IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アントニオ・アルカイニの特許一覧

特許7493333焙煎抽出物およびキサントフモールを含む組成物の使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】焙煎抽出物およびキサントフモールを含む組成物の使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/12 20060101AFI20240524BHJP
   A61K 36/8998 20060101ALI20240524BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K31/12
A61K36/8998
A61P3/10
【請求項の数】 3
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019236439
(22)【出願日】2019-12-26
(62)【分割の表示】P 2018000662の分割
【原出願日】2013-07-26
(65)【公開番号】P2020090501
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2020-01-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-31
(31)【優先権主張番号】102012014745.7
(32)【優先日】2012-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519279269
【氏名又は名称】アントニオ・アルカイニ
【氏名又は名称原語表記】Antonio Arcaini
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【復代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【復代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・バック
(72)【発明者】
【氏名】アヒム・ツュルヒャー
(72)【発明者】
【氏名】ザーシャ・ヴンダーリッヒ
【合議体】
【審判長】原田 隆興
【審判官】前田 佳与子
【審判官】吉田 佳代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-524299(JP,A)
【文献】特表2010-536772(JP,A)
【文献】特開2006-306800(JP,A)
【文献】Natural Product Communications,2009,Vol.4,No.5,p.591-610
【文献】J.Agric.Food Chem.,2009,Vol.57,p.7274-7281
【文献】Mol.Nutr.Food Res.,2005,Vol.49,No.9,DOI:10.1002/mnfr.200590033,p.821,823
【文献】J.Nat.Prod.,2007,Vol.70,p.1507-1509
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K31/00-33/44
A61K36/00-36/9068
A61P1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTplus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キサントフモール(XN)のメタボリック・シンドロームおよび糖尿病の治療および/または予防効果を高めるための、メタボリック・シンドロームおよび糖尿病の治療用および/または予防用の医薬組成物を製造する方法であって、
前記方法が、XNを焙煎抽出物と混合する工程を含み、
前記XN及び前記焙煎抽出物の両方が前記医薬組成物の成分であり、
前記焙煎抽出物、焙煎モルトの低温抽出物または高温抽出物よりなる群から選択される、前記方法。
【請求項2】
前記XNが、ホップ抽出物の形態、純粋なXNの形態、または合成的に生成したXNの形態で存在する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記焙煎抽出物が、粗く粉砕したまたは粉砕していない焙煎モルトの低温抽出物または高温抽出物よりなる群から選択される、請求項1または2記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に健康促進目的のための焙煎抽出物およびキサントフモールを含有する組成物の特別の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
キサントフモールがヒトおよび動物の健康に非常に多様なプラスの効果を有していることはよく知られている。例えば、抗菌効果に加えて、種々の機構による広範な疾患に対する予防活性が観察されている。
【0003】
例えば、がん-予防活性、骨粗鬆症、メタボリック・シンドローム、糖尿病および循環器疾患に対する保護作用が報告されている。
【0004】
これらの細分化は厳密にすることができないことは言及しておかなければならない。例えば、抗-酸化効果は腫瘍の予防において陽性であるが、例えば、キサントフモールに関連する現在まで研究されていないメタボリック・シンドロームや他の疾患とも陽性である。
【0005】
多数の研究ががん-予防の機構を記載しており、イン・ビトロ(in vitro)、大部分が細胞培養物において実験が行われている。別の参考文献においてイン・ビボ(in vivo)試験がなれている。腫瘍の起源は複数の因子の現象であり;多数の機構が相互作用し、その多くが知られているが、知られていないものの多い。頻繁に適用されている分類は初期の分子的事象を「腫瘍イニシエーション」、腫瘍の発達および確立の機構を「腫瘍プロモーション」、および腫瘍の増殖を「腫瘍プログレッション」と要約している。キサントフモールの効果を多くの機構に則して広範な多様な系で調べ;それらを以下に要約し、説明する。
【0006】
フェーズI酵素とは、前-発がん性物質から反応性の発がん性代謝物への代謝変換、すなわち毒化、に寄与する酵素を意味する。ラット肝臓および組換えヒト酵素における、培養物中の腫瘍細胞におけるキサントフモールによるかかる酵素の阻害は、Hendersonら(2000),Xenobiotica,30,235-251;Mirandaら(2000),Cancer Lett.,149,21-29;Mirandaら(2000),Drug Metab Dispos.,28,1297-1302およびGerhauserら(2002),Mol.Cancer Ther.,1,959-969によって記載されている。
【0007】
フェーズII酵素とは、反応性の発がん性代謝物をコンジュゲートし、それを細胞から分泌して解毒させることについて生物に寄与するものである。したがって、このクラスの酵素の刺激は保護的である。ヒト肝臓腫瘍培養細胞におけるキサントフモールによる刺激は、Hendersonら(2000),Xenobiotica,30,235-251;Mirandaら(2000),Cancer Lett.,149,21-29;Mirandaら(2000),Drug Metab Dispos.,28,1297-1302およびGerhauserら(2002),Mol.Cancer Ther.,1,959-969によっても記載されている。
【0008】
細胞の酸化は生命を維持する(エネルギー、呼吸、細菌防御の確保)ために生物に対して必要なプロセスである。その過程の間に、酸化障害は、健全な生物が自身の修復系を用いて排除することを引き起こす。欠損によるかにかかわらずこれらの系が十分でない場合、例えば、慢性の炎症を伴うような過剰な酸化傷害のために、反応性の酸化分子が身体の自身の巨大分子と反応し、腫瘍ならびに他の疾患の原因になり得る欠損および突然変異につながる。この理由のため、抗-酸化の特徴は、腫瘍および他の細胞の傷害の予防に極めて重要である。キサントフモールは、Mirandaら(2000),J.Agric.Food Chern.,48,3876-3884;Rodriguezら(2001),Food Chem.Toxicol.,39,437-445;Gerhauserら(2002),Mol.Cancer Ther.,1,959-969,Stevensら(2003)Chem.Res.Toxicol.,16, 1277-1286およびVogelら(2008),Natural and non-natural prenylated chalcones:Synthesis, cytotoxicity and anti-oxidative activity. Bioorg.Med.Chem,.e-pubによって記載されているように、ラット肝臓画分および酵素モデル系の細胞培養物における反応性の酸素および水素分子の形成および作用を阻害する。キサントフモールは、直接的な化学的相互作用で安定なジフェニルピクリルヒドラジル(DPPH)ラジカルを遮断することができないというべきである(Gerhauserら(2002),Mol.Canser Ther.,1,959-969;Dietzら(2005),ChemRes.Taxieal.,18,1296-1305;GerhauserおよびFrank(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,821823;Jungら(2005),Arch.Pharm Res.,28,534-540)。キサントフモールの抗酸化効果は間接的な細胞の機構に由来するようである。
【0009】
すでに記載したように、炎症プロセスは、多数の疾患に寄与しているかもしれない酸化性の有害な物質を形成する原因になる場合がある。このことのみならず、炎症プロセスの関与を示す多くのヒト腫瘍において物質が検出されている。この理由により、抗-炎症剤は腫瘍に対して予防的に作用する。Gerhauserら(2002),Mol.Cancer Ther.,1,959-969;Zhaoら(2003),BioIPharm.Bull.,26,61-65およびChoら(2008),Int.Immunopharmacol.,8,567-573においては、キサントフモールは細胞培養物において抗-炎症的であると記載されており;Monteiroら(2008)においては、キサントフモールは乳がん異種移植片における炎症因子の産生および血管新生を阻害すると記載されており(J.Cell Biochem,e-pub)、炎症に対する阻害効果は、飲用水中の4-6 mg/kg/日の60日間経口投与後のマウスにおいてもイン・ビボ(in vivo)でも確立された。
【0010】
エストロゲンは成長因子であり、変性細胞に成長に対する有利性を提供する。この理由のため、抗-エストロゲンは、ホルモンに依存する腫瘍にがん-予防作用を有すると考えられている。Gerhauserら(2002),Mol.Cancer Ther.,1,959-969;Effenbergerら(2005),J.Steroid Biochem.Mol.Biol.,96,387-399;Monteiroら(2006),J.Agric.Food Chern.,54,2938-2943およびMonteiroら(2007),J.Steroid Biochem.Mol.Biol.,105,124130においては、イン・ビトロ(in vitro)におけるキサントフモールの抗-エストロゲン効果が記載されており;Gerhauserら(2002),Mol.Cancer Ther.,1,959-969でマウス乳腺の器官培養モデルにおいても記載されている。ラットに対するイン・ビボ(in vivo)試験においては、3日間にわたる3 x 100 mg/kgのキサントフモールの経口適用後の抗-エストロゲン作用を検出することもできた(GerhauserおよびFrank(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,821823)。
【0011】
腫瘍の発生および増殖における顕著な特徴は、腫瘍細胞の著しい増殖である。増殖の阻害は、がんを予防するように作用し、腫瘍療法を提供するように作用する。この理由のため、抗-増殖性物質は腫瘍細胞の増殖を阻害すると同時に、健全な細胞を破壊しないことも求められる。勿論、多くの場合、このことは用量および物質作用の開始時期の問題である。キサントフモールは、24の異なる腫瘍細胞系統において増殖を阻害すると記載されている(Mirandaら(1999),Food Chern.Toxicol.,37,271-285;Gerhauserら(2002),Mol.Cancer Ther.,1,959-969;Herathら(2003),Chem Pharm.Bull.(Tokyo),51,1237-1240;Dietzら(2005),Chem Res.Taxieal.,18,1296-1305;Gotoら(2005),Cancer Lett.,219,215-222;Lustら(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,844850;Panら(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,837-843;Albiniら(2006),FASEB J.,20,527-529;Oelmulleら(2006),Phytomedicine.,13,732-734;Colgateら(2007),Cancer Lett.,246,201-209;Dell'Evaら(2007),Cancer,110,2007-2011;Leeら(2007),ArchPharrn.Res.,30,14351439;Monteiroら(2007),J.Steroid Biochem.Mol.Biol.,105,124130;Delmulleら(2008),PhytotherRes.,22,197-203;Monteiroら(2008),Xanthohumol inhibits inflammatory factor production and angiogenesis in breast cancer xenografts,J.Cell Biochem,e-pubおよびVogelら(2008),Natural and non-natural prenylated chalcones:Synthesis,cytotoxicity and anti-oxidative activity,Bioorg.Med.Chem,e-pub)。
【0012】
アポトーシスは相反する現象であり、健全な組織においては損傷すると考えられる。しかしながら、それは、損傷した細胞およびがん細胞を除去するのに望ましい。したがって、アポトーシス-誘導物質は、がん-予防剤および治療剤の両方となり得る。キサントフモールによるアポトーシスの誘導は、細胞培養物において(GerhauserおよびFrank(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,821823;Lustら(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,844850;Panら(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,837-843;Vanhoecke(2005),Int.J Cancer,117,889-895;Colgateら(2007),Cancer Lett.,246,201-209;Dell'Evaら(2007),Cancer,110,2007-2011;Yangら(2007),Apoptosis,12,1953-1963)および飲用水中、4-6 mg/kg/日で60日後にマウスにおいてイン・ビボ(in vivo)(Monteiroら(2008),Xanthohumol inhibits inflammatory factor production and angiogenesis in breast cancer xenografts, J.Cell Biochem.,e-pub)検出することができた。
【0013】
増殖するためには、腫瘍は栄養が供給されることを必要とする。一旦特定の大きさに達すると、この目的のためには腫瘍の増殖を沈滞させることなく新しい血管が形成される。したがって、血管新生の阻害剤は、がんを予防するように作用し、がん療法において有効である。キサントフモールの抗-血管新生作用は細胞培養物において(GerhauserおよびFrank(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,821823;Albiniら(2006),FASEB J.,20,527-529;Dell'Evaら,Cancer,110,2007-2011)およびマウスにおいてイン・ビボ(in vivo)で(GerhauserおよびFrank(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,821823;Albiniら(2006),FASEB J.,20,527-529;Monteiroら(2008),Xanthohumol inhibits inflammatory factor production and angiogenesis in breast cancer xenografts, J.Cell Biochem.,e-pub)、約1 mg/kg/日の用量で3日間os後(Albiniら(2006),FASEB J.,20,527-529)、飲用水中4-6 mg/kg/日で60日間(Monteiroら(2008),J.Cell Biochem.,e-pub)または1000 mg/kg皮下投与(GerhauserおよびFrank(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,821823)で記載されている。
【0014】
キサントフモールの保護作用における分子機構に対するさらなる実験において、NF-кB(核内因子カッパB)に対する影響が記録された。NF-κBはインターロイキン、腫瘍壊死因子α、誘導型一酸化窒素シンターゼ(iNOS)および誘導型シクロオキシゲナーゼ(Cox-2)のような前-炎症ターゲット遺伝子の刺激および産生において一部役割を担う細胞転写因子であり、プログレッションおよび炎症の期間に影響する決定因子を有する。NF-кB-調節遺伝子を特徴とする疾患には、糸球体腎炎、動脈硬化症、敗血症性ショックまたは肺線維症を伴う炎症事象、ならびに喘息およびリューマチ性関節炎のような慢性疾患が含まれる。Albiniら(2006),FASEB J.,20,527-529;Colgate(2007),Cancer Lett.,246,201-209;Dell'Evaら(2007),Cancer,110,2007-2011およびMonteiroら(2008),J.Cell Biochem.,e-pubにおいては、細胞培養物およびイン・ビボ(in vivo)において、NF-кBの阻害が記載されている。
【0015】
動物実験において、キサントフモールはがんを予防するその作用について研究されている。3の異なる腫瘍モデルにおいて、キサントフモールが腫瘍の形成を阻害したことを示すことができた。ヒト乳房腫瘍細胞(GerhauserおよびFrank(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,821823の実験におけるMX-1細胞; Monteiroら(2008),Xanthohumol inhibits inflammatory factor production and angiogenesis in breast cancer xenografts,J.Cell Biochem.,e-pubの実験におけるMXF7細胞)を免疫不全マウスに移し、腫瘍の増殖を測定した。GerhauserおよびFrank(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,821823に記載されているように、1000 mg/kgのキサントフモールを毎日皮下投与した後、腫瘍の増殖は1週間で46%阻害され、2週間で83%阻害された。Monteiroら(2008),Xanthohumol inhibits inflammatory factor production and angiogenesis in breast cancer xenografts,J.Cell Biochem.,e-pubに記載されているように、飲用水中の4-6 mg/kgのキサントフモールの日用量で腫瘍の増殖は35%阻害されたが、この結果は95%のレベルで統計学的に確認できなかった。Albiniら(2006),FASEB J.,20,527-529に記載されているように、ヒトカポジ肉腫(KS-IMM)の細胞を免疫-不全マウスに移し、約1.2 mg/kgのキサントフモールで23日間処理した;腫瘍の増殖は68%阻害された。
【0016】
Mirandaら(2000),Cancer Lett.,149,21-29;Dietzら(2005),ChemRes.Taxieal.,18,1296-1305;Plazarら(2007),MutatRes.,632,1-8;Kacら(2008),Phytomedicine.,15, 216-220およびPlazarら(2008),Toxicol In Vitro,22,318-327による抗-変異原/抗-遺伝毒性実験は、キサントフモールの抗-変異原および抗-遺伝毒性活性を記載している。培養物またはラット肝臓の細胞をキサントフモールと前-インキュベートし、つづいて遺伝毒性またはラジカルを形成する発がん物質で処理した。細菌培養物における変異原損傷の試験であるいわゆるエームステストおよび遺伝毒性物質によって引き起こされるDNA損傷を記載するコメットアッセイの両方において、キサントフモールは0.01ないし10 μMの範囲の用量に依存して100%まで損傷を阻害することができた。
【0017】
キサントフモールは微生物に対して作用する(Herath(2003),Chem Pharm.Bull.(Tokyo),51,1237-1240;Buckwoldら(2004),Antiviral Res.,61,57-62;Wang(2004),Antiviral Res.,64,189-194;Frolich(2005),J.Antimicrob.Chemother.,55,883-887;Allen(2007),Avian Dis.,51,21-26)。Mirandaら(2000),Drug Metab Dispos.,28,1297-1302およびFrolichら(2005),J. Antimicrob. Chemother.,55,883-887による実験では、マラリアを発生させるマラリア原虫の4の異なる系統に対する効果を記載しており、Allen(2007),Avian Dis.,51,21-26による実験では家畜動物の胃腸作用に主にコロニー形成する球虫類に対する作用の記載が提供されている。キサントフモールはHIV-1(ヒト免疫不全ウイルス)(Wangら(2004)、Antiviral Res.,64,189-194)、BVDV(ウシウイルス性下痢症ウイルス)、HSV-1および2(単純ヘルペスウイルス)およびCMV(サイトメガロウイルス(cytamegalovirus)(Buckwoldら(2004),Antiviral Res.,61,57-62)に対して抗-ウイルスとしてイン・ビトロ(in vitro)で作用する。
【0018】
骨の安定性は、骨-形成細胞(骨芽細胞)と骨-再吸収細胞(破骨細胞)との間の平衡に依存している。破骨細胞の活性が比率的に大きい場合は、骨粗鬆症が生じる。キサントフモールが1 μMの濃度で35%および10 μMで94%骨の再吸収を阻害することがイン・ビトロ(in vitro)で示すことができた(Tobeら(1997),Biosci.Biotechnol.Biochern.,61,158-159)。他の実験(Effenbergerら(2005),J.Steroid Biochem.Mol.Biol.,96,387-399)では、破骨細胞の活性化が記載されている。
【0019】
ジアシルグリセロール・アセチルトランスフェラーゼ(DGAT)は、メタボリック・シンドロームに関連して細胞中のトリグリセリドの形成および蓄積に重要である酵素を示す。Tabataら(1997),Phytochemistry,46,683-687およびCasaschiら(2004),J Nutr.,134,13401346による実験は、イン・ビトロ(in vitro)におけるキサントフモールによるこの酵素の阻害を示しており;Nozawaら(2005),Biochem.Biophys.Res.Commun.,336,754-761によって報告された実験では、マウスにおいてトリグリセリドおよび血漿グルコースレベルの低下を検出することができた。
【0020】
キサントフモールはラットにおける経口適用後にほとんど吸収されず、排泄物中にほとんど変化しないまま残っており(Avulaら(2004),J Chromatogr.Sci.,42,378-382;Stevens(2004),Phytochemistry,65,1317-1330;Hanske(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,868-873);それはイン・ビトロ(in vitro)で細胞質ゾルタンパク質に結合して(Pangら(2007),Mol.Nutr.Food Res.,51,872-879)グルクロン酸抱合を生じ(Yilmazer(2001),FEBS Lett.,491,252-256;Rueferら(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,851-856;Kimら(2006),J Nat Prod.,69,1522-1524)、イン・ビボ(in vivo)においても報告されている(Stevens(2004),Phytochemistry,65,1317-1330)。排泄物は多様な代謝物を特徴付けるが(Nookandehら(2004),Phytochemistry,65,561-570)、それは腸における微生物の活性に由来することがある。腸内細菌叢自体は、ラットに何ら影響しない(Hanskeら(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,868-873)。
【0021】
4週間の飲用水中のキサントフモールの経口適用(ほぼ28 mg/kg/日に対応して5x10-4M、自由に)は、雌性C3H-マウスの健康に対して望ましくない影響を示さなかった。体重の増加、器官の外観、血液学的な臨床パラメータ、肝臓酵素値およびグルコース代謝のパラメータは、すべでキサントフモールによって影響されないままであった(Vanhoeckeら(2005),In Vivo,19,103-107)。ラットに対する実験においては、キサントフモールを飲用水中100 mg/kg、500 mg/kgを餌に混合して、および1000 mg/kgを食道チューブで4週間毎日、適用した。高用量群(500 mg/kg/日および1000 mg/kg/日)におけるグリコーゲンの分解による肝臓の重量の減少を除いて、それによる毒性効果は測定できなかった(Hussongら(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49,861-867)。キサントフモールは抗-エストロゲン活性を特徴とするため、ラットでの再生が害されるかについて研究の焦点をあてた。動物を100 mg/kg/日の飲用水中のキサントフモールで4週間処理し、つづいて交配させた。雌性動物および雄性動物のいずれの前-処理も、繁殖力または泌乳に対して影響はなかった(Hussongら(2005),Mol.Nutr.Food Res.,49, 861-867)。
【0022】
キサントフモールの活性のスペクトルをどのようにして極めて多面的に切るかは注目に値する。例えば、それはイニシエーション相ならびにプロモーションおよびプログレッション相における発がんの機構を阻害する。抗-酸化および抗-炎症の特徴は、抗-エストロゲン活性、細胞増殖の阻害、アポトーシスの誘導および血管新生の阻害と同様に重要である。これらのすべての特徴は、最初にイン・ビトロ(in vitro)で見出され、現在では、動物実験でイン・ビボ(in vivo)でも検出されている。
【0023】
osによる100 mg/kg/日までの急性および半慢性の毒性(4週間)の実験では、マウスおよびラットにおける毒性の指標を全く与えなかった。500 mg/kgを超えるキサントフモールの日用量後のラット肝臓におけるグリコーゲン分解は、多量の生体異物の代謝において最高点に達する顕著に増大したエネルギー要求によって簡単に説明することができる。かかる高濃度は可能な毒性を試験するためだけに投与することは強調しなければならない。最近の研究は、一桁mg/kgの用量でのがん-予防効果を示した。
【0024】
齧歯類動物およびヒトにおける発がんの機構は、両方の代謝効果が非常に類似していて多くの実験を組換えヒト酵素、培養物のヒト細胞または免疫不全マウスにおけるヒト細胞を用いて行われているため、比較可能であり、そのために同様の結果がヒトについても予想することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本明細書に記載する発明は、ヒトおよび/または動物に対するキサントフモールの健康促進効果の1種類、数種類または全種類を高めることができる手段を提供するという主目的に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0026】
キサントフモール(本明細書中において、以後「XN」ともいう)、ホップのプレニルフラボノイド(ポリフェノール)は、ホップ毬花のリュープリン腺に生じる。ホップ中のXNの含有量は、0.1ないし1%の間でホップ品種に依存して変化する。高含有量のXNを有するホップ品種は、通常、高い比率の苦み物質を含んでいる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
ホップ生成物は、原料ホップ、ホップペレットおよびホップ抽出物に分けることができる。XNはホップ毬花のリュープリン腺に生じるため、ホップペレットは、通常、アルファ-酸の蓄積に対応する高含有量のXNを示す。ホップ抽出物は、CO2および/またはエタノールを用いた抽出によっても得ることができる。従来、XNに富む生成物は、両方の抽出法を組合せて製造している。製造方法に依存して、8ないし99%のXN含量が達成される。XNに富むホップ抽出物およびXNを含む飲料の製造は、例えば、特許DE 19939350、DE 10256031、DE 10240065およびEP 1431385に記載されている。
【0028】
醸造法においてXNは比較的不安定であり、その制限された溶解度に起因してtrub、酵母を介して、濾過および安定化によって主に沈殿する。そのうえで、XNは、陽性の効果を有するが、XNと比較すると極めて低い程度の陽性の効果を有するイソ-XNに異性化する。従来の方法では、0.2 mg/l未満のXNが大部分に場合おいて最終ビールに到達することになる。幾つかのスタウトまたはポーター型の黒ビールにおいては、1.2 mg/lにのぼるXN含量が見出されている(Walkerら,Brauwelt,2003)。遅いホップ添加と早期のビール麦汁の冷却を適用する特別な醸造法を用いれば、非濾過の薄い色のビールにおけるXN含有量を増加することができる。(ドイツ特許102 56 166)。
【0029】
本明細書に記載する主題事項以外の技術分野に焦点をあてた出願人による早期の独自の実験では、可溶性の焙煎物質がXNを吸着または結合することができるようであり、それを溶液中に明らかに維持し、ホップ抽出物中に遙かに高収量のXNを生じることが示された。この関係において、穀類、穀類モルト、コーヒーまたはカカオの焙煎生成物とXNを含むホップ抽出物とからXNを含む焙煎抽出物を製造するための方法を提供する。XNを含むホップ抽出物は、特に高含有量のXNによって特徴付けられる。この焙煎抽出物の使用により、ドイツ純粋法(例えば、EP 1 761 245 B1参照)に従って、従来技術と比較して顕著に高い含有量のXNを含むビールを得ることができる。さらに、醸造法の改良に起因してイソ-XNへのXNの異性化が大幅に抑制される。したがって、例えば、ビールを不快な苦さにすることなく、XNの投与量を増加することが可能である。さらに、通常はXN含有量の適当な減少に通じる安定化剤の添加が可能である。
【0030】
XNの健康促進効果を開拓するためには高含有量のXNも望ましいが、焙煎物質に対するXNの結合および/または吸着がXNの有利な活性に不利益であることが当初予想された。
【0031】
しかしながら、さらなるその後の実験でXNを含む焙煎抽出物の活性と純粋なXNの活性とを直接比較したところ、今では驚くべきことに、焙煎抽出物およびXNを含有する組成物が純粋なXNよりもより効力があることが示された。したがって、XNを含む焙煎物質の相互作用は、抽出物中の高収量のXNを促進するのみならず、さらにXNの有利な活性を高めるようでもある。
【0032】
したがって、上記の主目的は、
(i)がんの治療および/または予防に使用するための、および/または
(ii)粗鬆症の治療および/または予防に使用するための、および/または
(iii)メタボリック・シンドロームの治療および/または予防に使用するための、および/または
(iv)糖尿病の治療および/または予防に使用するための、および/または
(v)(単一または複数種の)循環器系疾患の治療および/または予防に使用するための、および/または
(vi)抗-酸化剤として使用するための、および/または
(vii)解毒剤、好ましくは発がん物質解毒化酵素誘導剤として使用するための、および/または
(viii)前発がん物質の代謝活性化を阻害するための、および/または
(ix)抗-変異原および/または抗-遺伝毒性剤として使用するための、および/または
(x)抗-エストロゲンおよび/またはエストロゲン剤として使用するための、および/または
(xi)アポトーシスを誘導するための、および/または
(xii)抗-血管新生剤として使用するための、および/または
(xiii)抗-炎症剤として使用するための、および/または
(xiv)NF-κBを阻害するための、および/または
(xv)抗菌剤として使用するための、
好ましくは治療上有効な量の、キサントフモール(XN)を含む組成物、好ましくは医薬組成物であって、および/または
ここに該組成物は、(a)焙煎抽出物および(b)キサントフモール、好ましくはキサントフモールを含むホップ抽出物を含むかまたはそれらからのみなり、および/またはここに該組成物は、(a)焙煎抽出物および(b)XNまたは、好ましくはキサントフモールを含むホップ抽出物を混合することによって得ることができるかまたは得られる該組成物、によって満たされる。
【0033】
「焙煎抽出物」とは、粗く粉砕したまたは粉砕していない焙煎モルトまたは穀類からの低温抽出物または高温抽出物を示し、それにはコーヒーまたはカカオからの高温または低温の抽出物が含まれ;「穀類モルト」とは、人工的または制御可能に発芽させる穀類を示す。
【0034】
「XNを含むホップ抽出物」とは、好ましくは溶媒の補助で得られたホップからの抽出物を示し、好ましくは高い含有量のXNを示す。
【0035】
前記した実験は、焙煎物質との組合せで、ヒトおよび/または動物の健康に対するXNの有利な効果が相乗的に高められることを示している。
【0036】
理論によって拘束されることは望まないが、現在のところ、焙煎物質とXNとの間の相互作用がXNのバイオアベイラビリティーを増大させると思われる。一方で、このことは、より多くのXNが身体または細胞によって取り込まれることができることを意味する。一方で、代謝分解に対する増大した安定性が、観察された効果において役割を演じている可能性がある。その結果、焙煎抽出物中のより少量のXNでも純粋なXNと比較してより高い活性を示す。
【0037】
したがって、本発明に係る組成物は、多様な範囲の疾患の治療および予防に理想的に適している。
【0038】
例えば、がんの治療および/または予防において、本発明による組成物は、抗-酸化剤、抗-エストロゲンもしくはアポトーシス-誘導ならびに抗-血管新生活性を含む種々の相互作用によって腫瘍の発生、成長および/または増殖を妨害することができる。本発明の組成物による発がん物質の高められた解毒および前発がん物質の代謝活性化の阻害ならびに抗-変異原および/または抗-遺伝毒性活性を有利に供して効果的にがんを予防することができる。
【0039】
前記した効果のいずれかは、同時に、骨粗鬆症またはメタボリック・シンドロームのような他の疾患または障害の治療および/または予防に含むことができる。
【0040】
メタボリック・シンドロームには、循環器疾患および/または糖尿病のような重篤な疾患に通じる広範な障害が含まれる。したがって、メタボリック・シンドロームの予防的測定ならびに早期の治療が非常に望ましい。
【0041】
本発明による組成物は、その抗-炎症作用についても適用することができる。この関係における有利な効果の中で、NF-κBの有効な阻害が観察され、糸球体腎炎、動脈硬化症、敗血症性ショック、肺線維症、喘息および/またはリューマチ性関節炎と関連する炎症事象の治療および/または予防における使用が許容される。
【0042】
本発明による組成物のさらなる利点は、抗-ウイルス効果、抗-細菌効果ならびに抗-寄生生物効果を含む抗菌活性によって提供される。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明による組成物は、少なくとも10 mg/kg、好ましくは少なくとも20 mg/kg、好ましくは少なくとも50 mg/kg、特には少なくとも200 mg/kgのXN含有量を有する。
【0044】
好ましくは、焙煎抽出物の量は、前記したXNの治療効果を高める、好ましくは相乗的に高めるのに十分なものである。
【0045】
本発明による組成物におけるXN活性の相乗的な増大に起因して、組成物中のすでに少量となっているXNは有利な効果を示すが、前記した毒性試験が安全な使用を示しているため、望ましい場合は含有量を増加することもできる。
【0046】
本発明による組成物中の焙煎抽出物は、好ましくは、粗く粉砕したまたは粉砕していない焙煎したモルト、穀類、コーヒーまたはカカオの低温抽出物または高温抽出物よりなる群から選択される。
【0047】
好ましくは、焙煎抽出物を製造するために、例えば、オオムギ、コムギ、ライムギならびに対応するモルト、コーヒー豆またはカカオ豆の粉砕焙煎生成物の熱水抽出物を調製する。
【0048】
本発明による組成物は、好ましくは、XNまたはXNを含むホップ抽出物を、各々、粗く粉砕したまたは粉砕していない焙煎したモルト、穀類、コーヒーまたはカカオからの低温抽出物または高温抽出物よりなる群から選択される焙煎抽出物と混合する工程を含む方法によって得ることができるかまたは得られる。
【0049】
本発明による組成物中のXNは、例えば、KhupseおよびErhardt,“Total synthesis of xanthohumol”,J Nat.Prod.,2007,70(9),1507-9によって記載されているように合成的に提供することができ、あるいはそれはホップからの抽出物で提供することができる。
【0050】
好ましくは、XNを含むホップ抽出物は、焙煎抽出物を調製する場合の加熱時間の初期に添加する。焙煎抽出物の存在により、典型的な水溶液中のXNの溶解度の限界よりも遙かに高い溶解度のXN含有量につながるためである。
【0051】
本発明による組成物の好ましい実施形態において、使用したXNを含むホップ抽出物は、XNの0.5ないし99% w/w(重量/重量%)の範囲のXNの含有量を有する。
【0052】
本発明による組成物中のXN含有量は少量にすることができる。有利な効果が焙煎抽出物中の焙煎物質によって相乗的に高められるからである。あるいは、非常にXNに富んだホップ抽出物を用いることができ、目的の適用に都合がよい場合は得られた組成物中で高希釈倍率で希釈することができる。
【0053】
さらなる好ましい実施形態において、XNを含むホップ抽出物を焙煎抽出物と混合した後、得られた混合物は、好ましくは蒸発、凍結乾燥または減圧下で、40~50% w/w(重量/重量%)、特には47~48% w/w(重量/重量%)の乾燥物質(dry matter)まで濃縮する。
【0054】
目的の使用に依存して、混合物は濃縮し、つづいて好適な媒体で希釈することができる。
【0055】
本発明による組成物が得られるかまたは得ることができる方法は、さらに、好ましくは加熱、攪拌、混合、振盪、超音波処理、交流の印加によっておよび/または分散手段を用いた処理によって、XNを溶解するためにエタノールにホップ抽出物を(前-)溶解する工程を含むことができる。
【0056】
前記したいずれの処理も、さらなる加工を容易にする溶液中のXNの量を増加するように作用し、焙煎抽出物とのつづく混合において最大量のXNが焙煎物質と効果的に相互作用することを確かなものとすることができる。
【0057】
本発明は、XNの1またはそれを超える治療効果(または複数の治療効果)を高めるための、好ましくは相乗的に高めるための焙煎抽出物の使用にも関する。
【0058】
本発明による使用によって高められる治療効果は、好ましくは、腫瘍-予防効果、抗-酸化剤効果、抗-腫瘍増殖効果、発がん物質解毒効果、抗-変異原効果、抗-遺伝毒性効果、前発がん物質の代謝活性化の阻害、抗-エストロゲン効果、エストロゲン効果、アポトーシスの誘導、抗-血管新生効果、抗-骨粗鬆症効果、抗-メタボリック・シンドローム効果、抗-炎症効果、NF-κBの阻害、抗-ウイルス効果、抗-細菌効果、抗-寄生生物効果よりなる群から選択される効果のうちの1、幾つかまたは全てである。
【0059】
本発明による使用の好ましい実施形態において、XNはホップ抽出物の形態でまたはホップ抽出物の成分として存在する。
【0060】
本発明による使用のさらなる好ましい実施形態において、焙煎抽出物は、粗く粉砕したまたは粉砕していない焙煎モルト、穀類、コーヒーまたはカカオの低温抽出物または高温抽出物よりなる群から選択される。
【0061】
本発明による使用の特に好ましい実施形態において、焙煎抽出物ならびにXNの両方または、各々、ホップ抽出物が医薬組成物の成分である。
【0062】
使用に関し、焙煎抽出物ならびにXNまたは、各々、ホップ抽出物は、医薬組成物の成分であり、好ましくは本発明による使用との関係において前記したのと同じ効果および利点が達成される。
【0063】
本発明は、さらに、XNの1またはそれを超える治療効果(または複数の治療効果)を高めるための、好ましくは相乗的に高めるための方法に関し、この方法には以下の工程が含まれる:
-XNと焙煎抽出物とを混合し、ここに焙煎抽出物は好ましくは粗く粉砕したかまたは粉砕していない焙煎モルト、穀類、コーヒーまたはカカオの低温抽出物または高温抽出物よりなる群から選択され、
但し、XNは純粋なXN、または合成的に生成したXNおよび/またはホップに由来しないものである。
【0064】
純粋なXNは、合成的に生成するか、または本明細書に記載する高められた有利な効果を妨害し得る潜在的に望ましくない成分が排除され、他の成分が存在することから生じ得る望ましくない副作用を回避するように作用しながらホップ抽出物から精製することができる。
【0065】
本発明による方法によって高めるべき治療効果は、前記した使用の関係において記載したものと同一である。
【0066】
さらに、本発明は組成物、好ましくは医薬組成物を製造する方法にも関し、
ここに該方法には以下の工程が含まれる:
-XNと焙煎抽出物とを混合すること、ここに焙煎抽出物は好ましくは粗く粉砕したかまたは粉砕していない焙煎モルト、穀類、コーヒーまたはカカオの低温抽出物または高温抽出物からなる群より選択され、
但し、XNは純粋なXN、または合成的に生成したXNおよび/またはホップに由来しないものである。
【0067】
組成物を製造する方法について、詳しく前記したのと同一の効果および利点が当てはまる。
【0068】
最後に、本発明は、焙煎抽出物およびXNのみからなるまたはそれらを含む組成物、好ましくは医薬組成物にも関し、焙煎抽出物は好ましくは粗く粉砕したまたは粉砕していない焙煎モルト、穀類、コーヒーまたはカカオの低温抽出物または高温抽出物よりなる群から選択され、但し、XNは純粋なXN、または合成的に生成したXNおよび/またはホップに由来しないものである。
【0069】
本発明による組成物に関しては、好ましく組成物に関連して記載したのと同一の効果および利点、詳しく前記したのと同一の使用および方法が当てはまる。
【0070】
本明細書に記載する組成物、特に本明細書に記載する医薬組成物は、-目的の用途に依存して-、従来の医薬添加物のような1またはそれを超える成分を含むことができ、好ましくは1、2、3またはそれを超える医薬上許容される不活性成分、および/または希釈剤、および/またはさらなる成分、特に1、2、3またはそれを超える医薬上の賦形剤を含むことができる。
【0071】
医薬上許容される成分は、例えば、天然または合成のポリマー、賦形剤、崩壊剤、滑剤、界面活性剤、甘味剤および他の香味剤、被覆材、保存剤、色素、粘結剤、補助剤、抗菌剤および種々の製剤のタイプの不活性成分とすることができる。
【0072】
本発明による好ましい医薬組成物は、経口製剤であって、カプセル剤、錠剤、丸剤およびトローチ剤のような固形製剤、または液体懸濁製剤;特に好ましくはゲル錠剤とすることができる。
【0073】
本発明による医薬組成物はシロップ剤またはゲル剤の剤形で直接用いることができ、あるいは成分を混合し、所望によりそれらを粉砕し、および/またはそれらを例えばハードまたはソフトゼラチンからなるカプセルに充填しおよび/または錠剤、丸剤またはトローチ剤に圧縮し、および/またはそれらを液体媒体に懸濁することによって他の医薬上許容される成分と合することができる。被覆材は圧縮して丸剤を形成した後に適用することができる。
【0074】
本発明は、がん、メタボリック・シンドローム、糖尿病、循環器系疾患(または複数の循環器疾患)および骨粗鬆症よりなる群から選択される1、2またはすべての疾患の治療および/または予防の方法にも関し、それを必要とする対象に有効量の前記した医薬組成物を投与する工程を含む。
【0075】
特に本発明は、腫瘍-予防効果、抗-酸化剤効果、抗-腫瘍増殖効果、解毒効果、抗-変異原効果、抗-遺伝毒性効果、前発がん物質の代謝活性化の阻害、抗-エストロゲン効果、エストロゲン効果、アポトーシスの誘導、抗-血管新生効果、抗-骨粗鬆症効果、抗-メタボリック・シンドローム効果、抗-炎症効果、NF-κBの阻害、抗-ウイルス効果、抗-細菌効果、抗-寄生生物効果よりなる群から選択される1またはそれを超える効果を、それを必要とする対象に付与する方法に関し、対象に有効量の前記した医薬組成物を投与する工程を含む。
【0076】
治療および/または予防の方法ならびに前記に掲載した効果を付与する方法については、好ましくは組成物と関連して記載したのと同一の効果および利点、詳しく前記した使用および方法が当てはまる。
【実施例
【0077】
実施例1:本明細書に記載する医療目的の医薬組成物の調製
議会の方法に従って1.9 kgの焙煎オオムギモルト(Carafa(TM)、タイプ2、Fa.Weyermann,Bamberg)および0.1 kgのピルゼン型モルトを含むモルトを醸造し、ついでマッシュを分離した後、焙煎モルトを煮沸している間にXNに富む25 g/lのホップ抽出物を添加した(XanthoExtrakt,Simon H.Steiner Hopfen GmbH,XN 2.0%)。高温のトラブ(trub)を分離し、珪藻土を用いて分離した後に、XNを含む焙煎モルトを減圧下(in vacuo)(200 mbar、55℃)でほぼ50% w/wの正確な含有量まで濃縮した。シロップ状の抽出物(「密度1.25」kg/l)は、ほぼ1320 mg/kgのXNの含有量を有する。望ましい場合、XNを含む焙煎モルト抽出物は、いずれの従来の医薬担体および添加剤と直接的に混合することができる。