(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】塗料組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 133/14 20060101AFI20240524BHJP
C09D 133/06 20060101ALI20240524BHJP
C09D 201/08 20060101ALI20240524BHJP
C09D 183/04 20060101ALI20240524BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20240524BHJP
【FI】
C09D133/14
C09D133/06
C09D201/08
C09D183/04
C09D7/63
(21)【出願番号】P 2020058297
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-16
(73)【特許権者】
【識別番号】390033628
【氏名又は名称】中国塗料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇坂 真伍
(72)【発明者】
【氏名】信家 克哉
(72)【発明者】
【氏名】三村 展央
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 誠
【審査官】井上 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-194762(JP,A)
【文献】特開平09-208891(JP,A)
【文献】特開2009-165980(JP,A)
【文献】特開2019-094457(JP,A)
【文献】特開2015-108046(JP,A)
【文献】特開平09-310045(JP,A)
【文献】米国特許第06103788(US,A)
【文献】特開2005-179573(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/14
C09D 133/06
C09D 201/08
C09D 183/04
C09D 7/63
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
3級アミノ基含有アクリル樹脂(A)、カルボキシ基含有樹脂(B)
、エポキシ基含有シラン化合物(C)
およびシリコーン樹脂(D)を含
み、
有機溶剤系塗料である、塗料組成物。
【請求項2】
常温硬化性である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記樹脂(B)が、カルボキシ基含有アクリル樹脂(B1)およびカルボキシ基含有フッ素樹脂(B2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
請求項1~
3の何れか1項に記載の塗料組成物より形成された塗膜。
【請求項5】
下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]請求項1~
3の何れか1項に記載の塗料組成物を基材に塗装する工程
[2]塗装された塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、塗膜、および塗膜付き基材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶、橋梁、タンク、プラント、海上ブイ、パイプライン等の(大型)鉄鋼構造物には、防食を目的としてエポキシ樹脂系防食塗料組成物を塗装した後、形成された防食塗膜上に、意匠性や耐候性を高める目的で、上塗り塗料組成物が塗装されている。
【0003】
前記上塗り塗料組成物としては、2液反応硬化型の上塗り塗料組成物(例:アクリルウレタン樹脂系塗料組成物、フッ素ウレタン樹脂系塗料組成物)が知られている。また、塗装時の人体や環境に配慮した上塗り塗料組成物としては、イソシアネート基を有する化合物を含まない上塗り塗料組成物、具体的には、ポリシロキサン樹脂系塗料組成物も知られている。
【0004】
ポリシロキサン樹脂系塗料組成物は、一般的に、塗膜硬度の高い塗膜を形成できるが、その一方で、該塗膜は、耐屈曲性等の柔軟性が十分でないことが分かってきた。
この点に関し、ポリシロキサン樹脂系塗料組成物から得られる塗膜の耐候性を損なうことなく、耐屈曲性等に優れる塗膜を形成できる塗料組成物として、特許文献1には、カルボキシ基含有アクリル系共重合体、オルガノシロキサン、3級アミノ基含有ウレタンプレポリマーおよびエポキシ基含有有機シラン化合物を含む塗料組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1に記載の塗料組成物などの従来の上塗り塗料組成物から得られた塗膜は、塗膜硬度と耐屈曲性とのバランス、耐候性、および/または、耐薬品性の点で、改良の余地があることが分かった。
また、前記特許文献1に記載の塗料組成物などの従来の上塗り塗料組成物は、イソシアネート基を有する化合物を含んでいたり、該塗料組成物を調製する段階で、イソシアネート基を有する化合物を用いているため、塗装時や塗料組成物の調製時における、人体や環境への負荷を低減することも望まれている。
【0007】
本発明は以上のことに鑑みてなされたものであり、日射量が多く紫外線の厳しい環境での暴露においても、長期間に亘って外観、光沢を維持することができ、塗膜硬度および耐屈曲性にバランスよく優れ、耐薬品性に優れる塗膜を形成可能な、塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する方法について鋭意検討を重ねた結果、特定の塗料組成物によれば、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の構成例は以下の通りである。
【0009】
<1> 3級アミノ基含有アクリル樹脂(A)、カルボキシ基含有樹脂(B)およびエポキシ基含有シラン化合物(C)を含む、塗料組成物。
【0010】
<2> 常温硬化性である、<1>に記載の塗料組成物。
【0011】
<3> 前記樹脂(B)が、カルボキシ基含有アクリル樹脂(B1)およびカルボキシ基含有フッ素樹脂(B2)から選ばれる少なくとも1種の樹脂を含む、<1>または<2>に記載の塗料組成物。
【0012】
<4> さらに、シリコーン樹脂(D)を含有する、<1>~<3>の何れかに記載の塗料組成物。
【0013】
<5> <1>~<4>の何れかに記載の塗料組成物より形成された塗膜。
<6> 下記工程[1]および[2]を含む、塗膜付き基材の製造方法。
[1]<1>~<4>の何れかに記載の塗料組成物を基材に塗装する工程
[2]塗装された塗料組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、常温硬化可能な乾燥性に優れる耐候性塗料組成物を提供でき、該組成物によれば、日射量が多く紫外線の厳しい環境での暴露においても、長期間に亘って外観、光沢を維持すること(以下単に「耐候性」ともいう。)ができ、塗膜硬度および耐屈曲性にバランスよく優れ、耐薬品性に優れる塗膜を形成することができる。
また、本発明によれば、人体や環境に有害なイソシアネート基を有する化合物を含有しないまたは使用しない塗料組成物とすることができるため、塗装時や塗料組成物の調製時に人体や環境への負荷が小さい塗料組成物とすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
≪塗料組成物≫
本発明の一実施形態に係る塗料組成物(以下単に「本組成物」ともいう。)は、3級アミノ基含有アクリル樹脂(A)(以下「成分(A)」ともいう。他の成分についても同様。)、カルボキシ基含有樹脂(B)およびエポキシ基含有シラン化合物(C)を含む。
【0016】
本組成物は、常温乾燥の条件でも容易に硬化することができ、防食塗装が施工されるような厳しい環境下においても長期に渡って耐候性に優れる塗膜を形成することができる。
本組成物は、常温で硬化するため、塗装される基材が、耐熱性に劣る基材(耐熱性に劣る塗膜が形成された基材)であっても、基材の種類に制限されず、本組成物から塗膜を形成することができる。また、本組成物は、長期耐候性を有する耐候性塗膜を形成することができるため、塗り替えまでの期間を長くすることができ、かつ、塗装工程を省略することも可能であるため、本組成物を用いることで、鋼製構造物等の基材の塗装に関わるメンテナンスコストを大幅に抑えることができる。
【0017】
本組成物は、その効果がより発揮される等の点から、通常、上塗り塗料として、基材の最表面(基材とは反対側の表面)に塗装することが好ましい。また、本組成物は、中塗り塗料と上塗り塗料を兼ねる中上塗り塗料としても使用することができる。
【0018】
本組成物は、人体や環境への負荷等を考慮して水性塗料であってもよいが、低温環境下(例:5℃以下)での乾燥性・硬化性が不十分となる等の点から、溶剤系塗料であることが好ましい。
【0019】
本組成物は、一成分型の組成物であってもよいが、貯蔵安定性および貯蔵の容易性を考慮すると、主剤および硬化剤を含む多成分型の組成物であることが好ましく、例えば、前記成分(A)および(B)を含有する主剤と、前記成分(C)を含有する硬化剤とを含む二成分型の組成物が望ましい。また、本組成物は、前記主剤および硬化剤以外の第3剤等を含む三成分以上型の組成物であってもよい。
これら主剤、硬化剤や第3剤は、通常、それぞれ別個の容器にて保存、貯蔵、運搬等され、使用直前に混合して用いられる。
【0020】
<3級アミノ基含有アクリル樹脂(A)>
成分(A)は、成分(B)以外の樹脂、つまりカルボキシ基を含まない樹脂であり、1分子中に少なくとも1つの3級アミノ基を有していれば特に制限されない。
さらに成分(A)が3級アミノ基を含有することで、成分(B)と成分(C)との反応を促進することができる。
本組成物に用いる成分(A)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0021】
なお、本明細書における「アクリル樹脂」は、アクリル樹脂および/またはメタクリル樹脂のことをいう。また、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよびメタクリルを総称する表現である。同様の表現は同様の意味を有する。
【0022】
成分(A)は、例えば、3級アミノ基含有不飽和単量体(a-1)を用い、公知の方法によって(共)重合することにより合成することができ、具体的には、3級アミノ基含有不飽和単量体(a-1)、および、必要によりその他の不飽和単量体(a-2)をラジカル(共)重合することにより合成することができる。ただし、この(共)重合に用いる単量体として、少なくとも1つは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる。
また、成分(A)は、その他の不飽和単量体(a-2)をラジカル(共)重合(但し、少なくとも1つは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる)させた後、最終的に得られる樹脂が3級アミノ基を有するように変性などを行ってもよい。
成分(A)は、常法により合成することができるが、具体的には、重合開始剤および溶剤の存在下で単量体を反応させることにより合成することができる。
【0023】
前記単量体(a-1)としては、例えば、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート等のジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;
N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド等の3級アミノ基含有(メタ)アクリルアミド類;
ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ジメチルアミノプロピルビニルエーテル、ジメチルアミノブチルビニルエーテル等の3級アミノ基含有ビニルエーテル類;
ビニルピリジン等の3級アミノ基含有芳香族不飽和モノマー;
が挙げられる。
前記単量体(a-1)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0024】
前記単量体(a-1)としては、これらの中でも、樹脂(A)の安定性やエポキシ基含有化合物との反応性等の点から、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0025】
前記単量体(a-1)の使用量は、乾燥性および/または硬化性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐薬品性、耐水性、塗膜硬度に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、成分(A)を合成する際に用いる単量体の合計100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0026】
前記単量体(a-2)としては、例えば、
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートなどのアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールのモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリオキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート(アルキレン基の炭素数は2~4であり、アルキレンオキシドの付加モル数は1~50である。)、カプロラクトン変性ヒドロキシ(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル類;
無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物基含有不飽和単量体;
N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、n-メチロール(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有不飽和単量体類;
スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニル基含有不飽和単量体;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のシアノ基含有不飽和単量体;
p-スチレンスルホン酸等のスルホン酸基含有不飽和単量体;
p-スチレンスルホンアミド、N-メチル-p-スチレンスルホンアミド等のスルホンアミド基含有不飽和単量体;
フッ素含有ビニル単量体;
2-〔2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシメチル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール2-〔2'-ヒドロキシ-5'-(メタクリロイルオキシエチル)フェニル〕-2H-ベンゾトリアゾール等の紫外線吸収性不飽和単量体類(R-UVA);
4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等の光安定性不飽和単量体類(R-HALS);
が挙げられる。
前記単量体(a-2)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0027】
前記単量体(a-2)としては、これらの中でも、耐候性、柔軟性(耐屈曲性)、光沢にバランスよく優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレンが好ましい。
【0028】
前記単量体(a-2)の使用量は、乾燥性および/または硬化性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐薬品性、耐水性、塗膜硬度に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、成分(A)を合成する際に用いる単量体の合計100質量%に対し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0029】
成分(A)のガラス転移温度(Tg)は、塗膜硬度および耐屈曲性にバランスよく優れ、また、べたつき、クラックなどが生じにくい塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは-5℃以上、より好ましくは0℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
【0030】
本発明において、前記Tgは、Fox T.G.,Bull.Am.Physics Soc.1,3,第123頁(1956)に記載の下記Foxの式により近似的に算出した値である。
なお、樹脂が、下記文献にTg(Tgn)が記載されていない単量体などのTgが不明な単量体由来の構成単位を含有する場合であって、該Tgが不明な単量体由来の構成単位の合計量が10質量%以下である場合、Tgが判明している単量体のみを用いてTgを算出し、該Tgが不明な単量体由来の構成単位の合計量が10質量%を超える場合には、樹脂のTgは、DSC(示差走査熱量測定)などによって測定することができる。
【0031】
【数1】
[式中、X
nは、成分(A)を合成する際に用いたモノマーnの、成分(A)を合成する際に用いたモノマー全量に対する質量分率(質量%/100)であり、Tg
nは、該モノマーnのホモポリマーのガラス転移温度(ケルビン)である。]
【0032】
Tgnは、例えば、Polymer Handbook 2nd Edition,J.Wiley & Sons,New York(1975)に記載の値を参考にできる。このハンドブックによれば、例えば、ポリスチレンのTgは373Kであり、ポリメタクリル酸ブチルのTgは293Kであり、ポリアクリル酸ブチルのTgは219Kであり、ポリメタクリル酸2-ヒドロキシルエチルのTgは328Kであり、ポリメタクリル酸のTgは458Kである。
【0033】
成分(A)の重量平均分子量(以下単に「Mw」ともいう。)は、クラックが生じにくく耐屈曲性に優れ、耐候性および耐薬品性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、特に好ましくは4,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、特に好ましくは30,000以下である。
本発明において、Mwは、GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法により測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量であり、具体的には、下記実施例に記載の方法で測定することができる。
【0034】
前記成分(A)の不揮発分のアミン価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、好ましくは50mgKOH/g以下、より好ましくは40mgKOH/g以下である。
アミン価が前記範囲にある成分(A)を用いることで、乾燥性および/または硬化性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、耐候性および耐薬品性に優れる塗膜を容易に得ることができる。
前記アミン価は、JIS K 7237:1995に準拠して測定できる。
【0035】
本組成物の不揮発分100質量%中の成分(A)の含有量(不揮発分)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
成分(A)の含有量が前記範囲にあると、クラックが生じにくく、耐候性、塗膜硬度および柔軟性(耐屈曲性)にバランスよく優れるとともに、基材に対する付着性に優れる塗膜を容易に得ることができる。
【0036】
本組成物の不揮発分(固形分)は、本組成物を十分に反応硬化(加熱)した後の塗膜(加熱残分)の質量百分率、または、該塗膜(加熱残分)自体を意味する。前記不揮発分は、本組成物(例えば、主剤と硬化剤とを混合した直後の組成物)1±0.1gを平底皿に量り採り、質量既知の針金を使って均一に広げ、23℃で24時間乾燥させた後、加熱温度108℃で3時間(常圧下)加熱した時の、加熱残分および該針金の質量を測定することで算出することができる。なお、この不揮発分は、本組成物に用いる原料成分の固形分(溶媒以外の成分)の総量と同等の値である。
【0037】
<カルボキシ基含有樹脂(B)>
成分(B)は、1分子中に少なくとも1つのカルボキシ基を有していれば特に制限されない。
本組成物に用いる成分(B)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
【0038】
成分(B)としては、具体的には、例えば、カルボキシ基含有アクリル樹脂(B1)、カルボキシ基含有フッ素樹脂(B2)、カルボキシ基含有ポリエステル樹脂、カルボキシ基含有アルキド樹脂が挙げられ、これらの中でも、耐候性および耐薬品性にバランスよく優れる塗膜を容易に形成することができる等の点から、カルボキシ基含有アクリル樹脂(B1)、カルボキシ基含有フッ素樹脂(B2)が好ましく、また、入手容易性の点から、カルボキシ基含有アクリル樹脂(B1)がより好ましい。
【0039】
成分(B)のTgは、塗膜硬度および耐屈曲性にバランスよく優れ、また、べたつき、クラックなどが生じにくい塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは-5℃以上、より好ましくは0℃以上であり、好ましくは50℃以下、より好ましくは40℃以下である。
該Tgは、成分(A)の欄に記載の方法と同様の方法で測定または算出することができる。
【0040】
成分(B)として、成分(B1)を用いる場合、該成分(B1)の少なくとも1種、特に、用いる成分(B1)の全てが、以下の要件を満たすことが好ましい。
要件:成分(A)のTgおよび成分(B1)のTgの、どちらか一方が10℃以下であり、他方が20℃以上である。好ましくは、成分(A)のTgおよび成分(B1)のTgの、どちらか一方が8℃以下であり、他方が25℃以上である。
この要件を満たすことで、特に、塗膜硬度および耐屈曲性にバランスよく優れる塗膜を容易に得ることができる。成分(A)および成分(B1)として、いずれもTgが20℃を超える樹脂を用いる場合、耐屈曲性に優れる塗膜が得られにくい傾向にあり、成分(A)および成分(B1)として、いずれもTgが10℃未満の樹脂を用いる場合、塗膜硬度に優れる塗膜が得られにくい傾向にある。
【0041】
なお、成分(B)として、成分(B2)を用いる場合、成分(A)のTgと成分(B2)のTgとの関係はどのような関係であっても、特に、塗膜硬度および耐屈曲性にバランスよく優れる塗膜を容易に得ることができる。
【0042】
成分(B)のMwは、クラックが生じにくく耐屈曲性に優れ、耐候性および耐薬品性に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上、特に好ましくは4,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは50,000以下、特に好ましくは30,000以下である。
【0043】
前記成分(B)の不揮発分の酸価は、好ましくは5mgKOH/g以上、より好ましくは10mgKOH/g以上であり、好ましくは70mgKOH/g以下、より好ましくは60mgKOH/g以下である。
酸価が前記範囲にある成分(B)を用いることで、乾燥性および/または硬化性により優れる組成物を容易に得ることができ、また、耐候性および耐薬品性に優れる塗膜を容易に得ることができる。
前記酸価は、JIS K 0070:1992に準拠して測定できる。
【0044】
本組成物の不揮発分100質量%中の成分(B)の含有量(不揮発分)は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、特に好ましくは15質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。
成分(B)の含有量が前記範囲にあると、耐薬品性および耐屈曲性にバランスよく優れるとともに、基材に対する付着性に優れる塗膜を容易に得ることができる。
【0045】
[カルボキシ基含有アクリル樹脂(B1)]
成分(B1)は、例えば、カルボキシ基含有不飽和単量体を用い、公知の方法によって(共)重合することにより合成することができ、具体的には、カルボキシ基含有不飽和単量体、および、必要によりカルボキシ基不含不飽和単量体をラジカル(共)重合することにより合成することができる。ただし、この(共)重合に用いる単量体として、少なくとも1つは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる。
また、成分(B1)は、カルボキシ基不含不飽和単量体をラジカル(共)重合(但し、少なくとも1つは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる)させた後、最終的に得られる樹脂がカルボキシ基を有するように変性などを行ってもよい。
成分(B)は、常法により合成することができるが、具体的には、重合開始剤および溶剤の存在下で単量体を反応させることにより合成することができる。
【0046】
前記カルボキシ基含有不飽和単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アリルオキシプロピオン酸、2-(メタ)アクリロイルエチルこはく酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、2-ヘキセン酸、3-ヘキセン酸、5-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、3-オクテン酸、2-ノネン酸、3-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸、2-トリデセン酸が挙げられる。これらの中でも、(メタ)アクリル酸を用いることが好ましい。
カルボキシ基含有不飽和単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0047】
前記カルボキシ基含有不飽和単量体の使用量は、乾燥性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐薬品性、耐水性、塗膜硬度に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、成分(B1)を合成する際に用いる単量体の合計100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0048】
前記カルボキシ基不含不飽和単量体としては、前記単量体(a-1)および(a-2)として例示した単量体と同様の単量体等が挙げられる。これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレンを用いることが好ましい。
カルボキシ基不含不飽和単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0049】
前記カルボキシ基不含不飽和単量体の使用量は、乾燥性および/または硬化性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐薬品性、耐水性、塗膜硬度に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、成分(B1)を合成する際に用いる単量体の合計100質量%に対し、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、好ましくは99質量%以下、より好ましくは98質量%以下である。
【0050】
[カルボキシ基含有フッ素樹脂(B2)]
成分(B2)は、例えば、フルオロオレフィン類およびカルボキシ基含有モノマーを用い、公知の方法によって(共)重合することにより合成して得てもよく、市販品でもよい。成分(B2)を合成する場合、例えば、フルオロオレフィン類(b1)およびカルボキシ基を有する不飽和カルボン酸類(b2)を共重合すること、必要に応じて、さらにビニルエーテル類(b3)および/またはビニルエステル類(b4)を共重合することで合成することができる。
【0051】
前記フルオロオレフィン類(b1)としては、例えば、
CClF=CF2、CHCl=CF2、CCl2=CF2、CClF=CClF、CHF=CCl2、CH2=CClF、CCl2=CClF、CF2=CF2、CF2=CH2等のフルオロエチレン類;
CF2ClCF=CF2、CF3CCl=CF2、CF3CF=CFCl、CF2ClCCl=CF2、CF2ClCF=CFCl、CFCl2CF=CF2、CF3CCl=CClF、CF3CCl=CCl2、CClF2CF=CCl2、CCl3CF=CF2、CF2ClCCl=CCl2、CFCl2CCl=CCl2、CF3CF=CHCl、CClF2CF=CHCl、CH3CCl=CHCl、CHF2CCl=CCl2、CF2ClCH=CCl2、CF2ClCCl=CHCl、CCl3CF=CHCl、CHBrCF=CCl2、CF2=CFOCF3、CF2=CFOC3F7等のフルオロプロペン類;
CF3CCl=CFCF3、CF2=CFCF2CClF2、CF3CF2CF=CCl2等の炭素子数4以上のフルオロオレフィン類;
が挙げられる。
これらの中でも、CF2=CF2やCClF=CF2などの、オレフィン類の水素がすべてハロゲンに置換されたパーハロオレフィン類が好ましい。
フルオロオレフィン類(b1)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0052】
前記カルボキシ基を有する不飽和カルボン酸類(b2)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、アリルオキシプロピオン酸、2-(メタ)アクリロイルエチルこはく酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、2-ヘキセン酸、3-ヘキセン酸、5-ヘキセン酸、2-ヘプテン酸、3-ヘプテン酸、3-オクテン酸、2-ノネン酸、3-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸、2-トリデセン酸が挙げられる。カルボキシ基を有する不飽和カルボン酸類(b2)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0053】
前記ビニルエーテル類(b3)としては、例えば、
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、ネオペンチルビニルエーテル、t-ブチルビニルエーテル等の脂肪族アルキルビニルエーテル類;
シクロヘキシルビニルエーテル等の脂環式アルキルビニルエーテル類;
フェニルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ナフチルビニルエーテル等の芳香族ビニルエーテル類;
メチルイソプロペニルエーテル、エチルイソプロペニルエーテル、プロピルイソプロペニルエーテル、ブチルイソプロペニルエーテル、シクロヘキシルイソプロペニルエーテル等のイソプロペニルエーテル類;
2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、9-ヒドロキシノニルビニルエーテル、1-ヒドロキシメチル-4-ビニロキシメチルシクロヘキサン、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;
2-ヒドロキシエチルイソプロペニルエーテル、3-ヒドロキシプロピルイソプロペニルエーテル、4-ヒドロキシブチルイソプロペニルエーテル、9-ヒドロキシノニルイソプロペニルエーテル、1-ヒドロキシメチル-4-イソプロペノキシメチルシクロヘキサン、3-ヒドロキシ-2-クロロプロピルイソプロペニルエーテル等のヒドロキシアルキルイソプロペニルエーテル類;
が挙げられる。
ビニルエーテル類(b3)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0054】
前記ビニルエステル類(b4)としては、例えば、CH2=CHOCOR3(R3:置換基を有してもよい炭素数1~20の脂肪族、脂環族または芳香族の1価の炭化水素基)で表される化合物が挙げられる。
該R3における置換基としては水酸基、ハロゲン原子などが挙げられるが、水酸基でないことが好ましい。
ビニルエステル類(b4)は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0055】
ビニルエステル類(b4)の好適例としては、
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステル類;
安息香酸ビニル、p-t-ブチル安息香酸ビニル等の芳香族カルボン酸ビニルエステル類;
が挙げられる。
【0056】
また、成分(B2)の合成の際に、前記(b1)~(b4)以外の他の単量体を用いてもよい。
該他の単量体としては、例えば、
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類;
塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロオレフィン類;
蟻酸アリル、酪酸アリル、安息香酸アリル、シクロヘキサンカルボン酸アリル等のカルボン酸アリル類;
アリルエチルエーテル、アリルフェニルエーテル等のアリルエーテル類;
が挙げられる。
【0057】
成分(B2)は、例えば、特開平7-238116号公報、特開平8-157537号公報に記載の方法で合成することができる。
【0058】
<エポキシ基含有シラン化合物(C)>
成分(C)は特に制限されず、1分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有していれば、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよく、本組成物に用いる成分(C)は、1種でもよく、2種以上でもよい。
なお、成分(C)は、エポキシ基を有するため、前記効果を奏する塗膜を得ることができる。一方、エポキシ基を有さない化合物のみを用いた場合、前記所望の効果を奏さない。
【0059】
成分(C)としては、耐候性等により優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、エポキシ基とアルコキシ基とを有する化合物が好ましく、1分子中に1個のエポキシ基を有するアルコキシ基含有シランカップリング剤がより好ましく、下記式で表される化合物であることが特に好ましい。下記式で表される化合物は、後述する顔料と、成分(A)、(B)や(D)等の塗膜形成成分とを化学的に結合させる機能を有し、また、形成される塗膜の基材との密着性を改善する効果を有する。
X-SiRnY3-n
[nは0または1であり、Xはエポキシ基、炭化水素基の一部がエポキシ基で置換された基、または、炭化水素基の一部がエーテル結合等で置換された基の一部がエポキシ基で置換された基を示し、Rはアルキル基であり、Yはメトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基を示す。]
【0060】
前記式で表されるシラン化合物としては、例えば、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのγ-グリシドキシアルキルアルキルジアルコキシシラン;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシランなどのγ-グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン;3,4-エポキシシクロヘキシルエチルメチルジメトキシシランなどの3,4-エポキシシクロヘキシルアルキルアルキルジアルコキシシラン;3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン、3,4-エポキシシクロヘキシルエチルトリプロポキシシランなどの3,4-エポキシシクロヘキシルアルキルトリアルコキシシランが挙げられ、これらが脱水縮合したオリゴマーやポリマーであってもよい。
【0061】
前記オリゴマーとしては、その数平均分子量(Mn)が、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、好ましくは2,000以下、より好ましくは1,000以下の化合物が挙げられる。
前記ポリマーとしては、そのMwが、好ましくは3,000以上、より好ましくは5,000以上、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下の化合物が挙げられる。
【0062】
本組成物の不揮発分100質量%中の成分(C)の含有量(不揮発分)は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、特に好ましくは3質量%以上であり、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下である。
成分(C)の含有量が前記範囲にあると、塗装作業性に優れ、常温硬化可能な乾燥性に優れる組成物を容易に得ることができ、耐候性および柔軟性(耐屈曲性)にバランスよく優れる塗膜を容易に得ることができる。
【0063】
乾燥性および塗装容易性により優れる組成物を容易に得ることができ、耐候性および柔軟性(耐屈曲性)にバランスよく優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、成分(B)と成分(C)との質量比(成分(B)の質量/成分(C)の質量)は、好ましくは0.5以上、より好ましくは1.0以上、好ましくは10以下、より好ましくは7.5以下である。
なお、下記成分(E)を用いる場合、成分(B)と、成分(C)および(E)の合計との質量比(成分(B)の質量/(成分(C)+成分(E)の合計質量))が前記比と同様の範囲となるように、成分(C)および(E)を用いることが好ましい。
【0064】
<その他の成分>
本組成物は、本発明の効果を損なわない範囲において、必要に応じて、前記成分(A)~(C)以外のその他の成分、例えば、シリコーン樹脂(D)、エポキシ基含有アクリル樹脂(E)、顔料、分散剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、タレ止め剤(沈降防止剤)、硬化促進剤、光安定剤(光吸収剤)、有機溶剤を含有してもよい。
これらのその他の成分はそれぞれ、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
前記その他の成分は、主剤成分に配合してもよく、硬化剤成分に配合してもよい。
【0065】
本組成物は、塗装時の人体や環境への負荷が小さい塗料組成物とすることができる等の点から、イソシアネート基を有する化合物を実質的に含まないことが好ましい。
フッ素樹脂を用いる場合、常温硬化性の塗料組成物とするには、イソシアネート基を有する化合物を用いることが通常であるが、本組成物によれば、成分(B2)を用いた場合であっても、イソシアネート基を有する化合物を含まない常温硬化性の塗料組成物とすることができる。
なお、イソシアネート基を有する化合物を実質的に含まないとは、本組成物の不揮発分100質量%中のイソシアネート基を有する化合物の含有量が0.001質量%以下であることをいう。
【0066】
[シリコーン樹脂(D)]
前記成分(D)は、シロキサン結合を有する樹脂であり、エポキシ基を含まない樹脂であれば特に制限されず、直鎖状でも、分岐状であってもよい。
本組成物が成分(D)を含有すると、耐候性、塗膜硬度および耐薬品性により優れる塗膜を容易に得ることができる傾向にある。
【0067】
また、成分(D)は、例えば、エポキシ基以外の反応性基(例:アミノ基、カルボキシ基)を有していてもよい。成分(D)として反応性基を有する成分を用いる場合、該反応性基が互いに反応することや、該反応性基と、成分(A)、(B)、(C)および/または(E)中の反応性基とが反応することで、高分子量成分を形成または三次元架橋構造を形成することができ、塗膜の耐候性および硬度を向上させることができる。このような反応性基を有する成分(D)は、硬化剤に配合することができる。
【0068】
成分(D)は、下記式(I)で示される樹脂であることが好ましい。
【0069】
【化1】
[式(I)中、R
1はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、炭素数1~8のアルコキシ基、これらの基の水素原子がアミノ基および/またはカルボキシ基で置換された基、または、エポキシ基以外の反応性基である。R
2はそれぞれ独立に、炭素数1~8のアルキル基、炭素数6~8のアリール基、これらの基の水素原子がアミノ基および/またはカルボキシ基で置換された基、水素原子、または、エポキシ基以外の反応性基である。また、nは繰り返し数を示す。]
【0070】
前記R1およびR2における炭素数1~8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基が挙げられる。
前記R1およびR2における炭素数6~8のアリール基は、芳香環上にアルキル基等の置換基を有する基であってもよく、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基が挙げられる。
前記R1における炭素数1~8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、フェノキシ基が挙げられる。
【0071】
前記R1は、好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基またはフェニル基であり、また、前記R2は、好ましくは、メチル基、エチル基、フェニル基または水素原子である。
前記R1およびR2におけるエポキシ基以外の反応性基としては、例えば、アミノ基、カルボキシ基が挙げられる。
【0072】
成分(D)のMwは、耐候性および柔軟性(耐屈曲性)にバランスよく優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは400以上、より好ましくは500以上、好ましくは10,000以下、より好ましくは7,000以下である。
前記繰り返し数nは、成分(D)のMwが前記範囲となるように選択されることが好ましい。
Mwが前記範囲の上限を超える成分(D)は、粘度が高いため、取り扱い性を考慮した場合、このような成分(D)を含む本組成物の粘度を下げるために、後述する有機溶剤等による希釈が必要となる場合が多い。この結果、本組成物中の溶剤分が増加することとなり、本組成物中のVOC(Volatile Organic Compounds/揮発性有機化合物)を低減できない場合がある。
【0073】
成分(D)は、メチルシリコーンレジン、メチルフェニルシリコーンレジン等の耐候性および撥水性を有する樹脂であることが好ましく、下記、ジメチルシロキサン単位(a1)、ジフェニルシロキサン単位(a2)、メチルフェニルシロキサン単位(a3)、モノメチルシロキサン単位(a4)、モノプロピルシロキサン単位(a5)およびモノフェニルシロキサン単位(a6)からなる群より選択される1種以上の構成単位を含有することがより好ましい。
【0074】
【化2】
[式(a1)~(a6)中、Si-O-における、Oに結合し、Siに結合していない「-」は、結合手を示し、Si-O-は、必ずしもSi-O-CH
3を示すわけではない。]
【0075】
成分(D)は、従来公知の合成方法で合成して得てもよく、市販品でもよい。該市販品としては、例えば、「Dow Corning 3074 intermediate」、「Dow Corning 3055」(デュポン・東レ・スペシャルティ・マテリアル(株)製)、「SILRES HP2000」(旭化成ワッカーシリコーン(株)製)が挙げられる。
【0076】
本組成物が成分(D)を含有する場合、本組成物の不揮発分100質量%中の成分(D)の含有量(不揮発分)は、耐候性および柔軟性(耐屈曲性)にバランスよく優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、特に好ましくは1.5質量%以上であり、好ましくは45質量%以下、より好ましくは30質量%以下、特に好ましくは20質量%以下である。
【0077】
[エポキシ基含有アクリル樹脂(E)]
前記成分(E)としては、成分(A)~(C)以外の樹脂であり、1分子中に少なくとも1つのエポキシ基を有するアクリル樹脂であれば特に制限さない。
本組成物が成分(E)を含有すると、柔軟性(耐屈曲性)、光沢により優れる塗膜を容易に得ることができる傾向にある。
本組成物が、成分(A)および(B)を含有する主剤と、成分(C)を含有する硬化剤とを含む二成分型の組成物である場合、成分(E)は、硬化剤に配合することが好ましい。
【0078】
成分(E)は、例えば、エポキシ基含有不飽和単量体を用い、公知の方法によって(共)重合することにより合成することができ、具体的には、エポキシ基含有不飽和単量体、および、必要によりエポキシ基不含不飽和単量体をラジカル(共)重合することにより合成することができる。ただし、この(共)重合に用いる単量体として、少なくとも1つは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる。
また、成分(E)は、エポキシ基不含不飽和単量体をラジカル(共)重合(但し、少なくとも1つは、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を用いる)させた後、最終的に得られる樹脂がエポキシ基を有するように変性などを行ってもよい。
成分(E)は、常法により合成することができる。
【0079】
前記エポキシ基含有不飽和単量体としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシシクロヘキシルプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテルが挙げられる。これらの中でも、グリシジル(メタ)アクリレートを用いることが好ましい。
エポキシ基含有不飽和単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0080】
前記エポキシ基含有不飽和単量体の使用量は、耐薬品性、耐水性および塗膜硬度に優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、成分(E)を合成する際に用いる単量体の合計100質量%に対し、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは40質量%以下、より好ましくは30質量%以下である。
【0081】
前記エポキシ基不含不飽和単量体としては、前記単量体(a-2)として例示した単量体と同様の単量体等が挙げられる。
これらの中でも、メチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、スチレンを用いることが好ましい。
エポキシ基不含不飽和単量体は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0082】
成分(E)は、例えば、国際公開第2014/175246号に記載の方法で合成することができる。
【0083】
成分(E)のMwは、柔軟性(耐屈曲性)および塗膜硬度にバランスよく優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1,000以上、より好ましくは3,000以上であり、好ましくは50,000以下、より好ましくは30,000以下である。
【0084】
本組成物が成分(E)を含有する場合、本組成物の不揮発分100質量%中の成分(E)の含有量(不揮発分)は、柔軟性(耐屈曲性)、光沢により優れる塗膜を容易に得ることができる等の点から、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
【0085】
[顔料]
顔料としては、体質顔料、着色顔料等が挙げられ、有機系、無機系の何れであってもよい。
本組成物が主剤と硬化剤とを含む多成分型の組成物である場合、顔料は主剤および硬化剤のどちらか一方に配合してもよく、または、両方に配合してもよく、これら以外の第3剤に配合してもよいが、本組成物が、成分(A)および(B)を含有する主剤と、成分(C)を含有する硬化剤とを含む二成分型の組成物である場合、顔料は主剤に配合することが好ましい。
【0086】
本組成物が顔料を含有する場合、本組成物の不揮発分100質量%中の顔料の含有量は、耐候性および柔軟性(耐屈曲性)に優れるとともに、応力緩和の効果を有する塗膜を容易に形成できる等の点から、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、好ましくは60質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。
【0087】
前記体質顔料としては特に制限されず、従来公知の顔料を用いることができるが、下記着色顔料以外の顔料である。
前記体質顔料としては、例えば、タルク、マイカ、硫酸バリウム(沈降性硫酸バリウムや簸性硫酸バリウムを含む)、(カリ)長石、カオリン、アルミナホワイト、クレー、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、ドロマイト、シリカ、ガラスフレーク、プラスチックフレークが挙げられる。特に、タルク、シリカ、(沈降性)硫酸バリウム、(カリ)長石、マイカが好ましい。
【0088】
本組成物が体質顔料を含有する場合、本組成物の不揮発分100質量%中の体質顔料の含有量は、柔軟性(耐屈曲性)に優れる塗膜を容易に形成できる等の点から、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0089】
前記着色顔料としては特に制限されず、従来公知の顔料を用いることができる。
前記着色顔料としては、例えば、従来公知の、カーボンブラック、二酸化チタン(チタン白)、酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、群青、アルミニウムフレーク、鱗片状酸化鉄、ステンレスフレーク等の無機顔料、シアニンブルー、シアニングリーン等の有機顔料を用いることができる。特に、チタン白、カーボンブラック、弁柄が好ましい。
【0090】
本組成物が着色顔料を含有する場合、本組成物の不揮発分100質量%中の着色顔料の含有量は、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは45質量%以下である。
【0091】
[タレ止め剤(沈降防止剤)]
前記タレ止め剤(沈降防止剤)としては、Al、Ca、Znのステアレート塩、レシチン塩、アルキルスルホン酸塩などの有機粘土系ワックス、ポリエチレンワックス、アマイドワックス、水添ヒマシ油ワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックス等、従来公知のものを使用できるが、中でも、アマイドワックス、合成微粉シリカ、酸化ポリエチレン系ワックスおよび有機粘土系ワックスが好ましい。
【0092】
本組成物がタレ止め剤(沈降防止剤)を含有する場合、本組成物の不揮発分100質量%中のタレ止め剤(沈降防止剤)の含有量は、好ましくは0.3~10質量%である。
【0093】
[有機溶剤]
前記有機溶剤としては、特に限定されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、イソプロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶剤、ミネラルスピリット、n-ヘキサン、n-オクタン、2,2,2-トリメチルペンタン、イソオクタン、n-ノナン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0094】
本組成物が有機溶剤を含有する場合、本組成物100質量%中の有機溶剤の含有量は、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0095】
<本組成物の調製方法>
本組成物は、前記各成分を混合(混練)することで、調製することができる。
この混合(混練)の際には、各成分を一度に添加・混合してもよく、複数回に分けて添加・混合してもよい。また、季節、環境等に応じて加温、冷却等しながら混合してもよい。
前記混合(混練)の際には、従来公知の混合機、分散機、攪拌機等を使用でき、例えば、混合・分散ミル、モルタルミキサー、ロール、ペイントシェーカー、ホモジナイザーが挙げられる。
【0096】
≪塗膜、塗膜付き基材≫
本発明の一実施形態に係る塗膜(以下「本塗膜」ともいう。)は、前記本組成物を用いて形成され、本組成物の一実施形態に係る塗膜付き基材(以下「本塗膜付き基材」ともいう。)は、本塗膜と被塗物(基材)とを含む積層体である。このような、本塗膜付き基材は、例えば、下記工程[1]および[2]を含む方法で製造することができる。
工程[1]:本組成物を基材に塗装する工程
工程[2]:塗装された本組成物を乾燥させて塗膜を形成する工程
【0097】
本組成物は、鉄鋼(鉄、鋼、合金鉄、炭素鋼、マイルドスチール、合金鋼等)、非鉄金属(アルミニウム、銅、真鍮、亜鉛めっき、亜鉛溶射等)、ステンレス(SUS304、SUS410等)等の材質の基材に直接塗装してもよいが、通常、従来公知の防食塗膜、防錆塗膜、その他プライマー塗膜等を有する基材に塗装される。
【0098】
前記材質の基材としては、例えば、船舶;橋梁、タンク、プラント、鉄塔などの陸上構造物;港湾設備、海上ブイ、パイプライン、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、FLNG(浮体式洋上天然ガス液化設備)、石油掘削リグ、石油備蓄基地、メガフロート、洋上風力発電設備、潮力発電設備等の海洋構造物;などの(大型)鉄鋼構造物が挙げられる。これらの中でも、耐候性が求められる基材に好ましく用いられる。
【0099】
本塗膜の乾燥膜厚は特に限定されず、所望の用途に応じて適宜選択すればよいが、十分な耐候性を有する塗膜が得られる等の点から、通常は15μm以上、好ましくは25μm以上であり、通常は300μm以下、好ましくは200μm以下である。
【0100】
前記工程[1]における塗装方法としては特に制限されず、例えば、エアレススプレー塗装、エアスプレー塗装等のスプレー塗装、刷毛、ローラー、ヘラ、コテなどを用いた塗装などの従来公知の方法が挙げられる。これらの中でも、前記構造物などの大面積の基材を容易に塗装できる等の点から、スプレー塗装が好ましい。
このような塗装の際には、得られる塗膜の乾燥膜厚が前記範囲となるように塗装することが好ましい。
【0101】
本組成物を塗装する際には、所望に応じて、塗料組成物の粘度を適正な値に調整してもよい。
【0102】
本組成物を塗装する際には、1回の塗装(1回塗り)で所望の膜厚を形成してもよいし、2回以上の塗装(2回以上塗り)で所望の膜厚の塗膜を形成してもよい。
ここで、2回以上塗りとは、被塗物に対して前記工程[1]および[2]を経て、乾燥塗膜を形成する工程を少なくとも1回行なった後、該工程で得られた乾燥塗膜上に対し、さらに前記工程[1]および[2]を経て乾燥塗膜を形成する方法である。
【0103】
前記工程[2]における乾燥条件としては特に制限されず、塗膜の形成方法、基材の種類、用途、塗装環境等に応じて適宜設定すればよいが、乾燥温度は、常温乾燥の場合、通常5~35℃、より好ましくは10~30℃である。なお、所望により加熱、送風により強制乾燥(例:30~90℃)してもよいが、通常は自然条件下で乾燥、硬化される。
乾燥時間は、塗膜の乾燥方法によって異なり、常温乾燥の場合、通常1日~7日、好ましくは1日~3日である。
【実施例】
【0104】
本発明について実施例を挙げ、更に詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されない。
【0105】
[製造例1]<3級アミノ基含有アクリル樹脂1の合成>
反応器内に、溶剤としてキシレン41.5質量部を仕込み、窒素気流下で110℃まで昇温した。その後、モノマー成分の混合液(スチレン:38.0質量部、n-ブチルメタクリレート:37.0質量部、n-ブチルアクリレート:15.0質量部、および、ジメチルアミノエチルメタクリレート:10.0質量部)100質量部と、開始剤である2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)4.2質量部との混合液を、前記反応器の温度を110℃に維持しながら、該反応器に3時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間保温することで、3級アミノ基含有アクリル樹脂1を合成した。
【0106】
[製造例2]<3級アミノ基含有アクリル樹脂2の合成>
反応器内に、溶剤としてキシレン41.5質量部を仕込み、窒素気流下で110℃まで昇温した。その後、モノマー成分の混合液(スチレン:28.0質量部、n-ブチルメタクリレート:29.0質量部、n-ブチルアクリレート:33.0質量部、および、ジメチルアミノエチルメタクリレート:10.0質量部)100質量部と、開始剤である2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)4.2質量部との混合液を、前記反応器の温度を110℃に維持しながら、該反応器に3時間かけて滴下した。滴下後、同温度で2時間保温することで、3級アミノ基含有アクリル樹脂2を合成した。
【0107】
[製造例3]<カルボキシ基含有アクリル樹脂1の合成>
反応器内に、溶剤としてキシレン29.7質量部およびn-ブタノール12.7質量部を仕込み、窒素気流下で115℃まで昇温した。その後、モノマー成分の混合液(スチレン:53.0質量部、メチルメタクリレート:5.0質量部、n-ブチルアクリレート:35.0質量部、および、メタクリル酸:7.0質量部)100質量部と、開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.0質量部およびt-ブチルパーオキシベンゾエート0.8質量部の混合液とを、前記反応器の温度を115℃に維持しながら、該反応器に4時間かけて滴下した。滴下後、同温度で4時間保温することで、カルボキシ基含有アクリル樹脂1を合成した。
【0108】
[製造例4]<カルボキシ基含有アクリル樹脂2の合成>
反応器内に、溶剤としてキシレン29.4質量部およびn-ブタノール12.6質量部を仕込み、窒素気流下で115℃まで昇温した。その後、モノマー成分の混合液(スチレン:38.0質量部、メチルメタクリレート:5.0質量部、n-ブチルアクリレート:50.0質量部、および、メタクリル酸:7.0質量部)100質量部と、開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.0質量部およびt-ブチルパーオキシベンゾエート0.8質量部の混合液とを、前記反応器の温度を115℃に維持しながら、該反応器に4時間かけて滴下した。滴下後、同温度で4時間保温することで、カルボキシ基含有アクリル樹脂2を合成した。
【0109】
[製造例5]<カルボキシ基含有アクリル樹脂3の合成>
反応器内に、溶剤としてキシレン29.7質量部およびn-ブタノール12.7質量部を仕込み、窒素気流下で115℃まで昇温した。その後、モノマー成分の混合液(スチレン:44.0質量部、メチルメタクリレート:5.0質量部、n-ブチルアクリレート:44.0質量部、および、メタクリル酸:7.0質量部)100質量部と、開始剤としてt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート3.0質量部およびt-ブチルパーオキシベンゾエート0.8質量部の混合液とを、前記反応器の温度を115℃に維持しながら、該反応器に4時間かけて滴下した。滴下後、同温度で4時間保温することで、カルボキシ基含有アクリル樹脂3を合成した。
【0110】
[製造例6]<エポキシ基含有アクリル樹脂の合成>
反応器内に、溶剤としてキシレン42.0質量部を仕込み、窒素気流下で120℃まで昇温した。その後、モノマー成分の混合液(スチレン:35.0質量部、メチルメタクリレート:20.5質量部、n-ブチルアクリレート:29.5質量部、および、グリシジルメタクリレート:15.0質量部)100質量部と、開始剤として2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)5.0質量部との混合液を、前記反応器の温度を120℃に維持しながら、該反応器に3時間かけて滴下した。次いで、反応容器内にt-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート0.5質量部を加え、同温度で2時間保温することで、エポキシ基含有アクリル樹脂を合成した。
【0111】
<重量平均分子量(Mw)>
下記実施例および比較例で用いた原材料の標準ポリスチレン換算のMwを、GPCを用いて下記条件で測定した。測定条件は以下の通りである。
・GPC条件
・装置:「Alliance 2695」(Waters社製)
・カラム:「TSKgel SuperH4000」1本と「TSKgel SuperH2000」2本を連結(いずれも東ソー(株)製、内径6mm×長さ15cm)
・溶離液:テトラヒドロフラン99%(Stabilized whith BHT)
・流速:0.6ml/min
・検出器:「RI-104」(Shodex社製)
・カラム恒温槽温度:40℃
・標準物質:標準ポリスチレン
・サンプル調製法:下記実施例および比較例で用いた原材料をサンプル管に量り取り、テトラヒドロフランを加えて約100倍に希釈
【0112】
<ガラス転移温度(Tg)>
下記実施例および比較例で用いた原材料のガラス転移温度(Tg)は、前記Foxの式により算出した。
【0113】
[実施例1~10および比較例1~7]
ポリ容器に、表1に記載の主剤を構成する各成分を、表1に記載の量(数値)に従って入れ、ハイスピードディスパーを用いて攪拌した後、適量のガラスビーズを入れ、ペイントシェーカーで1~2時間分散させた。次いで、ガラスビーズを取り除くことで、主剤を調製した。
また、容器に、表1に記載の硬化剤を構成する各成分を、表1に記載の量(数値)に従って加え、ハイスピードディスパーを用いて十分に分散させることで硬化剤を調製した。
塗装する際に、調製した主剤および硬化剤を混合し、塗料組成物を調製した。
表1中の各成分の数値は、それぞれ質量部を示す。なお、表1に記載の各成分の説明を表2に示す。
【0114】
<耐屈曲性>
寸法が150mm×10mm×0.3mm(厚)のブリキ板を用意した。このブリキ板の表面に、前述のようにして調製した各塗料組成物を、エアスプレーを用いて、それぞれ乾燥膜厚が50μmとなるよう塗装し、50℃で7日間乾燥して耐屈曲性試験板を作成した。次に、得られた耐屈曲性試験板を、JIS K 5600-5-1:1999(耐屈曲性(円筒形マンドレル法))に準拠し、直径10mmのマンドレルを使用して耐屈曲性試験を行った。屈曲部の塗膜状態を目視で観察し、下記評価基準に従って塗膜の耐屈曲性を評価した。結果を表1に示す。
【0115】
(評価基準)
○:塗膜にクラック、ブリキ板からの剥離のいずれも発生しなかった。
×:塗膜にクラックおよびブリキ板からの剥離のいずれかが発生した。
【0116】
<耐候性>
寸法が150mm×70mm×0.8mm(厚)のアロジン処理したアルミ板を用意した。このアルミ板の表面に、前述のようにして調製した各塗料組成物を、エアスプレーを用いて、それぞれ乾燥膜厚が50μmとなるよう塗装し、23℃で7日間乾燥して耐候性試験板を作成した。次に、得られた耐候性試験板を、QUV促進耐候試験機(型式:QUV Accelerated Weathering Tester、UV-B313型ランプ、Q-Lab社製)を用い、JIS K 5600-7-7:2008(促進耐候性及び促進耐光性(キセノンランプ法))に準拠して、2000時間の耐候性試験を行った。
【0117】
その後、光沢計(型式:BYK-Gardner社製)を用いて、試験後の塗膜表面の垂直方向から60°の角度で入射させた光の反射率(60°光沢)を測定し、耐候性試験を実施する前の塗膜の60°光沢の値に対する光沢保持率(%)を算出した。結果を表1に示す。また、この光沢保持率の値を基に、下記評価基準に従って塗膜の耐候性を評価した。
【0118】
(評価基準)
◎:光沢保持率が90%以上であった。
○:光沢保持率が80%以上90%未満であった。
×:光沢保持率が80%未満であった。
【0119】
<塗膜硬度>
寸法が150mm×10mm×0.3mm(厚)の冷間圧延鋼板(JIS G 3141:2017、SPCC-SB)を用意した。この鋼板の表面に、前述のようにして調製した各塗料組成物を、エアスプレーを用いて、それぞれ乾燥膜厚が50μmとなるよう塗装し、23℃で7日間乾燥して塗膜硬度試験板を作成した。次に、得られた塗膜硬度試験板を用い、JIS K 5600-5-4:1999(引っかき硬度(鉛筆法))に準拠して、塗膜の硬度を測定し、下記評価基準に従って塗膜の硬度を評価した。結果を表1に示す。
【0120】
(評価基準)
○:鉛筆硬度がHB以上(例:HB、F、H、2H・・・)であった。
△:鉛筆硬度がB~4Bであった。
×:鉛筆硬度が5B以下(例:5B、6B・・・)であった。
【0121】
<耐薬品性>
寸法が150mm×70mm×0.8mm(厚)の冷間圧延鋼板(JIS G 3141:2017、SPCC-SB)を用意した。この鋼板の表面に、前述のようにして調製した各塗料組成物を、それぞれ乾燥膜厚が50μmとなるよう塗装し、23℃で7日間乾燥して耐薬品性試験板を作成した。次に、得られた耐薬品試験板を用い、JIS K 5659:2018に準拠して、耐薬品性試験を行った。
【0122】
耐酸性試験として、具体的には、耐薬品性試験板を、23℃の5g/Lの硫酸水溶液に168時間浸漬し、その後、該水溶液から取り出して、得られた試験板表面の塗膜状態を目視で観察し、下記評価基準に従って塗膜の耐酸性を評価した。
耐アルカリ性試験として、具体的には、耐薬品性試験板を、23℃の水酸化カルシウム飽和水溶液に168時間浸漬し、その後、該水溶液から取り出して、得られた試験板表面の塗膜状態を目視で観察し、下記評価基準に従って塗膜の耐アルカリ性を評価した。結果を表1に示す。
【0123】
(評価基準)
○:塗膜に変色、膨れ、割れおよび鋼板からの剥離のいずれも発生しなかった。
△:塗膜に白化等の変色は生じたが、膨れ、割れおよび鋼板からの剥離のいずれも発生しなかった。
×:塗膜に膨れ、割れまたは鋼板からの剥離のいずれかが生じた。
【0124】
【0125】