(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】コモンモードチョークコイル
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20240524BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20240524BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F17/00 D
H01F17/04 A
H01F17/04 F
(21)【出願番号】P 2019202352
(22)【出願日】2019-11-07
【審査請求日】2021-04-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】松浦 耕平
【合議体】
【審判長】篠原 功一
【審判官】井上 信一
【審判官】山本 章裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-245369(JP,A)
【文献】特開2008-277695(JP,A)
【文献】特開2019-36698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 17/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁層が高さ方向に積層されてなる素体と、
前記素体に各々内蔵された第1のコイル及び第2のコイルと、
前記素体の表面上に設けられ、前記第1のコイルの一端に電気的に接続された第1の外部電極と、
前記素体の表面上で前記高さ方向に直交する幅方向において前記第1の外部電極に対向する位置に設けられ、前記第1のコイルの他端に電気的に接続された第2の外部電極と、
前記素体の表面上に設けられ、前記第2のコイルの一端に電気的に接続された第3の外部電極と、
前記素体の表面上で前記幅方向において前記第3の外部電極に対向する位置に設けられ、前記第2のコイルの他端に電気的に接続された第4の外部電極と、を備え、
前記素体は、前記第1のコイル及び前記第2のコイルのコイル軸が延伸する前記高さ方向に直交する実装面を有し、
前記第1のコイルの一端及び他端は、各々、前記素体の前記実装面以外の表面に引き出されて前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極に電気的に接続され、
前記第1のコイルは、第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体が前記絶縁層とともに前記高さ方向に積層されつつ電気的に接続されてなり、
前記第1のコイル導体は、第1のライン部と、第1のランド部と、を有し、
前記第1のライン部の一端は、前記第1の外部電極から引き出された第1の引き出し電極に接続され、
前記第1のライン部の他端は、前記幅方向において、前記第1の引き出し電極側から前記第1のランド部に接続され、
前記第2のコイル導体は、第2のライン部と、前記第1のランド部に電気的に接続された第2のランド部と、を有し、
前記第2のライン部の一端は、前記第2の外部電極から引き出された第2の引き出し電極に接続され、
前記第2のライン部の他端は、前記幅方向において、前記第2の引き出し電極側から前記第2のランド部に接続され、
前記第2のコイルの一端及び他端は、各々、前記素体の前記実装面以外の表面に引き出されて前記第3の外部電極及び前記第4の外部電極に電気的に接続され、
前記第2のコイルは、第3のコイル導体及び第4のコイル導体を含む複数のコイル導体が前記絶縁層とともに前記高さ方向に積層されつつ電気的に接続されてなり、
前記第3のコイル導体は、第3のライン部と、第3のランド部と、を有し、
前記第3のライン部の一端は、前記第3の外部電極から引き出された第3の引き出し電極に接続され、
前記第3のライン部の他端は、前記幅方向において、前記第3の引き出し電極側から前記第3のランド部に接続され、
前記第4のコイル導体は、第4のライン部と、前記第3のランド部に電気的に接続された第4のランド部と、を有し、
前記第4のライン部の一端は、前記第4の外部電極から引き出された第4の引き出し電極に接続され、
前記第4のライン部の他端は、前記幅方向において、前記第4の引き出し電極側から前記第4のランド部に接続され、
前記第1のコイルのインダクタンスをL1、前記第2のコイルのインダクタンスをL2とするとき、1GHzにおいて、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)≦5、という関係を満たし、
前記第1のコイルの経路長をR1、前記第2のコイルの経路長をR2とすると、R1≠R2であり、かつ、R1>R2のときに100×(R1-R2)/R1≦3、という関係を満たし、R2>R1のときに100×(R2-R1)/R2≦3、という関係を満たす、ことを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項2】
複数の絶縁層が高さ方向に積層されてなる素体と、
前記素体に各々内蔵された第1のコイル及び第2のコイルと、
前記素体の表面上に設けられ、前記第1のコイルの一端に電気的に接続された第1の外部電極と、
前記素体の表面上で前記高さ方向に直交する幅方向において前記第1の外部電極に対向する位置に設けられ、前記第1のコイルの他端に電気的に接続された第2の外部電極と、
前記素体の表面上に設けられ、前記第2のコイルの一端に電気的に接続された第3の外部電極と、
前記素体の表面上で前記幅方向において前記第3の外部電極に対向する位置に設けられ、前記第2のコイルの他端に電気的に接続された第4の外部電極と、を備え、
前記素体は、前記第1のコイル及び前記第2のコイルのコイル軸が延伸する前記高さ方向に直交する実装面を有し、
前記第1のコイルの一端及び他端は、各々、前記素体の前記実装面以外の表面に引き出されて前記第1の外部電極及び前記第2の外部電極に電気的に接続され、
前記第2のコイルの一端及び他端は、各々、前記素体の前記実装面以外の表面に引き出されて前記第3の外部電極及び前記第4の外部電極に電気的に接続され、
前記第1のコイル及び前記第2のコイルのうち、一方のコイル径は他方のコイル径よりも小さく、
前記第1のコイルのインダクタンスをL1、前記第2のコイルのインダクタンスをL2とするとき、1GHzにおいて、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)≦5、という関係を満たし、
前記第1のコイルの経路長をR1、前記第2のコイルの経路長をR2とすると、R1≠R2であり、かつ、R1>R2のときに100×(R1-R2)/R1≦3、という関係を満たし、R2>R1のときに100×(R2-R1)/R2≦3、という関係を満たす、ことを特徴とするコモンモードチョークコイル。
【請求項3】
100MHzにおいて、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)≦3、という関係を満たす、請求項1
又は2に記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項4】
前記L1及び前記L2は、各々、1nH以上、10nH以下である、請求項1~3のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。
【請求項5】
前記絶縁層は、ガラスセラミック材料からなる、請求項1~4のいずれかに記載のコモンモードチョークコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コモンモードチョークコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
回路用ノイズフィルタの一種として、コモンモードチョークコイルが知られている。例えば、特許文献1には、絶縁体からなる本体と、螺旋状のコイル部及びコイル部に接続され直線的に延在する引き出し部から構成され、本体に設けられた複数のコイル導体と、本体の表面に設けられている複数の外部電極と、引き出し部と外部電極とを接続する複数の外部パッドと、を備え、コイル部と引き出し部とが接続される接点において、コイル部と引き出し部とが成す角度は鈍角である、コモンモードチョークコイルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のコモンモードチョークコイルでは、コイル導体で発生した磁束の一部が打ち消されることによるインダクタンスの低下を抑制するため、コイル部と引き出し部とが接続される接点において、コイル部と引き出し部とが成す角度を鈍角としている。しかしながら、このようなコモンモードチョークコイルでは、2つのコイルの経路長が大きく異なるため、2つのコイルのインダクタンスが大きくずれるおそれがある。よって、このようなコモンモードチョークコイルを回路に組み込むと、各コイルに対応するライン間で、信号線とグランド(GND)との間の特性インピーダンスが大きくずれるため、一方のラインの信号波形が鈍ってしまうおそれがある。つまり、コモンモードチョークコイルによるノイズ抑制機能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ノイズ抑制機能に優れたコモンモードチョークコイルを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコモンモードチョークコイルは、複数の絶縁層が高さ方向に積層されてなる素体と、上記素体に各々内蔵された第1のコイル及び第2のコイルと、上記素体の表面上に設けられ、上記第1のコイルの一端に電気的に接続された第1の外部電極と、上記素体の表面上で上記高さ方向に直交する幅方向において上記第1の外部電極に対向する位置に設けられ、上記第1のコイルの他端に電気的に接続された第2の外部電極と、上記素体の表面上に設けられ、上記第2のコイルの一端に電気的に接続された第3の外部電極と、上記素体の表面上で上記幅方向において上記第3の外部電極に対向する位置に設けられ、上記第2のコイルの他端に電気的に接続された第4の外部電極と、を備え、上記第1のコイルのインダクタンスをL1、上記第2のコイルのインダクタンスをL2とするとき、1GHzにおいて、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)≦5、という関係を満たす、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ノイズ抑制機能に優れたコモンモードチョークコイルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のコモンモードチョークコイルの一例を示す斜視模式図である。
【
図2】
図1中の素体の内部構造の一例を示す分解平面模式図である。
【
図3】
図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図4】
図1中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図5】
図1中の線分C1-C2に対応する部分を示す断面模式図である。
【
図6】第1のコイル及び第2のコイルのインダクタンスの測定方法を説明するための模式図である。
【
図7】第1のコイル及び第2のコイルのインダクタンスの測定方法を説明するための模式図である。
【
図8】従来のコモンモードチョークコイルにおける素体の内部構造を示す分解平面模式図である。
【
図9】
図1中の素体の内部構造の別の一例を示す分解平面模式図である。
【
図10】実施例1のコモンモードチョークコイルにおいて、第1のコイル及び第2のコイルのインダクタンスの周波数特性を示すグラフである。
【
図11】比較例1のコモンモードチョークコイルにおいて、第1のコイル及び第2のコイルのインダクタンスの周波数特性を示すグラフである。
【
図12】実施例1のコモンモードチョークコイルにおいて、第1のコイル及び第2のコイルのインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【
図13】比較例1のコモンモードチョークコイルにおいて、第1のコイル及び第2のコイルのインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のコモンモードチョークコイルについて説明する。なお、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更されてもよい。また、以下において記載する個々の好ましい構成を複数組み合わせたものもまた本発明である。
【0010】
[コモンモードチョークコイル]
図1は、本発明のコモンモードチョークコイルの一例を示す斜視模式図である。
【0011】
本明細書中、コモンモードチョークコイルの長さ方向、幅方向、及び、高さ方向を、
図1等に示すように、各々、矢印L、矢印W、及び、矢印Tで定められる方向とする。ここで、長さ方向Lと幅方向Wと高さ方向Tとは、互いに直交している。
【0012】
図1に示すように、コモンモードチョークコイル1は、素体10と、第1の外部電極21と、第2の外部電極22と、第3の外部電極23と、第4の外部電極24と、を有している。また、
図1では示していないが、コモンモードチョークコイル1は、後述するように、素体10に各々内蔵された第1のコイル及び第2のコイルも有している。
【0013】
素体10は、例えば、
図1に示すような6面を有する略直方体状である。素体10は、長さ方向Lにおいて相対する第1の端面10a及び第2の端面10bと、幅方向Wにおいて相対する第1の側面10c及び第2の側面10dと、高さ方向Tにおいて相対する第1の主面10e及び第2の主面10fと、を有している。コモンモードチョークコイル1を基板上に実装する場合、第1の主面10e又は第2の主面10fが実装面となる。
【0014】
素体10は、角部及び稜線に丸みが付けられていることが好ましい。素体10の角部は、素体10の3面が交わる部分である。素体10の稜線は、素体10の2面が交わる部分である。
【0015】
素体10は、後述するように、複数の絶縁層が高さ方向Tに積層されてなる。
【0016】
素体10を構成する絶縁層は、ガラスセラミック材料からなることが好ましい。これにより、コモンモードチョークコイル1の高周波特性が向上する。
【0017】
ガラスセラミック材料は、K、B、及び、Siを少なくとも含むガラス材料を含有することが好ましい。
【0018】
ガラス材料は、KをK2O換算で0.5重量%以上、5重量%以下、BをB2O3換算で10重量%以上、25重量%以下、SiをSiO2換算で70重量%以上、85重量%以下、AlをAl2O3換算で0重量%以上、5重量%以下含有することが好ましい。
【0019】
ガラスセラミック材料は、上述したガラス材料に加えて、フィラーとしてのSiO2(石英)及びAl2O3(アルミナ)を含有することが好ましい。この場合、ガラスセラミック材料は、ガラス材料を60重量%以上、66重量%以下、フィラーとしてのSiO2を34重量%以上、37重量%以下、フィラーとしてのAl2O3を0.5重量%以上、4重量%以下含有することが好ましい。ガラスセラミック材料がフィラーとしてSiO2を含有することにより、コモンモードチョークコイル1の高周波特性が向上する。また、ガラスセラミック材料がフィラーとしてAl2O3を含有することにより、素体10の機械的強度が高まる。
【0020】
第1の外部電極21は、素体10の表面上に設けられており、より具体的には、第1の側面10c、第1の主面10e、及び、第2の主面10fの各一部にわたって延在している。
【0021】
第2の外部電極22は、素体10の表面上に設けられており、より具体的には、第2の側面10d、第1の主面10e、及び、第2の主面10fの各一部にわたって延在している。また、第2の外部電極22は、幅方向Wにおいて第1の外部電極21に対向する位置に設けられている。
【0022】
第3の外部電極23は、素体10の表面上に設けられており、より具体的には、第1の外部電極21と離隔された位置で、第1の側面10c、第1の主面10e、及び、第2の主面10fの各一部にわたって延在している。
【0023】
第4の外部電極24は、素体10の表面上に設けられており、より具体的には、第2の外部電極22と離隔された位置で、第2の側面10d、第1の主面10e、及び、第2の主面10fの各一部にわたって延在している。また、第4の外部電極24は、幅方向Wにおいて第3の外部電極23に対向する位置に設けられている。
【0024】
第1の外部電極21、第2の外部電極22、第3の外部電極23、及び、第4の外部電極24は、各々、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
【0025】
第1の外部電極21、第2の外部電極22、第3の外部電極23、及び、第4の外部電極24が、各々、単層構造である場合、各外部電極の構成材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの合金等が挙げられる。
【0026】
第1の外部電極21、第2の外部電極22、第3の外部電極23、及び、第4の外部電極24が、各々、多層構造である場合、各外部電極は、素体10の表面側から順に、例えば、Agを含有する下地電極層と、Niめっき被膜と、Snめっき被膜と、を有していてもよい。
【0027】
図2は、
図1中の素体の内部構造の一例を示す分解平面模式図である。
図3は、
図1中の線分A1-A2に対応する部分を示す断面模式図である。
図4は、
図1中の線分B1-B2に対応する部分を示す断面模式図である。
図5は、
図1中の線分C1-C2に対応する部分を示す断面模式図である。
【0028】
図2、
図3、
図4、及び、
図5に示すように、素体10は、絶縁層11a、絶縁層11b、絶縁層11c、絶縁層11d、及び、絶縁層11eを含む複数の絶縁層が高さ方向Tに積層されてなる。素体10においては、絶縁層11aが第2の主面10f側に位置し、絶縁層11eが第1の主面10e側に位置している。なお、
図3、
図4、及び、
図5では、説明の便宜上、これらの絶縁層間の境界が点線で示されているが、実際には明瞭に現れていなくてもよい。
【0029】
絶縁層11a、絶縁層11b、絶縁層11c、絶縁層11d、及び、絶縁層11eの構成材料は、互いに同じであることが好ましい。
【0030】
素体10においては、後述するコイル導体、引き出し電極、ビア導体等の導体部が設けられていない絶縁層が、絶縁層11aの第2の主面10f側と絶縁層11eの第1の主面10e側との少なくとも一方に、少なくとも1つ積層されていてもよい。例えば、素体10においては、
図2、
図3、
図4、及び、
図5に示すように、絶縁層11eの第1の主面10e側に絶縁層11fが積層されていてもよい。このような追加分の絶縁層11fは、絶縁層11a、絶縁層11b、絶縁層11c、絶縁層11d、及び、絶縁層11eと構成材料が同じであることが好ましい。
【0031】
素体10には、第1のコイル31及び第2のコイル32が各々内蔵されている。
【0032】
第1のコイル31は、第1のコイル導体及び第2のコイル導体を含む複数のコイル導体が絶縁層とともに高さ方向Tに積層されつつ電気的に接続されてなる。また、第2のコイル32は、第3のコイル導体及び第4のコイル導体を含む複数のコイル導体が絶縁層とともに高さ方向Tに積層されつつ電気的に接続されてなる。より具体的には、以下の通りである。
【0033】
絶縁層11aの主面上には、第2のコイル導体42が設けられている。第2のコイル導体42は、第2のライン部52と、第2のランド部62と、を有している。第2のライン部52の一端は、第2の外部電極22から引き出された第2の引き出し電極72に接続されている。第2のライン部52の他端は、第2のランド部62に接続されている。
【0034】
絶縁層11bの主面上には、第4のコイル導体44が設けられている。第4のコイル導体44は、第4のライン部54と、第4のランド部64と、を有している。第4のライン部54の一端は、第4の外部電極24から引き出された第4の引き出し電極74に接続されている。第4のライン部54の他端は、第4のランド部64に接続されている。
【0035】
絶縁層11bの主面上には、第4のランド部64と離隔された位置にランド部65aが設けられている。また、絶縁層11bには、高さ方向Tに貫通するビア導体81aが、ランド部65aと重なる位置に設けられている。
【0036】
絶縁層11cの主面上には、ランド部65bが設けられている。また、絶縁層11cには、高さ方向Tに貫通するビア導体81bが、ランド部65bと重なる位置に設けられている。
【0037】
絶縁層11cの主面上には、ランド部65bと離隔された位置にランド部65cが設けられている。また、絶縁層11cには、高さ方向Tに貫通するビア導体81cが、ランド部65cと重なる位置に設けられている。
【0038】
絶縁層11dの主面上には、第1のコイル導体41が設けられている。第1のコイル導体41は、第1のライン部51と、第1のランド部61と、を有している。第1のライン部51の一端は、第1の外部電極21から引き出された第1の引き出し電極71に接続されている。第1のライン部51の他端は、第1のランド部61に接続されている。
【0039】
絶縁層11dには、高さ方向Tに貫通するビア導体81eが、第1のランド部61と重なる位置に設けられている。
【0040】
絶縁層11dの主面上には、第1のランド部61と離隔された位置にランド部65dが設けられている。また、絶縁層11dには、高さ方向Tに貫通するビア導体81dが、ランド部65dと重なる位置に設けられている。
【0041】
絶縁層11eの主面上には、第3のコイル導体43が設けられている。第3のコイル導体43は、第3のライン部53と、第3のランド部63と、を有している。第3のライン部53の一端は、第3の外部電極23から引き出された第3の引き出し電極73に接続されている。第3のライン部53の他端は、第3のランド部63に接続されている。
【0042】
絶縁層11eには、高さ方向Tに貫通するビア導体81fが、第3のランド部63と重なる位置に設けられている。
【0043】
上述したようにコイル導体、引き出し電極、ビア導体等の導体部が各々設けられた、絶縁層11a、絶縁層11b、絶縁層11c、絶縁層11d、及び、絶縁層11eが高さ方向Tに順に積層されると、
図2及び
図3に示すように、第1のコイル導体41の第1のランド部61が、ビア導体81e、ランド部65b、ビア導体81b、ランド部65a、及び、ビア導体81aを順に介して、第2のコイル導体42の第2のランド部62に電気的に接続される。これにより、第1のコイル31が構成される。また、第3のコイル導体43の第3のランド部63が、ビア導体81f、ランド部65d、ビア導体81d、ランド部65c、及び、ビア導体81cを順に介して、第4のコイル導体44の第4のランド部64に電気的に接続される。これにより、第2のコイル32が構成される。
【0044】
図2及び
図4に示すように、第1のコイル31の一端(第1のライン部51の一端)は、第1の引き出し電極71を介して第1の外部電極21に電気的に接続されている。第1のコイル31の他端(第2のライン部52の一端)は、第2の引き出し電極72を介して第2の外部電極22に電気的に接続されている。
【0045】
図2及び
図5に示すように、第2のコイル32の一端(第3のライン部53の一端)は、第3の引き出し電極73を介して第3の外部電極23に電気的に接続されている。第2のコイル32の他端(第4のライン部54の一端)は、第4の引き出し電極74を介して第4の外部電極24に電気的に接続されている。
【0046】
第1のコイル31及び第2のコイル32のコイル軸は、各々、高さ方向Tから断面視したときのコイルの断面形状の重心を通り、高さ方向Tに延伸している。
【0047】
高さ方向Tから断面視したとき、第1のコイル31及び第2のコイル32の外形は、各々、
図2に示すような直線部及び曲線部で構成される形状であってもよいし、円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0048】
高さ方向Tから断面視したとき、第1のランド部61、第2のランド部62、第3のランド部63、第4のランド部64、ランド部65a、ランド部65b、ランド部65c、及び、ランド部65dは、各々、
図2に示すような円形状であってもよいし、多角形状であってもよい。
【0049】
第1のライン部51、第2のライン部52、第3のライン部53、第4のライン部54、第1のランド部61、第2のランド部62、第3のランド部63、第4のランド部64、ランド部65a、ランド部65b、ランド部65c、ランド部65d、第1の引き出し電極71、第2の引き出し電極72、第3の引き出し電極73、第4の引き出し電極74、ビア導体81a、ビア導体81b、ビア導体81c、ビア導体81d、ビア導体81e、及び、ビア導体81fの各構成材料としては、例えば、Ag、Au、Cu、Pd、Ni、Al、これらの合金等が挙げられる。
【0050】
コモンモードチョークコイル1においては、第1のコイル31のインダクタンスをL1、第2のコイル32のインダクタンスをL2とするとき、1GHzにおいて、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)≦5、という関係を満たす。上記「100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)」は、第1のコイル31のインダクタンスと第2のコイル32のインダクタンスとのずれ具合を示している。このようなインダクタンスのずれ具合を5%以下とすることにより、特に高周波帯において、ノイズ抑制機能に優れたコモンモードチョークコイル1を実現できる。
【0051】
コモンモードチョークコイル1においては、1GHzにおいて、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)≦4、という関係を満たすことが好ましく、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)=0、すなわち、L1=L2、という関係を満たすことが特に好ましい。
【0052】
コモンモードチョークコイル1においては、100MHzにおいて、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)≦3、という関係を満たすことが好ましく、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)≦1、という関係を満たすことがより好ましく、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)=0、すなわち、L1=L2、という関係を満たすことが特に好ましい。
【0053】
L1及びL2は、各々、1nH以上、10nH以下であってもよい。第1のコイル31のインダクタンスと第2のコイル32のインダクタンスとのずれがノイズ抑制機能に及ぼす影響は、第1のコイル31及び第2のコイル32のインダクタンスが小さい場合に顕著となりやすい。これに対して、コモンモードチョークコイル1は、第1のコイル31及び第2のコイル32のインダクタンスが小さい場合であってもノイズ抑制機能に優れている。
【0054】
第1のコイル31及び第2のコイル32のインダクタンスは、以下のようにして測定される。
図6及び
図7は、第1のコイル及び第2のコイルのインダクタンスの測定方法を説明するための模式図である。
【0055】
まず、
図6に示すように、第1のコイル31の一端に電気的に接続された第1の外部電極21をネットワークアナライザの入力端子(IN)に接続し、第1のコイル31の他端に電気的に接続された第2の外部電極22をネットワークアナライザの出力端子(OUT)に接続する。また、
図6に示すように、第2のコイル32の一端に電気的に接続された第3の外部電極23と、第2のコイル32の他端に電気的に接続された第4の外部電極24とを、各々、50Ωの終端抵抗に接続する。このようにコモンモードチョークコイル1をネットワークアナライザに接続した状態で、第1のコイル31のインダクタンスを測定する。
【0056】
次に、
図7に示すように、第2のコイル32の一端に電気的に接続された第3の外部電極23をネットワークアナライザの入力端子(IN)に接続し、第2のコイル32の他端に電気的に接続された第4の外部電極24をネットワークアナライザの出力端子(OUT)に接続する。また、
図7に示すように、第1のコイル31の一端に電気的に接続された第1の外部電極21と、第1のコイル31の他端に電気的に接続された第2の外部電極22とを、各々、50Ωの終端抵抗に接続する。このようにコモンモードチョークコイル1をネットワークアナライザに接続した状態で、第2のコイル32のインダクタンスを測定する。
【0057】
ネットワークアナライザとしては、例えば、キーサイト・テクノロジー社製のネットワークアナライザ「E5071C」が用いられる。
【0058】
コモンモードチョークコイル1においては、第1のコイル31の経路長をR1、第2のコイル32の経路長をR2とすると、R1≧R2のときに100×(R1-R2)/R1≦3、という関係を満たし、R2≧R1のときに100×(R2-R1)/R2≦3、という関係を満たすことが好ましい。上記「100×(R1-R2)/R1」及び「100×(R2-R1)/R2」は、第1のコイル31の経路長と第2のコイル32の経路長とのずれ具合を示している。このような経路長のずれ具合を3%以下とすることにより、第1のコイル31のインダクタンスと第2のコイル32のインダクタンスとのずれが充分に小さくなるため、コモンモードチョークコイル1のノイズ抑制機能が顕著に優れたものとなる。
【0059】
第1のコイル31の経路長は、第1の引き出し電極71と第2の引き出し電極72との間をつなぐ配線の合計長さを意味し、より具体的には、第1のライン部51と、第1のランド部61と、ビア導体81eと、ランド部65bと、ビア導体81bと、ランド部65aと、ビア導体81aと、第2のランド部62と、第2のライン部52とを通る線の長さを意味する。第2のコイル32の経路長は、第3の引き出し電極73と第4の引き出し電極74との間をつなぐ配線の合計長さを意味し、より具体的には、第3のライン部53と、第3のランド部63と、ビア導体81fと、ランド部65dと、ビア導体81dと、ランド部65cと、ビア導体81cと、第4のランド部64と、第4のライン部54とを通る線の長さを意味する。
【0060】
第1のコイル31の経路長と第2のコイル32の経路長とは、下記のようにして各々定められる。まず、コモンモードチョークコイル1(素体10)を研磨することにより、長さ方向L及び幅方向Wに平行なLW断面を露出させる。そして、
図2に示すような各LW断面について、マイクロスコープを用いて、各ライン部及び各ランド部における幅の中央を通る線の長さを測定する。一方、コモンモードチョークコイル1(素体10)を研磨することにより、長さ方向L及び高さ方向Tに平行なLT断面を露出させる。そして、
図3に示すようなLT断面について、マイクロスコープを用いて、各ビア導体の高さ方向Tにおける寸法を測定する。各ビア導体の高さ方向Tにおける寸法については、幅方向W及び高さ方向Tに平行なWT断面において測定してもよい。以上のようにして得られた測定値を、第1のコイル31及び第2のコイル32の各々について足し合わせることにより、第1のコイル31の経路長と第2のコイル32の経路長とが各々定められる。
【0061】
コモンモードチョークコイル1においては、第1のコイル31のインダクタンスと第2のコイル32のインダクタンスとのずれを小さくする観点から、上述したように第1のコイル31の経路長と第2のコイル32の経路長との差を小さくすることが好ましい。第1のコイル31の経路長と第2のコイル32の経路長との差を小さくする具体的な方法について、以下に説明する。
【0062】
まず、本発明の比較対象として、従来のコモンモードチョークコイルについて説明する。
図8は、従来のコモンモードチョークコイルにおける素体の内部構造を示す分解平面模式図である。
図8に示すように、従来のコモンモードチョークコイルにおいては、第1のライン部51の長さと第2のライン部52の長さとが、各々、
図2に示した状態よりも大幅に短くなっており、結果的に、第1のコイル31の経路長が第2のコイル32の経路長よりも大幅に短くなっている。
図8に示した従来のコモンモードチョークコイルは、この点以外、
図2に示した本発明のコモンモードチョークコイルの一例と同様である。
【0063】
図2に示した本発明のコモンモードチョークコイルの一例においては、
図8に示した従来のコモンモードチョークコイルに対して、第1のライン部51に経路調整部91a(点線で囲まれた部分)が、第2のライン部52に経路調整部91b(点線で囲まれた部分)が各々設けられている、すなわち、第1のコイル31の経路長が長くなっている。これにより、
図2に示した本発明のコモンモードチョークコイルの一例においては、第1のコイル31の経路長と第2のコイル32の経路長との差が小さくなっている。
【0064】
図2に示した本発明のコモンモードチョークコイルの一例においては、第1のライン部51に経路調整部91aが、第2のライン部52に経路調整部91bが各々設けられているため、
図8に示した従来のコモンモードチョークコイルに対して、第1のライン部51の第1のランド部61への引き回し方と、第2のライン部52の第2のランド部62への引き回し方とが各々変わっている。
【0065】
より具体的には、
図2に示した本発明のコモンモードチョークコイルの一例において、第1のライン部51の他端は、幅方向Wにおいて、第1の引き出し電極71側から第1のランド部61に接続され、第2のライン部52の他端は、幅方向Wにおいて、第2の引き出し電極72側から第2のランド部62に接続されている。また、第2のコイル32に着目すると、第3のライン部53の他端は、幅方向Wにおいて、第3の引き出し電極73側から第3のランド部63に接続され、第4のライン部54の他端は、幅方向Wにおいて、第4の引き出し電極74側から第4のランド部64に接続されている。
【0066】
これに対して、
図8に示した従来のコモンモードチョークコイルにおいては、第1のライン部51の他端が、幅方向Wにおいて、第1の引き出し電極71とは反対側から第1のランド部61に接続され、第2のライン部52の他端が、幅方向Wにおいて、第2の引き出し電極72とは反対側から第2のランド部62に接続されている。
【0067】
経路調整部91a及び経路調整部91bは、
図2に示すように、第1のコイル31の周形状に概ね沿った形状であることが好ましいが、ミアンダ状であってもよい。
【0068】
図2に示した本発明のコモンモードチョークコイルの一例においては、第1のコイル31に経路調整部を設けたが、従来のコモンモードチョークコイルにおいて、第2のコイル32の経路長が第1のコイル31の経路長よりも大幅に短くなっている場合には、第2のコイル32に経路調整部を設けてもよい。
【0069】
第1のコイル31の経路長と第2のコイル32の経路長との差を小さくする方法として、経路調整部を設ける方法をこれまで説明したが、以下の方法であってもよい。
【0070】
図9は、
図1中の素体の内部構造の別の一例を示す分解平面模式図である。
図9に示した本発明のコモンモードチョークコイルの別の一例においては、
図8に示した従来のコモンモードチョークコイルに対して、第2のコイル32のターン数が変わらずにコイル径が小さくなっている、すなわち、第2のコイル32の経路長が短くなっている。これにより、
図9に示した本発明のコモンモードチョークコイルの別の一例においては、第1のコイル31の経路長と第2のコイル32の経路長との差が小さくなっている。
【0071】
図9に示した本発明のコモンモードチョークコイルの別の一例においては、第2のコイル32のコイル径が第1のコイル31のコイル径よりも小さい。その一方で、従来のコモンモードチョークコイルにおいて、第2のコイル32の経路長が第1のコイル31の経路長よりも大幅に短くなっている場合には、第1のコイル31のターン数を変えずにコイル径を第2のコイル32よりも小さくしてもよい。以上をまとめると、第1のコイル31及び第2のコイル32のうち、一方のコイル径は他方のコイル径よりも小さくてもよい。
【0072】
第1のコイル31及び第2のコイル32のコイル径(外径)は、高さ方向Tから断面視したときのコイルの断面形状(外形)の面積相当円の直径を意味する。
【0073】
第1のコイル31及び第2のコイル32のターン数は、各々、5ターン以下であってもよい。第1のコイル31のインダクタンスと第2のコイル32のインダクタンスとのずれがノイズ抑制機能に及ぼす影響は、第1のコイル31及び第2のコイル32のターン数が少ない場合に顕著となりやすい。これに対して、コモンモードチョークコイル1は、第1のコイル31及び第2のコイル32のターン数が少ない場合であってもノイズ抑制機能に優れている。なお、第1のコイル31及び第2のコイル32のターン数は、各々、5ターン以上であってもよい。
【0074】
第1のコイル31のインダクタンスと第2のコイル32のインダクタンスとのずれを小さくする観点から、高さ方向Tから断面視したとき、第1のライン部51の幅と、第2のライン部52の幅と、第3のライン部53の幅と、第4のライン部54の幅とは、互いに同じであることが好ましい。
【0075】
コモンモードチョークコイル1においては、第1のコイル31のインピーダンスをZ1、第2のコイル32のインピーダンスをZ2とするとき、1GHzにおいて、100×|Z1-Z2|/((Z1+Z2)/2)≦5、という関係を満たすことが好ましく、100×|Z1-Z2|/((Z1+Z2)/2)≦4、という関係を満たすことがより好ましく、100×|Z1-Z2|/((Z1+Z2)/2)=0、すなわち、Z1=Z2、という関係を満たすことが特に好ましい。上記「100×|Z1-Z2|/((Z1+Z2)/2)」は、第1のコイル31のインピーダンスと第2のコイル32のインピーダンスとのずれ具合を示している。このようなインピーダンスのずれ具合を5%以下とすることにより、特に高周波帯において、コモンモードチョークコイル1のノイズ抑制機能が顕著に優れたものとなる。
【0076】
コモンモードチョークコイル1においては、100MHzにおいて、100×|Z1-Z2|/((Z1+Z2)/2)≦3、という関係を満たすことが好ましく、100×|Z1-Z2|/((Z1+Z2)/2)≦1、という関係を満たすことがより好ましく、100×|Z1-Z2|/((Z1+Z2)/2)=0、すなわち、Z1=Z2、という関係を満たすことが特に好ましい。
【0077】
第1のコイル31及び第2のコイル32のインピーダンスは、
図6及び
図7を参照して説明したインダクタンスの測定方法と同様にして測定される。
【0078】
[コモンモードチョークコイルの製造方法]
本発明のコモンモードチョークコイルの製造方法の一例について、以下に説明する。
【0079】
<ガラスセラミック材料の調製>
K2O、B2O3、SiO2、Al2O3等を所定の比率で混合する。そして、得られた混合物を焼成することにより、溶融させる。その後、得られた溶融物を急冷することにより、ガラス材料を作製する。次に、ガラス材料に、フィラーとしてのSiO2(石英)、Al2O3(アルミナ)等を添加することにより、ガラスセラミック材料を調製する。
【0080】
<ガラスセラミックシートの作製>
ガラスセラミック材料に、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤と、等を添加して混合することにより、セラミックスラリーを作製する。そして、セラミックスラリーをドクターブレード法等でシート状に成形した後、所定の形状に打ち抜くことにより、ガラスセラミックシートを作製する。
【0081】
<導体パターンの形成>
Agペースト等の導電性ペーストを用いてスクリーン印刷等を行うことにより、
図2に示すようなコイル導体に相当するコイル導体用導体パターンと、
図2に示すような引き出し電極に相当する引き出し電極用導体パターンと、
図2に示すようなビア導体に相当するビア導体用導体パターンとを、各ガラスセラミックシートに形成する。ビア導体用導体パターンを形成する際には、ガラスセラミックシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことによりビアホールを予め形成しておき、そのビアホールに導電性ペーストを充填する。
【0082】
<積層ブロックの作製>
導体パターンが形成された各ガラスセラミックシートを、
図2に示すような順番で積層させる。その積層体の上下には、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを所定の枚数ずつ積層させてもよい。その後、得られた積層体を、温間等方圧プレス(WIP)処理等で圧着することにより、積層ブロックを作製する。
【0083】
<素体の作製>
積層ブロックをダイサー等で所定のサイズに切断することにより、個片化したチップを作製する。そして、個片化したチップを焼成することにより、各ガラスセラミックシートが絶縁層となり、更に、コイル導体用導体パターン、引き出し電極用導体パターン、及び、ビア導体用導体パターンが、各々、コイル導体、引き出し電極、及び、ビア導体となる。その結果、
図2に示すような第1のコイル及び第2のコイルが各々内蔵された素体が作製される。ここで、素体の第1の側面には、第1のコイルの一端に接続された第1の引き出し電極と、第2のコイルの一端に接続された第3の引き出し電極とが露出している。素体の第2の側面には、第1のコイルの他端に接続された第2の引き出し電極と、第2のコイルの他端に接続された第4の引き出し電極とが露出している。
【0084】
素体に対しては、例えば、バレル研磨を施すことにより、角部及び稜線に丸みを付けてもよい。
【0085】
<外部電極の形成>
Ag及びガラスフリットを含有する導電性ペーストを、素体の両側面上で少なくとも各引き出し電極が露出した4箇所に塗布する。そして、得られた各塗膜を焼き付けることにより、下地電極層を形成する。次に、各下地電極層に対して電解めっきを施すことにより、Niめっき被膜と、Snめっき被膜とを順次形成する。その結果、
図1に示すような、第1の外部電極、第2の外部電極、第3の外部電極、及び、第4の外部電極が形成される。
【0086】
以上により、
図1、
図2等に例示したような本発明のコモンモードチョークコイルが製造される。
【実施例】
【0087】
以下、本発明のコモンモードチョークコイルをより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、この実施例のみに限定されるものではない。
【0088】
[実施例1]
実施例1のコモンモードチョークコイルを、以下の方法で製造した。
【0089】
<ガラスセラミック材料の調製>
K2O、B2O3、SiO2、Al2O3を所定の比率となるように秤量し、白金製のるつぼ内で混合した。そして、得られた混合物を1500℃以上、1600℃以下で焼成することにより、溶融させた。その後、得られた溶融物を急冷することにより、ガラス材料を作製した。
【0090】
次に、ガラス材料を、平均粒径D50が1μm以上、3μm以下となるように粉砕することにより、ガラス粉末を準備した。また、フィラーとして、平均粒径D50がともに0.5μm以上、2.0μm以下の石英粉末及びアルミナ粉末を準備した。ここで、平均粒径D50は、体積基準の累積百分率50%に相当する粒径である。そして、ガラス粉末に、フィラーとしての石英粉末及びアルミナ粉末を添加することにより、ガラスセラミック材料を調製した。
【0091】
<ガラスセラミックシートの作製>
ガラスセラミック材料を、ポリビニルブチラール系樹脂等の有機バインダと、エタノール、トルエン等の有機溶剤と、可塑剤と、PSZメディアとともにボールミルに入れて混合することにより、セラミックスラリーを作製した。そして、セラミックスラリーをドクターブレード法等で、厚みが20μm以上、30μm以下のシート状に成形した後、矩形状に打ち抜くことにより、ガラスセラミックシートを作製した。
【0092】
<導体パターンの形成>
Agペースト等の導電性ペーストを用いてスクリーン印刷を行うことにより、
図2に示すようなコイル導体に相当するコイル導体用導体パターンと、
図2に示すような引き出し電極に相当する引き出し電極用導体パターンと、
図2に示すようなビア導体に相当するビア導体用導体パターンとを、各ガラスセラミックシートに形成した。ビア導体用導体パターンを形成する際には、ガラスセラミックシートの所定の箇所にレーザー照射を行うことによりビアホールを予め形成しておき、そのビアホールに導電性ペーストを充填した。
【0093】
<積層ブロックの作製>
導体パターンが形成された各ガラスセラミックシートを、
図2に示すような順番で積層させた。その積層体の上下には、導体パターンが形成されていないガラスセラミックシートを所定の枚数ずつ積層させた。その後、得られた積層体を、温間等方圧プレス処理で圧着することにより、積層ブロックを作製した。圧着条件については、温度80℃、圧力100MPaとした。
【0094】
<素体の作製>
積層ブロックをダイサー等で所定のサイズに切断することにより、個片化したチップを作製した。そして、個片化したチップを880℃で1.5時間焼成することにより、各ガラスセラミックシートが絶縁層となり、更に、コイル導体用導体パターン、引き出し電極用導体パターン、及び、ビア導体用導体パターンが、各々、コイル導体、引き出し電極、及び、ビア導体となった。その結果、
図2に示すような第1のコイル及び第2のコイルが各々内蔵された素体が作製された。ここで、素体の第1の側面には、第1のコイルの一端に接続された第1の引き出し電極と、第2のコイルの一端に接続された第3の引き出し電極とが露出していた。素体の第2の側面には、第1のコイルの他端に接続された第2の引き出し電極と、第2のコイルの他端に接続された第4の引き出し電極とが露出していた。
【0095】
次に、素体をメディアとともに回転バレル機に入れてバレル研磨を施すことにより、角部及び稜線に丸みを付けた。
【0096】
<外部電極の形成>
Ag及びガラスフリットを含有する導電性ペーストを、素体の両側面上で少なくとも各引き出し電極が露出した4箇所に塗布した。そして、得られた各塗膜を810℃で1分間焼き付けることにより、下地電極層を形成した。下地電極層の厚みは、5μmであった。次に、各下地電極層に対して電解めっきを施すことにより、Niめっき被膜と、Snめっき被膜とを順次形成した。Niめっき被膜及びSnめっき被膜の厚みは、各々、3μmであった。以上の結果、
図1に示すような、第1の外部電極、第2の外部電極、第3の外部電極、及び、第4の外部電極が形成された。
【0097】
以上により、実施例1のコモンモードチョークコイルが製造された。実施例1のコモンモードチョークコイルのサイズは、長さ方向における寸法が0.6mm、幅方向における寸法が0.5mm、高さ方向における寸法が0.3mmであった。
【0098】
[比較例1]
図8に示すような第1のコイル及び第2のコイルが各々内蔵された素体を作製したこと以外、実施例1のコモンモードチョークコイルと同様にして、比較例1のコモンモードチョークコイルを製造した。
【0099】
[評価]
実施例1及び比較例1のコモンモードチョークコイルについて、以下の評価を行った。
【0100】
<インダクタンス>
コモンモードチョークコイルにおける第1のコイル及び第2のコイルについて、上述した方法によりインダクタンスを測定し、周波数特性を評価した。
図10は、実施例1のコモンモードチョークコイルにおいて、第1のコイル及び第2のコイルのインダクタンスの周波数特性を示すグラフである。
図11は、比較例1のコモンモードチョークコイルにおいて、第1のコイル及び第2のコイルのインダクタンスの周波数特性を示すグラフである。
【0101】
次に、第1のコイル及び第2のコイルのインダクタンスの測定値を、各々、L1及びL2としたとき、これらのインダクタンスのずれ具合を、100×|L1-L2|/((L1+L2)/2)を計算することで評価した。このような評価を、周波数が1GHz及び100MHzの条件下で行った。結果を表1に示す。
【0102】
<インピーダンス>
コモンモードチョークコイルにおける第1のコイル及び第2のコイルについて、上述した方法によりインピーダンスを測定し、周波数特性を評価した。
図12は、実施例1のコモンモードチョークコイルにおいて、第1のコイル及び第2のコイルのインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
図13は、比較例1のコモンモードチョークコイルにおいて、第1のコイル及び第2のコイルのインピーダンスの周波数特性を示すグラフである。
【0103】
次に、第1のコイル及び第2のコイルのインピーダンスの測定値を、各々、Z1及びZ2としたとき、これらのインピーダンスのずれ具合を、100×|Z1-Z2|/((Z1+Z2)/2)を計算することで評価した。このような評価を、周波数が1GHz及び100MHzの条件下で行った。結果を表1に示す。
【0104】
【0105】
表1に示すように、実施例1のコモンモードチョークコイルでは、比較例1のコモンモードチョークコイルと比較して、第1のコイルのインダクタンスと第2のコイルのインダクタンスとのずれ具合が小さかった。また、
図10及び
図11に示すように、実施例1のコモンモードチョークコイルでは、比較例1のコモンモードチョークコイルと比較して、第1のコイルのインダクタンスと第2のコイルのインダクタンスとが近い周波数特性を示していた。
【0106】
表1に示すように、実施例1のコモンモードチョークコイルでは、比較例1のコモンモードチョークコイルと比較して、第1のコイルのインピーダンスと第2のコイルのインピーダンスとのずれ具合が小さかった。また、
図12及び
図13に示すように、実施例1のコモンモードチョークコイルでは、比較例1のコモンモードチョークコイルと比較して、第1のコイルのインピーダンスと第2のコイルのインピーダンスとが近い周波数特性を示していた。
【0107】
<経路長>
コモンモードチョークコイルの第1のコイル及び第2のコイルについて、上述した方法により経路長を測定し、各々の測定値をR1及びR2とした。そして、これらの経路長のずれ具合を、R1≧R2のときに100×(R1-R2)/R1を計算し、R2≧R1のときに100×(R2-R1)/R2を計算することで評価した。その結果、第1のコイルの経路長と第2のコイルの経路長とのずれ具合は、実施例1のコモンモードチョークコイルで2.1%、比較例1のコモンモードチョークコイルで6.4%であった。
【0108】
以上の評価結果より、実施例1のコモンモードチョークコイルは、比較例1のコモンモードチョークコイルよりもノイズ抑制機能に優れていることが分かった。
【符号の説明】
【0109】
1 コモンモードチョークコイル
10 素体
10a 第1の端面
10b 第2の端面
10c 第1の側面
10d 第2の側面
10e 第1の主面
10f 第2の主面
11a、11b、11c、11d、11e、11f 絶縁層
21 第1の外部電極
22 第2の外部電極
23 第3の外部電極
24 第4の外部電極
31 第1のコイル
32 第2のコイル
41 第1のコイル導体
42 第2のコイル導体
43 第3のコイル導体
44 第4のコイル導体
51 第1のライン部
52 第2のライン部
53 第3のライン部
54 第4のライン部
61 第1のランド部
62 第2のランド部
63 第3のランド部
64 第4のランド部
65a、65b、65c、65d ランド部
71 第1の引き出し電極
72 第2の引き出し電極
73 第3の引き出し電極
74 第4の引き出し電極
81a、81b、81c、81d、81e、81f ビア導体
91a、91b 経路調整部
L 長さ方向
T 高さ方向
W 幅方向