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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】アブレーションユニットおよび分析機
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/73 20060101AFI20240524BHJP
   G01N 21/71 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G01N21/73
G01N21/71
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2024519785
(86)(22)【出願日】2023-09-04
(86)【国際出願番号】 JP2023032289
【審査請求日】2024-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591072411
【氏名又は名称】西進商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】為則 通洋
(72)【発明者】
【氏名】中島 豊治
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-179608(JP,A)
【文献】特許第7205006(JP,B1)
【文献】特開2012-96286(JP,A)
【文献】特開2005-186078(JP,A)
【文献】特開2021-118284(JP,A)
【文献】特開2014-65041(JP,A)
【文献】特開平11-201945(JP,A)
【文献】特開2007-206009(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167982(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-G01N 21/956
G01N 27/60-G01N 27/70
G01N 1/00-G01N 1/44
G01N 23/00-G01N 23/2276
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被対象物の表面にレーザ光を照射してアブレーションをするユニットであって、
レーザ光を出射するレーザ装置と、
上記レーザ光を任意の位置に反射する光反射装置と、
透過する上記レーザ光を被対象物の表面で集光させるfθレンズおよび対物レンズと、
上記fθレンズおよび上記対物レンズのいずれか一方または両方を上記レーザ光が透過するように切り替える切替手段と
を備えるアブレーションユニット。
【請求項2】
複数の上記対物レンズを有する請求項1に記載のアブレーションユニット。
【請求項3】
上記対物レンズによる上記レーザ光の集光径が2μm以下である請求項1または請求項2に記載のアブレーションユニット。
【請求項4】
被対象物を撮像するカメラ、およびこのカメラの画像を表示するモニタを含む画像処理装置をさらに備え、
被対象物に入射する上記レーザ光の軸線上に上記カメラが配置されている請求項1または請求項2に記載のアブレーションユニット。
【請求項5】
被対象物が収容されるセルと、
上記セルが配置されるステージと
をさらに備え、
上記ステージが、被対象物に入射する上記レーザ光の軸線方向と、この軸線方向に直交し、かつ互いに直交する二方向とに上記セルを移動可能な請求項1または請求項2に記載のアブレーションユニット。
【請求項6】
上記セルが磁力で上記ステージに固定されている請求項5に記載のアブレーションユニット。
【請求項7】
上記レーザ装置がフェムト秒パルスレーザ発振器を有し、繰り返し周波数を1kHz以上に設定可能な請求項1に記載のアブレーションユニット。
【請求項8】
上記レーザ光のパルス間隔を600フェムト以下に設定可能な請求項7に記載のアブレーションユニット。
【請求項9】
上記レーザ光の波長が深紫外である請求項7または請求項8に記載のアブレーションユニット。
【請求項10】
上記光反射装置がガルバノミラー装置であり、
このガルバノミラー装置が、上記繰り返し周波数に対応して反射角度を変更する請求項7または請求項8に記載のアブレーションユニット。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載のアブレーションユニットと、
元素分析を行う分析ユニットと
を備える分析機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アブレーションユニットおよび分析機に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を被対象物に照射し、この被対象物の含有元素を分析する分析機が知られている。このような分析機としては、レーザ光源から出射されたレーザ光、およびこのレーザ光を被対象物に向けて反射する光学系を含むアブレーションユニットと、誘導結合プラズマ方式で分析を行う分析計とを備えた分析機が知られている(国際公開第2019/202689号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2019/202689号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の分析機は、アブレーションユニットが2つのミラーでレーザ光を反射して照射位置を二次元的に移動させることができるため、被対象物の分析可能な位置を広くすることができるとされている。一方で、被対象物の狭い領域を詳密に分析することも求められている。
【0005】
上述のような事情を鑑み、本開示は、被対象物の表面における比較的広い領域の効率的なアブレーションと、比較的狭い領域の細密なアブレーションとを行うことができるアブレーションユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一態様に係るアブレーションユニットは、被対象物の表面にレーザ光を照射してアブレーションをするユニットであって、レーザ光を出射するレーザ装置と、上記レーザ光を任意の位置に反射する光反射装置と、透過する上記レーザ光を被対象物の表面で集光させるfθレンズおよび対物レンズと、上記fθレンズおよび上記対物レンズのいずれか一方または両方を上記レーザ光が透過するように切り替える切替手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様に係るアブレーションユニットは被対象物の表面における比較的広い領域の効率的なアブレーションと、比較的狭い領域の細密なアブレーションとを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る分析機のアブレーションユニットのレーザ光が対物レンズを透過する状態を示す模式的側面図である。
図2図2は、図1のアブレーションユニットのレーザ光がfθレンズを透過する状態を示す模式的側面図である。
図3図3は、図2とは異なる態様で、図1のアブレーションユニットのレーザ光がfθレンズを透過する状態を示す模式的側面図である。
図4図4は、図1とは別の実施形態に係るアブレーションユニットのレーザ光が対物レンズを透過する状態を示す模式的側面図である。
図5図5は、図4のアブレーションユニットのレーザ光がfθレンズを透過する状態を示す模式的側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
(1)本開示の一態様に係るアブレーションユニットは、被対象物の表面にレーザ光を照射してアブレーションをするユニットであって、レーザ光を出射するレーザ装置と、上記レーザ光を任意の位置に反射する光反射装置と、透過する上記レーザ光を被対象物の表面で集光させるfθレンズおよび対物レンズと、上記fθレンズおよび上記対物レンズのいずれか一方または両方を上記レーザ光が透過するように切り替える切替手段とを備える。
【0011】
当該アブレーションユニットは、fθレンズおよび対物レンズの2種のレンズと、上記fθレンズおよび上記対物レンズのいずれか一方または両方にレーザ光を透過させる切替手段とを備える。当該アブレーションユニットは、上記レーザ光を上記fθレンズに透過させることで被対象物の表面の比較的広い領域に対して効率的なアブレーションをすることができ、上記レーザ光を上記対物レンズに透過させることで、被対象物の表面の比較的狭い領域に対して細密なアブレーションをすることができる。
【0012】
(2)上記(1)において、当該アブレーションユニットが複数の上記対物レンズを有してもよい。複数の対物レンズを有することで、選択的に変更できる上記レーザ光の集光径を増大することができる。
【0013】
(3)上記(1)または上記(2)において、上記対物レンズによる上記レーザ光の集光径が2μm以下であってもよい。このようにすることで、より細密なアブレーションをすることができる。
【0014】
(4)上記(1)から上記(3)のいずれかにおいて、当該アブレーションユニットが、被対象物を撮像するカメラ、およびこのカメラの画像を表示するモニタを含む画像処理装置をさらに備え、被対象物に入射する上記レーザ光の軸線上に上記カメラが配置されていてもよい。当該アブレーションユニットが上記画像処理装置を備えることで、アブレーションをされている被対象物の状況を観察することができる。上記画像処理装置のカメラが被対象物に入射する上記レーザ光の軸線上に配置されることで、被対象物の観察の正確性を向上できる。
【0015】
(5)上記(1)から上記(4)のいずれかにおいて、当該アブレーションユニットが、被対象物が収容されるセルと、上記セルが配置されるステージとをさらに備え、上記ステージが、被対象物に入射する上記レーザ光の軸線方向と、この軸線方向に直交し、かつ互いに直交する二方向とに移動可能であってもよい。当該アブレーションユニットが、被対象物が収容されるセルと、このセルが配置され、3軸に移動可能なステージとを備えることで、被対象物にレーザ光が集光する位置および深さを容易に調整できる。
【0016】
(6)上記(5)において、上記セルが磁力で上記ステージに固定されていてもよい。このようにすることで、上記ステージに上記セルを容易に配置することができる。
【0017】
(7)上記(1)から上記(6)のいずれかにおいて、上記レーザ装置がフェムト秒パルスレーザ発振器を有し、繰り返し周波数を1kHz以上に設定可能であってもよい。繰り返し周波数を1kHz以上にして上記レーザ光を被対象物に照射することで、効率的なアブレーションをすることができる。
【0018】
(8)上記(7)において、上記レーザ装置のパルス間隔を600フェムト以下に設定可能であってもよい。パルス間隔を600フェムト以下にして上記レーザ光を被対象物に照射することで、アブレーションによるエアロゾルを微細化することができる。
【0019】
(9)上記(7)または上記(8)において、上記レーザ光の波長が深紫外であってもよい。上記レーザ光の波長を深紫外にすることで、アブレーションによるエアロゾルをより微細化することができる。
【0020】
(10)上記(7)から上記(9)のいずれかにおいて、上記光反射装置がガルバノミラー装置であり、このガルバノミラー装置が、上記繰り返し周波数に対応して反射角度を変更してもよい。上記光反射装置が上記繰り返し周波数に対応して反射角度を変更できるガルバノミラー装置であることで、より効率的なアブレーションをすることができる。
【0021】
(11)本開示の一態様に係る分析機は、上記(1)から上記(10)のいずれかのアブレーションユニットと、元素分析を行う分析ユニットとを備える。
【0022】
当該分析機は、当該アブレーションユニットを備えるため、被対象物の元素の効率的な分析と、高精度な分析とをすることができる。
【0023】
[発明を実施するための形態の詳細]
以下、図面を参照しつつ、本開示の実施の形態を詳説する。なお、図面は実施の形態を例示的に示す図であって、各構成(部材)の形状、大きさ、縮尺、配置などは実際のものと異なることがある。
【0024】
<第一実施形態>
図1図2および図3で示すように、当該分析機10は、当該アブレーションユニット100と、元素分析を行う分析ユニット200とを備え、被対象物(不図示)の化学組成を分析する。
【0025】
〔分析ユニット〕
分析ユニット200としては、特に限定されるものではなく、例えば、誘導結合プラズマ質量分析法、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法などの公知の分析方法を行う装置であってもよい。
【0026】
〔アブレーションユニット〕
当該アブレーションユニット100は、セル170に収容されている被対象物の表面にレーザ光L(各図では一点鎖線で示されている)を照射してアブレーションをすることで、被対象物を部分的にエアロゾル化する。具体的には、レーザ光Lが照射されることにより被対象物の表面が気化し、その一部がイオン化される。さらにレーザ光Lは、上記表面から数nm乃至数μmの深さで被対象物の内部に進入し、そのエネルギの大部分を放出して被対象物の構成成分の気化と破砕とを行う。このアブレーションによって、イオン化および気化した元素、これらの一部が再凝縮した固体粒子、破砕された破片がエアロゾルとして被対象物から放出される。上記エアロゾルは、セル170内に供給されるヘリウムなどのキャリアガスでガス排出管P2を介して分析ユニット200に搬送され、被対象物の化学組成が分析される。
【0027】
当該アブレーションユニット100は、レーザ光Lを出射するレーザ装置110と、レーザ光Lを任意の位置に反射する光反射装置と、透過するレーザ光Lを被対象物の表面で集光させるfθレンズ130および対物レンズと、fθレンズ130および上記対物レンズのいずれか一方または両方をレーザ光Lが透過するように切り替える切替手段とを備える。
【0028】
当該アブレーションユニット100は、複数の上記対物レンズを有することが好ましい。本実施形態のアブレーションユニット100は、3つの対物レンズ141,142,143を有する。具体的には、アブレーションユニット100は、それぞれレンズ倍率の異なる第1対物レンズ141、第2対物レンズ142および第3対物レンズ143を有する(以下、これら3つの対物レンズ141,142,143を単に「対物レンズ140」ともいう)。このようにすることで、レーザ光Lの異なる集光径の選択肢を増大することができる。
【0029】
(レーザ装置)
レーザ装置110は、被対象物の表面(以下、「対象面」ともいう)を照射するレーザ光Lを出射する。レーザ装置110は、固体レーザ、半導体レーザ、ガスレーザなどの公知のレーザ発振器(不図示)を含む。レーザ光Lの波長領域は任意に設定可能であることが好ましい。波長領域を深紫外にしてレーザ光Lを照射することが好ましい。すなわち、レーザ装置110は、レーザ光Lの波長領域を深紫外に設定可能であることが好ましい。具体的には、レーザ光Lの波長が280nm以下に設定可能であることが好ましく、270nm以下に設定可能であることがより好ましく、260nm以下に設定可能であることがさらに好ましい。設定可能な上記波長の下限値としては、特に限定されるものではなく、例えば100nmであってもよい。このような波長のレーザ光Lを対象面に照射することにより、アブレーションによるエアロゾルの微細化を促進することができる。
【0030】
レーザ装置110から出射されるレーザ光Lは、連続波であってもよいが、パルス波であることが好ましい。レーザ装置110から出射されるレーザ光Lにおけるパルス波のパルス幅は、任意に設定できることが好ましい。上記パルス幅は、600フェムト秒以下に設定可能であることが好ましく、300フェムト秒以下に設定可能であることがより好ましい。このようなパルス幅のレーザ光Lを被対象物に照射することにより、アブレーションによるエアロゾル化の微細化をより促進することができる。
【0031】
レーザ光Lの波長およびパルス幅を上記範囲とすることで、対象面におけるレーザ光Lのエネルギ(レーザエネルギ)の吸収効率が向上し、レーザ光Lが被対象物の表面(表層)に進入する深さが低減される。すなわち、小さな体積に上記レーザエネルギを吸収させることができる。
【0032】
被対象物が固体試料であり、この固体試料の分析(例えば、含有元素の分析)をする場合において、深紫外の波長領域かつ600フェムト秒以下の短パルスでレーザ光Lを上記固体試料に照射すると、上記固体試料の表面におけるレーザエネルギの吸収効率が向上し、アブレーション痕の深さを浅くすることができる。具体的には、アブレーション痕の深さをナノメートルの単位で制御することができる。アブレーション痕の深さを浅くすることで、上記固体試料の深さ方向の分析を精度よく行うことができる。すなわち、固体試料の緻密なデプスプロファイルを得ることができる。なお、アブレーション痕(スポット、クレータなどともいわれる)とは、レーザ光によるアブレーションによって固体試料に形成される溝(穴)を意味する。
【0033】
また、レーザエネルギが上記固体試料の表面で効率的に吸収されることにより、上記表面で破砕される破片の微細化が促進されてエアロゾル化が向上し、ひいては分析機200による分析精度を向上することができる。具体的には、上記表面で破砕される破片の平均粒径を400nm以下にすることができ、あるいは、300nm以下、200nm以下にすることができる。このため、分析機200におけるプラズマによる上記破片のイオン化を促進することができ、分析精度を向上することができる。なお、平均粒径とは、レーザ回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0034】
レーザ光Lのパルス波の繰り返し周波数は、任意に設定可能であることが好ましい。上記繰り返し周波数は、1kHz以上に設定可能であることが好ましく、10kHz以上に設定できることがより好ましく、100kHz以上に設定できることがさらに好ましい。このような繰り返し周波数のレーザ光Lを被対象物に照射することにより、アブレーションの高速化を図ることができる。
【0035】
(光反射装置)
光反射装置は、レーザ光Lが対象面の任意の位置を照射するようにレーザ光Lを反射する。すなわち、上記光反射装置は、対象面におけるレーザ光Lの照射位置を制御する。上記光反射装置としては、特に限定されるものではないが、ガルバノミラー装置を用いることが好ましい。本実施形態のアブレーションユニット100は、対物レンズ140を透過するレーザ光Lの照射位置を制御する第1ガルバノミラー装置121と、fθレンズ130を透過するレーザ光Lの照射位置を制御する第2ガルバノミラー装置122とを有する。このようなガルバノミラー装置121,122を用いることで、fθレンズ130および対物レンズ140を透過するレーザ光Lが対象面上で任意の位置に移動することができ、対象面の所望する位置または領域のアブレーションを容易に行うことができる。
【0036】
第1ガルバノミラー装置121は、第1反射鏡121aと、第2反射鏡121bとを有する。第1ガルバノミラー装置121は、2つの反射鏡121a,121bそれぞれを回転駆動して反射角を変更する駆動部(不図示)と、この駆動部を制御する制御部(不図示)とを備える。第1反射鏡121aは、レーザ光Lを反射して上記照射位置を一方向(X方向)に移動させる。第2反射鏡121bは、第1反射鏡121aが反射したレーザ光Lを反射し、上記照射位置を上記一方向に直交する方向(Y方向)に移動させる。
【0037】
第2ガルバノミラー装置122は、第1ガルバノミラー装置121と同様に、fθレンズ130を透過するレーザ光Lの照射位置を上記X方向に移動させる第3反射鏡122aと、この第3反射鏡122aに反射されたレーザ光Lの照射位置を上記Y方向に移動させる第4反射鏡122bとを有する。
【0038】
ガルバノミラー装置121,122は、レーザ光Lの繰り返し周波数に対応するように反射角を変更できることが好ましい。すなわち、第1反射鏡121aおよび第2反射鏡121bと、第3反射鏡122aおよび第4反射鏡122bとは、レーザ光Lの繰り返し周波数と同期して反射角を可変できることが好ましい。このようにすることで、効率的なアブレーションをすることができる。例えば、対象面を走査するアブレーションの高速化を図ることができ、あるいは、被対象物の複数の領域またはセル170内に収容されている複数の被対象物を同時進行的に、かつ任意の時間割合によるアブレーションを行うことの高速化および効率化を図ることができる。
【0039】
本実施形態のアブレーションユニット100は、第1ガルバノミラー装置121で反射されたレーザ光Lを反射する対物レンズ用反射鏡151と、第2ガルバノミラー装置122で反射されたレーザ光Lを反射するfθレンズ用反射鏡152とを有する。対物レンズ用反射鏡151は、対物レンズ140に向けてレーザ光Lを反射する。fθレンズ用反射鏡152は、fθレンズ130に向けてレーザ光Lを反射する。
【0040】
対物レンズ用反射鏡151は、ダイクロックミラーであることが好ましい。ダイクロックミラーは、第1ガルバノミラー装置121が反射したレーザ光Lを対物レンズ140に向けて反射し、その他の光を透過する。対物レンズ用反射鏡151をダイクロックミラーとすることで、後述するように、セル170と対向するように第1カメラ191を容易に配置することができる。
【0041】
〔切替手段〕
本実施形態のアブレーションユニット100は、第1ガルバノミラー装置121に向けてレーザ光Lを反射する第1レーザ反射鏡161と、第2ガルバノミラー装置122に向けてレーザ光Lを反射する第2レーザ反射鏡162と、レーザ装置110から出射されたレーザ光Lを第2レーザ反射鏡162に向けて反射する第3レーザ反射鏡163とを有する。
【0042】
第2レーザ反射鏡162は、第3レーザ反射鏡163が反射したレーザ光Lの光軸上に配置される。第1レーザ反射鏡161は、第3レーザ反射鏡163が反射したレーザ光Lの光軸上と上記光軸の外との間で移動するように構成されている。すなわち、第1レーザ反射鏡161は、第3レーザ反射鏡163が反射したレーザ光Lを反射する位置と反射しない位置とで移動する。第1レーザ反射鏡161が、第3レーザ反射鏡163が反射したレーザ光Lを第1ガルバノミラー装置に向けて反射する位置に移動すると、レーザ光Lは対物レンズ140を透過する。第1レーザ反射鏡161が、第3レーザ反射鏡163が反射したレーザ光Lを反射しない位置に移動すると、レーザ光Lは第2レーザ反射鏡162に反射されてfθレンズ130を透過する。すなわち、第1レーザ反射鏡161は、レーザ光Lの光路の切替手段として構成されている。当該アブレーションユニット101は、第1レーザ反射鏡161の移動による光路の切り替えによって、fθレンズ130を透過したレーザ光Lによる被対象物のアブレーションと、対物レンズ140を透過したレーザ光Lによる被対象物のアブレーションとを選択的に行うことができる。
【0043】
第1レーザ反射鏡161が、第3レーザ反射鏡163が反射したレーザ光Lを反射する位置と反射しない位置とで移動する手段としては、特に限定されるものではなく、例えば図2で示すように第1レーザ反射鏡161がX方向に移動するように構成してもよいし、図3で示すように第1レーザ反射鏡161を回転させることで第3レーザ反射鏡163が反射したレーザ光Lの光軸から外れるように構成してもよい。
【0044】
〔レンズ〕
fθレンズ130および対物レンズ140は、レーザ光Lの集光径を調整する。本実施形態のレーザアブレーションユニット100は、fθレンズ130と対物レンズ140とをX方向で並列的に配置している。fθレンズ130は被対象物の表面上におけるレーザ光Lを比較的大きな集光径で集光し、対物レンズ140はfθレンズ130よりも小さな集光径で集光する。fθレンズ130および対物レンズ140の上流にはビーム径を拡張するビームエキスパンダレンズ(不図示)が配置されてもよい。
【0045】
3つの対物レンズ141,142,143は、X方向で並列的にレンズホルダ144に保持されている。レンズホルダ144は、例えば公知の1軸ステージなどの対物レンズ移動手段(不図示)に搭載され、X方向に移動することができる。レンズホルダ144が移動することで、当該アブレーションユニット100は3つの対物レンズ141,142,143を任意に選択して対象面におけるレーザ光Lの集光径を可変できる。
【0046】
対物レンズ140によるレーザ光Lの集光径は2μm以下であることが好ましい。すなわち、3つの対物レンズ141,142,143のいずれかが、対象面におけるレーザ光Lの集光径を2μm以下にすることができる倍率であることが好ましい。上記倍率による集光径としては、1.5μm以下であることがより好ましく、1.0μm以下であることがさらに好ましく、0.5μm以下であることが特に好ましい。このような集光径で対象面にレーザ光Lを照射することにより、緻密なアブレーションをすることができる。
【0047】
具体的には、例えば、第1対物レンズ141では上記集光径が0.5μm、第2対物レンズ142では上記集光径が3.0μm、第3対物レンズ143では上記集光径が5.0μmとなるようにレンズ倍率が選定されることが好ましい。3つの対物レンズ141,142,143それぞれのレンズ倍率としては、例えば、60倍、40倍、20倍であってもよいし、50倍、20倍、10倍であってもよい。fθレンズ130による上記集光径としては、例えば10μmであってもよい。
【0048】
〔セル〕
被対象物は、セル170に収容されてアブレーションをされる。セル170は、被対象物を収容し、アブレーションによって生成されるエアロゾルの飛散を防止する容器である。セル170の天面にはレーザ光Lが入射する透明板(不図示)が配置されている。すなわち、セル170は、レーザ光Lの入射面に透明板で形成されている光入射部を有する。
【0049】
セル170は、上記エアロゾルを分析ユニット200に搬送するキャリアガスが供給されるガス供給口171と、エアロゾルを含んだ上記キャリアガスを排出するガス排出口172とを有する。ガス供給口171にはガス供給管P1が接続され、ガス排出口172にはガス排出管P2が接続されている。
【0050】
〔ステージ〕
セル170は、ステージ180に配置される。具体的には、被対象物を収容したセル170は、ステージ180に対して相対的に移動しないように、ステージ180の載置面(天面)に配置される。
【0051】
セル170がステージ180に対して相対的に移動しないようにする手段としては、特に限定されるものでなく、ボルト、ピンなどで固定されてもよいが、磁力で固定されることが好ましい。具体的には、ステージ180に磁石(不図示)を配置し、金属などの磁性材料で形成されたセル170が上記磁石の磁力で固定されることが好ましい。ステージ180に配置されるのは、通電されることで磁力を発生するコイル(不図示)などであってもよい。上記磁石または上記コイルは、セル170に配置されてもよいし、ステージ180とセル170とに配置されてもよい。ステージ180の上記載置面には、セル170を配置する位置を決定するためのガイド部(不図示)が設けられていることが好ましい。
【0052】
ステージ180は、被対象物に入射するレーザ光Lの軸線方向(Z方向)と、この軸線方向に直交し、かつ互いに直交する二方向(X方向およびY方向)とにセル170を移動可能であることが好ましい。すなわち、ステージ180の上記載置面が、X-Y-Z方向に移動できることが好ましい。このようにすることで、被対象物におけるレーザ光LのX方向、Y方向およびZ方向の照射位置を容易に調整することができる。
【0053】
ステージ180の上記載置面におけるZ方向の移動手段(調整手段)としては、特に限定されるものでないが、ピエゾ素子駆動によって調整可能に構成されていることが好ましい。上記Z方向の移動における最小移動距離(分解能)の上限値としては、5nmであることが好ましく、2nmであることがより好ましく、1nmであることがさらに好ましい。上記最小移動距離の下限値としては、特に限定されるものでなく、例えば0.1nmであってもよい。上記最小移動距離を上記範囲とすることにより、レーザ光LのZ方向における集光の位置を効率よく決定することができる。すなわち、fθレンズ130および対物レンズ140の焦点、レーザ光Lが被対象物に進入する深さ(アブレーション痕の深さ)などを高精度に調整することができ、その結果、効率的なエアロゾル化、および分析ユニット200による分析精度の向上を図ることができる。ステージ180は、X-Y面の角度を変更可能なゴニオステージであってもよい。
【0054】
ステージ180は、対物レンズ140によって被対象物のアブレーションがされる第1の位置と、fθレンズ130によって被対象物のアブレーションがされる第2の位置との間で移動することができる。すなわち、当該アブレーションユニット100は、上記第1の位置と上記第2の位置とでステージ180を移動させるステージ移動手段(不図示)を有する。上記ステージ移動手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の1軸ステージ上にステージ180を配置してもよい。
【0055】
上記切替手段と上記ステージ移動手段とは、互いに同期して作動するように構成されている。すなわち、第1レーザ反射鏡161がレーザ光Lを第1ガルバノミラー装置に向けて反射する位置に移動すると、ステージ180は上記ステージ移動手段によって上記第1の位置(対物レンズ用反射鏡151に反射されたレーザ光Lの光軸上)に移動する。第1レーザ反射鏡161がレーザ光Lを第1ガルバノミラー装置に向けて反射しない位置に移動すると、ステージ180は上記ステージ移動手段によって上記第2の位置(fθレンズ用反射鏡152に反射されたレーザ光Lの光軸上)に移動する。
【0056】
〔画像処理装置〕
当該アブレーションユニット100は、被対象物を撮像するカメラ、およびこのカメラの画像を表示するモニタを含む画像処理装置を備えることが好ましい。本実施形態のアブレーションユニット100は、対物レンズ140によってアブレーションがされる被対象物を撮像する第1カメラ191と、fθレンズ130によってアブレーションがされる被対象物を撮像する第2カメラ192と、これらのカメラ191,192が撮像する画像を表示するモニタ(不図示)とを含む画像処理装置を有する。上記モニタとしては、特に限定されるものでなく、例えば液晶ディスプレイなどが挙げられる。
【0057】
第1カメラ191は、被対象物に入射するレーザ光Lの軸線方向で、対物レンズ140を挟んでセル170と対向するように配置されることが好ましい。本実施形態の第1カメラ191は、対物レンズ用反射鏡151の上方(レーザ光Lが反射される反対側)で、対物レンズ140を透過するレーザ光Lの光軸の延長線上に配置されている。このようにすることで、対物レンズ140を透過するレーザ光Lによってアブレーションをされている被対象物観察の正確性を向上することができる。
【0058】
第2カメラ192は、fθレンズ130を透過するレーザ光Lの光軸に対して角度を有するように配置されてもよい。すなわち、第2カメラ192は、セル170に収容されている被対象物を斜め上方から撮像するように配置されてもよい。
【0059】
<第二実施形態>
以下、本発明の別の一実施形態であるアブレーションユニット101について図4および図5を参照しつつ説明する。なお、上述したアブレーションユニット100と同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0060】
当該アブレーションユニット101は、レーザ光Lを出射するレーザ装置110と、レーザ光Lを任意の位置に反射する光反射装置と、透過するレーザ光Lを被対象物の表面で集光させるfθレンズ131および対物レンズ145と、fθレンズ131および対物レンズ145のいずれか一方または両方をレーザ光Lが透過するように切り替える切替手段とを備える。
【0061】
当該アブレーションユニット101は、光反射装置として、1つのガルバノミラー装置123を有する。すなわち、当該アブレーションユニット101のレーザ光Lの光路は1つである。このため、当該アブレーションユニット101は、光路を切り替える第1レーザ反射鏡161と、ステージ180をX方向に移動させる上記ステージ移動手段とを有していない。ガルバノミラー装置123が反射したレーザ光Lは、レンズ用反射鏡153に反射されてfθレンズ131および対物レンズ145に導入される。
【0062】
本実施形態のレーザアブレーションユニット101は、fθレンズ131と対物レンズ145とをZ方向で縦列的に配置している。対物レンズ145は、レンズホルダ144に保持されている3つの対物レンズ141,142,143を含む。
【0063】
〔切替手段〕
当該アブレーションユニット101は、fθレンズ131と対物レンズ145とをX方向に移動させるレンズ移動手段(不図示)を有する。上記レンズ移動手段は、fθレンズ131を移動させる第1レンズ移動器(不図示)と、対物レンズ145を移動させる第2レンズ移動器(不図示)とを含む。上記第1レンズ移動器は、fθレンズ131をガルバノミラー装置123が反射したレーザ光Lが透過する位置と透過しない位置とに移動する。上記第2レンズ移動器は、対物レンズ145をガルバノミラー装置123が反射したレーザ光Lが透過する位置と透過しない位置とに移動する。上記レンズ移動手段としては、特に限定されるものではなく、例えば、fθレンズ131および対物レンズ145それぞれを配置できる公知の1軸ステージであってもよい。
【0064】
上記レンズ移動手段は、fθレンズ131をレーザ光Lが透過する位置に移動させると、対物レンズ145をレーザ光Lが透過しない位置に移動させる。また、上記レンズ移動手段は、fθレンズ131をレーザ光Lが透過しない位置に移動させると、対物レンズ145をレーザ光Lが透過する位置に移動させる。すなわち、上記レンズ移動手段は、fθレンズ131と対物レンズ145との配置を切り替える切替手段として構成されている。当該アブレーションユニット101は、上記レンズ移動手段によるfθレンズ131と対物レンズ145との配置の切り替えによって、fθレンズ131を透過したレーザ光Lによる被対象物のアブレーションと、対物レンズ145を透過したレーザ光Lによる被対象物のアブレーションとを選択的に行うことができる。
【0065】
<アブレーション方法>
当該アブレーションユニット100,101によるアブレーション方法は、被対象物を収容したセル170をステージ180に配置する工程と、ステージ180に配置され、カメラ191,192で撮像している被対象物をモニタに表示する工程と、レーザ光Lのfθレンズ130,131の透過および対物レンズ140,145の透過のいずれかを選択する工程と、被対象物のレーザ光Lを照射する位置または領域を決定する工程と、決定した上記位置または上記領域にレーザ光Lを照射する工程と、アブレーションによって生成されたエアロゾルを分析ユニット200に搬送する工程と主にを備える。被対象物としては、特に限定されるものではなく、固体物であってもよく、液体物であってもよい。本アブレーション方法では、被対象物を固体物として説明する。
【0066】
〔配置する工程〕
配置する工程では、被対象物を収容したセル170をステージ180に配置する。セル170は、ステージ180に対して相対的に移動しないように固定されることが好ましい。ステージ180に配置されたセル170には、ガス供給管P1とガス排出管P2とが接続され、キャリアガスの供給および排出の準備がされる。
【0067】
〔表示する工程〕
表示する工程では、ステージ180に配置され、カメラ191,192で撮像している被対象物をモニタに表示する。作業者は、被対象物が表示されるモニタで、レーザ光Lが照射される前後の被対象物の状態、および被対象物がアブレーションをされている状況を観察することができる。
【0068】
〔選択する工程〕
選択する工程では、レーザ光Lのfθレンズ130,131の透過および対物レンズ140,145の透過のいずれかを選択する。レーザ光Lのfθレンズ130,131または対物レンズ140,145の透過は、上記切替手段によって切り替えられる。比較的広い領域、被対象物の複数の領域、あるいは複数の被対象物のアブレーションをする場合は、fθレンズ130,131を選択することで効率的なアブレーションをすることができる。比較的狭い領域のアブレーション、被対象物の深さ方向の分析または高精度な分析を行うには、対物レンズ140,145を選択することが好ましい。
【0069】
〔決定する工程〕
決定する工程では、被対象物にレーザ光Lを照射する位置または領域を決定する。すなわち、被対象物の分析をする位置または領域を決定する。上記位置または上記領域は、被対象物を表示しているモニタで決定するとよい。具体的には、上記モニタとして、例えば公知のタッチパネルを用いて、このタッチパネルに表示されている被対象物に対してレーザ光Lを照射する位置をタッチペンなどで指定して決定し、または表示されている被対象物をタッチペンなどでなぞることで連続した位置(線状領域)または閉じた領域(面状領域)を決定し、この決定された位置または領域にレーザ光Lが照射されるとよい。ガルバノミラー装置121,122,123の上記制御部は、上記タッチパネルで決定された位置または領域を受信して座標情報に変換し、この座標情報に基づいて上記駆動部を制御するように構成されているとよい。
【0070】
〔照射する工程〕
照射する工程では、決定した上記位置または上記領域にレーザ光Lを照射する。照射する工程は、決定した上記位置または上記領域における縁部の外周にレーザ光Lを照射する第一照射手段と、上記第一照射手段の後に上記位置または上記領域にレーザ光Lを照射する第二照射手段とを含むことが好ましい。すなわち、上記位置または上記領域にレーザ光Lを照射して分析を開始する前に、その縁部の外周にレーザ光Lを照射して一定の幅および深さで部分的に除去することが好ましい。このようにすることで、上記位置または上記領域(分析領域)の縁部にレーザ光Lを照射した際に分析をしない領域(非分析領域)のアブレーションを抑制できる。すなわち、分析領域をエアロゾル化するのと同時に非分析領域がエアロゾル化されることを抑制できる。このため、分析領域で生成されるエアロゾルの純度を向上することができ、分析領域の分析精度を向上することができる。
【0071】
上記第二照射手段で形成されるアブレーション痕の深さは、上記第一照射手段で形成されたアブレーション痕の深さより浅くなるようにレーザ光Lを照射することが好ましい。このようにすることで、上記分析領域のアブレーションをする際に、同時に上記非分析領域のアブレーションがされることをより抑制できる。
【0072】
上記照射する工程におけるレーザ光Lの出力、波長、集光径、パルス幅などの条件は、被対象物の物性、分析方法、分析目的などによって適宜設定されるとよい。レーザ光Lを、集光径2μm以下、深紫外の波長領域、パルス幅600フェムト秒以下、繰り返し周波数1kHz以上に設定することで分析ユニット200による分析精度を向上できる。
【0073】
〔搬送する工程〕
搬送する工程では、上記照射する工程のアブレーションによって生成されたエアロゾルを分析ユニット200に搬送する。具体的には、セル170内に供給されたキャリアガスがエアロゾルと共に排出され、ガス排出管P2を通って分析ユニット200に搬送される。分析ユニット200は、誘導結合プラズマ質量分析法、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法などの公知の分析方法で被対象物の分析を行う。
【0074】
<利点>
当該アブレーションユニット100,101は、上記切替手段によって、レーザ光Lのfθレンズ130,131の透過と対物レンズ140,145の透過とを切り替えることができる。当該アブレーションユニット100,101は、fθレンズ130,131にレーザ光Lを透過させることで被対象物の効率的なアブレーションをすることができ、対物レンズ140,145にレーザ光Lを透過させることで被対象物の緻密なアブレーションをすることができる。
【0075】
[その他の実施形態]
上記実施形態は、本発明の構成を限定するものではない。従って、上記実施形態は、本明細書の記載および技術常識に基づいて上記実施形態各部の構成要素の省略、置換または追加が可能であり、それらは全て本発明の範囲に属するものと解釈されるべきである。
【0076】
当該アブレーションユニットは、分析機に用いられることに限定されるものではない。当該アブレーションユニットは、例えば、レーザ光で被対象物を加工するレーザ加工機などに用いられてもよい。
【0077】
上述の第一実施形態におけるアブレーションユニットは、対物レンズの上流に他のfθレンズ(第2fθレンズ)を備えていてもよい。すなわち、レーザ光が第2fθレンズを透過した後、対物レンズを透過して被対象物のアブレーションをするように構成されてもよい。
【0078】
上述の第二実施形態におけるアブレーションユニットは、レーザ光がfθレンズまたは対物レンズを透過する構成で説明したが、レーザ光がfθレンズと対物レンズとを透過してもよい。すなわち、fθレンズを透過したレーザ光によるアブレーションと、対物レンズを透過したレーザ光によるアブレーションと、fθレンズおよび対物レンズを透過したレーザ光によるアブレーションとを選択可能なアブレーションユニットであってもよい。
【0079】
当該アブレーションユニットが有する対物レンズの数は1つであってもよい。
【0080】
当該アブレーションユニットは、被対象物のアブレーションを阻害しない範囲で、結像レンズなどのその他の光学レンズ、ハーフミラーなどのその他の光学鏡、被対象物を照明する照明装置などを備えてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示の一態様に係るアブレーションユニットは、レーザを用いて被対象物の含有元素などを分析する分析機などに用いることで、効率的な分析と、高精度な分析とを行うことができる。
【符号の説明】
【0082】
10 分析機
100,101 アブレーションユニット
110 レーザ装置
121,122,123 ガルバノミラー装置
121a 第1反射鏡
121b 第2反射鏡
122a 第3反射鏡
122b 第4反射鏡
130,131 fθレンズ
140,145 対物レンズ
141 第1対物レンズ
142 第2対物レンズ
143 第3対物レンズ
144 レンズホルダ
151 対物レンズ用反射鏡
152 fθレンズ用反射鏡
153 レンズ用反射鏡
161 第1レーザ反射鏡
162 第2レーザ反射鏡
163 第3レーザ反射鏡
170 セル
171 ガス供給口
172 ガス排出口
180 ステージ
191 第1カメラ
192 第2カメラ
200 分析ユニット
L レーザ光
P1 ガス供給管
P2 ガス排出管
【要約】
本開示の一態様に係るアブレーションユニットは、被対象物の表面にレーザ光を照射してアブレーションをするユニットであって、レーザ光を出射するレーザ装置と、上記レーザ光を任意の位置に反射する光反射装置と、透過する上記レーザ光を被対象物の表面で集光させるfθレンズおよび対物レンズと、上記fθレンズおよび上記対物レンズのいずれか一方または両方を上記レーザ光が透過するように切り替える切替手段とを備える。
図1
図2
図3
図4
図5