(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光拡散板、画像表示装置及び照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240524BHJP
G02B 3/00 20060101ALI20240524BHJP
G02B 3/02 20060101ALI20240524BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240524BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20240524BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240524BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20240524BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20240524BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240524BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240524BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B3/00 A
G02B3/02
G02F1/13357
G02F1/1335
G09F9/00 324
F21V5/04 350
F21V5/00 320
F21V5/04 400
F21S2/00 481
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2019168090
(22)【出願日】2019-09-17
【審査請求日】2022-09-15
(31)【優先権主張番号】P 2018177698
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000108410
【氏名又は名称】デクセリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 光雄
(72)【発明者】
【氏名】石渡 正之
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/057744(WO,A1)
【文献】特開2015-169804(JP,A)
【文献】国際公開第2018/123466(WO,A1)
【文献】特開2006-72370(JP,A)
【文献】特開2007-173035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
F21S 2/00
F21V 5/00
F21V 5/04
G02B 3/00- 3/14
G02F 1/1335
G02F 1/13357
G09F 9/00
F21Y115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面に設けられ、共通の方向に延伸した異方形状を有する複数の凸構造又は凹構造から構成される構造体群と、
を備え、
前記複数の凸構造又は凹構造は、前記基材の前記主面上にランダムかつ密集して配置されており、
互いに隣接する前記複数の凸構造又は凹構造の間の境界は、互いに異なる曲率を有する複数の曲線で構成さ
れ、
前記複数の凸構造又は凹構造同士の重なり比率を表す重なり許容Ovが、以下の式(4)及び(5)で表されるとき、前記重なり許容Ovが25%超75%未満に制御されている、光拡散板。
【数1】
前記式(4)及び(5)において、
aは、前記凸構造又は凹構造を平面視した楕円形状の長軸方向の径であり、bは、当該楕円形状の短軸方向の径であり、
dx、dyは、相互に隣接する前記凸構造又は凹構造を平面視した2つの楕円形状の中心の座標差であり、
dは、前記楕円形状を長軸方向に圧縮して真円形状に換算した場合の当該2つの楕円形状の中心間距離である。
【請求項2】
前記凸構造又は凹構造の表面は、曲面から構成される、請求項1に記載の光拡散板。
【請求項3】
前記凸構造又は凹構造の表面形状は、アナモルフィック形状又はトーラス形状である、請求項1又は2に記載の光拡散板。
【請求項4】
前記複数の凸構造又は凹構造の各々の曲面の曲率半径又は開口径が互いに摂動されるように、前記複数の凸構造又は凹構造が配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載の光拡散板。
【請求項5】
前記複数の凸構造又は凹構造の各々の前記曲面の曲率半径の摂動量をΔRとし、前記曲面の曲率半径の基準値をRとすると、ΔR/Rは、3%以上85%以下である、請求項4に記載の光拡散板。
【請求項6】
前記複数の凸構造又は凹構造の各々の前記開口径の摂動量をΔDとし、前記開口径の基準値をDとすると、ΔD/Dは、3%以上85%以下である、請求項4又は5に記載の光拡散板。
【請求項7】
0.35μm以上2μm以下の波長の光に対する前記構造体群の光学位相差成分Ψは、150未満である、請求項1~6のいずれか一項に記載の光拡散板。
【請求項8】
0.35μm以上2μm以下の波長の光に対する前記構造体群の位相差分散σ(Ψ)は、200未満である、請求項1~7のいずれか一項に記載の光拡散板。
【請求項9】
前記基材の前記主面上における前記凸構造又は凹構造の充填率は、90%以上である、請求項1~8のいずれか一項に記載の光拡散板。
【請求項10】
前記異方形状の延伸方向における前記構造体群の配光角の半値幅をW
Lとし、前記延伸方向と直交する方向における前記構造体群の配光角の半値幅をW
Oとすると、W
O/W
Lは、1.05以上である、請求項1~9のいずれか一項に記載の光拡散板。
【請求項11】
互いに隣接する前記複数の凸構造又は凹構造の間の前記境界の幅は、1μm以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の光拡散板。
【請求項12】
光源からの光路上に搭載された光拡散板を備え、
前記光拡散板は、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面に設けられ、共通の方向に延伸した異方形状を有する複数の凸構造又は凹構造から構成される構造体群と、
を備え、
前記複数の凸構造又は凹構造は、前記基材の前記主面上にランダムかつ密集して配置されており、
互いに隣接する前記複数の凸構造又は凹構造の間の境界は、互いに異なる曲率を有する複数の曲線で構成さ
れ、
前記複数の凸構造又は凹構造同士の重なり比率を表す重なり許容Ovが、以下の式(4)及び(5)で表されるとき、前記重なり許容Ovが25%超75%未満に制御されている、画像表示装置。
【数2】
前記式(4)及び(5)において、
aは、前記凸構造又は凹構造を平面視した楕円形状の長軸方向の径であり、bは、当該楕円形状の短軸方向の径であり、
dx、dyは、相互に隣接する前記凸構造又は凹構造を平面視した2つの楕円形状の中心の座標差であり、
dは、前記楕円形状を長軸方向に圧縮して真円形状に換算した場合の当該2つの楕円形状の中心間距離である。
【請求項13】
光源の表面に搭載された光拡散板を備え、
前記光拡散板は、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面に設けられ、共通の方向に延伸した異方形状を有する複数の凸構造又は凹構造から構成される構造体群と、
を備え、
前記複数の凸構造又は凹構造は、前記基材の前記主面上にランダムかつ密集して配置されており、
互いに隣接する前記複数の凸構造又は凹構造の間の境界は、互いに異なる曲率を有する複数の曲線で構成さ
れ、
前記複数の凸構造又は凹構造同士の重なり比率を表す重なり許容Ovが、以下の式(4)及び(5)で表されるとき、前記重なり許容Ovが25%超75%未満に制御されている、照明装置。
【数3】
前記式(4)及び(5)において、
aは、前記凸構造又は凹構造を平面視した楕円形状の長軸方向の径であり、bは、当該楕円形状の短軸方向の径であり、
dx、dyは、相互に隣接する前記凸構造又は凹構造を平面視した2つの楕円形状の中心の座標差であり、
dは、前記楕円形状を長軸方向に圧縮して真円形状に換算した場合の当該2つの楕円形状の中心間距離である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光拡散板、画像表示装置及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
入射光を様々な方向へと散乱させる光拡散板は、例えば、ディスプレイ等の表示装置、プロジェクタ等の投影装置、又は各種の照明装置等といった様々な装置に広く利用されている。このような光拡散板における入射光の拡散機構は、光拡散板の表面形状に起因する光の屈折を利用するものと、バルク体の内部に存在する、周囲とは屈折率の異なる物質による散乱を利用するものとに大別される。表面形状に起因する光の屈折を利用した光拡散板の一つにいわゆるマイクロレンズアレイ型の光拡散板がある。
【0003】
このようなマイクロレンズアレイ型の光拡散板としては、例えば、下記の特許文献1に開示されるような光拡散部材が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1等では、光拡散板による拡散後の光の形状については、特に検討されていなかった。一方で、近年、光拡散板を利用する装置の種類が広がったことで、光拡散板にて拡散された光が投射される投射面の形状も多様になっている。
【0006】
そのため、光拡散板による拡散後の光の形状を投射面の形状に合うように制御することで、光拡散板による拡散後の光をより効率的に使用したいという要請が高まっていた。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、拡散された光の異方形状を制御することが可能な、新規かつ改良された光拡散板、並びに該光拡散板を用いた画像表示装置及び照明装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面に設けられ、共通の方向に延伸した異方形状を有する複数の凸構造又は凹構造から構成される構造体群と、
を備え、
前記複数の凸構造又は凹構造は、前記基材の前記主面上にランダムかつ密集して配置されており、
互いに隣接する前記複数の凸構造又は凹構造の間の境界は、互いに異なる曲率を有する複数の曲線で構成さ
れ、
前記複数の凸構造又は凹構造同士の重なり比率を表す重なり許容Ovが、以下の式(4)及び(5)で表されるとき、前記重なり許容Ovが25%超75%未満に制御されている、光拡散板が提供される。
【数1】
前記式(4)及び(5)において、
aは、前記凸構造又は凹構造を平面視した楕円形状の長軸方向の径であり、bは、当該楕円形状の短軸方向の径であり、
dx、dyは、相互に隣接する前記凸構造又は凹構造を平面視した2つの楕円形状の中心の座標差であり、
dは、前記楕円形状を長軸方向に圧縮して真円形状に換算した場合の当該2つの楕円形状の中心間距離である。
【0009】
前記凸構造又は凹構造の表面は、曲面から構成されるようにしてもよい。
【0010】
前記凸構造又は凹構造の表面形状は、アナモルフィック形状又はトーラス形状であるようにしてもよい。
【0011】
前記複数の凸構造又は凹構造の各々の曲面の曲率半径又は開口径が互いに摂動されるように、前記複数の凸構造又は凹構造が配置されるようにしてもよい。
【0012】
前記複数の凸構造又は凹構造の各々の前記曲面の曲率半径の摂動量をΔRとし、前記曲面の曲率半径の基準値をRとすると、ΔR/Rは、3%以上85%以下であるようにしてもよい。
【0013】
前記複数の凸構造又は凹構造の各々の前記開口径の摂動量をΔDとし、前記開口径の基準値をDとすると、ΔD/Dは、3%以上85%以下であるようにしてもよい。
【0014】
0.35μm以上2μm以下の波長の光に対する前記構造体群の光学位相差成分Ψは、150未満であるようにしてもよい。
【0015】
0.35μm以上2μm以下の波長の光に対する前記構造体群の位相差分散σ(Ψ)は、200未満であるようにしてもよい。
【0016】
前記基材の前記主面上における前記凸構造又は凹構造の充填率は、90%以上であるようにしてもよい。
【0017】
前記異方形状の延伸方向における前記構造体群の配光角の半値幅をWLとし、前記延伸方向と直交する方向における前記構造体群の配光角の半値幅をWOとすると、WO/WLは、1.05以上であるようにしてもよい。
【0018】
互いに隣接する前記複数の凸構造又は凹構造の間の前記境界の幅は、1μm以下であるようにしてもよい。
【0019】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、
光源からの光路上に搭載された光拡散板を備え、
前記光拡散板は、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面に設けられ、共通の方向に延伸した異方形状を有する複数の凸構造又は凹構造から構成される構造体群と、
を備え、
前記複数の凸構造又は凹構造は、前記基材の前記主面上にランダムかつ密集して配置されており、
互いに隣接する前記複数の凸構造又は凹構造の間の境界は、互いに異なる曲率を有する複数の曲線で構成さ
れ、
前記複数の凸構造又は凹構造同士の重なり比率を表す重なり許容Ovが、以下の式(4)及び(5)で表されるとき、前記重なり許容Ovが25%超75%未満に制御されている、画像表示装置が提供される。
【数2】
前記式(4)及び(5)において、
aは、前記凸構造又は凹構造を平面視した楕円形状の長軸方向の径であり、bは、当該楕円形状の短軸方向の径であり、
dx、dyは、相互に隣接する前記凸構造又は凹構造を平面視した2つの楕円形状の中心の座標差であり、
dは、前記楕円形状を長軸方向に圧縮して真円形状に換算した場合の当該2つの楕円形状の中心間距離である。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、
光源の表面に搭載された光拡散板を備え、
前記光拡散板は、
基材と、
前記基材の少なくとも一方の主面に設けられ、共通の方向に延伸した異方形状を有する複数の凸構造又は凹構造から構成される構造体群と、
を備え、
前記複数の凸構造又は凹構造は、前記基材の前記主面上にランダムかつ密集して配置されており、
互いに隣接する前記複数の凸構造又は凹構造の間の境界は、互いに異なる曲率を有する複数の曲線で構成さ
れ、
前記複数の凸構造又は凹構造同士の重なり比率を表す重なり許容Ovが、以下の式(4)及び(5)で表されるとき、前記重なり許容Ovが25%超75%未満に制御されている、照明装置が提供される。
【数3】
前記式(4)及び(5)において、
aは、前記凸構造又は凹構造を平面視した楕円形状の長軸方向の径であり、bは、当該楕円形状の短軸方向の径であり、
dx、dyは、相互に隣接する前記凸構造又は凹構造を平面視した2つの楕円形状の中心の座標差であり、
dは、前記楕円形状を長軸方向に圧縮して真円形状に換算した場合の当該2つの楕円形状の中心間距離である。
【0021】
上記構成により、複数の凸構造又は凹構造の各々の異方形状の方向を共通とすることによって、光拡散板にて拡散された拡散光の配光角に異方性を付与することが可能である。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように本発明によれば、光拡散板において、拡散された光の異方形状を制御することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る光拡散板の構成を模式的に示した説明図である。
【
図2】同実施形態に係る光拡散板が有する凸構造の境界近傍を拡大して示す説明図である。
【
図3】基材の一主面に垂直な方向から凸構造を平面視した場合の凸構造の外形を模式的に示す説明図である。
【
図4A】第1の形状例に係る凸構造の平面形状を示す説明図である。
【
図4B】第1の形状例に係る凸構造の立体形状に示す斜視図である。
【
図4C】第1の形状例に係る凸構造の立体形状を決定する方法を示す説明図である。
【
図4D】第1の形状例に係る凸構造をシミュレーションによって細密かつランダムに配置した構造体群の一例を示す画像図である。
【
図4E】第1の形状例に係る凸構造を細密かつランダムに配置した構造体群をレーザ顕微鏡で20倍にて観察した例を示す画像図である。
【
図5A】第2の形状例に係る凸構造の平面形状を示す説明図である。
【
図5B】第2の形状例に係る凸構造の立体形状に示す斜視図である。
【
図5C】第2の形状例に係る凸構造の立体形状を決定する方法を示す説明図である。
【
図5D】第2の形状例に係る凸構造をシミュレーションによって細密かつランダムに配置した構造体群の一例を示す画像図である。
【
図5E】第2の形状例に係る凸構造を細密かつランダムに配置した構造体群をレーザ顕微鏡で20倍にて観察した例を示す画像図である。
【
図6】凸構造の他の形状を説明するための説明図である。
【
図7】複数の凸構造を細密かつランダムに配置した構造体群の一例を示す斜視図である。
【
図8】複数の凸構造を細密かつランダムに配置する配置方法の一例を説明するフローチャートである。
【
図9】生成された座標と、凸構造の各々の中心との換算距離を説明するための説明図である。
【
図10】凸構造同士の重なり許容を説明するための説明図である。
【
図11】凸構造同士の重なり許容を適切に制御しつつ、平坦部を無くすように凸構造を配置することを説明する説明図である。
【
図12】凸構造同士の重なり許容を適切に制御しつつ、平坦部を無くすように凸構造を配置することを説明する説明図である。
【
図13】本実施形態に係る光拡散板の製造方法の流れの一例を示したフローチャートである。
【
図14A】同実施形態に係る光拡散板の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【
図14B】同実施形態に係る光拡散板の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【
図14C】同実施形態に係る光拡散板の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【
図14D】同実施形態に係る光拡散板の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【
図14E】同実施形態に係る光拡散板の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【
図14F】同実施形態に係る光拡散板の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【
図14G】同実施形態に係る光拡散板の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【
図14H】同実施形態に係る光拡散板の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【
図15A】実施例1に係る光拡散板のレーザ顕微鏡画像である。
【
図15B】実施例1に係る光拡散板の電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図15C】実施例1に係る光拡散板のレーザ配光像である。
【
図15D】実施例1に係る輝度配光のグラフである。
【
図16A】実施例2に係る光拡散板のレーザ顕微鏡画像である。
【
図16B】実施例2に係る光拡散板の電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図16C】実施例2に係る光拡散板のレーザ配光像である。
【
図16D】実施例2に係る輝度配光のグラフである。
【
図17A】実施例3に係る光拡散板のレーザ顕微鏡画像である。
【
図17B】実施例3に係る光拡散板の電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図17C】実施例3に係る光拡散板のレーザ配光像である。
【
図17D】実施例3に係る輝度配光のグラフである。
【
図18】実施例4~6に係る光拡散板の生成パターンデータの画像、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図19】実施例7~9に係る光拡散板の生成パターンデータの画像、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図20】比較例4、及び実施例10~12に係る光拡散板の生成パターンデータの画像、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図21】比較例1~3に係る光拡散板の生成パターンデータの画像、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図22A】実施例13に係る光拡散板の生成パターンデータの画像である。
【
図22B】実施例13に係る光拡散板のレーザ配光像である。
【
図22C】実施例13に係る光拡散板の電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図23A】実施例14に係る光拡散板の生成パターンデータの画像である。
【
図23B】実施例14に係る光拡散板のレーザ配光像である。
【
図23C】実施例14に係る光拡散板の電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図24A】実施例15に係る光拡散板の生成パターンデータの画像である。
【
図24B】実施例15に係る光拡散板の電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【
図24C】実施例15に係る光拡散板のレーザ配光像である。
【
図24D】実施例15に係る輝度配光のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
<1.光拡散板>
まず、
図1~
図3を参照して、本発明の一実施形態に係る光拡散板について説明する。
図1は、本実施形態に係る光拡散板1の構成を模式的に示した説明図である。また、
図2は、本実施形態に係る光拡散板1が有する凸構造21の境界近傍を拡大して示す説明図であり、
図3は、基材10の一主面に垂直な方向から凸構造21を平面視した場合の凸構造21の外形を模式的に示す説明図である。
【0026】
図1に示すように、本実施形態に係る光拡散板1は、基材10と、構造体群20と、を備える。本実施形態に係る光拡散板1は、構造体群20をマイクロレンズアレイとするマイクロレンズアレイ型の光拡散板である。
【0027】
基材10は、光拡散板1に入射する光の波長帯域において透明とみなすことが可能な材質にて形成される。例えば、基材10は、可視光に対応する波長帯域において光透過率が70%以上の材質にて形成されてもよい。また、基材10は、フィルム状形状であってもよく、板状形状であってもよい。
図1では、基材10は、矩形の平面形状にて設けられるが、本実施形態に係る光拡散板1は、かかる例示に限定されない。基材10の平面形状は、光拡散板1が実装される装置の形状に応じて、任意の形状であってもよい。
【0028】
基材10は、例えば、ポリメチルメタクリレート(polymenthyl methacrylate:PMMA)、ポリエチレンテレフタレート(Polyethylene terephthalate:PET)、ポリカーボネート(polycarbonate:PC)又は環状オレフィン・コポリマー(Cyclo Olefin Copolymer:COC)等の公知の透明樹脂で形成されてもよく、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス又は白板ガラス等の公知の光学ガラスで形成されてもよい。
【0029】
構造体群20は、基材10の少なくとも一方の主面に設けられる。構造体群20は、微細な凸構造21又は凹構造の集合体であり構造体群20は、複数の凸構造21又は凹構造から構成される。複数の凸構造
21又は凹構造が、基材10の少なくとも一方の主面上に、細密に、連続してランダムに配置される。凸構造21又は凹構造の各々は、曲面からなる表面形状を有し、マイクロレンズアレイの単レンズを構成する。本実施形態では、
図1に示すように、基材10の一方の主面(表面)に複数の凸構造21が形成される例を説明するが、基材10の両方の主面(表面と裏面)に複数の凸構造21又は凹構造が形成されてもよい。また、以下では、構造体群20を構成する複数の単レンズが複数の凸構造21で構成される例について主に説明するが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、構造体群を構成する複数の単レンズは、複数の凹構造で構成されてもよい。
【0030】
構造体群20では、複数の凸構造21は、
図1に模式的に示すように、密集して配置され、好ましくは、細かく密集して(即ち、細密に)配置される。換言すると、構造体群20では、互いに隣接する凸構造21の間の境界に平坦部が存在しないように、複数の凸構造21は、互いに連続するように配置される。ただし、実際の製造上では、曲面を連続的に接続するために、凸構造21の間の境界の変曲点近傍が略平坦となることがあり得る。このような場合、凸構造21の間の境界において、略平坦となる変曲点近傍の幅(境界線の幅)は、1μm以下であることが好ましい。
【0031】
本実施形態に係る光拡散板1では、基材10の上に凸構造21を隙間なく密集して配置させることで、入射光のうち光拡散板の表面で散乱せずに透過してしまう0次透過光成分を抑制することが可能となる。これにより、光拡散板1では、光の拡散性能をより向上させることが可能となる。このとき、基材10の上の凸構造21の充填率は、90%以上であることが好ましく、100%であることがより好ましい。ここで、充填率は、基材10の主面上において複数の凸構造21又は凹構造が占める部分の面積の割合である。
【0032】
また、構造体群20では、複数の凸構造21は、
図1に模式的に示すように、規則的に配置されるのではなく、ランダム(不規則に)に配置される。ここで、「ランダム」とは、光拡散板1の構造体群20の任意の領域において、凸構造21の配置に実質的な規則性が存在しないことを表す。ただし、微小領域において凸構造21の配置に何らかの規則性が存在したとしても、任意の領域全体として凸構造21の配置に規則性が存在しないものは、「不規則」に含まれるものとする。なお、本実施形態に係る光拡散板1における凸構造21のランダムな配置方法については、後述する。
【0033】
凸構造21又は凹構造の形状は、凸構造21又は凹構造が単レンズ(マイクロレンズ)として機能すれば、特に限定されない。例えば、凸構造21又は凹構造の立体形状は、球面成分のみを含む曲面で形成されてもよく、又は非球面成分を含む曲面で形成されてもよい。また、凸構造21の又は凹構造の立体形状は、基材10の主面に対して凸であってもよく、凹であってもよい。
【0034】
また、本実施形態に係る光拡散板1の構造体群20では、凸構造21は、配置のみならず、開口径及び曲率半径についても、それぞれランダムにばらつきを有していてもよい。なお、凸構造21又は凹構造は単レンズ(マイクロレンズ)として機能するので、凸構造21又は凹構造の開口径は、単レンズのレンズ径に相当する。凸構造21又は凹構造の表面は曲面から構成される。各々の凸構造21の光学開口の位相分布は、方位によって異なる。複数の凸構造21が基材10の主面上に互いに重なり合うようにランダムに配置され、かつ凸構造21の各々の開口径(レンズ径)及び曲率半径がばらつきを有することで、複数の凸構造21の外形は、互いに同一形状とならなくなる。これにより、複数の凸構造21は、
図1に模式的に示したように様々な形状を有するようになるため、対称性を有しないものが多くなる。
【0035】
具体的には、本実施形態に係る構造体群20では、凸構造21の各々の曲面の曲率半径又は開口径が互いに摂動されるように、複数の凸構造21がランダムかつ密集し設けられてもよい。例えば、凸構造21の各々の曲面の曲率半径の摂動量をΔRとして、曲面の曲率半径の基準値をRとすると、ΔR/Rは、3%以上85%以下であることが好ましい。すなわち、凸構造21の各々の曲面の曲率半径は、基準値Rを3%以上85%以下で摂動させた値の範囲でばらついていてもよい。また、凸構造21の各々の曲面の開口径の摂動量をΔDとして、曲面の開口径の基準値をDとすると、ΔD/Dは、3%以上85%以下であることが好ましい。すなわち、凸構造21の各々の曲面の開口径は、基準値Dを3%以上85%以下で摂動させた値の範囲でばらついていてもよい。なお、摂動とは、所定の基準値からずれることを意味する。このように、本実施形態に係る構造体群20においては、各々の凸構造21の表面形状及び配置がランダムにばらついていることにより、各々の凸構造21を構成する曲面の曲率半径及び開口径が、基準値R、Dから所定範囲内でランダムにずれている(摂動されている)。
【0036】
このような場合、
図2に示すように、凸又は凹構造Aの曲率半径がr
Aである一方、隣接する凸又は凹構造Bの曲率半径がr
B(≠r
A)であるという状況が生じるようになる。互いに隣接する凸構造21の曲率半径が互いに異なる場合、互いに隣接する凸構造21の間の境界は直線のみで構成されず、少なくとも一部に曲線を含んで構成されるようになる。
【0037】
具体的には、
図3に模式的に示すように、基材10の一主面に垂直な方向から凸構造21を平面視した場合、凸構造21の外形(当該凸構造21と、隣接する他の複数の凸構造21との間の境界線)は、互いに曲率が異なる複数の曲線で構成されるようになる。凸構造21の間の境界が互いに曲率が異なる複数の曲線で構成される場合、凸構造21の間の境界の規則性がさらに崩れるため、光拡散板1では、拡散光の回折成分をさらに低減することができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る光拡散板1の構造体群20は、構造体群20の全体に亘って、共通の方向に異方性を有する凸構造21を、ランダムかつ密集させて配置することで構成される。具体的には、構造体群20は、一方向(長手方向ともいう)の長さが該一方向と直交する他方向(短手方向ともいう)の長さよりも長い平面形状を有する凸構造21を、それぞれの凸構造21の長手方向が同じ方向に向くようにランダムかつ細密に配置することで構成される。これによれば、本実施形態に係る光拡散板1は、投射面における拡散光の異方形状を制御することができる。具体的には、光拡散板1において、凸構造21の長手方向の光の拡散幅を小さくし、凸構造21の長手方向と直交する短手方向の光の拡散幅を大きくする。これにより、光拡散板1により拡散された光の異方形状を、投射面の形状に合わせて制御することができる。
【0039】
なお、ランダムかつ密集して配置される凸構造21の平面形状の異方性が小さい場合、凸構造21の間の重なり度合によっては、一部の凸構造21の平面形状の異方性を有しなくなることがあり得る。このような場合であっても、一部の凸構造21は、平面形状の異方性を維持しており、構造体群20全体としては異方性を有しているため、光拡散板1は、投射面における拡散光の異方形状を制御することができる。
【0040】
以下では、このような異方性を有する凸構造21について、より具体的に説明する。
【0041】
<2.凸構造>
(2.1.凸構造の形状)
まず、
図4A~
図6を参照して、凸構造21の単体での形状について説明する。凸構造21は、所定の方向に延伸した異方性を有する立体形状を有する。例えば、凸構造21の形状は、以下で説明する第1の形状例、又は第2の形状例のいずれかであってもよい。
【0042】
(第1の形状例)
図4A~
図4Eを参照して、凸構造21の第1の形状例(アナモルフィック形状)について説明する。
【0043】
図4Aは、第1の形状例に係る凸構造21の平面形状を示す説明図であり、
図4Bは、第1の形状例に係る凸構造21の立体形状を示す斜視図である。
図4Cは、第1の形状例に係る凸構造21の立体形状を決定する方法を示す説明図である。また、
図4Dは、第1の形状例に係る凸構造21をシミュレーションによって細密かつランダムに配置した構造体群20の一例を示す画像図であり、
図4Eは、第1の形状例に係る凸構造21を細密かつランダムに配置した構造体群20をレーザ顕微鏡で20倍にて観察した例を示す画像図である。
【0044】
図4A及び
図4Bに示すように、第1の形状例に係る凸構造21は、楕円形状の平面形状を有し、楕円形状の長軸方向及び短軸方向の各々に所定の曲率半径の曲面で凸となる立体形状であってもよい。すなわち、第1の形状例に係る凸構造21は、いわゆるアナモルフィックレンズ形状であってもよい。第1の形状例に係るアナモルフィック形状の凸構造21は、アナモルフィック形状の曲面を含む曲面で形成される。
【0045】
具体的には、第1の形状例に係る凸構造21の平面形状は、長軸の長さがDyであり、短軸の長さがDxである異方性を有する楕円形状である。また、第1の形状例に係る凸構造21の立体形状は、長軸方向の曲率半径がRyであり、短軸方向の曲率半径がRxである曲面の凸形状である。したがって、第1の形状例に係る凸構造21は、Y軸方向に異方性を有する立体形状となっている。
【0046】
より具体的には、第1の形状例に係る凸構造21の三次元形状は、以下の数式1によって決定される
図4Cに示す楕円形状から、X軸方向の長さが
Dxとなり、Y軸方向の長さが
Dyとなるように、凸構造21の曲面形状を切り出すことにより、決定されてもよい。なお、数式1において、Cx=1/Rxであり、Cy=1/Ryである。Kx及びKyは、コーニック係数であり、A
4及びA
6は、非球面係数である。
【0047】
【0048】
ここで、第1の形状例に係る凸構造21では、楕円形状の長軸の長さDy、短軸の長さDx、長軸方向の曲率半径Ry、及び短軸方向の曲率半径Rxは、凸構造21ごとに摂動割合δの摂動を受けてばらついている。摂動割合δは、例えば、3%以上85%以下であってもよい。摂動割合δが3%以上である場合、凸構造21の各々の形状が対称性を有しなくなりやすいため、光拡散板1の拡散光の回折成分をより低減することができる。一方、摂動割合δが85%以下である場合、凸構造21の各々の形状が過度にばらつかないため、光拡散板1の拡散光にむらを生じさせにくくすることができる。
【0049】
このような第1の形状例に係る凸構造21をシミュレーションによって細密かつランダムに配置した構造体群20の画像例を
図4Dに示す。
図4Dに示すように、第1の形状例に係る凸構造21をシミュレーションにて配置した構造体群20では、Y軸方向に異方性を有する凸構造21が細密かつランダムに配置されていることがわかる。また、
図4Dに示す構造体群20では、凸構造21の各々は、互いに同一形状とならず、対称性を有しない形状となっていることがわかる。
【0050】
また、このような第1の形状例に係る凸構造21を実際に細密かつランダムに配置した構造体群20のレーザ顕微鏡画像例を
図4Eに示す。
図4Eに示すように、第1の形状例に係る凸構造21を実際に配置した構造体群20では、
図4Dで示したシミュレーション結果と同様に、Y軸方向に異方性を有する凸構造21が細密かつランダムに配置されていることがわかる。
【0051】
(第2の形状例)
次に、
図5A~
図5Eを参照して、凸構造21の第2の形状例(トーラス形状)について説明する。
【0052】
図5Aは、第2の形状例に係る凸構造21の平面形状を示す説明図であり、
図5Bは、第2の形状例に係る凸構造21の立体形状に示す斜視図である。
図5Cは、第2の形状例に係る凸構造21の立体形状を決定する方法を示す説明図である。また、
図5Dは、第2の形状例に係る凸構造21をシミュレーションによって細密かつランダムに配置した構造体群20の一例を示す画像図であり、
図5Eは、第2の形状例に係る凸構造21を細密かつランダムに配置した構造体群20をレーザ顕微鏡で20倍にて観察した例を示す画像図である。
【0053】
図5A~
図5Cに示すように、第2の形状例に係る凸構造21は、円の外側に配置された回転軸で該円を回転させることで得られるドーナツ形状の一部を、回転軸と平行な平面で略楕円形状の平面形状を有するように切断した立体形状であってもよい。すなわち、第2の形状例に係る凸構造21は、いわゆるトーラスレンズ形状であってもよい。第2の形状例に係るトーラス形状の凸構造21は、トーラス形状の曲面を含む曲面で形成される。
【0054】
具体的には、第2の形状例に係る凸構造21の平面形状は、延伸方向の径がDyであり、延伸方向と直交する方向の径がDxである異方性を有する略楕円形状である。また、第2の形状例に係る凸構造21の立体形状は、延伸方向の曲率半径がRであり、延伸方向と直交する方向の曲率半径がrである曲面の凸形状となっている。したがって、第2の形状例に係る凸構造21は、Y軸方向に異方性を有する立体形状となっている。
【0055】
より具体的には、第2の形状例に係る凸構造21の三次元形状は、以下の数式2によって決定される
図5Cに示す中身の詰まったトーラス形状から、X軸方向の長さがDxとなり、Y軸方向の長さがDyとなるように、凸構造21の曲面形状を切り出すことで決定することができる。具体的には、第2の形状例に係る凸構造21の三次元形状は、小円半径rの円を大円半径Rの円の円周上で連続的に移動させることで生成される中身の詰まったトーラス形状の外周部分を切り出すことで決定することができる。なお、数式2において、Rは、大円半径であり、rは、小円半径である。
【0056】
【0057】
ここで、第2の形状例に係る凸構造21では、延伸方向の径Dy、延伸方向と直交する方向の径Dx、延伸方向の曲率半径R(すなわち、大円半径R)、及び延伸方向と直交する方向の曲率半径r(すなわち、小円半径r)は、凸構造21ごとに摂動割合δの摂動を受けてばらついている。摂動割合δは、例えば、3%以上85%以下であってもよい。摂動割合δが3%以上である場合、凸構造21の各々の形状が対称性を有しなくなりやすいため、光拡散板1の拡散光の回折成分を低減することができる。一方、摂動割合δが85%以下である場合、凸構造21の各々の形状が過度にばらつかないため、光拡散板1の拡散光にむらを生じさせにくくすることができる。
【0058】
このような第2の形状例に係る凸構造21をシミュレーションによって細密かつランダムに配置した構造体群20の画像例を
図5Dに示す。
図5Dに示すように、第2の形状例に係る凸構造21をシミュレーションにて配置した構造体群20では、Y軸方向に異方性を有する凸構造21が細密かつランダムに配置されていることがわかる。また、
図5Dに示す構造体群20では、凸構造21の各々は、互いに同一形状とならず、対称性を有しない形状となっていることがわかる。
【0059】
また、このような第2の形状例に係る凸構造21を実際に細密かつランダムに配置した構造体群20のレーザ顕微鏡画像例を
図5Eに示す。
図5Eに示すように、第2の形状例に係る凸構造21を実際に配置した構造体群20では、
図5Dで示したシミュレーション結果と同様に、Y軸方向に異方性を有する凸構造21が細密かつランダムに配置されていることがわかる。
【0060】
(その他の形状例)
なお、本実施形態に係る凸構造21の形状は、一方向に延伸した異方性を有する立体形状であれば、上述した第1の形状例及び第2の形状例に限定されない。例えば、本実施形態に係る凸構造21の形状は、
図6に示すような楕円球体を所定の平面で切断した形状であってもよい。
図6は、凸構造21の他の形状を説明するための説明図である。
【0061】
具体的には、
図6に示すように、本実施形態に係る凸構造21の立体形状は、球体を一軸方向に延伸した楕円球体を、該一軸方向に平行な平面で切断した立体形状であってもよい。このような場合であっても、本実施形態に係る凸構造21は、一方向に延伸した異方性を有する立体形状となるため、光拡散板1にて拡散された光の、投射面における異方形状を制御することができる。
【0062】
(2.2.凸構造の配置)
次に、
図7~
図12を参照して、複数の凸構造21の配置例について説明する。
【0063】
まず、
図7~
図9を参照して、構造体群20を構成するための複数の凸構造21の配置例について説明する。
図7は、複数の凸構造21を細密かつランダムに配置した構造体群20の一例を示す斜視図である。
図8は、複数の凸構造21を最密かつランダムに配置する配置方法の一例を説明するフローチャートであり、
図9は、生成された座標と、凸構造21の各々の中心との換算距離を説明するための説明図である。
【0064】
本実施形態に係る凸構造21は、平面形状が楕円形状であり、基材10の一主面に対して垂直な方向に凸である基本形状を有する。かかる基本形状を有する複数の凸構造21を基材10上に細密かつランダムに重ね合わせて配置することで、
図7に示すような形状を有する構造体群20を形成することができる。具体的には、基本形状(曲率半径及び開口径を摂動させる前の形状)の凸構造21を
図8に示すフローチャートにしたがって配置することで、凸構造21を細密かつランダムに配置することができる。
【0065】
図8に示すように、まず、凸構造21の基本形状を決定するために必要なパラメータを設定する(S100)。続いて、設定したパラメータに基づいて、凸構造21の基本形状を決定する(S110)。具体的には、凸構造21の基本形状として、平面形状が楕円形状であり、曲面で凸となる三次元形状を決定する。次に、凸構造21の基本形状を配置するX座標及びY座標を乱数で決定する(S120)。
【0066】
続いて、乱数で決定されたX座標及びY座標と、既にS150にて記憶された凸構造21の基本形状のX座標及びY座標との換算距離を算出し、算出した換算距離の最小値を取得する(S130)。具体的には、
図9に示すように、S120で決定されたX座標及びY座標と、後述するS150で既に記憶された凸構造21の各々の中心との換算距離を算出し、算出した換算距離の最小値を取得する。
【0067】
ここで、換算距離とは、凸構造21の平面形状である楕円形状を長軸方向に圧縮して真円に換算した際の距離である。例えば、凸構造21の平面形状である楕円形状の長軸方向の長さをA、短軸方向の長さをB、距離を算出する2つの凸構造21の中心座標を(x1、y1)及び(x2、y2)とすると、換算距離Lは、以下の数式3にて算出することができる。
【0068】
【0069】
次に、取得した換算距離の最小値が設定値未満であるかを判断する(S140)。ここで、取得した換算距離の最小値が設定値以上である場合(S140/No)、S120で決定したX座標及びY座標を記憶し(S150)、S120に戻って、再度、凸構造21の基本形状を配置するX座標及びY座標を乱数で決定する。記憶されたX座標及びY座標は、以降、S130にて乱数で決定されたX座標及びY座標との換算距離を算出するために用いられる。すなわち、S150では、既に配置された凸構造21との距離が設定値以上離れている凸構造21の中心座標のみが記憶されることになる。なお、設定値は、例えば、凸構造21の楕円形状の短軸方向の直径を100%とした場合の10%等としてもよい。
【0070】
取得した換算距離の最小値が設定値未満である場合(S140/Yes)、取得した換算距離の最小値が設定値未満となったことが連続して設定回数続いたか否かを判断する。取得した換算距離の最小値が設定値未満となったことが設定回数続いていない場合(S160/No)、S120に戻って、再度、凸構造21の基本形状を配置するX座標及びY座標を乱数で決定する(S120)。
【0071】
一方、取得した換算距離の最小値が設定値未満となったことが設定回数続いた場合(S160/Yes)、凸構造21が密集して配置されたと判断する。すなわち、取得した換算距離の最小値が設定値未満となったことが設定回数続いた場合、凸構造21を他の凸構造21と設定値以上離して設置することができなくなり、凸構造21を十分に密集させて配置することができたと判断する。その後、記憶された座標ごとに凸構造21の基本形状を形成することで、凸構造21がランダムかつ密集して配置された構造体群20の三次元形状を形成することができる。また、凸構造21の各々は、基本形状からそれぞれ曲率半径及び開口径が摂動されることで、より形状の対称性が低くなるように形成されてもよい。
【0072】
図8及び
図9を参照して説明した凸構造21の配置方法は、凸構造21が既に配置された領域を避けるように、凸構造21を配置する方法である。この配置方法によれば、凸構造21が、ランダムかつ、より細密に配置された構造体群20を形成することができる。ただし、本実施形態に係る凸構造21の配置方法は、上述した方法に限定されず、他の方法を用いることも可能である。
【0073】
上述した凸構造21の配置方法によれば、凸構造21の各々の重なり許容を0%よりも大きくしつつ、凸構造21の各々の重なり許容が過度に大きくなりすぎないように制御して凸構造21を配置することが可能である。
【0074】
かかる点について、
図10~
図12を参照して説明する。
図10は、凸構造21同士の重なり許容を説明するための説明図である。
図11及び
図12は、凸構造21同士の重なり許容を適切に制御しつつ、平坦部を無くすように凸構造21を配置することを説明する説明図である。
【0075】
まず、
図10を参照して、凸構造21同士の重なり許容について説明する。重なり許容とは、凸構造21同士の重なり比率を表す指標である。重なり許容は、凸構造21の楕円形状を長軸方向に圧縮し、凸構造21を真円形状に換算した際の中心間距離から算出することができる。
【0076】
具体的には、
図10に示すように、まず、凸構造21の楕円形状の長軸方向の径をa、短軸方向の径をbとし、凸構造21の各々の楕円形状の中心の座標差をdx、dyとする。このとき、以下の数式4にて、凸構造21の楕円形状を長軸方向に圧縮した際の楕円形状の中心間距離dを算出することができる。さらに、以下の数式5にて、中心間距離dを用いて、凸構造21同士の重なり許容Ovを算出することができる。
【0077】
【0078】
【0079】
凸構造21同士の重なり許容Ovは、凸構造21同士が完全に重なる場合が1(百分率では100%)となり、凸構造21同士が接する場合が0(百分率では0%)となり、凸構造21同士が離れる場合が<0(すなわち、負値)となる指標である。上述した凸構造21の配置方法によれば、凸構造21の各々の重なり許容を0%超100%未満、好ましくは25%超75%未満に制御することができる。
【0080】
例えば、
図11に示すように、複数の実数円が互いに重なり合うように凸構造21が配置された場合、上述した凸構造21の配置方法によれば、凸構造21の間の平坦部を無くすために、破線円のように凸構造21を配置することができる。
【0081】
また、
図12に示すように、2つの実線円が接するように凸構造21が配置された場合、上述した凸構造21の配置方法によれば、凸構造21の間の平坦部を無くすために、破線円のように凸構造21を配置することができる。このような場合、凸構造21の重なり許容は、0.5(百分率では50%)となる。
【0082】
以上のように、本実施形態に係る光拡散板1は、基材10の主面上に展開された微細凹凸構造の集合体である構造体群20(マイクロレンズアレイ)が設けられている。構造体群20の最小単位は、微細な凸構造21(又は凹構造)であり、凸構造21の各々は単レンズ(マイクロレンズ)として機能する。各々の凸構造21の光学開口の位相分布は、方位によって異なる。個々の凸構造21の表面形状は、曲面のみから構成され、その平面形状は略楕円状である。切断面の方向によって凸構造21の垂直断面形状が異なる。
図3に示したように、各々の凸構造21の外形線(1つの凸構造21と、当該1つの凸構造21と隣接する他の複数の凸構造21との間の境界線)は、相異なる曲率半径を有する少なくとも2つの曲線から構成される。かかる構造を有する複数の凸構造21を、基材10の主面上に、隙間なく細密に連続してランダムに配置することで、光学構造体としての構造体群20が構成される。かかる構成の構造体群20は、表面構造に依存するマクロ光量変動や、回折光による光量変化が小さく、均質性の高い多様な配光制御性を有する。構造体群20は、媒体の片面、両面、曲面上に展開されて、光学機能を提供する。
【0083】
<3.光拡散板の製造方法>
続いて、
図13を参照して、本実施形態に係る光拡散板1の製造方法の一例について、簡単に説明する。
図13は、本実施形態に係る光拡散板の製造方法の流れの一例を示したフローチャートである。
【0084】
図13に示すように、まず、基材の洗浄が実行される(S200)。基材は、例えば、ガラスロールのようなロール形状であってもよく、ガラスウェハ又はシリコンウェハのように平板形状であってもよい。
【0085】
次に、洗浄後の基材の一方の主面に対して、レジスト層が形成される(S210)。例えば、金属酸化物を用いたレジストにより、レジスト層を形成することができる。具体的には、ロール形状の基材に対しては、レジストをスプレイ塗布又はディッピング処理することにより、レジスト層を形成することができる。一方、平板形状の基材に対しては、レジストを各種コーティング処理することにより、レジスト層を形成することができる。
【0086】
続いて、レジスト層が形成された基材に対して、構造体群20の形状に対応したパターンの露光処理が実行される(S220)。露光処理は、例えば、グレースケールマスクを用いた露光、複数のグレースケールマスクの重ね合わせによる多重露光、グレイマスク露光、又はレーザ描画などの公知の露光方法を適宜適用することで実行することができる。
【0087】
その後、露光後の基材を現像する(S230)。これにより、レジスト層にパターンが形成される。現像は、レジスト層の材質に応じて、適切な現像液を用いることで実行することができる。例えば、レジスト層が金属酸化物を用いたレジストで形成されている場合、無機又は有機アルカリ溶液を用いることで、レジスト層を現像することができる。
【0088】
次に、現像によりパターンが形成されたレジスト層を用いて、表面に構造体群20の形状が形成されたマスタ原盤を製造する(S240)。具体的には、パターンが形成されたレジスト層をマスクとしてガラスエッチングを行うことで、ガラスマスタを製造することができる。または、パターンが形成されたレジスト層にNiスパッタ又はニッケルめっき(NED処理)を行い、パターンが転写されたニッケル層を形成した後、基材を剥離することで、メタルマスタを製造することができる。
【0089】
続いて、マスタ原盤を用いて、樹脂フィルム等にパターンを転写することで、表面に構造体群20の反転形状が形成されたソフトモールドを製造することができる(S250)。
【0090】
さらに、ソフトモールドを用いて、ガラス基板又はフィルム基材にインプリント処理を実行することで、本実施形態に係る光拡散板1を製造することができる(S260)。
【0091】
なお、
図13に示した製造方法は、あくまでも一例であって、本実施形態に係る光拡散板1の製造方法が上述した例に限定されるものではない。
【0092】
<4.光拡散板の適用例>
次に、
図14A~
図14Hを参照して、本実施形態に係る光拡散板1の適用例について、簡単に説明する。
図14A~
図14Hは、本実施形態に係る光拡散板1の適用例の一例を模式的に示した説明図である。
【0093】
以上説明したような本実施形態に係る光拡散板1は、機能を実現するために光を拡散させる必要がある装置に対して、適宜実装することが可能である。このような装置としては、例えば、各種ディスプレイを含む表示装置、プロジェクタ等の投影装置、又は照明装置を例示することができる。
【0094】
図14A~
図14Cに示すように、本実施形態に係る光拡散板1は、例えば、液晶表示装置において、バックライトの光を拡散させるために用いることができる。
【0095】
具体的には、
図14Aに示すように、光拡散板1は、透過型液晶表示装置において、液晶パネル120と、反射板110の上に設けられたLED(Light Emitting Diode)バックライト130との間に設けられてもよい。また、
図14Bに示すように、光拡散板1は、透過型液晶表示装置において、液晶パネル120と、反射板110の上に設けられたLEDバックライト130との間に、レンズと一体化された光拡散板一体化レンズ101として設けられてもよい。さらに、
図14Cに示すように、光拡散板1は、反射型液晶表示装置において、液晶パネル120と、反射板110との間に設けられてもよい。
【0096】
図14Dに示すように、本実施形態に係る光拡散板1は、例えば、照射された光の波形を整形する光整形用途に用いることができる。
【0097】
図14E及び
図14Fに示すように、本実施形態に係る光拡散板1は、例えば、照明装置において、光源からの光を拡散させるために用いることができる。
【0098】
具体的には、
図14Eに示すように、凹形状の反射面141の内部に光源142が設けられた照明装置において、光拡散板1は、光の出射面に設けられてもよい。また、
図14Fに示すように、負極143、有機発光層144、正極145及びガラス基板146を順に積層させた有機EL照明装置において、光拡散板1は、ガラス基板146の上面の光拡散面に設けられてもよい。
【0099】
図14G及び
図14Hに示すように、本実施形態に係る光拡散板1は、例えば、プロジェクタ等の投影装置において、光を拡散させるために用いることができる。
【0100】
具体的には、
図14Gに示すように、投射面151を透過した画像がユーザ170に提示される透過型の投影装置において、光拡散板1は、プロジェクタ160からの光が投射される投射面151(例えば、透過スクリーン又はフレネルレンズ)に適用されることができる。また、
図14Hに示すように、光拡散板1は、反射スクリーン153にて反射され、ウィンドウシールドに投射された画像がユーザ170に提示される反射型の投影装置において、光拡散板1は、プロジェクタ160からの光を反射する反射スクリーン153に適用されることができる。
【0101】
なお、本実施形態に係る光拡散板1が適用される装置は、上記の例に限定されるものではない。本実施形態に係る光拡散板1は、光の拡散を利用する装置であれば、いずれの公知の装置に対しても適用することが可能である。
【実施例】
【0102】
続いて、実施例及び比較例を示しながら、本実施形態に係る光拡散板について、具体的に説明する。なお、以下に示す実施例は、あくまでも本発明に係る光拡散板の一例にすぎず、本実施形態に係る拡散板が下記の例に限定されるものではない。
【0103】
構造体群の形状を変更しつつ、以下で説明する方法を用いて、実施例及び比較例に係る光拡散板を製造した。
【0104】
具体的には、まず、ガラス又はシリコンの基材を洗浄した後、基材の一主面に光反応レジストを2μm~15μmのレジスト厚で塗布した。なお、基材とレジストとの密着性を高めるために、カップリング剤を使用してもよい。光反応レジストとしては、例えば、PMER-LA900(東京応化工業社製)、又はAZ(登録商標)4620(AZエレクトロニックマテリアルズ社製)などのポジ型光反応レジストを用いることができる。また、光反応レジストとして、ネガ型光反応レジストを用いることも可能である。
【0105】
次に、波長405nmのレーザを用いたレーザ描画装置にて、基材上のレジストにパターンを描画することで、露光を行った。または、g線を用いたステッパ露光装置にて、基材上のレジストにマスク露光を行うことで露光を行ってもよい。
【0106】
続いて、レジストを現像することで、レジストにパターンを形成した。現像液としては、例えば、NMD-W(東京応化工業社製)、又はPMER P7G(東京応化工業社製)などの水酸化テトラメチルアンモニウム(Tetramethylammonium hydroxide:TMAH)溶液を用いることができる。
【0107】
次に、パターンが形成されたレジストを用いて、マスタ原盤を製造した。具体的には、Arガス又はCF4ガスを用いたガラスエッチングによって、レジストのパターンを基材に形成することで、マスタ原盤を製造することができる。または、膜厚50nm程度のNiスパッタ、又は膜厚100μm~200μmのニッケルめっき(例えば、スルファミン酸Ni浴)等によって、レジストのパターンが転写されたニッケル層を形成することで、マスタ原盤を製造することができる。
【0108】
続いて、マスタ原盤のパターンを樹脂等にインプリント転写することで、光拡散板を製造した。具体的には、PET(PolyEthylene Terephthalate)又はPC(PolyCarbonate)の基材にアクリル系光硬化樹脂を塗布し、塗布したアクリル系光硬化樹脂にマスタ原盤のパターンを転写し、UV硬化させることで、光拡散板を製造した。
【0109】
製造した実施例及び比較例に係る光拡散板の構造体群の形状を以下の表1に示す。なお、実施例に係る光拡散板の構造体群は、Y軸方向に異方性を有するものとする。
【0110】
【0111】
また、製造した光拡散板の構造体群の形状をレーザ顕微鏡にて観察した。さらに、製造した光拡散板の配光パターンは、Virtual-Lab(LightTrans社製)にてシミュレーションし、製造した光拡散板の配光特性は、配光特性測定器Mini-Diff(Light Tec社製)にて測定した。
【0112】
製造した実施例及び比較例に係る光拡散板の構造体群の最大高低差ΔZ、最小波長0.5μm(λmin.)における光学位相差成分Ψ、及び最大波長2μm(λmax.)における光学位相差成分Ψ、並びにそれらの分散σ(Z)、σ(Ψ)を測定した結果を以下の表2に示す。
【0113】
また、表2では、実施例及び比較例に係る光拡散板にて拡散された光の異方性を示す指標であるALCR(Anisotropic Light Contribution Rate)を示す。ALCRは、光拡散板のX軸方向(凸又は凹構造の延伸方向と直交する方向)の配光角の半値幅WOを、Y軸方向(凸又は凹構造の延伸方向)の配光角の半値幅WLで除算した値である(ALCR=WO/WL)。ALCRが大きい程、光拡散板の配光の異方性が高いことを示す。
【0114】
【0115】
表1及び表2に示すように、実施例1~15に係る光拡散板では、いずれもALCRが1より大きくなっており、拡散光の異方性が制御されていることがわかる。一方、比較例1~3に係る光拡散板では、拡散光は等方的であり、かつ六方最密構造に起因して拡散光に回折成分が視認可能な程度に含まれていることがわかる。
【0116】
また、実施例1~15に係る光拡散板では、0.35μmの最小波長の光に対する光学位相差成分Ψ、及び2μmの最大波長の光に対する光学位相差成分Ψの大きさが小さくなっており、かつ0.35μmの最小波長の光に対する位相差分散σ(Ψ)、及び2μmの最大波長の光に対する位相差分散σ(Ψ)の大きさも小さくなっている。したがって、実施例1~15に係る光拡散板では、拡散された配光の均質性が高く、拡散された配光に含まれる回折光成分が極めて小さいことがわかる。本実施形態に係る光拡散板では、0.35μmの最小波長の光及び2μmの最大波長の光に対する光学位相差成分Ψは、150未満であることが好ましい。また、本実施形態に係る光拡散板では、0.35μmの最小波長の光及び2μmの最大波長の光に対する位相差分散σ(Ψ)は、200未満であることが好ましい。なお、光学位相差成分Ψ及び位相差分散σ(Ψ)は、特に下限を定めないが、光拡散板の構成上、0よりは大きくなる。
【0117】
ここで、実施例1に係る光拡散板のレーザ顕微鏡画像(倍率50倍)、電磁場解析による配光のシミュレーション結果、レーザ配光像、及び輝度配光のグラフを
図15A、
図15B、
図15C及び
図15Dにそれぞれ示す。
【0118】
図15Aに示すように、実施例1に係る光拡散板では、異方性を有するアナモルフィックレンズ形状の凸構造が細密かつランダムに配置されていることがわかる。また、
図15B~
図15Dに示すように、実施例1に係る光拡散板では、拡散された光の均質性が高く、かつ配光角が異方性を有するように制御されていることがわかる。なお、ALCRは、
図15Dに示したグラフのX方向及びY方向のピークの半値幅の比を取ったものである。
【0119】
実施例2に係る光拡散板のレーザ顕微鏡画像(倍率50倍)、電磁場解析による配光のシミュレーション結果、レーザ配光像、及び輝度配光のグラフを
図16A、
図16B、
図16C及び
図16Dにそれぞれ示す。
【0120】
図16Aに示すように、実施例2に係る光拡散板では、異方性を有するトーラスレンズ形状の凸構造が細密かつランダムに配置されていることがわかる。また、
図16B~
図16Dに示すように、実施例2に係る光拡散板では、拡散された光の均質性が高く、かつ配光角が異方性を有するように制御されていることがわかる。
【0121】
実施例3に係る光拡散板のレーザ顕微鏡画像(倍率50倍)、電磁場解析による配光のシミュレーション結果、レーザ配光像、及び輝度配光のグラフを
図17A、
図17B、
図17C及び
図17Dにそれぞれ示す。
【0122】
図17Aに示すように、実施例3に係る光拡散板では、異方性を有するトーラスレンズ形状の凸構造が細密かつランダムに配置されていることがわかる。また、
図17B~
図17Dに示すように、実施例3に係る光拡散板では、拡散された光の均質性が高く、かつ配光角が異方性を有するように制御されていることがわかる。
【0123】
実施例4~6に係る光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果を
図18に示す。
図18では、上段が光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)であり、下段が電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【0124】
図18に示すように、実施例4~6に係る光拡散板では、摂動率の増加に伴って、拡散光の均質性がより高くなることがわかる。特に、摂動率が3%以上の場合(実施例5及び6)では、拡散光の均質性が極めて高くなり、拡散光に回折パターンが視認されなくなることがわかる。
【0125】
実施例7~9に係る光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果を
図19に示す。
図19では、上段が光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)であり、下段が電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【0126】
図19に示すように、実施例7~9に係る光拡散板では、摂動率が過度に増加することで、拡散光にむらが生じてしまうことがわかる。特に、摂動率が85%以上の場合(実施例9)では、拡散光のむらが視認可能な程度に大きくなることがわかる。
【0127】
比較例4、及び実施例10~12に係る光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果を
図20に示す。
図20では、上段が光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)であり、下段が電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【0128】
図20に示すように、比較例4に係る光拡散板では、凸構造が異方性を有しない等方的な形状であるため、拡散光も等方的な形状であることがわかる。一方、実施例10~12に係る光拡散板では、凸構造が異方性を有する形状であるため、ALCRが1.05以上となり、異方性を有する拡散光となっていることがわかる。また、凸構造の異方性が大きくなるほど、拡散光の異方性も高くなることがわかる。
【0129】
比較例1~3に係る光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果を
図21に示す。
図21では、上段が光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)であり、下段が電磁場解析による配光のシミュレーション結果である。
【0130】
図21に示すように、比較例1~3に係る光拡散板では、凸構造が等方的な形状であるため、拡散光も等方的であることがわかる。また、比較例1~3に係る光拡散板では、凸構造の六方最密配置に起因して、拡散光に回折成分が視認可能な程度に含まれていることがわかる。
【0131】
実施例13に係る光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)、レーザ配光像、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果を
図22A、
図22B及び
図22Cにそれぞれ示す。
【0132】
図22Aに示すように、実施例13に係る光拡散板では、極めて高い異方性を有する凸構造が細密かつランダムに配置されていることがわかる。また、
図22B及び
図22Cに示すように、実施例13に係る光拡散板では、凸構造がこのような極めて高い異方性を有する場合でも、拡散光の異方性を制御することができることがわかる。
【0133】
実施例14に係る光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)、レーザ配光像、及び電磁場解析による配光のシミュレーション結果を
図23A、
図23B及び
図23Cにそれぞれ示す。
【0134】
図23Aに示すように、実施例14に係る光拡散板では、極めて高い異方性を有する凸構造が細密かつランダムに配置されていることがわかる。また、
図23B及び
図23Cに示すように、実施例14に係る光拡散板では、凸構造がこのような極めて高い異方性を有する場合でも、拡散光の異方性を制御することができることがわかる。
【0135】
実施例15に係る光拡散板の生成パターンデータの画像(BMP)、電磁場解析による配光のシミュレーション結果、レーザ配光像、及び輝度配光のグラフを
図24A、
図24B、
図24C及び
図24Dにそれぞれ示す。
【0136】
図24Aに示すように、実施例15に係る光拡散板では、極めて高い異方性を有する凸構造が細密かつランダムに配置されていることがわかる。また、
図24B~
図24Dに示すように、実施例15に係る光拡散板では、凸構造がこのような極めて高い異方性を有する場合でも、拡散光の異方性を制御することができることがわかる。すなわち、実施例13~15に係る光拡散板によれば、凸構造がアナモルフィックレンズ形状又はトーラスレンズ形状のいずれであっても、極めて高い異方性を有するように拡散光を配光することができることがわかる。
【0137】
実施例13~15に係る光拡散板からわかるように、本実施形態に係る光拡散板のALCRの上限は特に限定されない。ただし、製造上の難易度等の観点から、本実施形態に係る光拡散板のALCRの上限は、例えば、500としてもよい。
【0138】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0139】
1 光拡散板
10 基材
20 構造体群
21 凸構造