(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】スロープ装置のブラケット取付構造
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20240524BHJP
B60P 1/43 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B60R3/00
B60P1/43 A
B60P1/43 B
(21)【出願番号】P 2020126045
(22)【出願日】2020-07-27
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000100791
【氏名又は名称】アイシン軽金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114074
【氏名又は名称】大谷 嘉一
(72)【発明者】
【氏名】大竹 宏
【審査官】池田 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-188142(JP,A)
【文献】特開2017-217965(JP,A)
【文献】特開平11-165578(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0253164(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/00 - 3/04
B60P 1/43
A61G 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側に固定する取付パネルと、スロープの基部側とを、所定の範囲回動自在に連結する回動ブラケットを有し、
前記回動ブラケットは、前記取付パネルのサイド端部に軸着する軸着部と、前記スロープのサイドレールに固定する固定部と、該サイドレールの基部側端部に対向するカバー部とを有
し、
前記固定部は、前記軸着部から外側に折り返したつなぎ部を介して連設してあり、前記カバー部は、前記つなぎ部に連設してあることを特徴とするスロープ装置のブラケット取付構造。
【請求項2】
前記サイドレールは、中空断面形状からなり、
前記カバー部は、前記中空断面形状を構成する中空端面に対向配置してあることを特徴とする請求項
1に記載のスロープ装置のブラケット取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子等の車両への乗り降りに使用されるスロープ装置に用いられるブラケットの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に車椅子等を乗降させる目的で、車両のフロア等から車外側に展開するスロープ装置が用いられている。
本出願人は先に、車両側に固定する取付パネルとスロープの基部側とを、両側のサイド端部にてブラケットを用いて回動自在に連結する技術を提案している(特許文献1)。
上記特許文献1に開示するブラケットの取付構造は、シンプルな構造で回動操作が容易である。
本発明は、さらに回動耐久性を向上させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、スロープ装置の耐久性に優れたブラケット取付構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るスロープ装置のブラケット取付構造は、車両側に固定する取付パネルと、スロープの基部側とを、所定の範囲回動自在に連結する回動ブラケットを有し、
前記回動ブラケットは、前記取付パネルのサイド端部に軸着する軸着部と、前記スロープのサイドレールに固定する固定部と、該サイドレールの基部側端部に対向するカバー部とを有することを特徴とする。
【0006】
スロープに設けた左右方向のサイドレールの基部側を、回動ブラケットを用いて車両のフロア端部に固定する取付パネルのサイド端部と回動自在に連結することで、スロープを車外側に展開してスロープ面を形成することができるとともに、反転させることで車室内に収納できる。
本発明は、この回動ブラケットに、サイドレールの基部側端部に対向したカバー部を設けた点に第1の特徴がある。
このようにすると、スロープを車外に展開する場合や車室内に収納する際に、カバー部がサイドレールの端面に当たるようになり、固定部と軸着部の間に生じる引っ張り方向の応力集中を緩和するとともに、サイドレールの基部側の端面を保護する。
【0007】
本発明において、前記固定部は、前記軸着部から外側に折り返したつなぎ部を介して連設してあり、前記カバー部は、前記つなぎ部に連設してあってもよい。
このように、サイドレール側に固定する固定部を、取付パネル側の軸着部から外側に折り返したつなぎ部に設けるとともに、このつなぎ部にカバー部を連設させた点に第2の特徴がある。
これにより、ブラケットのつなぎ部に応力が集中するのを防ぐ。
【0008】
本発明において、前記サイドレールは、中空断面形状からなり、前記カバー部は、前記中空断面形状を構成する中空端面に対向配置してあってもよい。
サイドレールが中空断面形状からなることにより、サイドレールの変形強度が増す。
また、回動ブラケットのカバー部が中空端面となるサイドレールの基部側端部を保護することで、中空端面の変形強度も高まる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係るスロープ装置のブラケット取付構造は、特許文献1と同様にスロープを車室内に倒立収納しやすいように、取付パネル側の回動中心に対してサイドレールとの固定部をこのサイドレールの上方側に位置をずらしたオフセット配置にするとともに、つなぎ部にカバー部を連設してサイドレールの端面に対向させたので、ブラケットへの応力集中を分散させることができ、スロープ装置の回動耐久性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係るスロープ装置のブラケット取付構造例を示し、(a)は取付パネルとスロープの連結前、(b)は連結後を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明に係るスロープ装置のブラケット取付構造例を以下、図に基づいて説明する。
図3に、スロープ装置10の斜視図を、
図4(a)に、車両のフロア1からスロープ装置10を、車外、例えば路面に向けて展開した状態を示す。
取付パネル14は、締結孔(図示を省略)等を介して、フロア1にボルト等にて固定されている。
本実施例において、スロープ装置10は、スロープ11、12、13が順次伸縮可能に連結された例になっているが、スロープの基部側を回動中心に連結されたものであれば本発明が適用され、スライド式、折り畳み式等、スロープの展開構造に制限はない。
【0012】
図3に示すように、スロープ装置10の基部側のスロープ11は、スロープパネル11aの両側にサイドレール11b、11bを有し、このサイドレール11b、11bの基部側と取付パネル14のサイド端部14a、14aとを、回動ブラケット20、20にて連結してある。
なお、本実施例のスロープ装置10は、スロープ11のサイドレール11b、11bに沿ってスロープ12のスロープパネル12aの両側に連結したスライドレール12b、12bがスライド伸縮し、スロープ13のスロープパネル13aの両側のスライドレール13b、13bがスライドレール12b、12bに沿ってスライドする。
また、
図4(c)に示すように、スロープ装置10は、スロープ13及びスロープ12をスロープ11側に収納し、倒立させて車室内に格納する例となっており、車室内側に起立させる際の回動軸を回動ブラケット20にて形成することになる。
そのため、スロープ11,12,13を車外側に展開する際には、スロープの先端側の例えば取手を持って回動及び引き出す時に、回動ブラケット20に引っ張り方向の応力が加わる。
また、スロープ11,12,13を倒立方向に回動して収納する際には、スロープの先端側を持ち上げるように引き上げる、あるいは車両の後部に有するいわゆるテールゲートにリンク連結したスロープに、このテールゲートのリンク操作によりスロープ側に引き上げ方向の力が加わることで、回動ブラケット20に引張力が負荷される。
本発明は、
図4(c)に示すようにスロープの収納操作と倒立安定性が確保しやすいよう、回動ブラケット20を
図1、
図2に示すような構造とした。
【0013】
図1にスロープ装置10の回動ブラケット20部分の拡大図を、
図2に回動ブラケット20の斜視図を示す。
回動ブラケット20は、つなぎ部24の左右それぞれから軸着部21と固定部22とを前後方向に折り曲げた略Z字形状であり、軸着部21から折り曲げたカバー部23がつなぎ部24と上下方向に並列する。
軸着部21は、軸着孔21aを用いて取付パネル14のサイド端部14aに軸着部材15にて軸着され、固定部22は、固定孔22aを用いてスロープ11のサイドレール11bの基部側に固定される。
取付パネル14に軸着する軸着孔21aから立設するように軸着部21を設けるとともに、軸着部21から左右外側に向けて略直角に折り返したつなぎ部24を介して軸着孔21aよりも上方へ所定の高さずらした位置に、固定部22側の固定孔22aを設けてある。
このように回動ブラケット20は、取付パネル14側に軸着する軸着孔21aと、サイドレール11b側に固定する固定孔22aをオフセット配置してあるために、つなぎ部24やその両側の折り曲げコーナー部に回動操作時の応力が集中しやすい。
そこで本発明は、つなぎ部24の下部側であり軸着孔21aの付近に、サイドレール11bの基部側端部11cに対向配置したカバー部23を、このつなぎ部24に連設したものである。
カバー部23は、
図4(a)、(b)に示すようにスロープ11,12,13を車外側に回動して展開する際に、サイドレール11bの基部側端部11cに当たることで回動ブラケット20に加わる力を分散する。
また、
図4(c)、(d)に示すように、スロープ11、12,13を起立方向(倒立方向)に引き上げるように回動及び収納する際には、カバー部23がサイドレール11bの基部側端部11cに当たり、回動ブラケット20に加わる力が分散する。
これにより、回動ブラケット20に加わる力、特に引張力に対して負荷が分散し、スロープの回動操作に対する耐久性が向上する。
また、サイドレール11bの端面の変形を抑える保護作用もある。
【0014】
本実施例において、カバー部23は、軸着部21側で部分的につなぎ部24と上下方向に繋がっているが、
図5の別実施例に示すように、カバー部23とつなぎ部24とが上下方向にほぼ全体的に繋がっていてもよい。
また、カバー部23は、基部側端部11cとの間に隙間を有して対向してもよく、基部側端部11cと当接するように対向してもよい。
ここで、
図1(a)に示すように、サイドレール11bが複数の中空部を有する中空断面形状からなると、サイドレール11bの変形強度が高まる。
中空端面となる基部側端部11cから上側中空部11fに挿入された固定部22は、サイドレール11bのサイド壁11dに設けた被固定孔11eを利用して固定部材16にて固定でき、カバー部23は下側中空部11gを塞ぐように基部側端部11cを保護する。
なお、サイドレール11bの中空断面形状は押出し成形により容易に成形でき、中空部の数は2以上、3つや4つであってもよい。
また、
図5に示すように、サイドレール11bは中空断面形状でなくてもよく、カバー部23の左右方向の幅が基部側端部11cの幅とほぼ等しければ、基部側端部11cに対する保護力が高いものとなる。
【符号の説明】
【0015】
10 スロープ装置
11 スロープ
11b サイドレール
11c 基部側端部
14 取付パネル
14a サイド端部
20 回動ブラケット
21 軸着部
22 固定部
23 カバー部
24 つなぎ部