(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】トイレットロール
(51)【国際特許分類】
A47K 10/16 20060101AFI20240524BHJP
D21H 27/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A47K10/16 A
D21H27/00 F
(21)【出願番号】P 2019218415
(22)【出願日】2019-12-02
【審査請求日】2022-11-10
(73)【特許権者】
【識別番号】390029148
【氏名又は名称】大王製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002321
【氏名又は名称】弁理士法人永井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】天野 良美
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-064191(JP,A)
【文献】特開2013-070954(JP,A)
【文献】特開2019-118709(JP,A)
【文献】特開2008-088612(JP,A)
【文献】特開2009-028457(JP,A)
【文献】特開2003-199687(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47K 10/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙厚が120~150μm、MD方向の乾燥引張強度が190~310cN/25mmかつCD方向の乾燥引張強度が60~120cN/25mm、シングルエンボス加工された1プライのトイレットペーパーが、
外径35~45mmの管軸に対して、54.5~56.7mの長さを巻き付けられ、巻径が104~108mmとされており、
クレム吸水度が33~60mm/3分、
ソフトネスが2.0~4.5cN、
坪量が21.0~23.5g/m
2、
MMDが、表面(エンボスによる凹部形成面)において7.0~12.0、裏面(エンボスによる凸部形成面)において9.0~15.5、
巻硬さが0.80~1.40kgf、
巻密度が0.83~0.92、であ
り、
内添柔軟剤、内添保湿剤、パルプスラリー用の粘剤を含む
ことを特徴とするトイレットロール。
ここに、前記MMDは、摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社製)又はその相当機を用いて測定する。その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値である。
前記摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとする。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。
【請求項2】
トイレットペーパーにおけるエンボスパターンが、
紙面全体に、底面が1.0~1.5×1.0~1.5mmの正方形又はその正方形の四方角が対角線外方に向かって延在された略正方形をなす凹部が、中心間隔が4.5~5.5mmで幅方向に対する配列角度が45°で格子状に配列され、かつ、
凹部と凹部との間に凹部の四方角同士から延在する谷線部を有するものである請求項1記載のトイレットロール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットペーパーをロール状に巻いたトイレットロールに関する。
【背景技術】
【0002】
トイレットロールにおけるトイレットペーパーの巻き長さは、JIS規格において、27.5m、32.5m、55m、65m、75m、100mが定められている。これに限らず、消費者の要求に応じて巻かれているトイレットペーパーの長さが異なる製品が種々存在するが、一般的な普及品では、1プライで上記JIS規格における55m前後のものが多い。
【0003】
トイレットペーパーは、肌に直接触れて使用されるものであり、便の拭き取りにも用いられるため、柔らかさと便の拭き取り性が重要である。そして、このような柔らかさと拭き取り性のためにトイレットペーパーにはエンボス加工されているものがある。
【0004】
また、近年シャワートイレの普及により、トイレットペーパーは、シャワートイレ専用品のような高価格の製品ではない、普及品においても水分の吸収性の向上が要求されるようになってきている。
【0005】
ところで、消費者がトイレットロールを購入する際には、トイレットロールの状態で触れるため、消費者はトイレットペーパーの柔らかさをトイレットロールの硬さで判断することがある。トイレットロールの直径は、JIS規格においては120mm以下と定められており、一般的には、100~110mm程度である。トイレットロールの柔らかさを高めるためには、定められた直径内において、トイレットペーパーを紙管等の軸に緩く巻き付けるようにすればよいが、巻きを過度に緩くするとトイレットペーパーの層間に巻きシワが発生しやすくなる。
【0006】
特に、エンボス加工されたトイレットペーパーは、表面に凹凸があるため巻きを緩くすると、トイレットロールを購入する際やトイレットロールを取り換える際に、使用者等が手に持った際に、エンボスが潰れやすい。また、その際にシワが入ることがある。反対に巻きを固くするとエンボス加工による凹凸の鮮明さが低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-348976号公報
【文献】特開2018-064664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の主たる課題は、適度なロールの硬さを有し、製造時及び製造後にトイレットロールを持った際におけるエンボス加工による凹凸の潰れやシワが発生し難く、さらに、エンボス加工による凹凸の鮮明さに優れ、トイレットペーパーの吸水性も優れるトイレットロールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した第一の手段は、
紙厚が120~150μm、MD方向の乾燥引張強度が190~310cN/25mmかつCD方向の乾燥引張強度が60~120cN/25mm、シングルエンボス加工された1プライのトイレットペーパーが、
外径35~45mmの管軸に対して、54.5~56.7mの長さを巻き付けられ、巻径が104~108mmとされており、
クレム吸水度が33~60mm/3分、
ソフトネスが2.0~4.5cN、
坪量が21.0~23.5g/m
2
、
MMDが、表面(エンボスによる凹部形成面)において7.0~12.0、裏面(エンボスによる凸部形成面)において9.0~15.5、
巻硬さが0.80~1.40kgf、
巻密度が0.83~0.92、である
ことを特徴とするトイレットロールである。
ここに、前記MMDは、摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社製)又はその相当機を用いて測定する。その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値である。
前記摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとする。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。
【0010】
第二の手段は、
トイレットペーパーにおけるエンボスパターンが、
紙面全体に、底面が1.0~1.5×1.0~1.5mmの正方形又はその正方形の四方角が対角線外方に向かって延在された略正方形をなす凹部が、中心間隔が4.5~5.5mmで幅方向に対する配列角度が45°で格子状に配列され、かつ、
凹部と凹部との間に凹部の四方角同士から延在する谷線部を有するものである上記第一の手段に係るトイレットロールである。
【0011】
第三の手段は、
トイレットペーパーが、柔軟剤と、保湿剤と、粘剤とを含む、上記第一又は第二手段に係るトイレットロールである。
【発明の効果】
【0012】
以上の本発明によれば、適度なロールの硬さを有し、トイレットロールを持った際におけるエンボス加工による凹凸の潰れやシワが発生し難く、さらに、エンボス加工による凹凸の鮮明さに優れ、トイレットペーパーの吸水性も優れるトイレットロールが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態に係るトイレットロールの斜視図である。
【
図3】実施形態に係るエンボス深さの測定手順を説明するための概略図である。
【
図4】MMDの測定方法を説明するための図である。
【
図5】実施形態に係る吸水性試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次いで、本実施形態のトイレットロールを図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施形態のトイレットロールは、紙厚が120~150μmであり、MD方向の乾燥引張強度が190~310cN/25mm以上かつCD方向の乾燥引張強度が60~120cN/25mmであり、エンボス加工された1プライのトイレットペーパーが、外径35~45mmの管軸に対して、54.5~56.7mの長さを巻き付けられ、巻径が104~108mmとされているものである。
【0016】
これらの構成を採ることで、適度なロールの硬さと、製造時及び製造後にトイレットロールを持った際におけるエンボス加工による凹凸の潰れやシワが発生し難く、さらに、エンボス加工による凹凸の鮮明さに優れるものとなる。さらに、クレム吸水度が33~60mm/3分であるとよりよい。さらに、各構成について詳述する。
【0017】
トイレットロールの巻径は、JIS P 4501において、120mm以下と定められており、一般的なトイレットロールをセットするためのホルダーはこの120mmを基準として作成される。本実施形態に係るトイレットペーパーの巻径L2(直径)は104~108mmであり、一般的なホルダーに十分にセット可能な巻径となっている。ここで、巻径は、ムラテックKDS株式会社製ダイヤメータールール又はその相当機を用いて測定した値である。測定値は、幅方向に場所を変えて3個所測定した平均値とする。なお、同一製造ロット品における平均値は5個のロールの平均値とする。
【0018】
本実施形態に係るトイレットロールは、1プライのトイレットペーパーの巻き長さが54.5~56.7mである。従来の一般家庭向けの普及品の1プライの製品の巻き長さは、55m前後であり、本実施形態に係るトイレットロールは、一般普及品の巻き長さと同程度の長さが確保されている。なお、巻き長さは、トイレットロールをテンションを掛けずに巻きほどきつつ計測する。例えば、巻きほどきから5mずつジグザグに折り返しつつ測定するようにしてもよい。
【0019】
トイレットロールの芯径は、JIS P 4501においては、38mm±1mmと定められており、この基準が参考にされるが、製品により種々存在するのが実情である。本実施形態に係る管軸は、外径35~45mmは、一般的な製品の範囲内であり、管軸に軸芯を通してトイレットロールを回転させる種のトイレットロールホルダーにて十分に使用できる。また、本実施形態の管軸の外径とすることで、本発明に係るトイレットペーパーを上記巻き長さで巻いた際に、適度なロールの硬さとすることができる。また、トイレットロールを持った際におけるエンボス加工による凹凸の潰れやシワが発生し難いものとすることができる。
【0020】
なお、トイレットロールの幅は、限定されないが一般的には110~120mmであり、本実施形態のトイレットロールもこの範囲とするのが望ましい。
【0021】
本実施形態に係るトイレットペーパーは、1プライであり、その紙厚は120~150μmである。2プライ以上では、他の構成との関係で適度なロールの硬さとすることができない。つまり、本発明の効果が発現しない。この紙厚は、普及品のトイレットペーパーのなかではやや紙厚が厚い。本発明の紙厚を範囲とすることでエンボス加工による凹凸が鮮明となる。ここで、紙厚の測定方法は、試験片をJIS P 8111(1998)の条件下で十分に(通常は、8時間程度)調湿した後、同条件下でダイヤルシックネスゲージ(厚み測定器)「PEACOCK G型」(尾崎製作所製)を用いて1プライの状態で測定するものとする。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき本発明に係るトイレットペーパーでは、エンボス加工による凹凸を有するためそのエンボスを構成する一つの凹部(凸部)が必ず測定台の範囲に入るようにする。なお、エンボスパターンが深さの異なる複数の凹部群で構成されている場合には、最も深さの深い種の凹部が位置するようにする。この測定時には、プランジャーはのせるだけとして押えない。プランジャーの端子は金属製で直径10mmの円形の平面が紙平面に対し垂直に当たるようにし、この紙厚測定時の荷重は、約70gfである。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。ここで、紙厚の測定時には、エンボス(凹部)の潰れが想定されるが、本発明に係る紙厚は、そのような潰れも含んで測定した値であり、そのような潰れは無視してよい。本紙厚測定において凹部の潰れによって生ずる紙厚差は無視できる。
【0022】
本実施形態に係るトイレットペーパーは、MD方向(縦方向)の乾燥引張強度が190~310cN/25mmかつCD方向(横方向)の乾燥引張強度が60~120cN/25mmである。より好ましくは、MD方向(縦方向)の乾燥引張強度が235~250cN/25mmかつCD方向(横方向)の乾燥引張強度が90~110cN/25mmである。前記乾燥引張強度の範囲とすることで、特に、使用時に過度の硬さを感じることがない。また、トイレットロールの巻き長さ及び巻き径であってもエンボス加工による凹凸の鮮明さに優れ、シワがない或いは極めて改善された少ないものとなる。つまり、製造時にエンボス加工による凹凸が過度に伸ばされずシワが極めて入り難い。乾燥引張強度は、JIS P 8113(2006)の引張試験に基づいて測定する。試験片は縦・横方向ともに巾25mm(±0.5mm)×長さ150mm程度に裁断したものを用いる。試験機は、ミネベア株式会社製ロードセル引張り試験機TG-200N及びその相当機を用いる。つかみ間隔は100mmに設定する。測定は、試験片の両端を試験機のつかみに締め付け、紙片を上下方向に引張り荷重をかけ、紙が破断する時の指示値(デジタル値)を読み取る手順で行う。引張速度は100mm/minとする。縦方向、横方向ともに各々5組の試料を用意して各5回ずつ測定し、その測定値の平均を各方向の乾燥引張強度とする。試料の調整は、JIS P 8111(1998)にしたがう。乾燥引張強度の調整は、本発明の作用効果を妨げない範囲で公知の方法で調整することができる。
【0023】
他方、乾燥引張強度の調整やトイレットペーパーの柔らかさをより向上させるために、本実施形態に係るトイレットペーパーは、柔軟剤、保湿剤、粘剤とが添加されているのが望ましい。これらの柔軟剤、保湿剤、粘剤は、抄紙時に内添する原紙自体の柔らかさや紙力を調整するものである。柔軟剤、保湿剤及び粘剤は、トイレットペーパーに用いられる内添柔軟剤、内添保湿剤、パルプスラリー用の粘剤の中から適宜に選択することができる。柔軟剤としては、脂肪酸エステル系化合物が挙げられる。 脂肪酸エステル系化合物は、カチオン性の脂肪酸エステル系化合物、ノニオン性の脂肪酸エステル系化合物のいずれでもよく、複数種が添加されていてもよい。さらに、例えば、米国特許第3296065号明細書等に開示される脂肪酸エステル系軟化剤や、特開昭48-22701号公報等に開示される第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、特開平2-99690号公報、特開平2-99691号公報等に開示される非陽イオン系界面活性剤、特開昭60-139897号公報等に開示されるウレタンアルコール又はその塩若しくはカチオン化物、特開平2-36288号公報等に開示されるポリリン酸塩、特開平2-224626号公報、特開平3-900号公報等に開示されるポリシロキサン等の中から一種又は二種以上を適宜選択して使用することができる。好ましい例としては、アルキル基及び/ 又はアルケニル基を有する非イオン性界面活性剤(A 成分)とアルキル基及び/ 又はアルケニル基を有するカチオン性界面活性剤(B成分) とを含有するものが挙げられる。後者の場合、特に、非イオン性界面活性剤(A成分)が、炭素数6~24のアルキル基及び/ 又は炭素数6~24のアルケニル基を疎水部として有するものであるのが望ましい。なお、A成分の炭素数が6未満であると柔軟効果が高まらない場合があり、炭素数が24を超えると抄紙系に添加した際の分散性が悪くなる場合がある。また、保湿剤としては、カチオン系ポリエチエマルジョン、脂肪酸アミド、脂肪酸アミド系化合物が挙げられる。また、粘剤としては、ポリエチレンオキサイド(ポリエチレングリコール)系増粘剤等が挙げられる。
【0024】
本実施形態に係るトイレットペーパーは、JIS L 1096(2010) E法に準じたハンドルオメータ法に基づいて測定されるソフトネスが2.0~4.5cNであるのが望ましい。より好ましくは、2.4~4.5cN、特には、2.5~4.0cNである。柔軟剤、保湿剤、粘剤さらにエンボスパターンによりこの範囲に調整することができる。ソフトネスが2.0~4.5cNの範囲であれば、使用時にトイレットペーパーとしての柔らかさを感じることができる。
【0025】
本実施形態に係るトイレットペーパーは、坪量は必ずしも限定されないが、坪量が21.0~23.5g/m2であるのが望ましい。好ましくは、21.5~23.0g/m2である。より、好ましくは、21.8~22.8g/m2である。上記紙厚の範囲内でこの坪量の範囲とすることで、乾燥引張強度の範囲に調整しやすくまた優れた吸水性が発現する。特に、エンボス加工による凹凸を鮮明にする場合、紙厚を厚く、坪量を高くすると、押圧された部分の繊維の締まりが進み吸水性が低下する場合があるが、本実施形態に係るトイレットロールの構成では、上記紙厚及び坪量の範囲では、吸水性がより高まる。
【0026】
本実施形態に係るトイレットペーパーは、エンボス加工がされている。トイレットペーパーにエンボス加工がされているため、トイレットペーパーの曲げ方向に柔らかなり、表面の凹凸によって便の拭き取り性に優れる。また、トイレットペーパーにエンボス加工されていると紙面に凹凸が存在するため、ロール状に巻き取った際に層間に空間ができ、この空間がロールの柔らかさを発現させやすくする。エンボス加工は、シングルエンボスと称される一方面に凹部のみが存在し、他方面がその凹部に対応する凸部のみが存在するエンボス加工によるものである。なお、本実施形態のトイレットロールは、凹部側が外面側として巻き取られている。
【0027】
エンボスパターンは必ずしも限定されるわけではない。マイクロエンボスやドット型のエンボス、デザインエンボス等の適宜のエンボスパターンとすることができる。但し、好適なエンボスパターンは、凹部の面積が1.0~2.5mm
2で、密度が0.01~0.5個/mm
2で、エンボス深さが、0.02~0.5mmである。トイレットペーパーとしての柔らかさが向上するとともに、トイレットロールのようにロール状態における柔らかさが高まり、消費者が手に持った際に柔らかいと感じやすくなるとともに、エンボス加工による凹凸がつぶれがたく鮮明さにも優れるものとなる。特に、
図2に示すように、紙面全体に、底面が対角L4×対角L4=1.0~1.5×1.0~1.5mmの正方形の凹部31(
図2A)又はその正方形の四方角が対角線外方に向かって延在された略正方形(
図2B)をなす凹部32が、中心間隔L5が4.5~5.5mmで幅方向に対する配列角度が45°で格子状に配列され、かつ、凹部31(32)と凹部31(32)との間に凹部の四方角同士から延在する谷線部33を有するものである。なお、谷線部33は、凹部31(32)の四方角が最も深く、凹部間の中間が最も浅くなるように漸次緩やかに断面弓なりに配されているのが望ましい。このエンボスパターンは、幅方向の45°に向かって谷線部によって、巻き取り時のテンションが分散され本発明に係るトイレットロールの巻き長さ等において、エンボスによる凹凸が極めて明瞭となるとともに、しわ等が発生しがたい。また、トイレットペーパー自体の柔らかさや便の拭き取り性についても優れる。なお、エンボス深さとは凹部の深さの平均値である。
【0028】
エンボス加工による凹部の深さは、株式会社キーエンス社製ワンショット3D測定マクロスコープ VR-3200又はその相当機と、画像解析ソフトウェア「VR-H1A」又はその相当ソフトウェアにより測定する。測定は、倍率12倍、視野面積24mm×18mmの条件で測定する。但し、倍率と視野面積は、エンボス(凹部)の大きさによって、適宜変更することができる。具体的な測定手順は、
図3を参照して説明すると、上記ソフトウェア等を用いて、平面視点で示される画像部(図中X部分)中の一つのエンボス(凹部)40の周縁の最長部を横切る線分Q1におけるエンボス深さ(測定断面曲線)プロファイルを得る。このエンボス深さプロファイルの断面曲線からλc:800μm(但し、λcはJIS-B0601「3.1.1.2」に記載の「粗さ成分とうねり成分との境界を定義するフィルタ」)より短波長の表面粗さの成分を低域フィルタによって除去して得られる断面視点で示される画像部(図中Y部分)の「輪郭曲線Q2」のうち、上に凸で最も曲がりが強くなる2つの凹部エッジ点P1,P2と、凹部エッジ点P1,P2で挟まれる最小値を求め、深さの最小値Minとする。さらに、凹部エッジ点P1,P2の深さの値の平均値を深さの最大値Maxとする。このようにして、エンボス深さ=最大値Max-最小値Minとする。又、凹部エッジ点P1,P2のX-Y平面上の距離(長さ)を最長部の長さと規定する。上記の上に凸で最も曲がりが強くなる2つの凹部エッジ点P1,P2は目視にて選択する。なお、その選択にあたっては、当該測定中のエンボス(凹部)40の平面視点の画像中の輪郭Eを参考としてもよい。同様にして、最長部に垂直な方向での最短部についてもエンボス(凹部)の深さを測定し、大きい方の値をエンボス(凹部)の深さとして採用する。以上の測定を、トイレットペーパー表面の任意の10個のエンボスについて行い、その平均値を最終的なエンボス深さとする。
【0029】
本実施形態に係るトイレットペーパーは、表面性の指標であるMMDの値が、表面(凹部形成面)において7.0~12.0、好ましくは8.0~10.0であり、裏面(凸部形成面)において9.0~15.5、好ましくは、10.0~11.0とするのがよい。なお、本実施形態に係るトイレットペーパーは、シングルエンボスの形態で凹凸が形成されているため、表面性を示す指標であるMMDの値が、表面(凹部形成面)よりも裏面(凸部形成面)の方が高くなる。このMMDの範囲であれば、使用時にトイレットペーパーとしてのざらつきを感じることがなく滑らかさを感じられるものとなる。そのうえ、MMDの値は、表面性であるため、エンボス加工による凹凸に影響される。係る範囲のエンボス加工による凹凸のティシュペーパーが巻かれた、トイレットロールであれば手に持った際の柔らかさが極めて感じられるようになる。また、巻かれた状態における各層を構成するトイレットペーパー同士の擦れが適度になり、製造時にしわやエンボス潰れが発生し難く、エンボスの鮮明さ、シワの入りにおいても優れたものとなる。
なお、MMDの測定は、
図4に示す測定装置100を用い、摩擦子の接触面を所定方向に20g/cmの張力が付与された測定試料の表面に対して25gの接触圧で接触させながら、張力が付与された方向と略同じ方向に速度0.1cm/sで2cm移動させ、このときの、摩擦係数を、摩擦感テスター KES-SE(カトーテック株式会社製)又はその相当機を用いて測定する。その摩擦係数を摩擦距離(移動距離=2cm)で除した値がMMDである。摩擦子は、直径0.5mmのピアノ線Pを20本隣接させてなり、長さ及び幅がともに10mmとなるように形成された接触面を有するものとする。接触面には、先端が20本のピアノ線P(曲率半径0.25mm)で形成された単位膨出部が形成されているものとする。
【0030】
さらに、本実施形態に係るトイレットペーパーは、クレム吸水度が33~60mm/3分、好ましくは、35~50mm/3分である。クレム吸水度が33mm/3分以上であれば、1プライで55m前後の巻き長さである汎用品の製品の中では従来にない高い吸水性である。上限値については、1プライの場合には、過度に高いと例えば、尿の拭き取りやシャワートイレでの使用の際の安心感が低下する。60mm/3分以下であれば、過度に吸水せず、1プライの汎用品においても安心して使用しやすいものとなる。また、水解性も確保しやすい。ここで、本実施形態に係るクレム吸水度は、JIS P 8141に準じて測定する。試料は、JIS P 8141にしたがい幅15mm、長さ200mm以上とするが、測定時間に関しては、JIS P 8141では10分間と規定されているところ、本クレム吸水度は、3分間で測定し、3分経過後の浸透した距離とする。これは、トイレットペーパーは、水解性が高く10分間の浸漬により水解して測定できないことがあり、また、トイレットペーパーの実使用では10分よりも格段に短時間、具体的にはせいぜい3分間程度までの吸水量が重要となるからである。また、3分間という短時間でのクレム吸水度は、エンボス加工の凹凸にも影響される。エンボス加工による凹凸では、深く鮮明な凹部は繊維が強く圧縮され、浅く不鮮明な凹部は繊維が弱く圧縮されている。エンボスの鮮明さ及び深さにより繊維密度が異なるため短時間でのクレム吸水度が異なるようになる。
【0031】
さらに、本実施形態に係るトイレットペーパーは、水100μLを滴下した際の浸透枚数が、9枚以上であるのが望ましい。この浸透枚数の測定は、複数枚のトイレットペーパーを自重のみで重ね、最上位置のトイレットペーパーより10mm上方から水100μLを滴下し、滴下後、ただちに最下層への浸透を確認する。少数の積層数から開始し、浸透が確認できなくなるまで、積層数を増やし、浸透が確認できる最大の枚数を計測する。9枚を超えるようであれば、極めて迅速に水分が浸透するものといえる。
【0032】
さらに、本実施形態に係るトイレットペーパーは、吸水力が、坪量21.5g/m2以下で0.72mL以上であるのが望ましい。さらに、坪量21.5g/m2超21.9g/m2以下の範囲で、0.68mL以上、21.9g/m2超22.3g/m2以上の範囲で0.62mL以上であるのが望ましい。坪量が高くなるにつれて、吸水力は低下することがあるが、上記範囲であれば優れた吸水力といえる。
【0033】
ここで、吸水力は、トイレットペーパーを20枚重ねたものを試料とし、その試料上の一点に水を一定速度で滴下していき、試料が水を保持できず滴下面と反対面まで浸透したことを検出器で検出したときの、滴下量を確認する、試験とした。具体的には、トイレットペーパーを20枚重ね合わせてサンプル押えで積層状態で固定する。次いで、試料より10mm上方位置から、試料の一方面の同一に10±2mL/分で水を滴下する。試料の下方位置で試料と接した位置に水の検知装置を配置し、試料を水が浸透したことを検知装置が検知した際の滴下量を水分の保持量を吸水力とする。
【0034】
他方、本実施形態に係るトイレットロールは、巻硬さが0.80~1.40kgfであるのが望ましい。本発明に係る巻硬さとは、ダイヤメータールール(ムラテックKDS株式会社製及びその相当機)をトイレットロールに巻き付け、プッシュプルゲージ(株式会社イマダ製及びその相当機)で三目盛り分引くのに必要な力を測定した値である。巻硬さが0.80~1.20kgfであれば、巻き長さに比して硬いと感じ難いものとなる。上記の本発明に係る構成であればこの巻き硬さに調整することが容易である。
【0035】
他方、本実施形態に係るトイレットロールは、巻密度が0.83~0.92であるのが望ましい。巻き密度とは、実断面積÷理論断面積で算出される値である。実断面積とは、巻長さ×紙厚で算出される値である。一方、理論断面積とは、(巻径/2)×(巻径/2)×π-(紙管外径/2)×(紙管外径/2)×πで算出される値である。つまり、端面の面積から紙管開口端側面積を差し引いた面積である。巻き密度が0.83~1.10の範囲にあるとロールを周面で手に持った際に巻き長さに比して硬いと感じ難いものとなる。特に1.10を超えると過度に硬さを感じ始め、0.96以上になると硬巻きで締まりのあるロールと感じられるようになる。一方、0.83未満の場合には、ロールの芯際が端面から飛び出る恐れが生ずる。
【0036】
次いで、本実施形態のトイレットロールの製造方法を説明する。本実施形態のトイレットロールの製造方法では、原紙を得る抄紙工程、ワインダー装置にて原紙を巻き取る巻き取り工程とを有する。以下、各工程を説明する。
【0037】
〔抄紙工程〕
本実施形態における抄紙工程は、ドライクレープ法によるクレープ紙の抄紙機により行うことができる。まず、抄紙工程では、パルプスラリーを調整する。このパルプスラリーのフリーネスは、410~680ccの間で適宜に調整する。
【0038】
本実施形態のパルプスラリーは、繊維原料がバージンパルプ70~100質量%である。古紙パルプ等の他の繊維原料を0~30質量%含むことができる。柔らかさや滑らかさ等の風合い調整や紙力の調整が容易であることから、バージンパルプ100質量%であるのが特に望ましい。但し、古紙パルプを配合すると、バージンパルプ100質量%からなるものに比して、安価に製造することができる利点がある。また、古紙パルプは、古紙からパルプを再生する工程において、再生前のパルプ繊維に比して繊維が細かくなる傾向にあり、このような繊維の性質上、紙厚を厚くせずに、繊維が密となり紙力が高めることができる。その一方で、過度に配合すると柔軟性などの風合いが低下する。よって古紙パルプの特徴に鑑みて、その配合比率を0~30質量%の範囲で定めればよい。なお、古紙パルプの種類は必ずしも限定されるものではないが、特に、ミルクカートン古紙、上質古紙を原料とする古紙パルプが望ましい。これらは原料由来の広葉樹クラフトパルプ(LBKP)が多く配合されているため、紙力を発現させやすい。
【0039】
バージンパルプは、針葉樹クラフトパルプ(NBKP)と広葉樹クラフトパルプ(LBKP)であるのが望ましい。これらの配合比率は、NBKP:LBKPを20:80~50:50とするのが望ましい。
【0040】
次いで、パルプスラリーに、柔軟剤を0.9~1.0kg/パルプt、保湿剤を1.4~1.6kg/パルプt、粘剤を0.45~0.55kg/パルプtを供給する。但し、柔軟剤、保湿剤、粘剤は、同時期に供給する必要はなく、抄紙原料を抄紙網に吐出する前段の適宜の位置において別途に供給することができる。好適には、柔軟剤をミキシングタンクにて供給し、保湿剤は種箱にて供給する。粘剤は、これらに先立って供給する。上記割合で柔軟剤及び保湿剤を配合することで、トイレットペーパーの柔らかさが向上し、さらに、エンボス加工による凹凸が入りやすくなる。
【0041】
柔軟剤、保湿剤及び粘剤は、トイレットペーパーの製造に用いられる内添柔軟剤、内添加保湿剤、パルプスラリー用の粘剤の中から適宜に選択することができる。柔軟剤としては、例えば、米国特許第3296065号明細書等に開示される脂肪酸エステル系軟化剤や、特開昭48-22701号公報等に開示される第4級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤、特開平2-99690号公報、特開平2-99691号公報等に開示される非陽イオン系界面活性剤、特開昭60-139897号公報等に開示されるウレタンアルコール又はその塩若しくはカチオン化物、特開平2-36288号公報等に開示されるポリリン酸塩、特開平2-224626号公報、特開平3-900号公報等に開示されるポリシロキサン等の中から一種又は二種以上を適宜選択して使用することができる。好ましくは、アルキル基及び/ 又はアルケニル基を有する非イオン性界面活性剤(A 成分)とアルキル基及び/ 又はアルケニル基を有するカチオン性界面活性剤(B成分) とを含有するものが挙げられる。後者の場合、特に、非イオン性界面活性剤(A成分)が、炭素数6~24のアルキル基及び/ 又は炭素数6~24のアルケニル基を疎水部として有するものであるのが望ましい。なお、A成分の炭素数が6未満であると柔軟効果が高まらない場合があり、炭素数が24を超えると抄紙系に添加した際の分散性が悪くなる場合がある。
【0042】
また、保湿剤としては、カチオン系ポリエチエマルジョン、脂肪酸アミドが挙げられる。
【0043】
また、粘剤としては、地合をより高めることができるため、ポリエチレンオキサイド系増粘剤が好ましい。
【0044】
特に、本実施形態の抄紙工程における抄紙原料の調整では、粘剤をやや多く使用するのがよい。これにより、乾燥引張紙力が強まり、ワインダーでのテンション(ドロー)を低めることができ、エンボス加工時の速度を遅くして鮮明な凹凸を形成することができるようになる。その一方で、柔軟剤がやや多く、保湿剤がやや少なく使用される。これにより、粘剤による紙の硬さが低減され、エンボス加工後のトイレットペーパーとしての柔らかさ、トイレットロールとしての柔らかさが発現しやすくなるとともに、製造時にシワが発生しがたくなる。
【0045】
なお、原紙を抄紙する際の抄紙速度(抄速)は、抄紙速度850~920m/分とするのがよい。繊維同士の馴染み、また、柔軟剤等の薬剤の効果が発現するに十分な時間を確保できる。
【0046】
抄紙工程における湿紙の乾燥は、ドラムドライヤーにて行うことができる。ドラムドライヤーで乾燥された乾紙は、クレーピングドクターでクレーピングされ、適宜にカレンダー加工した後に、巻き取って原反ロールに加工される。ここで、本実施形態においてはクレーピング時における、クレーピングドクターの刃先角度を89~91°でクレープを形成する。ベベル角は、17~19°とすればよい。クレープ率は、19~22%程度である。クレーピングドクターの刃先角度を高くすることで、しっかりとしたクレープを原紙に形成し、厚みのある原紙とすることで、エンボス加工時の凹凸が鮮明なトイレットペーパーとなる。
【0047】
なお、原紙の乾燥引張強度は、トイレットロールとした際の上記トイレットペーパーの乾燥引張強度を確保すべく、1.1~1.3倍程度とすればよい。
【0048】
〔巻き取り工程〕
本実施形態における巻き取り工程は、エンボス加工設備が組み込まれたワインダー装置により行うことができる。本実施形態では、巻き取り工程に先立って又は平行して製造されるトイレットロールの製品幅の複数倍以上の長さを有する長尺の紙管に対して、原反ロールから繰り出した原紙を加工した後、巻き付けて、最終製品であるトイレットロールの径と同径でありかつ幅が最終製品の複数個分ある中間製品であるログを形成する。
【0049】
この巻き取り工程では、抄紙工程で得た原紙を巻き取った原反ロールは、ワインダー装置にセットされる。ワインダー装置では、原反ロールから繰り出された原紙に対して、まずエンボス加工を行う。本実施形態におけるエンボス加工は、スチールラバー方式でシングルエンボス加工とする。スチールラバー方式とは、表面にエンボスパターンに対応する凸部が形成された金属製のエンボスロールとこれと対になる表面が樹脂製のラバーロールとの間に原紙を通すことで、エンボスロールの周面を原紙に押し付けることでエンボスロール周面のエンボスパターンを原紙に転写するエンボス加工方法である。この場合、原紙のエンボスロールに対面した面に凹部が形成され、ラバーロールに接した面に前記凹部に対応する凸部が形成される。
【0050】
エンボスロールに形成する凸部の高さは、エンボス深さに応じて適宜調整すればよいが、1.2~1.5mmとするのがよい。ラバーロールのショア硬度(Shore hardness)は、適宜の範囲で調整できるが、本実施形態では、ショア硬度60超、より好ましくは70超のややショア硬度の高い素材をも用いたラバーロールを用いてエンボス加工を行うのが望ましい。なお、比較例ではショア硬度45~50のラバーロールを用いている。一般に、ラバーロールのショア硬度を高めることはエンボスの不鮮明化につながるが、低い素材であるとラバーロールが変形し、エンボスが適切に入らなくなる。本発明では、ラバーロールのショア硬度を適切に高めることで、エンボス加工による凹凸が連続的に鮮明になるようにしている。
【0051】
本実施形態では、エンボスロールのエンボスパターンは必ずしも限定されるわけではないが、上述のとおり、凹部の面積が1.0~2.5mm
2で、密度が0.01~0.5で、エンボス深さが、0.02~0.5mmで凹凸が形成されるものとするのがよい。トイレットペーパーとしての柔らかさが向上するとともに、トイレットロールのようにロール状態における柔らかさが高まり、消費者が手に持った際に柔らかいと感じやすくなるとともに、エンボス加工による凹凸がつぶれがたく鮮明さにも優れるものとなる。特に、上述の
図2に示すパターンが転写されるものであるのがよい。巻き取り時のテンションが分散され本発明に係るトイレットロールの巻き長さ等において、エンボスによる凹凸が極めて明瞭となるとともに、しわ等が発生しがたくなる。また、トイレットペーパー自体の柔らかさや便の拭き取り性についても優れる。なお、エンボス深さとは凹部の深さの平均値である。
【0052】
エンボス加工により凹凸が形成された原紙が、外径が35~45mmの長尺の紙管に対して、サーフェイスワインディング方式で巻き付ける。巻き付けの長さは、本実施形態のトイレットロールとなるように、54.5~56.7mとする。この際、巻径が104~108mmとなるようにテンションを調子する。ここで、本実施形態のトイレットロールを製造する場合、ワインディングベルトとドラムとのドロー値を調整するのがよい。このドロー値は、{(ワインディングベルトスピード)-(ワインディングドラムスピード)}/(ワインディングベルトスピード)で算出される値である。つまり、巻き取り時にテンションの高低を表す。ドロー値を調整することで、エンボス加工時における加工速度も調整できる。本実施形態では、ドロー値は、5.0%以下、好ましくは3.0%以下である。ドロー値を5.0%以下とすることで、エンボス加工時の速度を遅くして、鮮明な凹凸を形成でき、さらに、巻き取りの際のシワや凹凸の潰れが好適に防止される。
【0053】
なお、巻き取りに先立っては、ワインダー装置に組み込まれたパーフォレーションロールを備えたミシン目線形成部によりミシン目線を付与することができる。
【0054】
以上のように、ログを製造したならば、このログを後段のログカッター設備にて、製品幅に裁断し、個々のトイレットロールとする。
【実施例】
【0055】
次いで、本発明のトイレットロールの実施例及び比較例についてロールの柔らかさ、紙(トイレットペーパー)の柔らかさ、滑らかさ、しっとり感、厚み感、エンボス加工の凹凸の鮮明さについて試験した。さらに、坪量が異なる複数の実施例及び比較例を制作して、クレム吸水度、水100mLの浸透枚数、吸水力について試験を行った。
【0056】
なお、各実施例及び各比較例は、
図2Bに示すパターンのエンボスが付与され(対角距離1.0×1.0、ピッチ5.0mm)ているものである。各例に係るトイレットロールの構成及びトイレットペーパーの物性・組成は、下記表1及び表2のとおりである。
【0057】
官能評価は、被験者18名が実際に各例に係るトイレットロールを1週間、使用し、「ロールの柔らかさ」、「紙の柔らかさ」、「紙の滑らかさ」、「紙のしっとり感」、「紙の厚み感」、「凹凸の鮮明さ」の各項目について評価した。評価は、比較例を4点として、比較例よりも良い5点、比較例と同程度である4点、比較例のほうがやや良い3点、比較例のほうが良い2点、比較例のほうがとても良い1点、として点数付けを行ない、その平均値を算出して判断することとした。なお、エンボスの鮮明さの試験は、巻き始めから巻き終わりまで凹凸が鮮明であるか否かを評価者が目視で判断するものとした。
【0058】
また、クレム吸水度、水100mLの浸透枚数、吸水力の試験の方法は、上述のとおりである。なお、クレム吸水度は、各試料Noに5回の平均値を算出した値である。結果は、表2に示す。クレム吸水度は、JIS P 8141に準じた、測定開始後3分経過後の浸透した距離である。水100mLの浸透枚数は、5枚からスタートし、枚数を増やすようにした。吸水力における、サンプル押えは、環状の枠であり、中心部に滴下した水が枠にまで浸透しない十分な滴下部を有するものである。
【0059】
【0060】
【0061】
表1に示されるとおり、本発明に係る実施例は、全ての官能評価において比較例よりも優れた結果となった。また、吸水力は、実施例及び比較例ともに坪量が高くなるにつれて水分保持量が少なくなっている。これは、エンボス加工による凹凸を有するトイレットペーパーでは、エンボス加工により紙が押圧されているため坪量が高いと、紙が厚み方向により密になりやすいためと考えられる。しかしながら、
図5に示されるように、実施例は、比較例よりも、同一坪量では、吸水力が高いことが解る。また、浸透枚数及びクレム吸水度の試験では、実施例よりも比較例の結果が良好な結果となった。
【0062】
これらの結果を総合するに本発明に係るトイレットロールは、ロールの柔らかさに優れ、トイレットロールを持った際におけるエンボス加工による凹凸の潰れやシワが発生し難く、さらに、エンボス加工による凹凸の鮮明さに優れ、トイレットペーパーの吸水性能も優れるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…トイレットロール、10…トイレットペーパー、20…紙管(管芯)、L1…トイレットロールの巻径(直径)、L2…トイレットロールの管芯の直径、L3…トイレットロールの幅、31,32…凹部、33…谷線部。