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特許7493337流体インジェクタシステムにおける動的圧力制御のための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】流体インジェクタシステムにおける動的圧力制御のための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/14 20060101AFI20240524BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20240524BHJP
   A61M 5/145 20060101ALI20240524BHJP
   A61M 5/148 20060101ALI20240524BHJP
   A61M 5/168 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61M5/14 582
A61M5/142 530
A61M5/145 500
A61M5/148
A61M5/168 516
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019572047
(86)(22)【出願日】2018-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 US2018048283
(87)【国際公開番号】W WO2019046260
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-08-04
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】62/552,433
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507021757
【氏名又は名称】バイエル・ヘルスケア・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・バローン
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・スポーン
(72)【発明者】
【氏名】チェルシー・マーシュ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・マクダーモット
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ヴォルカー
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】安井 寿儀
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-518975(JP,A)
【文献】特表2013-500060(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0123619(US,A1)
【文献】特開2017-94128(JP,A)
【文献】特開2004-65736(JP,A)
【文献】国際公開第2017/116865(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0222768(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/14
A61M 5/142
A61M 5/145
A61M 5/148
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体送達システムにおける動的圧力制御のための方法であって、前記流体送達システムは、
多フェーズ流体送達システムであって、第1の流体を収容するように構成された少なくとも1つの第1の流体リザーバと、第2の流体を収容するように構成された少なくとも1つの第2の流体リザーバと、前記第1の流体リザーバからの前記第1の流体および前記第2の流体リザーバからの前記第2の流体を導くための流体導管であって、各流体リザーバは、それぞれの弁によって独立して選択的に前記導管と流体連通状態にある流体導管と、前記第1の流体を前記第1の流体リザーバから排出するための少なくとも1つの第1の駆動部材および前記第2の流体を前記第2の流体リザーバから排出するための少なくとも1つの第2の駆動部材を備えるインジェクタと、を備える、多フェーズ流体送達システムを有し、
前記方法は、
a)前記流体送達システムのコントローラが、第1の注入フェーズの際に前記第1の流体を前記第1の流体リザーバから前記導管内に排出するために前記第1の駆動部材を前進させるステップであって、前記第1の流体が第1の流体圧力まで加圧される、ステップと、
b)前記流体送達システムの前記コントローラが、目標値を提供するために、前記第1の注入フェーズの際に前記第1の流体圧力を測定するステップであって、前記目標値が前記第1の注入フェーズの前記測定された流体圧力に基づく、ステップと、
c)前記第2の流体リザーバの前記弁を閉じることにより前記第2の流体リザーバが前記導管から流体隔離状態にある間に、前記流体送達システムの前記コントローラが、前記第2の流体リザーバ内の前記第2の流体の流体圧力を前記目標値まで上昇または低下させるために前記第2の駆動部材を前進または後退させるステップと、
d)前記流体送達システムの前記コントローラが、前記第2の流体リザーバの前記弁を開くことにより前記第2の流体リザーバを前記導管と流体連通状態で配置するステップと、
e)前記流体送達システムの前記コントローラが、前記目標値に等しい第2の流体圧力で前記第2の流体を前記第2の流体リザーバから前記導管内に排出するために前記第2の駆動部材を前進させるステップと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第2の流体を前記第2の流体リザーバから前記導管内に排出するために前記第2の駆動部材を前進させる前に、前記導管と流体連通しないように、前記流体送達システムの前記コントローラが前記第1の流体リザーバを隔離することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記目標値が前記第1の流体圧力に実質的に等しい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記目標値が前記第1の流体圧力より大きい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記目標値が前記第1の流体圧力より小さい、請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
前記流体送達システムの前記コントローラが、前記第2の流体を前記第2の流体リザーバから排出するために前記第2の駆動部材を前進させることは、所定の比率の前記第1の流体および前記第2の流体のデュアルフロー流体送達を提供するために、前記流体送達システムの前記コントローラが、前記第1の流体を前記第1の流体リザーバから排出するために前記第1の駆動部材を前進させ続けることをさらに含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記流体送達システムの前記コントローラが、前記デュアルフロー流体送達を提供するために前記第1の流体圧力および前記第2の流体圧力を調整することをさらに含み、前記所定の比率が、1:99の前記第1の流体の前記第2の流体に対する比率から99:1の前記第1の流体の前記第2の流体に対する比率の範囲の指定された比率である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の流体がイメージング造影剤を含み、前記第2の流体が生理食塩水を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の流体リザーバおよび前記少なくとも前記第2の流体リザーバが、シリンジおよび圧縮バッグからなる群から独立して選択される流体リザーバである、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の流体リザーバおよび前記少なくとも前記第2の流体リザーバのうちの少なくとも1つがシリンジである、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の流体リザーバおよび前記少なくとも前記第2の流体リザーバがシリンジである、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記導管と選択可能に流体連通状態にあり、少なくとも第3の流体を前記導管内に排出するための流体インジェクタの少なくとも1つの第3の駆動部材と動作可能に係合する、少なくとも1つの第3の流体リザーバをさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記それぞれの弁のそれぞれが、各流体リザーバが流体容器と流体連通状態にあるが前記導管と流体隔離状態にある第1の充填位置と、各流体リザーバが前記流体容器および前記導管と流体隔離状態にある第2の閉鎖位置と、各流体リザーバが前記導管と流体連通状態にあるが前記流体容器と流体隔離状態にある第3の送達位置と、を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記それぞれの弁のそれぞれが、流体インジェクタのプロセッサに接続され、かつ、前記流体インジェクタの前記プロセッサによって動作可能に制御される、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2017年8月31日に出願された、「System and Method for Dynamic Pressure Equalization in a Fluid Injector System」と題する米国仮特許出願第62/552,433号の優先権を主張するものであり、上記仮特許出願の開示は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、流体送達システムおよび方法に関し、詳細には、注入プロトコルの際に2種以上の流体の動的圧力制御を行う流体送達システムを使用して注入を実行するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くの医学診断および治療手技において、医師などの医療従事者は患者に1種または複数種の医療用流体を注入する。近年、血管造影法、コンピュータ断層撮影法(CT)、超音波、磁気共鳴画像法(MRI)、ポジトロン放射断層撮影法(PET)、および他のイメージング法などの方法で使用するために、造影剤溶液(多くの場合、単に「造影剤」と呼ばれる)、生理食塩水などのフラッシング剤、および他の医療用流体などの流体の加圧注入用のインジェクタ作動式シリンジおよび流体インジェクタを有する多数の流体送達システムが開発されている。一般に、これらの流体送達システムは、予め設定された量の流体を所望の流量で送達するように設計されている。通常、多フェーズ注入の場合、流体は造影剤のフェーズおよび続く生理食塩水フラッシュのフェーズで送達される。造影剤流体により診断画像が強調され、生理食塩水のフェーズにより、造影剤のフラックスが増え、かつ造影剤との区別が明確になる。
【0004】
所望の流量および流体量の違いは、流体インジェクタの駆動部材によって独立して駆動される2つ以上のシリンジから2種以上の流体が順次送達される多フェーズ注入の場合に特に明らかである。したがって、多フェーズ注入を実行する場合、2つのフェーズの流体が収容される方式を考慮することが重要である。流体リザーバまたはシリンジが開放系において接続されている場合、2つ以上のシリンジ間の流体連通に起因して、注入の際の2つの流体位置の圧力がほぼ同じになると予想される。しかしながら、2つのリザーバまたはシリンジを含む開放系では、系のコンプライアンスによっては、第1の流体を収容するリザーバまたはシリンジ内に圧力が生じることにより、流体が第1のリザーバから第2のリザーバまたはシリンジに移動する場合がある。これにより意図せぬ混合が生じ得る。このような混合は、一患者用のシステムでは許容される場合もあるが、複数患者用のデバイスでは、流体リザーバの交差汚染は許容できないものであり得る。
【0005】
複数の流体リザーバを隔離して混合を防ぐために、流体送達システムは、逆止弁、ストップコック、または流体マニホールドなどの弁を使用して、それぞれの流体リザーバおよび/またはシリンジを隔離するように構築され得る。流体リザーバを隔離することにより、流体リザーバの受動的な交差汚染が防止される。しかしながら、流体リザーバを隔離すると、補正や補償が行われない場合に、流体送達システムを通る実際の流量が低下したり、実際の流量に変動が生じたりし得る。例えば、第1のフェーズを駆動するのに、また注入の第1のフェーズにおいて系に導入された緩みを取り除くのに十分な圧力で第2の流体または生理食塩水の流体をシステムを通して駆動する必要があるため、実際の流体流量は低下し得る。
【0006】
したがって、当技術分野では、複数のシリンジまたは流体リザーバを備える流体送達システムを通る流体流量を監視および制御するための改善された方法およびシステムが必要とされている。例えば、そのようなシステムは、システムを通る流量を制御する、また異なるシリンジまたはリザーバに収容された流体の交差汚染を防止するという問題に対処し得る。本明細書で開示されるシステムおよび方法は、そのような問題に対処するように適合されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の様々な例は、多フェーズ/多流体注入の際に流体送達システムにおける2つ以上のリザーバ内の流体間の圧力制御または均圧化を含む動的圧力制御を行う方法および流体インジェクタシステムについて説明するものであり、本方法は、第1の流体を収容するように構成された少なくとも第1の流体リザーバと、第2の流体を収容するように構成された少なくとも第2の流体リザーバと、第1のリザーバおよび第2のリザーバからの流体を患者に導く流体導管と、流体を第1のリザーバから排出するための少なくとも第1の駆動部材および流体を第2のリザーバから排出するための少なくとも第2の駆動部材を備えるインジェクタと、を備える、多フェーズ流体送達システムを提供するステップを含む。
【0008】
本開示の様々な実施形態は、圧力および流体流量の動的制御のための方法を提供する。特定の実施形態では、本方法は、第1の注入フェーズの際に第1の流体を第1のリザーバから導管内に排出するために第1の駆動部材を前進させるステップであって、第1の流体が第1の流体圧力に加圧される、ステップを含む。次に、本方法は、目標値を提供するために第1の注入フェーズの際に第1の流体圧力を測定するステップであって、目標値が第1の注入フェーズの測定された流体圧力に少なくとも基づく、ステップを含む。目標値が決定された後、かつ第2のリザーバが導管から流体隔離状態にある間に、本方法は、第2のリザーバ内の第2の流体の流体圧力を目標値まで上昇または低下させるために第2の駆動部材を前進または後退させるステップを含む。第1のリザーバおよび第2のリザーバは、ストップコック、ピンチ弁、高クラッキング圧逆止弁などの弁を閉じることにより、導管から流体隔離状態で配置され得る。次に、本方法は、第2のリザーバを導管と流体連通状態で配置するステップと、第2の流体を第2のリザーバから導管内に目標値に等しい圧力で排出するために第2の駆動部材を前進させるステップと、を含む。
【0009】
様々な実施形態によれば、目標値は第1の流体圧力に実質的に等しくてもよい。他の実施形態では、目標値は第1の流体圧力より大きくてもよい。他の実施形態では、目標値は第1の流体圧力より小さくてもよい。目標値は、特定の流体注入パラメータおよびプロトコルに基づいて、例えば他の要因の中でも第1の流体および第2の流体の所望の流量、流体の種類(例えば、造影剤vs生理食塩水)、系の容量、デュアルフロー注入が望ましいか否か、逆流が問題になり得るか否かなどの様々な要因に基づく目標値の計算によって、流体インジェクタに関連付けられたプロセッサによって決定され得る。
【0010】
特定の実施形態では、第2の流体を第2のリザーバから排出するために第2の駆動部材を前進させるステップは、所定の比率の第1の流体および第2の流体のデュアルフロー流体送達を提供するために、第1の流体を第1のリザーバから排出するために第1の駆動部材を前進させ続けるステップをさらに含み得る。所定の比率は、特定の注入プロトコルに関してユーザがプロセッサに事前にプログラムすることができる、1:99の第1の流体の第2の流体に対する比率から99:1の第1の流体の第2の流体に対する比率の範囲の指定された比率であり得る。
【0011】
他の実施形態では、本方法は、第2の流体リザーバを導管と流体連通状態で配置するステップの前に、あるいは第2の流体を第2のリザーバから導管内に排出するために第2の駆動部材を前進させるステップの前に、導管と流体連通しないように第1のリザーバを隔離するステップをさらに含み得る。これらの実施形態によれば、注入プロトコルは、例えば第1の流体と第2の流体と(例えば、粘度が(20℃で)2.0~30.0cPの範囲であり得る造影剤に対する、粘度が(20℃で)1.0~1.5cPの生理食塩水などの低粘度流体)の間に粘度の差がある場合に移行中の流体流量の変動を回避しながら、または第2の流体の第1の流体リザーバ内への逆流もしくは第1の流体の第2の流体リザーバ内への逆流を回避しながら、注入を第1の流体から第2の流体に移行するステップを含み得る。様々な実施形態において、第1の流体は、CT造影剤、CV造影剤、MR造影剤、またはPET造影剤などの造影剤であってよく、第2の流体は、生理食塩水、乳酸リンゲル液、水などのフラッシング流体であってよい。あるいは、本明細書に記載されるように、第1の流体がフラッシング剤であってよく、第2の流体が造影剤であってよい。
【0012】
他の実施形態によれば、流体インジェクタは、導管と選択可能に流体連通状態にあり、少なくとも第3の流体を導管内に排出するための流体インジェクタの少なくとも第3の駆動部材と動作可能に係合する、少なくとも第3の流体リザーバをさらに備え得る。第3の流体は、第1の流体および/または第2の流体と同じであっても異なっていてもよい。
【0013】
他の実施形態では、本開示は、多フェーズ/多流体注入の際の動的圧力制御のために構成された流体送達システムを提供し、流体送達システムは、第1の流体を収容するように構成された少なくとも第1のリザーバと、第2の流体を収容するように構成された少なくとも第2のリザーバと、流体をリザーバから患者に導くために、第1のリザーバおよび第2のリザーバに接続された導管と、流体を第1のリザーバから排出するための少なくとも第1の駆動部材および流体を第2のリザーバから排出するための少なくとも第2の駆動部材を備える流体インジェクタと、コンピュータ可読メモリを備え、流体インジェクタと電子的に通信するコントローラと、を備える。コントローラは、流体インジェクタ、スタンドアロンで動作するコンピュータ、取り外し可能に動作する記憶媒体、病院の情報ネットワーク、または外部のコンピュータに関連付けられ得る。メモリは、コントローラによって実行された場合に、第1の注入フェーズの際に第1の流体を第1のリザーバから排出するために第1の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することであって、第1の流体が第1の流体圧力まで加圧される、ことと、目標値を提供するために、第1の注入フェーズの際に第1の流体圧力を測定することであって、目標値が第1の注入フェーズの測定された流体圧力に基づく、ことと、第2のリザーバが導管から流体隔離状態にある間に、第2のリザーバ内の第2の流体の流体圧力を目標値まで上昇させるために第2の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することと、第2のリザーバを導管と流体連通状態で配置するようにインジェクタに命令することと、目標値に等しい圧力で第2の流体を第2のリザーバから導管内に排出するために第2の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することと、をコントローラに実行させる命令を含む。流体送達システムは、第2のリザーバと導管との間の流体連通を確立するようにユーザに指示する通知を、生成もしくは表示するようにプログラムされてもよいし、場合により生成または表示してもよい。プロセッサ内の他のプログラムされた命令は、本明細書で説明される。
【0014】
第1項.多フェーズ/多流体注入の際の流体送達システムにおける動的圧力制御のための方法であって、第1の流体を収容するように構成された少なくとも第1の流体リザーバと、第2の流体を収容するように構成された少なくとも第2の流体リザーバと、第1のリザーバからの第1の流体および第2のリザーバからの第2の流体を患者に導くための流体導管と、第1の流体を第1のリザーバから排出するための少なくとも第1の駆動部材および第2の流体を第2のリザーバから排出するための少なくとも第2の駆動部材を有するインジェクタと、を備える、多フェーズ流体送達システムを提供するステップと、第1の注入フェーズの際に第1の流体を第1のリザーバから導管内に排出するために第1の駆動部材を前進させるステップであって、第1の流体が第1の流体圧力まで加圧される、ステップと、目標値を提供するために、第1の注入フェーズの際に第1の流体圧力を測定するステップであって、目標値が第1の注入フェーズの測定された流体圧力に基づく、ステップと、第2のリザーバが導管から流体隔離状態にある間に、第2のリザーバ内の第2の流体の流体圧力を目標値まで上昇または低下させるために第2の駆動部材を前進または後退させるステップと、第2のリザーバを導管と流体連通状態で配置するステップと、目標値に等しい圧力で第2の流体を第2のリザーバから導管内に排出するために第2の駆動部材を前進させるステップと、を含む、方法。第2の駆動部材は、第2の流体の少なくとも初期部分について目標値に等しい圧力を提供するために、第2の流体を第2のリザーバから排出するために前進され得る。
【0015】
第2項.第2の流体を第2のリザーバから導管内に排出するために第2の駆動部材を前進させるステップの前に、導管と流体連通しないように第1のリザーバを隔離するステップをさらに含む、第1項に記載の方法。
【0016】
第3項.目標値が第1の流体圧力に実質的に等しい、第1項または第2項に記載の方法。
【0017】
第4項.目標値が第1の流体圧力より大きい、第1項または第2項に記載の方法。
【0018】
第5項.目標値が第1の流体圧力より小さい、第1項または第2項に記載の方法。
【0019】
第6項.第2の駆動部材を前進させるステップが、所定の比率の第1の流体および第2の流体のデュアルフロー流体送達を提供するために、第1の流体を第1のリザーバから排出するために第1の駆動部材を前進させ続けるステップをさらに含む、第1項から第5項のいずれか一項に記載の方法。
【0020】
第7項.デュアルフロー流体送達を提供するために第1の流体圧力および第2の流体圧力を調整するステップであって、所定の比率が、1:99の第1の流体の第2の流体に対する比率から99:1の第1の流体の第2の流体に対する比率の範囲の指定された比率である、ステップをさらに含む、第6項に記載の方法。
【0021】
第8項.第1の流体がイメージング造影剤を含み、第2の流体が生理食塩水を含む、第1項から第7項のいずれか一項に記載の方法。
【0022】
第9項.第1の流体リザーバおよび少なくとも第2の流体リザーバが、シリンジ、蠕動ポンプ、および圧縮バッグからなる群から独立して選択される流体リザーバである、第1項から第8項のいずれか一項に記載の方法。
【0023】
第10項.第1の流体リザーバおよび少なくとも第2の流体リザーバのうちの少なくとも1つがシリンジである、第1項から第9項のいずれか一項に記載の方法。
【0024】
第11項.第1の流体リザーバおよび少なくとも第2の流体リザーバがシリンジである、第1項から第10項のいずれか一項に記載の方法。
【0025】
第12項.導管と選択可能に流体連通状態にあり、少なくとも第3の流体を導管内に排出するために流体インジェクタの少なくとも1つの第3の駆動部材と動作可能に係合する、少なくとも1つの第3の流体リザーバをさらに備える、第1項から第11項のいずれか一項に記載の方法。
【0026】
第13項.各流体リザーバが、それぞれの弁によって独立して選択的に導管と流体連通状態にある、第1項から第12項のいずれか一項に記載の方法。
【0027】
第14項.それぞれの弁のそれぞれが、流体リザーバが流体容器と流体連通状態にあるが導管と流体隔離状態にある第1の充填位置と、流体リザーバが流体容器および導管と流体隔離状態にある第2の閉鎖位置と、流体リザーバが導管と流体連通状態にあるが流体容器と流体隔離状態にある第3の送達位置と、を有する、第13項に記載の方法。
【0028】
第15項.それぞれの弁のそれぞれが、流体インジェクタのプロセッサによって動作可能に制御される、第13項または第14項に記載の方法。
【0029】
第16項.多フェーズ/多流体注入の際の動的圧力制御のために構成された流体送達システムであって、第1の流体を収容するように構成された少なくとも第1のリザーバと、第2の流体を収容するように構成された少なくとも第2のリザーバと、流体を第1のリザーバおよび第2のリザーバから患者に導くために、第1のリザーバおよび第2のリザーバに接続された導管と、第1の流体を第1のリザーバから排出するための少なくとも第1の駆動部材および第2の流体を第2のリザーバから排出するための少なくとも第2の駆動部材を備える流体インジェクタと、流体インジェクタと電子的に通信するコントローラであって、コントローラによって実行された場合に、第1の注入フェーズの際に第1の流体を第1のリザーバから排出するために第1の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することであって、第1の流体が第1の流体圧力まで加圧される、ことと、目標値を提供するために、第1の注入フェーズの際に第1の流体圧力を測定することであって、目標値が第1の注入フェーズの測定された流体圧力に基づく、ことと、第2のリザーバが導管から流体隔離状態にある間に、第2のリザーバ内の第2の流体の流体圧力を目標値まで上昇させるために第2の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することと、第2のリザーバを導管と流体連通状態で配置するようにインジェクタに命令することと、目標値に等しい圧力で第2の流体を第2のリザーバから導管内に排出するために第2の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することと、をコントローラに実行させる命令を含むコンピュータ可読メモリを備える、コントローラと、を備える、流体送達システム。
【0030】
第17項.コントローラが、コントローラによって実行された場合に、第2の流体を第2のリザーバから導管内に排出するために第2の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令する前に、導管と流体連通しないように第1の流体リザーバを隔離するようにインジェクタに命令することをコントローラに実行させる命令を含むコンピュータ可読メモリをさらに備える、第16項に記載の流体送達システム。
【0031】
第18項.コントローラが、コントローラによって実行された場合に、第2の流体を排出するために第2の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することと同時に、所定の比率の第1の流体および第2の流体のデュアルフロー流体送達を提供するために、第1の流体を第1のリザーバから排出するために第1の駆動部材を前進させ続けるようにインジェクタに命令することをコントローラに実行させる命令を含むコンピュータ可読メモリをさらに備える、第16項に記載の流体送達システム。
【0032】
第19項.コントローラが、コントローラによって実行された場合に、デュアルフロー流体送達の際に、デュアルフロー流体送達を提供するために第1の流体圧力および第2の流体圧力を調整するように流体インジェクタに命令することであって、所定の比率が、1:99の第1の流体の第2の流体に対する比率から99:1の第1の流体の第2の流体に対する比率の範囲の指定された比率である、ことをコントローラに実行させる命令を含むコンピュータ可読メモリをさらに備える、第18項に記載の流体送達システム。
【0033】
第20項.第1の流体リザーバおよび少なくとも第2の流体リザーバが、シリンジ、蠕動ポンプ、および圧縮バッグからなる群から独立して選択される流体リザーバである、第16項から第19項のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【0034】
第21項.第1の流体リザーバおよび少なくとも第2の流体リザーバのうちの少なくとも1つがシリンジである、第16項から第20項のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【0035】
第22項.第1の流体リザーバおよび少なくとも第2の流体リザーバがシリンジである、第16項から第21項のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【0036】
第23項.流体インジェクタが、導管と選択可能に流体連通状態にあり、少なくとも第3の流体を導管内に排出するために流体インジェクタの少なくとも1つの第3の駆動部材と動作可能に係合する、少なくとも1つの第3の流体リザーバをさらに備える、第16項から第22項のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【0037】
第24項.各流体リザーバが、それぞれの弁によって独立して選択的に導管と流体連通状態にある、第16項から第23項のいずれか一項に記載の流体送達システム。
【0038】
第25項.それぞれの弁のそれぞれが、流体リザーバが流体容器と流体連通状態にあるが導管と流体隔離状態にある第1の充填位置と、流体リザーバが流体容器および導管と流体隔離状態にある第2の閉鎖位置と、流体リザーバが導管と流体連通状態にあるが流体容器と流体隔離状態にある第3の送達位置と、を有する、第16項から第24項に記載の流体送達システム。
【0039】
第26項.それぞれの弁のそれぞれが、流体インジェクタのプロセッサによって動作可能に制御される、第24項または第25項に記載の流体送達システム。
【0040】
動的圧力制御を伴う注入を行うための流体送達システムおよび流体インジェクタのこれらおよび他の特徴および特性、ならびに構造の関連要素の動作および機能の方法、ならびに部品の組み合わせおよび製造の経済性は、添付の図面を参照して以下の説明および添付の特許請求の範囲を検討すれば、より明らかになるはずであり、これらのすべてが本明細書の一部を構成し、同様の参照番号は様々な図において対応する部分を示す。しかしながら、図面は例示および説明の目的のためのみのものであることを明確に理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本開示の一例による流体送達システムの斜視図である。
図2図1の流体送達システムと共に使用するように構成されたシリンジの側面断面図である。
図3】本開示の別の例による流体送達システムの斜視図である。
図4図3の流体送達システムと共に使用するように構成されたシリンジの側面断面図である。
図5】本開示の別の例による流体送達システムの斜視図である。
図6図5の流体送達システムと共に使用するように構成された複数回使用可能な使い捨てシステムの正面斜視図である。
図7】流体送達システムの別の例の概略図である。
図8】本開示の一例による、動的圧力制御を行う流体送達方法の流れ図である。
図9図8の方法により実行される流体注入の時間に対する流量を示すグラフである。
図10】動的圧力制御なしで実行される流体注入の時間に対する流量を示すグラフである。
図11】圧力制御ありおよび圧力制御なしで行われた注入の時間に対する圧力を示すグラフである。
図12A】注入の際のシリンジの変位によって引き起こされる緩みを示す概略図である。
図12B】注入の際のシリンジの変位によって引き起こされる緩みを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形の「ある」、「一つの」および「その」は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の指示対象を含む。
【0043】
以下の説明の目的のために、用語「上部」、「下部」、「右」、「左」、「垂直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「長手方向」およびこれらの派生語は、図面での向きに示されているように本開示に関連するものとする。
【0044】
「左」、「右」、「内側」、「外側」、「上」、「下」などの空間や方向に関する用語は、本発明が様々な代替的な方向をとることができるため、限定と見なされるべきではない。
【0045】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるすべての数字は、どのような場合でも「約」という用語によって修飾されていると理解されたい。「約」という用語は、記載されている値のプラスまたはマイナス10パーセントの範囲を意味する。
【0046】
別段の指定のない限り、本明細書に開示されるすべての範囲または比率は、そこに含まれるありとあらゆる部分的な範囲または部分的な比率を包含すると理解されたい。例えば、「1~10」と記載された範囲または比率は、1の最小値と10の最大値との間(およびこれらを含む)のありとあらゆる部分的な範囲、つまり、限定されないが、1~6.1、3.5~7.8、および5.5~10など、1以上の最小値で始まり10以下の最大値で終わるすべての部分的な範囲または部分的な比率を含むと見なされるべきである。
【0047】
「少なくとも」という用語は「以上」を意味する。
【0048】
「含む」という用語は「含む」と同義である。
【0049】
シリンジおよび/またはプランジャに関して使用される場合、「近位」という用語は、シリンジおよび/またはプランジャが流体インジェクタに接続するように向けられているときに、流体インジェクタに最も近いシリンジおよび/またはプランジャの部分を指す。「遠位」という用語は、シリンジおよび/またはプランジャが流体インジェクタに接続するように向けられているとき、流体インジェクタから最も離れたシリンジおよび/またはプランジャの部分を指す。「半径方向」という用語は、近位端と遠位端との間に延びるシリンジ、プランジャ、および/またはピストンの長手方向軸に垂直な断面平面内の方向を指す。用語「周方向」は、シリンジ、プランジャ、および/またはピストンの側壁の内面または外面の周りの方向を指す。用語「軸方向」は、近位端と遠位端との間に延びるシリンジ、プランジャ、および/またはピストンの長手方向軸に沿った方向を指す。流体送達構成要素を指すために使用される場合の「開放」という用語は、システムが、例えばノズルまたはチューブ構成要素もしくはカテーテルの開放端を介して出口と流体接続状態にあることを意味する。開放系では、例えば、チューブの直径、流体経路の狭窄、印加圧力、粘度などのシステムおよび流体の物理的パラメータによって流れが決定され得る小径の流体経路に流体を押し込むことにより、流体流量が制限され得る。流体送達構成要素を指すために使用される場合の「閉鎖」という用語は、システムが、例えばストップコック、高クラッキング圧弁、ピンチ弁などの弁によって流体の流れが止められている場合に、出口と流体接続状態にないことを意味する。本明細書で使用される場合、「緩み(slack)」という用語は、部品間の間隙により生じる機構の隙間またはロストモーション、(印加された圧力などによる)負荷がかかっているときの機械構成部品の圧縮、(印加された圧力などによる)負荷がかかっているときの機械構成部品の撓みを含む機械的な緩みを意味し、緩みは、力をかけた後の流体注入からの流体の加圧送達の遅延をもたらす。
【0050】
本開示は、明示的に反対に指定されている場合を除いて、代替の変形およびステップシーケンスを想定することができることを理解されたい。添付の図面に示され、以下の明細書に記載される特定の装置およびプロセスは、本開示の単なる例示的な実施形態であることも理解されたい。したがって、本明細書に開示された例に関連する特定の寸法および他の物理的特性は、限定的であると見なされるべきではない。
【0051】
流体送達システムのインピーダンスの特性を明らかにして、望ましい流体送達システムの性能と実際の流体送達システムの性能との差を最小化するには、エネルギー源からのエネルギーがシステムでどのように使用されるか、またはどのようにシステムを通って移動するかを考慮する必要がある。流体送達システムからのエネルギー出力または損失は、摩擦力による熱損失または流体送達システムでなされる仕事の形態であり得る。例えば、加圧流体がカテーテルを通って圧力下で送達されるときに運ぶエネルギーの一部は、流体の抵抗加熱、摩擦加熱、または散逸加熱によって失われる。加えて、本明細書で論じるように、流体の加圧送達はまた、システム構成要素の全体積またはシステム構成要素に対する圧縮力の増加に関してシステムのポテンシャルエネルギーを増加させ得る。さらに、流体送達システム内を移動する加圧流体の運動エネルギーは、流体送達システムの全体的な性能に影響を与え得る。例えば、造影剤材料の移動の慣性力ならびにシステムに関連付けられた容器および/またはチューブの膨張により、インジェクタシリンジ内のシリンジプランジャの移動と、カテーテルから出て患者に入る造影剤材料の移動との間に位相遅れが生じ得る。
【0052】
一部の血管造影検査では1,200psi程度であり得る高い注入圧力に起因して、シリンジ、患者に接続されたチューブ、および流体インジェクタの構成要素など、流体送達システムの様々な構成要素が膨張する場合があり、そのため、注入手順のために選択された所望の量を超える量の流体が存在し得る。このような流体の量の増加は、系の容量に起因して生じる。系の総容量(コンプライアンスまたは弾性とも呼ばれる)は、流体送達システムの構成要素の膨張の際に捕捉される流体の量(すなわち、過剰な体積)を表す。一般に、容量は注入圧力と直接相関し、シリンジ内の造影剤および生理食塩水の量と逆相関する。換言すれば、注入圧力の増加およびシリンジ内の加圧された流体の量の増加に伴って容量が増加する。系の総容量は、各流体送達システムに固有のものであり、系に残っている流体の圧力および体積以外では、限定されないが、インジェクタの構造、シリンジ、プランジャ、シリンジを取り囲む圧力ジャケット、流体を患者に送達する流体ラインの構築に使用される材料の機械的特性、シリンジ、プランジャ、圧力ジャケットのサイズ、ならびに温度、粘度、および密度などの流体の特性を含む複数の要因に依存する。
【0053】
注入速度または送達量はまた、シリンジまたはリザーバの流体インジェクタにおける拘束のされ方によっても影響を受け得る。例えば、ユーザが過度の力なしで使い捨てシリンジを接続できるように、また取り付け中に使い捨てシリンジが損傷しないようにするために、使い捨てシリンジとインジェクタとの間のインターフェースに許容誤差が含まれる。これらの許容誤差は使いやすさおよび製造の実現可能性のために含まれているが、そのような許容誤差の存在が、駆動部材またはピストンがシリンジを通して流体を駆動するときに1つまたは複数のシリンジが動くことを可能にしている。一部の場合では、使い捨てシリンジを動かすピストンの動きが流体を送達することにならないため、シリンジの並進運動または移動により送達量が不足する。
【0054】
本開示の様々な例は、多フェーズ/多流体注入の際に流体送達システムにおける2つ以上のリザーバ内の流体間の圧力制御または均圧化を含む動的圧力制御を行う、方法および本明細書で説明される流体インジェクタを備える流体送達システムについて説明するものであり、本方法は、第1の流体を収容するように構成された少なくとも第1の流体リザーバと、第2の流体を収容するように構成された少なくとも第2の流体リザーバと、第1のリザーバおよび第2のリザーバからの流体を患者に導く流体導管と、流体を第1のリザーバから排出するための少なくとも第1の駆動部材および流体を第2のリザーバから排出するための少なくとも第2の駆動部材を備えるインジェクタと、を備える、多フェーズ流体送達システムを提供するステップを含む。様々な実施形態において、流体インジェクタシステムは、導管と選択可能に流体連通状態にあり、少なくとも第3の流体を導管内に排出するために流体インジェクタの少なくとも1つの第3の駆動部材と動作可能に係合する、少なくとも第3の流体リザーバを備え得る。他の実施形態は、追加の流体リザーバをさらに備え得る。
【0055】
流体インジェクタならびに対応する流体リザーバおよび駆動部材は、(本明細書で説明される)シリンジ、クラムシェルまたは他の圧縮駆動部材を備えた圧縮バッグ、および回転駆動部材を備えた蠕動ポンプとして独立して設計されてもよい。例えば、特定の実施形態では、第1の流体リザーバ、第2の流体リザーバ、および/または第3の流体リザーバのうちの少なくとも1つが、シリンジプランジャまたは転動形ダイヤフラムの近位端壁に取り付けられたピストンなどの駆動部材に動作可能に接続されたシリンジ、例えば前方取り付け式シリンジまたは転動形ダイヤフラムシリンジであり得る。特定の実施形態では、第1のリザーバ、少なくとも第2のリザーバ、少なくとも第3のリザーバおよび任意の他のリザーバのそれぞれが、駆動部材に動作可能に接続されたシリンジであり得る。
【0056】
様々な実施形態によれば、第1のリザーバ、少なくとも第2のリザーバ、少なくとも第3のリザーバなどの各リザーバは、システムが導管と流体連通状態にあるか、流体隔離状態にあるかを制御するそれぞれの第1の弁、第2の弁、第3の弁などによって独立して選択的に導管と流体連通状態にあってもよい。特定の実施形態によれば、それぞれの弁のそれぞれが、シリンジの場合に駆動部材の近位方向への移動が流体容器から流体リザーバ内に流体を引き込むように、流体リザーバが流体容器と流体連通状態にあるが導管と流体隔離状態にある第1の充填位置を有することができる。様々な実施形態によれば、それぞれの弁のそれぞれは、流体リザーバが閉鎖系となる、流体リザーバが、少なくとも1つの導管と流体隔離状態にあり、特定の実施形態では流体容器からも流体隔離状態にある第2の閉鎖位置を有することができる。それぞれの弁のそれぞれは、流体リザーバが開放系となる、流体リザーバが導管と流体連通状態にあるが、流体容器と流体隔離状態にある第3の送達位置を有することができる。それぞれの弁のそれぞれは、プログラムされた流体注入プロトコルの際に弁が第1の流体、第2の流体、および必要に応じて第3の流体の流体流量を制御するために動作されるように、流体送達システムのプロセッサまたはコントローラによって独立して制御され得る。流体弁を対応する駆動部材の前進と組み合わせて制御することにより、流体送達システムが医療用流体の流れを制御できる。
【0057】
本開示の様々な実施形態は、圧力および流体流量の動的制御のための方法を提供する。特定の実施形態では、本方法は、第1の注入フェーズの際に第1の流体を第1のリザーバから導管内に排出するために第1の駆動部材を前進させるステップであって、第1の流体が第1の流体圧力に加圧される、ステップを含む。次に、本方法は、目標値を提供するために第1の注入フェーズの際に第1の流体圧力を測定するステップであって、目標値が第1の注入フェーズの測定された流体圧力に少なくとも基づく、ステップを含む。目標値が決定された後、かつ第2のリザーバが導管から流体隔離状態にある間に、本方法は、第2のリザーバ内の第2の流体の流体圧力を目標値まで上昇させるために第2の駆動部材を前進させるステップを含む。次に、本方法は、第2のリザーバを導管と流体連通状態で配置するステップと、第2の流体を第2のリザーバから導管内に目標値に等しい圧力で排出するために第2の駆動部材を前進させるステップと、を含む。
【0058】
様々な実施形態によれば、目標値は第1の流体圧力に実質的に等しくてもよい。本明細書で使用される場合、「実質的に等しい」という用語は、言及されている値の10%以内、例えば、目標値の90%から110%までを意味する。目標値が第1の流体圧力に実質的に等しい場合、第1の流体リザーバと第2の流体リザーバとの間で均圧化がなされる。開放系である流体注入システムでは、つまり、流体リザーバのいずれにも隔離するための弁がない場合、流体リザーバは互いに流体連通状態にあり、均圧化が観察される、例えば、第1の流体リザーバの加圧は、流体経路がシリンジリザーバ間の流体連通を提供するため、第2の流体リザーバの加圧につながる。このことは、第1の流体が加圧されたときに、ある体積の第1の加圧流体が第2のリザーバに流入することにより、第2のリザーバ内で流体が混合され、特定の実施形態では、所望の流体流量に到達する時間が増加するという欠点を有し得る。第2のリザーバが第1の流体リザーバよりも大きく加圧される場合には、逆のことが起こる。あるリザーバから別のリザーバへの流体のこの「逆流」によって生じるリザーバ内での流体の混合は、送達される流体の量に不正確さをもたらし得る。実施形態によれば、第1の駆動部材を前進させることにより第1の流体リザーバを加圧する際に第2の駆動部材を前進させることにより第2の流体リザーバを加圧することは、第1の流体の第2の流体リザーバ内への逆流を最小化できる。特定の実施形態では、第2の駆動部材は、各リザーバ内の圧力が同様になるように、第1の駆動部材の前進速度に等しい速度で前進させることができる。あるいは、第2の駆動部材は、第1の駆動部材の前進速度よりも遅い速度であるが、第1の流体の第2のリザーバ内への逆流による混合を最小化するのに十分速い速度で前進させることができる。第1の駆動部材の前進速度に対する第2の駆動部材の前進速度は、流体の種類、流体の粘度の差、所望の注入流量、流体ラインおよびカテーテルを含む導管の径、デュアルフロープロトコルの使用、流体のデュアルフロー比率、系の容量、系の緩み、流体経路の長さ、流体経路の体積などの要因により決定され得る。閉鎖系では、流体インジェクタが他の流体リザーバを隔離できることに起因して逆流の懸念を最小化でき、例えば制御可能な弁によって、加圧流体の第2の流体リザーバ内への逆流を実質的に最小化できる。様々な実施形態によれば、閉鎖系である流体リザーバにより、流体リザーバが導管と流体連通状態で配置されたときに、流体リザーバ内の流体を加圧して、導管内の他の加圧流体の逆流を実質的に排除できる。
【0059】
閉鎖系を含む他の実施形態では、目標値は第1の流体圧力より大きくてもよい。これらの実施形態によれば、第2のリザーバを第1の流体圧力より大きい目標値まで加圧することにより、第2のリザーバが導管と流体連通状態で配置されたときに、第2の流体の注入を迅速に開始して、流体の流れが促進されるようにおよび/または第2のリザーバへの逆流を防ぐようにでき、これにより、よりシャープなボーラス注入がもたらされ得る。さらに、そのようなより高い目標値は、系のコンプライアンスの影響、例えば第2のリザーバの系の構成要素を膨張させる第1の流体系成分の圧力による力の一部を最小化できる。
【0060】
他の実施形態では、目標値は第1の流体圧力より小さくてもよい。これらの実施形態によれば、第2のリザーバを第1の流体圧力より低い目標値まで加圧することは、第2の流体の第1のリザーバ内への望ましい逆流防止を提供し得る、および/または系の過剰加圧を防止し得る。他の実施形態では、第1の流体圧力に対する第2の流体圧力の目標値の差は、デュアルフロー注入プロトコルに適切な流体流量比率を提供するように選択されてもよいし、所望のデュアル流量比率まで徐々に上がることをより容易に可能にすることもできる。
【0061】
目標値は、特定の流体注入パラメータおよびプロトコルに基づいて、例えば他の要因の中でも第1の流体および第2の流体の所望の流量、流体の種類(例えば、造影剤vs生理食塩水)、系の容量、デュアルフロー注入が望ましいか否か、逆流が問題になり得るか否かなどの様々な要因に基づく目標値の計算によって、流体インジェクタに関連付けられたプロセッサによって決定され得る。
【0062】
デュアルフロー注入プロトコルが望ましい特定の実施形態では、すなわち、プロトコルで第1の流体と第2の流体との特定の混合物を同時に注入することが必要とされる場合、第2の流体を第2のリザーバから排出するために第2の駆動部材を前進させるステップは、所定の比率の第1の流体および第2の流体のデュアルフロー流体送達を提供するために、第1の流体を第1のリザーバから排出するために第1の駆動部材を前進させ続けるステップをさらに含み得る。所定の比率は、特定の注入プロトコルに関してユーザがプロセッサに事前にプログラムすることができる、または所望の注入パターンを提供するために、インジェクタの製造業者によって提供される所定または標準の注入プロトコルであり得る、1:99の第1の流体の第2の流体に対する比率から99:1の第1の流体の第2の流体に対する比率の範囲の指定された比率であり得る。
【0063】
他の実施形態では、本方法は、第2の流体リザーバを導管と流体連通状態で配置するステップの前に、あるいは第2の流体を第2のリザーバから導管内に排出するために第2の駆動部材を前進させるステップの前に、導管と流体連通しないように第1のリザーバを隔離するステップをさらに含み得る。これらの実施形態によれば、注入プロトコルは、例えば第1の流体と第2の流体と(例えば、粘度が(20℃で)2.0~30.0cP(mPa秒)の範囲であり得る造影剤に対する、粘度が(20℃で)1.0~1.5cP(mPa秒)の生理食塩水などの低粘度流体)の間に粘度の差がある場合に移行中の流体流量の増加および/もしくは変動を回避しながら、または第2の流体の第1の流体リザーバ内への逆流もしくは第1の流体の第2の流体リザーバ内への逆流を回避しながら、注入を第1の流体から第2の流体に移行するステップを含み得る。
【0064】
他の実施形態では、本開示は、多フェーズ/多流体注入の際の動的圧力制御のために構成された流体送達システムを提供し、流体送達システムは、第1の流体を収容するように構成された少なくとも第1のリザーバと、第2の流体を収容するように構成された少なくとも第2のリザーバと、流体をリザーバから患者に導くために、第1のリザーバおよび第2のリザーバに接続された導管と、流体を第1のリザーバから排出するための少なくとも第1の駆動部材および流体を第2のリザーバから排出するための少なくとも第2の駆動部材を備える流体インジェクタと、コンピュータ可読メモリを備え、流体インジェクタと電子的に通信するコントローラと、を備える。コントローラは、流体インジェクタ、スタンドアロンで動作するコンピュータ、取り外し可能に動作する記憶媒体、病院の情報ネットワーク、または外部のコンピュータに関連付けられ得る。メモリは、コントローラによって実行された場合に、第1の注入フェーズの際に第1の流体を第1のリザーバから排出するために第1の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することであって、第1の流体が第1の流体圧力まで加圧される、ことと、目標値を提供するために、第1の注入フェーズの際に第1の流体圧力を測定することであって、目標値が第1の注入フェーズの測定された流体圧力に基づく、ことと、第2のリザーバが導管から流体隔離状態にある間に、第2のリザーバ内の第2の流体の流体圧力を目標値まで上昇させるために第2の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することと、第2のリザーバを導管と流体連通状態で配置するようにインジェクタに命令することと、目標値に等しい圧力で第2の流体を第2のリザーバから導管内に排出するために第2の駆動部材を前進させるようにインジェクタに命令することと、をコントローラに実行させる命令を含む。
【0065】
本明細書で説明される様々な実施形態による様々な流体圧力制御方法の利点は、フェーズが移行する際に流量を維持する能力を含む。例えば、これにより、フェーズが移行する際にヨウ素フラックスを維持でき、その結果、流量が過渡的に低下する同じ注入と比較して、画像強調を強めることができる。したがって、近圧化は、所与の造影剤量およびフラッシュ、造影剤量およびデュアルフロー、造影剤量および後続の造影剤などの最適な使用である。圧力制御方法は、逆流を防ぐ手段をさらに提供し得る。後続フェーズのリザーバ内で圧力を生じることにより、第1のフェーズからの流体は後続フェーズのリザーバに入らない。逆流を防止することにより、逆流による混合が発生するシナリオと比較して、ボーラス注入がよりシャープになる。さらに、本明細書で説明される実施形態による圧力制御方法を使用して、注入の際に複数のフェーズにわたって単一のリザーバを使用して流体を送達するシナリオの過剰な流量を低減することができる。例えば、リザーバが、あるフェーズ中に200psiで流体を送達し、その後弁を閉じることにより閉じられた場合、200psiは、例えば加圧流体および系の容量としてリザーバに閉じ込められる。注入の際にリザーバを再び使用すると、200psiの閉じ込められた圧力が中間フェーズの圧力より大きくなり、流体の流れの変動をもたらし得る。したがって、例えば、駆動部材の適切な前進または後退によって事前の圧力の制御を使用して閉じ込められた圧力を低下させ、その結果、その圧力が直前のフェーズの注入ライン圧力と同じになる。圧力制御はまた、以前の注入フェーズで発生した系の緩み、例えば機械的な緩みおよび系のコンプライアンスを取り除き、それにより多フェーズ注入にわたる体積精度を維持するために使用され得る。
【0066】
いくつかの図面にわたって同様の符号は同様の部分を指す図面を参照すると、本開示は、一般に、流体インジェクタシステムおよび流体インジェクタにおける動的圧力制御のための方法に関する。容量の発生および流体注入システムに関連する問題に関連する関連の開示は、2017年3月3日に出願された国際出願US2017/020637号明細書に記載されており、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0067】
図1を参照すると、自動または動力式流体インジェクタなどの流体インジェクタ10(以下、「インジェクタ10」と呼ぶ)は、1つまたは複数のシリンジ12とインターフェースするように適合され、かつ1つまたは複数のシリンジ12(以下、「シリンジ12」と呼ぶ)を作動させるように適合され、それぞれに、造影剤、生理食塩水、または任意の所望の医療用流体などの流体Fを独立に満たすことができる。インジェクタ10は、医療処置の際に、リニアアクチュエータまたはピストン要素などの(図2に示す)ピストン19などの駆動部材により各シリンジ12のプランジャ14を駆動することによって、患者の体内に医療用流体を注入するために使用され得る。インジェクタ10は、2つ、3つ、またはそれ以上のシリンジを有するマルチシリンジインジェクタであってもよく、ここで、いくつかのシリンジ12は、並べてまたは他の関係で配置されてよく、インジェクタ10に関連するそれぞれの駆動部材/ピストン16によって別々に作動され得る。2種の異なる医療用流体で満たされた2つのシリンジが並べてまたは他の関係で配置されている実施態様では、インジェクタ10は、シリンジ12の一方または両方から順次または同時に流体を送達するように構成され得る。1つの実施形態によれば、流体インジェクタ10は、2つのシリンジ12aおよび12bを有するデュアルヘッドインジェクタであり、第1のシリンジ12aが造影剤または他の医療用流体を送達するためのものであり、第2のシリンジ12bが生理食塩水または他の医学的に承認されたフラッシング剤を送達して患者に造影剤を流すためのものであり得る。他の実施形態によれば、流体インジェクタ10は、3つのシリンジ12を有し、第1および第2のシリンジが1種または2種の異なる造影剤または他の医療用流体を送達するためのものであり、第3のシリンジが生理食塩水または他の医学的に承認されたフラッシング剤を送達して患者に造影剤を流すためのものであり得る。様々な実施形態によれば、流体インジェクタ10は、造影剤と生理食塩水とを別々に送達するように構成され得る(例えば、特定の時間にわたって特定の量の生理食塩水を送達し、続いて特定の時間にわたって特定の量の造影剤を送達し、続いて指定された時間にわたって第2の量の生理食塩水を送達して、チューブから患者に造影剤を流す)。様
々な実施形態によれば、流体インジェクタ10は、造影剤と生理食塩水とを別々にまたは混合物として送達するように構成され得る(例えば、特定の時間にわたって特定の量の生理食塩水を送達し、続いて特定の時間にわたって特定の量の造影剤を送達する、または指定された比率の造影剤および生理食塩水を(つまり、「デュアルフロー」プロセスで)送達し、続いて指定された時間にわたって第2の量の生理食塩水を送達して、チューブから患者に造影剤を流す)。技術者は、所望の生理食塩水量、造影剤量、造影剤と生理食塩水との特定の比率の混合物を溶液ごとに所望の流量、時間、および量で送達するために、特定の注入プロトコルをインジェクタにプログラムする(または事前に作成されたプロトコルを使用する)ことができる。流体インジェクタ10は、シリンジ12を流体で満たすための少なくとも1つのバルク流体源(図示せず)を有してもよく、特定の実施形態では、流体インジェクタ10は、複数のシリンジのそれぞれを所望の流体で満たすための複数のバルク流体源を複数のシリンジのそれぞれに1つずつ有してもよい。
【0068】
流体経路セット17などの導管は、各シリンジ12から、血管アクセス部位で患者に挿入されたカテーテル(図示せず)に流体Fを送達するための各シリンジ12をカテーテルと流体連通状態で配置するために各シリンジ12と流体連通状態にされ得る。特定の実施形態では、1つまたは複数以上のシリンジ12からの流体の流れは、注入流量、持続時間、総注入量、およびデュアルフロー注入プロトコルの各流体の特定の比率を含むシリンジ12からの流体の比率など、ユーザが選択した注入パラメータに基づいて、患者への生理食塩水および造影剤の送達を調整するための様々な駆動部材、弁、ストップコック、および流量調整構造を作動させる流体制御モジュール(図示せず)によって調整され得る。
【0069】
図2を参照すると、モータ31によって動かされる往復駆動ピストンなどの駆動部材19は、インジェクタハウジングの前端の開口部を通って各シリンジポート13に出入りするように構成され得る。複数のシリンジを備える流体インジェクタの実施形態では、シリンジ12ごとに別個の駆動部材/ピストン19を設けることができる。各駆動部材/ピストン19は、プランジャ14または転動形ダイヤフラムシリンジの遠位端などのシリンジ12の少なくとも一部に原動力を与えるように構成される(例えば、国際出願US2017/056747号明細書、国際公開第2016/172467号パンフレット、および国際公開第2015/164783号パンフレットに説明されているように。これらの開示はこの参照により本明細書に組み込まれる)。駆動部材またはピストン19は、モータ31、ボイスコイルアクチュエータ、ラックアンドピニオンギヤ駆動装置、リニアモータ、リニアアクチュエータなどによって駆動されるボールねじ軸などの電気機械駆動構成部品を介して往復動作可能であり得る。モータ31は電動モータであってもよい。
【0070】
適切な前方取り付け式流体インジェクタ10の例は、米国特許第5,383,858号明細書、同第7,553,294号明細書、同第7,666,169号明細書、同第9,173,995号明細書、同第9,199,033号明細書、および同第9,474,857号明細書、ならびに国際公開第2016/191485号パンフレットおよび同第2016/112163号パンフレットに開示されており、これらの開示はその全体が参照により組み込まれる。
【0071】
流体インジェクタ10の特定の実施形態の一般的な構造および機能について説明したが、次に、インジェクタ10と共に使用するように構成されたシリンジ12の一実施形態について、図2を参照して説明する。シリンジ12は、一般に、ガラス、金属、または適切な医療用プラスチック、望ましくは透明または実質的に半透明のプラスチック材料から形成された円筒形のシリンジバレル18を有する。シリンジ12の材料は、必要な引張および平面応力要件、水蒸気透過性、および化学的/生物学的適合性を満たすように選択することが望ましい。バレル18は、近位端20と、遠位端24と、を備えると共に、側壁119が、近位端20と遠位端24との間に、バレル18の中心を通って延びる、ある長さの長手方向軸15に沿って延びている。いくつかの例では、遠位端24は、円筒形のバレル18から遠位方向に細くなる円錐形状を有し得る。ノズル22が遠位端24から延びる。バレル18は、外面21と、内部容積25が流体を内部に受け入れるように構成された内面23と、を有する。バレル18の近位端20は、対応するピストン19または駆動部材の往復運動によりバレル18内を通って往復運動可能なプランジャ14によって密閉され得る。プランジャ14は、プランジャ14がバレル18内を動かされて前進する際に、バレル18の内面23に対して液密シールを形成する。
【0072】
いくつかの例では、シリンジ12の近位端20は、(図1に示す)インジェクタ10のシリンジポート13に取り外し可能に挿入されるように、寸法決めおよび適合され得る。一部の例では、シリンジ12の近位端20は、インジェクタ10のシリンジポート13内に取り外し可能に挿入されるように構成された挿入部30を画定し、シリンジ12の残りの部分はシリンジポート13の外部に留まる。
【0073】
図3に示されるようないくつかの例では、インジェクタ10は、インジェクタ10の各シリンジポート13内に圧力ジャケット32を受け入れて保持するように構成され得る。図1および図3は、2つのシリンジポート13を備えた流体インジェクタ10を示しており、図3に示すインジェクタ10では対応する圧力ジャケット32をそれぞれ有しているが、流体インジェクタ10の他の例は、単一のシリンジポート13と、場合により、対応する圧力ジャケット32とを備えてもよく、オプションの対応する数の圧力ジャケット32を有する3つ以上のシリンジポート13を備えてもよい。圧力ジャケットを含む実施形態では、各圧力ジャケット32は、血管造影(CV)処置用のシリンジや転動形ダイヤフラムシリンジ34などのシリンジを受け入れるように構成され得る(その適切な例は、国際出願US2017/056747号明細書、国際公開第2016/172467号パンフレット、および国際公開第2015/164783号明細書に記載されている)。シリンジ34から、血管アクセス部位で患者に挿入されたカテーテル、針、または他の流体送達接続部(図示せず)に接続されたチューブを介して流体を送達するために、図1に示される流体経路セット17と同様の流体経路セットが、各転動形ダイヤフラムシリンジ34の排出端に流体連通され得る。様々な実施形態によれば、シリンジ12または34は、プレフィルドシリンジであり得る、すなわちシリンジは、シリンジの製造業者によって提供されたときに、造影剤または生理食塩水などの医療用流体で事前に充填され得る。特定の実施形態によれば、プレフィルドシリンジは、本明細書で説明されるように、流体をシリンジから患者への流体ラインに排出できるようにするために、注入手順の前に排出端で穿刺または穿孔することが必要とされ得る。
【0074】
図4を参照すると、転動形ダイヤフラムシリンジ34は、一般に、内部容積38を画定する中空の本体36を備える。本体36は、前部または遠位端40と、後部または近位端42と、それらの間に延びる可撓性の側壁44とを有する。近位端42は、本明細書で説明されるように、シリンジ内部を加圧してそこから流体を引き込むか放出するピストンとして作用するように構成され得る。転動形ダイヤフラムシリンジ34の側壁44は、流体インジェクタ10の駆動部材またはピストンの作用下で「転動形ダイヤフラム」として、それ自身の上で転動するように構成された、柔らかい、成形しやすい、または可撓性を有するが自立する支持体を画定する。駆動部材/ピストン19は、転動形ダイヤフラムシリンジ34の近位端42で駆動部材係合部分52に解除可能に係合するように構成されてもよい(その例は国際出願US2017/056747号明細書に記載されている)。動作中、側壁44は、その外面が、駆動部材/ピストン19が近位端42を遠位方向に動かすと、半径方向内向きに折り畳まれ反転し、駆動部材/ピストン19が近位端42を近位方向に後退させると、反対に半径方向外向きに広がり展開するように転動するように構成される。
【0075】
引き続き図4を参照すると、側壁44の後部または近位部分は閉鎖端壁46に接続し、側壁44の前部または遠位部分は閉鎖端壁46とは反対側に放出ネック48を画定する。閉鎖端壁46は、側壁44の反転または転動の開始を容易にする、閉鎖端壁46の機械的強度を高める、および/または駆動部材/ピストン19の遠位端を受け入れる受入ポケットを提供するために、凹形状を有し得る。例えば、閉鎖端壁46は、駆動部材/ピストン19の同様の形状の遠位端と直接インターフェースするための受入端ポケットを画定してもよい。いくつかの例では、駆動部材/ピストン19の少なくとも一部は、閉鎖端壁46の形状に実質的に一致するように形作られてもよく、あるいは、遠位に移動するときの駆動部材/ピストン19からの圧力が、駆動部材/ピストン19の少なくとも一部の形状に実質的に一致するように端壁46を一致させてもよい。
【0076】
端壁46は、実質的にドーム形状の構造を有する中央部分50と、中央部分50から近位に延びる駆動部材係合部分52とを有することができる。駆動部材係合部分52は、例えば、駆動部材/ピストンを後退させるときに、流体インジェクタ10の駆動部材/ピストン19上の対応する係合機構と解除可能に相互作用するように構成される。転動形ダイヤフラムシリンジ34は、任意の適切な医療用プラスチックまたはポリマー材料、望ましくは透明または実質的に半透明のプラスチック材料から作られ得る。転動形ダイヤフラムシリンジ34の材料は、必要な引張および平面応力要件、水蒸気透過性、および化学的/生物学的適合性を満たすように選択することが望ましい。
【0077】
図5を参照すると、本開示の別の例による流体インジェクタ10が示されている。インジェクタ10は、様々な機械的駆動構成部品と、機械的駆動構成部品を駆動するために必要な電気構成部品および電力構成部品と、往復運動可能なピストン(図示せず)の動作を制御するために使用される、電子メモリおよび電子制御装置などの制御構成部品と、を内包するハウジング54を有する。流体インジェクタ10は、流体インジェクタ10と取り外し可能に接続可能な複数患者用使い捨てシステム(MUDS)56をさらに有する。MUDS 56は、1つまたは複数のシリンジまたはポンプ58を備える。いくつかの態様では、シリンジ58の数は、流体インジェクタ10上のピストンの数に対応する。図6に示されるようないくつかの例では、MUDS 56は、並べた構成で3つのシリンジ58a~58cを有する。各シリンジ58a~58cは、MUDS流体経路62を介してそれぞれのバルク流体源(図示せず)に接続するためのバルク流体コネクタ60を有する。MUDS流体経路62は、バルク流体コネクタ60に接続するその終端にスパイク要素を備えた可撓性チューブとして形成されてもよい。図5に示すインジェクタ10および対応するMUDS 56は、国際公開第2016/112163号パンフレットに詳細に説明されており、その開示はこの参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
MUDS 56は、1つまたは複数のシリンジまたはポンプ58a~58cを備え得る。いくつかの態様では、シリンジ58の数は、流体インジェクタ10上の駆動部材/ピストンの数に対応する。図5および図6に示されるようないくつかの例では、MUDS 56は、並べた構成で配置された3つのシリンジ58a~58cを有する。各シリンジ58a~58cは、MUDS流体経路62を介してそれぞれのバルク流体源(図示せず)に接続するためのバルク流体コネクタ60を有する。MUDS流体経路62は、その末端にスパイク要素を有するバルク流体コネクタ60に接続する可撓性チューブとして形成されてもよい。
【0079】
図6を参照すると、MUDS 56は、1つまたは複数のシリンジ58a~58cを支持するためのフレーム64を有する。シリンジ58a~58cは、フレーム64に取り外し可能に接続されても取り外し不能に接続されてもよい。各シリンジ58a~58cは、細長い実質的に円筒形のシリンジ本体を有する。各シリンジ58a~58cは、バルク流体源からの流体でシリンジ58a~58cを充填するために、MUDS流体経路62と流体連通状態にある充填ポート66を有する。各シリンジ58a~58cは、その遠位端の末端部分に放出口または導管68をさらに有する。各シリンジ58a~58cの放出口68は、マニホールド70と流体連通状態にある。弁72は、各放出口68に関連付けられ、かつ放出口68がシリンジ内部から流体隔離状態にある間に、充填ポート66がシリンジ内部と流体連通状態にあり充填位置と、充填ポート66がシリンジ内部から流体隔離状態にある間に、放出口68がシリンジ内部と流体連通状態にある送達位置と、の間で動作可能である。マニホールド70は、各シリンジ58a~58cと流体連通状態にあり、患者に流体を送達するための単回使用流体経路要素(図示せず)に接続するように構成されたポート76と流体連通する流体出口ライン74と流体連通状態にある、流体経路を有する。
【0080】
様々な実施形態において、流体インジェクタ10、例えば図1図3、および図5に示される流体インジェクタのいずれかでは、モータ31(図2)は、駆動部材/ピストン19を遠位方向に往復駆動する原動力を提供し、シリンジ12、34またはMUDS 56内の流体を放出する。モータ31は、駆動部材/ピストン19に動作可能に接続されて、駆動部材/ピストン19を往復運動させるギアおよびシャフトなどの駆動構成要素を有し得る。各モータ31は、入力電流または出力トルクなどの動作特性を、それに関連する流量または圧力および許容誤差に相互に関連付けるように較正されなければならない。本明細書で説明するように、特に2つ以上のモータにより駆動される2つ以上のシリンジを有する流体インジェクタのモータ性能特性の変動など、流体インジェクタ10の異なる構成要素のいずれかからの変動または仕様外の挙動を補償するために、較正が望ましい場合がある。例えば、あるモータ31のモータ入力トルクのインジェクタ出力圧力への変換は、別のモータ31では異なる場合がある。この変動は、流体インジェクタ10の駆動系の許容誤差の変動によってさらに悪化する可能性がある。流体インジェクタ10内の流量または圧力の精度は、モータ31を較正するために使用されるシステムおよび方法と直接相関している。
【0081】
本開示の1つの例によれば、図1図6に関連して上述した流体インジェクタ10は、第1のフェーズ中の第1の流体F1の注入と、その後に続く第2のフェーズ中の第2の流体F2の注入とを含む多フェーズ流体注入を実行するように構成され得る。第1のフェーズの間、第1の流体F1は、少なくとも第1のシリンジ、例えば図1のシリンジ12aまたは図5図6のシリンジ58bおよび/または58cの一方から注入される。第2のフェーズの間、第2の流体F2は、少なくとも第2のシリンジ、例えば図1のシリンジ12bまたは図5図6のシリンジ58aから注入される。以下、第1のシリンジおよび第2のシリンジは、図5図6を参照して説明され、したがって、第1のシリンジ58bおよび第2のシリンジ58aと呼ばれる。しかしながら、本明細書で説明されるシステムおよび方法は、図1のシリンジ12a~12b、図3図4に示すような2つ以上の転動形ダイヤフラムシリンジ34を備えたインジェクタ、または流体注入システムの少なくとも2つのシリンジの任意の他のセットのいずれにも等しく適用可能であることを理解されたい。
【0082】
第1のシリンジ58bの第1の流体F1と第2のシリンジ58aの第2の流体F2とは、異なる粘度などの異なる特性を有する医療用流体などの異なる流体であってもよい。あるいは、第1の流体F1と第2の流体F2とは、例えば医療流体であるが異なる濃度または温度の同じ流体であってもよいし、異なる流量で送達される同じ流体であってもよい。例えば、第1の流体F1および第2の流体F2は、異なる粘度、温度、および/または密度のうちの1つ以上を有し得る。本開示の1つの例では、第1の流体F1は、本明細書で説明するように、第1の粘度を有する造影剤であり得、第2の流体F2は、通常第1の粘度より低い第2の粘度を有する生理食塩水であり得る。特定の実施形態では、流体インジェクタは、第1の流体F1および第2の流体F2と同じまたは異なる第3の流体F3を収容する第3のシリンジ58cを有することができる。例えば、F3は第1の流体F1と同じであり得る造影剤であってもよいし、F3はF1とは異なる造影剤であってもよいし、F3はF1と同じ造影剤タイプであるがF1とは異なる濃度あってもよい。多フェーズ注入の第1のフェーズの間、第1の流体F1、すなわち造影剤は、インジェクタ10にプログラムされた第1の所定の流量で第1のシリンジ58bから注入されてもよい。第1の所定の流量での第1の流体F1の送達は、ピストン19で第1のシリンジ58bのプランジャを駆動するなど、第1のシリンジ58b内の第1の流体F1に圧力を印加することにより達成され、所望の第1の所定の流量を達成するために必要な印加圧力は、第1の流体F1の第1の粘度の関数である。第1の流体F1の造影剤の粘度が一般により高いために、生理食塩水などのより低い粘度の流体で同じ流量を達成するために必要な印加圧力と比較して、所定の流速を達成するためにより高い印加圧力が一般に必要とされる。多フェーズ注入の第1のフェーズに続いて、第2のフェーズは、第2のシリンジ58aからの第2の流体F2、すなわち生理食塩水の注入を含む。第2の流体F2の第2の所定の流量は、第1の流体F1の第1の所定の流量と同じであっても、それより多くても、それより少なくてもよい。第1および第2の所定の流量が同じになることを目標とする流体注入では、第1の流体F1の第1の粘度と第2の流体F2の第2の粘度との差に起因して、第2の流体F2を送達するのに必要な圧力は、第1の流体F1を送達するのに必要な圧力とは異なり得る。本例では、同じ流量を得るために、第1の流体F1、すなわち造影剤に印加される圧力は、一般に、第2の流体F2、すなわち生理食塩水に印加される圧力よりも高い。他の例では、第2の流体F2の第2の所定の流量は、第1の流体F1の第1の所定の流量と異なってもよいが、第1の流体F1および第2の流体F2の所定の流量を達成するために必要な圧力は依然として異なり得る。
【0083】
図1図3、および図5に示されるシステム10と同様の流体送達システム102の概略図が図7に示されている。システム102は、第1の流体F1を収容する第1のシリンジ112などの第1のリザーバを備える。いくつかの例では、第1の流体F1は、多フェーズ注入の第1または造影剤のフェーズで一般的に使用されるような造影剤であり得る。システム102はまた、第2の流体F2を収容する第2のシリンジ114などの第2のリザーバも備える。例えば、第2の流体F2は、多フェーズ注入の第2または生理食塩水フラッシュのフェーズで使用される生理食塩水であり得る。あるいは、第2の流体は第1の溶液と同じであってもよく、すなわち、両方の溶液は同じまたは異なる濃度を有する造影剤であってもよい。システム102はまた、流体を第1のシリンジ112および第2のシリンジ114から患者に搬送するための医療チューブ、流体経路セット、マニホールド、または同様の流体誘導構造などの導管117を備える。例えば、導管117は、血管アクセス部位で患者の静脈に流体を送達するために、患者のカテーテルに接続される。導管117は、構造および機能において、流体経路セット17(図1に示す)またはMUDS流体経路セット62に示すマニホールドおよび流体経路(図6に示す)と同様であり得る。
【0084】
いくつかの例では、システム102はまた、シリンジ112、114、またはMUDS 56を受け入れるように構成された流体インジェクタ110も備える。シリンジ112、114は、そこから流体を排出するための可動プランジャを有する前方取り付け式シリンジ、上述の転動形ダイヤフラムシリンジ、または当技術分野で既知である他のタイプの使い捨てまたは再利用可能なシリンジとすることができる。インジェクタ110は、前方取り付け式インジェクタ10(図1に示す)または複数患者用インジェクタ10(図6に示す)と同様であり得る。流体インジェクタ110は、シリンジ112、114から流体F1、F2を排出するための、可動ピストンまたはリニアアクチュエータなどの独立した駆動部材19を備え得る。例えば、上述のように、駆動部材は、シリンジ112、114のプランジャと係合し、シリンジ112、114のバレルを通してプランジャを軸方向に前進させてそこから流体を排出するように構成され得る。
【0085】
いくつかの例では、システム102は、シリンジ112、114と導管117との間の流体流量を制限するための弁178、180などの流体制御デバイスをさらに備える。システム102を通る流体流量を調節するための弁は、例えば、当技術分野で知られているような、ストップコック、逆止弁、ボール弁、ダイヤフラム弁、および他の種類の手動または自動作動弁を含むことができる。いくつかの例では、異なるシリンジ用の弁を組み合わせて、図6に示すマニホールド70などの単一のマニホールドデバイスにすることができる。他の例では、弁178、180は、ユーザにより独立して操作され得る別個の構造またはデバイスとすることができる。弁178、180は、シリンジ112、114と導管117との間の流体の流れが阻止される閉鎖位置と、流体が流れることができる開放位置との間で移行するように構成される。他の実施形態では、弁178、180は、部分的に開いて、流体がリザーバから流れるときに通るオリフィスサイズを制御することにより、流体の流れをさらに制御するように構成され得る。流体注入の他の実施形態では、システムに弁がなくてもよい。いくつかの例では、弁178、180が各シリンジ112、114のノズルおよび/またはシリンジノズルと導管117との間に接続されて、弁178、180は閉鎖位置にあるときに流体がシリンジ112、114と導管117との間を通ることを阻止する。他の例では、弁178、180は、導管117内に配置され、開閉して、そこを通る流体の流れを制限することができる。
【0086】
いくつかの例では、システム102は、第1のシリンジ112および/もしくは第2のシリンジ114に関連付けられたセンサ106、108、または各シリンジに関連付けられた流体経路に関連付けられたセンサ106、108をさらに備える。シリンジタイプ、シリンジ112、114に収容されている流体F1、F2、実行されている注入の注入パラメータ、またはインジェクタ110付近の環境条件(例えば、周囲温度)に関する情報を測定するために、様々な異なるタイプのセンサを使用できる。いくつかの例では、センサ106、108は、流体圧力トランスデューサ、圧力計、ひずみゲージ、またはシリンジ112、114または導管117内の流体圧力を測定するように構成されたセンサであり得る。シリンジの圧力は、シリンジバレル内でプランジャを駆動するために必要な力を決定するために、インジェクタ110のモータ電流を監視することにより測定され得る。様々な実施形態によれば、圧力制御を使用して、注入中に生じる緩みを除去することができる。一例として、1つまたは複数のシリンジは、シリンジが軸方向に伸びる、インジェクタ/シリンジの界面が撓むおよび/もしくは変位する、または拘束しているものが曲がるなど、加圧下でコンプライアンスまたはインピーダンスを示し得る。これにより、ピストンが注入していないリザーバ/シリンジのプランジャから離れる可能性があるため、緩みが生じる。注入中のシリンジ構成要素の撓みに起因する緩みを示す流体送達システム102の概略図を図12Aおよび12Bに示す。図12Aに示されるように、注入の前に、シリンジ112、114は、拘束構造150に取り付けられ、拘束構造150によって拘束される。図12Bに示されるように、注入中のピストンおよびプランジャからの圧力により、シリンジ112、114は、増加した加圧の結果として、わずかに伸張または変位する。例えば、シリンジ112、114は、注入の結果としてのシリンジ112、114の緩みまたは緩みの距離を表す破線152によって示される軸方向の距離だけ引き伸ばされるか、または変位され得る。
【0087】
いくつかの例では、システム102は、インジェクタ110、弁178、180、センサ106、108、およびシステム102の他の構成要素と電気通信するコントローラ104をさらに備える。コントローラ104は、一般に、インジェクタ110の1つまたは複数の駆動部材を作動させて流体送達を制御することにより、注入プロセスを制御するように構成される。コントローラ104は、注入手順に関する情報を記録し、一部の場合では、当技術分野で知られているような、コントローラ104に関連付けられた送受信機または通信デバイスを介した遠隔のソースへの記録情報の送信を制御するように構成され得る。コントローラ104は、流体送達システム102の構成要素を動作させるためのコンピュータ可読メモリに関連付けられたコンピュータプロセッサまたは処理デバイスとすることができる。いくつかの例では、コントローラ104は、インジェクタのハウジング内に収容されたインジェクタ110の電子コンポーネントである。その場合、コントローラ104は、視覚ディスプレイ、制御パネル、ユーザ入力デバイスなど、インジェクタ110の他の電気部品を制御または管理するように構成され得る。他の例では、コントローラ104は、インジェクタ110と電気的に通信するコンピュータタブレット、スマートフォン、またはパーソナルコンピュータなどの別個の電子デバイスであり得る。その場合、コントローラ104は、インジェクタ110、センサ106、108、または弁178、180から情報および命令を受信し、受信した情報を処理し、処理情報に基づいてシステム102の構成要素に命令を送信するように構成され得る。いくつかの例では、図8に関連して説明したように、コントローラ104は、圧力低下または他の不連続性のない、実質的に連続した流体ストリームとして流体が提供されることを確保するために、流体送達システムの動的圧力制御プロセスを管理するように構成され得る。
【0088】
図8を参照すると、流体送達システムの動的圧力制御のための方法またはプロセスが示されている。本方法またはプロセスは、フェーズ移行の際に一定の流量を維持するために、先行する注入フェーズ中に流体送達システムで生じるコンプライアンスおよび/またはシステムの緩みを考慮するために、流体リザーバを事前加圧または事前装填するように、および/または流体インジェクタの駆動部材またはピストンに事前装填するように適合される。例えば、本明細書に開示される方法またはプロセスは、注入の第1または造影剤のフェーズと注入の第2または生理食塩水フラッシュのフェーズとの間の緩みを低減または排除するように適合され得る。本方法またはプロセスはまた、流体リザーバの交差汚染を防ぐために、コンプライアンスの特性を明らかにすることおよび/またはリアルタイムで圧力をモニタリングすることを用いて、注入ライン(例えば、流体導管または流体経路セット)と隔離された流体リザーバとの間の圧力差をなくすことができる。
【0089】
いくつかの例では、本方法は、ステップ210に示されるように多フェーズ流体送達システムを提供するステップを含む。多フェーズ流体送達システムは、図1図7に示されるシステム、インジェクタ、およびシリンジという構成要素を備えることができる。例えば、流体送達システムは、内部から流体を排出するためのエラストマープランジャを含む使い捨てまたは多用途シリンジ、またはシリンジセットなどの第1の流体リザーバを備えることができる。特定の実施形態では、第1の流体リザーバはまた、本明細書で説明されるような転動形ダイヤフラムシリンジを備えることができる。リザーバは、第1の流体を収容することができる。流体送達システムはまた、第1のリザーバに収容された流体と同じ流体または異なる流体であり得る第2の流体を収容するシリンジなどの第2の流体リザーバと、第1のリザーバおよび第2のリザーバから流体を導くための流体経路セットなどの流体導管と、を備えることができる。システムはまた、第1のリザーバから流体を排出するための第1の駆動部材と、第2のリザーバから流体を排出するための第2の駆動部材とを備えるインジェクタを備える。
【0090】
ステップ212に示されるように、プロセスは、第1の注入フェーズの際に第1のリザーバから導管内に流体を排出するために第1の駆動部材を前進させるステップを含む。例えば、ユーザは、インジェクタの適切なボタンまたはコントロールダイヤルを押すことにより、第1の駆動機構を作動させて、ピストンまたはリニアアクチュエータをシリンジのプランジャに向けて前進させ、プランジャに係合させ、シリンジを通してプランジャを前進させて、そこから流体を排出することができる。ステップ214に示されるように、第1の注入フェーズの際に注入の流体圧力が測定される。流体圧力は、シリンジのバレルまたは導管もしくは流体経路セットの一部に配置された圧力トランスデューサまたはひずみゲージによって測定され得る。他の例では、シリンジおよび/または導管を通る流体流量を測定し、流体密度に基づいて圧力を判定することなどにより、流体圧力が間接的に測定され得る。他の例では、インジェクタによって引き出されるモータ電流に基づいて圧力が判定され得る。いくつかの例では、例えばアナログガスゲージを使用する場合に発生するように、流体圧力は第1の注入フェーズ全体で継続的に測定される。他の例では、流体圧力は、第1の注入フェーズの間に所定の間隔などで、定期的に測定され得る。
【0091】
1つの実施形態では、ステップ216に示すように、第1の注入フェーズ中に、システムは、第2のシリンジに接続または関連付けられた弁が閉鎖位置にあること、および/または第2のシリンジが導管と流体連通状態にないことを確保するように構成され得、その結果、ピストンおよびプランジャの動きによって第2のリザーバが加圧され得る。他の例では、弁を閉じる必要はない。その場合、ピストンは前方に移動して一致する圧力(例えば、第1のフェーズの圧力に一致する圧力)を生成できる。しかしながら、弁を開いたままにすると、他の要因の中でも、流体の特性と流体の向きによっては、流体が混合する場合がある。他の例では、混合を抑制または排除するために、ストップコックなどの弁をある程度小さな開口サイズまで部分的に開き、ピストンを前方に動かして所望の圧力を発生させることができる。他の例では、ストップコックの代わりにピンチ弁、ローラーバルブ、またはクランプを使用できる。
【0092】
別の実施形態では、ステップ218に示すように、第2のリザーバまたはシリンジが導管と流体連通していない間に、第2の駆動部材が第2のリザーバを前進して第2のリザーバ内の流体圧力を高める。駆動部材は、第2のリザーバ内の流体圧力が、第1の注入フェーズ中に測定された流体圧力に基づいて決定された目標値まで増加するまで前進し続ける。いくつかの例では、目標値は、第1の注入フェーズ中に以前に測定された流体圧力に等しい。他の例では、目標値は、以前に測定された圧力値のパーセンテージにすることができる。例えば、目標値は、以前に測定された流体圧力の約0%~200%とすることができる。例えば、測定された注入圧力が100psiであり、目標が約80%である場合、圧力が80psiになるまで第2のリザーバのピストンが移動する。
【0093】
いくつかの例では、第2のリザーバまたはシリンジ内の流体圧力は、リザーバと流体連通状態にある電子圧力トランスデューサまたはセンサを使用して測定され得る。その場合、システムコントローラは、センサによる測定で目標圧力が得られたことを確認するまでインジェクタの駆動部材を前進させ続けるように構成され得る。目標圧力が得られると、コントローラは、インジェクタに駆動部材の前進を停止させる命令をインジェクタに提供するように構成され得る。他の例では、駆動部材および/またはシリンジプランジャの最終位置は、第1の注入フェーズ中の測定された流体圧力および駆動部材の現在の位置に基づいて計算され得る。例えば、コントローラは、駆動部材の位置および所望の最終流体圧力に関する情報を取得するように構成され得る。コントローラは、目標圧力を得るためにプランジャをどれだけ前進させる必要があるかを計算できる。他の例では、第1の流体注入圧力が低下した場合、駆動ピストンは、目標圧力に応じて圧力を下げるために、例えば一定の速度またはステップ状の速度で後方に移動/後退することができる。コントローラは、駆動機構にプランジャを計算された距離だけ前進させることができる。このようにして、コントローラは、第2のシリンジの流体圧力を連続的または定期的に測定する必要なく、第2のシリンジのシリンジ圧力を増加させることができる。様々な実施形態において、このプロセス中、第2のリザーバ内の第2の流体の圧力の測定は必要ではない場合がある。
【0094】
第2のシリンジ内の目標流体圧力が得られると、流体送達システムは、第2の流体または造影剤の患者への送達(例えば、第2の注入フェーズ)を開始する準備ができた状態にある。圧力以外の要因も、第2の注入フェーズをいつ開始するかを決定するのに関連する場合がある。しかしながら、ほとんどの例では、第2の注入フェーズは目標圧力に達した後にのみ開始するべきである。ステップ220で示されるように、第2の注入フェーズを実行するために、弁は手動または自動で開かれて、第2のリザーバの内部と流体導管または流体経路セットとの間の流体連通を確立する。弁が開いたら、駆動部材は前進し続けて、ステップ222に示すように、流体を第2のリザーバから導管に排出することができる。場合により、第1のシリンジの弁は、第1のシリンジを流体経路から隔離するために閉じられてもよいし、あるいは第2の流体と第1のシリンジ内の第1の流体との混合を最小化しながらシリンジ間の圧力制御を可能にするために部分的に閉じられてもよい。
【0095】
例えば、造影剤-生理食塩水-造影剤注入プロトコルなどの3フェーズ注入プロトコルの非限定的な例によれば、第1の造影剤のフェーズは100psiの圧力を生じ得、第2の生理食塩水のフェーズは20psiの圧力を生じ得る。造影剤から生理食塩水に移行する場合、造影剤のリザーバが弁で流体隔離された後、100psiの造影剤圧力が造影剤リザーバに閉じ込められ、生理食塩水のフェーズは流体ラインの圧力と一致するため、100psiで開始し、その後20psiまで低下する。生理食塩水のフェーズの注入中、造影剤リザーバに閉じ込められた圧力は、生理食塩水の圧力、すなわち20psiに下げる必要があり、その結果、第3のフェーズ(第2の造影剤のフェーズ)の開始時に第3のフェーズの造影剤の圧力が生理食塩水のフェーズからの20psiのシステム圧力と一致し、それにより、流量変動と生理食塩水のリザーバへの造影剤の潜在的な逆流が排除される。注入プロトコルの最後に、すべてのリザーバが対応する弁によって流体隔離され得、各リザーバ内の圧力が0psi(Pa)に戻されて、次の注入プロトコルのためにシステムを提供する。
【0096】
本明細書で説明される圧力制御プロセスは、圧力制御のないプロセスと比較して、多フェーズインジェクタシステムにいくつかの利点を提供する。例えば、第2の流体リザーバまたはシリンジの圧力を高めるために第2の駆動部材またはピストンを前方に駆動することにより、第2のシリンジのプランジャがその後のフェーズで流体と接触したままになることが確保される。さらに、第2のシリンジのプランジャを前方に駆動することにより、以前の注入フェーズ中の使い捨てシリンジの動きに起因するシステム内に導入された緩みがなくなり、それにより体積精度が向上し、フェーズ移行での流量の減少がなくなる。
【0097】
注入プロセスの生理食塩水または第2のフェーズなど、後続の注入フェーズを加圧することにより、隔離された第2のリザーバのコンプライアンスも除去される。第2のリザーバのコンプライアンスを除去することにより、後続のフェーズ中のすべてのピストンの動きが、システムの膨張ではなく、流体の送達につながる。このことはまた、図9図11のグラフに示すように、ある注入フェーズから別の注入フェーズに移行する際の流量の低下を最小化または排除する。
【0098】
いくつかの例では、本明細書で説明される圧力制御プロセスはまた、単一のシリンジでの使用に適合され得る。他の例では、2つ以上のシリンジを備え、デュアルフローフェーズを含む注入プロセスのための注入システムに適合され得る。有益なことに、全デュアルフローフェーズにおいて加圧リザーバから流体が供給されるため、圧力制御プロセスによりデュアルフロー比率の精度が向上する。対照的に、圧力制御が実行されていない場合、フェーズの一部は系のコンプライアンスの対処に費やされる。
【0099】
いくつかの例では、圧力制御は、注入の第1のフェーズのために実行され得る、または単一のシリンジ注入により実行され得る。目標圧力は、設定値(例えば、100psi)にすることも、系のコンプライアンスに基づいて決定することもできる。有益なことに、第1の注入フェーズを事前に加圧することにより、所望の流量に到達するのに必要なランプ時間がなくなる。また、第1の注入フェーズを事前に加圧すると、よりシャープなボーラス注入になる。図9の第2の注入フェーズ318を参照されたい。
【0100】
他の態様によれば、圧力制御プロセスは、流体リザーバ間の交差汚染を防ぎ、このことは、造影剤または生理食塩水の濃度がそれぞれのリザーバ内で純粋のままであるため、よりシャープなボーラス注入/移行を提供する。流体リザーバ間の交差汚染を回避することは、システムの使用寿命全体にわたって流体リザーバの交差汚染が蓄積する複数患者用のシステムにとって重要である。
【0101】
実施例
図10に示すような圧力制御なしの注入プロトコルと比較して、上述のプロセスを使用して実行された注入の注入パラメータを示すグラフが図9に示されている。具体的には、図9は、上述の圧力制御プロセスを使用して実行される流体注入の時間314に対する流量(mL/秒)312のグラフ310を示している。図9に示されるように、注入の第1のフェーズ316は、約0~16秒の間に行われる。約5秒の第1のフェーズ316の短いランプ時間の後、流量は第1のフェーズ内で約5mL/秒で安定する。いくつかの例では、第1のフェーズ中または第1のフェーズの前にシリンジを事前に加圧することにより、ランプ時間を除去できる。注入の第2のフェーズ318は、約16秒~30秒の間に行われる。約5mL/秒の流量が、第2のフェーズ318全体で提供される。特に、上述の圧力制御プロセスの結果として、流量が安定するまでランプ時間は必要ないことに留意されたい。代わりに、注入の第1のフェーズから第2のフェーズへの移行中および第2のフェーズ全体で、約5mL/秒で流体の実質的に連続した流れが提供される。
【0102】
図10は、圧力制御なしの多フェーズ注入の時間414に対する流量(mL/秒)412のグラフ410を示している。グラフ410に示されるように、注入の第1のフェーズ416は約0秒~16秒の間に生じる。図9の場合のように、第1のフェーズ416は約5秒のランプ時間を含み、その後、流量は約5mL/秒で安定する。注入の第2のフェーズ418は、約16秒~30秒の間に行われる。前の例とは異なり、第2のフェーズ418は約16秒~20秒の間にランプ時間を含む。ランプ時間の後、流量は約5mL/秒で安定する。グラフ410に示されるように、圧力制御なしでは、第1のフェーズ416と第2のフェーズ418との間にランプ時間または不連続が生じる。このような不連続は、診断画像のための画像強調を低下させ、カテーテルの動き(運動量の変化)をもたらし得るため、望ましくない。さらに、フェーズ移行の際に実質的に一定の流量を維持することは、造影剤量のより効率的な使用であると考えられている。
【0103】
図11は、時間に関して流体導管またはチューブセット内の圧力トランスデューサによって測定された圧力(psi)を示すグラフ510である。第1の線512は、圧力制御を行う注入についての経時的な圧力の変化を示している。図9にも示されるように、圧力制御が提供される場合、第1のフェーズ516の約5秒の短いランプ時間の後、流体は、線512で示されるように、フェーズ516、518間で不連続または圧力低下することなく実質的に一定の圧力で送達される。対照的に、線514は、圧力制御なしの注入の時間に対する圧力を示している。線514で示されるように、注入の第1のフェーズ516の間の圧力は約250psiで安定する。しかしながら、注入の第2のフェーズ518の間の圧力は約50psiで始まり、約20秒から27秒の間に250psiまで増加する。そのため、グラフ510の線514は、圧力制御が提供される場合には回避される多フェーズ注入のフェーズ間で不連続または実質的な圧力低下を示している。この不連続は、図9および図10で観察される流量の不連続だけでなく、両方のリザーバが患者へのラインに対して開いている場合に交差汚染を引き起こす可能性がある。
【0104】
現在最も実用的かつ好適と考えられている例に基づいて、説明の目的のために本開示を詳細に説明してきたが、こうした詳細は単にその目的のためのものであり、本開示は、開示された例に限定されるものではなく、それどころか、反対に、修正および均等な構成を包含するように意図されていることを理解されたい。例えば、本開示は、可能な範囲で、任意の例の1つまたは複数の特徴を、任意の他の例の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができることが企図されていることを理解されたい。
【符号の説明】
【0105】
10 流体インジェクタ
12 シリンジ
12a シリンジ
12b シリンジ
13 シリンジポート
14 プランジャ
15 長手方向軸
16 駆動部材/ピストン
17 流体経路セット
18 円筒形のシリンジバレル
19 駆動部材/ピストン
20 近位端
21 外面
22 ノズル
23 内面
24 遠位端
25 内部容積
30 挿入部
31 モータ
32 圧力ジャケット
34 転動形ダイヤフラムシリンジ
36 中空の本体
38 内部容積
40 前部または遠位端
42 後部または近位端
44 側壁
46 閉鎖端壁
48 放出ネック
50 中央部分
52 駆動部材係合部分
54 ハウジング
56 複数患者用使い捨てシステム(MUDS)
58 シリンジ
58a シリンジ
58b シリンジ
58c シリンジ
60 バルク流体コネクタ
62 MUDS流体経路
64 フレーム
66 充填ポート
68 放出口
70 マニホールド
72 弁
74 流体出口ライン
76 ポート
102 流体送達システム
104 コントローラ
106 センサ
108 センサ
110 流体インジェクタ
112 第1のシリンジ
114 第2のシリンジ
117 導管
119 側壁
150 拘束構造
152 破線
178 弁
180 弁
310 グラフ
312 流量
314 時間
316 第1のフェーズ
318 第2の注入フェーズ
410 グラフ
412 流量
414 時間
416 第1のフェーズ
418 第2のフェーズ
510 グラフ
512 線
514 線
516 第1のフェーズ
518 第2のフェーズ
F 流体
F1 流体
F2 流体
F3 流体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B