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▶ 前田 敬一の特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】脳機能活性化シート
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/00 20060101AFI20240524BHJP
   D06M 11/76 20060101ALI20240524BHJP
   D06M 15/263 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61N1/00
D06M11/76
D06M15/263
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2020069075
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2020175189
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2019076810
(32)【優先日】2019-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519136788
【氏名又は名称】前田 敬一
(74)【代理人】
【識別番号】100098969
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 正行
(72)【発明者】
【氏名】前田 敬一
【審査官】滝沢 和雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-136587(JP,A)
【文献】特開2008-289823(JP,A)
【文献】特開2009-068136(JP,A)
【文献】特開2007-239107(JP,A)
【文献】国際公開第2006/008997(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0055029(KR,A)
【文献】特開2006-274228(JP,A)
【文献】特開2007-146323(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0112002(KR,A)
【文献】特開2007-152920(JP,A)
【文献】特開2007-162034(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0177448(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0144590(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/00
D06M 11/76
D06M 15/263
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレン糸をダブルラッセル編みした厚さ3mmの平織物からなるシート本体と、
粒度250マイクロメートル以下に粉砕された黒鉛珪石粉末5重量%以上50重量%以下、アクリル酸アルキル共重合体42~43重量%で残部水のアクリル酸アルキル共重合体エマルション及び花崗岩粉末からなり、黒鉛珪石が1平方メートル当たり20g以上となるように、且つ前記シート本体の一方の主面に対角長15mmの六角形が1.5mmの間隔を開けて最密に配列したパターンとなるように印刷された印刷層と
を備えることを特徴とする脳機能活性化シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、脳機能を活性化するシートに関する。
【背景技術】
【0002】
脳機能を活性化したり、改善したりする方法を大別すると、体外の装置を用いる方法(特許文献1)と、経口剤を摂取する方法(特許文献2-5)とがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】再表2009/069756号公報
【文献】特開2018-039797号公報
【文献】特開2018-048175号公報
【文献】特開2018-070464号公報
【文献】特開2018-199643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前者は装置が大がかりで高価なものなので、利用者が限られる。後者は、即効性を期待することができないし、副作用の懸念もある。
それ故、この発明の課題は、安価に入手できて、副作用無く即効性を期待することのできる脳機能活性化シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
その課題を解決するために、この発明の脳機能活性化シート(以下、単に「シート」ともいう。)は、
繊維からなり柔軟性を有するシート本体と、
黒鉛珪石粉末5重量%以上、バインダー及び必要により黒鉛珪石以外の無機粉末からなり、黒鉛珪石が1平方メートル当たり20g以上となるように前記シート本体の主面にパターン印刷された印刷層と
を備えることを特徴とする。
【0006】
このシートを使用するときは、使用者の体の一部、例えば手のひら、腹、背中、首、額などを前記印刷層に触れさせる。触れた瞬間から脳波のうちのミッドα波の占有率及び/又は電圧が増し、数分間触れた状態を保った後は非接触の状態になってもしばらく前記占有率及び/又は電圧が維持される。印刷層が設けられていないシート本体や、黒鉛珪石粉末を含有しない印刷層や、黒鉛珪石自体に触れてもミッドα波の占有率や電圧が増すことは無い。従って、前記作用は、前記シート本体と前記印刷層との組み合わせに基づく特有の作用であると認められる。
【0007】
前記無機粉末がトルマリン及び/又は花崗岩の粉末であるときは、これらを適量添加することにより、前記作用が増長してよい。特に被験者が認知症患者である場合、これらを添加したシートを使用することにより、θ波の電圧が増す。これは、患者が落ち着いた状態になることを示す。前記バインダーは、前記印刷層中の75重量%以下であるのが好ましい。印刷層をシート本体に固定するバインダーの機能を発揮するには75重量%までで十分だからである。
【0008】
前記印刷層の好ましい構成は、前記黒鉛珪石粉末が40重量%以上、前記バインダーが45重量%以上で、黒鉛珪石が1平方メートル当たり160g以上となるように前記パターン印刷がなされているものである。
前記シート本体として好ましいのは、ラッセル編みされた織物、不織布、及び綿のいずれかである。いずれにしても市販品であってよい。これらのものは、暖かくて感触もよく、黒鉛珪石やその他の無機粉末の冷たさを相殺してくれるからである。
前記バインダーは通常、有機物であるが、水とのエマルションタイプであってよい。
【発明の効果】
【0009】
以上のように、この発明の脳機能活性化シートは、所定のシート本体と印刷層とを備えるだけでよいので、安価に製造可能である。そして、触れるだけでミッドα波の占有率及び/又は電圧が増すので、副作用無く即効性を有する。そのため、計算、記憶、思考などの頭脳労働をする直前あるいはしている間に触れることで能力をより大きく発揮することができる。また、スポーツでの集中力向上、質の良い睡眠、ストレスの影響の緩和などにも有効である。従って、レッグウォーマー、アイマスク、腹巻、サポーター、枕カバー、リストバンド、シーツ、スポーツ用具、筆記具など様々な製品に適用しうる。
【実施例
【0010】
[実施例1-9]
黒鉛珪石並びに場合によりトルマリン及び花崗岩を粒度250マイクロメートル以下に粉砕して表1に示す組成でバインダーと混合し、印刷インクを調合した。バインダーとしては、アクリル酸アルキル共重合体42~43重量%で残部水のアクリル酸アルキル共重合体エマルションを用いた。表1中の黒鉛珪石使用量は、1平方メートル当たりの重量を示す。
【0011】
シート本体としてポリエチレン糸をダブルラッセル編みした厚さ3mmの平織物を準備し、その一方の主面に対角長15mmの六角形が1.5mmの間隔を開けて最密に配列したパターンとなるように前記インクを印刷し、乾燥させることにより、実施例1-9の脳機能活性化シートを製造した。
【0012】
得られた脳機能活性化シートを印刷層が外側になるように筒状に曲げ、被験者の前に置いた。株式会社能力開発研究所のalphatec7を用いて、先ず脳機能活性化シートに触れない状態で被験者の脳波を2~4分間測定し、続いて筒状に曲げられた前記脳機能活性化シートの外側を軽く握るようにして触れた状態で被験者の脳波を4分間測定した。そして、シートに触れない状態で測定されたミッドα波の占有率及び電圧を基準として、シートに触れた状態で測定されたミッドα波の占有率及び電圧の増減割合を算出した。同様にしてθ波の占有率及び電圧の増減割合を算出した。各実施例ごとの増減割合の平均値を表1に示す。
【0013】
【表1】
【0014】
表1に示すように、実施例1-9のシートのいずれに触れてもミッドα波の占有率が増加した。それらの中でも、印刷層中の黒鉛珪石の含有量が高いほどミッドα波占有率の増加率も高かった。また、実施例1と実施例2、3との比較、実施例5と実施例4、6との比較、実施例7と実施例8、9との比較から判るように、無機成分として黒鉛珪石のみの場合よりもトルマリン又は花崗岩を共存させたほうがミッドα波の占有率及び電圧がともに大きく増加した。トルマリン又は花崗岩を共存させた場合は、θ波の電圧も増加した。
【0015】
[比較例1]
実施例1-9のシートの外側を軽く握ることに変えて黒鉛珪石単体、トルマリン単体、及び花崗岩単体に直接手を触れた状態でそれぞれ測定した以外は、実施例1-9と同様にして脳波を測定し、触れていない状態からのミッドα波及びθ波の占有率及び電圧の増減割合を算出したところ、いずれも有意の増加は確認されなかった。
【0016】
[比較例2]
実施例1-9のシートの外側を軽く握ることに変えて黒鉛珪石粉末、トルマリン粉末、及び花崗岩粉末に直接手を触れた状態でそれぞれ測定した以外は、実施例1-9と同様にして脳波を測定し、触れていない状態からのミッドα波及びθ波の占有率及び電圧の増減割合を算出したところ、いずれも有意の増加は確認されなかった。
【0017】
[実施例10]
実施例2のシートと同形同質のシートを用いてアルツハイマー型認知症患者34人を被験者とし、実施例2と同様に脳波を測定し、ミッドα波及びθ波の占有率及び電圧の増減割合を算出した。その結果、ミッドαの占有率は平均で11.88%減ったが、電圧は159.70%まで増し、θ波の占有率は9.06%増し、電圧は350.97%まで増した。