(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-23
(45)【発行日】2024-05-31
(54)【発明の名称】切削加工機
(51)【国際特許分類】
B23Q 11/00 20060101AFI20240524BHJP
G01P 5/16 20060101ALI20240524BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B23Q11/00 P
G01P5/16 A
B23Q17/00 A
(21)【出願番号】P 2020083776
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-04-17
(73)【特許権者】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【氏名又は名称】古市 昭博
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 七奈
【審査官】山本 忠博
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-001117(JP,A)
【文献】特開2016-057062(JP,A)
【文献】特開2000-304585(JP,A)
【文献】特開2017-012263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 11/00,17/00;
G01P 5/16-5/165
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物が切削される切削空間を有し、前記切削空間と連通する収集口が形成された筐体と、
一端が前記収集口に接続された収集管と、
前記収集管の他端に接続され、前記切削空間において前記被加工物が切削された際に発生する切削粉を、前記収集管を介して吸引する集塵機と、
前記集塵機が吸引するときの流量である吸引流量を測定する流量計と、
前記収集口に嵌合される嵌合部材と、
を備え、
前記嵌合部材には、複数の連通孔が形成され、
前記流量計は、
少なくとも先端部分が前記収集管内に配置され、前記収集管内における流体の全圧を検出するための全圧管と、
前記収集管内における流体の静圧を検出するための静圧管と、
前記全圧管内の全圧を検出する全圧センサと、
前記静圧管内の静圧を検出する静圧センサと、
を有し、
前記全圧センサによって検出された全圧と、前記静圧センサによって検出された静圧とに基づいて、前記集塵機の吸引流量を算出する流量算出手段を備えた、切削加工機。
【請求項2】
前記収集管は、前記筐体が載置された平面の方向に延びており、
前記全圧管の少なくとも先端部分は、前記収集管内において前記収集管の上下方向の中心よりも上方に配置されている、請求項1に記載された切削加工機。
【請求項3】
前記全圧管の全体が、前記収集管の上下方向の中心よりも上方に配置されている、請求項2に記載された切削加工機。
【請求項4】
前記収集管は、前記筐体内に配置される筐体内部分を有し、
前記全圧管の少なくとも先端部分は、前記収集管の前記筐体内部分に配置されている、請求項2または3に記載された切削加工機。
【請求項5】
前記切削粉を前記収集管の上下方向の中心よりも下方にガイドするガイド手段を備えた、請求項2から4までの何れか1つに記載された切削加工機。
【請求項6】
前記収集口は、前記筐体の下部に形成されている、請求項5に記載された切削加工機。
【請求項7】
前記筐体は、前記切削空間の下面を構成する下面壁を有し、
前記ガイド手段は、前記収集口に向かうに従って前記下面壁を下方に傾斜させることで実現される、請求項5または6に記載された切削加工機。
【請求項8】
前記全圧管および前記静圧管は、前記収集管内に配置され、前記全圧管と前記静圧管とが一体となったピトー管によって構成されている、請求項1から7までの何れか1つに記載された切削加工機。
【請求項9】
前記流量算出手段は、ベルヌーイの定理に基づい
て吸引流量を算出する、請求項1から
8までの何れか1つに記載された切削加工機。
【請求項10】
被加工物が切削される切削空間を有し、前記切削空間と連通する収集口が形成された筐体と、
一端が前記収集口に接続された収集管と、
前記収集管の他端に接続され、前記切削空間において前記被加工物が切削された際に発生する切削粉を、前記収集管を介して吸引する集塵機と、
前記集塵機が吸引するときの流量である吸引流量を測定する流量計と、
制御装置
と、
を備え、
前記流量計は、
少なくとも先端部分が前記収集管内に配置され、前記収集管内における流体の全圧を検出するための全圧管と、
前記収集管内における流体の静圧を検出するための静圧管と、
前記全圧管内の全圧を検出する全圧センサと、
前記静圧管内の静圧を検出する静圧センサと、
を有し、
前記全圧センサによって検出された全圧と、前記静圧センサによって検出された静圧とに基づいて、前記集塵機の吸引流量を算出する流量算出手段を備え、
前記制御装置は、
前記被加工物が切削されることで発生する前記切削粉の量を推定する粉量推定部と、
前記粉量推定部によって推定された前記切削粉の量を吸引可能な前記集塵機の基準となる基準吸引流量が記憶された記憶部と、
前記流量算出手段によって算出され
た吸引流量が、前記基準吸引流量よりも多い所定の第1判定流量よりも多い場合、前記集塵機による吸引速度を遅くする第1調整部と、
を備えた
、切削加工機。
【請求項11】
前記制御装置は、前記流量算出手段によって算出され
た吸引流量が、前記基準吸引流量よりも少ない所定の第2判定流量よりも少ない場合、前記集塵機による吸引速度を速くする第2調整部を備えた、請求項
10に記載された切削加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、義歯を作製する際に用いられる被加工物の切削加工を行う加工装置が開示されている。この加工装置は、加工空間が内部に形成された筐体を備えている。この加工空間にて、被加工物の切削加工が行われる。
【0003】
被加工物を切削加工する際には、切削粉が発生する。切削粉は筐体の加工空間に溜まる。そこで、特許文献1に開示された加工装置では、筐体の加工空間に集塵機が接続されている。そのため、集塵機が作動することで、加工空間内の切削粉は、集塵機によって吸引されて外部に廃棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記加工装置では、筐体の加工空間に溜まる切削粉の量に関係なく、集塵機を同じ強さ、すなわち同じ吸引速度で作動させていた。例えば加工空間内の切削粉の量が少ないときには、相対的に遅い吸引速度で集塵機を作動させた場合であっても切削粉を吸引することができる。そのため、加工空間内の切削粉の量に応じて、集塵機の吸引速度を調整することが好ましい。しかしながら、従来では、集塵機の吸引速度、すなわち集塵機が吸引する際の流量である吸引流量を測定しておらず、集塵機に対してオンまたはオフの制御のみしていた。集塵機の吸引速度を調整するためには、集塵機の現在の吸引流量を把握することが好ましい。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、切削粉を吸引する集塵機の吸引流量を測定することが可能な切削加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る切削加工機は、筐体と、収集管と、集塵機と、流量計とを備えている。前記筐体は、被加工物が切削される切削空間を有し、前記切削空間と連通する収集口が形成されている。前記収集管の一端が前記収集口に接続されている。前記集塵機は、前記収集管の他端に接続され、前記切削空間において前記被加工物が切削された際に発生する切削粉を、前記収集管を介して吸引する。前記流量計は、前記集塵機が吸引するときの流量である吸引流量を測定する。前記流量計は、全圧管と、静圧管と、全圧センサと、静圧センサと、を有している。前記全圧管は、少なくとも先端部分が前記収集管内に配置され、前記収集管内における流体の全圧を検出するための管である。前記静圧管は、前記収集管内における流体の静圧を検出するための管である。前記全圧センサは、前記全圧管内の全圧を検出する。前記静圧センサは、前記静圧管内の静圧を検出する。前記切削加工機は、前記全圧センサによって検出された全圧と、前記静圧センサによって検出された静圧とに基づいて、前記集塵機の吸引流量を算出する流量算出手段を備えている。
【0008】
前記切削加工機によれば、切削空間内の切削粉は、収集管を通じて集塵機に吸引されるため、収集管には、集塵機の吸引による流体の流れが発生する。そのため、流量計を使用して、収集管内の流体の流量を測定することで、集塵機の吸引流量を測定することができる。よって、測定した吸引流量の結果に応じて集塵機の吸引速度を調整することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、切削粉を吸引する集塵機の吸引流量を測定することが可能な切削加工機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係る切削加工機を示す斜視図である。
【
図2】扉を開けた状態の切削加工機を示す斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III断面における切削加工機の断面図である。
【
図4】保持部材、回転機構、およびマガジンの構成を示す斜視図である。
【
図5】収集管の断面図であり、ピトー管の全圧管および静圧管を示す図である。
【
図6】収集口に嵌合された嵌合部材を示す図である。
【
図8】実施形態に係る切削加工機のブロック図である。
【
図9】集塵機の吸引速度を調整する手順を示したフローチャートである。
【
図10】切削粉の量と、集塵機の吸引流量との関係を示すグラフである。
【
図11】他の実施形態に係る収集管の断面図であり、
図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施の形態は、当然ながら特に本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る切削加工機10を示す斜視図である。
図2は、扉30を開けた状態の切削加工機10を示す斜視図である。以下の説明では、左、右、上、下とは、切削加工機10の扉30と向かい合う位置にいるユーザから見た場合の左、右、上、下をそれぞれ意味することとする。また、上記ユーザが切削加工機10に近づく方を後方、上記ユーザが切削加工機10から遠ざかる方を前方とする。図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味する。本実施形態に係る切削加工機10は、相互に直交する軸をX軸、Y軸およびZ軸としたときに、X軸とY軸とで構成されるXY平面に配置されているものとする。ここでは、X軸は前後方向に延びた軸である。Y軸は左右方向に延びた軸である。Z軸は上下方向に延びた軸である。ただし、これら方向は、説明の便宜上に定めた方向に過ぎず、切削加工機10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0013】
本実施形態に係る切削加工機10は、被加工物5(
図4参照)を切削加工する加工機である。切削加工機10は、ユーザが被加工物5を手動で交換する加工機である。ただし、切削加工機10は、複数の被加工物5を収容し、自動で被加工物5を交換しながら、複数の被加工物5を切削加工することが可能な加工機であってもよい。切削加工機10は、いわゆるディスクチェンジャー付きの加工機であってもよい。
【0014】
この切削加工機10が使用される分野は特に限定されないが、切削加工機10は、例えばデンタル分野で使用される。切削加工機10が被加工物5を切削することで作製される対象物は、例えば歯冠補綴物である。歯冠補綴物として、例えばインレー、クラウン、ブリッジなどが挙げられる。
【0015】
被加工物5の形状は、例えば円盤形状である。被加工物5は、例えばジルコニア、ワックス、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ハイブリッドレジン、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン樹脂)、グラスファイバー強化型レジン、ペクトン(PEKK)、石膏などの各種の材料によって形成されている。被加工物5の材料としてジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。ただし、被加工物5の形状および材料は特に限定されない。
【0016】
図1に示すように、切削加工機10は、箱状に形成されている。切削加工機10は、筐体20と、扉30とを備えている。筐体20は、XY平面に沿って載置されている。筐体20は、内部に空間を有している。
【0017】
筐体20は、底面壁21と、前面壁22と、左側壁23と、右側壁24と、天面壁25と、背面壁26とを有している。底面壁21は、XY平面に対して平行に配置されている。底面壁21の左端には左側壁23が接続されている。左側壁23は、底面壁21からZ方向に延びている。底面壁21の右端には右側壁24が接続されている。右側壁24は、底面壁21からZ方向に延びている。底面壁21の後端には背面壁26が接続されている。背面壁26は、底面壁21からZ方向に延びている。背面壁26の左端および右端は、それぞれ左側壁23の後端および右側壁24の後端に接続されている。天面壁25は底面壁21と平行になるように配置され、左側壁23の上端、右側壁24の上端、および背面壁26の上端に接続されている。
【0018】
図3は、
図1のIII-III断面における切削加工機10の断面図である。
図3に示すように、底面壁21の前端には前面壁22が接続されている。前面壁22は、底面壁21の前端から後ろ斜め上方に延びている。
図1に示すように、前面壁22の左端は左側壁23の前端に接続され、前面壁22の右端は右側壁24の前端に接続されている。本実施形態では、前面壁22は、左側壁23および右側壁24よりも高さが低い。そのため、
図2に示すように、筐体20には、前面に開口部20aが形成されている。
【0019】
扉30は、筐体20の開口部20aに設けられている。扉30は、開閉可能に構成されている。本実施形態では、扉30は、筐体20に対して、左側壁23の前端および右側壁24の前端に沿って上下方向にスライド可能に取り付けられている。扉30には、筐体20の内部の後述する切削空間A21を視認可能な窓部31が設けられている。
【0020】
筐体20の内部は、内部壁によって複数のエリアに分割されている。
図2および
図3に示すように、筐体20の内部には、内部壁として、下面壁41と、後方壁42と、仕切り壁43と、後方仕切り壁44とが設けられている。
図3に示すように、後方仕切り壁44は、筐体20の内部の背面壁26に近い側に配置され、Z方向に延びている。後方仕切り壁44は、筐体20の内部を前方側の空間と、後方側の空間に区切っている。後方仕切り壁44によって区切られた後方側の空間は、背面空間A1を構成している。背面空間A1には、後述する制御装置170などが収容されている。
【0021】
後方仕切り壁44によって区切られた前方側の空間には、下面壁41と後方壁42とが配置されている。下面壁41は、筐体20の前面壁22の上端に接続されている。下面壁41は、前面壁22に対して垂直に配置されている。上述のように、前面壁22は後方に傾いて形成されており、前面壁22に垂直に配置された下面壁41もXY平面に対して傾斜して形成されている。詳しくは、下面壁41は、後方に向かうに従って下方に傾斜している。下面壁41の後端には、後方壁42が接続されている。後方壁42は、下面壁41に対して垂直に配置されている。後方壁42は、下面壁41との接続部から後ろ斜め上方に延び、後方仕切り壁44に接続している。
【0022】
本実施形態では、筐体20の内部には、内部空間A2が形成されている。この内部空間A2は、下面壁41と、後方壁42と、後方仕切り壁44の後方壁42より上側部分と、天面壁25と、左側壁23と、右側壁24によって囲まれた空間である。
図2に示すように、内部空間A2は、左側壁23に対して平行に配置された仕切り壁43によって、左右に区切られている。ここでは、仕切り壁43よりも左側の空間を、切削空間A21といい、仕切り壁43よりも右側の空間を、制御空間A22という。
【0023】
切削空間A21は、被加工物5が切削される空間である。被加工物5が切削されることで発生する切削粉は、切削空間A21で発生する。ここでは、切削空間A21は、下面壁41と、後方壁42と、後方仕切り壁44と、天面壁25と、左側壁23と、仕切り壁43によって囲まれた空間である。扉30が開口部20aを開放すると、切削空間A21は、外部と連通した状態となる。切削空間A21は、制御空間A22よりも広く構成されている。
【0024】
制御空間A22は、後述する保持部材70やマガジン50の回転および移動を制御する駆動部などが収容された空間である。制御空間A22の前方には、制御空間A22を外部と隔離するカバー45が取り付けられている。
【0025】
以下の説明では、
図3に示すように、切削空間A21において、下面壁41に対して垂直な方向をZ1方向と称することとする。また、下面壁41に直交する前面壁22に対して垂直な方向をX1方向と称することとする。X1方向、Y方向、Z1方向は互いに直交している。さらに、互いに直交するX1方向およびZ1方向について、X1方向の前方をF1、後方をRr1、Z1方向の上方をU1、下方をD1とする。ただし、これらは説明の便宜上の方向に過ぎず、切削加工機10の設置態様を何ら限定するものではない。
【0026】
本実施形態では、切削空間A21には、保持部材70、回転機構80、マガジン50、主軸60、X1方向移動機構91、Y方向移動機構92、Z1方向移動機構93が配置されている。
図4は、保持部材70、回転機構80、およびマガジン50の構成を示す斜視図である。
図4に示すように、本実施形態では、被加工物5を保持する保持部材70と、保持部材70を回転させる回転機構80と、棒状のツール8を収容するマガジン50とが一体に組み付けられている。
【0027】
保持部材70は、被加工物5に対応した形状を有しており、ここでは、半円弧状に構成されている。本実施形態では、保持部材70は図示しないネジなどを備え、ユーザがネジなどを締めることにより被加工物5を固定する。
【0028】
回転機構80は、保持部材70を支持している。回転機構80は、主軸60(
図3参照)と保持部材70とを相対的に移動させる移動機構の一部である。回転機構80は、第1回転軸81と、第2回転軸82と、第3回転軸83と、支持部材84と、第1駆動部85と、第2駆動部86(
図4には図示せず、
図8参照)とを備えている。
図4に示すように、第1回転軸81および第2回転軸82は、それぞれF1方向およびRr1方向から保持部材70を回転可能に支持している。第1回転軸81は、保持部材70のF1方向に設けられた第1駆動部85に接続されている。第1駆動部85は、特に限定されないが、例えばモータである。第1駆動部85は、第1回転軸81を、X1軸を軸にして方向T1に回転させる。第1駆動部85の駆動によって、保持部材70は方向T1に回転する。
【0029】
保持部材70および第1駆動部85は、L字状に形成された支持部材84によって支持されている。支持部材84は、第1支持部84aと、第2支持部84bとを有している。第1支持部84aは、X1軸方向に延びた部材である。第2支持部84bは、第1支持部84aの後端から左方に延びた部材である。第1支持部84aの前端は、第1駆動部85を支持している。第2支持部84bは、第2回転軸82を支持している。また、第1支持部84aの中央部分には、第3回転軸83が接続されている。第3回転軸83は、保持部材70のX1軸方向の中心に対応する位置に接続されている。第3回転軸83は、
図4には図示しない第2駆動部86(
図8参照)に接続されている。この第2駆動部86が駆動することで、第3回転軸83は、支持部材84の第1支持部84aをY軸周りの方向T2に回転させる。支持部材84の方向T2への回転によって、保持部材70も方向T2に回転する。
【0030】
図4に示すように、マガジン50は、回転機構80の第3回転軸83および支持部材84を介して保持部材70を支持している。マガジン50は箱状に形成されている。マガジン50の上面50aには、穴状のストッカー55が複数形成されている。ストッカー55には、ツール8が収容される。本実施形態では、ストッカー55には、ツール8が上端部8aを露出した状態で挿入される。マガジン50にストッカー55が複数設けられていることによって、様々な種類のツール8をマガジン50に収容することができる。
【0031】
ツール8は、被加工物5を切削する工具である。ここでは、棒状のツール8が用いられる。ツール8には、フランジ8bが設けられている。ここでは、フランジ8bは、穴状のストッカー55に対応した形状を有している。ツール8がストッカー55に収容される際、フランジ8bがストッカー55に嵌め込まれる。ツール8がストッカー55に挿入された状態において、フランジ8bよりも上方の上端部8aがストッカー55から突出する。ツール8において、フランジ8bよりも下方には刃物部が設けられている。本実施形態では、ツール8には、様々な形状の刃物部を有するものがある。
【0032】
マガジン50は、右方に配設されたX1方向移動機構91(
図4には図示せず、
図3参照)に固定されている。X1方向移動機構91は、主軸60と保持部材70とを相対的に移動させる移動機構の一部である。X1方向移動機構91の構成は特に限定されないが、例えばモータとねじ送り機構等を備えている。X1方向移動機構91は、制御装置170に接続され、制御装置170によって制御されている。保持部材70は、X1方向移動機構91の駆動により、マガジン50と一体的にX1方向に移動する。その際、保持部材70に保持された被加工物5も、保持部材70とともにX1方向に移動する。
【0033】
図3に示すように、主軸60は、ツール8を回転させる部材である。主軸60は、スピンドル60aと駆動部60c(
図8参照)とを備え、スピンドル60aは把持部60bを備えている。スピンドル60aは、Z1軸周りに回転する部材である。
【0034】
把持部60bは、ツール8を把持する部材である。把持部60bは、スピンドル60aの下端に設けられている。把持部60bは、例えば複数のチャックでツール8の上端部8a(
図4参照)を挟むことで、ツール8を把持する。チャックは、例えば圧縮空気とスプリングの力によって開閉されている。圧縮空気は、主軸60に接続された外部のエアコンプレッサ等により供給される。把持部60bには、圧縮空気の供給および排気を制御するための電磁弁などが設けられている。上記電磁弁などは、制御装置170によって制御されている。ツール8は、把持部60bに把持された状態でスピンドル60aが回転することによりZ1軸周りに回転する。
【0035】
図8に示す駆動部60cは、スピンドル60aを回転させる部材である。駆動部60cは、例えばモータである。駆動部60cは、制御装置170に接続され、制御装置170によって制御されている。駆動部60cは、制御装置170の制御により、スピンドル60aを所定のタイミングと所定の回転数で回転させる。
【0036】
図3に示すように、主軸60の後述する把持部60bがツール8を把持してZ1軸周りに回転することで、ツール8もZ1軸周りに回転する。回転状態にあるツール8の刃物部が被加工物5に当接することで、被加工物5が切削される。ツール8によって被加工物5が切削されることで、切削粉が発生する。
【0037】
主軸60は、Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93により、それぞれY方向およびZ1方向に移動される。Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93も、主軸60と保持部材70とを相対的に移動させる移動機構の一部である。Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93の構成も特に限定されないが、例えば、それぞれモータとねじ送り機構などを備えている。Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93は、それぞれ制御装置170に接続され、制御装置170によって制御されている。主軸60は、Y方向移動機構92およびZ1方向移動機構93の駆動により、Y方向およびZ1方向に移動する。その際、把持部60bに把持されたツール8も、主軸60とともにY方向およびZ1方向に移動する。
【0038】
図1に示すように、本実施形態に係る切削加工機10は、筐体20の前面壁22に設けられた操作パネル110を備えている。操作パネル110は、ユーザが切削加工機10の操作を行う部位である。
【0039】
本実施形態では、
図3に示すように、切削加工機10は、集塵機120と、収集管130と、流量計140(
図5参照)とを備えている。集塵機120は、筐体20の切削空間A21において、被加工物5が切削された際に発生した切削粉を収集するものである。集塵機120は、筐体20の切削空間A21の切削粉を吸引する。集塵機120は、筐体20に接続され、切削空間A21と連通している。
【0040】
本実施形態では、筐体20には、収集口28が形成されている。収集口28は、筐体20の下部に形成されている。詳しくは、収集口28は、筐体20の切削空間A21の後面を構成する後方壁42の下部に形成されている。ここでは、後方壁42の下部とは、後方壁42のZ1方向の中心よりも下側(ここではD1側)の部分のことをいう。集塵機120は、筐体20に形成された収集口28に接続されている。そのため、集塵機120は、筐体20の後方に配置されている。なお、筐体20に対する収集口28の形成位置は特に限定されないが、切削粉が集まり易い部分、またはその近傍の部分に収集口28が形成されていることが好ましい。収集口28は、例えば筐体20の左側壁23に形成されてもよいし、下面壁41に形成されてもよい。筐体20に対する集塵機120の位置は、収集口28の位置に対応した位置に適宜配置される。
【0041】
本実施形態では、
図3に示すように、集塵機120は、収集管130を介して筐体20の収集口28に接続されている。収集管130の一端(ここでは前端)は収集口28に接続されている。収集管130の他端(ここでは後端)は集塵機120に接続されている。収集管130は、筐体20が載置される平面(ここではXY平面)に延びている。詳しくは、収集管130は、X方向に延びており、収集口28から後方(Rr方向)に向かって延びている。
【0042】
図5は、収集管130の断面図である。本実施形態では、
図5に示すように、収集管130のZ方向(上下方向)の中心Cよりも上方の部分を上側部分133という。収集管130のZ方向の中心Cよりも下方の部分を下側部分134という。
【0043】
図3に示すように、収集管130の一部は、筐体20内(ここでは、筐体20の後方壁42よりも後方の空間)に配置されている。収集管130の他の一部は、筐体20から後方に突出し、筐体20から露出している。ここでは、収集管130のうちの筐体20内(ここでは背面空間A1)に配置された部分のことを、筐体内部分131という。収集管130のうちの筐体20から露出した部分のことを、筐体外部分132という。
【0044】
本実施形態では、筐体20の下面壁41は、収集口28に向かうに従って下方に傾斜している。ここでは、下面壁41は、後方に向かうに従って下方に傾斜している。このように下面壁41が下方に傾斜することで、切削空間A21内の切削粉は、下面壁41に沿って収集口28に向かって集まる。そして、切削粉は、収集口28の下側部分を通過し、収集管130の下側部分134(
図5参照)を通過し易くなる。本実施形態では、下方に傾斜した下面壁41は、切削粉を収集管130のZ方向の中心Cよりも下方にガイドするガイド手段の一例である。
【0045】
図6は、後方壁42に形成された収集口28に嵌合された嵌合部材29を示す図である。本実施形態では、
図6に示すように、収集管130が接続される筐体20の収集口28には、嵌合部材29が嵌合されている。嵌合部材29は、収集口28と合致した形状である。嵌合部材29には、複数の連通孔29aが形成されている。連通孔29aは、筐体20の切削空間A21(
図3参照)と、収集管130および集塵機120と、を連通させる孔であり、嵌合部材29を貫通している孔である。切削空間A21の切削粉は、連通孔29aを通じて収集管130から集塵機120へ吸引される。なお、連通孔29aの数、大きさ、形状などは特に限定されない。複数の連通孔29aは、異なる大きさであってもよいし、同じ大きさであってもよい。複数の連通孔29aは、同じ形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。
【0046】
図5に示すように、流量計140は、集塵機120が吸引するときの流量である吸引流量Q(
図9参照)を測定するものである。ここでは、集塵機120に接続された収集管130内の流量を上記の吸引流量Qとし、流量計140は、収集管130内の流量を測定する。以下、収集管130内の流量のことを吸引流量Qともいう。
【0047】
本実施形態では、流量計140は、収集管130内を流れる流体のいわゆる全圧P1(後述の数1参照)と、静圧P2(数1参照)とを検出し、全圧P1と静圧P2とに基づいて吸引流量Qを測定する。流量計140は、ピトー管141と、差圧センサ150と、流量算出部160と、を有する。
【0048】
ピトー管141は、収集管130内の流体の全圧P1および静圧P2を検出するための管である。ピトー管141の先端部分は、収集管130内の流体の流れF10の中に配置されている。
図7は、ピトー管141の断面図である。
図7に示すように、ピトー管141は、全圧管142と、静圧管143とを有している。全圧管142と静圧管143とが一体となってピトー管141が構成されている。
【0049】
全圧管142は、収集管130内の流体の全圧P1を検出するための管である。
図5に示すように、全圧管142の先端部分は、収集管130に対して平行となるように、収集口28に向かって延びている。全圧管142の先端部分には、収集口28に向かって開口した全圧口145(
図7参照)が形成されている。全圧口145は、収集管130内の流体の流れF10の方向と反対方向に開口している。本実施形態では、全圧管142の先端(ここでは全圧口145)において、収集管130内の流体の流速は零となる。流体の流速が零となる圧力を全圧P1という。
【0050】
静圧管143は、収集管130内の流体の静圧P2を検出するための管である。静圧管143は、全圧管142を囲むように全圧管142の周囲に設けられており、全圧管142に沿って延びている。静圧管143の先端部分は、収集管130に対して平行となるように、収集口28に向かって延びている。静圧管143の先端部分には、側方(ここでは上方および下方)に開口した静圧口146(
図7参照)が形成されている。静圧口146は、収集管130内の流体の流れF10の方向と直交する方向に開口している。そのため、静圧管143内で、流体の静圧P2を検出することができる。
【0051】
本実施形態では、
図5に示すように、ピトー管141の先端部分、すなわち全圧管142の先端部分(全圧口145が形成された部分)、および、静圧管143の先端部分(静圧口146が形成された部分)は、収集管130の上側部分133に配置されている。ピトー管141の先端部分は、収集管130におけるZ方向の上側の1/3の部分に配置されていてもよいし、当該上側の1/4の部分に配置されていてもよい。
【0052】
ここでは、ピトー管141の全体、すなわち全圧管142の全体、および、静圧管143の全体は、収集管130のZ方向の中心Cよりも上方に配置されている。すなわち、ピトー管141のうちのZ方向に延びた部分の一部は、収集管130の外部に配置されているが、収集管130のZ方向の中心Cよりも上方に配置されている。ピトー管141は、収集管130の下側部分134には配置されておらず、かつ、収集管130のZ方向の中心Cよりも下方に配置されていない。
【0053】
ピトー管141の先端部分、すなわち全圧管142の先端部分、および、静圧管143の先端部分は、収集管130の筐体内部分131に配置されている。言い換えると、ピトー管141の先端部分は、筐体20内に配置されている。ただし、ピトー管141の先端部分以外の部分は、筐体内部分131に配置されていてもよいし、収集管130の筐体外部分132に配置されてもよい。本実施形態では、ピトー管141の全体は、筐体20内に配置されている。ピトー管141の全体は、例えば背面空間A1(
図3参照)に配置されている。
【0054】
差圧センサ150は、ピトー管141の全圧管142内の全圧P1と、静圧管143内の静圧P2を検出し、全圧P1と静圧P2との差圧を検出する。差圧センサ150は、全圧管142と静圧管143に接続されている。本実施形態では、差圧センサ150は、全圧センサ151と、静圧センサ152とを有している。
【0055】
全圧センサ151および静圧センサ152は、筐体20内、例えば背面空間A1に配置されているが、筐体20の外部に配置されていてもよい。また、全圧センサ151および静圧センサ152は、収集管130の外部に配置されているが、収集管130内に配置されてもよい。全圧センサ151は、収集管130内における流体の全圧P1を検出するセンサである。ここでは、全圧センサ151は、全圧管142に接続されており、全圧管142内の圧力を検出することで、収集管130内の流体の全圧P1を検出する。静圧センサ152は、収集管130内における流体の静圧P2を検出するセンサである。ここでは、静圧センサ152は、静圧管143に接続されており、静圧管143内の圧力を検出することで、収集管130内の流体の静圧P2を検出する。
【0056】
図8に示す流量算出部160は、集塵機120の吸引流量Qを算出する。流量算出部160は、流量算出手段の一例である。流量算出部160は、例えばマイクロプロセッサ(マイコン)によって構成されている。流量算出部160は、筐体20の背面空間A1に配置されている。流量算出部160は、差圧センサ150、すなわち全圧センサ151および静圧センサ152と通信可能に接続されている。
【0057】
流量算出部160は、全圧センサ151によって検出された全圧P1と、静圧センサ152によって検出された静圧P2とに基づいて、集塵機120の吸引流量Qを算出する。ここでは、流量算出部160は、ベルヌーイの定理に基づいて吸引流量を算出することができる。ここで、収集管130内の流体の密度をρとすると、流量算出部160は、以下の式(1)によって、収集管130内の流体の流速Vを算出することができる。
【数1】
【0058】
次に、収集管130の横断面積をAとすると、流量算出部160は、上記の式(1)によって算出した流体の流速Vと、収集管130の横断面積Aとを用いて、以下の式(2)によって、収集管130の流体の流量、すなわち集塵機120の吸引流量Qを算出することができる。
Q=A×V ・・・(2)
【0059】
図8は、切削加工機10のブロック図である。本実施形態では、
図8に示すように、切削加工機10は、制御装置170を備えている。制御装置170は、被加工物5を切削する制御、および、集塵機120が吸引するときの吸引流量Q、言い換えると吸引速度を制御する装置である。制御装置170の構成は特に限定されない。制御装置170は、例えばマイクロプロセッサである。制御装置170は、例えばホストコンピュータ等の外部機器から切削データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリなどの記憶装置と、を備えている。なお、制御装置170は必ずしも切削加工機10の筐体20内に設けられている必要はない。例えば、切削加工機10の外部に設置され、有線または無線を介して切削加工機10と通信可能に接続されたコンピュータなどであってもよい。
【0060】
本実施形態では、制御装置170には、主軸60の把持部60bおよび駆動部60cと、回転機構80の第1駆動部85および第2駆動部86と、X1方向移動機構91と、Y方向移動機構92と、Z1方向移動機構93と、操作パネル110とが通信可能に接続されている。また、制御装置170は、集塵機120と、流量計140の流量算出部160と通信可能に接続されている。制御装置170は、集塵機120の吸引速度を制御する。
【0061】
本実施形態では、制御装置170は、記憶部171と、粉量推定部172と、吸引流量取得部173と、第1調整部174と、第2調整部175とを備えている。なお、上述した制御装置170の各部171~175は、ソフトウェアによって構成されていてもよいし、ハードウェアによって構成されていてもよい。例えば制御装置170の各部171~175は、プロセッサによって行われるものであってもよいし、回路に組み込まれるものであってもよい。
【0062】
以上、切削加工機10の構成について説明した。本実施形態では、切削加工機10で被加工物5が切削されているとき、集塵機120は作動している。ここで、流量計140によって測定された集塵機120の吸引流量Qに基づいて、集塵機120の吸引流量(言い換えると吸引速度)を調整することが可能である。例えば切削加工機10によって被加工物5を切削する際に発生する切削粉の量が多いときには、制御装置170は、集塵機120の吸引速度を速くするように集塵機120を制御して、切削空間A21内の切削粉をより多く吸引する。一方、被加工物5を切削する際に発生する切削粉の量が少ないときには、集塵機120の吸引速度が遅い場合であっても切削粉を適切に吸引することができる。そのため、切削空間A21内の切削粉の量が少ないときには、制御装置170は、集塵機120の吸引速度を遅くするように集塵機120を制御する。
【0063】
図9は、集塵機120の吸引速度を調整する手順を示したフローチャートである。以下、集塵機120の吸引速度を調整する手順を
図9のフローチャートを用いて説明する。
図9のステップS101に進む際、切削加工機10は、切削空間A21においてツール8を用いて被加工物5を切削しており、かつ、集塵機120が作動している状態である。
【0064】
まずステップS101では、粉量推定部172は、被加工物5が切削されることで発生する切削粉の量V10を推定する。ここでは、
図3に示すように、主軸60の把持部60bでツール8を把持させた状態で、駆動部60cによってスピンドル60aを回転させる。スピンドル60aによって回転されたツール8を、保持部材70で保持された被加工物5(
図4参照)に接触させることで、被加工物5は切削される。そのため、粉量推定部172は、回転したツール8が被加工物5に接触したときに発生した切削粉の量V10を推定する。ここでは、粉量推定部172によって推定される切削粉の量V10は、所定の時間内における単位時間当たりの切削粉の量である。
【0065】
なお、切削粉の量V10を推定する方法は特に限定されない。本実施形態では、粉量推定部172は、例えば把持部60bに把持されたツール8の被加工物5に対する切込み量に応じて、被加工物5が切削されたときに発生する切削粉の量V10を推定することができる。ここで切込み量とは、ツール8の刃物部が被加工物5に接触した状態でツール8が被加工物5内に入り込んで切削するときの、ツール8の移動量のことである。粉量推定部172は、この切込み量と、ツール8の太さなどに基づいて、ツール8が被加工物5を切削した量を算出する。そして、粉量推定部172は、当該切削した量を切削粉の量V10と推定する。なお、粉量推定部172によって推定された切削粉の量V10は、記憶部171に記憶される。
【0066】
次に、
図9のステップS103では、吸引流量取得部173は、流量計140で測定された集塵機120の吸引流量Qを取得する。ここでは、吸引流量取得部173は、流量計140の流量算出部160に取得信号を送信する。当該取得信号を取得した流量算出部160は、全圧センサ151から流体の全圧P1、静圧センサ152から流体の静圧P2を検出し、上記の式(1)および式(2)に基づいて、吸引流量Qを算出する。そして、流量算出部160は、算出した吸引流量Qを吸引流量取得部173に送信する。吸引流量取得部173は、吸引流量Qを受信することで、集塵機120の吸引流量Qを取得する。なお、吸引流量取得部173によって取得された吸引流量Qは、記憶部171に記憶される。
【0067】
次に、
図9のステップS105では、第1調整部174は、流量計140の流量算出部160によって算出された吸引流量Qが、所定の第1判定流量Q11よりも多いか否かを判定する。
【0068】
図10は、切削粉の量V10と、集塵機120の吸引流量Qとの関係を示すグラフである。
図10のグラフは、切削粉の量を吸引するために必要な集塵機120の吸引流量を示すグラフである。本実施形態では、
図10に示すように、粉量推定部172によって推定された切削粉の量V10に応じて、基準吸引流量Q10が予め設定されている。この基準吸引流量Q10は、量V10の切削粉を最も適切に吸引することが可能な集塵機120の吸引流量のことである。例えば基準吸引流量Q10とは、所定の時間で量V10の切削粉を吸引することができる最低限の吸引流量の値である。
【0069】
そして、本実施形態では、基準吸引流量Q10を基準に、量V10の切削粉を吸引することが可能な吸引流量の範囲R10が予め設定されている。この範囲R10の上限値が第1判定流量Q11である。この第1判定流量Q11は、基準吸引流量Q10よりも多い。なお、基準吸引流量Q10および第1判定流量Q11は、切削粉の量V10の値に応じて、適宜設定されるものである。基準吸引流量Q10および第1判定流量Q11は、記憶部171に予め記憶されている。
【0070】
図9のステップS105において、流量算出部160によって算出された吸引流量Qが、所定の第1判定流量Q11よりも多いと判定された場合、集塵機120の現在の吸引流量Qが、量V10の切削粉を吸引するためには多過ぎる量である。そのため、次にステップS107に進む。
【0071】
ステップS107では、第1調整部174は、集塵機120による吸引速度を遅くするように集塵機120を制御する。このことで、集塵機120の吸引流量Qが第1判定流量Q11よりも少なくなり、範囲R10内になる。
【0072】
一方、
図9のステップS105において、流量算出部160によって算出された吸引流量Qが、所定の第1判定流量Q11以下であると判定された場合、次にステップS109に進む。
【0073】
ステップS109では、第2調整部175は、流量計140の流量算出部160によって算出された吸引流量Qが、所定の第2判定流量Q12よりも少ないか否かを判定する。ここで、
図10に示すように、第2判定流量Q12とは、量V10の切削粉を吸引することが可能な吸引流量の範囲R10の下限値のことである。この第2判定流量Q12は、基準吸引流量Q10よりも少なく、第1判定流量Q11よりも少ない。なお、第2判定流量Q12も基準吸引流量Q10および第1判定流量Q11と同様に、切削粉の量V10の値に応じて適宜設定されるものである。第2判定流量Q12は、記憶部171に予め記憶されている。
【0074】
ステップS109において、流量算出部160によって算出された吸引流量Qが、所定の第2判定流量Q12よりも少ないと判定された場合、集塵機120の現在の吸引流量Qが、量V10の切削粉を吸引するためには少な過ぎる量である。そのため、次にステップS111に進む。
【0075】
図9のステップS111では、第2調整部175は、集塵機120による吸引速度を速くするように集塵機120を制御する。このことで、集塵機120の吸引流量Qが第2判定流量Q12よりも多くなり、範囲R10内になる。
【0076】
一方、
図9のステップS109において、流量算出部160によって算出された吸引流量Qが、所定の第2判定流量Q12以上であると判定された場合、集塵機120の現在の吸引流量Qが、範囲R10内である。そのため、集塵機120の吸引速度の調整は行わずに
図9のフローを終了する。このようにして、切削空間A21内において、被加工物5が切削された発生する切削粉の量に応じて、集塵機120の吸引速度が調整される。
【0077】
以上、本実施形態に係る切削加工機10では、
図3に示すように、筐体20は、被加工物5が切削される切削空間A21を有する。筐体20には、切削空間A21と連通する収集口28が形成されている。収集管130の一端は収集口28に接続され、収集管130の他端は集塵機120に接続されている。集塵機120は、切削空間A21において被加工物5が切削された際に発生する切削粉を、収集管130を介して吸引する。
図5に示すように、流量計140は、集塵機120が吸引するときの流量である吸引流量Qを測定する。流量計140は、全圧管142と、静圧管143と、全圧センサ151と、静圧センサ152とを有している。全圧管142の少なくとも先端部分が収集管130内に配置され、全圧管142は、収集管130内における流体の全圧P1を検出するための管である。静圧管143は、収集管130内における流体の静圧P2を検出するための管である。全圧センサ151は、全圧管142内の全圧P1を検出する。静圧センサ152は、静圧管143内の静圧P2を検出する。
図8に示す流量算出部160は、全圧センサ151によって検出された全圧P1と、静圧センサ152によって検出された静圧P2とに基づいて、集塵機120の吸引流量Qを算出する。
【0078】
このことによって、切削空間A21内の切削粉は、収集管130を通じて集塵機120に吸引されるため、収集管130には、集塵機120の吸引による流体の流れが発生する。そのため、流量計140を使用して、収集管130内の流体の流量を測定することで、集塵機120の吸引流量Qを測定することができる。よって、測定した吸引流量Qの結果に応じて集塵機120の吸引速度を調整することができる。
【0079】
本実施形態では、収集管130は、筐体20が載置されたXY平面の方向に延びている。
図5に示すように、全圧管142の少なくとも先端部分は、収集管130のZ方向の中心Cよりも上方(ここでは上側部分133)に配置されている。収集管130は、切削粉が通過する管である。収集管130内において、全圧管142の先端部分に切削粉が接触(言い換えると付着)することで、吸引流量Qを正確に測定できないことがあり得るため、全圧管142の先端部分には、切削粉が接触し難くいことが好ましい。切削粉は、空気よりも重いため、収集管130の上側部分133よりも下側部分134を通過し易い。よって、全圧管142の少なくとも先端部分を、収集管130の上側部分133に配置することで、全圧管142に切削粉が接触し難くすることができる。
【0080】
本実施形態では、全圧管142の全体が、収集管130のZ方向の中心Cよりも上方に配置されている。このことによって、全圧管142は、収集管130の下側部分134に配置されていない状態となる。よって、収集管130内の下側部分134を通過する切削粉は、全圧管142に接触し難く、集塵機120に確実に吸引されることができる。
【0081】
本実施形態では、
図3に示すように、収集管130は、筐体20内に配置される筐体内部分131を有している。
図5に示すように、全圧管142の少なくとも先端部分は、収集管130の筐体内部分131に配置されている。収集口28に近い収集管130の筐体内部分131の流体の全圧P1および静圧P2を検出することができるため、切削空間A21付近の吸引流量Qを測定することができる。
【0082】
本実施形態では、
図3に示すように、筐体20の下面壁41は、切削空間A21の下面を構成している。下面壁41は、収集口28に向かうに従って下方に傾斜している。そのため、下面壁41は、切削粉を収集管130のZ方向の中心Cよりも下方(ここでは下側部分134)にガイドするガイド手段を実現する。このことによって、切削空間A21内の切削粉は、下面壁41に沿って収集管130に向かって流れるため、収集管130の下側部分134を通過し易くなる。よって、収集管130内の上側部分133に配置された全圧管142の先端部分に、切削粉が接触し難い。
【0083】
本実施形態では、収集口28は、筐体20の下部に形成されている。ここでは、収集口28は、筐体20の後方壁42の下部に形成されている。切削粉は、空気よりも重いため、切削空間A21の下部に集まり易い。よって、筐体20の下部に収集口28を形成することで、切削粉を収集口28から収集管130に流し易い。
【0084】
本実施形態では、
図5に示すように、全圧管142および静圧管143は、収集管130内に配置され、全圧管142と静圧管143とが一体となったピトー管141によって構成されている。このことによって、ピトー管141を使用することで、収集管130内の流体の全圧P1および静圧P2を容易に検出することができる。よって、ピトー管141を使用することで、集塵機120の吸引流量Qを容易に測定することができる。
【0085】
図6に示すように、嵌合部材29は、収集口28に嵌合される。嵌合部材29には、複数の連通孔29aが形成されている。例えば、より多くの切削粉を吸引させるために、収集口28は大きい方が好ましいが、収集口28が大き過ぎると、大きな切削粉が収集管130に入り込み、全圧管142に接触し易くなる。しかしながら、本実施形態では、複数の連通孔29aが形成された嵌合部材29を収集口28に嵌合させることで、収集口28よりも大きい切削粉、および、収集口28よりも小さく、かつ、連通孔29aよりも大きい切削粉を収集管130に入り込まなくすることができる。よって、収集口28の大きさをある程度確保しつつ、大きい切削粉を収集管130に入り込み難くすることができる。
【0086】
本実施形態では、流量計140の流量算出部160は、ベルヌーイの定理に基づいて吸引流量Qを算出する。このように、ベルヌーイの定理を用いることで、収集管130内の流体の全圧P1と静圧P2とに基づいて吸引流量Qを容易に算出することができる。
【0087】
本実施形態では、
図8に示すように、制御装置170は、粉量推定部172と、記憶部171と、第1調整部174とを備えている。粉量推定部172は、被加工物5が切削されることで発生する切削粉の量V10を推定する。記憶部171には、粉量推定部172によって推定された切削粉の量V10を吸引可能な集塵機120の基準となる基準吸引流量Q10(
図10参照)が記憶されている。第1調整部174は、流量算出部160によって算出された吸引流量Qが、基準吸引流量Q10よりも多い所定の第1判定流量Q11よりも多い場合(
図9のステップS105のYES)、集塵機120による吸引速度を遅くする(
図9のステップS107)。このことによって、流量算出部160によって算出された吸引流量Qが第1判定流量Q11よりも多い場合、集塵機120の吸引速度を遅くした場合であっても、切削空間A21内の切削粉の量V10を吸引することができると考えられる。この場合、第1調整部174によって集塵機120の吸引速度を遅くして、集塵機120の吸引流量Qを少なくすることで、切削空間A21内の切削粉の量V10を吸引しつつ、集塵機120の消費電力を抑えることができる。
【0088】
本実施形態では、制御装置170は、流量算出部160によって算出された吸引流量Qが、基準吸引流量Q10よりも少ない所定の第2判定流量Q12よりも少ない場合(
図9のステップS109のYES)、ステップS111に示すように、集塵機120による吸引速度を速くする第2調整部175を備えている。このことによって、流量算出部160によって算出された吸引流量Qが第2判定流量Q12よりも少ない場合において、流量算出部160によって算出された吸引流量Qのままでは、切削空間A21内に切削粉が切削空間A21に残る可能性があり得る。そのため、この場合、第2調整部175によって集塵機120の吸引速度を速くして、集塵機120の吸引流量Qを多くすることで、切削空間A21内の切削粉の量V10を確実に吸引し易くすることができる。
【0089】
<他の実施形態>
次に、他の実施形態について説明する。
図11は、他の実施形態に係る切削加工機10Aの収集管130Aの断面図であり、
図5相当図である。上記実施形態では、
図5に示すように、流量計140の全圧管142と静圧管143とは、一体となってピトー管141によって構成されていた。しかしながら、
図11に示すように、流量計140Aの全圧管142Aと静圧管143Aとは、ピトー管141によって構成されず、別体であってもよい。
【0090】
本実施形態では、全圧管142Aの先端部分は、上記実施形態の全圧管142と同様に、収集管130Aに対して平行となるように、収集口28(
図3参照)に向かって延びている。全圧管142Aの先端部分に形成された全圧口145は、収集管130A内の流体の流れF10の方向と反対方向に開口している。
【0091】
本実施形態では、静圧管143Aは、収集管130Aの途中部分に接続されており、収集管130と直交するように延びている。詳しくは、静圧管143Aは、収集管130Aの途中部分(ここでは、収集管130Aの筐体内部分131)から上方に向かって延びている。静圧管143Aの静圧口146は、収集管130A内に向かって開口している。静圧口146は、収集管130内の流体の流れF10の方向と直交する方向に開口している。
【0092】
このように、全圧管142Aと静圧管143Aとが別体であっても、全圧センサ151は、全圧管142A内の圧力を検出することで、収集管130A内の流体の全圧P1を検出することができる。静圧センサ152は、静圧管143A内の圧力を検出することで、収集管130A内の流体の静圧P2を検出する。そのため、本実施形態であっても、流量計140Aによって、集塵機120の吸引流量Qを測定することができる。
【0093】
上記実施形態では、全圧センサ151と静圧センサ152は、差圧センサ150を構成しており、差圧センサ150に含まれていた。しかしながら、全圧センサ151と静圧センサ152は、別々のセンサであってもよく、別々の部材によって構成されていてもよい。
【0094】
上記実施形態では、全圧センサ151によって検出された全圧P1と、静圧センサ152によって検出された静圧P2とに基づいて、集塵機120の吸引流量Qを算出する流量算出手段は、流量計140の流量算出部160であった。しかしながら、流量算出部手段は、流量計140の流量算出部160に限定されず、例えば制御装置170によって実現されてもよい。この場合、制御装置170は、全圧センサ151によって検出された全圧P1と、静圧センサ152によって検出された静圧P2とを取得し、例えばベルヌーイの定理に基づいて、取得した全圧P1と静圧P2とから集塵機120の吸引流量Qを算出してもよい。
【符号の説明】
【0095】
5 被加工物
10 切削加工機
20 筐体
28 収集口
29 嵌合部材
29a 連通孔
41 下面壁(ガイド手段)
120 集塵機
130 収集管
131 筐体内部分
140 流量計
141 ピトー管
142 全圧管
143 静圧管
151 全圧センサ
152 静圧センサ
160 流量算出部(流量算出手段)
170 制御装置
171 記憶部
172 粉量推定部
174 第1調整部
175 第2調整部
A21 切削空間