記特定区間は、疾患に起因する波形を示す区間を含む、心電図解析のための支援システム。
【請求項2】
前記心電図解析装置は、
前記疾患が現れている心電図データ、および
前記疾患が現れていない心電図データ
を教師データとして機械学習することで作製された教師あり学習モデルを用いて前記複数の区間を解析するように構成される、請求項1に記載の支援システム。
【請求項3】
前記心電図解析装置は、
前記疾患を発症しているヒトの心電図データのうち、前記疾患が現れていない心電図データ、および
前記疾患を発症していないヒトの心電図データを教師データとして機械学習することで作製された教師あり学習モデルを用いて前記解析区間を解析するように構成される、請求項1に記載の支援システム。
【請求項4】
前記心電図解析装置は、さらに、前記解析に基づき、前記心電図が前記疾患の兆候または前記疾患が疑われる異常を示すか否かを判断するように構成される、請求項3に記載の支援システム。
【請求項5】
前記コンピューティングデバイスは、任意に選択される時点以降に取得された前記候補区間、およびこれに後続する前記候補区間を時系列に従って前記画面上に表示するように構成される、請求項1に記載の支援システム。
【請求項6】
前記コンピューティングデバイスは、さらに、前記複数の区間の全てを前記画面上に表示するように構成される、請求項1に記載の支援システム。
【請求項7】
前記コンピューティングデバイスは、さらに、前記特定区間を特定するための表示を前記画面上で行うように構成される、請求項6に記載の支援システム。
【請求項8】
前記コンピューティングデバイスは、さらに、
時系列に従ってn個の前記候補区間を前記画面上に表示し、
前記第2のユーザコマンドに従って前記非解析区間として選択された前記候補区間を前記画面上から削除し、
n個の前記候補区間に後続する前記候補区間の一つを前記画面上に表示するように構成され、
nは1以上20以下の整数から選択される、請求項1に記載の支援システム。
【請求項9】
コンピューティングデバイス、および
前記コンピューティングデバイスに制御される表示装置を備え、
前記コンピューティングデバイスは、
前記コンピューティングデバイスと通信接続され、心電図を複数の区間に分割し、前記複数の区間のうち特定区間以外の前記区間を候補区間として抽出するように構成される心電図解析装置に対し、被検者の心電図を前記コンピューティングデバイスにアップロードするための第1のユーザコマンドを受け付けること、
前記候補区間を前記表示装置の画面上に表示すること、
前記候補区間から非解析区間を選択する第2のユーザコマンドの入力を受け付けること、および
前記候補区間のうち前記第2のユーザコマンドによって選択されなかった区間である解析区間を用いて前記被検者の前記心電図を解析する命令を前記心電図解析装置に対して送信することを実行するように構成され、
前記特定区間は、疾患に起因する波形を示す区間を含む、心電図解析のための支援装置。
【請求項10】
前記コンピューティングデバイスは、任意に選択される時点以降に取得された前記候補区間、およびこれに後続する前記候補区間を時系列に従って前記画面上に表示するように構成される、請求項9に記載の支援装置。
【請求項11】
前記コンピューティングデバイスは、さらに、前記複数の区間の全てを前記画面上に表示するように構成される、請求項9に記載の支援装置。
【請求項12】
前記コンピューティングデバイスは、さらに、前記特定区間を前記画面上で特定するための表示を行うように構成される、請求項11に記載の支援装置。
【請求項13】
前記コンピューティングデバイスは、さらに、
時系列に従ってn個の前記候補区間を前記画面上に表示し、
前記第2のユーザコマンドに従って前記非解析区間として選択された前記候補区間を前記画面上から削除し、
n個の前記候補区間に後続する前記候補区間の一つを前記画面上に表示するように構成され、
nは1以上20以下の整数から選択される、請求項9に記載の支援装置。
【請求項14】
心電図解析装置において実行される心電図解析をコンピューティングデバイスを利用して支援するためのプログラムであり、前記心電図解析装置は、前記コンピューティングデバイスと通信接続され、被検者の心電図を複数の区間に分割し、前記複数の区間のうち特定区間以外の前記区間を候補区間として抽出するように構成され、前記プログラムは、前記コンピューティングデバイスに対し、
前記被検者の前記心電図を前記心電図解析装置にアップロードするための第1のユーザコマンドを受け付けること、
前記候補区間を前記コンピューティングデバイスの表示装置の画面上に表示すること、
前記候補区間から非解析区間を選択する第2のユーザコマンドの入力を受け付けること、および
前記候補区間のうち前記第2のユーザコマンドによって選択されなかった区間である解析区間を用いて前記心電図を解析する命令を前記心電図解析装置に対して送信することを実行させるように構成さ
れ、
前記特定区間は、疾患に起因する波形を示す区間を含む、プログラム。
【請求項15】
前記コンピューティングデバイスに対し、任意に選択される時点以降に取得された前記候補区間、およびこれに後続する候補区間を時系列に従って前記画面上に表示することをさらに実行させるように構成される、請求項14に記載のプログラム。
【請求項16】
前記コンピューティングデバイスに対し、前記複数の区間の全てを前記画面上に表示することをさらに実行させるように構成される、請求項14に記載のプログラム。
【請求項17】
前記コンピューティングデバイスに対し、前記特定区間を前記画面上で特定するための表示を行うことをさらに実行させるように構成される、請求項16に記載のプログラム。
【請求項18】
前記コンピューティングデバイスに対し、
時系列に従ってn個の前記候補区間を前記画面上に表示すること、
前記第2のユーザコマンドに従って前記非解析区間として選択された前記候補区間を前記画面上から削除すること、および
n個の前記候補区間に後続する前記候補区間の一つを前記画面上に表示することをさらに実行させるように構成される、請求項
14に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、心電図解析のための支援装置と支援システム、および心電図を解析するための方法に関する。あるいは、本発明の実施形態の一つは、心電図解析を支援するためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
患者の健康状態を判断する一つの手段として心電図が広く用いられている。しかしながら、疾患の種類によっては、長時間(例えば、1日)にわたる測定が要求され、さらに、長時間にわたる測定を行っても、心電図中に疾患に起因する波形が明確に現れないことがある。このため、近年、教師あり学習モデルを利用する解析により、心電図から心臓疾患の兆候があるか否かを自動判定し、その発症確率などを自動判定するシステムが開発されている(特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6865329号
【文献】特許第7002168号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態の一つは、心電図解析を支援するための新規支援装置、支援装置を含む心電図解析システム、支援装置を利用して心電図解析を支援するためのプログラム、および心電図解析システムを用いる心電図解析方法を提供することを課題の一つとする。あるいは、本発明の実施形態の一つは、疾患またはその兆候を高い確度で判定可能な、心電図解析のための支援装置、支援装置を含む心電図解析システム、支援装置を利用して心電図解析を支援するためのプログラム、および心電図解析システムを用いる心電図解析方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、心電図解析のための支援システムである。この支援システムは、心電計、心電図解析装置、および支援装置を備える。心電計は、被検者の心電図を取得するように構成される。心電図解析装置は、心電図を受信し、心電図を複数の区間に分割し、複数の区間のうち特定区間以外の区間を候補区間として抽出するように構成される。支援装置は、心電図解析装置と通信接続するように構成される。支援装置は、コンピューティングデバイス、およびコンピューティングデバイスに制御される表示装置を備える。コンピューティングデバイスは、(1)心電図解析装置に心電図をアップロードするための第1のユーザコマンドを受け付けること、(2)候補区間を表示装置の画面上に表示すること、(3)候補区間から非解析区間を選択する第2のユーザコマンドの入力を受け付けること、および(4)候補区間のうち第2のユーザコマンドによって選択されなかった区間である解析区間を用いて心電図を解析する命令を心電図解析装置に対して送信することを実行するように構成される。特定区間は、疾患に起因する波形を示す区間を含む。
【0006】
本発明の実施形態の一つは、心電図解析のための支援装置である。この心電図解析のための支援装置は、コンピューティングデバイス、およびコンピューティングデバイスに制御される表示装置を備える。コンピューティングデバイスは、(1)コンピューティングデバイスと通信接続され、心電図を複数の区間に分割し、複数の区間のうち特定区間以外の区間を候補区間として抽出するように構成される心電図解析装に対し、被検者の心電図をコンピューティングデバイスにアップロードするための第1のユーザコマンドを受け付けること、(2)候補区間を表示装置の画面上に表示すること、(3)候補区間から非解析区間を選択する第2のユーザコマンドの入力を受け付けること、および(4)候補区間のうち第2のユーザコマンドによって選択されなかった区間である解析区間を用いて被検者の心電図を解析する命令を心電図解析装置に対して送信することを実行するように構成される。特定区間は、疾患に起因する波形を示す区間を含む。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、心電図解析装置において実行される心電図解析をコンピューティングデバイスを利用して支援するためのプログラムである。心電図解析装置は、コンピューティングデバイスと通信接続され、被検者の心電図を複数の区間に分割し、複数の区間のうち特定区間以外の区間を候補区間として抽出するように構成される。プログラムは、コンピューティングデバイスに対し、(1)被検者の心電図を心電図解析装置にアップロードするための第1のユーザコマンドを受け付けること、(2)候補区間をコンピューティングデバイスの表示装置の画面上に表示すること、(3)候補区間から非解析区間を選択する第2のユーザコマンドの入力を受け付けること、および(4)候補区間のうち第2のユーザコマンドによって選択されなかった区間である解析区間を用いて心電図を解析する命令を心電図解析装置に対して送信することを実行させるように構成される。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、上記プログラムが記録されたコンピュータ可読記憶媒体である。
【0009】
本発明の実施形態の一つは、心電図の解析方法である。この解析方法は、(1)被検者の心電図を取得すること、(2)心電図を複数の区間に分割すること、(3)複数の区間のうち特定区間以外の区間を候補区間として抽出すること、(4)候補区間から非解析区間を選択すること、および(5)候補区間のうち非解析区間として選択されなかった区間である解析区間を用いて心電図を解析することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態の一つに係る、心電図解析のための支援システムのブロック図。
【
図2】本発明の実施形態の一つに係る、心電図解析のための支援システムを利用する心電図解析のフロー。
【
図3】本発明の実施形態の一つに係る、心電図解析のための支援システムで行われる動作を説明する模式図。
【
図4】本発明の実施形態の一つに係る支援装置の表示装置上で表示される表示の一例。
【
図5】本発明の実施形態の一つに係る支援装置の表示装置上で表示される表示の一例。
【
図6】本発明の実施形態の一つに係る支援装置の表示装置上で表示される表示の一例。
【
図7】本発明の実施形態の一つに係る支援装置の表示装置上で表示される表示の一例。
【
図8】本発明の実施形態の一つに係る支援装置の表示装置上で表示される表示の一例。
【
図9】本発明の実施形態の一つに係る支援装置の表示装置上で表示される表示の一例。
【
図10】本発明の実施形態の一つに係る支援装置の表示装置上で表示される表示の一例。
【
図11】本発明の実施形態の一つに係る支援装置の表示装置上で表示される表示の一例。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について、図面などを参照しつつ説明する。ただ、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0012】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0013】
1.心電図解析のための支援システムの構成
本発明の実施形態の一つに係る、心電図解析のための支援システム100のブロック図を
図1に示す。
図1に示すように、支援システム100は、支援装置110、心電図解析装置140、および心電計150を含む。支援システム100は、データベース160をさらに含んでもよい。支援システム100に含まれる心電計150、心電図解析装置140、支援装置110の数に制約はなく、例えば複数の心電計150や複数の支援装置110、複数のデータベース160が含まれてもよい。また、支援システム100に複数の心電図解析装置140が含まれてもよい。支援装置110は、ユーザの命令に従って動作するプログラム(後述)によって制御される。支援システム100はさらに、ユーザの心拍数を測定するための心拍計170、ユーザの状態を検知するための加速度センサ180などを含んでもよい。
【0014】
支援装置110と心電図解析装置140は、互いにネットワーク102で通信接続される。ネットワーク102としては、インターネットなどのワイドエリアネットワークが例示される。支援システム100がデータベース160を含む場合、データベース160もネットワーク102を介して支援装置110と心電図解析装置140に通信接続されてもよい。心電計150もネットワーク102によって支援装置110、心電図解析装置140、および/またはデータベース160と通信接続されてもよく、あるいは、ネットワーク102を介した通信を行うように設定されなくてもよい。後者の場合には、心電計150で取得される心電図データは、フラッシュメモリなどの記憶媒体を介して支援装置110および/またはデータベース160に格納すればよい。
【0015】
心電計150は、被検者の心電図を取得する装置であり、公知の心電計を心電計150として用いることができる。長時間にわたって心電図を取得する場合には、測定が被検者に及ぼす負担が小さいホルター心電計またはイベントレコーダを心電計150として用いてもよい。心電計150は、心臓内の電気の流れによって生じる電位変化を取得し、測定時間に対する電位変化のプロットとして心電図を与える。
【0016】
心電図解析装置140は、心電計150で取得された心電図のデータを解析する装置である。心電図解析装置140は、計算機能と通信機能を備えたデバイスであり、パーソナルコンピュータでもよく、あるいは、アプリケーションサーバでもよい。心電図解析装置140の機能や動作については後述するが、心電図解析装置140で得られる解析結果に基づき、被検者が各種疾患または検査異常を有するか否かを判定することができる。心電図解析装置140が検出可能な疾患や検査異常は心臓疾患に限られず、心電図解析装置140は様々な疾患や検査異常を検出することができる。例えば、心電図解析装置140は、心房細動、心不全、心室性不整脈、弁膜症、心筋症などの心臓系の疾患や検査異常のみならず、低ナトリウム血症、糖尿病、高カリウム血症などの各種疾患の可能性を示す検査異常を被検者の心電図データから検出することができる。
【0017】
支援装置110は、ユーザである医師、その他医療従事者が利用する端末である。図示しないが、支援装置110は、コンピューティングデバイスおよびコンピューティングデバイスによって制御される表示装置を備える。コンピューティングデバイスは計算機能と通信機能を備えるデバイスであり、例えばデスクトップ型のパーソナルコンピュータでもよく、あるいは、スマートフォンやタブレットなどの携帯型通信端末でもよい。コンピューティングデバイスには、キーボード、マウス、タッチパネルなどの入力インターフェースが接続または組み込まれ、ユーザはこれらの入力インターフェースを利用してユーザコマンドをコンピューティングデバイスに入力する。表示装置はコンピューティングデバイスに接続または搭載され、ユーザに対するインターフェースとして機能する。支援装置110の機能や動作の詳細についても後述する。
【0018】
データベース160は、パーソナルコンピュータなどの通信計算端末に接続または搭載された記憶装置でもよく、あるいは、電子データの保存、管理に特化した所謂ファイルサーバでもよい。
【0019】
心拍計170や加速度センサ180は、被検者に取り付けられ、これにより、被検者の状態(例えば、被検者が睡眠中である、安静な状態である、あるいは歩行や走行を含む運動中であるなど)を把握することができる。心拍計170や加速度センサ180もネットワーク102を介して心電図解析装置140と接続することができる。また、心拍計170や加速度センサ180からの情報は、心電図解析装置140において心電図データとリンクすることができ、心電図データとともに心電図解析装置140および/またはデータベース160に格納してもよい。
【0020】
2.心電図の解析
以下、支援装置110と心電図解析装置140の機能とともに、支援システム100を用いる心電図解析について説明する。心電図解析のフローチャートを
図2に示す。本心電図解析では、被検者の心電図を取得した後、教師あり学習モデルを用いる二つの解析(一次解析と二次解析)が行われ、さらに、一次解析と二次解析の間に、二次解析のための前処理が行われる。以下、詳述する。
【0021】
(1)心電図の取得
まず、被検者の心電図を心電計150を用いて取得する。心電図の測定時間は、例えば10秒以上、1時間以上、12時間以上、1日以上、3日以上である。長時間にわたる測定を行うことで、疾患や検査異常を検知する確率を増大することができる。測定時間の上限にも制約はなく、例えば、1週間、3日、1日、または12時間である。得られた心電図は、心電計150からネットワーク102を介する通信、または記憶媒体を介して支援装置110および/またはデータベース160に格納される。同時に、心拍計170や加速度センサ180から得られる情報もネットワーク102を介する通信、または記憶媒体を介して支援装置110、心電図解析装置140、および/またはデータベース160に格納してもよい。
【0022】
(2)一次解析
心電図は、心電図解析装置140によって一次解析される。具体的には、まず、支援装置110は、入力インターフェースを介して受け付けたユーザのコマンドに従い、支援装置110、および/またはデータベース160に格納された心電図データをネットワーク102を介して心電図解析装置140にアップロードする。なお、心電図データが心電図解析装置140に格納される場合には、このステップは実施しなくてもよい。
【0023】
心電図解析装置140は、送信または格納された心電図を複数の区間に分割する。各区間の時間は、心電図の取得時間よりも短い範囲で任意に設定することができ、例えば5秒以上120秒以下の範囲から適宜選択すればよく、典型的には30秒である。上述したように、心電図は比較的長時間にわたって取得されるため、
図3に模式的に示すように、一つの心電図全体の一部が一つの区間となり、一つの心電図が複数の区間によって構成される。例えば、24時間の測定によって取得される心電図を30秒の区間で分割する場合、2880の区間によって一つの心電図が構成される。
【0024】
その後、心電図解析装置140により、各区間に対して解析(一次解析)が行われる。一次解析では、教師あり学習モデルを利用することによって一つまたは複数の疾患若しくは検査異常の有無が判定される。具体的には、多数の正常な心電図、すなわち、ユーザが検査項目として挙げる疾患または検査異常を持たない多数のヒトの心電図を取得し、それぞれの心電図を複数の区間に分割し、各区間のデータをインプットデータ(特徴量)として作成する。同様に、ユーザが検査項目として挙げる疾患または検査異常を有する多数のヒトの心電図を取得し、それぞれの心電図を複数の区間に分割し、各区間のデータをインプットデータとして作成する。これらのインプットデータを用い、教師あり学習モデルに学習させる。
【0025】
一次解析では、診察対象である被検者の心電図を用い、教師あり学習モデルを用いて解析を行う。この時のアウトプットデータは、各区間に対する判定結果であり、各区間がユーザが検査項目として挙げる疾患または検査異常が現れた区間であるか否かかという二つのカテゴリーである。上述したように、検出ターゲットである疾患や検査異常に特段の制約はなく、心臓疾患のほか、種々の疾患または検査異常について、それぞれインプットデータを作成し、教師あり学習モデルに学習させればよい。あるいは、一次解析で検査項目として挙げる疾患または検査異常は、心臓系の疾患または検査異常でもよい。
【0026】
教師あり学習モデルのアルゴリズムとしては、線形回帰モデル、ランダムフォレスト、決定木、勾配ブースティング、深層学習(ディープラーニング)などが挙げられ、特に高い精度が見込める深層学習が好ましい。深層学習を用いる場合には、畳み込みニューラルネットワーク、リカレントニューラルネットワーク、Vision Transformerモデルなどを適宜用いればよい。
【0027】
一次解析においてユーザが検査項目として挙げる疾患または検査異常が現れた区間が検出されれば、ユーザは心電図を再確認し、一次解析の結果が正しいか否かを判断し、その判断に基づいて適切な処置を行えばよい。しかしながら、一次解析は必ずしも精度よく疾患または検査異常が現れる区間を検出できるとは限られない。また、正常な区間を疾患または検査異常が現れる区間として誤検出することもある。さらに、一次解析では、ユーザが検査項目として挙げる疾患または検査異常が表れているヒトの心電図、およびこれらの疾患または検査異常を持たない正常なヒトの心電図をインプットデータとして用いて学習モデルを学習させるが、疾患や検査異常の種類によっては、心電図上でその兆候が明確に表れないことがある。例えば、何らかの疾患または検査異常を有する被検者の心電図を長時間にわたって取得しても、心電図中にその疾患や検査異常に起因する波形を示す区間が含まれず、心電図が実質的にサイナス波形を示すと認識可能な区間から構成されることもある。このような場合、一次解析ではその疾患や検査異常を見落とすことになる。さらに、一次解析では検査項目で挙げられていない疾患または検査異常の有無を診断する必要がある場合もある。このため、本発明の実施形態の一つに係る心電図解析方法では、一次解析後の心電図データを用いて、後述する二次解析が行われる。
【0028】
(3)前処理
二次解析では、一次解析とは異なり、インプットデータの作成において、以下の二種類のデータが用いられる。一つは、ユーザが検査項目とする疾患または検査異常を持たない多数のヒトの心電図データを複数の区間に分割して得られる各区間のデータである。これに対し、他方の心電図データは、疾患または検査異常を有する多数のヒトの心電図データを分割して得られる複数の区間のうち、その疾患が現れていない区間のデータである。例えば、疾患または検査異常が発作性の不整脈(発作性心房細動、心室頻拍、上室頻拍、心房粗動)の場合には、発作性の不整脈を示す波形が表れていない区間が用いられる。換言すると、二次解析では、ユーザが被検者の心電図から疾患または検査異常が存在すると判断することが困難な心電図データがインプットデータの一つとして用いられる。
【0029】
上記インプットデータを用いて学習した教師あり学習モデルを用いることで、ユーザが被検者の心電図から疾患または検査異常が存在すると判断することが困難な場合であっても、高い確度で疾患または検査異常を検出することができる。例えば、二次解析では、解析区間のうち、洞調律を示す区間、期外収縮を示す区間、脚ブロックを示す区間、QRS幅変動を示す区間、心拍変動低下を示す区間、T波振幅変動を示す区間などが利用される。解析区間が洞調律を示す区間であっても、教師あり学習モデルによる解析により、心房細動や心不全、心室性不整脈などの疾患または検査異常を検出することができる。期外収縮を示す区間が解析区間に含まれる場合には、心室性不整脈や弁膜症などの疾患または検査異常を検出することができる。一方、脚ブロックを示す区間、QRS幅変動を示す区間、心拍変動低下を示す区間、T波振幅変動を示す区間が解析区間に含まれる場合には、心筋症、低ナトリウム血症、糖尿病、高カリウム血症などの疾患または検査異常を検出することができる。
【0030】
このため、二次解析において疾患または検査異常が現れる区間を用いると、疾患または検査異常を精確に検出することが困難になる。さらに、心電図データ中には、二次解析には不適切な波形を含む区間、例えば、アーチファクトなどを含む区間が存在する。このため、本発明の実施形態の一つに係る心電図解析方法では、二次解析に先立ち、一次解析で用いられた複数の区間から二次解析に不適切な区間(特定区間)を特定・除外し、残りの区間を二次解析のための候補領域として抽出する前処理が行われる。
【0031】
具体的には、一次解析において疾患または検査異常が現れた区間が心電図解析装置140によって特定区間として特定される。さらに、心電図解析装置140は、各区間に疾患や検査異常とは無関係のノイズが含まれているか否かを判断し、ノイズを含む区間を特定区間として特定するように構成されてもよい。ノイズには、静電誘導や電磁誘導、漏れ電流に起因する交流ノイズ、被検者の疾患とは無関係の筋電図、ベースラインが変動するドリフト、静電気に起因するノイズなどが挙げられる。ノイズ有無の判断方法に制約はなく、公知の方法、アルゴリズムを適用すればよい。例えば、あらかじめノイズを含む心電図とノイズを含まない心電図をインプットデータとして用いて機械学習した教師あり学習モデルを利用して被検者の心電図を構成する各区間がノイズを含むか否かを判断すればよい。特定区間であると判断された区間は複数の区間から除外され、残りの区間は、後述する支援装置110上でユーザの判断に供するための候補区間として抽出される。このため、前処理において各区間に紐付けが行われる。例えば、被検者の心電図の各区間に対し、それを特定するための識別子を時系列に従って与え、各識別子に対し、候補区間として抽出されたこと、および/または抽出されなかったこと(すなわち、特定区間として特定されたこと)を特定するためのフラグが付される。
【0032】
引き続き、二次解析に不適切な波形を含む区間が除外される。ただし、このプロセスにおいては、専門医であるユーザの知見が必要となる。このため、支援システム100では、抽出された候補区間から二次解析に不適切な区間をユーザの専門的な知見に基づいて排除する機会を提供する。具体的には、心電図解析装置140は、支援装置110から送信される命令に従い、支援装置110の表示装置の画面上に複数の候補区間を表示する。ユーザは、表示された候補区間のうち、アーチファクトなどを含む候補区間など、二次解析における疾患または検査異常の検出に当たって不適切な候補区間を選択し、これらを非解析区間として候補区間から排除する。これにより、二次解析に適切な候補区間が解析区間として選定される。
【0033】
この時の表示方法は任意に設定することができる。支援装置110の表示装置の画面上の表示例を
図4に示す。
図4に示す例では、心電図を構成する複数の区間のうち、最初の10の候補区間が時系列に従って上部領域112に示されている。この時に表示される候補区間の数(n)に制約はなく、表示装置の大きさなどによって適宜変更すればよい。あるいは、ユーザによって候補区間の表示数を設定できるようにプログラムを構成してもよい。例えば、一つの画面上に1以上20以下、典型的には10の候補区間を表示すればよい。候補区間は、一行にまとめて表示してもよく、
図4に示すように、複数行にわたって表示してもよい。好ましくは、複数行と複数列にわたって候補区間を表示することが好ましい。このように候補区間を表示することで、候補区間同士を容易に比較することができるので、より効率よく二次解析に不適切な区間を発見することができる。
【0034】
図4に示すように、各区間上または近傍には、各区間に与えられる識別子またはそれに対応する番号を表示してもよい。画面上にはさらに、これら複数の候補区間に引き続く複数の候補区間(ここでは、第11区間から第13区間)を時系列に従って下部領域114に表示してもよい。また、被検者の属性(氏名、年齢、性別、心電図取得日時、被検者の識別情報など)を示す領域116を設けてもよい。さらに、画面上に表示されない後続の候補区間または先行する候補区間を表示するための入力を受け付けるためのアイコン118などを画面上に配置してもよい。複数のページにわたって候補区間が表示される場合には、任意のページに直接移行するための入力を受け付けるための領域120をさらに設けてもよい。
図4に示す例では、第1区間から第13区間までの全ての候補区間が示されているが、上述したように、特定区間は候補区間として選択されない。このため、一つの画面上には、必ずしも全て連続した区間が表示されるとは限られず、
図5に示すように、隣接する候補区間の番号は連続しないこともある。詳細は後述するが、画面上には、疾患または検査異常の検出を心電図解析装置140に実行させるためのユーザコマンドを受け付けるためのアイコン122が設けられる。
【0035】
一つの候補区間の拡大図を
図6に示す。
図6に示すように、各候補区間上または近傍に、候補区間を拡大するユーザコマンドを受け付けるためのアイコン124や、候補区間を非解析区間として排除するユーザコマンドを受け付けるためのアイコン126を配置することができる。ユーザがアイコン124を介してユーザコマンドを入力すると、支援装置110は表示装置の画面上で候補区間を拡大する。この時の拡大方法も任意に設定することができ、例えば
図7に示すように、拡大されない他の候補区間と重なるように、拡大対象となる候補区間を一行または複数行にわたって拡大表示してもよい。あるいは、
図8に示すように、ユーザが拡大対象領域128を画面上で選択することで、その領域を拡大表示してもよい。このように各候補領域を拡大表示することにより、ユーザはより詳細に各候補区間を観察し、これらが心電図解析装置140による二次解析に適した解析区間であるか否かを判断することができる。
【0036】
ユーザは、候補区間が心電図解析装置140による二次解析に適さない区間であると判断した場合、これを非解析区間として選択し、アイコン126を利用して候補区間から除外する(
図6参照)。このアイコン126に対する入力を受け付けると、支援装置110は、プログラムの命令に従い、画面上から当該候補区間を消去するとともに、後続する候補期間を表示する。例えば、
図4に示された候補区間のうち第7区間から第9区間が排除された場合、これらの候補区間が画面上から消去され、時系列に従って後続する区間(第11区間から第13区間)が上部領域112に表示される(
図9参照)。さらに時系列に従って後続する区間(第14区間から第16区間)が下部領域114に表示される。これにより、ユーザは、ストレスを感じることなく、候補区間を短時間で観察することができる。同時に、支援装置110は、非解析区間として選択された区間の識別子を心電図解析装置140に送信する。心電図解析装置140は、非解析区間として選択された区間の識別子に対し、ユーザによって候補区間から排除されたことを表すフラグを立てる。一方、ユーザによって選択されなかった候補区間は、解析区間として残る。以上のプロセスにより、二次解析に用いられる候補区間が選定される。
【0037】
通常、非解析区間として選択される候補区間は、解析区間として残る候補区間として圧倒的に少ない。このため、画面上に表示される候補区間から解析区間を選択する操作と比較すると、候補区間から非解析区間を選択する操作がユーザに及ぼす負担は極めて小さい。したがって、ユーザに対して候補区間から非解析区間を選択させることにより、ユーザに対して大きな負担を強いることなく、迅速に解析区間を選定、収集することができる。
【0038】
なお、任意の表示方法として、支援装置110は、プログラムの命令に従って全ての区間を表示装置の画面上に表示するように構成されてもよい。この場合の表示方法も任意に設定することができ、例えば
図10に示すように、候補区間を表示するタブと異なるタブを設け、このタブに全区間を表示してもよい。この時、一次解析によって候補区間として抽出された区間と、除外された特定区間を区別するための表示を各区間上または近傍に配置してもよい。これにより、一次解析による判定結果を検証する機会をユーザに提供することができるため、ユーザは、一次解析において二次解析に適した区間が誤って除外されたか否かを判断することができる。
【0039】
さらに、任意の表示方法として、ユーザによって任意に選択される候補区間から時系列に従って複数の候補区間を画面上に表示できるように支援装置110が構成されてもよい。例えば、ユーザは、被検者の状態を考慮して先頭表示される候補区間を選択してもよい。例えば、心拍計170や加速度センサ180で取得される情報に基づいて先頭表示される候補区間を選択してもよい。具体的には、被検者の睡眠時、安静時、または運動時などに取得される候補区間の一つを先頭表示し、この候補区間から時系列に従って後続する候補区間を表示してもよい。
【0040】
(4)二次解析
引き続き、解析区間を用いて二次解析が行われる。すなわち、非解析区間の選択が終了すると、ユーザは、アイコン122を操作する。アイコン122を介したユーザコマンドを受け付けると、支援装置110は、解析区間を用いて疾患または検査異常の検出を実行するための命令を心電図解析装置140に送信する。心電図解析装置140は、この命令に従い、疾患または検査異常の検出を実行する。二次解析においても、一次解析について説明した種々の機械学習アルゴリズムを使用することができる。アウトプットデータは、各区間に対する判定結果であり、各区間がユーザが検査項目として挙げる疾患または検査異常が現れた区間であるか否かかという二つのカテゴリーである。一次解析と同様、二次解析も解析区間ごとに行ってもよく、全解析区間に対して同時に行ってもよく、あるいは、複数の解析区間(例えば、10の解析区間)ごとに行ってもよい。
【0041】
(5)解析結果の表示
二次解析の結果は、支援装置110の表示装置の画面上に表示される。この時の表示方法も任意に設定すればよく、例えば
図11に示すように、被検者の属性を示す領域130のほか、心電図の全体または一部を表示してもよい。例えば、疾患や検査異常を示唆する波形を示す区間を表示してもよい。また、心電図の測定日時、心電図の解析日時、疾患または検査異常の発症確率、程度、若しくはスコアなど、ユーザの医療行為を補助するための種々の情報を表示してもよい。また、被検者の過去の心電図解析結果をさらに表示してもよい。
【0042】
なお、上述した心電図解析では、ユーザは各種アイコンを操作してユーザコマンドを入力するが、ユーザコマンドの入力方法に制約はなく、プルダウンメニューからユーザコマンドを選択してもよく、あるいは、キーボード操作や音声によってユーザコマンドを入力してもよい。また、上述した一次解析と二次解析は同一の心電図解析装置で行ってもよく、異なる心電図解析装置で行ってもよい。
【0043】
上述したように、本支援システム100を用いる心電図解析では、心電図解析装置140によって心電図が複数の区間に分割され、一次解析後の前処理において、複数の区間の一部が二次解析に適切な候補区間として抽出される。さらに、候補区間はユーザによる検証に提供され、これにより、心電図解析装置140による種々の疾患や検査異常の検出に適切な候補区間のみを解析区間として選定することができる。したがって、心電図解析装置140によって行われる二次解析において、ノイズが少なく、疾患や検査異常の検出に適切な解析区間を用いて心電図解析を行うことができる。その結果、より精確に各種疾患やその兆候、検査異常の検出を行うことができる。
【0044】
3.プログラム
本発明の実施形態の一つは、心電図解析装置140において行われる心電図解析を支援装置110を利用して支援するためのプログラムである。また、本発明の実施形態の一つは、このプログラムが記録されたコンピュータ可読記憶媒体である。このプログラムは、支援装置110に搭載されてもよく、あるいは、支援装置110に搭載されたブラウザを利用してユーザがネットワーク上で動作させるように構成されたプログラムでもよい。
【0045】
プログラムは、上述した心電図解析のための命令を支援装置110のコンピューティングデバイスに実行させるように構成される。従って、プログラムは、被検者の心電図を心電図解析装置140にアップロードするためのユーザコマンドを受け付けるように構成される。プログラムは、このユーザコマンドを受け付けると、支援装置110またはデータベース160に格納されている心電図をネットワーク102を介して心電図解析装置140にアップロードすることをコンピューティングデバイスに実行させる。
【0046】
このプログラムはさらに、心電図の全ての区間または心電図解析装置140によって抽出された複数の候補区間を支援装置110の表示装置の画面上に表示することをコンピューティングデバイスに実行させる。プログラムは、心電図を構成する複数の区間の全てまたは候補区間を支援装置110に送信するように構成されてもよい。プログラムは、候補区間を拡大表示するユーザコマンド、候補区間を非解析区間として選択するユーザコマンド、および解析区間を用いて疾患や検査異常の検出を心電図解析装置140に実行させるためのユーザコマンドなどを支援装置110が受け付けるように構成される。プログラムは、これらのユーザコマンドを受け付けると、支援装置110のコンピューティングデバイスに対し、対応する動作、すなわち、候補区間の拡大表示、非解析区間として選択された候補区間の識別子の心電図解析装置140への送信と非解析区間として選択された候補区間の画面上からの消去、解析区間を用いて心電図を解析して疾患や検査異常を検出するための命令の心電図解析装置140への送信、などを実行するように構成される。プログラムはさらに、支援装置110のコンピューティングデバイスに対し、心電図の複数の区間の全てを画面上に表示させるためのユーザコマンドを受け付け、全ての区間を画面上に表示させるように構成されてもよい。この時、プログラムは、心電図解析装置140によって候補区間として抽出されなかった区間を特定するための表示を支援装置110のコンピューティングデバイスに実行させてもよい。
【0047】
上記コンピュータ可読記憶媒体の例としては、ハードディスク、フレキシブルディスク、および磁気テープのような磁気媒体、CD-ROM、DVDのような光媒体、フロプティカルディスク(floptical disk)のような光磁気媒体、およびROM、RAM、フラッシュメモリなどのような当該プログラムを格納する、または実行するように構成されたハードウェア装置が含まれる。プログラムの命令は、コンパイラによって生成されるもののような機械語コードだけではなく、インタプリタなどを使用してサーバによって実行される高級言語コードを含む。プログラムは、コンピュータ可読媒体から支援装置110のコンピューティングデバイスにインストールできるように構成してもよい。あるいは、プログラムは、ネットワーク102を経由してコンピューティングデバイスにダウンロード可能であってもよい。
【0048】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。また、各実施形態の表示装置を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0049】
上述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、または、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0050】
100:支援システム、102:ネットワーク、110:支援装置、112:上部領域、114:下部領域、116:領域、118:アイコン、120:領域、122:アイコン、124:アイコン、126:アイコン、128:拡大対象領域、130:領域、140:心電図解析装置、150:心電計、160:データベース、170:心拍計、180:加速度センサ
【要約】
【課題】心電図解析のための心電図解析システムを提供すること。
【解決手段】支援システムは、心電計、心電図解析装置、および支援装置を備える。心電計は、被検者の心電図を取得するように構成される。心電図解析装置は、心電図を受信し、心電図を複数の区間に分割し、複数の区間のうち特定区間以外の区間を候補区間として抽出するように構成される。支援装置は、心電図解析装置と通信接続するように構成される。支援装置は、コンピューティングデバイス、およびコンピューティングデバイスに制御される表示装置を備える。コンピューティングデバイスの機能は、明細書において詳述される。
【選択図】
図2