(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】バッテリー断熱構造
(51)【国際特許分類】
H01M 10/658 20140101AFI20240524BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20240524BHJP
H01M 10/6555 20140101ALI20240524BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240524BHJP
H01M 10/6563 20140101ALI20240524BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20240524BHJP
【FI】
H01M10/658
H01M10/625
H01M10/6555
H01M10/6556
H01M10/6563
H01M10/6568
(21)【出願番号】P 2019212376
(22)【出願日】2019-11-25
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭介
(72)【発明者】
【氏名】池増 竜帆
【審査官】田中 慎太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-105365(JP,A)
【文献】中国実用新案第207885049(CN,U)
【文献】国際公開第2018/097092(WO,A1)
【文献】特開2017-069129(JP,A)
【文献】特開2009-211829(JP,A)
【文献】特開昭60-163386(JP,A)
【文献】特開2008-218147(JP,A)
【文献】特開2015-103324(JP,A)
【文献】実開昭62-006689(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/658
H01M 10/625
H01M 50/20
H01M 10/6555
H01M 10/6556
H01M 10/6563
H01M 10/6568
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁と外壁との間に断熱空間が設けられる断熱容器本体と、内蓋と外蓋との間に断熱空間が設けられる断熱蓋体で、二重壁の断熱容器が構成され、
前記断熱容器にバッテリー体が収容され、
前記バッテリー体と前記断熱容器本体の前記内壁及び前記断熱蓋体の前記内蓋との間に空気層が形成されるように、前記バッテリー体が、前記断熱容器本体の前記内壁の底部、前記内壁の周側部及び前記断熱蓋体の前記内蓋から離間して配置され、
前記断熱容器本体の前記内壁に固着された断熱材を介して前記バッテリー体が設置されている
と共に、
前記バッテリー体が熱交換用流体を流通する熱交換パネルを有し、
前記バッテリー体が電池セルと前記熱交換パネルが密接して交互に積層される積層構造体になっており、
前記熱交換パネルに熱交換用流体を供給する流体供給管と、前記熱交換パネルから熱交換用流体を排出する流体排出管が前記断熱容器の二重壁を貫通して設けられ、
前記流体供給管が各々の前記熱交換パネルの流入口に熱交換用流体を分配すると共に、前記流体排出管が各々の前記熱交換パネルの流出口から熱交換用流体を集めるようになっており、
前記流体供給管を、流体導入管、前記熱交換パネルの流入口からパネル法線方向に突出する供給用突出管と、隣り合う前記熱交換パネルの前記供給用突出管を相互に連結し且つ弾性チューブで構成される供給用連結管とで構成し
前記流体排出管を、流体導入管、前記熱交換パネルの流入口からパネル法線方向に突出する排出用突出管と、隣り合う前記熱交換パネルの前記排出用突出管を相互に連結し且つ弾性チューブで構成される排出用連結管とで構成することを特徴とするバッテリー断熱構造。
【請求項2】
前記断熱容器本体の断熱空間と前記断熱蓋体の断熱空間が減圧空間であることを特徴とする請求項1記載のバッテリー断熱構造。
【請求項3】
積層される前記電池セルと前記熱交換パネルの並設方向の両端に位置する前記熱交換パネルのそれぞれの外側に一方の挟持板と他方の挟持板が設けられ、
前記バッテリー体が前記一方の挟持板と前記他方の挟持板とで前記電池セルと前記熱交換パネルの並設方向に挟持されていることを特徴とする請求項
1又は2記載のバッテリー断熱構造。
【請求項4】
前記一方の挟持板と前記他方の挟持板とに貫通して設けられる軸ボルトにコイルスプリングが外挿され、
前記コイルスプリングが、前記他方の挟持板を前記一方の挟持板の方向に弾性復元で押圧していることを特徴とする請求項
3記載のバッテリー断熱構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車等のバッテリーの温度変化を抑制するバッテリー断熱構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バッテリーの温度変化を抑制してバッテリーを適温範囲にするものとして特許文献1、2の構造がある。特許文献1の構造は、バッテリーの上面を除いた周面を覆うように設けられる蓄熱体と、箱状に形成された断熱材と、断熱材の内面と蓄熱体の外面との間に介在されるシート状の電気ヒーターを備え、電気ヒーターの作動終了後もバッテリーを保温し、寒冷時や寒冷地に適応してバッテリーの起電力、エンジンの始動性の低下を防止できるようになっている。
【0003】
特許文献2の構造は、バッテリーを構成する複数の電池セルの全体を覆うように設けられた断熱筐体本体及び断熱蓋と、断熱筐体本体内に充填されて電池セルを覆うように設けられた潜熱蓄熱材と、エンジンの冷却水が貯留するよう構成された冷却水貯留槽と、冷却水貯留槽と潜熱蓄熱材との間に介設され、水の吸着で吸着熱を発生する吸着蓄熱材を収容する吸着蓄熱材反応槽を備え、バッテリーの充電状態が低い場合にもバッテリーの温度を速やかに昇温できるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-32021号公報
【文献】特開2017-216097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1、2のバッテリー構造は、寒冷時期や寒冷地による外部環境の低温時に、出力電圧の低下や放電容量の低下を防止して良好なバッテリー性能を得ることができるものの、暑熱時期や熱帯地による外部環境の高温時にバッテリー性能の恒久的な劣化を防止できるものではない。即ち、バッテリーは高温状態が持続すると格段にバッテリーが劣化してバッテリーの寿命が短くなるが、外部環境が非常に高温である場合には、例えば特許文献2の単なる断熱筐体本体及び断熱蓋を設けるだけではバッテリーの高温化を防ぐのに十分ではない。そのため、外部環境が非常に低温である場合と非常に高温である場合の双方に、バッテリーに対する外部環境の温度の影響を極力低減することができる構造が求められている。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであって、外部環境が非常に低温である場合と非常に高温である場合の双方に適応し、バッテリーに対する外部環境の温度の影響を極力低減することができるバッテリー断熱構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のバッテリー断熱構造は、内壁と外壁との間に断熱空間が設けられる断熱容器本体と、内蓋と外蓋との間に断熱空間が設けられる断熱蓋体で、二重壁の断熱容器が構成され、前記断熱容器にバッテリー体が収容され、前記バッテリー体と前記断熱容器本体の前記内壁及び前記断熱蓋体の前記内蓋との間に空気層が形成されるように、前記バッテリー体が、前記断熱容器本体の前記内壁及び前記断熱蓋体の前記内蓋から離間して配置されていることを特徴とする。
これによれば、断熱容器本体と断熱蓋体の二重壁の断熱空間で外部との熱伝導を低減し、且つ断熱容器の内壁及び内蓋とバッテリー体との間の空気層で熱伝導を低減し、二重に熱伝導を低減することができる。従って、外部環境が非常に低温である場合と非常に高温である場合の双方に適応し、バッテリーに対する外部環境の温度の影響を極力低減することができる。換言すれば、外部環境が低温時に生ずるバッテリーの出力電圧の低下や放電容量の低下のようなバッテリーの一時的な性能の低下を防止することができると共に、外部環境が高温時に生ずるバッテリー性能の恒久的な劣化、寿命の短命化を防止することができる。また、バッテリー体に非常に高温時に出力規制する保護回路が搭載されている場合、夏場の非常な高温時等に意図しない保護回路の作動を防止することができる。
【0008】
本発明のバッテリー断熱構造は、前記断熱容器本体の断熱空間と前記断熱蓋体の断熱空間が減圧空間であることを特徴とする。
これによれば、断熱容器本体と断熱蓋体の断熱空間を減圧空間とすることにより、外部環境とバッテリー体の熱伝導をより一層低減することができ、バッテリーに対する外部環境の温度の影響をより一層低減することができる。
【0009】
本発明のバッテリー断熱構造は、前記断熱容器本体の前記内壁に固着された断熱材を介して前記バッテリー体が設置されていることを特徴とする。
これによれば、断熱材を介してバッテリー体を設置することにより、バッテリー体の支持箇所における断熱容器本体の内壁から熱伝導を極力少なくし、バッテリー体の支持箇所を介しての断熱容器本体とバッテリー体の熱伝導を最大限抑制することができる。
【0010】
本発明のバッテリー断熱構造は、前記断熱容器本体の周側部の上端に外方に突出する容器側平面フランジが形成され、前記断熱蓋体の周縁に蓋側平面フランジが形成され、前記容器側平面フランジに前記蓋側平面フランジを載置して前記断熱蓋体を前記断熱容器本体に係合するようにして、前記断熱容器が閉塞されることを特徴とする。
これによれば、容器側平面フランジに蓋側平面フランジを載置して断熱蓋体を断熱容器本体に係合するようにして断熱容器を閉塞することにより、断熱容器本体と断熱蓋体の接触箇所における相互接触面積を大きくして断熱容器を閉塞することができ、断熱容器本体と断熱蓋体の接触箇所における気密性、封止性、断熱性を高めることができる。
【0011】
本発明のバッテリー断熱構造は、前記バッテリー体が熱交換用流体を流通する熱交換パネルを有し、前記バッテリー体が電池セルと前記熱交換パネルが密接して交互に積層される積層構造体になっており、前記熱交換パネルに熱交換用流体を供給する流体供給管と、前記熱交換パネルから熱交換用流体を排出する流体排出管が前記断熱容器の二重壁を貫通して設けられ、前記流体供給管が各々の前記熱交換パネルの流入口に熱交換用流体を分配すると共に、前記流体排出管が各々の前記熱交換パネルの流出口から熱交換用流体を集めることを特徴とする。
これによれば、例えばバッテリー体の発熱が大きく高温になった場合には、熱交換パネル、熱交換用流体を介して熱を回収し、断熱容器の内部やバッテリー体の温度を低下させ、バッテリー性能の恒久的な劣化、寿命の短命化を防止すること等が可能となる。即ち、断熱容器の内部やバッテリー体の温度を適温範囲に調整し、適温範囲に保つことができる。
【0012】
本発明のバッテリー断熱構造は、管若しくはケーブルが通される断熱容器の二重壁の貫通部の周辺に、略凹状のキャップが凹側を断熱容器の外表面に向けて断熱容器の外表面に固着され、略凹状の前記キャップに形成された挿通穴に前記管若しくは前記ケーブルが挿通され、前記キャップの凹側に断熱空間が設けられることを特徴とする。
これによれば、管若しくはケーブルが通される断熱容器の二重壁の貫通部の周辺における熱リークを抑制し、断熱性を確保することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバッテリー断熱構造によれば、外部環境が非常に低温である場合と非常に高温である場合の双方に適応し、バッテリーに対する外部環境の温度の影響を極力低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明による実施形態のバッテリー断熱構造の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態のバッテリー断熱構造〕
本発明による実施形態のバッテリー断熱構造は、
図1~
図4に示すように、断熱容器本体2と断熱蓋体3で構成される二重壁の断熱容器1と、断熱容器1に収容されるバッテリー体4を備える。
【0016】
断熱容器本体2は、上面開放で略矩形箱型で形成され、上面開放で略矩形箱型の内壁21と上面開放で略矩形箱型の外壁22の二重壁になっている。内壁21の底部211と外壁22の底部221、内壁21の周側部212と外壁22の周側部222はそれぞれ離間して配置され、内壁21と外壁22との間に断熱空間S1が設けられている。断熱空間S1は真空引きされた減圧空間とする好適であるが、空気層とすることも可能であり、又、本実施形態の断熱空間S1は空洞にしているが、断熱空間S1内に固体状の断熱材を充填して設けることも可能である。
【0017】
内壁21の周側部212の上端には外方に突出する平面状のフランジ213が形成され、外壁22の周側部22の上端には外方に突出する平面状のフランジ223が形成されている。そして、フランジ213をフランジ223上に載置するように重ねて、内壁21と外壁22の端部が封止されるようにして、重ねた箇所で溶接等で固着することにより、容器側平面フランジ23が形成されている。即ち、断熱容器本体2の周側部の上端には外方に突出する容器側平面フランジ23が形成されている。
【0018】
断熱蓋体3は、略平板状で形成され、中央が周縁より凹んだ薄皿形状の内蓋31と、平板状の外蓋32の二重壁になっている。内蓋31は、基板311と、基板311の周囲で起立する起立部312と、起立部312の上端から外方に突出するフランジ313を有する。そして、内蓋31の基板311と外蓋32が離間して配置され、内蓋31の基板311と外蓋32との間、換言すれば内蓋31と外蓋32との間に断熱空間S2が設けられている。断熱空間S2も真空引きされた減圧空間とする好適であるが、空気層とすることも可能であり、又、本実施形態の断熱空間S2は空洞にしているが、断熱空間S2内に固体状の断熱材を充填して設けることも可能である。
【0019】
外蓋32は、内蓋31のフランジ313上に載置するように重ねて設けられている。そして、内蓋31と外蓋32の端部が封止されるようにして、外蓋32を内蓋31のフランジ313に重ねた箇所で溶接等で固着することにより、蓋側平面フランジ33が形成されている。即ち、断熱蓋体3の周縁に蓋側平面フランジ33が形成されている。
【0020】
断熱容器1は、断熱容器本体2の断熱空間S1の上端位置の平面面積よりも平面面積が大きい容器側平面フランジ23の上面に、断熱蓋体3の容器側平面フランジ23以上の平面面積を有する蓋側平面フランジ33の下面を載置して重ね、断熱蓋体3を断熱容器本体2に係合するようにして閉塞される。断熱空間S1の上端位置の平面面積よりも平面接触面積が大きい状態で重ねられた容器側平面フランジ23と蓋側平面フランジ33は、図示省略するボルトとナット等の固定部材で着脱可能に固着される。尚、容器側平面フランジ23と蓋側平面フランジ33との間にシール材を設け、容器側平面フランジ23にシール材を介して蓋側平面フランジ33を載置するようにしても良好である。
【0021】
また、断熱蓋体3の内蓋31の基板311と起立部312の外周寸法は、断熱容器本体2の内壁21の上端位置の内周寸法よりも僅かに小さく形成されており、断熱容器1の閉塞状態では、断熱蓋体3の内蓋31の基板311と起立部312が断熱容器本体2の内壁21の内側に嵌合或いは遊嵌されて、断熱蓋体3が断熱容器本体2に係合されるようになっている。
【0022】
バッテリー体4は、所定間隔を開けて並べて設けられる複数の電池セル41と、各電池セル41の並設方向の両側に設けられ、熱交換用流体を流通する熱交換パネル42を有し、電池セル41と熱交換パネル42が密接して交互に積層される積層構造体になっている。バッテリー体4の並設方向の両端に位置する熱交換パネル42・42のそれぞれの外側には挟持板51、52が設けられており、電池セル41と熱交換パネル42、換言すればバッテリー体4は挟持板51、52で挟持されるようにして断熱容器1内に設置されている。
【0023】
電池セル41と熱交換パネル42の並設方向における一方側の挟持板51の外側には、略L字形の支持ステー61の側部が隣接して配置されており、支持ステー61の下部は断熱容器本体2の内壁21の底部211に固着された断面視略U字形の断熱ゴム等の断熱材62に係合され、ボルト63のボルト締めで断熱材62に固定されている。即ち、挟持板51、52で挟持されるバッテリー体4は、断熱容器本体2の内壁21に固着された断熱材62を介して設置される。支持ステー61、断熱材62、ボルト63は、断熱容器1の平面視における電池セル41と熱交換パネル42の並設方向と直交する方向において、一方側の挟持板51の両端近傍にそれぞれ配設されている。
【0024】
電池セル41と熱交換パネル42の並設方向における他方側の挟持板52の外側には、略L字形の支持ステー71の側部が挟持板52と間隔を開けて配置されており、支持ステー71の下部も断熱容器本体2の内壁21の底部211に固着された断面視略U字形の断熱ゴム等の断熱材72に係合され、ボルト73のボルト締めで断熱材72に固定されている。即ち、挟持板51、52で挟持されるバッテリー体4は、断熱容器本体2の内壁21に固着された断熱材72を介して設置される。支持ステー71、断熱材72、ボルト73は、断熱容器1の平面視における電池セル41と熱交換パネル42の並設方向と直交する方向において、他方側の挟持板52の両端に対応する位置にそれぞれ配設されている。
【0025】
更に、支持ステー61、挟持板51、挟持板52、支持ステー71を貫通するようにして軸ボルト81が設けられている。軸ボルト81は、電池セル41と熱交換パネル42の並設方向と直交する方向の両側にそれぞれ設けられていると共に、図示例では上下方向の3カ所にそれぞれ軸ボルト81が設けられている。軸ボルト81には、支持ステー61の外側に支持ステー61に密接してナット82が螺合されていると共に、支持ステー71の外側に支持ステー71に密接してナット83が螺合され、支持ステー71の内側に支持ステー71に密接してナット84が螺合されている。ナット84の挟持板52側にはワッシャー85が配置されている。
【0026】
ワッシャー85と挟持板52との間には弾性材としてコイルスプリング86が設けられ、コイルスプリング86は軸ボルト81の外周に外挿されている。コイルスプリング86は、挟持板52を挟持板51の方向に弾性復元で押圧、付勢し、この付勢力により、挟持板51と挟持板52で電池セル41と熱交換パネル42が密接して交互に積層されるバッテリー体4が挟持される。コイルスプリング86の付勢と、挟持板51、52の挟持で支持されるバッテリー体4は、断熱容器本体2の内壁21及び断熱蓋体3の内蓋31から離間して配置され、断熱容器1の内部にも断熱空間S3が形成される。また、コイルスプリング86は、電池セル41が発熱で熱膨張した際に、熱膨張による膨張量をバッテリー体4の挟持状態を維持しながら収縮変形で吸収する機能も有する。
【0027】
更に、熱交換パネル42に熱交換用流体を供給する流体供給管91と、熱交換パネル42から熱交換用流体を排出する流体排出管92が、断熱容器1の二重壁を貫通して、本実施形態では断熱容器本体2の内壁21と外壁22を貫通して設けられている。流体供給管91は、流体導入管911と、ゴムチューブなど弾性復元と伸長可能な弾性チューブで構成される連結管912と、熱交換パネル42の流入口からパネル法線方向に突出する突出管913とから構成される。流体導入管911は、例えばゴムチューブなど弾性復元と伸長可能な弾性チューブで構成され、最も近い位置に配置されている熱交換パネル42の突出管913に外挿して装着される。並設された熱交換パネル42・42の突出管913・913相互は連結管912を介して連結され、連結管912の両端はそれぞれ突出管913に外挿して装着される。弾性チューブで構成される連結管912は、電池セル41が発熱で熱膨張した際に弾性で伸長して追随し、熱膨張の収束に応じて弾性復元して熱膨張に適応可能になっている。
【0028】
流体排出管92は、流体導出管921と、ゴムチューブなど弾性復元と伸長可能な弾性チューブで構成される連結管922と、熱交換パネル42の流出口からパネル法線方向に突出する突出管923とから構成される。流体導出管921も、例えばゴムチューブなど弾性復元と伸長可能な弾性チューブで構成され、最も近い位置に配置されている熱交換パネル42の突出管923に外挿して装着される。並設された熱交換パネル42・42の突出管923・923相互は連結管922を介して連結され、連結管922の両端はそれぞれ突出管923に外挿して装着される。弾性チューブで構成される連結管922は、電池セル41が発熱で熱膨張した際に弾性で伸長して追随し、熱膨張の収束に応じて弾性復元して熱膨張に適応可能になっている。
【0029】
流体供給管91で供給される冷却水等の熱交換用流体は、各熱交換パネル42に分配されて流入口から入り込んで各熱交換パネル42の中を流れ、各熱交換パネル42の流出口から流体排出管92に集められるように排出され、流体排出管92を介して外部に排出される(
図2の太線矢印参照)。尚、熱交換パネル42には図示省略する流路を形成する仕切が内部に形成され、熱交換用流体が熱交換パネル42の内部の略全体に亘って流れる流路が設けられており、熱交換パネル42を流れる熱交換用流体と電池セル41との熱交換性が高められている。
【0030】
断熱容器本体2には、内壁21と外壁22との間の断熱空間S1の閉じた状態を維持するように短筒を固着する等で形成された貫通部24が設けられている。貫通部24は断熱容器1の二重壁の貫通部に相当する。そして、本実施形態では一の貫通部24に流体供給管91或いは流体導入管911が貫通して設けられ、他の貫通部24に流体排出管92或いは流体導出管921が貫通して設けられ、流体供給管91と流体排出管92が断熱容器1の内外に通じるようになっている。
【0031】
貫通部24の周辺では、略凹状のキャップ10が凹側を断熱容器1の外表面に向けて断熱容器1の外表面に固着、本実施形態では断熱容器本体2の外壁22の外表面に溶接等で固着されている。キャップ10には略中央に挿通穴101が形成されており、挿通穴101に流体導入管911や流体導出管921が挿通されている。略凹状のキャップ10、図示例ではお椀形状のキャップ10の凹側には、キャップ10と、外壁22の外表面と、流体導入管911或いは流体導出管921の外表面で囲まれる断熱空間S4が設けられる。
【0032】
本実施形態のバッテリー断熱構造によれば、断熱容器本体2と断熱蓋体3の二重壁の断熱空間S1、S2で外部との熱伝導を低減し、且つ断熱容器1の内壁21及び内蓋31とバッテリー体4との間の断熱空間S3の空気層で熱伝導を低減し、二重に熱伝導を低減することができる。従って、外部環境が非常に低温である場合と非常に高温である場合の双方に適応し、バッテリーに対する外部環境の温度の影響を極力低減することができる。換言すれば、外部環境が低温時に生ずるバッテリーの出力電圧の低下や放電容量の低下のようなバッテリーの一時的な性能の低下を防止することができると共に、外部環境が高温時に生ずるバッテリー性能の恒久的な劣化、寿命の短命化を防止することができる。また、バッテリー体4に非常に高温時に出力規制する保護回路が搭載されている場合、夏場の非常な高温時等に意図しない保護回路の作動を防止することができる。
【0033】
また、断熱容器本体2と断熱蓋体3の断熱空間S1、S2を減圧空間とする場合には、外部環境とバッテリー体4の熱伝導をより一層低減することができ、バッテリーに対する外部環境の温度の影響をより一層低減することができる。
【0034】
また、断熱材62、72を介してバッテリー体4を設置することにより、バッテリー体4の支持箇所における断熱容器本体2の内壁21から熱伝導を極力少なくし、バッテリー体4の支持箇所を介しての断熱容器本体2とバッテリー体4の熱伝導を最大限抑制することができる。
【0035】
また、容器側平面フランジ23に蓋側平面フランジ33を載置して断熱蓋体3を断熱容器本体2に係合するようにして断熱容器1を閉塞することにより、断熱容器本体2と断熱蓋体3の接触箇所における相互接触面積を大きくして断熱容器1を閉塞することができ、断熱容器本体2と断熱蓋体3の接触箇所における気密性、封止性、断熱性を高めることができる。
【0036】
また、バッテリー体4の熱交換パネル42に熱交換用流体を供給する流体供給管91と、熱交換パネル42から熱交換用流体を排出する流体排出管92を断熱容器1の二重壁を貫通して設けることにより、例えばバッテリー体4の発熱が大きく高温になった場合には、熱交換パネル42、熱交換用流体を介して熱を回収し、断熱容器1の内部やバッテリー体4の温度を低下させ、バッテリー性能の恒久的な劣化、寿命の短命化を防止すること等が可能となる。即ち、断熱容器1の内部やバッテリー体4の温度を適温範囲に調整し、適温範囲に保つことができる。
【0037】
また、断熱容器1の二重壁の貫通部24の周辺の外表面にキャップ10を固着することにより、流体供給管91や流体排出管92が貫通して設けられる貫通部24の周辺における熱リークを抑制し、断熱性を確保することができる。
【0038】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0039】
例えば上記実施形態のバッテリー断熱構造の図示例は、バッテリー体4の支持部材を構成するボルト63、73の一部が断熱材62、72を貫通して断熱容器1に接触する構成としたが、バッテリー体4の支持部材を構成する断熱材62、72等の断熱材だけが断熱容器1に直接接触する構成とするとより好適である。
【0040】
また、断熱容器1の二重壁に断熱空間S1、S2を閉じた状態で設けられる貫通部24の形状や数は適宜であり、例えばバッテリーケーブルが通される貫通部24と、流体供給管91が通される貫通部24と、流体排出管92が通される貫通部24を個別にそれぞれ設ける構成としてもよく、又、一の貫通穴24にバッテリーケーブルと流体供給管91或いは流体排出管92の双方を通す構成とすることも可能である。
【0041】
また、本発明における熱交換用流体には、冷却水以外の適宜であり、低温の液体若しくは気体、又は高温の液体若しくは気体、又はその双方を必要に応じて適宜用いることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、例えば電気自動車等のバッテリーの温度変化を抑制する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1…断熱容器 2…断熱容器本体 21…内壁 211…底部 212…周側部 213…フランジ 22…外壁 221…底部 222…周側部 223…フランジ 23…容器側平面フランジ 24…貫通部 3…断熱蓋体 31…内蓋 311…基板 312…起立部 313…フランジ 32…外蓋 33…蓋側平面フランジ 4…バッテリー体 41…電池セル 42…熱交換パネル 51、52…挟持板 61、71…支持ステー 62、72…断熱材 63、73…ボルト 81…軸ボルト 82、83、84…ナット 85…ワッシャー 86…コイルスプリング 91…流体供給管 911…流体導出管 912…連結管 913…突出管 92…流体排出管 921…流体導出管 922…連結管 923…突出管 10…キャップ 101…挿通穴 S1、S2、S3、S4…断熱空間