(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物、及びN-ビニルアミド系重合体
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20240524BHJP
C08F 226/02 20060101ALI20240524BHJP
C08L 39/00 20060101ALI20240524BHJP
C08L 67/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C08L101/12
C08F226/02
C08L39/00
C08L67/00
(21)【出願番号】P 2019213211
(22)【出願日】2019-11-26
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2019072958
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019115632
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】岡村 一弘
(72)【発明者】
【氏名】池元 結衣
(72)【発明者】
【氏名】高松 雄輝
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-523486(JP,A)
【文献】特開2011-221122(JP,A)
【文献】特表2010-500717(JP,A)
【文献】特開2011-068086(JP,A)
【文献】特開2016-141762(JP,A)
【文献】特開2018-119030(JP,A)
【文献】特開2018-035336(JP,A)
【文献】特表2005-527351(JP,A)
【文献】特表2015-514237(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08F
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
150℃以上の融点を有する樹脂(A)と、N-ビニルアミド系重合体(B)とを含み、
該樹脂(A)は、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリアリーレンスルフィド、及びポリプロピレンからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
該N-ビニルアミド系重合体(B)は、下記一般式(1)で表されるN-ビニルアミド系単量体(b1)由来の構造単位、及び、疎水性単量体(b2)由来の構造単位を有し、
該疎水性単量体(b2)は、N-置換マレイミド系単量体、N-ビニルカプロラクタム系単量体、及び、炭素数4~24の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体を含み、
該N-ビニルアミド系単量体(b1)由来の構造単位の含有割合は、該重合体(B)の全構造単位100質量%に対して25~75質量%であり、
該疎水性単量体(b2)由来の構造単位の含有割合は、該重合体(B)の全構造単位100質量%に対して25~75質量%である
ことを特徴とする樹脂組成物
(但し、セルロールエステルを含むものを除く。)。
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~2の炭化水素基を表す。R
2及びR
3は、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【請求項2】
前記N-ビニルアミド系重合体(B)の含有量は、前記樹脂(A)100質量部に対して0.5~25質量部であることを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、及びN-ビニルアミド系重合体に関する。より詳しくは、吸湿性が向上した樹脂組成物、樹脂に吸湿性を付与することができるN-ビニルアミド系重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート等の各種エンジニアリングプラスチックは、耐熱性、機械的強度、耐薬品性、成型性等の各種特性に優れるものであり、自動車部品や機械部品、電気・電子部品のような工業用途に広く使用されている。このような樹脂では、その樹脂が有する特性に加えて、更に他の機能を付与するために、添加剤を添加したり、他の樹脂を混合したりする方法が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂、N-ビニルアミド系重合体、及び、酸性無機充填剤を含むことにより、耐熱性、機械的強度、帯電防止性等に優れたポリカーボネート樹脂組成物が記載されている。
また例えば、特許文献2には、ポリアリーレンスルフィド樹脂をマトリックスとし、上記マトリックス中にポリビニルピロリドンが分散したモルフォロジーを形成したポリアリーレンスルフィド樹脂組成物が記載され、当該樹脂組成物を成形してシリコーン樹脂接着性に優れた成形品を提供できることが記載されている。
このように、樹脂に更なる機能を付与するための方法について、これまでに種々検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-250589号公報
【文献】特開2018-65965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ポリカーボネートやポリエステル樹脂等の融点が150℃以上の樹脂は、一般的には、吸水性が低く、耐水性に優れるものが多い。ポリカーボネートやポリエステル樹脂のような優れた耐久性や機械的強度、成型性等を有する樹脂に、適度な吸水性(吸湿性)を付与することができれば、樹脂の用途を更に広げることができるが、そのような樹脂の吸湿性を向上させる方法については未だ十分に検討されていない。
【0006】
本発明は、上記現状に鑑みて、融点が150℃以上の樹脂の吸湿性を向上させることができる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、樹脂に吸湿性を付与する方法について種々検討したところ、樹脂に対して、特定の構造単位を有するN-ビニルアミド系重合体を含むことにより、当該樹脂の吸湿性を向上させることができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、150℃以上の融点を有する樹脂(A)と、N-ビニルアミド系重合体(B)とを含み、上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、下記一般式(1)で表されるN-ビニルアミド系単量体(b1)由来の構造単位、及び、疎水性単量体(b2)由来の構造単位を有することを特徴とする樹脂組成物である。
【0009】
【化1】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~2の炭化水素基を表す。R
2及びR
3は、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0010】
上記疎水性単量体(b2)は、N-置換マレイミド系単量体、N-ビニルカプロラクタム系単量体、及び、炭素数4~24の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種の単量体を含むことが好ましい。
【0011】
上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、N-ビニルアミド系単量体(b1)由来の構造単位を、上記重合体の全構造単位100質量%に対して15~85質量%有し、疎水性単量体(b2)由来の構造単位を、上記重合体の全構造単位100質量%に対して15~85質量%有することが好ましい。
【0012】
上記N-ビニルアミド系重合体(B)の含有量は、上記樹脂(A)100質量部に対して0.5~25質量部であることが好ましい。
【0013】
本発明はまた、N-ビニルアミド系単量体由来の構造単位、及び、N-置換マレイミド系単量体由来の構造単位を有することを特徴とするN-ビニルアミド系重合体でもある。
【0014】
上記N-ビニルアミド系重合体において、上記N-ビニルアミド系単量体由来の構造単位の含有割合が、全構造単位100質量%に対して15~85質量%であり、上記N-置換マレイミド系単量体由来の構造単位の含有割合が、全構造単位100質量%に対して15~85質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸湿性が向上した樹脂組成物を提供することができる。本発明の樹脂組成物は、防曇や調湿等の吸湿性が必要とされる用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0017】
1.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、150℃以上の融点を有する樹脂(A)と、N-ビニルアミド系重合体(B)とを含み、上記N-ビニルアミド重合体(B)は、下記一般式(1)で表されるN-ビニルアミド系単量体(b1)由来の構造単位、及び、疎水性単量体(b2)由来の構造単位を有することを特徴とする。
【0018】
【化2】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~2の炭化水素基を表す。R
2及びR
3は、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0019】
本発明の樹脂組成物の吸湿性が向上するのは、N-ビニルアミド系重合体(B)が有する吸湿能力が樹脂組成物に付与されるためと推測される。
【0020】
本発明の樹脂組成物に含まれる各成分について説明する。
<樹脂(A)>
本発明の樹脂組成物は、150℃以上の融点を有する樹脂(A)を含む。
上記融点は、日本工業規格JIS K 0064-1992に準拠した方法により測定して得られる値である。
【0021】
上記150℃以上の融点を有する樹脂(A)としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリブチレンテレフタレート等のポリエステル;6-ナイロン、66-ナイロン、12-ナイロン等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド等のポリアリーレンスルフィド;ポリプロピレン;等が挙げられる。
【0022】
なかでも、上記樹脂(A)としては、ポリエステル、ポリアミドが好ましい。
【0023】
上記樹脂(A)は、置換基を有していてもよく、上記置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリーレン基、アラルキル基、水酸基、アルコキシル基、カルボキシル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0024】
上記樹脂組成物は、上記樹脂(A)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでいてもよい。
【0025】
上記樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物100質量%中、70~99.5質量%であることが好ましい。樹脂組成物の強度の観点から、上記樹脂(A)の含有量は、樹脂組成物100質量%中、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、また、99質量%以下であることがより好ましく、98質量%以下であることが更に好ましい。
【0026】
<N-ビニルアミド系重合体(B)>
本発明の樹脂組成物は、更に、N-ビニルアミド系重合体(B)を含む。
上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、N-ビニルアミド系単量体(b1)由来の構造単位、及び、疎水性単量体(b2)由来の構造単位を有する。すなわち、上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、N-ビニルアミド系単量体(b1)、及び、疎水性単量体(b2)を含む単量体成分を重合してなる重合体である。
【0027】
(N-ビニルアミド系単量体(b1))
上記N-ビニルアミド系単量体は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0028】
【化3】
(式中、R
1は、水素原子又はメチル基を表す。R
2及びR
3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~2の炭化水素基を表す。R
2及びR
3は、互いに連結して環を形成していてもよい。)
【0029】
上記一般式(1)において、R1は、水素原子又はメチル基を表す。重合性の観点から、R1は、水素原子であることが好ましい。
R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1~2の炭化水素基を表す。上記炭化水素基としては、一価又は二価の炭化水素基が挙げられる。
R2及びR3は、互いに連結して環を形成していてもよい。R2及びR3が、互いに連結して環を形成している場合、R2及びR3は、同一又は異なって、二価の炭化水素基であることが好ましい。
上記炭素数1~2の一価の炭化水素基としては、メチル基、又はエチル基が挙げられる。
上記炭素数1~2の二価の炭化水素基としては、メチレン基、又はエチレン基が挙げられる。
なかでも、R2及びR3が互いに連結して環を形成しているものが好ましい。
上記炭化水素基は、置換基を有していてもよく、上記置換基としては、炭素数1~2のアルキル基、水酸基、炭素数1~2のアルコキシル基等が挙げられる。
【0030】
上記一般式(1)で表される化合物の具体例としては、例えば、N-ビニルアセトアミド、N-メチル-N-ビニルアセトアミド、N-ビニルホルムアミド、N-メチル-N-ビニルホルムアミド、N-ビニルプロピオンアミド等の鎖状のN-ビニルアミド系単量体;N-ビニルピロリドン、3-メチル-N-ビニルピロリドン、4-メチル-N-ビニルピロリドン、5-メチル-N-ビニルピロリドン、N-ビニルピペリドン等のN-ビニルラクタム系単量体が挙げられる。なかでも、樹脂の吸湿性をより一層向上させることができる点で、N-ビニルラクタム系単量体が好ましく、N-ビニルピロリドンがより好ましい。
上記N-ビニルアミド系単量体(b1)は、1種のみ使用されてもよいし、2種以上使用されてもよい。
【0031】
(疎水性単量体(b2))
上記疎水性単量体は、上記N-ビニルアミド系単量体(b1)以外の疎水性の単量体である。上記疎水性単量体は、上記N-ビニルアミド系単量体より疎水性の度合いが大きい単量体であれば良い。
【0032】
上記疎水性単量体としては、上記N-ビニルアミド系単量体より疎水性の度合いが大きい単量体であれば、特に限定されないが、なかでも、上記N-ビニルアミド系重合体(B)が上記150℃以上の融点を有する樹脂(A)と相溶又は微分散しやすくなる点で、N-置換マレイミド系単量体、N-ビニルカプロラクタム系単量体、及び、炭素数4~24の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0033】
上記N-置換マレイミド系単量体としては、例えば、下記一般式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0034】
【化4】
(式中、R
4は、炭素数1~20のアルキル基、炭素数4~15のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基を表す。)
【0035】
上記炭素数1~20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、2,2-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、ヘプチル基、2-メチルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、2,2-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3-エチルペンチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、オクチル基、メチルヘプチル基、ジメチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、トリメチルペンチル基、3-エチル-2-メチルペンチル基、2-エチル-3-メチルペンチル基、2,2,3,3-テトラメチルブチル基、ノニル基、メチルオクチル基、3,7-ジメチルオクチル基、ジメチルヘプチル基、3-エチルヘプチル基、4-エチルヘプチル基、トリメチルヘキシル基、3,3-ジエチルペンチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基等が挙げられる。なかでも、炭素数1~15のアルキル基が好ましく、炭素数1~12のアルキル基がより好ましく、炭素数1~8のアルキル基が更に好ましい。
【0036】
上記炭素数4~15のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロノニル基、シクロデシル基、ジシクロペンタニル基、ノルボルニル基、アダマンチル基等が挙げられる。なかでも、炭素数4~8のシクロアルキル基が好ましく、炭素数4~6のシクロアルキル基がより好ましい。
【0037】
上記炭素数6~20のアリール基としては、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基等を挙げることができる。なかでも、炭素数6~12のアリール基が好ましい。
【0038】
上記アルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基は、置換基を有していてもよく、無置換であってもよい。上記置換基としては、例えば、アルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基等が挙げられる。
【0039】
上記N-置換マレイミド系単量体の具体例としては、例えば、N-メチルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-プロピルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド、N-t-ブチルマレイミド、N-ドデシルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-オクチルマレイミド、N-2-エチルヘキシルマレイミド、N-デシルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-テトラデシルマレイミド、N-ステアリルマレイミド、N-2-デシルテトラデシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、N-ナフチルマレイミド、N-クロロフェニルマレイミド、N-メチルフェニルマレイミド、N-ヒドロキシルエチルマレイミド、N-ヒドロキシルフェニルマレイミド、N-メトキシフェニルマレイミド、N-カルボキシフェニルマレイミド、N-ニトロフェニルマレイミド、N-トリブロモフェニルマレイミド、N,N’-オルトフェニレンビスマレイミド、N,N’-メタフェニレンビスマレイミド、N,N’-パラフェニレンビスマレイミド等が挙げられる。なかでも、上記N-ビニルアミド系単量体との共重合性の観点から、N-ベンジルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミドが好ましい。
【0040】
上記N-ベンジルマレイミドとしては、例えば、ベンジルマレイミド;p-メチルベンジルマレイミド、p-ブチルベンジルマレイミド等のアルキル置換ベンジルマレイミド;p-ヒドロキシベンジルマレイミド等のフェノール性水酸基置換ベンジルマレイミド;o-クロロベンジルマレイミド、o-ジクロロベンジルマレイミド、p-ジクロロベンジルマレイミド等のハロゲン置換ベンジルマレイミド;等が挙げられる。
【0041】
上記N-ビニルカプロラクタム系単量体としては、例えば、N-ビニル-ε-カプロラクタム、及び、N-ビニル-ε-カプロラクタムの少なくとも1の水素原子を置換基に置き換えた化合物が挙げられる。
【0042】
上記炭素数4~24の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えば、下記一般式(3)で表される化合物が挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」と「メタクリル酸」を包含する。
【0043】
【化5】
(式中、R
5は、水素原子又はメチル基を表す。R
6は、炭素数4~24の脂肪族炭化水素基を表す。)
【0044】
上記脂肪族炭化水素基は、飽和又は不飽和のいずれであってもよいが、飽和脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0045】
上記R6は、炭素数4~22の一価の脂肪族炭化水素基であることが好ましい。
【0046】
上記炭素数4~24の脂肪族炭化水素基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、具体的には、例えば、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、sec-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、s-アミル(メタ)アクリレート、t-アミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート(ラウリル(メタ)アクリレートとも称す)、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ヘプタデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデシル(メタ)アクリレート、2-デシルテトラデカニル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の直鎖状又は分岐鎖状の脂肪族炭化水素基を有する化合物;ジシクロペンタニルアクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート等の環状の脂肪族炭化水素基を有する化合物を挙げることができる。
【0047】
上記疎水性単量体(b2)は、1種のみ使用されてもよいし、2種以上使用されてもよい。
【0048】
(他の重合性単量体(b3))
上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、更に、他の重合性単量体由来の構造単位を有していてもよい。すなわち、上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、上述した単量体(b1)及び(b2)と、他の重合性単量体(b3)を含む単量体成分を重合してなる重合体であってもよい。
上記重合体単量体(b3)としては、上述した単量体(b1)及び(b2)と重合し得るものであれば特に限定されないが、例えば、以下の単量体を挙げることができる。これらの単量体は、1種のみ使用されてもよいし、2種以上使用されてもよい。
【0049】
(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等の、上記単量体(b2)以外の(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N-モノメチル(メタ)アクリルアミド、N-モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体類;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性不飽和単量体及びその塩又は第4級化物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有不飽和単量体及びその塩;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和無水物類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルエチレンカーボネート及びその誘導体;(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル及びその誘導体;ビニルスルホン酸及びその誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、オクテン、ブタジエン等のオレフィン類等。
【0050】
上記N-ビニルアミド系重合体(B)において、上記N-ビニルアミド系単量体(b1)由来の構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して15~85質量%であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが更に好ましい。
【0051】
上記N-ビニルアミド系重合体(B)において、上記疎水性単量体(b2)由来の構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して15~85質量%であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることが更に好ましく、また、80質量%以下であることがより好ましく、75質量%以下であることが更に好ましい。
【0052】
上記N-ビニルアミド系重合体(B)において、上記他の重合性単量体(b3)由来の構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して0~20質量%であることが好ましく、15質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0053】
上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、重量平均分子量が3000~1500000であることが好ましい。上記N-ビニルアミド系重合体(B)が樹脂組成物から漏出しにくい点で、上記重量平均分子量は、5000以上であることがより好ましく、10000以上であることが更に好ましく、1200000以下であることがより好ましく、1000000以下であることが更に好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求めることができ、具体的には、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0054】
上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、ガラス転移温度(Tg)が80~400℃であることが好ましい。上記ガラス転移温度は100℃以上であることがより好ましく、120℃以上であることが更に好ましく、380℃以下であることがより好ましく、350℃以下であることが更に好ましく、300℃以下であることが更により好ましく、280℃以下であることが特に好ましい。上記ガラス転移温度は、日本工業規格JIS K 7121に準拠した方法により測定して得られる値であり、具体的には、後述の実施例に記載の方法で求めることができる。
【0055】
上記N-ビニルアミド系重合体(B)は、吸湿率が3%以上であることが好ましい。
上記N-ビニルアミド系重合体(B)の吸湿率が3%以上であると、上記樹脂(A)に好適な吸湿性を付与することができる。上記N-ビニルアミド系重合体(B)の吸湿率は、4%以上であることが更に好ましい。吸湿率の上限は、特に限定されないが、樹脂組成物の寸法安定性の観点から、60%以下が好ましく、50%以下がより好ましい。
上記吸湿率は、後述する実施例に記載の方法で求めることができる。
【0056】
(N-ビニルアミド系重合体の製造方法)
上記N-ビニルアミド系重合体(B)を製造する方法としては、特に限定されず、上述した単量体(b1)、(b2)及び(b3)を含む単量体成分を、公知の方法で重合する方法が挙げられる。各単量体の量は、重合体における各構造単位の含有量が所望の範囲となるよう適宜調整するとよい。
【0057】
上記単量体成分を重合する方法としては特に限定されず、公知の方法で行うことができ、一般的には、有機過酸化物やアゾ系化合物、過酸化水素等の公知の重合開始剤を用いて水溶液や有機溶剤中でラジカル重合する方法が挙げられる。
上記重合体の分子量等は、重合開始剤の量や種類、重合温度、単量体の添加方法等の公知の方法により、適宜調整することができる。
【0058】
上記重合における単量体成分の添加方法については、特に限定されず、公知の方法から適宜選択して行うとよいが、例えば、上記単量体(b1)と単量体(b2)の重合反応がより一層進行しやすくなる点で、上記単量体(b1)に、重合開始剤を添加し、反応温度が約0.5℃以上、上昇するのを確認した後に、上記単量体(b2)を添加する方法が好ましい。
【0059】
上記重合反応としては、単量体組成に応じて適宜設定すればよいが、例えば、20~150℃で、0.5~10時間行うことが好ましく、30~120℃で1~6時間行うことがより好ましい。
【0060】
上記N-ビニルアミド系重合体の製造方法は、上述した重合工程以外の他の工程を含んでいてもよい。例えば、熟成工程、中和工程、重合開始剤等の失活工程、希釈工程、乾燥工程、濃縮工程、精製工程等が挙げられる。これらの工程は、公知の方法により行うことができる。
【0061】
本発明の樹脂組成物において、上記N-ビニルアミド系重合体(B)の含有量は、上記樹脂(A)100質量部に対して0.5~25質量部であることが好ましい。上記樹脂組成物の吸湿性がより一層向上する点で、上記N-ビニルアミド系重合体(B)の含有量は、上記樹脂(A)100質量部に対して1質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることが更に好ましく、また20質量部以下であることがより好ましく、15質量部以下であることが更に好ましい。
【0062】
本発明の樹脂組成物は、上述した樹脂(A)及びN-ビニルアミド系重合体(B)以外に、他の成分を含んでいてもよい。上記他の成分としては、本発明の樹脂組成物の目的、用途に応じて適宜選択すればよく、例えば、上記以外の樹脂;色材;分散剤;耐熱向上剤;レベリング剤;シリカ微粒子等の無機微粒子;カップリング剤;フィラー;硬化助剤;可塑剤;重合禁止剤;紫外線吸収剤;酸化防止剤;艶消し剤;消泡剤;帯電防止剤;滑剤;表面改質剤;揺変化剤;揺変助剤;難燃剤;防錆剤;酸発生剤;溶剤等が挙げられる。
これらは、公知のものから適宜選択して使用することができる。また、その使用量についても、樹脂組成物の目的、用途に応じて適宜設定することができる。
【0063】
上記樹脂組成物は、融点が150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。上記融点は、日本工業規格JIS K 0064-1992に準拠した方法により測定して得られる値である。
【0064】
<樹脂組成物の調製方法>
本発明の樹脂組成物を調製する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いればよく、例えば、上述した各成分を、ブレンダーやミキサー、押出機、ニーダー等の公知の各種混合機、分散機、混練機等を用いて混合する方法が挙げられる。なかでも、本発明の樹脂組成物は、溶融混錬により調製することが好ましい。
溶融混錬の方法は特に限定されず、公知の溶融混錬機を用いて行うことができる。溶融混錬の条件は、樹脂組成物の組成に応じて適宜設定すればよいが、一般的には、上記樹脂(A)が溶融する温度以上で行うことが好ましく、150℃以上がより好ましく、180℃以上が更に好ましい。また、上記溶融混錬の温度の上限は、樹脂の黄変や分解が起こらない点で、400℃以下が好ましく、350℃以下がより好ましく、320℃以下が更に好ましい。
【0065】
上記樹脂組成物は、溶融混錬した後、成形や粉砕等を行うことにより、溶融ペレット、シート、フィルム、チップ、顆粒、粉末等の公知の形態とすることができる。また、本発明の樹脂組成物を用いて更に成形して、所望の形状を有する成形品とすることもできる。成形方法としては、特に限定されず、射出成形、押出成形、ブロー成型、圧縮成形、真空成形等の公知の方法が挙げられ、樹脂組成物の用途に応じて適宜選択すればよい。粉砕方法としては、特に限定されず、公知の方法により行うことができる。
【0066】
また、上記樹脂組成物は、上述した各成分を溶剤と混合することによって、コーティング剤の形態とすることができる。上記コーティング剤の形態の場合、固形分量が3~40質量%、好ましくは5~30質量%となるよう、上記樹脂組成物に溶剤を添加するとよい。上記溶剤としては、特に限定されず、樹脂組成物の組成に応じて適宜選択するとよい。
上記コーティング剤の使用方法としては、例えば、上記コーティング剤を基材上に塗布し、塗布物を乾燥、加熱等して、基材上に塗膜を形成する方法等が挙げられる。塗布、乾燥、加熱は、公知の方法により行うとよい。
【0067】
<用途>
本発明の樹脂組成物は、吸湿性が向上したものである。そのため、吸湿性が求められる用途に好適に使用することができる。吸湿性を有すると、例えば、ミラーやガラスの防曇性、調湿性等を向上させることができる。
本発明の樹脂組成物の具体的な用途としては、例えば、家電製品、電子材料、電気部品、自動車部品、容器、フィルム、住宅建材等を挙げることができる。
【0068】
以上のとおり、本発明の樹脂組成物は、吸湿性が向上したものである。また、本発明の樹脂組成物は、耐熱性、機械的強度、耐薬品性等にも優れる。本発明の樹脂組成物は、家電製品、電子材料、電気部品、自動車部品、日用品等の工業用材料として、広く使用することができる。
【0069】
また、上述のとおり、上述した樹脂(A)に、上記N-ビニルアミド系重合体(B)を混合させることにより、上記樹脂(A)が有する特性に加えて、吸湿性を向上させることができる。そのような、上記N-ビニルアミド系重合体も、本発明の一つである。以下に、本発明のN-ビニルアミド系重合体について説明する。
【0070】
2.N-ビニルアミド系重合体
本発明のN-ビニルアミド系重合体は、N-ビニルアミド系単量体由来の構造単位、及び、N-置換マレイミド系単量体由来の構造単位を有することを特徴とする。本発明のN-ビニルアミド系重合体は、上述した構成を有するため、樹脂に、吸湿性を付与することができる。
【0071】
上記N-ビニルアミド系単量体由来の構造単位、及び、N-置換マレイミド系単量体由来の構造単位としては、上述した「1.樹脂組成物」に記載のN-ビニルアミド系単量体(b1)由来の構造単位、及び、N-置換マレイミド系単量体由来の構造単位と同様のものを挙げることができる。
【0072】
上記N-ビニルアミド系重合体は、更に、他の単量体由来の構造単位を有していてもよい。上記他の単量体由来の構造単位としては、上述した「1.樹脂組成物」に記載の他の重合性単量体(b3)由来の構造単位と同様のものを挙げることができる。
【0073】
上記N-ビニルアミド系重合体における、上記N-ビニルアミド系単量体由来の構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して15~85質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、25~75質量%であることが更に好ましい。
【0074】
上記N-置換マレイミド系単量体由来の構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して15~85質量%であることが好ましく、20~80質量%であることがより好ましく、25~75質量%であることが更に好ましい。
【0075】
上記他の重合性単量体由来の構造単位の含有割合は、全構造単位100質量%に対して0~20質量%であることが好ましく、0~15質量%であることがより好ましく、0~10質量%であることが更に好ましい。
【0076】
上記N-ビニルアミド系重合体の重量平均分子量、ガラス転移温度、吸湿率は、上述した「1.樹脂組成物」に記載のN-ビニルアミド系重合体(B)の重量平均分子量、ガラス転移温度、吸湿率と同様であることが好ましい。
【0077】
上記N-ビニルアミド系重合体は、上述した「1.樹脂組成物」に記載のN-ビニルアミド系重合体(B)の製造方法と同様の方法により製造することができる。
【0078】
上記N-ビニルアミド系重合体は、樹脂と混合することにより、当該樹脂の吸湿性を向上させることができる。上記樹脂としては、特に限定されないが、上述した「1.樹脂組成物」に記載の、150℃以上の融点を有する樹脂(A)と同様の樹脂が好ましく挙げられる。
【0079】
上記N-ビニルアミド系重合体と上記樹脂との混合割合は、上記樹脂100質量部に対して上記ビニルアミド系重合体が0.5~25質量部であることが好ましく、1~20質量部であることがより好ましく、1~15質量部であることが更に好ましい。
【0080】
また、上記N-ビニルアミド系重合体と上記樹脂との混合方法としては、特に限定されないが、上述した「1.樹脂組成物」に記載の樹脂組成物の調製方法と同様の方法を挙げることができる。
【0081】
本発明のN-ビニルアミド系重合体は、樹脂に吸湿性を付与することができる。そのため吸湿性が必要とされる用途に好適に適用することができる。
【実施例】
【0082】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0083】
重合体及び樹脂組成物についての各評価を下記の方法で行った。
<重合体の固形分の測定>
底面の直径が約5cmの秤量缶(質量W1(g))に、約1gの重合体を量り取り(質量W2(g))、これを150℃の定温乾燥機中において1時間静置し、乾燥させた。乾燥後の秤量缶と重合体の合計質量(W3(g))を測定し、下記式より固形分を求めた。
固形分(質量%)=[(W3-W1)/W2]×100
【0084】
<重合体の残存単量体の測定>
実施例1の重合体中の単量体(N-ビニルピロリドン)の含有率は、ガスクロマトグラフ(装置:株式会社島津製作所製 GC-2010 Plus、検出器:FID、カラム:GL Sciences製 InterCap1)を用いて求めた。
実施例2、3及び5の重合体中の単量体(N-ビニルピロリドン)の含有率は、ガスクロマトグラフ(装置:株式会社島津製作所製 GC-2014、検出器:FID、カラム:化学物質評価研究機構製 G-100)を用いて求めた。
【0085】
<重合体の重量平均分子量(Mw)の測定>
重合体の重量平均分子量について、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により下記の条件で測定して求めた。
装置:東ソー製 HLC-8320GPC
検出器:RI
カラム:昭和電工株式会社製 Shodex KD-806M(2本)、KD-G 4A
カラム温度:40℃
流速:0.8ml/min
検量線:Polystyrene Standards
溶離液:N,N-ジメチルホルムアミド(0.1%LiBr含有)
【0086】
<吸湿率の測定>
重合体(粉体)、ポリエステル樹脂(ユニチカ製、MA-2101M)、又は樹脂組成物を底面が直径約5cmのガラス製の秤量瓶に0.8g入れた。次いで、105℃で2時間乾燥した質量(W4)を測定した。次いで、30℃、相対湿度90%の恒温槽(装置:アドバンテック東洋 低温恒温恒湿器 型式THN064PB)にて保管し、24時間後に取り出して吸湿後の質量(W5)を測定した。吸湿率を下記の計算式で計算した。
吸湿率(%)=(W5-W4)×100/W4
【0087】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
示差走査熱量計(リガク製、Thermo plus EVO DSC-8230)を用い、窒素ガス雰囲気下、約10mgのサンプルを常温から200℃もしくは240℃まで昇温(昇温速度20℃/分)して得られたDSC曲線から、始点法により評価した。リファレンスには、α-アルミナを用いた。
【0088】
(実施例1)
ストレート羽根型攪拌翼(PTFE製)、温度計、還流管、ジャケットを備えた500mL反応器(ガラス製)に、トルエン(富士フイルム和光純薬株式会社製)86.0部とN-ビニルピロリドン(株式会社日本触媒製、以下、「VP」とも称する)30.0部を仕込んだ。200mL/分で15分間窒素置換を行い、溶存酸素を除去した。次いで、窒素導入を30ml/分にし、250rpmで撹拌しながら、反応器の内温が80℃になるように加熱した。次いで、80℃を維持しながら、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下、「V-59」とも称する)の3%トルエン溶液40.0部を180分間かけて滴下し、重合を開始させた。重合発熱を確認後(V-59滴下開始後7分後)、N-ベンジルマレイミド(株式会社日本触媒製、以下、「BzMI」とも称する)の20%トルエン溶液105部を60分かけて滴下した。N-ベンジルマレイミドの60分の滴下終了後、N-ベンジルマレイミドの20%トルエン溶液45部を60分かけて滴下した。全VPに対する全BzMIの量は100%、全単量体(VP+BzMI)に対するV-59の量は2.0%であった。V-59の滴下開始から300分後、2-プロパノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)7.0部を一括添加し、VP/BzMI重合体溶液を得た。得られたVP/BzMI重合体の物性を確認したところ、Mwが159000、残存VP量が1.8%であった。
得られたVP/BzMI重合体溶液を80℃真空乾燥5時間後、ラボミルサー(装置:岩谷産業製 Labo Milser LM-PLUS)を用いて10秒間粉砕し、目開き500μmのJIS標準篩で分級して、VP/BzMI重合体(粉体)を得た。
得られたVP/BzMI重合体(粉体)の物性を確認したところ、固形分が95.2%であった。
【0089】
(実施例2)
マックスブレンド型攪拌翼(SUS304製)、温度計、還流管、ジャケットを備えた1L反応器(SUS304製)に、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)559部仕込んだ。250rpmで撹拌しながら、反応器の内温が75℃になるように加熱した。次いで、75℃を維持しながら、N-ビニルピロリドン(株式会社日本触媒製、以下、「VP」とも称する)38.6部、N-ビニル-ε-カプロラクタム(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下、「VCap」とも称する)の82%酢酸エチル溶液55部、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下、「V-59」とも称する)の5%酢酸エチル溶液10.8部を、それぞれ30分間かけて滴下した。次いで、75℃を維持しながら、VP96.4部は180分間、VCapの82%酢酸エチル溶液110部は150分間、V-59の5%酢酸エチル溶液32.4部は210分間かけて、それぞれ滴下した。全VPに対する全VCapの量は100%、全単量体(VP+VCap)に対するV-59の量は0.8%であった。
VPの滴下開始から300分後、2-プロパノール(富士フイルム和光純薬株式会社製)33.2部を一括添加し、VP/VCap重合体溶液を得た。
得られたVP/VCap重合体溶液を90℃真空乾燥4時間後、目開き500μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕し、さらに粉体を150℃で8時間真空乾燥して、VP/VCap重合体(粉体)を得た。
得られたVP/VCap重合体(粉体)の物性を確認したところ、固形分が98.9%、Mwが220000、pHが6.6、残存VP量が0.3%であった。
【0090】
(実施例3)
マックスブレンド型攪拌翼(SUS304製)、温度計、還流管、ジャケットを備えた1L反応器(SUS304製)に、脱イオン水637.4部仕込んだ。250rpmで撹拌しながら、200mL/分で30分間窒素置換を行い、溶存酸素を除去した。次いで、窒素導入を30ml/分にし、250rpmで撹拌しながら、反応器の内温が90℃になるように加熱した。次いで、90℃を維持しながら、VPとVCapの混合液280部(VP140部とVCap140部を混合)は180分間、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩(富士フイルム和光純薬株式会社製、以下、「V-50」とも称する)の5%水溶液16.8部は210分間かけて、それぞれ滴下した。全VPに対する全VCapの量は100%、全単量体(VP+VCap)に対するV-50の量は0.3%であった。
V-50の滴下終了後、さらに90℃で90分間保持して、VP/VCap重合体水溶液を得た。
得られたVP/VCap水溶液を加熱面密着型乾燥機(表面温度140℃)で40秒間乾燥した。得られたシート状乾燥物を目開き500μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕し、VP/VCap重合体(粉体)を得た。
得られたVP/VCap重合体(粉体)の物性を確認したところ、固形分が96.5%、Mwが405000、pHが6.2、残存VP量が0.09%であった。
【0091】
(実施例4)
マックスブレンド型攪拌翼(SUS304製)、温度計、還流管、ジャケットを備えた1L反応器(SUS304製)に、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)396.9部仕込んだ。250rpmで撹拌しながら、反応器の内温が75℃になるように加熱した。次いで、75℃を維持しながら、VP30部は30分間、V-59の5%酢酸エチル溶液24.3部は270分間かけて、それぞれ滴下し重合を開始させた。重合発熱を確認後(VP滴下開始5分後)、メタクリル酸イソボルニル(富士フイルム和光純薬株式会社製)45部を60分間かけて滴下した。VPの30分間の滴下終了後、VP60部を120分間かけて滴下した。また、メタクリル酸イソボルニルの60分間の滴下終了後、メタクリル酸イソボルニル45部を180分間かけて滴下した。全VPに対する全メタクリル酸イソボルニルの量は100%、全単量体(VP+メタクリル酸イソボルニル)に対するV-59の量は0.7%であった。
V-59の滴下終了後、さらに75℃で60分間保持して、VP/メタクリル酸イソボルニル重合体溶液を得た。
得られたVP/メタクリル酸イソボルニル重合体溶液を90℃真空乾燥4時間後、目開き500μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕し、さらに粉体を150℃で8時間真空乾燥して、VP/メタクリル酸イソボルニル重合体(粉体)を得た。
【0092】
(実施例5)
マックスブレンド型攪拌翼(SUS304製)、温度計、還流管、ジャケットを備えた1L反応器(SUS304製)に、酢酸エチル(富士フイルム和光純薬株式会社製)615.4部仕込んだ。250rpmで撹拌しながら、反応器の内温が75℃になるように加熱した。次いで、75℃を維持しながら、VP46.7部は30分間、V-59の5%酢酸エチル溶液39.9部は285分間かけて、それぞれ滴下し重合を開始させた。重合発熱を確認後(VP滴下開始5分後)、アクリル酸イソボルニル(株式会社日本触媒製)35部を60分間かけて滴下した。VPの30分間の滴下終了後、VP93.3部を120分間かけて滴下した。また、アクリル酸イソボルニルの60分間の滴下終了後、アクリル酸イソボルニル105部を220分間かけて滴下した。全VPに対する全アクリル酸イソボルニルの量は100%、全単量体(VP+アクリル酸イソボルニル)に対するV-59の量は0.7%であった。
V-59の滴下終了後、さらに75℃で55分間保持して、VP/アクリル酸イソボルニル重合体溶液を得た。
得られたVP/アクリル酸イソボルニル重合体溶液をエバポレーターで濃縮し、90℃真空乾燥4時間後、目開き500μmのJIS標準篩を通過するまで粉砕し、さらに粉体を150℃窒素雰囲気下で3時間乾燥して、VP/アクリル酸イソボルニル重合体(粉体)を得た。
得られたVP/アクリル酸イソボルニル重合体(粉体)の物性を確認したところ、固形分が98.6%、Mwが137000、残存VP量が0.5%であった。
【0093】
実施例1~5で得られた重合体と、比較例1としてポリエステル樹脂(ユニチカ製、MA-2101M、融点255℃、約4mm×4mm×2mmのペレット状)とを用いて、上記の方法で吸湿率及びガラス転移温度(Tg)を測定した。結果を表1に示す。
【0094】
(実施例6~10、比較例2)
更に、実施例1~5で得られた重合体を、ポリエステル樹脂(ユニチカ製、MA-2101M、融点255℃、粉砕処理物、平均粒子径1390μm)100質量部に対して5質量部混合して樹脂組成物を調製し、得られた樹脂組成物について、上記の方法で吸湿率を測定した。なお、ポリエステル樹脂は、粉砕処理したものを用いた。粉砕処理は、三庄インダストリー株式会社製のサニタリークラッシャーSC-01C型を用いて行った。また、平均粒子径は以下の方法で測定した。結果を表2に示す。
<ポリエステル樹脂の平均粒子径の測定>
乾式の粒子径分布測定装置(スペクトリス株式会社マルバーン事業部製、型式:マスターサイザー3000、乾式)により測定した体積分布の累積50%値を、平均粒子径とした。測定条件を以下に示す。
(測定条件)
乾式レーザー回折散乱法
分散圧力:2.0bar
ベンチュリ:HEベンチュリ
粒子屈折率:1.66
粒子吸収率:0.01
粒子密度:1.38g/cm3
粒子形状:非球形
溶媒名:空気(AIR)
測定範囲:0.1μm~3500μm
【0095】
【0096】
【0097】
表1より、実施例の重合体は、ポリエステル樹脂と比較して吸湿性が高いことが確認された。また、表2より、実施例の重合体をポリエステル樹脂と混合すると、ポリエステル樹脂組成物の吸湿性が高くなることが確認された。